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特開2024-73279医用情報解析装置、医用情報解析方法及び医用情報解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073279
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】医用情報解析装置、医用情報解析方法及び医用情報解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/50 20180101AFI20240522BHJP
   G16H 30/40 20180101ALI20240522BHJP
【FI】
G16H50/50
G16H30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184391
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】重 文将
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減すること。
【解決手段】実施形態に係る医用情報解析装置は、第1の取得部と、第2の取得部と、特定部と、解析部とを備える。第1の取得部は、第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得する。第2の取得部は、前記第1の時点より前の第2の時点における前記対象被検体に関する前記第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する。特定部は、前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に基づいて、前記第2の時点で実行された前記対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、前記第1の時点における前記対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する。解析部は、前記第2の解析パラメータに基づいて、前記解析処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得する第1の取得部と、
前記第1の時点より前の第2の時点における前記対象被検体に関する前記第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する第2の取得部と、
前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に基づいて、前記第2の時点で実行された前記対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、前記第1の時点における前記対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する特定部と、
前記第2の解析パラメータに基づいて、前記解析処理を実行する解析部と
を備える、医用情報解析装置。
【請求項2】
前記第2の解析パラメータの数は、前記第1の解析パラメータの数よりも少ない、
請求項1に記載の医用情報解析装置。
【請求項3】
前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報は、前記対象被検体に関する医療情報、臨床画像、治療方法に関する情報のうちの少なくとも一つを含む、
請求項1又は2に記載の医用情報解析装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記第1の医用情報に含まれるデータと前記第2の医用情報に含まれるデータとの組み合わせに基づいて、前記第2の解析パラメータを特定する、
請求項3に記載の医用情報解析装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記第1の医用情報に含まれるデータと前記第2の医用情報に含まれるデータとの間の変化に基づいて、前記第2の解析パラメータを特定する、
請求項3に記載の医用情報解析装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記複数の第1の解析パラメータの中で、前記第1の時点における前記解析処理に流用する解析パラメータを前記第2の解析パラメータとして特定し、
前記解析部は、前記第2の解析パラメータを流用して、前記解析処理を実行する、
請求項1又は2に記載の医用情報解析装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に基づいて、前記第1の時点における前記対象被検体に応じた解析パラメータの推定方法をさらに特定し、
前記解析部は、前記推定方法で推定された解析パラメータを用いて、前記解析処理を実行する、
請求項1又は2に記載の医用情報解析装置。
【請求項8】
前記特定部は、前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に加え、前記解析処理に対して許容される計算時間にさらに基づいて、前記推定方法を特定する、
請求項7に記載の医用情報解析装置。
【請求項9】
第1の取得部が、第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得するステップと、
第2の取得部が、前記第1の時点より前の第2の時点における前記対象被検体に関する前記第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得するステップと、
特定部が、前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に基づいて、前記第2の時点で実行された前記対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、前記第1の時点における前記対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定するステップと、
解析部が、前記第2の解析パラメータに基づいて、前記解析処理を実行するステップと
を含む、医用情報解析方法。
【請求項10】
第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得する手順と、
前記第1の時点より前の第2の時点における前記対象被検体に関する前記第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する手順と、
前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に基づいて、前記第2の時点で実行された前記対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、前記第1の時点における前記対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する手順と、
前記第2の解析パラメータに基づいて、前記解析処理を実行する手順と
をコンピュータに実行させる、医用情報解析プログラム。
【請求項11】
第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得する第1の取得部と、
前記第1の時点より前の第2の時点における前記第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する第2の取得部と、
前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に基づいて、前記第2の時点で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、前記第1の時点における前記対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する特定部と、
前記第2の解析パラメータに基づいて、前記解析処理を実行する解析部と
を備える医用情報解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報解析装置、医用情報解析方法及び医用情報解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に関する医用情報に基づいて、各種の解析処理を実行する技術が知られている。例えば、被検体に関する解析処理として、僧帽弁疾患の患者に対する治療計画の支援を目的とした僧帽弁シミュレーションを実行する技術が知られている。
【0003】
ここで、一般的に、このような僧帽弁シミュレーションは、処理に時間がかかることが知られている。具体的には、僧帽弁シミュレーションでは、シミュレーションで用いられる患者固有の解析パラメータの推定にかかる時間の占める割合が大きい。
【0004】
そのため、僧帽弁シミュレーション等の解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2022-517619号公報
【特許文献2】特表2014-503894号公報
【特許文献3】特開2008-245716号公報
【特許文献4】特開平5-326195号公報
【特許文献5】特開2006-277083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る医用情報解析装置は、第1の取得部と、第2の取得部と、特定部と、解析部とを備える。第1の取得部は、第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得する。第2の取得部は、前記第1の時点より前の第2の時点における前記対象被検体に関する前記第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する。特定部は、前記第1の医用情報及び前記第2の医用情報に基づいて、前記第2の時点で実行された前記対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、前記第1の時点における前記対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する。解析部は、前記第2の解析パラメータに基づいて、前記解析処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置によって行われるデバイス留置シミュレーションの一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置の処理回路が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置の記憶回路に記憶されるシミュレーション結果の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置の特定機能によって行われる解析パラメータの特定の一例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る医用情報解析装置の処理回路が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係る医用情報解析装置の特定機能によって行われる解析パラメータの推定方法の特定の一例を示す図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る医用情報解析装置の処理回路が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、第4の実施形態に係る医用情報解析装置の特定機能によって行われる解析パラメータの特定の一例を示す図である。
図10図10は、第5の実施形態に係る医用情報解析装置の処理回路が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、医用情報解析装置、医用情報解析方法及び医用情報解析プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置の構成の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る医用情報解析装置100は、ネットワーク10を介して、医療情報保管装置20、医用画像診断装置30及び医用画像保管装置40と相互に通信可能に接続されている。例えば、医用情報解析装置100は、病院や診療所等の医療現場に設置され、医師等の操作者によって利用される。
【0012】
医療情報保管装置20は、被検体に関する各種の医療情報を保管する。例えば、医療情報保管装置20は、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)、電子カルテシステム等が実装されたサーバ、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0013】
医用画像診断装置30は、被検体から収集したデータに基づいて、被検体に関する各種の医用画像を取得する。例えば、医用画像診断装置30は、X線CT(Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、超音波診断装置、X線診断装置等のモダリティによって実現される。
【0014】
医用画像保管装置40は、医用画像診断装置30によって取得された各種の医用画像を保管する。例えば、医用画像保管装置40は、PACS(Picture Archiving Communication System)等が実装されたサーバ、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0015】
医用情報解析装置100は、ネットワーク10を介して、医療情報保管装置20、医用画像診断装置30及び医用画像保管装置40から被検体に関する医用情報を取得し、取得した医用情報に基づいて、被検体に関する解析処理を実行する。例えば、医用情報解析装置100は、サーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器によって実現される。
【0016】
具体的には、医用情報解析装置100は、ネットワーク(NetWork:NW)インタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを有する。
【0017】
NWインタフェース110は、ネットワーク10を介して接続された他の装置と医用情報解析装置100との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、NWインタフェース110は、処理回路150に接続されており、医用画像診断装置30又は医用画像保管装置40から受信した医用画像を処理回路150に出力する。例えば、NWインタフェース110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0018】
記憶回路120は、各種データや各種プログラム等を記憶する。具体的には、記憶回路120は、処理回路150に接続されており、処理回路150から送られる命令に応じて、入力された医用画像を記憶し、又は、記憶している医用画像を処理回路150に出力する。例えば、記憶回路120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0019】
入力インタフェース130は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース130は、処理回路150に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。例えば、入力インタフェース130は、関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース130は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース130の例に含まれる。
【0020】
ディスプレイ140は、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ140は、処理回路150に接続されており、処理回路150から出力される各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ140は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0021】
処理回路150は、入力インタフェース130を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用情報解析装置100の構成要素を制御する。例えば、処理回路150は、NWインタフェース110から出力される医用画像を記憶回路120に記憶させる。また、例えば、処理回路150は、記憶回路120から医用画像を読み出し、ディスプレイ140に表示する。
【0022】
以上、本実施形態に係る医用情報解析装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る医用情報解析装置100は、被検体に関する解析処理として、僧帽弁疾患の患者に対する治療計画の支援を目的とした僧帽弁シミュレーションを実行する。
【0023】
例えば、医用情報解析装置100は、僧帽弁シミュレーションとして、MitraClip(登録商標)やTendyne(登録商標)等の特定のデバイスを僧帽弁に留置する治療のシミュレーションであるデバイス留置シミュレーションを実行する。例えば、デバイス留置シミュレーションでは、操作者によって入力されたデバイスの種類や留置位置に基づいて、デバイス留置後の形状や流体情報がシミュレーションによって予測される。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置100によって行われるデバイス留置シミュレーションの一例を示す図である。
【0025】
例えば、医用情報解析装置100は、MitraClipを用いたデバイス留置シミュレーションを行う場合に、図2の(A)に示すように、心臓における僧帽弁付近の形状を表す画像をディスプレイ140に表示する。その後、医用情報解析装置100は、入力インタフェース130を介して、操作者から、治療に用いられるMitraClipを選択する指示と、画像上で当該MitraClipの留置位置を設定する指示とを受け付ける。そして、医用情報解析装置100は、図2の(B)に示すように、選択されたMitraClipの種類及び当該MitraClipの留置位置に基づいて、治療後の僧帽弁付近の形状や流体情報をシミュレーションによって予測し、予測した結果をディスプレイ140に表示する。
【0026】
ここで、一般的に、このような僧帽弁シミュレーションは、処理に時間がかかることが知られている。具体的には、僧帽弁シミュレーションでは、シミュレーションで用いられる患者固有の解析パラメータの推定(パーソナライズ)にかかる時間の占める割合が大きい。
【0027】
そのため、僧帽弁シミュレーション等の解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することが求められている。
【0028】
これに対し、例えば、以前に用いられた解析パラメータを流用することによって、解析パラメータの推定にかかる時間を削減することが可能になると考えられる。しかしながら、現時点では、僧帽弁シミュレーション等の解析処理において、解析パラメータが流用できるか否かを判定するような技術は存在していない。
【0029】
したがって、僧帽弁シミュレーションでは、別の条件で計算する際には、流用できるパラメータがある場合でも、再度、解析パラメータの推定を行う必要があった。例えば、以下の例では、流用できるパラメータがあることは直感的に理解できるが、このような場合でも、再度、解析パラメータの推定を実施しなくてはならなかった。
【0030】
・以前は利尿剤を用いずに行われる手術のシミュレーションであり、今回は利尿剤を用いて行われる手術のシミュレーションである場合
・以前は術前のシミュレーションであり、今回は術中のシミュレーションである場合
・以前はデバイス(例えば、MitraClip)を用いた僧帽弁治療のシミュレーションであり、今回は別のデバイス(例えば、Tendyne)を用いた僧帽弁治療のシミュレーションである場合
・以前は僧帽弁治療のシミュレーションであり、今回は冠動脈治療のシミュレーションである場合
・以前は経食道心エコー図(Transesophageal Echocardiography:TEE)を用いたシミュレーションであり、今回はCT画像を用いたシミュレーションである場合
・以前はTEEを用いたシミュレーションであり、今回は別のTEEを用いたシミュレーションである場合
【0031】
このようなことから、本実施形態に係る医用情報解析装置100は、僧帽弁シミュレーション等の解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することができるように構成されている。
【0032】
以下、本実施形態に係る医用情報解析装置100について、詳細に説明する。
【0033】
具体的には、本実施形態に係る医用情報解析装置100では、処理回路150が、第1の取得機能151と、第2の取得機能152と、特定機能153と、解析機能154とを有する。ここで、第1の取得機能151は、第1の取得部の一例である。また、第2の取得機能152は、第2の取得部の一例である。また、特定機能153は、特定部の一例である。また、解析機能154は、解析部の一例である。
【0034】
なお、本実施形態では、処理回路150は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶される。そして、処理回路150は、記憶回路120に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路150は、各プログラムを読み出した状態で、図1に示した各処理機能を有することになる。
【0035】
第1の取得機能151は、第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得する。
【0036】
第2の取得機能152は、第1の時点より前の第2の時点における対象被検体に関する第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する。
【0037】
特定機能153は、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に基づいて、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する。
【0038】
解析機能154は、特定機能153によって特定された第2の解析パラメータに基づいて、第1の時点における対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0039】
ここで、本実施形態では、特定機能153は、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に流用する解析パラメータを第2の解析パラメータとして特定する。そして、解析機能154は、特定機能153によって特定された第2の解析パラメータを流用して、対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0040】
以下、上述した処理機能について詳細に説明する。なお、以下では、被検体に関する解析処理として、上述したデバイス留置シミュレーションが実行される場合の例を説明する。また、以下では、第1の医用情報及び第2の医用情報として、対象被検体に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報が用いられる場合の例を説明する。また、以下では、被検体が患者である場合の例を説明する。
【0041】
図3は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置100の処理回路150が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
図3に示すように、本実施形態では、まず、第1の取得機能151が、デバイス留置シミュレーションの対象となる対象患者を選定する(ステップS101)。
【0043】
例えば、第1の取得機能151は、入力インタフェース130を介して、今回のデバイス留置シミュレーションの対象となる患者を指定する入力を操作者から受け付け、指定された患者を対象患者として選定する。
【0044】
続いて、第1の取得機能151は、対象患者に関する今回の時点における医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報を取得する(ステップS102)。
【0045】
例えば、第1の取得機能151は、ネットワーク10を介して、医療情報保管装置20から対象患者に関する今回の医療情報を取得する。また、例えば、第1の取得機能151は、ネットワーク10を介して、医用画像診断装置30又は医用画像保管装置40から対象患者に関する今回の臨床画像を取得する。また、例えば、第1の取得機能151は、入力インタフェース130を介して、シミュレーションを行う治療方法を指定する入力を操作者から受け付け、指定された治療方法を対象患者に関する今回の治療方法として取得する。
【0046】
その後、第2の取得機能152が、記憶回路120を参照して、今回の時点より前の時点で実行された対象患者に関する以前のシミュレーション結果があるか否かを判定する(ステップS103)。
【0047】
ここで、本実施形態では、記憶回路120には、解析機能154によって、デバイス留置シミュレーションが実行されるごとに、シミュレーションの対象となった患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、シミュレーションで用いられた解析パラメータとがシミュレーション結果として記憶される。
【0048】
図4は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置100の記憶回路120に記憶されるシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0049】
図4に示すように、例えば、記憶回路120に記憶されるシミュレーション結果には、シミュレーションの対象となった患者の患者名、医療情報を示す診療データ、臨床画像を示す画像データの識別情報、治療方法に関する情報を示すデバイスのデバイス名及びデバイスの留置位置、シミュレーションで用いられた解析パラメータのパラメータセット等が含まれる。
【0050】
図3に戻り、ステップS103の判定の結果、対象患者に関する以前のシミュレーション結果があった場合には(ステップS103,Yes)、第2の取得機能152が、当該シミュレーション結果を参照して、対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報を取得する(ステップS104)。
【0051】
その後、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、第2の取得機能152によって取得された対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とに基づいて、対象患者に関する以前のシミュレーション結果に含まれている複数の解析パラメータの中で、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータを特定する(ステップS105)。
【0052】
ここで、特定機能153によって、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータとして特定される解析パラメータの数は、対象患者に関する以前のデバイス留置シミュレーションで用いられた解析パラメータの数よりも少ない。
【0053】
具体的には、特定機能153は、対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とを比較し、比較結果に基づいて、対象患者に関する以前のシミュレーション結果から今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータを特定する。
【0054】
例えば、特定機能153は、第1の取得機能151によって取得された今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報に含まれるデータと、第2の取得機能152によって取得された以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報に含まれるデータとの組み合わせに基づいて、流用するパラメータを特定する。
【0055】
また、例えば、特定機能153は、第1の取得機能151によって取得された今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報に含まれるデータと、第2の取得機能152によって取得された以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報に含まれるデータとの間の変化に基づいて、流用するパラメータを特定する。
【0056】
図5は、第1の実施形態に係る医用情報解析装置100の特定機能153によって行われる解析パラメータの特定の一例を示す図である。
【0057】
ここで、図5は、今回の治療方法がMitraClipを用いた治療であり、今回の臨床画像がCT画像である場合の例を示している。
【0058】
図5に示すように、例えば、特定機能153は、今回の治療方法と以前の治療方法とを比較し、以前の利用デバイスに応じて、流用するパラメータを特定する。
【0059】
なお、以下の説明でパラメータの例として記載している「コンプライアンス」及び「抵抗」は、3次元の血液の流体情報を粗視化して計算する手法の一つである回路モデル(又は、0D モデル)において、血管の特性を定義するために用いられるパラメータである。例えば、血液の流体情報を計算する回路モデルでは、血管が、収縮期に血圧の上昇に伴って拡張し、拡張期に血圧の降下に伴って縮小するものとして定義され、血管に流入する血流量が、血管の抵抗によって、流出する血流量よりも多くなるものと定義されて、血流や血圧等の計算が行われる。このような回路モデルにおいて、コンプライアンスは、血管の伸縮性及び可塑性を定量化した物理量として用いられ、抵抗は、血管内で血液の流れを妨げる力の大きさを表す物理量として用いられる。なお、このような回路モデルの一例としては、例えば、ウィンドケッセルモデル(Windkessel model)が挙げられる。
【0060】
例えば、特定機能153は、今回の治療方法がMitraClipを用いる治療であり、以前の治療方法がTendyneを用いた治療である場合に、左室(Left Ventricle:LV)及び左房(Left Atrium:LA)のコンプライアンス、僧帽弁にかかる圧力を、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、Tendyneを用いる治療のシミュレーションでは、MitraClipを用いる治療のシミュレーションと比べて、左室及び左房の流体を精緻に計算しているためである。例えば、MitraClipを用いる治療のシミュレーションでは、LVを含む全身を粗視化したモデルを用いて血流計算が行われるのに対し、Tendyneを用いる治療のシミュレーションでは、全身を粗視化し、LVを精緻化したモデルを用いて血流計算が行われる。例えば、3次元数値流体力学(3-Dimensional Computational Fluid Dyamics:3D CFD)シミュレーション等によって、左室及び左房の血流計算が行われる。
【0061】
また、例えば、特定機能153は、今回の治療方法がMitraClipを用いる治療であり、以前の治療方法が経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous Coronary Intervention:PCI)である場合に、大動脈のコンプライアンス、抵抗を、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、PCIのシミュレーションでは、大動脈圧が精緻に計算されるためである。
【0062】
また、例えば、特定機能153は、今回の治療方法がMitraClipを用いる治療であり、以前の治療方法が経カテーテル的大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI)である場合に、LV及び大動脈のコンプライアンスを、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、TAVIのシミュレーションでは、LVと大動脈との圧較差が精緻に計算されるためである。
【0063】
また、例えば、特定機能153は、今回の医療情報と以前の医療情報とを比較し、臨床所見の変化に応じて、流用するパラメータを特定する。
【0064】
例えば、特定機能153は、今回の僧帽弁逆流症(Mitral Regurgitation:MR)の重症度が以前のMRの重症度から変わっている場合に、静脈系のコンプライアンス、抵抗、右室(Right Ventricle:RV)及び右房(Right Atrium:RA)のコンプライアンスを、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、MRの重症度が変わっても、シミュレーションにはほとんど影響はないためである。
【0065】
また、例えば、特定機能153は、今回の医療情報と以前の医療情報とを比較し、薬物投与情報に応じて、流用するパラメータを特定する。
【0066】
例えば、特定機能153は、今回の治療で用いられる利尿剤が以前の治療で用いられた利尿剤から変わっている場合、又は、以前の治療では利尿剤が用いられずに今回の治療では利尿剤が用いられる場合に、静脈系のコンプライアンス、抵抗、右室(Right Ventricle:RV)及び右房(Right Atrium:RA)のコンプライアンスを、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、利尿剤の種類又は使用有無が変わっても、シミュレーションにはほとんど影響はないためである。
【0067】
また、例えば、特定機能153は、今回の治療で用いられる抗血小板剤が以前の治療で用いられた抗血小板剤から変わっている場合、又は、以前の治療では抗血小板剤が用いられずに今回の治療では抗血小板剤が用いられる場合に、静脈系のコンプライアンス、右室(Right Ventricle:RV)及び右房(Right Atrium:RA)のコンプライアンスを、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、抗血小板剤の種類又は使用有無が変わっても、シミュレーションにはほとんど影響はないためである。
【0068】
また、例えば、特定機能153は、今回の臨床画像と以前の臨床画像とを比較し、モダリティの違いに応じて、流用するパラメータを特定する。
【0069】
例えば、特定機能153は、今回の臨床画像がTEEであり、以前の臨床画像がCT画像である場合に、腱索の位置を、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、TEEの方が、CT画像と比べて、腱索の位置が良好に示されるためである。
【0070】
また、例えば、特定機能153は、今回の臨床画像を取得した装置と、以前の臨床画像を取得した装置との間で、イメージングに関する性能(例えば、空間分解能や時間分解能等)に差がある場合に、大動脈のコンプライアンスを、流用するパラメータとして特定する。この理由は、一般的に、大動脈のコンプライアンスはカフ圧によって略決まるものであり、臨床画像を取得した装置の性能に差がある場合でも、シミュレーションにはほとんど影響はないためである。
【0071】
図3に戻り、続いて、特定機能153は、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な解析パラメータのうち、以前のシミュレーション結果から流用する解析パラメータとして特定された解析パラメータ以外の解析パラメータを、予め決められた推定方法で推定する(ステップS106)。
【0072】
一方、ステップS103の判定の結果、対象患者に関する以前のシミュレーション結果がなかった場合には(ステップS103,No)、特定機能153は、流用する解析パラメータの特定は行わずに、予め決められた推定方法で、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な全ての解析パラメータを推定する(ステップS107)。
【0073】
その後、解析機能154が、対象患者に関するデバイス留置シミュレーションを実行する(ステップS108)。
【0074】
具体的には、解析機能154は、特定機能153によって、流用する解析パラメータが特定されている場合には、当該流用するパラメータについては、対象患者に関する以前のシミュレーション結果から解析パラメータを流用し、それ以外のパラメータについては、推定された解析パラメータを用いて、デバイス留置シミュレーションを実行する。
【0075】
一方、特定機能153によって、流用する解析パラメータが特定されていない場合には、解析機能154は、推定された全ての解析パラメータの推定結果を用いて、デバイス留置シミュレーションを実行する。
【0076】
そして、解析機能154は、シミュレーションの対象となった患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、シミュレーションで用いられた解析パラメータとをシミュレーション結果として記憶回路120に記憶させる。
【0077】
続いて、解析機能154は、対象患者に関するデバイス留置シミュレーションの結果をディスプレイ140に表示する(ステップS109)。
【0078】
例えば、解析機能154は、図2の(B)に示したように、治療後の僧帽弁付近の形状や流体情報をシミュレーションによって予測した結果をディスプレイ140に表示する。
【0079】
このとき、例えば、解析機能154は、以前のシミュレーション結果から流用した解析パラメータに関する情報をシミュレーションの結果と一緒に表示してもよい。例えば、解析機能154は、流用した解析パラメータの値とともに、当該値が流用されたものであることを示す「概算値」のラベルを表示してもよい。また、例えば、解析機能154は、シミュレーションで用いられた解析パラメータの総数に対する、流用した解析パラメータの数の割合を算出して表示してもよい。この場合に、解析機能154は、算出した割合に基づいてシミュレーションの信頼度を算出して、さらに表示してもよい。また、例えば、解析機能154は、流用したパラメータを示す情報、又は、流用したパラメータに基づいて予測された領域を示す情報を表示してもよい。このような情報を表示することで、操作者が、信頼性を向上できる可能性がある解析パラメータ又は領域を把握できるようになる。
【0080】
なお、前述したように、処理回路150がプロセッサによって実現される場合、図3に示すステップS101及びS102の処理は、例えば、処理回路150が、第1の取得機能151に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103及びS104の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS105~S107の処理は、例えば、処理回路150が、特定機能153に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS108及びS109の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0081】
上述したように、第1の実施形態では、第1の取得機能151が、第1の時点における対象被検体に関する第1の医用情報を取得する。また、第2の取得機能152が、第1の時点より前の第2の時点における対象被検体に関する第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する。また、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に基づいて、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する。そして、解析機能154が、特定機能153によって特定された第2の解析パラメータに基づいて、第1の時点における対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0082】
このような構成によれば、対象被検体に関する解析処理を行う際に、以前に用いられた解析パラメータの中から今回の解析処理に流用可能な解析パラメータを特定することができる。したがって、第1の実施形態によれば、解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することができる。また、解析パラメータの推定にかかる時間を削減することによって、医療ワークフローの改善に貢献することができる。
【0083】
また、第1の実施形態では、特定機能153が、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に流用する解析パラメータを第2の解析パラメータとして特定する。そして、解析機能154が、特定機能153によって特定された第2の解析パラメータを流用して、対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0084】
このような構成によれば、以前に用いられた解析パラメータを今回の解析処理に流用して解析処理を実行することで、被検体固有の解析パラメータの推定にかかる時間を短縮することができ、解析処理が完了するまでの時間を短縮することができる。
【0085】
以上、第1の実施形態について説明したが、上述した医用情報解析装置100は、その構成の一部を適宜に変更して実施することも可能である。そこで、以下では、第1の実施形態の変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下の実施形態では、第1の実施形態と異なる内容を中心に説明し、重複する内容については詳細な説明を省略する。
【0086】
(第2の実施形態)
例えば、第1の実施形態では、第1の医用情報及び第2の医用情報に基づいて、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に関連する第2の解析パラメータを特定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第1の医用情報及び第2の医用情報に基づいて、第1の時点における対象被検体に応じた解析パラメータの推定方法をさらに特定してもよい。以下では、このような例を第2の実施形態として説明する。
【0087】
本実施形態では、特定機能153は、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に基づいて、第1の時点における対象被検体に応じた解析パラメータの推定方法をさらに特定する。そして、解析機能154は、特定機能153によって特定された推定方法で推定された解析パラメータを用いて、対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0088】
以下、上述した処理機能について詳細に説明する。なお、以下では、上述した実施形態と同様に、被検体に関する解析処理として、デバイス留置シミュレーションが実行され、第1の医用情報及び第2の医用情報として、対象被検体に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報が用いられ、被検体が患者である場合の例を説明する。
【0089】
図6は、第2の実施形態に係る医用情報解析装置100の処理回路150が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0090】
図6に示すように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、ステップS101~S103の処理が行われる。
【0091】
そして、ステップS103の判定の結果、対象患者に関する以前のシミュレーション結果があった場合には(ステップS103,Yes)、第1の実施形態と同様に、第2の取得機能152が、当該シミュレーション結果を参照して、以前の時点における対象患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報を取得する(ステップS104)。
【0092】
その後、本実施形態では、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、第2の取得機能152によって取得された対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とに基づいて、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータと、今回のデバイス留置シミュレーションで用いられる解析パラメータの推定方法とを特定する(ステップS205)。
【0093】
具体的には、特定機能153は、第1の実施形態と同様に、対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とを比較し、比較結果に基づいて、対象患者に関する以前のシミュレーション結果から今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータを特定する。
【0094】
また、特定機能153は、対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とに基づいて、今回のデバイス留置シミュレーションで用いられる解析パラメータの推定方法を特定する。
【0095】
図7は、第2の実施形態に係る医用情報解析装置100の特定機能153によって行われる解析パラメータの推定方法の特定の一例を示す図である。
【0096】
ここで、図7は、第1の実施形態と同様に、今回の治療方法がMitraClipを用いた治療であり、今回の臨床画像がCT画像である場合の例を示している。
【0097】
図7に示すように、例えば、特定機能153は、今回の医療情報と以前の医療情報とを比較し、臨床所見の変化に応じて、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0098】
例えば、特定機能153は、今回のMRの重症度の大きさと以前のMRの重症度の大きさとの差が小さいほど、解析パラメータを推定する処理で行われる最適化のイテレーション回数を減らすように、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0099】
また、例えば、特定機能153は、今回の医療情報に基づいて、薬物投与情報に応じて、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0100】
例えば、特定機能153は、今回の治療で用いられる利尿剤の投与日数が少ないほど、解析パラメータを推定する処理で行われる最適化のイテレーション回数を減らすように、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0101】
また、例えば、特定機能153は、今回の治療で用いられる抗血小板剤の投与日数が少ないほど、解析パラメータを推定する処理で行われる最適化のイテレーション回数を減らすように、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0102】
また、例えば、特定機能153は、今回の臨床画像と以前の臨床画像とを比較し、モダリティの違いに応じて、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0103】
例えば、特定機能153は、今回の臨床画像の撮像日と以前の臨床画像の撮像日との間隔が狭いほど、解析パラメータを推定する処理で行われる最適化のイテレーション回数を減らすように、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0104】
また、例えば、特定機能153は、今回の臨床画像を取得した装置と以前の臨床画像を取得した装置との間のイメージングに関する性能(例えば、空間分解能や時間分解能等)の差が小さいほど、解析パラメータを推定する処理で行われる最適化のイテレーション回数を減らすように、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0105】
なお、ここでは、特定機能153が、解析パラメータを推定する処理で行われる最適化のイテレーション回数を減らすように解析パラメータの推定方法を特定する場合の例を説明したが、解析パラメータの推定方法を特定する例はこれに限られない。例えば、特定機能153は、今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とに基づいて、解析パラメータを推定する処理のアルゴリズムを変更することで、解析パラメータの推定方法を特定してもよい。
【0106】
図6に戻り、続いて、本実施形態では、特定機能153は、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な解析パラメータのうち、以前のシミュレーション結果から流用する解析パラメータとして特定された解析パラメータ以外の解析パラメータを、特定された推定方法で推定する(ステップS206)。
【0107】
その後は、第1の実施形態と同様に、ステップS107~S109の処理が行われる。
【0108】
なお、前述したように、処理回路150がプロセッサによって実現される場合、図6に示すステップS101及びS102の処理は、例えば、処理回路150が、第1の取得機能151に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103及びS104の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS205、S206及びS107の処理は、例えば、処理回路150が、特定機能153に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS108及びS109の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0109】
上述したように、第2の実施形態では、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に基づいて、第1の時点における対象被検体に応じた解析パラメータの推定方法をさらに特定する。そして、解析機能154が、特定機能153によって特定された推定方法で推定された解析パラメータを用いて、対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0110】
このような構成によれば、被検体に応じた解析パラメータの推定方法を特定することで、解析パラメータの推定にかかる時間を被検体ごとにより適切に削減できるようになる。
【0111】
(第3の実施形態)
また、例えば、第2の実施形態では、第1の医用情報及び第2の医用情報に基づいて、解析パラメータの推定方法を特定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、解析処理に対して許容される計算時間にさらに基づいて、解析パラメータの推定方法を特定してもよい。以下では、このような例を第3の実施形態として説明する。
【0112】
本実施形態では、特定機能153は、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に加え、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に対して許容される計算時間にさらに基づいて、第1の時点における対象被検体に応じた解析パラメータの推定方法を特定する。
【0113】
以下、上述した処理機能について詳細に説明する。なお、以下では、上述した実施形態と同様に、被検体に関する解析処理として、デバイス留置シミュレーションが実行され、第1の医用情報及び第2の医用情報として、対象被検体に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報が用いられ、被検体が患者である場合の例を説明する。
【0114】
図8は、第3の実施形態に係る医用情報解析装置100の処理回路150が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0115】
図8に示すように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、ステップS101~S103の処理が行われる。
【0116】
そして、ステップS103の判定の結果、対象患者に関する以前のシミュレーション結果があった場合には(ステップS103,Yes)、第1の実施形態と同様に、第2の取得機能152が、当該シミュレーション結果を参照して、以前の時点における対象患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報を取得する(ステップS104)。
【0117】
その後、本実施形態では、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、第2の取得機能152によって取得された対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、今回のデバイス留置シミュレーションに許容される計算時間とに基づいて、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータと、今回のデバイス留置シミュレーションで用いられる解析パラメータの推定方法とを特定する(ステップS305)。
【0118】
具体的には、特定機能153は、第1の実施形態と同様に、対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とを比較し、比較結果に基づいて、対象患者に関する以前のシミュレーション結果から今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータを特定する。
【0119】
また、特定機能153は、対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、今回のデバイス留置シミュレーションに許容される計算時間とに基づいて、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータとして特定された解析パラメータ以外の解析パラメータについて、解析パラメータの推定方法を特定する。
【0120】
例えば、特定機能153は、入力インタフェース130を介して、今回のデバイス留置シミュレーションに許容される計算時間を指定する入力を操作者から受け付ける。
【0121】
そして、特定機能153は、指定された計算時間の間にシミュレーションが完了するように、流用する解析パラメータ以外の解析パラメータについて、推定する解析パラメータの数を減らす。
【0122】
例えば、特定機能153は、流用する解析パラメータ以外の解析パラメータについて、各解析パラメータの重要度を判定する。
【0123】
例えば、特定機能153は、今回の治療方法のシミュレーションで計算したい指標に対する感度が高いパラメータを重要度が高いパラメータと判定し、シミュレーションで計算したい指標に対する感度が低いパラメータを重要度が低いパラメータと判定する。例えば、特定機能153は、今回の治療方法がMitraClipを用いた治療である場合に、逆流量及び弁口面積に対する感度が高いパラメータを重要度が高いパラメータと判定し、逆流量及び弁口面積に対する感度が低いパラメータを重要度が低いパラメータと判定する。
【0124】
または、例えば、特定機能153は、治療方法ごとに予め決められたパラメータを重要度が高いパラメータと判定し、それ以外を重要度が低いパラメータと判定してもよい。例えば、特定機能153は、弁の硬さ、腱索の張力、LVのコンプライアンス等を重要度が高いパラメータと判定し、それ以外を重要度が低いパラメータと判定する。
【0125】
そして、例えば、特定機能153は、重要度が高いと判定された解析パラメータについては、予め決められた推定方法、又は、第2の実施形態と同様に特定された推定方法で、当該解析パラメータの推定を行う。また、例えば、特定機能153は、重要度が低いと判定した解析パラメータについては、当該解析パラメータを推定する処理は行わずに、記憶回路120に予め記憶された文献値等を当該解析パラメータの推定結果として用いる。
【0126】
または、例えば、特定機能153は、許容される計算時間の間にシミュレーションが完了するように、流用する解析パラメータ以外の解析パラメータについて、解析パラメータを推定する処理で行われる最適化のイテレーション回数を減らしてもよい。
【0127】
図8に戻り、続いて、本実施形態では、特定機能153は、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な解析パラメータのうち、以前のシミュレーション結果から流用する解析パラメータとして特定された解析パラメータ以外の解析パラメータを、特定された推定方法で推定する(ステップS306)。
【0128】
その後は、第1の実施形態と同様に、ステップS107~S109の処理が行われる。
【0129】
なお、前述したように、処理回路150がプロセッサによって実現される場合、図8に示すステップS101及びS102の処理は、例えば、処理回路150が、第1の取得機能151に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103及びS104の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS305、S306及びS107の処理は、例えば、処理回路150が、特定機能153に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS108及びS109の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0130】
上述したように、第3の実施形態では、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に加え、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に対して許容される計算時間にさらに基づいて、第1の時点における対象被検体に応じた解析パラメータの推定方法を特定する。
【0131】
このような構成によれば、解析処理にかけることができる時間が短い場合でも、許容される計算時間に応じて、解析パラメータの推定にかかる時間をより適切に削減できるようになる。
【0132】
(第4の実施形態)
また、例えば、第1の実施形態では、第1の時点より前の第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に関連する第2の解析パラメータを特定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第1の時点より前の第2の時点で実行された他の被検体に関する解析処理で用いられた第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に関連する第2の解析パラメータを特定してもよい。以下では、このような例を第4の実施形態として説明する。
【0133】
本実施形態では、第2の取得機能152は、第1の時点より前の第2の時点における対象被検体とは異なる他の被検体に関する第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する。そして、特定機能153は、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に基づいて、第2の時点で実行された他の被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する。
【0134】
以下、上述した処理機能について詳細に説明する。なお、以下では、上述した実施形態と同様に、被検体に関する解析処理として、デバイス留置シミュレーションが実行され、第1の医用情報及び第2の医用情報として、対象被検体に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報が用いられ、被検体が患者である場合の例を説明する。
【0135】
具体的には、第2の取得機能152は、第1の実施形態と同様に、記憶回路120を参照して、対象患者に関する以前のシミュレーション結果があるか否かを判定する。そして、第2の取得機能152は、判定の結果、当該シミュレーション結果がなかった場合に、他の患者に関するシミュレーション結果を参照して、当該他の患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報を取得する。
【0136】
また、特定機能153は、第1の取得機能151によって取得された対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、第2の取得機能152によって取得された他の患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とに基づいて、他の患者に関するシミュレーション結果に含まれている複数の解析パラメータの中で、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータを特定する。
【0137】
具体的には、特定機能153は、対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、他の患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とを比較し、比較結果に基づいて、他の患者に関する以前のシミュレーション結果から今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータを特定する。
【0138】
例えば、特定機能153は、第2の取得機能152によって取得された他の複数の患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報に基づいて、各患者の属性値をマッピングした属性値マップを作成する。そして、特定機能153は、作成された属性値マップに基づいて、複数の患者の中から対象患者と属性値が近い患者を選択する。
【0139】
ここで、選択された患者が一人であった場合には、特定機能153は、選択された患者に関するシミュレーション結果に含まれている複数の解析パラメータを、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータとして特定する。
【0140】
一方、選択された患者が複数であった場合には、特定機能153は、選択された複数の患者に関するシミュレーション結果に含まれている複数の解析パラメータについて、パラメータごとに平均値を算出し、算出された平均値を、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータとして特定する。
【0141】
図9は、第4の実施形態に係る医用情報解析装置100の特定機能153によって行われる解析パラメータの特定の一例を示す図である。
【0142】
ここで、図9は、患者の属性値として、体重とMRの重症度とが用いられる場合の例を示している。
【0143】
図9に示すように、例えば、特定機能153は、各患者の体重とMRの重症度とをマッピングした属性値マップに基づいて、複数の患者の中から、体重及びMRの重症度が対象患者の体重及びMRの重症度と近い範囲内にある患者を選択する。そして、例えば、特定機能153は、選択された複数の患者に関するシミュレーション結果に含まれている複数の解析パラメータについて、パラメータごとに加重平均値を算出し、算出された平均値を、今回のデバイス留置シミュレーションに流用する解析パラメータとして特定する。
【0144】
上述したように、第4の実施形態では、第2の取得機能152が、第1の時点より前の第2の時点における対象被検体とは異なる他の被検体に関する第1の医用情報と関連する第2の医用情報を取得する。そして、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された第1の医用情報及び第2の取得機能152によって取得された第2の医用情報に基づいて、第2の時点で実行された他の被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析に関連する少なくとも一つの第2の解析パラメータを特定する。
【0145】
このような構成によれば、他の被検体に関する解析処理で用いられた解析パラメータの中から今回の対象被検体に関する解析処理に流用可能な解析パラメータを特定することができ、対象被検体に関する解析処理が過去に行われていない場合でも、解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することができる。
【0146】
(第5の実施形態)
また、例えば、第1の実施形態では、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に流用する解析パラメータを第2の解析パラメータとして特定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に流用しない解析パラメータを第2の解析パラメータとして特定してもよい。以下では、このような例を第5の実施形態として説明する。
【0147】
本実施形態では、特定機能153は、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に流用しない解析パラメータを第2の解析パラメータとして特定する。そして、解析機能154は、特定機能153によって特定された第2の解析パラメータを流用せずに、対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0148】
以下、上述した処理機能について詳細に説明する。なお、以下では、上述した実施形態と同様に、被検体に関する解析処理として、デバイス留置シミュレーションが実行され、第1の医用情報及び第2の医用情報として、対象被検体に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報が用いられ、被検体が患者である場合の例を説明する。
【0149】
図10は、第5の実施形態に係る医用情報解析装置100の処理回路150が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0150】
図10に示すように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、ステップS101~S103の処理が行われる。
【0151】
そして、ステップS103の判定の結果、対象患者に関する以前のシミュレーション結果があった場合には(ステップS103,Yes)、第1の実施形態と同様に、第2の取得機能152が、当該シミュレーション結果を参照して、以前の時点における対象患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報を取得する(ステップS104)。
【0152】
その後、本実施形態では、特定機能153が、第1の取得機能151によって取得された対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、第2の取得機能152によって取得された対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とに基づいて、今回のデバイス留置シミュレーションに流用しない解析パラメータを特定する(ステップS405)。
【0153】
具体的には、特定機能153は、対象患者に関する今回の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、対象患者に関する以前の医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報とを比較し、比較結果に基づいて、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な解析パラメータのうち、対象患者に関する以前のシミュレーション結果から流用しない解析パラメータを特定する。
【0154】
例えば、特定機能153は、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な解析パラメータについて、第3の実施形態と同様の方法で、各解析パラメータの重要度を判定する。そして、特定機能153は、重要度が高いと判定された解析パラメータについては、流用しない解析パラメータとして特定し、重要度が低いと判定された解析パラメータについては、流用する解析パラメータとして特定する。
【0155】
または、例えば、特定機能153は、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な解析パラメータについて、各解析パラメータの重要度を示す割合を算出し、予め設定された信頼度に応じて決定された閾値に応じて、流用するか否かを決定してもよい。例えば、特定機能153は、重要度の割合が閾値より大きい解析パラメータについては、流用しない解析パラメータと特定し、重要度の割合が閾値以下の解析パラメータについては、流用する解析パラメータとして特定する。
【0156】
続いて、本実施形態では、特定機能153は、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な解析パラメータのうち、流用しない解析パラメータとして特定された解析パラメータを、予め決められた推定方法で推定する(ステップS406)。
【0157】
一方、ステップS103の判定の結果、対象患者に関する以前のシミュレーション結果がなかった場合には(ステップS103,No)、特定機能153は、流用しない解析パラメータの特定は行わずに、予め決められた推定方法で、今回のデバイス留置シミュレーションに必要な全ての解析パラメータを推定する(ステップS407)。
【0158】
その後、解析機能154が、対象患者に関するデバイス留置シミュレーションを実行する(ステップS408)。
【0159】
具体的には、本実施形態では、解析機能154は、特定機能153によって、流用しない解析パラメータが特定されている場合には、当該流用しない解析パラメータについては、推定された解析パラメータを用い、それ以外の解析パラメータについては、対象患者に関する以前のシミュレーション結果から解析パラメータを流用して、デバイス留置シミュレーションを実行する。
【0160】
一方、特定機能153によって、流用しない解析パラメータが特定されていない場合には、解析機能154は、推定された全ての解析パラメータの推定結果を用いて、デバイス留置シミュレーションを実行する。
【0161】
そして、解析機能154は、シミュレーションの対象となった患者に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報と、シミュレーションで用いられた解析パラメータとをシミュレーション結果として記憶回路120に記憶させる。
【0162】
その後は、第1の実施形態と同様に、ステップS108及びS109の処理が行われる。
【0163】
なお、前述したように、処理回路150がプロセッサによって実現される場合、図6に示すステップS101及びS102の処理は、例えば、処理回路150が、第1の取得機能151に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103及びS104の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS405~S407の処理は、例えば、処理回路150が、特定機能153に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS408及びS109の処理は、例えば、処理回路150が、第2の取得機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0164】
上述したように、第5の実施形態では、特定機能153は、第2の時点で実行された対象被検体に関する解析処理で用いられた複数の第1の解析パラメータの中で、第1の時点における対象被検体に関する解析処理に流用しない解析パラメータを第2の解析パラメータとして特定する。そして、解析機能154は、特定機能153によって特定された第2の解析パラメータを流用せずに、対象被検体に関する解析処理を実行する。
【0165】
このような構成によれば、以前に用いられた解析パラメータから流用できない解析パラメータのみを推定することで、解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することができる。
【0166】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態では、第1の医用情報及び第2の医用情報として、対象被検体に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報の全てが用いられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報のうちのいずれか二つが用いられてもよいし、いずれか一つのみが用いられてもよい。すなわち、上述した実施形態では、第1の医用情報及び第2の医用情報として、対象被検体に関する医療情報、臨床画像及び治療方法に関する情報のうちの少なくとも一つが用いられればよい。
【0167】
また、上述した実施形態では、被検体に関する解析処理として、上述したデバイス留置シミュレーションが実行される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、被検体に関する解析処理は、デバイス留置シミュレーション以外の僧帽弁シミュレーションであってもよいし、僧帽弁以外の心臓弁に関するシミュレーションであってもよいし、心臓弁以外の期間、部位又は組織に関するシミュレーションであってもよい。また、被検体に関する解析処理は、シミュレーション以外の種類の処理であってもよい。
【0168】
また、上述した実施形態で説明した医用情報解析装置100の構成は、クラウド等のネットワークを介したシステムに適用することも可能である。その場合、例えば、システムに含まれるサーバ装置が備える処理回路に、上述した第1の取得機能、第2の取得機能、特定機能及び解析機能と同様の処理機能が実装される。そして、サーバ装置の解析機能によって実行された解析処理の結果が、システムの利用者が使用するクライアント装置に送信され、クライアント装置が備えるディスプレイ等に表示される。
【0169】
また、上述した実施形態は、本明細書における第1の取得部、第2の取得部、特定部及び解析部を、それぞれ、処理回路の第1の取得機能、第2の取得機能、特定機能及び解析機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における第1の取得部、第2の取得部、特定部及び解析部は、実施形態で説明した第1の取得機能、第2の取得機能、特定機能及び解析機能によって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0170】
また、上述した実施形態では、処理回路が単一のプロセッサによって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応するプログラムが単一の記憶回路に記憶される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各処理機能に対応するプログラムが複数の記憶回路が分散して記憶され、処理回路が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0171】
また、上述した実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0172】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0173】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0174】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0175】
なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。
【0176】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、解析処理で用いられる解析パラメータの推定にかかる時間を削減することができる。
【0177】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0178】
100 医用情報解析装置
150 処理回路
151 第1の取得機能
152 第2の取得機能
153 特定機能
154 解析機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10