(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073378
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240522BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 129
B41J2/01 305
B41J2/01 107
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191889
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2022184418
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】渥美 英敏
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA11
2C056HA05
2C056HA29
2C056HA44
2C056HA60
(57)【要約】
【課題】選択する印刷の種類によって発生する、インクの硬化に寄与しない無駄な照射エリアを解消すること。
【解決手段】プリンタ10は、テーブル11に載置されたメディアMeを搬送する搬送機構17と、第1のインクを吐出する第1のノズル群14cと前記第1のインクを吐出する前か後に第2のインクを吐出する第2のノズル群14dとを有してキャリッジ13に搭載されるインクヘッド14と、前記キャリッジ13に配置され前記メディアMeに吐出された前記紫外線硬化インクに紫外線を照射する紫外線照射装置15,15と、前記紫外線照射装置15,15を固定する複数の固定部40,50を有する取付部材30とを備える。前記取付部材30は、1つの固定部を選択することにより、前記テーブル11の搬送方向が単方向か双方向かに対応して前記キャリッジ13に対する前記紫外線照射装置15,15の位置を変更可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアを載置するテーブルと、
前記テーブルに載置された前記メディアを搬送方向へ搬送可能に構成する搬送機構と、
前記メディアの搬送方向とは異なる方向へ走査可能なキャリッジと、
第1の紫外線硬化インクを吐出する第1のノズル群と、前記第1の紫外線硬化インクを吐出する前か後又は同時に第2の紫外線硬化インクを吐出する第2のノズル群とを有し、前記キャリッジに搭載されるインクヘッドと、
前記キャリッジに対し、このキャリッジの走査方向の少なくとも一方側に配置され、前記メディアに吐出された前記第1の紫外線硬化インク及び前記第2の紫外線硬化インクに紫外線を照射する紫外線照射装置と、
前記紫外線照射装置を固定するための複数の固定部を有する取付部材と、を備え、
前記搬送機構は、前記第1のノズル群及び第2のノズル群から吐出する前記第1及び第2の紫外線硬化インクの種類に応じて、前記メディアの前記搬送方向の一方側から他方側若しくは他方側から一方側のいずれか一方の単方向に、又は前記メディアの前記搬送方向の一方側から他方側及び他方側から一方側の双方向に、前記テーブル又は前記メディアが搬送可能に構成され、
前記取付部材は、前記複数の固定部から1つの固定部を選択することにより、前記テーブル又は前記メディアの前記搬送方向が前記単方向か前記双方向かに対応して前記キャリッジに対する前記紫外線照射装置の位置を変更可能に構成されている、プリンタ。
【請求項2】
前記テーブルが前記単方向に搬送可能に構成される場合は、前記複数の固定部から第1の前記固定部を選択することにより前記紫外線照射装置が前記取付部材に固定され、
前記テーブルが前記双方向に搬送可能に構成される場合は、前記複数の固定部から第2の前記固定部を選択することにより前記紫外線照射装置が前記取付部材に固定され、
第1の前記固定部を選択することにより、前記第1のノズル群及び前記第2のノズル群の前記搬送方向における長さであるノズル長よりも前記搬送方向の一方側及び他方側のいずれか一方のみに前記紫外線照射装置が突出して配置され、
第2の前記固定部を選択することにより、前記ノズル長よりも前記搬送方向の一方側及び他方側に前記紫外線照射装置が突出して配置されている、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1の紫外線硬化インク及び前記第2の紫外線硬化インクがカラーインクである場合は、前記複数の固定部から第1の前記固定部を選択することにより前記紫外線照射装置が前記取付部材に固定され、
前記第1の紫外線硬化インク及び前記第2の紫外線硬化インクのうち一方がカラーインクであり、他方が特殊インクである場合は、前記複数の固定部から第2の前記固定部を選択することにより前記紫外線照射装置が前記取付部材に固定され、
前記第1の前記固定部を選択することにより、前記紫外線照射装置の前記照射範囲における前記搬送方向の一方側及び他方側のうちいずれか一方の端が、前記第1のノズル群及び前記第2のノズル群の前記搬送方向における長さであるノズル長の前記搬送方向における一方側及び他方側のうちいずれか一方の端に位置し、
前記第2の前記固定部を選択することにより、前記紫外線照射装置の照射範囲における前記搬送方向の中央位置が、前記ノズル長の前記搬送方向における中央位置に位置している、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記複数の固定部は、前記メディアが前記双方向に搬送される場合に選択する双方向孔と、前記メディアが前記単方向に搬送される場合に選択される単方向孔とからなり、
前記双方向孔の形状と前記単方向孔の形状とは、異なる形状に設定されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記双方向孔及び前記単方向孔は、前記メディアの前記搬送方向の前側と後側とにそれぞれ配置されており、
前側に配置された前記各孔又は後側に配置された前記各孔の一方は、他方の前記各孔に対して、前記搬送方向に長く設定されている、請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記複数の固定部は、前記メディアが前記双方向に搬送される場合に選択する双方向孔と、前記メディアが前記単方向に搬送される場合に選択される単方向孔とからなり、
前記双方向孔の形状と前記単方向孔の形状とは、異なる形状に設定されている、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記双方向孔及び前記単方向孔は、前記メディアの前記搬送方向の前側と後側とにそれぞれ配置されており、
前側に配置された前記各孔又は後側に配置された前記各孔の一方は、他方の前記各孔に対して、前記搬送方向に長く設定されている、請求項6に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記複数の固定部は、前記メディアが前記双方向に搬送される場合に選択する双方向孔と、前記メディアが前記単方向に搬送される場合に選択される単方向孔とからなり、
前記双方向孔の形状と前記単方向孔の形状とは、異なる形状に設定されている、請求項3に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記双方向孔及び前記単方向孔は、前記メディアの前記搬送方向の前側と後側とにそれぞれ配置されており、
前側に配置された前記各孔又は後側に配置された前記各孔の一方は、他方の前記各孔に対して、前記搬送方向に長く設定されている、請求項8に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタには、キャリッジに搭載されて紫外線硬化型のインクを吐出するインクヘッドと、吐出された紫外線硬化インクに紫外線を照射する紫外線照射装置とを、備えたものがある。このようなプリンタに関する従来技術として、例えば特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるプリンタは、紫外線硬化型のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと、これらのインクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、このキャリッジを主走査方向に往復移動させるキャリッジ駆動機構と、インクジェットヘッドから吐出されたインクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射器を有する2つの紫外線照射ユニットとを、備えたというものである。
【0004】
各紫外線照射器は、各々のモータの駆動により、キャリッジに対して副走査方向へ往復移動可能である。例えば、キャリッジの前側に配置されたインクジェットヘッドから、白インクが吐出されるときには、紫外線照射器を前側へ移動させる。キャリッジの後側に配置されたインクジェットヘッドから、カラーインクが吐出されるときには、紫外線照射器を後側へ移動させる。
【0005】
また、プリンタにおいては、メディアに同じ種類のカラーインク(CMYK)のみをカラーインクヘッドから吐出する通常印刷(第1の使い方)と、メディアに上記カラーインク(CMYK)を吐出する前か後にカラーインクとは異なる特殊インクを特殊インクヘッドから吐出する特殊印刷(第2の使い方)と、が知られている。
【0006】
どちらの使い方においても、メディアに吐出された紫外線硬化インクを完全に硬化させるためには、紫外線照射装置からインクに照射する紫外線の積算照射量を確保する必要がある。紫外線の積算照射量は、紫外線照度と照射時間の積算値として知られている。メディアの搬送方向における下流側のノズルから吐出されたインクを完全硬化させるために、下流側のノズルよりもメディアの搬送方向の下流側に照射エリアを拡大させ、硬化に必要な紫外線の照射時間を確保している。
【0007】
通常印刷の場合は、搬送方向は後方から前方の一方側のみである。このため、カラーインクヘッドにおける下流側のノズルよりも前方側(搬送方向の下流側)にのみ照射エリアを拡大して積算照射量を確保する。
【0008】
一方、特殊印刷の場合は、特殊インクを吐出するタイミングによって搬送方向が異なる。即ち、カラーインクが吐出される前に特殊インクを吐出する(下地形成)場合は、特殊インクヘッドがカラーインクヘッドより搬送方向の上流側となるように搬送方向が規定され、カラーインクが吐出された後に特殊インクを吐出する(グロス形成)場合は、特殊インクヘッドがカラーインクヘッドより搬送方向の下流側となるように搬送方向が規定される。
【0009】
よって、カラーインクが吐出される前に特殊インクを吐出する(下地形成)場合と、カラーインクが吐出された後に特殊インクを吐出する(グロス形成)場合とでは、搬送方向が反対方向となる。このため、特殊印刷の場合は、各搬送方向において下流側のノズルよりも搬送方向下流側に、即ち、カラーインクヘッド及び特殊インクヘッドにおけるノズル長(以下「ノズル長」と略す)の前か後に、拡大された照射エリアを確保する必要がある。
【0010】
通常印刷の場合は、カラーインクヘッドに対して前方側にのみ拡大された照射エリアを確保すればよいが、特殊印刷の場合はノズル長の前か後に拡大された照射エリアを確保する必要がある。このため、特殊印刷の場合に対応できるように、ノズル長の中央とUVランプ(紫外線照射装置)の中央とが一致するようにUVランプを配置することで、ノズル長の前後方向に拡大された照射エリアを確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、プリンタを使う用途によっては、プリンタを導入した当初から、通常印刷のみを使い続ける方が、印刷効率が高くて好ましい場合がある。その場合には、カラーインクヘッドに対して前方側(後方から前方へ搬送する搬送方向の下流側)にのみ照射エリアを拡大して積算照射量を確保すればよいが、特殊印刷に対応するようにインクヘッドに対してUVランプ(紫外線照射装置)が配置されているので、後方側(搬送方向の上流側)に確保された拡大されたエリアは硬化に寄与しない無駄な照射エリアとなっていた。
【0013】
この無駄な照射エリアをなくすことができれば、硬化に寄与する照射エリアを拡大させることができるので、印刷スピードをあげたり、無駄な照射エリアを設ける場合よりUVランプの光量を弱く設定したりできるというメリットがある。
【0014】
しかしながら、通常印刷のみを利用するのか、特殊印刷を利用するのかは、購入者の好みであるため、事前に予測できない。そのため、インクの硬化に寄与しない無駄な照射エリアをなくすことは困難であった。
【0015】
本発明は、簡単な構成によって、キャリッジに対する紫外線照射装置の副走査方向の位置を調整することで、選択する印刷の種類によって発生する、インクの硬化に寄与しない無駄な照射エリアを解消できる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、
メディアを載置するテーブルと、
前記テーブルに載置された前記メディアを搬送方向へ搬送可能に構成する搬送機構と、
前記メディアの搬送方向とは異なる方向へ走査可能なキャリッジと、
第1の紫外線硬化インクを吐出する第1のノズル群と、前記第1の紫外線硬化インクを吐出する前か後又は同時に第2の紫外線硬化インクを吐出する第2のノズル群とを有し、前記キャリッジに搭載されるインクヘッドと、
前記キャリッジに対し、このキャリッジの走査方向の少なくとも一方側に配置され、前記メディアに吐出された前記第1の紫外線硬化インク及び前記第2の紫外線硬化インクに紫外線を照射する紫外線照射装置と、
前記紫外線照射装置を固定するための複数の固定部を有する取付部材と、を備え、
前記搬送機構は、前記第1のノズル群及び前記第2のノズル群から吐出する前記第1及び第2の紫外線硬化インクの種類に応じて、前記メディアの前記搬送方向の一方側から他方側若しくは他方側から一方側のいずれか一方の単方向に、又は前記メディアの前記搬送方向の一方側から他方側及び他方側から一方側の双方向に、前記テーブル又は前記メディアが搬送可能に構成され、
前記取付部材は、前記複数の固定部から1つの固定部を選択することにより、前記テーブル又は前記メディアの前記搬送方向が前記単方向か前記双方向かに対応して前記キャリッジに対する前記紫外線照射装置の位置を変更可能に構成されている、プリンタが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、簡単な構成によって、キャリッジに対する紫外線照射装置の副走査方向の位置を調整することで、選択する印刷の種類によって発生する、インクの硬化に寄与しない無駄な照射エリアを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例によるプリンタを正面から見てカバーを開いた図である。
【
図3】
図1に示されるキャリッジにインクヘッドホルダと紫外線照射装置を固定した構成の斜視図である。
【
図4】
図3に示される左の取付部材に左の紫外線照射装置の組付けた構成の斜視図である。
【
図5】
図4に示される左の取付部材から左の紫外線照射装置を外した分解図である。
【
図6】
図1に示されるインクヘッドと紫外線照射装置との位置関係を主走査方向から見た概念図である。
【
図7】
図3に示されるインクヘッドと紫外線照射装置との位置関係を、メディアの搬送方向を単方向とした場合に上から見て模式的に表した模式図である。
【
図8】
図7の8-8線に沿う方向から見た取付部材と紫外線照射装置の組付け状態を示す側面図である。
【
図9】
図3に示されるインクヘッドと紫外線照射装置との位置関係を、メディアの搬送方向を双方向とした場合に上から見て模式的に表した模式図である。
【
図10】
図9の10-10線に沿う方向から見た取付部材と紫外線照射装置の組付け状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。説明中、左右とは正面から見たプリンタを基準として左右、前後とはメディアの送り方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0020】
<実施例>
図1及び
図2に示されるように、プリンタ10は、メディアMeにカラー画像を形成可能なインクジェット式プリンタの構成である。
【0021】
ここで、プリンタ10の搬送機構17によって送られたメディアMeの送り方向S2(搬送方向S2)を基準として、メディアMeの幅方向S1のことを、適宜「主走査方向S1」ということがある。また、メディアMeの送り方向S2のことを、適宜「副走査方向S2」ということがある。プリンタ10を上から見て、副走査方向S2は主走査方向S1に対して直交した方向である。
【0022】
印刷対象としてのメディアMeは、例えば、印刷紙などの平面素材であり、メディアの材質としては、普通紙などの紙類であってもよく、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂類であってもよく、アルミニウム材、鉄材等の金属類であってもよく、様々な材料によって構成可能である。
【0023】
プリンタ10は、上面11aにメディアMeを載置するテーブル11と、このテーブル11の上方に位置し主走査方向S1へ延びているレール12と、このレール12に移動可能に設けられているキャリッジ13と、このキャリッジ13に搭載されているインクヘッド14(プリントヘッド14)及び少なくとも1つ(例えば2つ)の紫外線照射装置15,15と、を備えている。
【0024】
搬送機構17(テーブル搬送機構17)は、テーブル11を搬送方向S2(副走査方向S2)へ搬送可能に構成されている。つまり、搬送機構17は、メディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)の一方側から他方側へ及び他方側から一方側への双方向の搬送方向と、一方側から他方側へのみの単方向の搬送方向の、いずれの搬送方向にも、テーブル11の上面11a(メディア載置面11a)に載置されているメディアMeを、搬送可能に構成されている。
【0025】
テーブル11、レール12、キャリッジ13、インクヘッド14、紫外線照射装置15,15、搬送機構17は、ケース18に収納されている。このケース18の正面は、
図1に示される上開き可能なカバー18aによって覆われる。
【0026】
キャリッジ13は、テーブル11のメディア載置面11aに対し、副走査方向S2とは異なる方向S1(主走査方向S1)へ走査可能である。
【0027】
インクヘッド14は、メディア載置面11aに載置されたメディアMeに紫外線硬化インク(光硬化性インク)を吐出する。
【0028】
紫外線照射装置15,15は、キャリッジ13に対し、このキャリッジ13の走査方向S1(主走査方向S1)の少なくとも一方側(例えば両側)に配置されており、インクヘッド14からメディアMe上に吐出された光硬化性インク(紫外線硬化インク)に紫外線を照射して、この光硬化性インクを硬化させる。
【0029】
図3に示されるように、キャリッジ13は、レール12(
図1参照)に主走査方向S1へ移動可能に設けられているキャリッジベース21と、このキャリッジベース21の前面に取り付けられているインクヘッドホルダ22と、このインクヘッドホルダ22に対して主走査方向S1の両側に位置してキャリッジベース21の前面に取り付けられている左右の取付部材30,30とを備えている。
【0030】
インクヘッドホルダ22は、インクヘッド14(
図1参照)を収納している。
【0031】
図3及び
図4に示されるように、紫外線照射装置15,15は、例えば、直方体形状のケース15a,15aに図示せぬ紫外線照射本体(紫外線ランプ)を収納し且つ組付けた構成であって、下面に紫外線が照射される照射面を有している。
【0032】
左右の取付部材30,30は、縦板状の部材である。これらの取付部材30,30の、主走査方向S1の外側の面には、それぞれ紫外線照射装置15,15が組付けられている。
【0033】
紫外線照射装置15,15は、インクヘッドホルダ22及びインクヘッド14(
図1参照)に対して、副走査方向S2における前側Frの第1位置P1と、後側Rrの第2位置P2とに、設定可能である。具体的には、紫外線照射装置15,15は、取付部材30,30に対して、副走査方向S2における前側Frの第1位置P1と、後側Rrの第2位置P2とに、設定可能である。
【0034】
第1位置P1は、メディアMeの搬送方向を、副走査方向S2の単方向Fr(例えば前方向Frのみ)とした場合に、紫外線照射装置15,15が取付部材30に固定される位置である。第2位置P2は、メディアMeの搬送方向を、副走査方向S2の双方向Fr,Rr(前方向Frと後方向Rrの両方)とした場合に、紫外線照射装置15,15が取付部材30に固定される位置である。
【0035】
次に、左の取付部材30に対する左の紫外線照射装置15の組付け構造について、
図4及び
図5を参照しつつ、詳しく説明する。なお、右の取付部材30に対する右の紫外線照射装置15の組付け構造は、左に対して左右対称である他には同じなので、説明を省略する。
【0036】
紫外線照射装置15のなかの、取付部材30に取り付けられる方の側面15b(ケース15aの側面15b)には、複数(例えば4つ)のネジ孔15cが設けられている。この側面15bのことを、「被取付面15b」ということがある。
【0037】
取付部材30は、被取付面15bを重ね合わせることが可能な平板状の縦板部31を備えている。この縦板部31は、前側Frの第1位置P1と後側Rrの第2位置P2との、いずれか一方を選択して、紫外線照射装置15を固定するための複数(2つ)の固定部40,50を有している。2つの固定部40,50の、一方を第1固定部40といい、他方を第2固定部50という。
【0038】
第1固定部40は、前側Frの第1位置P1に紫外線照射装置15を固定するための4つの前側孔41~44によって構成されている。この前側孔41~44のことを、「単方向孔41~44」ということがある。第2固定部50は、後側Rrの第2位置P2に紫外線照射装置15を固定するための4つの後側孔51~54によって構成されている。この後側孔51~54のことを、「双方向孔51~54」ということがある。4つの前側孔41~44及び4つの後側孔51~54は、縦板部31を貫通した貫通孔の構成である。4つの前側孔41~44同士の間隔、及び、4つの後側孔51~54同士の間隔は、紫外線照射装置15の4つのネジ孔15c同士の間隔と合致している。
【0039】
4つの前側孔41~44の形状と、4つの後側孔51~54の形状とは、互いに異なる形状に設定されることによって、第1位置P1と第2位置P2を識別することが可能である。例えば、
図5に示されるように、4つの前側孔41~44の形状は角孔であり、4つの後側孔51~54の形状は丸孔である。
【0040】
例えば、
図5に示されるように、左の取付部材30の縦板部31を、左の紫外線照射装置15の被取付面15bへ向かってみたときに、4つの前側孔41~44のなかの1つを第1前側孔41とし、この第1前側孔41を基準として図時計回りに第2前側孔42、第3前側孔43、第4前側孔44とする。
【0041】
第1前側孔41は、縦板部31に対して紫外線照射装置15を第1位置P1に位置決めするための基準孔であって、縦板部31の左下に位置している正方形の孔である。第2前側孔42は、縦板部31に対して、第1前側孔41の上側に位置しており、第1前側孔41よりも大きい正方形の孔である。第3前側孔43は、縦板部31に対して、第2前側孔42の後側に位置しており、第2前側孔42と同じ大きさの正方形の孔である。
【0042】
第4前側孔44は、縦板部31に対して、第3前側孔43の下側且つ第1前側孔41の後側に位置しており、副走査方向S2に細長い角孔(長孔)であって、孔幅が第1前側孔41の大きさと同じである。このように副走査方向S2の前側に配置されている方の第1前側孔41及び第2前側孔42に対して、副走査方向S2の後側に配置されている方の第4前側孔44は、副走査方向S2に長く設定されている。
【0043】
第1前側孔41を基準として、4つのネジ孔15cに位置を合わせたときに、長孔状の第4前側孔44によって副走査方向S2の位置ずれを吸収し、大きい第2前側孔42及び第3前側孔43によって全体の位置ずれを吸収することができる。このため、4つのネジ孔15cと4つの前側孔41~44との寸法精度を吸収して、容易に位置決めをすることができる。
【0044】
同様に、左の取付部材30の縦板部31を、左の紫外線照射装置15の被取付面15bへ向かってみたときに、4つの後側孔51~54のなかの1つを第1後側孔51とし、この第1後側孔51を基準として図時計回りに第2後側孔52、第3後側孔53、第4後側孔54とする。
【0045】
第1後側孔51は、縦板部31に対して紫外線照射装置15を第2位置P2に位置決めするための基準孔であって、縦板部31の左下に位置している丸孔である。第2後側孔52は、縦板部31に対して、第1後側孔51の上側に位置しており、第1後側孔51よりも大径の丸孔である。第3後側孔53は、縦板部31に対して、第2後側孔52の後側に位置しており、第2後側孔52と同径の丸孔である。
【0046】
第4後側孔54は、縦板部31に対して、第3後側孔53の下側且つ第1後側孔51の後側に位置しており、副走査方向S2に細長い丸孔(長孔)であって、孔幅が第1後側孔51の径と同じである。このように、副走査方向S2の前側に配置されている方の第1後側孔51及び第2後側孔52に対して、副走査方向S2の後側に配置されている方の第4後側孔54は、副走査方向S2に長く設定されている。
【0047】
第1後側孔51を基準として、4つのネジ孔15cに位置を合わせたときに、長孔状の第4後側孔54によって副走査方向S2の位置ずれを吸収し、大きい第2後側孔52及び第3後側孔53によって全体の位置ずれを吸収することができる。このため、4つのネジ孔15cと4つの後側孔51~54との寸法精度を吸収して、容易に位置決めをすることができる。
【0048】
第1後側孔51は、第1前側孔41の真後ろに位置する。第2後側孔52は、第2前側孔42の真後ろに位置する。第3後側孔53は、第3前側孔43の真後ろに位置する。第4後側孔54は、第4前側孔44の真後ろに位置する。
【0049】
取付部材30に対して、前側Frの第1位置P1に紫外線照射装置15を固定する場合には、4つの前側孔41~44と4つのネジ孔15cとを位置合わせして、4つのボルト61によって固定する(
図3も参照)。一方、取付部材30に対して、後側Rrの第2位置P2に紫外線照射装置15を固定する場合には、4つの後側孔51~54と4つのネジ孔15cとを位置合わせして、4つのボルト61によって固定する。
【0050】
ここで、
図6を参照しつつ、インクヘッド14からメディアMeに吐出された紫外線硬化インクを、完全に硬化させるために、紫外線照射装置15から紫外線硬化インクへ照射する紫外線の、必要な照射範囲についての概念を説明する。
【0051】
図6は、主走査方向S1(
図6の表裏方向)から見たインクヘッド14と照射範囲との位置関係を、概念的に表している。この
図6では、メディアMeの搬送方向が、副走査方向S2の前方向Fr(
図6の右方向)とした場合の、インクヘッド14と必要な照射範囲との位置関係を示す。
【0052】
メディアMeに吐出された紫外線硬化インクを、完全に硬化させるためには、メディアMeにインクが着弾した後、着弾したインクに対し、紫外線照射装置15(
図1参照)から一定量以上の紫外線(積算照射量)が照射される必要がある。紫外線の積算照射量は、紫外線照度と照射時間の積算値として、知られている。
【0053】
インクヘッド14は、複数のノズル16を備えている。これらのノズル16のノズル面から紫外線硬化インクが吐出される。インクヘッド14の下端面14eは、各ノズル16のノズル面14eを成す。
図6に示されるように、インクヘッド14を主走査方向S1(
図6の表裏方向)の一方から見たときに、副走査方向S2に配列される各ノズル16から紫外線硬化インクを吐出する範囲A1のことを、「インクヘッド14のノズル長A1」又は「インクヘッド14のノズル範囲A1」という。
【0054】
このインクヘッド14のノズル長A1は、各ノズル16のなかの、副走査方向S2の最も前のノズル16f(前端A1f)から最も後のノズル16r(後端A1r)までの距離である。このインクヘッド14のノズル長A1は、メディアMeに紫外線硬化インクUiが印刷された、印刷領域でもある。この印刷領域は、副走査方向S2の範囲である。
【0055】
各ノズル16から吐出されてメディアMeに付着した紫外線硬化インクUi(付着インクUi)は、そのままでは未硬化の状態である。印刷方向が後ろから前の場合(メディアMeが前方Frに向かって搬送される場合)、インクヘッド14のノズル長A1の前端A1fから吐出された紫外線硬化インクを、硬化させるのに必要な前方Frの照射範囲(硬化に必要な距離)はA2である。インクヘッド14のノズル長A1に、硬化に必要な距離A2を加えた距離A3は、印刷方向が後ろから前の場合に、紫外線照射装置15(
図1参照)から未硬化の紫外線硬化インクUiに照射する紫外線の積算照射量を確保するために必要な照射範囲A3である。インクヘッド14のノズル長A1の後端A1rよりも後方Rrの範囲A4は、印刷方向が後ろから前の場合には、各ノズル16から吐出された紫外線硬化インクが着弾しないので、紫外線照射装置15から紫外線を照射する必要がない。また、硬化に必要な距離A2よりも前方Frの範囲A5は、メディアMeに付着した付着インクUiが既に硬化しているので、紫外線照射装置15から紫外線硬化インクUiへ紫外線を照射する必要がない。
【0056】
図7は、
図3に示されたキャリッジ13を上から見て、模式的に表している。本実施例では、
図7に示されるように、インクヘッド14は、2つのインクヘッドユニット14a,14b(第1のインクヘッドユニット14aと第2のインクヘッドユニット14b)を備えている。
【0057】
第1のインクヘッドユニット14a(第1のインクヘッド14aともいう。)は、第1のインクを吐出する第1のノズル群14cを備えている。第2のインクヘッドユニット14b(第2のインクヘッド14bともいう)は、第1のインクを吐出するのと同時に第1のインクと同じ種類の第2のインクを吐出する、又は、第1のインクを吐出する前か後に第1のインクとは異なる第2のインクを吐出する第2のノズル群14dを備えている。各ノズル群14c,14dは、それぞれメディアMeへ向かってインクを吐出する複数のノズル16(吐出孔16)の集合である。このように、インクヘッド14は、第1のノズル群14c及び第2のノズル群14dを有している。
【0058】
第1のノズル群14cと第2のノズル群14dとは、互いにメディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)に変位している。より詳しく述べると、第1のノズル群14cに対して、第2のノズル群14dは副走査方向S2の前方Frにオフセットしている。
【0059】
2つのインクヘッドユニット14a,14bを備えた構成の場合には、次の2つの使い方がある。
【0060】
第1の使い方は、
図7に示されるように、メディアMeに同じ種類のカラーインク(CMYK)のみを第1のインクヘッドユニット14a(カラーインクヘッド14a)及び第2のインクヘッドユニット14b(カラーインクヘッド14b)から吐出する通常印刷の使い方である。つまり、第1の紫外線硬化インク及び第2の紫外線硬化インクの両方が、カラーインクである。
【0061】
この通常印刷の場合は、搬送方向S2は後方Rrから前方Frの一方側のみである。そこで、第1のインクヘッドユニット14aにおける下流側のノズル16f(最も前のノズル16f)よりも前方側Fr、つまり搬送方向S2の下流側にのみ、紫外線照射装置15の照射範囲B1(照射エリアB1)を拡大して、紫外線照射装置15の積算照射量を確保する。
【0062】
第2の使い方は、
図9に示されるように、メディアMeに前記カラーインク(CMYK)を吐出する前か後(前か後のタイミング)に、このカラーインクとは異なる特殊インクを第2のインクヘッド14b(特殊インクヘッド14b)から吐出する特殊印刷の使い方である。つまり、第1の紫外線硬化インク及び第2の紫外線硬化インクのうち一方がカラーインクであり、他方が特殊インクである。
【0063】
この特殊印刷の場合は、特殊インクを吐出するタイミングによって、メディアMeの搬送方向S2(前方Fr又は後方Rr)が異なる。
【0064】
つまり、カラーインクが吐出される前に、特殊インクを吐出する(下地形成)場合は、第2のインクヘッド14bが、第1のインクヘッドユニット14aよりも搬送方向S2の上流側となるように、メディアMeの搬送方向S2が規定される(メディアMeが前方Frから後方Rrへ搬送される)。
【0065】
また、カラーインクが吐出された後に、特殊インクを吐出する(グロス形成)場合は、第2のインクヘッド14bが、第1のインクヘッドユニット14aよりも搬送方向S2の下流側となるようにメディアMeの搬送方向S2が規定される(メディアMeが後方Rrから前方Frへ搬送される)。
【0066】
よって、カラーインクが吐出される前に特殊インクを吐出する(下地形成)場合と、カラーインクが吐出された後に特殊インクを吐出する(グロス形成)場合とでは、搬送方向S2が反対方向となる。このため、特殊印刷の場合は、搬送方向S2において下流側のノズルよりも搬送方向下流側に、つまり、第1及び第2インクヘッドユニット14a,14bにおけるノズル長A11(以下「ノズル長A11」と略す)の前か後に、拡大された照射エリアB1を確保する必要がある。
【0067】
図7では、第1の使い方をする場合の、キャリッジ13に対する紫外線照射装置15,15の配置例を示している。第1の使い方では、紫外線照射装置15の照射範囲B1の後端15rが、第1のインクヘッドユニット14aの最も後のノズル16r(ノズル長の後端16r)に位置することによって、ノズル長A11における搬送方向S2の下流側にのみ、紫外線照射装置15の照射範囲B1(照射エリアB1)を拡大して、照射範囲を照射する紫外線の積算照射量を確保している。即ち、ノズル長A11における搬送方向S2の上流側、即ち、ノズル長A11の後方Rrには、インクが着弾しない。このため、紫外線照射装置15の照射範囲B1の後端15rを第1のインクヘッドユニット14aの最も後のノズル16rに合わせることによって、ノズル長A11の後方Rrにおける無駄な照射エリアをなくすことができる。一方、後方Rrにおける無駄な照射エリアをなくした分だけ、インクの硬化に寄与するノズル長A11における搬送方向S2の下流側、即ち、ノズル長A11の前方Frに照射エリアを拡大できるので、その分硬化時間を短縮でき、印刷スピードを上げることができる。
【0068】
図8は、
図7に示される第1の使い方をする場合(メディアMeが単方向に搬送される場合)の、左の取付部材30に対する左の紫外線照射装置15の組付け構造を示している。第1の使い方をする場合には、前側孔41~44(単方向孔41~44)が選択される。つまり、取付部材30に対して、前側Frの第1位置P1に紫外線照射装置15を固定するので、4つの前側孔41~44(単方向孔41~44)と4つのネジ孔15cとを位置合わせして、4つのボルト61によって固定することになる(
図4も参照)。
【0069】
一方、
図9では、第2の使い方をする場合の、キャリッジ13に対する紫外線照射装置15,15の配置例を示している。第2の使い方では、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1の中央位置CL2が、2つのインクヘッドユニット14a,14b全体の中央位置CL1(インクヘッド14の中央位置CL1)に位置することによって、ノズル長A11における搬送方向S2の上流側と下流側と両方に、紫外線照射装置15の照射範囲B1(照射エリアB1)を拡大して、照射する紫外線の積算照射量を確保している。
【0070】
詳しく述べると、
図9に示されるように、第2のインクヘッドユニット14bは第1のインクヘッドユニット14aに対して、副走査方向S2の前方Frにオフセットしている。
【0071】
2つのインクヘッドユニット14a,14b全体の、副走査方向S2のノズル長A11は、第1のインクヘッドユニット14aの最も後のノズル16rから、第2のインクヘッドユニット14bの最も前のノズル16fまでの距離である。第1のインクヘッドユニット14a及び第2のインクヘッドユニット14bの、副走査方向S2の各ノズル長は、共にA12であって、全体のノズル長A11の1/2である。
【0072】
紫外線照射装置15,15の、副走査方向S2の照射範囲B1の1/2、つまりB2の点CL2が、照射範囲B1の中央位置CL2である。この紫外線照射装置15,15の照射範囲B1の中央位置CL2が、インクヘッド14の中央位置CL1(ノズル長A11の中央位置CL1)に位置している。
【0073】
この場合に、第1のインクヘッドユニット14aの最も後のノズル16rから、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1の後端15rまでの距離Crを「後側距離Cr」という。第2のインクヘッドユニット14bの最も前のノズル16fから、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1の前端15fまでの距離Cfを「前側距離Cf」という。後側距離Cr及び前側距離Cfは、吐出された紫外線硬化インクを硬化させるのに必要な距離A2(
図6に示す、硬化に必要な距離A2)に設定されている。
【0074】
図10は、
図9に示される第2の使い方をする場合(メディアMeが双方向に搬送される場合)の、左の取付部材30に対する左の紫外線照射装置15の組付け構造を示している。第2の使い方をする場合には、後側孔51~54(双方向孔51~54)が選択される。つまり、取付部材30に対して、後側Rrの第2位置P2に紫外線照射装置15を固定するので、4つの後側孔51~54(双方向孔51~54)と4つのネジ孔15cとを位置合わせして、4つのボルト61によって固定することになる。
【0075】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
【0076】
図1、
図2及び
図7に示されるように、プリンタ10は、
メディアMeを載置するテーブル11と、
このテーブル11に載置されたメディアMeを搬送方向S2(副走査方向S2)へ搬送可能に構成する搬送機構17(
図1参照)と、
メディアMeの搬送方向S2とは異なる方向S1(主走査方向S1)へ走査可能なキャリッジ13と、
第1のインク(第1の紫外線硬化インク)を吐出する第1のノズル群14cと、第1のインクを吐出する前か後又は同時に第2のインク(第2の紫外線硬化インク)を吐出する第2のノズル群14dとを有し、キャリッジ13に搭載されるインクヘッド14と、
キャリッジ13に対し、このキャリッジ13の走査方向S1(主走査方向S1)の少なくとも一方側に配置され、メディアMeに吐出された第1の紫外線硬化インク及び第2の紫外線硬化インクに紫外線を照射する紫外線照射装置15,15と、
この紫外線照射装置15,15を固定するための複数の固定部40,50(
図5参照)を有する取付部材30,30と、を備えている。
【0077】
図1、
図2及び
図7に示されるように、搬送機構17は、第1のノズル群14c及び第2のノズル群14dから吐出する第1及び第2の紫外線硬化インクの種類に応じて、メディアMeの搬送方向S2の一方側から他方側若しくは他方側から一方側のいずれか一方の単方向に、又はメディアMeの搬送方向S2の一方側から他方側及び他方側から一方側の双方向に、テーブル11又はメディアMeが搬送可能に構成されている。
【0078】
例えば、搬送機構17は、第1のノズル群14cから第1の紫外線硬化インク(カラーインク、CMYK)を吐出すると同時に第2のノズル群14dから第2の紫外線硬化インク(カラーインク、CMYK)を吐出する場合は、メディアMeの搬送方向S2の一方側(例えば後側Rr)から他方側(例えば前側Fr)又は他方側から一方側のいずれか一方の単方向にテーブル11又はメディアMeが搬送可能に構成され、第1のノズル群14cから第1の紫外線硬化インク(カラーインク、CMYK)を吐出する前か後に第2のノズル群14dから第2の紫外線硬化インク(特殊インク)を吐出する場合はメディアMeの搬送方向S2の一方側から他方側及び他方側から一方側の双方向にテーブル11又はメディアMeが搬送可能に構成されている。
【0079】
図7及び
図9に示されるように、取付部材30,30は、複数の固定部40,50(
図5参照)から1つの固定部を選択することにより、テーブル11又はメディアMeの搬送方向S2が単方向か双方向かに対応してキャリッジ13に対する紫外線照射装置15,15の位置を変更可能に構成されている。
【0080】
このため、
図7及び
図9に示されるように、取付部材30に設けられている複数の固定部40,50から、1つの固定部を選択して、紫外線照射装置15,15を取り付けるだけで、キャリッジ13に対する紫外線照射装置15,15の副走査方向S2の位置を容易に調整することができる。しかも、簡単な構成によって、キャリッジ13に対する紫外線照射装置15,15の副走査方向S2の位置を調整することで、選択する印刷の種類によって発生する、インクの硬化に寄与しない無駄な照射エリアを解消できる。
【0081】
さらには、
図7及び
図8に示されるように、テーブル11(
図1参照)が単方向に搬送可能に構成される場合は、複数の固定部40,50から第1の固定部40を選択することにより紫外線照射装置15,15が取付部材30に固定されている。
図9及び
図10に示されるように、テーブル11(
図1参照)が双方向に搬送可能に構成される場合は、複数の固定部40,50から第2の固定部50を選択することにより紫外線照射装置15,15が取付部材30に固定されている。
第1の固定部40を選択する(単方向に搬送可能にする)ことにより、第1のノズル群14c及び第2のノズル群14dの搬送方向S2における長さであるノズル長A11よりも搬送方向S2の一方側及び他方側のいずれか一方のみに紫外線照射装置15,15が突出して配置されている。
第2の固定部50を選択する(双方向に搬送可能にする)ことにより、ノズル長A11よりも搬送方向S2の一方側及び他方側に紫外線照射装置15,15が突出して配置されている。
【0082】
このように、メディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)を単方向とした場合には、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1を第1のインクヘッドユニット14aの後端16rよりも後方に位置させる必要がない。このため、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1が、搬送方向S2(副走査方向S2)の前側Frに長くなり、その分硬化エリアを広げることができるので、その分、硬化時間を短縮することができる。この結果、印刷時間を短縮できるので、印刷効率を高めることができる。
一方、メディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)を双方向とした場合には、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1がインクヘッド14の中央に位置する。よって、第1のインクヘッドユニット14a及び第2のインクヘッドユニット14bのうち、どちらのインクヘッドユニットから先に光硬化性インクを吐出した場合であっても、後に光硬化性インクを吐出したインクヘッドユニットより搬送方向の下流側に硬化エリアを確保できる。このため、光硬化性インク(紫外線硬化インク)を確実に硬化させることができる。
【0083】
さらには、
図7及び
図8に示されるように、第1のノズル群14cから第1の紫外線硬化インク(カラーインク)を吐出すると同時に第2のノズル群14dから第2の紫外線硬化インク(カラーインク)を吐出する印刷を行う場合、つまり、第1の紫外線硬化インク及び第2の紫外線硬化インクがカラーインクである場合(メディアMeの搬送方向S2を単方向とした場合)は、複数の固定部40,50から第1の固定部40を選択することにより紫外線照射装置15,15が取付部材30,30に固定される。
図9及び
図10に示されるように、第1のノズル群14cにより第1の紫外線硬化インクを吐出する前または後に、第2のノズル群14dにより第2の紫外線硬化インクを吐出する場合、つまり、第1の紫外線硬化インク及び第2の紫外線硬化インクのうち一方がカラーインクであり、他方が特殊インクである場合(メディアMeの搬送方向S2を双方向とした場合)は、複数の固定部40,50から第2の固定部50を選択することにより紫外線照射装置15,15が取付部材30,30に固定される。
【0084】
図7及び
図8に示されるように、第1の固定部40を選択することにより、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1における搬送方向S2の一方側及び他方側のうちいずれか一方の端が、第1のノズル群14c及び第2のノズル群14dの搬送方向S2における長さであるノズル長A11の搬送方向S2における一方側及び他方側のうちいずれか一方の端に位置している。
図9及び
図10に示されるように、第2の固定部50を選択することにより、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1における搬送方向S2の中央位置CL2が、ノズル長A11の搬送方向S2における中央位置CL1に位置している。
【0085】
このように、メディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)を単方向とした場合には、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1をインクヘッド14のノズル長A1の後端16rよりも後方に位置させる必要がない。このため、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1が、搬送方向S2(副走査方向S2)の前側に長くなるので、その分、印刷速度を高速にすることができる。この結果、印刷時間を短縮できるので、印刷効率を高めることができる。一方、メディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)を双方向とした場合には、紫外線照射装置15,15の照射範囲B1がインクヘッド14のノズル長A1の中央CL1に位置するので、双方向において、光硬化性インクを確実に硬化させることができる。
【0086】
さらには、
図9及び
図10に示されるように、複数の固定部40,50は、メディアMeが双方向に搬送される場合に選択する双方向孔51~54と、
図7及び
図8に示されるように、メディアMeが単方向に搬送される場合に選択される単方向孔41~44とからなる。双方向孔51~54の形状と単方向孔41~44の形状とは、異なる形状に設定されている。
【0087】
このため、キャリッジ13に対する、紫外線照射装置15,15の副走査方向S2の位置を設定する場合に、取付部材30,30に対する紫外線照射装置15,15の位置を的確に決めることができる。
【0088】
さらには、
図5に示されるように、双方向孔51~54及び単方向孔41~44は、メディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)の前側Frと後側Rrとにそれぞれ配置されている。前側Frに配置された各孔51,41又は後側Rrに配置された各孔54,44(長孔54,44)の一方は、他方の各孔に対して、搬送方向S2に長く設定されている。
【0089】
このため、キャリッジ13に対する、紫外線照射装置15,15の副走査方向S2の位置を設定する場合に、取付部材30,30と紫外線照射装置15,15との寸法精度を、長孔54,44により吸収して、容易に決めることができる。
【0090】
なお、本発明によるプリンタ10は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、上記実施例に限定されるものではない。本実施例では、フラットベットタイプのプリンタについて説明したが、単方向と双方方向との印刷が可能な場合は、R2R(ロールツーロール)タイプのプリンタであってもよい。
【0091】
本実施例では、通常印刷の場合にメディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)を単方向とした場合を説明したが、特殊印刷の場合にメディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)を単方向としてもよい。
【0092】
例えば、搬送機構17(
図1参照)は、
図7に示されるように、第1ノズル群14cからカラーインク(CMYK)を吐出するとともに、第2ノズル群14dからカラーインク(CMYK)とは異なる特殊インクを吐出する(グロス形成をする)場合であっても、メディアMeの搬送方向S2の一方側(例えば後側Rr)から他方側(例えば前側Fr)の単方向にテーブル11(
図1参照)を搬送可能に構成してもよい。その場合には、例えば、紫外線照射装置15の照射範囲B1の後端15rが、第1のインクヘッドユニット14aの最も後のノズル16r(ノズル長の後端16r)に位置するように紫外線照射装置15,15の副走査方向S2の位置を設定すればよい。
【0093】
第1ノズル群14cからカラーインク(CMYK)を吐出するとともに、第2ノズル群14dからカラーインク(CMYK)とは異なる特殊インクを吐出する(グロス形成をする)場合であっても、メディアMeの搬送方向S2の他方側(例えば前側Fr)から一方側(例えば後側Rr)の単方向にテーブル11(
図1参照)を搬送可能に構成してもよい。その場合には、例えば、紫外線照射装置15の照射範囲B1の前端15fが、第2のインクヘッドユニット14bの最も前のノズル16f(ノズル長の前端16f)に位置するように紫外線照射装置15,15の副走査方向S2の位置を設定すればよい。
【0094】
また、本実施例では、特殊印刷の場合にメディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)双方向としたが、通常印刷の場合に、インクの種類により吐出タイミングを変えたい等の理由があれば双方向としてもよい。この場合は、ノズル長A11の前後に、拡大された照射エリアB1を確保できるように紫外線照射装置15,15の副走査方向S2の位置を設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のプリンタ10は、インクジェット式のプリンタに好適である。
【符号の説明】
【0096】
10 プリンタ
11 テーブル
11a メディア載置面(テーブルの上面)
13 キャリッジ
14 インクヘッド
14a 第1のインクヘッド(第1のインクヘッドユニット)
14b 第2のインクヘッド(第2のインクヘッドユニット)
14c 第1のノズル群
14d 第2のノズル群
15 紫外線照射装置
30 取付部材
40 第1固定部(固定部)
41~44 単方向孔
50 第2固定部(固定部)
51~54 双方向孔
Fr 前側
Me メディア
Rr 後側
S1 主走査方向
S2 副走査方向