(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073303
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】絶縁層の加工方法、及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240522BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240522BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20240522BHJP
B23K 26/06 20140101ALI20240522BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
H05K3/00 N
B23K26/382
B23K26/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184427
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダリ、ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】山内 勉
【テーマコード(参考)】
4E168
5E316
【Fターム(参考)】
4E168AD12
4E168AD18
4E168DA25
4E168EA19
4E168JA17
4E168JB01
4E168KA04
5E316AA02
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD02
5E316DD22
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF01
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316HH40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】絶縁層における大きさに応じた適切な形状の孔の形成を提供する。
【解決手段】配線基板における絶縁層の加工方法は、基板を構成する絶縁層12の表面12aに、遮光部41に囲まれる透光部42を有するマスク4を介してレーザー光Lを照射することと、レーザー光Lによって、絶縁層12に互いに異なる開口面積を有する第1孔1a及び第2孔1cを含む複数の孔1a~1cを形成することと、を含んでいる。マスクは、透光部42として、第1孔1aに対応する第1透光部4aと、第2孔1cに対応する第2透光部4cと、を有しており、第1透光部4aは、平面視における第1透光部4aの面積と平面視における第2透光部4cの面積との大小関係に応じた、第2透光部4cの透光率と異なる透光率を有している。配線基板の製造方法は、絶縁層の加工方法を用いて、絶縁層12を貫通する複数の孔1a~1cを形成することを含んでいる。
【選択図】
図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を構成する絶縁層の表面に、遮光部に囲まれる透光部を有するマスクを介してレーザー光を照射することと、
前記レーザー光によって、前記絶縁層に互いに異なる開口面積を有する第1孔及び第2孔を含む複数の孔を形成することと、
を含む、絶縁層の加工方法であって、
前記マスクは、前記透光部として、前記第1孔に対応する第1透光部と前記第2孔に対応する第2透光部とを有しており、
前記第1透光部は、平面視における前記第1透光部の面積と平面視における前記第2透光部の面積との大小関係に応じた、前記第2透光部の透光率と異なる透光率を有している。
【請求項2】
請求項1記載の加工方法であって、
前記第1透光部の前記面積は前記第2透光部の前記面積よりも大きく、
前記第1透光部の透光率は前記第2透光部の透光率よりも低い。
【請求項3】
請求項2記載の加工方法であって、前記複数の孔を形成することは、前記絶縁層の前記表面での開口面積に対する底面での開口面積の比率について、前記第2孔よりも低い比率を有するように前記第1孔を形成することを含んでいる。
【請求項4】
請求項2記載の加工方法であって、前記複数の孔を形成することは、前記絶縁層の厚さ方向に対して、前記第2孔を囲む壁面が有する傾斜角度よりも大きな傾斜角度を有する壁面に囲まれる前記第1孔を形成することを含んでいる。
【請求項5】
請求項2記載の加工方法であって、前記第1透光部は、所定のパターンで配置されている複数の遮光区画を有している。
【請求項6】
請求項5記載の加工方法であって、前記第2透光部は、所定のパターンで配置されている複数の遮光区画を有している。
【請求項7】
請求項2記載の加工方法であって、前記第1透光部の前記面積は、前記第1透光部を透過するレーザー光で形成される前記第1孔の前記表面における開口面積の50%以上、95%以下である。
【請求項8】
請求項2記載の加工方法であって、
前記レーザー光を照射することは、前記レーザー光による前記透光部の1/Nの縮小像を前記絶縁層の前記表面に結像させる光学系を前記マスクと前記絶縁層との間に配置することを含み、
前記第1透光部の前記面積は、前記第1透光部を透過するレーザー光で形成される前記第1孔の前記表面における開口面積のN倍の50%以上、95%以下である。
【請求項9】
請求項1記載の絶縁層の加工方法を用いて、前記絶縁層を貫通する前記複数の孔を形成することを含む配線基板の製造方法であって、さらに、
所定の導体パターンを含む第1導体層を形成することと、
前記絶縁層を、前記第1導体層を覆うように形成することと、
前記絶縁層の上に第2導体層を形成することと、
前記第1孔及び前記第2孔それぞれの内部に前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体を形成することと、
を含んでいる。
【請求項10】
請求項9記載の配線基板の製造方法であって、
前記ビア導体を形成することは、前記第2孔の内部に第2ビア導体を形成することと、平面視で前記第2ビア導体よりも大きい第1ビア導体を前記第1孔の内部に形成することと、を含み、
前記第1透光部の透光率は前記第2透光部の透光率よりも低い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層の加工方法、及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層配線基板にスルーホールを形成するためのレーザー加工方法が開示されている。特許文献1に開示の方法では、開口を有するマスクがセラミック多層配線基板上の絶縁層の上にセットされる。マスク側から開口を通してエキシマレーザー光を照射することによって、層間導通経路を形成するためのスルーホールが絶縁層に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法では、複数形成される層間導通経路毎に、それぞれに適した形状や十分な信頼性を有する層間導通経路をもたらすスルーホールが形成され得ないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の絶縁層の加工方法は、基板を構成する絶縁層の表面に、遮光部に囲まれる透光部を有するマスクを介してレーザー光を照射することと、前記レーザー光によって、前記絶縁層に互いに異なる開口面積を有する第1孔及び第2孔を含む複数の孔を形成することと、を含んでいる。そして、前記マスクは、前記透光部として、前記第1孔に対応する第1透光部と前記第2孔に対応する第2透光部とを有しており、前記第1透光部は、平面視における前記第1透光部の面積と平面視における前記第2透光部の面積との大小関係に応じた、前記第2透光部の透光率と異なる透光率を有している。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、上記の絶縁層の加工方法を用いて、前記絶縁層を貫通する前記複数の孔を形成することを含んでおり、さらに、所定の導体パターンを含む第1導体層を形成することと、前記絶縁層を、前記第1導体層を覆うように形成することと、前記絶縁層の上に第2導体層を形成することと、前記第1孔及び前記第2孔それぞれの内部に前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体を形成することと、を含んでいる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、大きさに応じた適切な形状及び十分な信頼性を有するビア導体を配線基板に形成し得ることがある。また、そのようなビア導体を含む配線基板を製造し得ると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の絶縁層の加工方法、又は実施形態の配線基板の製造方法を用いて製造される配線基板の一例を部分的に示す平面図。
【
図3A】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板を示す断面図。
【
図3B】実施形態の絶縁層の加工方法における複数の孔の形成工程を示す斜視図。
【
図3C】実施形態の絶縁層の加工方法における複数の孔の形成工程を示す断面図。
【
図3D】実施形態の絶縁層の加工方法で用いられるマスクの一例を示す平面図。
【
図3E】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板を示す断面図。
【
図3F】実施形態の配線基板の製造方法による完成後の配線基板を示す断面図。
【
図4】実施形態の加工方法で用いられるマスク構造の一例を示す断面図。
【
図5A】実施形態の加工方法で用いられるマスクの透光部の一例を示す平面図。
【
図5B】実施形態の加工方法で用いられるマスクの透光部の一例を示す平面図。
【
図6A】実施形態の加工方法で用いられるマスクの透光部の変形例を示す平面図。
【
図6B】実施形態の加工方法で用いられるマスクの透光部の変形例を示す平面図。
【
図6C】実施形態の加工方法で用いられるマスクの透光部の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の絶縁層の加工方法及び一実施形態の配線基板の製造方法が、図面を参照しながら説明される。一実施形態の配線基板の製造方法は、一実施形態の絶縁層の加工方法を用いて絶縁層に複数の孔を形成することを含んでいる。
図1には、本実施形態の配線基板の製造方法を用いて製造される配線基板の一例である配線基板100が部分的に示されており、
図2には、
図1の配線基板100のII-II線での断面図が示されている。
図1は、配線基板100に含まれる絶縁層12及び絶縁層12の表面12a上の導体層22の一部の領域を平面視で示している。配線基板100は、平面視において
図1に示される領域以外の領域を含み得る。なお「平面視」は、実施形態の配線基板の製造方法で製造される配線基板の厚さ方向に沿う視線で、又は、実施形態の絶縁層の加工方法で加工される絶縁層の厚さ方向に沿う視線で、対象物を見ることを意味している。
【0010】
図1及び
図2の配線基板100は、実施形態の配線基板の製造方法で製造される配線基板の一例に過ぎない。すなわち、実施形態の配線基板の製造方法によって、
図1などに例示の配線基板100の積層構造と異なる構造を有する、及び/又は、配線基板100の導体層及び絶縁層の数と異なる数の絶縁層及び導体層を含む、配線基板が製造され得る。なお、以下の説明で参照される各図面では、開示される実施形態が理解され易いように特定の部分が拡大して描かれていることがあり、大きさや長さに関して、各要素が互いの間の正確な比率で描かれていない場合がある。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、配線基板100は、絶縁層11、導体層21(第1導体層)、絶縁層12(第1絶縁層)、及び導体層22(第2導体層)を含んでいる。導体層21は絶縁層11の表面上に形成されている。絶縁層12は、導体層21及び絶縁層11の上に積層されている。そして導体層22は絶縁層12の表面12aの上に形成されている。配線基板100は、さらに、それぞれが、導体層21と導体層22とを接続する複数のビア導体3a~3cを含んでいる。
【0012】
導体層21及び導体層22は、それぞれ任意の導体パターンを有し得る。
図1及び
図2に示される領域において、導体層21は導体パッド211~213を含み、導体層22は、導体パッド221~223を含んでいる。ビア導体3aは、導体パッド211と導体パッド221とを接続しており、ビア導体3bは、導体パッド212と導体パッド222とを接続しており、ビア導体3cは導体パッド213と導体パッド223とを接続している。導体パッド221~223は、それぞれ、導体層22においてビア導体3a~3cに対するアニュアリングを構成する所謂ビアパッドであり得る。また、導体パッド211~213は、それぞれ、その上に各ビア導体が接続される、ビア導体3a~3cのための所謂ビア受けパッドであり得る。導体パッド221及び導体パッド222それぞれからは、
図1の例において配線パターン224が特定の方向に延びている。
【0013】
絶縁層12は、絶縁層12を貫く貫通孔である孔1a、孔1b、及び孔1cを備えている。孔1aは導体パッド211の上に、孔1bは導体パッド212の上に、そして孔1cは、導体パッド213の上に、それぞれ形成されている。ビア導体3aは孔1aの中に、ビア導体3bは孔1bの中に、そしてビア導体3cは孔1cの中に、それぞれ形成されている。
【0014】
絶縁層12の表面12aにおける孔1aの開口面積は、表面12aにおける孔1bの開口面積よりも大きく、表面12aにおける孔1bの開口面積は、表面12aにおける孔1cの開口面積よりも大きい。従って、ビア導体3aにおける導体層22側の端面の面積は、ビア導体3bにおける導体層22側の端面の面積よりも大きく、ビア導体3bにおける導体層22側の端面の面積は、ビア導体3cにおける導体層22側の端面の面積よりも大きい。
【0015】
孔1a~1c、及び、ビア導体3a~3cは、それぞれ、導体層22側から導体層21側に向かって先細りするテーパー形状を有している。孔1aのテーパー率は孔1bのテーパー率よりも大きく、孔1bのテーパー率は孔1cのテーパー率よりも大きい。従って、ビア導体3aのテーパー率はビア導体3bのテーパー率よりも大きく、ビア導体3bのテーパー率はビア導体3cのテーパー率よりも大きい。なお、各ビア導体及び各孔それぞれの「テーパー率」は、一般的なテーパー率の意味と同義である。すなわち、各ビア導体のテーパー率は、絶縁層12の厚さ方向における各ビア導体の長さに対する、各ビア導体の外径(幅)の両端間での差異の比率である。同様に各孔のテーパー率は、絶縁層12の厚さ方向における各孔の長さに対する、各孔の開口径(開口幅)の両端間での差異の比率である。なお、「絶縁層12の厚さ方向」(すなわち配線基板100の厚さ方向)は、以下では「Z方向」とも称される。
【0016】
換言すると、孔1aにおける絶縁層12の表面12aでの開口面積に対する底面(導体パッド211の表面)での開口面積の比率は、孔1bにおける表面12aでの開口面積に対する底面(導体パッド212の表面)での開口面積の比率よりも低い。そして、孔1bのこの比率は、孔1cにおける表面12aでの開口面積に対する底面(導体パッド213の表面)での開口面積の比率よりも低い。従って、ビア導体3aにおける導体層22側の端面の面積に対する導体層21側の端面の面積の比率は、ビア導体3bにおける導体層22側の端面の面積に対する導体層21側の端面の面積の比率よりも低い。そして、ビア導体3bのこの比率は、ビア導体3cにおける導体層22側の端面の面積に対する導体層21側の端面の面積の比率よりも低い。
【0017】
また、Z方向に対する、孔1aを囲む絶縁層12の壁面の傾斜角度θ1は、孔1bを囲む絶縁層12の壁面のZ方向に対する傾斜角度θ2よりも大きい。そして、傾斜角度θ2は、孔1cを囲む絶縁層12の壁面のZ方向に対する傾斜角度θ3よりも大きい。従って、Z方向に対するビア導体3aの側面の傾斜角度は、Z方向に対するビア導体3bの側面の傾斜角度よりも大きい。そして、Z方向に対するビア導体3bの側面の傾斜角度は、Z方向に対するビア導体3cの側面の傾斜角度よりも大きい。
【0018】
孔1a、孔1b、及び孔1cは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において「第1孔」又は「第2孔」であり得る。具体的には、孔1aは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において「第1孔」であり得る。孔1bは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において、一態様では「第1孔」であり得、別の態様では「第2孔」であり得る。そして、孔1cは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において「第2孔」であり得る。「第1孔」である孔1aに対して、孔1b及び孔1cの何れもが「第2孔」であり得、「第2孔」である孔1cに対して、孔1a及び孔1bの何れもが「第1孔」であり得る。すなわち孔1bは、孔1aに対する「第2孔」であり得、孔1cに対する「第1孔」であり得る。
【0019】
ビア導体3a、ビア導体3b、及びビア導体3cは、実施形態の配線基板の製造方法において「第1ビア導体」又は「第2ビア導体」であり得る。具体的には、ビア導体3aは、実施形態の配線基板の製造方法及において「第1ビア導体」であり得る。ビア導体3bは、実施形態の配線基板の製造方法において、一態様では「第1ビア導体」であり得、別の態様では「第2ビア導体」であり得る。そして、ビア導体3cは、実施形態の配線基板の製造において「第2ビア導体」であり得る。「第1ビア導体」であるビア導体3aに対して、ビア導体3b及びビア導体3cの何れもが「第2ビア導体」であり得、「第2ビア導体」であるビア導体3cに対して、ビア導体3a及びビア導体3bの何れもが「第1ビア導体」であり得る。すなわちビア導体3bは、ビア導体3aに対する「第2孔」であり得、ビア導体3cに対する「第1孔」であり得る。孔1bが「第1孔」であるとき、ビア導体3bは「第1ビア導体」であり得、孔1bが「第2孔」であるとき、ビア導体3bは「第2ビア導体」であり得る。
【0020】
絶縁層11及び絶縁層12は、後述されるように、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの適切な絶縁性を有する樹脂で構成され得る。導体層21、22、及びビア導体31~33は、銅やニッケルなどの適切な導電性を有する任意の金属で構成され得る。
【0021】
図1及び
図2に例示の配線基板100が製造される場合を例に用いて、実施形態の配線基板の製造方法が、
図3A~
図3Fを参照して以下に説明される。またこの説明を通じて、実施形態の絶縁層の加工方法が配線基板100の絶縁層12への加工を例に用いて説明される。
【0022】
図3Aに示されるように、絶縁層11が用意され、絶縁層11の一面上に導体層21が形成される。絶縁層11は、任意の方法で用意され得る。例えば、Cステージ状態の完全硬化された樹脂からなる絶縁基板が絶縁層11として用意され得る。或いは、既に形成された1組以上の絶縁層及び導体層からなる積層体(図示せず)の上に、Bステージ状態の樹脂を熱圧着することによって、絶縁層11が用意されてもよい。絶縁層11には、後述される絶縁層12と同様に、例えばエポキシ樹脂のような任意の絶縁性樹脂が用いられる。絶縁層11には、以下に説明される導体層21の形成工程において、ビア導体3a~3c(
図2参照)のようなビア導体が形成されてもよい。その場合、絶縁層11には、例えばレーザー光の照射などによって、貫通孔(図示せず)が形成されてもよい。
【0023】
導体層21は、絶縁層11の一面上に、例えば、サブトラクティブ法やセミアディティブ法などの、任意の導体層の形成方法を用いて形成され得る。これら任意の導体層の形成方法において、適切な開口を有するエッチングレジストやめっきレジストを用いて、導体パッド211~213のような所定の導体パターンを含む導体層21が形成される。導体パッド211~213は、それぞれ、後工程で形成される孔1a~1c(
図3E参照)と平面視で重なる位置に形成される。導体層21の形成において、絶縁層11に関して導体層21と反対側の導体層(図示せず)と導体層21とを接続するビア導体が形成されてもよい。導体層21は、例えば銅やニッケルなどの適切な導電性を有する金属を用いて形成され得る。
【0024】
図1に示されるように、さらに、絶縁層12が、導体層21及び絶縁層11を覆うように形成される。絶縁層12は、例えば、フィルム状やシート状に成形されたエポキシ樹脂を絶縁層11及び導体層21上に積層し、熱圧着することによって形成される。絶縁層12は、エポキシ樹脂以外にも、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)及びフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂、並びに、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン(PTFE)樹脂、ポリエステル(PE)樹脂、及び変性ポリイミド(MPI)樹脂のような熱可塑性樹脂のいずれか1以上を用いて形成され得る。さらに、シリカ、アルミナなどの無機フィラー(図示せず)を含む絶縁層12が形成されてもよい。
【0025】
このように、本実施形態の配線基板の製造方法は、所定の導体パターン(導体パッド211~213)を含む第1導体層(導体層21)を形成することと、第1導体層を覆うように絶縁層(絶縁層12)を形成することと、を含んでいる。本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、一実施形態の絶縁層の加工方法を用いて、絶縁層を貫通する複数の孔を形成することを含んでいる。
図3B~
図3Eを参照して、一実施形態の絶縁層の加工方法が説明される。
【0026】
本実施形態の絶縁層の加工方法は、
図3B~
図3Dに示されるように、所定の領域を照射する光を遮断するマスク4を介して絶縁層12の表面12aにレーザー光Lを照射することと、このレーザー光Lの照射によって、
図3Eに示されるように、複数の孔10を絶縁層12に形成することと、を含んでいる。なお、
図3Dは、本実施形態の加工方法で用いられるマスク4の一例の平面図を示している。絶縁層12は、絶縁層11及び導体層21と共に、製造工程中の配線基板である基板101を構成している。マスク4は、照射される光を略遮断する遮光部41、及び、遮光部41に囲まれていて照射される光を特定の透過率で透過させる透光部42を有している。
図3B~
図3Eの例において、複数の孔10は、互いに異なる開口面積を有する第1孔(例えば孔1a又は孔1bであり得る)、及び第2孔(例えば孔1b又は孔1cであり得る)を含んでいる。
【0027】
図3B及び
図3Cに示されるように、基板101の一面を覆っている絶縁層12の上方に、絶縁層12に対向するようにマスク4が配置され、レーザー発振器などの光源LSから、レーザー光Lがマスク4に照射される。レーザー光Lとしては、エキシマレーザー光が例示される。エキシマレーザー光は、短いパルス幅と高い出力エネルギーにより加工対象を広範囲に渡って一括して照射できるうえ、比較的少ない発熱で加工対象の樹脂などを分解して除去することができる。発熱が少ないので、加工対象の熱変形が少なく、そのためエキシマレーザー光は、微細な孔10の形成に用いるレーザー光として好ましいことがある。しかし、本実施形態の絶縁層の加工方法で用いられるレーザー光は、エキシマレーザー光に限定されない。
【0028】
図3B及び
図3Cに示される例では、レーザー光を集光させる光学系5が、マスク4と絶縁層12との間に配置されている。光学系5としては凸レンズが例示される。しかし、光学系5は凸レンズに限定されず、光を集束させ得る任意の光学素子又は光学機器が、光学系5として用いられ得る。マスク4を透過したレーザー光Lは、光学系5によって集束されて絶縁層12を照射する。このように、本実施形態の絶縁層の加工方法においてレーザー光Lを照射することは、光学系5をマスク4と絶縁層12との間に配置することを含み得る。
【0029】
一例として、レーザー光Lによる透光部42の1/Nの縮小像を絶縁層12の表面12aに結像させる光学系5が用いられる。例えば光学系5が凸レンズからなり、凸レンズの厚さ方向の中心からマスク4及び表面12aそれぞれまでの距離がD1、D2であり、1/D1+1/D2=1/F(F:凸レンズの焦点距離)である場合、光学系5は、透過部42の像(実像)をD2/D1倍で表面12において結像させ得る。この場合、D2/D1が、縮小率1/Nとなる。すなわち、絶縁層12の表面12において結像する透光部42の像の縮小率1/Nは、光学系5が凸レンズからなる場合、光学系5に対する絶縁層12及びマスク4それぞれの位置を適切に選択することにより、任意に選択され得る。
【0030】
マスク4の透光部42を透過した所定のビーム径を有するレーザー光Lが絶縁層12の表面12aを照射することによって、絶縁層12のうちの照射された部分(被照射部分)が分解されて除去される。絶縁層12の被照射部分は、十分なエネルギー密度を有するレーザー光が照射されると、絶縁層12の厚さ全体に渡って除去される。その結果、絶縁層12を貫通する孔1a~1cが形成される。
【0031】
図3C及び
図3Dに示されるように、本実施形態の絶縁層の加工方法において用いられるマスク4は、孔1aに対応する透光部4aと、孔1bに対応する透光部4bと、孔1cに対応する透光部4cと、を透光部42として有している。なお、各透光部が各孔に「対応する」、及び、各透光部に各孔が「対応する」は、当該透光部を透過するレーザー光Lによって当該孔が形成されることを意味する。例えば、「孔1aに対応する透光部4a」は、透光部4aが、孔1aを形成するレーザー光Lを透過させる透光部であることを意味している。
【0032】
すなわち、透光部4aを透過したレーザー光Lによって孔1aが形成され、透光部4bを透過したレーザー光Lによって孔1bが形成され、透光部4cを透過したレーザー光Lによって孔1cが形成される。そのため、
図3C及び
図3Dの例において、透光部4aは、平面視において透光部4bの面積よりも大きな面積を有するように設けられており、透光部4bは、平面視において透光部4cの面積よりも大きな面積を有するように設けられている。
【0033】
透光部4a、透光部4b、及び透光部4cは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において「第1透光部」又は「第2透光部」であり得る。具体的には、透光部4aは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において「第1透光部」であり得る。透光部4bは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において、一態様では「第1透光部」であり得、別の態様では「第2透光部」であり得る。そして、透光部4cは、実施形態の配線基板の製造方法及び実施形態の絶縁層の加工方法において「第2透光部」であり得る。
【0034】
「第1透光部」である透光部4aに対して、透光部4b及び透光部4cの何れもが「第2透光部」であり得、「第2透光部」である透光部4cに対して、透光部4a及び透光部4bの何れもが「第1透光部」であり得る。すなわち、透光部4bは、透光部4aに対する「第2透光部」であり得、透光部4cに対する「第1透光部」であり得る。孔1bが「第1孔」であるとき、透光部4bは「第1透光部」であり得、孔1bが「第2孔」であるとき、透光部4bは「第2透光部」であり得る。
【0035】
本実施形態の絶縁層の加工方法では、第1透光部(例えば透光部4a)は、平面視における第1透光部の面積と平面視における第2透光部(例えば透光部4c)の面積との大小関係に応じた、第2透光部の透光率と異なる透光率を有している。例えば、本実施形態の絶縁層の加工方法では、第1透光部(例えば透光部4a)の平面視における面積は、第2透光部(例えば透光部4c)の平面視における面積よりも大きくてもよい。その場合、第1透光部の透光率は第2透光部の透光率よりも低い。各透光部の「透光率」は、各透光部に入射する光の光束値に対する、各透光部を通って各透光部から出射する光の光束値の比率である。
図3C及び
図3Dの例では、前述したように平面視において互いに異なる面積を有する透光部4a、透光部4b、及び透光部4cは、互いの面積の大小関係に応じた、互いに異なる透光率を有している。
【0036】
このように互いに異なる透光率を有する透光部4a~4cを透過したレーザー光は、自身が透過した透光部の透光率に応じたエネルギー密度を有し得る。そのため、透光部4a~4cを透過した各レーザー光は、互いに異なるエネルギー密度を有する。すなわち、透光部4aを透過したレーザー光Lは、透光部4bを透過したレーザー光L、及び透光部4cを透過したレーザー光Lの何れのエネルギー密度よりも低いエネルギー密度を有し得る。また、透光部4bを透過した光は、透光部4cを透過したレーザー光Lのエネルギー密度よりも低いエネルギー密度を有し得る。
【0037】
一方、互いに異なるエネルギー密度で絶縁層12の表面12aを照射するレーザー光は、表面12aから絶縁層12内を進むことに伴う加工能力の低下度合いが異なるため、互いに異なるテーパー率の孔を絶縁層12に形成し得る。そのため、互いに異なる透光率を有する透光部4a~4cそれぞれを透過したレーザー光Lによって、互いに異なるテーパー率を有する孔1a~孔1cを形成することができる。
【0038】
ここで、表面12aにおいて比較的開口面積の小さい孔1cでは、孔1cに形成されるビア導体3a(
図2参照)と導体層21と間の一定以上の接触面積を確保することが好ましいことがある。それはビア導体3aと導体層21との十分な密着性が得られ易いからである。一方、比較的開口面積の大きな孔1aでは、その比較的大きな開口面積のおかげで導体層21との密着性はそもそも得られ易いと推定される。むしろ、その表面12aでの大きな開口面積と略同じ面積で導体層21にレーザー光Lが照射されると、導体層21に過剰なストレスが加わることがある。その場合、導体層21と絶縁層12との剥離や絶縁層12のクラックなどを生じさせることがある。
【0039】
そこで、本実施形態の絶縁層の加工方法では、平面視における面積の大小関係に応じて互いに異なる透光率を有する複数の透光部を有するマスクを介してレーザー光が照射される。そのため絶縁層には、その表面の所定の部分を照射するレーザー光が透過した透光部の透光率に応じたテーパー率を有する複数の孔が形成される。例えば、平面視で比較的大きな面積に応じた低い透光率を有する透過部と、平面視で比較的小さな面積に応じた高い透光率を有する透光部とを含むマスクを用いてレーザー光の照射を行うことによって、それぞれの開口面積に適したテーパー率を有する複数の孔を絶縁層に形成することができる。
【0040】
すなわち、比較的小さな開口面積と小さなテーパー率とを有する孔、及び、比較的大きな開口面積と大きなテーパー率とを有する孔が形成され得る。後述されるように、これら各孔にビア導体が形成されると、比較的小さな開口面積を有する孔には、その穴の底面側で接する導体層との接触面積の低下が抑制されたビア導体が形成され得る。一方、比較的大きな開口面積を有する孔を、その穴の底面側の導体層への過大なストレスの付加を回避して形成し得ることがある。従って、本実施形態の絶縁層の加工方法によれば、大きさに応じた適切な形状及び十分な信頼性を有するビア導体を配線基板に形成し得ることがある。
【0041】
図3B~
図3Dの例では、前述したように、平面視において、透光部4aの面積は透光部4bの面積よりも大きく、透光部4bの面積は透光部4cの面積よりも大きい。従って好ましくは、透光部4aの透光率は透光部4bの透光率よりも低く、透光部4bの透光率は透光部4cの透光率よりも低い。透光部4cを透過したレーザー光Lによって形成される比較的小さな開口面積と比較的小さなテーパー率とを有する孔1cには、後述される工程において、導体層21との間に求められる密着強度を備えたビア導体3c(
図3F参照)が形成されると考えられる。また、透光部4aを透過したレーザー光Lによって、比較的大きな開口面積を有すると共に、導体層21への過大なストレスを回避させる比較的大きなテーパー率を有する孔1aが形成されると考えられる。そして透光部4bを透過したレーザー光Lでも、導体層21へのストレスを軽減する適度なテーパー率を有する孔1bが形成され、後述される工程において、孔1bの中に、導体層21との間に求められる密着強度を備えたビア導体3b(
図3F参照)が形成されると考えられる。
【0042】
絶縁層12の厚さは、例えば、5μm~35μm程度であり得る。絶縁層12の厚さが厚ければ、テーパー形状を有する各孔の底面での開口面積はより狭まる傾向となり、一方、底面側の導体層に加えられるストレスは小さくなると考えられる。従って、孔1a~1cの開口面積に加えて絶縁層12の厚さに応じて、マスク4の各透光部の透光率が選択されてもよい。マスク4の各透光部の透光率は、例えば10%~100%の範囲から選択される。例えば互いに異なる厚さの複数の絶縁層12が積層されて各絶縁層12に互いに同じ開口面積の孔1aが形成される場合がある。その場合、より厚い絶縁層12への孔1aの形成に用いられるマスク4の透光部4aには、より薄い絶縁層12への孔1aの形成に用いられるマスク4の透光部4aの透光率よりも高い透光率が選択されてもよい。絶縁層12の厚さに応じた適切なテーパー率を有する孔1aなどの各孔が形成されると考えられる。
【0043】
マスク4の透光部4a~4cは、平面視において、それぞれが対応する孔における絶縁層12の表面12aでの開口面積に対応する面積を有し得る。例えば、
図3B及び
図3Cの例のように、各透光部の1/Nの縮小像を表面12aに結像させる光学系5が用いられる場合、透光部4a~4cは、それぞれの対応する孔1a~1cにおける表面12aでの開口面積のN倍の面積を平面視において有していてもよい。
【0044】
しかし、100%よりも低い透光率を有し得る各透光部は、表面12aにおいて所望の開口面積の孔が形成されるように、各孔の開口面積のN倍よりも小さな面積を有していてもよい。例えば、第1透光部(例えば透光部4a又は透光部4b)の平面視における面積は、第1透光部に対応する第1孔(例えば孔1a又は孔1b)における絶縁層12の表面12aでの開口面積のN倍の50%以上、95%以下であってもよい。
【0045】
なお、本実施形態の絶縁層の加工方法では、絶縁層への複数の孔の形成において、
図3B及び
図3Cに示されるような光学系5は、必ずしも用いられない。マスク4を透過した光が直接絶縁層12の表面12aを照射してもよい。その場合、第1透光部(例えば透光部4a又は透光部4b)の平面視における面積は、第1透光部に対応する第1孔(例えば孔1a又は孔1b)における絶縁層12の表面12aでの開口面積の50%以上、95%以下であってもよい。
【0046】
図3B~
図3Dに一例が示されるレーザー光Lの照射によって、
図3Eに示されるように、複数の孔10が絶縁層12に形成される。透光率の異なる透光部4a~4c(
図3D参照)をそれぞれ透過したレーザー光によって、互いに異なるテーパー率を有する孔1a、孔1b、及び孔1cが形成されている。
【0047】
図3Eの例において、孔1aのテーパー率は孔1bのテーパー率よりも高く、孔1bのテーパー率は孔1cのテーパー率よりも高い。すなわち、本実施形態の絶縁層の加工方法において複数の孔10を形成することは、絶縁層12の表面12aでの開口面積に対する底面での開口面積の比率について、第2孔(例えば孔1b又は孔1c)よりも低い比率を有するように第1孔(例えば孔1a又は孔1b)を形成することを含み得る。
【0048】
換言すれば、本実施形態の絶縁層の加工方法において複数の孔10を形成することは、絶縁層12の厚さ方向(Z方向)に対して、第2孔(例えば孔1b又は孔1c)を囲む壁面が有する傾斜角度(例えば
図3Eに示される傾斜角度θ3)よりも大きな傾斜角度(例えば
図3Eに示される傾斜角度θ1)を有する壁面に囲まれる第1孔(例えば孔1a又は孔1b)を形成することを含み得る。
【0049】
図3Fに示されるように、形成された孔1a、孔1b、及び孔1cそれぞれの内部に、ビア導体3a、ビア導体3b、及びビア導体3cが形成され、絶縁層12の表面12a上に導体層22(第2導体層)が形成される。このように実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、絶縁層12の上に導体層22を形成することと、第1孔(例えば孔1a又は孔1b)及び第2孔(例えば孔1b又は孔1c)それぞれの内部に導体層21と導体層22とを接続するビア導体3a~3cを形成することと、を含んでいる。
【0050】
図3Fの例において、孔1aの内部に形成されるビア導体3aは、平面視で、孔1bに形成されるビア導体3bよりも大きく、ビア導体3bは、平面視で、孔1cに形成されるビア導体3cよりも大きい。このように本実施形態の配線基板の製造方法においてビア導体3a~3cを形成することは、第2孔(例えば孔1b又は孔1c)の内部に第2ビア導体(例えばビア導体3b又はビア導体3c)を形成することを含み得る。さらに、本実施形態の配線基板の製造方法においてビア導体3a~3cを形成することは、平面視で第2ビア導体よりも大きい第1ビア導体(例えばビア導体3a又はビア導体3b)を第1孔(例えば孔1a又は孔1b)の内部に形成することと、を含み得る。
【0051】
導体層22は、例えば、サブトラクティブ法やセミアディティブ法などの、任意の導体層の形成方法を用いて形成され得る。これら任意の導体層の形成方法による導体層22の形成を通じて、ビア導体3a~3cが形成され得る。以上の工程を経ることによって、
図1及び
図2の例の配線基板が製造され得る。
【0052】
図4には、
図3Cに示されるマスク4の具体的な構造の一例が示されている。
図3Cと同様に
図4においても、マスク4は、遮光部41と、透光部4a、4b、4cとを有している。
図4に示される構造では、マスク4は、透光性のマスク本体40と、マスク本体40の表面上に成膜されていて略完全に光を遮る遮光膜400~401とを含んでいる。遮光膜400は遮光部41を形成している。複数の遮光膜401は、透光部4a及び透光部4bに配置されている。遮光膜401が、透光部4a及び透光部4bそれぞれの透光率を低下させている。なお、透光部4cにはいずれの遮光膜も配置されていない。すなわち、
図4の例の透光部4cは略100%の透光率を有している。しかし、透光部4cに、100%未満の所定の透光率を実現すべく遮光膜401が配置されていてもよい。
【0053】
マスク本体40は、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラスなどの板ガラスや、アクリルガラスなどの有機ガラス板からなる。略100%の高い透光率を有する材料がマスク本体40の材料として好ましいと考えられる。遮光膜400~401は、例えばクロム、アルミニウム、又は銅などの、光を反射する任意の金属膜や、光を吸収する有機性インクによる塗膜であり得る。
【0054】
なお、本実施形態の絶縁層の加工方法に使用されるマスク4の構造は、
図4の例のように、ガラス板などの透光性の板材の表面上の所定の部分に遮光膜が配置されたような構造でなくてもよい。例えば、
図4のマスク本体40そのものが、遮光部41を形成する金属などの遮光性部材と、透光部4a~4cを構成する透光性部材とで構成されていてもよい。そしてその各透光部の透光性部材の中に、微細な遮光性部材が分散されていてもよい。また、一部又は全部の透光部が、各透光部に求められる透光率を有する半透明のガラスなどで構成されていてもよい。
【0055】
図5A及び
図5Bには、
図4の例の透光部4b及び透光部4aの平面図が、それぞれ示されている。なお、
図5A及び
図5Bでは、倍率の調整によって透光部4bと透光部4aとが、略同じ大きさで描かれている。透光部4b及び透光部4aの何れにおいても、
図4に示されている遮光膜401によって、レーザー光が遮断される一画である遮光区画402が構成されている。略正方形の複数の遮光区画402が、交差する二方向それぞれに並べられている。すなわち、複数の遮光区画402が、格子状に、又はマトリクス状の配列で、配置されている。
【0056】
透光部4bの平面視における面積に対する、透光部4bのうちの遮光区画402以外の領域の面積の比率によって、透光部4bの透光率が定まる。同様に、透光部4aの平面視における面積に対する、透光部4aのうちの遮光区画402以外の領域の面積の比率によって、透光部4aの透光率が定まる。このように、本実施形態の絶縁層の加工方法に使用されるマスク4の第1透光部(例えば透光部4a)は、所定のパターンで配置されている複数の遮光区画402を有し得る。また、本実施形態の絶縁層の加工方法に使用されるマスク4の第2透光部(例えば透光部4b)は、所定のパターンで配置されている複数の遮光区画402を有し得る。
【0057】
複数の遮光区画402は、好ましくは、先に参照した
図3B及び
図3Cの例における光学系5を構成する凸レンズの開口数とレーザー光Lの波長とで定まる分解能力のN倍以下の一辺の長さ及び間隔で配置される。その場合、絶縁層12の表面12a(
図3C参照)において、個々の遮光区画402の像は結像しない。従って、絶縁層12において孔1a~1c(
図3C参照)のような各孔が形成される領域内に略均一にレーザー光Lの強度が分散する。
【0058】
図6A~
図6Cには、本実施形態の絶縁層の加工方法に使用されるマスク4の透光部42の遮光区画402の変形例が示されている。
図6Aの例では、遮光部41に囲まれた透光部42内に、所定の幅を有する直線状の複数の遮光区画402が互いに平行に配列されている。複数の遮光区画402とその間の部分とによってストライプ模様が形成されている。遮光区画402の幅と遮光区画402以外の部分の幅との合計に対する遮光区画402の幅の比率によって、遮光率(1-透光率)が略決定される。
【0059】
図6Bの例では、遮光部41に囲まれた透光部42内に、互いに異なる外径及び内径を有する円環状の複数の遮光区画402が配置されている。複数の遮光区画402は同一の中心点の周囲に配置されていて、同心円模様を形成している。各遮光区画402の外径と内径との差、及び各遮光区画402同士の間隔を適宜選択することによって、所望の透光率が実現される。
【0060】
図6Cの例では、遮光部41に囲まれた透光部42は、遮光区画402が所定のパターンで配置された円環形状の第1部分42aと、第1部分42aの内周側に設けられた円形状の第2部分42bとを有している。第2部分42aには、遮光区画402が配置されていない。すなわち第2部分42aは略100%の透光率を有している。
図6Cの透光部42は、互いに透光率の異なる複数の部分を有している。このように本実施形態の絶縁層の加工方法に使用されるマスクでは、1つの透光部に透光率の異なる領域が複合されていてもよい。適切なテーパー率を有する孔を、加工対象の絶縁層をより確実に貫くように形成し得ることがある。
【0061】
実施形態の絶縁層の加工方法及び実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば、実施形態の絶縁層の加工方法によって、各図面に示される孔1a~1cの数と異なる数の孔が絶縁層に形成されてもよい。また、同一の開口面積を有する複数の孔が、開口面積の異なる孔と共に形成されてもよい。また、
図2などの例の孔1cのような最も開口面積の小さな穴として、テーパー形状を有さない孔が形成されてもよい。前述されたように、実施形態の配線基板の製造方法によって、各図面に示される積層構造と異なる構造を有する配線基板や、各図面に示される導体層の層数と異なる数の導体層を含む配線基板が製造されてもよい。実施形態の絶縁層の加工方法及び実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 配線基板
101 製造工程中の基板
1a 孔(第1孔)
1b 孔(第1孔又は第2孔)
1c 孔(第2孔)
11、12 絶縁層
12a 表面
21 導体層(第1導体層)
22 導体層(第2導体層)
3a~3c ビア導体
4 マスク
40 マスク本体
402 遮光区画
41 遮光部
42 透光部
4a 透光部(第1透光部)
4b 透光部(第1透光部又は2透光部)
4c 透光部(第2透光部)
5 光学系
L レーザー光
θ1~θ3 各孔を囲む絶縁層の壁面の傾斜角度