(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073236
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】環境制御装置、環境制御システム、方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240522BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184337
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000168632
【氏名又は名称】高圧ガス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 滉樹人
(72)【発明者】
【氏名】福地 真也
(72)【発明者】
【氏名】小原 崇
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022DA15
(57)【要約】
【課題】作物の可販部の色に基づいて炭酸ガスを作物に効率的に施用するように動作可能な環境制御装置、環境制御システム、方法及びコンピュータプログラムを提供すること
【解決手段】作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御装置は、1つ以上の画像データを取得する入出力インタフェース装置であって、1つ以上の画像データは、カメラによって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、入出力インタフェース装置と、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する記憶装置と、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する演算回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御装置であって、
1つ以上の画像データを取得する入出力インタフェース装置であって、前記1つ以上の画像データは、カメラによって撮影された、前記作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、入出力インタフェース装置と、
前記1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する記憶装置と、
前記1つ以上の画像データに含まれる前記可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、前記色メタデータ及び前記所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する演算回路と、
を備える、環境制御装置。
【請求項2】
前記演算回路は、前記取得処理において、
前記1つ以上の画像データに基づいて前記可販部を検出する検出処理と、
検出された前記可販部のそれぞれを前記可販部の色に基づいて、色変化前クラス、色変化中クラス及び色変化後クラスを含むクラスのいずれか1つに分類する分類処理と、
前記クラスのそれぞれに分類された、前記1つ以上の画像データに含まれる前記可販部の数を決定する数量決定処理と、
を実行し、前記制御処理において、前記色メタデータと所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を変化させるように前記制御信号を出力し、
前記色メタデータは、前記1つ以上の画像データに含まれる前記可販部の総数に対する、前記色変化前クラスとして分類された前記可販部の数の割合、又は前記総数に対する、前記色変化中クラスとして分類された前記可販部の数の割合の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項3】
前記色変化中クラスは、前記色変化中クラスを複数の段階に分けた複数の色変化中サブクラスを含み、
前記総数に対する、前記色変化中クラスとして分類された前記可販部の数の割合は、前記総数に対する、前記複数の色変化中サブクラスのそれぞれとして分類された前記可販部の数の割合の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の環境制御装置。
【請求項4】
前記1つ以上の画像データは、第1の時点、及び前記第1の時点より前の第2の時点で撮影された画像に関連し、
前記出力判断データは、特定閾値をさらに含み、
前記演算回路は、前記取得処理において、
前記1つ以上の画像データに基づいて前記可販部を検出する検出処理と、
検出された、前記1つ以上の画像データに含まれる前記可販部の数を決定する数量決定処理と、
検出された前記可販部のそれぞれについて色の代表値を決定する代表値決定処理と、
前記第1の時点の前記1つ以上の画像データに基づく各代表値と、前記第2の時点の前記1つ以上の画像データに基づく各代表値とを所定の組で組み合わせるマッチング処理と、
組み合わされた前記第1の時点の各代表値と前記第2の時点の各代表値との間の差に基づいて前記色メタデータをそれぞれ算出する色変化算出処理と、
を実行し、前記制御処理において、前記特定閾値以上である前記色メタデータの個数と前記所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を変化させるように前記制御信号を出力する、
請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項5】
前記色メタデータは、組み合わされた前記第1の時点の各代表値と前記第2の時点の各代表値との間の差に基づいて算出された色の変化の値である色変化値を含む、請求項4に記載の環境制御装置。
【請求項6】
前記色メタデータは、組み合わされた前記第1の時点の各代表値と前記第2の時点の各代表値との間の差に基づいて算出された色の変化の速度である色変化速度を含む、請求項4に記載の環境制御装置。
【請求項7】
前記演算回路は、前記1つ以上の画像データを取得すると、機械学習によりあらかじめ生成された学習済みモデルに前記1つ以上の画像データのそれぞれを入力データとして入力することで、前記取得処理を実行し、前記取得処理によって生成された可販部に関連するデータを出力データとして作成する、請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項8】
前記演算回路は、出力データとして、前記可販部に対応する領域にバウンディングボックスを付与したデータを生成する、請求項7に記載の環境制御装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、マスク領域ベースの畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項7に記載の環境制御装置。
【請求項10】
前記作物は、前記可販部の色の変化に応じて転流動態が変化する植物である、請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項11】
前記可販部は、前記作物の偽果、果実または果皮を含む、請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項12】
前記入出力インタフェース装置は、二酸化炭素濃度計によって検出された炭酸ガスの濃度データを取得し、
前記記憶装置は、前記濃度データをさらに格納し、
前記出力判断データは、前記濃度データをさらに含む、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の環境制御装置。
【請求項13】
前記演算回路は、炭酸ガスの供給量を増加させるように前記制御信号を出力する場合、前記制御信号に基づいて炭酸ガスを供給するように構成された炭酸ガス供給装置にオン信号を出力する、請求項12に記載の環境制御装置。
【請求項14】
前記演算回路は、前記二酸化炭素濃度計によって取得された前記濃度データが所定値に達すると、前記炭酸ガス供給装置にオフ信号を出力する、請求項13に記載の環境制御装置。
【請求項15】
前記出力判断データは、前記二酸化炭素濃度計、温度センサ、湿度センサ、日射計、サーモグラフィ、光合成光量子密度センサ、土壌水分センサ、電気伝導率センサ、風向センサ、又は風速センサのうちの少なくとも1つから取得された値をさらに含み、前記二酸化炭素濃度計により取得された値は、炭酸ガスの濃度に基づいて算出された炭酸ガス交換速度を含む、請求項12に記載の環境制御装置。
【請求項16】
前記演算回路は、前記出力判断データに基づいて、光合成速度に影響を与える所定装置を制御する制御信号をさらに出力する、請求項14に記載の環境制御装置。
【請求項17】
前記所定装置は、養液電気伝導度制御装置、養液量制御装置、灌水量制御装置、遮光カーテン、細霧ミスト、窓の開閉装置、換気扇、循環扇、暖房機、温湯ポンプ、補光ランプ、又はヒートポンプのうちのいずれかを制御するように構成された装置の少なくとも1つを含む、請求項16に記載の環境制御装置。
【請求項18】
請求項1に記載の環境制御装置と、
前記カメラと、
前記炭酸ガスの濃度を測定する二酸化炭素濃度計と、
を備える、環境制御システム。
【請求項19】
前記環境制御装置から出力される制御信号に基づいて炭酸ガスを供給するように構成された炭酸ガス供給装置をさらに備える、請求項18に記載の環境制御システム。
【請求項20】
作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御システムであって、
1つ以上の画像データを取得する1つ以上の入出力インタフェース装置であって、前記1つ以上の画像データは、カメラによって撮影された、前記作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、1つ以上の入出力インタフェース装置と、
前記1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する1つ以上の記憶装置と、
前記1つ以上の画像データに含まれる前記可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、前記色メタデータ及び前記所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する1つ以上の演算回路と、
を備える、環境制御システム。
【請求項21】
1つ以上の記憶装置にアクセス可能な演算回路により実行される、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する方法であって、
前記記憶装置は、カメラによって撮影された、前記作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む1つ以上の画像データ、及び所定閾値を格納し、
前記方法は、前記1つ以上の画像データに含まれる前記可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、前記色メタデータ及び前記所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を含む、
方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法を演算回路に実行させるための、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境制御装置、環境制御システム、方法及びコンピュータプログラムに関する。本開示は、より具体的には、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御装置、環境制御システム、方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作物の収量又は品質の向上のために、炭酸ガスの施用が行われている。例えば、特許文献1には、栽培作物の葉部分に集中的に炭酸ガスを施用する炭酸ガス施用装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、時間や天候によって炭酸ガスの施用を制御することを開示しているが、作物の状態を考慮して制御することを開示していない。
【0005】
本開示は、作物の可販部の色に基づいて炭酸ガスを作物に効率的に施用するように動作可能な環境制御装置、環境制御システム、方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る環境制御装置は、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御装置であって、1つ以上の画像データを取得する入出力インタフェース装置であって、1つ以上の画像データは、カメラによって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、入出力インタフェース装置と、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する記憶装置と、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する演算回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作物の可販部の色に基づいて炭酸ガスを作物に効率的に施用するように動作可能な環境制御装置、環境制御システム、方法及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る環境制御システムの一例のブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る環境制御装置の演算回路の動作例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態1に係る環境制御装置の演算回路による取得処理の具体的な処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】学習済みモデルに画像データを入力することで実行される、検出処理及び分類処理における物体検出の一例を示す。
【
図5】本開示の実施の形態2に係る環境制御システムの一例のブロック図である。
【
図6】実施の形態2に係る環境制御装置の演算回路の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態3に係る環境制御装置の演算回路の動作例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態3に係る環境制御装置の演算回路による取得処理の具体的な処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態3に係る環境制御装置の演算回路によるRGB変換処理によるRGB抽出の一例を示す。
【
図10】実施の形態4に係る環境制御システムの一例のブロック図である。
【
図11】実施の形態4に係る環境制御装置の演算回路の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態4に係るサーバ装置の演算回路の動作例を示すフローチャートである。
【
図13】変形例に係る環境制御システムの一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する構成は、本開示の一例に過ぎず、本開示は下記の実施の形態に限定されることはなく、これら実施の形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計に応じて種々の変更が可能である。また、下記する実施の形態に係る環境制御システムの構成又は動作は、矛盾しない限り、別の実施の形態に係る環境制御システムの構成若しくは動作又は変形例に記載の構成若しくは動作を含むことができる。
【0010】
本開示に係る環境制御システムが備える環境制御装置は、カメラにより撮影された画像に対する画像認識によって、作物の色の変化の状態を取得し、色の変化の状態に基づいて作物に施用する炭酸ガスの濃度を調整することができる。環境制御装置は、具体的には、作物の可販部の色の変化の状態を取得する。作物の可販部とは、例えば、作物の偽果、果実または果皮を含む、当該作物において販売可能な部位を示す。
【0011】
下記する実施の形態において、作物はイチゴを対象とするがこれに限定されない。本開示に係る環境制御装置10で利用可能な作物は、成長に伴って可販部の色が変化する作物であればよい。作物は、例えば、トマト、ブドウ、又はミニトマト等を含んでもよい。また、本開示に係る環境制御装置は、適用する対象を1種類の作物に限定する必要はなく、複数の作物に対して適用し得る。本明細書において、作物の成長は、作物が育つことを包括的に含み得、作物の成熟又は老化を含んでもよい。
【0012】
一般に多くの作物は、外観の変化に応じて転流動態が変化する。このような作物は、転流動態の変化に応じて、可販部への炭素供給量が変化する。また、いくつかの作物の可販部は、作物の成長に伴って外観の色が変化する。いくつかの作物は、可販部の色が変化する際に、当該可販部への炭素供給量が変化する。作物内で供給される炭素は、光合成によって生成されるため、光合成時に作物に施用された炭酸ガスの供給量又は濃度によって炭素供給量が変化する。本開示に係る環境制御装置は、可販部の色の状態に基づいて、当該作物へ施用する炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させることで、可販部への炭素供給量を制御する。それによって、本開示に係る環境制御装置は、効率的に作物の可販部の成長を促進し、可販部の重量増加、糖度の上昇、又は見栄えの向上を図ることができる。本開示に係る環境制御装置は、可販部の色の変化に応じて転流動態が変化する植物に適用可能である。
【0013】
(実施の形態1)
【0014】
図1は、本開示の実施の形態1に係る環境制御システム1Aの一例のブロック図である。
図1に示すように環境制御システム1Aは、環境制御装置10と、カメラ20と、炭酸ガス供給装置30とを備える。本開示に係る環境制御装置10は、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御装置10であって、1つ以上の画像データを取得する入出力インタフェース装置13であって、1つ以上の画像データは、カメラ20によって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、入出力インタフェース装置13と、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する記憶装置12と、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する演算回路11と、を備える。
【0015】
このような構成によれば、環境制御装置10は、作物に施用する炭酸ガスの濃度を効率よく制御することができる。具体的には、環境制御装置10は、作物の可販部の色から算出される色メタデータに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることができる。したがって、環境制御装置10は、カメラ20から取得した画像データに含まれる可販部の色に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0016】
1.構成
1-1.環境制御システム
本開示に係る環境制御システム1Aについて
図1を用いて説明する。上記したように、環境制御システム1Aは、環境制御装置10と、カメラ20と、炭酸ガス供給装置30と、を備える。
【0017】
1-2.環境制御装置
環境制御装置10は、例えば、コンピュータである。環境制御装置10は、演算回路11と、記憶装置12と、入出力インタフェース装置13と、を備える。
【0018】
演算回路11は、環境制御装置10における種々の処理を実行する。演算回路11は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算回路11は、記憶装置12と通信可能に構成され、当該記憶装置12に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、環境制御装置10における各種の処理を実現する。環境制御装置10における処理は、例えば、取得処理、制御処理、取得処理にて実行される検出処理等の各種の処理等を含む。環境制御装置10における処理は、後述する各種のセンサからデータを取得して記憶装置12に格納すること、取得したデータに対して所定の処理を実行すること、得られたデータを記憶装置12に格納すること等を含む。演算回路11は、ハードウェア資源とソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算回路11は、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現され得る。このような演算回路11は、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成され得る。
【0019】
記憶装置12は、種々の情報を記憶できる記憶媒体である。記憶装置12は、例えば、DRAMやSRAM、フラッシュメモリ等のメモリ、HDD、SSD,その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置12は、上記したように演算回路11が行う各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。また、記憶装置12は、後述する画像データ、色メタデータ、出力判断データなど、演算回路11によって取得又は算出されたデータを格納し得る。また、記憶装置12は、演算回路11が上記処理を実行するための閾値、例えば後述する所定閾値及び特定閾値、を格納し得る。
【0020】
入出力インタフェース装置13は、ユーザからの情報の入力のための入力装置、及びユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有する。入出力インタフェース装置13は、1以上のヒューマン・マシン・インタフェースを備える。ヒューマン・マシン・インタフェースの例としては、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、トラックボール等)、タッチパッド等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置、タッチパネル等の入出力装置が挙げられる。入出力インタフェース装置13は、有線又は無線により外部装置又はシステムと通信回線を介して接続するための通信回路を含む。入出力インタフェース装置13は、例えば、USB(登録商標)又はイーサネット(登録商標)等の有線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。また、入出力インタフェース装置13は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、携帯電話回線等の無線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。環境制御装置10の入出力インタフェース装置13は、カメラ20からの画像データを取得する映像入力端子を含むことが想定され得る。
【0021】
1-3.カメラ
カメラ20は、例えば、CCD又はCMOS等の撮像素子を備えた撮像装置である。本実施の形態1に係るシステム1Aにおいて、例えば、作物を育てるビニールハウス内に、1つ又は複数のカメラ20が定点に配置され得る。ビニールハウスは、施設園芸用温室又はハウスの一例であり、作物は、ガラス温室等、他の施設園芸用温室又はハウスで栽培されてもよい。カメラ20は、画像を撮影し、環境制御装置10に撮影した画像の画像データを送信し得る。画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。カメラ20は、例えば、定期的に静止画を撮影し、環境制御装置10に画像データを送信し得る。当該画像データは、記憶装置12に格納され得る。カメラ20は、所定時間ごとに撮影してもよいし、1日又は数日ごとに撮影してもよい。
【0022】
また、カメラ20は、動画を撮影し、環境制御装置10に動画の画像データを送信してもよい。画像データが動画である場合、環境制御装置10の演算回路11は、取得した動画から一定フレーム間隔で静止画を取得し、記憶装置12に格納し得る。
【0023】
カメラ20は、定点に設置される必要はなく、例えば、ビニールハウス内を移動する移動体に取り付けられてもよい。この場合、演算回路11は、当該カメラ20から取得した画像データから一定フレーム間隔で静止画を取得し、所定の方法により類似度を判定する。演算回路11は、例えば、類似度が一定値以下の可販部を用いて、本実施の形態1に係る環境制御装置10の動作を実行し得る。演算回路11は、所定の方法として、例えば、AKAZE等の特徴点抽出及びブルートフォースマッチングによる組み合わせ最適化を行ってもよい。
【0024】
AKAZEは、特徴点を検出することができる手法であり、対象物の大きさや角度が変更されていても類似している特徴点を検出することができる。ブルートフォースマッチングは、2つの画像間で各画像が有する特徴点を総当たりで比較することで各特徴点の類似度を算出する手法である。本開示に係る実施の形態1では、演算回路11は、AKAZE及びブルートフォースマッチングを実行することで、2つ以上の画像データから検出された作物の2つの可販部が同一の可販部を表す場合、当該可販部を除外する。具体的には、演算回路11は、類似度が一定値より大きい場合、同一の可販部を表すと判断して当該可販部のうちの一方を除外し、類似度が一定値以下の特徴点を有する可販部を、異なる可販部であるとして後述する検出処理で検出対象として使用する。そうすることで、演算回路11は、2つ以上の画像データに含まれる可販部のうち、同一の可販部を除外することができる。
【0025】
1-4.炭酸ガス供給装置
炭酸ガス供給装置30は、炭酸ガス源31と、供給配管32と、制御バルブ33と、コントローラ34を備える。
【0026】
炭酸ガス源31は、炭酸ガスを供給できる源であれば特に限定されず、炭酸ガスが充填されたガスボンベまたはタンクを用いることができる。以下、本明細書において、このような炭酸ガス源31を、適宜、生ガス式の炭酸ガス源31ともいう。炭酸ガス源31は、バイオマスまたは化石燃料を燃焼することで炭酸ガスを発生させる装置であってもよい。以下、本明細書において、化石燃料等を燃焼させるタイプの炭酸ガス源31を、適宜、燃焼式の炭酸ガス源31ともいう。炭酸ガス源31には、例えば、ネポン社製のグロウェアCG4型シリーズが使用され得る。炭酸ガス源31は供給配管32に接続されている。炭酸ガス源31から放出する炭酸ガスは、供給配管32へと供給される。
【0027】
供給配管32は、例えば、炭酸ガス源31から供給される炭酸ガスを作物の近傍へと供給できる筒、管などの、施用のためのチューブ、ホース又はパイプを含む。作物の近傍は、例えば、作物へ炭酸ガスが供給される範囲内である。作物の近傍は、施用しようとしている所定の濃度以上の炭酸ガスが供給される範囲であってもよい。供給配管32は、作物の近傍だけでなく、作物が育てられているビニールハウス内に全体的に炭酸ガスを供給するように構成されてもよい。
【0028】
制御バルブ33は、例えば電磁弁であり、供給配管32内に設けられる。制御バルブ33は、コントローラ34からの信号に基づいて開閉を切り換えることで炭酸ガス源31から供給される炭酸ガスを作物へ施用するか否かを制御する。制御バルブ33には、例えば、パイロット式2ポート電磁弁AD11シリーズが使用され得る。
【0029】
コントローラ34は、環境制御装置10から受信した制御信号に基づいて制御バルブ33にさらなる制御信号を出力し、制御バルブ33の開閉を制御する。コントローラ34は、炭酸ガス源31に接続され、炭酸ガス源31による炭酸ガスの発生量を調整できてもよい。コントローラ34は、例えば、プログラムを記憶したメモリと、プロセッサに対応する演算回路と、所定の信号又はデータを送受信できる入出力インタフェース装置とを備える。コントローラ34では、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行する。当該プロセッサは、演算回路11と同様に構成されてもよい。当該メモリは、記憶装置12と同様に構成されてもよい。当該入出力インタフェース装置は、入出力インタフェース装置13と同様に構成されてもよい。
【0030】
コントローラ34は、具体的には、環境制御装置10から制御信号としてオン信号を受信すると、制御バルブ33を開放するように制御する。また、コントローラ34は、環境制御装置10から制御信号としてオフ信号を受信すると、制御バルブ33を閉鎖するように制御する。オン信号は、例えば、所定の閾値以上の電圧であってもよい。オフ信号は、例えば、当該閾値以下又は別の所定の閾値以下の電圧であってもよい。
【0031】
実施の形態1に係る環境制御システム1において、炭酸ガス供給装置30は、供給配管32を介して炭酸ガスを作物の近傍へと供給するがこれに限定されない。例えば、炭酸ガス供給装置30は、炭酸ガス源31がビニールハウス内の一部に設置され、ファン等を用いて炭酸ガス源31によって供給される炭酸ガスをビニールハウス全体に拡散するように構成されてもよい。この場合、制御バルブ33は、炭酸ガス源31から空気中への炭酸ガスの放出量を制御し得る。また、炭酸ガス供給装置30は、制御バルブ33を備えず、受信した信号に基づいて炭酸ガス源31の駆動が制御されてもよい。また、炭酸ガス供給装置30は、入力されたオン信号及びオフ信号に基づいて接点を開閉できるリレーをさらに備え、リレーが、コントローラ34から出力される信号に基づいて接点を開閉することで、制御バルブ33の開閉を制御するように構成されてもよい。
【0032】
実施の形態1に係る環境制御システム1において、コントローラ34は、炭酸ガス供給装置30に設けられているが、これに限定されない。例えば、コントローラ34は、環境制御装置10内に設けられてもよい。この場合、コントローラ34は、例えば入出力インタフェース装置13を介して有線で制御バルブ33又は炭酸ガス源31と接続され、当該装置を駆動するための制御信号を炭酸ガス供給装置30へと出力し得る。また、コントローラ34は、炭酸ガス供給装置30の駆動電力を出力してもよい。また、演算回路11が、コントローラ34の機能を包含してもよい。つまり、演算回路11が制御バルブ33等に制御信号を出力してもよい。
【0033】
2.動作
本システム1Aにおいて、環境制御装置10は、カメラ20から取得したデータに基づいて、作物の状態を判断する。環境制御装置10は、判断した作物の状態に基づいて、炭酸ガス供給装置30の動作を制御して、作物に施用する炭酸ガスの供給量を調整する。
【0034】
本実施の形態1に係る環境制御装置10の動作の一例について
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態1に係る環境制御装置10の演算回路11の動作例を示すフローチャートである。
【0035】
まず、カメラ20が作物を撮影すると、環境制御装置10の演算回路11は、撮影された画像を画像データとして入出力インタフェース装置13を介して取得する(S11)。演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、当該1つ以上の画像データを記憶装置12に格納する。演算回路11は、撮影時刻と関連づけて1つ以上の画像データを記憶装置12に格納してもよい。
【0036】
演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、1つ以上の画像データに基づいて色メタデータを取得する取得処理を実行する(S12)。演算回路11は、取得処理において、1つ以上の画像データに対して画像処理を行うことで、作物の可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する。
【0037】
図3は、実施の形態1に係る環境制御装置10の演算回路11による取得処理の具体的な処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、取得処理において、各画像データに対して画像処理を実行して作物の可販部を検出する検出処理を実行する(S21)。これにより、演算回路11は、各画像データに含まれる作物の可販部を検出し、また、各画像データにおいて可販部とそれ以外との境界を検出することができる。画像データに複数の可販部が含まれる場合、演算回路11は、複数の可販部を検出し、複数の可販部の境界を検出することができる。演算回路11による可販部の検出の詳細は、後述する。演算回路11は、各画像データに含まれる可販部を検出すると、可販部として識別した領域を示すデータを記憶装置12に格納する。
【0038】
可販部の境界を検出すると、演算回路11は、検出された可販部のそれぞれの可販部の色に基づいて所定の分類クラスのうちの1つに分類処理を実行する(S22)。本実施の形態1において、所定の分類クラスは、色変化前クラス、色変化中クラス、及び色変化後クラスを含む。演算回路11は、可販部の色が色変化前であると判断すると色変化前クラスとして分類する。演算回路11は、可販部の色が色変化中であると判断すると色変化中クラスとして分類する。演算回路11は、可販部の色が色変化後であると判断すると色変化後クラスとして分類する。所定の分類クラスはこれに限定されず、4つ以上の分類クラスを含んでもよい。例えば、所定の分類クラスは、色の変化の程度に基づいて分類クラスの「色変化中クラス」をさらに細かく分類した複数の「色変化中サブクラス」を含んでもよい。複数の「色変化中サブクラス」は、「第1色変化中サブクラス」及び「第2色変化中サブクラス」を含んでもよい。当然、所定の分類クラスは、複数の色変化中サブクラスとして、第3色変化中サブクラスなど、さらに多くの分類クラスを含んでもよい。本実施の形態1において、演算回路11は、検出された可販部の色が緑色の場合、当該可販部を色変化前クラスとして分類する。演算回路11は、検出された可販部の色が緑色から赤色へと変化中の場合(例えば白色の場合)、当該可販部を色変化中クラスとして分類する。演算回路11は、検出された可販部の色が赤色の場合、当該可販部を色変化後クラスとして分類する。演算回路11は、可販部を分類クラスのいずれかに分類すると分類に関するデータとして記憶装置12に格納する。
【0039】
上記した検出処理の一例について説明する。本実施の形態1に係る環境制御装置10の演算回路11は、検出処理において、機械学習アルゴリズムを用いて画像認識及び物体境界検出を行う。例えば。本実施の形態1において用いられる機械学習アルゴリズムはマスク領域ベースの畳み込みニューラルネットワーク(マスクRCNN)が使用され得る。具体的には、本実施の形態1において用いられる機械学習アルゴリズムは、例えば、ROIプーリング層、クラス識別層、及びバウンディングボックス回帰層を含む。後述する実施の形態2,3についても機械学習アルゴリズムは同様に構成され得る。
【0040】
ROIプーリング層は、任意の大きさの画像データが入力されると、当該画像データにおける任意の大きさの特徴部分を、所定の大きさとなるようにプーリングする。クラス識別層は、ROIプーリング層により得られた特徴に基づいて、所定の分類クラスのうちのいずれである可能性が最も高いかを算出し、当該特徴を可能性が最も高い分類クラスに分類する。バウンディング回帰層は、ROIプーリング層で得られた特徴に基づいて、バウンディングボックスの位置及び大きさを再調整する。機械学習アルゴリズムを用いてこのような処理を行うことで、演算回路11は、画像認識及び物体境界検出を実行できる。
【0041】
機械学習アルゴリズムで用いられる学習済みモデルは、教師データとして、作物の可販部に対応する領域をマスクしたマスク画像と、当該可販部が分類される分類クラスとの組を用いて学習される。すなわち、本実施の形態1に係る環境制御装置10において、教師データは、3つの組を有する。3つの組のうちの1つは、色変化前クラスに分類される可販部の画像と、当該可販部に対応する領域をマスクしたマスク画像である。また、3つの組のうちの他の1つは、色変化中クラスに分類される可販部の画像と、当該可販部に対応する領域をマスクしたマスク画像である。3つの組のうちの残りの1つは、色変化後クラスに分類される可販部の画像と、当該可販部に対応する領域をマスクしたマスク画像である。
【0042】
演算回路11は、上記のように学習した学習済みモデルに、入力データとして可販部を含む画像の画像データを入力すると、検出処理により、入力された画像データに含まれる可販部を検出する。また、演算回路11は、入力された画像データと、当該画像データから検出された1つ以上の可販部とを関連付けて、当該画像データにおける可販部に対応する領域をマスクしたマスク画像データを作成し、記憶装置12に格納する。そして、演算回路11は、分類処理により、検出された可販部を分類クラスに分類する。また、演算回路11は、後述する数量決定処理により、入力された画像データに含まれる各分類クラスに分類された可販部の個数を決定する。
【0043】
このようにして、演算回路11は、学習済みモデルに画像データを入力すると、各可販部をマスクしたマスク画像データ及びマスクされた可販部の個数、並びに可販部を分類したクラスデータを出力する。各可販部にバウンディングボックス(矩形の枠)が付されたバウンディングボックスデータを出力してもよい。出力されたデータは、記憶装置12に格納される。マスク画像データは、例えば、各可販部をマスキングした2値画像データである。
【0044】
図4は、学習済みモデルに画像データを入力することで実行される、検出処理及び分類処理における物体検出の一例を示す。
図4に示す画像には、4つのイチゴが含まれており、各イチゴに対応する領域に対してマスキングM1~M4が付されている。また、各イチゴはそれぞれ色変化後クラスとして分類されており、画像上にも「red」と表示されている。なお、「red_st」は、「色変化後のイチゴ」という分類クラスを意味する。また、
図4に示す画像は、各イチゴに対応する領域にバウンディングボックスB1~B4が付されている。このように、演算回路11は、画像データが学習済みモデルに入力されると、少なくともマスク画像データと、クラスデータと、が出力される。演算回路11は、バウンディングボックスデータをさらに出力してもよい。出力された各データは、記憶装置12に格納され得る。
【0045】
再び
図3を参照しつつ、演算回路11による取得処理の具体的な処理の一例をさらに説明する。可販部を分類クラスのいずれかに分類すると、演算回路11は、分類クラスのそれぞれに分類された可販部の数を決定する数量決定処理を実行する(S23)。本実施の形態1において、演算回路11は、1つ以上の画像データで検出された可販部について、色変化前クラスとして分類された可販部の数と、色変化中クラスとして分類された可販部の数と、色変化後クラスとして分類された可販部の数と、を取得できる。また、演算回路11は、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数を取得できる。さらに、演算回路11は、上記の数に基づいて、色変化中クラスとして分類された可販部の割合(以下、適宜「色変化中割合」と称する)を取得できる。色変化中割合は、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、色変化中クラスとして分類された可販部の数の割合を示す。つまり、色変化中割合は、“色変化中クラスとして分類された可販部の数”/“1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数”を示す。演算回路11は、色変化中割合を色メタデータとして記憶装置12に格納する。
【0046】
なお、上記したように色変化中クラスを複数の色変化中サブクラスに分類する場合、演算回路11は、複数の色変化中サブクラスのそれぞれについて、数量決定処理を実行し得る。また、演算回路11は、複数の色変化中サブクラスの少なくとも1つについて、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、当該色変化中サブクラスとして分類された可販部の数の割合を取得できる。
【0047】
例えば、複数の色変化中サブクラスが、第1色変化中サブクラス及び第2色変化中サブクラスを含む場合、演算回路11は、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、第1色変化中サブクラスとして分類された可販部の数の割合を取得できてもよい。つまり、演算回路11は、第1色変化中割合を取得できる。また、演算回路11は、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、第2色変化中サブクラスとして分類された可販部の数の割合を取得できてもよい。つまり、演算回路11は、第2色変化中割合を取得できる。演算回路11は、第1色変化中割合と第2色変化中割合の両方を取得できてもよい。演算回路11は、色変化中クラスを、複数の色変化中サブクラスに分類する場合であっても、色変化中割合を取得できてもよい。
【0048】
このように、演算回路11は、複数の色変化中サブクラスのそれぞれに分類された可販部の数について、可販部の総数に対する割合を取得することができる。演算回路11は、1つ以上の色変化中サブクラスに関する色変化中割合のそれぞれを色メタデータとして記憶装置に格納し得る。
【0049】
本実施の形態1において、色メタデータは、時系列データとして記憶装置12に格納される。色メタデータは、例えばカメラ20が画像を取得した日付を含む。演算回路11は、色メタデータを移動平均によって平滑化してもよい。演算回路11は、例えば、今回取得した色メタデータと、前日に取得した色メタデータとの平均を算出して、算出された平均値に基づいて後述する制御処理を行ってもよい。色メタデータが有する時点の情報は、日付に限定されず、日付に加えて又はその代わりに、時刻を含んでもよい。後述する実施の形態2での色メタデータ、及び実施の形態3での色メタデータは、同様に、時系列データとして記憶装置12に格納され得る。
【0050】
演算回路11は、色メタデータを記憶装置12に格納すると、取得処理を終了する。
【0051】
色メタデータを取得すると、演算回路11は、出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理を実行する(S13)。演算回路11は、例えば、出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量をどのように制御するか決定し、制御信号を出力する。出力判断データは、色メタデータと、色メタデータに関する所定閾値(すなわち、色変化中割合に関する所定閾値)とを含む。
【0052】
演算回路11は、例えば、色メタデータと、所定閾値とを比較して、比較結果に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御できる。演算回路11は、例えば、上記した、色変化中割合が所定閾値以上の場合、供給量を増加させ又は供給を開始するように制御信号を出力し、当該割合が所定閾値未満の場合、供給量を減少させまたは供給を停止するように制御信号を出力してもよい。
【0053】
供給を停止するように又は濃度を上昇させないように制御する場合(S13:NO)、演算回路11は、制御処理において入出力インタフェース装置13を介して炭酸ガス供給装置30へ制御信号としてオフ信号を出力する(S14)。炭酸ガス供給装置30は、オフ信号を受信すると、出力オフ状態へと移行する。出力オフ状態は、制御バルブ33を閉じた状態である。また、炭酸ガス供給装置30は、オフ信号を受信した際、すでに出力オフ状態だった場合、当該状態を維持する。
【0054】
供給量を変化又は濃度を上昇させるように制御する場合(S13:YES)、演算回路11は、制御処理において炭酸ガス供給装置30へ制御信号としてオン信号を出力する(S15)。炭酸ガス供給装置30は、オン信号を受信すると、出力オン状態へと移行する。オン状態は、制御バルブ33が開放された状態である。また、炭酸ガス供給装置30は、オン信号を受信した際、すでに出力オン状態だった場合、当該状態を維持する。炭酸ガス供給装置30は、例えば、制御バルブ33を開閉させることで、出力オン状態と出力オフ状態とを切り換えることができる。以下、ステップS13~S15を総称して適宜、制御処理と称する。
【0055】
炭酸ガス供給装置30は、出力オン状態及び出力オフ状態だけではなく、炭酸ガスが供給されない第1供給状態、炭酸ガスが供給される第2供給状態、及び第2供給状態より炭酸ガスの供給量が多い第3供給状態等、3つ以上の状態を有してもよい。炭酸ガス供給装置30は、制御バルブ33の開閉度を制御することで、このような状態を提供することができる。この場合、演算回路11は、制御信号として、オン信号又はオフ信号の代わりに、3種類の信号(例えば、第1供給信号~第3供給信号)を出力することで、制御し得る。
【0056】
例えば、演算回路11は、色変化中割合が第1割合閾値未満の場合、第1供給状態に対応する第1供給信号を出力してもよい。また、演算回路11は、当該割合が第1割合閾値以上、かつ第2割合閾値未満の場合、第2供給信号を出力してもよい。また、演算回路11は、当該割合が第2割合閾値以上の場合、第3供給信号を出力してもよい。炭酸ガス供給装置30は、例えば、第1供給信号を受信すると制御バルブ33を閉じ、第2供給信号を受信すると制御バルブ33を部分的に開き、第3供給信号を受信すると制御バルブ33を完全に開くことで、炭酸ガスの供給量を調整できる。所定閾値は、第1割合閾値~第3割合閾値を含み得る。
【0057】
オン信号又はオフ信号を出力すると、演算回路11は、環境制御装置10の動作を終了する。
【0058】
このように動作することで、演算回路11は、色変化中割合に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御することができる。したがって、環境制御装置10は、例えば可販部が色変化中である作物が多いタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させることができ、作物の可販部の重量増加、糖度の上昇、及び見栄えの向上を図ることができる。
【0059】
このようにして、本開示の実施の形態1に係る環境制御装置10は、取得した画像データに基づいて、色変化中割合を算出することができる。環境制御装置10は、算出した色変化中割合を所定閾値と比較することで、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力できる。例えば、環境制御装置10は、色変化中割合が大きいとき、炭酸ガス供給装置30が供給する炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させることができる。それによって、環境制御装置10は、可販部が色変化中である作物が多いタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させることができ、作物の可販部の重量増加、糖度の上昇、及び見栄えの向上を図ることができる。したがって、環境制御装置10は、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0060】
[効果]
実施の形態1に係る環境制御装置10によれば、以下の効果を奏することができる。
【0061】
本開示の実施の形態1に係る環境制御装置10は、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御装置10であって、1つ以上の画像データを取得する入出力インタフェース装置13であって、1つ以上の画像データは、カメラ20によって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、入出力インタフェース装置13と、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する記憶装置12と、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する演算回路11と、を備える。
【0062】
このような構成によれば、環境制御装置10は、作物に施用する炭酸ガスの供給量又は濃度を効率よく制御することができる。具体的には、環境制御装置10は、作物の可販部の色から算出される色メタデータに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることができる。したがって、環境制御装置10は、カメラ20から取得した画像データに含まれる可販部の色に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0063】
また、環境制御装置10において、演算回路11は、取得処理において、1つ以上の画像データに基づいて可販部を検出する検出処理と、検出された可販部のそれぞれを可販部の色に基づいて、色変化前クラス、色変化中クラス及び色変化後クラスを含むクラスのいずれか1つに分類する分類処理と、クラスのそれぞれに分類された、1つ以上の画像データに含まれる可販部の数を決定する数量決定処理と、を実行し、制御処理において、色メタデータと所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させるように制御信号を出力し、色メタデータは、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、色変化中クラスとして分類された可販部の数の割合を含む。このように動作することで、演算回路11は、1つ以上の画像データから色が変化中である可販部の割合を取得でき、色が変化中である可販部の個数が多いときに、炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させるように制御することができる。例えば、演算回路11は、色メタデータが所定閾値以上である場合、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置10は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0064】
(実施の形態2)
次に、
図5、6を参照しつつ、本開示の実施の形態2に係る環境制御システム1Bによる動作の一例について説明する。
図5は、本開示の実施の形態2に係る環境制御システム1Bの一例のブロック図である。環境制御システム1Bは、環境制御システム1Aに対して、さらにCO2(carbon dioxide)センサ(二酸化炭素濃度計)40を備える。
【0065】
CO2センサ40は、周囲の炭酸ガス(すなわち、二酸化炭素)の濃度を測定できるセンサである。CO2センサ40には、例えば、村田製作所製のIMG-CA0011-00が使用され得る。CO2センサ40は、カメラ20の近傍に配置され得、カメラ20が撮影している作物の近傍の炭酸ガスの濃度を測定できる。
【0066】
環境制御システム1Bにおいて、環境制御装置10は、カメラ20およびCO2センサ40から取得したデータに基づいて、作物の状態を判断する。環境制御装置10は、判断した作物の状態に基づいて、炭酸ガス供給装置30の動作を制御して、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変動させて濃度を調整できる。
【0067】
図6は、本実施の形態2に係る環境制御装置10の演算回路11の動作例を示すフローチャートである。
図6から分かるように、本実施の形態2に係る環境制御装置10は、実施の形態1に対して、演算回路11が炭酸ガスの濃度をさらに取得する。実施の形態1において、環境制御装置10は、カメラ20で撮影された画像データに含まれる可販部の色変化中割合と所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力する。実施の形態2に係る環境制御装置10は、さらに炭酸ガスの濃度を用いて炭酸ガスの供給量を制御する点で、実施の形態1の場合と異なる。以下の説明では、上記した実施の形態1と同様の処理の説明は、適宜省略する。
【0068】
まず、カメラ20が作物を撮影すると、環境制御装置10の演算回路11は、撮影された画像を画像データとして入出力インタフェース装置13を介して取得する(S11)。演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、当該1つ以上の画像データを記憶装置12に格納する。演算回路11は、撮影時刻と関連づけて1つ以上の画像データを記憶装置12に格納してもよい。
【0069】
演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、1つ以上の画像データに基づいて色メタデータを取得する取得処理を実行する(S12)。
【0070】
次に、演算回路11は、CO2センサ40によって測定された炭酸ガスの濃度を濃度データとして入出力インタフェース装置13を介して取得する(S12B)。演算回路11は、炭酸ガスの濃度データを取得すると、当該濃度データを記憶装置12に格納する。演算回路11は、取得時刻と関連づけて濃度データを出力判断データとして記憶装置12に格納してもよい。
【0071】
次に、演算回路11は、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理を実行する(S13)。供給を停止させるように又は濃度を上昇させないように制御する場合(S13:NO)、演算回路11は、制御処理において入出力インタフェース装置13を介して炭酸ガス供給装置30へとオフ信号を出力する(S14)。供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御する場合(S13:YES)、演算回路11は、制御処理において炭酸ガス供給装置30へとオン信号を出力する(S15)。
【0072】
実施の形態2において、演算回路11は、取得した色メタデータと、取得した炭酸ガスの濃度データと、所定閾値と、を用いて、制御処理を行う。演算回路11は、例えば、色変化中割合と所定閾値とを比較し、また、炭酸ガスの濃度と所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を制御できる。所定閾値は、色変化中割合に対する割合閾値、及び炭酸ガス濃度に対する濃度閾値を含む。
【0073】
例えば、演算回路11は、色変化中割合が所定の割合閾値以上、かつ炭酸ガスの濃度が所定の濃度閾値以下のとき、供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御信号を出力してもよい。また、演算回路11は、色変化中割合が所定の割合閾値未満、又は濃度が所定の濃度閾値以上のとき、供給を停止又は濃度の上昇を停止するように制御信号を出力してもよい。
【0074】
供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御する際の閾値は、供給を停止又は濃度の上昇を停止するように制御する際の閾値と異なってもよい。例えば、演算回路11は、炭酸ガス濃度が390ppm以下である場合、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように動作してもよい。また、演算回路11は、炭酸ガス濃度が410ppm以上である場合、炭酸ガスの供給を停止又は濃度の上昇を停止するように動作してもよい。当然、演算回路11は、上記以外の条件に基づいて炭酸ガスの供給量を制御してもよい。演算回路11は、このように閾値が設定されることで、炭酸ガス供給装置30へ短期間で繰り返しオン信号及びオフ信号を出力するのを防ぐことができる。以下、本明細書において、演算回路11がオン信号を出力する炭酸ガス濃度の閾値を第1閾値、オフ信号を出力する炭酸ガス濃度の閾値を第2閾値ともいう。
【0075】
演算回路11は、色変化中割合が所定の割合閾値以上のとき、炭酸ガス濃度が第1閾値以下になるとオン信号を出力し、第2閾値以上になるとオフ信号を出力し得る。本実施の形態において記載する作物であるイチゴの一例の場合、当該所定の割合閾値は、0.3から1の範囲に含まれる値のいずれかであってもよい。つまり、演算回路11は、一例として、色変化中割合が0.3以上、かつ炭酸ガス濃度が390ppm以下である場合、オン信号を出力し得る。また、演算回路11は、色変化中割合が0.3以上であったとしても、炭酸ガス濃度が410ppm以上である場合、オフ信号を出力し得る。例えば、演算回路11は、色変化中割合が当該所定の割合閾値未満になると、オフ信号を出力してもよい。所定の割合閾値は、作物によって変動し得る。また、演算回路11は、作物によっては、色変化中割合が所定の割合閾値未満のとき、炭酸ガス濃度が第1閾値以下になるとオン信号を出力し、第2閾値以上になるとオフ信号を出力するように構成されてもよい。このように、演算回路11は、作物又はその品種によって、種々の処理を行うように構成されてもよい。
【0076】
第1閾値及び第2閾値は、種々の組み合わせが想定され得る。光合成速度は、2000ppmの炭酸ガス濃度で飽和し得る。したがって、例えば、本実施の形態において記載する作物であるイチゴの一例の場合、第1閾値及び第2閾値は、200ppmから2000ppmの範囲で設定されてもよい。例えば、第1閾値と第2閾値は、それぞれ、300ppmと320ppm、390ppmと410ppm、490ppmと510ppm、590ppmと610ppm、...、1480ppmと1500ppm等、約20ppmの差で任意の組み合わせで設定され得る。また、第1閾値と第2閾値は、それぞれ、300ppmと350ppm、390ppmと440ppm、490ppmと540ppm、590ppmと640ppm、...、1450ppmと1500ppm等、約50ppmの差で任意の組み合わせで設定され得る。当然、第1閾値と第2閾値との差は、約20ppm又は約50ppmに限定されず、生ガス式の炭酸ガス源31を用いる場合、例えば約5ppmから約200ppmの間で任意に設定され得る。また、燃焼式の炭酸ガス源31を用いる場合、第1閾値と第2閾値との差は、例えば約5ppmから約500ppmの間で任意に設定され得る。他の実施の形態において、演算回路11がオン信号又はオフ信号を出力する場合についても、第1閾値及び第2閾値は同様に設定され得る。
【0077】
制御信号を出力すると、演算回路11は、供給量の調整の判定を再度実行するか否か判断する(S16)。演算回路11は、供給量の調整を再度実行すると判断した場合(S16:YES)、ステップS12Bに戻り、ステップS12B~ステップS15を再び実行する。例えば、演算回路11は、供給量の調整を再び実行する場合、制御信号の出力(S14又はS15)から所定期間経過後に、ステップS12B~S15を実行してもよい。演算回路11は、供給量の調整を行わないと判断した場合(S16:NO)、動作を終了する。このように動作することで、演算回路11は、より適切に炭酸ガスの濃度を調整することができる。なお、演算回路11は、ステップS17を実行することなく動作を終了してもよい。また、演算回路11は、必ずしも炭酸ガスの濃度の取得(S12B)を取得処理(S12)の後に実行する必要があるわけではない。例えば、演算回路11は、ステップS17の実行後でない場合、炭酸ガスの濃度の取得(S12B)を、取得処理(S12)より前に実行してもよい。
【0078】
このように炭酸ガス濃度を用いて炭酸ガスの供給量を制御することで、演算回路11は、色変化中の可販部の割合、及び、現在、作物に施用している炭酸ガスの濃度に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力することができる。それによって、環境制御装置10は、例えば可販部が色変化中である作物が多いタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させることができ、作物の可販部の重量増加、糖度の上昇、及び見栄えの向上を図ることができる。また、環境制御装置10は、可販部が色変化中である作物が多かったとしても、炭酸ガスの濃度が十分に高ければ、炭酸ガスの供給を停止又は濃度の上昇を停止させ、炭酸ガスが浪費される可能性を低減し、コストを抑えることができる。
【0079】
[効果]
実施の形態2に係る環境制御装置10によれば、以下の効果を奏することができる。
【0080】
本開示の実施の形態2に係る環境制御装置10において、入出力インタフェース装置13は、CO2センサ40によって検出された炭酸ガスの濃度データを取得し、記憶装置12は、濃度データをさらに格納し、出力判断データは、濃度データをさらに含む。このように構成されることで、環境制御装置10は、色メタデータ及び濃度データに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置10は、カメラ20から取得した画像データに含まれる可販部の色、及び炭酸ガスの濃度に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0081】
また、環境制御装置10において、演算回路11は、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御信号を出力する場合、制御信号に基づいて炭酸ガスを供給するように構成された炭酸ガス供給装置30にオン信号を出力する。このように動作することで、演算回路11は、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御する場合、オン信号を炭酸ガス供給装置30に出力し、炭酸ガスの濃度を上昇させることができる。
【0082】
また、環境制御装置10において演算回路11は、色メタデータが所定条件を満たしていたとしても、CO2センサ40によって取得された濃度データが所定値に達すると、炭酸ガス供給装置30にオフ信号を出力する。このように動作することで、演算回路11は、炭酸ガスの濃度があらかじめ設定された濃度に達すると、炭酸ガスの濃度の上昇を停止するように制御できる。それによって、環境制御装置10は、炭酸ガスの濃度が高い場合は炭酸ガスの消費量を低減することができ、効率的に作物の成長を促進しつつ、コストを抑えることが出来る。
【0083】
(実施の形態3)
図7を参照しつつ、本開示の実施の形態3に係る環境制御システム1Bによる動作の例について説明する。
図7は、本開示の実施の形態3に係る環境制御装置10の演算回路11の動作の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、上記した実施の形態1、2と同様の処理の説明は、適宜省略する。
【0084】
まず、カメラ20が作物を撮影すると、環境制御装置10の演算回路11は、撮影された画像を画像データとして入出力インタフェース装置13を介して取得する(S31)。演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、当該1つ以上の画像データを記憶装置12に格納する。演算回路11は、撮影時刻と関連づけて1つ以上の画像データを記憶装置12に格納してもよい。
【0085】
演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、1つ以上の画像データに基づいて色メタデータを取得する取得処理を実行する(S32)。演算回路11は、取得処理において、1つ以上の画像データに対して画像処理を行うことで、作物の可販部の色に基づいて色メタデータを取得する。
【0086】
図8は、実施の形態3に係る環境制御装置10の演算回路11による取得処理の具体的な処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、取得処理は、検出処理と、数量決定処理と、マスク抽出処理と、RGB抽出処理と、代表値決定処理と、マッチング処理と、色変化算出処理と、を含む。演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、取得処理において、各画像データに対して画像処理を実行して作物の可販部を検出する検出処理を実行する(S41)。これにより、演算回路11は、各画像データに含まれる作物の可販部を検出し、また、各画像データにおいて可販部とそれ以外との境界を検出することができる。画像データに複数の可販部が含まれる場合、演算回路11は、複数の可販部を検出し、複数の可販部の境界を検出することができる。演算回路11による可販部の検出の詳細は、後述する。演算回路11は、各画像データに含まれる可販部を検出すると、可販部として識別した領域を示すマスク画像データを記憶装置12に格納する。
【0087】
上記した検出処理の一例について説明する。本実施の形態3に係る環境制御装置10の演算回路11は、検出処理において、機械学習アルゴリズムを用いて画像認識及び物体境界検出を行う。本実施の形態3において用いられる機械学習アルゴリズムは、例えば、ROIプーリング層、及びバウンディングボックス回帰層を含む。
【0088】
機械学習アルゴリズムで用いられる学習済みモデルは、教師データとして、作物の可販部に対応する領域をマスクしたマスク画像と、当該可販部を示す作物の種類との組を用いて学習される。
【0089】
演算回路11は、上記のように学習した学習済みモデルに、入力データとして可販部を含む静止画像の画像データを入力すると、検出処理により、入力された画像データに含まれる可販部を検出する。また、演算回路11は、入力された画像データと、当該画像データから検出された1つ以上の可販部とを関連付けて、当該画像データにおける可販部に対応する領域をマスクしたマスク画像データを作成し、記憶装置12に格納する。また、例えば、可販部が、作物の分類クラス(本実施の形態においてはイチゴ)に分類されてもよい。そして、演算回路11は、後述する数量決定処理により、入力された画像データに含まれる可販部の個数を決定する。
【0090】
このようにして、演算回路11は、学習済みモデルに画像データを入力すると、各可販部をマスクしたマスク画像データ及びマスクされた可販部の個数を出力する。演算回路11は、可販部を分類したクラスデータを出力してもよい。また、各可販部にバウンディングボックスが付されたバウンディングボックスデータを出力してもよい。出力されたデータは、対応する画像が撮影された時点と関連付けて、記憶装置12に格納され得る。マスク画像データは、例えば、各可販部をマスキングした2値画像データである。
【0091】
可販部の境界を検出すると、演算回路11は、1つ以上の画像データから検出された可販部の数を決定する数量決定処理を実行する(S42)。演算回路11は、当該数を、可販部の1つ以上の画像データに対応する画像が撮影された時点と関連付けて、記憶装置12に格納する。
【0092】
演算回路11は、可販部の数を格納すると、検出処理で作成されたマスク画像データから、各可販部をマスクした個別マスクデータを抽出するマスク抽出処理を実行する(S43)。個別マスクデータは、記憶装置12に格納され得る。抽出された個別マスクデータは、対象の可販部が含まれる画像データと同じ大きさを有するデータである。また、個別マスクデータは、対象の可販部に対応する画素が1を有し、その他の画素が0を有する2値データである。
【0093】
個別マスクデータを抽出すると、個別マスクデータと、当該個別マスクデータに対応する画像データとを用いて、個別マスクデータにてマスクされた領域に対応する、画像データにおける可販部のRGBを抽出するRGB抽出処理を実行する(S44)。個別マスクデータに対応する画像データは、当該個別マスクデータの基となる画像データを示す。演算回路11は、例えば、抽出した個別マスクデータに対して、モルフォロジー変換を行い、モルフォロジー変換後の個別マスクデータと、画像データとを重ね合わせて可販部のRGBデータを抽出する。
【0094】
具体的には、演算回路11は、個別マスクデータに対して収縮処理を行い、マスクされた領域を収縮させる。すなわち、演算回路11は、マスクされた領域において、可販部の境界部分に対応する部位を除去する。したがって、収縮処理後の個別マスクデータでは、可販部の中央部分に対応する画素がマスクされた領域である。個別マスクデータは、上記したように2値データであり、マスクされた領域の画素は1を有し、その他の領域の画素は0を有する。したがって、演算回路11は、モルフォロジー変換後の個別マスクデータの各画素と、対応する画像データにおける対応する位置の各画素との積を算出することで、可販部のRGBデータを取得できる。可販部のRGBデータは、可販部の中央部分に対応する領域の画素は、RGBに関して所定の値を有し、その他の画素は、RGBに関して全て0の値を有する。
【0095】
図9は、実施の形態3に係る環境制御装置10の演算回路11によるRGB変換処理によるRGB抽出の一例を示す。
図9(a)は、所定の画像データに含まれる所定の可販部について取得された個別マスクデータである。
図9(b)は、個別マスクデータに対して収縮処理を実行することで作成された、収縮処理後の個別マスクデータである。
図9(a)において、領域R1がマスクされている領域である。
図9(b)において、領域R2がマスクされている領域である。
図9(a)と
図9(b)とを比較すると分かるように、収縮処理後の個別マスクデータの可販部に対応する領域は、収縮処理前の個別マスクデータの可販部に対応する領域に比べて、可販部の境界に対応する領域が除去されている。
図9(c)は、収縮処理後の個別マスクデータから作成されたRGBデータである。
図9(c)において、領域R3がRGBの情報が付与されている領域である。
図9(c)に示すように、RGBデータは、収縮処理後の個別マスクデータにおける可販部に対応する領域に対して、RGBの情報が付与されている。
【0096】
再び
図8を参照しつつ、演算回路11による取得処理の具体的な処理の一例をさらに説明する。可販部のRGBデータを抽出すると、演算回路11は、当該可販部を示す代表値を算出する代表値算出処理を実行する(S45)。代表値は、任意の方法によって算出される、各可販部を示す色である。本動作例において、演算回路11は、可販部の色をRGB空間からHSV空間に変換し、色相(Hue)の値を代表値として用いる。なお、色相は、次の式(1)によって求めることができる。式(1)において、Hは、色相を示す。Rは、RGB空間におけるR成分を示す。Gは、RGB空間におけるG成分を示す。Bは、RGB空間におけるB成分を示す。
【0097】
【0098】
本例において、演算回路11は、各画素の色相の中央値を代表値として算出する。算出された代表値は、当該可販部の、第1の時点(例えば撮影された時刻)での代表値として記憶装置12に格納される。演算回路11は、各可販部について、代表値を算出し、第1の時点での代表値のリストを取得する。当該リストは、記憶装置12に格納され得る。演算回路11は、第1の時点より前の第2の時点で撮影された画像データに基づいて代表値を算出すると、第2の時点での代表値のリストとして取得できる。
【0099】
本例では、第1の時点での代表値のリストは、数列[θti1,θti2,...,θtim]で表される。各代表値は、色相であるため、角度で表され、0≦θ<359の範囲の値である。添え字tiは、第1の時点に関する代表値であることを意味する。添え字1,2,...,mは、第1の時点で検出された可販部の識別番号を意味する。したがって、第1の時点で撮影された画像データには、m個の可販部が含まれている。また、第2の時点での代表値のリストは、数列[θtj1,θtj2,...,θtjn]で表される。添え字tjは、第2の時点に関する代表値であることを意味する。添え字1,2,...,nは、第1の時点で検出された可販部の識別番号を意味する。したがって、第2の時点で撮影された画像データには、n個の可販部が含まれている。m,nは1以上の整数である。
【0100】
演算回路11は、2つの時点で取得された代表値のリスト間で適切な組み合わせを行うマッチング処理を実行する(S46)。演算回路11は、例えば、2つの時点で取得された代表値のリスト間で適切な組み合わせを行う。本例では、2つの時点は、上記した第1の時点及び第2の時点を示す。本実施の形態3において、第2の時点は、第1の時点の1日後を示す。第1の時点と第2の時点との間は、数時間離れていてもよいし、数日離れていてもよいし、1週間以上離れていてもよい。当該2つの時点で取得された代表値のリストは、例えば、所定の日に撮影された画像に基づいて取得された代表値のリスト、及び所定の日の前日に撮影された画像に基づいて取得された代表値のリストであってもよい。2つの時点は、撮影された時点と、その次に撮影された時点との組み合わせであってもよいし、2つの時点の間に、別の撮影された時点が含まれていてもよい。
【0101】
マッチング処理において、演算回路11は、まず、第1の時点の各代表値と第2の時点の各代表値との間の距離を算出する。距離d(θtim,θtjn)は、次の式(2)で表される。d(θtim,θtjn)は、第1の時点での可販部mの代表値と第2の時点での可販部nの代表値との間の色の変化の定量的な値である色変化値を示す。算出された距離は、記憶装置12に格納され得る。
【0102】
【0103】
本例では、演算回路11は、各代表値(色相の値)の間のユークリッド距離を算出して使用するがこれに限定されない。例えば、演算回路11は、Lab色空間にて色差を算出してもよいし、RGB色空間にて算出してもよい。
【0104】
次に、演算回路11は、式(2)で算出される値を用いた行列を算出する。算出された行列は、記憶装置12に格納され得る。以下、当該行列を適宜「距離行列」と称する。
【0105】
【0106】
距離行列の各成分は、上記したように第1の時点の各可販部の代表値と、第2の時点の各可販部の代表値との間の距離を表す。演算回路11は、数理最適化を用いて、距離行列において最適な組み合わせを決定する。数理最適化において、変数は、X={0,1}として設定される。Xの距離行列において「1」を有する成分は、当該成分がa行b列成分である場合、第1の時点での可販部aの代表値と、第2の時点での可販部bの代表値とが組み合わせとして選択されていることを示す。
【0107】
制約条件は、n≧mの場合、「Xにおける各行の和が1であり、かつ各列の和が1以下である」こととして設定される。また、制約条件は、n<mの場合、「Xにおける各行の和が1以下であり、かつ各列の和が1である」こととして設定される。目的関数は次の式(4),(5)として設定される。添え字xは、1~mの整数、yは、1~nの整数である。
【0108】
【0109】
【0110】
演算回路11は、マッチング処理において、上記の変数、制約条件、及び目的関数での数理最適化により、適切な組み合わせを決定する。
【0111】
演算回路11は、2つの時点で取得された代表値の間での色の変化速度を算出する色変化速度算出処理を実行する(S47)。演算回路11は、マッチング処理にて組み合わされた代表値の間での色変化の速度を算出する。第1の時点の代表値及び第2の時点の代表値の最適な組み合わせを(θtix,θtjy)として表すとすると、演算回路11は、次の式(6)又は式(7)によって色変化速度を算出することができる。xは、1~mのうちのいずれかであり、yは、1~nのうちのいずれかである。Vdiff_tixtjyは、第1の時点での所定の可販部xと、第2の時点での所定の可販部yとの間の色変化速度を表す。aは、任意の定数である。
【0112】
【0113】
【0114】
なお、本例では検出対象の作物はイチゴであるため、成長に伴って可販部は緑色から赤色へと変化する。したがって、cosθtix-cosθtjy<0の場合、式(6)が適用される。また、cosθtix-cosθtjy≧0の場合、式(7)が適用される。
【0115】
例えば、成長に伴って可販部が緑色から青色へと変化する作物が検出対象であるとき、cosθtix-cosθtjy>0の場合、式(6)が適用される。また、cosθtix-cosθtjy≦0の場合、式(7)が適用される。
【0116】
演算回路11は、マッチング処理(S46)にて決定された可販部の各組での色変化速度を算出すると、色メタデータとして記憶装置12に格納する。
【0117】
演算回路11は、色変化速度を算出すると取得処理を終了し、CO2センサ40によって測定された炭酸ガスの濃度を入出力インタフェース装置13を介して取得する(S33)。演算回路11は、炭酸ガスの濃度を取得すると、当該濃度を出力判断データとして記憶装置12に格納する。
【0118】
次に、演算回路11は、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理を実行する(S34)。供給を停止又は濃度の上昇を停止するように制御する場合(S34:NO)、演算回路11は、入出力インタフェース装置13を介して炭酸ガス供給装置30へ制御信号としてオフ信号を出力する(S35)。供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御する場合(S34:YES)、演算回路11は、炭酸ガス供給装置30へ制御信号としてオン信号を出力する(S36)。
【0119】
演算回路11は、出力判断データに含まれる各データと、各データに対応する特定閾値及び所定閾値とを比較して、比較結果に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御できる。演算回路11は、算出された色変化速度が特定閾値以上である個数と、所定閾値とを比較して、炭酸ガスの供給量を制御してもよい。演算回路11は、例えば、次の(i)、(ii)の条件を満たすとき、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように動作し、オン信号を出力してもよい。
(i)複数の色変化速度のうちの少なくとも所定数が、特定閾値以上である。
(ii)炭酸ガスの濃度が所定濃度閾値以下である。
【0120】
所定数は、所定閾値を示す。所定濃度閾値は、記憶装置12に格納され得る。演算回路11は、条件(i)のみで炭酸ガスの供給量を制御してもよい。例えば、演算回路11は、ti及びtjをUNIX(登録商標)時間で定め、a=8640000と仮定すると、色変化速度が5以上である組が5個以上、かつ炭酸ガス濃度が390ppm以下である場合、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように動作してもよい。所定濃度閾値は、第1閾値の一例である。
【0121】
また、演算回路11は、色変化速度が5以上である組が5個以上の場合、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように動作してもよい。演算回路11は、色変化速度が特定閾値以上であるという条件を満たす組の個数が、色変化速度が算出された組の総数に対して所定割合(例えば50%)以上の場合、条件(i)を満たすと推定してもよい。つまり、条件(i)は、算出された色変化速度が特定閾値以上である組数が、色変化速度が算出された組の総数のうちの所定割合以上を占めること、であってもよい。当然、色変化速度の特定閾値は、5に限定されず、作物又はその品種によって任意に設定され得る。
【0122】
演算回路11は、色変化速度が所定条件を満たし、かつCO2センサ40によって取得された濃度データが所定値に達すると、炭酸ガス供給装置にオン信号を出力してもよい。所定値は、第2閾値の一例である。例えば、演算回路11は、上記仮定において、色変化速度が5以上である組が5個以上であっても、炭酸ガス濃度が410ppm以上である場合、供給を停止または濃度の上昇を停止するように動作してもよい。また、演算回路11は、色変化速度が所定条件を満たしていたとしても、CO2センサ40によって取得された濃度データが所定値に達すると、炭酸ガス供給装置にオフ信号を出力してもよい。
【0123】
例えば、演算回路11は、上記仮定において、色変化速度が5以上である組が5個未満である場合、供給を停止または濃度の上昇を停止するように動作してもよい。また、演算回路11は、上記仮定において、色変化速度が5以上である組が5個未満であり、炭酸ガス濃度が370ppm以下の場合、オン信号を出力し、炭酸ガス濃度が390ppm以上の場合、オフ信号を出力してもよい。
【0124】
演算回路11は、条件(1)などの色変化速度に関する条件を満たしているとき、上述しているように、炭酸ガス濃度が第1の閾値以下になるとオン信号を出力してもよい。また、演算回路11は、条件(1)などの色変化速度に関する条件を満たしていたとしても、第2の閾値以上になるとオフ信号を出力してもよい。第1閾値及び第2閾値の組み合わせは、実施の形態2に係る環境制御装置10の場合と同様に設定され得る。このように、演算回路11は、色変化速度及び炭酸ガス濃度に基づいて、炭酸ガス供給装置30による炭酸ガスの供給量を制御するように動作することができる。
【0125】
また、演算回路11は、式(2)によって算出された色変化値を色メタデータとして記憶装置12に格納してもよい。演算回路11は、算出された色変化値が特定閾値以上である個数と、所定閾値とを比較して、炭酸ガスの供給量を制御してもよい。演算回路11は、例えば、複数の色変化値のうちの少なくとも所定数が、特定閾値以上であり、炭酸ガスの濃度が所定濃度閾値以下であるとき、オン信号を出力してもよい。
【0126】
例えば、演算回路11は、色変化値が5以上である組が5個以上、かつ炭酸ガス濃度が390ppm以下である場合、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように動作してもよい。色変化値が5以上である組が5個以上であっても炭酸ガス濃度が410ppm以上である場合、供給を停止または濃度の上昇を停止するように動作してもよい。つまり、演算回路11は、色変化値に関する条件を満たしているとき、上述しているように、炭酸ガス濃度が第1の閾値以下になるとオン信号を出力してもよい。また、演算回路11は、色変化値に関する条件を満たしていたとしても、第2の閾値以上になるとオフ信号を出力してもよい。当然、色変化値の特定閾値は、5に限定されず、作物又はその品種によって任意に設定され得る。演算回路11は、算出した色変化速度又は色変化値の平均値を算出し、当該平均値が特定閾値以上であることを条件としてもよい。
【0127】
制御信号を出力すると、演算回路11は、供給量の調整の判定を再度実行するか否か判断する(S37)。本処理は、上記した動作例と同様のため、説明を省略する。演算回路11は、供給量の調整を再度実行すると判断した場合(S37:YES)、ステップS33に戻り、ステップS33~ステップS36を再び実行する。演算回路11は、供給量の調整を行わないと判断した場合(S37:NO)、動作を終了する。
【0128】
このように、本開示に係る実施の形態3の環境制御装置10は、2つの時点で撮影された画像データに基づいて、作物の可販部の色変化速度又は色変化値を算出することができる。環境制御装置10は、算出した色変化速度又は色変化値を所定閾値及び特定閾値と比較することで、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力できる。それによって、環境制御装置10は、例えば可販部の色変化が大きいタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させることができ、作物の可販部の重量増加、糖度の上昇、及び見栄えの向上を図ることができる。また、本開示に係る環境制御装置10は、作物の可販部の形状等を用いるのではなく、色を用いて、異なる時点で撮影された画像データ間の可販部のマッチングを行うため、より計算量を低減することができる。
【0129】
[効果]
実施の形態3に係る環境制御装置10によれば、以下の効果を奏することができる。
【0130】
本開示の実施の形態3に係る環境制御装置10において、1つ以上の画像データは、第1の時点、及び第1の時点より前の第2の時点で撮影された画像に関連し、出力判断データは、特定閾値をさらに含み、演算回路11は、取得処理において、1つ以上の画像データに基づいて可販部を検出する検出処理と、検出された、1つ以上の画像データに含まれる可販部の数を決定する数量決定処理と、検出された可販部のそれぞれについて色の代表値を決定する代表値決定処理と、第1の時点の1つ以上の画像データに基づく各代表値と第2の時点の1つ以上の画像データに基づく各代表値とを所定の組で組み合わせるマッチング処理と、組み合わされた第1の時点の各代表値と第2の時点の各代表値との間の差に基づいて色メタデータをそれぞれ算出する色変化算出処理と、を実行し、制御処理において、特定閾値以上である色メタデータの個数と所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させるように制御信号を出力する。
【0131】
このように動作することで、演算回路11は、2つの時点で撮影された1つ以上の画像データから、画像データに含まれる可販部の色の差に基づいて算出される色メタデータが特定閾値以上であるか否かを判定できる。そして、演算回路11は、色メタデータが特定閾値以上である可販部の個数と所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置10は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0132】
また、環境制御装置10において、色メタデータは、組み合わされた第1の時点の各代表値と第2の時点の各代表値との間の差に基づいて算出された色の変化の値である色変化値を含んでもよい。このように構成することで、演算回路11は、色メタデータとして、2つの時点で撮影された画像データから取得された可販部の色の差である色変化値を取得することができ、色変化値が特定閾値以上であるか否かを判定できる。そして、演算回路11は、色変化値が特定閾値以上である可販部の個数と所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させるように制御することができる。例えば、演算回路11は、当該個数が所定閾値以上である場合、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置10は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0133】
また、環境制御装置10において、色メタデータは、組み合わされた第1の時点の各代表値と第2の時点の各代表値との間の差に基づいて算出された色の変化の速度である色変化速度を含んでもよい。このように構成することで、演算回路11は、色メタデータとして、2つの時点で撮影された画像データから取得された可販部の色の変化の速度である色変化速度を取得することができ、色変化速度が特定閾値以上であるか否かを判定できる。そして、演算回路11は、色変化速度が特定閾値以上である可販部の個数と所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させるように制御することができる。例えば、演算回路11は、当該個数が所定閾値以上である場合、炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置10は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0134】
また、環境制御装置10において、演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、機械学習によりあらかじめ生成された学習済みモデルに1つ以上の画像データのそれぞれを入力データとして入力することで、取得処理を実行し、取得処理によって生成されたデータを出力データとして作成する。このように構成することで、演算回路11は、取得した画像データを学習済みモデルに入力することで、出力として可販部に関連するデータを作成することができる。それによって、環境制御装置10は、より効率的に画像データに基づいて可販部に関連するデータを取得することができる。
【0135】
(実施の形態4)
図10を参照しつつ、本開示の実施の形態4に係る環境制御システム1Cによる動作の例について説明する。
図10は、本開示の実施の形態に係る環境制御システム1Cの一例のブロック図である。環境制御システム1Cは、環境制御システム1Bに対して、さらにサーバ装置50を備える。
【0136】
サーバ装置50は、例えば、ネットワークを介して環境制御装置10と通信可能に構成されるコンピュータである。サーバ装置50は、演算回路51と、記憶装置52と、入出力インタフェース装置53と、を備える。環境制御システム1Cにおいて、環境制御装置10の演算回路11は、取得したデータを、ネットワークを介してサーバ装置50に送信する。当該データは、画像データを含む。当該データは、各種のセンサから取得したデータをさらに含んでもよい。サーバ装置50の演算回路51は、環境制御装置10から受信したデータに対して所定の処理を実行して、ネットワークを介して処理後のデータを環境制御装置10に送信する。そして、環境制御装置10は、サーバ装置50から受信した処理後のデータに基づいて、炭酸ガス供給装置30へ制御信号を出力することができる。
【0137】
演算回路51は、演算回路11と同様に構成され得る。演算回路51は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算回路51は、記憶装置52と通信可能に構成され、当該記憶装置52に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、サーバ装置50における各種の処理を実現する。サーバ装置50における処理は、例えば、サーバ受信処理、サーバ送信処理、取得処理にて実行される検出処理等の各種の処理を含む。サーバ装置50における処理は、入出力インタフェース装置13、53を介して環境制御装置10から、環境制御装置10が取得したデータを取得し、記憶装置52に格納することを含む。当該データは、画像データ及び各種のセンサからしたデータを含む。演算回路51は、例えば、半導体集積回路である信号回路で構成され得る。
【0138】
記憶装置52は、種々の情報を記憶できる記憶媒体であり、記憶装置12と同様に構成され得る。記憶装置52は、演算回路51が行う各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。また、記憶装置52は、画像データ、色メタデータ、出力判断データなど、演算回路51によって取得又は算出されたデータを格納し得る。また、記憶装置52は、演算回路51が上記処理を実行するための閾値、例えば後述する所定閾値又は特定閾値、を格納し得る。
【0139】
入出力インタフェース装置53は、入出力インタフェース装置13と同様に構成され得る。入出力インタフェース装置53は、有線又は無線により外部装置又はシステムと通信回線を介して接続するための通信回路を含む。サーバ装置50は、入出力インタフェース装置53及び入出力インタフェース装置13を通じて、環境制御装置10と通信できる。入出力インタフェース装置53は、入出力インタフェース装置13と、有線通信規格に準拠した通信を行ってもよいし、無線通信規格に準拠した通信を行ってもよい。入出力インタフェース装置53は、入出力インタフェース装置13と同様、ユーザからの情報の入力のための入力装置、及びユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有してもよい。環境制御装置10の入出力インタフェース装置13は、カメラ20からの画像データを取得する映像入力端子を含むことが想定され得る。また、環境制御装置10の入出力インタフェース装置13及びサーバ装置50の入出力インタフェース装置53は、イーサネット(登録商標)端子などの通信端子、又は通信回路を含むことが想定され得る。
【0140】
このように、本実施の形態4に係る環境制御システム1Cは、1つ以上の演算回路11、51と、1つ以上の記憶装置12、52と、1つ以上の入出力インタフェース装置13、53とを備える。1つ以上の記憶装置12、52は、上記したように、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納できる。1つ以上の演算回路11、51は、1つ以上の入出力インタフェース装置13、53を介して互いに通信できる。1つ以上の演算回路11、51は、実施の形態1~3に記載されているような、取得処理と、制御処理とを実行できる。それによって、環境制御システム1Cは、1つ以上の演算回路11、51によって、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御することができる。
【0141】
次に、本実施の形態4に係る環境制御システム1Cの動作の一例について、
図11、12を用いて説明する。
図11は、本開示の実施の形態4に係る環境制御装置10の演算回路11の動作の一例を示すフローチャートである。
図12は、本開示の実施の形態4に係るサーバ装置50の演算回路51の動作の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、上記した実施の形態1、2、3と同様の処理の説明は、適宜省略することがある。
【0142】
上記したように、環境制御システム1Cにおいて、環境制御装置10の演算回路11は、取得したデータをサーバ装置50に送信する。当該データは、画像データを含む。当該データは、各種のセンサから取得したデータをさらに含んでもよい。サーバ装置50の演算回路51は、環境制御装置10から受信したデータに対して所定の処理を実行して、処理後のデータを環境制御装置10に送信する。そして、環境制御装置10は、サーバ装置50から受信した処理後のデータに基づいて、炭酸ガス供給装置30へ制御信号を出力する。それによって、環境制御システム1Cは、作物の状態に応じて炭酸ガスの供給量又は濃度を調整することで効率的に作物の可販部の成長を促進し、可販部の重量増加、糖度の上昇、又は見栄えの向上を図ることができる。
【0143】
図11を参照しつつ、環境制御装置10の演算回路11によって実行される処理を説明する。まず、カメラ20が作物を撮影すると、環境制御装置10の演算回路11は、撮影された画像を画像データとして入出力インタフェース装置13を介して取得する(S51)。演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、当該1つ以上の画像データを記憶装置12に格納する。演算回路11は、撮影時刻と関連付けて1つ以上の画像データを記憶装置12に格納してもよい。
【0144】
演算回路11は、1つ以上の画像データを取得すると、当該画像データを、入出力インタフェース装置13を介してサーバ装置50へと送信する送信処理を実行する(S52)。当該画像データは、撮影時刻と関連付けられていてもよい。サーバ装置50の演算回路51は、画像データを受信すると、実施の形態3における取得処理(S32)と同様の処理を実行する。当該処理の詳細は、後述される。サーバ装置50の演算回路51は、当該処理を実行すると、処理後のデータを環境制御装置10に送信する。処理後のデータは、例えば、実施の形態3にて実行される取得処理(S32)で作成される色メタデータと同等の色メタデータを含む。演算回路11は、処理後のデータを受信する受信処理を実行する(S53)と、取得した色メタデータを記憶装置12に格納する。
【0145】
演算回路11は、その後、炭酸ガス濃度を取得する処理(S54)、供給量を制御するために、オン信号又はオフ信号を出力する制御処理(S55~S57)及び濃度を再び調整するか否かの判断(S58)を実行する。これらの処理は、実施の形態3における炭酸ガス濃度取得処理(S33)~濃度を調整するか否かの判断(S37)と同様に実行される。
【0146】
次に、
図12を参照しつつ、サーバ装置50の演算回路51によって実行される処理を説明する。演算回路51は、演算回路11が送信処理(S52)を実行すると、送信された画像データを受信するサーバ受信処理を実行する(S61)。演算回路51は、入出力インタフェース装置53を介して画像データを受信する。演算回路51は、画像データを取得すると、記憶装置52に格納する。演算回路51は、取得した1つ以上の画像データに対して、実施の形態3における取得処理(S32)に相当する処理を実行する。それによって、演算回路51は、当該処理において、1つ以上の画像データに対して画像処理を行うことで、作物の可販部の色に基づく色メタデータを取得できる。
【0147】
具体的には、演算回路51は、検出処理(S62)、数量決定処理(S63)、マスク抽出処理(S64)、RGB抽出処理(S65)、代表値決定処理(S66)、マッチング処理(S67)、色変化速度取得処理(S68)を実行する。これらの処理は、実施の形態3における検出処理(S41)~色変化速度取得処理(S47)と同様に実行される。本実施の形態4において、演算回路11によって実行される検出処理(S62)~色変化速度取得処理(S68)を、適宜、取得処理とも称する。演算回路51は、取得処理(S62~S68)を実行して色メタデータを記憶装置52に格納すると、当該色メタデータを環境制御装置10に送信するサーバ送信処理を実行する(S69)。サーバ装置50の演算回路51は、サーバ送信処理を実行するとサーバ装置50における一連の処理を終了する。
【0148】
このように、本実施の形態4の環境制御システム1Cは、サーバ装置50により、実施の形態3に係る環境制御装置10と同様、2つの時点で撮影された画像データに基づいて、作物の可販部の色変化速度又は色変化値を算出できる。環境制御システム1Cは、環境制御装置10の演算回路11により、サーバ装置50によって算出した色変化速度又は色変化値を所定の閾値と比較して、比較結果に応じて作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力できる。それによって、環境制御システム1Cは、可販部の色変化が大きいタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させることができ、作物の可販部の重量増加、糖度の上昇、及び見栄えの向上を図ることができる。例えば、演算回路11は、可販部の色変化が大きいタイミングで炭酸ガスの供給量を増加又は濃度を上昇させるように制御信号を出力してもよい。本開示に係る環境制御システム1Cは、作物の可販部の形状等を用いるのではなく、色を用いて、異なる時点で撮影された画像データ間の可販部のマッチングを行うため、より計算量を低減することができる。また、本開示の実施の形態4に係る環境制御装置10は、サーバ装置50にて算出されたデータを用いて制御信号を出力するため、実施の形態3に係る環境制御装置10と比べて、より負荷の小さい処理を行うことができる。
【0149】
本実施の形態4に係る環境制御システム1Cは、実施の形態3に係る環境制御システム1Bによる動作と同等の動作を行ったが、これに限定されない。環境制御システム1Cは、実施の形態1に係る環境制御システム1Aによる動作又は実施の形態2に係る環境制御システム1Bによる動作と同等の動作を行ってもよい。この場合、環境制御システム1Cは、
図3に示す取得処理(S12)と同等の処理を、サーバ装置50にて実行し得る。環境制御システム1Cは、実施の形態1に係る環境制御システム1Aによる動作と同等の動作を実行する場合、CO2センサ40を備えなくてもよい。
【0150】
また、本実施の形態4に係る環境制御システム1Cは、サーバ装置50の演算回路51が取得処理を行っている。また、本実施の形態に係る環境制御システム1Cは、環境制御装置10の演算回路11が取得処理で作成されたメタデータと、取得された炭酸ガス濃度とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を制御して制御信号を出力する制御処理を実行している。しかし、環境制御システム1Cの動作は、これに限定されない。
【0151】
環境制御システム1Cは、例えば、サーバ装置50の演算回路51が、色メタデータ及び炭酸ガス濃度と、それぞれの閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理を実行してもよい。この場合、環境制御装置10の演算回路11は、
図11に示す動作において、炭酸ガス濃度の取得(S54)を送信処理(S52)の前に実行し、画像データ及び炭酸ガスの濃度データを送信処理(S52)にてサーバ装置50に送信する。それによって、サーバ装置50の演算回路51は、色変化速度取得処理(S68)の実行後かつサーバ送信処理(S69)の実行前に、制御処理を実行できる。
【0152】
当然、演算回路11は、画像データと濃度データとを異なるタイミングでサーバ装置50に送信してもよい。また、演算回路11は、画像データ又は濃度データの一方を取得すると、取得したデータをサーバ装置50に送信し、その後に残りのデータを取得し、サーバ装置50に送信してもよい。
【0153】
演算回路51が、制御処理によって決定された動作に対応する制御信号(オン信号又はオフ信号)をサーバ送信処理(S69)で環境制御装置10に送信することで、演算回路11は、炭酸ガス供給装置30に当該制御信号を出力できる。演算回路51から環境制御装置10に出力される信号は、制御信号である必要はない。例えば、演算回路51は、環境制御装置10の演算回路11が炭酸ガス供給装置30に出力する制御信号を特定できる情報を含む信号を、環境制御装置10に送信してもよい。また、環境制御システム1Cは、演算回路51が、環境制御装置10を介して炭酸ガス供給装置30に制御信号を出力するように構成されてもよい。
【0154】
このように、本実施の形態4に係る環境制御システム1Cは、1つ以上の演算回路を備え、1つ以上の演算回路によって所定の処理を実行することができる。具体的には、環境制御システム1Cは、環境制御装置10の演算回路11、又は環境制御装置10と通信可能に接続されたサーバ装置50の演算回路51によって、所定の処理を実行することができる。
【0155】
一例として、所定の処理は、2つの時点で撮影された画像データに基づいて、作物の可販部の色変化速度又は色変化値を算出することを含み得る。さらに、所定の処理は、算出した色変化速度又は色変化値を所定値と比較し、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力することを含み得る。別の例として、所定の処理は、色変化中の可販部の割合、及び、現在、作物に施用している炭酸ガスの濃度に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力することを含み得る。さらなる別の例として、所定の処理は、取得した画像データに基づいて、色変化中割合を算出し、当該色変化中割合を所定閾値と比較し、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する制御信号を出力することを含み得る。それによって、環境制御システム1Cは、例えば可販部の色変化が大きいタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量を増加または濃度を上昇させることができ、作物の可販部の重量増加、糖度の上昇、及び見栄えの向上を図ることができる。また、環境制御システム1Cは、環境制御装置10以外の装置によって所定の処理を実行できるため、環境制御装置10の演算回路11の処理能力にかかわらず、環境制御システム1C全体として、作物に施用する炭素ガスの供給量を調整することができる。
【0156】
[効果]
実施の形態4に係る環境制御システム1Cによれば、以下の効果を奏することができる。
【0157】
本開示の実施の形態4に係る環境制御システム1Cは、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御システムであって、1つ以上の画像データを取得する入出力インタフェース装置であって、1つ以上の画像データは、カメラによって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、入出力インタフェース装置と、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する1つ以上の記憶装置と、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する1つ以上の演算回路と、を備える。
【0158】
このような構成によれば、環境制御システム1Cは、作物に施用する炭酸ガスの供給量又は濃度を効率よく調整することができる。具体的には、作物の可販部の色から算出される色メタデータに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることができる。したがって、環境制御システム1Cは、カメラ20から取得した画像データに含まれる可販部の色に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。また、環境制御システム1Cは、1つ以上の装置が備える1つ以上の演算回路11、51によって処理を実行することができる。したがって、環境制御システム1Cは、炭酸ガス供給装置30に制御信号を出力する環境制御装置10において、取得処理等を実行することなく、作物に施用する炭酸ガスの供給量を調整することができる。そのため、環境制御システム1Cは、環境制御装置10の性能が低い場合であっても、炭素ガスの供給量を調整することができる。また、炭酸ガス供給装置30及びサーバ装置50にアクセス可能な環境制御装置10を取得すれば、環境制御システム1Cを構成できるため、ユーザは、容易に環境制御システム1Cを使用することができる。
【0159】
[変形例]
実施の形態3に係る環境制御システム1Bにおいて、環境制御装置10は、カメラ20により撮影した画像データと、CO2センサ40により検出した炭酸ガスの濃度データとを取得するが、これに限定されない。
図13は、変形例に係る環境制御システム1Dの一例のブロック図である。
図13に示すように、環境制御システム1Dは、環境制御システム1Bに対して、1つ以上のその他のセンサ60及び1つ以上のその他の環境制御装置70をさらに備える。
【0160】
環境制御システム1Dの環境制御装置10の演算回路11は、1つ以上のその他のセンサ60から1つ以上のデータを取得すると、出力判断データとして記憶装置12に格納する。演算回路11は、上記の1つ以上のデータを含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を調整する制御信号を出力してもよい。また、演算回路11は、出力判断データに基づいて、その他の環境制御装置70を制御する制御信号を出力してもよい。演算回路11は、1つ以上のその他のセンサ60から取得された1つ以上のデータは、当該データに基づいて演算回路11が算出した1つ以上の算出データを含んでもよい。
【0161】
出力判断データは、CO2センサ40により取得された値を含んでもよい。CO2センサ40により取得された値は、当該値に基づいて演算回路11が算出した値を含んでもよい。具体的には、CO2センサ40により取得された値は、炭酸ガスの濃度に基づいて、いわゆるチャンバ法などを用いて算出された炭酸ガス交換速度を含み得る。この場合、環境制御システム1Dは、例えば、空気の流入口および排出口を有する透明なチャンバを備え、当該チャンバ内に作物の少なくとも一部が配置される。チャンバは、流入口及び排出口を除き、密閉されている。演算回路11は、少なくとも2つのCO2センサ40を用いて、流入口よりチャンバに流入する空気の炭酸ガス濃度、及び排出口より流出する空気の炭酸ガス濃度を取得できるように構成されている。演算回路11は、チャンバを介して流入する空気と流出する空気との間の炭酸ガス濃度の差を用いて炭酸ガス交換速度を算出できる。炭酸ガス交換速度が大きいと、当該作物は、炭酸ガス交換速度が小さい場合と比べて、光合成速度が大きいことを示し得る。したがって、演算回路11は、炭酸ガス交換速度に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御することで、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0162】
その他のセンサ60は、例えば、作物を育てるビニールハウス内の環境を測定するセンサである。その他のセンサ60は、例えば、温度センサ、湿度センサ、日射計、サーモグラフィ、光合成光量子密度センサ、土壌水分センサ、電気伝導率センサ、風速センサ又は風速センサのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0163】
その他の環境制御装置70は、例えば、作物を育てるビニールハウス内の、光合成速度に影響を与える環境を制御し得る所定装置である。その他の環境制御装置70は、養液EC(Electric Conductivity:電気伝導度)制御装置、養液制御装置、灌水制御装置、遮光カーテン、細霧ミスト、窓の開閉装置、換気扇、循環扇、暖房機、温湯ポンプ、補光ランプ、又はヒートポンプのうちのいずれかを制御するように構成された装置の少なくとも1つを含む。
【0164】
演算回路11は、例えば、温度センサから取得した温度に基づいて、炭酸ガス供給装置30に出力する制御信号を制御し得る。例えば、演算回路11は、上記した制御処理にて、温度が25℃以上であることを、オン信号を出力する条件として用いてもよい。また、演算回路11は、温度が25℃未満の場合、暖房機に制御信号を出力して、暖房を実行するように制御してもよい。このように演算回路11は、その他のセンサ60から取得したデータに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御することができる。また、演算回路11は、その他のセンサ60から取得したデータに基づいて、光合成速度に影響を与える環境に関するその他の環境制御装置70を制御することができる。したがって、環境制御装置10は、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0165】
上記した実施の形態3において、演算回路11は、各画素の色相の中央値を代表値として取得したがこれに限定されない。例えば、演算回路11は、各画素の色相の平均値を代表値として算出してもよい。また、演算回路11は、k平均法(k-means法)を用いて、代表値を算出してもよい。k平均法は、任意のデータを、あらかじめ定められたk個のクラスタに分類する手法である。本動作例においては、演算回路11は、得られた色相に対してk-means法を利用することで、可販部を示すk個の代表的な色を抽出することができる。可販部の各画素に対応する色相は、k個の色(すなわちk個のクラスタ)のいずれかに分類される。演算回路11は、k個の色のうち、分類された数が最も多い色を代表値として算出し得る。演算回路11は、k個の色全てを代表値として用いてもよい。
【0166】
上記した環境制御システム1B~1Dは、1つのCO2センサ40を備えるがこれに限定されず、環境制御システム1B~1Dは、複数のCO2センサ40を備えてもよい。また、環境制御システム1B~1Dは、複数のCO2センサ40のそれぞれの設置位置に対応した場所に炭酸ガスの供給口が設けられてもよい。炭酸ガスの供給口は、例えば、炭酸ガス供給装置30に取り付けられたチューブの出口である。また、環境制御システム1B~1Dは、複数の制御バルブ33を備え、演算回路11からの制御信号に基づいて、各供給口から放出される炭酸ガスの量を調整できるように構成されてもよい。このような構成によれば、演算回路11は、複数のCO2センサのそれぞれの設置位置ごとに、炭酸ガスの供給量を制御することができる。また、演算回路11は、当該設置位置に対応した制御バルブ33を制御するように、炭酸ガス供給装置30に対して制御信号を出力することができる。それにより、環境制御システム1B~1Dは、炭酸ガスの濃度をより効率的に制御することができる。
【0167】
上記した説明では、実施の形態2に係る環境制御装置10の動作例と、実施の形態3に係る環境制御装置10の動作例とが、独立して実施されるように記載しているがこれに限定されない。例えば、環境制御装置10の演算回路11は、簡易的な制御を行う際は実施の形態2に記載の動作例を実行し、高度な制御を行う際は実施の形態3に記載の動作例を実行するように構成されてもよい。例えば、実施の形態3に係る環境制御装置10において、演算回路11は、代表値決定処理(S45)において全ての可販部の代表値を決定したがこれに限定されない。演算回路11は、実施の形態1に係る環境制御装置10の動作例のように、分類処理(S22)にて、可販部を分類クラスに分類し、代表値決定処理において、色変化中クラスとして分類された可販部のみの代表値を決定するように動作してもよい。このように制御することで、環境制御装置10は、可販部の色の変化に基づいて算出される色メタデータをより効果的に取得することができる。当然、実施の形態4に係る環境制御システム1Cにおいて、実施の形態2に記載の環境制御装置10が実行する動作例と同等の処理を、サーバ装置50の演算回路51がさらに実行し得るように構成されてもよい。
【0168】
上記した実施の形態1~4では、演算回路11又は演算回路51は、検出処理にて、可販部の領域にマスクを付与していたがこれに限定されない。例えば、演算回路11又は演算回路51は、可販部の領域を包含するようなバウンディングボックスを各可販部に付与してもよい。このような場合、演算回路11は、例えばマスク抽出処理(S43)において、バウンディングボックス内の画素が「1」、バウンディングボックス外の画素が「0」を有するような個別マスクデータを作成する。このように制御することで、演算回路11は、計算量を低減できるため、環境制御装置10は、可販部の色の変化に基づいて算出される色メタデータをより効果的に取得することができる。
【0169】
上記した実施の形態4において、環境制御システム1Cは、1つのサーバ装置50を備えているがこれに限定されない。環境制御システム1Cは、サーバ装置50を複数備え、各サーバ装置50の演算回路51が取得処理(S62~68)を分散して実行してもよい。
【0170】
上記した実施の形態、例えば実施の形態1では、演算回路11は、数量決定処理において、色変化中クラスとして分類された可販部の割合を色変化中割合として取得したが、これに限定されない。演算回路11は、数量決定処理において、色変化前クラスとして分類された可販部の割合(以下、適宜「色変化前割合」と称する)を取得してもよい。色変化前割合は、“色変化前クラスとして分類された可販部の数”/“1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数”を示す。
【0171】
作物の中には、色変化前に炭素転流量が比較的大きい作物もある。例えば、トマト、ミニトマトはそのような作物に該当し得る。このような作物の場合、演算回路11は、色変化前割合及び色変化中割合の少なくとも一方が大きいときに炭酸ガスの供給量を増加させることが好ましい。また、このような作物は、色変化によって炭素転流量が減少する。そのため、演算回路11は、色変化後割合及び色変化中割合の少なくとも一方が大きいときに炭酸ガスの供給量を減少させることが好ましい。したがって、演算回路11は、色変化中割合の代わりに、又は色変化中割合に加えて、色変化前割合の値に基づいて炭酸ガスの供給量を制御してもよい。すなわち、演算回路11は、制御処理において、所定閾値として、色変化前割合に関する所定閾値を用いてもよい。したがって、演算回路11は、実施の形態2に係る環境制御システム1Bにおいて、色変化前割合の値及び炭酸ガスの濃度に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力できる。
【0172】
例えば、演算回路11、51は、色変化前割合が0.3以上、かつ炭酸ガス濃度が390ppm以下である場合、オン信号を出力してもよい。また、例えば、演算回路11、51は、色変化前割合が0.3以上であったとしても、炭酸ガス濃度が410ppm以上となった場合、オフ信号を出力してもよい。また、例えば、演算回路11、51は、色変化前割合が0.3未満であるとき、オフ信号を出力してもよい。色変化前割合の閾値は、例えば、色変化中割合の場合と同様、0.3から1の範囲に含まれる値のいずれかである。当該閾値は、作物によって変動し得る。また、演算回路11は、作物によっては、色変化前割合が当該閾値未満のとき、炭酸ガス濃度が第1閾値以下になるとオン信号を出力し、第2閾値以上になるとオフ信号を出力するように構成されてもよい。このように、演算回路11は、作物又はその品種によって、種々の処理を行うように構成されてもよい。演算回路11、51は、上記以外の条件に基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力してもよい。例えば、演算回路11は、色変化前割合又は色変化中割合に関する条件を満たしているとき、上述しているように、炭酸ガス濃度が第1の閾値以下になるとオン信号を出力してもよい。演算回路11は、色変化前割合及び色変化中割合の少なくとも一方に関する条件を満たしていたとしても、第2の閾値以上になるとオフ信号を出力してもよい。第1閾値及び第2閾値の組み合わせは、実施の形態2に係る環境制御装置10の場合と同様に設定され得る。
【0173】
また、トマトのように色変化前に炭素転流量が比較的大きい作物の場合、実施の形態3に係る環境制御装置10の演算回路11は、可販部の色変化値又は色変化速度が大きいタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量を減少または濃度を低下させてもよい。実施の形態4に係るサーバ装置50の演算回路51も同様に動作し得る。このように、本開示に係る演算回路11、51は、作物に応じて、可販部の色変化値又は色変化速度が大きいタイミングで作物に施用する炭酸ガスの供給量又は濃度を変化させることができる。
【0174】
上記した実施の形態において、炭酸ガス供給装置30は、制御バルブ33によって炭酸ガスの供給量を制御したが、これに限定されない。例えば、炭酸ガス供給装置30は、上記したように制御バルブ33を備えなくてもよい。例えば、炭酸ガス源31が化石燃料等を燃焼させるタイプである場合、炭酸ガス供給装置30のコントローラ34が、演算回路11からの信号に基づいて、炭酸ガス源31による炭酸ガスの生成量を制御し得る。炭酸ガス源31は、ビニールハウス内またはビニールハウスの周囲の一部に設置され、コントローラ34又は演算回路11からの信号に基づいて、駆動され得る。炭酸ガス源31は、例えば、接点信号が入力され得る入力端子を有し、コントローラ34からオン信号またはオフ信号を受信すると、炭酸ガス源31の駆動のオンオフが切り換えられ得る。炭酸ガス源31は、コントローラ34からの信号に基づいてリレーのオンオフが切り換わることで、駆動のオンオフが切り換えられてもよい。
【0175】
上記したように、炭酸ガス供給装置30は、供給配管の代わりにファン等の送風機を有し得る。コントローラ34は、燃焼式の炭酸ガス源31の駆動をオンするともにファンを駆動させ、発生した炭酸ガスをビニールハウス内に拡散してもよい。ファンによって拡散される炭酸ガスは、燃焼式の炭酸ガス源31以外から供給された炭酸ガスであってもよい。コントローラ34は、炭酸ガス源31の駆動をオンするタイミングから所定時間早い又は遅いタイミングでファンをオンしてもよい。ファンは、上記したようなリレーによってオンオフが切り換えられてもよいし、炭酸ガス源31の駆動用リレーに連動してオンオフが制御されてもよい。
【0176】
また、炭酸ガス(例えば燃焼式の炭酸ガス源31によって生成された炭酸ガス)は、ダクトホースを通じて局所的に施用されてもよい。この場合、炭酸ガスは、ファンを用いて生成された風力によってダクトホース内を移動し得る。
【0177】
(態様のまとめ)
以上の説明から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0178】
(態様1)作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御装置(10)は、1つ以上の画像データを取得する入出力インタフェース装置(13)であって、1つ以上の画像データは、カメラ(20)によって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、入出力インタフェース装置(13)と、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する記憶装置(12)と、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する演算回路(11)と、を備える。
【0179】
このような構成によれば、環境制御装置(10)は、作物に施用する炭酸ガスの濃度を効率よく制御することができる。具体的には、環境制御装置(10)は、作物の可販部の色から算出される色メタデータに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置(10)は、カメラ(20)から取得した画像データに含まれる可販部の色に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0180】
(態様2)態様1の環境制御装置(10)において、演算回路(11)は、取得処理において、1つ以上の画像データに基づいて可販部を検出する検出処理と、検出された可販部のそれぞれを可販部の色に基づいて、色変化前クラス、色変化中クラス及び色変化後クラスを含むクラスのいずれか1つに分類する分類処理と、クラスのそれぞれに分類された、1つ以上の画像データに含まれる可販部の数を決定する数量決定処理と、を実行し、制御処理において、色メタデータと所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を変化させるように制御信号を出力し、色メタデータは、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、色変化前クラスとして分類された可販部の数の割合、又は総数に対する、色変化中クラスとして分類された可販部の数の割合の少なくとも一方を含んでもよい。このように制御することで、演算回路(11)は、1つ以上の画像データから色が変化前である可販部の割合又は色が変化中である可販部の割合を取得でき、色が変化前である可販部又は色が変化中である可販部の個数が多いときに、炭酸ガスの供給量を増加又は減少させて濃度を上昇又は低下させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置(10)は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0181】
(態様3)態様2の環境制御装置(10)において、色変化中クラスは、色変化中クラスを複数の段階に分けた複数の色変化中サブクラスを含み、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、色変化中クラスとして分類された可販部の数の割合は、1つ以上の画像データに含まれる可販部の総数に対する、複数の色変化中サブクラスのそれぞれとして分類された可販部の数の割合の少なくとも1つを含んでもよい。このように制御することで、演算回路(11)は、色変化中クラスとして分類された可販部を、さらに複数の段階に分けて分類することができる。それによって、演算回路(11)は、色の変化の状態をさらに細かい分類に分けることができ、より適切なタイミングで炭酸ガスの供給量を変化させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置(10)は、より効率的に作物の成長を促進することができる。
【0182】
(態様4)態様1の環境制御装置(10)において、1つ以上の画像データは、第1の時点、及び第1の時点より前の第2の時点で撮影された画像に関連し、出力判断データは、特定閾値をさらに含み、演算回路(11)は、取得処理において、1つ以上の画像データに基づいて可販部を検出する検出処理と、検出された、1つ以上の画像データに含まれる可販部の数を決定する数量決定処理と、検出された可販部のそれぞれについて色の代表値を決定する代表値決定処理と、第1の時点の1つ以上の画像データに基づく各代表値と、第2の時点の1つ以上の画像データに基づく各代表値とを所定の組で組み合わせるマッチング処理と、組み合わされた第1の時点の各代表値と第2の時点の各代表値との間の差に基づいて色メタデータをそれぞれ算出する色変化算出処理と、を実行し、制御処理において、特定閾値以上である色メタデータの個数と所定閾値とを比較して、比較結果に応じて炭酸ガスの供給量を変化させるように制御信号を出力してもよい。このように制御することで、演算回路(11)は、2つの時点で撮影された1つ以上の画像データから、画像データに含まれる可販部の色の差に基づいて算出される色メタデータが特定閾値以上であるか否かを判定できる。そして、演算回路(11)は、色メタデータが特定閾値以上である可販部の個数が所定閾値以上ある場合、炭酸ガスの供給量を増加又は減少させて濃度を上昇又は低下させるように制御することができる。したがって、環境制御装置(10)は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0183】
(態様5)態様4の環境制御装置(10)において、色メタデータは、組み合わされた第1の時点の各代表値と第2の時点の各代表値との間の差に基づいて算出された色の変化の値である色変化値を含んでもよい。このように構成することで、演算回路(11)は、色メタデータとして、2つの時点で撮影された画像データから取得された可販部の色の差である色変化値を取得することができ、色変化値が特定閾値以上であるか否かを判定できる。そして、演算回路(11)は、色変化値が特定閾値以上である可販部の個数が所定閾値以上ある場合、炭酸ガスの供給量を増加又は減少させて濃度を上昇又は低下させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御装置(10)は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0184】
(態様6)態様4又は態様5の環境制御装置(10)において、色メタデータは、組み合わされた第1の時点の各代表値と第2の時点の各代表値との間の差に基づいて算出された色の変化の速度である色変化速度を含んでもよい。このように構成することで、演算回路11は、色メタデータとして、2つの時点で撮影された画像データから取得された可販部の色の変化の速度である色変化速度を取得することができ、色変化速度が特定閾値以上であるか否かを判定できる。そして、演算回路(11)は、色変化速度が特定閾値以上である可販部の個数又は割合が所定閾値以上ある場合、炭酸ガスの供給量を増加又は減少させて濃度を上昇又は低下させるように制御することができる。したがって、環境制御装置(10)は、取得した画像に基づいて、効率に作物の成長を促進することができる。
【0185】
(態様7)態様1から態様6のいずれかの環境制御装置(10)において、演算回路(11)は、1つ以上の画像データを取得すると、機械学習によりあらかじめ生成された学習済みモデルに1つ以上の画像データのそれぞれを入力データとして入力することで、取得処理を実行し、取得処理によって生成されたデータを出力データとして作成してもよい。このように構成することで、演算回路(11)は、取得した画像データを学習済みモデルに入力することで、出力として可販部に関連するデータを作成することができる。それによって、環境制御装置(10)は、より効率的に画像データに基づいて可販部に関連するデータを取得することができる。
【0186】
(態様8)態様1から態様7のいずれかの環境制御装置(10)において、演算回路(11)は、出力データとして、可販部に対応する領域にバウンディングボックスを付与したデータを生成してもよい。これにより、演算回路11は、効率的に可販部を検出することができる。
【0187】
(態様9)態様1から態様8のいずれかの環境制御装置(10)において、学習済みモデルは、マスク領域ベースの畳み込みニューラルネットワークを含んでもよい。これにより、演算回路11は、効率的に検出対象物体を検出し、所定のクラスに分類できる。
【0188】
(態様10)態様1から態様9のいずれかの環境制御装置(10)において、作物は、可販部の色の変化に応じて転流動態が変化する植物であってもよい。これにより、環境制御装置(10)は、可販部の色に基づいて炭酸ガスの供給量を調整することで、効率に作物の成長を促進することができる。
【0189】
(態様11)態様1から態様10のいずれかの環境制御装置(10)において、可販部は、作物の偽果、果実または果皮を含んでもよい。これにより、環境制御装置(10)は、作物の偽果、果実または果皮の色に基づいて炭酸ガスの供給量を調整することで、効率に作物の成長を促進することができる。
【0190】
(態様12)態様1から態様11のいずれかの環境制御装置(10)において、入出力インタフェース装置(13)は、二酸化炭素濃度計(40)によって検出された炭酸ガスの濃度データを取得し、記憶装置(12)は、濃度データをさらに格納し、出力判断データは、濃度データをさらに含んでもよい。このように構成されることで、環境制御装置(10)は、色メタデータ及び濃度データに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることができる。したがって、環境制御装置(10)は、カメラ(20)から取得した画像データに含まれる可販部の色、及び炭酸ガスの濃度に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0191】
(態様13)態様12の環境制御装置(10)において、演算回路(11)は、炭酸ガスの供給量を増加させるように制御信号を出力する場合、制御信号に基づいて炭酸ガスを供給するように構成された炭酸ガス供給装置にオン信号を出力してもよい。このように制御することで、演算回路(11)は、炭酸ガスの供給量を増加させるように制御する場合、オン信号を炭酸ガス供給装置(30)に出力し、炭酸ガスの濃度を上昇させることができる。したがって、環境制御装置(10)は、効率に作物の成長を促進することができる。
【0192】
(態様14)態様13の環境制御装置(10)において、演算回路(11)は、二酸化炭素濃度計(40)によって取得された濃度データが所定値に達すると、炭酸ガス供給装置(30)にオフ信号を出力してもよい。このように制御することで、演算回路(11)は、炭酸ガスの濃度があらかじめ設定された濃度に達すると、炭酸ガスの濃度の上昇を停止するように制御できる。それによって、環境制御装置(10)は、炭酸ガスの濃度が高い場合は炭酸ガスの消費量を低減することができ、効率的に作物の成長を促進しつつ、コストを抑えることが出来る。
【0193】
(態様15)態様1から態様14のいずれかの環境制御装置(10)において、出力判断データは、二酸化炭素濃度計、温度センサ、湿度センサ、日射計、サーモグラフィ、光合成光量子密度センサ、土壌水分センサ、電気伝導率センサ、風向センサ、又は風速センサのうちの少なくとも1つから取得された値をさらに含んでもよく、二酸化炭素濃度計により取得された値は、炭酸ガスの濃度に基づいて算出された炭酸ガス交換速度を含んでもよい。このように構成することで、演算回路(11)は、このようなセンサの少なくとも1つから取得したデータに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御することができる。したがって、環境制御装置(10)は、効率に作物の成長を促進することができる。
【0194】
(態様16)態様1から態様15のいずれかの環境制御装置(10)において、演算回路(11)は、出力判断データに基づいて、光合成速度に影響を与える所定装置を制御する制御信号をさらに出力してもよい。このように構成することで、演算回路(11)は、上記したセンサの少なくとも1つから取得したデータに基づいて、光合成速度に影響を与える所定装置を制御することができる。したがって、環境制御装置(10)は、効率に作物の成長を促進することができる。
【0195】
(態様17)態様1から態様16のいずれかの環境制御装置(10)において、所定装置は、養液電気伝導度制御装置、養液量制御装置、灌水量制御装置、遮光カーテン、細霧ミスト、窓の開閉装置、換気扇、循環扇、暖房機、温湯ポンプ、補光ランプ、又はヒートポンプのうちのいずれかを制御するように構成された装置の少なくとも1つを含んでもよい。このように構成することで、演算回路(11)は、上記したセンサの少なくとも1つから取得したデータに基づいて、光合成速度に影響を与える環境を切り換えることができる装置を制御することができる。したがって、環境制御装置(10)は、効率に作物の成長を促進することができる。
【0196】
(態様18)環境制御システム(1A)は、態様1から態様17のいずれかの環境制御装置(10)と、カメラ(20)と、炭酸ガスの濃度を測定する二酸化炭素濃度計(40)と、を備える。このように構成されることで、環境制御システム(1A)は、環境制御装置(10)によって、作物に施用する炭酸ガスの濃度を効率よく制御することができる。具体的には、環境制御装置(10)は、カメラ(20)から取得した画像データに含まれる可販部から取得される作物の可販部の色に基づいて算出される色メタデータに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることができる。したがって、環境制御システム(1A)は、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0197】
(態様19)態様18の環境制御システム(1A)は、環境制御装置(10)から出力される制御信号に基づいて炭酸ガスを供給するように構成された炭酸ガス供給装置(30)をさらに備えてもよい。このように構成されることで、環境制御システム(1A)は、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0198】
(態様20)作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する環境制御システム(1C)は、1つ以上の画像データを取得する1つ以上の入出力インタフェース装置(13、53)であって、1つ以上の画像データは、カメラ(20)によって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む、1つ以上の入出力インタフェース装置(13、53)と、1つ以上の画像データ及び所定閾値を格納する1つ以上の記憶装置(12、52)と、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を実行する1つ以上の演算回路(11、51)と、を備える。
【0199】
このような構成によれば、環境制御システム(1C)は、作物に施用する炭酸ガスの濃度を効率よく制御することができる。具体的には、環境制御システム(1C)は、作物の可販部の色から算出される色メタデータに基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させるように制御信号を出力することができる。したがって、環境制御システム(1C)は、カメラ(20)から取得した画像データに含まれる可販部の色に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。また、環境制御システム(1C)は、1つ以上の演算回路(11、51)によって処理を実行することができる、したがって、環境制御システム(1C)は、演算回路の性能に応じた負荷の処理を実行させることができる。
【0200】
(態様21)1つ以上の記憶装置(12)にアクセス可能な演算回路(11)により実行される、作物に施用する炭酸ガスの供給量を制御する方法であって、記憶装置(12)は、カメラ(20)によって撮影された、作物の、成長に伴って外観の色が変化する可販部を含む1つ以上の画像データ、及び所定閾値を格納し、方法は、1つ以上の画像データに含まれる可販部の色に基づいて算出される色メタデータを取得する取得処理と、色メタデータ及び所定閾値を含む出力判断データに基づいて、炭酸ガスの供給量を制御し、制御信号を出力する制御処理と、を含む。このような方法によれば、カメラ(20)から取得した画像データに含まれる可販部の色に基づいて、作物に施用する炭酸ガスの供給量を変化させることで濃度を変化させ、効率的に作物の成長を促進することができる。
【0201】
(態様22)コンピュータプログラムは、態様21の方法を演算回路(11)に実行させることができる。
【0202】
本開示に記載の環境制御装置、環境制御システムは、ハードウェア資源、例えば、プロセッサ、メモリ、と、ソフトウェア資源(コンピュータプログラム)との協働などによって実現される。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本開示によれば、作物の可販部の色に基づいて炭酸ガスを作物に効率的に施用するように動作可能な環境制御装置、環境制御システム、方法及びコンピュータプログラムを提供することができるため、この種の産業分野において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0204】
1A,1B,1C,1D 環境制御システム
10 環境制御装置
11 演算回路
12 記憶装置
13 入出力インタフェース装置
20 カメラ
30 炭酸ガス供給装置
40 CO2センサ
50 サーバ装置
51 演算回路
52 記憶装置
53 入出力インタフェース装置
60 その他のセンサ
70 その他の環境制御装置