(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073275
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】移乗支援装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/12 20060101AFI20240522BHJP
A61G 5/14 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A61G7/12
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184385
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】村山 学
(72)【発明者】
【氏名】若林 尚之
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040HH02
4C040JJ03
(57)【要約】
【課題】被介護者の部屋から出て別の場所において移乗支援装置を使用する場合に介護者の作業負担の増大を抑制することが可能な移乗支援装置を提供する。
【解決手段】この移乗支援装置100は、被介護者Crの車椅子200への移乗および被介護者Crの車椅子200から別の場所への移乗の際、被介護者Crを支持する身体支持部1と、身体支持部1が取り付けられ、被介護者Crに近付く第1方向に身体支持部1を移動させるとともに、第1方向とは逆方向の第2方向に身体支持部1を移動させる移動機構2とを備える。移乗支援装置100は、移動機構2が取り付けられ、身体支持部1および移動機構2を一体的に回動する回動部35を含むベース部3と、ベース部3を車椅子200に取り付けるための取付部4とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の車椅子への移乗および前記被介護者の前記車椅子から別の場所への移乗の際、前記被介護者を支持する身体支持部と、
前記身体支持部が取り付けられ、前記被介護者に近付く第1方向に前記身体支持部を移動させるとともに、前記第1方向とは逆方向の第2方向に前記身体支持部を移動させる移動機構と、
前記移動機構が取り付けられ、前記身体支持部および前記移動機構を一体的に回動する回動部を含むベース部と、
前記ベース部を前記車椅子に取り付けるための取付部とを備える、移乗支援装置。
【請求項2】
前記取付部は、
前記ベース部が取り付けられるベース側取付部と、
前記車椅子に取り付けられる車椅子側取付部とを含む、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項3】
前記取付部は、前記車椅子の左右方向の両側の一対のフレームの各々に対応して前記左右方向に一対設けられ、前記左右方向の両側から前記ベース部を支持している、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項4】
前記ベース部は、前記左右方向の両側において前記取付部に支持され、回動可能に配置された前記回動部を有する台座部をさらに含む、請求項3に記載の移乗支援装置。
【請求項5】
前記取付部は、前記車椅子に取り付けられた状態で、前記車椅子が移動する接地面に前記ベース部の下面を近接させた近接位置と、前記接地面から前記ベース部の下面を上方に離隔させた離隔位置とに前記ベース部を移動可能に支持するように構成されている、請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項6】
前記取付部は、
前記近接位置から前記離隔位置に向かって付勢する付勢部材と、
前記車椅子に取り付けられるとともに、前記付勢部材の前記離隔位置側の端部が取り付けられる車椅子側取付部と、
前記ベース部および前記付勢部材の前記近接位置側の端部が取り付けられるベース側取付部とを含み、
前記ベース側取付部は、前記被介護者により加えられる荷重によって前記離隔位置から前記近接位置に向かって移動するとともに、前記被介護者からの荷重が除かれることにより前記付勢部材の付勢力により前記離隔位置に戻るように構成されている、請求項5に記載の移乗支援装置。
【請求項7】
前記取付部は、前記ベース側取付部に一端部が取り付けられるとともに、前記車椅子側取付部に他端部が取り付けられる接続部をさらに含み、
前記接続部は、前記近接位置から前記離隔位置に前記ベース側取付部が移動可能な長さから前記離隔位置から前記近接位置に前記ベース側取付部が移動可能な長さまで伸縮するように構成されている、請求項6に記載の移乗支援装置。
【請求項8】
前記接続部は、複数のリンクまたはスライドレールを有している、請求項7に記載の移乗支援装置。
【請求項9】
前記ベース部に取り付けられ、前記被介護者の足を下から持ち上げて前記離隔位置に位置する前記ベース部の前記回動部まで前記被介護者の足を案内する足導入部をさらに備える、請求項5に記載の移乗支援装置。
【請求項10】
前記足導入部は、
前記被介護者の足が載置されるシートと、
前記接地面に当接した状態で前記車椅子の移動に伴って回転することによって、シートを回転させるシート回転部とを含む、請求項9に記載の移乗支援装置。
【請求項11】
前記ベース側取付部は、前記接地面側の底面に取り付けられ、前記ベース側取付部が前記近接位置に移動した際の滑りを抑制する滑り止め部材をさらに有する、請求項6に記載の移乗支援装置。
【請求項12】
前記取付部は、前記付勢部材とは別個に設けられ、前記離隔位置に移動した状態の前記ベース側取付部の位置を保持する離隔位置保持部をさらに有する、請求項6に記載の移乗支援装置。
【請求項13】
前記移動機構は、
上端部に前記身体支持部が取り付けられるとともに、下端部が前記回動部に取り付けられた柱部と、
前記柱部を前記第1方向に移動させて傾斜させるとともに、前記柱部を前記第2方向に移動させて傾斜させる駆動部とを含む、請求項1に記載の移乗支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移乗支援装置に関し、特に、被介護者を支持する身体支持部を備える移乗支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被介護者を支持する身体支持部を備える移乗支援装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、被介護者を支持する胸部当接部(身体支持部)を備える移乗補助装置(移乗支援装置)が開示されている。この移乗補助装置は、たとえば、車椅子に座った被介護者をトイレの便器に移乗させる際に使用される装置である。移乗補助装置は、部屋から出て別の場所(たとえば、トイレ)に行く際、車椅子とは別個に、介護者により部屋から別の場所に運ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の移乗補助装置では、介護者が移乗補助装置を運ばなければならず、かつ、介護者は、運んできた移乗補助装置を別の場所の床面に設置しなければならないので、被介護者の部屋から出て別の場所において移乗補助装置を使用する場合に介護者の作業負担が過大になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被介護者の部屋から出て別の場所において移乗支援装置を使用する場合に介護者の作業負担の増大を抑制することが可能な移乗支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による移乗支援装置は、被介護者の車椅子への移乗および被介護者の車椅子から別の場所への移乗の際、被介護者を支持する身体支持部と、身体支持部が取り付けられ、被介護者に近付く第1方向に身体支持部を移動させるとともに、第1方向とは逆方向の第2方向に身体支持部を移動させる移動機構と、移動機構が取り付けられ、身体支持部および移動機構を一体的に回動する回動部を含むベース部と、ベース部を車椅子に取り付けるための取付部とを備える。
【0008】
この発明の一の局面による移乗支援装置では、上記のように、ベース部を車椅子に取り付けるための取付部を設ける。これにより、取付部により移乗支援装置を車椅子に取り付けた状態でそのまま車椅子とともに移乗支援装置を移動させることができる。その結果、介護者が移乗支援装置を運ぶ必要が無いので、被介護者の部屋から出て別の場所において移乗支援装置を使用する場合に介護者の作業負担の増大を抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、取付部は、ベース部が取り付けられるベース側取付部と、車椅子に取り付けられる車椅子側取付部とを含む。このように構成すれば、取付部をベース側取付部と車椅子側取付部とに分けることにより、車椅子の形状に合わせて取付部の構造を変更する場合でも、車椅子側取付部の構造を変更するだけで車椅子の形状に合わせた取付部を設けることができるので、車椅子の形状に合わせた取付部の構造の変更箇所の増大を抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、取付部は、車椅子の左右方向の両側の一対のフレームの各々に対応して左右方向に一対設けられ、左右方向の両側からベース部を支持している。このように構成すれば、ベース部を安定して支持することができるので、身体支持部および移動機構も安定して支持することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、ベース部は、左右方向の両側において取付部に支持され、回動可能に配置された回動部を有する台座部をさらに含む。このように構成すれば、取付部により支持される構成と、身体支持部および移動機構を一体的に回動する構成とを分けることにより、ベース部の構造の複雑化を抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、取付部は、車椅子に取り付けられた状態で、車椅子が移動する接地面にベース部の下面を近接させた近接位置と、接地面からベース部の下面を上方に離隔させた離隔位置とにベース部を移動可能に支持するように構成されている。このように構成すれば、取付部を近接位置に移動させることにより、取付部を接地させることができるので、車椅子および取付部を接地させた状態で移乗支援装置を利用した被介護者の移乗作業を行うことができる。その結果、取付部のみを接地させた状態で移乗支援装置を利用した被介護者の移乗作業を行う場合と比較して、接地面積が増大しているので、移乗支援装置を安定させた状態で被介護者の移乗作業を行うことができる。また、取付部を離隔位置に移動させることにより、取付部が接地したままにならないようにすることができるので、車椅子の移動の際、接地した状態の取付部が車椅子の移動を妨げないようにすることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、取付部は、近接位置から離隔位置に向かって付勢する付勢部材と、車椅子に取り付けられるとともに、付勢部材の離隔位置側の端部が取り付けられる車椅子側取付部と、ベース部および付勢部材の近接位置側の端部が取り付けられるベース側取付部とを含み、ベース側取付部は、被介護者により加えられる荷重によって離隔位置から近接位置に向かって移動するとともに、被介護者からの荷重が除かれることにより付勢部材の付勢力により離隔位置に戻るように構成されている。このように構成すれば、被介護者からの荷重を加えるだけでベース側取付部を近接位置に移動させることができるので、ベース側取付部を容易に接地させることができる。また、被介護者からの荷重を変化させるだけでベース側取付部を近接位置および離隔位置のいずれかの適切な位置に移動させることができるので、モータなどの駆動源を用いる場合と比較して、ベース側取付部を近接位置および離隔位置のいずれかの適切な位置に移動させるための構造を簡素化することができる。
【0014】
上記付勢部材を備える移乗支援装置において、好ましくは、取付部は、ベース側取付部に一端部が取り付けられるとともに、車椅子側取付部に他端部が取り付けられる接続部をさらに含み、接続部は、近接位置から離隔位置にベース側取付部が移動可能な長さから離隔位置から近接位置にベース側取付部が移動可能な長さまで伸縮するように構成されている。このように構成すれば、取付部の移動範囲を接続部の伸縮可能な範囲に制限することができるので、取付部の意図しない範囲への移動を抑制することができる。
【0015】
上記接続部を含む取付部を備える移乗支援装置において、好ましくは、接続部は、複数のリンクまたはスライドレールを有している。このように構成すれば、車椅子に移乗支援装置を取り付けるための取付部の構造を比較的簡易な構造で実現することができる。
【0016】
上記取付部が、近接位置と離隔位置とにベース部を移動可能に支持するように構成された移乗支援装置において、好ましくは、ベース部に取り付けられ、被介護者の足を下から持ち上げて離隔位置に位置するベース部の回動部まで被介護者の足を案内する足導入部をさらに備える。このように構成すれば、離隔位置に位置するベース部にまで被介護者が足を上げなくても、足導入部により離隔位置に位置するベース部にまで被介護者の足が案内されるので、被介護者の負担の増加を抑制することができる。
【0017】
上記足導入部を備える移乗支援装置において、好ましくは、足導入部は、被介護者の足が載置されるシートと、接地面に当接した状態で車椅子の移動に伴って回転することによって、シートを回転させるシート回転部とを含む。このように構成すれば、介護者による車椅子の被介護者へ近付ける方向への移動を利用して回転するシート回転部により、シートを移動させることができるので、シートを移動させるためのモータなどの駆動源を設ける必要がない。その結果、足導入部の構造を簡素化することができる。
【0018】
上記ベース側取付部を含む取付部を備える移乗支援装置において、好ましくは、ベース側取付部は、接地面側の底面に取り付けられ、ベース側取付部が近接位置に移動した際の滑りを抑制する滑り止め部材をさらに有する。このように構成すれば、ベース側取付部を接地させた際、接地させたベース側取付部が滑り止め部材により動かないようにすることができるので、移乗支援装置をより安定させた状態で被介護者の移乗作業を行うことができる。
【0019】
上記付勢部材およびベース側取付部を含む取付部を備える移乗支援装置において、好ましくは、取付部は、付勢部材とは別個に設けられ、離隔位置に移動した状態のベース側取付部の位置を保持する離隔位置保持部をさらに有する。このように構成すれば、離隔位置保持部により離隔位置の取付部が意図せずに移動しないようにすることができるので、車椅子の移動の際に意図せず取付部が接地しないようにすることができる。
【0020】
上記一の局面による移乗支援装置において、好ましくは、移動機構は、上端部に身体支持部が取り付けられるとともに、下端部が回動部に取り付けられた柱部と、柱部を第1方向に移動させて傾斜させるとともに、柱部を第2方向に移動させて傾斜させる駆動部とを含む。このように構成すれば、移動機構の構造を柱部および駆動部を含む比較的簡易な構造にすることができるので、移乗支援装置の構造の複雑化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、被介護者の部屋から出て別の場所において移乗支援装置を使用する場合に介護者の作業負担の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の移乗支援装置を取り付けた車椅子を被介護者の位置まで、介護者が押してきた状態を示した側面図である。
【
図2】第1実施形態の移乗支援装置の身体支持部を被介護者に向けて傾斜させた状態を示した側面図である。
【
図3】第1実施形態の移乗支援装置の身体支持部および介護者により被介護者を持ち上げた状態を示した側面図である。
【
図4】第1実施形態の移乗支援装置を示した斜視図である。
【
図5】第1実施形態の移乗支援装置の回動部を介護者が回動させて被介護者を車椅子に向けて回動させた状態を示した側面図である。
【
図6】第1実施形態の移乗支援装置のベース部の平面図である。
【
図7】第1実施形態の移乗支援装置のベース部を支持する一対の取付部を示した斜視図である。
【
図8】第1実施形態の移乗支援装置のベース部を支持する一対の取付部を示した側面図である。
【
図9】第1実施形態の移乗支援装置のベース部が離隔位置に移動した状態を示した側面図である。
【
図10】第1実施形態の移乗支援装置のベース部が近接位置に移動した状態を示した側面図である。
【
図11】第1実施形態の移乗支援装置の離隔位置のベース部を支持する取付部において車椅子のフレームをクランプ部により把持する前の状態を示した斜視図である。
【
図12】第1実施形態の移乗支援装置の離隔位置のベース部を支持する取付部において車椅子のフレームをクランプ部により把持した後の状態を示した斜視図である。
【
図13】第1実施形態の移乗支援装置の近接位置のベース部を支持する取付部を示した斜視図である。
【
図14】第1実施形態の移乗支援装置の足導入部に被介護者が足のつま先を載置した状態を示した側面図である。
【
図15】第1実施形態の移乗支援装置の回動部に介護者の足が案内された状態を示した側面図である。
【
図16】第1実施形態の移乗支援装置の足導入部を示した斜視図である。
【
図17】第1実施形態の移乗支援装置の足導入部の内部構造を示した斜視図である。
【
図18】第1実施形態の移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法を示したフローチャートである。
【
図19】第1実施形態の移乗支援装置により車椅子に移乗した介護者を示した側面図である。
【
図20】第2実施形態の移乗支援装置を取り付けた車椅子を被介護者の位置まで、介護者が押してきた状態を示した側面図である。
【
図21】第2実施形態の移乗支援装置のベース部が離隔位置に移動した状態を示した側面図である。
【
図22】第2実施形態の移乗支援装置のベース部が近接位置に移動した状態を示した側面図である。
【
図23】第2実施形態の移乗支援装置のベース部が離隔位置において離隔位置保持部の保持を解除した状態を示した側面図である。
【
図24】第3実施形態の移乗支援装置を取り付けた車椅子を被介護者の位置まで、介護者が押してきた状態を示した側面図である。
【
図25】第3実施形態の移乗支援装置の離隔位置のベース部を支持する取付部において車椅子のフレームをクランプ部により把持した後の状態を示した斜視図である。
【
図26】第3実施形態の移乗支援装置の近接位置のベース部を支持する取付部を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1~
図18を参照して、第1実施形態の移乗支援装置100の構成について説明する。
【0025】
図1および
図2に示すように、移乗支援装置100は、車椅子200を使用する被介護者Crを部屋から別の場所(たとえば、トイレ、風呂または食堂など)に移動させる際、ベッド300に座らせた被介護者Crを車椅子200に移乗(移す)するための装置である。また、移乗支援装置100は、車椅子200に座った被介護者Crをベッド300(他の例として、トイレの便器、風呂の浴室または食堂の椅子など)に移乗(移す)するための装置でもある。
【0026】
移乗支援装置100は、身体支持部1と、移動機構2と、ベース部3と、取付部4と、足導入部5とを備えている。
【0027】
ここで、上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とし、下方向をZ2方向とする。車椅子200の進行方向をX方向とし、進行方向のうち前進方向をX1方向とし、進行方向のうち後進方向をX2方向とする。Z方向およびX方向に直交する車椅子200の左右方向(幅方向)をY方向とし、Y方向の一方側をY1方向とし、Y方向の他方側をY2方向とする。なお、X1方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例である。また、X2方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。
【0028】
(身体支持部)
図2および
図3に示すように、身体支持部1は、被介護者Crの車椅子200への移乗および被介護者Crの車椅子200から別の場所への移乗の際、被介護者Crを支持するように構成されている。具体的には、身体支持部1は、クッション部11と、取付フレーム12とを含んでいる。
【0029】
図3および
図4に示すように、クッション部11は、身体支持部1にもたれ掛った状態の被介護者Crを支持するために身体支持部1に設けられている、このようなクッション部11は、弾力性を有する部材により構成されている。クッション部11は、身体支持部1にもたれ掛った状態の被介護者Crを支持する際に、被介護者Crの上半身(腋の下辺り)に接触する。これにより、クッション部11が弾力性を有しているので、身体支持部1にもたれ掛った状態の被介護者Crを支持する際、身体支持部1に被介護者Crの体重に起因する体圧を分散させることが可能である。クッション部11は、Y方向において一対設けられている。一対のクッション部11は、被介護者Crの両腋に接触する。
【0030】
取付フレーム12は、一対のクッション部11を移動機構2に取り付けるための部材である。取付フレーム12は、金属製の管部材である。取付フレーム12は、Z1方向側から見て、略W字形状を有している。取付フレーム12のY1方向側のフレーム部分には、一対のクッション部11のうちの一方が取り付けられている。取付フレーム12のY2方向側のフレーム部分には、一対のクッション部11のうちの他方が取り付けられている。
【0031】
(移動機構)
移動機構2は、被介護者Crに近付くX1方向に身体支持部1を移動させるとともに、被介護者Crから離れるX2方向に身体支持部1を移動させるように構成されている。すなわち、移動機構2は、被介護者Crに近付くX1方向に身体支持部1を移動させた後(
図2を参照)、身体支持部1により被介護者Crを支持した状態でX2方向に身体支持部1を移動させることにより、被介護者Crの腰を浮かせるという被介護者Crの動作(
図3を参照)を補助するための機構である。また、移動機構2は、身体支持部1により被介護者Crを支持した状態でX1方向またはX2方向に身体支持部1を移動させることにより、被介護者Crの腰を沈ませるという被介護者Crの動作(
図5を参照)を補助するための機構である。
【0032】
具体的には、移動機構2は、柱部21と、駆動部22とを含んでいる。
【0033】
〈柱部〉
柱部21は、ベース部3のZ1方向側の表面から垂直に延びている。柱部21は、金属製のフレーム部材である。柱部21は、Z1方向側の端部(上端部)に身体支持部1が取り付けられるとともに、Z2方向側の端部(下端部)がベース部3の後述する回動部35に取り付けられている。
【0034】
柱部21は、本体部21aと、一対の接続部21bとを有している。本体部21aは、角柱形状を有している。一対の接続部21bは、柱部21と駆動部22とを接続する部材である。一対の接続部21bは、Y方向において対向している。一対の接続部21bの一方は、本体部21aのY1方向側の端面に取り付けられている。一対の接続部21bの他方は、本体部21aのY2方向側の端面に取り付けられている。一対の接続部21bの各々には、駆動部22と接続するための長孔21cが形成されている。長孔21cは、柱部21の本体部21aの長手方向に延びている。
【0035】
〈駆動部〉
駆動部22は、ロッド22aと、直動アクチュエータ22bと、ロッド22cと、カバー22dとを含んでいる。
【0036】
ロッド22aは、直動アクチュエータ22bにより、カバー22dから突出する方向、または、カバー22d内に収納される方向に直線移動するように構成されている。直動アクチュエータ22bは、たとえば、駆動源としてのモータの回転駆動力を変換機構により直線駆動力に変換してロッド22aを移動させるように構成されている。ロッド22cは、カバー22dからベース部3に向かって延びている。ロッド22cは、駆動部22をベース部3に取り付ける接続部材である。カバー22dは、ロッド22aの一部、直動アクチュエータ22bおよびロッド22cの一部を内部に収納している。
【0037】
(ベース部)
図4および
図5に示すように、ベース部3は、移動機構2、取付部4および足導入部5が取り付けられる部材である。ベース部3は、台座部31と、足置き部32と、受け部33と、受け部34と、回動部35とを含んでいる。
【0038】
台座部31は、Z1方向側から見て、略矩形状に形成された金属製の板材である。台座部31は、Y方向の両側において取付部4を介して車椅子200のフレーム201に支持されている。台座部31には、回動部35を回動可能に配置(収容)する凹部31aが形成されている。足置き部32は、ベース部3の回動部35のZ1方向側(身体支持部1側)の表面のうち、被介護者Crの足が置かれる箇所に設けられている。足置き部32は、被介護者Crの足の滑りを抑制する材質により形成されていることが好ましい。
【0039】
受け部33は、Y方向において一対設けられている。一対の受け部33は、回動部35のZ1方向側(身体支持部1側)の表面のうちのX方向において受け部34とは逆方向側に取り付けられている。一対の受け部33は、柱部21のZ2方向側の端部を回動可能に支持している。受け部34は、Y方向において一対設けられている。一対の受け部34は、回動部35のZ1方向側(身体支持部1側)の表面のうちのX方向において受け部33とは逆方向側に取り付けられている。一対の受け部34には、駆動部22のロッド22cのZ2方向側の端部(ベース部3側の端部)が固定されている。
【0040】
図5および
図6に示すように、回動部35、身体支持部1および移動機構2は、一体的に回動するように構成されている。ここで、回動部35には、移動機構2が取り付けられている。また、回動部35には、移動機構2を介して身体支持部1が取り付けられている。これにより、回動部35は、介護者Cgにより手動で身体支持部1、移動機構2および回動部35の少なくともいずれかに対して回転方向の力を加えることによって回動する。なお、
図6では、回動部35の説明の便宜上、台座部31、足置き部32および回動部35以外の構成を省略している。
【0041】
これらにより、回動部35が、柱部21の延びる方向に沿って延びる回動中心軸線C回りの周方向の一方向であるR1方向に回転した場合、身体支持部1および移動機構2は、一体的にR1方向に回動する。回動部35が、柱部21の延びる方向に沿って延びる回動中心軸線C回りの周方向の一方向であるR2方向に回転した場合、身体支持部1および移動機構2は、一体的にR2方向に回動する。
【0042】
回動部35は、台座部31の凹部31aに回動可能に取り付けられている。回動部35の取り付けの一例としては、以下のような取り付け例が考えられる。すなわち、回動部35は、たとえば、台座部31の凹部31aの底面に設けられた軸部(図示せず)に回動可能に取り付けられている。回動部35は、たとえば、軸部に取り付けられた状態で台座部31の凹部31aに回動可能に嵌め込まれている。軸部は、たとえば、凹部31aの底面において、回動中心軸線Cの位置に合わせて設けられている。
【0043】
(駆動部による柱部の移動)
移乗支援装置100では、駆動部22のロッド22aをカバー22d内に収納する方向に直線移動させることによって、柱部21のZ2方向側の端部が一対の受け部33に回動可能に支持されているとともに、駆動部22のロッド22cのZ2方向側の端部が一対の受け部34に固定されているので、柱部21がX1方向に移動して傾斜する(
図2を参照)。
【0044】
移乗支援装置100では、駆動部22のロッド22aをカバー22d内から突出する方向に直線移動させることによって、柱部21のZ2方向側の端部が一対の受け部33に回動可能に支持されているとともに、駆動部22のロッド22cのZ2方向側の端部が一対の受け部34に固定されているので、柱部21がX2方向に移動して傾斜する(
図3を参照)。
【0045】
移乗支援装置100では、ベッド300に座らせた被介護者Crを車椅子200に移乗(移す)する際、駆動部22により柱部21をX1方向に移動して傾斜させた後、駆動部22により柱部21をX2方向に移動して傾斜させることにより、被介護者Crの腰を上げさせて被介護者Crの体重がベース部3に加えられるようにしている。
【0046】
また、移乗支援装置100では、腰を上げた状態の被介護者Crを車椅子200に移乗(移す)する際、駆動部22により柱部21をX2方向に移動して傾斜させることにより、被介護者Crの腰を車椅子200に下ろさせて被介護者Crからベース部3に加えられる荷重が除かれる。
【0047】
ここで、柱部21および駆動部22を含む移動機構2の上記した移動に伴って被介護者Crを移動させる際、被介護者Crが身体支持部1により支持されている。移動機構2の上記した移動は、図示しないが、介護者Cgによるリモコンの操作に基づいて、駆動部22が駆動することにより行われる。また、柱部21のX1方向側への傾斜具合(傾斜角度)、および、柱部21のX2方向側への傾斜具合(傾斜角度)は、介護者Cgがリモコンによる操作を行いつつ、介護者Cgがリモコンにより駆動部22の駆動を停止させることにより決定される。
【0048】
(取付部)
図7および
図8に示すように、第1実施形態の取付部4は、ベース部3を車椅子200に取り付けるように構成されている。すなわち、移乗支援装置100と車椅子200とは、取付部4により互いに連結されている。この場合、車椅子200と移乗支援装置100とは、Z1方向側から見て、一部においてオーバーラップしている。
【0049】
取付部4は、車椅子200のY方向の両側の一対のフレーム201の各々に対応してY方向に一対設けられている。ここで、フレーム201は、車椅子200のフットレスト202(
図1を参照)を取り付けるための部材である。フレーム201は、Y1方向側から見て、L字状の金属製の管部材である。取付部4は、Y方向の両側からベース部3を支持している。
【0050】
また、移乗支援装置100は、取付部4により、車椅子200とともに一体的に移動可能に構成されている。移乗支援装置100は、取付部4により、車椅子200とともに一体的に接地した状態で、被介護者Crの移乗支援可能に構成されている。
【0051】
具体的には、
図9および
図10に示すように、取付部4は、車椅子200に取り付けられた状態で、車椅子200が移動する接地面6にベース部3の下面3aを近接させた近接位置Dwと、接地面6からベース部3の下面3aをZ1方向に離隔させた離隔位置Upとにベース部3を移動可能に支持するように構成されている。
【0052】
一対の取付部4の構造は同じであるので、一対の取付部4のうちのY1方向側の取付部4のみについて以下に説明する。
【0053】
取付部4は、ベース側取付部41と、車椅子側取付部42と、付勢部材43と、接続部44とを含んでいる。ベース側取付部41、車椅子側取付部42、付勢部材43および接続部44の各々の構造について説明する。
【0054】
〈ベース側取付部〉
図11および
図12に示すように、取付部4では、ベース部3、付勢部材43の近接位置Dw側(Z2方向側)の端部、および、接続部44の近接位置Dw側(Z2方向側)の端部の各々がベース側取付部41に取り付けられている。ベース側取付部41は、X1方向側から見て、L字状の金属製の部材である。
【0055】
また、ベース側取付部41の底面41aには、複数の挿入孔(図示せず)が形成されている。複数の挿入孔の各々には、締結部材(図示せず)が挿入されている。複数の挿入孔は、ざぐり孔となっている。ここで、複数のざぐり孔の各々に挿入された締結部材(図示せず)をベース部3の台座部31のねじ孔に螺合することにより、ベース部3がベース側取付部41に固定されている。これにより、ベース側取付部41の底面41aとは逆側のZ1方向側の面には、ベース部3が取り付けられている。
【0056】
また、ベース側取付部41は、滑り止め部材41bを有している。滑り止め部材41bは、Z2方向側(接地面6側の底面41a)に取り付けられている。滑り止め部材41bは、ベース側取付部41が近接位置Dwに移動した際の滑りを抑制するように構成されている。すなわち、滑り止め部材41bは、ベース側取付部41が近接位置Dwに移動した際のベース側取付部41の接地面6に対する相対的な移動を抑制するように構成されている。滑り止め部材41bは、硬質ゴム、軟質ゴムおよび発泡ゴムを含むエラストマ、発泡樹脂を含む弾性樹脂などの材質により形成されている。また、滑り止め部材41bは、上記したような弾性変形する材質により形成されることにより、滑り止めだけでなく、衝撃吸収および接地面6の保護などの機能も有している。
【0057】
〈車椅子側取付部〉
取付部4では、車椅子側取付部42が車椅子200のフレーム201に取り付けられている。取付部4では、付勢部材43の離隔位置Up側の端部が車椅子側取付部42に取り付けられている。このような車椅子側取付部42は、ベース部42aと、クランプ部42bと、フック部42cとを有している。
【0058】
ベース部42aは、Y1方向側から見て、L字状の金属製の板状部材である。ベース部42aは、車椅子200のフレーム201の形状に合わせて形成されている。ベース部42aのY1方向側の面には、クランプ部42bおよびフック部42cが固定されている。
【0059】
クランプ部42bは、車椅子200のフレーム201のうちZ1方向側に向かってX2方向側に傾斜する部分を把持するように構成されている。これにより、取付部4の水平方向への移動が規制される。
【0060】
具体的には、クランプ部42bは、差し込み部421と、ボルト422とを有している。
【0061】
差し込み部421は、ベース部42aよりもY1方向側に配置されている。このような差し込み部421は、Z1方向側から見て、U字形状を有している。すなわち、差し込み部421は、X1方向側に向かって窪んだ空間を有している。この空間には、車椅子200のフレーム201のうちZ1方向側に向かってX2方向側に傾斜する部分が差し込まれる(
図11を参照)。
【0062】
ボルト422は、差し込み部421のX2方向側の部分を開閉させる。すなわち、介護者Cgが、差し込み部421に車椅子200のフレーム201を差し込んだ後、差し込み部421のX2方向側の部分をボルト422を回して閉じることにより、クランプ部42bにより車椅子200のフレーム201を把持させる。また、介護者Cgが、差し込み部421のX2方向側の部分をボルト422を回して開くことにより、クランプ部42bによる車椅子200のフレーム201の把持を解除する。
【0063】
フック部42cは、ベース部42aよりもY1方向側に配置されている。フック部42cは、ベース部42aよりもY1方向側の位置において、車椅子200のフレーム201のうちX1方向側に向かってZ1方向側に傾斜する部分にZ1方向側から引っ掛かるように構成されている。フック部42cは、X1方向側から見て、J字形状を有している。すなわち、フック部42cは、Z1方向側に向かって窪んだ空間を有している。この空間には、車椅子200のフレーム201のうちX1方向側に向かってZ1方向側に傾斜する部分が差し込まれる(
図12を参照)。これにより、取付部4のZ2方向(下方向)への移動が規制される。
【0064】
このような構造の車椅子側取付部42は、車椅子200のY方向の両側の一対のフレーム201(
図8を参照)にそれぞれ取り付けられている。
【0065】
〈付勢部材〉
図12および
図13に示すように、付勢部材43は、近接位置Dwから離隔位置Upに向かって付勢するように構成されている。これにより、ベース側取付部41は、被介護者Crにより加えられる荷重Lwによって離隔位置Upから近接位置Dwに向かって移動するとともに、被介護者Crからの荷重Lwが除かれることにより付勢部材43の付勢力により離隔位置Upに戻るように構成されている。
【0066】
具体的には、付勢部材43は、引っ張りバネである。付勢部材43の近接位置Dw側(Z2方向側)の端部は、ベース側取付部41のX2方向側の面に取り付けられている。付勢部材43の離隔位置Up側(Z1方向側)の端部は、車椅子側取付部42のベース部42aのZ2方向側の端部に取り付けられている。
【0067】
また、付勢部材43は、一対の取付部4の各々に設けられている。したがって、2つの付勢部材43の付勢力は、身体支持部1、移動機構2、ベース部3および足導入部5の各々を離隔位置Upに保持することが可能な力である。また、2つの付勢部材43の付勢力は、身体支持部1、移動機構2、ベース部3および足導入部5の各々の重量に、被介護者Crによる荷重Lwが加えられることにより、ベース部3を近接位置Dw側に下降させることが可能な力である。
【0068】
〈接続部〉
接続部44は、ベース側取付部41と車椅子側取付部42とを接続している。接続部44は、ベース側取付部41に一端部(Z2方向側の端部)が取り付けられるとともに、車椅子側取付部42に他端部(Z1方向側の端部)が取り付けられている。接続部44は、第1リンク部材44aと、第2リンク部材44bとを有している。第1リンク部材44aおよび第2リンク部材44bの各々は、複数(2つ)のリンクにより構成されている。なお、第1リンク部材44aおよび第2リンク部材44bの各々は、特許請求の範囲の「リンク」の一例である。
【0069】
第1リンク部材44aでは、Z2方向側のリンクがベース側取付部41のY1方向側の面にピンPnにより連結されている。第1リンク部材44aでは、Z1方向側のリンクが車椅子側取付部42のY2方向側の面にピンPnにより連結されている。第1リンク部材44aでは、Z1方向側のリンクとZ2方向側のリンクとがピンPnにより連結されている。第1リンク部材44aの構造と第2リンク部材44bの構造とは同じであるので、第2リンク部材44bの構造に関する説明は省略する。
【0070】
接続部44は、近接位置Dwから離隔位置Upにベース側取付部41が移動可能な長さから離隔位置Upから近接位置Dwにベース側取付部41が移動可能な長さまで伸縮するように構成されている。
【0071】
具体的には、第1リンク部材44aは、近接位置Dwから離隔位置Upにベース側取付部41が移動可能な長さL1(
図12を参照)から離隔位置Upから近接位置Dwにベース側取付部41が移動可能な長さL2(
図13を参照)まで伸縮するように構成されている。また、第2リンク部材44bは、近接位置Dwから離隔位置Upにベース側取付部41が移動可能な長さL3(
図12を参照)から離隔位置Upから近接位置Dwにベース側取付部41が移動可能な長さL4(
図13を参照)まで伸縮するように構成されている。
【0072】
(足導入部)
図14および
図15に示すように、足導入部5は、被介護者Crの足を下から持ち上げて離隔位置Upに位置するベース部3の回動部35まで被介護者Crの足を案内するように構成されている。すなわち、足導入部5は、介護者Cgによる車椅子200の被介護者Crへ近付ける方向(X1方向)への移動を利用して、足導入部5の端部に載置された被介護者Crの足を回動部35まで案内するように構成されている。ここで、被介護者Crの足を下から持ち上げた状態とは、
図14において符号「Es」で示した点線の部分である。
【0073】
具体的には、
図16および
図17に示すように、足導入部5は、シート51と、シート回転部52と、一対のサイドガイド部53と、コネクタ部(図示せず)とを含んでいる。
【0074】
シート51は、被介護者Crの足が載置される載置部材である。シート51は、載置された被介護者Crの足が滑らない程度の摩擦抵抗を付与した部材であることがより好ましい。なお、シート51は、キャンバス生地などの厚手の張りのある布地であってもよいし、樹脂シートなどであってもよい。シート51は、環状に形成されている。また、シート51は、無端のコンベアベルトのように、シート回転部52に所定の貼り具合で取り付けられている。
【0075】
シート回転部52は、接地面6に当接した状態で車椅子200の移動に伴って回転することによって、シート51を回転させるように構成されている。これにより、車椅子200のX1方向への移動速度と略同じ速度でシート51を回転させることができる。この場合、車椅子200のX1方向への移動速度と略同じ速度でシート51上の被介護者Crの足を移動させることができるので、
図14に示すように、車椅子200のX1方向への移動に起因して被介護者Crの足がX1方向へ押し込まれないようにすることができる。
【0076】
具体的には、シート回転部52は、駆動ローラ52aと、押さえローラ52bと、第1従動ローラ52cと、第2従動ローラ52dとを有している。駆動ローラ52a、押さえローラ52b、第1従動ローラ52c、および、第2従動ローラ52dの各々は、金属製のローラである。駆動ローラ52a、押さえローラ52b、第1従動ローラ52c、および、第2従動ローラ52dの各々の周面には、シート51および接地面6との滑りを抑制するために摩擦抵抗を高める加工が施されていることが好ましい。なお、駆動ローラ52a、押さえローラ52b、第1従動ローラ52c、および、第2従動ローラ52dの各々の周面には、シート51および接地面6との滑りを抑制するために摩擦抵抗を高める加工が施されていなくてもよい。
【0077】
駆動ローラ52a、押さえローラ52b、第1従動ローラ52c、および、第2従動ローラ52dの各々のY1方向側の端部は、一対のサイドガイド部53のうちのY1方向側のサイドガイド部53に回転可能に取り付けられている。駆動ローラ52a、押さえローラ52b、第1従動ローラ52c、および、第2従動ローラ52dの各々のY2方向側の端部は、一対のサイドガイド部53のうちのY2方向側のサイドガイド部53に回転可能に取り付けられている。
【0078】
駆動ローラ52aは、Z2方向側の部分において接地面6と当接するとともに、Z1方向側の部分において押さえローラ52bとともにシート51を挟持するように構成されている。押さえローラ52bは、シート51を駆動ローラ52aのZ2方向側の部分に向かって押さえている。第1従動ローラ52c、および、第2従動ローラ52dの各々は、シート51の移動に伴って回転するように構成されている。第1従動ローラ52cは、一対のサイドガイド部53のX1方向側の端部に配置されている。第2従動ローラ52dは、一対のサイドガイド部53のX2方向側の端部に配置されている。
【0079】
これらにより、車椅子200のX1方向への移動に伴って駆動ローラ52aがR51方向に回転することにより、押さえローラ52bとともにシート51がL51方向に向かって移動する。また、車椅子200のX2方向への移動に伴って駆動ローラ52aがR52方向に回転することにより、押さえローラ52bとともにシート51がL52方向に向かって移動する。この際、第1従動ローラ52c、および、第2従動ローラ52dの各々は、シート51の移動に伴って回転する。
【0080】
一対のサイドガイド部53は、シート51上の被介護者Crの足がシート51外に出ないようにガイドする部材である。一対のサイドガイド部53の各々は、金属製の薄板形状を有している。一対のサイドガイド部53の各々は、シート51のZ1方向側の面よりもZ1方向側まで突出している。一対のサイドガイド部53のうちのY1方向側のサイドガイド部53は、シート51のY1方向側の端部よりもY1方向側に配置されている。一対のサイドガイド部53のうちのY2方向側のサイドガイド部53は、シート51のY2方向側の端部よりもY2方向側に配置されている。
【0081】
コネクタ部は、足導入部5をベース部3に着脱可能に取り付けている。また、コネクタ部は、Y方向に延びる回動中心軸線回りの周方向に回動可能な状態で、足導入部5をベース部3に取り付けるように構成されている。これにより、足導入部5を使用しない場合、足導入部5をベース部3から取り外すか、または、足導入部5のX1方向側の端部をZ1方向側に回動させて接地面6に接地しないようにするかを、介護者Cgが選択することができる。また、足導入部5を使用する場合、足導入部5をベース部3に取り付けるか、または、足導入部5のX1方向側の端部をZ2方向側に回動させて接地面6に接地させることにより、被介護者Crが足導入部5を利用することができる。また、被介護者Crが荷重Lwを加えてベース部3を近接位置Dw側に下降させた際、ベース部3の下降とともに、足導入部5のX2方向側の端部が接地面6よりもZ1方向側に離隔した位置(
図14を参照)から接地面6に接地する位置(
図15を参照)まで下降する。
【0082】
(移乗支援装置を用いた被介護者の移乗方法)
図18を参照して、上記した移乗支援装置100を用いた被介護者Crの移乗方法について以下に説明する。
【0083】
図18に示すように、ステップS1において、介護者Cgは、移乗支援装置100が取り付けられた車椅子200を被介護者Crのいる場所まで車椅子200を押してきた後、車椅子200と被介護者Crとを向かい合わせた状態で車椅子200を停止させる(
図1を参照)。ステップS2において、介護者Cgは、足導入部5を回動させて接地面6に接地させた後、被介護者Crの足のつま先部分を足導入部5に乗せる(載置する)(
図14を参照)。ステップS3において、介護者Cgは、車椅子200を被介護者Crに向かって移動させる(
図14を参照)。これにより、被介護者Crの足は、足導入部5により移乗支援装置100の回動部35にガイドされる(
図15を参照)。
【0084】
ステップS4において、被介護者Crは、荷重Lwを回動部35に加えてベース部3を接地面6の近傍の位置である近接位置Dwに下降させる(
図15を参照)。ステップS5において、介護者Cgは、リモコンを操作することにより、身体支持部1を被介護者Cr側に傾斜させる(
図2を参照)。ステップS6において、介護者Cgは、リモコンを操作することにより、身体支持部1を車椅子200側に傾斜させる(
図3を参照)。これにより、被介護者Crの腰が上がるとともに、ベース部3に被介護者Crの体重が加えられるので、ベース部3が近接位置Dwに完全に下降する。ステップS7において、介護者Cgは、身体支持部1に対して回転方向に力を加えることにより被介護者Crを適切な位置(車椅子200の位置)まで回動させる(
図5を参照)。
【0085】
ステップS8において、介護者Cgは、身体支持部1を車椅子200の位置まで回動させた後、リモコンを操作することにより、身体支持部1を車椅子200側に傾斜させる。これにより、被介護者Crが車椅子200に着座する。ステップS9において、被介護者Crは、荷重Lwを回動部35に加えないようにしてベース部3を離隔位置Upに上昇させる(
図19を参照)。ステップS10において、介護者Cgは、足導入部5をZ1方向側に回動させて折り畳んだ後、車椅子200を目的地(たとえば、トイレまたは食堂など)まで移動する。ステップS10の後、移乗支援装置100を用いた被介護者Crの移乗方法が終了する。
【0086】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0087】
第1実施形態では、上記のように、移乗支援装置100は、ベース部3を車椅子200に取り付けるための取付部4を備えている。これにより、取付部4により移乗支援装置100を車椅子200に取り付けた状態でそのまま車椅子200とともに移乗支援装置100を移動させることができる。この結果、介護者Cgが移乗支援装置100を運ぶ必要が無いので、被介護者Crの部屋から出て別の場所において移乗支援装置100を使用する場合に介護者Cgの作業負担の増大を抑制することができる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、取付部4は、ベース部3が取り付けられるベース側取付部41と、車椅子200に取り付けられる車椅子側取付部42とを含んでいる。これにより、取付部4をベース側取付部41と車椅子側取付部42とに分けることにより、車椅子200の形状に合わせて取付部4の構造を変更する場合でも、車椅子側取付部42の構造を変更するだけで車椅子200の形状に合わせた取付部4を設けることができるので、車椅子200の形状に合わせた取付部4の構造の変更箇所の増大を抑制することができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、取付部4は、車椅子200のY方向の両側の一対のフレーム201の各々に対応してY方向に一対設けられ、Y方向の両側からベース部3を支持している。これにより、ベース部3を安定して支持することができるので、身体支持部1および移動機構2も安定して支持することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、ベース部3は、Y方向(左右方向)の両側において取付部4に支持され、回動可能に配置された回動部35を有する台座部31を含んでいる。これにより、取付部4により支持される構成と、身体支持部1および移動機構2を一体的に回動する構成とを分けることにより、ベース部3の構造の複雑化を抑制することができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、取付部4は、車椅子200に取り付けられた状態で、車椅子200が移動する接地面6にベース部3の下面3aを近接させた近接位置Dwと、接地面6からベース部3の下面3aを上方に離隔させた離隔位置Upとにベース部3を移動可能に支持するように構成されている。これにより、取付部4を近接位置Dwに移動させることにより、取付部4を接地させることができるので、車椅子200および取付部4を接地させた状態で移乗支援装置100を利用した被介護者Crの移乗作業を行うことができる。この結果、取付部4のみを接地させた状態で移乗支援装置100を利用した被介護者Crの移乗作業を行う場合と比較して、接地面積が増大しているので、移乗支援装置100を安定させた状態で被介護者Crの移乗作業を行うことができる。また、取付部4を離隔位置Upに移動させることにより、取付部4が接地したままにならないようにすることができるので、車椅子200の移動の際、接地した状態の取付部4が車椅子200の移動を妨げないようにすることができる。
【0092】
また、第1実施形態では、上記のように、取付部4は、近接位置Dwから離隔位置Upに向かって付勢する付勢部材43を含んでいる。取付部4は、車椅子200に取り付けられるとともに、付勢部材43の離隔位置Up側の端部が取り付けられる車椅子側取付部42を含んでいる。取付部4は、ベース部3および付勢部材43の近接位置Dw側の端部が取り付けられるベース側取付部41を含んでいる。ベース側取付部41は、被介護者Crにより加えられる荷重Lwによって離隔位置Upから近接位置Dwに向かって移動するとともに、被介護者Crからの荷重Lwが除かれることにより付勢部材43の付勢力により離隔位置Upに戻るように構成されている。これにより、被介護者Crからの荷重Lwを加えるだけでベース側取付部41を近接位置Dwに移動させることができるので、ベース側取付部41を容易に接地させることができる。また、被介護者Crからの荷重Lwを変化させるだけでベース側取付部41を近接位置Dwおよび離隔位置Upのいずれかの適切な位置に移動させることができるので、モータなどの駆動源を用いる場合と比較して、ベース側取付部41を近接位置Dwおよび離隔位置Upのいずれかの適切な位置に移動させるための構造を簡素化することができる。
【0093】
また、第1実施形態では、上記のように、取付部4は、ベース側取付部41に一端部が取り付けられるとともに、車椅子側取付部42に他端部が取り付けられる接続部44を含んでいる。接続部44は、近接位置Dwから離隔位置Upにベース側取付部41が移動可能な長さから離隔位置Upから近接位置Dwにベース側取付部41が移動可能な長さまで伸縮するように構成されている。これにより、取付部4の移動範囲を接続部44の伸縮可能な範囲に制限することができるので、取付部4の意図しない範囲への移動を抑制することができる。
【0094】
また、第1実施形態では、上記のように、接続部44は、第1リンク部材44aおよび第2リンク部材44b(複数のリンク)を有している。これにより、車椅子200に移乗支援装置100を取り付けるための取付部4の構造を比較的簡易な構造で実現することができる。
【0095】
また、第1実施形態では、上記のように、移乗支援装置100は、ベース部3に取り付けられ、被介護者Crの足を下から持ち上げて離隔位置Upに位置するベース部3の回動部35まで被介護者Crの足を案内する足導入部5を備えている。これにより、離隔位置Upに位置するベース部3にまで被介護者Crが足を上げなくても、足導入部5により離隔位置Upに位置するベース部3にまで被介護者Crの足が案内されるので、被介護者Crにかかる負担の増加を抑制することができる。
【0096】
また、第1実施形態では、上記のように、足導入部5は、被介護者Crの足が載置されるシート51を含んでいる。足導入部5は、接地面6に当接した状態で車椅子200の移動に伴って回転することによって、シート51を回転させるシート回転部52を含んでいる。これにより、介護者Cgによる車椅子200の被介護者Crへ近付ける方向への移動を利用して回転するシート回転部52により、シート51を移動させることができるので、シート51を移動させるためのモータなどの駆動源を設ける必要がない。この結果、足導入部5の構造を簡素化することができる。また、介護者Cgによる車椅子200の被介護者Crへ近付ける方向への移動を利用して回転するシート回転部52により、シート51を車椅子200の速度と略同じ速度で移動させることができるので、シート51に載置された被介護者Crの足もベース側に向かって車椅子200の速度と略同じ速度で移動させることができる。この結果、車椅子200の移動に起因して被介護者Crの足をベース部3とは逆側に移動しないようにしつつ持ち上げることができる。
【0097】
また、第1実施形態では、上記のように、ベース側取付部41は、接地面6側の底面41aに取り付けられ、ベース側取付部41が近接位置Dwに移動した際の滑りを抑制する滑り止め部材41bを有している。これにより、ベース側取付部41を接地させた際、接地させたベース側取付部41が滑り止め部材41bにより動かないようにすることができるので、移乗支援装置100をより安定させた状態で被介護者Crの移乗作業を行うことができる。
【0098】
また、第1実施形態では、上記のように、移動機構2は、上端部に身体支持部1が取り付けられるとともに、下端部が回動部35に取り付けられた柱部21を含んでいる。移動機構2は、柱部21をX1方向に移動させて傾斜させるとともに、柱部21をX2方向に移動させて傾斜させる駆動部22を含んでいる。これにより、移動機構2の構造を柱部21および駆動部22を含む比較的簡易な構造にすることができるので、移乗支援装置100の構造の複雑化を抑制することができる。
【0099】
また、第1実施形態では、上記のように、移乗支援装置100は、ベース部3を車椅子200に取り付けるための取付部4を備えている。これにより、取付部4により移乗支援装置100を車椅子200に取り付けた状態でそのまま車椅子200とともに移乗支援装置100を移動させることができる。この結果、移乗支援装置100による移乗作業のための準備および移乗支援装置100の収納作業が煩雑にならないので、移乗支援装置100の利便性を向上させることができる。この結果、移乗支援装置100を使用するユーザの負担を軽減することができるので、ユーザにより移乗支援装置100を長期的に継続して使用されやすくなる。
【0100】
また、第1実施形態では、上記のように、ベース側取付部41は、被介護者Crにより加えられる荷重Lwによって離隔位置Upから近接位置Dwに向かって移動するとともに、被介護者Crからの荷重Lwが除かれることにより付勢部材43の付勢力により離隔位置Upに戻るように構成されている。これにより、被介護者Crからの荷重をベース側取付部41に加えた状態で取付部4を接地させることができるので、取付部4を安定した状態で接地させることができる。この結果、被介護者Crの移乗作業を安全に行うことができる。
【0101】
また、第1実施形態では、上記のように、移乗支援装置100は、ベース部3を車椅子200に取り付けるための取付部4を備えている。これにより、取付部4を取り外すことにより、車椅子200を折り畳むことができるので、車椅子200をコンパクトにした状態で車椅子200を収納スペースに収納することができる。
【0102】
また、第1実施形態では、上記のように、車椅子200と移乗支援装置100とは、Z1方向側から見て、一部においてオーバーラップしている。これにより、取付部4により移乗支援装置100を車椅子200に取り付けた状態でそのまま車椅子200とともに収納した場合、移乗支援装置100を使用することに起因して収納スペースが増大しないようにすることができる。
【0103】
[第2実施形態]
図20~
図23を参照して、第2実施形態による移乗支援装置500の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、ベース部3が、離隔位置Upにおいて離隔位置保持部545により保持される。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0104】
図20に示すように、第2実施形態の移乗支援装置500は、身体支持部1と、移動機構2と、ベース部3と、取付部504と、足導入部5とを備えている。
【0105】
ここで、上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とし、下方向をZ2方向とする。車椅子200の進行方向をX方向とし、進行方向のうち前進方向をX1方向とし、進行方向のうち後進方向をX2方向とする。Z方向およびX方向に直交する車椅子200の左右方向(幅方向)をY方向とし、Y方向の一方側をY1方向とし、Y方向の他方側をY2方向とする。なお、X1方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例である。また、X2方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。
【0106】
(取付部)
図21~
図23に示すように、取付部504は、ベース部3を車椅子200に取り付けるように構成されている。なお、
図21~
図23では、取付部504以外の構成に関しては、取付部4の説明の便宜上、二点鎖線により表示している。
【0107】
図21および
図22に示すように、取付部504は、車椅子200に取り付けられた状態で、車椅子200が移動する接地面6にベース部3の下面3aを近接させた近接位置Dwと、接地面6からベース部3の下面3aをZ1方向に離隔させた離隔位置Upとにベース部3を移動可能に支持するように構成されている。
【0108】
また、第2実施形態の取付部504は、車椅子200に取り付けられた状態で、離隔位置Upに移動した状態のベース部3の位置を保持するように構成されている。
【0109】
取付部504は、ベース側取付部41と、車椅子側取付部42と、付勢部材43と、接続部44と、離隔位置保持部545とを含んでいる。ベース側取付部41、車椅子側取付部42、付勢部材43および接続部44の各々の構造については、第1実施形態の構造と同じなので説明を省略する。以下に、離隔位置保持部545について説明する。
【0110】
〈離隔位置保持部〉
離隔位置保持部545は、付勢部材43とは別個に設けられ、離隔位置Upに移動した状態のベース側取付部41の位置を保持するように構成されている。離隔位置保持部545は、ラッチ機構である。これにより、離隔位置保持部545により離隔位置Upに移動した状態のベース側取付部41の位置が保持されるので、ベース部3の位置が離隔位置Upに保持される。
【0111】
離隔位置保持部545は、被係合部545aと、係合部545bと、被付勢部545cと、付勢部545dと、ストッパ部545eとを含んでいる。
【0112】
被係合部545aは、車椅子側取付部42のベース部42aのX2方向側の端部からX1方向側に窪んだ溝である。係合部545bは、被係合部545aに係合する掛け金である。係合部545bは、Z2方向側の端部を中心として、Y方向に延びる回動中心軸線回りに回動可能に構成されている。被付勢部545cは、係合部545bと一体的に設けられている。被付勢部545cは、付勢部545dによりZ2方向側に付勢されている。付勢部545dは、引っ張りバネである。付勢部545dのZ1方向側の端部は、被付勢部545cに取り付けられている。付勢部545dのZ2方向側の端部は、ベース側取付部41に取り付けられている。ここで、係合部545bは、付勢部545dにより被付勢部545cがZ2方向側に付勢された場合、X1方向側に向かって回動する。ストッパ部545eは、X1方向側に向かう係合部545bの回動を止めるように構成されている。ストッパ部545eは、係合部545bとともにX1方向側に向かって回動する被付勢部545cと当接することにより、X1方向側に向かう係合部545bの回動を止めている。
【0113】
図21に示すように、ベース側取付部41は、被係合部545aと係合部545bとが係合することによって、離隔位置Upに保持される。また、
図22および
図23に示すように、ベース側取付部41は、被係合部545aと係合部545bとの係合を介護者Cgが手動で解除することによって、近接位置Dwに向かって移動可能になる。そして、ベース側取付部41は、係合部545bと被係合部545aとの係合を解除した状態で、被介護者Crによる荷重Lwが加えられることによって、近接位置Dwに下降する。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態の構成と同様である。
【0114】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、移乗支援装置500は、ベース部3を車椅子200に取り付けるための取付部504を備えている。これにより、被介護者Crの部屋から出て別の場所において移乗支援装置500を使用する場合に介護者Cgの作業負担の増大を抑制することができる。
【0115】
また、第2実施形態では、上記のように、取付部504は、付勢部材43とは別個に設けられ、離隔位置Upに移動した状態のベース側取付部41の位置を保持する離隔位置保持部545を有している。これにより、離隔位置保持部545により離隔位置Upの取付部504が意図せずに移動しないようにすることができるので、車椅子200の移動の際に意図せず取付部504が接地しないようにすることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0116】
[第3実施形態]
図24~
図26を参照して、第3実施形態による移乗支援装置600の構成について説明する。第3実施形態では、第1実施形態とは異なり、接続部644が、スライドレール644a(644b)である。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0117】
図24に示すように、第3実施形態の移乗支援装置600は、身体支持部1と、移動機構2と、ベース部3と、取付部604と、足導入部5とを備えている。
【0118】
ここで、上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とし、下方向をZ2方向とする。車椅子200の進行方向をX方向とし、進行方向のうち前進方向をX1方向とし、進行方向のうち後進方向をX2方向とする。Z方向およびX方向に直交する車椅子200の左右方向(幅方向)をY方向とし、Y方向の一方側をY1方向とし、Y方向の他方側をY2方向とする。なお、X1方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例である。また、X2方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。
【0119】
(取付部)
図25および
図26に示すように、取付部604は、ベース部3を車椅子200に取り付けるように構成されている。取付部604は、車椅子200に取り付けられた状態で、車椅子200が移動する接地面6にベース部3の下面3aを近接させた近接位置Dwと、接地面6からベース部3の下面3aをZ1方向に離隔させた離隔位置Upとにベース部3を移動可能に支持するように構成されている。
【0120】
具体的には、第3実施形態の取付部4は、ベース側取付部41と、車椅子側取付部42と、付勢部材43と、接続部644とを含んでいる。ベース側取付部41、車椅子側取付部42および付勢部材43の各々の構造については、第1実施形態の構造と同じなので説明を省略する。以下に、接続部644について説明する。
【0121】
〈接続部〉
接続部644は、ベース側取付部41と車椅子側取付部42とを接続している。接続部44は、ベース側取付部41に一端部(Z2方向側の端部)が取り付けられるとともに、車椅子側取付部42に他端部(Z1方向側の端部)が取り付けられている。接続部644は、スライドレール644aと、スライドレール644bとを有している。
【0122】
スライドレール644aでは、Z2方向側の端部がベース側取付部41のY1方向側の面に固定されている。スライドレール644aでは、Z1方向側の端部が車椅子側取付部42のY2方向側の面に固定されている。スライドレール644bでは、Z2方向側の端部がベース側取付部41のY1方向側の面に固定されている。スライドレール644bでは、Z1方向側の端部が車椅子側取付部42のY2方向側の面に固定されている。スライドレール644bは、スライドレール644aのX1方向側に配置されている。
【0123】
接続部44は、近接位置Dwから離隔位置Upにベース側取付部41が移動可能な長さから離隔位置Upから近接位置Dwにベース側取付部41が移動可能な長さまで伸縮するように構成されている。
【0124】
具体的には、スライドレール644aは、近接位置Dwから離隔位置Upにベース側取付部41が移動可能な長さL1から離隔位置Upから近接位置Dwにベース側取付部41が移動可能な長さL2まで伸縮するように構成されている。また、スライドレール644bは、近接位置Dwから離隔位置Upにベース側取付部41が移動可能な長さL3から離隔位置Upから近接位置Dwにベース側取付部41が移動可能な長さL4まで伸縮するように構成されている。なお、第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0125】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、移乗支援装置600は、ベース部3を車椅子200に取り付けるための取付部604を備えている。これにより、被介護者Crの部屋から出て別の場所において移乗支援装置600を使用する場合に介護者Cgの作業負担の増大を抑制することができる。
【0126】
また、第3実施形態では、上記のように、接続部644は、スライドレール644aおよびスライドレール644bを有している。これにより、車椅子200に移乗支援装置600を取り付けるための取付部604の構造を比較的簡易な構造で実現することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0127】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0128】
たとえば、上記第1~3実施形態では、介護者Cgが、差し込み部421に車椅子200のフレーム201を差し込んだ後、差し込み部421のX2方向側の部分をボルト422を回して閉じることにより、クランプ部42bにより車椅子200のフレーム201を把持させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クランプ部は、油圧式のクランプまたは電磁式のクランプであってもよい。
【0129】
また、上記第1~第3実施形態では、車椅子側取付部42は、クランプ部42bおよびフック部42cにより車椅子200のフレーム201に取り付けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、車椅子側取付部は、クランプ部のみにより車椅子のフレームに取り付けられてもよい。
【0130】
また、上記第1~第3実施形態では、ベース側取付部41は、被介護者Crにより加えられる荷重Lwによって離隔位置Upから近接位置Dwに向かって移動するとともに、被介護者Crからの荷重Lwが除かれることにより付勢部材43の付勢力により離隔位置Upに戻るように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベース側取付部は、介護者のリモコン操作により駆動するアクチュエータの駆動力によって離隔位置から近接位置に向かって移動するとともに、近接位置から離隔位置に戻るように構成されていてもよい。また、ベース側取付部は、介護者のレバー操作により移動するワイヤの力によって離隔位置から近接位置に向かって移動するとともに、近接位置から離隔位置に戻るように構成されていてもよい。
【0131】
また、上記第1~第3実施形態では、移乗支援装置100(500、600)は、車椅子200とは別個に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移乗支援装置は、車椅子と一体的に設けられてもよい。移乗支援装置と車椅子と一体的に設けられることにより、移乗支援専用の車椅子が構成される。
【0132】
また、第3実施形態では、スライドレール644aでは、Z1方向側の端部が車椅子側取付部42のY2方向側の面に固定されているとともに、スライドレール644bでは、Z1方向側の端部が車椅子側取付部42のY2方向側の面に固定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スライドレールは、上方向側の端部が車椅子側取付部に回動可能に取り付けられてもよい。
【0133】
また、上記第1~第3実施形態では、シート回転部52は、駆動ローラ52aと、押さえローラ52bと、第1従動ローラ52cと、第2従動ローラ52dとを有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シート回転部は、駆動ローラ、押さえローラ、第1従動ローラおよび第2従動ローラ以外のローラを有していてもよい。
【0134】
また、上記第1~第3実施形態では、一対のサイドガイド部53の各々は、金属製の薄板形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、一対のサイドガイド部の各々は、柵などであってもよい。
【0135】
また、上記第1~第3実施形態では、移乗支援装置100(500、600)は、足導入部5を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移乗支援装置は、足導入部を備えていなくてもよい。
【0136】
また、上記第1~第3実施形態では、回動部35は、介護者Cgにより手動で回動される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回動部は、介護者のリモコン操作によりモータの駆動力によって自動で回動されてもよい。
【0137】
また、上記第1および第2実施形態では、第1リンク部材44aでは、Z1方向側のリンクとZ2方向側のリンクとがピンPnにより連結されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1リンク部材のうちの上側のリンクと第2リンク部材のうちの下側のリンクとがピンにより連結されるとともに、第1リンク部材のうちの下側のリンクと第2リンク部材のうちの上側のリンクとがピンにより連結されてもよい。
【0138】
また、第1~第3実施形態では、シート回転部52は、接地面6に当接した状態で車椅子200の移動に伴って回転することによって、シート51を回転させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シート回転部は、センサにより接地面に接地したことを検知したことに基づいて駆動するモータの駆動力により、シートを回転させるように構成されていてもよい。
【0139】
また、第1~第3実施形態では、駆動部22は、直動アクチュエータ22bにより柱部21をX1方向(第1方向)またはX2方向(第2方向)に移動させて傾斜させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、駆動部は、モータにより柱部を第1方向または第2方向に回動させて傾斜させるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 身体支持部
2 移動機構
3 ベース部
3a 下面
4、504、604 取付部
5 足導入部
6 接地面
21 柱部
22 駆動部
31 台座部
35 回動部
41 ベース側取付部
41a 底面
41b 滑り止め部材
42 車椅子側取付部
43 付勢部材
44、644 接続部
44a 第1リンク部材(リンク)
44b 第2リンク部材(リンク)
51 シート
52 シート回転部
100、500、600 移乗支援装置
200 車椅子
201 フレーム
545 離隔位置保持部
644a スライドレール
644b スライドレール
Cg 介護者
Cr 被介護者
Dw 近接位置
Up 離隔位置