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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073245
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】車両用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20240522BHJP
   H02K 7/00 20060101ALI20240522BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K7/00 A
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184347
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
【テーマコード(参考)】
3D333
5H607
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB21
3D333CC06
3D333CC14
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD09
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD28
3D333CE16
5H607AA04
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD07
5H607DD09
5H607EE32
5H607EE36
5H607JJ05
5H607JJ08
5H607JJ10
(57)【要約】
【課題】モータの振動の伝達を抑制することができる車両用アクチュエータを提供すること。
【解決手段】車両用アクチュエータ1は、出力軸部材51を有するモータ50と、モータ取付部60と、を備え、モータ50は、端面52bを有するモータ本体部52と、平面視でモータ本体部52から外側に向けて突出する第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bと、を有し、モータ取付部60は、端面52bと対向する対向面61aを有するハウジング本体部61と、平面視でハウジング本体部61から外側に向けて突出する第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bと、を有し、第1ハウジング突出部62aに第1モータ突出部53aが第1減衰部材63aを介して固定され、第2ハウジング突出部62bに第2モータ突出部53bが第2減衰部材63bを介して固定され、かつ、端面52bと対向面61aとの間に隙間Sがある。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸部材を有するモータと、
第1減衰部材および第2減衰部材と、
前記第1減衰部材および前記第2減衰部材を介して前記モータが取り付けられているハウジングと、を備え、
前記モータは、
前記出力軸部材の回転軸線と直交する端面を有するモータ本体部と、
前記回転軸線に沿って見た平面視において、前記端面の周縁から前記モータ本体部の外側に向けて突出する第1モータ突出部および第2モータ突出部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記端面と対向する対向面を有するハウジング本体部と、
前記平面視において、前記対向面の周縁から前記ハウジング本体部の外側に向けて突出する第1ハウジング突出部および第2ハウジング突出部と、を有し、
前記モータが前記ハウジングに取り付けられている状態において、前記第1ハウジング突出部に前記第1モータ突出部が前記第1減衰部材を介して固定され、前記第2ハウジング突出部に前記第2モータ突出部が前記第2減衰部材を介して固定され、かつ、前記端面と前記対向面との間に隙間がある、
車両用アクチュエータ。
【請求項2】
前記平面視において、前記端面と前記対向面とが重なっている領域は、中央から周縁まで前記隙間を有する、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項3】
前記平面視において、前記第1減衰部材と前記第1ハウジング突出部とが接触している第1接触領域、および、前記第2減衰部材と前記第2ハウジング突出部とが接触している第2接触領域は、前記回転軸線に垂直な仮想直線と重なる、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項4】
前記平面視において、前記仮想直線と直交する直交方向に沿った前記第1接触領域の長さは、前記直交方向に沿った前記第2接触領域の長さと等しい、
請求項3に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項5】
前記平面視において、前記仮想直線と直交する直交方向に沿った前記第1接触領域の長さは、前記直交方向に沿った前記第2接触領域の長さより長い、
請求項3に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項6】
車両の幅方向に沿って見たときに、前記車両の前後方向と前記仮想直線とのなす角度は、0度以上45度以下である、
請求項3から5の何れか1項に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項7】
前記第1減衰部材の材料および前記第2減衰部材の材料は、それぞれ、片状黒鉛鋳鉄である、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項8】
前記第1減衰部材、前記第2減衰部材、および、前記第1減衰部材と前記第2減衰部材とを連結する連結部を一体に有する連結減衰部材を備え、
前記連結部は、前記端面と接触し、かつ、前記対向面から離れている、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項9】
前記第1減衰部材、前記第2減衰部材、および、前記第1減衰部材と前記第2減衰部材とを連結する連結部を一体に有する連結減衰部材を備え、
前記連結部は、前記端面から離れており、かつ、前記対向面と接触している、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項10】
前記第1減衰部材、前記第2減衰部材、および、前記第1減衰部材と前記第2減衰部材とを連結する連結部を一体に有する連結減衰部材を備え、
前記連結部は、前記端面および前記対向面それぞれから離れている、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記ハウジング本体部から延びており、前記モータ本体部の外表面に摺動可能に接触する腕部をさらに備えている、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項12】
前記出力軸部材と減速機構部とを連結する弾性継手をさらに備えている、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項13】
前記出力軸部材の周囲で前記端面および前記対向面によって挟持されている環状の第1弾性部材をさらに備えている、
請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項14】
前記モータは、前記出力軸部材の周囲で前記端面から連続して設けられているモータ周側壁をさらに有し、
前記ハウジングは、前記対向面から連続して設けられ、前記回転軸線と直交する方向で前記モータ周側壁と対向しているハウジング周側壁をさらに有し、
前記モータ周側壁および前記ハウジング周側壁によって挟持されている環状の第2弾性部材をさらに備えている、
請求項1または13に記載の車両用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用アクチュエータの一例として、ステアリングモータのハウジングと、ステアリングコラムまたはステアリングギヤボックスのハウジングとで、振動減衰用の金属プレートを挟んでいる車両用操舵装置が開示されている。金属プレートは、モータの振動がハウジングに伝達することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-232062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを有する車両用アクチュエータでは、モータの振動の伝達をさらに抑制したいという要望がある。
【0005】
本開示の態様は、モータの振動の伝達を抑制することができる車両用アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は、車両用アクチュエータは、出力軸部材を有するモータと、第1減衰部材および第2減衰部材と、前記第1減衰部材および前記第2減衰部材を介して前記モータが取り付けられているハウジングと、を備え、前記モータは、前記出力軸部材の回転軸線と直交する端面を有するモータ本体部と、前記回転軸線に沿って見た平面視において、前記端面の周縁から前記モータ本体部の外側に向けて突出する第1モータ突出部および第2モータ突出部と、を有し、前記ハウジングは、前記端面と対向する対向面を有するハウジング本体部と、前記平面視において、前記対向面の周縁から前記ハウジング本体部の外側に向けて突出する第1ハウジング突出部および第2ハウジング突出部と、を有し、前記モータが前記ハウジングに取り付けられている状態において、前記第1ハウジング突出部に前記第1モータ突出部が前記第1減衰部材を介して固定され、前記第2ハウジング突出部に前記第2モータ突出部が前記第2減衰部材を介して固定され、かつ、前記端面と前記対向面との間に隙間がある。
【0007】
本開示の態様によれば、端面と対向面との間に隙間がある状態でモータがハウジングに取り付けられていることで、モータの駆動時に、モータの振動によってハウジングに対してモータが揺動する。モータの揺動によって、第1ハウジング突出部および第2ハウジング突出部が繰り返し変形し、第1ハウジング突出部および第2ハウジング突出部の運動エネルギが熱エネルギに変換される。つまり、モータの振動エネルギは、第1ハウジング突出部および第2ハウジング突出部で熱エネルギに変換される。したがって、モータの振動がハウジング本体部に伝達することを抑制することができる。
【0008】
さらに、第1ハウジング突出部に第1モータ突出部が第1減衰部材を介して固定され、第2ハウジング突出部に第2モータ突出部が第2減衰部材を介して固定されている。したがって、第1減衰部材および第2減衰部材により、モータの振動がハウジング本体部に伝達することをより抑制することができる。
【0009】
また、本開示の態様において、車両用アクチュエータは、前記平面視において、前記端面と前記対向面とが重なっている領域は、中央から周縁まで前記隙間を有する。
【0010】
これによれば、ハウジングに対してモータが確実に揺動することができる。
【0011】
また、本開示の態様において、前記平面視において、前記第1減衰部材と前記第1ハウジング突出部とが接触している第1接触領域、および、前記第2減衰部材と前記第2ハウジング突出部とが接触している第2接触領域は、前記回転軸線に垂直な仮想直線と重なる。
【0012】
これによれば、ハウジングに対するモータの揺動方向を、平面視において、仮想直線と交差する方向にすることができる。したがって、第1接触領域および第2接触領域の位置によって、モータの揺動方向を調整することができる。
【0013】
また、本開示の態様において、前記平面視において、前記仮想直線と直交する直交方向に沿った前記第1接触領域の長さは、前記直交方向に沿った前記第2接触領域の長さと等しい。
【0014】
これによれば、ハウジングに対するモータの揺動方向を、平面視において、直線状にすることができる。よって、第1接触領域および第2接触領域の形状によって、モータを効率よく揺動させることができる。
【0015】
また、本開示の態様において、前記平面視において、前記仮想直線と直交する直交方向に沿った前記第1接触領域の長さは、前記直交方向に沿った前記第2接触領域の長さより長い。
【0016】
これによれば、ハウジングに対するモータの揺動方向を、平面視において、曲線状にすることができる。モータの揺動方向が曲線状になることで、モータの揺動方向が直線状である場合と比べて、熱エネルギに変換されるモータの振動エネルギの量が大きくなる。よって、この場合、モータの振動がハウジング本体部に伝達することをさらに抑制することができる。
【0017】
また、本開示の態様において、車両の幅方向に沿って見たときに、前記車両の前後方向と前記仮想直線とのなす角度は、0度以上45度以下である。
【0018】
これによれば、モータの姿勢により、ハウジングに対するモータの揺動方向における鉛直方向の成分が増大し、モータに作用する重力によって、モータを効率よく揺動させることができる。よって、第1ハウジング突出部および第2ハウジング突出部の運動エネルギを効率よく熱エネルギに変換することができる。したがって、モータの振動がハウジング本体部に伝達することをさらに抑制することができる。
【0019】
また、本開示の態様において、前記第1減衰部材の材料および前記第2減衰部材の材料は、それぞれ、片状黒鉛鋳鉄である。
【0020】
これによれば、第1減衰部材および第2減衰部材によって、モータの振動がハウジング本体部に伝達することを効率よく抑制することができる。
【0021】
また、本開示の態様において、車両用アクチュエータは、前記第1減衰部材、前記第2減衰部材、および、前記第1減衰部材と前記第2減衰部材とを連結する連結部を一体に有する連結減衰部材を備え、前記連結部は、前記端面と接触し、かつ、前記対向面から離れている。
【0022】
これによれば、第1減衰部材と第2減衰部材とが別体である場合に比べて、第1減衰部材および第2減衰部材をモータおよびハウジングに容易に取り付けることができる。
【0023】
また、本開示の態様において、車両用アクチュエータは、前記第1減衰部材、前記第2減衰部材、および、前記第1減衰部材と前記第2減衰部材とを連結する連結部を一体に有する連結減衰部材を備え、前記連結部は、前記端面から離れており、かつ、前記対向面と接触している。
【0024】
これによれば、第1減衰部材と第2減衰部材とが別体である場合に比べて、第1減衰部材および第2減衰部材をモータおよびハウジングに容易に取り付けることができる。
【0025】
また、本開示の態様において、車両用アクチュエータは、前記第1減衰部材、前記第2減衰部材、および、前記第1減衰部材と前記第2減衰部材とを連結する連結部を一体に有する連結減衰部材を備え、前記連結部は、前記端面および前記対向面それぞれから離れている。
【0026】
これによれば、第1減衰部材と第2減衰部材とが別体である場合に比べて、第1減衰部材および第2減衰部材をモータおよびハウジングに容易に取り付けることができる。
【0027】
また、本開示の態様において、前記ハウジングは、前記ハウジング本体部から延びており、前記モータ本体部の外表面に摺動可能に接触する腕部をさらに備えている。
【0028】
これによれば、ハウジングに対するモータの揺動によって腕部が繰り返し変形する。これにより、腕部にてモータの振動エネルギが熱エネルギに変換され、モータの振動がハウジング本体部に伝達することをさらに抑制することができる。
【0029】
また、本開示の態様において、車両用アクチュエータは、前記出力軸部材と減速機構部とを連結する弾性継手をさらに備えている。
【0030】
これによれば、弾性継手によって、モータの振動が出力軸部材から減速機構部に伝達することを抑制することができる。
【0031】
また、本開示の態様において、前記出力軸部材の周囲で前記端面および前記対向面によって挟持されている環状の第1弾性部材をさらに備えている。
【0032】
これによれば、第1弾性部材によって、端面と対向面との間でシール性を確保することができるとともに、モータの振動がハウジングに伝達することをさらに抑制することができる。
【0033】
また、本開示の態様において、前記モータは、前記出力軸部材の周囲で前記端面から連続して設けられているモータ周側壁をさらに有し、前記ハウジングは、前記対向面から連続して設けられ、前記回転軸線と直交する方向で前記モータ周側壁と対向しているハウジング周側壁をさらに有し、前記モータ周側壁および前記ハウジング周側壁によって挟持されている環状の第2弾性部材をさらに備えている。
【0034】
これによれば、第2弾性部材によって、モータ周側壁とハウジング周側壁との間でシール性を確保することができるとともに、モータの振動がハウジングに伝達することをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0035】
本開示の態様によれば、車両用アクチュエータは、モータの振動の伝達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本開示の実施形態に係る車両用アクチュエータを示す模式図である。
図2図2は、車両用アクチュエータの斜視図である。
図3図3は、モータの出力軸部材の回転軸線に沿うアシスト装置の部分断面図である。
図4図4は、回転軸線に沿ったアシスト装置の拡大部分断面図である。
図5図5は、回転軸線に沿って見たモータの平面視である。
図6図6は、中心軸線に沿って見たモータ取付部の平面視である。
図7図7は、本開示の実施形態の第1変形例に係る車両用アクチュエータにおける中心軸線に沿って見たモータ取付部の平面視である。
図8図8は、本開示の実施形態の第2変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線に沿って見たアシスト装置の平面視である。
図9図9は、図8に示すX-X線に沿ったアシスト装置の部分拡大断面図である。
図10図10は、本開示の実施形態の第3変形例に係る車両用アクチュエータにおける回転軸線に沿うアシスト装置の拡大部分断面図である。
図11図11は、本開示の実施形態の第4変形例に係る車両用アクチュエータにおける回転軸線に沿ったアシスト装置の断面図である。
図12図12は、弾性継手の分解斜視図である。
図13図13は、本開示の実施形態の第5変形例に係る車両用アクチュエータの連結減衰部材の平面視である。
図14図14は、本開示の実施形態の第5変形例に係る車両用アクチュエータにおける回転軸線に沿ったアシスト装置の拡大部分断面図である。
図15図15は、本開示の実施形態の第5変形例において連結減衰部材の他の取り付け方を示すアシスト装置の拡大部分断面図である。
図16図16は、本開示の実施形態の第6変形例に係る車両用アクチュエータにおける回転軸線に沿ったアシスト装置の拡大部分断面図である。
図17図17は、本開示の実施形態の第7変形例に係る車両用アクチュエータにおける回転軸線に沿ったアシスト装置の拡大部分断面図である。
図18図18は、本開示の実施形態の第8変形例に係る車両用アクチュエータにおける回転軸線に沿ったアシスト装置の拡大部分断面図である。
図19図19は、本開示の実施形態の第9変形例に係る車両用アクチュエータにおける回転軸線に沿ったアシスト装置の拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態および各変形例の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0038】
また、以下の説明においては、後述する車両2の幅方向をX方向とし、車両2の前後方向をY方向とし、車両2の上下方向をZ方向とする。なお、X、Y、Zの方向は一例であって、本開示はこれらの方向に限定されない。
【0039】
図1は、本開示の実施形態に係る車両用アクチュエータ1を示す模式図である。本実施形態の車両用アクチュエータ1は、電動パワーステアリング装置である。車両用アクチュエータ1は、車体2aに取り付けられており、後述するモータ50の出力によって運転者によるステアリングホイール2bの操作を補助する。
【0040】
車両用アクチュエータ1は、ステアリングシャフト10、中間シャフト20、ステアリングギヤユニット30、および、アシスト装置40を備えている。
【0041】
ステアリングシャフト10の+Z側の第1端部には、ステアリングシャフト10と一体回転可能にステアリングホイール2bが固定されている。ステアリングシャフト10の-Z側の第2端部には、第1継手11を介して中間シャフト20の第1端部が取り付けられている。
【0042】
中間シャフト20の第2端部には、第2継手21を介して、後述する第1ピニオンシャフト33の第1端部が接続されている。第1継手11および第2継手21は、例えばユニバーサルジョイントである。
【0043】
ステアリングギヤユニット30は、ギヤハウジング31、ラックシャフト32、および、第1ピニオンシャフト33を備えている。ギヤハウジング31は、第1ギヤハウジング部31aおよび第2ギヤハウジング部31bを一体に有する。
【0044】
第1ギヤハウジング部31aは、ラックシャフト32が貫通する筒状である。第2ギヤハウジング部31bは、第1ピニオンシャフト33が貫通する筒状である。第1ギヤハウジング部31aの内部と第2ギヤハウジング部31bの内部とは連通している。
【0045】
ラックシャフト32は、X方向に沿って延びており、第1ラック歯32aおよび第2ラック歯32bを有する。ラックシャフト32の両端部には、タイロッド2cを介して走行輪2dが取り付けられている。
【0046】
第1ピニオンシャフト33は、第1ピニオン歯33aを第2端部に有する。第1ピニオン歯33aは、第1ラック歯32aと噛み合う。
【0047】
運転者がステアリングホイール2bを操作することで、ステアリングシャフト10、中間シャフト20、および、第1ピニオンシャフト33が回転し、ラックシャフト32およびタイロッド2cが駆動することで走行輪2dが転舵される。
【0048】
アシスト装置40は、運転者によるステアリングホイール2bの操作を補助する。アシスト装置40は、ステアリングギヤユニット30に固定されている。アシスト装置40は、車両2における車室外に配置されている。
【0049】
アシスト装置40は、アシストハウジング41、減速機構部42、および、モータ50を備えている。アシストハウジング41は、第1アシストハウジング部41a、および、第2アシストハウジング部41bを備えている。
【0050】
第1アシストハウジング部41aは、ラックシャフト32が貫通する筒状のラックシャフト収納部41a1、および、筒状の第1減速ギヤ収納部41a2を一体に有する。第1アシストハウジング部41aの内部と第1減速ギヤ収納部41a2の内部とは連通している。
【0051】
ラックシャフト収納部41a1は、第1ギヤハウジング部31aに固定されている。第1減速ギヤ収納部41a2は、+Z側に開口部を有し、減速機構部42の一部を収納する。
【0052】
図2は、車両用アクチュエータ1の斜視図である。なお、図2において、ステアリングシャフト10および中間シャフト20の図示は省略されている。図3は、モータ50の出力軸部材51の回転軸線A1に沿うアシスト装置40の部分断面図である。
【0053】
図2に示すように、第2アシストハウジング部41bは、第2減速ギヤ収納部41b1、第3減速ギヤ収納部41b2、および、モータ取付部60を一体に有している。
【0054】
図1および図2に示すように、第2減速ギヤ収納部41b1は、第1減速ギヤ収納部41a2の開口部を覆う位置に配置されている。図2および図3に示すように、第3減速ギヤ収納部41b2は、-X側が閉鎖され、+X側(モータ50側)が開口している筒状である。第3減速ギヤ収納部41b2の内部は、第1減速ギヤ収納部41a2の内部と連通している。
【0055】
第3減速ギヤ収納部41b2は、減速機構部42の一部を収納する。モータ取付部60の詳細は、後述する。
【0056】
減速機構部42は、図1および図3に示すように、ウォームギヤ42a、ウォームホイール42b、および、第2ピニオンシャフト42cを有している。
【0057】
図3に示すように、ウォームギヤ42aは、第3減速ギヤ収納部41b2に収納され、モータ50が有する出力軸部材51に一体回転可能に取り付けられている。
【0058】
ウォームホイール42bは、ウォームギヤ42aと噛み合わされており、図1に示すように、第1減速ギヤ収納部41a2に収納されている。また、ウォームホイール42bは、第2ピニオンシャフト42cの+Z側の第1端部に一体回転可能に取り付けられている。
【0059】
第2ピニオンシャフト42cは、第2ピニオン歯42dを第2端部に有する。第2ピニオン歯42dは、第2ラック歯32bと噛み合う。
【0060】
モータ50は、例えばブラシレスモータである。モータ50がブラシレスモータに限定されないことは言うまでもない。モータ50は、ECU(Electronic Control Unit)一体型モータである。ECUは、ステアリングシャフト10の回転トルクを検出するトルクセンサ(不図示)の検出結果に基づいて、モータ50の出力を制御する。ECUは、例えば出力軸部材51の単位時間あたりの回転量を調節することで、モータ50の出力を制御する。
【0061】
モータ50の出力軸部材51が回転することで、減速機構部42を介して、ステアリングシャフト10にモータ50の出力が付与される。これにより、運転者によるステアリングホイール2bの操作が補助される。
【0062】
また、図2に示すように、第1ギヤハウジング部31aおよび第1アシストハウジング部41aは、それぞれ、車体2aに含まれる車体部材(不図示)に固定される車体取付部1aを一体に有している。車両用アクチュエータ1は、車体取付部1aを介して車体2aに取り付けられる。
【0063】
次に、モータ50、およびモータ取付部60の詳細について説明する。図4は、回転軸線A1に沿ったアシスト装置40の拡大部分断面図である。
【0064】
モータ50は、出力軸部材51の回転軸線A1がX方向に沿う姿勢でモータ取付部60に取り付けられている。なお、モータ50は、回転軸線A1がX方向と交差する姿勢でモータ取付部60に取り付けられてもよい。モータ50は、モータ本体部52、第1モータ突出部53a、および、第2モータ突出部53bを有している。
【0065】
モータ本体部52は、外装ケース52aを有し、外装ケース52aにロータ(不図示)およびステータ(不図示)を収納する。モータ本体部52の外表面(すなわち外装ケース52aの外表面)は、円柱状であり、-X側に回転軸線A1と直交する端面52bを有する。回転軸線A1に沿って見た平面視(以下、単に「平面視」と記載する場合がある。)において、端面52bの周縁は、モータ本体部52の外周縁と重なる。モータ本体部52の外径は、およそ80mmであるが、80mmに限定されないことは言うまでもない。
【0066】
第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bは、モータ本体部52(具体的には外装ケース52a)と一体であり、例えばアルミ合金などの金属製である。
【0067】
図5は、回転軸線A1に沿って見たモータ50の平面視である。第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bは、回転軸線A1に沿って見た平面視において、端面52bの周縁からモータ本体部52の外側に向けて突出する。
【0068】
第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bは、平面視で出力軸部材51を挟んで互いに反対側に配置されている。また、第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bは、平面視で回転軸線A1に垂直な仮想直線Lと重なる。仮想直線Lは、後述する第1接触領域R1および第2接触領域R2と同一平面上に位置する。
【0069】
また、モータ取付部60にモータ50が取り付けられている状態において、車両2の幅方向(X方向)に沿って見たときに、車両2の前後方向(Y方向)と仮想直線Lとのなす角度は、所定角度範囲H内にある。所定角度範囲Hは、X方向に沿って見たときに、Y方向と仮想直線Lとのなす角度が0度以上45度以下となる範囲である。つまり、所定角度範囲Hは、X方向に沿って見たときにY方向に沿う仮想直線Lの角度を0度とし、Y方向に対する仮想直線Lの角度が0度から+Z側に45度まで、および、0度から-Z側に45度までの範囲である。つまり、車両2の幅方向に沿って見たときに、車両2の前後方向と仮想直線Lとのなす角度(以下、単に「仮想直線Lの角度」と記載する場合がある)は、0度以上45度以下である。
【0070】
本実施形態において、仮想直線Lは、回転軸線A1と直交しており、Y方向と平行である。つまり、本実施形態において、仮想直線Lの角度は、0度である。
【0071】
第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bは、平面視で、仮想直線Lを対称軸とする線対称形状である。また、第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bは、モータ50とモータ取付部60とを締結するボルト(不図示)が貫通する第1貫通孔53cをそれぞれ有する。平面視において、第1貫通孔53c(本実施形態では第1貫通孔53cの中心)は、仮想直線Lと重なる。
【0072】
図4に示すように、第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bの-X側の面は、端面52bから連続しており、端面52bと同一平面上に位置する。第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bの厚みは、ほぼ一定である。
【0073】
モータ取付部60は、ハウジング本体部61、第1ハウジング突出部62a、および、第2ハウジング突出部62bを一体に有している。モータ取付部60は、鋳造によって形成されている。モータ取付部60の材料は、アルミ合金およびマグネシウム合金などである。
【0074】
ハウジング本体部61は、第3減速ギヤ収納部41b2の+X側の開口から連続して形成されている平面視で環状であり、中心軸線A2を有する。モータ取付部60にモータ50が取り付けられている状態において、ハウジング本体部61の中心軸線A2は、回転軸線A1と重なる。
【0075】
ハウジング本体部61は、モータ50が取り付けられている状態で、端面52bと対向する対向面61aを有する。対向面61aは、モータ50が取り付けられている状態で、端面52bと平行である。
【0076】
平面視における対向面61aの大きさは、モータ取付部60に対してモータ50が傾斜することで、端面52bの周縁が対向面61aに接触する大きさである。具体的には、平面視において、対向面61aの周縁は、端面52bの周縁と重なる。なお、平面視で対向面61aの周縁は、端面52bの周縁より外側に位置してもよい。モータ50の傾斜については後述する。
【0077】
図6は、中心軸線A2に沿って見たモータ取付部60の平面視である。第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bは、平面視において、対向面61aの周縁からハウジング本体部61の外側に向けて突出する。
【0078】
第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bは、平面視で中心軸線A2を挟んで互いに反対側に配置されている。また、第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bは、モータ50とモータ取付部60とを締結するボルトが貫通する第2貫通孔62cをそれぞれ有する。図4に示すように、第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bの+X側の面は、対向面61aから連続しており、対向面61aと同一平面上に位置する。
【0079】
モータ取付部60にモータ50が取り付けられている状態において、平面視で、第1ハウジング突出部62aの周縁が第1モータ突出部53aの周縁と重なり、第2ハウジング突出部62bの周縁が第2モータ突出部53bの周縁と重なり、第2貫通孔62cは第1貫通孔53cと重なる。よって、第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bは、平面視で、仮想直線Lと重なっており、仮想直線Lを対称軸とする線対称形状である。また、第2貫通孔62cの中心は、仮想直線Lと重なる。
【0080】
図4に示すように、アシスト装置40は、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bをさらに備える。第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bは、それぞれ、ボルトが貫通する第3貫通孔63cを有する円板状である。第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bそれぞれの材料は、片状黒鉛を含有する片状黒鉛鋳鉄である。
【0081】
片状黒鉛鋳鉄の減衰率(およそ0.05%)は、球状黒鉛鋳鉄(およそ0.01%)の減衰率より高い。なお、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bそれぞれの材料は、球状黒鉛を含有する球状黒鉛鋳鉄、並びに、針状の空隙を含むアルミニウム合金およびマグネシウム合金でもよい。
【0082】
図4に示すように、モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、第1ハウジング突出部62aに第1モータ突出部53aが第1減衰部材63aを介して固定され、第2ハウジング突出部62bに第2モータ突出部53bが第2減衰部材63bを介して固定されている。
【0083】
換言すれば、第1減衰部材63aは、第1モータ突出部53aおよび第1ハウジング突出部62aに挟持され、第1モータ突出部53aおよび第1ハウジング突出部62aそれぞれと接触している。第2減衰部材63bは、第2モータ突出部53bおよび第2ハウジング突出部62bに挟持され、第2モータ突出部53bおよび第2ハウジング突出部62bそれぞれと接触している。
【0084】
また、モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bは、それぞれ、平面視で端面52bおよび対向面61aと重ならず、端面52bおよび対向面61aと接触していない。
【0085】
図4および図6に示すように、第1ハウジング突出部62aは、第1減衰部材63aと接触する第1接触面62a1を有する。また、第2ハウジング突出部62bは、第2減衰部材63bと接触する第2接触面62b1を有する。第1接触面62a1および第2接触面62b1は、それぞれ、対向面61aと平行であり、同一平面上に位置する。また、第1接触面62a1および第2接触面62b1と同一平面上に位置する仮想直線Lは、対向面61aとも同一平面上に位置する。なお、第1接触面62a1および第2接触面62b1は、対向面61aより+X側に位置してもよい。
【0086】
また、第1接触面62a1の周縁および第2接触面62b1の周縁は、平面視で仮想直線Lを対称軸とする線対称形状である。第1接触面62a1の周縁および第2接触面62b1の周縁は、平面視で円状であるが、平面視で円状に限定されないことは言うまでもない。
【0087】
以下、第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bを区別することなく説明するときは、単に「モータ突出部53」と記載する場合がある。また、第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bを区別することなく説明するときには、単に「ハウジング突出部62」と記載する場合がある。
【0088】
モータ取付部60にモータ50が取り付けられている状態において、第1接触面62a1の全体は、第1ハウジング突出部62aと第1減衰部材63aとが接触している第1接触領域R1に相当する。また、第2接触面62b1の全体は、第2ハウジング突出部62bと第2減衰部材63bとが接触している第2接触領域R2に相当する。
【0089】
第1接触領域R1および第2接触領域R2は、図6にハッチングで示す領域である。上記のようにモータ突出部53およびハウジング突出部62が形成されていることで、第1接触領域R1および第2接触領域R2は、平面視で出力軸部材51を挟んで互いに反対側に位置する。第1接触領域R1および第2接触領域R2の周縁は、平面視で円状であるが、平面視で円状に限定されないことは言うまでもない。
【0090】
また、第1接触領域R1および第2接触領域R2は、平面視で回転軸線A1に垂直な仮想直線Lと重なる。第1接触領域R1および第2接触領域R2は、平面視で、仮想直線Lを対称軸とする線対称形状である。さらに、平面視において、仮想直線Lと直交する直交方向に沿った第1接触領域R1の長さD1は、直交方向に沿った第2接触領域R2の長さD2と等しい。
【0091】
図4に示すように、端面52bと対向面61aとの間に隙間Sがある。隙間Sは、端面52bと対向面61aとの間の空間に相当する。端面52bと対向面61aとの間に隙間Sがあることで、モータ取付部60に対してモータ50が傾斜する。また、端面52bと対向面61aとの間に隙間Sがあることで、モータ50の駆動時に後述するようにモータ50が揺動する。
【0092】
隙間Sの回転軸線A1の沿った長さは、所定長さに定められている。所定長さは、モータ50の駆動時にモータ取付部60に対してモータ50が傾斜および揺動した場合に、端面52bと対向面61aとが接触しない長さである。具体的には、所定長さは、5μm以上である。
【0093】
また、図4に示すように、アシスト装置40は、第1弾性部材71をさらに備えている。第1弾性部材71は、環状であり、出力軸部材51の周囲で端面52bおよび対向面61aによって挟持されている。つまり、第1弾性部材71は、回転軸線A1が延びる方向(X方向)に沿って挟持されている。第1弾性部材71は、圧縮された状態で挟持されている。第1弾性部材71は、端面52bと対向面61aとの間からモータ取付部60の内側、および、アシストハウジング41に液体(例えば雨水)が侵入することを防ぐ。
【0094】
第1弾性部材71は、対向面61aにある環状の第1凹部61bに配置されている。第1弾性部材71は、合成ゴム製である。第1弾性部材71の硬度は、上記のモータ50の揺動を許容する硬度に定められており、例えば、A40以上A70以下(JIS K 6253に規定されているタイプAデュロメータにて測定した硬度)である。第1弾性部材71の剛性は、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bの剛性より低い。第1弾性部材71は、例えばOリングである。
【0095】
次に、モータ50の駆動時におけるモータ50およびモータ取付部60の動作について説明する。上記のように運転者によるステアリングホイール2bの操作に応じてモータ50が駆動し、モータ50の駆動によってモータ50が振動する。
【0096】
上記のように、モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、端面52bと対向面61aとの間に隙間Sがある。また、平面視において、第1接触領域R1および第2接触領域R2は仮想直線Lと重なり、第1接触領域R1の長さD1は第2接触領域R2の長さD2と等しい。
【0097】
よって、モータ50は、図5に示す矢印W1のように、仮想直線Lと直交する方向に沿って、平面視で直線状に揺動する。なお、Y方向に沿って見た側面視において、モータ50の揺動方向は、+X側を凸とする曲線状となる。モータ50の揺動時におけるモータ50の最大加速度は、モータ50が揺動していない場合にモータ50に作用する重力加速度のおよそ5倍である。また、隙間Sの幅が上記の所定長さに定められていることで、端面52bと対向面61aとが接触しない。
【0098】
さらに、仮想直線Lの角度が上記の所定角度範囲Hであり、仮想直線Lに直交する方向、本実施形態では車両2の上下方向に沿ってモータ50が揺動する。よって、この場合、仮想直線Lの角度が所定角度範囲Hから外れている場合と比べて、モータ50の揺動方向における鉛直方向の成分が大きく、モータ50に作用する重力によって、モータ50は効率よく揺動する。
【0099】
モータ50の揺動によって、ハウジング突出部62が繰り返し変形する。これにより、ハウジング突出部62において、繰り返し生じるせん断応力によって熱が生じる。つまり、ハウジング突出部62の運動エネルギが熱エネルギに変換される。
【0100】
また、ハウジング突出部62の変形とともに、モータ突出部53が繰り返し変形することで、モータ突出部53においても、モータ突出部53の運動エネルギが熱エネルギに変換される。
【0101】
このように、モータ50の振動エネルギは、熱エネルギに変換される。したがって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することを抑制することができる。
【0102】
また、モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、第1ハウジング突出部62aに第1モータ突出部53aが第1減衰部材63aを介して固定され、第2ハウジング突出部62bに第2モータ突出部53bが第2減衰部材63bを介して固定されている。よって、モータ突出部53からハウジング突出部62に伝達するモータ50の振動は、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bによって減衰される。したがって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することを抑制することができる。
【0103】
また、第1弾性部材71は、モータ50の揺動に応じて、圧縮率が変化する。第1弾性部材71が有する弾性により、第1弾性部材71を介して端面52bから対向面61aに伝達するモータ50の振動は減衰する。よって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することを抑制することができる。
【0104】
以上、説明したように、本実施形態によれば、車両用アクチュエータ1は、出力軸部材51を有するモータ50と、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bと、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bを介してモータ50が取り付けられているモータ取付部60と、を備える。モータ50は、出力軸部材51の回転軸線A1と直交する端面52bを有するモータ本体部52と、回転軸線A1に沿って見た平面視において、端面52bの周縁からモータ本体部52の外側に向けて突出する第1モータ突出部53aおよび第2モータ突出部53bと、を有する。モータ取付部60は、端面52bと対向する対向面61aを有するハウジング本体部61と、平面視において、対向面61aの周縁からハウジング本体部61の外側に向けて突出する第1ハウジング突出部62aおよび第2ハウジング突出部62bと、を有する。モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、第1ハウジング突出部62aに第1モータ突出部53aが第1減衰部材63aを介して固定され、第2ハウジング突出部62bに第2モータ突出部53bが第2減衰部材63bを介して固定され、かつ、端面52bと対向面61aとの間に隙間Sがある。
これによれば、端面52bと対向面61aとの間に隙間Sがある状態でモータ50がモータ取付部60に取り付けられていることで、モータ50の駆動時に、モータ50の振動によってモータ取付部60に対してモータ50が揺動する。モータ50の揺動によって、ハウジング突出部62およびモータ突出部53が繰り返し変形し、ハウジング突出部62およびモータ突出部53の運動エネルギが熱エネルギに変換される。つまり、モータ50の振動エネルギは、ハウジング突出部62およびモータ突出部53で熱エネルギに変換される。したがって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することを抑制することができる。
さらに、第1ハウジング突出部62aに第1モータ突出部53aが第1減衰部材63aを介して固定され、第2ハウジング突出部62bに第2モータ突出部53bが第2減衰部材63bを介して固定されている。したがって、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bにより、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することをより抑制することができる。
【0105】
また、平面視において、第1減衰部材63aと第1ハウジング突出部62aとが接触している第1接触領域R1、および、第2減衰部材63bと第2ハウジング突出部62bとが接触している第2接触領域R2は、回転軸線A1に垂直な仮想直線Lと重なる。
これによれば、モータ取付部60に対するモータ50の揺動方向を、平面視において、仮想直線Lと交差する方向にすることができる。したがって、第1接触領域R1および第2接触領域R2の位置によって、モータ50の揺動方向を調整することができる。
【0106】
また、平面視において、仮想直線Lと直交する直交方向に沿った第1接触領域R1の長さD1は、直交方向に沿った第2接触領域R2の長さD2と等しい。
これによれば、モータ取付部60に対するモータ50の揺動方向を、平面視において、直線状にすることができる。したがって、第1接触領域R1および第2接触領域R2の形状によって、モータ50を効率よく揺動させることができる。
【0107】
また、車両2の幅方向に沿って見たときに、車両2の前後方向と仮想直線Lとのなす角度は、0度以上45度以下である。
これによれば、モータ50の姿勢により、モータ取付部60に対するモータ50の揺動方向における鉛直方向の成分が増大し、モータ50に作用する重力によって、モータ50を効率よく揺動させることができる。よって、第1ハウジング突出部62a、および、第2ハウジング突出部62bを効率よく繰り返し変形させることができる。したがって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することをさらに抑制することができる。
【0108】
また、第1減衰部材63aの材料および第2減衰部材63bの材料は、それぞれ、片状黒鉛鋳鉄である。
これによれば、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bによって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することを効率よく抑制することができる。
【0109】
また、車両用アクチュエータ1は、出力軸部材51の周囲で端面52bおよび対向面61aによって挟持されている環状の第1弾性部材71をさらに備えている。
これによれば、第1弾性部材71によって、端面52bと対向面61aとの間でシール性を確保することができるとともに、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することをさらに抑制することができる。
【0110】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第1変形例について、主として上記の実施形態の車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。
【0111】
図7は、本開示の実施形態の第1変形例に係る車両用アクチュエータ1における中心軸線A2に沿って見たモータ取付部60の平面視である。
【0112】
本第1変形例において、平面視において、仮想直線Lと直交する直交方向に沿った第1ハウジング突出部162aの長さは、直交方向に沿った第2ハウジング突出部62bの長さより長い。また、平面視で、第1ハウジング突出部162aの周縁は、第1モータ突出部153aの周縁と重なる。さらに、平面視において、仮想直線Lと直交する直交方向に沿った第1減衰部材163aの長さは、直交方向に沿った第2減衰部材63bの長さより長い。
【0113】
よって、平面視において、仮想直線Lと直交する直交方向に沿った第1接触面162a1および第1接触領域R11の長さD11は、直交方向に沿った第2接触面62b1および第2接触領域R2の長さD2より長い。第1接触領域R11および第2接触領域R2は、図7にハッチングで示す領域である。
【0114】
本第1変形例において、駆動時のモータ50は、矢印W2のように、仮想直線Lと交差し、第1ハウジング突出部162a側を凸とする平面視で曲線状に揺動する。この場合、上記の実施形態のように、モータ50が平面視で直線状に揺動する場合と比べて、ハウジング突出部62およびモータ突出部53の変形量が大きくなる。
【0115】
よって、ハウジング突出部162およびモータ突出部153の運動エネルギの量が大きくなり、運動エネルギから変換される熱エネルギの量が大きくなる。したがって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することをさらに抑制することができる。
【0116】
本第1変形例によれば、平面視において、仮想直線Lと直交する直交方向に沿った第1接触領域R11の長さD11は、直交方向に沿った第2接触領域R2の長さD2より長い。
これによれば、モータ取付部60に対するモータ50の揺動方向を、平面視で曲線状にすることができる。モータ50の揺動方向が平面視で曲線状になることで、モータ50の揺動方向が平面視で直線状である場合と比べて、熱エネルギに変換されるモータ50の振動エネルギの量が大きくなる。よって、この場合、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することをさらに抑制することができる。
【0117】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第2変形例について、主として上記の実施形態の車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。
【0118】
図8は、本開示の実施形態の第2変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿って見たアシスト装置40の平面視である。図9は、図8に示すX-X線に沿ったアシスト装置40の部分拡大断面図である。
【0119】
本第2変形例において、モータ取付部60は、腕部264を有している。モータ取付部60は、腕部264を2つ有している。なお、腕部264の個数が2つに限定されないことは言うまでもない。
【0120】
2つの腕部264は、ハウジング本体部61と一体である。図8に示すように、2つの腕部264は、平面視において、第1ハウジング突出部62aと第2ハウジング突出部62bとの間で、中心軸線A2を挟んで互いに反対側に配置されている。2つの腕部264は、互いに同様に構成されている。
【0121】
図9に示すように、腕部264は、ハウジング本体部61から延びている。具体的には、腕部264は、平面視で対向面61aより外側で、ハウジング本体部61の側面から+X方向に向けて延びている。腕部264の先端部は、モータ本体部52の外表面に摺動可能に接触する。腕部264は、モータ取付部60に対するモータ50の揺動を抑制する剛性を有する。また、モータ取付部60に対してモータ50が揺動していない状態において、腕部264は、モータ本体部52の外表面を押圧している。
【0122】
また、モータ50の駆動時にモータ取付部60に対してモータ50が揺動する場合、腕部264は揺動し、繰り返し変形する。これにより、腕部264において、繰り返し生じるせん断応力によって熱が生じる。つまり、腕部264の運動エネルギが熱エネルギに変換される。
【0123】
このように、モータ50の振動エネルギは、熱エネルギに変換される。したがって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することを抑制することができる。
【0124】
本第2変形例によれば、モータ取付部60は、ハウジング本体部61から延びており、モータ本体部52の外表面に摺動可能に接触する腕部264をさらに備えている。
これによれば、モータ取付部60に対するモータ50の揺動によって腕部264が繰り返し変形する。これにより、腕部264にてモータ50の振動エネルギが熱エネルギに変換され、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することをさらに抑制することができる。
【0125】
なお、腕部264は、モータ本体部52の外表面を押圧せずに接触する形状でもよい。また、腕部264は、モータ50が揺動していないときにモータ50と離れており、モータ50が揺動したときにモータ50と接触する形状でもよい。
【0126】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第3変形例について、主として上記の実施形態の車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。
【0127】
図10は、本開示の実施形態の第3変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿うアシスト装置40の拡大部分断面図である。本第3変形例において、モータ50は、モータ周側壁352cをさらに有している。
【0128】
モータ周側壁352cは、出力軸部材51の周囲で端面52bから連続して設けられている。モータ周側壁352cは、回転軸線A1に沿って延びる筒状である。モータ周側壁352cは、平面視で第1凹部61bより内側に位置する。
【0129】
また、モータ取付部60は、ハウジング周側壁361cをさらに有している。ハウジング周側壁361cは、対向面61aから連続して設けられ、モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、回転軸線A1と直交する方向でモータ周側壁352cの外側に位置し、モータ周側壁352cと対向している。ハウジング周側壁361cは、ハウジング本体部61と一体であり、中心軸線A2に沿って延びている。
【0130】
さらに、アシスト装置40は、第2弾性部材372をさらに備えている。第2弾性部材372は、環状であり、モータ周側壁352cにある環状の第2凹部352c1に配置され、モータ周側壁352cおよびハウジング周側壁361cによって挟持されている。つまり、第2弾性部材372は、回転軸線A1と交差する方向に沿って挟持されている。第2弾性部材372は、圧縮された状態で挟持されている。
【0131】
第2弾性部材372は、モータ周側壁352cとハウジング周側壁361cとの間からアシストハウジング41に液体(例えば水)が侵入することを防ぐ。第2弾性部材372は、平面視で第1弾性部材71の内側に位置する。
【0132】
第2弾性部材372は、合成ゴム製である。第2弾性部材372の硬度は、第1弾性部材71と同様に、上記のモータ50の揺動を許容する硬度に定められている。第2弾性部材372の剛性は、第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bの剛性より低い。第2弾性部材372は、例えばOリングである。
【0133】
第2弾性部材372は、モータ50の揺動に応じて、圧縮率が変化する。第2弾性部材372が有する弾性により、第2弾性部材372を介してモータ周側壁352cからハウジング周側壁361cに伝達するモータ50の振動は減衰する。よって、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することを抑制することができる。
【0134】
また、モータ50の揺動時において、例えば、図10において、+Z側にモータ50が傾斜した場合、モータ50が傾斜していない場合と比べて、第1弾性部材71の+Z側の圧縮率は大きくなり、かつ、第2弾性部材372の+Z側の圧縮率は小さくなる。一方、-Z側にモータ50が傾斜した場合、モータ50が傾斜していない場合と比べて、第1弾性部材71の+Z側の圧縮率は小さくなり、かつ、第2弾性部材372の+Z側の圧縮率は大きくなる。
【0135】
このように、第1弾性部材71および第2弾性部材372は、モータ50の揺動時における圧縮率の減少を互いに補う関係にあり、モータ50の揺動時においても、アシストハウジング41に液体(例えば雨水)が侵入することをより防ぐことができる。
【0136】
本第3変形例によれば、モータ50は、出力軸部材51の周囲で端面52bから連続して設けられているモータ周側壁352cをさらに有している。モータ取付部60は、対向面61aから連続して設けられ、回転軸線A1と直交する方向でモータ周側壁352cと対向しているハウジング周側壁361cをさらに有している。車両用アクチュエータ1は、モータ周側壁352cおよびハウジング周側壁361cによって挟持されている環状の第2弾性部材372をさらに備えている。
これによれば、第2弾性部材372によって、モータ周側壁352cとハウジング周側壁361cとの間でシール性を確保することができるとともに、モータ50の振動がハウジング本体部61に伝達することをさらに抑制することができる。
【0137】
なお、第2弾性部材372は、平面視で第1弾性部材71の外側に位置するように、モータ50およびモータ取付部60が形成されていてもよい。
【0138】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第4変形例について、主として上記の実施形態の車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。
【0139】
図11は、本開示の実施形態の第4変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿ったアシスト装置40の断面図である。本第4変形例において、アシスト装置40は、弾性継手480をさらに備えている。
【0140】
弾性継手480は、出力軸部材51と減速機構部42とを連結する。具体的には、弾性継手480は、出力軸部材51とウォームギヤ42aとを連結している。
【0141】
図12は、弾性継手480の分解斜視図である。弾性継手480は、第1回転部材481、第2回転部材482、第1弾性体483、第2弾性体484、および、カップリング485を備えている。第1回転部材481、第2回転部材482、第1弾性体483、第2弾性体484、および、カップリング485は、回転軸線A1に沿って配置されている。
【0142】
第1回転部材481は、出力軸部材51に一体回転可能に取り付けられている。第1回転部材481は、出力軸部材51が嵌合する第1穴481aを有する第1本体部481b、および、第1本体部481bからカップリング485に向けて延びている複数の第1柱部481cを一体に有している。第1柱部481cの個数は、4つであるが、4つに限定されないことは言うまでもない。
【0143】
第2回転部材482は、ウォームギヤ42aに一体回転可能に取り付けられている。第2回転部材482は、ウォームギヤ42aが嵌合する第2穴482aを有する第2本体部482b、および、第2本体部482bからカップリング485に向けて延びている複数の第2柱部482cを一体に有している。第2柱部482cの個数は、第1柱部481cの個数と等しい。
【0144】
第1弾性体483は、平面視で環状である。第1弾性体483は、径方向内側に向けて開放する平面視でU字状の第1嵌合部483a、および、第1取付穴483bを、それぞれ複数有している。第1嵌合部483aの個数は、第1柱部481cの個数と等しい。第1嵌合部483aの内側には、第1柱部481cが位置する。また、第1嵌合部483aの個数と第1取付穴483bの個数とは、等しい。複数の第1嵌合部483a、および、複数の第1取付穴483bは、周方向に沿って交互に配置されている。
【0145】
第2弾性体484は、平面視で環状である。第2弾性体484は、径方向内側に向けて開放する平面視でU字状の第2嵌合部484a、および、第2取付穴484bを、それぞれ複数有している。第2嵌合部484aの個数は、第2柱部482cの個数と等しい。第2嵌合部484aの内側には、第2柱部482cが位置する。また、第2嵌合部484aの個数と第2取付穴484bの個数とは、等しい。複数の第2嵌合部484a、および、複数の第2取付穴484bは、周方向に沿って交互に配置されている。
【0146】
カップリング485は、円筒状の円筒部485a、複数の一対の側壁486b、複数の第1接続壁486c、および、複数の第2接続壁486dを一体に有している。
【0147】
一対の側壁486bは、2つの側壁486eを含む。側壁486eは、円筒部485aから径方向外側に延びている。一対の側壁486bは、周方向に沿って並ぶ。一対の側壁486bの個数は、第1柱部481cの個数と等しい。第1柱部481cは、一対の側壁486bの間に位置する。第2柱部482cは、互いに隣接する一対の側壁486bの間に位置する。
【0148】
出力軸部材51が回転していない状態において、第1柱部481cと側壁486eとは周方向において離れて対向し、第2柱部482cと側壁486eとは周方向において離れて対向している。
【0149】
第1接続壁486cは、一対の側壁486bに含まれる側壁486e同士を、円筒部485aの+X側で接続する。第1接続壁486cは、第1弾性体483の第1取付穴483bが取り付けられる第1被取付部486fを有している。
【0150】
第2接続壁486dは、互いに隣接する2つの一対の側壁486bにおいて、周方向に対向する2つの側壁486e同士を円筒部485aの-X側で接続する。第2接続壁486dは、第2弾性体484の第2取付穴484bが取り付けられる第2被取付部486gを有している。
【0151】
次に、弾性継手480の動作について説明する。出力軸部材51が回転することで、第1回転部材481が出力軸部材51と一体回転する。これにより、第1柱部481cが第1弾性体483を周方向に押圧することで、第1弾性体483は、第1柱部481cおよび第1被取付部486fによって圧縮され、弾性変形する。さらに第1回転部材481が回転し、第1柱部481cが側壁486eを押圧することで、カップリング485が第1回転部材481と一体回転する。
【0152】
カップリング485が回転することで、第2弾性体484は、第2被取付部486gおよび第2柱部482cによって圧縮され、弾性変形する。さらにカップリング485が回転し、側壁486eが第2柱部482cを押圧することで、第2回転部材482がカップリング485と一体回転する。そして、ウォームギヤ42aが第2回転部材482と一体回転する。
【0153】
このように、出力軸部材51の回転は、第1弾性体483および第2弾性体484を介して、ウォームギヤ42aに伝達される。また、モータ50の振動は、第1弾性体483および第2弾性体484を介してウォームギヤ42aに伝達する。第1弾性体483および第2弾性体484は、モータ50の振動を減衰させる。よって、弾性継手480は、モータ50の振動がウォームギヤ42aに伝達することを抑制する。
【0154】
本第4変形例によれば、車両用アクチュエータ1は、出力軸部材51と減速機構部42とを連結する弾性継手480をさらに備えている。
これによれば、弾性継手480によって、モータ50の振動が出力軸部材51から減速機構部42に伝達することを抑制することができる。
【0155】
なお、弾性継手480は、いわゆるオルダム継手でもよい。この場合、弾性継手480は、出力軸部材51に固定される第1ハブ(不図示)、ウォームギヤ42aに固定される第2ハブ(不図示)、および、第1ハブと第2ハブとの間に配置され、弾性を有するスペーサ(不図示)を備える。
【0156】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第5変形例について、主として上記の実施形態の車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。本第5変形例のアシスト装置40は、連結減衰部材590をさらに備える。
【0157】
図13は、本開示の実施形態の第5変形例に係る車両用アクチュエータ1の連結減衰部材590の平面視である。連結減衰部材590は、第1減衰部材563a、第2減衰部材563b、および、連結部591を一体に有する。
【0158】
第1減衰部材563aおよび第2減衰部材563bは、上記の実施形態の第1減衰部材63aおよび第2減衰部材63bと同様に構成されており、第3貫通孔563cを有する。連結部591は、第1減衰部材563aと第2減衰部材563bとを連結する。連結部591は、片状黒鉛鋳鉄によって環状に形成されている。
【0159】
図14は、本開示の実施形態の第5変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿ったアシスト装置40の拡大部分断面図である。モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、連結部591は、平面視において、端面52bおよび対向面61aと重なり、第1凹部61bの外側に位置する。
【0160】
連結部591の厚みは、第1減衰部材563aおよび第2減衰部材563bそれぞれの厚みより薄い。モータ50がモータ取付部60に取り付けられている状態において、連結部591は、端面52bと接触し、かつ、対向面61aから離れている。
【0161】
具体的には、図14において、連結部591の+X側の面は、第1減衰部材563aおよび第2減衰部材563bの+X側の面と連続しており、かつ、同一平面上にあるとともに、端面52bと接触している。一方、連結部591の-X側の面は、第1減衰部材563aおよび第2減衰部材563bの-X側の面および対向面61aより+X側に位置し、対向面61aから離れている。また、連結部591は、モータ取付部60に対してモータ50が揺動した場合に、対向面61aと接触しない位置に配置されている。
【0162】
本第5変形例によれば、車両用アクチュエータ1は、第1減衰部材563a、第2減衰部材563b、および、第1減衰部材563aと第2減衰部材563bとを連結する連結部591を一体に有する連結減衰部材590を備える。連結部591は、端面52bと接触し、かつ、対向面61aから離れている。
これによれば、第1減衰部材563aと第2減衰部材563bとが別体である場合に比べて、第1減衰部材563aおよび第2減衰部材563bを容易にモータ50およびモータ取付部60に取り付けることができる。
【0163】
なお、連結部591は、平面視で第1凹部61bと重なる形状でもよい。この場合、第1弾性部材71は、連結部591と対向面61aとによって挟持される。
【0164】
図15は、本開示の実施形態の第5変形例において連結減衰部材590の他の取り付け方を示すアシスト装置40の拡大部分断面図である。図15に示す連結減衰部材590は、図14に示す連結減衰部材590の姿勢と比べてX方向において反対向きでアシスト装置40に取り付けられている。この場合、連結部591は、端面52bから離れており、かつ、対向面61aと接触している。
【0165】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第6変形例について、主として上記の実施形態の第5変形例に係る車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。図16は、本開示の実施形態の第6変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿ったアシスト装置40の拡大部分断面図である。
【0166】
上記の第5変形例の連結減衰部材590と比べて本第6変形例の連結減衰部材690では、連結部691は、連結減衰部材690の厚み方向において、第1減衰部材663aおよび第2減衰部材663bの両面の間に位置する。この場合、連結部691は、端面52bおよび対向面61aそれぞれから離れている。
【0167】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第7変形例について、主として上記の実施形態の第5変形例に係る車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。図17は、本開示の実施形態の第7変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿ったアシスト装置40の拡大部分断面図である。
【0168】
上記の第5変形例の連結減衰部材590と比べて本第7変形例では、連結減衰部材790の連結部791の厚みは、第1減衰部材763aおよび第2減衰部材763bの厚みと等しい。つまり、連結減衰部材790の厚みは一定である。
【0169】
また、上記の第5変形例と比べて本第7変形例では、第1ハウジング突出部762aおよび第2ハウジング突出部762bの+X側の面は、対向面61aより+X側に位置する。この場合、連結部791は、端面52bと接触し、かつ、対向面61aから離れている。
【0170】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第8変形例について、主として上記の実施形態の第5変形例に係る車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。図18は、本開示の実施形態の第8変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿ったアシスト装置40の拡大部分断面図である。
【0171】
本第8変形例では、上記の第7変形例と同様の連結減衰部材790を有している。また、上記の第5変形例と比べて本第8変形例では、第1モータ突出部853aおよび第2モータ突出部853bの-X側の面は、端面52bより-X側に位置する。この場合、連結部791は、端面52bから離れており、かつ、対向面61aと接触している。
【0172】
次に、上記の実施形態の車両用アクチュエータ1の第9変形例について、主として上記の実施形態の第8変形例に係る車両用アクチュエータ1と異なる部分を説明する。図19は、本開示の実施形態の第9変形例に係る車両用アクチュエータ1における回転軸線A1に沿ったアシスト装置40の拡大部分断面図である。
【0173】
上記の第8変形例と比べて本第9変形例では、上記の第7変形例と同様の第1ハウジング突出部762aおよび第2ハウジング突出部762bを有する。この場合、連結部791は、端面52bおよび対向面61aそれぞれから離れている。
【0174】
次に、本実施形態の他の変形例に係る車両用アクチュエータ1について説明する。
【0175】
車両用アクチュエータ1は、モータ50の駆動によって車両用シートを移動させるシートアクチュエータでもよい。この場合、モータ50は、ステッピングモータでもよい。
【0176】
また、車両用アクチュエータ1は、運転者によるブレーキペダルの操作に応じてモータ50の出力によりブレーキを駆動するブレーキアクチュエータでもよい。
【0177】
また、アシスト装置40は、ステアリングギヤユニット30に配置されてもよい。この場合、アシストハウジング41は、ギヤハウジング31と一体となる。また、第2ラック歯32bは、ステアリングギヤユニット30の第1ピニオンシャフト33に配置される。
【0178】
また、車両用アクチュエータ1は、ステアリングシャフト10が貫通するステアリングコラム(不図示)をさらに備え、ステアリングコラムにアシスト装置40が配置されてもよい。この場合、アシストハウジング41は、ステアリングコラムと一体となる。また、ウォームホイール42bは、ステアリングシャフト10に一体回転可能に取り付けられる。なお、この場合、車両用アクチュエータ1は、第2ラック歯32bを備えない。さらにこの場合、アシスト装置40が車室内に配置され、アシスト装置40が第1弾性部材71を備えなくてもよい。
【0179】
なお、アシスト装置40が第1弾性部材71を備えない場合、平面視において端面52bと対向面61aとが重なっている領域は、中央から周縁まで隙間Sを有する。
【0180】
また、第1接触領域R1および第2接触領域R2は、線対称形状以外の形状でもよい。また、平面視において、第1貫通孔53cの中心は、仮想直線Lと重ならなくてもよい。そして、第1接触領域R1および第2接触領域R2は、平面視で仮想直線Lと重ならなくてもよい。
【0181】
なお、モータ突出部53の本数、および、ハウジング突出部62の個数は、3つ以上でもよい。この場合、第2モータ突出部53bと3つ目のモータ突出部53である第3モータ突出部(不図示)とが仮想直線Lを挟んで互いに反対側に配置されてもよい。また、第2ハウジング突出部62bと3つ目のハウジング突出部62である第3ハウジング突出部(不図示)とが仮想直線Lを挟んで互いに反対側に配置されてもよい。さらに、この場合、第1減衰部材63aと同様に構成されている第3減衰部材(不図示)を介して、第3モータ突出部が第3ハウジング突出部に固定されてもよい。
【0182】
また、隙間Sの回転軸線A1の沿った長さは、モータ取付部60に対してモータ50が傾斜することで、対向面61aが端面52bに接触する大きさでもよい。
【0183】
端面52bおよび対向面61aは、モータ50の揺動を妨げない位置に第1の凸部(不図示)を有してもよい。
【0184】
また、端面52bは、対向面61aに向けて突出し、モータ50が揺動することで対向面61aと当たる第2の凸部(不図示)を有してもよい。この場合、第2の凸部の先端と対向面61aとの回転軸線A1に沿った長さは、所定長さに定められる。なお、第2の凸部は、対向面61aにおいて、端面52bに向けて突出して配置されてもよい。
【0185】
また、仮想直線Lは、回転軸線A1と交差しなくてもよい。また、仮想直線Lの角度は、所定角度範囲Hから外れてもよい。
【符号の説明】
【0186】
1 車両用アクチュエータ
2a 車体
40 アシスト装置
42 減速機構部
50 モータ
51 出力軸部材
52 モータ本体部
52b 端面
53a 第1モータ突出部
53b 第2モータ突出部
60 モータ取付部(ハウジング)
61 ハウジング本体部
61a 対向面
62a 第1ハウジング突出部
62b 第2ハウジング突出部
63a 第1減衰部材
63b 第2減衰部材
71 第1弾性部材
264 腕部
352c モータ周側壁
361c ハウジング周側壁
372 第2弾性部材
480 弾性継手
590 連結減衰部材
591 連結部
A1 回転軸線
L 仮想直線
R1 第1接触領域
R2 第2接触領域
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19