(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073214
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】助手席用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/205 20110101AFI20240522BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20240522BHJP
【FI】
B60R21/205
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184310
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA08
3D054AA14
3D054BB16
3D054CC11
3D054CC15
3D054CC34
3D054CC42
3D054EE19
3D054EE20
(57)【要約】
【課題】膨張初期にフロントウィンドシールドを強く押圧することを抑制できて、迅速にエアバッグを膨張可能な助手席用エアバッグ装置を提供すること
【解決手段】インストルメントパネル1の上面側に配設されて、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグ20を、備える。エアバッグが、前端側でインフレーター12と接続されるとともに前後方向に略沿って延びる配置される導管部23と、導管部の後端側から上下左右に膨出するようにして構成されて膨張完了時にインストルメントパネルの後側に配置される本体膨張部30と、を備える。本体膨張部が、膨張完了時の上端30a側を、インストルメントパネルの上方に配置されるフロントウィンドシールド5に支持させ、膨張完了時における乗員受止時に、下部前面31a側を、インストルメントパネルの後面3aに支持させるように、構成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
助手席前方のインストルメントパネルの上面側に配設されて、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、折り畳まれた前記エアバッグと前記インフレーターとを収納させる収納部位と、を有する構成とされ、
該エアバッグが、前記インフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させて膨張する際に、前記収納部位に形成される突出用開口から上方に向かって突出しつつ、後方に向かって展開するように膨張する構成の助手席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
膨張完了時に、前端側で前記インフレーターと接続されるとともに、前後方向に略沿って延びるように配置される導管部と、
該導管部の後端側から上下左右に膨出するようにして構成されるとともに、膨張完了時に前記インストルメントパネルの後側に配置されて、助手席に着座している乗員を保護可能とされる本体膨張部と、
を備える構成とされ、
該本体膨張部が、膨張完了時の上端側を、前記インストルメントパネルの上方に配置されるフロントウィンドシールドに支持させ、膨張完了時における乗員受止時に、下部前面側を、前記インストルメントパネルの後面に支持させるように、構成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記導管部が、前記エアバッグの膨張完了時に、前記フロントウィンドシールドと非接触とされていることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記導管部が、前記エアバッグの膨張完了時に、前記インストルメントパネルの上面に略沿うようにして、配置される構成であることを特徴とする請求項2に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記本体膨張部が、膨張完了時の下部側に、膨張完了時に前記乗員の膝の前方に配置される膝保護部を、備える構成とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記本体膨張部が、膨張完了時の後面側を、車両の前面衝突時に前方移動してくる前記乗員を受け止め可能な乗員保護面として構成され、
前記本体膨張部の膨張完了時における車幅方向の中央側の端部付近に、前記乗員保護面から後方に向かって突出する突出膨張部が、形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記本体膨張部が、膨張完了時の後面側を、車両の前面衝突時に前方移動してくる前記乗員を受け止め可能な乗員保護面として構成され、
前記本体膨張部の膨張完了時における車幅方向の中央側の端部付近に、前記乗員保護面から後方に向かって突出するように膨張する突出膨張部が、形成されていることを特徴とする請求項4に記載の助手席用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席前方のインストルメントパネルの上面側に配設されるいわゆるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、インストルメントパネルの上面側に配設されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置では、収納部位内に収納されているエアバッグは、収納部位の上端側に形成される突出用開口から上方に突出しつつ後方に向かって展開しつつ膨張する構成とされている。そのため、上方に向かって突出するように膨張するエアバッグが、インストルメントパネルの上方に配置されるフロントウィンドシールドを強く押圧してしまう場合があった。従来では、このようなエアバッグの膨張初期のフロントウィンドシールドへの押圧力を軽減するために、エアバッグとして、折り畳まれたエアバッグを覆うように収納部位の上方を覆うエアバッグカバーの扉部を押し開くための前方膨張部と、車両後方側に向かって突出するように膨張して乗員を保護する後方膨張部と、を備える構成のものがあった。この従来の助手席用エアバッグ装置では、前方膨張部によって扉部を押し開かせた後に、後方膨張部を膨張させることにより、膨張するエアバッグによってフロントウィンドシールドを強く押圧することを、抑制していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の助手席用エアバッグ装置では、単に、前方膨張部を、後方膨張部に先行して膨張させることで、後方膨張部の車両後方側への突出を促すことによって、後方膨張部のフロントウィンドシールド側に向かうような上方への大きな突出を抑制している構成であり、膨張完了状態においては、前方膨張部は、後方膨張部と一体的に大きく膨らむように図示されており(
図6参照)、前方膨張部の具体的な外形形状は開示されていない。そのため、インストルメントパネルの外形形状や、収納部位の搭載位置、フロントウィンドシールドの傾き等によっては、フロントウィンドシールドを強く押圧することを規制できない虞れがあった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張初期にフロントウィンドシールドを強く押圧することを抑制できて、迅速にエアバッグを膨張可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、助手席前方のインストルメントパネルの上面側に配設されて、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、折り畳まれたエアバッグとインフレーターとを収納させる収納部位と、を有する構成とされ、
エアバッグが、インフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させて膨張する際に、収納部位に形成される突出用開口から上方に向かって突出しつつ、後方に向かって展開するように膨張する構成の助手席用エアバッグ装置であって、
エアバッグが、
膨張完了時に、前端側でインフレーターと接続されるとともに、前後方向に略沿って延びるように配置される導管部と、
導管部の後端側から上下左右に膨出するようにして構成されるとともに、膨張完了時にインストルメントパネルの後側に配置されて、助手席に着座している乗員を保護可能とされる本体膨張部と、
を備える構成とされ、
本体膨張部が、膨張完了時の上端側を、インストルメントパネルの上方に配置されるフロントウィンドシールドに支持させ、膨張完了時における乗員受止時に、下部前面側を、インストルメントパネルの後面に支持させるように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグにおいて、膨張完了時の後端側に配置される本体膨張部には、インフレーターから後方に延びるように配置される導管部を経て、内部に膨張用ガスが流入されることとなる。膨張完了時にインストルメントパネルの後側に配設される本体膨張部は、導管部の後端側から上下左右に膨出するようにして配設される構成であり、換言すれば、導管部は、本体膨張部と比較して上下左右で狭幅として前後方向に略沿った管状とされている。そのため、エアバッグの膨張初期に、内部に膨張用ガスを流入させて膨張しつつ、収納部位に形成される突出用開口から上方に向かって突出する導管部が、インストルメントパネルの上方に配置されるフロントウィンドシールドを、強く押圧することを、的確に抑制することができる。
【0008】
したがって、本発明の助手席用エアバッグ装置では、膨張初期にフロントウィンドシールドを強く押圧することを抑制できて、迅速にエアバッグを膨張させることができる。
【0009】
また、本発明の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、本体膨張部は、上端側をフロントウィンドシールドに支持させるとともに、膨張完了時における乗員受止時に、下部前面側を、インストルメントパネルの後面に支持させるように構成されている。そのため、本体膨張部の膨張完了時の後面側によって前方移動する乗員を受け止めた際に、インストルメントパネルの後面やフロントウィンドシールドからの反力によって本体膨張部自体が前方移動することを規制でき、本体膨張部によって、乗員のさらなる前方移動を抑制して、乗員を的確に拘束することができる。その結果、本発明の助手席用エアバッグ装置では、膨張完了時の前端側の領域を導管部とされているエアバッグであっても、乗員を的確に保護することができる。
【0010】
さらに、本発明の助手席用エアバッグ装置において、導管部を、エアバッグの膨張完了時に、フロントウィンドシールドと非接触な構成とすれば、導管部がフロントウィンドシールドと接触することを、的確に抑制することが可能となって、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の助手席用エアバッグ装置において、導管部を、エアバッグの膨張完了時に、インストルメントパネルの上面に略沿うようにして、配置させる構成とすれば、本体膨張部による乗員受止時の反力を、膨張完了時の導管部の下面を接触させているインストルメントパネルの上面からも確保することが可能となって、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成の助手席用エアバッグ装置において、本体膨張部を、膨張完了時の下部側に、膨張完了時に乗員の膝の前方に配置される膝保護部を有する構成とすれば、本体膨張部による上半身の保護に加えて、同時に、膝保護部によって膝を保護することもできることから、膝保護用の装置を別途搭載させなくともよく、部品点数の削減や軽量化が可能となって、好ましい。
【0013】
さらにまた、上記構成の助手席用エアバッグ装置において、本体膨張部における膨張完了時の後面側を、車両の前面衝突時に前方移動してくる乗員を受け止め可能な乗員保護面として構成し、
本体膨張部の膨張完了時における車幅方向の中央側の端部付近に、乗員保護面から後方に向かって突出するように膨張する突出膨張部を、形成する構成とすることが、好ましい。
【0014】
助手席用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、斜め前方から衝撃力が作用する斜突時やオフセット衝突時等において、車両の車幅方向の中央側に向かうように斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、突出膨張部によって拘束することも可能となり、前面衝突時のみならず、斜突時やオフセット衝突時にも、乗員を的確に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態である助手席用エアバッグ装置を車両に搭載させた状態の概略縦断面図である。
【
図2】第1実施形態の助手席用エアバッグ装置において使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【
図3】
図2のエアバッグの前後方向に略沿った概略縦断面図である。
【
図4】
図2のエアバッグの前後方向に略沿った概略横断面図である。
【
図5】
図2のエアバッグにおいて、導管部における上下テザーの配置位置の概略縦断面図である。
【
図6】
図3のエアバッグを構成するパネルを並べた状態の平面図である。
【
図7】第1実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略平面図である。
【
図8】第1実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を車両後方側から見た概略背面図である。
【
図9】第1実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略縦断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態である助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略縦断面図である。
【
図11】第2実施形態の助手席用エアバッグ装置において使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略縦断面図である。
【
図17】
図11のエアバッグを構成するパネルを並べた状態の平面図である。
【
図18】第2実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略平面図である。
【
図19】変形例のエアバッグを車両搭載状態で膨張させた状態の概略平面図である。
【
図20】
図19のエアバッグを車両搭載状態で膨張させた状態の概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態の助手席用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)M1は、
図1に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面側に配置されるトップマウントタイプとされている。詳細には、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、インパネ1の上面側(上面側部位2側)において、前端2a付近の領域に、搭載されている。詳細には、第1実施形態のエアバッグ装置M1を搭載させる車両V1のインパネ1は、前後に広く(乗員MP側となる後方に大きく張り出すように)構成されており、後方に向かって僅かに下降するように僅かに傾斜する上面側部位2と、上面側部位2の後端側から斜め下方に向かって延びるように傾斜して配置される後面側部位3と、を有する構成とされている。また、第1実施形態のエアバッグ装置M1を搭載させる車両V1では、インパネ1の上方に配設されるフロントウィンドシールド5も、
図1に示すように、比較的水平方向に対する傾きを小さくするように、構成されている。そして、エアバッグ装置M1は、このインパネ1における上面側部位2の前端2a近傍となる位置に、搭載されている。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両の前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0017】
エアバッグ装置M1は、
図1に示すように、折り畳まれたエアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター12と、エアバッグ20及びインフレーター12を収納保持する収納部位としてのケース16と、エアバッグ20及びインフレーター12をケース16に取り付けるためのリテーナ13と、折り畳まれたエアバッグ20を覆うエアバッグカバー10と、を備えている。
【0018】
エアバッグカバー10は、実施形態の場合、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ20の展開膨張時に、前後二枚の扉部10a,10bを、エアバッグ20に押されて開くように、構成されている。また、エアバッグカバー10における扉部10a,10bの周囲には、ケース16に連結される連結壁部10cが、形成されている。
【0019】
インフレーター12は、
図1に示すように、複数のガス吐出口12bを有した略円柱状の本体部12aと、インフレーター12をケース16に取り付けるためのフランジ部12cと、を備えている。
【0020】
収納部位としてのケース16は、上端側に略長方形状の突出用開口16cを有した板金製の略直方体形状とされるもので、
図1に示すように、インフレーター12を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部16aと、底壁部16aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー10の連結壁部10cを係止する周壁部16bと、を備えている。実施形態の場合、ケース16は、
図7に示すように、左右方向側を幅広として、構成されている。エアバッグ20とインフレーター12とは、エアバッグ20の内部に配置させたリテーナ13の各ボルト13aを取付手段として、各ボルト13aを、エアバッグ20における後述する流入用開口24の周縁、ケース16の底壁部16a、及び、インフレーター12のフランジ部12cを、貫通させて、ナット14止めすることにより、ケース16の底壁部16aに連結される構成である。なお、ケース16には、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
【0021】
エアバッグ20は、
図9に示すように、膨張完了時に、インパネ1とフロントウィンドシールド5との間に配置されるもので、
図2~5に示すように、バッグ本体21と、バッグ本体21の内部に配置されてバッグ本体21の膨張完了形状を規制する上下テザー40L,40R,左右テザー45,前後テザー50U,50Dと、を備えている。バッグ本体21は、略筒状の導管部23と、導管部23の後端23b側に配設される本体膨張部30と、を備えている。実施形態のエアバッグ20は、膨張完了形状を、導管部23に形成される後述する流入用開口24を中心として、略左右対称形とされている。
【0022】
導管部23は、エアバッグ20の膨張完了時に、インパネ1における上面側部位2の上方となる位置に配置される部位であり、前後方向に略沿うとともに前端23a側を閉塞させた略筒状として、前端23a側で、インフレーター12と接続されている(
図3,4,9参照)。導管部23における膨張完了時の前端23a側の下面側には、
図3,4に示すように、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して、周縁を、ケース16の底壁部16aに取り付けられる流入用開口24が、形成されている。流入用開口24は、インフレーター12の本体部12aを挿入可能とされている。流入用開口24の周縁には、リテーナ13のボルト13aを挿通させて、流入用開口24の周縁をケース16の底壁部16aに取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔25が、形成されている。この導管部23は、左右方向側の幅寸法を、本体膨張部30よりも小さく設定されるとともに、上下方向側の幅寸法(膨張完了時の厚さ)も、本体膨張部30よりも小さく設定されている(
図3,4参照)。具体的には、導管部23は、前端23a側の部位の左右方向側の幅寸法を、ケース16の左右方向側の幅寸法と略一致させて構成され、本体膨張部30側となる後端23b側にかけて、若干幅広とするように、構成されている(
図7参照)。導管部23は、車両搭載時におけるバッグ本体21の膨張完了時に、インパネ1における上面側部位2の上側を覆うようにして、フロントウィンドシールド5と非接触の状態(フロントウィンドシールド5との間に隙間を設けられるような状態)で、配置されるもので、さらに具体的には、この上面側部位2の上面2bに略沿うようにして(下面23c側を略全面にわたって上面側部位2の上面2bに接触させるようにして)、配置されることとなる(
図9参照)。
【0023】
本体膨張部30は、
図2~4に示すように、導管部23の後端23b側から上下左右に膨出するような構成とされるもので、車両搭載時におけるバッグ本体21の膨張完了時に、インパネ1の後側となる位置に、配置されて、助手席に着座している乗員MPの主に上半身MUを保護可能な構成とされている(
図8,9参照)。詳細には、実施形態のエアバッグ20では、本体膨張部30は、車両搭載時における膨張完了時に、インパネ1の上面側部位2よりも後方となる位置(後面側部位3の後側)に、配設される部位である。本体膨張部30は、導管部23から連なるように上下左右に広がる前壁部31と、膨張完了時の後面側に配置される後壁部32と、を有して、膨張完了形状を、上下に若干幅広とした略長方形板状とされている。後壁部32は、エアバッグ20の膨張完了時に、助手席に着座した乗員MPの上半身MUと対向するようにして、鉛直方向に略沿って配設される。また、本体膨張部30は、上下方向側の幅寸法(導管部23から上方への突出量と、導管部23から下方への突出量)を、膨張完了時に、上端30a側をフロントウィンドシールド5に支持させ、下部側を、インパネ1における後面側部位3の前方に位置させて、膨張完了時における乗員受止時に、下部の前面側(前壁部31の下部31a側)を後面側部位3の後面3aに支持させるような寸法に、設定されている。実施形態の場合、本体膨張部30は、エアバッグ20の膨張完了時に、前壁部31の下部31a側を、インパネ1における後面側部位3の後面3aに略沿わせて、後面3aに接触させるように、構成されている。また、本体膨張部30は、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、導管部23の左右方向側の幅寸法よりも大きく設定されて、助手席に着座した乗員MPの上半身MUの前方を広く覆い可能な寸法に、設定されている(
図8参照)。具体的には、本体膨張部30は、膨張完了形状を、乗員MPの上半身MUよりも左右に幅広とするように、構成されている。さらに詳細に説明すれば、本体膨張部30は、バッグ本体21の膨張完了時に、上端30a側の部位(上側被支持部位33)を、左右の略全域にわたって、フロントウィンドシールド5に当接させて支持され、下部の前面側(前壁部31の下部31a側)を、左右の略全域にわたって、インパネ1の後面側部位3の後面3aに当接させて支持されるように、構成されている。フロントウィンドシールド5に当接支持される上側被支持部位33は、フロントウィンドシールド5との当接量(接触面積)を、前方移動する乗員MPの上半身MUを受け止めても、フロントウィンドシールド5との当接状態を維持可能とするような量(寸法)に、設定されている。また、本体膨張部30の膨張完了時の厚さ寸法は、インパネ1の後面側部位3に前面側(前壁部31の下部31a側)を支持されている領域(下側被支持部位34)によって、前進移動する乗員MPの上半身MUを受け止めた際に、後面側部位3への底付きを抑えて、乗員MPを的確に保護可能な寸法に、設定されている。本体膨張部30において、前壁部31における左右両縁側であって、導管部23の後側近傍となる領域には、エアバッグ20内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール35,35が、略円形に開口して、形成されている。
【0024】
上下テザー40L,40Rは、バッグ本体21の膨張完了時において、導管部23の厚さ(上下方向側の幅寸法)を規制するために、導管部23の領域内に配置されている。上下テザー40L,40Rは、
図3~5に示すように、流入用開口24よりも後方となる導管部23の後半分程度の領域(詳細には、車両搭載時において、ケース16の後方に配置される領域、
図9参照)であって、かつ、左右の中央付近となる領域において、左右方向側で2個並設されるもので、
図6に示すように、それぞれ、略台形状のテザー用基材62から構成されている。各上下テザー40L,40Rは、このテザー用基材62における狭幅側の端部を前側に位置させるようにして、前端40a側を狭幅とし、後端40b側にかけて拡開されるように、配設されている(
図3参照)。また、各上下テザー40L,40Rは、上縁40c側と下縁40d側とを、それぞれ、略全長にわたって、縫合部位42UL,42DL,42UR,42DRを形成するように、導管部23における上側領域23dと下側領域23eとに結合(縫着)させて、エアバッグ20の膨張完了時に、前後方向に略沿うように、配設される(
図4,5参照)。詳細には、各上下テザー40L,40Rは、バッグ本体21を構成する後述する前左パネル55L,前右パネル55Rの前側部位56L,56Rにおいて、後側にかけて拡開されるように上縁と下縁とを湾曲させている領域(突出部57L,57Rの後方となる領域)に、配設されることとなる(
図6参照)。
【0025】
左右テザー45は、バッグ本体21の膨張完了時において、本体膨張部30の左右方向側の幅を規制するために、本体膨張部30の領域内に配置されている。左右テザー45は、
図3,4に示すように、膨張完了時の本体膨張部30の上下の略中央において、左縁30b側と右縁30c側とを連結するように、幅方向を上下方向に略沿わせつつ、左右方向に略沿うように、配設されている。実施形態の場合、左右テザー45は、帯状の2枚のテザー用基材63,63を直列的に結合させて構成されている。左右テザー45は、詳細には、バッグ本体21を構成する前左パネル55L,前右パネル55Rの後縁55c近傍となる位置に、縫合部位47L,47Rを設けるようにして、左端45a側と右端45b側とを縫着(結合)されている(
図4,6参照)。
【0026】
前後テザー50U,50Dは、膨張完了時のバッグ本体21において、本体膨張部30の領域内に配置されるもので、本体膨張部30の前壁部31と後壁部32とを連結するように、前後方向に略沿って配設されている。この前後テザー50U,50Dは、膨張完了時のバッグ本体21において、本体膨張部30の前壁部31と後壁部32との離隔距離(本体膨張部30の厚さ)を規制し、左右テザー45と協働して、本体膨張部30の膨張完了形状を安定して略長方形板状とするために、配置されている。詳細には、前後テザー50U,50Dは、膨張完了時の本体膨張部30の左右の略中央において、上下で2箇所に並設されるもので、幅方向を上下方向に略沿わせつつ、膨張完了時のバッグ本体21を左右方向側から見た状態で後端50b側(後壁部32側)にかけて相互に接近するように、傾斜して、配設されている(
図3参照)。さらに詳細には、各前後テザー50U,50Dは、長さ寸法を略同一に設定され、前端50a側を、それぞれ、導管部23と本体膨張部30における前壁部31との境界部位付近に配置させ、後端50b側を本体膨張部30の後壁部32の上下左右の略中央において上下で近接させるように、構成されている。具体的には、各前後テザー50U,50Dは、それぞれ、帯状の2枚のテザー用基材64,65を直列的に結合させて構成されるもので、前端50a側を、前左パネル55L,55R,前右パネルの上縁55a,55a相互、若しくは、下縁55b,55b相互と、ともに、共縫いされ、後端50b側を、バッグ本体21を構成する後述する後左パネル60L,後右パネル60Rの内縁60a,60a相互とともに共縫いされている(
図3,4,6参照)。
【0027】
バッグ本体21は、所定形状の基材(基布)の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、
図6に示すように、前左パネル55L、前右パネル55R、後左パネル60L、及び、後右パネル60R、から構成されている。
【0028】
前左パネル55L及び前右パネル55Rは、導管部23から本体膨張部30の前壁部31にかけてを構成するもので、
図6に示すように、外形形状を略左右対称形とされている。各前左パネル55L,前右パネル55Rは、それぞれ、導管部23を構成する前側部位56L,56Rと、本体膨張部30の前壁部31を構成する後側部位58L,58Rと、を備えている。前側部位56L,56Rの前下端側には、それぞれ、流入用開口24の周縁の領域を構成する突出部57L,57Rが、下方に突出するように、形成されている。前側部位56L,56Rは、後側の領域(具体的には突出部57L,57Rよりも後方の領域)を、後側(後側部位58L,58R側)にかけてわずかに拡開されるように、上縁と下縁とを湾曲させて構成されている。後側部位58L,58Rは、前側部位56L,56Rから連なるようにして、上縁側と下縁側とをさらに大きく離隔させつつ湾曲させるようにして、上下に幅広に、構成されている。
【0029】
後左パネル60L及び後右パネル60Rは、本体膨張部30における後壁部32を構成するもので、
図6に示すように、外形形状を略左右対称形とされている。各後左パネル60L,後右パネル60Rは、外縁60bの湾曲形状を、前左パネル55L,前右パネル55Rの後縁55cの湾曲形状と略一致させるように、構成されている。
【0030】
実施形態では、バッグ本体21を構成する前左パネル55L,前右パネル55R,後左パネル60L,後右パネル60R、及び、上下テザー40L,40R,左右テザー45,前後テザー50L,50Rを構成するテザー用基材62,63,64,65は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0031】
次に、実施形態のエアバッグ20の製造について説明する。予め、各前左パネル55L,前右パネル55Rの内表面側に、上下テザー40L,40Rを構成するテザー用基材62,62の上縁側と下縁側とを、それぞれ、略全長にわたって、縫合部位42UL,42DL,42UR,42DRを形成するように、縫着させておく。また、各前左パネル55L,前右パネル55Rの内表面側には、左右テザー45を構成するテザー用基材63,63の一方の端末を、それぞれ、縫着させておく。後左パネル60L,後右パネル60Rは、予め、内縁60a相互を縫着させておく。このとき、上下の前後テザー50U,50Dをそれぞれ構成する2枚のテザー用基材65,65を間に挟んだ状態で、端末を共縫いしておく。まず、前左パネル55Lと前右パネル55Rとを重ねて、下縁55b,55b相互を縫着させる。このとき、下側の前後テザー50Dを構成するテザー用基材64も重ねられた状態で、端末を共縫いされる。次いで、前左パネル55Lと前右パネルと55Rを,上縁55a,55aを相互に離隔させるように開いて、突出部57L,57Rを相互に重ね、流入用開口24の周縁となる部位で、縫着させる。次いで、流入用開口24と取付孔25とを開口させる。その後、前左パネル55Lと前右パネル55Rとの上縁55a,55a相互を、縫着させる。このとき、上側の前後テザー50Uを構成するテザー用基材64も重ねられた状態で、端末を共縫いされる。次いで、前左パネル55Lの後縁55cと、後左パネル60Lの外縁60bと、を、縫着させ、同様に、前右パネル55Rの後縁55cと、後右パネル60Rの外縁60bと、を、縫着させる。その後、未縫合とされている前左パネル55L,前右パネル55Rの前縁55d側の領域を利用して、バッグ本体21を、反転させる。この未縫合の開口部位を利用して、テザー用基材63,64,65の対応する端末相互を縫着させることにより、前後テザー50U,50D,左右テザー45を形成する。その後、前左パネル55L,前右パネル55Rの前縁55dを、それぞれ、二つ折りするようにして、縫合糸を用いて縫着させれば、エアバッグ20を製造することができる。
【0032】
次に、エアバッグ装置M1の車両V1への搭載について説明をする。まず、エアバッグ20を、リテーナ13を内部に収納させた状態で、ケース16内に収納可能に折り畳み、折り畳んだエアバッグ20の周囲を、エアバッグ20の膨張時に破断可能な図示しないラッピング材によりくるんでおく。その後、折り畳まれたエアバッグ20を、ボルト13aを底壁部16aから突出させるようにして、ケース16内に収納させる。そして、インフレーター12の本体部12aを、底壁部16aの下方からケース16内に挿入させるとともに、底壁部16aから下方に突出しているリテーナ13のボルト13aを、インフレーター12のフランジ部12cに挿通させ、フランジ部12cから突出した各ボルト13aにナット14を締結させれば、折り畳まれたエアバッグ20とインフレーター12とを、ケース16に取り付けることができる。その後、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー10の連結壁部10cに、ケース16の周壁部16bを係止させ、ケース16に設けられた図示しないブラケットを車両のボディ側に固定させ、インフレーター12を図示しない制御装置に電気的に接続させれば、エアバッグ装置M1を車両V1に搭載することができる。
【0033】
エアバッグ装置M1の車両V1への搭載後、インフレーター12のガス吐出口から膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ20が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー10の扉部10a,10bを押し開かせることとなる。そして、エアバッグ20は、エアバッグカバー10の扉部10a,10bを押し開いて形成される突出用開口16cを経て、ケース16から後上方に向かって突出しつつ展開膨張して、
図1の二点鎖線及び
図7~9に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0034】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ20において、膨張完了時の後端側に配置される本体膨張部30には、インフレーター12から後方に延びるように配置される導管部23を経て、内部に膨張用ガスが流入されることとなる。膨張完了時にインパネ1の後側に配設される本体膨張部30は、導管部23の後端23b側から上下左右に膨出するようにして配設される構成であり、換言すれば、導管部23は、本体膨張部30と比較して上下左右で狭幅として前後方向に略沿った管状とされている。そのため、エアバッグ20の膨張初期に、内部に膨張用ガスを流入させて膨張しつつ、収納部位としてのケース16に形成される突出用開口16cから上方に向かって突出する導管部23が、インパネ1の上方に配置されるフロントウィンドシールド5を、強く押圧することを、的確に抑制することができる。特に、第1実施形態のエアバッグ装置M1を搭載させる車両V1では、フロントウィンドシールド5の傾きが比較的小さいが、このようなタイプの車両V1に搭載させる構成としても、エアバッグ20が、展開膨張時に、フロントウィンドシールド5を強く押圧することを、的確に抑制することができ、このようなタイプの車両V1にも好適に搭載させることができる。
【0035】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、膨張初期にフロントウィンドシールド5を強く押圧することを抑制できて、迅速にエアバッグ20を膨張させることができる。
【0036】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ20の膨張完了時に、本体膨張部30は、上端30a側(上側被支持部位33)をフロントウィンドシールド5に支持させるとともに、膨張完了時における乗員受止時に、下部前面側(下側被支持部位34の前面側)を、インパネ1の後面(後面側部位3の後面3a)に支持させるように構成されている。そのため、本体膨張部30の膨張完了時の後面側(後壁部32)によって前方移動する乗員MP(具体的には、乗員MPの上半身MU)を受け止めた際に、インパネ1の後面3aやフロントウィンドシールド5からの反力によって本体膨張部30自体が前方移動することを規制でき、本体膨張部30によって、乗員MPのさらなる前方移動を抑制して、乗員MPを的確に拘束することができる。その結果、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、膨張完了時の前端側の領域を導管部23とされているエアバッグ20であっても、乗員MPを的確に保護することができる。
【0037】
特に、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、乗員MP側に大きく張り出すように比較的前後に広いインパネ1の前端側(上面側部位2の前端2a側)に搭載されていることから、搭載位置(ケース16の配置位置)から膨張完了時に乗員MPを保護する領域(膨張完了時の本体膨張部30の配置位置)までの距離が、従来のトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置(後述する第2実施形態のエアバッグ装置M2を搭載させている車両V2のインパネ70)と比較して、長い。しかしながら、第1実施形態のエアバッグ装置M1のエアバッグ20は、膨張完了時に乗員MPを保護する本体膨張部30とケース16との間に、略管状の導管部23を配設させる構成とすることにより、このようなインパネ1を備えるタイプの車両V1に搭載させる場合にも、エアバッグ自体の容積の増大を極力抑制することができる。
【0038】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、導管部23が、エアバッグ20の膨張完了時に、フロントウィンドシールド5と非接触な構成とされている。そのため、エアバッグ20の膨張時に、導管部23がフロントウィンドシールド5と接触することを、的確に抑制することができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、膨張完了時に、導管部をフロントウィンドシールドの近傍に配置させるような構成のものを、使用してもよい。
【0039】
さらに、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、導管部23が、エアバッグ20の膨張完了時に、インパネ1の上面(上面側部位2の上面2b)に略沿うようにして、配置される構成である。そのため、本体膨張部30による乗員受止時の反力を、膨張完了時の導管部23の下面23cを接触させているインパネ1の上面側部位2の上面2bからも確保することができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、膨張完了時に、導管部をインパネから離隔して配置させるような構成のものを、使用してもよい。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態のエアバッグ装置M2について説明をする。この第2実施形態のエアバッグ装置M2を搭載させる車両V2では、
図10に示すように、インパネ70は、乗員側への張出量を、第1実施形態のエアバッグ装置M1を搭載させる車両V1のインパネ1と比較して、小さく設定されており、インパネ70は、下部側を前方に向かって傾斜させるように、断面略逆C字形状に湾曲して、形成されている。また、この車両V2においても、フロントウィンドシールド5Aは、車両V1のフロントウィンドシールド5と同様に、比較的水平方向に対する傾きを小さくするように、構成されている。そして、第2実施形態のエアバッグ装置M2は、このインパネ70の上面70a側において前後の中間となる領域に、搭載されている。
【0041】
エアバッグ装置M2は、
図10に示すように、エアバッグ75以外は、前述のエアバッグ装置M1と略同一の構成であり、同一の部材には、同一の図符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0042】
エアバッグ75は、
図10に示すように、膨張完了時に、インパネ70とフロントウィンドシールド5Aとの間に配置されるもので、
図11~16に示すように、バッグ本体76と、バッグ本体76の内部に配置されてバッグ本体76の膨張完了形状を規制する左右テザー102,前後テザー103,厚さ規制テザー104L,104Rと、を備えている。バッグ本体76は、導管部78と、導管部78の後端78b側に配設される本体膨張部85と、を備えている。このエアバッグ75も、膨張完了形状を、導管部に形成される後述する流入用開口79を中心として、略左右対称形とされている(
図12,13,18参照)。
【0043】
導管部78は、エアバッグ75の膨張完了時に、インパネ70の上面70a側に配置される部位であり、
図11,18に示すように、前後方向に略沿うとともに前端78a側を閉塞させた略筒状として、前端78a側で、インフレーター12と接続される構成である。実施形態の場合、導管部78は、膨張完了時に上下で対向する上壁部78c,下壁部78dと、左右で対向する左壁部78e,右壁部78fと、を備えて、略筒状とされている(
図14参照)。導管部78における膨張完了時の下面側(下壁部78d)には、前述のエアバッグ20と同様に、流入用開口79と取付孔80とが、形成されている(
図11,17参照)。この導管部78も、左右方向側の幅寸法を、本体膨張部85よりも小さく設定されており、具体的には、左右方向側の幅寸法を、ケース16の左右方向側の幅寸法より小さく設定されるとともに、前後の全域にわたって、幅寸法を略一定とするように、構成されている(
図18参照)。この導管部78も、車両搭載時におけるバッグ本体76の膨張完了時に、インパネ70の上面側を覆うようにして、フロントウィンドシールド5Aと非接触の状態(フロントウィンドシールド5Aとの間に隙間を設けられるような状態)で配置される構成である(
図10参照)。また、この導管部78も、バッグ本体76の膨張完了時に、
図10に示すように、インパネ70の上面70aに略沿うようにして(下壁部78dの下面側を略全面にわたってインパネ70の上面70aに接触させるようにして)、配置されることとなる。
【0044】
本体膨張部85は、導管部78の後端側から上下左右に膨出するような構成とされるもので、車両搭載時におけるバッグ本体76の膨張完了時に、インパネ70の後側に配置されて、助手席に着座している乗員MPの上半身MUから膝Kにかけてを保護可能な構成とされている(
図10,18参照)。具体的には、本体膨張部85は、
図10に示すように、膨張完了時に上部側に配置されて上半身MUを保護する上半身保護部86と、膨張完了時に下部側に配置されて膝Kを保護する膝保護部95と、を備えている。
【0045】
上半身保護部86は、バッグ本体76の膨張完了時に、導管部78から上方と左右両側とに膨出するように構成されるもので、膨張完了形状を、軸方向を左右方向に沿わせた扁平な略三角柱形状とされている。上半身保護部86は、膨張完了時に乗員MP側に配置される後壁部91と、膨張完了時に上下で対向する上壁部87,下壁部88と、膨張完了時に左右で対向する左壁部89,右壁部90と、を備えて(
図10,11,15参照)、車両搭載時における膨張完了時に、後壁部91を、乗員MPの上半身MUと対向するように、鉛直方向に略沿わせるような構成とされている(
図10参照)。また、上半身保護部86は、膨張完了時に、上端86a側を、フロントウィンドシールド5Aに当接させて支持されるように、構成されている。上半身保護部86は、
図18に示すように、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、助手席に着座している乗員MPの上半身MUの前方を広く覆い可能として、導管部78の左右方向側の幅寸法よりも大きな寸法に、設定されている。そして、上半身保護部86は、膨張完了時の上端86a側の部位(上側被支持部位93)を、左右の略全域にわたって、フロントウィンドシールド5Aに当接させて支持されるように、構成されている。上側被支持部位93は、前述のエアバッグ20と同様に、フロントウィンドシールド5Aとの当接量(接触面積)を、前方移動する乗員MPの上半身MUを受け止めても、フロントウィンドシールド5Aとの当接状体を維持可能とするような量(寸法)に、設定されている。
【0046】
膝保護部95は、バッグ本体76の膨張完了時に、導管部78から下方に膨出するように構成されるもので、上半身保護部86の下方に延びるように配設されている。この膝保護部95は、バッグ本体76の膨張完了時に、インパネ70の下部側の領域の後方に配置されるもので、インパネ70における下部側の後面70bに略沿うように、左右の側方から見て、上半身保護部86の前下端86b側から前下がりに延びるように、傾斜している(
図10,11参照)。膝保護部95は、前後方向側から見た状態において、上半身保護部86側となる上側の領域を上端側にかけて狭幅となる狭幅部95aとし、下側の領域を左右に幅広の広幅部95bとして、構成されている(
図13参照)。詳細には、膝保護部95は、膨張完了時に前後で対向する前壁部96,後壁部97と、左右で対向する左壁部98,右壁部99と、を備えるもので(
図16参照)、膨張完了時に、前面側(前壁部96の領域)を、インパネ70の後面70bに接触させるように、構成されている(
図10,11参照)。すなわち、実施形態のエアバッグ75では、膝保護部95全体が、バッグ本体76の膨張完了時に、インパネ70の後面70bに支持されることとなる。膝保護部95は、乗員MPの左右の膝の前方を広く覆い可能とするように、膨張完了時の左右方向側の幅寸法(詳細には広幅部95bの幅寸法)を、上半身保護部86の左右方向側の幅寸法よりも大きな寸法に、設定されている(
図12,13,18参照)。膝保護部95の膨張完了時の厚さ寸法は、前進移動する乗員MPの膝Kを受け止めた際に、インパネ70への底付きを抑えて、膝Kを的確に保護可能な寸法に、設定されている。
【0047】
左右テザー102は、バッグ本体76の膨張完了時において、上半身保護部86の膨張完了形状を規制するために、上半身保護部86の領域内に配置されている。左右テザー102は、膨張完了時の上半身保護部86の前後上下の略中央において、左壁部89と右壁部90とを連結するように、幅方向を上下方向に略沿わせつつ、左右方向に略沿うように、配設されている(
図11,12,15参照)。左右テザー102は、2枚のテザー用基材125,125を直列的に結合させて構成されている。
【0048】
前後テザー103は、バッグ本体76の膨張完了時において、上半身保護部86の膨張完了形状を規制するために、上半身保護部86の領域内に配置されている。前後テザー103は、左右テザー102の左右の略中央と、上半身保護部86の後壁部97における上下左右の略中央とを連結するもので、帯状のテザー用基材126を、幅方向を上下方向に略沿わせるようにして、前後方向に略沿って配設されている(
図11,15参照)。前後テザー103と左右テザー102とは、幅寸法を略同一に設定されている。
【0049】
厚さ規制テザー104L,104Rは、バッグ本体76の膨張完了時において、膝保護部95の厚さを規制するために、膝保護部95の領域内に配置されている。厚さ規制テザー104L,104Rは、左右方向側で2個並設されるもので、詳細には、
図13に示すように、膝保護部95における狭幅部95aの領域内に、配設されている。厚さ規制テザー104L,104Rは、
図17に示すように、それぞれ、略台形状のテザー用基材127,127から構成されるもので、このテザー用基材127における狭幅側の端部を前側(前壁部側)に位置させるようにして、前端104a側を狭幅とし、乗員MP側となる後端104b側にかけて拡開されるように、配設されている(
図10,11参照)。また、この厚さ規制テザー104L,104Rは、上縁側を相互に接近させるように、幅方向を、上下方向に対して傾斜させて(前後方向側から見て「ハ」字形状に)配設されている(
図13参照)。
【0050】
バッグ本体76は、所定形状の基材(基布)の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、
図17に示すように、上後側パネル110、下前側パネル115、左側パネル120L、及び、右側パネル120R、から構成されている。
【0051】
上後側パネル110は、導管部78の上壁部78cにおける後側の領域と、本体膨張部85において上半身保護部86の上壁部87から後壁部91を経て下壁部88にかけての領域と、を構成している。上後側パネル110は、
図17に示すように、導管部78の上壁部78cを構成する導管部構成部111と、本体膨張部85を構成する本体部構成部112と、を、直列的に連結させたような長尺状とされるもので、略左右対称形とされている。下前側パネル115は、導管部78の下壁部78dから上壁部78cにおける前側にかけての領域と、膝保護部95における前壁部96から後壁部97にかけての領域と、を構成している。この下前側パネル115も、導管部78を構成する導管部構成部116と、膝保護部95を構成する本体部構成部117と、を直列的に連結させたような長尺状とされるもので、略左右対称形とされている(
図17参照)。左側パネル120Lと右側パネル120Rとは、外形形状を略左右対称形とされている。左側パネル120Lは、導管部78,上半身保護部86,膝保護部95の左壁部78e,89,98の領域を構成し、右側パネル120Rは、導管部78,上半身保護部86,膝保護部95の右壁部78f,90,99の領域を構成している。バッグ本体76は、上後側パネル110と下前側パネル115との対応する短縁110c,115c,110d,115d相互を、それぞれ、結合(縫着)させ、左側パネル120L,右側パネル120Rの外縁120aと、上後側パネル110,下前側パネル115の長縁110a,110b,115a,115bと、を、それぞれ、結合(縫着)させることにより、袋状とされる。
【0052】
バッグ本体76を構成する上後側パネル110,下前側パネル115,左側パネル120L,右側パネル120R、及び、左右テザー102,前後テザー103,厚さ規制テザー104L,104Rを構成するテザー用基材125,126,127は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0053】
このようなエアバッグ75を使用した第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ75において、膨張完了時の後端側に配置される本体膨張部85には、インフレーター12から後方に延びるように配置される導管部78を経て、内部に膨張用ガスが流入されることとなる。膨張完了時にインパネ70の後側に配設される本体膨張部85は、導管部78の後端78b側から上下左右に膨出するようにして配設される構成であり、換言すれば、導管部78は、本体膨張部85と比較して上下左右で狭幅として前後方向に略沿った管状とされている。そのため、エアバッグ75の膨張初期に、内部に膨張用ガスを流入させて膨張しつつ、ケース16に形成される突出用開口16cから上方に向かって突出する導管部78が、インパネ70の上方に配置されるフロントウィンドシールド5Aを、強く押圧することを、的確に抑制することができる。
【0054】
また、第2実施形態のエアバッグ装置Mでは、本体膨張部85が、膝保護部95を備える構成であることから、本体膨張部85による上半身MUの保護に加えて、同時に、膝保護部95によって膝Kを保護することもできて、膝保護用の装置を別途搭載させなくともよく、部品点数の削減や軽量化が可能となる。
【0055】
さらに、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ75の膨張完了時に、本体膨張部85は、上半身保護部86の上端86a側(上側被支持部位93)をフロントウィンドシールド5Aに支持させるとともに、膨張完了時における乗員受止時に、下部前面側(膝保護部95の前面側)を、インパネ70の後面70bに支持させるように構成されている。そのため、本体膨張部85の膨張完了時の後面側(上半身保護部86の後壁部91)によって前方移動する乗員MP(乗員MPの上半身MU)を受け止めた際に、インパネ70の後面70bやフロントウィンドシールド5Aからの反力によって本体膨張部85自体が前方移動することを規制でき、本体膨張部85によって、乗員MPのさらなる前方移動を抑制して、乗員MPを的確に拘束することができる。その結果、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、膨張完了時の前端側の領域を導管部78とされているエアバッグ75であっても、乗員MPを的確に保護することができる。特に、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、第1実施形態のエアバッグ装置M1におけるエアバッグ20と比較して、インパネ70の後面70bによって支持される領域(膝保護部95)が広く、インパネ70との接触面積も大きく確保できることから、インパネ70から受ける反力を一層大きくすることができて、上半身保護部86により、上半身MUを一層安定して受け止めることができる。
【0056】
また、エアバッグ20Aとして、
図19,20に示すように、本体膨張部30Aの膨張完了時における車幅方向の中央側の端部(実施形態の場合、左端)付近に、後壁部32Aから後方に向かって突出するように膨張する突出膨張部130を、配設させるような構成のものを使用してもよい。後壁部32Aは、乗員保護面として、車両の前面衝突時に前方移動する乗員MPの上半身MUを受け止める部位である。突出膨張部130は、詳細には、エアバッグ20Aの膨張完了時に、助手席に着座している乗員MPの左斜め前方となる位置に配置されるもので、後壁部32Aからの突出量(前後方向側の幅寸法)及び上下方向側の幅寸法を、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時において、左斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を拘束可能な寸法に、設定されている。このようなエアバッグ20Aを使用した場合、斜め前方から衝撃力が作用する斜突時やオフセット衝突時等において、車両の車幅方向の中央側(左側)に向かうように斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを、突出膨張部130によって拘束することも可能となり、前面衝突時のみならず、斜突時やオフセット衝突時にも、乗員MPを的確に保護することができる。
【0057】
なお、実施形態では、エアバッグ20,20A,75は、膨張完了時の状態で、本体膨張部30,30A,85の下部前面側(下側被支持部位34,膝保護部95の前面側)を、インパネ1,70の後面に支持させるような構成とされているが、エアバッグは、このような構成に限定されるものではない。例えば、エアバッグとして、膨張完了時には、下部側の部位を、インパネの後面と非接触として、乗員受止時に、インパネと接触してインパネに支持されるような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…インストルメントパネル(インパネ)、2…上面側部位、2b…上面、3…後面側部位、3a…後面、5,5A…フロントウィンドシールド、10…エアバッグカバー、12…インフレーター、16…ケース(収納部位)、16c…突出用開口、20,20A…エアバッグ、23…導管部、23a…前端、23b…後端、24…流入用開口、30,30A…本体膨張部、30a…上端、31…前壁部、32,32A…後壁部(乗員保護面)、70…インストルメントパネル(インパネ)、70b…後面、75…エアバッグ、78…導管部、78a…前端、78b…後端、79…流入用開口、85…本体膨張部、86…上半身保護部、86a…上端、95…膝保護部、130…突出膨張部、MP…乗員、MU…上半身、MH…頭部、K…膝、V1,V2…車両、M1,M2…助手席用エアバッグ装置。