(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073342
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】衝撃吸収機構及び除雪板
(51)【国際特許分類】
E01H 5/06 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
E01H5/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015097
(22)【出願日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2022183898
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599177293
【氏名又は名称】長谷川 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正道
【テーマコード(参考)】
2D026
【Fターム(参考)】
2D026CE01
(57)【要約】
【課題】障害物に衝突することで生じる衝撃を吸収しつつ、破断片が脱落することを防止できる衝撃吸収機構を得る。
【解決手段】 除雪車の除雪板に取り付けられる衝撃吸収機構であって、前記除雪板に取り付けられる取付部と、前記除雪板に取り付けた前記取付部から延びて前記除雪板下端から突出するエッジ部とを備えたエッジ板と、一端部が前記エッジ部に固定されているとともに、前記除雪板に保持される可撓部材とを備え、前記除雪板に取り付けられた状態で前記エッジ部に外力が加わることで、そのエッジ部が前記取付部から分断されるとともに、前記可撓部材がその分断されたエッジ部を前記除雪板に保持しながら撓むように構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除雪車の除雪板に取り付けられる衝撃吸収機構であって、
前記除雪板に取り付けられる取付部と、前記除雪板に取り付けた前記取付部から延びて前記除雪板下端から突出するエッジ部とを備えたエッジ板と、
前記除雪板に保持されるとともに、一端部が前記エッジ部に固定されている可撓部材とを備え、
前記除雪板に取り付けられた状態で前記エッジ部に外力が加わることで、そのエッジ部が前記取付部から分断されるとともに、前記可撓部材がその分断されたエッジ部を前記除雪板に保持しながら撓むように構成されていることを特徴とする衝撃吸収機構。
【請求項2】
前記可撓部材が、前記除雪板と前記エッジ板との間に介在するものである請求項1記載の衝撃吸収機構。
【請求項3】
前記可撓部材が、平板状をなし、前記エッジ板の雪を押す板面と反対面に積層されている請求項1記載の衝撃吸収機構。
【請求項4】
前記可撓部材が、弾性変形可能なものである請求項1記載の衝撃吸収機構。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の衝撃吸収機構を備えた除雪板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収機構及び除雪板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
年間積雪量が左程多くない地域では、道路に融雪装置が設置されていないことが多い。このような地域では、除雪車で除雪を行う場合、プラウ又はバケットなどの除雪板を地面スレスレまで近づけ、できるだけ地面に雪が残らないように作業が行われる。このため、除雪時に例えば地面から僅かに突出したマンホールの蓋に除雪板が衝突し、その衝撃で除雪車が損傷することがある。
【0003】
前記衝突時における除雪車の損傷を抑制するプラウとして、特許文献1には、合成樹脂製エッジが取り付けられ、そのエッジに破断溝が形成されているプラウが開示されている。このようなプラウであれば、衝突時にエッジが破断溝で破断して衝撃が吸収されるので、除雪車の損傷が抑制される。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたエッジでは、エッジの破断片がプラウから脱落してしまうことがある。このため、破断後に除雪車を進めると、破断片で車両が損傷するという問題があった。また、除雪は通行量が少ない深夜に行われることが多く、作業員が破断したことに気付かないこともある。そうすると、破断片が道路に放置され、事故の原因になる可能性もあり、非常に危険である。さらに、合成樹脂製のエッジは、耐久性が低いため、耐久性の高い金属製のものを採用したいが、金属製のエッジは、合成樹脂製のエッジに比べて衝突時に分断され易いので、前記問題がより顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、衝突時に破断片が脱落することを防止できる衝撃吸収機構を得ること主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る衝撃吸収機構は、除雪車の除雪板に取り付けられる衝撃吸収機構であって、前記除雪板に取り付けられる取付部と、前記除雪板に取り付けた前記取付部から延びて前記除雪板下端から突出するエッジ部とを備えたエッジ板と、一端部が前記エッジ部に固定されているとともに、前記除雪板に保持される可撓部材とを備え、前記除雪板に取り付けられた状態で前記エッジ部に外力が加わることで、そのエッジ部が前記取付部から分断されるとともに、前記可撓部材がその分断されたエッジ部を前記除雪板に保持しながら撓むように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成であれば、除雪板に取り付けられたエッジ板が障害物に衝突し、エッジ部に所定以上の外力が加わることで、エッジ部が取付部から分断されるとともに可撓部材が撓むので、除雪車に加わる衝撃が往なされ吸収できる。これにより、その衝撃で車両が破損することを防止できる。また、分断されたエッジ部が可撓部材によって除雪板に保持されるので、エッジ部が脱落することを防止できる。これにより、分断されたエッジ部による車両破損や事故を防止できる。また、エッジ板に、そのエッジ板の別部材の可撓部材を取り付ける構成としたので、例えば可撓部材としてエッジ板よりも剛性の低いものを使用することで、エッジ板が可撓部材とともに折れてしまうことを抑制できる。
【0009】
また、前記可撓部材が、前記除雪板と前記エッジ板との間に介在するものであるものであってもよい。
【0010】
このような構成によれば、可撓部材が除雪板とエッジ板との間に挟まれるので、可撓部材がエッジ板から剥がれ落ちることを防止できる。
【0011】
また、前記可撓部材が、平板状をなし、前記エッジ板の雪を押す板面と反対面に積層されているものであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、エッジ板と一緒に可撓部材も分断されてしまうことを防止できる。つまり、障害物に衝突すると、エッジ板は、雪を押す板面が向く方向と反対方向へ撓みながら破断する。このため、仮に平板状の可撓部材をエッジ板の雪を押す板面に固定すると、エッジ板の撓みで可撓部材が引延ばされて千切れる可能性がある。一方、可撓部材をエッジ板の雪を押す板面と反対面に固定すれば、エッジ板の撓みで可撓部材が引延ばされなくなる。
【0013】
また、前記可撓部材が、弾性変形可能なものであってもよい。
【0014】
このような構成であれば、エッジ板が障害物に接触して可撓部材が撓んだ後、その障害物から離れると、再び可撓部材が撓む前の状態に戻る。このため、取付部から分断されたエッジ部が、元の位置まで戻る。その結果、一時的に除雪作業を継続できるようになる。
【0015】
また、本発明に係る除雪板は、前記いずれかの衝撃吸収機構を備えるものである。
【0016】
また、除雪板がバケットの場合、可撓部材をエッジ板の雪を押す板面と反対面に固定すると次の問題が生じる。つまり、バケットは、除雪時にプラウに比べてエッジの地面に対する傾斜角度が小さく、エッジ下面が地面スレスレを移動することになる。このため、バケットでは、この下面にエッジ板を取り付けて摩耗等から保護する必要がある。そうすると、このエッジ板の雪を押す板面と反対面(つまり、下面)に可撓部材を固定すると、可撓部材が地面スレスレを移動することになり、障害物に引っ掛かって剥がれ落ちる可能性がある。かと言って、可撓部材をエッジ板の雪を押す板面に固定すると、前述の理由により、エッジ板の撓みで千切れる恐れがある。
【0017】
そこで、前記可撓部材が、板状をなし、前記エッジ板の雪を押す板面に積層されており、予め撓んだ撓み部を有し、前記前記除雪板に取り付けられた状態で前記エッジ部に外力が加わることで、前記撓み部が撓んだ状態から延びた状態に変化するように構成されているものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、可撓部材をエッジ板の雪を押す板面に固定しても、予め撓んだ撓み部が延びることで、エッジ板の撓みで可撓部材が千切れることを防止できる。
【0019】
また、前記除雪板又は前記エッジ板のいずれか一方と前記可撓部材との間に介在するスペーサをさらに備えており、前記撓み部が、前記スペーサと前記エッジ板との間に形成された隙間に収容されているものであってもよい。
【0020】
このような構成によれば、例えば除雪時に石などが打つかって撓み部が潰れてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明に係る衝撃吸収機構であれば、除雪車の除雪板が障害物に衝突することで生じる衝撃を吸収でき、かつ、エッジ板の破断片が脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のプラウに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の衝撃吸収機構を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のプラウに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図4】第2実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のプラウに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態の衝撃吸収機構を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のバケットに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図7】第3実施形態の衝撃吸収機構を示す斜視図である。
【
図8】第3実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のプラウに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図9】第3実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のプラウに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図10】第4実施形態の衝撃吸収機構を示す斜視図である。
【
図11】第4実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のバケットに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図12】その他の実施形態の衝撃吸収機構を除雪車のバケットに取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る衝撃吸収機構は、除雪車の除雪板に取り付けられるものであり、障害物に衝突した場合に加わる外力を往なして衝撃を吸収し、車体の損傷を防止するためのものである。ここで、本発明の除雪板には、プラウやバケットなどが含まれる。なお、プラウには、平面視した形状が直線状のものやV字状のものが含まれる。
【0024】
<第1の実施形態> 本実施形態に係る衝撃吸収機構100は、
図1に示すように、除雪車のプラウPに着脱可能に取り付けられるものである。本実施形態の衝撃吸収機構100が取り付けられるプラウPは、平面視直線状をなすものであり、除雪車の前方を向く前面Pfで雪を押すように構成されており、この前面Pfに衝撃吸収機構100が取り付けられる。
【0025】
前記衝撃吸収機構100は、
図1及び
図2に示すように、エッジ板10と、エッジ板10に固定された可撓部材20と、プラウPにエッジ板10及び可撓部材20を取り付けるための取付機構30とを備えている。
【0026】
前記エッジ板10は、プラウPに取り付けられる取付部11と、取付部11をプラウPに取り付けた状態で、プラウP下端から突出するように取付部11から延びるエッジ部12と、取付部11とエッジ部12との間に設けられた破断部13とを備えている。
【0027】
本実施形態のエッジ板10は、矩形かつ長尺をなす金属板によって構成されており、この金属板の上・下端部(
図2では、長手方向に延びる両端部)がエッジ部12をなし、上・下端部の間の中央部が取付部11をなしている。つまり、本実施形態のエッジ板10は、プラウPに対し、上下をひっくり返りして固定することで、上・下端部いずれもがエッジ部12として使用できるように構成されている。また、このエッジ部12は、先端から取付部11に達する切込み14によって複数に分割されている。そして、本実施形態のエッジ板10は、一方の板面をプラウPの前面Pfに対向させて取り付けられる。したがって、プラウPに取り付けた状態で、一方の板面が後方を向く後面10bとなり、他方の板面が前方を向く前面、つまり、雪を押す押雪面10fとなる。なお、本実施形態のエッジ板10は、複数(具体的には、三枚)直列に並べることでプラウPの横幅と略同じ長さになるように構成されているが、一枚でプラウPの横幅と略同じ長さになるように構成してもよい。
【0028】
前記破断部13は、エッジ板10の他の部分よりも破断し易い構造になっており、エッジ部12に対し押雪面10f側から所定以上の外力が加わることで、優先的に破断するように構成されている。本実施形態の破断部13は、エッジ板10の押雪面10fに形成された破断溝であり、プラウPに取り付けられたエッジ板10のそのプラウP下端から突出する部分に形成されている。なお、破断溝は、エッジ部11の先端に沿うように延びている。
【0029】
前記可撓部材20は、平板状をなし、エッジ板10よりも撓み易く、また、塑性変形する材料で形成されたものであり、例えばエッジ板10よりも薄い金属板である。なお、可撓部材20は、エッジ板10よりも剛性が低いものであることが好ましい。本実施形態の可撓部材20は、エッジ板10の後面10bに密着するように積層されている。そして、可撓部材20は、エッジ板10に対しエッジ部11と密着する部分のみが固定されている。したがって、本実施形態の可撓部材20は、上・下端部(
図2では、長手方向に延びる両端部)がそれぞれエッジ部12に固定(
図6で、固定された部分を黒丸で示す。)されている。具体的には、溶接固定されている。なお、切込み14は、可撓部材20のエッジ部12と対向する部分にまで達している。
【0030】
前記取付機構30は、エッジ板10の取付部11に形成された取付孔31と、可撓部材20に取付孔31と連通するように形成された貫通孔32と、プラウPの下端部に形成されたネジ孔33と、ネジ孔33に螺合されるネジ34とを備えている。
【0031】
次に、本実施形態に係る衝撃吸収機構100のプラウPに対する取り付け方及び動作を
図3に基づいて説明する。
【0032】
本実施形態の衝撃吸収機構100は、プラウPの前面Pfに取り付けられる。具体的には、先ず、エッジ板10をプラウPの前面Pfに可撓部材20を対向させた状態で宛がい、この状態で、取付孔31・貫通孔32・ネジ孔33をそれぞれ連通させる。そして、ネジ34をその連通した各孔31,32,33に差し込んで螺合する。これにより、エッジ板10と可撓部材30とは、取付機構30によってプラウPに固定される。
【0033】
より具体的には、エッジ板10は、エッジ部12がプラウP下端から突出するように固定される。可撓部材20は、プラウPとエッジ板10との間に介在し、エッジ部12に固定された部分がエッジ板10とともにプラウP下端から突出するように固定される。
【0034】
そして、エッジ板10が、障害物Xに衝突すると、
図3の点線で示すように、取付部12に対しエッジ部11が後方(
図3の左方向)へ撓み、その後、破断部13で分断される。そして、可撓部材20は、エッジ部11をプラウPに保持しながらで、そのエッジ部11とともに後方へ撓む。これにより、衝突による衝撃が往なされるとともに、エッジ部11の脱落も防止される。
【0035】
本実施形態の衝撃吸収機構によれば、プラウPに取り付けられたエッジ板10が障害物Xに衝突してエッジ部12に所定以上の外力が加わることで、そのエッジ部12が取付部11から分断されるとともに可撓部材20が後方へ撓むので、衝撃が往なされ吸収できる。これにより、車両の破損が防止できる。また、分断されたエッジ部12が、可撓部材20によってプラウPに保持されるので、エッジ部12の脱落を防止できる。これにより、分断されたエッジ部12による車両破損や事故を防止できる。さらに、エッジ板が、金属製なので耐久性が高い。
【0036】
また、可撓部材20が、塑性変形するので、分断されたエッジ部を撓んで地面から遠ざかるように上方へ持ち上げた後、その状態を維持する。これにより、分断されたエッジ部が、地面に引っ掛かって可撓部材が分断され、そのエッジ部が脱落するような事態を防止できる。
【0037】
また、プラウPにエッジ板10を複数連ねて取り付けたり、エッジ部11を分割しているので、衝突時に一部のエッジ部11のみが分断されるようになり、車体に対してより衝撃が伝わり難くなる。
【0038】
<第2実施形態> 本実施形態に係る衝撃吸収機構100は、
図4に示すように、除雪車のバケットBに着脱可能に取り付けられる。本実施形態の衝撃吸収機構100が固定されるバケットBは、除雪車の前方を向く前面Bfで雪を押し掬うように構成されており、この前面Bfと反対面であり、除雪時に下方を向く後面Bbに衝撃吸収機構100が取り付けられる。
【0039】
前記衝撃吸収機構100は、
図4及び
図5に示すように、エッジ板10と、エッジ板10に固定された可撓部材20と、スペーサ40と、バケットBにエッジ板10、可撓部材20及びスペーサ40を取り付ける取付機構30とを備えている。
【0040】
前記エッジ板10は、エッジ部11の形状が異なる他は、前記第1実施形態のエッジ板10と同一構造を備えている。そして、本実施形態のエッジ板10は、一方の板面をバケットBの後面Bbに対向させて取り付けられる。したがって、バケットBに取り付けられた状態で、一方の板面が前方を向く前面、つまり、雪を押す押雪面10fとなり、他方の板面が後方を向く後面10bとなる。なお、本実施形態のエッジ板10は、複数(具体的には、二枚)直列に並べることでバケットBの横幅と略同じ長さになるように構成されている。
【0041】
前記可撓部材20は、板材を断面U字状に撓ませて形成された撓み部21を有している他は、前記第1実施形態の可撓部材20と同一構造を有している。本実施形態の可撓部材20は、エッジ板10の前面10fに積層されている。そして、可撓部材20は、上・下端部(
図5では、長手方向に延びる両端部)がそれぞれエッジ部12に固定(
図6で、固定された部分を黒丸で示す。)されている。撓み部21は、エッジ板10の破断部13に沿うように形成されている。つまり、撓み部21は、破断部13と対向するように形成されている。
【0042】
前記スペーサ40は、エッジ板10をバケットBに取り付けた状態で、そのエッジ板10に固定された可撓部材20とバケットBとの間に介在するものである。本実施形態のスペーサ40は、少なくとも撓み部21の高さよりも厚みが大きい板材によって形成されている。なお、スペーサ40は、上下方向の長さが、可撓部材20の上下方向の長さよりも短くなっている。
【0043】
前記取付機構30は、エッジ板10の取付部11に形成された取付孔31と、可撓部材20に取付孔31と連通するように形成された貫通孔32と、スペーサ40に貫通孔32と連通するように形成された第2の貫通孔35と、プラウPの下端部に形成されたネジ孔33と、ネジ孔33に螺合されるネジ34とを備えている。
【0044】
次に、本実施形態に係る衝撃吸収機構100のバケットBに対する取り付け方及び動作を
図6に基づいて説明する。
【0045】
本実施形態の衝撃吸収機構100は、バケットBの後面Bbに取り付けられる。具体的には、先ず、エッジ板10をバケットBの後面Bbに可撓部材20を対向させた状態で宛がい、その後面Bbと可撓部材20との間にスペーサ40を介在させる。この状態で、取付孔31・貫通孔32・第2の貫通孔35・ネジ孔33をそれぞれ連通させる。そして、ネジ34をその連通した各孔31,32,33,35に差し込んで螺合する。
【0046】
より具体的には、エッジ板10は、エッジ部12がプラウP下端から突出するように固定される。可撓部材20は、バケットBとの間にスペーサ40を挟んだ状態で、バケットBとエッジ板10との間に介在し、エッジ部12に固定された部分がエッジ板10とともにプラウP下端から突出するように固定される。スペーサ40は、バケットBと可撓部材20との間に挟まれて固定される。なお、可撓部材20の撓み部21は、スペーサ40によって形成されたエッジ板10とバケットBとの間の隙間に収容された状態になっている。
【0047】
そして、エッジ板10が、障害物Xに衝突すると、
図6の点線で示すように、取付部12に対しエッジ部11が後方(
図6の左方向)へ撓み、その後、破断部13で分断される。そして、可撓部材20は、エッジ部11をプラウPに保持しながらで、そのエッジ部11とともに撓み部21を撓んだ状態から延びた状態へ変形させながら後方へ撓む。これにより、衝突による衝撃が往なされるとともに、エッジ部11の脱落も防止される。
【0048】
本実施形態の衝撃吸収機構によれば、バケットBに取り付けられたエッジ板10が障害物Xに衝突してエッジ部12に所定以上の外力が加わることで、そのエッジ部12が取付部11から分断されるとともに可撓部材20が後方へ撓むので、衝撃が往なされ吸収できる。また、可撓部材20が、撓むことで撓み部21が撓んだ状態から延びた状態に変形するので、エッジ板10の撓みによって可撓部材20が引き延ばされて千切れることを防止できる。さらに、撓み部21は、バケットBとエッジ板10との間の隙間に収容されるので、除雪作業時に石などが打つかって撓みが潰れてしまうことを防止できる。
【0049】
<第3実施形態> 本実施形態の衝撃吸収機構100は、第1実施形態の衝撃吸収機構の変形例である。本実施形態の衝撃吸収機構100は、第1実施形態の衝撃吸収機構と比較して可撓部材20及びその可撓部材20のエッジ板10への取り付け方が相違する。
【0050】
詳述すると、本実施形態の可撓部材20は、
図7に示すように、弾性変形可能なものであり、具体的には長尺状の板バネである。そして、可撓部材20は、エッジ板10の押雪面10fと反対面(後面10b)に形成された長溝10gに嵌め込んで取り付けられる。この長溝10gは、取付部11とエッジ部12とに亘って形成されている。
【0051】
そして、可撓部材20は、その可撓部材20をエッジ板10の取付部11及びエッジ部12それぞれに固定する固定機構40を介してエッジ板に取り付けられている。固定機構40は、長溝10g底面に形成された固定用ネジ孔41と、可撓部材20に形成された固定用貫通孔42と、その固定用貫通孔42に通して固定用ネジ孔41にネジ止めされる固定用ネジ43とを備えている。固定用ネジ孔41は、長溝10g底面の取付部11及びエッジ部12を構成する部分それぞれに形成されている。また、可撓部材20には、固定用ネジ孔41に対応する数の固定用貫通孔42が形成されている。そして、固定用ネジ孔41と固定用貫通孔42とは、可撓部材20を長溝10gに嵌め込んだ状態で、互いに連通するようになっている。したがって、この状態で、可撓部材20を固定用ネジ43によってネジ止めすることにより、可撓部材20が取付部11及びエッジ部12それぞれに固定された状態となる。
【0052】
なお、本実施形態の破断部13は、エッジ板10の押雪面10fとその反対面(後面10b)それぞれに形成された破断溝によって構成されている。
【0053】
次に、本実施形態に係る衝撃吸収機構100のプラウPに対する取り付け方及び動作を
図9に基づいて説明する。
【0054】
本実施形態の衝撃吸収機構100は、
図8(a)に示すように、プラウPの前面Pfに取り付けられる。具体的には、エッジ板10をプラウPの前面Pfに可撓部材20を対向させた状態で宛がい、この状態で、エッジ板10の取付部11をプラウPにネジ止めする。本実施形態では、
図8中、点線で示すネジでネジ止めされている。
【0055】
そして、エッジ板10が、障害物に衝突すると、
図8(b)に示すように、取付部12に対しエッジ部12が後方(
図8(b)の左方向)へ撓んで破断部13で分断される。そして、可撓部材20は、エッジ部12をプラウPに保持しながらで、そのエッジ部12とともに後方へ弾性変形して撓む。これにより、衝突による衝撃が往なされる。また、エッジ部12は、エッジ板10を介してプラウPに保持された状態となり、エッジ部11の脱落も防止される。また、可撓部材20は、弾性変形するため、
図8(c)に示すように、エッジ板10が、障害物に接触しなくなると、元の状態に復元して真っ直ぐに延びた状態に戻る。これにより、取付部11から分断されたエッジ部12も元の位置へ戻る。
【0056】
本実施形態の衝撃吸収機構100によれば、可撓部材20が弾性変形可能なものであるため、エッジ板10が障害物に衝突して撓んだ後、復元して元の状態に戻る。このため、取付部11から分断されたエッジ部12も元の位置まで戻る。これにより、エッジ部12が取付部11から分断された後でも、一時的に除雪作業を継続できるようになる。
【0057】
なお、本実施形態の衝撃吸収機構100をプラウPに取り付ける場合には、
図9に示すように、プラウPの先端部を切り欠いて凹部P1を形成し、可撓部材20が撓んだ際に、その凹部P1に嵌まり込むようにしてもよい。このような構成によれば、可撓部材20が後方へ大きく湾曲できる。これにより、障害物に接触した際に、取付部11から分断されたエッジ部12が後方へ大きく回動できるようになり、衝撃をより往なし易くなる。
【0058】
<第4実施形態> 本実施形態の衝撃吸収機構100は、第2実施形態の衝撃吸収機構の変形例である。本実施形態の衝撃吸収機構100は、第2実施形態の衝撃吸収機構と比較して可撓部材20及びその可撓部材20のエッジ板10への取り付け方が相違する。
【0059】
詳述すると、本実施形態の可撓部材20は、
図10に示すように、弾性変形可能なものであり、具体的には長尺状の板バネである。そして、可撓部材20は、エッジ板10の前面Bbに形成された長溝10gに嵌め込んで取り付けられる。この長溝10gは、取付部11とエッジ部12とに亘って形成されている。
【0060】
そして、可撓部材20は、その可撓部材20をエッジ板10の取付部11及びエッジ部12それぞれに固定する固定機構40を介してエッジ板10に取り付けられている。固定機構40は、長溝10g底面に形成された固定用ネジ孔41と、可撓部材20に形成された固定用貫通孔42と、その固定用貫通孔42に通して固定用ネジ孔41にネジ止めされる固定用ネジ43とを備えている。固定用ネジ孔41は、長溝10g底面の取付部11及びエッジ部12を構成する部分それぞれに形成されている。また、可撓部材20には、固定用ネジ孔41に対応する数の固定用貫通孔42が形成されている。そして、固定用ネジ孔41と固定用貫通孔42とは、可撓部材20を長溝10gに嵌め込んだ状態で、互いに連通するようになっている。したがって、この状態で、可撓部材20を固定用ネジ43によってネジ止めすることにより、可撓部材20が取付部11及びエッジ部12それぞれに固定された状態となる。
【0061】
次に、本実施形態に係る衝撃吸収機構100のバケットBに対する取り付け方及び動作を
図11に基づいて説明する。
【0062】
本実施形態の衝撃吸収機構100は、
図11(a)に示すように、バケットBの後面Bbに取り付けられる。具体的には、エッジ板10をバケットBの後面Bbに可撓部材20を対向させた状態で宛がい、この状態で、エッジ板10の取付部11をバケットにネジ止めする。本実施形態では、
図11中、点線で示すネジでネジ止めされている。
【0063】
そして、エッジ板10が、障害物に衝突すると、
図11(b)に示すように、取付部12に対しエッジ部11が後方(
図11の左方向)へ撓んで破断部13で分断される。そして、可撓部材20は、エッジ部11をバケットBに保持しながらで、そのエッジ部11とともに後方へ撓む。これにより、衝突による衝撃が往なされるとともに、エッジ部11の脱落も防止される。また、可撓部材20は、弾性変形するため、エッジ板10が、障害物に接触しなくなると、元の形状に復元し、真っ直ぐに延びた状態(弾性変形前の状態)に戻る。これにより、取付部11から分断されたエッジ部12も元の位置へ戻る。
【0064】
本実施形態の衝撃吸収機構100によれば、可撓部材20が弾性変形可能なものであるため、エッジ板10が障害物に衝突して撓んだ後、元の形状に復元する。このため、取付部11から分断されたエッジ部12も元の位置へ戻る。これにより、エッジ部12が取付部11から分断された後でも、一時的に除雪作業を継続することができる。
【0065】
<その他の実施形態> 本発明に係る衝撃吸収機構は、前記第1実施形態及び前記第2実施形態のものに限定されない。例えば、前記第1実施形態の衝撃吸収機構は、プラウの前面に取り付けたが、後面に取り付けてもよい。この場合、可撓部材は、プラウに取り付けられたエッジ板の後面に固定されていることが好ましい。つまり、可撓部材は、必ずしてもエッジ板と除雪板との間に介在するように構成しなくてもよい。
【0066】
また、前記可撓部材は、エッジ部に固定されているとともに、除雪板に固定して保持されるように構成してもよい。この場合、例えば、
図12に示すように、可撓部材20は、エッジ部12に溶接固定するとともに、プラウPに溶接固定してもよい。なお、
図7中、黒丸が溶接固定箇所である。
【0067】
また、前記各実施形態では、エッジ板を上下ひっくり返して使用できるように、上・下端部をエッジ部としたが、いずれか一方の端部のみをエッジ部として使用できるようにしてもよい。
【0068】
また、前記第2実施形態では、スペーサを可撓部材とバケットとの間に介在させたが、可撓部材と除雪板との間に介在させるように構成してもよい。
【0069】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士の組み合わせや、変形等を行っても構わない。
【符号の説明】
【0070】
P プラウ(除雪板)
B バケット(除雪板)
100 衝撃吸収機構
10 エッジ板
11 取付部
12 エッジ部
20 可撓部材
21 撓み部
30 取付機構
40 スペーサ