(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073218
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240522BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20240522BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240522BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20240522BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20240522BHJP
【FI】
H04N5/232
H04N5/222 100
G03B15/00 Q
G03B15/00 P
G03B15/00 S
G03B17/00 B
G03B17/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184316
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 成俊
【テーマコード(参考)】
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA13
2H105AA14
5C122EA42
5C122EA65
5C122FH11
5C122FH14
5C122GD01
5C122GD04
5C122GD06
5C122HA81
5C122HA82
5C122HA86
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】撮像装置のパンチルト台の動作の性能が低下している場合であっても、被写体を適切に追従しやすくする技術を提供する。
【解決手段】撮像部で撮影した映像から被写体を検出する被写体検出部112と、撮像部のパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行するパンチルト台の動作の性能が低下しているか否かを判断する判断部113と、被写体の動きに追従する追従動作をパンチルト台に実行させ、性能が低下していると判断された場合には、性能が低下していないと判断された場合よりも早いタイミングで追従動作を開始させるパンチルト駆動制御部114と、を備える、撮像装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部で撮影した映像から被写体を検出する被写体検出部と、
前記撮像部のパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行するパンチルト台の動作の性能が低下しているか否かを判断する判断部と、
前記被写体の動きに追従する追従動作を前記パンチルト台に実行させ、前記性能が低下していると判断された場合には、前記性能が低下していないと判断された場合よりも早いタイミングで前記追従動作を開始させるパンチルト駆動制御部と、
を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記映像の少なくとも一部に定められる動作判断範囲外に前記被写体が移動するか否かを判断し、
前記パンチルト駆動制御部は、前記動作判断範囲外に前記被写体が移動すると判断された場合に、前記追従動作を実行させ、
前記判断部は、前記性能が低下していると判断された場合、前記動作判断範囲を前記性能が低下していると判断されない場合に用いられる第1範囲よりも小さい第2範囲に設定する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記被写体が移動を開始したか否かを判断し、
前記パンチルト駆動制御部は、前記被写体が移動すると判断されてから動作開始時間の経過後に前記追従動作を開始させ、
前記判断部は、前記性能が低下していると判断された場合、前記動作開始時間を前記性能が低下していると判断されない場合に用いられる第1時間よりも短い第2時間に設定する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記パンチルト台の動作速度が基準速度よりも低い場合、前記パンチルト台の周囲の気温が基準温度よりも低い場合、及び前記パンチルト台の温度が前記基準温度よりも低い場合の少なくとも1つの場合に、前記性能が低下していると判断する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮像部で撮影した映像から被写体を検出するステップと、
前記撮像部のパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行するパンチルト台の動作の性能が低下しているか否かを判断するステップと、
前記被写体の動きに追従する追従動作を前記パンチルト台に実行させるステップであって、前記性能が低下していると判断された場合には、前記性能が低下していないと判断された場合よりも早いタイミングで前記追従動作を開始させるステップと、
を含む、撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動物を撮影するための撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野生動物の生態調査・研究などのために、カメラで撮影した映像から動物を検出し、検出した動物の移動に合わせて追従するために、パンチルト台を駆動させて撮影方向を変えながら当該動物を撮影する撮像装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カメラのパンチルト等を用いて被写体を追従する撮像装置が開示されている。このパンチルト動作は、カメラを搭載した電動パンチルト台が制御されることによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
野生動物の生態調査を行うために被写体を追従するように動作する撮像装置は、様々な状況で用いられる。その使用状況によっては、パンチルト台の動作の性能が低下し、被写体を適切に追従できない場合が生じる。
【0006】
上記を鑑み、本開示の目的は、撮像装置のパンチルト台の動作の性能が低下している場合であっても、被写体を適切に追従しやすくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の撮像装置は、撮像部で撮影した映像から被写体を検出する被写体検出部と、前記撮像部のパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行するパンチルト台の動作の性能が低下しているか否かを判断する判断部と、前記被写体の動きに追従する追従動作を前記パンチルト台に実行させ、前記性能が低下していると判断された場合には、前記性能が低下していないと判断された場合よりも早いタイミングで前記追従動作を開始させるパンチルト駆動制御部と、を備える。
【0008】
本開示のある態様の撮像方法は、撮像部で撮影した映像から被写体を検出するステップと、前記撮像部のパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行するパンチルト台の動作の性能が低下しているか否かを判断するステップと、前記被写体の動きに追従する追従動作を前記パンチルト台に実行させるステップであって、前記性能が低下していると判断された場合には、前記性能が低下していないと判断された場合よりも早いタイミングで前記追従動作を開始させるステップと、を含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本実施形態の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本実施形態の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、撮像装置のパンチルト台の動作の性能が低下している場合であっても、被写体を適切に追従しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る撮像部とパンチルト台との具体的な構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る撮像装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係る撮像装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】第1範囲が設定された場合について説明するための図である。
【
図7】第2範囲が設定された場合について説明するための図である。
【
図8】第2実施形態に係る撮像装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】第1時間が設定された場合について説明するための図である。
【
図10】第2時間が設定された場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る撮像装置1の構成例を示す図である。
図1に示す例では、三脚40にパンチルト台20が取り付けられ、パンチルト台20の上に撮像部10が固定される。パンチルト台20は、電動のモータを有し、例えば、基準点を起点として±150°の範囲を水平方向に回転することで、固定されている撮像部10をパンさせることができる。また、パンチルト台20は、例えば、水平状態を起点として±20°の範囲を垂直方向に回転することで、固定されている撮像部10をチルトさせることができる。撮像部10にはレンズユニット30が取り付けられている。
【0013】
図2は、第1実施形態に係る撮像部10とパンチルト台20との具体的な構成を示す図である。パンチルト台20は、パンチルト台20を水平方向に回転させるためのステッピングモータ又はサーボモータ(不図示)、パンチルト台20を垂直方向に回転させるためのステッピングモータ又はサーボモータ(不図示)、及び水平方向用のモータと垂直方向用のモータのそれぞれを駆動するためのパンチルト駆動部21を備える。パンチルト駆動部21は、撮像部10の制御部11から供給される制御信号をもとに、水平方向用のモータと垂直方向用のモータのそれぞれに流す電流を制御して、パンチルト台20のパン方向の動きとチルト方向の動きとを制御する。つまりパンチルト駆動部21は、撮像部10のパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行する。
【0014】
撮像部10は、制御部11、撮像センサ12、レンズ駆動部13及びレンズユニット30を備える。撮像部10は、可視光カメラ、近赤外線カメラ、及び遠赤外線カメラのいずれであってもよい。以下、第1実施形態では可視光カメラを例に考える。レンズユニット30は、撮像センサ12の焦点距離を切り替える可変式のズームレンズを有する。レンズ駆動部13は、ズームレンズを撮像センサ12に近づけることで画角を広角側に切り替えることができ、ズームレンズを撮像センサ12から遠ざけることで画角を狭角側に切り替えることができる。つまりレンズ駆動部13は、撮像センサ12の焦点距離を調整する。
【0015】
撮像センサ12には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサを使用することができる。撮像センサ12は、レンズユニット30を介して入射される光を電気的な映像信号に変換する。撮像センサ12は、30Hz又は60Hzのフレームレートの動画を撮像して、制御部11に出力する。
【0016】
図3は、第1実施形態に係る撮像部10の制御部11の構成例を示す図である。制御部11は、映像処理部111、被写体検出部112、判断部113及びパンチルト駆動制御部114を含む。これらの構成要素は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ISP(Image Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェアなどのプログラムを利用できる。
【0017】
映像処理部111は、撮像センサ12から入力される映像に対して、階調補正、輪郭補正などの各種の映像処理を施して出力する。
【0018】
被写体検出部112は、撮像部で撮影した映像から被写体を検出する。被写体検出部112は、映像処理が施された映像信号に基づいて、観測対象とする動物、その動物の動きベクトル、および動物の移動速度を検出するための検出器を備える。検出器は例えば、観測対象とする動物の全身、顔、顔のパーツ(左目、右目、口、左耳、右耳など)毎に生成された、いわゆる検出モデルであり、検出辞書とも呼ばれ、被写体検出部112が参照可能なメモリ等の記憶媒体に格納される。各検出器は、観測対象とする動物の映った多数の画像に含まれる動物の全身、顔、顔のパーツの特徴量をそれぞれ学習することで生成される。画像内の動物の全身、顔、顔のパーツは、学習前にアノテーションツールにより枠付けされる。特徴量として例えば、HOG(Histograms of Oriented Gradients)、Haar-like、LBP(Local Binary Patterns)などを使用することができる。
【0019】
被写体検出部112は、入力される映像の各フレーム画像に基づいて、各検出器を用いて観測対象とする動物を探索する。フレーム画像内において観測対象とする動物が検出されると、検出した動物が後続するフレーム画像内において追従される。動物の追従には例えば、パーティクルフィルタやミーンシフト法を使用することができる。被写体検出部112は、検出した動物の追従処理において、動物の動きベクトルを検出することができる。フレーム画像内に観測対象とする動物が複数存在する場合、例えば、被写体検出部112は、撮像部10からの距離が最も短い動物を被写体として選定する。
【0020】
判断部113は、各種判断処理を実行する。例えば、判断部113は、パンチルト台20の動作の性能が低下しているか否かを判断する。
【0021】
パンチルト駆動制御部114は、パンチルト駆動部21を駆動してパンチルト台20にパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行させることで、パンチルト台20の動作を制御する。特に、パンチルト駆動制御部114は、被写体検出部112が検出した動物の動きに追従する追従動作をパンチルト台20に実行させる。
【0022】
ここで、野生動物の生態調査を行うために被写体を追従するように動作する撮像装置1は、様々な状況で用いられる。その使用状況によっては、撮像装置1の動作の性能が低下し、被写体を適切に追従できない場合が生じる。例えば、早朝や夜間などの低温環境においては、パンチルト台20のパンチルト駆動部21に塗布されたオイルの粘度が高くなることで昼間に比べてパンチルト台20の動作速度が低下し、適切な追従を行うことができない場合が生じる。また、野外にはバッテリを充電するための電源設備が通常設けられていないため、例えば野外環境において撮像装置1を長時間使用する場合、撮像装置1のバッテリ(不図示)の残量が低下した状態で撮影を行うことが想定される。撮像装置1のバッテリの残量が低下している状態においては、バッテリから供給される電圧が低下するため、パンチルト台20の動作速度が低下し、適切な追従を行うことができない場合が生じる。
【0023】
一方で、パンチルト台20の動作速度自体を高く設定しておくことが想定されるが、この場合、パンチルト台20を駆動するモータの負荷が大きくなり、モータの駆動音が大きくなり、動物が駆動音に気付いて動物の自然な動きを撮影しにくくなる場合がある。
【0024】
上記を鑑み、
図4を用いて、第1実施形態に係る撮像装置1の処理を説明する。
図4は、第1実施形態に係る撮像装置1の制御部11の処理S10のフローチャートである。
【0025】
ステップS11で、映像処理部111は、撮像センサ12で撮像された映像を入力して、入力された映像に対して所定の映像処理を実施する。
【0026】
ステップS12で、被写体検出部112は、フレーム画像内において検出器を用いて観測対象とする動物を探索することにより、観測対象とする動物が検出されたかどうかを判断する。観測対象とする動物が検出されない場合(ステップS12のNo)、処理S10は終了する。観測対象とする動物が検出された場合(ステップS12のYes)、処理S10はステップS13に進む。
【0027】
ステップS13で、パンチルト駆動制御部114は、検出された観測対象の動物を被写体として追従する。ステップS13の詳細については後述する。
【0028】
ステップS14で、判断部113は、撮影を終了するか否かを判断する。例えば、使用者が撮像装置1の操作ボタンを操作して撮影を終了することが選択された場合に、撮影を終了すると判断される。撮影を終了する場合(ステップS14のYes)、処理S10は終了する。撮影を終了しない場合(ステップS14のNo)、処理S10はステップS11に戻り、撮影が終了するまでステップS11~S14が繰り返し実行される。
【0029】
図5を用いて、第1実施形態の追従処理を詳細に説明する。
図5は、第1実施形態に係る制御部11によるステップS13の処理のフローチャートである。
【0030】
ステップS101で、判断部113は、被写体が移動を開始したか否かを判断する。判断部113は例えば、追従中の動物が画角内のいずれかの位置から画面端の方向へ向かって単位時間あたりに一定の距離移動した場合に、被写体が移動を開始したと判断する。ここで画角とは、撮像部10の撮像範囲を示す角度である。被写体が移動を開始した場合(ステップS101のYes)、処理S13はステップS102に進む。被写体が移動を開始していない場合(ステップS101のNo)、処理S13は終了する。
【0031】
ステップS102で、判断部113は、パンチルト台20の動作の性能が低下しているか否かを判断する。例えば、判断部113は、パンチルト台20の動作速度が基準速度よりも低い場合に、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断する。パンチルト台20の動作速度は、パンチルト台20のパンチルト駆動部21からその回転速度を取得できる場合にはその取得した回転速度から求められてもよいし、パンチルト動作開始後の数フレームの画面上の動きに基づいて求められてもよい。基準速度は、例えば、パンチルト台20の動作の性能が低下していない状態でのパンチルト台20の平均動作速度以下の速度とすることができる。判断部113は、例えば、同一駆動条件におけるパンチルト台20の実際の平均動作速度が上記性能が低下していない状態でのパンチルト台20の平均動作速度の90%以下である場合に、基準速度よりも低い速度であると判断し、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断する。
【0032】
また、判断部113は、パンチルト台20の周囲の気温が基準温度よりも低い場合やパンチルト台20の温度が基準温度よりも低い場合に、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断してもよい。パンチルト台20の周囲の気温又はパンチルト台20の温度が低くなると、パンチルト台20の動作速度が低下しやすくなるためである。この場合、例えば、撮像装置1に温度センサを設け、この温度センサの検出結果に基づいて基準温度よりパンチルト台20の周囲の気温やパンチルト台20の温度が基準温度よりも低いか否かが判断されればよい。判断部113は、パンチルト台20の周囲の気温やパンチルト台20の温度が例えば摂氏5度以下である場合に、基準温度よりも低いと判断する。パンチルト台20の動作の性能が低下していない場合(ステップS102のNo)、処理S13はステップS103に進む。パンチルト台20の動作の性能が低下している場合(ステップS102のYes)、処理S13はステップS104に進む。判断部113は、パンチルト台20の周囲の気温が基準温度よりも低い状態で、例えば60秒などの所定時間以上経過した場合や、パンチルト台20の温度が基準温度よりも低い状態で例えば60秒などの所定時間以上経過した場合に、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断してもよい。
【0033】
ステップS103で、判断部113は、ステップS105で後述する映像の少なくとも一部に定められる動作判断範囲を第1範囲に設定する。ステップS104で、判断部113は、ステップS105で後述する動作判断範囲を第2範囲に設定する。第1範囲及び第2範囲の詳細については後述する。
【0034】
ステップS105で、判断部113は、映像において被写体が設定された動作判断範囲外に移動するか否かを判断する。例えば、判断部113は、被写体が画面端の方向へ向かって移動し、設定された動作判断範囲から出た場合、又は被写体の移動速度を検知して被写体が一定時間経過後に設定された動作判断範囲から出そうな場合に、被写体が設定された動作判断範囲外に移動すると判断する。例えば、判断部113は、被写体が動きを停止している場合、被写体が設定された動作判断範囲外に移動しないと判断する。ステップS103で第1範囲が設定された場合にはステップS105で動作判断範囲として第1範囲が用いられ、ステップS104で第2範囲が設定された場合にはステップS105で動作判断範囲として第2範囲が用いられる。被写体が設定された動作判断範囲外に移動する場合(ステップS105のYes)、処理S13はステップS106に進む。被写体が設定された動作判断範囲外に移動しない場合(ステップS105のNo)、処理S13は終了する。
【0035】
ステップS106で、パンチルト駆動制御部114は、被写体の移動方向に向けて、パンチルト駆動部21を駆動してパン動作及びチルト動作の少なくとも一方を実行させることでパンチルト台20に追従動作を実行させる。これにより、動作判断範囲外に移動した被写体を設定された動作判断範囲内に戻すことができる。例えば、パンチルト駆動制御部114は、被写体が動作判断範囲の中央に戻るようにパンチルト台20を動作させることが好ましい。
【0036】
ステップS107で、判断部113は、映像において被写体が設定された動作判断範囲内に納まっているか否かを判断する。例えば、判断部113は、被写体が設定された動作判断範囲に存在する場合、又は被写体が動きを停止させている場合、被写体が設定された動作判断範囲内に納まっていると判断する。被写体が設定された動作判断範囲内に納まっている場合(ステップS107のYes)、処理S13は終了し、処理S10はステップS14に進む。被写体が設定された動作判断範囲内に納まっていない場合(ステップS107のNo)、処理S13はステップS106に戻り、被写体が設定された動作判断範囲内に納まるまでステップS106及びS107が繰り返し実行される。
【0037】
図6を用いて、パンチルト台20の性能の低下が検出されず、動作判断範囲として第1範囲が設定された場合について説明する。
図6に示すように、第1範囲は、映像の中央部分に定められる。例えば、第1範囲は、撮影映像P1の中心から上下左右の画角端までの80%程度までの範囲が設定される。
図6の撮影映像P1では、被写体Tが第1範囲内に存在する状態から右方向に移動し、被写体Tが第1範囲外へと出ようとしている。判断部113は被写体Tが第1範囲外に移動すると判断し(ステップS105)、この判断に応答して、パンチルト駆動制御部114は、被写体Tの移動方向である右方向にパンチルト台20を動作させることで、被写体Tを追従する(ステップS106)。その結果、被写体Tを追従するようにパンチルト台20を動作させた後の撮影映像P2のように、被写体Tを第1範囲内に再び収めることができる。
【0038】
図7を用いて、パンチルト台20の性能の低下が検出された結果、動作判断範囲として第2範囲が設定された場合について説明する。
図7は、第1範囲の代わりに第2範囲を用いる点で
図6の例と異なる。
図7に示すように、第2範囲は第1範囲よりも小さく、第2範囲の境界線は第1範囲の境界線よりも映像の中央部に近い位置に設定されている。例えば、第2範囲は、撮影映像P2の中心から上下左右の画角端までの60%程度までの範囲が設定される。
図7の例では、第2範囲が第1範囲よりも小さいため、判断部113は
図6の場合よりも早いタイミングで被写体Tが第1範囲外に移動すると判断することになる(ステップS105)。その結果、パンチルト台20の性能の低下が検出された場合、パンチルト駆動制御部114はパンチルト台20の性能の低下が検出されない場合よりも早いタイミングでパンチルト台20の追従動作を開始させることができる(ステップS106)。
【0039】
以上説明したように、第1実施形態では、パンチルト駆動制御部114は、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断された場合には、上記性能が低下していないと判断された場合よりも早いタイミングで追従動作を開始させる。本構成によると、パンチルト台20の動作を開始するタイミングが早くなるため、パンチルト台20の動作速度が低下している場合であっても被写体を適切に追従しやすくなる。
【0040】
第1実施形態では、判断部113は、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断された場合、動作判断範囲を性能が低下していると判断されない場合に用いられる第1範囲よりも小さい第2範囲に設定する。本構成によると、パンチルト台20の初動を適切に早めることができるため、被写体を適切に追従しやすくなる。また、パンチルト台20の動作の性能が低下していない場合には第1範囲が用いられることにより、パンチルト台20が過剰に動いてパンチルト台20のモータの駆動音が必要以上に大きくなることを抑制することができる。その結果、動物の自然な動きを撮影しやすくなる。
【0041】
第1実施形態では、判断部113は、パンチルト台20の動作速度が基準速度よりも低い場合、パンチルト台20の周囲の気温が基準温度よりも低い場合、及びパンチルト台20の温度が基準温度よりも低い場合の少なくとも1つの場合に、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断する。本構成によると、パンチルト台20の動作の性能が低下しているか否かを適切に判断することが可能となるため、被写体を適切に追従しやすくなる。
【0042】
第2実施形態
以下、第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0043】
図8は、第2実施形態に係る制御部11のステップS13の処理のフローチャートである。
図8のステップS201、S202は、
図5のステップS101、S102と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0044】
ステップS203で、判断部113は、ステップS205で後述する動作開始時間を第1時間に設定する。ステップS204で、判断部113は、ステップS205で後述する動作開始時間を第2時間に設定する。第1時間及び第2時間の詳細については後述する。
【0045】
ステップS205で、パンチルト駆動制御部114は、ステップS201で被写体が移動を開始したと判断されてから、設定された動作開始時間の経過後に被写体の移動方向に向けてパンチルト台20を動作させる。ステップS203で第1時間が設定された場合にはステップS205で動作開始時間として第1時間が用いられ、ステップS204で第2時間が設定された場合にはステップS205で動作開始時間として第2時間が用いられる。ステップS205の後、処理S13はステップS201に戻り、被写体の移動が検出されなくなるまでステップS201~S205が繰り返し実行される。
【0046】
図9を用いて、パンチルト台20の性能の低下が検出されず、動作開始時間として第1時間が設定された場合について説明する。
図9の撮影映像P1では、被写体Tが第1範囲内に存在する状態から右方向に移動している。判断部113は被写体Tが移動を開始したと判断し(ステップS202)、パンチルト駆動制御部114は、この判断時点から第1時間t1の経過後に、被写体Tの移動方向である右方向にパンチルト台20を動作させることで、被写体Tを追従する(ステップS205)。その結果、被写体Tを追従するようにパンチルト台20を動作させた後の撮影映像P2のように、被写体Tを画角内に再び収めることができる。
【0047】
図10を用いて、パンチルト台20の性能の低下が検出された結果、動作開始時間として第2時間が設定された場合について説明する。
図10は、第1時間t1の代わりに第2時間t2を用いる点で
図9の例と異なる。第2時間t2は、第1時間t1よりも短い。例えば、第2時間は、第1時間よりも1[s(秒)]短い時間(t2=t1-1[s])である。
図10の例では、第2時間が第1時間よりも短いため、パンチルト駆動制御部114は、
図9の場合よりも早いタイミングでパンチルト台20の追従動作を開始させることができる(ステップS205)。
【0048】
第1時間および第2時間は、被写体の移動速度や、撮像部10から被写体までの距離によって変化させてもよい。撮像部10から被写体までの距離は、撮影映像における被写体の横方向または縦方向の画素数と置き換えてもよい。例えば、撮像部10から被写体Tまでの距離が50m程度であり、被写体Tが横方向の大きさが1mから2m程度の動物である場合、被写体Tが歩いて移動している場合は、第1時間t1を3.0秒に設定し、第2時間t2を2.0秒に設定する。同様に、被写体Tが走って移動している場合は、第1時間t1を1.0秒に設定し、第2時間を0.5秒に設定する。
【0049】
第2実施形態では、判断部113は、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断された場合、動作開始時間を上記性能が低下していると判断されない場合に用いられる第1時間よりも短い第2時間に設定する。本構成によると、パンチルト台20の初動を適切に早めることができるため、被写体を適切に追従しやすくなる。また、パンチルト台20の動作の性能が低下していない場合には第1時間が用いられることにより、パンチルト台20が過剰に動いてパンチルト台20のモータの駆動音が必要以上に大きくなることを抑制することができる。その結果、動物の自然な動きを撮影しやすくなる。
【0050】
上記実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0051】
以下、変形例を説明する。
【0052】
上述の実施形態では、パン動作とチルト動作の両方が可能なパンチルト台20を使用する例を説明した。この点、パンチルト台20の代わりに、パン動作のみが可能なパン台、又はチルト動作のみが可能なチルト台を使用してもよい。例えば、観測対象の動物が檻に入れられており、動物の行動範囲が制限される場合、パン台又はチルト台のいずれか一方のみを使用することもある。
【0053】
パンチルト台の動作の性能の低下は、パン方向、チルト方向で独立して検知させてもよい。例えば、パン方向のみ動作速度の低下が検知された場合には、動作判断範囲の水平方向の範囲を小さくして、水平方向の追従動作の開始タイミングが早くなるようにしてもよい。
【0054】
撮像装置1は、三脚40を使用しない、天井、壁、ポールなどに取り付けられたPTZカメラで構成されてもよい。PTZカメラとは、カメラの向き、およびカメラのズーム倍率を変化させるPTZ(Pan-Tilt-Zoom)機構を備えるカメラのことである。
【0055】
判断部113は、撮像装置1のバッテリの残量が閾値よりも少なくなった場合に、パンチルト台20の動作の性能が低下していると判断してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 撮像装置、 10 撮像部、 11 制御部、 111 映像処理部、 112 被写体検出部、 113 判断部、 114 パンチルト駆動制御部、 12 撮像センサ、 13 レンズ駆動部、 20 パンチルト台、 21 パンチルト駆動部、 30 レンズユニット、 40 三脚。