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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073264
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】組み合わせアース端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/38 20060101AFI20240522BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20240522BHJP
   H01R 11/12 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01R4/38 B
H01R4/64 C
H01R11/12 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184371
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】522451285
【氏名又は名称】上野 靜一
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 靜一
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012BA14
(57)【要約】
【課題】省スペースと良好な作業性を実現できる組み合わせアース端子を提供する。
【解決手段】この組み合わせアース端子1は、ボルト穴4が形成された板状の座金部2と、この座金部2より外側に延出するように設けられる板状のトランジション部5と、このトランジション部5に連続するように設けられ電線50が接続される板状の電線接続部20とを有する。トランジション部5は、座金部2と同じ平面をなすトランジション平面部7と、座金部2を通過しない直線の一部として形成される折り曲げ線6に沿ってトランジション平面部7より上面側に略45度の角度で曲げ起こされるトランジション底面部8とを含むように構成される。電線接続部20は、折り曲げ線6に沿ってトランジション底面部8に連続するように形成され、電線接続部20の底面部21の延びる方向に沿って接続される電線50の中心線53が折り曲げ線6に平行になるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト穴が形成された板状の座金部を有する複数のアース端子が前記ボルト穴の同軸上に前記座金部が積層されるように組付けられ、前記ボルト穴を挿通するボルトに一括ねじ締めにより固定される組み合わせアース端子であって、
前記座金部と同じ平面上で前記座金部より外側に延出するように設けられる板状のトランジション部と、
前記トランジション部に連続するように設けられ、電線が接続される板状の電線接続部とを有し、
前記トランジション部は、
前記座金部と同じ平面をなすトランジション平面部と、
該トランジション平面部において前記座金部を通過しない直線を引いたときの該直線の一部として前記トランジション平面部を横切るように形成される折り曲げ線に沿って、前記トランジション平面部より上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされたトランジション底面部とを含むように構成されており、
前記電線接続部は、
前記折り曲げ線に沿って前記トランジション底面部に連続するように形成され、前記電線接続部の底面部が、前記トランジション平面部より前記上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされており、
前記電線接続部の前記底面部の延びる方向に沿って接続される前記電線の中心線が前記折り曲げ線に平行になるように構成されていることを特徴とする組み合わせアース端子。
【請求項2】
前記電線接続部が設けられていない側の前記トランジション底面部の先端部には、前記折り曲げ線と略直交する方向に沿って曲げ起こされた舌片部が設けられ、
該舌片部の基端部から前記電線接続部の方向にずれた位置に、前記トランジション底面部の外縁部を前記折り曲げ線と平行する方向に沿って略直角に曲げ起こされた規制板が設けられており、
前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させると、前記舌片部が、他の前記組み合わせアース端子の前記規制板に挿入し係合されることを特徴とする請求項1に記載の組み合わせアース端子。
【請求項3】
前記座金部の外周縁部に設けられ、前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させて係合させる係合手段を有し、
該係合手段は、
前記座金部の上面側に折り曲げて立設された板状片の先端を前記座金部の平面と略平行に周方向に折り返されて略S字型の鈎状に形成される係合受け部と、
前記係合受け部の背面部から周方向に延出するように形成され、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合する係合挿入部と、
前記係合受け部に対面するように周方向に設けられ、前記係合挿入部が前記係合受け部に係合した状態で前記係合挿入部の回転戻りを防止する突起により構成される係合脱落防止部と、
該係合脱落防止部の径方向の外側に前記ボルト穴の中心方向を向くように略直角に曲げ起こされた案内板とを含み、
さらに、他の係合手段として、前記トランジション平面部に丸穴により形成される係合穴と、前記丸穴の周方向に形成され前記丸穴に係合する係合突起とを有し、
前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させると、前記係合挿入部が、前記他の前記組み合わせアース端子の前記案内板に案内されて回転して、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合されるとともに、前記係合挿入部が、前記他の前記組み合わせアース端子の係合脱落防止部に係止されて回転戻りが防止され、
かつ、前記係合穴が、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合突起に係合して回転戻りが防止されることを特徴とする請求項1又は2に記載の組み合わせアース端子。
【請求項4】
ボルト穴が形成された板状の座金部を有する複数のアース端子が前記ボルト穴の同軸上に前記座金部が積層されるように組付けられ、前記ボルト穴を挿通するボルトに一括ねじ締めにより固定される組み合わせアース端子であって、
前記座金部と同じ平面上で前記座金部より外側に延出するように設けられる板状のトランジション部と、
前記トランジション部に連続するように設けられ、電線が接続される板状の電線接続部とを有し、
前記電線接続部に接続される前記電線を延長する直線が、前記座金部を通過しないように構成されていることを特徴とする組み合わせアース端子。
【請求項5】
前記座金部の外周縁部に設けられ、前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させて係合させる係合手段を有し、
該係合手段は、
前記座金部の上面側に折り曲げて立設された板状片の先端を前記座金部の平面と略平行に周方向に折り返されて略S字型の鈎状に形成される係合受け部と、
前記係合受け部の背面部から周方向に延出するように形成され、他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合する係合挿入部と、
前記係合受け部に対面するように周方向に設けられ、前記係合挿入部が前記係合受け部に係合した状態で前記係合挿入部の回転戻りを防止する突起により構成される係合脱落防止部とを含み、
前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させると、前記係合挿入部が、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合されるとともに、前記他の前記組み合わせアース端子の係合脱落防止部に係止されて回転戻りが防止されることを特徴とする請求項4に記載の組み合わせアース端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボルト穴が形成された板状の座金部を有する複数のアース端子がボルト穴の同軸上に座金部が積層されるように組付けられ、ボルト穴を挿通するボルトに一括ねじ締めにより固定される組み合わせアース端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車内の電気配線であるワイヤーハーネスは、蓄電池のプラス側から供給される電力を機器に給電した後、機器の下流側は車体の金属板にアースされ、金属板を通じて蓄電池のマイナス側に戻される事例が多い。ワイヤーハーネスには多数のアース回路が存在し、通常は丸形端子(JISではLA端子)と呼ばれるねじ締固定型の端子により車体の金属部分に、ねじ締めされて接続される。これらはアース端子と呼ばれ、更には多数のアース端子をねじ締めする作業を簡略化し、車体に設けるボルトの数を減らす目的で、組み合わせアース端子が多く用いられている。組み合わせアース端子として、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。この組み合わせアース端子は、端子金具のベース部の外周縁から径方向外側に板状の延出部が設けられ、この延出部の外縁部から直角に立ち上がった板状の立上り部と、電線を圧着する圧着部が形成されている。この圧着部は、延出部と直角に立ち上がりかつ立上り部から径方向外側に延出する基板部と、電線を包囲するカシメ片で構成される。そして、複数組み合わされた端子金具において、立上り部と基板部を連結する連結部が屈曲される。このように連結部が屈曲されるため、複数の端子を組み合わせても周方向の面積を小さく抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-123293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の組み合わせアース端子は、連結部を屈曲させる手間が生じるため作業効率が悪く、また、屈曲させた連結部の強度が乏しいという問題があった。また、立上り部と基板部が、延出部から直角に立ち上がっているため、高さ方向のスペースが大きくなるという問題も生じていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、省スペースと良好な作業性を実現できる組み合わせアース端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ボルト穴が形成された板状の座金部を有する複数のアース端子が前記ボルト穴の同軸上に前記座金部が積層されるように組付けられ、前記ボルト穴を挿通するボルトに一括ねじ締めにより固定される組み合わせアース端子であって、前記座金部と同じ平面上で前記座金部より外側に延出するように設けられる板状のトランジション部と、前記トランジション部に連続するように設けられ、電線が接続される板状の電線接続部とを有し、前記トランジション部は、前記座金部と同じ平面をなすトランジション平面部と、該トランジション平面部において前記座金部を通過しない直線を引いたときの該直線の一部として前記トランジション平面部を横切るように形成される折り曲げ線に沿って、前記トランジション平面部より上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされたトランジション底面部とを含むように構成されており、前記電線接続部は、前記折り曲げ線に沿って前記トランジション底面部に連続するように形成され、前記電線接続部の底面部が、前記トランジション平面部より前記上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされており、前記電線接続部の前記底面部の延びる方向に沿って接続される前記電線の中心線が前記折り曲げ線に平行になるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記電線接続部が設けられていない側の前記トランジション底面部の先端部には、前記折り曲げ線と略直交する方向に沿って曲げ起こされた舌片部が設けられ、該舌片部の基端部から前記電線接続部の方向にずれた位置に、前記トランジション底面部の外縁部を前記折り曲げ線と平行する方向に沿って略直角に曲げ起こされた規制板が設けられており、前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させると、前記舌片部が、他の前記組み合わせアース端子の前記規制板に挿入し係合されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、前記座金部の外周縁部に設けられ、前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させて係合させる係合手段を有し、該係合手段は、前記座金部の上面側に折り曲げて立設された板状片の先端を前記座金部の平面と略平行に周方向に折り返されて略S字型の鈎状に形成される係合受け部と、前記係合受け部の背面部から周方向に延出するように形成され、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合する係合挿入部と、前記係合受け部に対面するように周方向に設けられ、前記係合挿入部が前記係合受け部に係合した状態で前記係合挿入部の回転戻りを防止する突起により構成される係合脱落防止部と、該係合脱落防止部の径方向の外側に前記ボルト穴の中心方向を向くように略直角に曲げ起こされた案内板とを含み、さらに、他の係合手段として、前記トランジション平面部に丸穴により形成される係合穴と、前記丸穴の周方向に形成され前記丸穴に係合する係合突起とを有し、前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させると、前記係合挿入部が、前記他の前記組み合わせアース端子の前記案内板に案内されて回転して、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合されるとともに、前記係合挿入部が、前記他の前記組み合わせアース端子の係合脱落防止部に係止されて回転戻りが防止され、かつ、前記係合穴が、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合突起に係合して回転戻りが防止されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、ボルト穴が形成された板状の座金部を有する複数のアース端子が前記ボルト穴の同軸上に前記座金部が積層されるように組付けられ、前記ボルト穴を挿通するボルトに一括ねじ締めにより固定される組み合わせアース端子であって、前記座金部と同じ平面上で前記座金部より外側に延出するように設けられる板状のトランジション部と、前記トランジション部に連続するように設けられ、電線が接続される板状の電線接続部とを有し、前記電線接続部に接続される前記電線を延長する直線が、前記座金部を通過しないように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の構成に加えて、前記座金部の外周縁部に設けられ、前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させて係合させる係合手段を有し、該係合手段は、前記座金部の上面側に折り曲げて立設された板状片の先端を前記座金部の平面と略平行に周方向に折り返されて略S字型の鈎状に形成される係合受け部と、前記係合受け部の背面部から周方向に延出するように形成され、他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合する係合挿入部と、前記係合受け部に対面するように周方向に設けられ、前記係合挿入部が前記係合受け部に係合した状態で前記係合挿入部の回転戻りを防止する突起により構成される係合脱落防止部とを含み、前記ボルト穴の中心を軸にして前記組み合わせアース端子同士を相互に回転させると、前記係合挿入部が、前記他の前記組み合わせアース端子の前記係合受け部に係合されるとともに、前記他の前記組み合わせアース端子の係合脱落防止部に係止されて回転戻りが防止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、トランジション底面部と電線接続部の底面部が、座金部を通過しない直線の一部としてトランジション平面部を横切るように形成される折り曲げ線に沿って、トランジション平面部の上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされているため、複数の座金部を積層させたときに電線接続部に接続された電線同士を平面方向に接近させて組付けることができ、また、電線の一部が高さ方向に重なるように組付けることができる。このようになっているため、組付けられる組み合わせアース端子と電線が占める平面の面積が小さくなり省スペースが実現できる。このように狭い面積に多数の組み合わせアース端子を集約して取り付けることができる。
【0012】
また、トランジション底面部と電線接続部の底面部を曲げ起こす角度が、30度から60度の範囲であるため、90度曲げ起こす場合に比べて、高さ方向にも省スペースを実現できる。
【0013】
また、折り曲げ線及び折り曲げ線を延長した直線が座金部を通過せず、電線接続部に接続される電線の中心線が折り曲げ線に平行になるように構成されるため、組付けられる組み合わせアース端子から延び出てくる隣り合う電線同士の間の距離が近くなり、また、電線接続部から延び出る電線同士の位置が同心円状でなく周方向に順次ずれていく。このようになっているため、電線同士のまとまりが良くなり、電線を束ねる作業が容易になる。また、電線接続部同士の位置が周方向に順次少しずつずれていくため、電線を束ねる際に、電線接続部から延び出る電線を、少し突き出るようにずれた隣の電線接続部から延び出てくる電線に沿わせるように重ね合わせるような形になる。そうすると、電線接続部から延び出た直後の位置で小さな曲率半径に電線が折り曲げられることがなくなり、電線接続部に作用する負荷が低減される。
【0014】
また、積層する組み合わせアース端子の形状は、全て同一であるため、大量生産に向いており、製造コストが削減されるとともに、部品としての管理費用も低く抑えることができる。
【0015】
また、組み合わせアース端子を使用する際に、屈曲させるなどの変形や加工を施すことなくそのままの形状で用いるため、手間がかからず良好な作業性を実現できる。また、強度の低下が生ずることなく、高い信頼性を実現できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、舌片部が規制板に挿入して係合し接触するため、組付けられる組み合わせアース端子同士の電気的な接続が強化される。
【0017】
また、舌片部と規制板とが係合することにより組付けられる組み合わせアース端子同士の回転が制限され、大きな回転方向の外力が作用した場合でも、回転が停止し、係合手段を破損するなどの不具合を防止できる。
【0018】
請求項3の発明によれば、係合手段により組付けられる組み合わせアース端子同士が係合され安定して仮固定されるため、ボルトに一括ねじ締めする際の作業性が向上する。
【0019】
請求項4の発明によれば、電線接続部内に配置されて接続される電線を延長する直線が、座金部を通過しないように構成されるため、複数の座金部を積層させたときに電線接続部に接続された電線同士を平面方向に接近させて組付けることができる。このようになっているため、組付けられる組み合わせアース端子と電線が占める平面の面積が小さくなり省スペースが実現できる。このように狭い面積に多数の組み合わせアース端子を集約して取り付けることができる。
【0020】
また、電線接続部内に配置されて接続される電線を延長する直線が、座金部を通過しないように構成されるため、組付けられる組み合わせアース端子から延び出てくる隣り合う電線同士の間の距離が近くなり、電線同士のまとまりが良くなって、電線を束ねる作業が容易になる。
【0021】
また、積層する組み合わせアース端子の形状は、全て同一であるため、大量生産に向いており、製造コストが削減されるとともに、部品としての管理費用も低く抑えることができる。
【0022】
また、組み合わせアース端子を使用する際に、屈曲させるなどの変形や加工を施すことなくそのままの形状で用いるため、手間がかからず良好な作業性を実現できる。また、強度の低下が生ずることなく、高い信頼性を実現できる。
できる。
【0023】
請求項5の発明によれば、係合手段により組付けられる組み合わせアース端子同士が係合され安定して仮固定されるため、ボルトに一括ねじ締めする際の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の実施の形態1に係る組み合わせアース端子の概略図であり、(a)は座金部及びトランジション平面部の上面方向から見た正面図、(b)はA-A線に沿って切断した断面図、(c)は電線接続部に2本の電線を接続した状態の正面図である。
図2】同実施の形態1に係る組み合わせアース端子を2個積層した状態を示す図であり、(a)は係合前の正面図、(b)は係合前の第一係合部を側面方向から見た図、(c)は係合前の第二係合部を側面方向から見た図、(d)は係合時の正面図、(e)は係合時の第一係合部を側面方向から見た図、(f)は係合時の第二係合部を側面方向から見た図である。
図3】同実施の形態1に係る組み合わせアース端子を2個積層して係合させた状態の第一係合部をB-B線に沿って切断した断面図である。
図4】同実施の形態1に係る組み合わせアース端子を6個積層して係合した状態の概略正面図である。
図5】この発明の実施の形態2に係る組み合わせアース端子を2個積層して係合させた状態の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[発明の実施の形態1]
この発明の実施の形態1について、図1図4を用いて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1に係る組み合わせアース端子1の概略図であり、(a)は座金部2及びトランジション平面部7の上面方向から見た正面図、(b)はA-A線に沿って切断した断面図、(c)は電線接続部20に2本の電線50を接続した状態の正面図である。
【0027】
この組み合わせアース端子1は、ボルト穴4が形成された板状の座金部2を有する複数のアース端子1がボルト穴4の同軸上に座金部2が積層されるように組付けられ、ボルト穴4を挿通するボルトに一括ねじ締めにより固定されるものである。自動車等の車体に固定された一本のボルトに、複数の丸形端子を取り付けて一括してねじ締めして電気的なアース接続を得ようとするときに用いられる。
【0028】
図1(a)に示すようにこの組み合わせアース端子1は、座金部2の外周縁部3に設けられ、ボルト穴4の中心を軸にしてアース端子1同士を相互に回転させて係合させる「係合手段」としての第一係合部30及び第二係合部37と、座金部2と同じ平面上で座金部2より外側に延出するように設けられる板状のトランジション部5と、このトランジション部5に連続するように設けられ、電線50が接続される板状の電線接続部20とを有する。
【0029】
以下、径方向や周方向という用語を用いて説明をしていくが、径方向とは、ボルト穴4の中心を円の中心とする円の半径方向をいう。また、周方向とは、ボルト穴4の中心を円の中心とする円の円周方向をいう。
【0030】
また、座金部2の上面は、図1(a)に描かれている座金部2の手前側の面をいい、座金部2の上面側にこの組み合わせアース端子1の第一係合部30の一部、第二係合部37の一部、トランジション部5の一部、電線接続部20の一部などが起き上がるように形成される。
【0031】
第一係合部30と第二係合部37は、同様の係合構造をしており、係合受け部32、係合挿入部34、係合脱落防止部35、案内板36を含むように構成される。また、第一係合部30及び第二係合部37は、ボルト穴4の中心から等距離に形成されている。
【0032】
係合受け部32は、座金部2の上面側に径方向に沿って折り曲げて立設された板状片31の先端43を座金部2の平面と略平行に周方向に折り返して鈎状に形成されている(図1(b)、図3参照)。座金部2の平面と略平行に折り返された先端43と、座金部2の上面側に立設した部分と、座金部2と同じ平面にある部分とを板状片31の板厚の側面方向から観察すると略S字型になっている。座金部2の平面と略平行に折り返されたこの先端43は、平行よりわずかに座金部2の方向に傾斜が付けられており、この係合受け部32に挿入される係合挿入部34を上から押さえつけるように作用する。
【0033】
係合挿入部34は、係合受け部32の背面部33から周方向に座金部2の平面に沿って延出するように形成され、ボルト穴4を中心に時計回りに回転させることにより、積層される他の組み合わせアース端子1の係合受け部32に係合するように構成される(図1(b)、図3参照)。
【0034】
係合脱落防止部35は、係合受け部32に対面するように周方向に設けられ、係合挿入部34が係合受け部32に係合した状態で係合挿入部34の回転戻りを防止する突起により構成される(図1(b)、図3参照)。この突起は、座金部2の平面から上面側に先端をわずかに曲げ起こして形成される。係合した状態では、係合脱落防止部35の突起が係合している係合挿入部34の背後に突き出ているため、係合挿入部34が係合の外れる方向に回転するとこの突起に係止され、回転戻りが防止される。
【0035】
案内板36は、係合脱落防止部35の径方向の外側にボルト穴4の中心方向を向くように略直角に曲げ起こされている(図2図3参照)。
【0036】
図1に示すように、第一係合部30の形成されている位置を図の頂上としてボルト穴4の中心から0°の方向とすると、第二係合部37は時計回りに約150°の回転した方向に形成されている。これは一例であり、両者の間の角度は任意に設定できる。
【0037】
ここで、座金部2の範囲について次のように定める。すなわち、座金部2の範囲について、ボルト穴4の中心と、第一係合部30又は第二係合部37が形成されている位置との間の距離を半径とする円70を想定しこの円70の内部を座金部2が占める範囲とする。座金部2の範囲を示す仮想円70を、図1(c)に二点鎖線として示す。なお、第一係合部30や第二係合部37が形成されていない場合、座金部2は丸形端子の形状、すなわち、円板形状になるため、座金部2の範囲は、この円板形状の外周により定められる円の内部となる。
【0038】
図1(a)に戻り、説明を続けると、座金部2の範囲の左下90°程度を占める領域から座金部2の範囲の外側に延出するようにトランジション部5が形成されている。このトランジション部5は、座金部2と同じ平面をなすトランジション平面部7と、このトランジション平面部7に連続して形成されるトランジション底面部8を含むように構成されている。
【0039】
このトランジション底面部8は、トランジション平面部7において座金部2の範囲を通過しない直線を引いたとき、その直線の一部としてトランジション平面部7を横切るように形成される折り曲げ線6に沿って、トランジション平面部7より上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされて形成される。本実施形態1では、トランジション底面部8がトランジション平面部7から略45度曲げ起こされた構成を例示している。
【0040】
図1(c)には、折り曲げ線6を延長した直線71が描かれており、この延長直線71がトランジション平面部7において座金部2の範囲を通過しない直線の一例である。
【0041】
再び、図1(a)に戻る。トランジション底面部8は、折り曲げ線6に沿って延びており、このトランジション底面部8に連続するように電線接続部20が形成されている。より詳細に説明すると、トランジション底面部8と電線接続部20の底面部21とが折り曲げ線6に沿って連続的に接続している。すなわち、トランジション底面部8と電線接続部20の底面部21とが、同一平面として連続し、同一方向に延びている。このようにトランジション底面部8と電線接続部20の底面部21とは、同一平面となるため、トランジション底面部8と同様、電線接続部20の底面部21もトランジション平面部7より上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされている。本実施形態1では、略45度曲げ起こされた構成が例示されている。図1(a)において電線接続部20がボルト穴4の中心から210°から240°程度の範囲に渡って設けられている。また、トランジション底面部8と電線接続部20の底面部21は、第一係合部30や第二係合部37の係合挿入部34が係合する回転方向とは逆向きの周方向の接線の向きに延びている。
【0042】
この電線接続部20には、圧着や溶接などにより電線50が接続される。そして、圧着により電線50を接続する構成がインスレーションバレル部22とワイヤーバレル部23である。電線接続部20の底面部21の延びる方向(長手方向)に沿って、先端の被覆を取り除き芯線52がむき出しになった電線50を配置して、インスレーションバレル部22をかしめて電線50の被覆部51を固定し、ワイヤーバレル部23をかしめて芯線52を固定する。このようにして電線接続部20に電線50を結合させると、電線50の中心線53の方向と電線接続部20の底面部21の延びる方向(長手方向)が略平行になる。電線50の中心線53とは、電線接続部20内に配置されて接続されている電線50の円形断面の中心を結ぶ直線のことをいう。また、電線接続部20内に接続される電線50が複数本の場合には、各電線50の中心線53を用いてもよいし、その複数本の電線50の中心線53を用いてもよい。複数本の電線50の中心線53としては、例えば、複数本の円形断面形状の図心を求めて、図心を結ぶ直線としてもよい。
【0043】
本発明においては、電線接続部20の底面部21の延びる方向(長手方向)に沿って接続される電線50の中心線53が折り曲げ線6に平行になるように構成される。
【0044】
一方、電線接続部20が設けられていない側のトランジション底面部8の折り曲げ線6に沿う方向の先端部には、折り曲げ線6と略直交する方向に沿って曲げ起こされた舌片部15が設けられている。図1(a)では、舌片部15がボルト穴4の中心から時計回りに270°程度回転した方向に位置している。
【0045】
また、舌片部15の根もとの基端部16から電線接続部20の方向にずれた位置に、トランジション底面部8の外縁部9を折り曲げ線6と平行する方向に沿って略直角に低く曲げ起こされた規制板10が設けられている。
【0046】
そして、ボルト穴4の中心を軸にして組み合わせアース端子1同士を相互に回転させると、舌片部15が、他の組み合わせアース端子1の規制板10に挿入し係合されるように構成されている。
【0047】
また、トランジション底面部8の外縁部9には、規制板10に連なるようにトランジション立上り部11が形成されている。トランジション底面部8の外縁部9を略直角に曲げ起こしたこのトランジション立上り部11によってトランジション底面部8の強度が増加し、破損しにくくなっている。また、このトランジション立上り部11は、ワイヤーバレル部23に連続して接続している。
【0048】
また、トランジション平面部7には、「他の係合手段」としての第三係合部40が設けられている。この第三係合部40は、丸穴により形成される係合穴41と、その丸穴の周方向に形成され丸穴に係合する係合突起42により構成されている。この係合突起42は、トランジション平面部7の上面側に周囲が円形で凸状に形成される。ボルト穴4の中心を軸にして組み合わせアース端子1同士を相互に回転させると、係合穴41が、他の組み合わせアース端子1の係合突起42に係合して回転戻りが防止される。
【0049】
図1(c)には、電線接続部20に2本の電線50が接続された状態が示されており、電線50の被覆部51がインスレーションバレル部22で圧着され、芯線52がワイヤーバレル部23で圧着されている。この図では、芯線52の先端が、ワイヤーバレル部23から突出しているがこの突出量は、トランジション底面部8内に収まるように調整される。
【0050】
また、座金部2に二点鎖線で描かれている六角形は、複数の座金部2を積層して一括ねじ締めするボルト又はナットを仮想的に表している。座金部2の範囲内で、一括ねじ締めするボルトやナットをボックスレンチで回転して締め付けられるようになっている。
【0051】
なお、組み合わせアース端子1の材料には、導電性と機械強度に優れる、銅合金が用いられ、例えば、黄銅、リン青銅、ベリリューム銅などが使用される。もちろん、無酸素銅などの銅合金以外の材料を用いることもできる。
【0052】
図2は、組み合わせアース端子1を2個積層した状態を示す図であり、(a)は係合前の正面図、(b)は係合前の第一係合部30を側面方向から見た図、(c)は係合前の第二係合部37を側面方向から見た図、(d)は係合時の正面図、(e)は係合時の第一係合部30を側面方向から見た図、(f)は係合時の第二係合部37を側面方向から見た図である。
【0053】
2個の組み合わせアース端子1は同一の形状である。この2個の組み合わせアース端子1を係合させて仮固定するには、まず、図2(a)~(c)に示すように、下側の組み合わせアース端子1の座金部2の上面と、上側の組み合わせアース端子1の座金部2の下面とをボルト穴4の中心を同軸にして重ね合わせる。この状態では、いずれの係合部30、37、40も係合していない。
【0054】
次に、ボルト穴4の中心を軸にして、上側の組み合わせアース端子1を下側のアース端子1に対して時計回りに回転させる。そうすると、第一係合部30及び第二係合部37においては、上側アース端子1の係合挿入部34が、下側アース端子1の案内板36に案内されて回転して、下側アース端子1の係合受け部32に係合する。図2(d)~(f)に示すように係合状態が形成されると、上側アース端子1の係合挿入部34の背後に下側アース端子1の係合脱落防止部35の突起が位置し、係合挿入部34が係合の外れる方向に回転しようとすると、係合脱落防止部35の突起に係止されて回転戻りが防止される。また、第三係合部40においては、上側アース端子1の係合穴41が、下側アース端子1の係合突起42に係合して回転戻りが防止される。
【0055】
さらに、上側の組み合わせアース端子1の舌片部15が、下側の組み合わせアース端子1の規制板10に挿入し係合される。このように、舌片部15が規制板10に係合し接触するため、アース端子1同士の電気的な接続が強化される。また、舌片部15と規制板10とが係合することによりアース端子1同士の回転が制限され、係合する方向に大きな回転方向の外力が作用した場合でも、回転が停止し、第一係合部30や第二係合部37の破損を防止できる。
【0056】
図3は、組み合わせアース端子1を2個積層して係合させた状態の第一係合部30を図2(d)に示すB-B線に沿って切断した断面図である。
【0057】
上側の組み合わせアース端子1の係合挿入部34が下側のアース端子1の係合受け部32に係合するとともに、上側のアース端子1の係合挿入部34の背後に下側のアース端子1の係合脱落防止部35の突起が位置している。
【0058】
また、係合受け部32の先端43が座金部2の方向にわずかに傾斜しており、この先端43で係合挿入部34を上から押し付けている。
【0059】
次に、本実施の形態1に係る組み合わせアース端子1の使用方法について説明する。
【0060】
所定個数の同一形状の組み合わせアース端子1を積層して自動車の車体に突設された一本のボルトにねじ締めして固定するには、まず、最も下側に配置される1個目の組み合わせアース端子1のボルト穴4に車体に突設されたボルトを挿通させ、次にその上方に積み重ねる2個目の組み合わせアース端子1のボルト穴4にボルトを挿通させる。続いて、上下のアース端子1同士を相対回転させて第一係合部30、第二係合部37及び第三係合部40を係合させるとともに、舌片部15と規制板10とを係合させる。その後、さらに上方に積層させるアース端子1をボルトに挿通させ、相対回転して係合させていく。所定個数のアース端子1を積層して係合させた後に、突設されたボルトにナットを螺合させて一括ねじ締めして固定する。
【0061】
または、車体に突設されたボルトをボルト穴4に挿通させる前に、積層する所定個数の組み合わせアース端子1同士を、あらかじめ係合させ仮固定させておき、仮固定した所定個数のアース端子1をボルトに挿通させて、一括ねじ締めするようにしてもよい。
【0062】
図4は、組み合わせアース端子1を6個積層して係合した状態の概略正面図である。所定個数が6個の場合には、この状態にして車体に突設されたボルトにねじ締め固定する。
【0063】
上述のように折り曲げ線6及び折り曲げ線6を延長した直線71が座金部2の範囲を通過せず、また、電線接続部20の底面部21の延びる方向に沿って接続される電線50の中心線53が折り曲げ線6に平行になるように構成されている。
【0064】
ここで、トランジション底面部8と電線接続部20の底面部21を座金部2の平面上に投影し、投影されたトランジション底面部8と電線接続部20の底面部21を示す直線に、ボルト穴4の中心から垂線を引き、交わる点を交点とすると、この垂線と交点と直線により、L字形状が形成される。
【0065】
複数の組み合わせアース端子1が組付けられた状態では、垂線と交点と直線で形成される複数のL字形状のうちの、電線接続部20の底面部21を示す直線が、それぞれ一定の角度をなす。そして、その角度をなすように回転するときの中心となるL字形状の交点の位置は周方向に順次ずれていく。このような構成になっているため、組付けられる組み合わせアース端子1から延び出てくる隣り合う電線50同士の間の距離が近くなり、また、電線接続部20から延び出る電線50同士の位置が周方向に順次ずれていく。このため、電線50同士のまとまりが良くなり、電線50を束ねる作業が容易になる。また、図4に示すように電線接続部20同士の位置が周方向に順次ずれていくため、電線接続部20から延び出る電線50を、少し突き出るようにずれた隣の電線接続部20の電線50に沿わせるように束ねていく。電線接続部20から延び出た直後の位置で電線50が折り曲げられることがなくなり、電線接続部20に過度な力が作用しないようになる。
【0066】
次に、本実施の形態1の効果について説明する。
【0067】
本実施の形態1によれば、トランジション底面部8と電線接続部20の底面部21が、座金部2の範囲を通過しない直線の一部としてトランジション平面部7を横切るように形成される折り曲げ線6に沿って、トランジション平面部7の上面側に30度から60度の範囲の角度で曲げ起こされているため、複数の座金部2を積層させたときに電線接続部20に接続された電線50同士を平面方向に接近させて組付けることができ、また、電線50の一部が高さ方向に重なるように組付けることができる。このようになっているため、組付けられる組み合わせアース端子1と電線50が占める平面の面積が小さくなり省スペースが実現できる。このように狭い面積に多数の組み合わせアース端子1を集約して取り付けることができる。
【0068】
また、本実施の形態1によれば、トランジション底面部8と電線接続部20の底面部21を曲げ起こす角度が、30度から60度の範囲であるため、90度曲げ起こす場合に比べて、高さ方向にも省スペースを実現できる。
【0069】
また、本実施の形態1によれば、折り曲げ線6及び折り曲げ線6を延長した直線71が座金部2の範囲を通過せず、電線接続部20に接続される電線50の中心線53が折り曲げ線6に平行になるように構成されるため、組付けられる組み合わせアース端子1から延び出てくる隣り合う電線50同士の間の距離が近くなり、また、電線接続部20から延び出る電線50同士の位置が同心円状でなく周方向に順次ずれていく。このようになっているため、電線50同士のまとまりが良くなり、電線50を束ねる作業が容易になる。また、電線接続部20同士の位置が周方向に順次少しずつずれていくため、電線50を束ねる際に、電線接続部20から延び出る電線50を、少し突き出るようにずれた隣の電線接続部20から延び出てくる電線50に沿わせるように重ね合わせるような形になる。そうすると、電線接続部20から延び出た直後の位置で小さな曲率半径に電線50が折り曲げられることがなくなり、電線接続部20に作用する負荷が低減される(図4参照)。
【0070】
また、本実施の形態1によれば、積層する組み合わせアース端子1の形状は、全て同一であるため、大量生産に向いており、製造コストが削減されるとともに、部品としての管理費用も低く抑えることができる。
【0071】
また、本実施の形態1によれば、組み合わせアース端子1を使用する際に、屈曲させるなどの変形や加工を施すことなくそのままの形状で用いるため、手間がかからず良好な作業性を実現できる。また、強度の低下が生ずることなく、高い信頼性を実現できる。
【0072】
また、本実施の形態1によれば、舌片部15が規制板10に挿入して係合し接触するため、組付けられる組み合わせアース端子1同士の電気的な接続が強化される。
【0073】
また、本実施の形態1によれば、舌片部15と規制板10とが係合することにより組付けられる組み合わせアース端子1同士の回転が制限され、大きな回転方向の外力が作用した場合でも、回転が停止し、第一係合部30や第二係合部37を破損するなどの不具合を防止できる。
【0074】
また、本実施の形態1によれば、第一係合部30、第二係合部37及び第三係合部40による係合や、舌片部15と規制板10との係合により組付けられる組み合わせアース端子1同士が安定して仮固定されるため、ボルトに一括ねじ締めする際の作業性が向上する。
【0075】
[発明の実施の形態2]
この発明の実施の形態2について、図5を用いて説明する。なお、上述の実施形態1と同一又は対応する要素については、同様の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0076】
図5は、本発明の実施の形態2に係る組み合わせアース端子1Aを2個積層して係合させた状態の概略正面図である。
【0077】
本実施形態2の組み合わせアース端子1Aと、上述の実施形態1の組み合わせアース端子1との相違点は、次のようになっている。まず、実施形態2の組み合わせアース端子1Aでは、トランジション部5と電線接続部20が、ボルト穴4に対して図の右側に平行移動している。しかし、このトランジション部5と電線接続部20の左右の平行移動の相違は、本質的な相違ではない。次に、組み合わせアース端子1Aの第一係合部30Aと第二係合部37Aには、案内板36が設けられていない。しかし、案内板36の有無を除くそれ以外の構造は、組み合わせアース端子1の第一係合部30と第二係合部37と同様である。
【0078】
また、実施形態2の組み合わせアース端子1Aには、折り曲げ線6が形成されておらず、トランジション部5全体が、座金部2と同一平面となっている。さらに、実施形態2の組み合わせアース端子1Aには、第三係合部40、舌片部15、規制板10などが設けられていない。
【0079】
実施形態2と実施形態1の組み合わせアース端子1A,1の間には、以上のような相違がある。
【0080】
本実施形態2の組み合わせアース端子1Aも、ボルト穴4が形成された板状の座金部2を有する複数のアース端子1Aがボルト穴4の同軸上に座金部2が積層されるように組付けられ、ボルト穴4を挿通するボルトに一括ねじ締めにより固定される。
【0081】
また、この組み合わせアース端子1Aは、座金部2の外周縁部3に設けられ、ボルト穴4の中心を軸にしてアース端子1A同士を相互に回転させて係合させる「係合手段」としての第一係合部30A及び第二係合部37Aと、座金部2と同じ平面上で座金部2より外側に延出するように設けられる板状のトランジション部5と、そのトランジション部5に連続するように設けられ、電線50が接続される板状の電線接続部20とを有している。
【0082】
第一係合部30Aと第二係合部37Aとは、同じ構造であり、係合受け部32と、係合挿入部34と、係合脱落防止部35とを含むように構成されている。ボルト穴4の中心を軸にして組み合わせアース端子1A同士を相互に回転させると、係合挿入部34が他の組み合わせアース端子1Aの係合受け部32に係合されるとともに、その係合挿入部34が他のアース端子1Aの係合脱落防止部35に係止されて回転戻りが防止される。
【0083】
組み合わせアース端子1Aには、電線接続部20の延びる方向に沿うように電線50が接続される。この組み合わせアース端子1Aでは、電線接続部20内に配置されて接続される電線50を延長する直線54が、座金部2の範囲を通過しないように構成される。
【0084】
この電線50を延長する直線54とは、電線接続部20内に配置される電線50の断面全面について直交するように通過する全ての直線のことをいう。また、電線50を延長する直線54が座金部2の範囲を通過しないとは、電線接続部20内に配置される電線50の全断面に直交する全ての直線を、座金部2の平面上に投影した直線が、座金部2の範囲を通過しないことをいう。
【0085】
なお、電線接続部20内に配置されて接続される電線50を延長する直線54が、座金部2の範囲から電線50の一本や二本程度またはそれ以上、外側に外れた位置を通過するように構成してもよい。
【0086】
次に、本実施の形態2の効果について説明する。
【0087】
本実施の形態2によれば、電線接続部20内に配置されて接続される電線50を延長する直線54が、座金部2を通過しないように構成されるため、複数の座金部2を積層させたときに電線接続部20に接続された電線50同士を平面方向に接近させて組付けることができる。このようになっているため、組付けられる組み合わせアース端子1Aと電線50が占める平面の面積が小さくなり省スペースが実現できる。このように狭い面積に多数の組み合わせアース端子1Aを集約して取り付けることができる。
【0088】
また、本実施の形態2によれば、電線接続部20内に配置されて接続される電線50を延長する直線54が、座金部2を通過しないように構成されるため、組付けられる組み合わせアース端子1Aから延び出てくる隣り合う電線50同士の間の距離が近くなり、電線50同士のまとまりが良くなって、電線50を束ねる作業が容易になる。
【0089】
また、本実施の形態2によれば、積層する組み合わせアース端子1Aの形状は、全て同一であるため、大量生産に向いており、製造コストが削減されるとともに、部品としての管理費用も低く抑えることができる。
【0090】
また、本実施の形態2によれば、組み合わせアース端子1Aを使用する際に、屈曲させるなどの変形や加工を施すことなくそのままの形状で用いるため、手間がかからず良好な作業性を実現できる。また、強度の低下が生ずることなく、高い信頼性を実現できる。
【0091】
また、本実施の形態2によれば、第一係合部30A及び第二係合部37Aにより組付けられる組み合わせアース端子1A同士が係合され安定して仮固定されるため、ボルトに一括ねじ締めする際の作業性が向上する。
【0092】
[発明のその他の実施の形態]
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態の左右を対称に入れ替えて構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1,1A…組み合わせアース端子、2…座金部、3…座金部の外周縁部、4…ボルト穴、5…トランジション部、6…折り曲げ線、7…トランジション平面部、8…トランジション底面部、9…トランジション底面部の外縁部、10…規制板、11…トランジション立上り部、15…舌片部、16…舌片部の基端部、20…電線接続部、21…電線接続部の底面部、22…インスレーションバレル部、23…ワイヤーバレル部、30,30A…第一係合部(係合手段)、31…板状片、32…係合受け部、33…係合受け部の背面部、34…係合挿入部、35…係合脱落防止部、36…案内板、37,37A…第二係合部(係合手段)、40…第三係合部(他の係合手段)、41…係合穴、42…係合突起、43…係合受け部の先端、50…電線、51…電線の被覆部、52…芯線、53…電線の中心線、54…電線を延長した直線、70…座金部の範囲を示す円、71…折り曲げ線の延長直線
図1
図2
図3
図4
図5