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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073319
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240522BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240522BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240522BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240522BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240522BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20240522BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240522BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
B60H1/22 651C
B60H1/22 651Z
B60L1/00 L
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/26
B60L58/27
B60K11/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184455
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越島 将史
【テーマコード(参考)】
3D038
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC17
3L211AA11
3L211BA32
3L211BA34
3L211CA19
3L211DA26
3L211DA48
3L211EA12
3L211EA50
3L211EA72
3L211EA83
3L211FB05
3L211GA25
3L211GA26
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD08
5H125CD09
5H125EE05
5H125EE15
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE51
5H125EE52
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】電費の悪化を抑制しつつ、空調の廃熱を効率良く行える車両用空調システムを提供する。
【解決手段】凝縮器、膨張弁、蒸発器及び圧縮機を有し、冷媒が循環する空調用回路を備える車両用空調システムが提供される。この車両用空調システムは、電動パワートレイン及び電動パワートレインと電気的に接続されるバッテリを有し、これら電動パワートレイン及びバッテリを冷却する冷却水が循環する冷却水回路を備える。また、凝縮器は、空調用回路を循環する冷媒の熱と、冷却水回路を循環する冷却水の熱とを熱交換するように冷却水回路上に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮器、膨張弁、蒸発器及び圧縮機を有し、冷媒が循環する空調用回路を備える車両用空調システムであって、
電動パワートレイン及び前記電動パワートレインと電気的に接続されるバッテリを有し、これら電動パワートレイン及びバッテリを冷却する冷却水が循環する冷却水回路を備え、
前記凝縮器は、前記空調用回路を循環する冷媒の熱と、前記冷却水回路を循環する冷却水の熱とを熱交換するように当該冷却水回路上に配置される、
車両用空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調システムであって、
前記凝縮器は、前記冷却水回路上において、前記電動パワートレインと前記バッテリとの間、且つ前記冷却水の流れ方向において前記バッテリの下流側に配置される、
車両用空調システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調システムであって、
ラジエータが配置されるラジエータ用回路と、
前記ラジエータ用回路を前記冷却水回路と接続及び切り離し可能に構成された切替弁と、
前記切替弁の動作を制御するコントローラと、をさらに備える、
車両用空調システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用空調システムであって、
前記コントローラは、前記バッテリ及び前記電動パワートレインの温度を取得する温度取得部を有し、
前記コントローラは、前記バッテリの温度が第1の所定値以下であり、且つ前記電動パワートレインの温度が第2の所定値以下の場合、前記ラジエータ用回路を前記冷却水回路から切り離すように前記切替弁を制御し、または、前記ラジエータ用のファンを停止させ、前記冷媒の熱を前記電動パワートレイン及び前記バッテリに蓄熱させる、
車両用空調システム。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用空調システムであって、
前記コントローラは、前記バッテリ及び前記電動パワートレインの温度を取得する温度取得部を有し、
前記コントローラは、前記バッテリの温度が第1の所定値以下であり、且つ前記電動パワートレインの温度が第2の所定値より大きい場合、前記ラジエータ用回路を前記冷却水回路に接続するように前記切替弁を制御し、前記冷媒の熱を前記ラジエータにより廃熱させる、
車両用空調システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の車両用空調システムであって、
前記車両内に走行風を導入するグリルシャッター、をさらに備え、
前記温度取得部は、さらに前記車両内の温度及び前記冷却水の温度を取得し、
前記コントローラは、車速、車内温度及び前記冷却水の温度に基づき、前記グリルシャッターの開閉を制御する、
車両用空調システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用空調システムであって、
前記コントローラは、前記バッテリの温度が第1の所定値以下であり、車内温度と空調設定温度との差が第3の所定値以上であり、且つ車速が所定の値以上である場合、前記ラジエータ用回路を前記冷却水回路に接続するように前記切替弁を制御するとともに、前記グリルシャッターを開に制御し、前記冷媒の熱を前記ラジエータにより廃熱させる、
車両用空調システム。
【請求項8】
請求項6に記載の車両用空調システムであって、
前記コントローラは、前記バッテリの温度が第1の所定値以下であり、車内温度と空調設定温度との差が第3の所定値より小さく、且つ車速が所定の値より小さい場合、前記電動パワートレインの温度が第2の所定値以下のときは、前記ラジエータ用回路を前記冷却水回路から切り離すように前記切替弁を制御し、または、前記ラジエータ用のファンを停止させ、前記電動パワートレインの温度が前記第2の所定値より大きいときは、前記ラジエータ用回路を前記冷却水回路に接続するように前記切替弁を制御するとともに、前記グリルシャッターを開に制御する、
車両用空調システム。
【請求項9】
請求項6に記載の車両用空調システムであって、
前記バッテリのSOCを取得する、SOC取得部をさらに備え、
前記コントローラは、車速、車内温度、前記バッテリのSOC及び前記冷却水回路を流れる冷却水の温度に基づき、前記グリルシャッターの開閉を制御する、
車両用空調システム。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用空調システムであって、
前記コントローラは、
前記バッテリの温度が第1の所定値以下であり、車内温度と空調設定温度との差が第3の所定値より小さく、且つ車速が所定の値以上である場合、前記冷却水回路を流れる冷却水の温度が所定の閾値より大きいときに前記グリルシャッターを開に制御し、
前記バッテリのSOCが所定の値より大きいときは、SOCが前記所定の値以下のときに比して、前記所定の閾値を大きい値に設定する、
車両用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両においては、空調(冷房)使用時に凝縮器(コンデンサ)から冷媒の熱を外気に廃熱する必要がある。しかしながら、ファンを作動させたり、グリルシャッターを開け走行風を凝縮器に当てることで、冷媒の熱を廃熱する場合、ファンの作動消費電力の発生や、空力の悪化により、車両の電費が悪化する虞がある。
【0003】
特許文献1には、凝縮器を水冷式にした車両用熱管理システムが開示されている。この車両用熱管理システムでは、凝縮器をバッテリ用の冷却水路に設置し、凝縮器からの熱を、冷却水路を介してバッテリに蓄熱することで冷媒の熱を廃熱している。これにより、ファンの作動消費電力を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2019/0070924 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両内の温度が高く、空調(冷房)の負荷が高い場合、凝縮器からの放熱量は大きくなる。凝縮器からの放熱量が大きい場合、特許文献1に記載の車両用熱管理システムでは、バッテリ用冷却水路の冷却水の温度が高くなる。このため、バッテリ温度が上昇し、蓄熱時間が減少するため、十分な廃熱を行えない虞や、温度上昇によりバッテリ自体の信頼性に影響を及ぼす虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、電費の悪化を抑制しつつ、空調の廃熱を効率良く行える車両用空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、凝縮器、膨張弁、蒸発器及び圧縮機を有し、冷媒が循環する空調用回路を備える車両用空調システムが提供される。この車両用空調システムは、電動パワートレイン及び電動パワートレインと電気的に接続されるバッテリを有し、これら電動パワートレイン及びバッテリを冷却する冷却水が循環する冷却水回路を備える。また、凝縮器は、空調用回路を循環する冷媒の熱と、冷却水回路を循環する冷却水の熱とを熱交換するように冷却水回路上に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、凝縮器が電動パワートレイン及びバッテリを冷却する冷却水が循環する冷却水回路上に配置され、凝縮器において、空調用回路を循環する冷媒の熱と、冷却水回路を循環する冷却水の熱とが熱交換される。従って、凝縮器から放熱される冷媒の熱を、冷却水回路を介して電動パワートレイン及びバッテリに蓄熱することができる。これにより、廃熱のためにファンを作動させたり、グリルシャッターを開けることを抑制でき、車両の電費の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の車両用空調システムの概略構成図である。
図2図2は、ラジエータ用回路を切り離した状態における車両用空調システムの回路図である。
図3図3は、ラジエータ用回路を接続した状態における車両用空調システムの回路図である。
図4図4は、本実施形態の冷媒の廃熱制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態による車両用空調システム(以下、空調システムともいう)100の概略構成図である。空調システム100は、主に、電気自動車等に搭載される。図1に示すように、空調システム100は、冷媒が循環する空調用回路10と、電動パワートレイン(ePT)21及びバッテリ22を冷却する冷却水が循環する冷却水回路20と、ラジエータ用回路30と、コントローラ40とを含む。
【0012】
空調用回路10は、空調(冷房)に用いられる冷媒が循環する回路であり、空調用ヒートポンプとして機能する。空調用回路10上には、冷媒の流れ方向において、圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、蒸発器14がこの順で設けられている。また、第1膨張弁13及び蒸発器14と並列に、第2膨張弁15及び熱交換器(チラー)16が直列にこの順に設けられている。
【0013】
圧縮機11は、例えば電動のコンプレッサであり、空調用回路10を流れる冷媒(ガス)を圧縮し、高温高圧にして出力する。
【0014】
凝縮器(コンデンサ)12は、圧縮機11により高温高圧に圧縮された冷媒(ガス)を凝縮液化する。また、凝縮器12は、空調用回路10上、且つ後述する冷却水回路20上に設けられ、凝縮器12において、空調用回路10を循環する冷媒の熱と、冷却水回路20を循環する冷却水の熱とが熱交換される。即ち、凝縮器12は、冷媒の熱を冷却水回路20に廃熱する。
【0015】
第1膨張弁13は、空調用回路10を流れる冷媒を、微小な孔を通すことで急激に膨張させ、低温低圧にする。なお、第1膨張弁13の開度は、後述のコントローラ40により制御される。
【0016】
蒸発器14は、空調用回路10を流れる冷媒を蒸発させる。蒸発した冷媒は、再び圧縮機11に吸入される。
【0017】
第2膨張弁15は、第1膨張弁13及び蒸発器14と並列に配置され、空調用回路10を流れる冷媒を、微小な孔を通すことで急激に膨張させ、低温低圧にして、熱交換器16に送る。なお、第2膨張弁15の開度は、後述のコントローラ40により制御される。
【0018】
熱交換器(チラー)16は、第1膨張弁13及び蒸発器14と並列に、且つ、第2膨張弁15の下流に、第2膨張弁15と直列に配置される。また、熱交換器16は、空調用回路10上、且つ後述する冷却水回路20上に設けられ、熱交換器16において、冷却水回路20を循環する冷却水の熱と、空調用回路10内の低温低圧の冷媒の熱が熱交換される。即ち、熱交換器16は、冷却水回路20内の冷却水を冷却する。なお、蒸発器14側に流れる冷媒の量と、熱交換器16側に流れる冷媒の量は、第1膨張弁13及び第2膨張弁15の開度を調整することで制御され、第2膨張弁15が完全に閉じられると、冷媒は、熱交換器16側には流れず、蒸発器14側にのみ流れる。
【0019】
冷却水回路20は、電動パワートレイン21及びバッテリ22を冷却する冷却水が循環する回路である。冷却水回路20上には、電動パワートレイン21及びバッテリ22が配置され、電動パワートレイン21とバッテリ22との間、且つ冷却水の流れ方向におけるバッテリ22の下流側の冷却水回路20上には、凝縮器12が配置されている。また、冷却水回路20は、電動パワートレイン21とバッテリ22との間におけるバッテリ22の上流側から分岐する分流路201と、バッテリ22と凝縮器12との間におけるバッテリ22の下流側から分岐する分流路202とを有している。分流路201は、バッテリ22の上流側から下流側に接続し、分流路202は、バッテリ22の下流側から上流側に接続する。また、分流路202上には、熱交換器16が配置されている。
【0020】
また、冷却水回路20は、第1~第3切替弁23,24,25を備える。第1切替弁23は、凝縮器12と電動パワートレイン21との間に配置されている。第2切替弁24は、バッテリ22と凝縮器12との間、且つ分流路201とバッテリ22の下流側の冷却水回路20とが接続する箇所に配置されている。第3切替弁25は、電動パワートレイン21とバッテリ22との間、且つ分流路202とバッテリ22の上流側の冷却水回路20とが接続する箇所に配置されている。切替弁23,24,25の動作は、後述のコントローラ40により制御される。
【0021】
電動パワートレイン21は、凝縮器12とバッテリ22との間の冷却水回路20上に配置され、不図示の駆動モータ及びインバータを含む。駆動モータは、例えば3相モータであり、車両の駆動輪を駆動する電動機である。インバータは、駆動モータに電気的に接続され、後述するバッテリ22が出力する直流電力を交流電力に変換して駆動モータに供給することにより、駆動モータを駆動する。また、駆動モータが駆動輪に連れ回されて回転するときには、インバータは、駆動モータで生じる交流の回生電力を直流電力に変換してバッテリ22に入力することにより、バッテリ22を充電する。なお、電動パワートレイン21には、電動パワートレイン21の温度を検出する電動パワートレイン温度センサ(ePT温度センサ)が備えられている。ePT温度センサにより検出された電動パワートレイン21の温度(ePT温度)は、後述のコントローラ40に送信される。
【0022】
また、電動パワートレイン21は、冷却水回路20を流れる冷却水により冷却される、または、凝縮器12により冷却水に廃熱された冷媒の熱を蓄熱する。なお、冷媒の廃熱制御の詳細は後述する。
【0023】
バッテリ22は、電動パワートレイン21と凝縮器12との間の冷却水回路20上に配置される。バッテリ22は、電動パワートレイン21と電気的に接続され、電動パワートレイン21のインバータを介して駆動モータに駆動用の電力を供給する強電バッテリである。駆動モータは、バッテリ22から供給される電力により回転駆動し、駆動モータの動力により車両が走行する。なお、バッテリ22には、バッテリ22の温度を検出するバッテリ温度センサ(BT温度センサ)が備えられている。また、電動パワートレイン21とバッテリ22とを電気的に接続する配線上には、バッテリ22の電流値を検出する不図示のバッテリ電流センサ(BT電流センサ)が設けられている。BT温度センサにより検出されたバッテリ22の温度(BT温度)、及びBT電流センサにより検出されたバッテリ22の電流値(BT電流値)は、後述のコントローラ40に送信される。
【0024】
また、バッテリ22は、BT温度が高い場合には冷却水回路20を流れる冷却水により冷却され、BT温度が低い場合には凝縮器12により冷却水に廃熱された冷媒の熱を蓄熱する。なお、冷媒の廃熱制御の詳細は後述する。
【0025】
凝縮器12は、前述のとおり、空調用回路10上、且つ冷却水回路20上に設けられ、冷却水回路20上において、電動パワートレイン21とバッテリ22との間、且つ冷却水の流れ方向におけるバッテリ22の下流側に配置されている。前述のとおり、凝縮器12において、空調用回路10を循環する冷媒の熱と、冷却水回路20を循環する冷却水の熱とが熱交換される。
【0026】
熱交換器(チラー)16は、前述のとおり、空調用回路10上、且つ冷却水回路20上に設けられ、冷却水回路20上において、バッテリ22と凝縮器12との間におけるバッテリ22の下流側から分岐する分流路202上に配置されている。分流路202を流れる冷却水の熱は、熱交換器16において、空調用回路10内の低温低圧の冷媒の熱と熱交換される。これにより、冷却水回路20内の冷却水が冷却される。
【0027】
第1切替弁23は、冷却水回路20と、後述のラジエータ用回路30とを接続及び切り離し可能に構成された三方弁である。第1切替弁23は、凝縮器12と電動パワートレイン21の間の冷却水回路20上に設けられている。第1切替弁23は、ラジエータ用回路30が接続された状態において、凝縮器12側及び電動パワートレイン21側の冷却水回路20から流入する冷却水を混合してラジエータ用回路30に流す。また、ラジエータ用回路30が切り離された状態においては、凝縮器12側の冷却水回路20から流入する冷却水は、第1切替弁23を介して電動パワートレイン21側の冷却水回路20に流れる(図3を参照)。なお、凝縮器12と第1切替弁23との間には、冷却水回路20を流れる冷却水の温度を検出する不図示の冷却水温度センサが設けられている。冷却水温度センサにより検出された冷却水温度は、後述のコントローラ40に送信される。
【0028】
第2切替弁24は、バッテリ22と凝縮器12との間、且つ分流路201とバッテリ22の下流側の冷却水回路20とが接続する箇所に配置された三方弁である。第2切替弁24は、分流路201を接続または切り離し可能に構成され、また、分流路201を流れる冷却水の流量を調整可能に構成されている。第2切替弁は、分流路201が接続された状態において、分流路201から流入する冷却水と、バッテリ22側の冷却水回路20から流入する冷却水を混合し、凝縮器12側の冷却水回路20に流す。
【0029】
第3切替弁25は、電動パワートレイン21とバッテリ22との間、且つ熱交換器16が設けられた分流路202とバッテリ22の上流側の冷却水回路20とが接続する箇所に配置された三方弁である。第3切替弁25は、分流路202を接続または切り離し可能に構成されている。第3切替弁25は、分流路202が接続された状態において、電動パワートレイン21側の冷却水回路20から流入する冷却水と、分流路202から流入する冷却水とを混合し、バッテリ22側の冷却水回路20に流す。また、分流路202が切り離された状態においては、電動パワートレイン21側の冷却水回路20を流れる冷却水が第3切替弁25を介してバッテリ22側の冷却水回路20に流れる(図2図3を参照)。また、第3切替弁25は、電動パワートレイン21側の冷却水回路20から、バッテリ22側の冷却水回路20に流す冷却水の流量を調整可能に構成されている。即ち、第2切替弁24と、第3切替弁25の動作により、分流路201を流れる冷却水の流量と、バッテリ22側の冷却水回路20に流れる冷却水の流量とが制御される。
【0030】
なお、第3切替弁25とバッテリ22との間の冷却水回路20上には、電気ヒータ26が配置され、バッテリ22の暖機時には、電気ヒータ26が作動し、バッテリ22が暖機される。また、電気ヒータ26とバッテリ22との間の冷却水回路20上には、冷却水回路20内の冷却水をバッテリ22に送る電動のウォーターポンプ27が配置されている。
【0031】
ラジエータ用回路30は、ラジエータ31が配置される回路であって、凝縮器12と電動パワートレイン21との間と、電動パワートレイン21と分流路201との分岐点との間とに接続可能に構成されている。前述のとおり、ラジエータ用回路30が冷却水回路20と接続または切り離されるかは、第1切替弁23により制御される。
【0032】
ラジエータ31は、ラジエータ用回路30上に設けられ、ラジエータ用回路30が冷却水回路20に接続された状態において、ラジエータ用回路30を流れる冷却水を冷却する。ラジエータ31の近傍には、ラジエータ31用のファン32が備えられ、ファン32を作動させることで、ラジエータ用回路30を流れる冷却水を冷却することができる。また、ラジエータ31は、車両内に走行風を導入するグリルシャッター33の近傍に設けられ、グリルシャッター33が開くと、ラジエータ31に走行風が当たる。これにより、ラジエータ用回路30内の冷却水が冷却される。即ち、ラジエータ用回路30を流れる冷却水は、グリルシャッター33を開にすることによっても冷却することができる。ファン32の動作及びグリルシャッター33の開閉は、後述のコントローラ40により制御される。なお、ラジエータ31の下流のラジエータ用回路30上には、ラジエータ用回路30内の冷却水を電動パワートレイン21及びバッテリ22に送る電動のウォーターポンプ34が配置されている。
【0033】
コントローラ40は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1または複数のコンピュータで構成される。本実施形態では、コントローラ40は、第1~第3切替弁23,24,25、ファン32及びグリルシャッター33の動作を適宜制御することにより、空調の冷媒の廃熱制御(以下、冷媒の廃熱制御という)を実行するようにプログラムされている。
【0034】
また、コントローラ40は、温度取得部41を含み、温度取得部41は、ePT温度センサにより検出された電動パワートレイン21の温度、BT温度センサにより検出されたバッテリ22の温度、及び冷却水温度センサにより検出された冷却水温度を取得する。また、空調システム100が搭載される車両は、不図示の車内温度センサを備え、温度取得部41は、車内温度センサから車内温度を取得する。
【0035】
また、コントローラ40は、BT電流センサにより検出されたバッテリ22の電流値を取得し、当該電流値に基づきバッテリ22の充電容量(SOC)を算出し、取得する。また、空調システム100が搭載される車両は、不図示の速度センサを備え、コントローラ40は、速度センサから車速を取得する。さらに、コントローラ40は、空調(冷房)がオンまたはオフであるかの情報(以下、空調のオン・オフ情報という)、及び空調の設定温度を取得する。
【0036】
上記の通り空調システム100は、冷却水回路20にラジエータ用回路30が接続された状態においては、冷媒の熱を、ラジエータ31用のファン32を作動したり、グリルシャッター33を開にすることで、廃熱可能に構成されている。
【0037】
ところで、電動車両において、空調(冷房)使用時に、ファンを作動させたり、グリルシャッターを開け走行風を凝縮器(コンデンサ)に当てることで、凝縮器から冷媒の熱を廃熱すると、ファンの作動消費電力の発生や、グリルシャッターを開にすることによる空力の悪化により、車両の電費が悪化する虞がある。
【0038】
これに対し、本実施形態においては、凝縮器12を電動パワートレイン21及びバッテリ22を冷却する冷却水が循環する冷却水回路20上に配置し、凝縮器12において空調用回路10を循環する冷媒の熱と、冷却水回路20を循環する冷却水の熱とが熱交換されるように空調システム100を構成している。これにより、凝縮器12において冷却水回路20内の冷却水の熱と熱交換された冷媒の熱を、電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱することができる。即ち、電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱可能な範囲で、ラジエータ31を用いずに、冷媒の熱を廃熱することができる。従って、廃熱のためにファン32を作動させたり、グリルシャッター33を開くことを抑制でき、車両の電費の悪化を抑制することができる。また、バッテリ22だけでなく、電動パワートレイン21にも蓄熱することができるため、空調(冷房)の負荷が高く、凝縮器12からの放熱量がある程度大きい場合でも、ファン32やグリルシャッター33を用いずに、十分な廃熱を行うことができる。
【0039】
以下、冷媒の廃熱制御の詳細を説明する。
【0040】
図2及び図3は、空調(冷房)使用時における空調システム100の回路図である。図2は、ラジエータ用回路30を冷却水回路20から切り離した状態における回路図であり、図3は、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続した状態における回路図である。
【0041】
空調(冷房)使用時において、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続するか否かは、バッテリ22の温度及び電動パワートレイン21の温度に基づき決定される。例えば、バッテリ22の温度が第1の所定値(以下、第1閾値Tth1ともいう)以下であり、電動パワートレイン21の温度が第2の所定値(以下、第2閾値Tth2ともいう)以下である場合に、第1切替弁23により、ラジエータ用回路30が冷却水回路20から切り離される。ここでの第1閾値Tth1は、例えば、バッテリ22がある程度の熱を蓄熱可能な状態であり、バッテリ22を冷却する必要性が低いと推定し得る温度の値に設定される。また、第2閾値Tth2は、例えば、電動パワートレイン21がある程度の熱を蓄熱可能な状態であると推定し得る温度の値に設定される。また、ラジエータ用回路30が冷却水回路20と切り離される場合、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下であるため、バッテリ22を冷却する必要性は低い。従って、第3切替弁25により、冷却水回路20から分流路202が切り離され、熱交換器16が切り離される。また、第1膨張弁13が閉じられ、冷媒は熱交換器16側の空調用回路10を流れない。
【0042】
ラジエータ用回路30と冷却水回路20、及び分流路202と冷却水回路20とが切り離されると、図2に示すように、冷却水回路20を流れる冷却水は、凝縮器12から電動パワートレイン21、バッテリ22の順に循環する。従って、凝縮器12において冷却水回路20内の冷却水と熱交換された冷媒の熱は、まず、電動パワートレイン21に蓄熱され、次に、電動パワートレイン21の下流に配置されたバッテリ22に蓄熱される。このように、バッテリ22と電動パワートレイン21によって冷媒の廃熱を十分に蓄熱できる場合、ラジエータ31を切り離して、ファン32やグリルシャッター33を作動させないため、電力消費や空力悪化を抑制でき、電費が向上する。また、凝縮器12を電動パワートレイン21とバッテリ22の間、且つバッテリ22の下流側に配置し、冷媒の熱を、まず、電動パワートレイン21に蓄熱することで、バッテリ22の温度上昇を抑制でき、バッテリ22の信頼性に影響を与えることを抑制できる。なお、電動パワートレイン21の下流において、冷却水を分流路201側とバッテリ22側のどちらにどれだけ流すかは、電動パワートレイン21の温度と、バッテリ22の温度に基づき決定される。例えば、電動パワートレイン21により、冷媒の熱のほとんどを蓄熱可能な場合や、バッテリ22の温度が比較的高く、バッテリ22の蓄熱可能量が少ない場合などにおいては、第2切替弁24により、分流路201側に多くの冷却水が流される。
【0043】
一方、空調(冷房)使用時において、例えば、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下であり、電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2より大きい場合には、図3に示すように、第1切替弁23により、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続される。これにより、ラジエータ31において、ラジエータ31の近傍に設置されたラジエータ31用のファン32及びグリルシャッター33の作動により、ラジエータ用回路30内の冷却水が冷却される。即ち、電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2より大きい場合にラジエータ用回路30と冷却水回路20を切り離すと、電動パワートレイン21及びバッテリ22によって冷媒の熱を十分に蓄熱できない、または、バッテリ22に集中的に蓄熱され、バッテリ22の温度上昇が大きくなり、バッテリ22の信頼性に影響を与えることになる虞がある。従って、ラジエータ31を用いて冷媒の熱を廃熱する。なお、この場合においても、バッテリ22の温度は第1閾値Tth1以下であるため、バッテリ22を冷却する必要性は低く、第3切替弁25により、分流路202は冷却水回路20から切り離され、熱交換器16が切り離される。また、膨張弁13が閉じられ、冷媒は熱交換器16側の空調用回路10を流れない。
【0044】
ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続された状態においては、図3に示すように、冷却水回路20を流れる冷却水は、凝縮器12から第1切替弁23を介してラジエータ用回路30に供給され、ラジエータ用回路30を流れる冷却水は、ラジエータ31において冷却される。
【0045】
ラジエータ31を通過したラジエータ用回路30内の冷却水は、再び冷却水回路20に供給され、冷却水回路20において、電動パワートレイン21側に向かう流路と、バッテリ22側に向かう流路とに分流される。電動パワートレイン21側を流れる冷却水は、電動パワートレイン21を冷却し、第1切替弁23において、凝縮器12の下流の冷却水と混合され、再びラジエータ用回路30に供給される。バッテリ22側に向かう冷却水回路20内の冷却水は、さらに、分流路201と、バッテリ22を通過する流路とに分流され、分流された冷却水は、第2切替弁24において再び混合される。ラジエータ31を通過した冷却水を、電動パワートレイン21を通過する流路、分流路201、及びバッテリ22を通過する流路のいずれにどれだけの量流すかは、電動パワートレイン21の温度と、バッテリ22の温度に基づき決定され、第1~第3切替弁23,24,25の動作により制御される。例えば、電動パワートレイン21の温度が高く、冷却が必要な場合、冷却水は電動パワートレイン21を通過する流路に多く供給される。
【0046】
なお、空調(冷房)を使用していない場合、及びバッテリ22の温度が第1閾値Tth1より大きい場合は、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続され、ラジエータ31において冷却水回路20内の冷却水が冷却され、冷媒の熱が廃熱される。また、冷却された当該冷却水により、電動パワートレイン21及びバッテリ22が冷却される。ラジエータ31において冷却された冷却水ではバッテリ22を十分に冷却できない場合、冷却水回路20に分流路202が接続され、分流路202上に設けられた熱交換器(チラー)16により、冷却水がより冷却される。以下、空調(冷房)を使用していない場合、及びバッテリ22の温度が第1閾値Tth1より大きい場合における上記の制御を、通常制御という。通常制御においては、ラジエータ31により冷媒の熱が廃熱され、電動パワートレイン21及びバッテリ22が冷却され、さらに必要に応じて熱交換器(チラー)16によりバッテリ22が冷却される。
【0047】
また、暖房使用時においては、回路の接続は通常制御と同様であるが、バッテリ22を暖機する場合、電気ヒータ26が作動し、バッテリ22が暖機される。なお、図1は通常制御または暖房使用時における空調システム100の回路図である。
【0048】
以上のとおり、空調(冷房)使用時において、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続するか否かは、バッテリ22の温度及び電動パワートレイン21の温度に基づき決定される。
【0049】
なお、本実施形態においては、車内温度と空調設定温度との差が第3の所定値(以下、第3閾値ΔTth3ともいう)より大きい場合には、電動パワートレイン21及びバッテリ22の温度に関係なく、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続される。車内温度と空調設定温度との差が大きい場合、空調用回路10上の圧縮機(コンプレッサ)11の負荷を大きくする必要があるが、その場合、凝縮器12から放熱される冷媒の熱が増加する。このため、車内温度と空調設定温度との差が大きい場合、冷媒の廃熱量が電動パワートレイン21とバッテリ22により蓄熱可能な熱量を超える虞がある。従って、車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3より大きい場合、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続され、ラジエータ31(ファン32、グリルシャッター33)を用いて冷媒の熱が廃熱される。なお、ここでの第3閾値ΔTth3は、例えば、電動パワートレイン21及びバッテリ22が停止状態において蓄熱可能な熱量によって下げることのできる車内温度の最大値に設定される。このように、本実施形態においては、車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3より大きい場合、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続される。但し、必ずしもこれに限られず、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続するか否かは、バッテリ22の温度及び電動パワートレイン21の温度のみに基づき決定されてもよい。
【0050】
空調(冷房)使用時において、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続されている場合、グリルシャッター33を開にするか否かは、空調システム100が搭載された車両の車速、車内温度及び冷却水回路20内の冷却水の温度に基づき決定される。例えば、車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3以上の場合、車速が所定の値(以下、閾値Vthともいう)よりも小さい場合、または、車速が閾値Vth以上であり且つ冷却水回路20を流れる冷却水の温度が所定の閾値Tthより大きい場合に、グリルシャッター33が開かれる。
【0051】
車内温度と空調設定温度との差が大きい場合、前述のとおり、空調用回路10上の圧縮機(コンプレッサ)11の負荷は大きくなることが予測される。このため、凝縮器12から放熱される冷媒の熱が増加する。従って、車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3以上の場合、グリルシャッター33を開にして、冷媒の熱を廃熱する。
【0052】
車速が小さい場合、グリルシャッター33を開にしても空力の悪化は少ない。従って、車速が閾値Vthよりも小さい場合、グリルシャッター33を開にして、冷媒の熱を廃熱する。ここでの閾値Vthは、例えば、グリルシャッター33を開いた際の空力悪化による電費の悪化がほとんど生じない程度の値に設定される。
【0053】
また、車速が閾値Vth以上であっても、冷却水回路20を流れる冷却水の温度が高い場合、凝縮器12における冷媒からの放熱が比較的大きいことが推定され、冷媒の熱を廃熱する必要性が高い。従って、車速が閾値Vth以上であり、且つ冷却水回路20を流れる冷却水の温度が所定の閾値Tthより大きい場合、グリルシャッター33を開にして、冷媒の熱を廃熱する。ここで所定の閾値Tthは、例えば、電動パワートレイン21を十分に冷却可能な温度に設定される。
【0054】
なお、車速が大きい場合、グリルシャッター33を開にすることによる空力の悪化も大きくなる。従って、本実施形態においては、車速が閾値Vth以上であって、バッテリ22のSOCが所定の値(以下、閾値SOCthという)より大きいときは、グリルシャッター33を開にするか否かの冷却水の温度の閾値Tthを、バッテリ22のSOCが閾値SOCth以下のときに比して、大きい値である第5の所定値(以下、第5閾値Tth5という)に設定する。これにより、バッテリ22のSOCが比較的高い場合において、グリルシャッター33を閉にするシーンが増加し、空力悪化による電費の悪化を抑制することができる。一方、バッテリ22のSOCが低い場合(例えば30%以下等)、セルの電気抵抗値が大きくなり、バッテリ22の発熱が大きくなる。従って、車速が閾値Vth以上であって、バッテリ22のSOCが閾値SOCth以下のときは、バッテリ22のSOCが閾値SOCthより大きいときに比して、閾値Tthを第5閾値Tth5より小さい第6の所定値(以下、第6閾値Tth6という)に設定する。これにより、グリルシャッター33を開にするシーンが増加し、バッテリ22の冷却要求に対応することが可能となる。
【0055】
空調(冷房)使用時において、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続されている場合、ラジエータ31用のファン32を作動させるか否かは、冷却水回路20内の冷却水の温度に基づき決定される。ラジエータ用回路30と冷却水回路20とが接続されている場合、車速、車内温度及び冷却水回路20内の冷却水の温度に基づき、まずグリルシャッター33が開かれるが、走行風を当てるだけでは冷媒の廃熱に不十分な場合、ラジエータ31用のファン32を作動させる。具体的には、冷却水回路20内の冷却水の温度が第4の所定値(以下、第4閾値Tth4ともいう)より大きい場合、ファン32が作動する。ここでの第4閾値Tth4は、グリルシャッター33の開閉閾値(温度閾値)Tthよりも大きい値であり、例えば、車両が法定制限速度程度の速さで走行している場合に、グリルシャッター33が開かれても、冷媒の廃熱を十分には行えない程度の温度の値に設定される。冷却水の温度が第4閾値Tth4より大きい場合、凝縮器12において放熱される冷媒の熱が大きいため、ファン32を作動することで、ラジエータ用回路30(及び冷却水回路20)内の冷却水がより冷却される。これにより、ラジエータ31において、冷媒の熱を十分に廃熱することができる。
【0056】
図4は、本実施形態の冷媒の廃熱制御を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれもコントローラ40により、所定時間ごとに繰り返し実行される。なお、コントローラ40は、電動パワートレイン21の温度(ePT温度)、バッテリ22の温度(BT温度)、冷却水温度、車内温度、バッテリ22のSOC、車速、空調のオン・オフ情報、及び空調の設定温度を適宜取得する。
【0057】
イグニッションスイッチがオンにされるなどして、自車両の車両システムがオンされた場合、冷媒の廃熱制御が開始される。
【0058】
ステップS101において、コントローラ40は、空調(冷房)がオンであるか否かを判断する。空調がオンの場合、コントローラ40は、ステップS102の処理を実行する。一方、空調がオフの場合、コントローラ40は、通常制御を実行する。
【0059】
ステップS102において、コントローラ40は、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下であるか否かを判断する。バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下である場合、コントローラ40は、ステップS103の処理を実行する。一方、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1より大きい場合、バッテリ22の冷却が必要であり、コントローラ40は、通常制御を実行する。
【0060】
ステップS103において、コントローラ40は、車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3より大きいか否かを判断する。車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3より大きい場合(即ち、圧縮機11の負荷が大きい場合)、コントローラ40は、ステップS104の処理を実行する。一方、車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3以下の場合(即ち、圧縮機11の負荷が小さい場合)、コントローラ40は、ステップS110の処理を実行する。
【0061】
ステップS104において、コントローラ40は、第1切替弁23を作動し、冷却水回路20とラジエータ用回路30を接続する。
【0062】
ステップS105において、コントローラ40は、グリルシャッター(G/S)33を開に制御する。これにより、ラジエータ31に走行風が当たり、ラジエータ用回路30内の冷却水が冷却され、ラジエータ31において冷媒の熱が廃熱される。
【0063】
ステップS106において、コントローラ40は、冷却水回路20内の冷却水温度が第4閾値Tth4以下であるか否かを判断する。冷却水温度が第4閾値Tth4以下の場合、コントローラ40は、ステップS107の処理を実行する。一方、冷却水温度が第4閾値Tth4より大きい場合、コントローラ40は、ステップS108の処理を実行する。
【0064】
ステップS107において、コントローラ40は、ラジエータ31用のファン32を停止状態にし、作動させない。即ち、冷却水温度が第4閾値Tth4以下の場合、凝縮器12から放熱される冷媒の熱もそれほど大きくないため、ファン32は作動させず、グリルシャッター33を開くことにより、冷媒の熱を廃熱する。これにより、ファン32を作動するための電力消費が抑制され、電費が向上する。
【0065】
冷却水温度が第4閾値Tth4より大きい場合、コントローラ40は、ステップS108において、ラジエータ31用のファン32を作動させる。これにより、ラジエータ31において、ラジエータ用回路30(及び冷却水回路20)内を流れる冷却水がより冷却され、冷媒の熱が廃熱される。即ち、冷却水温度が第4閾値Tth4より大きい場合は、凝縮器12から放熱される冷媒の熱が大きいため、グリルシャッター33を開くとともに、ファン32を作動することで、冷媒の熱を廃熱する。
【0066】
ステップS103において、車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3以下の場合(即ち、圧縮機11の負荷が小さい場合)、コントローラ40は、ステップS109において、電動パワートレイン21の温度(ePT温度)が第2閾値Tth2以下であるか否かを判断する。即ち、電動パワートレイン21への蓄熱が可能であるか否かを判断する。電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2以下である場合、コントローラ40は、ステップS110の処理を実行する。一方、電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2より大きい場合、コントローラ40は、ステップS111の処理を実行する。
【0067】
電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2以下である場合、電動パワートレイン21への蓄熱が可能である。従って、ステップS110において、コントローラ40は、第1切替弁23を制御し、冷却水回路20とラジエータ用回路30とを切り離す、または接続しない。また、ファン32を停止状態にして、作動せず、グリルシャッター33を閉状態にする。これにより、冷却水回路20からラジエータ31が切り離され、凝縮器12から放熱される冷媒の熱は、冷却水回路20の冷却水を介して電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱される。このように、電動パワートレイン21及びバッテリ22が蓄熱可能な場合、ラジエータ用回路30を切り離し、ファン32を作動せず、グリルシャッター33を閉にすることで、電力消費及び空力悪化が抑制される。
【0068】
電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2より大きい場合、冷媒の熱を電動パワートレイン21にほとんど蓄熱できないため、ステップS111において、コントローラ40は、第1切替弁23を作動し、冷却水回路20とラジエータ用回路30とを接続する。
【0069】
ステップS112において、コントローラ40は、車速が閾値Vth以上であるか否かを判断する。車速が閾値Vth以上である場合(高速運転の場合)、コントローラ40は、ステップS113の処理を実行する。一方、車速が閾値Vthより小さい場合(低速運転または停車中の場合)、コントローラ40は、ステップS105の処理を実行する。
【0070】
ステップS113において、コントローラ40は、バッテリ22のSOCが閾値SOCth以下であるか否かを判断する。バッテリ22のSOCが閾値SOCth以下である場合、コントローラ40は、ステップS114及びステップS115の処理を実行する。バッテリ22のSOCが閾値SOCthより大きい場合、コントローラ40は、ステップS118及びステップS119の処理を実行する。
【0071】
ステップS114において、コントローラ40は、グリルシャッター33を開にするか否かの冷却水の温度閾値Tthを、第6閾値Tth6に設定し、ステップS115において、冷却水回路20を流れる冷却水の温度が第6閾値Tth6以下であるか否かを判断する。冷却水温度が第6閾値Tth6以下である場合、コントローラ40は、ステップS116の処理を実行する。一方、冷却水温度が第6閾値Tth6より大きい場合、コントローラ40は、ステップS117の処理を実行する。
【0072】
冷却水温度が第6閾値Tth6以下の場合、凝縮器12における冷媒からの放熱が小さいため、ステップS116において、コントローラ40は、グリルシャッター33を閉に制御する。
【0073】
冷却水温度が第6閾値Tth6より大きい場合、凝縮器12における冷媒からの放熱が比較的大きいため、ステップS117において、コントローラ40は、グリルシャッター33を開に制御する。これにより、ラジエータ31に走行風が当たり、ラジエータ用回路30内の冷却水が冷却され、ラジエータ31において冷媒の熱が廃熱される。なお、この場合も、ファン32は作動させない。
【0074】
このように、バッテリ22のSOCが閾値SOCth以下である場合、冷却水温度が第6閾値Tth6より大きくても、ファン32は作動させず、グリルシャッター33を開に制御することで、冷媒の熱を廃熱する。即ち、バッテリ22のSOCが少ない場合、ファン32は作動させず、グリルシャッター33を制御することで廃熱を行い、バッテリ22の電力消費を抑制する。
【0075】
ステップS113において、バッテリ22のSOCが閾値SOCthより大きい場合、コントローラ40は、ステップS118において、グリルシャッター33を開にするか否かの冷却水の温度閾値Tthを、第6閾値Tth6より大きい第5閾値Tth5に設定する。また、ステップS119において、冷却水回路20を流れる冷却水の温度が第5閾値Tth5以下であるか否かを判断する。冷却水温度が第5閾値Tth5以下である場合、コントローラ40は、ステップS120の処理を実行する。一方、冷却水温度が第5閾値Tth5より大きい場合、コントローラ40は、ステップS121の処理を実行する。
【0076】
冷却水温度が第5閾値Tth5以下の場合、凝縮器12における冷媒からの放熱が小さいため、ステップS120において、コントローラ40は、グリルシャッター33を閉に制御する。
【0077】
冷却水温度が第5閾値Tth5より大きい場合、凝縮器12における冷媒からの放熱が比較的大きいため、コントローラ40は、ステップS121において、グリルシャッター33を開に制御し、ラジエータ31において走行風により冷媒の熱を廃熱する。
【0078】
このように、車速が閾値Vth以上の場合、バッテリ22のSOCが閾値SOCthより大きいときは、グリルシャッター33の開閉閾値(温度閾値)Tthを、第6閾値Tth6より大きい第5閾値Tth5に設定することで、バッテリ22のSOCが比較的高い場合において、グリルシャッター33を閉にするシーンが増加する。これにより、車速が大きいシーンにおいてグリルシャッター33を開けることによる生じる空力悪化が防止される。一方、セルの電気抵抗値が大きくなるバッテリ22のSOCが閾値SOCth以下のときは、グリルシャッター33の開閉閾値(温度閾値)Tthを、第5閾値Tth5より小さい第6閾値Tth6に設定することで、グリルシャッター33を開にするシーンが増加する。これにより、バッテリ22の冷却要求に対応することが可能となる。
【0079】
なお、ステップS121~S124の処理は、ステップS105~S108の処理と同様である。即ち、ステップS121において、グリルシャッター33を開に制御すると、コントローラ40は、ステップS122において、冷却水回路20内の冷却水温度が第4閾値Tth4以下であるか否かを判断する。冷却水温度が第4閾値Tth4以下の場合、コントローラ40は、ステップS123においてファン32を停止状態にし、作動させない。一方、冷却水温度が第4閾値Tth4より大きい場合、コントローラ40は、ステップS124において、ファン32を作動し、冷媒の熱を廃熱する。即ち、冷却水温度が第4閾値Tth4より大きい場合、グリルシャッター33を開くとともに、ファン32を作動することで、冷媒の熱を廃熱する。
【0080】
ステップS112において、車速が閾値Vthより小さい場合(低速運転または停車中の場合)、コントローラ40は、ステップS105において、車内温度と設定温度との差が第3閾値Tth3より大きい場合と同様に、グリルシャッター33を開に制御する。これにより、ラジエータ31に走行風が当たり、ラジエータ用回路30内の冷却水が冷却され、ラジエータ31において冷媒の熱が廃熱される。
【0081】
このように、低速運転または停車中の場合、グリルシャッター33を開いても、空力悪化はほとんど生じないため、車速が閾値Vthより小さい場合には、バッテリ22のSOCや冷却水温度に関係なく、グリルシャッター33を開いて冷媒の熱を廃熱する。
【0082】
ステップS105において、グリルシャッター33を開に制御すると、コントローラ40は、ステップS106において、冷却水回路20内の冷却水温度が第4閾値Tth4以下であるか否かを判断する。冷却水温度が第4閾値Tth4以下の場合、コントローラ40は、ステップS107においてファン32を停止状態にし、作動させない。一方、冷却水温度が第4閾値Tth4より大きい場合、コントローラ40は、ステップS108において、ファン32を作動し、冷媒の熱を廃熱する。即ち、冷却水温度が第4閾値Tth4より大きい場合、グリルシャッター33を開くとともに、ファン32を作動することで、冷媒の熱を廃熱する。
【0083】
なお、本実施形態においては、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下、電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2以下、且つ車内温度と空調設定温度との差が第3閾値ΔTth3以下の場合に、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とを切り離すこととしたが、これに限られない。即ち、車内温度と空調設定温度との差に関係なく、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下且つ、電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2以下の場合に、ラジエータ用回路30と冷却水回路20とを切り離すように制御してもよい。
【0084】
また、図4のフローチャートは一例であり、各種温度、車速、車内温度と空調設定温度の差が各閾値より大きいか否かを判断する判断順序は、上記で説明したものに限られず、各判断の順序を適宜入れ替えてもよい。
【0085】
上記した実施形態の車両用空調システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0086】
空調システム100は、電動パワートレイン21及びバッテリ22を冷却する冷却水が循環する冷却水回路20を備え、凝縮器12が、空調用回路10を循環する冷媒の熱と、冷却水回路20を循環する冷却水の熱とを熱交換するように冷却水回路20上に配置される。これにより、凝縮器12において冷却水回路20内の冷却水の熱と熱交換された冷媒の熱を、電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱することができる。従って、廃熱のためにラジエータ31用のファン32を作動させたり、グリルシャッター33を開くことを抑制でき、電力消費及び空力の悪化を抑制することができる。即ち、車両の電費の悪化を抑制することができる。
【0087】
また、バッテリ22だけでなく、電動パワートレイン21にも蓄熱することができるため、空調(冷房)の負荷が高く、凝縮器12からの放熱量がある程度大きい場合でも、ファン32やグリルシャッター33を用いずに、冷媒の熱を十分に廃熱することができる。従って、電力消費及び空力の悪化を抑制することができる、車両の電費の悪化を抑制することができる。また、蓄熱がバッテリ22に集中しないため、バッテリ22の温度上昇を抑制でき、バッテリ22の信頼性に影響を与えることを抑制できる。
【0088】
空調システム100は、凝縮器12が、冷却水回路20上において、電動パワートレイン21とバッテリ22との間、且つ冷却水の流れ方向においてバッテリ22の下流側に配置される。これにより、凝縮器12において冷却水回路20内の冷却水に放熱された冷媒の熱を、まず、電動パワートレイン21に蓄熱してから、バッテリ22に蓄熱することができる。従って、バッテリ22の温度上昇を抑制でき、バッテリ22の信頼性に影響を与えることを抑制できる。
【0089】
空調システム100は、ラジエータ31が配置されるラジエータ用回路30と、ラジエータ用回路30を冷却水回路20と接続及び切り離し可能に構成された第1切替弁(切替弁)23と、第1切替弁(切替弁)23の動作を制御するコントローラ40とを備える。これにより、冷媒の熱を電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱可能な場合にはラジエータ用回路30を切り離し、ラジエータ31を用いずに冷媒の熱を廃熱することができる。一方、冷媒の熱が電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱可能な熱量より大きい場合は、ラジエータ用回路30を接続することで、ラジエータ31でも冷媒の熱を廃熱することができる。従って、ラジエータ31を用いるシーンをできるだけ少なくし、電力消費及び空力悪化を抑制することができるとともに、冷媒の熱を確実に廃熱することができる。
【0090】
空調システム100は、コントローラ40が、バッテリ22の温度が第1の所定値(第1閾値Tth1)以下であり、且つ電動パワートレイン21の温度が第2の所定値(第2閾値Tth2)以下の場合、ラジエータ用回路30を冷却水回路20から切り離すように第1切替弁(切替弁)23を制御し、冷媒の熱を電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱させる。これにより、電動パワートレイン21及びバッテリ22の温度が低く、蓄熱可能な熱量が大きい場合には、冷媒の熱が電動パワートレイン21及びバッテリ22に蓄熱され、ラジエータ31を用いずに冷媒の熱を廃熱することができる。即ち、廃熱のためにラジエータ31用のファン32を作動させたり、グリルシャッター33を開くことを抑制でき、電力消費及び空力の悪化を抑制することができる。
【0091】
空調システム100は、コントローラ40が、バッテリ22の温度が第1の所定値(第1閾値Tth1)以下であり、且つ電動パワートレイン21の温度が第2の所定値(第2閾値Tth2)より大きい場合、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続するように第1切替弁(切替弁)23を制御し、冷媒の熱をラジエータ31により廃熱させる。これにより、電動パワートレイン21及びバッテリ22の温度が高く、蓄熱可能な熱量が小さい場合には、冷媒の熱がラジエータ31を用いて廃熱される。従って、冷媒の熱を確実に廃熱することができる。
【0092】
空調システム100は、車両内に走行風を導入するグリルシャッター33を備え、コントローラ40は、車速、車内温度及び冷却水の温度に基づき、グリルシャッター33の開閉を制御する。このように、車速、車内温度及び冷却水の温度に基づき、グリルシャッター33を開閉するため、グリルシャッター33を開くシーンをできるだけ少なくすることができ、空力悪化を抑制することができる。
【0093】
空調システム100は、コントローラ40が、バッテリ22の温度が第1の所定値(第1閾値Tth1)以下であり、車内温度と空調設定温度との差が第3の所定値(第3閾値ΔTth3)以上であり、且つ車速が所定の値(閾値Vth)以上である場合、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続するよう第1切替弁(切替弁)23を制御するとともに、グリルシャッター33を開に制御し、冷媒の熱をラジエータ31により廃熱させる。このように、車内温度と空調設定温度との差が大きく、凝縮器12から冷却水に放熱される冷媒の熱量が大きくなることが予測される場合、車速が大きいときはグリルシャッター33を開に制御する。これにより、車両内に強い走行風が導入され、冷却水を冷却する冷却能力が増加するため、ラジエータ31用のファン32の作動頻度を少なくすることができる。従って、ファン32を駆動するための電力消費を抑制することができ、電費の悪化を抑制することができる。
【0094】
空調システム100は、コントローラ40が、バッテリ22の温度が第1の所定値(第1閾値Tth1)以下であり、車内温度と空調設定温度との差が第3の所定値(第3閾値ΔTth3)より小さく、且つ車速が所定の値(閾値Vth)より小さい場合、電動パワートレイン21の温度が第2の所定値(第2閾値Tth2)以下のときは、ラジエータ用回路30を冷却水回路20から切り離すように第1切替弁(切替弁)23を制御する。また、電動パワートレイン21の温度が第2の所定値(第2閾値Tth2)より大きいときは、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続するように第1切替弁(切替弁)23を制御するとともに、グリルシャッター33を開に制御する。即ち、車内温度と空調設定温度との差が大きく、凝縮器12から冷却水に放熱される冷媒の熱量が小さくなることが予測される場合、車速及び電動パワートレイン21の温度が小さいときは、ラジエータ用回路30を冷却水回路20から切り離し、グリルシャッター33は開かない(グリルシャッター33を閉に制御する)。従って、グリルシャッター33の閉頻度が増加し、空力悪化を抑制することができる。
【0095】
空調システム100は、コントローラ40が、車速、車内温度、バッテリ22のSOC及び冷却水回路20を流れる冷却水の温度に基づき、グリルシャッター33の開閉を制御する。これにより、バッテリ22のSOCが高い場合にグリルシャッター33の開頻度を減少(閉頻度増加)させて空力悪化を抑制し、セルの電気抵抗が大きくなりバッテリ22の発熱が大きくなるSOCが低い場合には、グリルシャッター33の開頻度を増加して、バッテリ22の冷却要求に対応することができる。
【0096】
空調システム100は、コントローラ40が、バッテリ22の温度が第1の所定値(第1閾値Tth1)以下であり、車内温度と空調設定温度との差が第3の所定値(第3閾値ΔTth3)より小さく、且つ車速が所定の値(閾値Vth)以上である場合、冷却水回路20を流れる冷却水の温度が所定の閾値Tthより大きい場合に、グリルシャッター33を開に制御する。そして、バッテリ22のSOCが所定の値(閾値SOCth)より大きいときは、SOCが所定の値(閾値SOCth)以下のときに比して、所定の閾値Tthを大きい値に設定する。即ち、車速が大きく、グリルシャッター33を開いた場合の空力悪化による電費への影響が大きい場合、バッテリ22のSOCが高いときには、グリルシャッター33の開頻度が減少(閉頻度が増加)し、空力悪化が抑制される。一方、セルの電気抵抗が大きくなりバッテリ22の発熱が大きくなるバッテリ22のSOCが低い場合には、グリルシャッター33の開頻度が増加し、バッテリ22の冷却要求が満たされる。
【0097】
なお、本実施形態において説明した冷媒の廃熱制御は一例であり、必ずしもこれに限られない。即ち、少なくとも、凝縮器12が、空調用回路10を循環する冷媒の熱と、冷却水回路20を循環する冷却水の熱とを熱交換するように冷却水回路20上に配置された構成を有していれば、冷媒の廃熱制御は任意の方法を用いることができる。
【0098】
また、本実施形態においては、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下、且つ電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2以下の場合、ラジエータ用回路30を冷却水回路20から切り離すこととしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、バッテリ22の温度が第1閾値Tth1以下、且つ電動パワートレイン21の温度が第2閾値Tth2以下の場合に、ラジエータ用回路30を冷却水回路20に接続し、且つ、ファン32を停止することとしてもよい。この場合にも、ファン32を作動する電力消費を抑制することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0100】
10、空調用回路,12、凝縮器,20、冷却水回路,21、電動パワートレイン,22、バッテリ,30、ラジエータ用回路,31、ラジエータ,32、ファン,33、グリルシャッター,40、コントローラ,100、車両用空調システム
図1
図2
図3
図4