(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073323
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
B60C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184462
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】勝野 弘之
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB04
3D131BC31
3D131LA05
3D131LA20
(57)【要約】
【課題】サイズが大きいタイヤのサイドウォール部に取り付けられた電子装置の耐久性を向上させることができる、タイヤを提供する。
【解決手段】本発明のタイヤ10は、1対のビード部と、1対のサイドウォール部2と、トレッド部3と、カーカス4と、サイドウォール部2に取り付けられた、電子装置6と、を備えるタイヤであって、トレッド部3には、カーカス4よりもタイヤ径方向外側に、キャップゴム311とキャップゴム311よりもタイヤ径方向内側に位置するベースゴム312とが配置されており、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、電子装置6は、タイヤ幅方向断面視において、タイヤ10のタイヤ最大幅位置PMWよりもタイヤ径方向外側、かつ、キャップゴムのタイヤ径方向内側端311aからタイヤ内表面に下ろした垂線Lp1よりもタイヤ径方向内側、である位置に、配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のビード部と、当該1対のビード部に連なる1対のサイドウォール部と、当該1対のサイドウォール部間に跨るトレッド部と、前記1対のビード部間を前記1対のサイドウォール部及び前記トレッド部を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部に取り付けられた、電子装置と、を備えるタイヤであって、
前記トレッド部には、前記カーカスよりもタイヤ径方向外側に、キャップゴムと当該キャップゴムよりもタイヤ径方向内側に位置するベースゴムとが配置されており、
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、
前記電子装置は、タイヤ幅方向断面視において、前記タイヤのタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側、かつ、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側端からタイヤ内表面に下ろした垂線よりもタイヤ径方向内側、である位置に、配置されていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記電子装置は、タイヤ幅方向断面視において、前記ベースゴムのタイヤ径方向内側端からタイヤ内表面に下ろした垂線上、又は、当該ベースゴムのタイヤ径方向内側端からタイヤ内表面に下ろした垂線よりもタイヤ径方向内側、である位置に、配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記サイドウォール部には、前記カーカスよりもタイヤ幅方向外側に、サイドウォールゴムが配置されており、
前記電子装置は、前記サイドウォールゴムの内部又は前記サイドウォールゴムよりもタイヤ内表面側の位置に、配置されている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記電子装置は、前記サイドウォールゴムと当該サイドウォールゴムのタイヤ幅方向内側に隣接する部材との間に、埋設されている、請求項3に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤにRFタグ等の電子装置を取り付けた構成が、知られている。例えば、特許文献1には、サイドウォールに電子装置が取り付けられたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特にタイヤサイズひいてはタイヤに負荷される荷重が大きい場合、特にタイヤのサイドウォール部がタイヤ幅方向外側に大きく撓むことによる曲げ歪の影響が大きく、サイドウォール部に取り付けられた電子装置の耐久性に、改善の余地があることが判った。
【0005】
そこで、本発明は、サイズが大きいタイヤのサイドウォール部に取り付けられた電子装置の耐久性を向上させることができる、タイヤを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により、解決される。
【0007】
(1)本発明のタイヤは、
1対のビード部と、当該1対のビード部に連なる1対のサイドウォール部と、当該1対のサイドウォール部間に跨るトレッド部と、前記1対のビード部間を前記1対のサイドウォール部及び前記トレッド部を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部に取り付けられた、電子装置と、を備えるタイヤであって、
前記トレッド部には、前記カーカスよりもタイヤ径方向外側に、キャップゴムと当該キャップゴムよりもタイヤ径方向内側に位置するベースゴムとが配置されており、
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、
前記電子装置は、タイヤ幅方向断面視において、前記タイヤのタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側、かつ、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側端からタイヤ内表面に下ろした垂線よりもタイヤ径方向内側、である位置に、配置されていることを特徴とする。
本発明のタイヤによれば、サイズが大きいタイヤのサイドウォール部に取り付けられた電子装置の耐久性を向上させることができる。
【0008】
(2)上記(1)のタイヤにおいて、
前記電子装置は、タイヤ幅方向断面視において、前記ベースゴムのタイヤ径方向内側端からタイヤ内表面に下ろした垂線上、又は、当該ベースゴムのタイヤ径方向内側端からタイヤ内表面に下ろした垂線よりもタイヤ径方向内側、である位置に、配置されていることが好ましい。
この場合、電子装置の耐久性をより向上させることができる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)のタイヤにおいて、
前記サイドウォール部には、前記カーカスよりもタイヤ幅方向外側に、サイドウォールゴムが配置されており、
前記電子装置は、前記サイドウォールゴムの内部又は前記サイドウォールゴムよりもタイヤ内表面側の位置に、配置されていることが好ましい。
この場合、電子装置が外傷を受けにくい。
【0010】
(4)上記(3)のタイヤにおいて、
前記電子装置は、前記サイドウォールゴムと当該サイドウォールゴムのタイヤ幅方向内側に隣接する部材との間に、埋設されていることが好ましい。
この場合、電子装置が外傷を受けにくいとともに、電子装置の通信性の悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイズが大きいタイヤのサイドウォール部に取り付けられた電子装置の耐久性を向上させることができる、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の1実施形態に係るタイヤの、タイヤ幅方向概略断面図である。
【
図2】本発明の1実施形態に係るタイヤに用いられ得る電子装置の一例を概略的に示す、平面図である。
【
図3】
図1のタイヤの、タイヤ幅方向一部拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るタイヤは、例えば、ORタイヤ(建設・鉱山車両用タイヤ)等として、好適に利用できる。
【0014】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
本明細書において、「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸(軸線)を中心にタイヤが回転する方向をいい、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。一部の図面では、タイヤ周方向を符号「CD」で示し、タイヤ径方向を符号「RD」で示し、タイヤ幅方向を符号「WD」で示している。
また、本明細書において、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と称する。
また、本明細書において、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
【0015】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係や寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。また、タイヤを適用リムに装着し、タイヤに規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接触することになる、タイヤの全周にわたる外周面を「トレッド踏面」といい、トレッド踏面のタイヤ幅方向の端を、「トレッド端」という。
【0016】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0017】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0018】
図1は、本発明の1実施形態に係るタイヤ10を説明するための図面であり、当該タイヤ10の、タイヤ幅方向概略断面図である。
図3は、本発明の1実施形態に係るタイヤ10における後述する電子装置6の配置位置をよりわかりやすく説明するための、
図1のタイヤ10の、タイヤ幅方向一部拡大概略断面図である。より具体的に、
図3は、
図1のタイヤ10のタイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部(
図1の左側の半部)における、サイドウォール部2からトレッド部3のタイヤ幅方向端部にかけての模式的断面図である。
【0019】
本実施形態において、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上である。より具体的に、本実施形態のタイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、例えば、20~63インチである。即ち、本実施形態のタイヤ10は、サイズが大きい、大型のタイヤである。
適用リムのリム径の呼びが20インチ以上である、具体的な例としては、例えば、20インチ、24インチ、25インチ、29インチ、33インチ、35インチ、49インチ、51インチ、57インチ、63インチ等が挙げられる。
なお、本発明の実施形態のタイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上である限り、任意の種類のタイヤとして構成されてよい。
ここで、本明細書において、「適用リムのリム径の呼び」(以下、単に「リム径の呼び」ともいう。)とは、タイヤ内径ひいては前述の適用リムのリム径であって、より具体的には、一般にタイヤのサイドウォール部に表示されているタイヤサイズの表示中、適用リムのリム径の呼称(インチ)、即ち、適用リムのリム径をインチで表したものを指す。例えば、タイヤサイズが「29.5R25」であれば、リム径の呼びは「25インチ」であり、タイヤサイズが「18.00R33」であれば、リム径の呼びは「33インチ」であり、タイヤサイズが「46/90R57」であれば、リム径の呼びは「57インチ」であり、タイヤサイズが「59/80R63」であれば、リム径の呼びは「63インチ」である。
なお、
図1のタイヤ10において、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向の一方の半部の構成と他方の半部の構成とは、互いに同一である。但し、タイヤ10は、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部の構成と他方の半部の構成とが、互いに異なっていてもよい。その場合、後述する電子装置6は、当該一方の半部と他方の半部とで、互いに同様の構成及び/又は同様の配置位置とされていてもよいし、互いに異なる構成及び/又は異なる配置位置とされていてもよい。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ10は、1対のビード部1と、1対のサイドウォール部2と、トレッド部3と、を有している。
ビード部1は、タイヤ10をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成された部分である。トレッド部3は、タイヤ10のうち、1対のトレッド端どうしの間のタイヤ幅方向部分である。サイドウォール部2は、1対のビード部1とトレッド部3との間の部分である。なお、本明細書において、上記サイドウォール部2とは、タイヤ幅方向断面視において、トレッド端からタイヤ内表面10iに下ろした垂線よりもタイヤ径方向内側の部分であって、ビード部1よりもタイヤ径方向外側の部分を指す。
【0021】
より具体的に、本実施形態のタイヤ10は、1対のビード部1と、当該1対のビード部1に連なる1対のサイドウォール部2と、当該1対のサイドウォール部2間に跨るトレッド部3と、前記1対のビード部1間を前記1対のサイドウォール部2及び前記トレッド部3を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライ41からなるカーカス4と、前記サイドウォール部2に取り付けられた、電子装置6と、を備えている。
【0022】
本実施形態において、タイヤ10は、1対のビード部1を有している。
図1に示すように、当該1対のビード部1のそれぞれは、ビードコア11を有している。各ビードコア11は、対応するビード部1に埋設されている。ビードコア11は、周囲をゴムにより被覆されている複数のビードワイヤを備えているものとすることができる。但し、ビードコア11は、1本のビードワイヤからなっていてもよい。ビードワイヤは、金属(例えばスチール)から構成されると好適である。ビードワイヤは、例えば、モノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。なお、ビードワイヤは、有機繊維やカーボン繊維等から構成されてもよい。
本例において、
図1に示すように、ビードコア11のタイヤ幅方向断面形状は、正6角形状であるが、ビードコア11の当該断面形状は、他の形状、例えば、正6角形状以外の多角形状、円形状等であってもよい。
【0023】
本実施形態において、タイヤ10は、ビードフィラー12を有している。
図1に示すように、当該ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。ビードフィラー12は、タイヤ径方向外側に向かって、先細状に延びている。ビードフィラー12は、例えば硬質のゴム製である。
なお、
図1に示す例のように、ビードコア11のタイヤ径方向外側、特には、ビードコア11のタイヤ径方向外側であって、例えばカーカス本体部4aとカーカス折返し部4bとの間の位置に、例えば互いに硬さが異なる、異なる材質の複数(例えば、2つ)のゴム部材がタイヤ径方向に沿って積層配置されて、ビードフィラー12が形成されていてもよい。
【0024】
本実施形態において、タイヤ10は、1対のサイドウォール部2を有している。
図1に示すように、当該1対のサイドウォール部2は、1対のビード部1に連なっている。より具体的に、当該1対のサイドウォール部2のそれぞれは、1対のビード部1のそれぞれのタイヤ径方向外側に連なっている。
図1及び
図3に示すように、サイドウォール部2には、カーカス4よりもタイヤ幅方向外側に、サイドウォールゴム21が配置されている。より具体的に、本例において、サイドウォールゴム21は、後述するカーカス本体部4a、及び、カーカス本体部4aよりもタイヤ幅方向外側に後述するカーカス折返し部4bがあるタイヤ径方向位置では、当該カーカス折返し部4bよりもタイヤ幅方向外側に、配置されている。
また、図示の例で、サイドウォール部2には、タイヤ10の外観性の向上、耐カット性の向上、カーカス4の保護等のために、例えばタイヤ10の最大幅位置を含むタイヤ径方向位置に、タイヤ10の外方に向かって頂面が平面状に突出するとともにタイヤ周方向に環状に延びる、一般にデコラインとも称される、突出部2aが形成されている。図示の例において、後述するタイヤ最大幅位置PMW、即ち、タイヤ径方向においてタイヤ幅方向幅が最大となる位置PMWは、上記突出部2aの平面状の頂面のタイヤ径方向内側端のタイヤ径方向位置となっている。但し、タイヤ最大幅位置PMWは、突出部2aの頂面のタイヤ径方向内側端のタイヤ径方向位置でなくてもよい。
【0025】
本実施形態において、タイヤ10は、トレッド部3を有している。
図1及び
図3に示すように、トレッド部3は、1対のサイドウォール部2間に跨っている。
図1及び
図3に示すように、トレッド部3には、カーカス4よりもタイヤ径方向外側に、トレッドゴム31が配置されている。より具体的に、トレッドゴム31は、トレッド部3における、カーカス4及び後述するベルト7のタイヤ径方向外側に、ベルト7に隣接して配置されている。トレッドゴム31は、トレッド踏面3aを形成している。
また、本実施形態において、
図1及び
図3に示すように、トレッドゴム31は、キャップゴム311と、当該キャップゴム311よりもタイヤ径方向内側に位置しキャップゴム311とは異なるベースゴム312と、を含んでいる。換言すれば、本実施形態において、トレッド部3には、カーカス4(より具体的には、カーカス4及びベルト7)よりもタイヤ径方向外側に、キャップゴム311と当該キャップゴム311よりもタイヤ径方向内側に位置するベースゴム312とが配置されている。さらに具体的に、本例において、トレッドゴム31は、キャップゴム311とベースゴム312とから構成され、キャップゴム311はトレッド踏面3aを形成している。但し、トレッドゴム31は、キャップゴム311及びベースゴム312以外の他のゴム、例えば、ベースゴム312よりもタイヤ径方向内側でベルト7との間に配置された、トレッドクッションゴム等が含まれていてもよい。
本例において、
図1及び
図3に示すようにキャップゴム311は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ10の一方の半部のサイドウォール部2内のタイヤ幅方向外側端(ひいては、タイヤ径方向内側端)311aから、他方の半部のサイドウォール部2内のタイヤ幅方向外側端(ひいては、タイヤ径方向内側端)311aまでにわたって、タイヤ幅方向に連続して延びている。同様に、ベースゴム312は、タイヤ10の一方の半部のサイドウォール部2内のタイヤ幅方向外側端(ひいては、タイヤ径方向内側端)312aから、他方の半部のサイドウォール部2内のタイヤ幅方向外側端(ひいては、タイヤ径方向内側端)312aまでにわたって、タイヤ幅方向に連続して延びている。但し、キャップゴム311及び/又はベースゴム312は、タイヤ幅方向に不連続に延びていてもよい。
なお、本例において、
図1及び
図3に示すように、ベースゴム312のタイヤ径方向内側端312aは、キャップゴム311のタイヤ径方向内側端311aよりも、タイヤ径方向内側に位置している。
【0026】
キャップゴム311は、例えば、主として耐摩耗性に優れるゴムから構成することができる。また、ベースゴム312は、例えば、主として低発熱性に優れるゴムから構成することができる。
また、本例において、トレッド踏面3aには、タイヤ周方向に延びる複数本の溝により、トレッドパターンが形成されている。但し、これらの溝の数や構成ひいてはトレッドパターンは、特に限定されない。本例において、
図1に示すように、タイヤ幅方向断面視において、キャップゴム311とベースゴム312との境界線は、当該溝のタイヤ径方向内側でタイヤ径方向内側に向かって緩やかに折れ曲がりながら、タイヤ幅方向に延びている。
【0027】
本実施形態において、タイヤ10は、少なくとも1枚のカーカスプライ41からなるカーカス4を有している。
図1に示すように、当該少なくとも1枚のカーカスプライ41ひいてはカーカス4は、1対のビード部1間を1対のサイドウォール部2及びトレッド部3を介して延在している。より具体的に、カーカスプライ41ひいてはカーカス4は、一方のビード部1から一方のサイドウォール部2、トレッド部3及び他方のサイドウォール部2を介して、他方のビード部1まで、トロイド状に延在している。
本例において、
図1に示すように、カーカスプライ41(ひいては、カーカス4)は、1対のビード部1のビードコア11間に位置するプライ本体部41a(ひいては、カーカス本体部4a)と、プライ本体部41a(カーカス本体部4a)の両端から各ビードコア11の廻りでタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されたプライ折返し部41b(ひいては、カーカス折返し部4b)と、を備えている。但し、カーカスプライ41(カーカス4)は、プライ折返し部41b(カーカス折返し部4b)を備えていなくてもよい。
なお、本例において、
図1及び
図3に示すように、カーカス4は、1枚のカーカスプライ41から構成されている。しかし、カーカス4は、複数枚のカーカスプライ41から構成されていてもよい。
【0028】
カーカスプライ41は、1本又は複数本のカーカスコードと、カーカスコードを被覆するカーカスコーティングゴムと、を含んでいる。カーカスコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
本実施形態において、カーカスプライ41のカーカスコードは、スチール製である。より具体的に、カーカスプライ41が含む本例で複数本のカーカスコードは、それぞれスチールから構成されている。カーカスコードがスチール製であることにより、サイズが大きいタイヤでカーカスを簡易なラジアル構造としても、十分な強度が得られる。
また、本実施形態において、カーカス4は、ラジアル構造である。即ち、カーカス4のカーカスプライ41が含む各カーカスコードは、実質的にタイヤ幅方向に沿って(即ち、トレッド部3のタイヤ径方向外方からの投影視において、タイヤ幅方向に対して実質的に0°の角度で傾斜せずに)、延びている。
但し、カーカスコードは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されていてもよい。また、カーカス4は、バイアス構造であってもよい。
【0029】
本実施形態において、
図1に示すように、タイヤ10は、トレッド部3に、少なくとも1層(図示の例では、6層)のベルト層71~76を含むベルト7を、さらに備えている。ベルト7は、カーカス4のクラウン部のタイヤ径方向外側に隣接して配置されており、ベルト層71~76は、タイヤ径方向内側から外側に向かってこの順で積層配置されている。各ベルト層71~76は、1本又は複数本のベルトコードと、ベルトコードを被覆するベルトコーティングゴムと、を含んでいる。ベルトコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。ベルトコードは、金属(例えばスチール)から構成されていてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されていてもよい。
なお、
図1及び
図3に示す、各ベルト層71~76のタイヤ幅方向端は、便宜上、当該各ベルト層に含まれるベルトコードが配置されている領域の端のみを示しているものであり、ベルト層73~76のタイヤ幅方向外側に位置するように描かれたベルトコーティングゴム70は、当該各ベルト層のベルトコーティングゴムが当該各ベルト層のタイヤ幅方向端に位置するベルトコードを越えてタイヤ幅方向外側に連続して延びていることを示すために、便宜上、そのように描かれているものである。
【0030】
本実施形態において、
図1及び
図3に示すように、ベルト層71~76のうち、タイヤ径方向内側に位置する比較的タイヤ幅方向幅の狭いベルト層71、72のタイヤ幅方向外側であって、ベルト層71~76のうち、タイヤ径方向外側に位置する比較的タイヤ幅方向幅の広いベルト層73~76のタイヤ径方向内側、かつ、トレッド部3からサイドウォール部2にかけての(即ち、いわゆるタイヤショルダー部の)カーカス4のタイヤ径方向外側に隣接して、ベルトクッションゴム5が、配置されている。ベルトクッションゴム5は、例えば、比較的タイヤ幅方向幅の広いベルト層73~76に負荷される入力を緩衝して、当該ベルト層73~76のタイヤ幅方向端部近傍の変形を抑制し、ベルト7の耐久性を十分確保するためのものである。
本例では、
図1及び
図3に示すように、タイヤ幅方向断面視において、タイヤショルダー部近傍において、サイドウォールゴム21は、トレッドゴム31(より具体的には、ベースゴム312)とベルトクッションゴム5とに挟まれている。なお、本例において、ベースゴム312と、サイドウォールゴム21と、ベルトクッションゴム5と、ベルトコーティングゴム70とは、互いに別種のゴムで形成されている。但し、これらのうちの2以上が互いに同じゴムで形成されていてもよい。
【0031】
なお、本実施形態のタイヤ10は、タイヤ内表面10iが、空気及び/又はガス低透過性のインナーライナー(特に図示せず)で構成されている。
【0032】
本実施形態において、タイヤ10は、電子装置6を有している。
ここで、本明細書において、「電子装置」とは、電子部品を備える装置であって、例えば、外部との通信機能を有するものを指す。
【0033】
図2は、本発明の1実施形態に係るタイヤに用いられ得る電子装置の一例を概略的に示す、平面図である。
図2の例で、電子装置6は、記憶部等を有するICチップ6aと、電磁波を送信及び/又は受信する1つ以上(図示の例では、2つ)のアンテナ6bと、を有する、RFタグである。RFタグは、一般に、RFID(Radio Frequency Identification)タグとも呼ばれるものである。
本例において、アンテナ6bは、ICチップ6aに接続され、直線状、波状、又は螺旋状(図示の例では、螺旋状)に延びている。本例では、2本のアンテナ6bが、ICチップ6aから互いに反対方向に延びている。但し、アンテナ6bは、ICチップ6aから一方側だけに延びていてもよい。また、本例では、2本のアンテナ6bは、後述するICチップ6aの長辺方向LDの長さが同じである。但し、2本のアンテナ6bは、ICチップ6aの長辺方向LDの長さが互いに異なっていてもよい。
本例において、ICチップ6aは、平面視略矩形状の厚さの薄い薄板状を呈している。ここで、ICチップ6aの「厚さ」とは、平面視でICチップ6aの長辺に沿う方向に平行な方向(以下、「ICチップ(6a)の長辺方向」ともいう。)LDと、平面視でICチップ6aの短辺に沿う方向に平行な方向(以下、「ICチップ(6a)の短辺方向」ともいう。)SDと、の双方に垂直な方向(以下、「ICチップ(6a)の厚さ方向」ともいう。)の厚さを指す。なお、本例において、ICチップ(6a)の長辺方向LDは、電子装置(6)の長手方向でもあり、ICチップ(6a)の短辺方向SDは、電子装置(6)の短手方向でもあり、ICチップ(6a)の厚さ方向は、電子装置(6)の厚さ方向でもある。
ICチップ6aは、例えば、任意の既知のメモリである記憶部及び任意の既知のプロセッサである制御部を有している。ICチップ6aは、1つ以上のアンテナ6bで受信する電磁波により発生する誘導起電力により動作してもよい。即ち、電子装置6は、パッシブ型の通信装置であってもよい。或いは、電子装置6は、電池をさらに備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。即ち、電子装置6は、アクティブ型の通信装置であってもよい。ICチップ6aの制御部は、例えば、記憶部に記憶されたタイヤの製造管理、出荷管理、使用履歴管理等のデータを読み取る、或いは、記憶部にこれらのデータを書き込むことができる。
【0034】
本実施形態において、
図1及び
図3に示すように、電子装置6(例えば、RFタグ)は、サイドウォール部2に取り付けられている。電子装置6は、サイドウォール部2のタイヤ外表面10o上に取り付けられていてもよいし、サイドウォール部2のタイヤ内表面10i上に取り付けられていてもよいし、サイドウォール部2の内部に取り付けられて(即ち、埋め込まれて)いてもよい。ここで、本明細書において、「タイヤ外表面」とは、タイヤ内腔ではなく、タイヤの外部に面するタイヤの表面を指す。また、「タイヤ内表面」とは、タイヤ内腔に面するタイヤの表面を指す。図示の例では、電子装置6は、サイドウォール部2の内部に埋め込まれている。
電子装置6は、サイドウォール部2に、例えば
図2に示したようなICチップ6aとアンテナ6bとからなる電子装置6そのものの状態のままで、取り付けられていてもよいし、電子装置6のICチップ6aにおける厚さ方向の両側をそれぞれ薄板状の被覆ゴムで覆った、電子装置積層体61として、取り付けられていてもよいし、電子装置6のICチップ6aにおける厚さ方向の一方側(下面側)を薄板状の被覆ゴムで、他方側(上面側)をやや厚いパッチゴムで覆った、電子装置積層体61として、取り付けられていてもよい。電子装置6又は電子装置6を内蔵する電子装置積層体61は、例えば、接着セメント等で加硫済みのタイヤ10のサイドウォール部2のタイヤ外表面10o上又はタイヤ内表面10i上に貼付されてもよいし、加硫前のタイヤ10(生タイヤ)に取り付けられてタイヤ10の加硫と同時にサイドウォール部2の内部に加硫接着により埋め込まれてもよい。
図1及び
図3に示す例では、電子装置6は、ICチップ6aにおける厚さ方向の両側をそれぞれ薄板状の被覆ゴムで覆った、電子装置積層体61として、サイドウォール部2の内部に埋め込まれている。
なお、
図1及び
図3では、電子装置6を内蔵する電子装置積層体61ひいては電子装置6の取り付けられている位置のみを明確に示すために、その外形・寸法等は簡略・模式化して描かれている。
【0035】
以下、本実施形態においてサイドウォール部2に取り付けられている電子装置6の、より具体的な配置位置等について、説明する。
【0036】
本実施形態において、電子装置6は、
図1及び
図3に示すように、タイヤ幅方向断面視において、タイヤ10のタイヤ最大幅位置、即ち、タイヤ径方向においてタイヤ幅方向幅が最大となる位置(より具体的に、タイヤ径方向において、タイヤ10のタイヤ外表面10oのタイヤ幅方向幅が最大となる当該タイヤ外表面10o上の位置を通る、タイヤ幅方向に平行な直線)PMWよりもタイヤ径方向外側、かつ、キャップゴム311のタイヤ径方向内側端311aからタイヤ内表面10iに下ろした垂線(即ち、当該キャップゴム311のタイヤ径方向内側端311aと、当該タイヤ径方向内側端311aからタイヤ内表面10iに下ろした垂線の足311aiと、を結ぶ直線)Lp1よりもタイヤ径方向内側、である位置に(言い換えれば、
図3に示す、タイヤ10における領域A1内に)、配置されている。
ここで、本明細書において、「タイヤ最大幅位置PMW」とは、タイヤ最大幅位置がタイヤ径方向において複数ある場合には、当該タイヤ最大幅位置のうち最もタイヤ径方向内側の当該タイヤ径方向位置を指すものとする。
また、本明細書において、電子装置6が、「(ある)位置に配置されている」又は「(ある)位置に埋設されている」とは、特に断りのない限り、アンテナ6bを含む電子装置6の少なくとも長手方向の中心が、当該位置に配置又は埋設されていることを指す。
【0037】
次に、上述した実施形態による作用効果について、説明する。
まず、本実施形態において、トレッド部3には、カーカス4よりもタイヤ径方向外側に、キャップゴム311と当該キャップゴム311よりもタイヤ径方向内側に位置するベースゴム312とが配置されている。これにより、例えば、キャップゴム311を主として耐摩耗性に優れるゴムから構成し、ベースゴム312を主として低発熱性に優れるゴムから構成することにより、トレッドゴム31が1種類のゴムのみから構成されている場合と比較して、耐摩耗性と低発熱性とをより効果的に両立させることができる。
次に、本実施形態において、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、また、電子装置6は、タイヤ幅方向断面視において、タイヤ10のタイヤ最大幅位置PMWよりもタイヤ径方向外側、かつ、キャップゴム311のタイヤ径方向内側端311aからタイヤ内表面10iに下ろした垂線Lp1よりもタイヤ径方向内側、である位置に(即ち、
図3に示す、タイヤ10における領域A1内に)、配置されている。これにより、適用リムのリム径の呼びが20インチ以上であるような、サイズが大きいタイヤ10のサイドウォール部2に取り付けられた電子装置6の耐久性を向上させることができる。即ち、電子装置6が、特にはサイズが大きいタイヤ10のサイドウォール部2に配置されている場合、タイヤ幅方向断面視における曲げ歪が大きく、電子装置6が故障又は剥離されるおそれが高いことが判明した。そこで、タイヤ10において作業者が電子装置6からの情報を読み取りやすい、サイドウォール部2のなかでもトレッド踏面3aに近い側の部分の、タイヤ外表面10o及び内部の各位置における曲げ歪(引張り歪及び圧縮歪)の値を、FEMによるシミュレーションにより算出した結果、上記位置(
図3に示す、タイヤ10における領域A1)において、サイドウォール部2のタイヤ外表面10o及び内部のいずれにおいても、当該曲げ歪の値が十分小さくなる(例えば、10%以下)ことが判明した。そこで、当該位置に電子装置6を配置することにより、電子装置6の耐久性を向上させることができる。
【0038】
同様の観点から、電子装置6は、タイヤ幅方向断面視において、タイヤ10のタイヤ最大幅位置PMWよりもタイヤ径方向外側であって、ベースゴム312のタイヤ径方向内側端312aからタイヤ内表面10iに下ろした垂線(即ち、当該ベースゴム312のタイヤ径方向内側端312aと、当該タイヤ径方向内側端312aからタイヤ内表面10iに下ろした垂線の足312aiと、を結ぶ直線)Lp2上、又は、当該ベースゴム312のタイヤ径方向内側端312aからタイヤ内表面10iに下ろした垂線Lp2よりもタイヤ径方向内側、である位置に(言い換えれば、
図3に示す、タイヤ10における領域A2内に)、配置されていることが好ましい。領域A2内では上記曲げ歪の値がより小さくなることが判明したので、この場合、電子装置6の耐久性をより向上させることができる。なお、上記領域A2には、垂線Lp2上の位置も含まれるものとする。
【0039】
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、電子装置6は、タイヤ幅方向断面視において、上記垂線Lp2上に、配置されている。前述の領域A1のなかでも、上記領域A2における当該垂線Lp2上の位置が、曲げ歪(引張り歪及び圧縮歪)の値が最も小さいことが、前述のFEMによるシミュレーションにより判明したからである。但し、本実施形態において、電子装置6は、当該垂線Lp2上に配置されていなくてもよい。電子装置6は、領域A1内である限り、配置可能ないずれの位置に配置されていてもよい。
【0040】
以上より、本実施形態のタイヤ10によれば、サイズが大きいタイヤ10のサイドウォール部2に取り付けられた電子装置6の耐久性を向上させることができる。
【0041】
以下、本実施形態のタイヤ10における、好適な構成や変形例等について、さらに説明する。
【0042】
本実施形態において、電子装置6は、サイドウォールゴム21の内部又はサイドウォールゴム21よりもタイヤ内表面10i側の位置に、配置されていると好適である。この場合、電子装置6がサイドウォール部2のタイヤ外表面10o上に配置されていないので、電子装置6が外傷を受けにくく、ひいては、外傷による電子装置6の損傷を防ぎ、電子装置6の耐久性をより向上させることができる。
なお、同様の観点から、電子装置6は、その全体が、サイドウォールゴム21の内部又はサイドウォールゴム21よりもタイヤ内表面10i側の位置に、配置されているとより好適である。また、電子装置6が例えば
図2に示すようなRFタグである場合、薄板状のICチップ6aにおける厚さ方向の上下の面(表裏の面)がタイヤ外表面10o又はタイヤ内表面10iと略平行になるように(即ち、当該上下の面が、タイヤ周方向に実質的に指向しないように)、サイドウォール部2に取り付けられていてよい。。
【0043】
本実施形態において、電子装置6は、サイドウォールゴム21と当該サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材との間に、埋設されていると好適である。ここで、「サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材」とは、電子装置6の配置された部分を除き、サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に直接接している部材を指す。また、「埋設されている」とは、全体がタイヤ外表面10o及びタイヤ内表面10iに露出せず、タイヤ10の内部に埋め込まれていることを意味する。この場合、電子装置6がサイドウォール部2のタイヤ外表面10o上に配置されていないので、電子装置6が外傷を受けにくいとともに、電子装置6がサイドウォールゴム21のタイヤ幅方向すぐ内側に配置されているので、電子装置6の通信性の悪化を抑制することができる。
本実施形態において、
図1及び
図3に示すように、上記「サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材」は、ベルトクッションゴム5である。但し、サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材は、ベルトクッションゴム5でなくてもよい。サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材は、例えば、カーカスコーティングゴム又はベルトコーティングゴム70等である場合もある。その場合には、電子装置6は、サイドウォールゴム21と当該カーカスコーティングゴム又はベルトコーティングゴム70等との間に、埋設されていてよい。また、サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材が複数ある場合には、電子装置6は、それぞれサイドウォールゴム21と当該複数の部材のいずれか1つ以上との間に、合わせて1つ又は複数埋設されていてもよい。
【0044】
本実施形態において、
図1及び
図3では、電子装置6の配置位置のみを模式的に示しているため必ずしも明確に描かれていないが、電子装置6は、サイドウォールゴム21と当該サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材であるベルトクッションゴム5との間に、埋設されている。即ち、電子装置6は、サイドウォールゴム21よりもタイヤ幅方向内側(タイヤ内表面10i側)の位置であって、当該サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材であるベルトクッションゴム5よりもタイヤ幅方向外側(タイヤ外表面10o側)の位置に、埋設されている。より具体的に、本実施形態において、電子装置6は、前述の通り、ベースゴム312のタイヤ径方向内側端312aからタイヤ内表面10iに下ろした垂線Lp2上の位置であって、サイドウォールゴム21と当該サイドウォールゴム21のタイヤ幅方向内側に隣接する部材であるベルトクッションゴム5との間である位置に、埋設されている。但し、電子装置6は、当該位置に配置かつ埋設されていなくてもよい。前述の通り、電子装置6は、領域A1内である限り、配置可能ないずれの位置に配置されていてもよい。
【0045】
本実施形態において、電子装置6が、例えば
図2に示すようなRFタグでありアンテナ6bを有する場合、タイヤ軸線方向視において、当該アンテナ6bがカーカスプライ41が含むカーカスコードの延在方向と交差する方向(好ましくは、当該延在方向と垂直な方向)に延びるように、電子装置6がサイドウォール部2に取り付けられていてもよい。より具体的に、当該アンテナ6bは、タイヤ軸線方向視において、例えば、タイヤ周方向に(即ち、タイヤ周方向成分を有して)、好ましくは、実質上タイヤ周方向に沿って(即ち、タイヤ周方向に対して実質上0°の角度で)、延びていてもよい。この場合、電子装置6の長手方向の全体がサイドウォール部2の曲げ歪の影響を受けて大きく曲げられることが抑制され、電子装置6の耐久性をより向上させることができる。
【0046】
本実施形態において、上述した例の電子装置6と同様の配置及び構成の電子装置6が、複数個、例えば、タイヤ周上の互いに異なる位置におけるサイドウォール部2に取り付けられていてもよい。また、本実施形態において、少なくとも1つの、上述した例の電子装置6と同様の配置及び構成の電子装置6と、少なくとも1つの、上述した例の電子装置6とは異なる配置又は構成の電子装置とで、合わせて複数個の電子装置が、例えば、タイヤ周上の互いに異なる位置に取り付けられていてもよい。
これらの場合、当該複数個の電子装置のうち、1つ以上の当該電子装置がタイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向の一方の半部に配置され、1つ以上の当該電子装置がタイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向の他方の半部に配置され、これら複数個の電子装置は、タイヤ軸線方向視において、タイヤの回転軸(軸線)の位置を中心とした際に、タイヤ周方向で45°以上互いに離間するように配置されていると好適である。この場合、複数個の電子装置のうちのいずれか少なくとも1つの電子装置に損傷、故障や剥離が生じたとしても、他のいずれかの電子装置が機能を発揮したまま残存する可能性が高まり、ひいては、例えば、電子装置によりタイヤ10の情報を読み書きすることができなくなることを防止することができる。
【0047】
また、上記の場合、複数個の電子装置は、タイヤ周方向に等間隔に配置されていることが好ましい。このような配置によれば、タイヤ走行時における損傷、故障や剥離の原因となる事象の影響を平潤化して、いずれかの電子装置が機能を発揮したまま残存することをより一層確実にすることができるからである。なお、「タイヤ周方向に等間隔に配置」とは、電子装置がいずれのタイヤ幅方向半部に位置しているかを問わず、いずれか一方又は両方のそれぞれのタイヤ幅方向半部において等間隔に配置されていてもよいし、タイヤ軸線方向視において、両方のタイヤ幅方向半部を合わせて視たときに等間隔に配置されていてもよい。
【0048】
さらに、上記の場合、一方のタイヤ幅方向半部に配置された電子装置と、他方のタイヤ幅方向半部に配置された電子装置とが、タイヤ周方向に交互に配列されていることが好ましい。このような配置によれば、一の電子装置に故障等の原因となる事象が生じた場合に、タイヤ周方向に隣接する他の電子装置が、上記一の電子装置とは異なるタイヤ幅方向半部に位置することとなるため、当該他の電子装置に故障等の原因となる事象の影響が及ぶのを極力避けることができるからである。
【0049】
また、上記の場合、一方のタイヤ幅方向半部に配置された電子装置の個数と他方のタイヤ幅方向半部に配置された電子装置の個数とが同数であることが好ましい。この場合、より一層、故障等の原因となる事象の影響を平潤化することができる。
【0050】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
例えば、上述の実施形態のタイヤ10は、サイドウォール部2に取り付けられた上述した配置及び構成の電子装置6以外に、少なくとも1つの当該電子装置6と同様の又は異なる構成の電子装置が、サイドウォール部2以外の場所に、取り付けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るタイヤは、例えば、ORタイヤ(建設・鉱山車両用タイヤ)等として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1:ビード部、 11:ビードコア、 12:ビードフィラー、 2:サイドウォール部、 2a:突出部、 21:サイドウォールゴム、 3:トレッド部、 3a:トレッド踏面、 31:トレッドゴム、 311:キャップゴム、 311a:キャップゴムのタイヤ径方向内側端、 311ai:垂線の足、 312:ベースゴム、 312a:ベースゴムのタイヤ径方向内側端、 312ai:垂線の足、 4:カーカス、 4a:カーカス本体部、 4b:カーカス折返し部、 41:カーカスプライ、 41a:プライ本体部、 41b:プライ折返し部、 5:ベルトクッションゴム(サイドウォールゴムのタイヤ幅方向内側に隣接する部材)、 6:電子装置、 6a:ICチップ、 6b:アンテナ、 61:電子装置積層体、 7:ベルト、 70:ベルトコーティングゴム、 71~76:ベルト層、
10:タイヤ、 10i:タイヤ内表面、 10o:タイヤ外表面、
A1、A2:領域、 CD:タイヤ周方向、 CL:タイヤ赤道面、 LD:長辺方向(長手方向)、 Lp1、Lp2:垂線、 PMW:タイヤ最大幅位置、 RD:タイヤ径方向、 SD:短辺方向(短手方向)、 WD:タイヤ幅方向