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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073205
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】被処理物供給バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/314 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
F16K3/314 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184299
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】堀川 良基
【テーマコード(参考)】
3H053
【Fターム(参考)】
3H053AA02
3H053AA22
3H053BA24
3H053BD01
3H053BD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可動バルブ部材に装着される弾性リングの損傷を抑制する。
【解決手段】被処理物供給バルブは、前端部に被処理物の供給口1aを有し、供給口1aよりも後方側の位置に設けられた内周面の接続口1bに連通する接続部1cを有する筒状の固定バルブ部材1と、固定バルブ部材1の内周に軸方向に摺動可能に挿入され、前端部の外周にOリング2aが装着された可動バルブ部材2と、切替え操作部3とをで構成される。切替え操作部3の変位機構3Aは、軸部2Aの後端部に軸方向及び回転方向に相対移動不能に設けられた第一カム部材3aと、第一カム部材3aに対して相対回転可能に設けられた第二カム部材3bとを備え、第一カム部材3aと第二カム部材3bは、軸方向に相互に接触するカム面3a1、3b1を有し、第二カム部材3bの相対回転に伴うカム面3b1の回転方向への相対移動により、軸方向に互いに接近又は離反するように相対変位する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部に被処理物の供給口を有すると共に、前記供給口よりも後方側の位置に設けられた内周面の接続口に連通し、被処理物の供給源の側に接続される接続部を有する筒状の固定バルブ部材と、
前記固定バルブ部材の内周に軸方向に摺動可能に挿入されると共に、前端部の外周に弾性リングが装着され、前記弾性リングが前記接続口よりも前方側の位置で前記固定バルブ部材の内周面に圧接した状態で、前記供給口と前記接続口とを閉じるバルブ閉位置と、前記弾性リングが前記接続口よりも後方側の位置で前記固定バルブ部材の内周面に圧接した状態で、前記供給口と前記接続口とを開くバルブ開位置との間で軸方向に移動可能な可動バルブ部材と、
前記可動バルブ部材と伴に軸方向に移動可能な切替え操作部と、を備え、
前記可動バルブ部材は、軸部と、前記軸部の外周に装着された筒部とを備え、前記弾性リングは、前記軸部の前端部に設けられた鍔部と前記筒部の前端部に設けられた押圧面との間に介装され、前記軸部と前記筒部とは、前記弾性リングを前記鍔部と前記押圧面とで軸方向に圧縮して前記固定バルブ部材の内周面に圧接させる第一相対位置と、前記弾性リングの圧縮を解除する第二相対位置との間で軸方向に相対変位可能であり、
前記切替え操作部は、前記軸部と前記筒部とを、前記第一相対位置と前記第二相対位置との間で軸方向に相対変位させる変位機構を備え、前記バルブ閉位置と前記バルブ開位置では、前記変位機構により前記軸部と前記筒部とを前記第一相対位置に位置させ、前記可動バルブ部材を前記バルブ閉位置と前記バルブ開位置との間で軸方向に移動させる際は、前記変位機構により前記軸部と前記筒部とを前記第二相対位置に位置させた状態で、前記可動バルブ部材と伴に軸方向に移動することを特徴とする被処理物供給バルブ。
【請求項2】
前記変位機構は、前記軸部に軸方向及び回転方向に相対移動不能に設けられた第一カム部材と、前記第一カム部材に対して相対回転可能に設けられた第二カム部材とを備え、前記第一カム部材と前記第二カム部材は、軸方向に相互に接触するカム面を有し、前記第二カム部材の相対回転に伴い軸方向に互いに接近又は離反し、
前記切替え操作部は、前記第二カム部材の回転操作に供する操作部材を更に備えている請求項1に記載の被処理物供給バルブ。
【請求項3】
前記操作部材は、前記固定バルブ部材の外周に軸方向及び回転方向に相対移動可能に外挿された筒状部と、前記筒状部と前記第二カム部材に固定され、前記第一カム部材を含む前記軸部の後端部を収容するカバー部とを備えている請求項2に記載の被処理物供給バルブ。
【請求項4】
前記筒状部と前記固定バルブ部材との間に位置規制部が設けられており、前記位置規制部は、前記バルブ閉位置と前記バルブ開位置では、前記固定バルブ部材に対する前記切替え操作部の回転方向への相対移動を許容し、前記可動バルブ部材を前記バルブ閉位置と前記バルブ開位置との間で軸方向に移動させる際は、前記固定バルブ部材に対する前記切替え操作部の軸方向への相対移動を許容する請求項3に記載の被処理物供給バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、ファインケミカル、食品等の製造工程において、被処理物を処理装置に供給するために用いられる被処理物供給バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、被処理物の混合、分散、乳化、脱泡等の処理を行うために、特許文献1に記載されているような撹拌機が用いられている。図8に示すように、特許文献1に記載の撹拌機は、被処理物を収容する撹拌槽10と、攪拌槽10内の被処理物を攪拌する攪拌翼11と、撹拌槽10の底部10aに上下動可能に配置されたホモジナイザー12と、攪拌槽10の底部10aに接続された被処理物供給バルブ13とを主要な要素として構成される。撹拌槽10の底部10aと上部10bとの間に循環パイプ14が接続されている。同図に示す攪拌翼11は、駆動モータで回転駆動される回転翼11aと、固定翼11bとで構成される、いわゆるアンカーアジテーター型と呼ばれるものであるが、同図に示す攪拌翼11に代えて、門型、アンカー型、多翼型と呼ばれる各種の攪拌翼を配設する場合もある。ホモジナイザー12は、同心状に配設された歯状のステータとロータを有し、ロータの回転に伴うタービュランス効果により被処理物の吸い込み・押し出しを行い、その際の剪断作用により被処理物の混合、分散、乳化等を促進する。
【0003】
被処理物供給バルブ13は、撹拌槽10の底部10aと、図示されていない被処理物供給管とに接続され、被処理物供給管から攪拌槽10内に被処理物を供給する時に開位置に切替えられる。被処理物供給バルブ13による撹拌槽10内への被処理物供給は、攪拌処理を行う被処理物を最初に全量供給する場合、攪拌処理を行っている被処理物と同種の被処理物を追加供給する場合、攪拌処理を行っている被処理物に添加剤や安定剤といった種類の異なる被処理物を添加供給する場合等に行われる。
【0004】
図9は、被処理物供給バルブ13を示している。被処理物供給バルブ13は、攪拌槽10の底部10aに接続された円筒状の固定バルブ部材41と、固定バルブ部材41の内周に軸方向摺動自在に嵌挿された可動バルブ部材42と、可動バルブ部材42を軸方向に駆動するシリンダ43とで構成される。固定バルブ部材41の先端は底部10aに開口し(吐出口45)、また、この吐出口45の近くで接続部44が分岐している。この接続部44に、図示されていない被処理物供給管が接続される。図示は省略されているが、実際には可動バルブ部材42の先端部外周にOリング等の弾性リングが装着されており、弾性リングが固定バルブ部材41の内周面に圧接することにより、固定バルブ部材41の内周面と可動バルブ部材42の外周面との間の摺動隙間がシールされる。
【0005】
可動バルブ部材42が、図9(a)に示す前進位置にある時、固定バルブ部材41の接続部44の接続口及び吐出口45が可動バルブ部材42によって閉じられ、これによりバルブが閉じられる。一方、可動バルブ部材42が、図9(c)の後退位置に後退すると、固定バルブ部材41の接続部44の接続口及び吐出口45が開き、これによりバルブが開かれる。
【0006】
被処理物供給バルブ13から攪拌槽10内に被処理物を供給する時、ホモジナイザー12は下降位置にある。図9(c)に示すように、可動バルブ部材42を後退させて、被処理物供給バルブ13を開位置に切替えると、被処理物供給管から被処理物供給バルブ13を介して攪拌槽10内に被処理物が供給される。供給された被処理物は攪拌槽10内の被処理物と伴にホモジナイザー12に吸い込まれ、循環パイプ14を介して攪拌槽10の上部19bに戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001―300280号公報(図8図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被処理物供給バルブ13の開閉切替え動作時、可動バルブ部材42の先端部外周に装着された弾性リングは、可動バルブ部材42の進退移動に伴い、固定バルブ部材41の内周面に圧接しながら、固定バルブ部材41の接続部44の接続口の領域を通過する。その際、弾性リングの一部が接続口の開口縁部と強く接触することにより、弾性リングに損傷が生じ易い。また、可動バルブ部材42の進退移動時、固定バルブ部材41の内周面と可動バルブ部材42の外周面との間の摺動隙間に入り込んだ被処理物の固形分が、固定バルブ部材41の内周面と弾性リングとの間に噛み込まれると、弾性リングの損傷が進行し易くなる。
【0009】
本発明の課題は、可動バルブ部材に装着される弾性リングの損傷を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、前端部に被処理物の供給口を有すると共に、前記供給口よりも後方側の位置に設けられた内周面の接続口に連通し、被処理物の供給源の側に接続される接続部を有する筒状の固定バルブ部材と、前記固定バルブ部材の内周に軸方向に摺動可能に挿入されると共に、前端部の外周に弾性リングが装着され、前記弾性リングが前記接続口よりも前方側の位置で前記固定バルブ部材の内周面に圧接した状態で、前記供給口と前記接続口とを閉じるバルブ閉位置と、前記弾性リングが前記接続口よりも後方側の位置で前記固定バルブ部材の内周面に圧接した状態で、前記供給口と前記接続口とを開くバルブ開位置との間で軸方向に移動可能な可動バルブ部材と、前記可動バルブ部材と伴に軸方向に移動可能な切替え操作部と、を備え、前記可動バルブ部材は、軸部と、前記軸部の外周に装着された筒部とを備え、前記弾性リングは、前記軸部の前端部に設けられた鍔部と前記筒部の前端部に設けられた押圧面との間に介装され、前記軸部と前記筒部とは、前記弾性リングを前記鍔部と前記押圧面とで軸方向に圧縮して前記固定バルブ部材の内周面に圧接させる第一相対位置と、前記弾性リングの圧縮を解除する第二相対位置との間で軸方向に相対変位可能であり、前記切替え操作部は、前記軸部と前記筒部とを、前記第一相対位置と前記第二相対位置との間で軸方向に相対変位させる変位機構を備え、前記バルブ閉位置と前記バルブ開位置では、前記変位機構により前記軸部と前記筒部とを前記第一相対位置に位置させ、前記可動バルブ部材を前記バルブ閉位置と前記バルブ開位置との間で軸方向に移動させる際は、前記変位機構により前記軸部と前記筒部とを前記第二相対位置に位置させた状態で、前記可動バルブ部材と伴に軸方向に移動することを特徴とする被処理物供給バルブを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性リングを装着した可動バルブ部材をバルブ閉位置とバルブ開位置との間で軸方向に移動させる際、切替え操作部により、弾性リングの圧縮を解除して、固定バルブ部材の内周面への圧接を解除するので、弾性リングの損傷を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の被処理物供給バルブは、弾性リングの圧縮・圧縮解除と可動バルブ部材の軸方向移動を切替え操作部の操作により行うことができるので、操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る被処理物供給バルブの軸線Xに沿った縦断面図である。
図2】被処理物供給バルブの縦断面を図1のA-A方向から見た縦断面図である。
図3】固定バルブ部材を構成する前方側の筒状ホルダを前方側斜め上方から見た斜視図{図3(a)}、後方側斜め上方から見た斜視図{図3(b)}である。
図4】可動バルブ部材がバルブ閉位置に在り、弾性リングが軸方向に圧縮されて、接続口よりも前方側の位置で固定バルブ部材の内周面に圧接した状態を示す縦断面図{図4(a)}、位置規制部を図4(a)のB-B方向から見た横断面図{図4(b)}である。
図5図4に示す状態から、切替え操作部によりOリングの圧縮を解除した状態を示す縦断面図{図5(a)}、位置規制部を図5(a)のB-B方向から見た横断面図{図5(b)}である。
図6図5に示す状態で、可動バルブ部材を切替え操作部と伴にバルブ閉位置まで後方側に移動させた状態を示す縦断面図{図6(a)}、位置規制部を図6(a)のC-C方向から見た横断面図{図6(b)}である。
図7図6に示す状態から、切替え操作部によりOリングを軸方向に圧縮して、接続口よりも後方側の位置で固定バルブ部材の内周面に圧接させた状態を示す縦断面図{図7(a)}、位置規制部を図7(a)のC-C方向から見た横断面図{図7(b)}である。
図8】従来の被処理物供給バルブを備えた攪拌機を示す図である。
図9】従来の被処理物供給バルブの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、この実施形態の被処理物供給バルブの軸線Xに沿った縦断面を示し、図2は、図1の縦断面と直交する縦断面(図1のA-A方向から見た縦断面)を示している。図1及び図2において、軸線Xに沿った方向を軸方向、軸方向の左側を前方側、右側を後方側とする。
【0016】
この実施形態の被処理物供給バルブは、前端部に被処理物の供給口1aを有すると共に、供給口1aよりも後方側の位置に設けられた内周面の接続口1bに連通する接続部1cを有する筒状の固定バルブ部材1と、固定バルブ部材1の内周に軸方向に摺動可能に挿入され、前端部の外周に弾性リング、例えばOリング2aが装着された可動バルブ部材2と、切替え操作部3とを主要な要素として構成される。この実施形態の被処理物供給バルブは、例えば、図8に示すような攪拌機の攪拌槽10に被処理物を供給するために用いられ、固定バルブ部材1の供給口1aは攪拌槽10の底部に接続され、接続部1cは図示されていない被処理物の供給源の側に接続される。被処理物供給バルブが供給する被処理物は、液体(溶媒又は分散媒等)、粉体(原料粉体や添加剤粉末等)、または、液体と粉体の混合物等である。
【0017】
この実施形態において、固定バルブ部材1は、前方側の筒状ホルダ1Aと、筒状ホルダ1Aの後端部に固定ボルト1d等の適宜の固定手段で固定された後方側の筒状ホルダ1Bとで構成される。上記の供給口1a、接続口1b及び接続部1cは、筒状ホルダ1Aに設けられる。筒状ホルダ1Bの後端側の内周には、キー1eが相対回転不能に装着され、筒状ホルダ1Bの後端部に装着された押さえプレート1fと固定ボルト1gにより軸方向に相対移動不能に締結される。
【0018】
可動バルブ部材2は、軸部2Aと、軸部2Aの外周に軸方向に相対変位可能に装着された筒部2Bとで構成される。Oリング2aは、軸部2Aの前端部に設けられた鍔部2bと筒部2Bの前端部に設けられた押圧面2cとの間に介装される。軸部2Aと筒部2Bとは、Oリング2aを鍔部2bと押圧面2cとで軸方向に圧縮して固定バルブ部材1(筒状ホルダ1A)の内周面に圧接させる第一相対位置と、Oリング2aの圧縮を解除する第二相対位置との間で、軸方向に相対変位可能である。
【0019】
図2に示すように、軸部2Aの外周には、筒状ホルダ1Bのキー1eと嵌合するキー溝2dが設けられ、筒部2Bには、筒状ホルダ1Bのキー1eと嵌合するキー孔2eが設けられる。キー溝2d2とキー孔2eは半径方向に相対向し、筒状ホルダ1Bのキー1eとキー溝2d及びキー孔2eとが嵌合することにより、固定バルブ部材1(筒状ホルダ1A及び筒状ホルダ1B)に対する可動バルブ部材2(軸部2A及び筒部2B)の相対回転が阻止される。一方、キー溝2d及びキー孔2eの軸方向寸法はキー1eの軸方向寸法よりも大きく、可動バルブ部材2は、キー溝2d又はキー孔2eの軸方向端部がキー1eの軸方向端面に当接する位置まで、固定バルブ部材1に対して軸方向に相対移動可能である。
【0020】
図1及び図2は、キー溝2d又はキー孔2eの後端部(図2に示す例ではキー孔2eの後端部)がキー1eの後端面に当接する位置まで、可動バルブ部材2が固定バルブ部材1に対して前方側に最大限移動した状態を示している。このときの可動バルブ部材2の軸方向位置を「バルブ閉位置」という。バルブ閉位置では、軸部2Aと筒部2Bとが上記の第一相対位置に在り、Oリング2aは鍔部2bと押圧面2cとで軸方向に圧縮され、外径方向に拡張して、接続口1bよりも前方側の位置で固定バルブ部材1(筒状ホルダ1A)の内周面に圧接する。これにより、固定バルブ部材1の供給口1aと接続口1bが可動バルブ部材2により閉じられる。一方、可動バルブ部材2は、キー溝2d又はキー孔2eの前端部がキー1eの前端面に当接する位置まで、固定バルブ部材1に対して後方側に最大限移動することができる。このときの可動バルブ部材2の軸方向位置を「バルブ開位置」という。バルブ開位置では、軸部2Aと筒部2Bとが上述した第一相対位置に在り、Oリング2aは鍔部2bと押圧面2cとで軸方向に圧縮され、外径方向に拡張して、接続口1bよりも後方側の位置で固定バルブ部材1(筒状ホルダ1A)の内周面に圧接する。これにより、固定バルブ部材1の供給口1aと接続口1bが可動バルブ部材2により開かれる。このように、可動バルブ部材2は、バルブ閉位置とバルブ開位置との間で、固定バルブ部材1に対して軸方向に移動可能である。可動バルブ部材2が軸方向に移動する際、軸部2Aと筒部2Bとは、切替え操作部3の操作により、上記の第二相対位置に変位して、鍔部2bと押圧面2cによるOリング2aの圧縮を解除する。切替え操作部3は、軸部2Aと筒部2Bとを上記の第二相対位置に変位させた状態で、可動バルブ部材2と伴に軸方向に移動可能である。
【0021】
図2に示すように、切替え操作部3は、軸部2Aと筒部2Bとを、上記の第一相対位置と第二相対位置との間で軸方向に相対変位させる変位機構3Aを備えている。この実施形態において、変位機構3Aは、軸部2Aの後端部に軸方向及び回転方向に相対移動不能に設けられた第一カム部材3aと、第一カム部材3aに対して相対回転可能に設けられた第二カム部材3bとを備えている。第一カム部材3aと第二カム部材3bは、軸方向に相互に接触するカム面3a1、3b1を有し、第二カム部材3bの相対回転に伴うカム面3b1の回転方向への相対移動により、軸方向に互いに接近又は離反するように相対変位する。第二カム部材3bの回転操作は、切替え操作部3の操作部材3Bにより行う。
【0022】
第一カム部材3aは、軸部2Aの後端部にキー3cを介して相対回転不能に装着され、軸部2Aの後端部に装着された座金3d(平座金とばね座金)及びナット3eにより軸方向に相対移動不能に締結される。第二カム部材3bは、軸部2Aと筒部2Bの後端部に相対回転可能に装着され、筒部2Bの後端部に当接する。
【0023】
操作部材3Bは、固定バルブ部材1(筒状ホルダ1B)の外周にブッシュ3fを介して軸方向及び回転方向に相対移動可能に外挿された筒状部3B1と、筒状部3B1の後端部に固定されたカバー部3B2とを備えている。カバー部3B2は、前端部にフランジを有する有底円筒状に形成され、フランジの前端面が第二カム部材3bの後端部と筒状部3B1の後端部に当接した状態で、ボルト3g、ボルト3h等の適宜の固定手段で第二カム部材3bと筒状部3B1に固定される。第一カム部材3aを含む軸部2Aの後端部は、カバー部3B2の内部に収容される。また、カバー部3B2の内部には、第一カム部材3aを常時前方側に付勢する弾性部材3iが配置される。弾性部材3iの弾性力により、軸部2A及び第一カム部材3aは常時前方側に付勢される。
【0024】
また、筒状部3B1と固定バルブ部材1(筒状ホルダ1B)との間に位置規制部4が設けられている。位置規制部4は、可動バルブ部材2のバルブ閉位置とバルブ開位置では、固定バルブ部材1に対する切替え操作部3の回転方向への相対移動を許容し、可動バルブ部材2をバルブ閉位置とバルブ開位置との間で軸方向に移動させる際は、固定バルブ部材1に対する切替え操作部3の軸方向への相対移動を許容する。この実施形態において、位置規制部4は、筒状部3B1に設けられた凸部、例えば、筒状部3B1に固定されたピン4Aと、筒状ホルダ1Bに設けられ、ピン4Aの回転方向と軸方向への移動を案内する凹部、例えば、筒状ホルダ1Bの外周部に設けられた凹溝4Bとで構成される。ピン4Aは、筒状ホルダ1Bにネジ固定され、その先端部に装着されたブッシュ4aで凹溝4B内を摺動する。筒状ホルダ1Bの凹溝4Bは、図3に示すように、軸方向に離隔した2位置でそれぞれ回転方向に延びる2本の回転方向溝4B1、4B2と、前方側の回転方向溝4B1と後方側の回転方向溝4B2の一端部同士を軸方向に繋ぐ1本の軸方向溝4B3とで構成される。回転方向溝4B1、4B2の軸方向位置は、それぞれ、可動バルブ部材2のバルブ閉位置とバルブ開位置に対応する。また、回転方向溝4B1、4B2の回転方向長さは、それぞれ、バルブ閉位置とバルブ開位置において、軸部2Aと筒部2Bとを、上記の第一相対位置と第二相対位置との間で軸方向に相対変位させる際の、切替え操作部3の回転方向移動量に対応する。また、軸方向溝4B3の軸方向長さは、可動バルブ部材2をバルブ閉位置とバルブ開位置との間で軸方向に移動させる際の、切替え操作部3の軸方向移動量に対応する。尚、位置規制部4は、筒状ホルダ1Bにピン4Aのような凸部を設け、筒状部3B1に凹溝4Bのような凹部を設けることによって構成してもよい。
【0025】
つぎに、図4図7を参照しながら、この実施形態の被処理物供給バルブの動作について説明する。
【0026】
図4は、被処理物供給バルブが閉じている状態を示している。可動バルブ部材2は、固定バルブ部材1に対して前方側に最大限移動した位置、すなわち、バルブ閉位置に在る{図4(a)}。また、切替え操作部3は、筒状部3B1のピン4Aが、筒状ホルダ1Bの凹溝4Bにおける前方側の回転方向溝4B1の他端部に当接した位置に在る{図4(b)}。ピン4Aと回転方向溝4B1との嵌合により、可動バルブ部材2の固定バルブ部材1に対する軸方向への相対移動が切替え操作部3を介して規制される。これにより、可動バルブ部材2がバルブ閉位置に保持される。また、切替え操作部3が、固定バルブ部材1に対して図4(b)に示す回転方向位置に在ることにより、第一カム部材3aのカム面3a1が第二カム部材3bのカム面3b1によって後方側に押圧され、第一カム部材3a及び軸部2Aが弾性部材3iの弾性力に抗して後方側に所定量だけ相対変位して、軸部2Aと筒部2Bとが上記の第一相対位置に保持される。これにより、Oリング2aは鍔部2bと押圧面2cとで軸方向に圧縮され、外径方向に拡張して、接続口1bよりも前方側の位置で固定バルブ部材1の内周面に圧接する。
【0027】
図4に示す状態から、操作部材3Bを手動で回転操作して、図5(b)に示すように、筒状部3B1のピン4Aが、筒状ホルダ1Bの凹溝4Bにおける前方側の回転方向溝4B1の一端部に当接する位置まで、切替え操作部3を固定バルブ部材1に対して回転方向の一方向{図5(b)の矢印方向}に相対回転させると、図5(a)に示す状態に切替わる。すなわち、切替え操作部3を固定バルブ部材1に対して上記の位置まで相対回転させると、操作部材3Bの回転に伴い、第二カム部材3bが第一カム部材3aに対して上記の方向に相対回転する。そして、第二カム部材3bの相対回転に伴い、第一カム部材3a及び軸部2Aが弾性部材3iに付勢されて前方側に所定量だけ相対変位して、軸部2Aと筒部2Bとが上記の第二相対位置に保持される。これにより、Oリング2aは鍔部2bと押圧面2cによる圧縮が解除され、内径方向に縮小して、固定バルブ部材1の内周面への圧接が解除される。
【0028】
図5に示す状態で、操作部材3Bを手動で操作して、切替え操作部3を後方側に移動させると、可動バルブ部材2が切替え操作部3に伴って後方側に移動する。図6(a)に示すように、切替え操作部3は、ピン4Aが回転方向溝4B1の一端部から軸方向溝4B3に沿って移動して、後方側の回転方向溝4B2の一端部に当接する位置まで、後方側に移動し、可動バルブ部材2は、切替え操作部3に伴って、接続口1bが開く位置まで、後方側に移動する。この移動後の切替え操作部3の軸方向位置が、可動バルブ部材2のバルブ開位置、すなわち、可動バルブ部材2が固定バルブ部材1に対して後方側に最大限移動する位置を規定する。
【0029】
図6に示す状態から、操作部材3Bを手動で回転操作して、図7(b)に示すように、ピン4Aが回転方向溝4B2の他端部に当接する位置まで、切替え操作部3を固定バルブ部材1に対して回転方向の他方向{図7(b)の矢印方向}に相対回転させると、図7(a)に示す状態に切替わる。すなわち、切替え操作部3を固定バルブ部材1に対して上記の位置まで相対回転させると、操作部材3Bの回転に伴い、第二カム部材3bが第一カム部材3aに対して上記の方向に相対回転する。そして、第二カム部材3bの相対回転に伴い、第一カム部材3a及び軸部2Aが弾性部材3iに抗して後方側に所定量だけ相対変位して、軸部2Aと筒部2Bとが上記の第一相対位置に保持される。これにより、Oリング2aは鍔部2bと押圧面2cとで軸方向に圧縮され、外径方向に拡張して、接続口1bよりも後方側の位置で固定バルブ部材1の内周面に圧接する。
【0030】
また、図7に示す状態から、操作部材3Bを手動で回転操作して、ピン4Aが回転方向溝4B2の一端部に当接する位置まで、切替え操作部3を固定バルブ部材1に対して回転方向の一方向{図7(b)の矢印方向と反対方向}に相対回転させると、図6に示す状態に戻り、鍔部2bと押圧面2cによるOリング2aの圧縮が解除される。そして、図6に示す状態で、操作部材3Bを手動で操作して、ピン4Aが回転方向溝4B2の一端部から軸方向溝4B3に沿って移動して、前方側の回転方向溝4B1の一端部に当接する位置まで、切替え操作部3を可動バルブ部材2と伴に前方側に移動させると、図5に示す状態に戻る。そして、図5に示す状態から、操作部材3Bを手動で回転操作して、筒状部3B1のピン4Aが回転方向溝4B1の他端部に当接する位置まで、切替え操作部3を固定バルブ部材1に対して回転方向の他方向{図5(b)の矢印方向と反対方向}に相対回転させると、図4に示す状態に戻り、Oリング2aが鍔部2bと押圧面2cにより軸方向に圧縮されて、固定バルブ材1の内周に圧接する。
【0031】
上記のように、この実施形態の被処理物供給バルブは、可動バルブ部材2をバルブ閉位置とバルブ開位置との間で軸方向に移動させる際、切替え操作部3により、Oリング2aの圧縮を解除して、固定バルブ部材1の内周面への圧接を解除するので、Oリング2aの損傷が抑制され、従来の被処理物供給バルブに比べて高い耐久性を有する。また、Oリング2aの圧縮・圧縮解除と可動バルブ部材2の軸方向移動を切替え操作部3の操作により行うことができるので、操作が容易である。
【0032】
尚、上記の実施形態では、切替え操作部3の操作を手動で行う構成にしているが、切替え操作部3の操作部材3Bにロータリーアクチュエータとリニアアクチュエータ等の駆動機器を取り付けて、切替え操作部3の回転及び軸方向移動操作を自動で行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 固定バルブ部材
1a 供給口
1b 接続口
1c 接続部
2 可動バルブ部材
2A 軸部
2a Oリング(弾性リング)
2b 鍔部
2B 筒部
2c 押圧面
3 切替え操作部
3A 変位機構
3a 第一カム部材
3a1 カム面
3b 第二カム部材
3b1 カム面
3B 操作部材
3B1 筒状部
3B2 カバー部
4 位置規制部
4A ピン
4B 凹溝
4B1 回転方向溝
4B2 回転方向溝
4B3 軸方向溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9