(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073242
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】内燃機関の消音装置
(51)【国際特許分類】
F02B 77/13 20060101AFI20240522BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20240522BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240522BHJP
G10K 11/172 20060101ALI20240522BHJP
B29C 65/06 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F02B77/13 A
F02B67/06 G
G10K11/16 110
G10K11/172
B29C65/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184344
(22)【出願日】2022-11-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】漆原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】酒井 陽
(72)【発明者】
【氏名】平出 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野崎 知彦
【テーマコード(参考)】
4F211
5D061
【Fターム(参考)】
4F211AH16
4F211AJ03
4F211TA01
4F211TC08
4F211TN21
5D061CC04
(57)【要約】
【課題】ベルトカバーの重量化を抑制しつつ、騒音を効果的に抑制できる内燃機関の消音装置を提供する。
【解決手段】消音装置30は、開口31を介してベルト室14に連通し、所定の管路長を有する消音室32をベルトカバー10と協働して画定する消音室形成部材33を備える。消音室32の開口31は、カムプーリ17に巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体により軸支されたクランク軸と、
前記エンジン本体により軸支された少なくとも1本のカム軸と、
前記クランク軸に設けられたクランクプーリ及び前記カム軸に設けられた少なくとも1つのカムプーリに巻き掛けられたタイミングベルトと、
前記タイミングベルトを覆うように前記エンジン本体に取り付けられ、前記エンジン本体との間にベルト室を形成するベルトカバーとを有する内燃機関のための消音装置であって、
開口を介して前記ベルト室に連通し、所定の管路長を有する消音室を前記ベルトカバーと協働して画定する消音室形成部材を備え、
前記開口が前記カムプーリに巻き掛けられた前記タイミングベルトの部分に対向して配置されている、消音装置。
【請求項2】
前記消音室がクランク軸方向視において前記カムプーリに重なるように配置されている、請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記内燃機関が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリと、前記クランクプーリに対して弛み側の前記タイミングベルトの部分の張力を調整すべく前記エンジン本体に設けられた張力調整装置とを備え、
前記開口が、前記カムプーリのうち前記タイミングベルトの張り側に位置する1つに巻き掛けられた前記タイミングベルトの部分に対向して配置されている、請求項2に記載の消音装置。
【請求項4】
前記消音室形成部材は、互いに異なる2つの周波数帯域に対応するべく互いに異なる管路長を有する2つの前記消音室を画定し、前記消音室のそれぞれが対応する前記開口を介して前記ベルト室に連通している、請求項1~3のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項5】
2つの前記消音室が、クランク軸方向視において互いに重ならないように配置されている、請求項4に記載の消音装置。
【請求項6】
前記内燃機関が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリとを備え、
2つの前記消音室の一方は、1対の前記カムプーリの一方に巻き掛けられた前記ベルトカバーの部分に対向して配置され、2つの前記消音室の他方は、1対の前記カムプーリの他方に巻き掛けられた前記ベルトカバーの部分に対向して配置されている、請求項5に記載の消音装置。
【請求項7】
2つの前記消音室の一方は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリの一方に重なるように配置され、2つの前記消音室の他方は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリの他方に重なるように配置されている、請求項5に記載の消音装置。
【請求項8】
前記内燃機関は、前記エンジン本体がV字状に配列されたシリンダを形成し、且つ2つのシリンダヘッドを有するV型エンジンであり、
前記消音室形成部材が、前記シリンダヘッドのうち前記タイミングベルトの張り側に位置する1つのみに設けられている、請求項3に記載の消音装置。
【請求項9】
前記ベルトカバー及び前記消音室形成部材は、共に樹脂製であり、振動溶着によって一体化された振動溶着品を構成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の消音装置に関し、詳細には、消音室をベルトカバーと協働して画定する消音室形成部材を備える内燃機関のための消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が、手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する軽量化に関する研究開発が行われている。
【0003】
内燃機関においては、クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達するためにタイミングベルトが設けられることがある。この内燃機関では運転時にタイミングベルトが騒音を発生する。それを低減するための技術として、例えば、特許文献1には、タイミングベルトを覆うタイミングベルトカバーに、パイプによって形成される開口を介してカバー内空間と連通する所定容積の閉鎖空間を形成する共鳴箱(レゾネータ)が設けられたタイミングベルトカバー装置が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、タイミングベルトの騒音を低減させるべく空間部を減少させる空間減少手段が設けられたタイミングベルトカバーが開示されている。タイミングベルトカバーは、アウトサイドカバーとインサイドカバーとからなり、内部に空間部(ベルト室)を形成する。空間減少手段は、箱状部、或いは空間部と連通する連絡孔部を有するヘルムホルツ式のレゾネータからなり、クランク軸プーリとカム軸プーリとの間にて空間部内に設けられる。空間減少手段が設けられることにより、ピーク周波数における共鳴振動が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62-101041号公報
【特許文献2】特開平5-306632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、レゾネータの容量によって空間共鳴を減衰させるため、レゾネータのサイズが大きくなり、レゾネータを含むベルトカバーの重量が大きくなる。また、低減すべき騒音の周波数に対するレゾネータの位置(開口位置)が検討されていないため、十分な騒音低減効果が得られない。このように、軽量化に関する本技術においては、ベルトカバーが重く、且つ十分な騒音低減効果が得られない課題がある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、ベルトカバーの重量化を抑制しつつ、騒音を効果的に抑制できる内燃機関の消音装置を提供することを課題とし、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、エンジン本体(2)により軸支されたクランク軸(3)と、前記エンジン本体により軸支された少なくとも1本のカム軸(15)と、前記クランク軸に設けられたクランクプーリ(16)及び前記カム軸に設けられた少なくとも1つのカムプーリ(17)に巻き掛けられたタイミングベルト(18)と、前記タイミングベルトを覆うように前記エンジン本体に取り付けられ、前記エンジン本体との間にベルト室(14)を形成するベルトカバー(10)とを有する内燃機関(1、101)の消音装置(30)であって、開口(31)を介して前記ベルト室に連通し、所定の管路長を有する消音室(32)を前記ベルトカバーと協働して画定する消音室形成部材(33)を備え、前記開口が前記カムプーリに巻き掛けられた前記タイミングベルトの部分に対向して配置されている。
【0009】
この態様によれば、消音室がベルトカバーと消音室形成部材とによって形成されるため、消音装置を含むベルトカバーの重量増大が抑制される。また、消音室の開口がカムプーリに巻き掛けられた前記タイミングベルトの部分に対向して配置されることにより、ベルトカバーから発生する騒音が抑制される。
【0010】
上記の態様において、前記消音室(32)がクランク軸方向視において前記カムプーリ(17)に重なるように配置されていると良い。
【0011】
この態様によれば、消音室形成部材が消音室を形成することにより、ベルトカバーの振動による騒音が低減されることに加え、カムプーリが消音室によって外側から覆われることにより、タイミングベルトの振動による騒音の外部への伝搬が抑制される。
【0012】
上記の態様において、前記内燃機関(1、101)が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸(15(15E,15I))と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリ(17)と、前記クランクプーリ(16)に対して弛み側の前記タイミングベルト(18)の部分の張力を調整すべく前記エンジン本体(2)に設けられた張力調整装置(23)とを備え、前記開口(31)が、前記カムプーリのうち前記タイミングベルトの張り側に位置する1つに巻き掛けられた前記タイミングベルトの部分に対向して配置されていると良い。
【0013】
この態様によれば、加振源から遠い位置に消音室の開口が設けられることにより、タイミングベルトの振動による騒音発生が効果的に抑制される。
【0014】
上記の態様において、前記消音室形成部材(33)は、互いに異なる2つの周波数帯域に対応するべく互いに異なる管路長を有する2つの前記消音室(32(32A、32B))を画定し、前記消音室のそれぞれが対応する前記開口(31)を介して前記ベルト室(14)に連通していると良い。
【0015】
この態様によれば、2つの周波数帯域の騒音の発生が抑制される。よって、より広範囲な音域で騒音レベルが低減する。
【0016】
上記の態様において、2つの前記消音室(32)が、クランク軸方向視において互いに重ならないように配置されていると良い。
【0017】
この態様によれば、消音装置の寸法がカム軸方向に大きくならずに済む。よってカム軸方向の内燃機関の寸法の増大を抑制することができる。
【0018】
上記の態様において、前記内燃機関(1、101)が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸(15(15E,15I))と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリ(17)とを備え、2つの前記消音室の一方(32)は、1対の前記カムプーリの一方に巻き掛けられた前記ベルトカバー(10)の部分に対向して配置され、2つの前記消音室の他方(32)は、1対の前記カムプーリの他方に巻き掛けられた前記ベルトカバーの部分に対向して配置されていると良い。
【0019】
この態様によれば、2つの消音室の開口が共に加振源から遠く且つ騒音低減効果が高い位置に設けられることにより、タイミングベルトの振動による騒音発生が効果的に抑制される。
【0020】
上記の態様において、2つの前記消音室の一方(32)は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリ(17)の一方に重なるように配置され、2つの前記消音室の他方(32)は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリの他方に重なるように配置されていると良い。
【0021】
この態様によれば、2つの消音室がカムプーリを外側から覆うことにより、タイミングベルトの振動による騒音の外部への伝搬が抑制される。
【0022】
上記の態様において、前記内燃機関(1、101)は、前記エンジン本体がV字状に配列されたシリンダを形成し、且つ2つのシリンダヘッド(5)を有するV型エンジンであり、前記消音室形成部材(33)が、前記シリンダヘッドのうち前記タイミングベルトの張り側に位置する1つのみに対して設けられていると良い。
【0023】
この態様によれば、加振源から遠い側のシリンダヘッドに対して設けられた1つの消音室形成部材により、重量増大を抑制しつつ、V型エンジンのベルトカバーから発生する騒音を抑制することができる。
【0024】
上記の態様において、前記ベルトカバー(10)及び前記消音室形成部材(33)は、共に樹脂製であり、振動溶着によって一体化された振動溶着品を構成すると良い。
【0025】
この態様によれば、消音装置を容易に形成することができる。また、消音室形成部材がベルトカバーに一体化されることにより、ベルトカバー及び消音装置のエンジン本体への組み付け作業が容易である。
【発明の効果】
【0026】
以上の態様によれば、ベルトカバーの重量化を抑制しつつ、騒音を効果的に抑制できる内燃機関の消音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】ベルトカバーを外した状態の内燃機関の正面図
【
図4】本発明に係る消音装置の効果を説明するためのグラフ
【
図6】ベルトカバーを外した状態の内燃機関の正面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。
【0029】
≪第1実施形態≫
まず、
図1~
図4を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は第1実施形態に係る内燃機関1の正面図であり、
図2はベルトカバー10を外した状態の内燃機関1の正面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の内燃機関1は、エンジン本体2がV字状に配列されるシリンダを形成するV型エンジンである。エンジン本体2は、図示しないシリンダを形成し、クランク軸3を軸支するエンジンブロック4を有している。クランク軸3は前後方向に延在している。エンジンブロック4の上部には2つのシリンダヘッド5がV字状に締結されている。シリンダヘッド5の上部には2つのシリンダヘッドカバー6(
図2)が締結されている。エンジンブロック4の下部にはオイルパン7締結されている。以下、内燃機関1の正面を前面と称し、
図1の紙面を基準にして左右の方向を定義する。
図1に示される正面視はクランク軸方向視を意味する。
【0030】
エンジン本体2の前面には、複数のボルトによってベルトカバー10が取り付けられている。ベルトカバー10は、エンジンブロック4を正面から覆う本体ベルトカバー11と、右のシリンダヘッド5を正面から覆う右の上部ベルトカバー12と、左のシリンダヘッド5を正面から覆う左の上部ベルトカバー12とを有している。これらの本体ベルトカバー11及び左右の上部ベルトカバー12は、樹脂製であり、例えば振動溶着等によって予め互いに接合されていても良く、エンジン本体2への組み付けによって互いに一体的になっても良い。本体ベルトカバー11及び左右の上部ベルトカバー12は、後述するタイミングベルト18を収容する1つのベルト室14(
図2)をエンジン本体2との間に形成する。
【0031】
図2に示すように、各シリンダヘッド5には、吸気カム軸15I及び排気カム軸15Eが回転可能に軸支されている。以下、吸気カム軸15I及び排気カム軸15Eを総称する場合及び区別しない場合には、単にカム軸15という。内燃機関1は、各2本のカム軸15が対応するシリンダの上方に配置されたDOHCエンジンである。吸気カム軸15IはV型シリンダの左右方向の内側に配置され、排気カム軸15EはV型シリンダの左右方向の外側に配置されている。
【0032】
クランク軸3はエンジンブロック4の前面から前方へ突出している。エンジンブロック4から突出したクランク軸3の前端にはクランクプーリ16が一体に取り付けられている。内燃機関1の運転中、クランク軸3及びクランクプーリ16は、
図2に矢印で示すように時計回りに回転する。
【0033】
吸気カム軸15I及び排気カム軸15Eは対応するシリンダヘッド5の前面から前方へ突出している。シリンダヘッド5から突出した吸気カム軸15Iの前端及び排気カム軸15Eの前端には、カムプーリ17I、17Eが取り付けられている。以下、両カムプーリ17I、17Eを総称する場合及び区別しない場合には、単にカムプーリ17という。各カムプーリ17は、クランクプーリ16の直径の2倍の直径を有している。カムプーリ17は、対応する吸気カム軸15I又は排気カム軸15Eに一体に取り付けられても良く、バルブの開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング機構を介して対応する吸気カム軸15I又は排気カム軸15Eに取り付けられても良い。
【0034】
これらのクランクプーリ16及び4つのカムプーリ17には、無端のタイミングベルト18が巻き掛けられている。タイミングベルト18は、クランクプーリ16及び4つのカムプーリ17に対し、内面を当接させるように巻き掛けられている。したがって、4つのカムプーリ17は、内燃機関1の運転中、クランク軸3と同じ方向にクランク軸3の2分の1の回転速度で回転する。
【0035】
また、エンジン本体2の前面には4つのアイドラプーリ19と1つのテンションプーリ20とが設けられている。タイミングベルト18はこれらのアイドラプーリ19及びテンションプーリ20に対し、外面を当接させるように巻き掛けられている。4つのアイドラプーリ19は、回転可能且つエンジン本体2に対して移動不能に設けられている。
【0036】
テンションプーリ20は、タイミングベルト18の張力を調整すべくエンジン本体2に移動可能に設けられている。具体的には、テンションプーリ20はエンジン本体2に枢支されたアーム21によって回転可能に軸支されている。アーム21はテンショナ22によって付勢されており、アーム21の付勢によってテンションプーリ20からタイミングベルト18に張力が付与される。これらのテンションプーリ20、アーム21及びテンショナ22により、タイミングベルト18の部分の張力を調整する張力調整装置23が構成される。
【0037】
内燃機関1の運転中、クランクプーリ16が時計回りに回転することにより、タイミングベルト18も時計回りに回転する。タイミングベルト18は、クランクプーリ16にベルトを進入させるいわゆる張り側(右側の部分)と、クランクプーリ16からベルトを退出させるいわゆる弛み側(左側の部分)との2方向にクランクプーリ16から延びている。張力調整装置23はクランクプーリ16に対して弛み側(左側)に配置されており、クランクプーリ16に対して弛み側のタイミングベルト18の部分に張力を付与する。
【0038】
タイミングベルト18は、内燃機関1の運転中、クランクプーリ16と張力調整装置23との間で弛み易く、この部分で大きく振動する。タイミングベルト18のこの部分の弦振動は、ベルト室14内を伝搬してベルトカバー10から共鳴音を発生させることから、タイミングベルト18のこの部分(
図2中に黒丸で示す弦の中間点)がベルト室14内の空間共鳴における加振源24となる。加振源24を端とする定在波を考えたとき、低減したい音の波長に対してn次の定在波の腹になる位置にサイドブランチ型レゾネータである消音装置30を設けることで、騒音低減効果が得られる。
【0039】
図4は本発明に係る消音装置30の効果を説明するためのグラフであり、横軸が周波数を、縦軸が音圧を示している。グラフに示されるように、本実施形態では、ベルトカバー10が設けられることにより、375Hz及び620Hzの2つの周波数帯域において騒音(ベルトカバー10からの共鳴音)が大きくなっている。
【0040】
375Hzの音の1次の腹(1/2波長)は加振源24から453mmの位置である。620Hzの音の2次の腹(3/4波長)は加振源24から411mmの位置である。互いに近いこれら2つの位置に開口31を有し、それぞれの波長に応じた管路長を有する2つの消音室32を設けることで、これら2つの周波数帯域の騒音に対する高い消音効果が期待できる。
【0041】
図2に想像線の円で示すように、加振源24から453mmの位置及び411mmの位置は、ベルトカバー10の僅かに外側にある。またこれらの位置は、加振源24がクランクプーリ16の左側に位置することから、左側のシリンダヘッド5に設けられたカムプーリ17に比べ、右側のシリンダヘッド5に設けられたカムプーリ17の近くにある。したがって、右側のシリンダヘッド5に設けられるベルトカバー10の加振源24から最も遠い位置に消音室32の開口31を設けることで、これら2つの周波数帯域の騒音に対する高い消音効果が期待できる。
【0042】
本願発明者らは、実機を用いて複数の位置に消音室32の開口31を配置してそれぞれにおける騒音を測定し、開口位置に応じた消音装置30の消音効果を測定する実験を行った。実験の結果、上記の想定の通り、右側のシリンダヘッド5に設けられるベルトカバー10の加振源24から最も遠い位置に開口31を設けた場合に最も消音効果が高いことを確認することができた。
【0043】
ただし、2つのカムプーリ17の間、具体的には2つのカムプーリ17の間に位置するタイミングベルト18の部分に対向する位置に開口31を設けた場合には消音効果は低かった。一方、2つのカムプーリ17に巻き掛けられたタイミングベルト18の両部分に対応する位置に開口31を設けた場合に消音効果が最も高かった。これは、各カムプーリ17に対向するベルトカバー10の部分は、比較的平坦であり、加振源24の振動に共振し易い一方、その間の部分に開口31が設けられても両部分の共振を抑制できないためと考えられる。
【0044】
そこで、発明者らは、消音室32の開口31をカムプーリ17に巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向するように配置した。その際、発明者らは、右の上部ベルトカバー12の外面に消音室形成部材33を接合することによって所定の管路長を有する消音室32(後述する第1消音室32A又は第2消音室32B)を形成した。
【0045】
このように消音室32がベルトカバー10と消音室形成部材33とによって形成されることにより、消音装置30を含むベルトカバー10の重量増大が抑制される。また、消音室32の開口31がカムプーリ17に巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して配置されることにより、ベルトカバー10から発生する騒音が抑制される。以下、消音装置30の構造及び効果について詳細に説明する。
【0046】
図3は、右の上部ベルトカバー12の背面図である。
図1及び
図3に示すように、消音室形成部材33は、樹脂製であり、右の上部ベルトカバー12の外面に接合されることによって上部ベルトカバー12と協働して上部ベルトカバー12との間に少なくとも1つの消音室32(32A又は32B)を画定する。消音室形成部材33は、正面視において両カムプーリ17に重なるように配置され、両カムプーリ17を覆う位置に消音室32を形成している。これにより、ベルトカバー10の振動による騒音が低減される。
【0047】
上部ベルトカバー12及び消音室形成部材33は共に樹脂製であり、振動溶着によって一体化された振動溶着品として構成されている。したがって、消音装置30は容易に形成することができる。また、消音室形成部材33が上部ベルトカバー12に一体化されるため、上部ベルトカバー12及び消音装置30のエンジン本体2への組み付け作業が容易になっている。
【0048】
本実施形態の消音室形成部材33は、互いに異なる2つの周波数帯域に対応するべく互いに異なる管路長を有する2つの消音室32を画定している。
図1の右側の消音室32(以下、第1消音室32Aという)は、375Hzの騒音を低減するために、対象騒音の波長の1/4である232mmの管路長を有している。
図1の左側の消音室32(以下、第2消音室32Bという)は、620Hzの騒音を低減するために、対象騒音の波長の1/4である124mmの管路長を有している。本明細書において、第1消音室32A及び第2消音室32Bを総称する場合及び区別しない場合には、単に消音室32という。
【0049】
第1消音室32Aの開口31は、排気カム軸15Eのカムプーリ17Eに巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して配置されている。排気カム軸15Eのカムプーリ17Eは、吸気カム軸15Iのカムプーリ17Iに比べ、タイミングベルト18の張り側に位置している。つまり、加振源24から最も遠い位置に、375Hzの騒音用の第1消音室32Aの開口31が設けられる。したがって、タイミングベルト18の振動による375Hzの騒音発生が効果的に抑制される。
【0050】
以下に具体的に説明する。上記のようにタイミングベルト18の振動は、クランクプーリ16と張力調整装置23との間の弛みが多い部分、すなわち
図2中の加振源24で大きい。また、タイミングベルト18の振動は、振動(音波)の腹になる領域、
図2で説明したように振動の腹がベルトカバー10の外側に位置するため、一般的には振動部分(加振源24)から最も遠いベルト室14内の領域にてベルトカバー10を大きく振動させる。この振動が騒音になって外部に伝搬する。本実施形態では、加振源24から遠い位置に第1消音室32Aの開口31が設けられることにより、タイミングベルト18の振動による375Hzの騒音発生が効果的に抑制される。
【0051】
第2消音室32Bの開口31は、吸気カム軸15Iのカムプーリ17Iに巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して配置されている。つまり、排気カム軸15Eのカムプーリ17ほど遠くないが、加振源24から遠い位置に、620Hzの騒音用の第2消音室32Bの開口31が設けられる。したがって、タイミングベルト18の振動による620Hzの騒音発生も抑制される。
【0052】
第1消音室32Aは、正面視において、対応する開口31からS字状に湾曲しながら、シリンダヘッド5(
図2)に重なる位置まで延びている。第1消音室32Aは、正面視において、排気カム軸15Eのカムプーリ17Eに重なり、且つ吸気カム軸15Iのカムプーリ17Iにも重なるように配置されている。このように両カムプーリ17が第1消音室32Aによって外側から覆われることにより、タイミングベルト18の振動による騒音の外部への伝搬が抑制される。
【0053】
第2消音室32Bは、正面視において、対応する開口31からシリンダヘッド5(
図2)に重なる位置まで延び、L字状に湾曲している。第1消音室32Aは、正面視において、吸気カム軸15Iのカムプーリ17Iに重なるように配置されている。このように吸気カム軸15Iのカムプーリ17Iが第2消音室32Bによって外側から覆われることにより、タイミングベルト18の振動による騒音の外部への伝搬が抑制される。
【0054】
図3に示すように、本発明のベルトカバー10を備える内燃機関1では、消音室形成部材33が設けられない従来のタイミングベルトカバーを備える場合に比べ、375Hz及び620Hzの両周波数帯域において騒音の音圧が低下した。
【0055】
本実施形態では、消音室形成部材33が、互いに異なる2つの周波数帯域に対応するべく互いに異なる管路長を有する2つの消音室32(第1消音室32A、第2消音室32B)を画定している。これにより、2つの周波数帯域の騒音の発生が抑制され、より広範囲な音域で騒音レベルが低減する。
【0056】
また、
図1及び
図3に示すように、2つの消音室32は、クランク軸方向視において互いに重ならないように配置されている。そのため、消音装置30の寸法がカム軸方向に大きくならずに済む。よってカム軸方向の内燃機関1の寸法増大が抑制される。
【0057】
図1に示すように、第1消音室32Aは1対のカムプーリ17の一方に巻き掛けられた上部ベルトカバー12の部分に対向して配置され、第2消音室32Bは1対のカムプーリ17の他方に巻き掛けられた上部ベルトカバー12の部分に対向して配置されている。このように2つの消音室32の開口31が共に加振源24から遠く且つ騒音低減効果が高い位置に設けられたことにより、タイミングベルト18の振動による騒音発生が効果的に抑制される。
【0058】
また第1消音室32Aは正面視において1対のカムプーリ17の一方に重なるように配置され、第2消音室32Bは正面視において1対のカムプーリ17の他方に重なるように配置されている。つまり、2つの消音室32がカムプーリ17を外側から覆う。これにより、タイミングベルト18の振動による騒音の外部への伝搬が抑制される。
【0059】
上記のように、内燃機関1は、エンジン本体2がV字状に配列されたシリンダを形成し、且つ2つのシリンダヘッド5を有するV型エンジンである。そして、消音室形成部材33は、シリンダヘッド5のうちタイミングベルト18の張り側に位置する右側の1つのシリンダヘッド5のみに対して設けられている。つまり、加振源24から遠い側のシリンダヘッド5に対して1つの消音室形成部材33が設けられている。これにより、重量増大が抑制されながら、V型エンジンのベルトカバー10から発生する騒音が抑制される。
【0060】
≪第2実施形態≫
次に、
図5及び
図6を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、直列に配置された複数のシリンダを有する直列エンジンからなる内燃機関101に本発明が適用されている。
【0061】
図5は第2実施形態に係る内燃機関101の正面図であり、
図6はベルトカバー10を外した状態の内燃機関101の正面図である。
図5及び
図6に示すように、本実施形態のエンジン本体2は、直接に配列された複数のシリンダを形成するエンジンブロック4と、エンジンブロック4の上部に締結された1つのシリンダヘッド5とを有している。シリンダヘッド5には吸気カム軸15I及び排気カム軸15Eが回転可能に軸支されている。内燃機関1は、2本のカム軸15がシリンダの上方に配置されたDOHCエンジンである。吸気カム軸15Iは図中左側に配置され、排気カム軸15Eは図中右側に配置されている。吸気カム軸15Iの前端及び排気カム軸15Eの前端には、カムプーリ17I、17Eが取り付けられている。
【0062】
オイルパン7の内部には図示しないバランサ装置が設けられている。オイルパン7には、バランサ装置を駆動するためのドライブシャフト41が回転可能に設けられている。ドライブシャフト41はオイルパン7の前面から前方へ突出している。
【0063】
クランク軸3には、クランクプーリ16に加え、バランサ装置を駆動するためのドライブプーリ42が一体に設けられている。ドライブシャフト41の前端にはドリブンプーリ43が一体に設けられている。ドライブプーリ42及びドリブンプーリ43にはバランサ駆動ベルト44が巻き掛けられている。バランサ駆動ベルト44は内側に歯が形成された歯付きベルトであり、ドライブプーリ42及びドリブンプーリ43は外周部に外歯が形成された歯付きプーリである。内燃機関101の運転中、クランク軸3が回転することにより、ドライブシャフト41はクランク軸3と同方向に回転し、バランサ装置を回転駆動する。
【0064】
クランクプーリ16及び2つのカムプーリ17には、無端のタイミングベルト18が巻き掛けられている。タイミングベルト18は内側に歯が形成された歯付きベルトであり、各プーリは外周部に外歯が形成された歯付きプーリである。内燃機関1の運転中、クランク軸3及びクランクプーリ16は、
図6に矢印で示すように時計回りに回転し、2つのカムプーリ17は、クランク軸3と同じ方向にクランク軸3の2分の1の回転速度で回転する。
【0065】
エンジン本体2の前面には1つのテンションプーリ20が設けられている。タイミングベルト18はテンションプーリ20に対し、外面を当接させるように巻き掛けられている。テンションプーリ20を含む張力調整装置23はクランクプーリ16に対して弛み側(左側)に配置されている。内燃機関1の運転中、クランクプーリ16が時計回りに回転することにより、タイミングベルト18も時計回りに回転し、テンションプーリ20はクランク軸3と逆方向に回転する。
【0066】
クランクプーリ16と張力調整装置23との間のタイミングベルト18の部分は、内燃機関1の運転中、弛み易く、大きく振動する。タイミングベルト18のこの部分(
図6中に黒丸で示す弦の中間点)がベルト室14内の空間共鳴における加振源24となる。
【0067】
この内燃機関1では、ベルトカバー10が設けられることにより、270Hzの周波数帯域において騒音(ベルトカバー10からの共鳴音)が大きくなる。すなわち、270Hzがベルトカバー10の1次振動の周波数である。270Hzの振動の2次の腹は加振源24から343mmの位置である。
【0068】
本実施形態では、ベルト室14内の加振源24から最も遠い311mmの位置であって、排気カム軸15Eのカムプーリ17Eに巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して、第1消音室32Aの開口31が配置されている。第1消音室32Aの開口31からの所定の管路長は、対象騒音の波長の1/4である343mmである。第1消音室32Aの開口31がカムプーリ17Eに巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して配置されることにより、ベルトカバー10から発生する1次振動の騒音が抑制される。
【0069】
また、ベルト室14内の加振源24から遠く、吸気カム軸15Iのカムプーリ17Iに巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して、第2消音室32Bの開口31が配置されている。第2消音室32Bは、ベルトカバー10の2次振動の周波数に応じ、2次振動の波長の1/4の管路長を有すると良い。第2消音室32Bの開口31がカムプーリ17Iに巻き掛けられたタイミングベルト18の部分に対向して配置されることにより、ベルトカバー10から発生する2次振動の騒音が抑制される。
【0070】
また、消音室32がベルトカバー10と消音室形成部材33とによって形成されるため、消音装置30を含むベルトカバー10の重量増大が抑制される。その他、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0071】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、消音室形成部材33が2つの消音室32を形成しているが、消音室形成部材33が1つの消音室32を形成しても良く、3つ以上の消音室32を形成しても良い。また、上記実施形態では、第1消音室32AがS字状を呈し、第2消音室32BがL字状を呈しているが、消音室32は直線形状であっても良く、渦巻き形状などの上記以外の湾曲形状であっても良い。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態は、構成の一部又は全部を互いに組み合わせても良い。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、101:内燃機関
2 :エンジン本体
3 :クランク軸
4 :エンジンブロック
5 :シリンダヘッド
10 :ベルトカバー
11 :本体ベルトカバー
12 :上部ベルトカバー
14 :ベルト室
15 :カム軸
15E :排気カム軸
15I :吸気カム軸
16 :クランクプーリ
17、17E、17I:カムプーリ
18 :タイミングベルト
19 :アイドラプーリ
20 :テンションプーリ
23 :張力調整装置
24 :加振源
30 :消音装置
31 :開口
32 :消音室
32A :第1消音室
32B :第2消音室
33 :消音室形成部材
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体により軸支されたクランク軸と、
前記エンジン本体により軸支された少なくとも1本のカム軸と、
前記クランク軸に設けられたクランクプーリ及び前記カム軸に設けられた少なくとも1つのカムプーリに巻き掛けられたタイミングベルトと、
前記タイミングベルトを覆うように前記エンジン本体に取り付けられ、前記エンジン本体との間にベルト室を形成するベルトカバーとを有する内燃機関のための消音装置であって、
開口を介して前記ベルト室に連通し、所定の管路長を有する消音室を前記ベルトカバーと協働して画定する消音室形成部材を備え、
前記開口が、前記タイミングベルトのうちの前記カムプーリに巻き掛けられた部分に対向して配置され、
前記消音室がクランク軸方向視において前記カムプーリに重なるように配置されている、消音装置。
【請求項2】
前記内燃機関が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリと、前記クランクプーリに対して弛み側の前記タイミングベルトの部分の張力を調整すべく前記エンジン本体に設けられた張力調整装置とを備え、
前記開口が、前記カムプーリのうち前記タイミングベルトの張り側に位置する1つに巻き掛けられた、前記タイミングベルトの部分に対向して配置されている、請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記消音室形成部材は、互いに異なる2つの周波数帯域に対応するべく互いに異なる管路長を有する2つの前記消音室を画定し、前記消音室のそれぞれが対応する前記開口を介して前記ベルト室に連通している、請求項1又は2に記載の消音装置。
【請求項4】
2つの前記消音室が、クランク軸方向視において互いに重ならないように配置されている、請求項3に記載の消音装置。
【請求項5】
前記内燃機関が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリとを備え、
2つの前記消音室の一方は、前記タイミングベルトのうちの1対の前記カムプーリの一方に巻き掛けられた部分に対向して配置され、2つの前記消音室の他方は、前記タイミングベルトのうちの1対の前記カムプーリの他方に巻き掛けられた部分に対向して配置されている、請求項4に記載の消音装置。
【請求項6】
2つの前記消音室の一方は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリの一方に重なるように配置され、2つの前記消音室の他方は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリの他方に重なるように配置されている、請求項4に記載の消音装置。
【請求項7】
前記内燃機関は、前記エンジン本体がV字状に配列されたシリンダを形成し、且つ2つのシリンダヘッドを有するV型エンジンであり、
前記消音室形成部材が、前記シリンダヘッドのうち前記タイミングベルトの張り側に位置する1つのみに設けられている、請求項2に記載の消音装置。
【請求項8】
前記ベルトカバー及び前記消音室形成部材は、共に樹脂製であり、振動溶着によって一体化された振動溶着品を構成する、請求項1又は2に記載の消音装置。
【請求項9】
エンジン本体により軸支されたクランク軸と、
前記エンジン本体により軸支された少なくとも1本のカム軸と、
前記クランク軸に設けられたクランクプーリ及び前記カム軸に設けられた少なくとも1つのカムプーリに巻き掛けられたタイミングベルトと、
前記タイミングベルトを覆うように前記エンジン本体に取り付けられ、前記エンジン本体との間にベルト室を形成するベルトカバーとを有する内燃機関のための消音装置であって、
開口を介して前記ベルト室に連通し、所定の管路長を有する消音室を前記ベルトカバーと協働して画定する消音室形成部材を備え、
前記開口が、前記タイミングベルトのうちの前記カムプーリに巻き掛けられた部分に対向して配置され、
前記消音室形成部材は、互いに異なる2つの周波数帯域に対応するべく互いに異なる管路長を有する2つの前記消音室を画定し、前記消音室のそれぞれが対応する前記開口を介して前記ベルト室に連通しており、
2つの前記消音室の一方は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリの一方に重なるように配置され、2つの前記消音室の他方は、クランク軸方向視において1対の前記カムプーリの他方に重なるように配置されている、消音装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、エンジン本体(2)により軸支されたクランク軸(3)と、前記エンジン本体により軸支された少なくとも1本のカム軸(15)と、前記クランク軸に設けられたクランクプーリ(16)及び前記カム軸に設けられた少なくとも1つのカムプーリ(17)に巻き掛けられたタイミングベルト(18)と、前記タイミングベルトを覆うように前記エンジン本体に取り付けられ、前記エンジン本体との間にベルト室(14)を形成するベルトカバー(10)とを有する内燃機関(1、101)の消音装置(30)であって、開口(31)を介して前記ベルト室に連通し、所定の管路長を有する消音室(32)を前記ベルトカバーと協働して画定する消音室形成部材(33)を備え、前記開口が前記タイミングベルトのうちの前記カムプーリに巻き掛けられた部分に対向して配置されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この態様によれば、消音室がベルトカバーと消音室形成部材とによって形成されるため、消音装置を含むベルトカバーの重量増大が抑制される。また、消音室の開口がタイミングベルトのうちのカムプーリに巻き掛けられた部分に対向して配置されることにより、ベルトカバーから発生する騒音が抑制される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記の態様において、前記内燃機関(1、101)が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸(15(15E,15I))と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリ(17)と、前記クランクプーリ(16)に対して弛み側の前記タイミングベルト(18)の部分の張力を調整すべく前記エンジン本体(2)に設けられた張力調整装置(23)とを備え、前記開口(31)が、前記カムプーリのうち前記タイミングベルトの張り側に位置する1つに巻き掛けられた、前記タイミングベルトの部分に対向して配置されていると良い。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記の態様において、前記内燃機関(1、101)が、吸気及び排気のための1対の前記カム軸(15(15E,15I))と、前記カム軸に設けられた1対の前記カムプーリ(17)とを備え、2つの前記消音室の一方(32)は、前記タイミングベルトのうちの1対の前記カムプーリの一方に巻き掛けられた部分に対向して配置され、2つの前記消音室の他方(32)は、前記タイミングベルトのうちの1対の前記カムプーリの他方に巻き掛けられた部分に対向して配置されていると良い。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
そこで、発明者らは、消音室32の開口31をタイミングベルト18のうちのカムプーリ17に巻き掛けられた部分に対向するように配置した。その際、発明者らは、右の上部ベルトカバー12の外面に消音室形成部材33を接合することによって所定の管路長を有する消音室32(後述する第1消音室32A又は第2消音室32B)を形成した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
このように消音室32がベルトカバー10と消音室形成部材33とによって形成されることにより、消音装置30を含むベルトカバー10の重量増大が抑制される。また、消音室32の開口31がタイミングベルト18のうちのカムプーリ17に巻き掛けられた部分に対向して配置されることにより、ベルトカバー10から発生する騒音が抑制される。以下、消音装置30の構造及び効果について詳細に説明する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
図1に示すように、第1消音室32Aは1対のカムプーリ17の一方に巻き掛けられた
タイミングベルト18の部分に対向して配置され、第2消音室32Bは1対のカムプーリ17の他方に巻き掛けられた
タイミングベルト18の部分に対向して配置されている。このように2つの消音室32の開口31が共に加振源24から遠く且つ騒音低減効果が高い位置に設けられたことにより、タイミングベルト18の振動による騒音発生が効果的に抑制される。