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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073203
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】表紙貼装置、表紙貼方法
(51)【国際特許分類】
   B42C 11/04 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
B42C11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184296
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】593048043
【氏名又は名称】芳野YMマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 久也
(57)【要約】
【課題】本文を搬送する搬送手段と表紙を搬送する搬送手段との位置ズレを抑制し、精度良く本文と表紙とを貼り合わせることができる表紙貼装置、表紙貼方法を提供する。
【解決手段】駆動装置の駆動力により搬送される紙葉束に表紙Bを貼り合わせる表紙貼装置20であって、駆動装置の駆動力により周方向に周回移動し、表紙Bを搬送する環状の搬送チェーン202と、搬送チェーン202と駆動装置との間に配設され、駆動装置の駆動力を搬送チェーン202に伝達すると共に、紙葉束と表紙Bとの位置が一致するように該駆動力による搬送チェーン202の周回移動速度を調節する調節駆動装置28と、搬送チェーン202の搬送方向下流に設けられ、位置が略一致する紙葉束と表紙Bとを貼り合わせる貼合わせローラ262とを備えた。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置の駆動力により搬送される紙葉束に表紙を貼り合わせる表紙貼装置であって、
前記駆動装置の駆動力により周方向に周回移動し、前記表紙を搬送する環状の搬送体と、
前記搬送体と前記駆動装置との間に配設され、前記駆動装置の駆動力を前記搬送体に伝達すると共に、前記紙葉束と前記表紙との位置が略一致するように該駆動力による前記搬送体の周回移動速度を調節する調節駆動部と、
前記搬送体の搬送方向下流に設けられ、位置が略一致する前記紙葉束と前記表紙とを貼り合わせる貼合わせ部と
を備えることを特徴とする表紙貼装置。
【請求項2】
前記調節駆動部はサーボモータを有し、前記紙葉束と前記表紙との位置がずれた場合、前記サーボモータにより前記搬送体の周回移動速度を増減することを特徴とする請求項1記載の表紙貼装置。
【請求項3】
前記調節駆動部は、前記搬送体の周回移動速度を調節する調節回転駆動を停止可能なロック機構を有しており、
前記ロック機構により前記調節回転駆動が停止された状態において、前記駆動装置の駆動力が直接前記搬送体に伝達されることを特徴とする請求項1記載の表紙貼装置。
【請求項4】
前記紙葉束を検出する検出部を更に備え、
前記調節駆動部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記紙葉束と前記表紙との位置が一致しているか否かを判定し、一致していないと判定された場合、前記紙葉束と前記表紙との位置が一致するよう前記搬送体の周回移動速度を調節する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項記載の表紙貼装置。
【請求項5】
駆動装置の駆動力により搬送される紙葉束に表紙を貼り合わせる表紙貼方法であって、
前記駆動装置の駆動力により周方向に周回移動して前記表紙を搬送する環状の搬送体と前記駆動装置との間に配設され、前記駆動装置の駆動力を前記搬送体に伝達すると共に、該駆動力による前記搬送体の周回移動速度を調節する調節駆動部を、前記紙葉束と前記表紙との位置が一致するように制御し、前記搬送体の搬送方向下流において、位置が略一致する前記紙葉束と前記表紙とを貼り合わせる
ことを特徴とする表紙貼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製本装置が有する紙葉束(以下、本文という)と表紙とを合わせる表紙貼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製本装置としては、図6に示されるような無線綴機9が知られている。無線綴機9は、所定間隔毎に本文Xを挟持する図示しないクランパが取り付けられた本文搬送チェーン90を、ラウンド経路Yを形成するように環状に配し、これをラウンド経路Yに沿って一方向に周回移動させている。また、ラウンド経路Yの一部に沿って、製本工程に必要な、ミーリングカッタ91、ガリカッタ92、横糊付け機93、背糊付け機94、表紙搬送装置95、同調機96、およびプレス成形締機97などの各ユニットが設置されている。
【0003】
この無線綴機9では、クランパにより本文Xを挟持した状態において、ミーリングカッタ91によって本文Xの背面を断裁して背面を揃え、ガリカッタ92によって背面に筋溝を入れ、その後、横糊付け機93によって背面近傍の両脇に糊を塗布し、背糊付け機94によって背面に糊を塗布している。また、糊の塗布後に表紙搬送装置95によって繰出された表紙Zと本文Xとを同調機96により合わせて、のど部にあたる本文Xの背部にプレス成型締機97により表紙Zを圧着して成形している。
【0004】
関連する技術に、表紙を繰り出す表紙供給装置の上部に寒冷紗供給装置を備え、表紙搬送及び整合部の表紙搬送と同面上にテープ状の寒冷紗を搬送する搬送機構を設けた無線綴じ製本機や(特許文献1)、中本の背を下にして載置されたシートパイルを、クランプバーによって側方から中本の背で把持するとともに、支持プレート上で中本の背を支持し、かつ、シートパイルを傾斜した準備位置から引き取り、中本搬送装置へ引き渡す装置(特許文献2)が知られている。また、制御部の制御に基づき、X-Yアクチュエータが、ハンドユニットを複数の製本ユニットのうち必要な複数の製本ユニットへ順番に移動させると共に、ハンドユニットを製本ユニットにおけるそれぞれの工程の実行のために必要な位置に移動させ、制御部が、厚み検出手段によって検出された本文の厚みに基づき、製本ユニットにおいて、駆動要素を用いて作動要素の位置決めを行う製本装置(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-284800号公報
【特許文献2】特開2012-228881号公報
【特許文献3】特許第3673510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した表紙搬送装置95としては、環状の表紙搬送チェーンを有し、これに搬送爪を設けて当該チェーンを周回移動させることにより、表紙Zが搬送爪により搬送されるものが一般的である。このような表紙搬送装置95を有する無線綴機9では、本文Xと表紙Zとが同位置となるよう本文搬送チェーン90や表紙搬送チェーンの速度、クランパの位置および個数、搬送爪の位置および個数等を設定する必要がある。
【0007】
しかしながら、本文搬送チェーン90は、クランパの重量や各種工程による負荷が加わるため、経年による伸び等の劣化が生じ、本文Xと表紙Zとの位置、即ちクランパと搬送爪との位置にズレが生じてしまうという問題があった。このズレを放置すると徐々にズレが増大することとなり、本文Xと表紙Zとを精度良く貼り合わせることが困難となる。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、本文を搬送する搬送手段と表紙を搬送する搬送手段との位置ズレを抑制し、精度良く本文と表紙とを貼り合わせることができる表紙貼装置、表紙貼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、駆動装置の駆動力により搬送される紙葉束に表紙を貼り合わせる表紙貼装置であって、前記駆動装置の駆動力により周方向に周回移動し、前記表紙を搬送する環状の搬送体と、前記搬送体と前記駆動装置との間に配設され、前記駆動装置の駆動力を前記搬送体に伝達すると共に、前記紙葉束と前記表紙との位置が略一致するように該駆動力による前記搬送体の周回移動速度を調節する調節駆動部と、前記搬送体の搬送方向下流に設けられ、位置が略一致する前記紙葉束と前記表紙とを貼り合わせる貼合わせ部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本文を搬送する搬送手段と表紙を搬送する搬送手段との位置ズレを抑制し、精度良く本文と表紙とを貼り合わせることができる。なお、本発明のその他の効果については、以下の発明を実施するための形態の項でも説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る表紙貼装置を有する無線綴機を示すブロック図である。
図2】本実施の形態に係る本文搬送装置と表紙貼装置とを示す模式図である。
図3】表紙貼装置の平面図である。
図4】表紙貼装置の内部構成を模式的に示す平面透視図である。
図5】表紙貼装置による表紙貼り動作を説明するための表紙貼装置における要部の概略縦断面図である。
図6】従来の無線綴機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、本実施の形態に係る表紙貼装置が組み込まれた無線綴機を例にとり説明を行う。先ず、無線綴機の構成について図1および図2を用いて説明する。
【0013】
無線綴機1は、本文Aを搬送する本文搬送装置10と、表紙Bを搬送すると共に本文Aに対し表紙Bを仮止めの形で貼り合わせる表紙貼装置20と、本文搬送装置10および表紙貼装置20の駆動源となる駆動モータ30と、本文Aに対して適宜加工を施す加工ユニット40と、搬送される本文Aを検出するセンサ50と、これら各機構を制御する制御部60とを備えて構成されており、図示しない丁合機にて丁合された折丁等からなる本文に無線綴じを行うものである。
【0014】
図2に示されるように、本文搬送装置10は、ラウンド経路Cを画成するよう環状に配された搬送チェーン102を有しており、この搬送チェーン102には本文Aを挟持するための後述するクランパ(図5の符号104参照)が所定間隔毎に複数設けられている。本文搬送装置10は、駆動モータ30により搬送チェーン102を一方向に周回移動させ、クランパに挟持された状態で本文Aを搬送している。なお、説明上、図2ではラウンド経路Cの一部のみが示されている。
【0015】
表紙貼装置20は、ラウンド経路Dを画成するよう環状に配された搬送チェーン202を有しており、この搬送チェーン202には所定間隔毎に表紙Bを搬送するための後述する搬送爪(図3図5の符号202a参照)が一定間隔で複数設けられている。表紙貼装置20は、駆動モータ30により搬送チェーン202を一方向に周回移動させながら、図示しない表紙繰り出し装置から表紙Bを受け取ると共に表紙Bを搬送し、後述する貼合わせローラ(図3図4の符号262参照)により本文Aの背面に表紙Bを貼り合わせる。
【0016】
加工ユニット40は、本実施の形態においてはミーリングカッタ、ガリカッタ、横糊付け機、背糊付け機、およびプレス成形締機を含むものである。ミーリングカッタ、ガリカッタ、横糊付け機、背糊付け機は、ラウンド経路Cにおいて表紙貼装置20より上流に配設されており、図2に示される本文Aはこれらのユニットにより加工が施された状態にある。具体的には、ミーリングカッタによって本文Aの背面が断裁されて背面を揃えられ、ガリカッタによって当該背面に筋溝を入れられ、横糊付け機によって背面近傍の両脇に糊が塗布され、背糊付け機によって背面に糊が塗布された状態にある。また、プレス成形締機は、ラウンド経路Cにおいて表紙貼装置20より下流に配設されており、本文Aは表紙貼装置20により表紙Bが貼り合わされた後、のど部にあたる背部がプレス成形締機により表紙Bと共に締め付けられ、表紙Bが強固に貼り付けられる。
【0017】
センサ50は、所定の位置に設けられてクランパを検出することにより本文Aを検出するものであり、このようなセンサとしては、例えば順次搬送されるクランパに照射し表面反射した反射光を受けることにより、クランパを検出可能するフォトリフレクタを用いることができる。なお、センサ50はフォトリフレクタに限定するものではなく、クランパや本文Aの位置を検出可能なものであればどのようなものを用いてもよい。例えば、センサ50に代わりカメラを設け、カメラにより得られる撮像画像に基づいて、クランパや本文Aの位置を検出するようにしてもよい。
【0018】
制御部60は、本文搬送装置10、表紙貼装置20、加工ユニット40、センサ50の駆動制御を行うものであり、特に本実施の形態においてはセンサ50を用いた後述する調節駆動装置(図4の符号28参照)の調節回転駆動を行っている。このような制御部60としては、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等を有する情報処理装置が用いられ、これらハードウェアが協働することにより、上記の調節回転駆動を実現する。
【0019】
以下、上述した表紙貼装置20の構成について、図3図5を用いて詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態に係る表紙貼装置20は、矩形の立方体をなし、図3に示されるようにその上面の略中央に搬送方向Eに長い長方形の開口200aが形成されている。開口200a内には表紙Bが載置可能な載置台200bが形成されており、搬送チェーン202により搬送される表紙Bは、この載置台200b上を滑るように搬送される。載置台200bの下方には、平面視で載置台200bを挟むように2つの搬送チェーン202,202が配設されている。これら搬送チェーン202は、回転駆動可能な回転軸222に相対回転不能に固定された2つのスプロケット242,242と、回転駆動可能な回転軸224に相対回転不能に固定された2つのスプロケット244,244とに掛け渡されている。したがって、回転軸222の回転に応じて、搬送チェーン202はスプロケット242,244を経て搬送方向Eに沿った周回移動をすることができる。なお、図3中に示される符号202aは上述した搬送爪を示しており、載置台200bより上方に突出するよう搬送チェーン202に複数設けられている。
【0021】
また、表紙貼装置20は、回転軸222の搬送方向E下流側に回転駆動可能な回転軸226が配設されており、この回転軸226に相対回転不能に貼合わせローラ262が固定されている。貼合わせローラ262は、回転軸226の回転に伴い回転し、搬送チェーン202の搬送爪202aにて搬送方向Eへ押し出された表紙Bと接触すると共に搬送チェーン102により搬送された本文Aの背に対して表紙Bを貼り合わせるものである。なお、これを実現するために貼合わせローラ262は、載置台200bより上方に僅かに突出するような径を有することが好ましい。
【0022】
次に、表紙貼装置20の内部構成について説明する。
【0023】
図4に示されるように、表紙貼装置20は、上述した回転軸222,224,226、スプロケット242,244、および貼合わせローラ262の他に、回転駆動可能な回転軸228、複数のスプロケット246a~246c,248,250、複数の伝達チェーン204,206,208,210、および駆動モータ30から伝搬される一定の駆動力(回転トルク)を回転軸222に伝達すると共に、当該駆動力に基づく搬送チェーン202の搬送速度を必要に応じて増減可能に調節する調節駆動装置28を有している。
【0024】
回転軸228は、一端部にスプロケット246aが、他端部にスプロケット246bが相対回転不能に固定されており、これらのスプロケットの間であってスプロケット246b近傍にはスプロケット246cが同じく相対回転不能に固定されている。
【0025】
スプロケット246aには、図4では不図示の駆動モータ30に掛け渡され当該駆動モータ30の駆動力を伝達するための伝達チェーン204が掛け渡されており、したがって、駆動モータ30の駆動力を伝達チェーン204とスプロケット246aとを介して回転軸228に伝達することができる。
【0026】
スプロケット246cには、回転軸226に相対回転不能に固定されたスプロケット248と共に、伝達チェーン206が掛け渡されており、これにより回転軸228の回転がスプロケット246c、伝達チェーン206、およびスプロケット248を介して回転軸226に伝達され、貼合わせローラ262を回転駆動させることができる。
【0027】
スプロケット246bには、調節駆動装置28のスプロケット282と共に、伝達チェーン208が掛け渡されており、これにより回転軸228の回転がスプロケット246b、伝達チェーン208を介して調節駆動装置28に伝達される。
【0028】
また、回転軸222は、その端部に相対回転不能にスプロケット250が固定されており、このスプロケット250と調節駆動装置28のスプロケット284とに伝達チェーン210が掛け渡されて、これにより回転軸228の回転に応じた駆動力または調節駆動装置28により調節された駆動力が伝達チェーン210を介して回転軸222に伝達され、搬送チェーン202を周回移動させる。
【0029】
調節駆動装置28は、各種回転軸やスプロケットを介して伝達される駆動モータ30の駆動力を受けてこれを直接または必要に応じて増減して適切な駆動力を回転軸222に伝える調節回転駆動を行い、本文Aと表紙Bとの位置が一致するよう搬送チェーン202の周回移動速度を増減可能な差動装置である。調節駆動装置28は、スプロケット282に相対回転不能に固定された回転軸288の駆動力を増減するためのサーボモータ286を有しており、このサーボモータ286により調節回転駆動を実現している。
【0030】
例えば、調節駆動装置28を、遊星歯車機構を含む差動歯車装置として構成する場合は、サーボモータ286と太陽歯車とを回転を伝達可能に連結させ、回転軸288と遊星キャリアとを回転を伝達可能に連結させ、内歯車とスプロケット284とを回転を伝達可能に連結すればよい。この時、太陽歯車を固定状態とした際に、回転軸288の駆動力が増減されずに維持されてスプロケット284に伝達するようにギアを組むことが好ましい。なお、調節駆動装置28は遊星歯車機構を含む差動歯車装置に限定されるものではなく、回転軸288の駆動力が維持されてまたは増減されてスプロケット284に伝達可能なものであれば、どのような差動装置を用いてもよい。
【0031】
本実施の形態においては、調節駆動装置28のサーボモータ286は、信号線62を介して制御部60と電気的に接続されており、センサ50により検出された検出結果に基づいた制御部60の制御信号により適宜制御される。具体的には、制御部60は、センサ50によりクランパを検出する毎に時間を取得することでクランプ間の検出時間を取得し、予め設定された時間間隔で取得されたか否かを判定し、予め設定された時間間隔以上である場合には、本文搬送装置10の搬送チェーン102に伸びが生じていると判定する。伸びが生じていると判定した場合には、制御部60は、検出時間と搬送チェーン102の搬送速度とに基づく搬送チェーン102の伸び量(クランパと搬送爪202aとのズレ量)から、表紙貼装置20の搬送チェーン202の周回移動速度を算出し、これに基づいて調節駆動装置28のサーボモータ286におけるモータ軸の回転速度や回転数を調節する。
【0032】
例えばこのズレ量が1mmであるならば、搬送爪202aを1mm搬送方向の逆方向にずらす、即ち1mm分遅らせる必要がある。制御部60は、回転軸288からの駆動力を減少、つまり表紙Bの搬送速度を減速するために、例えばサーボモータ286によりスプロケット284の回転速度を減速させることにより、搬送チェーン202を減速させて周回移動させる。この時、サーボモータ286の駆動力は、搬送チェーン202にズレ量である1mm分の遅延が生じるよう、駆動モータ30から伝搬される駆動力が瞬間的に減じられ、これが回転軸222に伝達される。なお、搬送チェーン202の周回移動速度を減じる場合には、瞬間的に搬送チェーン202の周回移動を停止させてもよい。また、減少または増大させた周回移動速度で継続的に搬送チェーン202を周回移動させるようにしてもよい。
【0033】
このように、表紙貼装置20は搬送チェーン102に伸びが生じたとしても、当該伸びに応じて搬送チェーン202の周回移動速度を瞬間的にまたは継続的に増減して調節することができるため、本文Aと表紙Bとの位置ズレを抑制することができる。なお、本文Aと表紙Bとの一致は、完全一致、即ち本文Aの背部の天側または地側の際から表紙Bがはみ出さないことが好ましいが、多少のはみ出しを許容してある程度の誤差範囲を設けて本文Aと表紙Bとの位置を合わせるようにしてもよい。
【0034】
また、上述したズレ量の計算はこれに限定されるものではなく、センサ50による検出結果からズレ量を算出できるものであればどのような手法をとってもよい。また、ズレ量と周回移動速度との関係を規定したリストを予め用意し、制御部60が有するHDD等の不揮発性の記憶領域に格納しておくことが好ましい。
【0035】
また、調節駆動装置28は、上述したような調節回転駆動を停止可能なロック機構を有している。本実施形態においては、位置ズレが生じた場合、スプロケット282の回転と共に回転軸288が回転し、スプロケット284がスプロケット282と比較して高速にまたは減速して回転することにより調節回転駆動を実現している。一方で、ロック機構によれば回転軸288の駆動力を直接スプロケット284に伝達することができる。
【0036】
ロック機構についての一例を具体的に説明する。差動装置である調節駆動装置28は、サーボモータ286のモータ軸と連結されて一体回転するシャフトが内蔵され、当該シャフトが歯車等の回転部材(例えば太陽歯車)にサーボモータ286の回転を伝達可能に直接または間接的に連結するが、サーボモータ286が故障すると、そのモータ軸、延いてはシャフトが自由に回転可能な状態となる。そのため、回転軸288の駆動力(モータ30の駆動力)が間接的にシャフトに入力されて当該シャフトが回転してしまうことにより、スプロケット284に駆動力が伝達不能または大きく減少して伝達されることとなる。
【0037】
ロック機構によれば、このシャフトの回転を抑止することができるため、回転軸288の駆動力を直接スプロケット284に伝達することができる。したがって、サーボモータ286が故障してモータ軸が自由に回転可能な状態となった場合においても、ロック機構が働くことで無線綴機1の製本作業を停止することなく継続させることができるため、費用的に多大な損害が生じる製造ラインの停止を抑止することができる。ロック機構としては、サーボモータ286にモータ軸のロック機能、つまりサーボモータ286の故障時に自動、手動、または制御部60による制御でモータ軸が回転不能に固定される機能が備えられているのであれば、その機能を流用すればよく、ここでの構造の説明は省略する。
【0038】
一方、サーボモータ286としてロック機能を備えていないサーボモータを用いる場合、本実施形態に係るロック機構を実現するロック装置を用いることが好ましい。ロック装置は、シャフトに一体回転可能に連結する連結ピンと、当該連結ピンをシャフトのハウジング(例えば調節駆動装置28の筐体)に固定する固定具とから構成されている。ロック装置の使用方法は、先ず調節駆動装置28から故障したサーボモータ286を取り外し、シャフトにおけるサーボモータ286のモータ軸との連結部分に連結ピンを挿入して連結ピンとシャフトとを連結する。連結後、固定具の係合部を連結ピンの被係合部と係合させて固定具に対して連結ピンを相対回転不能とし、固定具をネジ等の締結具でシャフトのハウジングに対して固定する。以上により、調節駆動装置28のシャフトをハウジングに対して相対回転不能とすることができるため、回転軸288の駆動力はシャフトの回転に寄与されず、直接スプロケット284に伝達される。
【0039】
以上に説明した表紙貼装置20による本文Aに対する表紙Bの貼り合わせについて、図5を用いて簡単に説明する。なお、図5に示される104は上述したクランパを示しており、このクランパ104は固定クランプ板106と可動クランプ板108とを有し、両クランプ板で本文Aを挟持して不図示の弾性体によって両クランプ板を付勢することで締め付けている。また、本実施の形態においては、表紙貼装置20の上方にセンサ50が設けられている。
【0040】
表紙貼装置20は、図5(1)に示されるように、クランパ104に挟持された本文Aが上方に位置する状態において、その下方に表紙Bが位置するよう駆動制御される。この時、センサ50によりクランパ104が検出され、検出結果から位置ズレが生じていると判定された場合は、上述した調節回転駆動がなされて搬送チェーン202の周回移動速度が増減され、本文Aと表紙Bとの位置が調節される。その後、図5(2)に示されるように、表紙Bの端部が貼合わせローラ262に到達した状態において僅かに上方に押し上げられ、本文Aの糊が塗布されている背面の天または地側端部に当接すると共に貼合わせローラ262により本文Aに押し当てられる。これにより、図5(3)に示されるように、本文Aの背面に対して表紙Bを貼り合わせることができる。
【0041】
本実施の形態によれば、表紙貼装置20が駆動モータ30の駆動力を受け直接、または当該駆動力と比較して増減された駆動力を搬送チェーン202へ伝達可能な調節駆動装置28を有することにより、本文搬送装置10の搬送チェーン102に経年劣化による伸びが生じたとしても、この伸びを考慮して搬送チェーン202を周回移動させることができる。したがって、本文搬送装置10のクランパ104と表紙貼装置20の搬送爪202aとの位置ズレを抑制し、本文Aに対して表紙Bを精度良く貼り合わせることができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、調節駆動装置28が位置ズレを修正した後に駆動モータ30の駆動力を受け、これに基づき回転軸222を回転させると説明した。しかしながら、ロック機構によりロックが掛かっていない状態では、回転軸288の回転がスプロケット284に加わらないようにし、調節駆動装置28単体で回転軸222を回転させるようにしてもよい。
【0043】
また、搬送チェーン202の伸びを検出するセンサを新たに設けてもよい。この場合、例えば当該センサが順次搬送爪202aからの反射光を受けるようにし、制御部60がそれらの受光時間および搬送チェーン202の搬送速度から搬送チェーン202の伸び量を算出し、搬送チェーン202の伸びを考慮した回転運動を行うよう調節駆動装置28を制御する。このように本文搬送装置10および表紙貼装置20それぞれの搬送チェーンを複数のセンサにより検出するようにすれば、本文Aと表紙Bとの貼合わせ精度をより高めることができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、搬送チェーン102,202と共にスプロケットを用いたがこれに限定されるものではなく、搬送チェーンの代わりに環状のベルトを用い、スプロケットの代わりにプーリを用いるようにしてもよく、適宜これらを組み合わせるようにしてもよい。
【0045】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0046】
1 無線綴機
10 本文搬送装置
20 表紙貼装置
202 搬送チェーン(搬送体)
262 貼合わせローラ(貼合わせ部)
28 調節駆動装置(調節駆動部)
30 駆動モータ(駆動装置)
50 センサ(検出部)
60 制御部(調節駆動部)
A 本文
B 表紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6