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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073272
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】移乗支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/10 20060101AFI20240522BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A61G7/10
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184382
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】村山 学
(72)【発明者】
【氏名】若林 尚之
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040HH02
4C040JJ03
(57)【要約】
【課題】バランス能力が低下した被介護者を移乗する場合であっても、被介護者を安定的に支持して移乗することが可能な移乗支援装置を提供する。
【解決手段】この移乗支援装置1は、被介護者Pの大腿を支持可能な大腿支持部30と、大腿支持部30の上方に設けられ、被介護者Pの上半身の一部が載せられる支持面11aを有し、支持面11aを前方下向きに傾斜可能なように構成された上半身支持部10とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の大腿を支持可能な大腿支持部と、
前記大腿支持部の上方に設けられ、前記被介護者の上半身の一部が載せられる支持面を有し、前記支持面を前方下向きに傾斜可能なように構成された上半身支持部とを備える、移乗支援装置。
【請求項2】
前記上半身支持部は、略水平に沿った向きに設けられた回動軸周りに回動することにより前方下向きに傾斜可能なように構成されている、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項3】
前記大腿支持部が設けられた第1フレームと、前記第1フレームに回動可能に接続され、前記上半身支持部が設けられた第2フレームとをさらに備える、請求項2に記載の移乗支援装置。
【請求項4】
前記第1フレームが取り付けられたベース部をさらに備え、
前記上半身支持部の前記支持面は、前記ベース部と略平行な平行状態と、前記ベース部に対して前方下向きに傾斜した傾斜状態とに変化可能なように構成されている、請求項3に記載の移乗支援装置。
【請求項5】
前記上半身支持部は、前記支持面を有し、左右方向に延びる支持部本体と、前記支持部本体の左右方向の端部の各々から後方に延びる一対の側方支持部とを含む、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項6】
前記一対の側方支持部の各々は、前記支持部本体側に設けられた第1側方支持部と、前記第1側方支持部の前記支持部本体と反対側に設けられ、前記第1側方支持部に対して後方上向きに傾斜可能な第2側方支持部とを含む、請求項5に記載の移乗支援装置。
【請求項7】
前記上半身支持部は、一対の前記側方支持部の間を前後方向に移動可能なように構成された正面支持部をさらに含み、
前記正面支持部の前方への移動に伴って、前記第2側方支持部が前記第1側方支持部に対して後方上向きに傾斜するように構成されている、請求項6に記載の移乗支援装置。
【請求項8】
前記上半身支持部を前記回動軸周りに回動させることにより前記支持面を前方下向きに傾斜させる第1駆動部をさらに備える、請求項2に記載の移乗支援装置。
【請求項9】
前記第1駆動部の駆動を制御する制御部と、警報を報知する報知部とをさらに備え、
前記制御部は、前記第1駆動部のトルク変化量が閾値以下であると判定した場合に、前記報知部に警報を報知させる制御を行う、請求項8に記載の移乗支援装置。
【請求項10】
前記上半身支持部の前記支持面は、弾力性を有する平板状である、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項11】
前記大腿支持部と前記上半身支持部とを一体的に回動する回動部をさらに備える、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項12】
前記大腿支持部は、折り畳まれた閉状態と、略水平に開いて前記被介護者の大腿を支持可能な開状態とに変化可能なように構成されている、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項13】
前記大腿支持部を前記閉状態と前記開状態とに変化させるとともに、前記大腿支持部を上下方向に移動させる第2駆動部をさらに備える、請求項12に記載の移乗支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移乗支援装置に関し、特に、大腿支持部と上半身支持部とを備える移乗支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大腿支持部と上半身支持部とを備える移乗支援装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、大腿部後部を支持する座受け部(大腿支持部)と、被介護者の上半身を保持するためのU字形状のホルダ(上半身支持部)とを備える移乗装置(移乗支援装置)が開示されている。この移乗装置は、座受け部を大腿部後部へスライドさせて差し込み、大腿部後部を持ち上げる動作により、被介護者を車椅子からベッドやトイレなどに移乗させる。また、座受け部により被介護者を持ち上げる際、ホルダは、被介護者の左右の腋下部に当接することによって、被介護者の上半身を両側から支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-93730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1には開示されていないが、移乗装置(移乗支援装置)を用いて、バランス能力が低下した被介護者を持ち上げて移乗する場合がある。バランス能力とは、静止または動的動作における姿勢維持の能力のことであり、高齢により筋力が低下している被介護者などは、各自の筋力がバランス能力へ影響をあたえることが知られている。この場合、上記特許文献1の移乗装置を用いてバランス能力が低下した被介護者を持ち上げた際、たとえば筋力低下に起因してバランス能力が低下した被介護者などは、腋下部に当接するホルダを介して自身の姿勢を安定的に維持することが困難であると考えられる。そのため、バランス能力が低下した被介護者を移乗する場合であっても、被介護者を安定的に支持して移乗できることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、バランス能力が低下した被介護者を移乗する場合であっても、被介護者を安定的に支持して移乗することが可能な移乗支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による移乗支援装置は、被介護者の大腿を支持可能な大腿支持部と、大腿支持部の上方に設けられ、被介護者の上半身の一部が載せられる支持面を有し、支持面を前方下向きに傾斜可能なように構成された上半身支持部とを備える。
【0008】
この発明の一の局面による移乗支援装置では、上記のように、大腿支持部の上方に設けられ、被介護者の上半身の一部が載せられる支持面を有し、支持面を前方下向きに傾斜可能なように構成された上半身支持部を備える。これにより、被介護者の上半身の一部が上半身支持部の支持面に載せられた状態で支持面を前方下向きに傾斜させることにより、被介護者の上半身が前方下向きに傾斜した状態になることに対応するように、被介護者の後側に位置する臀部は上向きに傾斜した(浮いた)状態になる。そのため、たとえば筋力低下に起因してバランス能力が低下した被介護者を移乗する場合であっても、被介護者は支持面に上半身の一部を載せることによって、バランス能力に頼らずに支持面により自身の姿勢を保持することができるとともに、被介護者の上半身の一部が載せられた支持面を前方下向きに傾斜させることにより、被介護者の臀部を容易にかつ安定して持ち上げることができる。したがって、バランス能力が低下した被介護者を移乗する場合であっても、被介護者を安定的に支持して移乗することができる。
【0009】
この発明の一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、上半身支持部は、略水平に沿った向きに設けられた回動軸周りに回動することにより前方下向きに傾斜可能なように構成されている。このように構成すれば、上半身支持部を回動軸周りに回動させることにより上半身支持部を前方下向きに傾斜させることができるため、被介護者の上半身を前方下向きに傾斜させることに対応して、被介護者の臀部を確実に持ち上げることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、大腿支持部が設けられた第1フレームと、第1フレームに回動可能に接続され、上半身支持部が設けられた第2フレームとをさらに備える。このように構成すれば、上半身支持部を回動させる回動軸を、上半身支持部から離れた、第1フレームと第2フレームとの接続部分に設けることができるため、回動半径を大きくすることができる。これにより、被介護者の上半身をより前方、かつ、より下向きに傾斜させることができるため、被介護者の臀部をより確実に持ち上げることができる。
【0011】
上記第1フレームと第1フレームに回動可能に接続された第2フレームとをさらに備える構成において、好ましくは、第1フレームが取り付けられたベース部をさらに備え、上半身支持部の支持面は、ベース部と略平行な平行状態と、ベース部に対して前方下向きに傾斜した傾斜状態とに変化可能なように構成されている。このように構成すれば、支持面を平行状態から傾斜状態に変化させることに伴って、被介護者の上半身の一部が載せられた支持面を前方下向きに傾斜させることができる。
【0012】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、上半身支持部は、支持面を有し、左右方向に延びる支持部本体と、支持部本体の左右方向の端部の各々から後方に延びる一対の側方支持部とを含む。このように構成すれば、被介護者の上半身の一部が載せられた支持面を前方下向きに傾斜させた際に、被介護者の左右両側を一対の側方支持部により支持することができるため、被介護者をより安定的に支持して移乗することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、一対の側方支持部の各々は、支持部本体側に設けられた第1側方支持部と、第1側方支持部の支持部本体と反対側に設けられ、第1側方支持部に対して後方上向きに傾斜可能な第2側方支持部とを含む。このように構成すれば、被介護者は上半身の一部を支持面に載せる際に、たとえば被介護者の腋下部または肩甲骨近傍などに後方上向きに傾斜された第2側方支持部が接触されることにより、接触された被介護者の腋下部または肩甲骨近傍などを支持面側に移動させることができる。その結果、被介護者の上半身の一部を支持面に載せやすくすることができる。
【0014】
上記一対の側方支持部の各々は第1側方支持部に対して上方に傾斜可能な第2側方支持部を含む構成において、好ましくは、上半身支持部は、一対の側方支持部の間を前後方向に移動可能なように構成された正面支持部をさらに含み、正面支持部の前方への移動に伴って、第2側方支持部が第1側方支持部に対して後方上向きに傾斜するように構成されている。このように構成すれば、被介護者による正面支持部の前方への押込みに応じて第2側方支持部を後方上向きに傾斜させることができるため、第2側方支持部により支持部方向への上半身の一部の移動を確実に促すことができる。
【0015】
上記上半身支持部は略水平に沿った向きに設けられた回動軸周りに回動することにより前方下向きに傾斜可能である構成において、好ましくは、上半身支持部を回動軸周りに回動させることにより支持面を前方下向きに傾斜させる第1駆動部をさらに備える。このように構成すれば、第1駆動部を駆動することにより、上半身支持部を回動軸周りに回動させて支持面を前方下向きに確実に傾斜させることができる。
【0016】
この場合、好ましくは、第1駆動部の駆動を制御する制御部と、警報を報知する報知部とをさらに備え、制御部は、第1駆動部のトルク変化量が閾値以下であると判定した場合に、報知部に警報を報知させる制御を行う。このように構成すれば、トルク変化量が予め設定された閾値よりも小さいと判定した場合には、たとえば、被介護者の上半身の一部が支持面に適切に載せられていないとみなして、報知部に警報を報知させることができる。そのため、被介護者の上半身の一部が支持面に適切に載せられていない場合において、上半身支持部を回動させることを抑制することができる。
【0017】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、上半身支持部の支持面は、弾力性を有する平板状である。このように構成すれば、被介護者の上半身を適切に保護することができるとともに、支持面をたとえばテーブルとして利用することができる。
【0018】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、大腿支持部と上半身支持部とを一体的に回動する回動部をさらに備える。たとえば、車椅子からベッドやトイレなどへの被介護者の移乗の際に、車椅子に座った被介護者が、身体の向きを変えてベッドやトイレの便座に移乗することがある。上記のように構成すれば、ある場所から別の場所に被介護者を回動させて移乗させることができる。
【0019】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、大腿支持部は、折り畳まれた閉状態と、略水平に開いて被介護者の大腿を支持可能な開状態とに変化可能なように構成されている。このように構成すれば、被介護者を移乗しない場合には大腿支持部を閉状態に維持することができるため、被介護者を移乗しない場合において被介護者に対して大腿支持部の接触を抑制することができる。
【0020】
この場合、好ましくは、大腿支持部を閉状態と開状態とに変化させるとともに、大腿支持部を上下方向に移動させる第2駆動部をさらに備える。このように構成すれば、大腿支持部を閉状態と開状態とに変化させる駆動部と、大腿支持部を上下方向に移動させる駆動部との2つの駆動部を設けなくて良いため、部品点数の増加および構造の複雑化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、バランス能力が低下した被介護者を移乗する場合であっても、被介護者を安定的に支持して移乗することが可能な移乗支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態による移乗支援装置と車椅子とを示す模式図である。
図2】一実施形態による大腿支持部が開状態の移乗支援装置の一例を示す模式図である。
図3】一実施形態による大腿支持部が閉状態の移乗支援装置の一例を示す模式図である。
図4】支持面が前方下向きに傾斜した移乗支援装置を示す模式図である。
図5】正面支持部による第2側方支持部の傾斜を説明するための模式図である。
図6】第2駆動部による大腿支持部の開閉および昇降を説明するための模式図である。
図7】一実施形態による移乗支援装置の機能ブロック図である。
図8】一実施形態による移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法の順1を示す模式図である。
図9】一実施形態による移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法の順2を示す模式図である。
図10】一実施形態による移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法の順3を示す模式図である。
図11】一実施形態による移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法の順4を示す模式図である。
図12】一実施形態による移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法の順5を示す模式図である。
図13】一実施形態による移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法の順6を示す模式図である。
図14】一実施形態による移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法の順7を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(移乗支援装置の構成)
図1図7を参照して、一実施形態の移乗支援装置1の構成について説明する。なお、本明細書では、上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とし、下方向をZ2方向とする。また、移乗支援装置1の上半身支持部10における支持部本体11がある前端から正面支持部16がある後端にかけての方向をX方向とし、支持部本体11がある前端に向かう方向をX1方向とし、正面支持部16がある後端に向かう方向をX2方向とする。また、Z方向およびX方向に直交する移乗支援装置1の左右方向(幅方向)をY方向とする。
【0025】
図1に示すように、移乗支援装置1は、一例として、車椅子100に取り付けられている。図1(a)に示すように、移乗支援装置1は、車椅子100を使用する被介護者Pを部屋から別の場所(たとえば、トイレ、風呂または食堂など)に移動させる際、ベッドに座らせた被介護者Pを、被介護者Pの身体を回動させて車椅子100に移乗するための装置である。また、図1(b)に示すように、移乗支援装置1は、車椅子100に座った被介護者Pを、被介護者Pの身体を回動させてベッド(他の例として、トイレの便器、風呂の浴室または食堂の椅子など)に移乗するための装置である。なお、図1では、説明の便宜上、第1駆動部20および第2駆動部40などの図示を省略している。
【0026】
図2に示すように、移乗支援装置1は、上半身支持部10と、第1駆動部20と、大腿支持部30と、第2駆動部40と、フレーム50と、ベース部60とを備えている。図2に示す移乗支援装置1は、大腿支持部30が略水平に開いた開状態にある移乗支援装置1である。なお、図3に示す移乗支援装置1は、大腿支持部30が折り畳まれた閉状態にある移乗支援装置1である。図2では、説明の便宜上、後述する背面支持部17の図示を省略している。図3では、説明の便宜上、大腿支持部30の後述する本体部33、昇降部34、リンク35、背面支持部17、および、第1駆動部20の図示を省略している。
【0027】
(上半身支持部)
図2に示すように、上半身支持部10は、支持部本体11と、側方支持部13と、スライド部14と、接続部15(図4参照)と、正面支持部16と、背面支持部17(図4参照)と、支持部スライド機構18とを含む。上半身支持部10は、大腿支持部30の上方に設けられている。上半身支持部10は、第2フレーム52の上部に接続されている。
【0028】
支持部本体11は、Y方向に延びる平板形状で形成されている。支持部本体11は、上端部に支持面11aを有する。支持面11aは、被介護者P(図1参照)を移載する際に、被介護者Pの上半身の一部が載せられるように構成されている。支持面11aは、弾力性(クッション性)を有する平板状に形成されている。支持面11aは、前方下向きに傾斜可能なように構成されている。ここで、前方下向きとは、たとえば支持面11aの位置が前方に移動するとともに支持面11aの前側が下方に向かって傾斜することを意味する。支持面11aは、ベース部60と略平行な平行状態(図2参照)と、ベース部60に対して前方下向きに傾斜した傾斜状態(図4参照)とに変化可能なように構成されている。平行状態の支持面11aは、たとえばテーブルとしても利用されうる。
【0029】
側方支持部13は、支持部本体11のY方向の両端部からX2方向に延びるように設けられている。側方支持部13は、支持部本体11のY方向の両端部の各々から延びるように一対設けられている。側方支持部13は、X方向に延びる柱状部材により形成されている。一対の側方支持部13の各々は、X1方向側に設けられた第1側方支持部13aと、X2方向側に設けられた第2側方支持部13bとを含む。支持部本体11と、第1側方支持部13aと、第2側方支持部13bとは、X方向に沿って繋がっている。第2側方支持部13b(図4参照)は、第1側方支持部13aに対して後方上向きに傾斜可能なように構成されている。
【0030】
スライド部14は、一対の側方支持部13の各々に一対取り付けられている。スライド部14は、側方支持部13に沿ってスライド移動可能なように構成されている。スライド部14は、X方向にスライド移動可能なように構成されている。一対のスライド部14の各々は、一対の側方支持部13の各々の外周面の一部を覆うように設けられている。
【0031】
図5(c)に示すように、接続部15は、一端がスライド部14の上面に接続され、他端が第2側方支持部13bのX2方向の端部に接続されている。スライド部14のX1方向へのスライド移動に伴って、接続部15の他端に接続された第2側方支持部13bを接続部15によって引っ張ることにより、第2側方支持部13bを後方上向きに傾斜させるように構成されている。接続部15は、たとえば、表面が柔軟な素材により形成されたベルトにより構成されている。また、接続部15は、被介護者P(図1参照)の左右の腋下部に接触した場合に、緩衝材として機能するように構成されている。
【0032】
図4に示すように、正面支持部16は、一対の側方支持部13の間に設けられている。正面支持部16は、背面支持部17のX1方向側に設けられている。正面支持部16は、Y方向に延びる帯形状を有している。正面支持部16の両端部は、一対のスライド部14の各々に接続されている。正面支持部16は、スライド部14のX方向の移動に伴って、一対の側方支持部13の間をX方向に移動可能なように構成されている。正面支持部16が被介護者P(図1参照)の上半身によりX1方向へ押し込まれることにより、スライド部14はX1方向にスライド移動されるとともに、接続部15により第2側方支持部13bは後方上向きに傾斜される。正面支持部16は、たとえば、伸縮しづらい布にクッション性のある弾性体でさらに加工されているもので形成されている。
【0033】
背面支持部17は、一対の側方支持部13の間に設けられている。背面支持部17は、正面支持部16のX2方向側に設けられている。背面支持部17は、Y方向に延びる帯形状を有している。背面支持部17の両端部は、一対の側方支持部13の各々に接続されている。背面支持部17の両端部には、図示しない係合部が設けられている。背面支持部17は、一対の側方支持部13の各々に設けられた図示しない被係合部に係合部を係合させることにより、一対の側方支持部13の各々に脱着可能なように構成されている。背面支持部17は、被介護者P(図1参照)の背面を支持することにより、被介護者Pの後方への転倒を防止するように構成されている。背面支持部17は、たとえば、伸縮しづらい布にクッション性のある弾性体でさらに加工されているもので形成されている。
【0034】
図2に示すように、支持部スライド機構18は、支持部本体11を第2フレーム52に対してX方向にスライド移動可能なように構成されている。そのため、支持部スライド機構18は、支持部本体11、側方支持部13、正面支持部16および背面支持部17(図4参照)を一体的に、第2フレーム52に対してX方向にスライド移動させることができる。支持部スライド機構18により支持部本体11をX方向にスライド移動させることにより、被介護者と、支持部本体11および正面支持部16との間隔を調整することができる。支持部スライド機構18は、支持部本体11の下部側に設けられている。支持部スライド機構18は、たとえば、スライドレールを含む。支持部スライド機構18は、X方向に並ぶ複数の位置に図示しないストッパを含んでいる。支持部スライド機構18は、複数のストッパの各々の位置でスライド移動を停止して位置を固定可能なように構成されている。
【0035】
(正面支持部による第2側方支持部の傾斜)
図5を参照して、正面支持部16による第2側方支持部13bの傾斜について説明する。
【0036】
図5(a)は、正面支持部16が被介護者P(図1参照)によりX1方向へ押し込まれていない状態である。この状態では、スライド部14はX1方向にスライド移動されていない。第2側方支持部13bは重力の作用により後方上向きに傾斜しておらず、第2側方支持部13bの上面は第1側方支持部13aの上面と略同一面を形成している。
【0037】
図5(b)に示すように、正面支持部16が被介護者P(図1参照)の上半身によりX1方向へ押し込まれることにより、スライド部14はX1方向にスライド移動されるとともに、接続部15は第2側方支持部13bの後方端部をX1方向に引っ張る。これにより、第2側方支持部13bは、後方上向きに傾斜される。スライド部14がX1方向にさらにスライド移動されることにより、図5(c)に示すように、第2側方支持部13bは、さらに後方上向きに傾斜される。
【0038】
(第1駆動部)
図3に示すように、第1駆動部20は、上半身支持部10を後述する第1回動軸55周りに回動させるように構成されている。第1駆動部20は、上半身支持部10を第1回動軸55周りに第1回転方向R1に回動することにより支持面11aを前方下向きに傾斜させるように構成されている。第1駆動部20は、第1フレーム51の上端部に設けられている。
【0039】
第1駆動部20は、第1ロッド21と、第1直動アクチュエータ22とを含んでいる。第1ロッド21は、第1直動アクチュエータ22により、第1直動アクチュエータ22から突出する方向(略Z1方向)、または、第1直動アクチュエータ22内に収納される方向(略Z2方向)に直線移動するように構成されている。第1直動アクチュエータ22は、たとえば、駆動源としてのモータの回転駆動力を変換機構により直線駆動力に変換して第1ロッド21を移動させるように構成されている。第1ロッド21は、上半身支持部10の下面に接続されている。
【0040】
(第1駆動部による上半身支持部の傾斜)
図2および図4を参照して、第1駆動部20による上半身支持部10の傾斜について説明する。
【0041】
図2に示す上半身支持部10の支持面11aがベース部60と略平行な平行状態にある場合に、第1直動アクチュエータ22により第1ロッド21が略Z2方向に直線移動されることにより、上半身支持部10は第1回動軸55(図3参照)周りに第1回転方向R1に回動される。これにより、図4に示すように、上半身支持部10の支持面11aは前方下向きに傾斜されるように回動されるとともに、上半身支持部10の支持面11aはベース部60に対して前方下向きに傾斜した傾斜状態となる。傾斜状態において、支持面11aは、たとえば、ベース部60に対して前方下向きに20度程度傾斜される。なお、傾斜状態における傾斜角度は、特に限定されない。
【0042】
また、図4に示す上半身支持部10の支持面11aが傾斜状態にある場合に、第1直動アクチュエータ22により第1ロッド21が略Z1方向に直線移動されることにより、上半身支持部10は第1回動軸55(図3参照)周りに第2回転方向R2に回動される。これにより、図2に示すように、上半身支持部10の支持面11aは後方に移動するとともに前端が上がり後端が下がるように回動されるとともに、上半身支持部10の支持面11aは平行状態となる。
【0043】
(大腿支持部)
図2に示すように、大腿支持部30は、折り畳まれた閉状態(図3参照)と、略水平に開いて被介護者P(図1参照)の大腿を支持可能な開状態とに変化可能なように構成されている。大腿支持部30は、一対の棒状部材31と、クッション部32と、本体部33と、昇降部34と、リンク35とを含んでいる。
【0044】
一対の棒状部材31の各々は、一端が本体部33に対して回動可能に接続されている。一対の棒状部材31は、一端が、それぞれ対応するX方向に延びる第2回動軸36(図6参照)を介して、第2回動軸36周りに回動可能な状態で、本体部33に接続されている。大腿支持部30の閉状態とは、一対の棒状部材31が、第2回動軸36周りに互いに近づく方向に回動されることにより、互いに重なるように畳まれている状態のことである。大腿支持部30の開状態とは、一対の棒状部材31が第2回動軸36周りに互いに離れる方向に回動されることにより、互いが略水平に開いている状態のことである。一対の棒状部材31は、たとえば、金属により形成されている。
【0045】
クッション部32は、一対の棒状部材31の各々の他端側の外周に1つずつ設けられている。クッション部32は、開状態において被介護者P(図1参照)の大腿を支持可能なように構成されている。クッション部32は、開状態において、上端部32aが平坦面を有している。なお、クッション部32は円筒形状であっても良く、クッション部32の形状は特に限定されない。
【0046】
本体部33は、第1フレーム51に上下方向に摺動可能に取り付けられている。本体部33は、一対の棒状部材31の各々の一端が第2回動軸36(図6参照)を介して接続されている。また、本体部33は、本体部33の下端部に接触した昇降部34が上昇することにより、開状態の一対の棒状部材31とともに上昇するように構成されている。また、本体部33は、本体部33の下端部に接触した昇降部34が下降することにより、開状態の一対の棒状部材31とともに下降するように構成されている。
【0047】
昇降部34は、第2駆動部40により昇降するように構成されている。昇降部34には、一対のリンク35が接続されている。昇降部34には、一対のリンク35の各々がX方向に延びる第3回動軸37(図6参照)を介して接続されている。
【0048】
一対のリンク35の各々は、一端が棒状部材31に回動可能に接続され、他端が第3回動軸37(図6参照)を介して昇降部34に接続されている。昇降部34が上昇することにより、一対のリンク35の一端側が外方に開く方向に移動するとともに、一対の棒状部材31が略水平の状態になる。これにより、大腿支持部30は開状態となる。また、昇降部34が下降することにより、一対のリンク35の一端側が内方に閉じる方向に移動するとともに、一対の棒状部材31が畳まれた状態になる。これにより、大腿支持部30は閉状態となる。
【0049】
(第2駆動部)
図2に示すように、第2駆動部40は、大腿支持部30を閉状態(図3参照)と開状態(図2参照)とに変化させるとともに、大腿支持部30を上下方向(図6参照)に移動させるように構成されている。第2駆動部40は、第1フレーム51に設けられている。
【0050】
第2駆動部40は、第2ロッド41と、第2直動アクチュエータ42とを含んでいる。第2ロッド41は、第2直動アクチュエータ42により、第2直動アクチュエータ42から突出する方向(略Z1方向)、または、第2直動アクチュエータ42内に収納される方向(略Z2方向)に直線移動するように構成されている。第2直動アクチュエータ42は、たとえば、駆動源としてのモータの回転駆動力を変換機構により直線駆動力に変換して第2ロッド41を移動させるように構成されている。第2ロッド41は、大腿支持部30の昇降部34の下面に接続されている。
【0051】
(第2駆動部による大腿支持部の開閉および昇降)
図6を参照して、第2駆動部40による大腿支持部30の開閉および昇降について説明する。
【0052】
まず、第2駆動部40による大腿支持部30の閉状態から開状態への状態変化について説明する。図6(a)において、大腿支持部30は閉状態にある。また、昇降部34は本体部33の下端部に接触しておらず、昇降部34は本体部33の下方に位置している状態にある。
【0053】
図6(b)において、第2直動アクチュエータ42により第2ロッド41が略Z1方向に直線移動されることにより、昇降部34は上昇する。昇降部34の上昇によって一対のリンク35の一端側が外方に開く方向に移動することにより、図6(c)に示すように、大腿支持部30は開状態になるとともに、昇降部34は本体部33に接触する。図6(d)に示すように、昇降部34が本体部33に接触した状態でさらに上昇することにより、開状態の本体部33が上昇する。本体部33は、本体部33が第1フレーム51に形成された突当て部38に接触するまで上昇可能なように構成されている。これにより、大腿支持部30の一対の棒状部材31およびクッション部32のZ方向の高さを調整することができる。
【0054】
次に、第2駆動部40による大腿支持部30の開状態から閉状態への状態変化について説明する。なお、大腿支持部30の開状態から閉状態への状態変化では、図6(b)~図6(d)における矢印の向きは逆になる。図6(d)に示すように、第2直動アクチュエータ42により第2ロッド41が略Z2方向に直線移動されることに伴い、昇降部34が本体部33に接触した状態で下降するとともに開状態の本体部33が下降する。図6(c)に示すように、本体部33が第1フレーム51に設けられた突当て部38に接触すると本体部33の下降は規制され、図6(b)に示すように、昇降部34のみが下降するとともに一対のリンク35の一端側が内方に閉じる方向に移動する。そして、図6(a)に示すように、大腿支持部30は閉状態となる。
【0055】
(フレーム)
図2に示すように、フレーム50は、第1回動軸55と、第1フレーム51と、第2フレーム52とを含む。フレーム50は、金属により形成されている。
【0056】
第1回動軸55(図3参照)は、第1フレーム51と第2フレーム52との接続部分に設けられている。第1回動軸55は、略水平に沿った向きに設けられている。第1回動軸55は、開状態の大腿支持部30の一対の棒状部材31と略平行に沿った向きに設けられている。第1回動軸55は、大腿支持部30の近傍に設けられている。第1回動軸55は、支持部本体11から下方に離れた位置に設けられている。支持面11aを有する支持部本体11は、第1回動軸55周りに第1回転方向R1に回動することにより、前方下向きに傾斜可能なように構成されている。また、支持面11aを有する支持部本体11は、第1回動軸55周りに第2回転方向R2に回動することにより、後方に移動するとともに前端が上がり後端が下がるように構成されている。なお、第1回動軸55は、特許請求の範囲の「回動軸」の一例である。
【0057】
第1フレーム51は、ベース部60から立ち上がるように設けられている。一例として、第1フレーム51は、X方向に並ぶ2本の柱部材53と、2本の柱部材53の上端を接続する梁部材54とにより構成されている。第1フレーム51のX2方向の柱部材53には、大腿支持部30および第2駆動部40が設けられている。第1フレーム51の梁部材54のX1方向の上端部には、第1駆動部20が設けられている。
【0058】
第2フレーム52は、第1フレーム51に回動可能なように接続されている。一例として、第2フレーム52の下端部は、第1フレーム51の梁部材54と第1回動軸55を介して回動可能なように接続されている。第2フレーム52の上端部は、支持部スライド機構18と回動不能に接続されている。第2フレーム52は、第1フレーム51から前方上向きに傾斜して延びるように形成されている。
【0059】
(ベース部)
ベース部60には、第1フレーム51が取り付けられている。ベース部60は、回動部61と、取付部62とを含む。
【0060】
回動部61は、フレーム50、大腿支持部30および上半身支持部10と一体的に回動するように構成されている。回動部61は、介護者(不図示)により手動で被介護者P(図1参照)または上半身支持部10の少なくともいずれかに対して回転方向の力を加えることによって回動する。回動部61が、回動中心軸線C周りに回転した場合、大腿支持部30および上半身支持部10は、一体的に回動中心軸線C周りに回動する。
【0061】
取付部62は、ベース部60を車椅子100に着脱可能に取り付けるように構成されている。すなわち、移乗支援装置1と車椅子100とは、取付部62により互いに連結されている。取付部62は、車椅子100の幅方向の両側の一対のフレーム50の各々に対応するように一対設けられている。また、移乗支援装置1は、被介護者Pの体重がベース部60に加えられた状態において、取付部62により接地されるように構成され、被介護者Pの体重がベース部60に加えられていない状態において、取付部62により持ち上げられるように構成されている。取付部62の構成は、特に限定されない。
【0062】
図7に示すように、移乗支援装置1は、さらに、操作入力部70と、制御部71と、傾斜センサ72と、報知部73と、バッテリ74とを備える。制御部71、傾斜センサ72、報知部73およびバッテリ74は、ベース部60上に設けられた筐体75(図2参照)の中に収容されている。
【0063】
操作入力部70(図2参照)は、たとえば、移乗支援装置1を操作するリモコンである。操作入力部70は、上半身支持部10の側面の各々に配置されている。操作入力部70は、被介護者Pの移乗の際、介護者により操作入力される。操作入力部70には、図示しない各種ボタンが設けられている。傾斜ボタンの操作が行われている間、上半身支持部10は、第1回動軸55周りに第1回転方向R1に回動することにより、前方下向きに傾斜される。また、傾斜解除ボタンの操作が行われている間、上半身支持部10は、第1回動軸55周りに第2回転方向R2に回動することにより、後方に移動するとともに前端が上がり後端が下がる。また、開閉状態変化ボタンの操作が行われている間、大腿支持部30は大腿支持部30は上下方向に移動されるとともに閉状態と開状態との間において変化される。
【0064】
制御部71は、第1駆動部20の駆動および第2駆動部40の駆動を制御するように構成されている。また、制御部71は、トルクセンサ76により検知された第1駆動部20のトルク変化量が閾値以下であると判定した場合に、報知部73に警報を報知させる制御を行うように構成されている。
【0065】
制御部71は、第1駆動部20を駆動している間、トルクセンサ76により検出されたトルクを取得し続ける。制御部71は、駆動時間とトルクとの関係からトルク変化量が予め設定された閾値よりも小さいと判定した場合には、被介護者Pの上半身の一部が支持面11aに適切に載せられていないとみなして、報知部73に警報を報知させる。なお、制御部71は、第1駆動部20のトルク変化量を、第1駆動部20の電流値により判定するように構成されていても良い。制御部71は、たとえば、マイコンにより構成される。
【0066】
傾斜センサ72は、移乗支援装置1の傾きを検知するために設けられている。制御部71は、傾斜センサ72により検出された移乗支援装置1の傾きを取得し続ける。制御部71は、被介護者Pの移乗の際に、取得した角度変化が予め設定された閾値よりも大きいと判定した場合には、報知部73に、移乗支援装置1の転倒防止の警報を報知させる。
【0067】
報知部73は、制御部71の制御に基づいて、警報を報知する。報知部73は、たとえば、スピーカである。バッテリ74は、制御部71、第1駆動部20および第2駆動部40などに給電可能なように構成されている。
【0068】
(移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法)
図8図14を参照して、移乗支援装置1を用いた被介護者Pの移乗方法について説明する。ここでは、ベッドに座らせた被介護者Pを、移乗支援装置1を用いて車椅子100に移乗させる方法について説明する。なお、図8図14においては、説明の便宜上、介護者、大腿支持部30の本体部33、昇降部34、リンク35、背面支持部17、第1駆動部20および第2駆動部40などの図示を省略している。
【0069】
図8に示すように、ベッドに座らせた被介護者Pの前に車椅子100に取り付けられた移乗支援装置1を配置する。
【0070】
次に、介護者(図示せず)が、移乗支援装置1を被介護者Pの方向に寄せる。そして、図9に示すように、被介護者Pの両足の太腿の間から閉状態の大腿支持部30を挿入するとともに、被介護者Pの足を移乗支援装置1のベース部60の上に載せる。
【0071】
次に、図10に示すように、介護者(図示せず)は、操作入力部70を操作して、大腿支持部30を上昇させることにより、大腿支持部30を開状態にするとともに、被介護者Pの大腿を大腿支持部30のクッション部32により持上げる。そして、被介護者Pの少なくとも踵がベース部60から浮き上がる状態となるまで大腿支持部30をさらに上昇させる。なお、被介護者Pの足裏全体がベース部60から浮き上がる状態となるまで、大腿支持部30を上昇させても良い。
【0072】
次に、支持部スライド機構18により、支持部本体11、側方支持部13、正面支持部16および背面支持部17(図2参照)を一体的に被介護者P側(X2方向)にスライド移動させる。なお、支持部スライド機構18によるスライド移動は行われなくても良い。この場合、上半身支持部10に支持部スライド機構18は設けられていなくても良い。
【0073】
そして、被介護者Pは、前かがみになって胸部または腹部により正面支持部16を前方に押し込むとともに、支持面11aに胸部を載せるように支持面11aに覆いかぶさる。これにより、第2側方支持部13bは後方上向きに傾斜され、後方上向きに傾斜した第2側方支持部13bは被介護者Pの腋下部または肩甲骨近傍などに接触し、被介護者Pに対して支持面11aへの移動が促される。
【0074】
そして、図11に示すように、介護者は、操作入力部70を操作して、上半身支持部10を第1回動軸55(図8参照)周りに第1回転方向R1に回動させることにより、支持面11aを前方下向きに傾斜させて、支持面11aを傾斜状態にする。
【0075】
支持面11aを前方下向きに傾斜させる際、被介護者Pの少なくとも踵はベース部60から浮いている状態である。踵がベース部60に付いている状態では、被介護者Pの踵に力が入ってベース部60を突っ張ることに起因して、身体が前傾姿勢になりにくくなる。これに対して、被介護者Pの少なくとも踵がベース部60から浮いている状態では、踵によりベース部60を突っ張ることができないため、身体が前傾姿勢になりにくくなることを抑制することができる。また、上半身支持部10は、開状態の大腿支持部30に沿う向きであって、かつ、開状態の大腿支持部30の近傍に設けられた第1回動軸55(図8参照)周りに回転方向R1に回動するように構成されている。そのため、被介護者Pの回転中心を開状態の大腿支持部30に沿った第1回動軸55(図8参照)とすることができる。これらの理由から、支持面11aを前方下向きに傾斜させる際、被介護者Pの姿勢を第1回動軸55(図8参照)周りに回転方向R1に回動させやすい姿勢にすることができる。これにより、被介護者Pの臀部を容易に浮き上がらせて被介護者Pを支持することができる。その結果、被介護者Pの下衣の脱着容易に行うことができるとともに、被介護者Pの身体を容易に回動させてたとえばベッドから車椅子100に移乗させることができる。
【0076】
次に、図12に示すように、介護者は、被介護者Pおよび上半身支持部10の少なくとも一方に対して回転方向の力を加えることによって、回動部61により上半身支持部10、大腿支持部30およびフレーム50を一体的に回動させて、被介護者Pを回動させる。
【0077】
次に、図13に示すように、介護者は、車椅子100の座部の上方に被介護者Pを配置する。そして、図14に示すように、介護者は、操作入力部70を操作して、上半身支持部10を第1回動軸55(図3参照)周りに回転方向R2に回動させることにより、支持面11aが後方に移動するとともに前端が上がり後端が下がることで、支持面11aを平行状態にする。そして、介護者は、操作入力部70を操作して大腿支持部30を下降させるとともに、大腿支持部30を閉状態にする。これにより、被介護者Pの大腿は大腿支持部30と非接触の状態になるとともに、被介護者Pの踵はベース部60に接触した状態になり、被介護者Pは車椅子100に着座した状態になる。以上により、ベッドに座らせた被介護者Pに対する移乗支援装置1を用いた車椅子100への移乗は完了する。
【0078】
なお、車椅子100に座る被介護者Pを、移乗支援装置1を用いてベッドやトイレの便座などに移乗させる方法については、ベッドに座らせた被介護者Pに対する移乗支援装置1を用いた車椅子100への移乗方法と逆の流れであるため、説明を省略する。
【0079】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0080】
本実施形態では、上記のように、大腿支持部30の上方に設けられ、被介護者Pの上半身の一部が載せられる支持面11aを有し、支持面11aを前方下向きに傾斜可能なように構成された上半身支持部10を備える。これにより、被介護者Pの上半身の一部が上半身支持部10の支持面11aに載せられた状態で支持面11aを前方下向きに傾斜させることにより、被介護者Pの上半身が前方下向きに傾斜した状態になることに対応するように、被介護者Pの後側に位置する臀部は上向きに傾斜した(浮いた)状態になる。そのため、たとえば筋力低下に起因してバランス能力が低下した被介護者Pを移乗する場合であっても、被介護者Pは支持面11aに上半身の一部を載せることによって、バランス能力に頼らずに支持面11aにより自身の姿勢を保持することができるとともに、被介護者Pの上半身の一部が載せられた支持面11aを前方下向きに傾斜させることにより、被介護者Pの臀部を容易にかつ安定して持ち上げることができる。したがって、バランス能力が低下した被介護者Pを移乗する場合であっても、被介護者Pを安定的に支持して移乗することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、上半身支持部10は、略水平に沿った向きに設けられた第1回動軸55周りに回動することにより前方下向きに傾斜可能なように構成されている。これにより、上半身支持部10を第1回動軸55周りに回動させることにより上半身支持部10を前方下向きに傾斜させることができるため、被介護者Pの上半身を前方下向きに傾斜させることに対応して、被介護者Pの臀部を確実に持ち上げることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、大腿支持部30が設けられた第1フレーム51と、第1フレーム51に回動可能に接続され、上半身支持部10が設けられた第2フレーム52とをさらに備える。これにより、上半身支持部10を回動させる第1回動軸55を、上半身支持部10から離れた、第1フレーム51と第2フレーム52との接続部分に設けることができるため、回動半径を大きくすることができる。これにより、被介護者Pの上半身をより前方、かつ、より下向きに傾斜させることができるため、被介護者Pの臀部をより確実に持ち上げることができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、第1フレーム51が取り付けられたベース部60をさらに備え、上半身支持部10の支持面11aは、ベース部60と略平行な平行状態と、ベース部60に対して前方下向きに傾斜した傾斜状態とに変化可能なように構成されている。これにより、支持面11aを平行状態から傾斜状態に変化させることに伴って、被介護者Pの上半身の一部が載せられた支持面11aを前方下向きに傾斜させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、上半身支持部10は、支持面11aを有し、左右方向に延びる支持部本体11と、支持部本体11の左右方向の端部の各々から後方に延びる一対の側方支持部13とを含む。これにより、被介護者Pの上半身の一部が載せられた支持面11aを前方下向きに傾斜させた際に、被介護者Pの左右両側を一対の側方支持部13により支持することができるため、被介護者Pをより安定的に支持して移乗することができる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、一対の側方支持部13の各々は、支持部本体11側に設けられた第1側方支持部13aと、第1側方支持部13aの支持部本体11と反対側に設けられ、第1側方支持部13aに対して後方上向きに傾斜可能な第2側方支持部13bとを含む。これにより、被介護者Pは上半身の一部を支持面11aに載せる際に、たとえば被介護者Pの腋下部または肩甲骨近傍などに後方上向きに傾斜された第2側方支持部13bが接触されることにより、接触された被介護者Pの腋下部または肩甲骨近傍などを支持面11a側に移動させることができる。その結果、被介護者Pの上半身の一部を支持面11aに載せやすくすることができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、上半身支持部10は、一対の側方支持部13の間を前後方向に移動可能なように構成された正面支持部16をさらに含み、正面支持部16の前方への移動に伴って、第2側方支持部13bが第1側方支持部13aに対して後方上向きに傾斜するように構成されている。これにより、被介護者Pによる正面支持部16の前方への押込みに応じて第2側方支持部13bを後方上向きに傾斜させることができるため、第2側方支持部13bにより支持部方向への上半身の一部の移動を確実に促すことができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、上半身支持部10を第1回動軸55周りに回動させることにより支持面11aを前方下向きに傾斜させる第1駆動部20をさらに備える。これにより、第1駆動部20を駆動することにより、上半身支持部10を第1回動軸55周りに回動させて支持面11aを前方下向きに確実に傾斜させることができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、第1駆動部20の駆動を制御する制御部71と、警報を報知する報知部73とをさらに備え、制御部71は、第1駆動部20のトルク変化量が閾値以下であると判定した場合に、報知部73に警報を報知させる制御を行う。これにより、トルク変化量が予め設定された閾値よりも小さいと判定した場合には、たとえば、被介護者Pの上半身の一部が支持面11aに適切に載せられていないとみなして、報知部73に警報を報知させることができる。そのため、被介護者Pの上半身の一部が支持面11aに適切に載せられていない場合において、上半身支持部10を回動させることを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、上半身支持部10の支持面11aは、弾力性を有する平板状である。これにより、被介護者Pの上半身を適切に保護することができるとともに、支持面11aをたとえばテーブルとして利用することができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、大腿支持部30と上半身支持部10とを一体的に回動する回動部61をさらに備える。たとえば、車椅子100からベッドやトイレなどへの被介護者Pの移乗の際に、車椅子100に座った被介護者Pが、身体の向きを変えてベッドやトイレの便座に移乗することがある。上記の構成により、ある場所から別の場所に被介護者Pを回動させて移乗させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、大腿支持部30は、折り畳まれた閉状態と、略水平に開いて被介護者Pの大腿を支持可能な開状態とに変化可能なように構成されている。これにより、被介護者Pを移乗しない場合には大腿支持部30を閉状態に維持することができるため、被介護者Pを移乗しない場合において被介護者Pに対して大腿支持部30の接触を抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、大腿支持部30を閉状態と開状態とに変化させるとともに、大腿支持部30を上下方向に移動させる第2駆動部40をさらに備える。これにより、大腿支持部30を閉状態と開状態とに変化させる駆動部と、大腿支持部30を上下方向に移動させる駆動部との2つの駆動部を設けなくて良いため、部品点数の増加および構造の複雑化を抑制することができる。
【0093】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0094】
たとえば、上記実施形態では、移乗支援装置1は車椅子100に取り付けられて使用される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、移乗支援装置1は、車椅子100に取り付けられず、車椅子100とは別個に使用されても良い。
【0095】
また、上記実施形態では、上半身支持部10は略水平に沿った向きに設けられた回動軸周りに回動することにより前方下向きに傾斜する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上半身支持部10を前方下向きに傾斜させることができれば、回動軸は設けられていなくても良い。
【0096】
また、上記実施形態では、大腿支持部30が設けられた第1フレーム51と上半身支持部10が設けられた第2フレーム52との接続部分に第1回動軸55が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1フレーム51と第2フレーム52との接続部分以外の部分に第1回動軸55が設けられていても良い。
【0097】
また、上記実施形態では、第1フレーム51と第2フレーム52とが設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1フレーム51および第2フレーム52のいずれか一方だけが設けられていても良いし、第1フレーム51および第2フレーム52とは別のフレーム50が設けられていても良い。
【0098】
また、上記実施形態では、上半身支持部10の支持面11aは平行状態と傾斜状態とに変化可能なように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、所定の傾斜角度範囲の中で傾斜状態が変化する構成であっても良い。
【0099】
また、上記実施形態では、上半身支持部10は支持部本体11の左右方向の端部の各々から後方に延びる一対の側方支持部13を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、一対の側方支持部13は設けられていなくても良い。
【0100】
また、上記実施形態では、側方支持部13は後方上向きに傾斜可能な第2側方支持部13bを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2側方支持部13bは設けられていなくても良い。
【0101】
また、上記実施形態では、上半身支持部10は正面支持部16を含み、正面支持部16の前方への移動に伴って第2側方支持部13bが後方上向きに傾斜するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。正面支持部16は設けられていなくても良いし、第2側方支持部13bは正面支持部16の前方への移動と連動せずに後方上向きに傾斜するように構成されていても良い。
【0102】
また、上記実施形態では、第1駆動部20および第2駆動部40を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1駆動部20および第2駆動部40のいずれか一方だけが設けられていても良いし、第1駆動部20および第2駆動部40とは別の駆動部が設けられていても良い。
【0103】
また、上記実施形態では、報知部73を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、報知部73は設けられていなくても良い。また、上記実施形態では、傾斜センサ72を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、傾斜センサ72は設けられていなくても良く、移乗支援装置1の傾きを検知する他の検知部が設けられていても良い。
【0104】
また、上記実施形態では、回動部61により大腿支持部30と上半身支持部10とを一体的に回動させることにより、被介護者Pを回動させて移乗させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、大腿支持部30と上半身支持部10とを一体的に回動させずに、被介護者Pを移乗させても良い。
【0105】
また、上記実施形態では、大腿支持部30は閉状態と開状態とに変化可能なように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、大腿支持部30は、閉状態にならず、開状態のままであっても良い。
【0106】
また、上記実施形態では、大腿支持部30は一対のリンク35の一端側が外方に開く方向に移動することにより開状態となる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、大腿支持部30を開状態にする方法は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0107】
1 移乗支援装置
10 上半身支持部
11 支持部本体
11a 支持面
13 側方支持部
13a 第1側方支持部
13b 第2側方支持部
16 正面支持部
20 第1駆動部
30 大腿支持部
40 第2駆動部
50 フレーム
51 第1フレーム
52 第2フレーム
55 第1回動軸
60 ベース部
61 回動部
71 制御部
73 報知部
P 被介護者
図1
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