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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000733
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20231226BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231226BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20231226BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231226BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20231226BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231226BHJP
   A01P 1/00 20060101ALN20231226BHJP
   A01P 3/00 20060101ALN20231226BHJP
   A01N 25/04 20060101ALN20231226BHJP
   A01N 33/12 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
B01J13/00 A
A61P31/12
A61P31/04
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/38
A61K31/14
A61Q19/00
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/73
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/04 101
A01N33/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099599
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 絢子
(72)【発明者】
【氏名】阿安 智美
(72)【発明者】
【氏名】福永 丈朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌史
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
4G065
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD01F
4C076DD37
4C076DD46F
4C076EE32G
4C076EE37
4C076EE53
4C076FF16
4C076FF36
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB282
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC692
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD331
4C083AD332
4C083BB11
4C083CC31
4C083DD31
4C083EE12
4C206AA02
4C206FA41
4C206MA42
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZB33
4C206ZB35
4G065AB03X
4G065AB33Y
4G065AB35Y
4G065BA06
4G065BA09
4G065BA13
4G065BB06
4G065CA03
4G065DA02
4G065EA01
4G065EA02
4G065EA06
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB04
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA16
4H011DH03
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において乳化安定性を向上させる。
【解決手段】乳化組成物は、エタノールと、油剤と、界面活性剤と、ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤と、ヒアルロン酸ナトリウムとを含有し、pHが2.0以上4.5以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールと、油剤と、界面活性剤と、ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤と、ヒアルロン酸ナトリウムとを含有し、
pHが2.0以上4.5以下であることを特徴とする乳化組成物。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸ナトリウムの含有量が、0.01質量%以上0.5質量%以下である請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、平均酸化エチレン付加モル数が30以上50以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記エタノールの含有量が、40質量%以上80質量%以下である請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記油剤が、植物油を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手指消毒剤として用いられる乳化組成物が知られている。
特許文献1は、エタノール、油剤、ポリアクリレートクロスポリマー-6、及び(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーを含有する皮膚外用剤組成物について記載している。手指の消毒、殺菌、殺ウイルス、又は洗浄に用いることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-187825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウイルスには、脂質膜を有するエンベロープウイルスと、脂質膜を有さないノンエンベロープウイルスとが存在することが知られている。エンベロープウイルスには、アルコールによる消毒が有効であることが知られている。近年、ノンエンベロープウイルスに対する消毒効果を高めるために、組成物のpHを酸性に調整する試みがなされている。しかし、乳化組成物の場合ではpHを酸性に調整すると、乳化安定性が低下することによって、経時的に乳化粒子が沈降しやすくなる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する乳化組成物の各態様を記載する。
態様1の乳化組成物は、エタノールと、油剤と、界面活性剤と、ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤と、ヒアルロン酸ナトリウムとを含有し、pHが2.0以上4.5以下である。
【0006】
態様2の乳化組成物は、態様1の乳化組成物において、前記ヒアルロン酸ナトリウムの含有量が、0.01質量%以上0.5質量%以下である。
態様3の乳化組成物は、態様1又は2の乳化組成物において、前記界面活性剤が、平均酸化エチレン付加モル数が30以上50以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する。
【0007】
態様4の記乳化組成物は、態様1~態様3のいずれか一態様に記載の乳化組成物において、前記エタノールの含有量が、40質量%以上80質量%以下である。
態様5の乳化組成物は、態様1~態様4のいずれか一態様に記載の乳化組成物において、前記油剤が、植物油を含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の乳化組成物によると、pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において乳化安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る乳化組成物を具体化した実施形態について説明する。
乳化組成物は、エタノールと、油剤と、界面活性剤と、ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤と、ヒアルロン酸ナトリウムとを含有し、pHが2.0以上4.5以下である。
【0010】
乳化組成物が、ヒアルロン酸ナトリウムを含有することにより、pHが2.0以上4.5以下の酸性に調整された状態において乳化安定性を向上させることができる。
以下、乳化組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
<エタノール>
エタノールとしては、特に制限されず、乳化組成物に配合される公知のエタノールを用いることができる。乳化組成物がエタノールを含有することにより、エタノールが有する手指の消毒、殺菌、殺ウイルス等の作用(以下、まとめて消毒効果ともいう。)を発現させることができる。
【0012】
エタノールの含有量は、特に制限されないが、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、49質量%以上であることがさらに好ましい。また、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0013】
エタノールの含有量が上記数値範囲であると、エタノールによる消毒効果を好適に発現させつつ、乳化状態を維持しやすくなる。
<油剤>
油剤としては、特に制限されず、乳化組成物に配合される公知の油剤を用いることができる。乳化組成物が油剤を含有することにより、乳化組成物を使用した際に、手指に対して潤いを付与することができる。そのため、手指のかさつきや肌荒れを防ぐことができる。また、油剤を含有すると、乳化組成物が粘性を有した状態になりやすいため、使用感を向上させることができる。
【0014】
油剤としては、例えば天然動植物油脂、蝋、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪族炭化水素、合成エステル油、シリコーン誘導体等が挙げられる。
天然動植物油脂の具体例としては、例えばオリーブ油、ミンク油、ヒマシ油、パーム油、牛脂、月見草油、ヤシ油、ヒマシ油、カカオ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油等が挙げられる。これらの中でも、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油、月見草油、ヤシ油、ヒマシ油、カカオ油、マカデミアナッツ油等の植物油は、肌になじみやすいとともに、潤いを守りやすいため好ましい。
【0015】
蝋の具体例としては、例えばミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等が挙げられる。
高級アルコールの具体例としては、例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0016】
高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
高級脂肪族炭化水素の具体例としては、例えば流動パラフィン、固形パラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0017】
合成エステル油の具体例としては、例えばブチルステアレート、ヘキシルラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートイソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0018】
シリコーン誘導体の具体例としては、例えばメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン油が挙げられる。
上記の油剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
油剤の含有量は、特に制限されないが、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
油剤の含有量が上記数値範囲であると、乳化組成物の乳化状態を維持しやすくなる。また、油剤の配合量が3.0質量%以下であると使用感がより向上しやすくなる。
<界面活性剤>
界面活性剤の具体例としては、例えば非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0021】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20ともいう。)、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60ともいう。)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80ともいう。)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルグリコシド、デシルグリコシド等のアルキルグリコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(酸化エチレンの平均付加モル数が10、20、30、40、50、60のもの)、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
【0022】
上記の界面活性剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、界面活性剤は、平均酸化エチレン付加モル数が30以上50以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有することが好ましい。
【0023】
平均酸化エチレン付加モル数が30以上50以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有すると、乳化状態を維持しやすくなる。
界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。また、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
界面活性剤の含有量が上記数値範囲であることにより、乳化状態を維持しやすくなる。
<ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤>
ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤としては、特に制限されず、ヒドロキシプロピル基を有する公知のセルロース系増粘剤を用いることができる。
【0025】
ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤の具体例としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCともいう。)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCともいう。)等が挙げられる。
【0026】
HPMCは、平均分子量が2000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましい。また、20000以下であることが好ましく、15000以下であることがより好ましい。
【0027】
HPMCの平均分子量が上記数値範囲であることにより、pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において乳化状態をより好適に維持することができる。
ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤は、長鎖のアルキル基を有さないことが好ましい。長鎖のアルキル基は、炭素数が18以上のアルキル基を意味するものとする。具体的には、ステアリル基、オレイル基等が挙げられる。長鎖のアルキル基を有さないことにより、乳化組成物の乳化状態を維持しやすくなる。
【0028】
ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤の含有量は、特に制限されないが、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤の含有量が上記数値範囲であることにより、pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において乳化状態をより好適に維持することができる。
【0030】
<ヒアルロン酸ナトリウム>
ヒアルロン酸ナトリウムとしては、特に制限されず、公知のヒアルロン酸ナトリウムを用いることができる。
【0031】
ヒアルロン酸ナトリウムの含有量は、特に制限されないが、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
ヒアルロン酸ナトリウムの含有量が上記数値範囲であることにより、pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において乳化安定性をより向上させることができる。
<その他成分>
乳化組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分、例えば、殺菌剤、抗菌剤、湿潤剤、ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤以外の増粘剤、安定化剤、防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、香料、着色剤、溶媒等を配合してもよい。これら各成分は、乳化組成物に配合される公知のものを使用することができる。これらの成分は、それぞれ一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
殺菌剤の具体例としては、例えばセチルピリジニウム塩化物水和物、ヒノキチオール等が挙げられる。
抗菌剤の具体例としては、例えばパラベン類、安息香酸ナトリウム、トリクロサン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ミノサイクリン塩酸塩、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。なお、殺菌剤と抗菌剤は、有効成分ともいうものとする。
【0034】
湿潤剤の具体例としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤以外の増粘剤の具体例としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。増粘剤は、粘結剤ともいう。
【0035】
安定化剤の具体例としては、例えばエデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0036】
防腐剤の具体例としては、例えば1,2-ジブロモ-2、4-ジシアノブタン、感光素、イソチアゾロン誘導体、ヒダントイン誘導体等が挙げられる。
pH調整剤の具体例としては、例えばクエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、グルコン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの化学的に可能な塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
酸化防止剤の具体例としては、例えばトコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
香料は、天然香料や合成香料であってもよい。また、単品香料や調合香料であってもよい。
【0038】
香料の具体例としては、例えばl-メントール、d-カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0039】
着色剤の具体例としては、例えば緑色1号、緑色3号、青色1号、黄色4号、黄色5号、赤色102号、赤色3号等の法定色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0040】
溶媒の具体例としては、例えば水、エタノール以外のアルコール等が挙げられる。
<乳化組成物の適用形態、剤形、用途>
乳化組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、指定医薬部外品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。
【0041】
乳化組成物の剤形は、特に制限されず、例えば乳液、スプレー剤、ペースト剤、軟膏剤、ジェル、ローション等として使用することができる。
乳化組成物の用途としては、特に制限されず、例えば手指消毒剤、アルコール消毒剤、皮膚外用剤等が挙げられる。
【0042】
乳化組成物のpHは、2.4以上であることが好ましい。また、4.1以下であることが好ましい。
<作用及び効果>
本実施形態の乳化組成物の作用について説明する。
【0043】
乳化組成物を液中で安定に分散させるためには、外相の粘度を大きくすることが効果的である。ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤は、水素イオンの影響を受けにくいノニオン性のセルロースエーテルで、ヒドロキシ基を部分的にヒドロキシプロピル基で置換することで水や混合有機溶媒に溶けやすくなっている。そのため、水素イオン濃度の高いpH2.0以上4.5以下の条件下においても、ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤を含有することにより、乳化状態を維持可能な粘度を付与できる。
【0044】
また、酸性ムコ多糖のヒアルロン酸ナトリウムが乳化粒子表面の電荷的反発を生み出すことで乳化安定性を向上させ、経時的な乳化粒子の沈降を抑制することができる。
本実施形態の乳化組成物の効果について説明する。
【0045】
(1)エタノールと、油剤と、界面活性剤と、ヒドロキシプロピル基を有するセルロース系増粘剤と、ヒアルロン酸ナトリウムとを含有し、pHが2.0以上4.5以下である。
【0046】
ヒアルロン酸ナトリウムを含有することによって、乳化安定性を向上させることができる。したがって、pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において経時的に乳化粒子が沈降しやすくなることを抑制することができる。また、pHが2.0以上4.5以下に調整されていることによって、ノンエンベロープウイルスに対する消毒効果を高めることができる。
【0047】
(2)ヒアルロン酸ナトリウムの含有量が、0.01質量%以上0.5質量%以下である。したがって、pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において乳化安定性をより向上させることができる。
【0048】
(3)界面活性剤が、平均酸化エチレン付加モル数が30以上50以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する。したがって、乳化状態を維持しやすくなる。
(4)エタノールの含有量が、40質量%以上80質量%以下である。したがって、ノンエンベロープウイルスに対する消毒効果に加えて、エンベロープウイルスに対する消毒効果を好適に発現させることができる。
【0049】
(5)油剤が、植物油を含有する。したがって、乳化組成物が肌になじみやすくなるとともに、潤いを守りやすくなる。
【実施例0050】
以下、本発明の構成、及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。
表1に示す実施例1、2及び比較例1、2の乳化組成物を常法に従って各成分を混合することによって製造した。具体的には、油剤と界面活性剤とを先に混合する。これとは別に、エタノール、水、増粘剤、ヒアルロン酸ナトリウム、pH調整剤、抗菌剤を混合する。油剤と界面活性剤の混合液と、エタノール、水、増粘剤、ヒアルロン酸ナトリウム、pH調整剤、抗菌剤の混合液とを混合する。得られた混合液を撹拌することによって乳化組成物を製造した。なお、上記の製造方法は、適宜順番を入れかえて行ってもよい。
【0051】
なお、表1において、各成分の右側に記載した数字は、各成分の含有量(質量%)を意味し、合計で100質量%となるように配合した。乳化組成物は、乳液の形態を有していた。
【0052】
なお、表1において、POE硬化ヒマシ油40は、酸化エチレンの平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を意味する。また、HPMC(分子量10000)、及びHPMC(分子量4000)は、それぞれ平均分子量が10000と4000のヒドロキシプロピルメチルセルロースを意味する。
【0053】
【表1】
(評価試験)
実施例1、2及び比較例1、2の乳化組成物について、pH、乳化状態、及び乳化安定性を評価した。pHの測定には、公知のpH測定器を用いた。乳化状態と乳化安定性の評価方法、及び評価結果について以下に示す。
【0054】
(乳化状態の評価方法)
上記の製造方法によって製造した実施例1、2及び比較例1、2の乳化組成物について、製造直後から外観を目視で観察した。下記の評価基準で評価した。
【0055】
・乳化状態の評価基準
○(良好):製造直後から凝集や沈殿が見られず、一週間経過後も良好な乳化状態が維持されていた場合
×(不可):製造直後に凝集や沈殿が見られた場合、もしくは製造直後は凝集や沈殿が見られないものの、一週間以内に凝集や沈殿が生じた場合
(乳化安定性の評価方法)
上記の製造方法によって製造した実施例1、2及び比較例1、2の乳化組成物について、室温と40℃の2種類の温度条件下で3カ月間放置した。3か月後の乳化組成物の外観を目視で観察した。下記の評価基準で評価した。
【0056】
・乳化安定性評価基準
○(良好):乳化粒子の沈降が見られず、良好な乳化状態が維持されていた場合
×(不可):乳化粒子が沈降していた場合
(評価結果)
表1より、比較例1、2、実施例1、2の乳化組成物は、いずれも乳化状態は良好であった。しかし、比較例1、2の乳化組成物は、ヒアルロン酸ナトリウムを含有しておらず、室温と40℃のいずれの条件においても、乳化安定性が劣ることが確認された。
【0057】
これに対し、実施例1、2では、ヒアルロン酸ナトリウムを含有しているため、室温と40℃のいずれの条件においても、乳化安定性が良好であった。そのため、pHが2.0以上4.5以下に調整された状態において乳化安定性が向上していることが確認された。