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特開2024-73382ポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
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  • 特開-ポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073382
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240522BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240522BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240522BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B27/34
B32B7/023
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193248
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0154841
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA60X
4F071AF04Y
4F071AF05
4F071AF20Y
4F071AF30Y
4F071AF34
4F071AF45Y
4F071AF58Y
4F071AG28
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AK50
4F100AK50A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100EJ86
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK12
4F100JK12B
4F100JK14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械的特性、光学特性および後工程性に優れるポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である、ポリアミド-イミド系フィルムとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である、ポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項2】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1次減量温度(Tw)が290℃以上であり、
前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1%重量減少温度(Td1)が300℃以上であり、
前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による5%重量減少温度(Td5)が420℃以上である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのハードコーティング付着力が5Bである、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項4】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをMIBKに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(△Hz)が0.2%以下であり、
前記ポリアミド-イミド系フィルムをIPAに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(△Hz)が0.1%以下である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項5】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体を含み、
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を2:98~70:30のモル比で含む、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項6】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの第1面の表面張力が40dyn/cm以上である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項7】
ポリアミド-イミド系フィルムの厚さ50μmを基準に、
モジュラスが5GPa以上で、
透過度が80%以上で、
ヘイズが1%以下で、
黄色度が5以下である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項8】
ポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド-イミド系フィルム内のTGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項9】
表示部と、
前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウがポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド-イミド系フィルム内のTGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である、ディスプレイ装置。
【請求項10】
有機溶媒上でジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して、ポリアミド-イミド系重合体溶液を調製する段階と、
前記ポリアミド-イミド系重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む、
請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アミド-イミド)(poly(amide-imide)、PAI)等のようなポリイミド系樹脂は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリイミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリイミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリイミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリイミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に用いるメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリイミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリイミド系フィルムが開発されている。このようなポリイミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリイミド系フィルムにハードコーティング層等の機能層を積層する場合、機能層がフィルムから脱離するか、または、後工程の過程で溶剤に浸漬させる場合、フィルムの機械的/光学的特性が低下するという問題があった。従って、機械的特性、光学特性および後工程性に優れたフィルム開発に対する要求が持続的に増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実現例は、機械的特性、光学特性および後工程性に優れるポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である。
【0008】
他の実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド-イミド系フィルムおよび機能層を含み、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である。
【0009】
また他の実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である。
【0010】
一実現例による前記ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒上でジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して、ポリアミド-イミド系重合体溶液を調製する段階と、前記溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【発明の効果】
【0011】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下に制御することにより、光学特性および機械的特性だけでなく、機能層への付着力および耐溶剤性等の後工程性にも優れる。
【0012】
前記ポリアミド-イミド系フィルム製造後、耐指紋性、帯電防止、飛散防止および付着力向上のような機能を付与するための機能層を積層する工程および/または溶剤に浸漬する工程などの後工程を経ることとなる。
【0013】
このような後工程を経た後、機能層がフィルムから脱離したり、溶剤浸漬した後にヘイズが急激に増加したりするなど、光学的、機械的特性が低下するおそれがあるため、フィルムの内容制性および機能層付着力などの後工程性は、最終製品の品質信頼性において重要な役割を果たす。
【0014】
そこで、実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの場合、TGA減量面積値(TDA)が特定の範囲で制御されることにより、前記フィルムが適用されたディスプレイ装置用カバーウィンドウまたはディスプレイ装置のような最終製品の品質信頼度および製品歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的分解図である。
図2図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的斜視図である。
図3図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的断面図である。
図4図4は、一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法の概略的手順を示すものである。
図5図5は、一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、ゲルシートを熱処理する段階の概略的手順を示すものである。
図6図6は、ASTM D3359方法Bによるクロスカット試験評価基準を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されることができ、本明細書で説明する実現例に限定されない。
【0017】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
本明細書において、単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0020】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0021】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0022】
また、本明細書において「置換された」とは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0023】
[ポリアミド-イミド系フィルム]
実現例は、フィルムのTGA減量面積値(TDA)が特定レベルを満足することにより、耐熱性、黄色度だけでなく、耐溶剤性および機能層付着力などの後工程性に優れるポリアミド-イミド系フィルムを提供する。
【0024】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である。
【0025】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA減量面積値(TDA)は、0.009%・分/℃以下、0.008%・分/℃以下、0.007%・分/℃以下、0.006%・分/℃以下、0.005%・分/℃以下、0.004%・分/℃以下、0.003%・分/℃以下、0.0022%・分/℃以下、または0.002%・分/℃以下であり、0.0001%・分/℃以上、0.0002%・分/℃以上、0.0003%・分/℃以上、0.0004%・分/℃以上、0.0005%・分/℃以上、0.0006%・分/℃以上、0.0007%・分/℃以上、0.0008%・分/℃以上、0.0009%・分/℃以上、または0.001%・分/℃以上であり得る。
【0026】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA減量面積値(TDA)は、0.0001~0.01%・分/℃、0.0001~0.008%・分/℃、0.0001~0.006%・分/℃、0.0001~0.004%・分/℃、0.0001~0.003%・分/℃、0.0001~0.0022%・分/℃、0.0001~0.002%・分/℃、0.0005~0.01%・分/℃、0.0005~0.008%・分/℃、0.0005~0.006%・分/℃、0.0005~0.004%・分/℃、0.0005~0.003%・分/℃、0.0005~0.0022%・分/℃、0.0005~0.002・分/℃、0.0008~0.01%・分/℃、0.0008~0.008%・分/℃、0.0008~0.006%・分/℃、0.0008~0.004%・分/℃、0.0008~0.003%・分/℃、0.0008~0.0022%・分/℃、0.0008~0.002%・分/℃、0.001~0.01%・分/℃、0.001~0.008%・分/℃、0.001~0.006%・分/℃、0.001~0.004%・分/℃、0.001~0.003分/℃、0.001~0.0022%・分/℃、または0.001~0.002%・分/℃であり得るが、これに限定されるものではない。
【0027】
TGA分析の際、1次減量温度(Tw)は、270℃~330℃の温度範囲で重量減少変化率が最も高い温度を意味する。また、温度(x軸)による重量減少変化率(y軸)グラフにおいて、(Tw-30)℃の温度に該当する点と、(Tw+30)℃の温度に該当する点とを結んだ直線と、グラフ間の面積のうち1次減量温度(Tw)が属する区間の面積をTGA減量面積値(TDA)とする。
【0028】
前記TGA分析は、TAインスツルメント社の熱重量分析装置(thermal gravimetric analysis)TGA Q500モデルを用いて、ポリアミド-イミド系フィルムの測定サンプル2gを取って25℃~700℃の範囲で10℃/分の速度で昇温させながら分析し得る。
【0029】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA減量面積値(TDA)が前述の範囲に制御されることにより、光学的、機械的特性に優れるだけでなく、機能層積層工程のような後加工処理の際、機能層との付着力が向上され、製品に適用するの際に層間剥離が起こる現象を著しく減らし得る。さらに、後工程等に主に用いられる溶剤に浸漬した後も物性が低下しないことにより、耐溶剤性に優れる。
【0030】
一方、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA減量面積値(TDA)が前記範囲を外れると、機能層との付着力が低く、溶剤浸漬した後に黄色度などの光学特性が低下して、フィルムの品質信頼度が落ちるだけでなく、フィルムを用いた製品製造の際にも不良率の高い製品につながり得る。
【0031】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1次減量温度(Tw)が285℃以上であり得る。
【0032】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1次減量温度(Tw)が、290℃以上、293℃以上、295℃以上、298℃以上、または300℃以上であり、330℃以下、325℃以下、320℃以下、315℃以下、312℃以下、310℃以下、または308℃以下であり得る。
【0033】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1次減量温度(Tw)は、280℃~330℃、280℃~320℃、280℃~315℃、280℃~310℃、290℃~330℃、290℃~320℃、290℃~315℃、290℃~310℃、295℃~330℃、295℃~320℃、295℃~315℃、または295℃~310℃であり得るが、これに限定されない。
【0034】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの1次減量温度(Tw)が前記範囲を満足すると、機能層付着力および耐溶剤性などの後加工性が改善され得る。
【0035】
一実現例において、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1%重量減少温度(Td1)が290℃以上であり得る。
【0036】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1%重量減少温度(Td1)が、295℃以上、300℃以上、305℃以上、または310℃以上であり、360℃以下、355℃以下、350℃以下、345℃以下、または340℃以下であり得る。
【0037】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による1%重量減少温度(Td1)は、280℃~360℃、280℃~350℃、280℃~345℃、280℃~340℃、290℃~360℃、290℃~350℃、290℃~345℃、290℃~340℃、300℃~360℃、300℃~350℃、300℃~345℃、300℃~340℃、310℃~360℃、310℃~350℃、310℃~345℃、または310℃~340℃であり得るが、これに限定されない。
【0038】
例えば、前記1%重量減少温度(Td1)は、TAインスツルメント社の熱重量分析装置(thermal gravimetric analysis)TGA Q500モデルを用いて、ポリアミド-イミド系フィルムの測定サンプル2gを取って25℃~700℃の範囲で10℃/分の速度で昇温しながら分析したとき、1%の重量減少が発生する温度を意味し得る。
【0039】
一実現例において、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による5%重量減少温度(Td5)が400℃以上であり得る。
【0040】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による5%重量減少温度(Td5)が、405℃以上、410℃以上、415℃以上、420℃以上、425℃以上、または430℃以上であり、470℃以下、460℃以下、455℃以下、450℃以下、445℃以下、または440℃以下であり得る。
【0041】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのTGA分析による5%重量減少温度(Td5)は、400℃~470℃、400℃~460℃、400℃~450℃、400℃~440℃、410℃~470℃、410℃~460℃、410℃~450℃、410℃~440℃、420℃~470℃、420℃~460℃、420℃~450℃、420℃~440℃、430℃~470℃、430℃~460℃、430℃~450℃、または430℃~440℃であり得るが、これらに限定されない。
【0042】
例えば、前記5%重量減少温度(Td5)は、TAインスツルメント社の熱重量分析装置(thermal gravimetric analysis)TGA Q500モデルを用いて、ポリアミド-イミド系フィルムの測定サンプル2gを取って25℃~700℃の範囲で10℃/分の速度で昇温しながら分析したとき、5%の重量減少が発生する温度を意味し得る。
【0043】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの1%重量減少温度(Td1)および5%重量減少温度(Td5)が前術の範囲を満足すると、フィルム内の残留溶媒含有量が低く、フィルムの光学特性および機械的特性が改善され得る。
【0044】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、機能層付着力が4B以上または5Bであり得る。
【0045】
前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択される1種以上であり得るが、これに限定されない。
【0046】
一実現例において、前記機能層とポリアミド-イミド系フィルムとの間にプライマー層をさらに含み得る。
【0047】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ハードコーティング層付着力が4B以上であり得る。より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ハードコーティング層付着力が5Bであり得る。
【0048】
例えば、前記ハードコーティング層付着力は、前記ポリアミド-イミド系フィルムにプライマー層組成物を塗布してプライマー層を0.1μmの厚さに形成し、前記プライマー層上にハードコーティング層組成物を塗布してハードコーティング層を5μmの厚さに形成した後、前記ハードコーティング層の表面をASTM D 3359(方法B)規格に基づいて一定間隔の格子状に切断し、その上にテープ(Nitto Tape 50B)を貼って剥がし、表面において格子単位の薄片が発生する程度を確認して測定された値であり得る。
【0049】
この際、前記ハードコーティング層は、ハードコーティング剤として有機成分、無機成分、および有無機複合成分のうちの少なくとも1つを含み得る。一例として、前記ハードコーティング層は有機樹脂を含み得る。具体的に、前記有機樹脂は硬化性樹脂であり得る。これにより、前記ハードコーティング層は硬化性コーティング層であり得る。
【0050】
具体的に、前記ハードコーティング層は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物およびエポキシアクリレート系化合物からなる群より選択される1種以上を含み得る。より具体的に、前記ハードコーティング層は、ウレタンアクリレート系化合物およびアクリルエステル系化合物を含み得る。
【0051】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをMIBKに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHz)が0.5%以下であり得る。
【0052】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのMIBK浸漬した後のヘイズ変化量(ΔHz)は、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.15%以下、または0.1%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記△Hz(%)はHz-Hzの値であり、前記Hzは前記フィルムの初期ヘイズ(%)を示し、前記Hzは、前記フィルムをMIBK溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後測定したヘイズ(%)を示す。
【0054】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをIPAに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHz)が0.3%以下であり得る。
【0055】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのIPA浸漬した後のヘイズ変化量(ΔHz)は、0.2%以下、0.15%以下、0.1%以下、または0.08%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記△Hz(%)はHz-Hzの値であり、前記Hzは前記フィルムの初期ヘイズ(%)を示し、Hzは、前記フィルムをIPA溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後測定したヘイズ(%)を示す。
【0057】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをMIBKに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(△Hz)および前記ポリアミド-イミド系フィルムをIPAに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHz)の平均値(ΔHzAVG)が0.4%以下であり得る。
【0058】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのヘイズ変化量の平均値(ΔHzAVG)は、0.3%以下、0.2%以下、0.15%以下、0.12%以下、0.1%以下、0.09%以下、または0.08%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記ヘイズ変化量の平均値(ΔHzAVG)は、フィルムの耐容制性を判断する尺度となり得る。
【0060】
一実現例において、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、第1面の表面張力が40dyn/cm以上であり得る。
【0061】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、第1面の表面張力が、43dyn/cm以上、45dyn/cm以上、46dyn/cm以上、または47dyn/cm以上であり、55dyn/cm以下、53dyn/cm以下、52dyn/cm以下、51dyn/cm以下、または50dyn/cm以下であり得る。
【0062】
一実現例において、前記第1面はフィルムのエア(air)面であり得る。前記エア面とは、ポリアミド-イミド系フィルム形成の際に使用する支持体に接しない面のことを意味する。具体的に、前記フィルムの製造方法において、エア面とは、ポリアミド-イミド系重合体溶液がキャスティングおよび乾燥されるベルトに接しない面のことを意味し得る。
【0063】
一実現例において、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、第2面の表面張力が40dyn/cm以上であり得る。
【0064】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、第2面の表面張力が43dyn/cm以上、45dyn/cm以上、46dyn/cm以上、または47dyn/cm以上であり、55dyn/cm以下、53dyn/cm以下、52dyn/cm以下、51dyn/cm以下、または50dyn/cm以下であり得る。
【0065】
一実現例において、前記第2面は前記フィルムのベルト面であり得る。前記ベルト面は、ポリアミド-イミド系フィルム形成時に使用する支持体に接する面のことを意味する。具体的に、前記フィルムの製造方法において、ベルト面とは、ポリアミド-イミド系重合体溶液がキャスティングおよび乾燥されるベルトに接する面のことを意味し得る。
【0066】
実現例によると、前記ポリアミド-イミド系フィルムのモジュラスは5GPa以上である。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、5.7GPa以上、または6GPa以上であり得る。
【0067】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、85%以上、88%以上であり、100%以下、または99%以下であり得る。
【0068】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのヘイズは1%以下である。具体的に、前記ヘイズは、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、または0.5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0069】
前記フィルムの透過度および/またはヘイズは、可視光波長域(400nm~700nm)で測定された値であり得る。具体的に、前記フィルムの透過度は、可視光波長域で測定された全光線透過度であり得る。
【0070】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの黄色度(YI)は5以下である。例えば、前記黄色度は、4.5以下、4.0以下、または3.5以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0071】
実現例において、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が3μm以下、または2μm以下であり得る。また、前記厚さ偏差率は、5%以下、4%以下、または3%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0072】
一実現例において、前記ポリアミドイミド系フィルムは、フィルムの厚さ50μmを基準に、モジュラスが5GPa以上で、透過度が80%以上、ヘイズが1%以下、黄色度が5以下であり得るが、これに限定されない。
【0073】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて10mm/分の速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの表面硬度はHB以上であり得る。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0076】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm以上であり得る。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm以上、20kgf/mm以上、21kgf/mm以上、または22kgf/mm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0077】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が16%以上、17%以上、または18%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0078】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmになるようにフォルディングする際、破断する前までのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
【0079】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmになるように曲げて広げることを1回とする。
【0080】
前記ポリアミド-イミド系フィルムが前術の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0081】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μmまたは0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、ディスプレイ装置に適用するために有利な輝度条件や質感を実現するのに有利であり得る。
【0083】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の残留溶媒の含有量は1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下、または300ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0084】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発せず、最終的に製造されたフィルムに残留する溶媒の量のことを意味する。
【0085】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、フィルムの品質バラツキにも影響を及ぼし得る。特に、機械的強度に影響を及ぼすため、フィルムの後加工の際に不利な影響を及ぼし、フィルムの吸水性を加速化させ、機械的物性に加えて光学物性や耐溶剤性および耐熱特性もまた低下し得る。
【0086】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体を含み、前記ポリアミド-イミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成され得る。
【0087】
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とを含む重合体である。
【0088】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系重合体は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含み得る。
【0089】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して、共重合体を形成する化合物である。
【0090】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
【0091】
前記化学式1において、
Eは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され得る。
【0092】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0093】
【0094】
【0095】
より具体的に、前記化学式1の(E)は、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0096】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0097】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0098】
一部の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を含み得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0099】
【0100】
前記ジアンヒドリド化合物は複屈折値が低いため、前記ポリアミド-イミド系重合体を含むフィルムの透過度のような光学物性の向上に寄与し得る化合物である。
【0101】
【0102】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、もしくは置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0103】
【0104】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-2aで表される基、前記化学式2-8aで表される基、または前記化学式2-9aで表される基であり得る。
【0105】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物、ビフェニル基を有する化合物、またはケトン基を有する化合物を含み得る。
【0106】
前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0107】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種の混合成分からなり得る。
【0108】
【0109】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミック酸を生成し得る。
【0110】
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得、前記ポリイミドはイミド繰り返し単位を含む。
【0111】
【0112】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0113】
【0114】
【0115】
前記化学式3において、
Jは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され得る。
【0116】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0117】
【0118】
【0119】
より具体的に、前記化学式3の(J)は、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0120】
例えば、前記化学式3の(J)は、前記化学式3-1bで表される基または前記化学式3-2bで表される基であり得る。
【0121】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、1種のジカルボニル化合物を単独で使用するか、または互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)が前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0122】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0123】
【0124】
【0125】
例えば、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0126】
または、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-2およびB-3で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0127】
前記化学式B-1のxは1~400の整数である。
【0128】
【0129】
【0130】
一実現例によると、前記ポリアミド-イミド系重合体は、下記化学式Aで表される繰り返し単位および下記化学式Bで表される繰り返し単位を含み得る。
【0131】
【0132】
【0133】
前記化学式AおよびBのうち、
EおよびJは互いに独立して、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され、
eおよびjは互いに独立して1~5の整数の中から選択され、
eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、
jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり、
Gは、置換または非置換の4価のC-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合して縮合環を形成するか、もしくは置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0134】
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を2:98~70:30のモル比で含み得る。具体的に、前記イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位のモル比は、2:98~60:40、2:98~55:45、2:98~50:50、5:95~70:30、5:95~60:40、5:95~55:45、5:95~50:50、または10:90~40:60であり得るが、これに限定されるものではない。
【0135】
イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とのモル比が前記範囲であると、ポリアミド-イミド系フィルムのTGA減量面積値(TDA)などのTGA特性を効果的に制御することができ、特徴的な工程方法と結びついて、フィルムの品質信頼性を高め得る。
【0136】
前記ポリアミド-イミド系重合体において、前記化学式Aで表される繰り返し単位および前記化学式Bで表される繰り返し単位のモル比は、2:98~70:30であり得る。具体的に、前記化学式Aで表される繰り返し単位および前記化学式Bで表される繰り返し単位のモル比は、2:98~60:40、2:98~55:45、2:98~50:50、5:95~70:30、5:95~60:40、5:95~55:45、5:95~50:50、または10:90~40:60であり得るが、これに限定されるものではない。
【0137】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体に加えて、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0138】
前記フィラーは例えば、金属または準金属の酸化物、炭酸化物、硫酸化物などを含み得る。例えば、前記フィラーは、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0139】
前記フィラーは粒子状で含まれ得る。また、前記フィラーは、表面に特別なコーティング処理がされていない状態であり、フィルム全体に亘って均一に分散されている。
【0140】
前記ポリアミド-イミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは光学特性の低下もなく、広い視野角を確保することができ、粗度および巻取性を向上させ得るとともに、フィルム製造の際の走行性スクラッチ改善効果を向上させ得る。
【0141】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0142】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、フィルムのx方向屈折率(nx)、y方向屈折率(ny)およびz方向屈折率(nz)に関連する複屈折値が適切に調節され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0143】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィラーの存在が目視されたり、フィラーによってヘイズが上昇したりする問題が生じ得る。
【0144】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド-イミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~15000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド-イミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~14500ppm、100ppm~14200ppm、200ppm~14500ppm、200ppm~14200ppm、250ppm~14100ppm、または300ppm~14000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0145】
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して、異物感が目視で確認されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻取性が低下し得る。
【0146】
一部の実現例において、前記青色顔料は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して50ppm~5000ppmで含まれ得る。好ましくは、前記青色顔料は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して、100ppm~5000ppm、200ppm~5000ppm、300ppm~5000ppm、400ppm~5000ppm、50ppm~3000ppm、100ppm0~3000ppm、200ppm~3000ppm、300ppm~3000ppm、400ppm~3000ppm、50ppm~2000ppm、100ppm~2000ppm、200ppm~2000ppm、300ppm~2000ppm、400~2000ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~1000ppm、200ppm~1000ppm、300~1000ppm、または400ppm~1000ppmで含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0147】
前記UVA吸収剤は、当技術分野で使用される10nm~400nm波長の電磁波を吸収する吸収剤を含み得る。例えば、前記UVA吸収剤はベンゾトリアゾール(benzotriazole)系化合物を含み、前記ベンゾトリアゾール系化合物はN-フェノールベンゾトリアゾール(N-phenolic benzotriazole)系化合物を含み得る。一部の実現例において、前記N-フェノールベンゾトリアゾール系化合物は、フェノール基が炭素数1~10のアルキル基で置換されたN-フェノールベンゾトリアゾールを含み得る。前記アルキル基は、2個以上で置換され、直鎖状、分枝状または環状であり得る。
【0148】
一部の実現例において、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して0.1重量%~10重量%で含まれ得る。好ましくは、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0149】
前術の前記ポリアミド-イミド系フィルムの物性は、40μm~80μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド-イミド系フィルムの各物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0150】
前述のポリアミド-イミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は互いに組み合わされ得る。
【0151】
また、前記ポリアミド-イミド系フィルムの前述のTGA減量面積値(TDA)、TGA分析による1次減量温度(Tw)、1%重量減少温度(Td1)および/または5%重量減少温度(Td5)などは、前記ポリアミド-イミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的物性とともに、後述する前記ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、各段階の具体的な工程条件が総合して調節され得る。
【0152】
例えば、前記ポリアミド-イミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、残留溶媒の含有量、フィルム製造工程における重合条件、熱処理段階および冷却段階などの熱処理条件などと、全てのものが総合され、目的とする範囲のTGA減量面積値(TDA)、1次減量温度(Tw)などの物性を実現し得る。
【0153】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド-イミド系フィルムおよび機能層を含む。
【0154】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である。
【0155】
前記ポリアミド-イミド系フィルムに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0156】
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0157】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含む。
【0158】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下である。
【0159】
前記ポリアミド-イミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0160】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な分解図である。図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図である。図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【0161】
具体的に、図1図3には、表示部400と、前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド-イミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300とが配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0162】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0163】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0164】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0165】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0166】
また、前記表示部400および前記カバーウィンドウ300の間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であって良く、特に限定されない。
【0167】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実施例によるディスプレイ装置の外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0168】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド-イミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
前記機能層およびハードコーティング層に関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0169】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低いヘイズ、高い透過度および透明性を有するディスプレイ装置を提供し得るところ、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
【0170】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性およびモジュラス、柔軟性などの機械的特性を有することができ、紫外線にさらされても光学/機械的特性の変化(劣化)が抑制され得る。
【0171】
具体的に、TGA減量面積値(TDA)が前術の範囲以下であるポリアミド-イミド系フィルムの場合、光学特性および機械的特性だけでなく、機能層付着力および耐溶剤性などの後工程性にもまた優れる。これにより、後工程を経た後もフィルムの品質や物性の低下が生じず、前記ポリアミド-イミド系フィルムをディスプレイ装置用カバーウィンドウまたはディスプレイ装置に適用した場合、最終製品の品質信頼度および製品歩留まりを向上させ得る。
【0172】
[ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0173】
一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して、ポリアミド-イミド系重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む(図4参照)。
【0174】
一部の実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法は、前記ポリアミド-イミド系重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)、前記ポリアミド-イミド系重合体溶液を熟成させる段階(S120)および/または前記ポリアミド-イミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。
【0175】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド-イミド系重合体は、構造単位としてイミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とを所定のモル比で含む重合体である。
【0176】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド-イミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0177】
一実現例において、前記重合体溶液を有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時投入して反応させることにより調製され得る。
【0178】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸(Polyamic acid、PAA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸(PAA)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合およびイミド結合を形成する段階とを含み得る。前記ポリアミック酸溶液は、アミック酸繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0179】
または、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸溶液を脱水してポリイミド(Polyimide、PI)溶液を調製する段階と、前記ポリイミド(PI)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリイミド溶液は、イミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0180】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミド(Polyamide、PA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド(PA)溶液に前記ジアンヒドリド化合物を2次混合および反応させて、イミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0181】
このように調製された前記重合体溶液は、ポリアミック酸(PAA)繰り返し単位、ポリアミド(PA)繰り返し単位およびポリイミド(PI)繰り返し単位からなる群より選択される1種以上を含む重合体が含有された溶液であり得る。
【0182】
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来のイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位とを含む。
【0183】
前記ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は、前述の通りである。
【0184】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得る。または、前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は15重量%~25重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0185】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において、効果的にポリアミド-イミド系フィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミド-イミド系フィルムは、フィルムの方向に応じて類似の熱的特性を示し、品質が均一であり、優れた機械的特性、光学特性および耐熱特性を有し得る。
【0186】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、触媒を投入する段階をさらに含み得る。
【0187】
この際、前記触媒は、ベータピコリン、酢酸無水物、イソキノリン(isoquinoline、IQ)およびピリジン系化合物からなる群より選択される1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0188】
前記触媒は、前記ポリアミック酸1モルを基準に、0.01モル当量~0.5モル当量、0.01モル当量~0.4モル当量、または0.01モル当量~0.3モル当量を投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0189】
前記触媒を投入すると、反応速度を向上させることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の化学的結合力を向上させ得る。
【0190】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)をさらに含み得る。前記重合体溶液の粘度は、常温を基準に、80000cps~500000cps、100000cps~500000cps、150000cps~500000cps、150000cps~450000cps、200000cps~450000cps、200000cps~400000cps、200000cps~350000cps、または250000cps~350000cpsで調整され得る。この場合、ポリアミド-イミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度を向上させ得る。
【0191】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合および反応させて、第1重合体溶液を調製する段階と、前記ジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
【0192】
前記第1重合体溶液を調製する段階および第2重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度が異なる。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度がさらに高い。
【0193】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度とが異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度より速くあり得る。
【0194】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0195】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0196】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0197】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0198】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0199】
他の実現例において、前記重合体溶液に、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上を添加し得る。
【0200】
前記フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤の種類、含有量などの具体的な内容は前述の通りである。前記フィラー、青色顔料および/またはUVA吸収剤は、前記重合体溶液内で前記ポリアミド-イミド系重合体と混合され得る。
【0201】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0202】
前記温度にて保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0203】
一部の実現例において、前記重合体溶液または前記粘度調整された重合体溶液を熟成させ得る(S120)。
【0204】
前記熟成は、前記重合体溶液を、24時間以上-10~10℃の温度条件に静置して行われ得る。この場合、前記重合体溶液に含まれているポリアミド-イミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり、化学平衡をなしたりすることによって、前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド-イミド系フィルムの機械的特性および光学特性が、フィルムの全面積に対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は-5~10℃、-5~5℃または-3~5℃の温度条件にて行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0205】
一実現例において、前記ポリアミド-イミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
【0206】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容された反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件にて真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0207】
また、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件にて前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの優れた光学物性および優れた機械的物性などを実現し得る。
【0208】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0209】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の工程で行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0210】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド-イミド系フィルム表面の物性が向上され得る。
【0211】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上で塗布、押出してゲルシートを形成し得る。
【0212】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0213】
前記重合体溶液の粘度は前述のように、常温にて150000cps~500000cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がキャスティングされる際に欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ、それ以降の熱処理過程において局所的/部分的な厚さ変化もなく、実質的に均一な厚さのポリアミド-イミド系フィルムを形成し得る。
【0214】
前記ゲルシートを熱処理して、ポリアミド-イミド系フィルムを形成し得る(S300)。
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱硬化装置により行われ得る。
【0215】
前記ゲルシートを熱処理する段階は、2段階以上の熱処理段階および2段階以上の冷却段階を含み得る。例えば、前記ゲルシートを熱処理する段階は、3段階以上の熱処理段階および3段階以上の冷却段階を含み得る。
【0216】
一実現例において、前記ゲルシートを熱処理する段階は、第1熱処理段階、第2熱処理段階および第3熱処理段階を含み得る。具体的に、前記ゲルシートを熱処理する段階は、第1熱処理段階、第2熱処理段階、第3熱処理段階、第1冷却段階、第2冷却段階および第3冷却段階を含み得る。より具体的に、前記ゲルシートを熱処理する段階は、第1熱処理段階(S310)、第1冷却段階(S320)、第2熱処理段階(S330)、第3熱処理段階(S340)、第2冷却段階(S350)、および第3冷却段階(S360)を順次行い得る(図5参照)。
【0217】
前記第1熱処理段階は、前記重合体溶液をキャスティングしたゲルシートを60℃~150℃、70℃~150℃、80℃~150℃、または90℃~150℃の温度で、5分~60分間熱処理し得る。具体的に、前記ゲルシートを90℃~140℃の温度で10分~30分間熱処理し得る。
【0218】
前記第1熱処理段階中に前記ゲルシートの溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが乾燥され得る。
【0219】
一部の実現例において、前記第1熱処理段階はベルト上で移動させながら行われ得るが、これに限定されない。
【0220】
前記第1冷却段階は、第1熱処理段階以降に行われ得る。
具体的に、前記第1冷却段階は、前記ゲルシートを10℃~70℃、15℃~60℃、15℃~50℃、または15℃~40℃の温度で、5分~60分間冷却し得る。具体的に、前記ゲルシートを15℃~35℃の温度で、5分~30分間冷却し得る。
【0221】
前記第2熱処理段階は、第1冷却段階以降行われ得る。
具体的に、前記第2熱処理段階は、熱風処理により行われ得る。
【0222】
一実現例において、前記熱風により熱処理する段階を行うと、熱量が均等に付与され得る。仮に、熱量が均一に分布されないと、満足の行く表面粗さが実現できないか、または表面品質が不均一となり、表面エネルギーが過剰に上昇または低下し得る。
【0223】
前記熱風による熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~350℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら5分~100分間行われ得る。より具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、140℃~300℃の温度範囲で行われ得る。
【0224】
この際、前記ゲルシートの熱風による熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理開始温度は、80℃~180℃であり得る。また、熱処理中の最高温度は200℃~500℃であり得る。
【0225】
また、前記ゲルシートの熱風による熱処理は、2段階以上で行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱風による熱処理は、第1熱風処理段階と第2熱風処理段階とを順次行い、前記第2熱風処理段階における温度が、第1熱風処理段階における温度よりも高くあり得る。
【0226】
一実現例において、前記ゲルシートを熱処理する段階は、少なくとも1つのヒーターによって熱処理する第3熱処理段階、具体的に、複数のヒーターによって熱処理する段階を前記第2熱処理段階以降に含み得る。
【0227】
前記複数のヒーターは、ゲルシートの幅方向(TD方向)に離間した複数のヒーターを含み得る。前記複数のヒーターは、ヒーター装着部に装着され、前記ヒーター装着部は、ゲルシートの進行方向(MD方向)に沿って2個以上配置され得る。
【0228】
前記少なくとも1つのヒーターは、IRヒーターを含み得る。ただし、少なくとも1つのヒーターの種類は、前記の例に限定されず、様々に変更され得る。具体的に、前記複数のヒーターはIRヒーターを含み得る。
【0229】
前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、250℃以上の温度範囲で行われ得る。具体的に、前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、250℃~400℃の温度範囲で1分~30分、または1分~20分間行われ得る。
【0230】
前記ヒーターによる熱処理において記載された温度は、前記ゲルシートが存在する熱処理装置内の温度であり、前記熱処理装置内の第3熱処理区間に位置する温度感知センサによって測定された温度に対応する。
【0231】
前記第2冷却段階は、第3熱処理段階以降に行われ得る。
前記第2冷却段階は、前記ゲルシートを30℃~150℃、30℃~120℃、50℃~120℃、または70℃~120℃の温度で、1分~60分間冷却し得る。具体的に、前記ゲルシートを70℃~100℃の温度で、2分~30分間冷却し得る。
【0232】
一実現例において、前記第2冷却段階は、100℃/分~1000℃/分の速度で減温させる第1減温段階をさらに含み得る。
【0233】
前記第3冷却段階は、第2冷却段階以降に行われ得る。
前記第3冷却段階は、前記ゲルシートを10℃~70℃、15℃~60℃、15℃~50℃、または15℃~40℃の温度で、1分~60分間冷却し得る。具体的に、前記ゲルシートを15℃~35℃の温度で、2分~30分間冷却し得る。
【0234】
一実現例において、前記第3冷却段階は、40℃/分~400℃/分の速度で減温させる第2減温段階をさらに含み得る。
【0235】
この際、具体的に、前記第1減温段階以降前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度よりも速くあり得る。
【0236】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速い。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速い。
【0237】
前記硬化フィルムの冷却段階が、このように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化することができ、前記硬化過程で確立したフィルムの光学物性および機械的物性をより安定して長期間維持し得る。
【0238】
前記ゲルシートの熱処理が、前記熱処理段階および前記冷却段階の温度、時間および工程手順を満足して行われることにより、効率的な乾燥および硬化がなされ、フィルム内の残留する溶媒が最小化され、目的とする範囲のTGA減量面積値(TDA)、1次減量温度(Tw)および1%重量減少温度(Td1)などの物性を制御し得る。さらに、前記製造方法により製造されたフィルムの光学特性および機械的特性のみならず、機能層付着力および耐溶剤性などの後工程性もまた優れる。
【0239】
前記第2冷却段階の温度および前記第3冷却段階の温度は異なり得る。前記第2冷却段階の温度が前記第3冷却段階の温度よりも高くあり得るが、これに限定されるものではない。
【0240】
一実現例において、前記第2冷却段階の温度は、前記第3冷却段階の温度よりも20℃~100℃、40℃~80℃、または50℃~80℃さらに高くあり得る。
【0241】
また、前記冷却した硬化フィルムを、ワインダー(winder)により巻き取る段階を行い得る。
【0242】
この際、前記乾燥時のベルト上において、ゲルシートの移動速度:巻取時の硬化フィルムの移動速度の比は1:0.95~1:1.40である。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、または1:1.00~1:1.05であり得るが、これに限定されるものではない。
【0243】
前記移動速度の比が前記範囲から外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0244】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、下記一般式1による厚さ偏差(%)は3%~30%であり得る。具体的に、前記厚さ偏差(%)は5%~20%であり得るが、これに限定されるものではない。
[一般式1]
厚さ偏差(%)={(M1-M2)/M1}×100
前記一般式1において、M1は前記ゲルシートの厚さ(μm)であり、M2は巻取時の冷却された硬化フィルムの厚さ(μm)である。
【0245】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、前述の製造方法に基づいて製造されることにより、光学的、機械的に優れた物性を示すだけでなく、優れた機能層付着力および耐溶剤性などの後工程性を有し得る。このようなポリアミド-イミド系フィルムは、透明性が求められる様々な用途に適用可能であり得る。例えば、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ディスプレイ装置だけでなく、太陽電池、半導体素子、センサなどにも適用され得る。
【0246】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド-イミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0247】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0248】
(実施例1)
温度調節が可能な反応器に、10℃の窒素雰囲気下で有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)を満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を徐々に投入しながら溶解した。
【0249】
その後、ジアンヒドリド化合物として、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)を徐々に投入して2時間撹拌した。
【0250】
そして、ジカルボニル化合物として、テレフタロイルクロリド(TPC)を投入して1時間撹拌し、イソフタロイルクロリド(IPC)を投入し1時間撹拌して、重合体溶液を調製した。
【0251】
得られた重合体溶液を支持体上に塗布してゲルシートを形成した。
【0252】
その後、第1熱処理段階として、前記ゲルシートを140℃の温度にて15分間熱風処理して、前記ゲルシートを乾燥し、第1冷却段階として、35℃の温度にて5分間冷却した。次いで、前記ゲルシートの第2熱処理段階として、前記ゲルシートを275℃の温度で5分間熱風処理した。前記ゲルシートの第3熱処理段階として、熱処理区間内の温度感知センサにより測定された温度が280℃になるように温度を調節しながらIRヒーターを通過させた。続いて、第2冷却段階として100℃の温度にて3分間冷却した後、第3冷却段階として30℃の温度にて3分間冷却して、厚さ50μmのポリアミド-イミド系フィルムを得た。
【0253】
ポリアミド-イミド系重合体の具体的な組成およびモル比は、下記表1の製造例に記載の通りである。
【0254】
(実施例2、3および比較例1~3)
下記表1および表2に記載のように、重合体の組成およびモル比、ゲルシート熱処理の際の各熱処理段階および冷却段階の温度および時間などを異にしたことを除いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを製造した。
(製造例:重合体の組成)
【0255】
【0256】
【0257】
(評価例)
前記実施例および比較例において製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表3に示した。
【0258】
(評価例1:フィルムの厚さ測定)
日本ミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を用いて、任意の位置の5カ所の厚さを測定し、その平均値を厚さとした。
【0259】
(評価例2:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7136規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0260】
(評価例3:黄色度測定)
黄色度(Yellow Index、YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65、10°の条件で、ASTM-E313規格により測定した。
【0261】
(評価例4:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmでカットし、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで10mm/分の速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0262】
(評価例5:表面張力測定)
ドイツKruss社のMobile Surface Analyzerを用いて、ドイツ工業規格(DIN 55660)に基づいて、フィルムのエア面およびベルト面の表面張力をそれぞれ測定した。
【0263】
(評価例6:フィルムのTGA分析)
TGA分析は、TAインスツルメント社の熱重量分析装置(thermal gravimetric analysis)TGA Q500モデルを用いて、ポリアミド-イミド系フィルムの測定サンプル2gを取って、25℃~700℃の範囲で10℃/分の速度で昇温させながら分析した。
【0264】
1次減量温度(Tw)は、270℃~330℃の温度範囲で重量減少変化率が最も大きい温度で定め、温度(x軸)による重量減少変化率(y軸)グラフにおいて、(Tw-30)℃の温度に該当する点と、(Tw+30)℃の温度に該当する点とを結んだ直線と、グラフ間の面積のうち1次減量温度(Tw)が属する区間の面積をTGA減量面積値(TDA)とした。
【0265】
また、1%重量減少温度(Td1)および5%重量減少温度(Td5)は、それぞれ前記TGA分析の際、1%の重量減少が発生する温度および5%の重量減少が発生する温度で定めた。
【0266】
(評価例7:ハードコーティング層付着力評価)
ポリエステル系樹脂(PLASCOAT 446、互応化学工業社、日本)およびポリウレタン系樹脂(固形分28重量%、H-15、第一工業製薬社、日本)を7:3の重量比(固形分重量比)で混合し、水(HO)とイソプロピルアルコール(IPA)とが85:15の重量部で混合された溶液を配合した後、常温にて30分撹拌して、プライマー層組成物を調製した。
【0267】
さらに、ウレタンアクリレートオリゴマー(PU2050、ミワンスペシャルティケミカル社)54.32重量部、多官能アクリレートモノマー(M300、ミワンスペシャルティケミカル社)23.28重量部、粒径10nm~15nmのシリカ微粒子が30重量%でメタノールに分散しているシリカゾル(MA-ST、日産ケミカル社)19.4重量部、光開始剤(I-184、BASF社)3重量部を添加して、ハードコーティング層組成物を調製した。
【0268】
ポリアミド-イミド系フィルムサンプルにプライマー層組成物を塗布して、プライマー層を0.1μmの厚さに形成し、前記プライマー層上に前記ハードコーティング層組成物を塗布して、ハードコーティング層を5μmの厚さに形成した。
【0269】
その後、フィルムサンプルとハードコーティング層間の密着力をクロスカット試験により評価した。前記ハードコーティング層の表面をASTM D 3359(方法B)規格に基づいて一定間隔の格子状に切断した後、その上にテープ(Nitto Tape 50B)を貼って剥がして、表面において格子単位の薄片が発生する程度を確認した。下記の基準に従って0Bから5Bまで等級を付けており、5Bの場合が最も優れていると評価された(図6参照)。
- 5B:切断面がきれいで、格子の四角形が分離されていない(格子面積の0%)
- 4B:コーティングの小さな片が交差点において分離される(格子面積の5%未満)
- 3B:コーティングの小さな片が角に沿って、かつ、切断部分の交差点において分離される(格子面積の5%~15%)
- 2B:コーティングの切断面の縁と四角形の一部が分離される(格子面積の15%~35%)
- 1B:コーティングが切断面の縁に沿って大きく剥がれ、四角形が分離される(格子面積の35%~65%)
- 0B:コーティングが剥がれ、四角形が分離される程度がさらに深刻化する(格子面積の65%超)
【0270】
(評価例8:耐溶剤性評価)
フィルムサンプル(5cm×15cm)を溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させ、前記評価例2による方法により再度ヘイズを測定して、ヘイズ変化量が少ないほど耐溶剤性に優れるものと評価した。前記溶剤としては、MIBKまたはIPAが用いられた。
【0271】
【0272】
表2および表3を参照すると、TGA減量面積値(TDA)が0.01%・分/℃以下に制御された実施例によるフィルムの場合、透過度、ヘイズ、黄色度などの光学特性、モジュラス等の機械的特性だけでなく、ハードコーティング付着力に優れており、後工程等に主に用いられる溶剤に浸漬した後にヘイズ変化量が特定レベル以下を示すことにより、内容剤性もまた優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0273】
100:ポリアミド-イミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6