(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073211
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240522BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240522BHJP
【FI】
B01D53/14 220
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184306
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】591158324
【氏名又は名称】大阪ガスリキッド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】矢田 潔
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】池田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴谷 徹也
(72)【発明者】
【氏名】井上 典士
【テーマコード(参考)】
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB08
4D020CC09
4D020CC10
4D020CC21
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB06
4D020DB20
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC08
4G146JC20
4G146JC28
(57)【要約】
【課題】吸収塔に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変化しても、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量を一定にすることができる二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】吸収塔2から前記再生塔3に供給するリッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出部35の検出濃度が基準濃度のときには吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、検出濃度が基準濃度よりも高くなるほど目標供給量を基準供給量よりも低く設定する形態で目標供給量を設定する吸収液供給量制御部Jと、再生塔3の液溜り部6の吸収液温度を検出する温度検出部36の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように再生加熱部Bに供給する加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量制御部Kと、が備えられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有する被処理ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを接触させて前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記吸収液に吸収させてリッチ吸収液を生成し、かつ、前記吸収液に吸収されないガスをオフガスとして排出する吸収塔と、
底部の液溜り部に貯留された前記リッチ吸収液を加熱して二酸化炭素を分離させて前記リッチ吸収液をリーン吸収液に再生し、且つ、分離した二酸化炭素を放出する再生塔と、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ側供給ポンプを備えたリッチ吸収液供給路と、
前記リーン吸収液を前記再生塔から前記吸収塔に供給するリーン側供給ポンプを備えたリーン吸収液供給路と、
前記被処理ガスを前記吸収塔に供給する被処理ガス供給部と、
前記液溜り部から取り出した前記吸収液を加熱用蒸気にて加熱して前記再生塔に戻す再生加熱部と、が備えられた二酸化炭素回収装置であって、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ吸収液供給量を調整する吸収液供給量調整部と、前記吸収塔から前記再生塔に供給する前記リッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の検出濃度が基準濃度のときには前記リッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、前記検出濃度が前記基準濃度よりも高くなるほど前記目標供給量を前記基準供給量よりも低く設定する形態で前記目標供給量を設定して、前記吸収液供給量調整部により前記リッチ吸収液供給量を前記目標供給量に調整する吸収液供給量制御部と、
前記液溜り部の吸収液温度を検出する温度検出部と、前記再生加熱部に供給する加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量調整部と、前記温度検出部の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように前記蒸気供給量調整部により加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量制御部と、が備えられている二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記吸収液供給量調整部として、前記リッチ側供給ポンプが前記リッチ吸収液供給量を調整するように構成され、
前記吸収液供給量制御部が、前記リッチ側供給ポンプの作動を制御する請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記吸収液供給量調整部として、前記リッチ吸収液供給路から前記リーン吸収液供給路にバイパス路を通して前記リッチ吸収液を流動させるバイパス量を調整するバイパス量調整部が設けられ、
前記吸収液供給量制御部が、前記バイパス量調整部の作動を制御する請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記再生塔から放出される二酸化炭素の放出量を検出する放出量検出部が設けられ、
前記吸収液供給量制御部が、前記放出量検出部にて検出される検出放出量が前記再生塔から放出される二酸化炭素の目標放出量よりも多いときには、前記目標供給量を減少側に補正し、且つ、前記検出放出量が前記目標放出量よりも少ないときには、前記目標供給量を増加側に補正する請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記被処理ガス供給部から供給される前記被処理ガスの流量と前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度とのうちの少なくとも一方を検出する被処理ガス検出部が設けられ、
前記吸収液供給量制御部が、前記被処理ガス検出部の検出情報に基づいて、前記目標供給量を補正する請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
二酸化炭素を含有する被処理ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを接触させて前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記吸収液に吸収させてリッチ吸収液を生成し、かつ、前記吸収液に吸収されないガスをオフガスとして排出する吸収塔と、
底部の液溜り部に貯留された前記リッチ吸収液を加熱して二酸化炭素を分離させて前記リッチ吸収液をリーン吸収液に再生し、且つ、分離した二酸化炭素を放出する再生塔と、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ側供給ポンプを備えたリッチ吸収液供給路と、
前記リーン吸収液を前記再生塔から前記吸収塔に供給するリーン側供給ポンプを備えたリーン吸収液供給路と、
前記被処理ガスを前記吸収塔に供給する被処理ガス供給部と、
前記液溜り部から取り出した前記吸収液を加熱用蒸気にて加熱して前記再生塔に戻す再生加熱部と、が備えられた二酸化炭素回収装置の運転方法であって、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ吸収液供給量を調整する吸収液供給量調整部と、前記吸収塔から前記再生塔に供給する前記リッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出部とが備えられ、
前記濃度検出部の検出濃度が基準濃度のときには前記リッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、前記検出濃度が前記基準濃度よりも高くなるほど前記目標供給量を前記基準供給量よりも低く設定する形態で前記目標供給量を設定して、前記吸収液供給量調整部により前記リッチ吸収液供給量を前記目標供給量に調整し、
前記液溜り部の吸収液温度を検出する温度検出部と、前記再生加熱部に供給する加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量調整部とが備えられ、
前記温度検出部の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように前記蒸気供給量調整部により加熱用蒸気の供給量を調整する二酸化炭素回収装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する被処理ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを接触させて前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記吸収液に吸収させてリッチ吸収液を生成し、かつ、前記吸収液に吸収されないガスをオフガスとして排出する吸収塔と、
前記リッチ吸収液から二酸化炭素を分離させて前記リッチ吸収液をリーン吸収液に再生し、且つ、分離した二酸化炭素を放出する再生塔と、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ側供給ポンプを備えたリッチ吸収液供給路と、
前記リーン吸収液を前記再生塔から前記吸収塔に供給するリーン側供給ポンプを備えたリーン吸収液供給路と、
前記被処理ガスを前記吸収塔に供給する被処理ガス供給部と、
前記再生塔の底部の液溜り部から取り出した前記吸収液を加熱用蒸気にて加熱して前記再生塔に戻す再生加熱部と、が備えられた二酸化炭素回収装置、及び、二酸化炭素回収装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素回収装置は、各種の設備から排出される排ガスなどの被処理ガスに含まれる二酸化炭素を回収する装置であり、回収された二酸化炭素を原料とする別の製造設備(例えば、液化炭酸ガス製造設備)に供給することになる。
【0003】
かかる二酸化炭素回収装置の従来例として、吸収塔に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度に基づいて求められる被処理ガス中のCO2流量を、複数の流量範囲に区分し、区分した複数の流量範囲に対応して予め設定した負荷設定値に基づいて、吸収塔に供給するリーン吸収液の流量を調整し、かつ、再生加熱部に供給する加熱用蒸気の流量を調整するものがある(例えば、特許文献1参照)。
ちなみに、予め設定した負荷設定値とは、複数の流量範囲に応じて予め設定したリーン吸収液の流量及び加熱用蒸気の流量である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の二酸化炭素回収装置は、吸収塔に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度の変動に伴って、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量が大きく変動することになる。したがって、放出される二酸化炭素を回収して別の製造設備に供給する場合には、その供給量が大きく変動することになる。
【0006】
しかしながら、回収した二酸化炭素を別の製造設備に供給する場合に、その供給量の一定化を図る必要があることに起因して、再生塔から放出される二酸化炭素の放出(回収)を任意の量で一定化を図ることが望まれる場合があり、このような場合には、従来の二酸化炭素回収装置は経済性が悪い不都合があった。
【0007】
つまり、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量(回収量)が大きく変動しても、別の製造設備に供給する供給量を一定にするには、再生塔から放出される二酸化炭素を貯留する大型のバッファタンクを設けて、当該バッファタンクから一定量の二酸化炭素を供給する構成や、再生塔から放出される二酸化炭素のうちの一部だけを一定量の二酸化炭素として供給し、余剰分を大気放散する構成が考えられる。
しかしながら、バッファタンクを設ける構成は、初期の設備投資額が高価となる不都合があり、また、余剰分を大気放散する構成は、再生加熱部に供給する加熱用蒸気を無駄に消費する等、処理コストが高価になる不都合があった。
【0008】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、吸収塔に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動しても、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量の一定化を図ることができる二酸化炭素回収装置の提供、及び、当該二酸化炭素回収装置の運転方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を含有する被処理ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを接触させて前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記吸収液に吸収させてリッチ吸収液を生成し、かつ、前記吸収液に吸収されないガスをオフガスとして排出する吸収塔と、
前記リッチ吸収液から二酸化炭素を分離させて前記リッチ吸収液をリーン吸収液に再生し、且つ、分離した二酸化炭素を放出する再生塔と、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ側供給ポンプを備えたリッチ吸収液供給路と、
前記リーン吸収液を前記再生塔から前記吸収塔に供給するリーン側供給ポンプを備えたリーン吸収液供給路と、
前記被処理ガスを前記吸収塔に供給する被処理ガス供給部と、
前記再生塔の底部の液溜り部から取り出した前記吸収液を加熱用蒸気にて加熱して前記再生塔に戻す再生加熱部と、が備えられたものであって、その特徴構成は、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ吸収液供給量を調整する吸収液供給量調整部と、前記吸収塔から前記再生塔に供給する前記リッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の検出濃度が基準濃度のときには前記リッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、前記検出濃度が前記基準濃度よりも高くなるほど前記目標供給量を前記基準供給量よりも低く設定する形態で前記目標供給量を設定して、前記吸収液供給量調整部により前記リッチ吸収液供給量を前記目標供給量に調整する吸収液供給量制御部と、
前記液溜り部の吸収液温度を検出する温度検出部と、前記再生加熱部に供給する加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量調整部と、前記温度検出部の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように前記蒸気供給量調整部により前記加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量制御部と、が備えられている点にある。
【0010】
本発明の二酸化炭素回収装置の運転方法は、二酸化炭素を含有する被処理ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを接触させて前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記吸収液に吸収させてリッチ吸収液を生成し、かつ、前記吸収液に吸収されないガスをオフガスとして排出する吸収塔と、
前記リッチ吸収液から二酸化炭素を分離させて前記リッチ吸収液をリーン吸収液に再生し、且つ、分離した二酸化炭素を放出する再生塔と、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ側供給ポンプを備えたリッチ吸収液供給路と、
前記リーン吸収液を前記再生塔から前記吸収塔に供給するリーン側供給ポンプを備えたリーン吸収液供給路と、
前記被処理ガスを前記吸収塔に供給する被処理ガス供給部と、
前記再生塔の底部の液溜り部から取り出した前記吸収液を加熱用蒸気にて加熱して前記再生塔に戻す再生加熱部と、が備えられた二酸化炭素回収装置の運転方法であって、
前記リッチ吸収液を前記吸収塔から前記再生塔に供給するリッチ吸収液供給量を調整する吸収液供給量調整部と、前記吸収塔から前記再生塔に供給する前記リッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出部とが備えられ、
前記濃度検出部の検出濃度が基準濃度のときには前記リッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、前記検出濃度が前記基準濃度よりも高くなるほど前記目標供給量を前記基準供給量よりも低く設定する形態で前記目標供給量を設定して、前記吸収液供給量調整部により前記リッチ吸収液供給量を前記目標供給量に調整し、
前記液溜り部の吸収液温度を検出する温度検出部と、前記再生加熱部に供給する加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量調整部とが備えられ、
前記温度検出部の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように前記蒸気供給量調整部により前記加熱用蒸気の供給量を調整する点にある。
【0011】
すなわち、吸収塔に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動しても、必ず、再生塔から放出(回収)できる放出量(回収量)は、吸収塔に供給される被処理ガスの流量が変動する範囲の最低流量であり、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動する範囲の最低濃度である場合の放出量(回収量)である。
【0012】
この点に鑑みて、当該の場合に対応させて、吸収塔から再生塔に供給するリッチ吸収液の供給量の基準供給量を、予め、実験等により設定する。また、再生塔の液溜り部における吸収液温度についての基準温度を、使用する吸収液に応じて設定する。
【0013】
そして、吸収塔から再生塔に供給するリッチ吸収液供給量については、吸収液供給量制御部が、リッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出部の検出濃度が基準濃度のときにはリッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、検出濃度が基準濃度よりも高くなるほど目標供給量を基準供給量よりも低く設定する形態で目標供給量を設定して、吸収液供給量調整部によりリッチ吸収液供給量を目標供給量に調整する。
【0014】
また、再生塔の液溜り部における吸収液温度については、蒸気供給量制御部が、液溜り部の吸収液温度を検出する温度検出部の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように蒸気供給量調整部により加熱用蒸気の供給量を調整する。
【0015】
従って、吸収液供給量制御部が、吸収塔から再生塔に供給するリッチ吸収液の供給量を調整し、かつ、蒸気供給量制御部が、再生加熱部に供給する加熱用蒸気の供給量を調整することにより、吸収塔に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変化しても、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量の一定化を図ることができる。
【0016】
ちなみに、吸収塔に供給される被処理ガスの流量が変動する範囲の最低流量よりも多い場合や、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動する範囲の最低濃度よりも高い場合には、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の一部が、吸収液に吸収されないオフガスとして吸収塔から排出されることになる。
このように、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の一部がオフガスとして排出されることになるものの、再生加熱部に供給する加熱用蒸気の供給量は、吸収塔に供給される被処理ガスの流量が変動する範囲の最低流量であり、かつ、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動する範囲の最低濃度である場合に対応する供給量と同程度となる状態を維持するから、加熱用蒸気の無駄な消費を抑制できることになる。
【0017】
要するに、本発明の二酸化炭素回収装置の特徴構成及び二酸化炭素回収装置の運転方法の特徴構成によれば、吸収塔に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動しても、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量の一定化を図ることができる。
【0018】
本発明の二酸化炭素回収装置の更なる特徴構成は、前記吸収液供給量調整部として、前記リッチ側供給ポンプが前記リッチ吸収液供給量を調整するように構成され、
前記吸収液供給量制御部が、前記リッチ側供給ポンプの作動を制御する点にある。
【0019】
すなわち、吸収塔から再生塔にリッチ吸収液を供給するリッチ側供給ポンプを、吸収液供給量調整部として用いて、吸収塔から再生塔に供給するリッチ吸収液供給量を調整することになる。
したがって、吸収塔から再生塔にリッチ吸収液を供給するため備えられている既設のリッチ側供給ポンプを、供給量調整部として用いるものであるから、本来構成を有効利用した簡素な構成で、リッチ吸収液供給量を調整できる。
【0020】
本発明の二酸化炭素回収装置の更なる特徴構成は、前記吸収液供給量調整部として、前記リッチ吸収液供給路から前記リーン吸収液供給路にバイパス路を通して前記リッチ吸収液を流動させるバイパス量を調整するバイパス量調整部が設けられ、
前記吸収液供給量制御部が、前記バイパス量調整部の作動を制御する点にある。
【0021】
すなわち、リッチ吸収液供給路からリーン吸収液供給路にバイパス路を通してリッチ吸収液を流動させるバイパス量を調整するバイパス量調整部が、吸収液供給量調整部として設けられて、バイパス量調整部を用いて、吸収塔から再生塔に供給するリッチ吸収液供給量を調整することになる。
つまり、吸収塔から供給するリッチ吸収液供給量を基準供給量としながら、バイパス路を通してリッチ吸収液の一部をリーン吸収液供給路に流動させることにより、吸収塔から再生塔に供給するリッチ吸収液供給量を調整することになる。
【0022】
バイパス量調整部は、開度が変更自在な制御弁等を用いて構成されるものであり、その調整に必要とする消費エネルギーは小さなものであるから、ランニングコストの低下を図りながら、リッチ吸収液供給量を調整できる。
【0023】
本発明の二酸化炭素回収装置の更なる特徴構成は、前記再生塔から放出される二酸化炭素の放出量を検出する放出量検出部が設けられ、
前記吸収液供給量制御部が、前記放出量検出部にて検出される検出放出量が前記再生塔から放出される二酸化炭素の目標放出量よりも多いときには、前記目標供給量を減少側に補正し、且つ、前記検出放出量が前記目標放出量よりも少ないときには、前記目標供給量を増加側に補正する点にある。
【0024】
すなわち、吸収液の劣化等により、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量が、予め設定した目標放出量に対して変動する虞がある。
このような場合において、吸収液供給量制御部が、放出量検出部に検出される検出放出量が再生塔から放出される二酸化炭素の目標放出量よりも多いときには、目標供給量を減少側に補正し、且つ、検出放出量が前記目標放出量よりも少ないときには、目標供給量を増加側に補正することにより、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量を極力目標放出量に維持することができる。
【0025】
本発明の二酸化炭素回収装置の更なる特徴構成は、前記被処理ガス供給部から供給される前記被処理ガスの流量と前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度とのうちの少なくとも一方を検出する被処理ガス検出部が設けられ、
前記吸収液供給量制御部が、前記被処理ガス検出部の検出情報に基づいて、前記目標供給量を補正する点にある。
【0026】
すなわち、吸収液供給量制御部が、被処理ガス検出部の検出情報に基づいて、目標供給量を補正するものであるから、被処理ガス検出部の検出情報をフィードフォワード情報として用いて、目標供給量を補正できる。
従って、被処理ガス供給部から供給される被処理ガスの流量と被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度とのうちの少なくとも一方が、急激に大きく変動する場合があっても、再生塔から放出される二酸化炭素の放出量が大きく変動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収装置の構成を示す図である。
【
図2】第2実施形態の二酸化炭素回収装置の構成を示す図である。
【
図3】第3実施形態の二酸化炭素回収装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
先ず、二酸化炭素回収装置の基本構成について説明する。
二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素をCO2化学吸収分離法によって吸収液に吸収分離することで回収し、その後、吸収液に吸収された二酸化炭素を吸収液から分離することにより、吸収液に吸収された二酸化炭素を回収することになる。
【0029】
上記CO2化学吸収分離法に用いる吸収液としては、例えば、溶質としてモノエタノールアミン(MEA)やジエタノールアミン(DEA)等を採用し、溶媒として水を採用したアミン吸収液などを採用することができる。
本実施形態においては、二酸化炭素を吸収可能な吸収液をリーン吸収液と呼称する場合があり、二酸化炭素を吸収した吸収液をリッチ吸収液と呼称する場合がある。尚、リーン吸収液とリッチ吸収液とは、二酸化炭素の吸収量が異なるものである。
また、吸収液とは、リーン吸収液、リッチ吸収液、もしくはリーン吸収液とリッチ吸収液との混合液のいずれかを意味する。
【0030】
図1に示すように、二酸化炭素回収装置1は、吸収塔2、再生塔3及び被処理ガスを吸収塔2に供給する被処理ガス供給部Dを備え、再生塔3にて分離された二酸化炭素を外部の処理装置E(例えば、液化炭酸製造設備)に供給するように構成されている。
【0031】
吸収塔2は、被処理ガスと吸収液(リーン吸収液)とを接触させ、被処理ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液(リーン吸収液)に吸収させてリッチ吸収液を生成し、かつ、吸収液(リーン吸収液)に吸収されないガスをオフガスとして排出する。
そして、吸収塔2における吸収塔底部2aに溜まったリッチ吸収液を吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ側供給ポンプ4を備えたリッチ吸収液供給路5が備えられている。
【0032】
再生塔3は、リッチ吸収液から二酸化炭素を分離させてリッチ吸収液をリーン吸収液に再生し、且つ、分離した二酸化炭素を放出する。この放出された二酸化炭素はガス供給路Aに回収されて、外部の処理装置Eに供給される。
そして、再生塔底部3aの液溜り部6に貯留されたリーン吸収液を再生塔3から吸収塔2に供給するリーン側供給ポンプ7を備えたリーン吸収液供給路8が備えられている。
したがって、吸収液は、リッチ吸収液供給路5及びリーン吸収液供給路8を流動しながら、吸収塔2と再生塔3との間で循環されることになる。
【0033】
吸収塔2の吸収塔底部2aには、被処理ガスを導入する導入路2dが設けられ、この導入路2dに被処理ガスを供給する被処理ガス供給ブロア9が設けられている。つまり、被処理ガス供給ブロア9は、被処理ガス供給路9aから供給される被処理ガスを導入路2dに供給することになる。尚、本実施形態においては、導入路2dには、被処理ガスを洗浄する洗浄槽10が備えられているが、当該洗浄槽10を省略する形態で実施してもよい。
ちなみに、本実施形態では、被処理ガス供給ブロア9を主要部として、被処理ガス供給部Dが構成される。
【0034】
吸収塔2の吸収塔頂部2bにおける下方側箇所には、下方に向けてリーン吸収液を供給する第1ノズル11が配設されている。そして、吸収塔2における吸収塔頂部2bと吸収塔底部2aとの間の吸収塔中間部2cの内部には、表面でリーン吸収液と被処理ガスとを接触させる吸収塔充填物12が配設されている。
【0035】
吸収塔2の吸収塔頂部2bには、オフガス(脱炭酸ガス)を導出するオフガス導出路13が延設され、また、貯留された洗浄水(洗浄液)を吸収塔2から導出して冷却した後、吸収塔頂部2bから再導入する脱炭酸ガス洗浄系統Fが設けられている。
脱炭酸ガス洗浄系統Fは、上述した第1ノズル11よりも上方に配設されて洗浄水を貯留する液受けトレー14と、液受けトレー14よりも上方に配設されて下方に向けて洗浄水を供給する第2ノズル15と、液受けトレー14と第2ノズル15とを接続する液流動管16とを備えている。
【0036】
そして、液流動管16には、液受けトレー14から第2ノズル15に向けて洗浄水を移送する洗浄水循環ポンプ17と、洗浄水を冷却する水冷式洗浄水クーラー18とが設けられている。洗浄水は、吸収液の溶媒と同一(例えば、水)であることが好ましい。
尚、液受けトレー14と第2ノズル15との間には、表面で洗浄水とオフガス(脱炭酸ガス)ガスとを接触させる洗浄用充填物19が配設されている。
【0037】
リッチ吸収液供給路5は、吸収塔2の吸収塔底部2aと、再生塔3の中間部の内部に配置した第3ノズル20とを接続する。第3ノズル20は、下方に向けてリッチ吸収液を供給する。第3ノズル20の下方には下方側再生塔充填物21Aが配設され、第3ノズル20の上方には、上方側再生塔充填物21Bが配設されている。下方側再生塔充填物21Aの表面を流下する吸収液(リッチ吸収液)は、再生塔3の内部を上昇する吸収液の溶質および溶媒(例えば、水)の蒸気分や、この蒸気分と二酸化炭素との混合ガスと気液接触する。
【0038】
また、再生塔3には、再生塔3の底部の液溜り部6から取り出した吸収液を加熱蒸気にて加熱して再生塔3に戻す再生加熱部Bが備えられている。
つまり、液溜り部6から取り出した吸収液を、加熱器本体22を経由して再生塔3に流動させる加熱流路23が備えられ、この加熱流路23に、吸収液流動用ポンプ24が配設されている。
加熱器本体22には、加熱蒸気(例えば、飽和蒸気)を供給する蒸気供給路25が接続され、この蒸気供給路25には、供給する加熱蒸気(例えば、飽和蒸気)の供給量を調整する蒸気供給量調整弁26が設けられている。
【0039】
また、再生塔3の上部には、上述した混合ガスを再生塔頂部3bから導出して冷却し、前記溶質および溶媒の蒸気分を凝縮させて凝縮液を再生塔3に再導入するとともに、未凝縮の二酸化炭素を放出する混合ガス冷却系統Gが設けられている。
【0040】
混合ガス冷却系統Gは、凝縮液と二酸化炭素とを分離する気液分離器27、及び、再生塔頂部3bと気液分離器27の気相部とを接続する混合ガス流動路28を備え、気液分離器27の上部には、上述したガス供給路Aが延設されている。
混合ガス流動路28には、混合ガスを冷却水により冷却する混合ガス冷却器29が備えられている。
【0041】
上方側再生塔充填物21Bの上方箇所には、第4ノズル30が配設されている。気液分離器27の液相部と第4ノズル30とを接続する凝縮液流動路31には、凝縮水供給ポンプ32が設けられている。上方側再生塔充填物21Bの表面を流下する凝縮水は、再生塔3の内部を上昇する吸収液の溶質および溶媒(例えば、水)の蒸気分や、この蒸気分と二酸化炭素との混合ガスと気液接触する。
【0042】
リーン吸収液供給路8は、再生塔3の再生塔底部3aと吸収塔2の第1ノズル11とを接続する。リーン吸収液供給路8には、リーン吸収液を冷却水にて冷却するリーン吸収液冷却器33が設けられている。
また、リーン吸収液供給路8とリッチ吸収液供給路5との間には、リーン吸収液とリッチ吸収液とで熱交換してリーン吸収液を冷却する液々熱交換器34が配設されている。
【0043】
次に、以上のように構成された二酸化炭素回収装置1の作用について説明する。
吸収塔2においては、吸収塔底部2aに供給された被処理ガスが内部を上昇し、第1ノズル11から供給されたリーン吸収液が内部を下降する。この過程で、被処理ガスとリーン吸収液とが接触し、被処理ガス中の二酸化炭素が、リーン吸収液に吸収される。
【0044】
吸収塔2の内部に配設された吸収塔充填物12は、例えば、多数の狭い隙間を持つフィン構成で、容積あたりのフィン表面積が大きく、また、その隙間は規則的に流路の角度が変化するように構成されている。
吸収塔充填物12の表面では、吸収液がフィン上に濡れ壁を形成して流下し、吸収塔2内を上昇する被処理ガスとの気液接触を促進する。
【0045】
これにより、リッチ吸収液およびオフガス(脱炭酸ガス)が生成される。これらのうち、オフガス(脱炭酸ガス)は、吸収塔2の吸収塔頂部2bに向けて上昇し、オフガス導出路13を通して外部に排出される。
本実施形態では、脱炭酸ガス洗浄系統Fが設けられているので、水冷式洗浄水クーラー18で冷却されて再導入された洗浄水によって吸収塔2の吸収塔頂部2b内を冷却することができる。したがって、例えば、吸収液中の溶質が飛散もしくは蒸発してオフガス(脱炭酸ガス)に随伴して上昇したとしても、オフガス導出路13に到達する前に除去することが可能になり、吸収液中の溶質が吸収塔2の吸収塔頂部2bからオフガス導出路13を通して外部に流出することを抑制することができる。
【0046】
一方、生成されたリッチ吸収液は、吸収塔2の内部を下降して吸収塔底部2aに貯留された後、リッチ吸収液供給路5を通して再生塔3の第3ノズル20に供給される。リッチ吸収液は、液々熱交換器34により、リーン吸収液供給路8を流動するリーン吸収液と熱交換することで、リーン吸収液を冷却しつつ加熱される。
【0047】
再生塔3の内部では、第3ノズル20から供給されたリッチ吸収液が内部を下降する。また、再生加熱部Bによって加熱された吸収液が再生塔底部3aから再導入される。このとき、加熱された吸収液中の溶質および溶媒それぞれの一部が蒸気となり、また、再生された二酸化炭素がガスとなって、再生塔3の内部を上昇する。この上昇過程で、リッチ吸収液と溶質および溶媒の蒸気分とが接触し、溶質および溶媒の蒸気分の凝縮熱を熱源として、脱離再生の吸熱反応が起こり、リッチ吸収液から二酸化炭素が分離される。
【0048】
第3ノズル20の下方の再生塔充填物21Aは、例えば、多数の狭い隙間を持つフィン構成で、容積あたりのフィン表面積が大きく、また、その隙間は規則的に流路の角度が変化するように構成されている。再生塔充填物21の表面では、吸収液がフィン上に濡れ壁を形成して流下し、再生塔3の内部を上昇する溶質および溶媒の蒸気分と接触し、表面積の大きさや流れの乱れによって効率的に気液接触が行われることにより、二酸化炭素の分離が促進される。
【0049】
これにより、リッチ吸収液が、リーン吸収液と二酸化炭素とに分離される。これらのうち、二酸化炭素は溶質および溶媒の蒸気分と混合され混合ガスとなり、再生塔3の内部を上昇する。
【0050】
この混合ガスは、混合ガス冷却系統Gの混合ガス流動路28に導入され、この混合ガス流動路28を流動する過程で、混合ガス冷却器29にて冷却される。
これにより、混合ガス中の溶質および溶媒の蒸気分が凝縮されて凝縮液となり、この凝縮液と二酸化炭素を主体とした二酸化炭素主体ガスとが、気液分離器27により分離される。そして凝縮液は、第4ノズル30から再生塔3に再導入され、二酸化炭素(二酸化炭素主体ガス)は、ガス供給路Aを通して外部に放出(排出)される。
【0051】
一方、再生塔3内を下降する吸収液は、再生塔底部3aの液溜り部6に貯留された後、分離再生されたリーン吸収液として再生塔3から導出され、リーン吸収液供給路8を通して吸収塔2の内部の第1ノズル11に供給される。このとき、リーン吸収液は、液々熱交換器34にてリッチ吸収液供給路5を流動のリッチ吸収液と熱交換することにより、冷却され、さらに、リーン吸収液冷却器33にて冷却される。
【0052】
(第1実施形態の制御構成)
リッチ吸収液を吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ吸収液供給量を調整する吸収液供給量調整部Hと、吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出部としての濃度検出センサ35と、吸収液供給量制御部Jとが備えられている。
本実施形態では、吸収液供給量調整部Hとして、リッチ側供給ポンプ4がリッチ吸収液供給量を調整するように構成され、吸収液供給量制御部Jが、リッチ側供給ポンプ4の作動を制御するように構成されている。
【0053】
吸収液供給量制御部Jは、濃度検出センサ35の検出濃度が基準濃度のときにはリッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、検出濃度が基準濃度よりも高くなるほど目標供給量を基準供給量よりも低く設定する形態で目標供給量を設定して、リッチ側供給ポンプ4(吸収液供給量調整部H)によりリッチ吸収液供給量を目標供給量に調整するように構成されている。
ちなみに、目標供給量に調整するにあたり、リッチ吸収液供給路5に流量センサを設けて、流量センサの検出値が目標供給量になるようにリッチ側供給ポンプ4の作動を制御することが好ましい。
【0054】
再生塔3の液溜り部6の吸収液温度を検出する温度検出部としての温度検出センサ36と、再生加熱部Bに供給する加熱用蒸気の供給量を調整する蒸気供給量調整部としての蒸気供給量調整弁26と、蒸気供給量制御部Kとが備えられている。
蒸気供給量制御部Kは、温度検出センサ36の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように蒸気供給量調整弁26により加熱用蒸気の供給量を調整するように構成されている。
ちなみに、二酸化炭素(二酸化炭素主体ガス)の回収に必要な熱量は、吸収液と二酸化炭素との分解熱と、吸収液の溶媒(例えば、水)を基準温度に加温する熱量とを加えた熱量であり、当該熱量が加熱用蒸気にて供給されることになる。つまり、再生塔3の液溜り部6の吸収液温度を基準温度に近づけるように加熱用蒸気の供給量を制御することにより、必要十分な最小限の上記熱量を供給できる。
【0055】
再生塔3の液溜り部6の高さを設定基準高さに維持するように、リーン側供給ポンプ7の作動を制御する吸収液戻し制御部Lが設けられている。つまり、液溜り部6の高さを検出する液面高さセンサ(図示せず)が設けられ、吸収液戻し制御部Lが、液面高さセンサにて検出される高さを設定基準高さに維持するように、リーン側供給ポンプ7の作動を制御するよう構成されている。
【0056】
すなわち、吸収塔2に供給される被処理ガスの流量が変動する範囲の最低流量であり、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動する範囲の最低濃度である場合において、再生塔3から放出される二酸化炭素(二酸化炭素主体ガス)の放出量(回収量)は、最低の放出量(回収量)であるから、吸収塔2に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動しても、必ず、放出(回収)できる放出量(回収量)である。
【0057】
この点に鑑みて、吸収塔2に供給される被処理ガスの流量が変動する範囲の最低流量であり、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動する範囲の最低濃度である場合に対応させて、吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ吸収液の供給量の基準供給量、再生塔3の液溜り部における吸収液温度についての基準温度、及び、液溜り部6の設定基準高さを、予め、実験等により設定する。
【0058】
そして、吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ吸収液供給量については、吸収液供給量制御部Jが、リッチ吸収液の二酸化炭素の濃度を検出する濃度検出センサ35の検出濃度が基準濃度のときにはリッチ吸収液供給量の目標供給量を予め設定した基準供給量に設定し、かつ、検出濃度が基準濃度よりも高くなるほど目標供給量を基準供給量よりも低く設定する形態で目標供給量を設定して、吸収液供給量調整部Hによりリッチ吸収液供給量を目標供給量に調整する。
【0059】
つまり、目標供給量は、下記の(1)式にて求めることができる。
目標供給量=基準供給量-α(検出濃度-基準濃度)------(1)
ただし、αは、検出濃度と基準濃度との差を、供給量に変換する係数である。
【0060】
また、再生塔3の液溜り部6における吸収液温度については、蒸気供給量制御部Kが、液溜り部6の収液温度を検出する温度検出センサ36の検出温度を予め設定した基準温度に近づけるように蒸気供給量調整弁26により加熱用蒸気の供給量を調整する。
【0061】
また、再生塔3の液溜り部6の高さについては、吸収液戻し制御部Lが、液面高さセンサ(図示せず)の検出高さを設定基準高さに維持するように、リーン側供給ポンプ7の作動を制御する。
【0062】
従って、吸収液供給量制御部Jが、吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ吸収液の供給量を調整し、かつ、蒸気供給量制御部Kが、再生加熱部Bに供給する加熱用蒸気の供給量を調整し、加えて、吸収液戻し制御部Lが、再生塔3から吸収塔2に供給するリーン吸収液の供給量を調整することにより、吸収塔2に供給される被処理ガスの流量及び被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変化しても、再生塔3から放出される二酸化炭素(二酸化炭素主体ガス)の放出量の一定化を図ることができる。
【0063】
ちなみに、吸収塔2に供給される被処理ガスの流量が変動する範囲の最低流量よりも多い場合や、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動する範囲の最低濃度よりも高い場合には、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の一部が、吸収液に吸収されないオフガスとして吸収塔2から排出されることになる。
【0064】
以上説明した実施形態に基づいて、二酸化炭素回収装置1の運転方法を実施することができる。
【0065】
(第1実施形態の制御構成における付加制御)
また、本実施形態では下記の制御が付加されている。尚、本発明を実施するにあたり、以下に説明する付加制御を省略してもよい。
再生塔3から放出される二酸化炭素の放出量を検出する放出量検出部としての流量センサ37が、ガス供給路Aを流動する二酸化炭素の流量を検出する形態で設けられている。尚、流量センサ37は、混合ガス流動路28に設ける形態で実施してもよい。つまり、混合ガス流動路28を流動する混合ガスの流量は、ガス供給路Aを流動する二酸化炭素の流量と概ね比例するものであるから、混合ガス流動路28を流動する混合ガスの流量を、二酸化炭素の流量としてもよい。
【0066】
そして、吸収液供給量制御部Jが、流量センサ37にて検出される検出放出量が再生塔3から放出される二酸化炭素の目標放出量よりも多いときには、目標供給量を減少側に補正し、且つ、検出放出量が目標放出量よりも少ないときには、目標供給量を増加側に補正する。
【0067】
つまり、目標供給量は、下記の(2)式にて求めることができる。
目標供給量=基準供給量-α(検出濃度-基準濃度)-β(検出放出量-目標放出量)------(2)
ただし、αは、検出濃度と基準濃度との差を、供給量に変換する係数であり、βは、検出放出量と目標放出量との差により目標供給量を補正する量を定める比例定数である。
【0068】
すなわち、装置の経年変化等により、例えば、吸収塔2に供給される被処理ガスの流量が変動する範囲の最低流量であり、被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が変動する範囲の最低濃度である場合においても、再生塔3から放出される二酸化炭素の放出量が、予め設定した目標放出量に対して増減変化する虞がある。
【0069】
このような場合には、吸収液供給量制御部Jが、流量センサ37にて検出される検出放出量が再生塔3から放出される二酸化炭素の目標放出量よりも多いときには、目標供給量を減少側に補正し、且つ、検出放出量が目標放出量よりも少ないときには、目標供給量を減少側に補正することにより、再生塔3から放出される二酸化炭素の放出量を極力目標放出量に維持することができる。
【0070】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を
図2に基づいて説明する。この第2実施形態は、吸収液供給量調整部Hの別の形態を示すものであって、上述の第1実施形態と同様な構成部分については、第1実施形態と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0071】
すなわち、この第2実施形態では、吸収液供給量調整部Hとして、リッチ吸収液供給路5からリーン吸収液供給路8にリッチ吸収液を流動させるバイパス路38、及び、バイパス路38を通してリッチ吸収液を流動させるバイパス量を調整するバイパス量調整部としてのバイパス量調整弁39が設けられている。
そして、吸収液供給量制御部Jが、バイパス量調整弁39の作動を制御するように構成されている。
【0072】
この第2実施形態の場合には、例えば、リッチ側供給ポンプ4を予め設定した基準供給量のリッチ吸収液を供給するように作動させた状態で、再生塔3に供給するリッチ吸収液の供給量を減少させるときほど、バイパス量を多くするように調整する形態で、吸収塔2から再生塔3に供給するリッチ吸収液供給量を調整することになる。その他については、第1実施形態と同様である。
ちなみに、バイパス量を調整するにあたり、リッチ吸収液供給路5におけるバイパス路38の分岐箇所よりも下流側に流量センサを設けて、流量センサの検出値が目標供給量になるようにバイパス量調整弁39を調整制御することが好ましい。
【0073】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態を
図3に基づいて説明する。この第3実施形態は、吸収液供給量調整部Hの別の形態を示すものであって、上述の第3実施形態と同様な構成部分については、第1実施形態と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
なお、以下の説明においては、第1実施形態を基本形態として第3実施形態とする場合を説明するが、第2実施形態を基本形態として第3実施形態とする場合も同様である。
【0074】
すなわち、被処理ガス供給部Dから供給される被処理ガスの流量と被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度とのうちの少なくとも一方を検出する被処理ガス検出部Mが設けられている。本実施形態では、被処理ガス検出部Mが、被処理ガスの流量(以下、ガス流量と略称)と被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度(以下、ガス濃度と略称)との両者を検出する。
【0075】
吸収液供給量制御部Jが、被処理ガス検出部Mの検出情報に基づいて、目標供給量を補正するように構成されている。つまり、吸収液供給量制御部Jが、被処理ガス検出部Mの検出情報に基づいて、目標供給量をフィードフォワード的に補正するように構成されている。
具体的には、吸収液供給量制御部Jが、例えば、ガス流量が、予め設定した最低流量よりも多くなるほど、目標供給量を減少させ、ガス濃度が、予め設定した最低濃度よりも高くなるほど、目標供給量を減少させるように、吸収液供給量調整部Hを制御する。
【0076】
つまり、目標供給量は、下記の(3)式にて求めることができる。
目標供給量=基準供給量-α(検出濃度-基準濃度)-β(検出放出量-目標放出量)-γ(ガス流量-最低流量)-δ(ガス濃度-最低濃度)------(3)
ただし、αは、検出濃度と基準濃度との差を、供給量に変換する係数であり、βは、検出放出量と目標放出量との差により目標供給量を補正する量を定める比例定数である。また、γは、ガス流量と最低流量との差により目標供給量を補正する量を定める比例定数であり、δは、ガス濃度と最低濃度との差により目標供給量を補正する量を定める比例定数である。
尚、第3実施形態において、被処理ガスの流量と被処理ガスに含まれる二酸化炭素の濃度とのうちの一方のみに基づいて、目標供給量を補正する形態で実施してもよい。
【0077】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、吸収塔2に、脱炭酸ガス洗浄系統Fを備えさせる場合を例示したが、脱炭酸ガス洗浄系統Fを省略する等、吸収塔2の具体構成は各種変更できる。
【0078】
(2)上記実施形態では、吸収液戻し制御部Lが、液面高さセンサ(図示せず)の検出高さを設定基準高さに維持するように、リーン側供給ポンプ7の作動を制御する場合を例示したが、吸収液戻し制御部Lが、リッチ液吸収液の目標供給量に相当する量を、リーン供給量とする形態で、リーン側供給ポンプ7の作動を制御する形態で実施してもよい。
【0079】
(3)上記実施形態では、吸収液供給量制御部J、蒸気供給量制御部K、吸収液戻し制御部Lを各別の制御部として構成する場合を例示したが、それらの2つあるいは全てを、一つの制御装置にて構成するようにしてもよい。
【0080】
(4)上記実施形態では、上方側再生塔充填物21B、その上方箇所の第4ノズル30、気液分離器27の液相部と第4ノズル30とを接続する凝縮液流動路31、凝縮水供給ポンプ32を設ける場合を例示したが、それらを省略して、気液分離器27の液相部の凝縮液を再生塔3に流下させる流動路を設ける形態で実施してもよい。
【0081】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
2 吸収塔
3 再生塔
4 リッチ側供給ポンプ
5 リッチ吸収液供給路
6 液溜り部
7 リーン側供給ポンプ
8 リーン吸収液供給路
26 蒸気供給量調整部
35 濃度検出部
36 温度検出部
37 流量検出部
38 バイパス路
39 バイパス量調整部
B 再生加熱部
D 被処理ガス供給部
H 吸収液供給量調整部
J 吸収液供給量制御部
K 蒸気供給量制御部
M 被処理ガス検出部