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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073269
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】自動車用加飾製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20240522BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240522BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240522BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240522BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240522BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240522BHJP
   B60K 37/00 20240101ALI20240522BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
B05D7/00 K
B05D7/24 301M
B05D1/28
B05D7/00 N
B32B27/00 E
B32B3/30
B60K37/00 Z
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184379
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安藤 禎教
(72)【発明者】
【氏名】神谷 正人
(72)【発明者】
【氏名】富松 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】立川 公博
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AB01
3D023AC12
3D023AD02
3D023AD06
3D023AD14
3D023AD22
3D023BA01
3D023BB08
3D023BD03
3D023BD12
3D023BE03
3D023BE06
3D023BE12
3D023BE31
3D344AA00
3D344AB01
3D344AC02
4D075AC42
4D075AC86
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075DA31
4D075DA32
4D075DC13
4D075EA33
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA13
4F100CA13A
4F100DB18
4F100DB18A
4F100DB18B
4F100EC04
4F100EH46
4F100EH46B
4F100GB33
4F100HB00
4F100HB31
4F100HB31B
(57)【要約】
【課題】自動車用加飾製品の外観向上を図る。
【解決手段】自動車用加飾製品10の骨格部分を構成する基材15の表面16は、第1頂面18と、溝部25を介して第1頂面18に対し隣り合う第2頂面22とを有する。表面16の一部は加飾層DLにより加飾される。第2頂面22には、加飾層DLの少なくとも一部を構成する印刷層23が形成される。溝部25は、0.05mm~0.9mmの溝幅を有する。自動車用加飾製品10の製造に際しては、少なくとも転写面41を含む部分が可撓性材料により形成された押し当て治具40が用いられる。インク42が塗布された転写面41が第2頂面22に押し当てられる。転写面41上のインク42が第2頂面22に転写されることにより、印刷層23が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格部分が基材により構成され、かつ前記基材の表面が、第1頂面と、溝部を介して前記第1頂面に対し隣り合う第2頂面とを有し、さらに、前記表面の少なくとも一部が加飾層により加飾された自動車用加飾製品であって、
前記第2頂面には、前記加飾層の少なくとも一部を構成する印刷層が形成され、
前記溝部が0.05mm~0.9mmの溝幅を有している自動車用加飾製品。
【請求項2】
前記溝部は、前記第1頂面及び前記第2頂面から同溝部の深さ方向へ離間した箇所に内底面を有し、
前記内底面からの前記第2頂面の高さは、前記内底面からの前記第1頂面の高さと同じ、又は前記第1頂面の前記高さよりも高く設定されている請求項1に記載の自動車用加飾製品。
【請求項3】
前記溝部は、前記内底面及び前記第2頂面の間に第2内側面を有し、
前記第2頂面の前記高さは、前記第1頂面の前記高さよりも高く設定され、
前記第2内側面のうち、前記第2頂面に対し少なくとも隣り合う箇所には、前記加飾層の一部を構成する補助印刷層が、前記印刷層に繋がった状態で形成されている請求項2に記載の自動車用加飾製品。
【請求項4】
骨格部分を構成する基材の表面の少なくとも一部が加飾層により加飾された自動車用加飾製品を製造の対象とし、
前記基材として、前記表面に、第1頂面と、溝部を介して前記第1頂面に対し隣り合う第2頂面とを有するものを用い、前記第2頂面に対しては、前記加飾層の少なくとも一部を構成する印刷層を形成することで、前記自動車用加飾製品を製造する方法であって、
転写面を備え、かつ少なくとも前記転写面を含む部分が可撓性材料により形成された押し当て治具を用い、インクが塗布された前記転写面を前記第2頂面に押し当てて、前記転写面上の前記インクを前記第2頂面に転写させて前記印刷層を形成する、自動車用加飾製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面の少なくとも一部が加飾層により加飾された自動車用加飾製品、及びその自動車用加飾製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用加飾製品として、骨格部分が基材により構成され、かつ基材の表面の少なくとも一部が加飾層により加飾されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図4に示すように、この自動車用加飾製品50では、基材52の表面53が、第1頂面54と、溝部55を介して第1頂面54に対し隣り合う第2頂面56とを有する。第1頂面54では基材52が露出する。第2頂面56と、溝部55における第2頂面56側の内側面とには、加飾層DLの少なくとも一部を構成する塗膜層57が形成される。この自動車用加飾製品50は、1部品でありながら、2部品が溝部55を介して隣り合っているような外観を呈する。
【0003】
上記自動車用加飾製品50の製造に際しては、第1頂面54、溝部55及び第2頂面56を表面53に有する基材52が樹脂成形される。マスク部材58が第1頂面54に被せられる。この際、マスク部材58の縁部58aが溝部55に嵌め込まれる。そして、第2頂面56と、溝部55の第2頂面56側の内側面とに対し塗装が行なわれることで、上記のように、基材52の表面53の一部が加飾層DLによって加飾された自動車用加飾製品50が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-226160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の自動車用加飾製品50では、溝部55には、マスク部材58の縁部58aを嵌め込むために1mm以上の溝幅WGが必要となる。しかし、この大きさの溝幅WGは、自動車用加飾製品50の外観の観点からは過大であり、その外観を低下させる一因となり得る。そのため、従来の自動車用加飾製品50には、外観向上の点で改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための自動車用加飾製品及びその製造方法の各態様を記載する。
[態様1]骨格部分が基材により構成され、かつ前記基材の表面が、第1頂面と、溝部を介して前記第1頂面に対し隣り合う第2頂面とを有し、さらに、前記表面の少なくとも一部が加飾層により加飾された自動車用加飾製品であって、前記第2頂面には、前記加飾層の少なくとも一部を構成する印刷層が形成され、前記溝部が0.05mm~0.9mmの溝幅を有している自動車用加飾製品。
【0007】
上記の構成によれば、自動車用加飾製品が次のように見える。
第1頂面と、0.05mm~0.9mmの溝幅を有する溝部と、溝部を介して第1頂面に対し、隣り合う第2頂面に形成された印刷層とが見える。印刷層は、加飾層の少なくとも一部を構成する。自動車用加飾製品は、1部品でありながら、2部品が溝部を介して隣り合っているような外観を呈する。
【0008】
溝部は、マスク部材を用いて第2頂面に対し、塗装によって塗膜層を形成した従来技術よりも狭い溝幅を有する。そのため、溝部の溝幅が自動車用加飾製品の外観に及ぼす度合いが、上記従来技術よりも小さくなり、外観が向上する。
【0009】
[態様2]前記溝部は、前記第1頂面及び前記第2頂面から同溝部の深さ方向へ離間した箇所に内底面を有し、前記内底面からの前記第2頂面の高さは、前記内底面からの前記第1頂面の高さと同じ、又は前記第1頂面の前記高さよりも高く設定されている[態様1]に記載の自動車用加飾製品。
【0010】
上記の構成によれば、自動車用加飾製品が次のように見える。
第2頂面の高さが第1頂面の高さと同じである場合には、第2頂面に形成された印刷層が、第1頂面に対し、溝部の深さ方向における同じ位置に見える。
【0011】
第2頂面の高さが第1頂面の高さよりも高い場合には、第2頂面に形成された印刷層が、第1頂面よりも手前に見える。自動車用加飾製品は、印刷層が第1頂面よりも突出した外観を呈する。
【0012】
[態様3]前記溝部は、前記内底面及び前記第2頂面の間に第2内側面を有し、前記第2頂面の前記高さは、前記第1頂面の前記高さよりも高く設定され、前記第2内側面のうち、前記第2頂面に対し少なくとも隣り合う箇所には、前記加飾層の一部を構成する補助印刷層が、前記印刷層に繋がった状態で形成されている[態様2]に記載の自動車用加飾製品。
【0013】
上記の構成によれば、自動車用加飾製品が次のように見える。
第2頂面に形成された印刷層が、第1頂面よりも手前に見える。これに加え、溝部の第2内側面のうち、少なくとも第2頂面に対し隣り合う箇所には、印刷層に繋がった状態の補助印刷層が見える。補助印刷層の分、加飾層が拡張される。しかも、第2内側面及び補助印刷層は、溝部の内底面及び第2頂面に対し交差している。そのため、補助印刷層が加わる分、自動車用加飾製品において、印刷層が第1頂面よりも突出した外観が強調されて見える。
【0014】
[態様4]骨格部分を構成する基材の表面の少なくとも一部が加飾層により加飾された自動車用加飾製品を製造の対象とし、前記基材として、前記表面に、第1頂面と、溝部を介して前記第1頂面に対し隣り合う第2頂面とを有するものを用い、前記第2頂面に対しては、前記加飾層の少なくとも一部を構成する印刷層を形成することで、前記自動車用加飾製品を製造する方法であって、転写面を備え、かつ少なくとも前記転写面を含む部分が可撓性材料により形成された押し当て治具を用い、インクが塗布された前記転写面を前記第2頂面に押し当てて、前記転写面上の前記インクを前記第2頂面に転写させて前記印刷層を形成する、自動車用加飾製品の製造方法。
【0015】
上記の製造方法によれば、自動車用加飾製品の製造に際し、基材及び押し当て治具が用いられる。
基材としては、表面に、第1頂面と、溝部を介して第1頂面に対し隣り合う第2頂面とを有するものが用いられる。押し当て治具としては、転写面を備え、かつ少なくとも転写面を含む部分が可撓性材料により形成されたものが用いられる。
【0016】
押し当て治具の転写面にインクが塗布される。インクの塗布された転写面が第2頂面に押し当てられる。転写面上のインクが第2頂面に転写されて、同第2頂面に印刷層が形成される。
【0017】
上記押し当てに際しては、押し当て治具のうち、可撓性材料により形成された部分が、第2頂面を含む基材の外形形状に沿って弾性変形する。そのため、インクが基材の外形形状に合わせて転写され、印刷層が第2頂面に密着した状態で形成される。
【0018】
従って、第2頂面に対し、塗装により塗膜層が形成されることで、加飾層が形成される従来技術とは異なり、第1頂面をマスク部材によって覆わなくてもすむ。これに伴い、マスク部材の縁部を溝部に嵌め込まなくてもすむ。溝部の溝幅の設定に際しては、マスク部材の縁部を嵌め込むための溝幅を考慮しなくてすむ。
【0019】
インクの転写により印刷層を形成する上記製造方法では、溝部の溝幅を上記従来技術よりも狭くすることが可能となる。溝幅を狭くした場合には、その溝幅を有する溝部が自動車用加飾製品の外観に及ぼす度合いが、上記従来技術よりも小さくなり、同自動車用加飾製品の外観が向上する。
【発明の効果】
【0020】
上記自動車用加飾製品及びその製造方法によれば、外観向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態における自動車用加飾製品の部分断面図である。
図2図1におけるX部を拡大して示す部分断面図である。
図3図1における自動車用加飾製品の製造に際し、押し当て治具を用いて、基材の表面の一部に加飾層を形成する様子を説明する部分断面図である。
図4】従来の自動車用加飾製品の製造に際し、マスク部材を用いて、基材の表面の一部に加飾層を形成する様子を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、自動車用加飾製品及びその製造方法を具体化した一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
最初に、図1を参照して、自動車用加飾製品10の概略について説明する。自動車用加飾製品10は、自動車用内装品、自動車用外装品等として具体化される。適用対象となる製品を次に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0023】
自動車用内装品:インパネオーナメント、コンソールボックスの周辺部品、ドアトリムの周辺部品等。
自動車用外装品:フロントグリル、フロントモール部品、リヤモール部品等。
【0024】
自動車用加飾製品10の骨格部分は、樹脂材料を用いて成形された基材15によって構成されている。基材15は1部品によって構成されている。基材15の表面16は、第1頂面18、第2頂面22、溝部25及び外側面32を有している。次に、基材15の表面16の各部について説明する。
【0025】
<第1頂面18及び第2頂面22>
第1頂面18には加飾が施されていない。第1頂面18では、基材15が露出している。第2頂面22は、溝部25を介して、上記第1頂面18に対し隣り合っている。本実施形態では、第1頂面18及び第2頂面22は、それぞれ平坦な面によって構成されている。
【0026】
<溝部25>
溝部25は、第1頂面18及び第2頂面22の境界部分に形成されている。溝部25は、図1の紙面に直交する方向へ延びている。
【0027】
図2に示すように、溝部25は、それぞれ平坦な面からなる内底面26、第1内側面27及び第2内側面28を有している。内底面26は、第1頂面18及び第2頂面22から溝部25の深さ方向(図2の上下方向)へ離間している。第1内側面27は、内底面26及び第1頂面18の間に位置している。第2内側面28は、内底面26及び第2頂面22の間に位置している。第1内側面27は、内底面26及び第1頂面18に対し直交、又は直交に近い状態で交差している。第2内側面28は、内底面26及び第2頂面22に対し直交、又は直交に近い状態で交差している。本実施形態では、第1内側面27及び第2内側面28は、内底面26に近づくに従い間隔が狭くなるように、内底面26等に対し傾斜している。
【0028】
ここで、溝部25の深さ方向に対し直交する方向における第1内側面27及び第2内側面28の間隔のうち、溝部25の開口部分での間隔を溝幅WGとする。溝幅WGは、0.05mm~0.9mmに設定されている。溝幅WGが0.05mm以上であると、第1頂面18及び第2頂面22の境界部分の外観が滑らかとなり、好ましい。上記溝幅WGは、溝部25を含む表面16の外観を良好にする観点からは、0.1mm~0.5mmに設定されることがより好ましい。
【0029】
<外側面32>
図1に示すように、外側面32は、第2頂面22を挟んで、溝部25とは反対側(図1では右側)に位置する。外側面32は、本実施形態では、溝部25の深さ方向のうち、深く(低く)なる側ほど(図1の下側ほど)、溝部25から遠ざかるように、同深さ方向に対し傾斜している。
【0030】
<第1頂面18及び第2頂面22の高さについて>
図2に示すように、内底面26からの第2頂面22の高さH2は、同内底面26からの第1頂面18の高さH1と同じ、又は高さH1よりも高く設定されている。本実施形態では、高さH2が高さH1よりも高く設定されている。両高さH1,H2の偏差ΔHは、0mm~25mmに設定されることが望ましい。偏差ΔHが上記の範囲に収まっていると、後述する押し当て治具40(図3参照)を用いることで、印刷層23及び補助印刷層29,33をそれぞれ好適に形成することが可能である。
【0031】
<加飾層DL>
図1及び図2に示すように、基材15の表面16の少なくとも一部を加飾するために、基材15には加飾層DLが形成されている。次に、この加飾層DLについて説明する。
【0032】
第2頂面22には印刷層23が形成されている。溝部25の第2内側面28のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所には、補助印刷層29が形成されている。本実施形態では、第2内側面28のうち、第1頂面18よりも高い部分に補助印刷層29が形成されているが、これに限られない。また、外側面32のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所には、補助印刷層33が形成されている。本実施形態では、外側面32のうち、第1頂面18よりも高い部分に補助印刷層33が形成されているが、これに限られない。補助印刷層29,33は、いずれも印刷層23に繋がっている。そして、上記印刷層23及び両補助印刷層29,33によって加飾層DLが構成されている。
【0033】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
最初に、上記自動車用加飾製品10を製造する方法について説明する。
この製造に際しては、図3に示すように、基材15及び押し当て治具40が用いられる。基材15としては、溝部25を介して第1頂面18と第2頂面22とが隣り合っていて、表面16が凹凸状をなすように樹脂成形されたものが用いられる。溝部25は、溝幅WGが0.05mm~0.9mmとなるように形成されている(図2参照)。
【0034】
基材15が、図示しない受け治具等の上であって、上記押し当て治具40の下方となる箇所に載置され、その位置に保持される。
押し当て治具40としては、下面に転写面41を有し、かつ少なくとも転写面41を含む部分が可撓性材料により形成されたものが用いられる。押し当て治具40の転写面41のうち、上記印刷層23及び補助印刷層29,33に対応する領域にインク42が塗布される。図3において二点鎖線の矢印で示すように、押し当て治具40が下降されて、インク42の塗布された転写面41が第2頂面22に押し当てられる。このとき、押し当て治具40の転写面41は、第1頂面18に対しては押し当てられない。転写面41上のインク42の一部が第2頂面22に付着する。第1頂面18にはインク42が付着しない。
【0035】
上記押し当てに際しては、押し当て治具40のうち、可撓性材料により形成された部分が、基材15の外形形状、ここでは、第2頂面22、第2内側面28及び外側面32に沿って弾性変形する。第2内側面28及び外側面32は、ともに第2頂面22に対し交差している。しかし、押し当て治具40は、第2内側面28及び外側面32まで回り込むように弾性変形する。そのため、インク42が第2頂面22だけでなく、第2内側面28の一部及び外側面32の一部に対しても密着した状態で付着する。
【0036】
その後、押し当て治具40が上昇されると、転写面41からインク42が離れる。図3において二点鎖線で示すように、インク42は、第2頂面22、第2内側面28の一部及び外側面32の一部のそれぞれに対し、いずれも付着した状態で残る。
【0037】
このようにして、インク42が基材15の外形形状に合わせて転写される。インク42の一部が第2頂面22に転写されて、印刷層23が形成される。また、インク42の一部が第2内側面28のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所に転写されて補助印刷層29が形成される。また、インク42の一部が外側面32のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所に転写されて補助印刷層33が形成される。図1に示すように、印刷層23と、その印刷層23に対し繋がった補助印刷層29,33とからなる加飾層DLが、表面16の一部に形成される。なお、第1頂面18に対しては、インク42の転写による加飾が施されない。第1頂面18では基材15が露出する。上記のようにして、自動車用加飾製品10が得られる。
【0038】
上記自動車用加飾製品10を単体で見た場合、基材15が露出した第1頂面18と、0.05mm~0.9mmの溝幅WGを有する溝部25と、溝部25を介して第1頂面18に対し隣り合う第2頂面22に形成された印刷層23とが見える。表現を変えると、印刷層23は、溝部25を挟んで第1頂面18とは反対側に見える。自動車に取り付けられた状態の自動車用加飾製品10を見た場合も同様である。自動車用加飾製品10は、1部品でありながら、2部品が溝部25を介して隣り合っているような外観を呈する。
【0039】
また、図2に示すように、本実施形態では、第2頂面22の高さH2が、第1頂面18の高さH1よりも高いことから、自動車用加飾製品10が次のように見える。
図1及び図2に示すように、印刷層23が、第1頂面18よりも手前に見える。自動車用加飾製品10は、印刷層23が第1頂面18よりも突出した外観を呈する。
【0040】
これに加え、溝部25の第2内側面28のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所には、印刷層23に繋がった状態の補助印刷層29が見える。また、基材15の外側面32のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所には、印刷層23に繋がった状態の補助印刷層33が見える。
【0041】
補助印刷層29,33の分、加飾層DLが拡張される。しかも、第2内側面28は、溝部25の内底面26及び第2頂面22に対し交差している。外側面32は、第2頂面22に対し交差している。そのため、補助印刷層29,33が加わる分、自動車用加飾製品10において、印刷層23が第1頂面18よりも突出した外観がより強調されて見える。
【0042】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)図3に示すように、本実施形態では、自動車用加飾製品10の製造に際し、転写面41を備え、かつ少なくとも転写面41を含む部分が可撓性材料により形成された押し当て治具40を用いる。インク42が塗布された転写面41を、基材15の表面16のうち、第1頂面18を除く領域であり、かつ少なくとも第2頂面22を含む領域に押し当てる。この押し当てを、可撓性材料によって形成された部分を、基材15の第2頂面22、第2内側面28及び外側面32の形状に合わせて弾性変形させながら行なう。そして、転写面41のインク42を、第2頂面22の全体、第2内側面28の一部、及び外側面32の一部にそれぞれ転写させることで、印刷層23及び補助印刷層29,33を形成する。第1頂面18に対しては、インク42の転写による加飾を行なわないようにしている。
【0043】
(1-1)そのため、自動車用加飾製品10は、1部品でありながら、基材15が露出する部品と、加飾層DLが形成された部品といった2部品が、溝部25を介して隣り合っているような外観を呈する。表現を変えると、2部品を用いた場合と同様の外観を実現できる。すなわち、部品間の境界部分(見切り部分)の外観品質を、2部品を用いた場合の外観品質と同程度に確保しながら、その外観を1部品によって実現できる。
【0044】
(1-2)また、図4に示すように、第2頂面56に対し、塗装により塗膜層57が形成されることで、加飾層DLが形成される従来技術とは異なり、本実施形態では、第1頂面18をマスク部材58によって覆わなくてもすむ。これに伴い、マスク部材58の縁部58aを溝部25に嵌め込まなくてもすむ。溝部25の溝幅WGの設定に際しては、上記縁部58aを嵌め込むための溝幅WGを考慮しなくてすむ。
【0045】
インク42の転写により印刷層23を形成する本実施形態では、マスク部材58を用いて第2頂面56等に対し、塗装によって塗膜層57を形成する従来技術よりも、溝部25の溝幅WGを狭くすることが可能となる。本実施形態では、図2に示すように、溝幅WGが0.05mm~0.9mmに設定されているにも拘わらず、第2頂面22、第2内側面28及び外側面32に加飾層DLを形成することができる。
【0046】
上記のように、溝幅WGを狭くした溝部25が、自動車用加飾製品10の外観に及ぼす度合いが、従来技術(図4参照)よりも小さくなり、同自動車用加飾製品10の外観向上を図ることができる。
【0047】
(2)本実施形態では、図2に示すように、第2頂面22の高さH2が、第1頂面18の高さH1よりも高く設定されている。そのため、自動車用加飾製品10を見た場合、第2頂面22に形成された印刷層23が、第1頂面18よりも突出したように見える。第1頂面18と印刷層23とが別々の部品によって構成されているような外観(別体感)をより一層演出できる。従って、自動車用加飾製品10の外観のさらなる向上を図ることができる。
【0048】
(3)本実施形態では、第2内側面28のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所に、補助印刷層29を印刷層23に繋げた状態で形成している。また、外側面32のうち、第2頂面22に対し少なくとも隣り合う箇所に、補助印刷層33を印刷層23に繋げた状態で形成している。そのため、補助印刷層29,33が加わる分、自動車用加飾製品10において、印刷層23が第1頂面18よりも突出した外観が強調されて見える。自動車用加飾製品10の外観を一層向上させることができる。
【0049】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
<自動車用加飾製品10について>
・第2頂面22の高さH2が、第1頂面18の高さH1と同じに設定されてもよい。この場合には、第2頂面22に形成された印刷層23が、第1頂面18に対し、溝部25の深さ方向における同じ位置に見える。
【0051】
・第1頂面18が加飾されてもよい。例えば、第1頂面18に塗膜層が形成されたり、印刷層が形成されたりしてもよい。
・第2内側面28における補助印刷層29と、外側面32における補助印刷層33との一方又は双方が省略されてもよい。
【0052】
・第1頂面18、第2頂面22及び溝部25の各面(内底面26、第1内側面27及び第2内側面28)は、必ずしも平坦な面によって構成されていなくてもよい。第1頂面18、第2頂面22及び内底面26の少なくとも1つは、例えば凸状又は凹状に湾曲した面によって構成されてもよい。また、第1内側面27及び第2内側面28の一方が凸状に湾曲した面によって構成され、他方が凹状に湾曲した面によって構成されてもよい。
【0053】
・補助印刷層29が、第2内側面28のうち、第2頂面22に対し隣り合う箇所だけでなく、その箇所よりも広い箇所に形成されてもよい。補助印刷層33についても同様である。例えば、補助印刷層29は、第2内側面28の全面にわたって形成されてもよい。
【0054】
・印刷層23及び補助印刷層29,33は、インク42が1回転写されて形成されたものであってもよい。また、印刷層23及び補助印刷層29,33は、色の異なる複数種類のインク42が用いられて、色毎に転写が行なわれて形成されたものであってもよい。後者の場合、転写は複数回行なわれる。
【0055】
・基材15は、材着樹脂材料が用いられて形成されたものであってもよい。材着樹脂材料は、顔料等の着色材を樹脂材料に混合、あるいは光輝材を着色材とともに樹脂材料に混合することにより、樹脂自体を着色した材料である。第1頂面18では、この基材15が露出してもよい。
【0056】
・基材15の表面16は、第1頂面18、溝部25及び第2頂面22の組み合わせを1組のみ有してもよいし、複数組有してもよい。
<自動車用加飾製品10の製造方法について>
・上記実施形態とは異なり、押し当て治具40を昇降させず(静止させ)、基材15が保持された受け治具を昇降させることにより、押し当て治具40における転写面41上のインク42を基材15の表面16(第2頂面22等)に転写させてもよい。要は、押し当て治具40と、基材15が保持された受け治具との一方が他方に対し、上下方向に接近又は離間させられればよい。
【0057】
・押し当て治具40と、基材15が保持された受け治具との一方を、上下方向とは異なる方向、例えば水平方向へ移動させることにより、他方に対し接近又は離間させてもよい。
【0058】
・押し当て治具40のうち、転写面41の近くの部分のみが可撓性材料によって形成されてもよいし、それ以外の部分、例えば、押し当て治具40の全体が可撓性材料によって形成されてもよい。
【0059】
・上記実施形態及び上記各種変更例では、押し当て治具40として、直線運動(昇降等)することで転写面41を第2頂面22等に押し当てるタイプが用いられた。このタイプに代えて、押し当て治具40として、回転しながら転写面を第2頂面22等に押し当てるタイプが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…自動車用加飾製品
15…基材
16…表面
18…第1頂面
22…第2頂面
23…印刷層
25…溝部
26…内底面
28…第2内側面
29,33…補助印刷層
40…押し当て治具
41…転写面
42…インク
DL…加飾層
H1,H2…高さ
WG…溝幅
図1
図2
図3
図4