(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073305
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】食品乾燥方法
(51)【国際特許分類】
F26B 3/04 20060101AFI20240522BHJP
F26B 9/06 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F26B3/04
F26B9/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184429
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】507092573
【氏名又は名称】A・Tコミュニケーションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522310236
【氏名又は名称】スターリング エンジン ジャパン 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】正木 則久
(72)【発明者】
【氏名】豊泉 博
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕士
(72)【発明者】
【氏名】東 陽一
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC67
3L113BA18
3L113DA11
3L113DA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】迅速かつ乾燥ムラが少ない食品の乾燥方法を提供する。
【解決手段】乾燥室内に,乾燥対象となる食品を設置する食品設置工程と,食品設置工程の後に,乾燥室内に設置された空気活性化部に接触した空気である活性化空気を食品に接触させる活性化空気接触工程と,食品設置工程の後に,乾燥室内の温度を80℃以上100℃以下まで上昇させる加温工程と,加温工程の後に,乾燥室内の温度を-30℃以上-10℃以下まで下降させる冷却工程とを含み,空気活性化部は,空気と接触することで電磁波又は帯電粒子を放出可能である活性化粒子を含む,食品乾燥方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室内に,乾燥対象となる食品を設置する食品設置工程と,
前記食品設置工程の後に,前記乾燥室内に設置された空気活性化部に接触した空気である活性化空気を前記食品に接触させる活性化空気接触工程と,
前記食品設置工程の後に,前記乾燥室内の温度を80℃以上100℃以下まで上昇させる加温工程と,
前記加温工程の後に,前記乾燥室内の温度を-30℃以上-10℃以下まで下降させる冷却工程とを含み,
前記空気活性化部は,空気と接触することで電磁波又は帯電粒子を放出可能である活性化粒子を含む,
食品乾燥方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって,
前記食品は,野菜又は果物である,方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって,
前記活性化空気接触工程及び前記加温工程により前記食品の細胞壁を破壊する,方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって,
前記乾燥室の内壁には遮熱材が設置されている,方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって,
前記活性化粒子は,
(1)ラジウムを含む粒子,(2)角閃石を含む粒子,及び(3)炭素とケイ素を含む粒子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の粒子である,方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって,
前記冷却工程は,スターリングエンジン冷却機を用いる,方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって,
前記冷却工程は,前記乾燥室内の気圧を10Pa以下に減圧する,方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって,
前記冷却工程の後に,前記乾燥室に常温の空気を注入する空気注入工程をさらに含む,方法。
【請求項9】
食品を乾燥させるための食品乾燥装置であって,
前記食品を収容するための乾燥室と,
前記乾燥室内を加温するための加温部と,
活性化空気を得るための空気活性部と,
前記乾燥室内を冷却するための冷却部とを有し,
前記加温部は,
タービンと,
前記タービンに駆動されて空気を圧縮するブロワと,
前記ブロワの吐出空気を前記乾燥室内に導くための温風通路とを有し,
前記空気活性部は,前記温風通路内に設置され,前記吐出空気に作用して前記活性化空気を得るものであり,
前記冷却部は,スターリングエンジン冷却機を有する
食品乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,食品を乾燥する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-135544号公報には,木材乾燥装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
迅速かつ乾燥ムラが少ない食品の乾燥方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は,基本的には,電磁波又は帯電粒子を食品と接触させ,食品表面(例えば細胞壁)を破壊することで,水分が流出しやすい状態とし,そのうえで乾燥を行うことで,食品を迅速かつ乾燥ムラが少なく乾燥できるという知見に基づく。
【0006】
この発明の食品乾燥方法について説明する。
この方法は,
乾燥室内に,乾燥対象となる食品を設置する食品設置工程と,
乾燥室内に設置された空気活性化手段に接触した空気である活性化空気を食品に接触させる活性化空気接触工程と,
食品設置工程の後に,乾燥室内の温度を80℃以上100℃以下まで上昇させる加温工程と,
加温工程の後に,乾燥室内の温度を-30℃以上-10℃以下まで下降させる冷却工程とを含み,
空気活性化手段は,空気と接触することで電磁波又は帯電粒子を放出可能である活性化粒子を含む。
食品の例は,野菜又は果物である。活性化空気接触工程及び加温工程により食品の細胞壁を破壊することが好ましい。
乾燥室の内壁には遮熱材が設置されていることが好ましい。
活性化粒子の例は,
(1)ラジウムを含む粒子,(2)角閃石を含む粒子,及び(3)炭素とケイ素を含む粒子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の粒子である。
冷却工程は,スターリングエンジン冷却機を用いることが好ましい。
冷却工程は,乾燥室内の気圧を10Pa以下に減圧することが好ましい。
冷却工程の後に,乾燥室に常温の空気を注入する空気注入工程をさらに含むことが好ましい。
【0007】
次に食品乾燥装置について説明する。この食品乾燥装置は,食品を乾燥させるための食品乾燥装置1である。
そして,この食品乾燥装置1は,食品を収容するための乾燥室3と,
乾燥室3内を加温するための加温部5と,
活性化空気を得るための空気活性部7と,
乾燥室3内を冷却するための冷却部9とを有し,
加温部5は,
タービンと,
タービンに駆動されて空気を圧縮するブロワと,
ブロワの吐出空気を乾燥室3内に導くための温風通路とを有し,
空気活性部7は,温風通路内に設置され,吐出空気に作用して活性化空気を得るものであり,
冷却部9は,スターリングエンジン冷却機を有する
食品乾燥装置1。
【発明の効果】
【0008】
迅速かつ乾燥ムラが少ない食品の乾燥方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は,食品乾燥方法に用いられる食品乾燥装置を説明するための概念図である。
【
図2】
図2は,食品乾燥方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、食品乾燥室を天井側から見た概念図である。
【
図5】
図5は、食品乾燥室を側面から見た概念図である。
【
図6】
図6は、実施例において得られた活性化部材を示す図面に代わる写真である。
【
図7】
図7は、ヒーター送風機に活性化部材を固定した様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0011】
図1は,食品乾燥方法に用いられる食品乾燥装置を説明するための概念図である。
図1に示される通り,食品乾燥装置1は,食品を収容するための乾燥室3と,乾燥室3内を加温するための加温部5と,活性化空気を得るための空気活性部7と,乾燥室3内を冷却するための冷却部9とを有する。乾燥室3は,図示しない扉により開閉できるようにされていてもよい。
【0012】
乾燥室3
乾燥室3は,用途に応じて適宜ふさわしい容積のものを用いればよい。特開2016-135544号公報に記載された乾燥室の壁部は断熱材を塗布した鋼板によって,断熱材を挟み込んだ複合的な構成素材によって構成されている。この発明の乾燥室の内壁には遮熱材が設置されていることが好ましい。具体的な遮熱材の構成は,2枚のアルミニウムフィルムと,2枚のアルミニウムフィルムの間に空気層を形成するための壁とを有するものである。つまり,遮熱材は,乾燥室内に向いている面に反射部材が設置されているものが好ましい。このような構成を有する遮熱材を用いることで,加温及び冷却を極めて迅速に行うことができる。また,乾燥室内に生ずる熱や電磁波を効果的に反射させることができる。断熱材,遮熱材及び反射部材は公知である。遮熱材の例は,外部環境からの輻射熱を遮断する役目をするものであり,外面を鏡面研磨した板材(金属板)m外面を白色塗装した板材(金属板)などのような外面が高反射率の反射面を構成する板材からなることが好ましい。その反射面の反射率は,0.7~1.0が好ましい。具体的な遮熱材は,表面が鏡面研磨されたアルミ板である。
【0013】
加温部5及び空気活性部7
加温部5は,乾燥室を加温できるものであればよい。加温部の熱源は,公知の熱源を適宜利用できる。熱源として好ましいものは,ターボヒータである。ターボヒータは,タービンとタービンに駆動されて空気を圧縮するブロワとブロワの吐出空気を所定の位置(例えば乾燥室内)に導くための温風通路とを有する。熱源として,この形式の熱源を用いることが好ましい。ターボヒータは,例えば,実公平07-014018号公報,実公平07-027214号公報,実公平07-039689号公報,及び実公平07-052724号公報に記載される通り,公知である。
【0014】
空気活性部7は,特開2016-135544号公報に記載された空気活性化手段を適宜採用すればよい。空気活性化手段として,特開2016-135544号公報に記載されたものを適宜採用すればよい。活性化粒子の例は,(1)ラジウムを含む粒子,(2)角閃石を含む粒子,及び(3)炭素とケイ素を含む粒子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の粒子である。
【0015】
空気活性化部に供給された空気は,その活性化部材と接触することによって,電磁波又は帯電粒子を放出する。これにより,空気の含有物が電磁波を受ける,又は,空気が帯電粒子を含有する等により,空気が活性化する。
【0016】
活性化部材は,セラミックに活性化粒子を分散した平板形状に構成されていることが好ましい。活性化部材に対する活性化粒子の含有量を容易に調節でき,平板の大きさ,数又は配置によって空気との接触面積や時間を調節できるため,有効に空気と接触が行われる活性化部材を設計できる。
【0017】
活性化部材は,ラジウムを含有する粒子,角閃石,又は炭素及びケイ素を含有する粒子から選ばれる活性化粒子を含むことが好ましい。ラジウムを含有する粒子及び炭素及びケイ素を含有する粒子は電磁波を放出することができる。角閃石,又は炭素及びケイ素を含有する粒子は帯電粒子を放出することができる。これらの活性化粒子は比較的供給が容易である。空気活性部7は,活性化部材を公知のバインダと混錬し,適宜乾燥や焼成することで得ることができる。
【0018】
活性化部材は,活性化部材に対する重量比が40~80重量%である活性化粒子を含むことが好ましい。活性化粒子の含有量がこの範囲内で,活性化部材の表面で空気に接触しやすく,活性化粒子が分散した活性化部材を成形しやすい。
【0019】
活性化部材は,径が1~1000μmである活性化粒子を含むことが好ましい。活性化粒子は充分な表面積が得られ,かつ活性化部材に分散させた場合に活性化部材の表面に現れている面積が大きいので,空気に接触しやすい。
【0020】
この発明において好ましい例は,温風通路内に空気活性部を設置するものである。特に好ましいものは,筒状の温風通路内に斜めになるように空気活性部7を設置するものである。つまり,筒状の温風通路の長手方向に対して,平行や直角ではなく,鋭角や鈍角といった角度を有する状態で,空気活性部7を設置することが好ましい。このようにすることで,ブロワの吐出空気が空気活性部7と接触する面積を広くすることができる。また,空気活性部7は,円盤状のものであることが好ましい。そして,その円盤状の空気活性部7の外縁は,温風通路の内壁と接するものが好ましい。円盤状であれば,円盤内部の穴部分を空気が通過できることとなる。また,温風通路内に空気活性部を設置することで,活性化部を経た温風を直接乾燥室内に送ることができることとなる。
【0021】
冷却部9は,乾燥室内を冷却できるものであればよい。冷却部9の好ましい例は,スターリングエンジン冷却機を有するものである。スターリングエンジン冷却機は,外燃機関であるスターリング機構を駆動させることで低温部を形成する冷却器であり,スターリングエンジンを用いて対象を冷却するものである。スターリングエンジン冷却機は,冷却ヘッド,冷却ヘッドで冷却される冷熱冷媒を流すポンプを有する冷熱冷媒管路,冷熱利用機器の冷熱冷媒配管を有する冷熱冷媒の循環路を含む。スターリングエンジン冷却機は,スターリング冷却器,スターリング冷却装置などともよばれ,例えば,特許6564775号公報,特許5995971号公報,特許4001607号公報,及び特許3679726号公報に記載される通り公知である。
【0022】
具体的なスターリング冷却器の例は,スターリング エンジン ジャパン 株式会社製クライオ Mや,同社製クライオ S シリーズ(S50,S100)である。例えばクライオ Mは,冷却部を摂氏-196度まで低温にできる。このためスターリング冷却器を用いることで,効果的に乾燥室内を冷却できることとなる。スターリング冷却器は,スターリングエンジンを利用する。スターリングエンジンは一般的に大掛かりであるため,利用しにくかった。また,スターリング冷却器は,ごく低温となるため,用途が限られていた。この発明では,そのようなスターリング冷却器をあえて用いることで,迅速かつ有効に乾燥室内を冷却できるという知見に基づく。なお,スターリングエンジン冷却機を用いる場合,冷却部により冷却された冷熱冷媒を乾燥室の側壁に循環させることが好ましい。このため,乾燥室の側壁の内部に冷熱冷媒を乾燥室の側壁に循環させるための管を配置することが好ましい。
【0023】
この発明の食品乾燥方法について説明する。食品乾燥方法は,乾燥する対象物である食品を乾燥する(水分を減らす)方法である。
図2は,食品乾燥方法を説明するためのフローチャートである。図中Sはステップ(工程)を意味する。
図1に示される通り,この方法は,食品設置工程(S101)と,活性化空気接触工程(S102)と,加温工程(S103)と,冷却工程(S104)とを含む。加温工程(S103)は,活性化空気接触工程(S102)の後に行われる必要はなく,活性化空気接触工程(S102)と同時に行われてもよい。
図2に示される通り,この方法は,空気注入工程(S105)をさらに有してもよい。
【0024】
食品設置工程(S101)
食品設置工程(S101)は,乾燥室内に,乾燥対象となる食品を設置するための工程である。乾燥室の例は,特開2016-135544号公報に記載された乾燥装置における乾燥室を適宜用いることができる。乾燥装置は,上記の公報に記載されたものを適宜用いることができる。乾燥室の大きさは対象となる食品の大きさに応じて適宜調整すればよい。
【0025】
食品の例は,野菜及び果物のいずれか又は両方である。食品の別の例は食品残渣である。燥室の扉を開けて,乾燥室内に,乾燥対象となる食品を設置した後,扉を閉めることで,乾燥室内を密封空間にすることができる。
【0026】
活性化空気接触工程(S102)
活性化空気接触工程(S102)は,乾燥室内に設置された空気活性化手段に接触した空気である活性化空気を食品に接触させるための工程である。空気活性化手段は,空気と接触することで電磁波又は帯電粒子を放出可能である活性化粒子を含む。食品の例は,野菜又は果物である。活性化空気接触工程及び加温工程により食品の細胞壁を破壊することが好ましい。電磁波は,電界と磁界を生じつつ進行する波であれば,電波,光,X線及びガンマ線のいずれであってもよい。帯電粒子は,正電荷に帯電した粒子であっても,負電荷に帯電した粒子であってもよいし,電子であってもよい。
【0027】
加温工程(S103)
加温工程(S103)は,食品設置工程の後に,乾燥室内の温度を80℃以上100℃以下まで上昇させるための工程である。乾燥室内の温度は90℃以上100℃以下でもよいし,95℃以上100℃以下でもよい。食品設置工程の後に乾燥室内の温度が最大温度になる時間は5分以上1時間以下でもよいし,5分以上30分以下でもよいし,10分以上30分以下でもよい。なお,加温工程(S103)は,活性化空気接触工程(S102)の前に行われてもよい。また,加温工程(S103)と活性化空気接触工程(S102)とは同時に行われてもよい。加温工程の後適宜乾燥工程を行ってもよい。
【0028】
冷却工程(S104)
冷却工程(S104)は,加温工程の後に,乾燥室内の温度を-30℃以上-10℃以下まで下降させるための工程である。乾燥室内の最低温度は,-30℃以上―15℃以下でもよいし,-30℃以上―20℃以下でもよいし,-30℃以上―25℃以下でもよいし,-25℃以上―10℃以下でもよいし,-20℃以上―10℃以下でもよいし,-25℃以上―15℃以下でもよい。冷却工程は,スターリングエンジン冷却機を用いることが好ましい。冷却工程は,乾燥室内の気圧を10Pa以下に減圧した状態で行うことが好ましい。スターリングエンジン冷却機を用いることで迅速かつ適切に乾燥室内の温度を下げることができる。冷却を開始した後,乾燥室内の温度が最低温度になるまでの時間は,短くてもよい。冷却時間の例は1分以上30分以下であり,1分以上20分以下でもよいし,5分以上20分以下でもよい。
【0029】
空気注入工程(S105)
空気注入工程(S105)は,冷却工程の後に,乾燥室に常温の空気を注入するための工程である。乾燥室の扉を開けば,乾燥室内に常温の空気が注入される。そのようにすれば,乾燥室内の食品を取り出しやすくなる。
【実施例0030】
[食品乾燥装置]
図3に実施例で用いた食品乾燥室を示す。
図4は、食品乾燥室を天井側から見た概念図である。
図5は、食品乾燥室を側面から見た概念図である。食品乾燥室内は内部表面に断熱材を張り、その上に遮熱材(0.2mm)を貼った壁、床及び天井によって囲まれていた。断熱材の上に遮熱材を貼ったので、熱や、電磁波などが効果的に反射し、乾燥を促進すると考えられる。食品乾燥室(3.6m×2.4m×2.5m)にバケット(1m×1m×1m)を4台設置した。バケットには、耐荷重800kgのキャスターが付いている。含水率は、おがくず用水分計を測定対象物に刺することで測定できる。
【0031】
活性化粒子としてラジウム元素を含む鉱石の粒子、並びに天照石及び乙姫石の粒子であってそれぞれの径が20~60μmのものを粘土のバインダに対して約50重量%となるように混錬して乾燥させ、円盤状の活性化部材を得た。
図6は、実施例において得られた活性化部材を示す図面に代わる写真である。
【0032】
活性化部材をヒーター送風機に8枚、斜めに固定した。
図7は、ヒーター送風機に活性化部材を固定した様子を示す概念図である。このヒーターは、ブロワで風を送り、活性化部材の前で風が暖まり、温風となって乾燥室に送り込まれるようにされている。風量と温度は容易に調整ができる。活性化部材からは微量の放射線が放出されていて、放射された微量な放射線は、電磁波となり対象物に当たることになる。
空気の活性化装置は、ヒーター送風機の吸入口と空気を排出する排出口を有し、活性化粒子は一つの表面が吸入口と排出口を結ぶ直線に対して非平行になるように配置されており、空気活性化手段は非平行のすくなくとも一つの表面に沿って空気を流通させる流路を備えていることも好ましい。空気は活性化粒子に接触しつつ、吸入口から排出口に向かう直線よりも長い距離の流路を移動する。このため、空気が活性化粒子に接する時間が長くなる。
【0033】
[参考例]
参考例の装置
参考例として、特開2016-135544号公報に記載された木材乾燥装置を用いた以外は同様に食品の乾燥を行うこととした。
【0034】
[食品の乾燥]
バケットには生野菜の混載を1台400kg入れ、4台で1,600kgを乾燥室内に搭載した。乾燥室内の温度は、温度センサーにより測定される。乾燥室内にはタイマーも設置されている。密閉された乾燥室に活性化部材を通過した温風が吹き込まれる。温風の風量と温度を、風速15m/sec、温度80℃に設定した。送風機が温度センサーと連動していて温度を設定するとあとは自動で稼働する。送風が開始されてから、15分経過後に排水口から、対象物からの水分が排出されてきた。参考例の装置が25分経過後の排出であるのに対し、この実施例の装置は10分ほど早く水分が排出された。また、参考例の装置を用いた場合、水分の抜け方がなだらかなのに対して、今回は急激に水分が抜けた。外部から取り込まれた電磁波や荷電粒子を発生する活性化粒子と空気が接触することによって、空気に含まれる分子や粒子に対して物理的作用が及ぼされ、活性化されたと考えられる。この活性化された空気を熱風にして対象物にあてることにより、特に野菜の細胞壁など乾燥の妨げになるものが効果的に破壊されたと考えられる。40分乾燥を行った後次の工程に入った。
【0035】
次に、対象物を冷却した。冷却には、スターリングエンジン冷却機を使用した。この冷却機は、-80℃までの到達時間がわずか10分で到達する。設定温度に到達するとその温度を維持することができる。冷却の室温を-20℃に設定した。この装置では、天井から2台の冷却機が設置されており、床に向かって冷却された媒体が吹き下ろす。これをブロワで外へ吐き出す。室温が-20℃になった時点で冷却機のブロワを停止して20分間放置した。この間も、冷却機は作動していた。この時点で、対象物の中に残存する水分を凍らせた。実施例の食品乾燥装置は、スターリングエンジンの冷却機を装備している。そのため、参考例の乾燥装置と異なり、対象物を冷凍にし、昇華乾燥ができるようになった。
【0036】
20分経過した後、冷却機を停止させ、ヒーター送風機から15m/secの風量で20℃の送風を吹き込んだ。また、冷却機のブロワを稼働させ、外へ室内の空気を吐き出した。冷却機のブロワの排気口からはドライアイスのように白い蒸気が排出さた。対象物からは、昇華現象により、液体にならず気体の状態で水分が蒸発していた。白い蒸気が消えた後も更に冷却機のブロワを回し続けた。白い蒸気が停止したことを確認し、乾燥室の扉を開け、含水率を図った。
【0037】
実施例では、含水率がバケットの外側で8%、中側で14%であった。参考例では中側が含水率35%であった。このため、今回実施例で用いた食品乾燥装置を用いることで、含水率が大幅に改善されたことがわかる。例えば、実施例では、参考例と異なり、断熱材の上に遮熱材を貼ったので、熱や、電磁波などが効果的に反射し、乾燥を促進したと考えられる。
【0038】
JISB9929:2006に規定された方法を用いて乾燥室内の空気中のイオン密度を測定したところ、参考例が9万/m3であったのに対し、実施例では14万/m3であった。これが、含水率が向上した要因であったと考えられる。活性化粒子から発生される電磁波により空気が効果的にイオン化されたことがわかる。イオン化された空気が増えた室内には、プラスに帯電したイオンとマイナスに帯電したイオンが互いに動きが活発になりフリーラジカル現象となる。従って液体を通らず固体から気体になる昇華現象において気体がフリーラジカルによって、乾燥が促進されたと考えられる。