(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073246
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】フィルタープレス式脱液装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 25/12 20060101AFI20240522BHJP
B30B 9/28 20060101ALI20240522BHJP
F04B 43/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B01D25/12 G
B01D25/12 F
B01D25/12 101A
B30B9/28 A
F04B43/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184348
(22)【出願日】2022-11-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 工事開始年月日 :令和4年3月8日 工事場所 :世界貿易センタービル本館・別館(東京都港区浜松町2-4-1)
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301019367
【氏名又は名称】株式会社オクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 武志
(72)【発明者】
【氏名】川端 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 武志
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】増田 伊三雄
【テーマコード(参考)】
3H077
4D116
【Fターム(参考)】
3H077AA02
3H077CC02
3H077CC09
3H077CC17
3H077DD14
3H077FF06
3H077FF14
3H077FF45
4D116AA12
4D116CC03
4D116CC15
4D116CC43
4D116CC47
4D116CC50
4D116KK04
4D116QA05B
4D116QA05D
4D116QA05F
4D116QA06B
4D116QA06D
4D116QA06E
4D116QA06G
4D116QA36C
4D116QA36D
4D116QA36E
4D116QA46C
4D116QA46F
4D116QA46G
4D116QC04A
4D116QC08A
4D116QC17C
4D116QC22A
4D116RR01
4D116RR03
4D116RR15
4D116RR25
4D116VV07
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】脱液終了のタイミングを適切に管理する。
【解決手段】フィルタープレス式脱液装置100は、ろ室10を画定するろ室部材20と、ろ室10に原液を圧送する原液圧送部30と、ろ室部材20に設けられ、ろ室10に圧送された原液から固形物を濾し取るろ材40と、原液圧送部30により圧送された原液の圧力を測定する圧力測定部61と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ室を画定するろ室部材と、
前記ろ室に原液を圧送する原液圧送部と、
前記ろ室部材に設けられ、前記ろ室に圧送された原液から固形物を濾取るろ材と、
前記原液圧送部により圧送された原液の圧力を測定する圧力測定部と、を備える、
フィルタープレス式脱液装置。
【請求項2】
前記圧力測定部により測定された前記圧力に基づいて前記原液圧送部による原液の圧送を制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記圧力が予め定められた圧力閾値に達したときに前記原液圧送部による原液の圧送を停止する、
請求項1に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項3】
前記原液圧送部により圧送される原液を貯留する原液タンクと、
前記原液タンクにおける原液の液量を測定する液量測定部と、を更に備える、
請求項1に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項4】
前記液量測定部により測定された前記液量に基づいて前記原液圧送部による原液の圧送を制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記液量が予め定められた液量閾値に達したときに前記原液圧送部による原液の圧送を開始する、
請求項3に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項5】
前記原液圧送部は、一対のポンプ室を有するダイヤフラムポンプであり、
前記ダイヤフラムポンプは、一方のポンプ室が拡縮することにより、原液を吸入して前記ろ室に圧送し、他方のポンプ室が拡縮することにより、前記ろ室から前記ろ材を介して原液を吸入することでろ過液を取出して圧送する、
請求項1に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項6】
前記ろ室部材に設けられ、前記ろ材により濾取られた固形物から形成される脱液ケーキに目地を入れる目地入れ部材を更に備える、
請求項1に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項7】
前記原液圧送部による原液の圧送が停止されているときに、前記ろ材を、前記固形物を濾取った面が下を向くように搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送された前記ろ材に向けて下方から洗浄液を噴出するノズルと、を更に備える、
請求項1に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項8】
前記ノズルから噴出される洗浄液は、前記ろ材により原液から取出されたろ過液である、
請求項7に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項9】
前記搬送手段により搬送された前記ろ材の下方に設けられ、前記ノズルから前記ろ材に向けて噴出された洗浄液を収集する収集部材を更に備え、
前記原液圧送部は、前記収集部材により収集された洗浄液を前記ろ室に圧送する、
請求項7に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項10】
前記ろ室部材を振動させる加振機を更に備える、
請求項1に記載のフィルタープレス式脱液装置。
【請求項11】
ろ室を画定するろ室部材と、前記ろ室に原液を圧送する原液圧送部と、前記ろ室部材に設けられ前記ろ室に圧送された原液から固形物を濾取るろ材と、を備えるフィルタープレス式脱液装置の制御方法であって、
前記原液圧送部により圧送された原液の圧力を圧力測定部を用いて測定し、
測定された前記圧力が予め定められた圧力閾値に達したときに前記原液圧送部による原液の圧送を停止する、
フィルタープレス式脱液装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレス式脱液装置、及びフィルタープレス式脱液装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形物と液体とを含む原液をろ過して原液から液体を取出す装置として、フィルタープレス式脱液装置が知られている。特許文献1には、土木工事廃水、工場廃水等の汚泥を含んだ作業廃水をろ過するフィルタープレス式脱水装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたフィルタープレス式脱水装置は、ろ室を形成する上ろ板及び下ろ板と、上ろ板及び下ろ板のそれぞれに張られたろ布と、を備えている。作業廃水は、ポンプによってろ室内に打ち込まれ、ろ布によってろ過される。ろ過により原液から取出されたろ過水は、タンクに集められる。汚泥は、ろ布により濾取られ、ろ布表面に蓄積され、いわゆる脱液ケーキを形成する。脱液ケーキは、ポンプが止まり作業廃水の打ち込みが終了した後、ろ室から取出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタープレス式脱液装置では、固形物がろ室に充満した後も原液を圧送し続けることで、ろ材により濾取られた固形物は、ろ室に更に詰め込まれる原液により圧搾される。これにより、固形物から形成される脱液ケーキの含液率を低下させることができ、原液から取出されるろ過液を増加させることができる。
【0006】
一方で、ろ材に形成される脱液ケーキは、ろ過抵抗となる。脱液ケーキの含液率が低いほどろ過抵抗は大きく、ろ過液の流量は低下する。そのため、ろ室内における脱液ケーキの含液率が十分に低下しほぼ固形になっている状態で原液の圧送を継続した場合には、ろ過液の流量が著しく低下し、脱液に膨大な時間がかかることになる。
【0007】
このような理由から、脱液終了のタイミングを適切に管理することが求められている。脱液終了のタイミングは、脱液ケーキの含液率を測定して決定することが好ましいが、脱液ケーキの含液率を直接測定する方法は確立されていない。現状では、作業者が目視によりろ過液の流れを確認し、ろ過液の流量がある程度低下したと作業者が判断したときに脱液を終了している。そのため、脱液終了のタイミングを適切に管理することが難しい。
【0008】
本発明は、脱液終了のタイミングを適切に管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ろ室を画定するろ室部材と、ろ室に原液を圧送する原液圧送部と、ろ室部材に設けられ、ろ室に圧送された原液から固形物を濾し取るろ材と、原液圧送部により圧送された原液の圧力を測定する圧力測定部と、を備える。
【0010】
また、本発明は、ろ室を画定するろ室部材と、ろ室に原液を圧送する原液圧送部と、ろ室部材に設けられろ室に圧送された原液から固形物を濾し取るろ材と、を備えるフィルタープレス式脱液装置の制御方法であって、原液圧送部により圧送された原液の圧力を測定する圧力測定ステップと、圧力測定ステップにて測定された圧力が予め定められた圧力閾値に達したときに原液圧送部による原液の圧送を停止する圧送停止ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、脱液終了のタイミングを適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るフィルタープレス式脱液装置の模式図である。
【
図2】
図1に示すII部の拡大図であり、(a)は、ろ室部材がろ室を閉塞した状態を示す図であり、(b)は、ろ室部材がろ室を開放した状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す原液圧送部の詳細を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るフィルタープレス式脱液装置のブロック図である。
【
図5】
図2に示す上ろ板及びろ枠を下ろ板から見た図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るフィルタープレス式脱液装置により形成される脱液ケーキの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るフィルタープレス式脱液装置100の模式図である。フィルタープレス式脱液装置100は、例えば、道路カッターを用いてスラブコンクリートを切削する作業において用いられる。道路カッターを用いた切削作業では、水といった液体を道路カッターのカッター刃とスラブコンクリートにかけカッター刃を冷却しながらスラブコンクリートを切削する。カッター刃及びスラブコンクリートにかけられた後の液体には、スラブコンクリートの切削により生じる切削粉といった固形物が混ざる。フィルタープレス式脱液装置100は、固形物と液体とを含む原液(「ノロ水」とも呼ばれる)をろ過して原液から液体を取出す。フィルタープレス式脱液装置100により原液から取出された液体は、道路カッターにおけるカッター刃の冷却に再び用いられる。
【0015】
なお、フィルタープレス式脱液装置100は、湿式コアボーリングを用いてコンクリートなどを穿孔する工事、湿式ウォールソーを用いてコンクリートなどを切断する工事、及び湿式ワイヤーソーを用いてコンクリートなどを切断する工事に使用してもよい。湿式コアボーリング、湿式ウォールソー及び湿式ワイヤーソーは、道路カッターと同様に、道路カッターのカッター刃に相当する穿孔ビット、切断ブレード及び切断ワイヤーに液体をかけながらコンクリートなどを切断する。
【0016】
図1に示すように、フィルタープレス式脱液装置100は、ろ室10を画定するろ室部材20と、ろ室10に原液を圧送する原液圧送部30と、ろ室部材20に設けられたろ材40と、を備える。ろ室部材20は、ろ室10を開放可能に形成されている。ろ材40は、ろ室10に圧送された原液から固形物を濾取る。
【0017】
原液圧送部30は、原液吸入管路12を通じて切換弁11に接続されるとともに、原液圧送管路13を通じてろ室10に接続されている。切換弁11は、原液を貯留する原液タンク16と原液吸入管路12との連通を許容する第1位置11aと、原液タンク16と原液吸入管路12との連通を遮断する第2位置11bと、を有する。
図1は、切換弁11が第1位置11aに切換えられている状態が示されている。
図1に示されている状態では、原液圧送部30は、原液タンク16内の原液を吸入しろ室10に圧送する。
【0018】
図2は、
図1に示すII部の拡大図である。
図2(a)は、ろ室部材20がろ室10を閉塞した状態を示し、
図2(b)は、ろ室部材20がろ室10を開放した状態を示している。
図2(b)では、ろ材40により濾取られた固形物から形成されるいわゆる脱液ケーキが示されている。
【0019】
図2に示すように、ろ室部材20は、下ろ板21と、下ろ板21の上方に設けられた上ろ板22と、下ろ板21と上ろ板22との間にろ室10を形成する枠23と、を備える。上ろ板22には原液供給口22aが形成されており、原液供給口22aに原液圧送管路13が接続されている。上ろ板22は、昇降手段24を介してフレーム25に連結されており、昇降手段24の駆動により下ろ板21に対して上下に移動する。昇降手段24は、例えばパンタグラフである。
【0020】
ろ枠23は、上ろ板22の下側に固定されている。
図2(a)に示すように昇降手段24により上ろ板22が下限まで移動した状態では、ろ枠23は、下ろ板21に押し付けられ、ろ室10が閉塞される。
図2(b)に示すように昇降手段24により上ろ板22が上昇すると、ろ枠23は、下ろ板21から離れ、ろ室10が解放される。
【0021】
ろ材40は、帯状に形成された下ろ布41と、浅い袋状に形成された帯状に形成された上ろ布41と、を備える。下ろ布41は、環状に形成された一対のチェーン51に渡って設けられた不図示の固定板に取付けられている。
図2では、一方のチェーン51のみが図示されている。チェーン51は、水平方向に互いに間隔を空けて配置された一対のドラム50に掛けられている。ドラム50は回転可能であり、ドラム50の回転により下ろ布41が移動する。一対のドラム50の間に下ろ板21が配置されており、下ろ布41は、下ろ板21の上に移動可能である。下ろ布41は、下ろ板21の上に移動した状態では、下ろ板21の上面に張られる。上ろ布42は、上ろ板22の下面に張られている。下ろ布41と上ろ布42は、ろ室10に収容される。
【0022】
なお、
図1及び
図2に示される例では、下ろ布41は、チェーン51の一部にのみ設けられているが、チェーン51の全周に設けられていてもよい。つまり、下ろ布41は、環状に形成されていてもよい。
【0023】
図1及び
図2に示すように下ろ布41がチェーン51の一部にのみ設けられている場合には、消耗品である下ろ布41の交換作業が容易になる。下ろ布41は、チェーン51の全周に設けられている場合には、下ろ布41の動作機構が単純になる。
【0024】
原液は、下ろ布41と上ろ布42との間に圧送され、下ろ布41と上ろ布42とによってろ過される。ろ過により原液から取出されたろ過液は、下ろ板21及び上ろ板22に接続された配管21b、22bを通じてろ室10から排出される。原液中の固形物は、下ろ布41と上ろ布42とにより濾取られ、下ろ布41の表面及び上ろ布42の表面に蓄積され、脱液ケーキを形成する。
【0025】
下ろ布41と上ろ布42との間に形成された脱液ケーキは、脱液が終了した後、ろ室10から取出される。具体的には、原液圧送部30による原液の圧送が停止した後、
図2(b)に示すように、昇降手段24が駆動して上ろ板22、ろ枠23及び上ろ布42が上昇する。このとき、脱液ケーキは、下ろ布41上に残る。次に、ドラム50の回転により下ろ布41が移動し、下ろ布41上の脱液ケーキが
図2(b)中右側に運ばれ、シュート52を経てケーキ収納容器53(
図1参照)に落下する。その後、ドラム50が逆回転して下ろ布41が元の位置に戻ると、昇降手段24が駆動して上ろ板22、ろ枠23及び上ろ布42が降下する。ろ室10が閉塞されると、フィルタープレス式脱液装置100は再び脱液可能な状態になる。
【0026】
下ろ布41と上ろ布42により濾取られた固形物は、固形物がろ室10に充満した後も原液を圧送し続けることで、ろ室10に更に詰め込まれる原液により圧搾される。これにより、固形物から形成される脱液ケーキの含液率を低下させることができ、原液から取出されるろ過液を増加させることができる。
【0027】
一方で、下ろ布41と上ろ布42に形成される脱液ケーキは、ろ過抵抗となる。脱液ケーキの含液率が低いほどろ過抵抗は大きく、ろ過液の流量は低下する。そのため、ろ室10内における脱液ケーキの含液率が十分に低下しほぼ固形になっている状態で原液の圧送を継続した場合には、ろ過液の流量が著しく低下し、脱液に膨大な時間がかかることになる。
【0028】
特に、道路カッターを用いてスラブコンクリートを切削する作業にフィルタープレス式脱液装置100を用いる場合において、ろ過液の流量が少ないときには、スラブコンクリートの切削時に用いる液量をろ過液のみで賄うことができないおそれがある。この場合、道路カッターのカッター刃とスラブコンクリートにかけるための液体を追加で用意する必要があり、液体の調達コストが追加で発生し、工事のコストが増加する。
【0029】
このような理由から、脱液ケーキの含液率が十分に低下し脱液ケーキがほぼ固形に近い状態になったときに脱液を終了し脱液ケーキをろ室10から取出せるように、脱液終了のタイミングを適切に管理することが求められている。フィルタープレス式脱液装置100では、以下に示す構成により、脱液終了のタイミングを適切に管理することが可能となっている。
【0030】
図3は、原液圧送部30の詳細を示す模式図である。
図3に示すように、原液圧送部30は、ダイヤフラム32aによってポンプ室30aとエア室33aとに区画された流体室31aを有するダイヤフラムポンプである。ポンプ室30aは、原液タンク16に接続されるとともにろ室10に接続される。原液圧送部30は、エア室33aへの圧縮エアの給排によりダイヤフラム32aが変形してポンプ室30aが拡縮すると、原液タンク16から原液を吸入してろ室10に圧送する。
【0031】
フィルタープレス式脱液装置100は、原液圧送部30により圧送された原液の圧力を測定する圧力測定部61を備える。圧力測定部61は、具体的には、原液圧送部30のエア室33aに設けられており、エア室33aにおける圧力を測定する。原液圧送部30のエア室33a内の圧力は、原液圧送部30により圧送された原液の圧力と実質的に同じである。
【0032】
ろ室10に圧送された原液の圧力は、下ろ布41と上ろ布42に形成される脱液ケーキの含液率が低くなりろ過抵抗が大きくなるほど高くなるため、圧送された原液の圧力の測定により、脱液ケーキの含液率を把握することができる。したがって、脱液ケーキの含液率に基づいて脱液を終了することができ、脱液終了のタイミングを適切に管理することができる。これにより、脱液ケーキの含液率が十分に低下し脱液ケーキがほぼ固形に近い状態になったときに脱液を終了し脱液ケーキをろ室10から取出すことが可能になる。
【0033】
なお、圧力測定部61を下ろ布41と上ろ布42(
図1及び
図2参照)との間に設けて下ろ布41と上ろ布42との間の圧力を直接測定したり、圧力測定部61を原液圧送管路13に設けて原液圧送管路13内の圧力を直接測定したりしてもよい。ただし、これらの場合には、圧力測定部61が原水の固形物や積層した脱液ケーキにより詰まり、原液圧送部30により圧送された原液の圧力を正確に測定できないおそれがある。
【0034】
本実施形態では、圧力測定部61を原液圧送部30のエア室33aに設けているため、圧力測定部61は、原水から隔てられる。したがって、原水の固形物や積層した脱液ケーキにより圧力測定部61が詰まることを防止することができ、原液圧送部30により圧送された原液の圧力を正確に測定することができる。これにより、脱液終了のタイミングをより適切に管理することができる。
【0035】
脱液、すなわちろ室10への原液圧送は、原液タンク16に十分に原液が溜まってから開始されるのが好ましい。これは、原液タンク16に十分に原液が溜まっていない状態で原液圧送を開始すると、脱液ケーキが圧搾される前に原液タンク16の原液が尽き、脱液ケーキの含液率を低下させることができず、原液から取出されるろ過液が減少するためである。
【0036】
図1に示すように、フィルタープレス式脱液装置100は、原液タンク16における原液の液量を測定する液量測定部62を備える。そのため、原液タンク16における原液の液量を把握することができる。したがって、原液タンク16における原液の液量に基づいて脱液を開始することができ、脱液開始のタイミングを適切に管理することができる。これにより、脱液ケーキが圧搾される前に原液タンク16の原液が尽きることを防止することができ、固形物から形成される脱液ケーキの含液率を低下させ原液から取出されるろ過液を増加させることができる。液量測定部62は、例えば、原液の液面の位置を測定するレーザー距離計である。
【0037】
図4は、フィルタープレス式脱液装置100のブロック図である。
図4に示すように、フィルタープレス式脱液装置100は、圧力測定部61により測定された圧力に基づいて原液圧送部30の圧送を制御するコントローラ70を備える。
【0038】
コントローラ70は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラム等を記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(random access memory)と、を含むマイクロコンピュータで構成される。コントローラ70は、単一のマイクロコンピュータで構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0039】
コントローラ70は、機能的には、圧力取得部71と、液量取得部72と、脱液開始終了判断部73と、信号出力部74と、を備える。圧力取得部71、液量取得部72、脱液開始終了判断部73及び信号出力部74は、コントローラ70の機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0040】
圧力取得部71は、圧力測定部61により測定された圧力を取得する。液量取得部72は、液量測定部62により測定された液量を取得する。
【0041】
脱液開始終了判断部73は、圧力取得部71により取得された圧力に基づいて脱液終了のタイミングか否かを判断する。具体的には、脱液開始終了判断部73は、圧力取得部71により取得された圧力と、予め定められた圧力閾値と、を比較する。圧力取得部71により取得された圧力が圧力閾値よりも低いときには、脱液開始終了判断部73は、脱液終了のタイミングでないと判断する。圧力取得部71により取得された圧力が圧力閾値以上のときには、脱液開始終了判断部73は、脱液終了のタイミングであると判断する。圧力閾値は、例えば、原液圧送部30の設定圧送圧力と同等または原液圧送部30の設定圧送圧力よりもわずかに低い圧力に設定される。
【0042】
また、脱液開始終了判断部73は、液量取得部72により取得された液量に基づいて脱液開始のタイミングか否かを判断する。具体的には、脱液開始終了判断部73は、液量取得部72により取得された液量と、予め定められた液量閾値と、を比較する。液量取得部72により取得された液量が液量閾値よりも低いときには、脱液開始終了判断部73は、脱液開始のタイミングでないと判断する。液量取得部72により取得された液量が液量閾値以上のときには、脱液開始終了判断部73は、脱液開始のタイミングであると判断する。液量閾値は、例えば、原液タンク16の最大貯留量の90%に設定される。
【0043】
信号出力部74は、脱液開始終了判断部73による結果に基づいて、原液圧送部30の駆動を制御するための制御信号を出力する。具体的には、原液圧送部30による原液圧送が停止している場合において、脱液開始終了判断部73が脱液開始のタイミングであると判断したときには、信号出力部74は、原液圧送を行う制御信号を原液圧送部30に出力する。原液圧送部30による原液圧送が継続している場合において、脱液開始終了判断部73が脱液終了のタイミングであると判断したときには、信号出力部74は、原液圧送を停止する制御信号を原液圧送部30に出力する。
【0044】
このように、フィルタープレス式脱液装置100では、コントローラ70は、圧力測定部61により測定された圧力が予め定められた圧力閾値に達したときに原液圧送部30による原液圧送を停止する。そのため、脱液は、脱液ケーキの含液率が圧力閾値に対応する値に達したタイミングでコントローラ70により自動的に終了する。したがって、脱液終了のタイミングをより適切に管理することができる。
【0045】
また、コントローラ70は、液量測定部62により測定された液量が予め定められた液量閾値に達したときに原液圧送部30による原液圧送を開始する。そのため、脱液は、原液タンク16の液量が液量閾値に達したタイミングでコントローラ70により自動的に開始する。したがって、脱液開始のタイミングをより適切に管理することができる。
【0046】
なお、フィルタープレス式脱液装置100では、コントローラ70が、脱液開始と脱液終了のタイミングを管理しているが、作業員が脱液開始と脱液終了のタイミングを管理してもよい。この場合、圧力測定部61により測定された圧力と、液量測定部62により測定された液量と、を表示する表示部を設ける。作業員は、表示部を目視により確認し、原液圧送の開始と停止を行う。
【0047】
図4に示すように脱液開始と脱液終了のタイミングをコントローラ70が管理する場合には、脱液開始と脱液終了のタイミングを管理する作業員が不要になる。したがって、省力化が可能になる。
【0048】
コントローラ70は、昇降手段24による上ろ板22の昇降、及びドラム50の回転を制御してもよい。この場合には、脱液開始から脱液ケーキの取出しまで自動で行うことができ、より省力化することができる。
【0049】
図3に示すように、原液圧送部30は、流体室31aとは別の流体室31bを有する。以下において、便宜上、
図3において相対的に左側に位置する構成には「左側」を付し、
図3において相対的に右側に位置する構成には「右側」を付す。例えば、流体室31aを「左側流体室31a」と称し、流体室31bを「右側流体室31b」と称する。
【0050】
左側流体室31a及び右側流体室31bは、ボディ31によって形成される。左側流体室31aは、左側ダイヤフラム32aによって左側ポンプ室30aと左側エア室33aとに区画されており、右側流体室31bは、右側ダイヤフラム32bによって右側ポンプ室30bと右側エア室33bとに区画されている。左側ダイヤフラム32aと右側ダイヤフラム32bとは、ポンプロッド34を用いて互いに連結されている。
【0051】
ボディ31には、左側エア室33aと右側エア室33bとに選択的に圧縮エアを供給するためのエア供給口33cと、左側エア室33aと右側エア室33bとに選択的に圧縮エアを排出するためのエア排出口33dと、が形成されている。エア供給口33cは、不図示のエア供給源に接続される。
【0052】
図3に示すように、右側エア室33bからエア排出口33dへの圧縮エアの流れが遮断された状態で右側エア室33bに圧縮エアが供給されると、右側ダイヤフラム32bは、右側エア室33bを拡張し右側ポンプ室30bを縮小する方向に変形する。右側ダイヤフラム32bがポンプロッド34を用いて左側ダイヤフラム32aに連結されているため、左側ダイヤフラム32aは、左側エア室33aを縮小し左側ポンプ室30aを拡張する方向に変形する。このとき、左側エア室33a内の圧縮エアは、エア排出口33dから排出される。
【0053】
図示を省略するが、左側エア室33aからエア排出口33dへの圧縮エアの流れが遮断された状態で左側エア室33aに圧縮エアが供給されると、左側ダイヤフラム32aは、左側エア室33aを拡張し左側ポンプ室30aを縮小する方向に変形する。右側ダイヤフラム32bは、右側エア室33bを縮小し右側ポンプ室30bを拡張する方向に変形する。
【0054】
このように、原液圧送部30では、一つのエア供給源により左側ポンプ室30a及び右側ポンプ室30bが拡縮される。
【0055】
ボディ31は、左側ポンプ室30aと連通する左側吸入口30c及び左側圧送口30eと、右側ポンプ室30bと連通する右側吸入口30d及び右側圧送口30fと、を有する。左側吸入口30cは、原液吸入管路12を通じて原液タンク16に接続され、左側圧送口30eは、原液圧送管路13を通じてろ室10に接続される。右側吸入口30dは、ろ過液吸入管路14を介して下ろ板21及び上ろ板22に接続され、右側圧送口30fは、ろ過液圧送管路15を介してろ過液タンク17に接続される。
【0056】
原液圧送部30は、逆止弁35a、35b、35c、35dを備える。逆止弁35aは、左側吸入口30cから左側ポンプ室30aへ向かう流れを許容し、その逆向きの流れを遮断する。逆止弁35cは、左側ポンプ室30aから左側圧送口30eへ向かう流れを許容し、その逆向きの流れを遮断する。そのため、左側ポンプ室30aが
図3に示すように拡張するときには、逆止弁35aが開き逆止弁35cが閉じ、原液タンク16から左側ポンプ室30aに原液が吸入される。左側ポンプ室30aが縮小するときには、逆止弁35aが閉じて逆止弁35cが開き、左側ポンプ室30aからろ室10に原液が圧送される。
【0057】
逆止弁35bは、右側吸入口30dから右側ポンプ室30bへ向かう流れを許容し、その逆向きの流れを遮断する。逆止弁35dは、右側ポンプ室30bから右側圧送口30fへ向かう流れを許容し、その逆向きの流れを遮断する。そのため、右側ポンプ室30bが拡張するときには、逆止弁35bが開き逆止弁35dが閉じ、下ろ板21及び上ろ板22から右側ポンプ室30bにろ過液が吸入される。右側ポンプ室30bが
図3に示すように縮小するときには、逆止弁35bが閉じて逆止弁35bが開き、右側ポンプ室30bからろ過液タンク17に原液が圧送される。
【0058】
このように、原液圧送部30では、左側ポンプ室30aが拡縮することにより、原液タンク16から原液を吸入してろ室10に圧送し、右側ポンプ室30bが拡縮することにより、ろ室10から下ろ布41及び上ろ布42(
図2参照)を介して原液を吸入することでろ過液を取出してろ過液タンク17に圧送する。
【0059】
図1に示すように、原液圧送部30による原液の圧送圧力をPAとし、原液圧送部30によるろ過液の吸入圧力をPBとすると、下ろ布41と上ろ布42の間の圧力PCはPA―PBとなる。そのため、原液圧送部30でろ過液を吸引せずに原液の圧送のみで脱液をする場合と比較して、ろ室10内の圧力を低くすることができる。したがって、下ろ板21、上ろ板22及びろ枠23(
図2参照)に必要な剛性を低くすることができ、下ろ板21、上ろ板22及びろ枠23を軽量化及び小型化することができる。これにより、フィルタープレス式脱液装置100を軽量化及び小型化することができる。
【0060】
前述のように、原液圧送部30では、一つのエア供給源により左側ポンプ室30a及び右側ポンプ室30bが拡縮される。そのため、ろ室10への原液の圧送とろ室10からのろ過液の吸入を一つのエア供給源により行うことができ、効率的な脱液が可能となるとともにフィルタープレス式脱液装置100をより軽量化及び小型化することができる。
【0061】
フィルタープレス式脱液装置100の軽量化及び小型化は、建築物の新築工事及び解体工事において特に効果的である。具体的には、フィルタープレス式脱液装置100の軽量化及び小型化により、建築物に設けられる本設エレベータ、または新築工事及び解体工事において設置される仮設エレベータへの搭載が可能となる。したがって、原液が発生する作業の近傍にフィルタープレス式脱液装置100を配置することができ、配管(原液回収用の配管、ろ過液用の配管)を短くすることができる。これにより、建築物の新築工事及び解体工事の工期短縮及びコスト低減が可能となる。
【0062】
図5は、上ろ板22及びろ枠23を下ろ板21から見た図である。なお、
図5において、上ろ布42の図示を省略している。
【0063】
図2及び
図5に示すように、上ろ板22には、脱液ケーキに目地を入れる目地入れ部材26が設けられている。目地入れ部材26は、例えば、アングル材である。
【0064】
図6は、下ろ布41と上ろ布42とにより濾取られた固形物から形成された脱液ケーキの斜視図である。
図6に示すように、脱液ケーキには、目地入れ部材26(
図2及び
図5参照)に対応する位置に目地が入る。そのため、脱液ケーキに衝撃が加えられたときに、脱液ケーキは、目地に沿って割れる。したがって、脱液ケーキを所望の大きさに小割することができ、脱液ケーキの搬出を容易にすることができる。また、小割にした脱液ケーキの嵩が減って無駄な隙間が減るため、小割にした脱液ケーキの減容ができ、脱液ケーキの処分費の低減が可能となる。
【0065】
脱液ケーキへの衝撃は、例えば、ケーキ収納容器53に脱液ケーキが落下することで生じる。作業員が例えばハンマーなどを用いて脱液ケーキに打撃を与えて脱液ケーキに衝撃を加えてもよい。
【0066】
図1及び
図2に示すように、目地入れ部材26は、上ろ板22と上ろ布42との間に設けられている。そのため、上ろ布42は、目地入れ部材26に沿って上ろ板22の下面に対して隆起する。したがって、目地入れ部材26がない場合と比較して、上ろ布42の表面積を増やすことができ、ろ過速度を向上させることができる。
【0067】
目地入れ部材26を下ろ板21に設けてもよいが、この場合には、ドラム50の回転による脱液ケーキの搬送が困難になったり、脱液ケーキの搬送時に下ろ布41が目地入れ部材26により破損したりするおそれがある。このような理由から、目地入れ部材26を上ろ板22にのみ設けることが好ましい。
【0068】
脱液ケーキをろ室10から取出したとしても、下ろ布41及び上ろ布42には、脱液ケーキの残渣が付着することがある。脱液ケーキの残渣が付着した状態で再び脱液を行うと、下ろ布41及び上ろ布42が目詰まりしている状態から脱液を開始することになり、脱液に時間を要する。
【0069】
そこで、フィルタープレス式脱液装置100では、下ろ布41及び上ろ布42に付着した脱液ケーキの残渣を取り除く機構を設けている。脱液ケーキの残渣を下ろ布41及び上ろ布42から取り除く機構を詳述する。
【0070】
図1に示すように、ドラム50の回転により、下ろ布41は、固形物を濾取った面が下を向くように搬送される。つまり、ドラム50は、原液圧送部30による原液の圧送が停止されているときに、下ろ布41を、固形物を濾取った面が下を向くように搬送する搬送手段として機能する。
【0071】
フィルタープレス式脱液装置100は、ドラム50により搬送された下ろ布41に向けて下方から洗浄液を噴出するノズル80を備える。そのため、洗浄液は、下ろ布41に下方から当たって下ろ布41から脱液ケーキの残渣を剥離した後、落下する。したがって、下ろ布41に付着した脱液ケーキの残渣を取り除くことができる。これにより、再び行われる脱液の時間を短縮することができる。
【0072】
ノズル80には、ろ過液タンク17に貯留されたろ過液が洗浄液圧送部81を用いて圧送される。つまり、ノズル80から噴出される洗浄液は、下ろ布41及び上ろ布42により原液から取出されたろ過液である。そのため、下ろ布41を洗浄するための液体をろ過液とは別に用意する必要がなく、脱液のコストを低減することができる。洗浄液圧送部81は、例えばダイヤフラムポンプである。洗浄液圧送部81の駆動は、例えばコントローラ70により制御される。
【0073】
ドラム50により搬送された下ろ布41の下方には、ノズル80から噴出された洗浄液(ろ過液)を収集する収集部材82が設けられている。収集部材82は、具体的には受け板である。収集部材82には、収集孔82aが形成されているとともに、洗浄液が収集孔82aに集まるように水勾配がつけられている。収集孔82aの下方には使用済洗浄液タンク83が設けられている。ノズル80から噴出された洗浄液は、収集孔82aから落下して使用済洗浄液タンク83に収集される。
【0074】
使用済洗浄液タンク83は、切換弁11を介して原液圧送部30に接続される。切換弁11は、第1位置11aでは、使用済洗浄液タンク83と原液吸入管路12との連通を遮断し、第2位置11bでは、使用済洗浄液タンク83と原液吸入管路12との連通を許容する。切換弁11が第2位置11bに切換えられた状態では、原液圧送部30は、使用済洗浄液タンク83に収集された洗浄液をろ室10に圧送する。そのため、使用済洗浄液に含まれる固形物も、下ろ布41及び上ろ布42により濾取られる。したがって、使用済洗浄液から液体を取出すことができ、取出された液体(ろ過液)を道路カッターにおけるカッター刃の冷却や下ろ布41の洗浄に再び用いることができる。
【0075】
図1及び
図2に示すように、上ろ板22には加振機90が設けられている。加振機90は、上ろ板22を振動させる。脱液終了後に加振機90により上ろ板22を振動させることで、上ろ布42に付着した脱液ケーキの残渣の剥離が促され、残渣が落下する。したがって、上ろ布42から脱液ケーキの残渣を取り除くことができる。これにより、再び行われる脱液の時間を短縮することができる。加振機90の駆動及び停止は、例えばコントローラ70により上ろ板22の昇降に連動して自動で制御される。
【0076】
なお、上ろ布42から剥離した残渣は、下ろ布41上に落下するが、下ろ布41上に落下した残渣は、ドラム50の回転によりシュート52を経てケーキ収納容器53、または収集部材82に落下するため、下ろ布41上に残ることはない。
【0077】
加振機90は、脱液時に上ろ板22を振動させてもよい。この場合には、ろ室10に圧送された原液の固液分離が促進される。したがって、ろ過速度を向上させることができ、脱液時間を短縮することができる。
【0078】
加振機90を下ろ板21に設けてもよい。この場合には、脱液終了後に下ろ板21を振動させることで、下ろ布41に付着した脱液ケーキの残渣の剥離を促進することができ、下ろ布41から脱液ケーキの残渣をより確実に取り除くことができる。また、脱液時に下ろ板21を振動させることで、ろ室10に圧送された原液の固液分離を下ろ板21からも促進することができ、ろ過速度を更に向上させて脱液時間を更に短縮することができる。
【0079】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0080】
フィルタープレス式脱液装置100は、原液圧送部30により圧送された原液の圧力を測定する圧力測定部61を備える。ろ室10に圧送された原液の圧力は、下ろ布41と上ろ布42に形成される脱液ケーキの含液率が低くなりろ過抵抗が大きくなるほど高くなるため、脱液ケーキの含液率を把握することができる。したがって、脱液ケーキの含液率に基づいて脱液を終了することができ、脱液終了のタイミングを適切に管理することができる。これにより、脱液ケーキの含液率が十分に低下し脱液ケーキがほぼ固形に近い状態になったときに脱液を終了し脱液ケーキをろ室10から取出すことが可能になる。
【0081】
フィルタープレス式脱液装置100では、コントローラ70は、圧力測定部61により測定された圧力が予め定められた圧力閾値に達したときに原液圧送部30による原液の圧送を停止する。そのため、脱液は、脱液ケーキの含液率が圧力閾値に対応する値に達したタイミングでコントローラ70により自動的に終了する。したがって、脱液終了のタイミングをより適切に管理することができる。
【0082】
フィルタープレス式脱液装置100は、原液タンク16における原液の液量を測定する液量測定部62を備える。そのため、原液タンク16における原液の液量を把握することができる。したがって、原液タンク16における原液の液量に基づいて脱液を開始することができ、脱液開始のタイミングを適切に管理することができる。これにより、脱液ケーキが圧搾される前に原液タンク16の原液が尽きることを防止することができ、固形物から形成される脱液ケーキの含液率を低下させ原液から取出されるろ過液を増加させることができる。
【0083】
また、コントローラ70は、液量測定部62により測定された液量が予め定められた液量閾値に達したときに原液圧送部30による原液圧送を開始する。そのため、脱液は、原液タンク16の液量が液量閾値に達したタイミングでコントローラ70により自動的に開始する。したがって、脱液開始のタイミングをより適切に管理することができる。
【0084】
原液圧送部30は、一対のポンプ室30a、30bを有するダイヤフラムポンプであり、一方のポンプ室30aが拡縮することにより、原液を吸入してろ室10に圧送し、他方のポンプ室一対のポンプ室30bが拡縮することにより、ろ室10から下ろ布41及び上ろ布42を介して原液を吸入することでろ過液を取出して圧送する。そのため、原液圧送部30でろ過液を吸引せずに原液の圧送のみで脱液をする場合と比較して、ろ室10内の圧力を低くすることができる。したがって、下ろ板21、上ろ板22及びろ枠23に必要な剛性を低くすることができ、下ろ板21、上ろ板22及びろ枠23を軽量化及び小型化することができる。これにより、フィルタープレス式脱液装置100を軽量化及び小型化することができる。
【0085】
フィルタープレス式脱液装置100は、上ろ板22に設けられた目地入れ部材26を備える。そのため、脱液ケーキには目地入れ部材26に対応する位置に目地が入り、脱液ケーキに衝撃が加えられたときに、脱液ケーキは、目地に沿って割れる。したがって、脱液ケーキを所望の大きさに小割することができ、脱液ケーキの搬出を容易にすることができる。また、小割にした脱液ケーキの嵩が減って無駄な隙間が減るため、小割にした脱液ケーキの減容ができ、脱液ケーキの処分費の低減が可能となる。
【0086】
フィルタープレス式脱液装置100は、ドラム50により搬送された下ろ布41に向けて下方から洗浄液を噴出するノズル80を備える。そのため、洗浄液は、下ろ布41に下方から当たって下ろ布41から脱液ケーキの残渣を剥離した後、落下する。したがって、下ろ布41に付着した脱液ケーキの残渣を取り除くことができる。これにより、再び行われる脱液の時間を短縮することができる。
【0087】
ノズル80から噴出される洗浄液は、下ろ布41及び上ろ布42により原液から取出されたろ過液である。そのため、下ろ布41を洗浄するための液体をろ過液とは別に用意する必要がなく、脱液のコストを低減することができる。
【0088】
原液圧送部30は、使用済洗浄液タンク83に収集された洗浄液をろ室10に圧送する。そのため、使用済洗浄液に含まれる固形物も、下ろ布41及び上ろ布42により濾取られる。したがって、使用済洗浄液から液体を取出すことができる。
【0089】
上ろ板22には加振機90が設けられている。脱液終了後に加振機90により上ろ板22を振動させることで、上ろ布42に付着した脱液ケーキの残渣の剥離が促され、残渣が落下する。したがって、上ろ布42から脱液ケーキの残渣を取り除くことができる。これにより、再び行われる脱液の時間を短縮することができる。また、脱液時に加振機90により上ろ板22を振動させることで、ろ室10に圧送された原液の固液分離が促進される。したがって、ろ過速度を向上させることができ、脱液時間を短縮することができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0091】
フィルタープレス式脱液装置100は、例えばキャタピラー付きの台車に搭載され、遠隔操作可能であってもよい。これにより、脱液を含む工事の無人施工や遠隔施工が可能となる。
【0092】
シュート52には、ロードセルを設けることが好ましい。この場合には、シュート52を通過する脱液ケーキの重量を、ロードセルを用いて測定することができ、脱水ケーキの排出量を把握することができる。ロードセルは、例えばベルトスケールである。
【0093】
ケーキ収納容器53は、台車に搭載されていることが好ましい。台車によりケーキ収納容器53の運搬が容易となるため、ケーキ収納容器53に収納された脱液ケーキを工事現場内で容易に運搬することができる。
【0094】
ケーキ収納容器53は、トラックの荷台に搭載可能なフレコンバッグであることが好ましい。このようなフレコンバッグをケーキ収納容器53として用いることにより、脱液ケーキを収納したフレコンバッグをクレーン等の揚重機で吊り上げてトラックの荷台に載せることができるため、脱液ケーキを工事現場から容易に搬出することができる。
【0095】
ろ室10は、下ろ板21、上ろ板22及びろ枠23に代えて、水平方向に並べられた一対のろ板と、一対のろ板の少なくとも一方に設けられたろ枠23と、により形成されてもよい。この場合には、一対のろ板の少なくとも一方を水平移動可能に構成する。また、目地入れ部材26を一対のろ板の少なくとも一方に設け、加振機90を一対のろ板の少なくとも一方に設ける。
【0096】
上記実施形態では、下ろ板21に下ろ布41が設けられ、上ろ板22に上ろ布42が設けられているが、下ろ板21に下ろ布41が設けられているだけであり、上ろ板22に上ろ布42が設けられていなくてもよい。また、上ろ板22に上ろ布42が設けられているだけであり、下ろ板21に下ろ布41が設けられていなくてもよい。つまり、ろ材40は、下ろ板21及び上ろ板22のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。
【0097】
下ろ板21に下ろ布41が設けられているだけであり上ろ板22に上ろ布42が設けられていない場合には、上ろ板22には配管22bは形成されず、原液から取出されたろ過液は、下ろ板21に形成された配管21bを通ってろ室10から排出される。また、上ろ板22に上ろ布42が設けられているだけであり下ろ板21に下ろ布41が設けられていない場合、下ろ板21には配管21bは形成されず、原液から取出されたろ過液は、上ろ板22に形成された配管22bを通ってろ室10から排出される。
【0098】
上記実施形態では、ろ室10は1つであるが、複数のろ室10を重ねてもよい。
【符号の説明】
【0099】
100・・・フィルタープレス式脱液装置
10・・・ろ過室
16・・・原液タンク
20・・・ろ室部材
26・・・目地入れ部材
30・・・原液圧送部
30a、30b・・・ポンプ室
40・・・ろ材
50・・・ドラム(搬送手段)
61・・・圧力測定部
62・・・液量測定部
70・・・コントローラ
80・・・ノズル
82・・・収集部材
90・・・加振機