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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073391
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ブレスレットストランドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/00 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A44C5/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023194187
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】22207937.8
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ ピアザ, フィリップ
(57)【要約】
【解決手段】
ブレスレットストランド(10)の製造方法であって、
製造金型(20)のキャビティ(21)内に、インサート(15)を位置決めする、
少なくとも1つの締結要素(12)を、少なくとも1つの案内要素(35)を用いて、インサート(15)上に位置決めする、
インサート(15)と少なくとも1つの締結要素(12)を素材によりオーバーモールドする、即ち素材により少なくとも部分的に包み配置するため、製造金型(20)を素材で充填する、
素材とインサート(15)と少なくとも1つの締結要素(12)により少なくとも部分的に形成されたブレスレットストランド(10)を製造金型(20)から除去する、
ステップを含む、
ブレスレットストランド(10)の製造方法。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレスレットストランド(10)の製造方法であって、
製造金型(20)のキャビティ(21)内に、インサート(15)を位置決めする、
少なくとも1つの締結要素(12)を、少なくとも1つの案内要素(35)を用いて、前記インサート(15)上に位置決めする、
前記インサート(15)と前記少なくとも1つの締結要素(12)を素材によりオーバーモールドする、即ち素材により少なくとも部分的に包み配置するため、前記製造金型(20)を素材で充填する、
前記素材と前記インサート(15)と前記少なくとも1つの締結要素(12)により少なくとも部分的に形成された前記ブレスレットストランド(10)を前記製造金型(20)から除去する、
ステップを含む、
ブレスレットストランド(10)の製造方法。
【請求項2】
前記インサート(15)上に少なくとも1つの締結要素(12)を位置決めすることからなる前記ステップは、
内包された案内要素(35)を、前記インサート(15)の開口内に、とりわけねじ込みにより、配置する、または案内要素(35)を形成する突起を含むインサート(15)を提供する、及び
前記少なくとも1つの締結要素(12)を、前記案内要素(35)周りに位置決めする、
サブステップを含む、
請求項1に記載のブレスレットストランド(10)の製造方法。
【請求項3】
前記インサート(15)上に少なくとも1つの締結要素(12)を位置決めすることからなる前記ステップは、前記少なくとも1つの締結要素(12)を、前記インサート(15)の案内要素(35)を形成する開口(155)内に挿入する、とりわけ配置することを含む、
請求項1に記載のブレスレットストランド(10)の製造方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの締結要素(12)は、中央開口(120)を含み、前記方法は、前記製造金型(20)を素材により充填することからなる前記ステップの実行前に、前記素材が前記中央開口(120)を占拠しないよう、充填素材により前記中央開口(120)を閉鎖することからなる中間ステップを含み、前記方法は、前記充填素材を除去するステップを含む、
請求項3に記載のブレスレットストランド(10)の製造方法。
【請求項5】
前記インサート(15)は、前記ブレスレットストランド(10)の長手方向に延長し、その2つの端部のそれぞれに位置決めまたは配置装置を含み、当該装置により前記インサートは前記製造金型(20)の前記キャビティ(21)内に、前記製造金型(20)の前記キャビティ(21)の対向する上部(221)及び下部(231)表面に実質的に並行に、位置決めまたは配置される、及び前記インサート(15)は、前記2つの上部(221)及び下部(231)表面から等距離に位置決められる、または前記インサート(15)は、前記上部表面(221)により近く位置決めされる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの案内要素(35)は、前記製造金型(20)の前記キャビティ(21)内への一方向に突出する、とりわけ前記方向に平行な軸周りに対称的に配置され、とりわけ円筒または円錐台状形状及びまたは前記軸に対して断面円形である、要素であり、前記少なくとも1つの締結要素(12)は、前記少なくとも1つの案内要素(35)周りに延長し、とりわけ円筒または円錐台状形状のリングの形状である、及びまたは前記軸に対して断面円形の、及びまたは台座リングの形状である、
請求項1または2に記載のブレスレットストランド(10)の製造方法。
【請求項7】
前記素材の前記オーバーモールドを受けることが意図される前記少なくとも1つの締結要素(12)の表面(123)をテクスチャ化する及びまたは拘束下塗液を追加することからなる、中間ステップを含む、及びまたは少なくとも部分的に前記少なくとも1つの締結要素(12)周りに配置された引掛要素(14)、とりわけ引掛リング、とりわけアルミニウムまたはチタン発泡体といったハニカム構造を有する引掛要素を追加することからなる中間ステップを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)の製造方法。
【請求項8】
前記製造金型(20)を素材で充填することからなる前記ステップは、前記製造金型(20)のキャビティ(21)内への前記素材の圧力注入からなる、または圧縮成形からなる、
請求項1から7のいずれか一項に記載のブレスレットストランドの製造方法。
【請求項9】
前記金型から前記ブレスレットストランド(10)を除去することからなる前記ステップ後に、前記案内要素(35)を除去するステップを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載のブレスレットストランドの製造方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの締結要素(12)内に、とりわけ打ち込みにより、装飾要素(13)を配置するステップを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のブレスレットストランドの製造方法。
【請求項11】
素材(11)に基づくブレスレットストランド(10)であって、インサート(15)と、前記インサート(15)上に載置される、または前記インサート(15)上に配置される少なくとも1つの締結要素(12)を含み、両者は、前記素材により、オーバーモールドされる、即ち前記素材(11)により少なくとも部分的に包まれ配置される、
ブレスレットストランド(10)。
【請求項12】
前記インサート(15)は、ブレード(151)の、とりわけ金属ブレードの、特に超弾性金属合金ブレードの形状であり、前記インサート(15)は、2つの端部のそれぞれに、前記ブレスレットストランド(10)を一方では小型時計ケースに、他方では他のブレスレットストランドに、とりわけ留め金を用いて、接続するため、2つの配置装置(152a、152b)を含む、
請求項11に記載のブレスレットストランド(10)。
【請求項13】
前記インサート(15)は、前記ブレスレットストランドの対向する上部(101)及び下部(102)平面に実質的に平行に延長し、前記インサート(15)は、前記2つの上部(101)または下部(102)表面から等距離に位置決められる、または前記インサート(15)は、前記上部表面(101)により近く位置決めされる、即ちe15<e10/2、またはe15<e10/3となるように、前記上部表面(101)から距離e15に位置決めされ、ここでe10は前記ブレスレットストランド(10)の前記全厚さである、
請求項12に記載のブレスレットストランド(10)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの締結要素(12)は、円筒または円錐台状形状の、及びまたは環状断面形状のリングの形状である、及びまたは台座リングの形状である、
請求項11から13のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの締結要素(12)は、前記インサート(15)と前記ブレスレットストランド(10)の前記上部表面(101)間の全厚さにわたり延長する、
請求項11から14のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの締結要素(12)は、前記素材がオーバーモールドされる、テクスチャ化された表面及びまたは拘束下塗液を含む表面を含む、及びまたは前記少なくとも1つの締結要素(12)は、前記締結要素(12)周りに少なくとも部分的に配置された、引掛要素(14)、とりわけ引掛リング、とりわけ前記素材がその中に挿入される、アルミニウムまたはチタン発泡体といったハニカム構造を有する引掛要素(14)を含む、
請求項11から15のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)。
【請求項17】
前記素材は、熱可塑性または熱硬化性重合体またはエラストマまたはエラストマ系素材、とりわけフルオロエラストマ(FKM、FFKM、またはFEPM)、または天然ゴム(NR)または合成ゴム(SBR、HNBR、EPDM)、またはビニルメチルシリコン(VMQ)またはフルオロシリコン(FVMQ)である、及びまたは前記少なくとも1つの締結要素(12)は、金属または金属合金製である、
請求項11から16のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの締結要素(12)内へ、とりわけ打ち込みにより、配置された、受け溝内の石、または一体要素といった装飾要素(13)を含む、またはピンバックルの穴といった、ブレスレットストランドの締結部分を形成する、複数の締結要素(12)を含む、
請求項11から17のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)。
【請求項19】
請求項11から18のいずれか一項に記載のブレスレットストランド(10)を少なくとも1つ含む、時計、とりわけ腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレスレットストランドの製造方法に関する。本発明はまた、ブレスレットストランドそのもの、及び当該ブレスレットストランドを含む時計に関する。
【背景技術】
【0002】
小型時計またはクロック製造分野において、ブレスレットストランドへ、装飾要素を追加することが望まれる場合がある。より一般的には、ブレスレットストランドへ様々な要素及びまたは機能性を追加することが望まれる場合がある。
【0003】
このような追加を生じさせるため、
- 審美性、及び装着時の快適性の意味での、十分な結果、
- 十分な機械的性質を有する結果、
- 信頼性があり、安定した結果、
- 繰り返し可能な態様で、簡単に得られる結果、
の目的の全てまたは一部を達成することが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、本発明の全般的な目的は、少なくとも1つの補完要素及びまたは1つの追加機能性を含むと同時に、十分な機械的性質を有し、信頼性があり安定した、繰り返し可能な態様で簡単に得られる、審美的に魅力的な結果を有する、ブレスレットストランドの製造の解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、ブレスレットストランドの製造方法であって、
製造金型のキャビティ内に、インサートを位置決めする、
少なくとも1つの締結要素を、少なくとも1つの案内要素を用いて、前記インサート上に位置決めする、
前記インサートと前記少なくとも1つの締結要素を素材によりオーバーモールドする、即ち素材により少なくとも部分的に包み配置するため、前記製造金型を素材で充填する、
前記素材と前記インサートと前記少なくとも1つの締結要素により少なくとも部分的に形成された前記ブレスレットストランドを前記製造金型から除去する、
ステップを含む、ブレスレットストランドの製造方法に基づく。
【0006】
本発明はまた、素材に基づくブレスレットストランドであって、インサートと、前記インサート上に載置される、または前記インサート上に配置される少なくとも1つの締結要素を含み、両者は、前記素材により、オーバーモールドされる、即ち前記素材により少なくとも部分的に包まれ配置される、ブレスレットストランドに関する。
【0007】
本発明は、より具体的には請求項により定義される。
【0008】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付する図面に関して非限定的な態様で示される、特定の実施形態についての以下の記載においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる、ブレスレットストランドの製造用金型の第一断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる、ブレスレットストランドの製造用金型の第二断面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態にかかる、ブレスレットストランドの製造方法のステップの模式的断面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態にかかる、ブレスレットストランドの製造方法のステップの模式的断面図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態にかかる、ブレスレットストランドの製造方法のステップの模式的断面図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態にかかる方法を介して得られた、第一実施変形例にかかるブレスレットストランドの拡大部分断面図である。
図7図7は、本発明の第一実施形態にかかる方法を介して得られた、第二実施変形例にかかるブレスレットストランドの拡大部分断面図である。
図8図8は、第二実施変形例にかかるブレスレットストランドの製造方法のステップの模式的断面図である。
図9図9は、第二実施変形例にかかるブレスレットストランドの製造方法のステップの模式的断面図である。
図10図10は、本発明の第二実施形態にかかる方法を介して得られた、第一実施変形例にかかるブレスレットストランドの拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中、「上」及び「下」の形容詞は、ブレスレットストランドの将来の位置を称するために用いられる。例えば、ブレスレットストランドの場合、「下」の形容詞は、装着者の手首側にあることが意図される方向を意味し、「上」の形容詞は、反対の方向を意味する。
【0011】
図1及び2は、本発明を実施するために用いられる金型20を図示する。当該金型20は、互いに対して可動である2つの半金型22、23により境界が定められる、キャビティ21を含む。これら2つの半金型22、23はそれぞれ、金型20のキャビティ21の境界画定を、それぞれキャビティ21の上面及び下面を形成する、壁221、231を含む。図1及び2は、より正確には、それぞれ2つの直角正中面に沿った、キャビティ21の高さでの、金型20の断面を示す。キャビティ21は、製造されるブレスレットストランドの形状に対応する、実質的に平坦且つ長方形状を有し、図1及び2の2つの断面平面は、それぞれ、長手方向の、即ちキャビティ21の長さに沿って向けられ、当該キャビティの壁221、231により形成された平面に垂直な正中面と、横方向の、即ちキャビティ21の長手方向に垂直に向けられ、当該キャビティの壁221、231により形成された平面に垂直な正中面である。
【0012】
2つの半金型22、23は、それぞれ、実質的に平坦であり、図1及び2において平行な、壁221、231を含む。代替的に、これら壁221、231は、曲面であってもよい。壁の形状は、製造されるブレスレットストランドの上面及び下面の形状に対応する。任意のハウジング部分24a、24bは、金型キャビティ21内に位置決めされる。ハウジング部分の機能は、後述する。
【0013】
本発明のコンセプトは、インサートと締結要素をオーバーモールドするため、即ちインサートと締結要素を素材内に配置するのに十分な態様で、当該素材内で少なくとも部分的にインサートと締結要素を包むために、製造金型を素材で充填する前に、当該製造金型内にインサートと締結要素を位置決めすることからなる。当該素材は、ブレスレットストランドの主素材、及びまたはブレスレットストランドの上面及びまたは下面から見ることができる素材に対応し、以下、「ブレスレットストランドの素材」または単に「素材」と称される。
【0014】
金型は、あらゆる手段で、とりわけ射出成形または圧縮成形により、充填可能である。射出成形方法の場合、素材は、例えば、金型が既に閉じられ、所定の温度(典型的には150℃から250℃の間、または150℃から200℃の間)を有するときに、キャビティ21内に、所定の圧力(典型的には80バールと150バールの間、または80バールと90バールの間)により射出される。圧縮成形方法の場合、金型が閉じられる前に、壁231上にストランド素材のプリフォームまたはブランクが位置決めされ、その後所定の温度(典型的には150℃から250℃の間、または150℃から200℃の間)により圧縮される。全ての場合において、当該素材は、締結要素を包み、ブレスレットストランド内に配置するために、1以上の締結要素の周囲の少なくとも部分的に配置される。当該素材は、このように、インサートと締結要素をオーバーモールドする。
【0015】
有利には、素材は、エラストマまたはエラストマ系素材、即ちエラストマを少なくとも50重量%含む素材である。特に、エラストマ素材は、フルオロエラストマ(FKM、FFKM、またはFEPM)、または天然ゴム(NR)または合成ゴム(SBR、HNBR、EPDM)、またはビニルメチルシリコン(VMQ)またはフルオロシリコン(FVMQ)であってもよい。より一般的には、部品素材は重合体であってもよい。部品素材は、とりわけ、熱可塑性または熱硬化性重合体であってもよい。
【0016】
図3から図5は、本発明の第一実施形態にかかるブレスレットストランドの製造方法を図示する。
【0017】
図3及び4は、インサート15内に配置された少なくとも1つの案内要素35を用いて、製造金型20内に少なくとも1つの締結要素12を位置決めすることからなる、第一実施形態にかかる方法の第一ステップを図示する。図示する例において、単一の締結要素12が位置決めされるが、変形例として、それぞれ案内要素35を用いて、複数の締結要素を位置決めすることができる。このように、締結要素12の数と同数の案内要素35が存在する。
【0018】
当該第一実施形態において、各案内要素35は、インサート15上に固定されたまたは一体的に形成された、突出要素である。
【0019】
図3及び4から見て取れるように、特定の実施形態にかかるインサート15は、有利には金属ブレード151、特に超弾性金属合金ブレード151であってもよい、ブレード151の形状である。当該ブレードは、自身の長手方向端部のそれぞれに配置される、2つのループ152a、152bを含む。
【0020】
インサート15はまた、(複数の)締結要素12を位置決めするために設けられる(複数の)案内要素35の支持部の役割も果たす。
【0021】
特に図3から見て取れるように、案内要素35は、ブレード151の貫通開口150へねじ込まれる、ねじの形状であってもよい。ねじ頭の周囲が、ここでは、締結要素12上に配置される第二案内表面121と協働することが意図される、第一案内表面351を構成する。
【0022】
当該第一実施形態において、各案内要素35は、インサート15の上部表面から突出し、金型20のキャビティ21内に延長する、円筒状スタッドの形状である。スタッドの外形は、第一案内表面351を少なくとも部分的に形成する。
【0023】
締結要素12は、自身では、案内要素35を形成するスタッドを受けることが意図される開口120を有するリングの形状である。開口120の境界を定める、リングの内面は、第二案内表面121を形成する。当該実施形態において、締結要素12は、(組立クリアランスを除き)インサート15の上部表面上の、金型20のキャビティ21の全高さにわたり実質的に延長する。有利には、締結要素12は、より詳細には台座リングである。締結要素12は、中央開口120を定義し、その基部は、台座12aを定義する、円板または第一円筒部分周りに配置される第二円筒部分で終結する、第一上部円筒部分を含む。
【0024】
任意で、引掛要素14を締結要素12と関連付ける。特に、当該引掛要素は、開口140を有するリングの形状であり、その直径は、より具体的には図3に示される第一実施形態にかかる方法のステップにより、締結要素12周りに位置決めされることが意図される。更に、引掛要素14は有利には、ブレスレットストランドの素材11が、引掛要素14内に、また締結要素12と引掛要素14との間に、挿入され固定されることができるように、ハニカム構造を含む。「ハニカム構造」の文言は、開口による多数の交差を含む構造を意味する。有利には、引掛要素14は、金属発泡体の形状であってもよい。優先的に、引掛要素14は、その体積がブレスレットストランドの厚さの内部に向かい、即ちブレスレットストランドの上部表面から下部表面に向かう方向に増加する、円錐状または円錐台状の形状である。当該形状の利点は、ブレスレットストランドの上部表面からの引掛要素14の可視性を最小化することである。更に、このような漸進的形状は、素材11をより良く拘束することを可能にする。このような引掛要素14と組み合わされた締結要素12のこのような形状は、締結要素12周りの大きな開口現象、即ち望ましくない裂け目が出現する、締結要素12周りのストランドの開口の変形を、非常に実質的に最小化する、または解消することを可能にする。変形例として、当該引掛要素14は、本発明にかかるあらゆる実施変形例の全ての締結要素と組み合わせることができることを注記する。引掛要素は、全ての場合において、任意である。
【0025】
図3に示すように、締結要素12は、引掛要素14と関連し、当該組立体はその後、図4に示すように、金型20のキャビティ21の外でまたは内で案内要素35がインサート15上に位置決めされると、案内要素35に搭載される。
【0026】
方法はその後、図5に示す、インサートと少なくとも1つの締結要素12とを含む組立体を素材11によりオーバーモールドするために、そして組立体を少なくとも部分的に包み素材内に配置するため、そして結果として得られるブレスレットストランド内へ配置するため、製造金型20を素材11により充填することからなる、第二ステップを含む。
【0027】
有利には、当該第二ステップにおいて、案内要素35は、締結要素12の開口120内への素材のあらゆる侵入を阻止する、または素材の侵入を大幅に制限する。締結要素12の外面形状は、自身では、(特に図7に示すように引掛要素14がない場合に)自身周りに射出されるまたは圧縮される素材11と接触することが意図される、少なくとも1つの拘束表面123を形成する。
【0028】
要約すると、当該第一実施形態にかかる製造方法は、以下に特定する2つの第一ステップを含む。
【0029】
方法の第一ステップは、少なくとも1つの案内要素35をインサート15上へ組み立てることからなる、予備サブステップを含む。当該組み立ては、前述のねじ込み以外の、あらゆる方法で実施されてよい。このため、案内要素35は、変形例として、図示したねじと異なってもよい。当該予備ステップは、締結要素12周りへの引掛要素14の搭載を含んでもよいことを注記する。
【0030】
このように、少なくとも1つの締結要素12の製造金型内への位置決めの第一ステップは、当該案内要素35を用いて、また優先的に製造金型内に位置決めされたインサート15を用いて得られる。
【0031】
このため第一ステップは、例えば、金型の半金型23上へのインサート15の位置決めを含む。このため、第一にインサート15の、特にブレード151のループ152a、152bへ、第二に金型の半金型23に形成されたハウジング24a、24bの部分へ、挿入されるため、ピン41a、41bが設けられる。このように、ブレード151は、キャビティ21内に位置決めされ、金型が閉じられると、金型20の対向する長手方向壁221、231から離れた吊り下げが維持される。
【0032】
要約すれば、ブレスレットストランドの製造方法は、金型内に少なくとも1つの締結要素12を位置決めする第一ステップの以下の2つのサブステップを含む。
- インサート15を、製造金型20のキャビティ21内に位置決めする、
- 少なくとも1つの案内要素35を用いて、少なくとも1つの締結要素12を当該インサート15上に位置決めする。
【0033】
これら2つのサブステップは、続けて実施されてもよく、逆の順番で実施されてもよく、実質的に同時に実施されてもよい。
【0034】
任意で、方法の第一ステップは、上述のサブステップに加えて、図3に示すように、案内要素35周りへの締結要素12の位置決め前のまたは最中の、締結要素12周りの引掛要素14の位置決めの他のサブステップを含む。このため、締結要素12の第一円筒部分は、その外周に、引掛要素14を受けるための表面124を含む。このため、締結要素12は、引掛要素14の中央開口140内に挿入される。当該組立体は、その後、案内要素35を用いて、インサート15上に位置決めされ、その後金型20のキャビティ21内に位置決めされてもよい。
【0035】
製造方法は、その後、インサート15と少なくとも1つの締結要素12を素材によりオーバーモールドする、即ち素材により少なくとも部分的に包み配置するため、製造金型20を充填することからなる第二ステップを含む。
【0036】
方法はその後、図示しない、ブレスレットストランド10を、製造金型20から除去することからなる、第三ステップを含む。当該ブレスレットストランド10は、このように、金型20のキャビティ21を充填した素材11と、インサート15と、少なくとも1つの締結要素12により、少なくとも部分的に形成される。当該脱金型ステップにおいて、上部半金型22は、当該実施例において固定された、下部半金型23から分離される。脱金型ステップにおいて得られた結果は、最終ブレスレットストランドを得る前に、切断、表面処理等といった仕上げ作業を更に必要とする、ブレスレットストランドの未完成の輪郭に過ぎないこともあることを、注記する。
【0037】
金型からブレスレットストランドを除去した後、方法は、少なくとも1つの案内要素35をブレスレットストランドブランクから、とりわけ図示した実施例によればねじ抜きにより、除去することからなる、中間ステップを含む。次に、例えば装飾要素13が、少なくとも1つの締結要素12の開口120内へ、とりわけ打ち込みにより、取り付けられてもよい。事前に、第二充填ステップに起因する、とりわけ開口120内の、望ましくないあふれた素材11を、当業者に既知の技術により、例えば低温サンドブラストにより、除去してもよい。更に、装飾要素13は、その中にブレスレットストランドの上部表面101から見ることができる石13aが配置される、受け溝13bを含んでもよい。
【0038】
このように、図6は、第一実施形態にかかる方法により得られたブレスレットストランドの第一変形例を図示する。インサート15を形成するブレード151は、ブレスレットストランドの厚さe10の中心に位置決めされる。換言すれば、ブレード151は、ブレスレットストランドの上部表面101と下部表面の102から等距離にまたは実質的に等距離にあり、自身を上部表面101から分離する距離e15は、e10/2に等しいまたは実質的に等しい。このため、ブレード151は、ブレスレットストランドが単純曲げに曝されると、ブレスレットストランドの中立素分の層を構成するまたは接近する。更に、当該ブレード151は、このようにしてブレスレットストランドの補強の役割を果たすことを注記する。
【0039】
図7は、第一実施形態にかかる方法により得られたブレスレットストランドの第二変形例を図示する。ブレスレットストランドは、中立素分の層を上部表面101へ向かいシフトするため、ブレード151がブレスレットストランドの上部表面101により近く位置決めされる点で、第一変形例にかかるブレスレットストランドと異なる。これは、ブレード151の素材が、有利にはブレスレットストランドの素材よりも、即ち少なくとも1つの締結要素を少なくとも部分的に包む素材よりも、硬いという事実により可能になる。このため、当該デザインにおいて、厚さは以下の条件に従う。e15<e10/2、またはe15<e10/3。当該第二実施変形例によるブレスレットストランドを得るため、方法の第一ステップ中に、ブレード151を金型20の半金型の長手方向壁に近づけるために、金型のキャビティ21内のハウジング24a、24bの位置をシフトしてもよい。当該第二実施変形例は、ブレスレットストランドが曲げられる際の、締結要素12周りの牽引現象を最小化する利点がある。特に、試験により、当該デザインは、引掛要素14の挿入の必要なくして、締結要素12周りのあらゆる大きな開口を実質的に制限、または阻止することを可能にすることが示されている。当該デザインはまた、締結要素12の台座12aのサイズ、特に直径を最小化可能にし、または台座12aを省くことを可能にする。このため、当該第二実施変形例にかかる当該デザインは、一方では引掛要素14を省くことにより、他方では締結要素12のサイズを最小化することにより、ブレスレットストランドへ装飾要素13を締結するために必要な要素の体積を制限する利点を有する。当該デザインの利点は、このため、異なる装飾要素をより接近させ、ブレスレットストランド上の装飾要素の数を場合により、例えば審美的目的のため、最大化することを可能にするという点である。
【0040】
図示しない他の変形実施形態によれば、締結要素は、単なる円筒形リングの形状であってもよい。変形例として、当該リングは、例えばブレスレットストランドの上部表面101に垂直な方向に全体的に延長する、とりわけ当該方向に平行な軸周りに円筒状または円錐台状形状を有する、及びまたは環状断面を有する、他の形状をとってもよい。
【0041】
これら実施形態において、引掛要素14の使用は、任意である。図6に図示する実施例において、素材11は、より具体的には、引掛要素14のハニカム構造内に挿入される。
【0042】
更に、(複数の)締結要素12周りへの素材11の拘束を促進するため、上述の受け表面124と一致する拘束表面123は、特に粗くするために、当業者に既知の技術によりテクスチャ化されてもよい。代替的にまたは追加で、これら表面は、拘束下塗液により被覆されてもよい。説明した変形例によれば、拘束表面は、締結要素12を形成する円筒リングの全外周表面により形成される。
【0043】
更に、締結要素12の台座12aは、素材11が当該台座12aの上部及び下部表面の両側にわたり延長するため、ブレスレットストランドの素材11内に、即ちブレスレットストランドの厚さ内に、埋め込まれ、ここで台座12aは、インサート15上に配置される。当該実施形態変形例は、ブレスレットストランドの屈曲を、締結要素12の周囲面周りにおいて、とりわけ締結要素12の第一円筒部分周りにおいて、特に締結要素12の円板または第二円筒部分により形成された台座12aにおいて、局所的に最小化可能にする。
【0044】
これら実施形態において、結果として得られる締結要素12は、インサート15上に載置される。
【0045】
装飾要素13の、特に受け溝13bの構造は、ブレスレットストランド10の下部表面102から作動可能なように設けられてもよい。例えば、受け溝13bは、当該下部表面の近くで、ブレスレットストランドの下部表面102に平行または実質的に並行に延長する下部表面を示すために、締結要素12から突出する、即ち締結要素12よりもブレスレットストランドの厚さ内に深く延長する、作動表面132bを含んでもよい。このような表面は、例えば、装飾要素の解放を可能にするため、専用の工具と協働してもよい。代替的に、装飾要素13は、特に受け溝13bは、締結要素12内に組み立てられた後は作動できないような形状にされてもよい。例として、受け溝13bは、以下で図10を参照して図示するように、締結要素12内に埋め込まれてもよい。
【0046】
第二実施形態にかかる方法は、第一実施形態の代替を構成する。少なくとも1つの締結要素12はインサート15上に、事前にブレード151上に位置決めされた案内要素35によってではなく、図8に示すように、案内要素35としての役割を果たす、ブレード上に形成された開口155内に直接、位置決めされる。このため、少なくとも1つの締結要素12は、開口155の外形と協働することが意図され、即ち案内要素35を形成する、案内表面121を含む。特に、少なくとも1つの締結要素12は、外周面が、開口155内に格納されることが意図される案内表面121を含む、リングの形状である。ブレード151上へのリングの保持を可能にするため、リングの外周面はまた、リングの形状の引掛要素14を、受けるための、とりわけ打ち込みのための、表面124を含む。加えて、締結要素12はまた、ブレード151上に軸方向に保持可能なように、台座12aを含む。代替的にまたは追加で、インサート15は、案内要素の機能を充足するその他の形状、例えば突起を、有しても含んでもよいことを注記する。
【0047】
図8及び9は、当該第二実施形態にかかるブレスレットストランドの製造方法のステップを模式的に図示する。
【0048】
図8で図示する第一ステップ中、締結要素12は、第一実施形態同様、ブレード151の形状であるインサート15上に組み立てられる。当該実施形態において、締結要素12は、ブレード151の下部表面から、開口155を通して通され、その後引掛要素14が反対の上部表面から、とりわけ締結要素12の外表面周りの噛み合いにより、締結要素12内へ配置される。
【0049】
第一ステップはまた、ブレスレットストランドの素材11により金型を充填する第二ステップ前に実施される、図9に示す更なるサブステップを含む。サブステップは、締結要素12の開口120を充填素材により閉鎖することからなる。例えば、当該充填素材は、数分で重合するという利点を有する、ビニール、ケイ酸、及び凝集剤を含む、二成分シリコンであってもよい。例えば、当該素材は、Plastiform(商標)F50またはPlastiform(商標)F85の商品名で知られる製品であってもよい。充填素材は、例えば、定量ピストルを用いて堆積され、その後即座に硬化され、第二ステップ中の締結要素12の開口120内への素材11のあらゆる再進入に対する障害物40を形成する。
【0050】
金型からの除去後、方法は、当該開口120を開放するため、締結要素12の開口120に堆積された充填素材により形成された障害物40を除去する、中間ステップを含む。
【0051】
方法の他のステップは、第一実施形態を参照して説明したものと同一である。
【0052】
図10は、例として、インサート15を形成するブレード151がブレスレットストランドの厚さの実質的に中央に位置する、当該第二実施形態にかかる方法を介して得られたブレスレットストランドの第一実施変形例を示す。図示しない第二変形例において、当該ブレードは、第二変形例にかかるブレスレットストランドを得るための第一実施形態にかかる方法の文脈で説明したように、ブレスレットストランドの上表面に近づけて位置決めされてもよい。このような第二ブレスレットストランド変形例は、締結要素12を単純化することに加えて、引掛要素14のサイズを最小化する利点をも有することを注記する。これら実施形態において、得られる締結要素12は、インサート15内に配置される。
【0053】
全ての実施形態において、締結要素12は、方法に関連する温度に耐えることができる、あらゆる素材から製造されてよい。有利には、当該素材は、より具体的には、装飾要素13の打ち込みを可能にするのに適している。例として、当該素材は、真鍮やCuBeといった銅合金といった金属合金、またはステンレス鋼であってもよい。
【0054】
上述の実施変形例において、締結要素は、装飾要素を受けることが意図された。もちろん、締結要素は、例えば新たな機能を充足するため、他の要素を受けることが意図されてもよい。例えば、ピンバックルを含む特定のブレスレット構成において、締結要素の開口は、ピンを受けることが意図され、このためブレスレットの長さの調節に参加する、整列した開口の一連を形成してもよい。このような構成は、通常開口が素材を切断することでブレスレットストランド上に直接形成されるため、ピンを受けることが意図されるこれら開口のあらゆる変形を除去する利点を有する。本発明にかかる締結要素は、このように、様々な機能を充足可能であり、このため締結要素内に異なる要素を必ずしも永続的に固定しなくてもよい。
【0055】
更に、上述のように、全ての実施変形例において、締結要素は、任意で台座を含むリングの形状であってよい。このような台座は、締結要素周りのストラップストランドの屈曲を局所的に制限する利点を有する。もちろん、本発明は、図示する締結要素の形状に限定されず、要求される機能性に応じて他の形状を取ってもよい。例えば、締結要素は、軸周りに配置された、円筒または円錐台状リングの形状や他の形状、例えば当該軸に対して断面で環状形の形状であってもよい。優先的に、全ての実施変形例において、締結要素、特に締結要素としての役割を果たすリングは、ブレスレットストランドの上部表面と同一平面の表面を含む。
【0056】
説明した実施形態において、締結要素は、少なくとも1つの案内要素を用いて、金型内に位置決めされる。当該案内要素は、様々な形状であってよい。例えば、案内要素は、製造金型のキャビティ内へ特定方向に突出する、とりわけ当該方向に平行な軸周りに対称に配置された、とりわけ円筒または円錐台状形状及びまたは当該軸に対して断面で円形の、要素であってもよい。
【0057】
更に、全ての実施変形例において、締結要素は、引掛要素と組み合わされてもされなくてもよく、引掛要素は締結要素周りの部品の包みを構成する素材の固着を最大化するために設けられる。優先的に、引掛要素は、アルミニウムまたはチタン発泡体製であってよい。
【0058】
上述のように、装飾要素は、受け溝内に配置された石といった、組立体の形状であってもよい。石は、例えば、貴金属(ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド)といった天然石であってもよく、例えば碧玉といった精石であってもよい。石はまた、有機体であってもよく、例えば、真珠または真珠層の形状であってもよい。受け溝は、例えば、金系合金といった、貴金属合金製であってもよい。
【0059】
代替的に、装飾要素は、一体に製造されてもよい。例えば、装飾要素は、セラミック、例えばジルコニア、アルミナ、シリコン窒化物、炭化ホウ素、または窒化アルミニウムで主としてまたは大部分構成されるセラミック製であってもよい。代替的に、装飾要素は、アルミナ-ジルコニアZTA/ATZ合成物といった、複合素材製であってもよい。また代替的に、装飾要素は、金またはプラチナ系合金といった、貴金属合金製であってもよい。更に、装飾要素は、パターンを含んでもよい。
【0060】
更に、インサートは、とりわけ有利には、補強機能を満たす。更に、当該インサートは、ブレードの形状として説明されてきた。もちろん、当該ブレードは、異なる表面を占めてもよく、ブレスレットストランドの顕著な寸法にわたり、例えば長さの少なくとも50%または70%にわたり、実質的に連続して延長してもよく、または代替的に、制限された寸法を取り、(複数の)締結要素のみに設置されてもよい。更に、本発明は、ブレード形状のインサートに限定されるものではない。
【0061】
本発明はまた、当該ブレスレットストランドを含む、時計、とりわけ腕時計に関する。
【符号の説明】
【0062】
10 ブレスレットストランド
12 締結要素
14 引掛要素
15 インサート
20 金型
21 キャビティ
35 案内要素
101 上部表面
102 下部表面
120 中央開口
123 表面
151 ブレード
155 開口
221 上部表面
231 下部表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】