(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073394
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240522BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194690
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022183826
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】林 寛人
(72)【発明者】
【氏名】村上 知広
(72)【発明者】
【氏名】村田 将一
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA07
2H500CA02
2H500CA06
2H500CA27
2H500CA32
2H500EA05C
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA42C
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】帯電安定性に優れた静電荷像現像用トナーに関すること。
【解決手段】結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質樹脂A、及び4級アンモニウム塩化合物Xを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル系樹脂が、エチレングリコールを80モル%以上含有するアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物であり、エステル基濃度が6.0mmol/g以上9.0mmol/g以下である結晶性ポリエステル樹脂C及び/又は該結晶性ポリエステル樹脂Cを含む複合樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質樹脂A、及び4級アンモニウム塩化合物Xを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル系樹脂が、エチレングリコールを80モル%以上含有するアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物であり、エステル基濃度が6.0mmol/g以上9.0mmol/g以下である結晶性ポリエステル樹脂C及び/又は該結晶性ポリエステル樹脂Cを含む複合樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
結晶性ポリエステル系樹脂の非晶質樹脂Aに対する質量比が、3/97以上30/70以下である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
結晶性ポリエステル樹脂Cのエステル基濃度が6.0mmol/g以上8.0mmol/g以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
4級アンモニウム塩化合物Xの含有量が、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質樹脂Aの合計100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下である、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
4級アンモニウム塩化合物Xが4級アンモニウム塩含有樹脂である、請求項1~4いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
結晶性ポリエステル樹脂Cのアルコール成分及び/又はカルボン酸成分が1官能のモノマーを含有する、請求項1~5いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂がトナーの低温定着性向上に有効であることが知られており、非晶質樹脂との併用も検討されている。
【0003】
特許文献1には、像担持体と、トナーを収容し、前記像担持体上に形成された静電潜像を前記トナーで現像して、前記像担持体上にトナー像を形成するように構成される現像装置と、前記像担持体上のトナー像を、記録媒体に転写する転写部と、前記記録媒体に転写されたトナー像を、前記記録媒体に定着させる定着装置と、を備え、前記定着装置は、第1ローラーと、第2ローラーとを備え、前記記録媒体の表裏面のうち、表面に転写された前記トナー像に前記第1ローラーが接触し、裏面に前記第2ローラーが接触するように、前記記録媒体を挟むことで、前記トナー像を前記記録媒体に定着させるように構成され、前記第1ローラーは、表層部に、フッ素樹脂を含有する表面抵抗率1.0×1010Ω以上のコート層を備え、初期状態において実質的に前記現像装置に収容されている前記トナーは、体積抵抗率7×109Ω・cm以下の結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性樹脂とを含有するトナー粒子を、複数含む、画像形成装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、トナー粒子を含むトナーであって、前記トナー粒子は、非結晶性ポリエステル樹脂を含む海状ドメインと、前記海状ドメインに対して島状に分布する島状ドメインとを有するトナー母粒子を備え、前記島状ドメインは、結晶性ポリエステル樹脂及びセルロースナノファイバーを含む、トナーが開示されている。
【0005】
特許文献3には、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、前記トナーの貯蔵弾性率温度依存性曲線においては、温度69℃以上93℃以下かつ貯蔵弾性率1.00×106Pa以上1.00×107Pa以下の範囲にショルダーが存在し、温度180℃の貯蔵弾性率が1.00×103Pa以上1.00×104Pa以下であり、フローテスターで測定された前記トナーの軟化点は、115℃以上125℃以下である、静電潜像現像用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-198835号公報
【特許文献2】特開2020-16689号公報
【特許文献3】特開2017-151253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、4級アンモニウム塩化合物は、高い正帯電性を有するが、帯電安定性に課題がある。
【0008】
本発明は、帯電安定性に優れた静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質樹脂A、及び4級アンモニウム塩化合物Xを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル系樹脂が、エチレングリコールを80モル%以上含有するアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物であり、エステル基濃度が6.0mmol/g以上9.0mmol/g以下である結晶性ポリエステル樹脂C及び/又は該結晶性ポリエステル樹脂Cを含む複合樹脂を含有する、静電荷像現像用トナーに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の静電荷像現像用トナーは、帯電安定性において優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質樹脂A、及び4級アンモニウム塩化合物Xを含有する静電荷像現像用トナーであり、結晶性ポリエステル系樹脂が、アルコール成分としてエチレングリコールを用いて得られる重縮合物であり、エステル基濃度が6.0mmol/g以上9.0mmol/g以下である結晶性ポリエステル樹脂C及び/又は該結晶性ポリエステル樹脂Cを含む複合樹脂を含有する点に大きな特徴を有する。本発明の静電荷像現像用トナーが、帯電安定性に優れる理由は定かではないが、以下のように推察される。
【0012】
4級アンモニウム塩化合物はカチオン状態を取るため、非晶質樹脂との相性が悪く、非晶質樹脂中での分散が困難であり、帯電安定性に課題がある。これに対して、本発明では、アルコール成分としてエチレングリコールを含有し所定のエステル基濃度を有する結晶性ポリエステル樹脂Cを用いることで、4級アンモニウム塩化合物の分散性が向上することを見出した。これは、結晶性ポリエステル樹脂C中のエチレングリコール部分を挟んだエステル基がカチオン部位である4級アンモニウム塩と相互作用しやすいうえ、結晶性ポリエステル樹脂Cのエステル基濃度が特定の範囲にあることで、4級アンモニウム塩化合物との相互作用を十分に存在させつつ結晶性ポリエステル樹脂C同士での凝集が抑制されるため、非晶質樹脂中での4級アンモニウム塩化合物の分散性が向上する結果、導電性パスが減少し帯電安定性が向上するものと推察される。
【0013】
本発明において、結晶性ポリエステル系樹脂は、エチレングリコールを含有するアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂C及び/又は該結晶性ポリエステル樹脂Cを含む複合樹脂であり、本発明においては、帯電安定性の向上の観点から、複合樹脂がより好ましい。
【0014】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である。
一方、非晶質樹脂は、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0015】
エチレングリコールの含有量は、アルコール成分中、低温定着性及びスメア性の観点から、80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、アルコール成分がモノアルコールを含む場合は、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0016】
エチレングリコール以外のアルコール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等のエチレングリコール以外の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0017】
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、フマル酸(炭素数:4)、アジピン酸(炭素数:6)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン二酸(炭素数:12)、テトラデカン二酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。ここで、脂肪族ジカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
【0018】
脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、疎水性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは16以下であり、より好ましくは14以下である。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、疎水性の観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、カルボン酸成分がモノカルボン酸系化合物を含む場合は、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0020】
他のカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸系化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0021】
さらに、結晶性ポリエステル樹脂Cのアルコール成分及び/又はカルボン酸成分は、1官能のモノマーを含有することが好ましい。
【0022】
アルコール成分に含まれる1官能のモノマーとしては、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の脂肪族モノアルコール等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸成分に含まれる1官能のモノマーとしては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等の脂肪族モノカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0024】
1官能のモノマーは、疎水性を向上する観点から、脂肪族モノカルボン酸系化合物及び/又は脂肪族モノアルコールを含有することが好ましい。
【0025】
脂肪族モノアルコールの炭素数は、疎水性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下である。
【0026】
脂肪族モノカルボン酸系化合物の炭素数は、疎水性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは22以下であり、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下である。ここで、脂肪族モノカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
【0027】
1官能のモノマーの含有量は、原料モノマー中(アルコール成分とカルボン酸成分の合計量中)、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下である。
【0028】
なお、本明細書において、マクロモノマーやヒドロキシカルボン酸は、アルコール成分及びカルボン酸成分には含めない。
【0029】
カルボン酸成分のカルボキシ基のアルコール成分の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、帯電安定性の観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
【0030】
結晶性ポリエステル樹脂Cは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは120℃以上230℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0031】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0032】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0033】
結晶性ポリエステル樹脂Cのエステル基濃度は、6.0mmol/g以上であると、4級アンモニウム塩化合物Xとの相互作用点が十分に存在することで4級アンモニウム塩化合物Xの分散性が向上する。一方、結晶性ポリエステル樹脂Cのエステル基濃度が9.0mmol/g以下であると、結晶性ポリエステル樹脂C同士での凝集が抑制されるためか、4級アンモニウム塩化合物Xとの相互作用が維持される結果、4級アンモニウム塩化合物Xの分散性が向上する。従って、これらの観点から、結晶性ポリエステル樹脂Cのエステル基濃度は、6.0mmol/g以上であり、好ましくは6.2mmol/g以上、より好ましくは6.5mmol/g以上であり、そして、9.0mmol/g以下であり、好ましくは8.0mmol/g以下、より好ましくは7.8mmol/g以下である。
【0034】
結晶性ポリエステル樹脂Cのエステル基濃度は、下記式により算出する。
【0035】
【0036】
〔式中、Aはポリエステル樹脂の原料モノマー(E)がすべて反応した際に生成する全エステル結合量(mol)であり、Bはポリエステル樹脂を構成する原料モノマー(E)の全質量(g)である。なお、式中の括弧内は、各数値の単位を意味する。〕
【0037】
複合樹脂としては、帯電安定性の向上の観点から、結晶性ポリエステル樹脂Cとスチレン系樹脂が結合した複合樹脂が好ましい。
【0038】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cとスチレン系樹脂とを含有する複合樹脂において、スチレン系樹脂は、少なくとも、スチレン、又はα-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含む原料モノマーの付加重合物である。
【0039】
スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、帯電安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
【0040】
スチレン系樹脂の原料モノマーには、スチレン化合物以外の原料モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が含まれていてもよい。
【0041】
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
【0042】
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
【0043】
複合樹脂は、ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル系樹脂においては結晶性ポリエステル樹脂C)とスチレン系樹脂とが結合した樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂の原料モノマーとスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを介して化学的に結合した樹脂であることがより好ましい。
【0044】
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、ポリエステル樹脂の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、ポリエステル樹脂の原料モノマーである。
【0045】
両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂とポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂のアルコール成分の合計100モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂とポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
【0046】
複合樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーを用いる場合、両反応性モノマーは、トナーの帯電安定性及び低温定着性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
【0047】
(i) ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加することが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応をすると共にポリエステル樹脂とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂の原料モノマー等を重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
【0048】
(ii) スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
ポリエステル樹脂の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
【0049】
(iii) ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを、並行して進行する条件で反応を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを並行して行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
【0050】
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する条件で反応を行う際には、ポリエステル樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
【0051】
上記(i)~(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
【0052】
複合樹脂におけるポリエステル樹脂のスチレン系樹脂に対する質量比(ポリエステル樹脂/スチレン系樹脂)は、帯電安定性の観点から、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、さらに好ましくは90/10以下であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、さらに好ましくは75/25以上、さらに好ましくは85/15以上である。なお、上記の計算において、ポリエステル樹脂の質量は、用いられるポリエステル樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、ポリエステル樹脂の原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂の量は、スチレン系樹脂の原料モノマーと重合開始剤の合計量である。
【0053】
結晶性ポリエステル系樹脂の軟化点は、帯電安定性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。
【0054】
結晶性ポリエステル系樹脂の融点は、帯電安定性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。
【0055】
結晶性ポリエステル系樹脂の酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0056】
結晶性ポリエステル系樹脂の含有量は、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質樹脂Aの合計量中、低温定着性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0057】
非晶質樹脂Aとしては、非晶質のポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が結合した複合樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンアクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられるが、本発明では、帯電安定性の向上の観点から、非晶質のポリエステル樹脂又は複合樹脂が好ましく、非晶質ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0058】
非晶質ポリエステル樹脂としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
【0059】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、式(I):
【0060】
【0061】
(式中、OR1及びR1Oはオキシアルキレン基であり、R1はエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表される化合物が好ましい。
【0062】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、低温定着性の観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0063】
他のアルコール成分としては、脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0064】
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸系化合物、芳香族ジカルボン酸系化合物、3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0065】
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、炭化水素基で置換されたコハク酸誘導体、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0066】
炭化水素基で置換されたコハク酸誘導体の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸、デセニルコハク酸、それらの酸無水物、それらの炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、低温定着性の観点から、ドデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸、又はそれらの酸無水物が好ましく、ドデセニルコハク酸無水物がより好ましい。
【0067】
コハク酸誘導体における炭化水素基の炭素数は、疎水性の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは16以下である。
【0068】
コハク酸誘導体の含有量は、カルボン酸成分中、疎水性の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
【0069】
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0070】
3価以上のカルボン酸系化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0071】
なお、アルコール成分とカルボン酸成分とともに、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いてもよい。PET、又はその一部の解重合により生成するエチレングリコールとテレフタル酸が原料モノマーとして、重縮合反応に供されポリエステル樹脂に取り込まれる。PETは、エチレングリコールとテレフタル酸の等モル重縮合物として、PETを構成するエチレングリコールとテレフタル酸をそれぞれアルコール成分とカルボン酸成分としてみなす。
【0072】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含有されていてもよい。
【0073】
カルボン酸成分のカルボキシ基のアルコール成分の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下である。
【0074】
非晶質ポリエステル樹脂のアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応条件は、好適な反応温度が好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下であること以外は、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの反応条件と同様である。
【0075】
前記ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを含有する複合樹脂において、ポリエステル樹脂については前記非晶質ポリエステル樹脂と同様であり、スチレン系樹脂の原料モノマーの好適な態様が異なる以外(両反応性モノマー、製造方法等)は、前記結晶性ポリエステル系樹脂としての複合樹脂と同様である。
【0076】
スチレン系樹脂は、前記結晶性ポリエステル系樹脂についての複合樹脂と同様に、スチレン化合物を含む原料モノマーの付加重合物である。
【0077】
スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、帯電安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0078】
また、スチレン系樹脂は、原料モノマーとしてアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでも良い。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
【0079】
スチレン系樹脂の原料モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
【0080】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、低温定着性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0081】
非晶質樹脂Aの軟化点は、帯電安定性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0082】
なお、非晶質樹脂Aは、低温定着性及び定着幅の観点から、軟化点の異なる樹脂からなるものであってもよい。2種の樹脂の軟化点の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは12℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0083】
軟化点が高い方の非晶質樹脂(樹脂AH)の軟化点は、定着幅の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0084】
また、軟化点が低い方の非晶質樹脂(樹脂AL)の軟化点は、帯電安定性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0085】
樹脂AHの樹脂ALに対する質量比(樹脂AH/樹脂AL)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、さらに好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下である。
【0086】
非晶質樹脂Aのガラス転移温度は、帯電安定性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
【0087】
非晶質樹脂Aの酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下である。
【0088】
非晶質樹脂Aの含有量は、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質樹脂Aの合計量中、低温定着性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは97質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0089】
結晶性ポリエステル系樹脂の非晶質樹脂Aに対する質量比(結晶性ポリエステル系樹脂/非晶質樹脂A)は、低温定着性の観点から、好ましくは3/97以上、さらに好ましくは4/96以上、さらに好ましくは5/95以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは30/70以下、より好ましくは25/75以下、さらに好ましくは20/80以下である。
【0090】
トナーにおいて、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質樹脂Aは結着樹脂として含有されている。
【0091】
結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質樹脂Aの合計含有量は、結着樹脂中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0092】
また、結着樹脂の含有量は、トナー中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0093】
4級アンモニウム塩化合物Xとしては、帯電安定性の観点から、高分子型の4級アンモニウム塩含有樹脂が好ましく、4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂がより好ましい。
【0094】
4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、スチレン単量体(M1)及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)との共重合体であることが好ましい。
【0095】
スチレン単量体(M1)は、スチレンであり、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等のスチレンの誘導体は含まない。
【0096】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、アルキル基の炭素数は4以上12以下が好ましく、これらのなかでは、ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0097】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)としては、式(II):
【0098】
【0099】
(式中、R2は水素原子又はメチル基、R3は炭素数が1以上5以下のアルキレン基、R4~R6は各々独立して炭素数が1以上5以下のアルキル基を示す)
で表される化合物が好ましい。
【0100】
式(II)において、R2としては、メチル基が好ましい。R3としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、これらの中ではエチレン基が好ましい。R4~R6としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられ、これらの中ではメチル基又はエチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0101】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中では、安価であることから、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0102】
4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂の製造方法としては、例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを常法に従って、パラトルエンスルホン酸アルキルエステルを用いて第4級化して、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)とした後、これとスチレン単量体(M1)及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)とを混合し、重合開始剤の存在下で共重合させる方法等が挙げられる。
【0103】
パラトルエンスルホン酸アルキルエステルとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸プロピル等が挙げられ、これらの中では、4級化が容易であることから、パラトルエンスルホン酸メチルが好ましい。
【0104】
パラトルエンスルホン酸アルキルエステルの使用量は、これと反応させるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート1モルに対して、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは1モル以上であり、そして、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.2モル以下である。
【0105】
共重合の方法としては、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等、いずれの方法を用いてもよいが、得られる共重合体の質量平均分子量の制御が比較的容易であること、また、反応操作が容易であることなどから、溶液重合が好ましい。
【0106】
溶液重合で使用する溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ノルマルブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤等が挙げられ、これらの中では、共重合体の溶解性の点から、ケトン系溶剤又はアルコール系溶剤が好ましい。
【0107】
重合開始剤としては、tert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ系開始剤等が使用される。
【0108】
重合開始剤の使用量は、単量体の合計100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0109】
4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂においては、スチレン単量体(M1)単位と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)単位とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級アンモニウム塩(M3)単位の合計量中の、スチレン単量体(M1)単位の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0110】
4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂においては、スチレン単量体(M1)単位と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)単位とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級アンモニウム塩(M3)単位の合計量中の、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)単位の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0111】
4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂においては、スチレン単量体(M1)単位と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)単位とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級アンモニウム塩(M3)単位の合計量中の、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級アンモニウム塩(M3)単位の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0112】
前記4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂の市販品としては、例えば、「FCA-201-PS」、「FCA-701-PT」(以上、藤倉化成社製)が挙げられる。
【0113】
4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂の軟化点は、トナーの粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点、及び低温定着性の観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下であり、そして、保存性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。
【0114】
4級アンモニウム塩含有スチレン系樹脂のガラス転移温度は、トナーの粉砕性を向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点、及び低温定着性の観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは80℃以下であり、そして、保存性の観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上である。
【0115】
他の4級アンモニウム塩化合物Xとしては、例えば、式(III):
【0116】
【0117】
(式中、R7~R9は各々独立して炭素数が1以上5以下のアルキル基、R10は炭素数が1以上5以下のアルキレン基を示す)
で表される4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。なお、式(III)で表される4級アンモニウム塩化合物の市販品としては、例えば、「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製、R7~R9:ブチル基、R10:メチレン基)がある。
【0118】
4級アンモニウム塩化合物Xの含有量は、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質樹脂Aの合計100質量部に対し、帯電安定性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、結着樹脂中への分散性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0119】
本発明のトナーは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の荷電制御剤を含有していてもよい。
【0120】
トナーは、結着樹脂及び4級アンモニウム塩化合物X以外に、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0121】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0122】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0123】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0124】
離型剤の融点は、帯電安定性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0125】
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と帯電安定性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0126】
トナーは、溶融混練法、乳化凝集法、懸濁重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよく、また、コア-シェル構造を有するトナーであってもよいが、帯電安定性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質樹脂Aを含む結着樹脂、4級アンモニウム塩化合物X、及び必要に応じて、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0127】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0128】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、環状シラザン、シリコーンオイル、アミノシラン、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0129】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0130】
トナー粒子と外添剤との混合による外添処理は、常法に従って行うことができ、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
【0131】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0132】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0133】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例0134】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定することができる。
【0135】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0136】
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0137】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0138】
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶質樹脂はアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に、結晶性樹脂はクロロホルムとジメチルホルムアミドの混合溶媒(クロロホルム:ジメチルホルムアミド=7:3(容量比))に、それぞれ変更する。
【0139】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン(株)製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0140】
〔樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤粒子、及び4級アンモニウム塩化合物粒子の体積中位粒径及びCV値〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」((株)堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに試料分散液をとり、蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる温度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を測定する。また、CV値は次の式に従って算出する。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0141】
〔樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液、及び4級アンモニウム塩化合物粒子分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」((株)ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、分散液の水分(質量%)を測定する。固形分濃度は次の式に従って算出する。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0142】
〔凝集粒子の体積中位粒径〕
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター(株)製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマン・コールター(株)製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター(株)製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0143】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0144】
〔トナーの円形度〕
下記の条件で、融着粒子の円形度を測定する。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス(株)製)
・分散液の調製:トナー粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製する。
・測定モード:HPF測定モード
【0145】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター(株)製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマン・コールター(株)製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター(株)製)
・分散液:電解液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王(株)製、HLB(グリフィン)=13.6〕を溶解して5質量%に調整したもの
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0146】
アルケニル無水コハク酸の製造例1
(1) プロピレンテトラマー(新日本石油(株)製、商品名:「ライトテトラマー」)を用いて、183~208℃の加熱条件で分留してアルキレン化合物(a)を得た。得られたアルキレン化合物(a)は、後述するガスクロマトグラフィー質量分析において、40個のピークを有していた。アルキレン化合物の分布は、特開2014-013384号公報のアルキレン化合物Aの質量分析ガスクロマトグラフィーによる分析に従って測定し、C9H18:0.5質量%、C10H20:4質量%、C11H22:20質量%、C12H24:66質量%、C13H26:9質量%、C14H28:0.5質量%(炭素数9~14のアルキレン化合物に相当するピーク数6)であった。
【0147】
(2) 1Lの日東高圧(株)製オートクレーブにアルキレン化合物(a)542.4g、無水マレイン酸157.2g、抗酸化剤「チェレックス-O」(SC有機化学(株)製、Triisooctyl phosphite)0.4g、及び重合禁止剤としてブチルハイドロキノン0.1gを仕込み、加圧窒素置換(0.2MPaG)を3回繰り返した。60℃で撹拌開始後、230℃まで1時間かけて昇温して6時間反応を行った。反応温度到達時の圧力は、0.3MPaGであった。反応終了後、80℃まで冷却し、常圧(101.3kPa)に戻して1リットル容の四つ口フラスコに移しかえた。180℃まで撹拌しながら昇温し、1.3kPaにて残存アルキレン化合物を1時間で留去した。ひきつづき、室温(25℃)まで冷却後、常圧(101.3kPa)に戻して目的物のアルケニル無水コハク酸A 406.1gを得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸Aの平均分子量は268であった。
【0148】
樹脂製造例1
表1に示すアルコール成分及びカルボン酸成分を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を添加し、8.0kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C1~C6)を得た。物性を表1に示す。
【0149】
樹脂製造例2
表1に示すアルコール成分を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、120℃に加熱した。120℃にて、表1に示すカルボン酸成分を添加し、さらに160℃まで加熱し、6時間重縮合反応させた。その後、表1に示すスチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー、及び重合開始剤を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、200℃まで8時間かけて昇温、8.0kPaにて30分反応させた。さらに、表1に示すエステル化触媒を添加し、1時間200℃にて重縮合反応させた後、8.0kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性複合樹脂(樹脂C7、C8)を得た。物性を表1に示す。
【0150】
【0151】
樹脂製造例3
表2に示す、アルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で6時間重縮合させた。その後、210℃まで降温し、表2に示す無水トリメリット酸を添加し、210℃で1時間反応させた後、さらに210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AH1)を得た。物性を表2に示す。
【0152】
樹脂製造例4
表2に示す、アルコール成分、無水トリメリット酸、セバシン酸及びフマル酸以外のカルボン酸成分、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で6時間重縮合させた。その後、160℃まで降温し、表2に示す、両反応性モノマー、スチレン系樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、200℃まで上昇させ、1時間10kPaで減圧した。開圧後、180℃まで降温し、表2に示す、無水トリメリット酸、セバシン酸、フマル酸、及び重合禁止剤を添加し、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃で1時間反応させた。さらに、210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AH2)を得た。物性を表2に示す。
【0153】
樹脂製造例5
表2に示す、アルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で6時間重縮合させた。その後、160℃まで降温し、表2に示す、両反応性モノマー、スチレン系樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、200℃まで上昇させ、1時間10kPaで減圧した。開圧後、180℃まで降温し、表2に示す無水トリメリット酸を添加し、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃で1時間反応させた。さらに、210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AL1)を得た。物性を表2に示す。
【0154】
樹脂製造例6
表2に示す、アルコール成分、カルボン酸成分、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で6時間重縮合させた。さらに235℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AL2、AL3)を得た。物性を表2に示す。
【0155】
樹脂製造例7
表2に示す、アルコール成分、無水トリメリット酸及びアジピン酸以外のカルボン酸成分、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で6時間重縮合させた。その後、210℃まで降温し、表2に示す無水トリメリット酸及びアジピン酸を添加し、210℃で1時間反応させた後、さらに210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AL4)を得た。物性を表2に示す。
【0156】
【0157】
実施例1~6、8~9、13~14及び比較例1、2〔溶融混練法〕
表3に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5質量部、離型剤「カルナウバワックスC1」(加藤洋行社製、融点:83℃)3質量部、離型剤「HNP-9」(日本精蝋社製、パラフィンワックス、融点:75℃)3質量部、及び高分子型の正帯電性荷電制御剤「FCA-201-PS」(藤倉化成社製、軟化点:119℃、ガラス転移温度:65℃)10質量部をヘンシェルミキサーにて混合した。
【0158】
得られた混合物を、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用い、スクリュー回転速度200r/min、バレル設定温度100℃で溶融混練し、溶融混練物を得た。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。
【0159】
得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、気流式分級機(日本ニューマチック社製)を用いて分級して、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー粒子を得た。
【0160】
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「TG820F」(キャボット社製、疎水化処理剤:HMDS及び環状シラザン、平均粒子径8nm)0.5質量部、及び疎水性シリカ「NA50Y」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル及びアミノシラン、平均粒子径40nm)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて回転数3000r/min(周速度32m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
【0161】
実施例7
正帯電性荷電制御剤として「FCA-201-PS」の代わりに、「BONTRON P-51」(オリヱント化学工業(株)製)10質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0162】
実施例10
溶融混練の際に、同方向回転二軸押出機の代わりに、連続式オープンロール型二軸混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製)を使用して溶融混練を行った以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。連続式オープンロール型二軸混練機は、ロール外径が0.14m、有効ロール長が0.8mのものであり、運転条件は、高回転ロール(前ロール)の回転数が75r/min(周速度33m/min)、低回転ロール(後ロール)の回転数が50r/min(周速度22m/min)、ロール間隙が0.1mmであった。ロール内の加熱及び冷却媒体温度は、高回転ロールの原料投入側の温度を140℃に設定し、混練物排出側の温度を110℃に設定し、低回転ロールの原料投入側の温度を65℃及び混練物排出側の温度を30℃に設定した。また、原料混合物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約5分間であった。
【0163】
実施例11〔乳化凝集法〕
<コア用樹脂粒子の水系分散液の調製>
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5リットル容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、樹脂AH2 128g(60質量部)と樹脂C1 22g(10質量部)を60℃にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加し、30分撹拌して、混合物を得た。続いて脱イオン水675gを77分かけて添加した。次いで、250r/minの撹拌を行いながら、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンを留去した後、水系分散液の固形分濃度を測定し、脱イオン水により、水系分散液の固形分濃度を20質量%に調整して、コア用樹脂分散液を得た。分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は200nm、CV値は24%であった。
【0164】
<シェル用樹脂粒子の水系分散液の調製>
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5リットル容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、樹脂AL4 150gを60℃にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加し、30分撹拌して、混合物を得た。続いて脱イオン水675gを77分かけて添加した。次いで、250r/minの撹拌を行いながら、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンと一部の水を留去した後、水系分散液の固形分濃度を測定し、脱イオン水により、水系分散液の固形分濃度を20質量%に調整して、シェル用樹脂分散液を得た。分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は110nm、CV値は20%であった。
【0165】
<4級アンモニウム塩化合物分散液の調製>
1リットル容のビーカーに、4級アンモニウム塩化合物である高分子型の正帯電性荷電制御剤「FCA-201-PS」(藤倉化成社製)100.0gと、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G-15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)133.3g、及び、脱イオン水268.5gを混合し、ホモミキサー「T.K.AGI HOMOMIXER 2M-03」(プライミクス(株)製)を用いて室温で、撹拌翼の回転速度8000r/minで1時間分散させた。その後、ホモジナイザー「Microfluidizer M-110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で12パス処理した。その後、200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が12質量%になるように脱イオン水を加えることにより、4級アンモニウム塩化合物分散液を得た。分散液中の4級アンモニウム塩化合物粒子の体積中位粒径(D50)は150nm、CV値は30%であった。
【0166】
<着色剤分散液の調製>
1リットル容のビーカーに、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))116.2g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G-15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)154.9g及び脱イオン水260gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより、着色剤分散液を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は118nm、CV値は27%であった。
【0167】
<離型剤分散液の調製>
フィッシャートロプシュワックス(日本精蝋(株)製、商品名:FNP0090、融点:90℃)50g、カチオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:サニゾールB50)5g及び脱イオン水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、固形分濃度20質量%の離型剤分散液を得た。分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は550nm、CV値は26%であった。
【0168】
<トナー粒子の調製>
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した3リットル容の4つ口フラスコに、前記コア用樹脂分散液500g、前記4級アンモニウム塩化合物分散液143g、前記着色剤分散液36g、前記離型剤分散液33g、及び15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液「ネオペレックスG-15」(花王(株)製、アニオン性界面活性剤)3.3gを、温度25℃で混合した。次に、得られた混合物を撹拌しながら、25℃で、硫酸アンモニウム40gを脱イオン水570gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.2に調整した溶液を10分かけて滴下した後、62℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D50)が6.9μmになるまで62℃で保持し、凝集粒子(I)の分散液を得た。
【0169】
得られた凝集粒子(I)の分散液の温度を62℃に保持しながら、シェル用樹脂分散液215gを、0.6mL/min(0.6g/min)の速度で滴下して、凝集粒子(II)の分散液を得た。凝集粒子(II)の体積中位粒径(D50)は7.0μmであった。
【0170】
得られた凝集粒子(II)の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(花王(株)製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)20g、脱イオン水280g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液40gを混合した水溶液を添加した。その後、80℃まで1時間かけて昇温し、80℃で30分保持した後、0.1mol/Lの硫酸水溶液10gを添加し、さらに80℃で15分保持した。その後、再度0.1mol/Lの硫酸水溶液15gを添加し、円形度が0.970になるまで80℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子(コアシェル粒子)の分散液を得た。
【0171】
得られたコアシェル粒子分散液を30℃に冷却し、分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機「DRV622DA」(ADVANTEC社製)を用いて、33℃で24時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の粒径は7.0μm、円形度は0.970であった。
【0172】
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「TG820F」(キャボット社製、疎水化処理剤:HMDS及び環状シラザン、平均粒子径8nm)0.5質量部、及び疎水性シリカ「NA50Y」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル及びアミノシラン、平均粒子径40nm)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて回転数3000r/min(周速度32m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
【0173】
実施例12〔懸濁重合法〕
300mL容のガラスビーカーに、スチレン77g、ブチルアクリレート13g、樹脂C1 10g、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5g、高分子型の正帯電性荷電制御剤「FCA-201-PS」(藤倉化成社製)10g、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋(株)製、パラフィンワックス、融点:75.5℃)6gを添加し、撹拌混合し、60℃に昇温して均一に溶解した。その後、重合開始剤「V-65」(和光純薬工業(株)製、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))4gを添加し、樹脂溶液を調製した。1リットル容のガラスビーカーに、脱イオン水150g、第三リン酸カルシウム(化学式:3[Ca3(PO4)2]・Ca(OH)2)10質量%スラリー「TCP-10・U」(太平化学産業(株)製)500g及びアニオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王(株)製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004gを添加し、撹拌して水系媒体を調製した。水系媒体を60℃に加温し、60℃を保ちながら、樹脂溶液を一気に加え、ホモミキサー「MARK II 2.5型」(プライミクス(株)製)で、12,000r/minにて4分間撹拌し、懸濁液を得た。
【0174】
懸濁液を、撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに移し、70℃、200r/minで撹拌しながら8時間重合した。その後、80℃に昇温し、減圧下で残存モノマーを留去した。撹拌を続けながら20℃まで冷却し、系内のpHが1以下になるまで塩酸を入れた。洗浄、乾燥を経てトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の粒径は7.0μmであった。
【0175】
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「TG820F」(キャボット社製、疎水化処理剤:HMDS及び環状シラザン、平均粒子径8nm)0.5質量部、及び疎水性シリカ「NA50Y」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル及びアミノシラン、平均粒子径40nm)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて回転数3000r/min(周速度32m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
【0176】
試験例〔トナーの帯電安定性〕
温度25℃、相対湿度50%の高温高湿条件下にて、トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業(株)製、平均粒子径90μm)19.4gとを50mL容のポリエチレン製の容器に入れ、ボールミルを用いて250r/minで混合し、以下の方法により、トナーの帯電量をQ/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
【0177】
60秒又は600秒の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。混合時間60秒後における帯電量と混合時間600秒後における帯電量の比率(混合時間60秒後における帯電量/混合時間600秒後の帯電量)を計算し、帯電安定性を評価した。結果を表3に示す。数値が大きいほど、帯電安定性に優れることを示す。
【0178】
【0179】
以上の結果より、エステル基濃度が高すぎる結晶性ポリエステル樹脂を含む比較例1及びエチレングリコールを用いていない結晶性ポリエステル樹脂を含む比較例2と対比して、実施例1~10、13、14のトナーは、帯電安定性が良好であることが分かる。また、実施例11、12の結果より、乳化凝集法や懸濁重合法による方法でも、帯電安定性に優れた本発明のトナーが得られることが分かる。