(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073396
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】スリットを有するバスケットを備える攪拌ミル
(51)【国際特許分類】
B02C 17/16 20060101AFI20240522BHJP
B02C 17/18 20060101ALI20240522BHJP
B02C 23/10 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B02C17/16 A
B02C17/18 Z
B02C23/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023194960
(22)【出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】10 2022 130 383.7
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508277243
【氏名又は名称】ネッツシュ-ファインマールテヒニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト グランドル
(72)【発明者】
【氏名】ラーズ ピーター バイランド
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー モッシュル
(72)【発明者】
【氏名】ウィタリ スデルマン
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063FF14
4D063FF29
4D063FF34
4D063GB02
4D063GB05
4D063GC17
4D067EE12
4D067EE17
4D067GB01
(57)【要約】
【課題】分離性能を更に向上させたスプリット管を提供する。
【解決手段】粉砕体を含む粉砕チャンバと、攪拌シャフトであり、粉砕チャンバ内にて水平攪拌シャフト軸線周りで回転し、相対回転不可能に接続されると共に、水平軸線方向において互いに間隔を置きつつ粉砕体を移動させる幾つかの粉砕部材、好適には粉砕ディスクを支持する攪拌シャフトとを備える攪拌ミルであって、攪拌シャフトは、出口側において、バスケットを有し、そのバスケットは、好適には、その外周に粉砕部材を有すると共に、スプリット管を支持する出口を包囲し、これによりバスケットの内面とスプリット管を支持する出口との間に分離チャンバが形成されている。バスケットは、粉砕体を分離チャンバから粉砕チャンバ内に戻すためのスリットを有し、これらスリットは、粉砕チャンバから離れるよう面するバスケットの自由前面に通じている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕体を含む粉砕チャンバ(2)と、
攪拌シャフト(3)であり、前記粉砕チャンバ(2)内にて水平攪拌シャフト軸線(4)周りで回転し、前記攪拌シャフト(3)に相対回転不可能に接続されると共に、水平軸線方向において互いに間隔を置きつつ前記粉砕体を移動させる幾つかの粉砕部材(5)を支持し、好適には粉砕ディスクを支持する、前記攪拌シャフト(3)と、
を備える攪拌ミル(1)であって、
前記攪拌シャフト(3)が、出口側において、バスケット(6)を有し、該バスケット(6)が、好適には、その外周に粉砕部材(18)を有すると共に、スプリット管を支持する出口(7)を包囲し、これにより前記バスケット(6)の内面と前記スプリット管を支持する出口(7)との間に分離チャンバ(9)が形成されている攪拌ミルにおいて、
前記バスケット(6)が、粉砕体を前記分離チャンバ(9)から前記粉砕チャンバ(2)内に戻すためのスリット(10)を有し、該スリット(10)が、前記粉砕チャンバ(2)から離れるよう面する前記バスケット(6)の自由前面(11)に通じており、前記スリット(10)における拡張及び/又は形状が、少なくとも局所的に変化することを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項2】
請求項1に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スリット(10)が、前記バスケット(6)を前記攪拌シャフト(3)と接続するホイールディスク(12)も通過し、これにより前記各スリット(10)が前記ホイールディスク(12)自体を介して前記粉砕チャンバ(2)とも接続されていることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スリット(10)が、前記バスケット(6)の自由端の側又は領域に形成された安定化リング(13)の下方にトンネルを形成していることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スリット(10)の主軸線(14)が、前記攪拌シャフト軸線(4)と平行に延びていることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項5】
請求項4に記載の攪拌ミル(1)であって、作業回転方向に進む前記スリットの側面(15)が、前記スリットを通る前記主軸線(14)の仮想半径に対して、0°~45°の迎え角(A)を有することを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項6】
バスケット(6)であって、好適には、その外周に粉砕部材(18)が設けられると共に、スプリット管を支持する出口(7)を包囲しているバスケットにおいて、
前記バスケット(6)が、スリット(10)を備え、該スリット(10)が、粉砕チャンバ(2)から離れるよう面する前記バスケット(6)の自由前面(11)に通じており、前記スリット(10)における拡張及び/又は形状が少なくとも局所的に変化することを特徴とする、バスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に係るスリットを有するバスケットを備える攪拌ミルと、請求項6の上位概念に係る対応のバスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
最初に、
図1に基づいて攪拌ミルの基本原理を説明する。
【0003】
図1は、水平攪拌シャフト3を備える攪拌ミル1を概略的に示す。粉砕容器16内に配置されると共に、一般に鋼球又はセラミック球として構成されている粉砕体については省略してある。
【0004】
攪拌ミル1の動作中、被粉砕材料は、攪拌ミル1の入口17を介して、粉砕容器16により包囲された粉砕チャンバ2内へ又は粉砕チャンバ2を通るようポンプで送られる。湿式粉砕の場合、被粉砕材料は、液体(主に水の形態)及び固体の懸濁液又は分散液である。他の場合、このような攪拌ミル1は、乾式粉砕に使用することもできる。この場合、例えば垂直シャフトを備える攪拌ミルとして設計することができ、この攪拌ミルを通って粉砕材料がガス状流体により主に下降流で運ばれる。
【0005】
最も広範な態様において、本発明は、両方のタイプの攪拌ミルに関する。本発明の使用は、水平攪拌シャフト3を備える攪拌ミルの場合に特に好適である。
【0006】
攪拌シャフト3に相対回転不可能に接続されると共に、粉砕ディスクとしても構成され、かつそのように称されることも多い粉砕部材5は、攪拌シャフト3の回転運動によって回転される。粉砕部材5を個々のピンの形態に構成することも本発明の一部として可能であり、以下において説明する。回転運動を生じさせるために、攪拌シャフト3は、例えば、ベルトドライブ102を介して電気モータ101によって駆動することができる。攪拌ミル1の駆動部は、粉砕容器16に隣接するハウジング103内に配置されることが多い。
【0007】
粉砕部材5が回転することにより、粉砕チャンバ2内に位置すると共に、粉砕部材5の近傍に位置する粉砕体は、粉砕容器16の周方向に連行される。移動した粉砕体は、頂点領域に到達すると直ぐに、2個の粉砕部材5の間の中央領域において、再び攪拌シャフト3方向に逆流する。これにより、2個の粉砕部材5の間で粉砕体の循環運動が生じる。
【0008】
粉砕チャンバ2を通って圧送された粉砕材料懸濁液における固体と粉砕体との間の衝突及びロールオーバーは、粉砕体の運動によって引き起こされる。これら衝突及びロールオーバーにより、粉砕材料懸濁液における固体から微粒子が分離し、従って攪拌ミル1の出口に到着する固体は、入口17に供給される固体よりも大幅に小さい。
【0009】
粉砕体が粉砕チャンバから放出されないことを保証するために、スクリーン又は好適にはスプリット管8の形状のスクリーン(以下、代表的に「スプリット管」と称する)が出口7の前に取り付けられ及び/又は出口7によって支持されることが一般的である。このスプリット管8の周囲には、スプリット管8を包囲するバスケット6が配置されている。バスケットは、供給ポンプの圧力によってスプリット管方向に押圧される傾向のある粉砕体により、損傷を与える粉砕体圧力がスプリット管に及ぶのを防止するよう機能する。
【0010】
ほとんどの場合、バスケット6は、出口7に面する攪拌シャフト7の自由端に相対回転不可能に取り付けられている。この場合、バスケットは、攪拌シャフト3と一緒に回転する。
【0011】
周方向におけるバスケット6とスプリット管8との間の領域は、分離チャンバ9を形成している。なぜなら、被粉砕材料又は粉砕材料懸濁液は、この場所で粉砕体から分離され、最終的にスプリット管8及び出口7を介して攪拌ミル1から再び放出されるからである。
【0012】
ただし、バスケット6は、原則的に、分離チャンバ9に入った粉砕体が、再び分離チャンバから出て粉砕チャンバ2内に戻ることができる場合にのみその機能を発揮することができる。なぜなら、そうでなければ、分離チャンバ9は直ぐに粉砕体で満たされ、それら粉砕体がスプリット管を塞ぎ、場合によっては早期に摩耗させるからである。
【0013】
このことを防ぐために、バスケット6には様々な開口104が設けられている。これら開口104により、粉砕体は、分離チャンバ9から粉砕チャンバ2内により容易に再び通過することができる。
図2は、このように設計された攪拌ミルのバスケット6を示し、このバスケット6は、本発明に至るまで、試験対象又は比較対象として機能したものである。
図2は、上述した粉砕容器16内における粉砕体及び/又は粉砕材料流を概略的に示す。
図2に示すように、バスケット6は、好適には、やはりその外側ジャケット表面上において、バスケットと粉砕容器16の内壁との間の領域で粉砕体の運動又は旋回を引き起こす粉砕部材5を支持している。粉砕体のこの旋回により、分離チャンバ9に位置する粉砕体が開口104を通って再び粉砕チャンバ2に逃れやすくなる。
【0014】
しかしながら、本発明者らは、
図2に示すバスケット構造の場合においても、分離チャンバ9内に進入した粉砕体がスプリット管8に強固に付着し、スプリット管8を塞ぐか、又は不必要な摩耗を引き起こす傾向が依然として存在することを見出した。これらは両方とも、スプリット管8の分離効率に悪影響を及ぼす。この傾向は、
図2におけるスプリット管8方向を指す矢印によって概略的に示唆されている。粉砕体は開口104を通って分離チャンバ9から放出することもできるが、粉砕体はむしろスプリット管8に向けて移動する傾向がある。
【0015】
特許文献1(独国特許第4412408号明細書)に記載されている攪拌ミルは、粉砕補助体で部分的に充填できると共に、粉砕材料が主に軸線方向に流れることができる粉砕チャンバを包囲する粉砕容器と、軸線方向に前後に配置された攪拌要素を支持する攪拌シャフトと、粉砕容器の粉砕材料出口(48)の上流に接続された出口本体と、出口本体の直前に配置され、軸線方向通路を含み、更にはその有効領域に到達した粉砕補助体を好適には半径方向外方に向けて搬送する予備分級ディスクを有する予備分級手段とを備え、その攪拌ミルにおいて、予備分級ディスクが、同時に回転ケージの一部であり、この回転ケージが、出口本体をほぼ包囲し、これにより粉砕材料が予備分級ディスクを通って出口本体に到達可能であることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した背景事情に鑑み、本発明の課題は、スプリット管の分離性能を更に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、この課題は、第1主請求項の特徴によって解決される。
【0019】
この目的のために、粉砕体を含む粉砕チャンバと、その粉砕チャンバ内にて水平攪拌シャフト軸線周りで回転する攪拌シャフトとを備える攪拌ミルが想定される。攪拌シャフトは、相対回転不可能に接続され、水平軸線方向において互いに間隔を置く幾つかの粉砕部材を支持している。これら粉砕部材は、好適には、粉砕ディスクの形状で形成されている。攪拌ミルの動作中、これら粉砕部材は、上述した粉砕体を移動させる。
【0020】
出口側において、攪拌シャフトは、バスケットを有する。このことは、バスケットが好適には攪拌シャフトに直接的に追従し、この攪拌シャフトに直接的又は間接的に接続されていることを意味する。ただし、攪拌シャフト及びバスケットは、好適には、互いに一体的に形成されておらず、従って攪拌シャフト及びバスケットは2個の個別の部品であり、攪拌シャフトがバスケットの機能を直接的に担うことはない。更に、バスケットの長さは、好適には、攪拌シャフトの長さの最大で3分の1、特に好適には最大で4分の1である。
【0021】
バスケットの外周には、好適には、付加的な粉砕部材がちりばめられている。上述したように、これにより、バスケットの外周と粉砕容器の内壁との間における半径方向円周領域において、付加的な粉砕効果を得ることができるだけではない。特にこれにより、分離チャンバから粉砕体が再び出ることを促進する粉砕体の旋回運動も生じる。バスケット上のこれら粉砕部材は、好適には、攪拌シャフトの粉砕部材のようには構成されていない。攪拌シャフトの粉砕部材が好適には粉砕ディスクの形状であるのに対して、バスケットの粉砕部材は好適にはピンの形状である。
【0022】
意図された動作中、このバスケットは、少なくとも部分的に出口を包囲しており、また出口は、スプリット管を支持している。バスケットは、その全長にわたってスプリット管を包囲するのが好適である。これら実施形態の一部として、狭義の「スプリット管」は、好適には、様々なスリット及び/又は他の形状の開口を有する管のことであるが、広義の「スプリット管」という用語は、任意のタイプのスクリーン体を含む。
【0023】
前の段落で既に述べたように、バスケットの包囲するような配置により、バスケットの内面と出口の外面又は出口によって支持されるスプリット管の外面との間に自由領域が形成される。この領域は、「分離チャンバ」と称される。
【0024】
本発明に係る攪拌シャフトは、上述したバスケットが粉砕体を分離チャンバから粉砕チャンバに戻すためのスリットを備えることを特徴とする。これらスリットは、粉砕チャンバから離れるよう面するバスケットの自由前面に通じるよう設計されている。
【0025】
これは、本発明者らの以下の洞察に基づいている。即ち、
図2において、バスケットの自由前面の直ぐ後ろの入口領域では、分離チャンバに入るために流れが主に水平方向に生じるが、過度に顕著な狭窄部が形成されている。このことは、
図2に示すバスケットが、その領域において、周方向に閉じられた環状構造を形成しているからである。
【0026】
粉砕体は、理論的には狭窄部を流れるときにより大きな流速を達成し、それは実際に望ましいことではあるが、特に軸線方向に連行されると共に、バスケットから出るための選択肢が限られている。従って、粉砕体は、バスケット及び/又はスプリット管に衝突し、これにより大幅に減速されることが多い。更に、狭窄部は、しばしば極めて狭いので、粉砕体によっては、分離チャンバへの入口において、互いに衝突し、バスケット及び/又はスプリット管に衝突し、従って既に最初に運動エネルギーを失う。
【0027】
粉砕体が最終的に開口の下方のスプリット管における外周面に到達しても、スプリット管の吸引を回避すると共に、開口を利用して粉砕チャンバ内に再び戻るための運動エネルギーが小さ過ぎることが多い。従って、粉砕体の一部が停止し、スプリット管の外周面上に堆積する。これにより、粉砕体の動態が更に低下する。不利な条件下であれば、スプリット管は、一定の動作時間後に塞がれる恐れがある。
【0028】
上述した「粉砕チャンバ」とは、粉砕容器の内部において入口と出口との間にあり、粉砕体及び/又は粉砕材料又は粉砕材料懸濁液で充填され、更にバスケットに包囲されていないチャンバのことである。即ち、粉砕チャンバは、粉砕容器の内部から、その中を通過する内蔵構成要素及び分離チャンバを除いた部分のことである。
【0029】
このように、本発明に従って形成されたスリットにより、分離チャンバへの流入の過程で通過するバスケットの内面と出口の外面又はスプリット管の外面と間の半径方向ギャップが少なくとも局所的に大幅に拡大される。バスケットの入口における粉砕体及び/又は被粉砕材料又は粉砕材料懸濁液の「蓄積」が低減され及び/又は粉砕体がスクリーンに向けてガイドされることが防止され、粉砕体は、少なくとも部分的に分離チャンバ内へ遥かに容易に、かつより大きな動態で進入することができる。これにより、当該箇所で望ましい流れが生じ、従って粉砕体がむしろスプリット管から遠ざけられると共に、分離チャンバからスリットを介して粉砕チャンバ内へより迅速に及び/又はより容易に再び運ばれる。
【0030】
これにより、粉砕体は、より迅速に及び/又はスプリット管にとってより有利に粉砕チャンバ内へ再びガイドされるので、スプリット管の閉塞及び/又は摩耗が低減される。粉砕体がスリットから直接的に入る領域(特に、バスケットの外周と粉砕容器の内壁との間の領域)において、本質的に更なる乱流が生じ、周囲の粉砕体床が活性化される。
【0031】
従って、一般に、攪拌ミルの粉砕効果が高まり、スプリット管が動作中に被る摩耗が低減され、更にスプリット管内又はスプリット管上に沈降する粉砕体が減少する。このように、攪拌ミルは、バスケットの寿命が延びると共に、メンテンナンスの手間が減りつつ、より大きなスループットで動作することができる。
【0032】
「スリット」は、全体的に細長形状を有するアパーチャ及び/又は開口及び/又は切り欠きであり、これらはバスケット内又はバスケット上に設けられている。この場合、本発明に係るスリットは、少なくとも1つの領域において、粉砕チャンバへのバスケットの外面において開口を提供するが、好適にはスリットの全長にわたってではない。従って、材料は、スリットに対して局所的に隣接することができ、これによりスリットがバスケットの材料によっていわば「被覆され」、「裏打ちされ」及び/又は包囲されている。
【0033】
更に、本発明に係るスリットは、好適には、その全長にわたって同じ断面を有するのではなく、拡張及び/又は形状が局所的に変化する。
【0034】
バスケットにおけるスリットの上述した「被覆」に関連して付加的に述べておくべきことは、本発明に係るバスケットの各スリットが、粉砕チャンバから離れるよう面する側において、半径方向外方、従ってスリットの上方に直接的かつ局所的に隣接する材料を有するよう構成されることが好適だということである。従って、スリットは、「被覆される」よう構成され、これによりその領域に「端部リング」が形成され、この端部リングによって好適には連続的な周面が形成される。
【0035】
このことは、バスケットを安定させると共に、振動を回避するために不可欠である。従って、各スリットは、端部リングの下方にトンネルを形成している。
【0036】
本発明の有効性又は使用性が更に向上するよう設計するための多くの選択肢が存在する。
【0037】
本発明の好適な一実施形態において、スリットは、バスケットを攪拌シャフトと接続するホイールディスクも通過し、これにより各スリットがホイールディスク自体を介して粉砕チャンバとも接続されている。これにより、粉砕体は、ホイールディスクの反対側の粉砕チャンバ内における粉砕体の動態に促進されつつ、ホイールディスクすら介して分離チャンバから粉砕チャンバへ到達することができる。従って、分離チャンバからの粉砕体の放出が更に容易になる。
【0038】
更に、特に好適には、スリットは、粉砕チャンバから離れるよう面するバスケットの自由端側又はその自由端領域に形成された安定化リングの下方にトンネルを形成している。この安定化リングは、好適には、バスケットの残部直径よりも更に半径方向外方に向けて粉砕チャンバ内に突出するよう構成され、これにより一方ではバスケットの安定性が増加し、他方では流れのガイド性又は動態が更に改善される。
【0039】
好適な更なる一実施形態において、スリットの主軸線は、攪拌シャフト軸線と完全に又は少なくとも本質的に平行に延びている。これは、これら主軸線が攪拌シャフト軸線から最大10°、好適には最大5°だけずれている場合に達成される。この場合、主軸線は、スリットの全長、従ってスリットの拡張の全長に沿うと共に、好適にはバスケットの長手方向軸線とも平行に延びており、スリットの中心に位置し、従ってスリットの幅の半分の箇所に位置している。
【0040】
更に、特に好適には、作業回転方向に進むスリットの側面は、スリットを通る主軸線の仮想半径に対して、0°~45°の迎え角を有する。これにより、バスケット上にいわば「すくい効果」を有する表面が形成され、その結果粉砕体が偏向されて更に良好に放出される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】従来技術に係る攪拌ミルを示す側断面図である。
【
図2】本出願人の考慮による開口を有するバスケットを備える攪拌ミルにおける粉砕容器を示す側断面図である。
【
図3】本発明に係る例示的な第1実施形態のバスケットを示す側面図である。
【
図4】
図3における本発明に係る例示的な第1実施形態のバスケットを示す三次元図である。
【
図5】
図3における本発明に係る例示的な第1実施形態のバスケットを示す正面図である。
【
図6】安定化リングを備える本発明に係る例示的な第2実施形態のバスケットを示す三次元図である。
【
図7】
図6における安定化リングを備える本発明に係るバスケットの例示的な実施形態を示す側面図である。
【
図8】
図6における安定化リングを備える本発明に係るバスケットの例示的な実施形態を、スプリット管を支持する出口を包囲する状態で示す側断面図である。
【
図9】他の安定化リング形状を備える本発明に係るバスケットの例示的な第3実施形態を、攪拌ミルの粉砕容器と共に示す側断面図である。
【
図10】本発明に係る例示的な第4実施形態のバスケットを示す側面図である。
【
図11】
図10における本発明に係る例示的な実施形態のバスケットを示す三次元図である。
【
図12】本発明に係る例示的な第5実施形態のバスケットを示す正面図である。
【
図13】
図12における本発明に係る例示的な実施形態のバスケットを示す三次元図である。
【
図14】本発明に係る例示的な第6実施形態のバスケットを示す正面図である。
【
図15】
図14における本発明に係る例示的な実施形態のバスケットを示す三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
最初に、
図3~
図5は、本発明に係るバスケット6の好適かつ例示的な第1実施形態を異なる図で示す。この場合、バスケット6の外周には、付加的な粉砕部材18が設けられ(ちりばめられ)、これら粉砕部材18は、バスケット6の外周にわたって規則的にピンの形状で攪拌シャフト軸線4と平行に延在する水平列をなすよう取り付けられている。同様に、スリット10もバスケット6の外周に規則的に分布し、上述したように、粉砕チャンバ2に面するホイールディスク12と、粉砕チャンバ2から離れるよう面する前面11と交差している。上記の列の1つが個々の各スリット10に割り当てられておらず、直接的に隣接するスリットが存在し、その接続領域が上記の列の何れも支持しない構成が有利な場合がある。前面11に面する側において、スリット10は、端部リング19の下方にトンネルを更に形成しており、この場合に端部リング19は、周方向に閉じられるよう形成されている。
【0043】
明瞭性を高める見地から、各図の全てのスリット及び全ての粉砕部材に参照符号が付されているわけではなく、1つのスリット及び1個又は2個の粉砕部材にのみ参照符号が例示的に付されている。
【0044】
図5は、バスケット6の正面図を示し、この場合は粉砕チャンバから離れるよう面する前面11を示す。図示のスリットの迎え角Aにより、作業回転方向又はその仮想上延長部に進むスリット10の側面15は、バスケット6の外側輪郭に対して半径方向に垂直ではない。この迎え角Aは、0°~45°の間にあるのが好適である。明瞭性を高める見地から、バスケット6の外側輪郭に対して半径方向に垂直な仮想上スリットが破線で付加的に示されている。このような仮想上スリットの主軸線から、迎え角Aに対応する角度が本発明のスリット10の主軸線14までプロットされている。
【0045】
図6~
図8は、バスケット6の好適な第2実施形態を示し、この場合にバスケット6は、増大した外径を有する安定化リング13を支持している。図示のスリット10は、やはり前面11に面する側において端部リング19の下方に更にトンネルを形成し、この場合に端部リング19は、安定化リング13の一部である。図示の実施形態におけるスリット10も、好適には、ホイールディスク12及び粉砕チャンバに面する前面11を通るよう延在している。図示のバスケット6にも、付加的な粉砕部材18が設けられており、この場合も上述したことが当てはまる。安定化リング自体にも、付加的な粉砕部材18、特に粉砕体を周方向に連行する突出ピン又は他の攪拌器を設けることができる。安定化リングのピンは、好適には、上述したバスケットの他のピンと整列するよう、主に攪拌シャフト軸線4と平行に配置されている(
図6及び
図7参照)。
【0046】
図8は、明瞭性を高める見地から、このように形成されたバスケット6をその好適な設置位置で示し、その設置位置において、バスケットは、スプリット管8を支持する出口7を包囲している(出口7とオーバーラップしている)。出口7が狭窄部(図示のように「スプール状」に設計されると共に、任意的にランイン斜面及びランオフ斜面を含む)を有し、その狭窄部が、分離チャンバ9への流入が生じるスリットを拡大するよう配置されれば有利であり得る。このような狭窄部が、本発明に係るスリット又は開口とは対照的に周方向にいかなる「すくい」効果を生じず、従って異なる力学を引き起こすとしても、狭窄部は、特に本発明に係るスリット又は開口との相乗的協働により、本発明に従って達成すべき効果を強化するのに役立ち得る。
【0047】
最後に、
図9は、バスケット6の好適な更なる実施形態を示し、この場合にバスケット6は、やはり安定化リング13を支持しているが、完全に円筒部分の形状を有する。図示のスリット10は、安定化リング13全体の下方にトンネルを形成し、従って安定化リングがほぼ同時に端部リングとしても機能する。
図9は更に、攪拌ミル1の粉砕容器16内における流れ挙動を概略的に示す。ここで、
図1及び
図2を参照しつつ「背景技術」で説明した攪拌ミルの一般的な動作モードを参照する。バスケット6領域に至るまでの基本的な機能及び流れ挙動はそれぞれ同じ又は同様であり、従って説明は省略する。しかしながら、
図9に示すバスケット6は、ホイールディスク12と、粉砕チャンバから離れるよう面する前面11と交差するスリット10を備える。これにより、粉砕体及び/又は粉砕材料懸濁液は、分離チャンバ9内により容易に入ることができ、特に粉砕体は、それによって形成された流れによりスリットを通って分離チャンバ9から粉砕チャンバ2内に再び放出され、この放出は、部分的にスリットを有するホイールディスク12を介した粉砕チャンバへの付加的な接続によっても容易になる。このように、粉砕体は、スプリット管8又はスプリット管を支持する出口7から遠ざけられ、分離チャンバ9から放出された後、粉砕チャンバ2内で粉砕効果の増加をもたらす。
【0048】
更に、
図10及び
図11は、スリット10及び付加的な粉砕部材18を備えるバスケット6の好適な更なる実施形態を示し、この場合にバスケット6の外側輪郭は、円錐台の形状に形成されている。この設計により、(
図9の実施形態とは対照的に)円錐構造上を流れる際に流れ障害が回避され、バスケット上を流れる過程で連続的に増加する動態が達成される。同時に、円錐構造は、その自由端領域において、一体的な安定化リングをほぼ形成し、その領域においては急激な狭窄は起こらない。図示のスリット10も、周方向に閉じた端部リング19の下方にトンネルを形成している。
【0049】
図11に明瞭に示すように、バスケットは、その内側に円筒状の内周ジャケット面を形成し、従って特に分離チャンバ9が(バスケットの自由前面から始まって)円錐状にテーパ付けされていない。即ち、円錐状の分離チャンバの場合、円錐状の内側プロファイルに起因し、粉砕体が分離チャンバ内に入った後に詰まりを生じるリスクが存在するという事実があるので非生産的であろう。
【0050】
図12及び
図13は、バスケット6の好適な更なる実施形態を示す。この実施形態においても、安定化リング13が設けられ、スリット10が端部リング19の下方にトンネルを形成している。ただし、図示のスリット10は、円形の孔によってのみ前面11を通過するよう延在しているか又は設計されている。
【0051】
図14及び
図15は、バスケット6の好適な更なる実施形態を示す。この実施形態においても、安定化リング13が設けられ、スリット10が端部リング19の下方にトンネルを形成している。ただし、図示のスリット10は、前面11領域又は前面11に面する側において、スリット10の直下に材料が設けられた領域を有するよう延在するか又は設計され、これによりスリット10が局所的にいわば「裏打ち」されている。
【符号の説明】
【0052】
1 攪拌ミル
2 粉砕チャンバ
3 攪拌シャフト
4 攪拌シャフト軸線
5 攪拌シャフトにおける粉砕部材(粉砕ディスク)
6 バスケット
7 出口
8 スプリット管
9 分離チャンバ
10 スリット
11 (粉砕チャンバから離れるよう面する)前面
12 ホイールディスク
13 安定化リング
14 スリットの主軸線
15 スリットの側面
16 粉砕容器
17 入口
18 バスケット上の粉砕部材
19 端部リング
101 電気モータ
102 ベルトドライブ
103 ハウジング
104 開口
A 迎え角
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕体を含む粉砕チャンバ(2)と、
攪拌シャフト(3)であり、前記粉砕チャンバ(2)内にて水平攪拌シャフト軸線(4)周りで回転し、前記攪拌シャフト(3)に相対回転不可能に接続されると共に、水平軸線方向において互いに間隔を置きつつ前記粉砕体を移動させる幾つかの粉砕部材(5)を支持し、好適には粉砕ディスクを支持する、前記攪拌シャフト(3)と、
を備える攪拌ミル(1)であって、
前記攪拌シャフト(3)が、出口側において、バスケット(6)を有し、該バスケット(6)が、好適には、その外周に粉砕部材(18)を有すると共に、スプリット管を支持する出口(7)を包囲し、これにより前記バスケット(6)の内面と前記スプリット管を支持する出口(7)との間に分離チャンバ(9)が形成されている攪拌ミルにおいて、
前記バスケット(6)が、粉砕体を前記分離チャンバ(9)から前記粉砕チャンバ(2)内に戻すためのスリット(10)を有し、該スリット(10)が、前記粉砕チャンバ(2)から離れるよう面する前記バスケット(6)の自由前面(11)に通じており、前記スリット(10)における拡張及び/又は形状が、少なくとも局所的に変化することを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項2】
請求項1に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スリット(10)が、前記バスケット(6)を前記攪拌シャフト(3)と接続するホイールディスク(12)も通過し、これにより前記各スリット(10)が前記ホイールディスク(12)自体を介して前記粉砕チャンバ(2)とも接続されていることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スリット(10)が、前記バスケット(6)の自由端の側又は領域に形成された安定化リング(13)の下方にトンネルを形成していることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スリット(10)の主軸線(14)が、前記攪拌シャフト軸線(4)と平行に延びていることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項5】
請求項4に記載の攪拌ミル(1)であって、作業回転方向に進む前記スリットの側面(15)が、前記スリットを通る前記主軸線(14)の仮想半径に対して、0°~45°の迎え角(A)を有することを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項6】
バスケット(6)であって、好適には、その外周に粉砕部材(18)が設けられると共に、スプリット管を支持する出口(7)を包囲しているバスケットにおいて、
前記バスケット(6)が、スリット(10)を備え、該スリット(10)が、粉砕チャンバ(2)から離れるよう面する前記バスケット(6)の自由前面(11)に通じており、前記スリット(10)における拡張及び/又は形状が少なくとも局所的に変化することを特徴とする、バスケット。
【外国語明細書】