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特開2024-73383脂質化合物またはその誘導体およびそれを用いる医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073383
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】脂質化合物またはその誘導体およびそれを用いる医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/09 20060101AFI20240522BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240522BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240522BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240522BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240522BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240522BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240522BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240522BHJP
   C07F 9/53 20060101ALI20240522BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20240522BHJP
   A61K 9/14 20060101ALN20240522BHJP
   A61K 9/127 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
C07F9/09 U CSP
A61K31/7088
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/14
A61K47/26
C07F9/53
A61P43/00 111
A61K9/14
A61K9/127
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023193291
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】63/425,040
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/491,843
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】112137888
(32)【優先日】2023-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】フェリス チェン
(72)【発明者】
【氏名】ピン-フ チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン-ツァン ファン
(72)【発明者】
【氏名】チ-ウェイ フ
(72)【発明者】
【氏名】ク-フェン リン
(72)【発明者】
【氏名】ヤ-リン チウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン-シャン リ
(72)【発明者】
【氏名】カン-リ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ショウ-ハン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チア-ユ ファン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA95
4C076CC29
4C076DD09
4C076DD46
4C076DD63
4C076DD69
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF16
4C076FF34
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA41
4C086NA11
4C086NA13
4C086ZC02
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脂質化合物またはその誘導体およびそれを用いる医薬組成物を提供する。
【解決手段】式(I)で示される構造を有する脂質化合物である。

(式中、ZはOまたはSであり、Zは-Q-A-Q-A-Xであり、ZとZとは同じであり、Zは-Q-A-Q-A-Xであり、QおよびQの各々は独立に単結合、-O-または-NH-であり、QおよびQの各々は独立に単結合、-O-、-NH-、-S-S-等、であり、AはC1-C6アルキレン基であり、Aは単結合またはC1-C6アルキレン基であり、AおよびAの各々は独立に単結合、C1-C12アルキレン基等であり、Xは水素、C1-C24アルキル基等であり、Xは水素、C6-C12アリール基等である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質化合物またはその誘導体であって、前記脂質化合物が式(I)で示される構造を有する、脂質化合物またはその誘導体。
【化1】

(式中、ZはOまたはSであり、Zは-Q-A-Q-A-Xであり、ZとZとは同じであり、Zは-Q-A-Q-A-Xであり、QおよびQの各々は独立に単結合、-O-または-NH-であり、QおよびQの各々は独立に単結合、-O-、-NH-、-S-S-、
【化2】

であり、AはC1-C6アルキレン基であり、Aは単結合またはC1-C6アルキレン基であり、AおよびAの各々は独立に単結合、C1-C12アルキレン基、C2-C12アルケニレン基またはC2-C12アルキニレン基であり、Xは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基、-NR
【化3】

であり、Xは水素、C6-C12アリール基、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基、-NR
【化4】

であり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A-Q-Xであり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A10-Q-Xであり、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12の各々は独立に水素またはC1-C6アルキル基であり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A11-Q-Xであり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A12-Q10-Xであり、A、A、A、A、A、A10、A11およびA12の各々は独立にC1-C12アルキレン基であり、Q、Q、Q、Q、QおよびQ10の各々は独立に-O-、-NH-、-S-S-、
【化5】

であり、かつX、X、X、X、XおよびXの各々は独立にC1-C24アルキル基である。)
【請求項2】
が単結合であり、Qが-O-、-NH-、-S-S-、
【化6】

である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項3】
が単結合であり、Qが-O-または-NH-である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項4】
が単結合であり、Qが-O-、-NH-、-S-S-、
【化7】

である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項5】
が単結合であり、そしてQが-O-または-NH-である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項6】
が単結合であり、AがC1-C12アルキレン基、C2-C12アルケニレン基またはC2-C12アルキニレン基である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項7】
が単結合であり、AがC1-C6アルキレン基である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項8】
が単結合であり、Aが単結合であり、そしてQが単結合であり、かつQが-O-または-NH-である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項9】
とZとが異なる、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項10】
、ZおよびZが同じである、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項11】
前記脂質化合物が下記のいずれかである、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【化8】
【請求項12】
前記脂質化合物の前記誘導体が、前記脂質化合物の薬学的に許容し得る塩、または前記脂質化合物の溶媒和物である、請求項1に記載の脂質化合物またはその誘導体。
【請求項13】
請求項1に記載の前記脂質化合物またはその誘導体と、
ステロールと、
を含む医薬組成物。
【請求項14】
前記ステロールが、コレステロール、コレステロールヘキサコハク酸塩(cholesterol hexasuccinate)、エルゴステロール、ラノステロール、またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
補助脂質をさらに含み、前記補助脂質が、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC)、1-パルミトイル2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、水素添加ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(ナトリウム塩)(DMPG)、スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-l-セリン(DOPS)、L-a-ホスファチジルコリン(EPC)、ホスファチジルコリン(PC)またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ポリエチレングリコール(PEG)化脂質(polyethylene glycol(PEG)-ylated lipid)をさらに含み、前記ポリエチレングリコール(PEG)化脂質が、ポリエチレングリコール修飾ホスファチジルエタノールアミン、ポリエチレングリコール修飾ホスファチジン酸、ポリエチレングリコール修飾セラミド、ポリエチレングリコール修飾ジアルキルアミン、ポリエチレングリコール修飾ジアシルグリセロール、ポリエチレングリコール修飾ジアルキルグリセロール、ポリエチレングリコール修飾ステロール、ポリエチレングリコール修飾リン脂質またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ポリエチレングリコール(PEG)化脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DMPE-PEG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DMPE-PEG)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール-3-コハク酸塩-ポリエチレングリコール(DPGS-PEG)、コレステリル-ポリエチレングリコール、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DPPE-PEG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DOPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール-3-メトキシ-ポリエチレングリコール(DSG-PEG)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール-メトキシ-ポリエチレングリコール(DPG-PEG)、α-[2-(ジテトラデシルアミノ)-2-オキソエチル]-ω-メトキシ-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)またはこれらの組み合わせである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
核酸をさらに含み、前記核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)、プラスミドDNA、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)、低分子干渉(small interfering)リボ核酸(siRNA)、低分子活性化(small activated)リボ核酸(saRNA)、環状リボ核酸(circular RNA)またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、脂質化合物またはその誘導体およびそれを用いる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー産業では、核酸医薬のキーである脂質ナノ粒子(LNP)送達技術が開発の焦点となるメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの成功により、核酸医薬分野の積極的な投資が促進されている。しかしながら、リボ核酸医薬は人体中で容易に分解されると共に負に帯電し、細胞膜を容易に通過することができないため、キャリアの補助を要し、キャリア中に被包して送達する必要がある。
【0003】
イオン化可能なカチオン性脂質は、現在、脂質ナノ粒子によく用いられているキャリアである。しかし、インビボで投与したときに、従来のイオン化可能なカチオン性脂質は重大な副作用をもたらし得る。すでに観察されている問題としては、ターゲットへの有効な送達のパーセンテージが低く、結果として治療効果が比較的に低くなる、または有効性が低くなるということが含まれる。また、キャリアとして脂質ナノ粒子に用いられるイオン化可能なカチオン性脂質は、キャリアに活性剤を配合することができ、投与時に活性剤を分解から防ぐことができ、かつキャリアがそのターゲットに到達したらすぐに活性剤が放出し得るように、特定のpH値に調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本業界では、脂質-核酸送達システムを満足させることができる新規の脂質を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態によれば、本開示は脂質化合物またはその誘導体を提供し、脂質化合物の誘導体は、脂質化合物の薬学的に許容し得る塩、または脂質化合物の溶媒和物であってよい。本開示の一実施形態によれば、脂質化合物は式(I)で示される構造を有する。
【0006】
【化1】
【0007】
式中、ZはOまたはSであり、Zは-Q-A-Q-A-Xであり、ZとZとは同じであり、Zは-Q-A-Q-A-Xであり、QおよびQの各々は独立に単結合、-O-または-NH-であり、QおよびQの各々は独立に単結合、-O-、-NH-、-S-S-、
【化2】

であり、AはC1-C6アルキレン基であり、Aは単結合またはC1-C6アルキレン基であり、AおよびAの各々は独立に単結合、C1-C12アルキレン基、C2-C12アルケニレン基またはC2-C12アルキニレン基であり、Xは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基、-NR
【化3】

であり、Xは水素、C6-C12アリール基、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基、-NR
【化4】

であり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A-Q-Xであり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A10-Q-Xであり、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12の各々は独立に水素またはC1-C6アルキル基であり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A11-Q-Xであり、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A12-Q10-Xであり、A、A、A、A、A、A10、A11およびA12の各々は独立にC1-C12アルキレン基であり、Q、Q、Q、Q、QおよびQ10の各々は独立に-O-、-NH-、-S-S-、
【化5】

であり、X、X、X、X、XおよびXの各々は独立にC1-C24アルキル基である。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示は医薬組成物を提供し、当該医薬組成物は、本開示による上述した脂質化合物またはその誘導体と、補助脂質(helper lipid)とを含む。
【0009】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細に説明する。
[図面の簡単な説明]
添付の図面を参照にしながら、以下の詳細な記載および実施例を読むことによって、本発明をより充分に理解することができる。
【0010】
なし。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が完全に理解されるよう、多数の特定の詳細が示される。しかしながら、これらの特定の詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であるということは明らかであろう。また、図を簡潔とするため、周知の構造および装置は概略的に示されている。
【0012】
下記は、本開示に記載される脂質化合物またはその誘導体およびそれを用いる医薬組成物に関する。以下の記載は、本開示を実施するために多くの異なる実施形態または実施例を提供するものである、ということが理解されなければならない。以下に記載された特定の成分および構成は単に本開示を記述しているに過ぎない。当然に、これらは単なる例であり、本開示を限定するものではない。本開示において、「約」という語は、特定の量が、当業者が一般的に合理的であると認める量だけ増加または減少することを意味する。
【0013】
本開示は脂質化合物またはその誘導体を提供する。本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される脂質化合物は、その主要コアが5価リンであり、かつ1から3個のイオン化可能な第3級アミン基を含み得る特定の構造を有するイオン化可能なカチオン性リン脂質である。本開示に記載される脂質化合物はインビボでより容易に代謝され、かつより毒性が低い。本開示に記載される脂質化合物またはその誘導体は酸性環境で正に帯電し得るため、負に帯電した核酸を吸着して脂質ナノ粒子(LNP)を形成することができる。加えて、本開示は、本開示に記載される脂質化合物またはその誘導体を含む医薬組成物も提供する。本開示に記載される脂質化合物またはその誘導体を有することによって、本開示に記載される医薬組成物は、リボ核酸(RNA)および/またはデオキシリボ核酸(DNA)をカプセル化する脂質ナノ粒子(LNPs)を形成することができるため、例えばリボ核酸(RNA)および/またはデオキシリボ核酸(DNA)の保護といった目的が達成され、その分解速度が低減されると共に、細胞のトランスフェクション効率が改善される。
【0014】
本開示の一実施形態によれば、本開示により提供される脂質化合物は、式(I)で示される構造を有する。
【0015】
【化6】
【0016】
式中、ZはOまたはSであってよく、Zは-Q-A-Q-A-Xであってよく、ZとZとは同じであり、Zは-Q-A-Q-A-Xであってよく、QおよびQの各々は独立に単結合、-O-または-NH-であってよく、
およびQの各々は独立に単結合、-O-、-NH-、-S-S-、
【化7】

であってよく、AはC1-C6アルキレン基であってよく、Aは単結合またはC1-C6アルキレン基であってよく、AおよびAの各々は独立に単結合、C1-C12アルキレン基、C2-C12アルケニレン基またはC2-C12アルキニレン基であってよく、Xは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基、-NR
【化8】

であってよく、Xは水素、C6-C12アリール基、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基、-NR
【化9】

であってよく、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A-Q-Xであってよく、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A10-Q-Xであってよく、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12の各々は独立に水素またはC1-C6アルキル基であってよく、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A11-Q-Xであってよく、Rは水素、C1-C24アルキル基、C2-C24アルケニル基、C2-C24アルキニル基、C1-C24アルカノール基、C2-C24アルケノール基、C2-C24アルキノール基または-A12-Q10-Xであってよく、A、A、A、A、A、A10、A11およびA12の各々は独立にC1-C12アルキレン基であってよく、Q、Q、Q、Q、QおよびQ10の各々は独立に-O-、-NH-、-S-S-、
【化10】

であってよく、かつX、X、X、X、XおよびXの各々は独立にC1-C24アルキル基であってよい。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される脂質化合物の誘導体は、薬学的に許容し得る脂質化合物の塩または脂質化合物の溶媒和物であってよい。
【0018】
本開示の一実施形態によれば、薬学的に許容し得る脂質化合物の塩は、脂質化合物を薬学的に許容し得る酸と反応させることによって形成され得る。ここで、薬学的に許容し得る塩には、脂質化合物および無機酸、例えば塩酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルフィナート、または硝酸塩により形成される塩が含まれる。本開示の一実施形態によれば、薬学的に許容し得る塩には、脂質化合物および有機酸、例えば乳酸塩、シュウ酸塩,リンゴ酸塩,マレイン酸塩,フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩,乳酸塩、スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アミノ酸塩、または酢酸塩により形成される塩が含まれる。加えて、薬学的に許容し得るカチオンには、限定はされないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウムが含まれる。
【0019】
本開示の一実施形態によれば、脂質化合物の溶媒和物には、脂質化合物の水和物または脂質化合物のアルコラートが含まれる。
【0020】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される単結合とは、該当する部位に単一原子が存在しないことを指す。例えば、Zが-Q-A-Q-A-Xである構造において、Qが単結合である場合、Qで表される部位に単独の原子は存在せず、かつAおよびAが直接連結して、Zが-Q-A-A-Xの構造となっている。
【0021】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルキル基は直鎖または分岐鎖のアルキル基であってよい。本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルケニル基は直鎖または分岐鎖のアルケニル基であってよく、かつ少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み得る。本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルキニル基は直鎖または分岐鎖のアルキニル基であってよく、かつ少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み得る。
【0022】
例えば、C1-C24アルキルはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルまたはその異性体であってよい。
【0023】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルカノール基は直鎖または分岐鎖のアルカノール基であってよい。本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルケノール基は直鎖または分岐鎖のアルケノール基であってよく、かつ少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み得る。本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルキノール基は直鎖または分岐鎖のアルキニル基であってよく、かつ少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み得る。ここで、用語「アルカノール基」とは、その炭素における水素の少なくとも1つが水酸基で置換されているアルキル基を指す。用語「アルケノール基」とは、その炭素における水素の少なくとも1つが水酸基で置換されているアルケニル基を指す。用語「アルキノール基」とは、その炭素における水素の少なくとも1つが水酸基で置換されているアルキニル基を指す。加えて、本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるC6-C12アリール基はフェニル、ビフェニルまたはナフチルであってよい。
【0024】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルキレン基は直鎖または分岐鎖のアルキレン基であってよい。本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルケニレン基は直鎖または分岐鎖のアルケニレン基であってよい。本開示の一実施形態によれば、本開示に記載されるアルキニレン基は直鎖または分岐鎖のアルキニレン基であってよい。
【0025】
例えば、C1-C24アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基またはその異性体であってよい。
【0026】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される式(I)で示される構造を有する脂質化合物において、ZはZとは異なる(つまり、ZはZとは異なる)。
【0027】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される式(I)で示される構造を有する脂質化合物において、Z、ZおよびZ4は同じである。
【0028】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される式(I)で示される構造を有する脂質化合物において、QおよびQは同時に単結合にはならない。換言すると、Qが単結合であるとき、Qは単結合ではなく、かつQが単結合であるとき、Qは単結合ではない。
【0029】
本開示の一実施形態によれば、Qは単結合であり、かつQは-O-、-NH-、-S-S-、
【化11】

であってよい。
【0030】
本開示の一実施形態によれば、Qは単結合であり、かつQは-O-または-NH-であってよい。
【0031】
本開示の一実施形態によれば、Qは-O-または-NH-であってよく、かつQは-O-、-NH-、-S-S-、
【化12】

であってよい。
【0032】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される式(I)で示される構造を有する脂質化合物において、QおよびQは同時に単結合にはならない。換言すると、Qが単結合であるとき、Qは単結合ではなく、かつQが単結合であるとき、Qは単結合ではない。
【0033】
本開示の一実施形態によれば、Qは単結合であり、かつQは-O-、-NH-、-S-S-、
【化13】

であってよい。
【0034】
本開示の一実施形態によれば、Qは単結合であり、かつQは-O-または-NH-であってよい。
【0035】
本開示の一実施形態によれば、Qは-O-または-NH-であってよく、Qは-O-、-NH-、-S-S-、
【化14】

であってよく、かつAは単結合ではない。
【0036】
本開示の一実施形態によれば、AがC1-C12アルキレン基、C2-C12アルケニレン基またはC2-C12アルキニレン基であるとき、Qは単結合ではない。
【0037】
本開示の一実施形態によれば、Aが単結合であるとき、AはC1-C12アルキレン基、C2-C12アルケニレン基またはC2-C12アルキニレン基である。
【0038】
本開示の一実施形態によれば、Aが単結合であるとき、AはC1-C6アルキレン基である。
【0039】
本開示の一実施形態によれば、Aが単結合であり、かつAが単結合であるとき、Qは-O-または-NH-である。
【0040】
本開示の一実施形態によれば、本開示に記載される式(I)で示される構造を有する脂質化合物は次のいずれかであってよい。
【0041】
【化15】
【0042】
式中、Q、Q、Q、Q、A、A、A、A、XおよびXの定義は上述と同じである。
【0043】
本開示の一実施形態によれば、本開示は医薬組成物、例えば脂質ナノ粒子組成物も提供する。本開示の一実施形態によれば、医薬組成物は、本開示に記載される脂質化合物またはその誘導体と、ステロールとを含む。
【0044】
本開示の一実施形態によれば、医薬組成物中、脂質化合物(および/またはその誘導体)は100モル部であり、かつステロールの含有量は50から300モル部、例えば60モル部、80モル部、100モル部、120モル部、150モル部、180モル部、200モル部、230モル部、250モル部または280モル部であってよい。本開示の一実施形態によれば、ステロールは、コレステロール、コレステロールヘキサコハク酸塩(cholesterol hexasuccinate)、エルゴステロール、ラノステロール、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0045】
本開示の一実施形態によれば、医薬組成物は補助脂質をさらに含んでいてよく、補助脂質は5から200モル部、例えば6モル部、8モル部、10モル部、20モル部、30モル部、50モル部、75モル部、100モル部、120モル部、150モル部、170モル部または190モル部であってよい。
【0046】
本開示の一実施形態によれば、補助脂質は、1、2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1、2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC)、1-パルミトイル2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、水素添加ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(ナトリウム塩)(DMPG)、スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-l-セリン(DOPS)、L-a-ホスファチジルコリン(EPC)、ホスファチジルコリン(PC)またはこれらの組み合わせであってよい。
【0047】
本開示の一実施形態によれば、医薬組成物は、ポリエチレン(PEG)化脂質(polyethylene glycol (PEG)-ylated lipid)をさらに含んでいてよく、PEG化脂質の含有量は1から30モル部、例えば2モル部、3モル部、4モル部、5モル部、6モル部、7モル部、8モル部、9モル部、10モル部、11モル部、12モル部、13モル部、14モル部、15モル部、16モル部、17モル部、18モル部、19モル部、20モル部、21モル部、22モル部、23モル部、24モル部、25モル部、26モル部、27モル部、28モル部または29モル部であってよい。
【0048】
本開示の一実施形態によれば、PEG化脂質は、ポリエチレングリコール修飾ホスファチジルエタノールアミン、ポリエチレングリコール修飾ホスファチジン酸、 ポリエチレングリコール修飾セラミド、ポリエチレングリコール修飾ジアルキルアミン、ポリエチレングリコール修飾ジアシルグリセロール、ポリエチレングリコール修飾ジアルキルグリセロール、ポリエチレングリコール修飾ステロール、ポリエチレングリコール修飾リン脂質またはこれらの組み合わせであってよい。
【0049】
本開示の一実施形態によれば、PEG化脂質は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DMPE-PEG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DMPE-PEG)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール-3-コハク酸塩-ポリエチレングリコール(DPGS-PEG)、コレステリル-ポリエチレングリコール、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DPPE-PEG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DOPE-PEG)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール-3-メトキシ-ポリエチレングリコール(DSG-PEG)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール-メトキシ-ポリエチレングリコール(DPG-PEG)、α-[2-(ジテトラデシルアミノ)-2-オキソエチル]-ω-メトキシ-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)(ALC-0159)またはこれらの組み合わせであってよい。
【0050】
本開示の一実施形態によれば、医薬組成物は核酸をさらに含んでいてよく、核酸の含有量は0.1から30モル部、例えば0.2モル部、0.5モル部、1モル部、1.5モル部、2モル部、3モル部、4モル部、5モル部、6モル部、7モル部、8モル部、9モル部、10モル部、11モル部、12モル部、13モル部、14モル部、15モル部、16モル部、17モルモル部、18モル部、19モル部、20モル部、21モル部、22モル部、23モル部、24モル部、25モル部、26モル部、27モル部、28モル部または29モル部であってよい。
【0051】
本開示の一実施形態によれば、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、プラスミドDNA、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)、低分子干渉(small interfering)リボ核酸(siRNA)、低分子活性化(small activated)リボ核酸(saRNA)、環状リボ核酸(circular RNA)またはこれらの組み合わせであってよい。
【0052】
上述した本開示の内容および他の目的、特徴ならびに長所をより明らかかつ理解可能とするよう、例示的な実施例を以下に示し、詳細に説明するが、本開示はこれに限定されない。
【0053】
脂質化合物
本開示の実施例において記載される脂質化合物が表1に挙げられている。
【0054】
【表1】
【0055】
本開示に記載される脂質化合物の作製方法をさらに詳しく説明するため、実施例1~3、6~15、18および19に記載される脂質化合物の作製プロセスを以下に示して説明する。
【0056】
実施例1
化合物(1)(2当量)およびテトラヒドロフラン(THF)を窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.1M)を得た。次いで、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)溶液(テトラヒドロフラン中に溶解。濃度は1.0M、LiHMDSは3当量とした)をその反応フラスコに加えた。室温で1時間撹拌して反応させた後、化合物(2)(1当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。反応が完了した後、得られたものを濃縮し、n-ヘキサンおよび塩水で抽出した。その有機相を収集した後、硫酸ナトリウム(NaSO)で水を除去し、溶媒を除去し、得られたものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製し、脂質化合物(1)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0057】
【化16】
【0058】
次いで、実施例1において記載された脂質化合物(1)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ4.48(s,4H),4.18(t,J=7.0,7.5Hz,2H),3.40(s,4H),3.09(m,9H),1.68(s,9H),1.36-1.26(m,55H),0.87(t,J=7.0,7.0Hz,12H)。その後、脂質化合物(1)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=718.7。
【0059】
実施例2
化合物(1)(2.5当量)およびテトラヒドロフラン(THF)を窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.1M)を得た。次いで、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)溶液(テトラヒドロフラン中に溶解。濃度は1.0M、LiHMDSは3当量とした)をその反応フラスコに加えた。室温で1時間撹拌して反応させた後、化合物(3)(1当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。反応が完了した後、得られたものを濃縮し、n-ヘキサンおよび塩水で抽出した。その有機相を収集した後、硫酸ナトリウム(NaSO)で水を除去し、溶媒を除去し、得られたものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製し、脂質化合物(2)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0060】
【化17】
【0061】
次いで、実施例2において記載された脂質化合物(2)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ4.42(s,2H),4.29(s,2H),4.10-4.09(m,2H),3.73(s,4H),3.47-3.43(m,2H),3.32-3.30(m,4H),3.11-3.04(m,8H),1.67(s,12H),1.32-1.25(m,77H),0.88(t,J=7.5,7.5Hz,18H)。その後、脂質化合物(2)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=986.1。
【0062】
実施例3
化合物(4)(2当量)およびテトラヒドロフラン(THF)を窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.1M)を得た。次いで、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)溶液(テトラヒドロフラン中に溶解。濃度は1.0M、LiHMDSは3当量とした)をその反応フラスコに加えた。室温で1時間撹拌して反応させた後、化合物(2)(1当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。反応が完了した後、得られたものを濃縮し、n-ヘキサンおよび塩水で抽出した。その有機相を収集した後、硫酸ナトリウム(NaSO)で水を除去し、溶媒を除去し、得られたものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製し、脂質化合物(3)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0063】
【化18】
【0064】
次いで、実施例3において記載された脂質化合物(3)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):4.13(t,J=6.5,7.5Hz,6H),3.19(s,4H),3.03-3.02(m,8H),2.17-2.14(m,11H),1.67(s,8H),1.35-1.26(m,52H),0.87(t,J=7.0,6.5Hz,12H)。その後、脂質化合物(3)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=746.5。
【0065】
実施例6
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(6)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(6)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0066】
【化19】
【0067】
次いで、実施例6に記載された脂質化合物(6)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ10.62(s,1H),8.73(s,1H),3.60(s,3H),3.22(s,3H),3.09-3.06(m,4H),2.54-2.56(m,2H),2.11-2.13(m,4H),1.63(s,12H),1.32-1.26(m,77H),0.88(t,J=7.5,7.5Hz,18H)。その後、脂質化合物(6)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1151.3。
【0068】
実施例7
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(7)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(7)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0069】
【化20】
【0070】
次いで、実施例7において記載された脂質化合物(7)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ7.98(s,3H),4.49(s,7H),3.21(s,6H),3.10-2.8(m,18H),2.48(s,5H),2.07(s,5H),1.80-1.40(m,26H),1.40-1.10(m,78H),0.84(t,J=6.0,7.0Hz,18H)。その後、脂質化合物(7)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1235.5。
【0071】
実施例8
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(8)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(8)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0072】
【化21】
【0073】
次いで、実施例8において記載された脂質化合物(8)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ11.52(s,1H),5.57(s,1H),3.18(s,7H),2.30(s,10H),2.50(s,3H),2.06(s,4H),1.67-1.65(m,11H),1.34-1.25(m,51H),0.87(t,J=2.0,5.5Hz,9H)。その後、脂質化合物(8)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1319.6。
【0074】
実施例9
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.05M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(3当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(3当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(7)(4当量)および化合物(9)(1当量)を滴下してその反応フラスコに加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(9)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0075】
【化22】
【0076】
次いで、実施例9において記載された脂質化合物(9)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):H-NMR(500MHz,CDCl):δ10.84(s,1H),8.03(s,2H),3.66(s,2H),3.33-3.24(m,6H),3.04-2.99(m,16H),2.81(s,1H),2.53(s,4H),2.11(s,4H),1.76-1.56(m,12H),1.33-1.27(m,38H),0.88(t,J=6.5,7.5Hz,9H)。その後、脂質化合物(9)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=955.8。
【0077】
実施例10
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(10)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(10)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0078】
【化23】
【0079】
次いで、実施例10において記載された脂質化合物(10)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ8.79(s,1H),3.70-3.68(m,3H),3.54(s,2H),3.38(s,2H),3.23-3.03(m,9H),2.60-2.57(m,16H),2.16-2.02(m,5H),1.63(s,6H),1.50(t,J=7.0,7.5Hz,1H),1.33-1.27(m,39H),0.89(t,J=6.5,7.0Hz,9H)。その後、脂質化合物(10)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1024.8。
【0080】
実施例11
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.05M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(3当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(3当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(6)(4当量)および化合物(9)(1当量)を滴下してその反応フラスコに加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(11)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0081】
【化24】
【0082】
次いで、実施例11において記載された脂質化合物(11)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ8.79(s,1H),3.70-3.68(m,3H),3.54(s,2H),3.38(s,2H),3.23-3.03(m,9H),2.60-2.57(m,16H),2.16-2.02(m,5H),1.63(s,6H),1.50(t,J=7.0,7.5Hz,1H),1.33-1.27(m,39H),0.89(t,J=6.5,7.0Hz,9H)。その後、脂質化合物(11)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=899.7。
【0083】
実施例12
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(11)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(12)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0084】
【化25】
【0085】
次いで、実施例12において記載された脂質化合物(12)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ8.50(s,2H),6.46(s,5H),4.10-3.90(m,3H),3.90-3.0(m,13H),2.55(s,3H),2.15(s,3H),1.60-1.20(m,61H),0.88(t,J=7.0,7.5Hz,10H)。その後、脂質化合物(12)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1499.4。
【0086】
実施例13
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(12)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(13)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0087】
【化26】
【0088】
次いで、実施例13において記載された脂質化合物(13)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ10.68(s,2H),8.78(s,3H),3.59(d,J=4.0Hz,5H),3.45-3.20(m,12H),3.20-3.0(m,11H),2.60-2.40(m,5H),2.20-2.0(m,5H),1.80-1.45(m,10H),1.40-1.20(m,32H),0.88(t,J=6.5Hz,15H)。その後、脂質化合物(13)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=898.8。
【0089】
実施例14
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(13)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(14)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0090】
【化27】
【0091】
次いで、実施例14において記載された脂質化合物(14)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ10.67(s,2H),8.75(s,2H),4.25-4.0(m,5H),3.62(d,J=4.5Hz,4H),3.25-3.20(m,4H),3.20-3.0(m,9H),2.65-2.45(m,4H),2.25-2.15(m,4H),1.80-1.60(m,9H),1.45-1.20(m,44H),0.89(t,J=6.0,7.5Hz,12H)。その後、脂質化合物(14)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1067。
【0092】
実施例15
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(14)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(15)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0093】
【化28】
【0094】
次いで、実施例15において記載された脂質化合物(15)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ10.77(s,2H),8.80(s,2H),3.62-3.50(m,7H),3.30-3.20(m,5H),3.20-3.0(m,11H),2.60-2.50(m,5H),2.20-2.0(m,5H),1.80-1.50(m,11H),1.50-1.20(m,40H),0.89(t,J=5.0,7.0Hz,14H)。その後、脂質化合物(15)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=982.8。
【0095】
実施例18
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(15)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(18)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0096】
【化29】
【0097】
次いで、実施例18において記載された脂質化合物(18)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ8.66(s,2H),4.60-3.90(m,13H),3.90-3.0(m,9H),2.70-2.40(m,4H),2.30-2.0(m,4H),1.70-1.20(m,45H),0.89(t,J=6.0,7.0Hz,13H)。その後、脂質化合物(18)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=864.3。
【0098】
実施例19
化合物(5)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.04M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(16)(4当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。8時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(19)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0099】
【化30】
【0100】
次いで、実施例19において記載された脂質化合物(19)を核磁気共鳴分光により分析した。得られたスペクトル情報を以下に示す:H-NMR(500MHz,CDCl):δ8.63(s,2H),4.70-3.90(m,12H),3.90-3.0(m,17H),2.70-2.50(m,4H),2.30-2.10(m,4H),1.60-1.20(m,48H),0.88(t,J=6.5,7.5Hz,11H)。その後、脂質化合物(19)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1247.1。
【0101】
実施例23
化合物(23a)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液濃度:0.05M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(17)(2.5当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。12時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(23)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0102】
【化31】
【0103】
次いで、実施例23において記載された脂質化合物(23)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1147.6。
【0104】
実施例24
化合物(24a)(1当量)およびジクロロメタンを窒素下で反応フラスコに加えて溶液(濃度:0.05M)を得た。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4当量)およびN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(4当量)をその反応フラスコに加えた。室温で10分撹拌して反応させた後、化合物(18)(2.5当量)をその反応フラスコに滴下して加えた。16時間反応させた後、その反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(濃度は0.1%とした)を溶離液として使用)で精製して、脂質化合物(24)を得た。上述した反応の反応式は以下のとおりである。
【0105】
【化32】
【0106】
次いで、実施例24において記載された脂質化合物(24)を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により分析し、M/Zを測定した:[M+H]=1175.7。
【0107】
組成物の作製
【0108】
実施例35
ルシフェラーゼmRNA(製品番号R1018、APExBIOより購入)を酸性緩衝剤(製品番号J63669、Alfa Aesarより購入)(pH値4.5)中に溶解し、核酸水溶液(濃度:0.1mg/mL)を得た。
【0109】
実施例1で作製された脂質化合物(1)、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、およびDMG-PEG脂質(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール)(製品番号:DMG-PEG-2K、Nippon Fine Chemicalより購入)をエタノール中に溶解し、脂質溶液(濃度:10~15mg/mL)を得た。脂質化合物(1)、コレステロール、DSPCおよびDMG-PEG脂質の含有量を表2に示す。
【0110】
次いで、核酸水溶液と脂質溶液とをマイクロ流体システム(NanoAssemblr Ignite system、Precision NanoSystem Inc.より購入)によって混合し、核酸水溶液および脂質溶液の体積を、脂質化合物(1)の窒素原子(N)とルシフェラーゼmRNA由来のリン原子(P)との比率(N/P)が12となるように調整した。次いで、限外濾過または透析の後、得られた組成物を自己集合させて(self-assembled)、核酸-脂質ナノ粒子キャリア(1)を形成した。
【0111】
実施例36~43
実施例35におけるのと同じ方式を行うことにより核酸-脂質ナノ粒子キャリア(2)~(9)を得たが、表1に基づいて脂質溶液中の成分および/または含有量ならびにN/Pの値(核酸水溶液と脂質溶液との体積比によって調整)は変えた。
【0112】
比較例1
実施例35におけるのと同じ方式を行うことにより核酸-脂質ナノ粒子キャリア(10)を得たが、脂質化合物(1)を(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(DLin-MC3-DMA)に置き換え、かつN/Pの値を調整した(核酸水溶液と脂質溶液との体積比によって調整)。
【0113】
比較例2
実施例35におけるのと同じ方式を行うことにより核酸-脂質ナノ粒子キャリア(11)を得たが、脂質化合物(1)をプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタン酸(SM-102)に置き換え、かつN/Pの値を調整した(核酸水溶液と脂質溶液との体積比によって調整)。
【0114】
【表2】
【0115】
実施例44~52
実施例35におけるのと同じ方式を行うことにより核酸-脂質ナノ粒子キャリア(12)~(20)を得たが、表3に基づいて脂質溶液中の成分および/または含有量ならびにN/Pの値(核酸水溶液と脂質溶液との体積比によって調整)は変えた。
【0116】
【表3】
【0117】
実施例53~61
実施例35におけるのと同じ方式を行うことにより核酸-脂質ナノ粒子キャリア(21)~(29)を得たが、表4に基づいて脂質溶液中の成分および/または含有量ならびにN/Pの値(核酸水溶液と脂質溶液との体積比によって調整)は変えた。
【0118】
【表4】
【0119】
実施例62~70
実施例35におけるのと同じ方式を行うことにより核酸-脂質ナノ粒子キャリア(30)~(38)を得たが、表5に基づいて脂質溶液中の成分および/または含有量ならびにN/Pの値(核酸水溶液と脂質溶液との体積比によって調整)は変えた。
【0120】
【表5】
【0121】
医薬組成物の特性評価
実施例35~43で得られた核酸-脂質ナノ粒子キャリア(1)~(9)ならびに比較例1および2で得られた核酸-脂質ナノ粒子キャリア(10)および(11)の粒径、多分散性指数(PdI)、ゼータ電位、リボ核酸回収率(mRNA recovery)、リボ核酸のカプセル化効率(EE)および酸解離定数(pKa)を評価した。その結果を表6に示している。
【0122】
核酸-脂質ナノ粒子キャリアの粒径、多分散性指数(PdI)およびゼータ電位は以下のように評価する。サンプルを20μL取り、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)330μLに加え、均一に振とうしてから、リポソームの粒径および多分散性指数(PdI)を動的光散乱計器(Zetasizer Nano-ZS,Malvern Panalytical)で測定した。さらに、サンプルを20μL取り、塩化ナトリウム水溶液680μL(濃度:10mM)に加え、均一に振とうしてから、リポソームのゼータ電位を動的光散乱計器(Zetasizer Nano-ZS, Malvern Panalytical)で測定した。
【0123】
リボ核酸回収率(mRNA recovery)は以下のように評価する。核酸脂質ナノ粒子キャリアを滅菌ろ過した後、サンプルを100μL取り、5%Triton X-100 25μLに加えた。次いで、37℃で10分インキュベートした後、クロロホルム100μLをそこに加えた。10分の高速振とう(回転速度:2000rpm)、および30分の遠心分離(遠心力:14000×g)の後、上清を80μL取り、その吸光度をUV-可視分光光度計(UV7,Mettler Toledo)で分析した。その後、リボ核酸の濃度を下に示す式(1)を用いて算出し、回収率を下に示す式(2)を用いて算出した。式中、Cはリボ核酸の濃度、A260nmは波長260nmにおけるリボ核酸の吸光度値、Vfは上清の体積(μL)、Wはリボ核酸の初期重量(ng)である。
【0124】
C=(A260nm×40)/(100/125) 式(1)
回収率(%)=[(C×Vf)/W]×100% 式(2)
【0125】
リボ核酸のカプセル化効率(EE)をQuant-iT RiboGreen RNA定量的検出キット(RNA Assay kit)(Invitrogenより購入)により測定した。つまり、0.2% Triton X-100界面活性剤の存在および非存在下において、核酸-脂質粒子を含む分散液中のmRNAの濃度を定量化し、下に示す式(3)によりリボ核酸のカプセル化効率(EE)を算出した。式中、EEはリボ核酸のカプセル化効率であり、CFreeは未カプセル化リボ核酸濃度であり、CAllは総リボ核酸濃度である。
【0126】
EE(%)=(1-CFree/CAll)×100% 式(3)
【0127】
酸解離定数(pKa)について、6-p-トルイジノ-2-ナフタレンスルホン酸(TNS)に基づく滴定法を用い、マイクロディスク蛍光分析装置(Infinite F200 Pro、Tecan、励起波長:320nm、発光波長:448nm)により、pH値2.5~11.0で、全18点の緩衝液中のサンプルの蛍光強度滴定曲線を分析した。その滴定曲線はシグモイドでフィットし、算出された酸解離定数(pKa)は、核酸-脂質ナノ粒子キャリアが最大蛍光強度の半分に達したときのpH値であった。
【0128】
【表6】
【0129】
実施例44~52で得られた核酸-脂質ナノ粒子キャリア(12)~(20)の粒径、多分散性指数(PdI)、ゼータ電位、リボ核酸回収率(mRNA recovery)、リボ核酸のカプセル化効率(EE)、および酸解離定数(pKa)を評価した。その結果が表7に示されている。
【0130】
【表7】
【0131】
実施例53~61で得られた核酸-脂質ナノ粒子キャリア(21)~(29)の粒径、多分散性指数(PdI)、ゼータ電位、リボ核酸回収率(mRNA recovery)、リボ核酸のカプセル化効率(EE)、および酸解離定数(pKa)を評価した。その結果が表8に示されている。
【0132】
【表8】
【0133】
実施例62~70で得られた核酸-脂質ナノ粒子キャリア(30)~(38)の粒径、多分散性指数(PdI)、ゼータ電位、リボ核酸回収率(mRNA recovery)、リボ核酸のカプセル化効率(EE)、および酸解離定数(pKa)を評価した。その結果が表9に示されている。
【0134】
【表9】
【0135】
表6から表9によると、本開示の医薬組成物の自己集合(self-assembly)により形成された核酸-脂質ナノ粒子キャリアの粒径は約50nmから250nmとなり、かつ多分散性指数は0.03から0.33の間となり得たことがわかる。いくつかの実施例では、本開示の医薬組成物のうちいくつかの自己集合により形成された核酸-脂質ナノ粒子キャリアのリボ核酸回収率(%)は約80%より高くなっており、酸解離定数(pKa)は5から8.5の範囲となり得た。
【0136】
トランスフェクション効率および細胞生存率の評価
HEK293細胞を96-ウェル培養プレートに5×10細胞/ウェルで播種し、24時間付着培養を行った。次いで、Opti-MEM培地97μLおよびlipofectamine試薬(Invitrogenより購入)3μLを均一に混合し、室温で10分反応させて第1の溶液を得た。ルシフェラーゼmRNA(製品番号:R1018、APExBIOより購入)(濃度:1mg/mL)1μLおよびOpti-MEM(登録商標)培地99μLを均一に混合して第2の溶液を得た。その後、第2の溶液を第1の溶液に加えて、均一に混合し、室温で5分反応させて、トランスフェクション溶液を得た。次いで、実施例35~43で作製した脂質ナノ粒子(LNP)溶液を1×PBSでそれぞれ希釈し、希釈脂質ナノ粒子溶液(体積:200μL、濃度:5μg/mL)をそれぞれ得た。次いで、細胞培地(製品番号:MT-10-009-CVS,Corningより購入)800μLをそれぞれの希釈脂質ナノ粒子溶液に加え、トランスフェクション溶液と混合してそれぞれの細胞共培養溶液(ルシフェラーゼmRNAの濃度は0.1μg/100μL)を得た。その後、各細胞共培養溶液100μLを96-ウェル培養プレートにそれぞれ加え、細胞と共培養した(0.1μgmRNA/ウェル)。24時間培養した後、上清を0μL取り、細胞生存率アッセイ試薬(GF-AFC)20μLに加えた。37℃で35~40分反応させた後、その反応生成物の蛍光値を蛍光計で測定した(Ex:380nm;Em:540nm)。サンプルの蛍光検出示度と未処理の陰性対照群の蛍光値を除することによって、それぞれ異なる脂質ナノ粒子(LNP)溶液の存在下における細胞生存率を算出した。その結果は表10に示されている。
【0137】
【表10】
【0138】
前述より、本開示に記載される脂質化合物は、インビボ細胞実験分析の実行時、細胞活性にほとんど影響しないということがわかる。
【0139】
次いで、ONE-Glo Reagent 100μLを培養プレートの各ウェルに加え、3分以内にその発光値(luminescence value)を測定し、それぞれ異なる脂質ナノ粒子(LNP)溶液のトランスフェクション能を評価した。その結果は表11に示されている。
【0140】
【表11】
【0141】
表11より、本開示に記載される脂質化合物はHEK293細胞のトランスフェクション効率を実際に向上させ得ることがわかる。
【0142】
開示された実施形態に各種修飾および変更を加え得るということは、当業者には明らかであろう。詳述および例は単に例示として見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は以下のクレームおよびそれらの均等物によって示される。
【外国語明細書】