(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073426
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルスの肝臓特異的向性
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20240522BHJP
C12N 15/35 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/35
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024020029
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2020563602の分割
【原出願日】2019-05-10
(31)【優先権主張番号】62/670,543
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/841,179
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511140770
【氏名又は名称】マサチューセッツ アイ アンド イヤー インファーマリー
(71)【出願人】
【識別番号】516106623
【氏名又は名称】ザ スケペンス アイ リサーチ インスティテュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンベルゲ,ルク エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ポーリーン
(72)【発明者】
【氏名】ティッパー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ウンズ,カルメン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,エリック
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アデノ随伴ウイルス(AAV)の組織向性、例えば、肝臓向性を変更または変化させるための組成物および方法を提供する。
【解決手段】以下からなる群から選択されるカプシドタンパク質を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV):a)その肝臓トグル領域においてAAV3B-VR1(SQSGASNDN)を含む改変を含むAAV9カプシドタンパク質;b)その肝臓トグル領域においてAAV3B-VR1(SQSGASNDN)を含む改変を含むAAV80L65カプシドタンパク質;c)その肝臓トグル領域においてAAV9-VR1(NSTSGGSSNDN)を含む改変を含むAAV80L65カプシドタンパク質;及びd)S268T改変を含むAAV3Bカプシドタンパク質。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの組織向性を変更する方法であって、
Anc80(配列番号1)のカプシドタンパク質における266位に対応するか、また
はAnc80(配列番号1)のカプシドタンパク質における168位に対応する、AAV
カプシドタンパク質内のアミノ酸位置を位置づけるステップと、
Anc80(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における266位に対応する位置
づけられた位置の天然に存在するアミノ酸を、グリシン(G)アミノ酸残基と置き換えて
、得られるAAVベクターの肝臓向性を向上させるか、もしくはアラニン(A)アミノ酸
残基と置き換えて、得られるAAVの肝臓向性を低下させるステップ、または
Anc80(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における168位に対応する位置
づけられた位置の天然に存在するアミノ酸を、アルギニン(R)アミノ酸残基と置き換え
て、得られるAAVベクターの肝臓向性を向上させるか、もしくはリジン(K)アミノ酸
残基と置き換えて、得られるAAVの肝臓向性を低下させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
Anc80(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における266位に対応する位置
づけられた位置の天然に存在する前記アミノ酸をGアミノ酸残基と置き換えて、得られる
AAVベクターの肝臓向性を向上させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Anc80(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における266位に対応する位置
づけられた位置の天然に存在する前記アミノ酸をAアミノ酸残基と置き換えて、得られる
AAVベクターの肝臓向性を低下させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Anc80(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における168位に対応する位置
づけられた位置の天然に存在する前記アミノ酸をRアミノ酸残基と置き換えて、得られる
AAVベクターの肝臓向性を向上させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Anc80(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における168位に対応する位置
づけられた位置の天然に存在する前記アミノ酸をKアミノ酸残基と置き換えて、得られる
AAVの肝臓向性を低下させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記置き換えるステップが、部位特異的変異誘発を使用して実施される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記置き換えるステップが、現存の、またはde novo合成したDNAの制限分解
およびライゲーションにより実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記置き換えるステップが、現存の、またはde novo合成したDNAの相同性に
よる会合により実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記位置づけるステップが、シーケンシングすることにより実施される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アデノ随伴ウイルス(AAV)の肝臓向性のレベルをスクリーニングする方法であって
、
AAVカプシドタンパク質をコードする核酸をシーケンシングするステップと、
Anc80(配列番号1)のカプシドタンパク質における266位に対応する前記AA
Vカプシドタンパク質内のアミノ酸位置、またはAnc80(配列番号1)のカプシドタ
ンパク質における168位に対応する前記AAVカプシドタンパク質内のアミノ酸位置を
位置づけるステップと、
Anc80(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における266位に対応する位置
づけられた位置にGアミノ酸残基もしくはAアミノ酸残基を有するか、またはAnc80
(配列番号1)の前記カプシドタンパク質における168位に対応する位置づけられた位
置にRアミノ酸残基もしくはKアミノ酸残基を有する、AAVカプシドタンパク質を同定
するステップと
を含み、Anc80(配列番号1)のカプシドタンパク質における266位に対応する位
置づけられた位置のGアミノ酸残基、またはAnc80(配列番号1)のカプシドタンパ
ク質における168位に対応する位置づけられた位置のRアミノ酸残基が、肝臓向性を示
すAAVを示し、Anc80(配列番号1)のカプシドタンパク質における266位に対
応する位置づけられた位置のAアミノ酸残基、またはAnc80(配列番号1)のカプシ
ドタンパク質における168位に対応する位置づけられた位置のKアミノ酸残基が、肝臓
向性をほとんど提示しないか、もしくはまったく提示しないAAVを示す、方法。
【請求項11】
266位のX3が、GまたはAから選択され、168位のX1が、RまたはKから選択
される、配列番号1[Anc80]に示す配列を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項12】
配列番号2[Anc80L65]、配列番号3[Anc80L65 G266A]、配
列番号4[AAV9 G267A]、配列番号5[AAV9 G267A S269T]
、配列番号6[AAV9 Anc80L65-VRI]、配列番号7[AAV9 Anc
80L65 G266A-VRI]、配列番号8[AAV3B A266G]、配列番号
9[AAV3B A266G S267 N268T]、配列番号10[AAV3B G
265 A266A]、配列番号11[AAV3B G265 A266G]、配列番号
12[AAV3B G265 A266A S268T]、配列番号13[AAV3B
G265 A266G S268T]、配列番号14[AAV3B AAV9-VRI]
、配列番号15[AAV3B Anc80L65-VRI]、配列番号16[AAV3B
Anc80L65 G266A-VRI]、および配列番号17[Anc80L65
R168K]からなる群から選択される配列を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項13】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの組織向性を変更する方法であって、
AAVカプシドタンパク質内の
図14に定義する肝臓トグル領域を位置づけるステップ
と、
天然に存在する肝臓トグル領域を、異種血清型由来の肝臓トグル領域またはde no
vo由来の配列と置き換えて、得られるAAVベクターの肝臓向性を向上させるか、また
は肝臓向性を低下させるステップと
を含む、方法。
【請求項14】
異種またはde novo由来の前記肝臓トグル領域が、Anc80(配列番号1)の
カプシドタンパク質における266位に対応するAAVカプシドタンパク質内の位置にG
アミノ酸残基を含む場合、得られるAAVベクターの肝臓向性が、向上する、請求項13
に記載の方法。
【請求項15】
異種またはde novo由来の前記肝臓トグル領域が、Anc80(配列番号1)の
カプシドタンパク質における266位に対応するAAVカプシドタンパク質内の位置にA
アミノ酸残基を含む場合、得られるAAVベクターの肝臓向性が、低下する、請求項13
に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月30日出願の米国特許仮出願第62/841,179号およ
び2018年5月11日出願の米国特許仮出願第62/670,543号に対する優先権
を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、アデノ随伴ウイルス(AAV)の組織向性の変更、および詳細には
、AAVの肝臓向性の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルス(Parvoviridae)の科に属するディ
ペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)属に属する、小型のウイルスである。この
ウイルスは、複製欠損のエンベロープを有しないウイルスであり、感染するが、ヒトおよ
びある特定の霊長類種において疾患を生じることは知られていない。AAVは、分裂およ
び静止細胞の両方に感染し、天然のウイルスでは、ウイルスが有する遺伝子の宿主ゲノム
への組込みが生じ得る場合があるが、宿主細胞のゲノムに組み込まれずに染色体外の状態
で存続することができる。このような特徴により、AAVは、ウイルスベクターとしての
遺伝子治療における使用の候補となっている。しかし、ある特定のAAV血清型は、治療
する疾患に応じて、望ましい場合も望ましくない場合もある肝臓向性を示す。
【0004】
AAV肝臓向性が、どのように決定されるかを理解し、この情報に基づいてAAVの向
性を操作可能とすることは、有益である。
【発明の概要】
【0005】
AAVの組織特異性、すなわち、組織向性は、カプシド血清型により決定され、本明細
書に記載する方法および組成物は、特異性を有する特定のAAVの組織向性を変更して、
変更されたこのようなAAVにより送達される治療を改善することを可能とする。例えば
、AAVの肝臓向性を変更または変化させることは、例えば、肝臓が所望の標的である場
合、例えば、天然の肝臓向性を向上させることにより、また、肝臓が所望の標的ではない
場合、例えば、天然の肝臓向性を低下させることにより、有益となり得る。例えば、この
ウイルスを肝臓(または非肝臓臓器)の細胞に、より効果的に送達し、より効率的にトラ
ンスフェクトする場合、より低用量の所与のAAVを対象に投与することができる。
【0006】
一態様において、本開示では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの組織向性を変
更する方法を提供する。このような方法は、Anc80(配列番号1)のカプシドタンパ
ク質における266位に対応するAAVカプシドタンパク質内のアミノ酸位置を位置づけ
るステップと、位置づけられた位置の天然に存在するアミノ酸を、グリシン(G)アミノ
酸残基と置き換えて、得られるAAVベクターの肝臓向性の向上をもたらすか、またはア
ラニン(A)アミノ酸残基と置き換えて、得られるAAVの肝臓向性を低下させる、すな
わち、肝臓の脱標的化をもたらすステップとを典型的に含む。
【0007】
一部の実施形態において、このような方法は、位置づけられた位置の天然に存在するア
ミノ酸をGアミノ酸残基と置き換えて、得られるAAVベクターの肝臓向性の向上、例え
ば、肝臓での濃縮をもたらすステップを含む。一部の実施形態において、このような方法
は、位置づけられた位置の天然に存在するアミノ酸をAアミノ酸残基と置き換えて、得ら
れるAAVの肝臓向性の低下、例えば、肝臓の脱標的化をもたらすステップを含む。
【0008】
別の態様において、本開示では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの組織向性を
変更する方法を提供する。このような方法は、Anc80(配列番号1)のカプシドタン
パク質における168位に対応するAAVカプシドタンパク質内のアミノ酸位置を位置づ
けるステップと、および位置づけられた位置の天然に存在するアミノ酸を、アルギニン(
R)アミノ酸残基と置き換えて、得られるAAVベクターの肝臓向性の向上、例えば、肝
臓での濃縮をもたらすか、またはリジン(K)アミノ酸残基と置き換えて、得られるAA
Vの肝臓向性の低下、例えば、肝臓の脱標的化をもたらすステップとを典型的に含む。
【0009】
一部の実施形態において、このような方法は、位置づけられた位置の天然に存在するア
ミノ酸をRアミノ酸残基と置き換えて、得られるAAVベクターの肝臓での濃縮をもたら
すステップを含む。一部の実施形態において、このような方法は、位置づけられた位置の
天然に存在するアミノ酸をKアミノ酸残基と置き換えて、得られるAAVの肝臓標的化の
低下をもたらすステップを含み得る。
【0010】
別の態様において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの組織向性を変更する方法
を提供する。このような方法は、
図14に定義する肝臓トグル領域をAAVカプシドタン
パク質内に位置づけるステップと、天然に存在する肝臓トグル領域を、異種血清型由来の
肝臓トグル領域またはde novo由来の配列と置き換えて、得られるAAVベクター
の肝臓向性を変更する、例えば、肝臓標的化の向上または低下をもたらすステップとを典
型的に含む。
【0011】
一部の実施形態において、異種またはde novo由来の肝臓トグル領域が、Anc
80(配列番号1)のカプシドタンパク質における266位に対応するAAVカプシドタ
ンパク質内の位置にGアミノ酸残基を含む場合、得られるAAVベクターの肝臓での濃縮
がもたらされる。一部の実施形態において、異種またはde novo由来の肝臓トグル
領域が、Anc80(配列番号1)のカプシドタンパク質における266位に対応するA
AVカプシドタンパク質内の位置にAアミノ酸残基を含む場合、得られるAAVベクター
の肝臓標的化の低下がもたらされる。
【0012】
一部の実施形態において、置き換えるステップは、現存の、もしくはde novo合
成したDNAの部位特異的変異誘発、制限分解およびライゲーション、現存の、もしくは
de novo合成したDNAの相同性による会合、またはこれらの組合せを使用して実
施する。一部の実施形態において、位置づけるステップは、シーケンシングすることによ
り実施する。
【0013】
別の態様において、本開示では、肝臓へのトランスフェクションが強化または低下され
たAAVをスクリーニングする方法を提供する。このような方法は、AAVカプシドタン
パク質をコードする核酸をシーケンシングするステップと、Anc80(配列番号1)の
カプシドタンパク質における266位に対応するAAVカプシドタンパク質内のアミノ酸
位置を位置づけるステップと、位置づけられた位置にGアミノ酸残基または位置づけられ
た位置にAアミノ酸残基を有するAAVカプシドタンパク質を同定するステップとを典型
的に含む。一般には、位置づけられた位置のGアミノ酸残基は、肝臓へのトランスフェク
ションが強化されたAAVを示し、一方、位置づけられた位置のAアミノ酸残基は、肝臓
へのトランスフェクションが低下されたAAVを示す。
【0014】
別の態様において、本開示では、肝臓へのトランスフェクションが強化または低下され
たAAVをスクリーニングする方法を提供する。このような方法は、AAVカプシドタン
パク質をコードする核酸をシーケンシングするステップと、Anc80(配列番号1)の
カプシドタンパク質における168位に対応するAAVカプシドタンパク質内のアミノ酸
位置を位置づけるステップと、位置づけられた位置にRアミノ酸残基または位置づけられ
た位置にKアミノ酸残基を有するAAVカプシドタンパク質を同定するステップとを典型
的に含む。一般には、位置づけられた位置のRアミノ酸残基は、肝臓へのトランスフェク
ションが強化されたAAVを示し、一方、位置づけられた位置のKアミノ酸残基は、肝臓
へのトランスフェクションが低下されたAAVを示す。
【0015】
また別の態様において、本開示では、266位のX3が、GまたはAから選択される、
配列番号1[Anc80]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0016】
別の態様において、本開示では、168位のX1が、RまたはKから選択される、配列
番号1[Anc80]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0017】
別の態様において、本開示では、配列番号2[Anc80L65]に示す配列を有する
AAVを提供する。
【0018】
さらに別の態様において、本開示では、配列番号3[Anc80L65 G266A]
に示す配列を有するAAVを提供する。
【0019】
別の態様において、本開示では、配列番号4[AAV9 G267A]に示す配列を有
するAAVを提供する。
【0020】
別の態様において、本開示では、配列番号5[AAV9 G267A S269T]に
示す配列を有するAAVを提供する。
【0021】
また別の態様において、本開示では、配列番号6[AAV9 Anc80L65-VR
I]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0022】
別の態様において、本開示では、配列番号7[AAV9 Anc80L65 G266
A-VRI]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0023】
別の態様において、本開示では、配列番号8[AAV3B A266G]に示す配列を
有するAAVを提供する。
【0024】
さらに別の態様において、本開示では、配列番号9[AAV3B A266G S26
7 N268T]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0025】
別の態様において、本開示では、配列番号10[AAV3B G265 A266A]
に示す配列を有するAAVを提供する。
【0026】
また別の態様において、本開示では、配列番号11[AAV3B G265 A266
G]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0027】
別の態様において、本開示では、配列番号12[AAV3B G265 A266A
S268T]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0028】
別の態様において、本開示では、配列番号13[AAV3B G265 A266G
S268T]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0029】
また別の態様において、本開示では、配列番号14[AAV3B AAV9-VRI]
に示す配列を有するAAVを提供する。
【0030】
別の態様において、本開示では、配列番号15[AAV3B Anc80L65-VR
I]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0031】
さらに別の態様において、本開示では、配列番号16[AAV3B Anc80L65
G266A-VRI]に示す配列を有するAAVを提供する。
【0032】
別の態様において、本開示では、配列番号17[Anc80L65 R168K]に示
す配列を有するAAVを提供する。
【0033】
本明細書において使用する場合、「組織向性」は、特定のAAVによる細胞の感染およ
び/またはトランスフェクションに対する天然の組織特異性を指す。例えば、多くのAA
Vは肝臓向性を示し、これはこのようなAAVが、他の組織型の細胞ではなく肝細胞に選
択的に感染および/またはトランスフェクトすることを意味する。組織向性は、特定の組
織の細胞の表面および/または特定のAAVの表面に見出される特定の表面タンパク質、
例えば、受容体タンパク質に基づくことが多い。
【0034】
本明細書において使用する場合、「トグル」は、そのAAVの組織向性と関連するAA
Vカプシドタンパク質内の特定の位置または領域を指す。このため、本明細書に記載する
トグル位置または領域に天然に存在するアミノ酸を異なるアミノ酸と置き換える場合、こ
のAAVの組織向性は、変更される。したがって、「肝臓トグル」、例えば、「肝臓トグ
ル1」は、トランスフェクションが、肝細胞へ他よりも優位にもしくは本質的に完全に生
じるか、または肝細胞へ他よりも優位にもしくは本質的に完全に生じないように「切り替
える」ことが可能な残基を指す。
【0035】
また、本明細書において使用する場合、「肝臓トグル領域」は、
図14に定義するよう
に、「肝臓トグル」が存在する2つのベータ鎖間に位置するアミノ酸残基20個を指す。
したがって、「肝臓トグル領域」は、トランスフェクションが、肝細胞へ他よりも優位に
もしくは本質的に完全に生じるか、または肝細胞へ他よりも優位にもしくは本質的に完全
に生じないように、異種AAVまたはde novo由来物からの移入により「切り替え
る」ことが可能な連続した一連の残基を指す。肝臓トグル領域は、可変領域I(VRI)
と重複するため、すべてのトグル領域スワップでは、略称としてこの用語を使用する。
【0036】
本明細書において使用する場合、「トグル2」は、「トグル1」に非依存的な切替えを
指す。したがって、「肝臓トグル2」は、肝臓トグル1において問題の残基とは異なり、
トランスフェクションが、肝細胞へ他よりも優位にもしくは本質的に完全に生じるか、ま
たは肝細胞へ他よりも優位にもしくは本質的に完全に生じないように「切り替える」こと
が可能な別の残基を指す。
【0037】
他に定義しない限り、本明細書において使用するすべての技術的および科学的用語は、
本発明の方法および組成物が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同一
の意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料を本発明の方
法および組成物の実践または試験において使用することができるが、適する方法および材
料は、以下に記載する。加えて、材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、制限
することを意図しない。本明細書において言及するすべての公表文献、特許出願、特許、
および他の参照は、これらの全体を参照により組み込む。
【0038】
特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面
を有するこの特許または特許出願公開のコピーは、要請および必要な料金の支払いに応じ
て庁より提供されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】in vivoでのスクリーニングに利用する2
11(2048)バリアントAnc80ライブラリーを生成するように変更した位置11個を示すAnc80足場配列(配列番号1)である。強調したX1位およびX3位は、肝臓トグル位置であると決定され、Anc80カプシド配列の残基168および266に対応する。X3の残基は、ベクターが遺伝子を肝細胞に効率的に送達するかどうかを定義する優位な位置であり、このため「肝臓トグル」または「トグル」と呼ぶ。位置X1は、本明細書において「トグル2」と呼ぶ。
【
図2】
図2Aおよび2BはmそれぞれAnc80L65(配列番号2)およびAnc80L65 G266A(配列番号3)のアミノ酸配列である。両配列は、肝臓トグルを除いて同一である。核酸およびタンパク質の両配列におけるグリシン(G)/アラニン(A)肝臓トグルは、太字として下線を引く。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、それぞれAAV9 G267A(配列番号4)およびAAV9 G267A S269T(配列番号5)のアミノ酸配列の提示である。このような配列は、AAV9における肝臓トグルの同定および変更、ならびにAnc80L65における対応する位置を適合させるための、後者におけるさらなる変更を表す。AAV9から変更された残基は、太字として下線を引く。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、それぞれAAV9 Anc80L65-VRI(配列番号6)およびAAV9 Anc80L65 G266A-VRI(配列番号7)のアミノ酸配列の提示である。このような配列は、肝臓濃縮および肝臓脱標的化の両方を行う肝臓トグル領域の、Anc80L65からAAV9への移入を表す。移入された配列は、太字として下線を引く。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、それぞれAAV3B A266G(配列番号8)およびAAV3B A266G S267_N268T(配列番号9)の配列である。Anc80肝臓トグル領域と比較して短縮され、同定が不確実となるが、AAV3BのA266は、この血清型における肝臓トグルを表し得る。AAV3Bにより、マウス肝臓が不十分に形質導入され、A266Gの変更により、この機能が向上し得ることを示唆する。Tを挿入すると、Anc80とのさらに高い同一性を有する肝臓トグル領域が生成される。AAV3Bから変更されたか、または挿入された残基は、太字として下線を引く。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、それぞれAAV3B G265_A266A(配列番号10)およびAAV3B G265_A266G(配列番号11)の配列である。AAV3Bの肝臓トグル領域は、Anc80肝臓トグル領域と比較して短縮される。Anc80における対応する位置からの肝臓濃縮Gまたは肝臓脱標的化Aの挿入により、この機能を移入し得る。AAV3Bから変更されたか、または挿入された残基には、太字として下線を引く。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、それぞれAAV3B G265_A266A S268T(配列番号12)およびAAV3B G265_A266G S268T(配列番号13)の配列である。AAV3Bの肝臓トグル領域は、Anc80肝臓トグル領域と比較して短縮される。Anc80の対応する位置からの肝臓濃縮Gまたは肝臓脱標的化Aの挿入により、この機能を移入し得る。268位のSをTへ変更すると、Anc80とのさらに高い同一性を有する領域が生成される。AAV3Bから変更されたか、または挿入された残基は、太字として下線を引く。
【
図8】
図8A~8Cは、それぞれAAV3B AAV9-VRI(配列番号14)、AAV3B Anc80L65-VRI(配列番号15)、およびAAV3B Anc80L65 G266A-VRI(配列番号16)の配列である。このような配列は、肝臓濃縮および肝臓脱標的化の両方を行う肝臓トグル領域の、AAV9、Anc80L65、およびAnc80L65 G266AからAAV3Bへの移入を表す。移入された配列は、太字として下線を引く。
【
図9】肝臓における2048 Anc80ライブラリーメンバーの存在量を、C57/BL6Jマウスにおけるウイルスインプットに対して示すMAプロットである。y軸では、ゼロは、インプットの変化がないことを示し、正および負の値は、相対的濃縮または脱標的化をそれぞれ示す。トグル位置11個のうちX3位は、観察された二峰性と相関する。
【
図10】、非ヒト霊長類のアカゲザルにおけるウイルスインプットに対する、肝臓における2048 Anc80ライブラリーメンバーの存在量を示すMAプロットである。y軸では、ゼロは、インプットからの変化がないことを示し、正および負の値は、相対的濃縮または脱標的化をそれぞれ示す。マウス肝臓と同様に、トグル位置11個のうちX3位は、観察された二峰性と相関する。
【
図11】マウス肝臓におけるAnc80肝臓トグルのクローン検証を例示する棒グラフである。Anc80L65(配列番号2)とAnc80L65 G266A(配列番号3)の両方を、eGFP発現ゲノムCB7.CI.eGFP.FF2A.hA1AT.RGBを用いた三重トランスフェクションにより生成した。このようなベクターをマウス5匹のそれぞれに1.25e12gc/kgの用量で注射し、3日後にマウスを屠殺した。回収した肝臓の体内分布によって、Anc80L65トグル「オン」ベクターにおいて、Anc80L65 G266Aトグル「オフ」ベクターに対して、1細胞あたり100×のeGFPコードゲノムの濃縮が明らかとなった。
【
図12】
図12A~12Kは、一連の顕微鏡画像11種であり、マウス10匹に加えて
図11の注射なしの対照マウス1匹の肝臓におけるeGFP染色の結果を例示する。Anc80L65トグル「オン」ベクターを注射したマウスの肝臓において、Anc80L65 G266Aトグル「オフ」ベクターに対して、顕著に高いeGFP染色が存在する。
【
図13】
図13Aは、アデノ随伴ウイルス2(AAV2)VP3カプシド単量体の結晶構造の模式図である。肝臓トグル(「LT」)の位置は、矢印により示し、LTを包含する領域の構造は、四角で囲む。
図13Bは、AAV2、3、6、8および9のLT領域のオーバーレイを示し、トグル位置を定義する局所的二次構造を強調する、結晶構造の模式図である。トグル領域は、β上行(βa)およびβ下行(βd)の二次構造間に位置して、これらの二次構造を含み、αトグル(αt)に対して残基2~3個分N末端にコードされる主要な官能基を有する、残基として定義する。LT残基は、残基3個のアルファヘリックスに対してN末端の、ベータシート結合ループであるVR1内に位置する。
【
図14】AAVクレードおよびクローンの原型(例えば、1、4、8~10および13行目)、AAVの臨床的に適合する血清型(天然に存在する血清型と改変した血清型の両方;例えば、2、3、5~7、11および12行目)、およびAncバリアント(例えば、14~22行目)の配列アラインメントである。1~22行目は、配列番号18~39に対応する。b上行(ba)、b下行(bd)、aトグル(at)、トグル領域、およびトグル位置自体の位置を示す。b上行(ba)は、保存されたチロシンにおいて開始し、b下行(bd)は、保存されたセリンにおいて終止する。トグルは、Anc80L65において残基266、AAV9において残基267、およびAAV5において残基257を表し、位置番号はトグルを定義する場合に相対的であることが強調される。
【
図15】Anc80L65、AAV3B、およびAAV9血清型、ならびに肝臓トグルの仮説を試験するために構築したバリアントのC末端におけるaトグル(NDN)に方向づけられた、肝臓トグル領域配列(配列番号40~55、上から下)の表である。最後の2列では、Anc80L65、AAV3B、およびAAV9のマウスおよび霊長類の肝臓における既知の「オン」または「オフ」形質導入効率を列挙し、バリアントについてのin vivoでの結果は、本明細書において太字で説明する。非試験バリアントについての仮説により予想された効率は、イタリック体で示す。
【
図16】肝臓トグル領域の異種AAV Capへの移植性を試験して、単一残基トグルの知見をさらに試験するための方法を示す模式図である。領域に隣接するのは、「スワップ」領域の相同性特異的会合に適する2つの保存されたドメインである。配列番号86。
【
図17】「スワップした」肝臓トグル領域(配列番号56~63、上から下)を有するバリアントの肝臓形質導入効率の予想を示す表(
図15と類似)である。最後の2列では、本明細書において説明するように、このようなバリアントについて、マウス肝臓においてin vivoで決定した「オン」または「オフ」形質導入効率を太字で列挙する。非試験バリアントについての仮説により予想された効率は、イタリック体で示す。
【
図18】
図18Aおよび18Bは、AAV9およびAAV9をベースとする肝臓トグルバリアントのin vitroでの形質導入効率を説明する棒グラフである。バリアントは、293細胞の三重トランスフェクションにより生成し、CMVルシフェラーゼをコードするゲノムにパッケージングした。バリアントは、力価測定した後、100,000の感染多重度(MOI)でHuh7細胞に加えた。Huh7細胞は、肝臓癌細胞株であり、正規化RLUにより説明する形質導入効率は、バリアントが肝臓「オン」であったか、または「オフ」であったか、のおよその指標として解釈され得る。天然AAV9 G267をAに変更すると(配列番号4)、Huh7細胞の形質導入効率が著しく低下し、二重変異体G267A S269T(配列番号5)も同様に低下した。AAV9は、肝臓トグル領域スワップに良好には耐容性を示さないと考えられるが、トグルは、Anc80L65(配列番号6)およびAnc80L65 G266A(配列番号7)のバリアントの相対的効率によって明らかとなり得る。
【
図19】
図19Aおよび19Bは、AAV3BおよびAAV3Bをベースとする肝臓トグルバリアントのin vitroでの形質導入効率を説明する棒グラフである。バリアントは、293細胞の三重トランスフェクションにより生成し、CMVルシフェラーゼをコードするゲノムにパッケージングした。バリアントは、力価測定した後、100,000のMOIでHuh7細胞に加えた。Huh7細胞は、肝臓癌細胞株であり、正規化RLUにより説明する形質導入効率は、バリアントが肝臓「オン」であったか、または「オフ」であったかのおよその指標として解釈され得る。天然AAV3B A266をGに変更すると(配列番号8)、Huh7細胞の形質導入効率が予想外に著しく低下したが、Anc80L65の対応する位置にTを挿入すると(配列番号9)、このバリアントが救出されて、AAV3Bを凌いだ。同様に、A(配列番号10)またはG(配列番号11)をA266の前に挿入し、S268Tを変更または変更しない場合(配列番号12および配列番号13)、+G「オン」両バリアントを有する肝臓トグル様効率パターンが生じて、AAV3Bを凌ぐ。AAV3Bは、肝臓トグル領域スワップに良好な耐容性を示し、トグルは、肝臓「オン」AAV9バリアント(配列番号14)、ならびにAnc80L65(配列番号15)およびAnc80L65 G266A(配列番号16)のバリアントの相対的効率によって明らかとなる。
【
図20】
図20A~20Cは、AAV9ならびにAAV9をベースとするバリアントG267AおよびG267A S269Tを注射したマウスによる、ルシフェラーゼのin vivoでの動態学的発現の結果を示すグラフである。マウスは、57日間経過観察し、期間中、生存中のイメージングを行った。対象領域は、全体、肝臓、および臀部(大腿および尻の主要筋群)として定義した。肝臓「オフ」AAV9両バリアントは、肝臓領域において非常に低い放射輝度が観察されたが、AAV9 G267A S269Tは、AAV9に相当する全体的総放射輝度を有する。この二重変異体は、臀部領域からのこの総放射輝度の大半を生成し得る。
【
図21-1】
図21A~21Fは、in vivoでのルシフェラーゼ実験により観察されたデータを裏付ける棒グラフである。GFP発現ベクターAAV9、AAV9 G267A、またはAAV9 G267A S269Tを注射したマウスを、注射後28日に屠殺し、eGFP含有ゲノム(DNA)とeGFP発現(RNA)の両方の体内分布を実施した。肝細胞「オフ」両変異体は、肝臓においては、3桁低いDNAおよびRNAレベルを有したが(
図21A~21B)、心臓細胞においては、AAV9 G267AおよびAAV9 G267A S269Tは、AAV9と同等であった(
図21C~21D)。有意なことには、四頭筋細胞においては、AAV9 G267A S269Tは、AAV9の遺伝子送達および遺伝子発現の両レベルを上回った(
図21E~21F)。
【
図22】
図22Aおよび22Bは、AAV3BもしくはAAV3BをベースとするバリアントG265_A266A、G265_A266G、Anc80L65-VRI、Anc80L65 G266A-VRI、またはAAV9を注射したマウスによる、ルシフェラーゼのin vivoでの動態学的発現の結果を示すグラフである。マウスは、29日間経過観察し、期間中、生存中のイメージングを行った。対象領域は、全体および肝臓として定義した。AAV3Bの肝臓「オン」バリアントはともに、肝臓「オフ」対応物よりも高い放射輝度に発光し、トグルの仮説を裏付けた。実際、肝臓「オフ」AAV3B両バリアントは、肝臓領域において非常に低い放射輝度が観察される。興味深いことには、Anc80L65-VRI変異体は、野生型AAV3Bと同等の能力を有したが、有意なことには、グリシンを単純挿入すると、肝臓領域シグナルをAAV9と等しくしたベクターが生成される。バリアントがAAV9と、やはり適合する総シグナルは、AAV3B G265 A266Gシグナルの大半が、肝臓から生じることを示唆する。
【
図23】配列Anc80L65 R266K(配列番号17)である。配列は、肝臓トグル2を除いてAnc80L65と同一である。アルギニン(R)/リジン(K)肝臓トグルを強調する。
【
図24】AAVクレードおよびクローンの原型(例えば、1、4、8~10および13行目)、AAVの臨床的に適合する血清型(天然に存在する血清型と改変した血清型の両方;例えば、2、3、5~7、11および12行目)、およびAncバリアント(例えば、14~22行目)の配列アラインメントである。1~22行目は、配列番号64~85に対応する。肝臓トグル2の位置、保存されたプロリンおよびリジンの方向づけ、ならびにVP2の非標準開始コドンを示す。肝臓トグル2は、Anc80L65およびAAV9の残基168、ならびにAAV5の残基151を表し、位置番号はトグルを定義する場合に相対的であることが強調される。
【
図25】
図25Aおよび25Bは、グラフおよびヒートマップの提示である。
図25Aでは、左に、C57BL/6マウス肝細胞における2048 Anc80ライブラリーメンバーの存在量を示すMAプロットを表し、
図25Bでは、左に、28日目のウイルスインプットに対する異種移植FRGマウスモデルのMAプロットを表す。このような細胞において濃縮されたバリアントを四角で囲み、トグル位置各11個の同一性を、両図の右に「ヒートマップ」により示す。トグル位置11個のうち肝臓トグルX3位は、濃縮と相関する。X1位トグル2、状態1もまた、濃縮と相関し、最も濃縮されたバリアントにおいては顕著である。
【
図26-1】
図26A~26Cは、左に、動物およびin vitroモデルにおける、ウイルスインプットに対する28日目のNHP(
図26A)、28日目の異種移植FRGマウスモデル(
図26B)、および3日目のヒト肝細胞(
図26C)の2048 Anc80ライブラリーメンバーの存在量を示す3つのMAプロットである。このような細胞において濃縮されたバリアントを四角で囲み、トグル位置各11個の同一性を、各図の右に「ヒートマップ」により示す。トグル位置11個のうち肝臓トグルX3位は、濃縮と相関する。X1位置トグル2、状態1もまた、濃縮と相関し、最も濃縮されたバリアントにおいては顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、本来、肝臓向性である。この向性は、肝臓病因を有
する疾患に対する遺伝子治療処置にとっての利点であるが、この臓器に効果的に形質導入
するのに必要とされるゲノム含有ウイルス粒子の数は、患者と提供者の両方に負担をそれ
でもなおもたらし得る。対照的に、非肝臓病因を有する疾患の関連する治療は、AAVに
より送達される治療物質のほとんどにおいて肝臓がシンクとして作用するため、効果が低
いか、または高用量の投薬を必要とし得る。加えて、有望なAAV血清型は、マウス肝臓
に効率的には形質導入せず、臨床的適合性および投薬試験のためのマウスモデルの使用を
著しく制限する。
【0041】
向性と相関するAAV配列を同定するこれまでの手法は、肝臓向性を定義するモチーフ
を同定するのに、例えば、高度に関連する現存の血清型の、明確な特性との比較、無関係
な血清型間のランダムドメインスワップ、または高次構造の考察に依存している。例えば
、AAV向性の決定基のマッピングは、高度に関連する血清型を比較することにより行わ
れている。1つのこのような例は、AAV1とAAV6との間の単一アミノ酸の変異(E
531K)であり、これによりAAV1によるマウス肝臓形質導入が向上する(Wu et al
., 2006, J. Virol., 80(22):11393-7)。別の例は、AAV2とAAV8との間のドメイ
ンの相反的スワップであり、これにより向性が変更されるが、いかなる安定な特異的組織
標的モチーフも定義することができなかった(Raupp et al., 2012, J. Virol., 86(17):
9396-408)。さらに、構造の全体的考察は、良好または不良な肝臓形質導入物質間の全体
的な差異のみを強調しており、実践において有用であるというよりも観察的なものである
(Nam et al., 2007, J. Virol., 81(22):12260-71)。
【0042】
AAVカプシドタンパク質における肝臓トグルの同定
本開示では、二峰性マウス肝臓向性を生じる、単一部位におけるアミノ酸(例えば、「
肝臓トグル」)の変異を同定するための、合理的にデザインされたAAVカプシドライブ
ラリーのスクリーニングを記載する。また、本開示では、a)ヒトにおける肝臓形質導入
を向上させるか、または必要に応じて、肝臓を脱標的化し、これにより有効用量を低下さ
せることが可能となり、b)マウス肝臓形質導入を向上させると同時に、他の好ましい特
性を最小限に変更し、このような血清型をマウス疾患モデルにおいて使用することが可能
となる、AAVカプシドにおける特異的残基を記載する。
【0043】
本明細書に記載するように、AAVカプシドタンパク質の肝臓特異的向性は、Anc8
0(配列番号1)の266位の1つの残基を変異させることにより変更することができる
。例えば、この位置の非グリシン(G)アミノ酸残基をグリシン(G)アミノ酸残基に変
異させると、AAVの肝臓に対する向性または標的化の向上または上昇が生じるか、ある
いは、この位置の非アラニン(A)アミノ酸残基をアラニン(A)アミノ酸残基に変異さ
せると、AAVの肝臓に対する向性または標的化の低下(「脱標的化」)が生じる。した
がって、AAVが肝臓に感染および/またはトランスフェクトする傾向は、Anc80(
配列番号1)のAAVカプシドタンパク質内の266位の非G残基をG残基に変異させる
ことにより上昇させることができ、一方、AAVが肝臓に感染および/またはトランスフ
ェクトする傾向は、Anc80(配列番号1)のAAVカプシドタンパク質内の266位
の非A残基をA残基に変異させることにより低下させることができる。
【0044】
一部の実施形態において、例えば、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10または11に由来する既知の他のカプシドタンパク質のAnc80の266位に対
応するアミノ酸位置は、所望の肝臓特異的向性に応じて、Gアミノ酸残基またはAアミノ
酸残基のいずれかに変異させることができる。一部の実施形態において、Gアミノ酸残基
またはAアミノ酸残基のいずれかの挿入は、所望により肝臓特異的向性を変更することが
できる。一部の実施形態において、肝臓トグル領域におけるさらなる変更、挿入、または
欠失により、所望により肝臓特異的向性を向上させることができる。一部の実施形態にお
いて、トグル残基を含む天然の肝臓トグル領域全体を、異種カプシドまたはde nov
o合成した配列の肝臓トグル領域と置き換えて、所望の肝臓向性の向上または低下を達成
することができる。
【0045】
一部の実施形態において、カプシドタンパク質は、Anc80(配列番号1)の266
位に対応する所望のアミノ酸残基を有するように遺伝学的に改変またはデザインして、他
のウイルス成分と混合してAAVウイルス粒子に会合させる場合、AAVウイルス粒子を
肝臓において濃縮するか、肝臓を脱標的化することができる(例えば、変異させる前のカ
プシド配列、または適切な位置にGを有しないか、もしくはAを有しない対応するカプシ
ド配列、または適切な位置にGの代わりにA、もしくはAの代わりにGを有する対応する
カプシド配列と比較して)。
【0046】
また、本明細書において記載する場合、AAVカプシドタンパク質の肝臓向性は、An
c80(配列番号1)の168位の1つの残基を変異させることにより変更することがで
きる。例えば、この位置の非アルギニンアミノ酸残基をアルギニン(R)アミノ酸残基に
変異させると、AAVの肝臓向性の向上または上昇が生じるか、あるいは、この位置の非
リジンアミノ酸残基をリジン(K)アミノ酸残基に変異させると、AAVの肝臓向性の低
下(「脱標的化」)が生じる。したがって、AAVが肝臓に感染および/またはトランス
フェクトする傾向は、Anc80(配列番号1)のAAVカプシドタンパク質内の168
位の非R残基をR残基に変異させることにより上昇または向上させることができ、一方、
AAVが肝臓に感染および/またはトランスフェクトする傾向は、Anc80(配列番号
1)のAAVカプシドタンパク質内の168位の非K残基をK残基に変異させることによ
り低下させることができる。
【0047】
一部の実施形態において、例えば、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10または11に由来する既知の他のカプシドタンパク質のAnc80の168位に対
応するアミノ酸位置は、所望の肝臓特異的向性に応じて、Rアミノ酸残基またはKアミノ
酸残基のいずれかに変異させることができる。
【0048】
本明細書に記載の向性を付与するアミノ酸と類似の特性(例えば、極性、酸性度/塩基
性度、疎水性、電荷、および/またはサイズ)を有するアミノ酸を使用可能である(例え
ば、Anc80に対して266位のGもしくはAの代わりに、またはAnc80に対して
168位のRもしくはKの代わりに)ことが理解される。
【0049】
本明細書に記載するように、AAVカプシドタンパク質の肝臓特異的向性は、(
図14
に定義される)肝臓トグル領域内のさらなる残基を変異させることにより変更することが
できる。一部の実施形態において、天然に存在する肝臓トグル領域は、所望の肝臓向性を
有する(例えば、得られるAAVベクターの肝臓向性を向上するか、または肝臓向性を低
下させる)ように異種血清型由来の肝臓トグル領域と置き換えることができる。一部の実
施形態において、天然に存在する肝臓トグル領域は、所望の肝臓向性を有する(例えば、
得られるAAVベクターの肝臓向性を向上するか、または肝臓向性を低下させる)ように
de novoで合成することができる。本明細書に記載するように、異種またはde
novo由来の肝臓トグル領域が、Anc80(配列番号1)のカプシドタンパク質にお
ける266位に対応するAAVカプシドタンパク質内の位置にGアミノ酸残基を含む場合
、得られるAAVベクターの肝臓向性は、向上され、異種またはde novo由来の肝
臓トグル領域が、Anc80(配列番号1)のカプシドタンパク質における266位に対
応するAAVカプシドタンパク質内の位置にAアミノ酸残基を含む場合、得られるAAV
ベクターの肝臓向性は、低下する。
【0050】
本明細書において説明する発見により、肝細胞において濃縮されたか、または肝細胞か
ら脱標的化されたAAVについて、カプシドタンパク質の配列、ならびに詳細には、An
c80(配列番号1)における266および/または168位に対応するアミノ酸残基を
コードする核酸の配列に基づいて、AAVをスクリーニングすることが可能であることが
明らかとなる。核酸をシーケンシングする方法は、当技術分野において周知であり、鎖停
止法(例えば、サンガーシーケンシング法)または化学分解法(例えば、マクサム・ギル
バートシーケンシング法)を含むが、これらに限定されない。多くの変形形態および改良
形態が、開発されており、当技術分野において、自動シーケンシング法およびハイスルー
プットシーケンシング法を含むシーケンシングに使用されている。
【0051】
本明細書において使用する場合、濃縮された、または濃縮は、カプシドタンパク質が、
Anc80(配列番号1)において、266位に対応するアミノ酸位置にGアミノ酸残基
を、および/または168位に対応するRアミノ酸位置を有しない場合(例えば、オリジ
ナルもしくは野生型配列、または変異させる前の配列)の肝細胞におけるAAVゲノム数
と比較した、肝細胞におけるAAVゲノム数の上昇を指す。本明細書において使用する場
合、脱標的化された、または脱標的化は、カプシドタンパク質が、Anc80(配列番号
1)において、266位に対応するアミノ酸位置にAアミノ酸残基を、および/または1
68位に対応するKアミノ酸位置を有しない場合(例えば、オリジナルもしくは野生型配
列、または変異させる前の配列)の肝細胞におけるAAVゲノム数と比較した、肝細胞に
おけるAAVゲノム数の低下を指す。
【0052】
肝臓におけるAAVゲノム数をスクリーニングする方法は、当技術分野において既知で
あり、不死化および/または初代肝細胞のin vitroでの形質導入、ならびに野生
型とヒト化の両マウスへのin vivoでの全身注射を典型的に含む(例えば、Grimm
et al., 2008, J. Virol., 82:5887-911; Lisowski et al., 2014, Nature, 382:doi:10.
1038/ nature12875を参照)。
【0053】
効率的(もしくは向上した)肝臓向性または非効率的(もしくは低下した)肝臓向性を
付与する代表的カプシドタンパク質を本明細書において提供する。効率的肝臓向性を付与
する(例えば、肝細胞におけるAAVゲノムの濃縮を生じる)代表的カプシドタンパク質
の配列は、配列番号2[AAV9 Anc80+266G]、配列番号6[AAV9 A
nc80+266G VRI]、配列番号9[AAV3B A266G S267 N2
68T]、配列番号11[AAV3B G265 A266G]、配列番号13[AAV
3B G265 A266G S268T]、配列番号14[AAV3B AAV9+2
67G-VRI]、配列番号15[AAV3B Anc80+266G-VRI]に示し
、一方、肝臓向性の低下を付与する(例えば、AAV粒子による肝臓の脱標的化を生じる
)代表的カプシドタンパク質の配列は、配列番号3[Anc80+266A]、配列番号
4[AAV9 G267A]、配列番号5[AAV9 G267A S269T]、配列
番号7[AAV9 Anc80+266A-VRI]、配列番号10[AAV3B G2
65 A266A]、配列番号12[AAV3B G265 A266A S268T]
、配列番号16[AAV3B Anc80+266A-VRI]、配列番号17[Anc
80L65 R168K]に示す。
【0054】
以下に詳細に説明するように、二峰性パターンの肝臓形質導入を示す2つのAAVカプ
シドタンパク質の配列の、配列番号2および配列番号3は、配列番号1に示す配列を有す
るAnc80足場配列に起源を有し、この場合、
図1においてX3で示す266位は、G
またはAのいずれかである。同様に、二峰性パターンの肝臓形質導入を示す2つのAAV
カプシドタンパク質の配列の、配列番号16および配列番号17は、配列番号1に示す配
列を有するAnc80足場配列に起源を有し、この場合、X1で示す168位は、Rまた
はKのいずれかである。
【0055】
肝臓トグルを含むAAVカプシドタンパク質をコードする核酸
本明細書に記載するように、AAVカプシドタンパク質におけるアミノ酸残基を266
位トグルのGアミノ酸残基とAアミノ酸残基との間で変異させるか、または挿入すると、
得られるAAVの肝臓向性が濃縮と脱標的化とで切り替わる。同様に、AAVカプシドタ
ンパク質におけるアミノ酸残基を168位トグルのRアミノ酸残基とKアミノ酸残基との
間で変異させると、得られるAAVの肝臓向性が、濃縮と脱標的化とで切り替わる。配列
の変異は、核酸レベルで行われ、変異は、コードされたアミノ酸配列(例えば、コードさ
れたタンパク質)に典型的に翻訳される。本明細書において使用する場合、核酸は、1つ
または複数の核酸類似体または骨格修飾を含むものを含む、DNAおよびRNAを含み得
る。核酸は、一本鎖または二本鎖であり、通常、目的の使用に依存し得る。
【0056】
変異は、種々の方法を使用して核酸に導入することができ、この多くは、当技術分野に
おいて周知である。例えば、変異は、変異誘発(例えば、部位特異的変異誘発、PCRに
よる変異誘発)を使用して、または所望の変異(複数可)を含む核酸分子を化学的に合成
することにより核酸に導入することができる。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis(
Molecular Cloning: a laboratory manual, 1989, Ed. 2)およびDieffenbach & Dveksle
r(PCR primer: a laboratory manual, 2003, Ed. 2)を参照されたい。
【0057】
核酸は、当技術分野において通例の技術を使用して得る(例えば、単離する)ことがで
きる。例えば、核酸は、それらに限定されないが、組換え核酸技術、および/またはポリ
メラーゼ連鎖反応(PCR)を含む任意の方法を使用して単離することができる。一般的
PCR技術は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, Dieffenbach & Dveksler, E
ds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995に記載されている。組換え核酸技術は
、例えば、核酸の単離に使用可能な、制限酵素分解およびライゲーションを含む。また、
単離した核酸は、単一核酸分子または一連のオリゴヌクレオチドのいずれかとして化学的
に合成することができる。
【0058】
「単離された」核酸分子は、単離した核酸分子が由来する生物のゲノムの核酸の一端ま
たは両端に天然に隣接する配列を含まない核酸分子である(例えば、PCRまたは制限酵
素分解により生成したcDNAまたはゲノムDNA断片)。このような単離された核酸分
子は、一般に、操作の利便性のため、または以下に詳細に検討する融合核酸分子を生成す
るために、ベクター(例えば、クローニングベクター、または発現ベクター)に導入する
。加えて、単離した核酸分子は、組換えまたは合成核酸分子のような改変核酸分子を含み
得る。
【0059】
ポリペプチドは、DEAEイオン交換、ゲルろ過、およびハイドロキシアパタイトクロ
マトグラフィーのような既知の方法により、天然源(例えば、生体試料)から得る(例え
ば、精製する)ことができる。また、ポリペプチドは、例えば、発現ベクターにより核酸
を発現させることにより精製することができる。加えて、精製したポリペプチドは、化学
合成により得ることができる。ポリペプチドの純度の程度は、任意の適切な方法、例えば
、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析を
使用して測定することができる。
【0060】
本明細書において使用する場合、「精製された」ポリペプチドは、これが天然に付随す
る細胞成分から分離または精製したポリペプチドである。典型的には、ポリペプチドは、
乾燥重量で少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、9
5%または99%)これが天然に付随するタンパク質および天然に存在する分子を含まな
い場合に「精製された」と考えられる。化学的に合成したポリペプチドは、本来、これが
天然に付随する成分から分離しているため、合成ポリペプチドは、「精製されて」いる。
【0061】
核酸は、ベクターにおいて増殖させることができる。ベクターは、ウイルスベクターま
たは非ウイルスベクターを含むことができ、また、発現ベクターを含むことができる。多
くのベクターは、市販されており、ベクターは、当技術分野において通例の組換えDNA
技術を使用して容易に生成することができる。核酸を含むベクターは、一部の例では、こ
のような核酸に動作可能に結合させることができる発現エレメントを有し得る。ベクター
は、選択的マーカーをコードする配列(例えば、抗生物質耐性遺伝子)のような配列をさ
らに含み得る。核酸を含むベクターは、キメラまたは融合ポリペプチド(すなわち、ポリ
ペプチドのN末端またはC末端のいずれかに存在し得る異種ポリペプチドに動作可能に結
合するポリペプチド)をコードすることができる。代表的異種ポリペプチドは、コードさ
れたポリペプチドの精製において使用可能なものである(例えば、6xHisタグ、グル
タチオンSトランスフェラーゼ(GST))。
【0062】
発現エレメントは、当技術分野において既知であり、コード配列の発現を配向し、制御
する核酸配列を含む。発現エレメントの1つの例は、プロモーター配列である。また、発
現エレメントは、核酸の発現を調節する、イントロン、エンハンサー配列、応答エレメン
ト、または誘導性エレメントを含み得る。発現エレメントは、ウイルス起源であるか、も
しくは非ウイルス分子生物学的技術によるもの(例えば、プラスミドベクターの単純増殖
)であり得るか、発現エレメントは、それらに限定されないが、細菌、酵母、昆虫、もし
くは哺乳動物起源であり得るか、または発現エレメントは、種々の起源のエレメントの組
合せであり得る。本明細書において使用する場合、動作可能に結合する、は、プロモータ
ーまたは他の発現エレメント(複数可)が、核酸の発現を配向するか、または制御するよ
うに核酸に対してベクター内に位置することを意味する。一部の例では、動作可能に結合
する、は、2つの配列がインフレームであることを意味する。
【0063】
ウイルスベクターを宿主細胞に導入する方法は、当技術分野において既知であり、ウイ
ルスの天然の感染能力を典型的に利用する。非ウイルスベクターを宿主細胞に導入する方
法は、当技術分野において既知である。本明細書において使用する場合、「宿主細胞」は
、ウイルスまたは非ウイルスベクターが導入される特定の細胞を指し、このような細胞の
子孫または潜在的子孫をも含む。宿主細胞は、必要に応じて、原核または真核細胞であり
得る。例えば、核酸は、大腸菌(E. coli)のような細菌細胞において、または昆虫細胞
、酵母もしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)また
はCOS細胞)において発現させることができる。他の適する宿主細胞は、当業者に既知
である。非ウイルス核酸は、それらに限定されないが、エレクトロポレーション、リン酸
カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール(PEG)形質転換、ヒートショック、リポフ
ェクション、マイクロインジェクション、およびウイルスによる核酸導入のような既知の
方法を使用して、in vivoおよびin vitroのいずれによっても宿主細胞に
導入することができる。
【0064】
肝臓トグルを含むAAVカプシドタンパク質を使用する方法
AAVウイルスは、導入遺伝子を(他のウイルス配列とともにcisまたはtrans
で)含んで細胞に送達し得る。導入遺伝子は、例えば、レポーター遺伝子(例えば、ベー
タ-ラクタマーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、
チミジンキナーゼ、緑色蛍光ポリペプチド(GFP)、クロラムフェニコールアセチルト
ランスフェラーゼ(CAT)、またはルシフェラーゼ、またはヘマグルチニンもしくはM
ycのような抗原タグドメインを含む融合ポリペプチド)または治療遺伝子(例えば、ホ
ルモンもしくはこの受容体、増殖因子もしくはこの受容体、分化因子もしくはこの受容体
、免疫系制御因子(例えば、サイトカインおよびインターロイキン)もしくはこの受容体
、酵素、RNA(例えば、阻害RNAまたは触媒RNA)または標的抗原(例えば、発癌
性抗原、自己免疫抗原)をコードする遺伝子)であり得る。
【0065】
特定の治療遺伝子は、少なくとも部分的に、治療する特定の疾患または欠損症に依存す
る。単なる例として、遺伝子導入または遺伝子治療は、血友病、網膜色素変性症、嚢胞性
線維症、レーバー先天黒内障、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常(例えば、フェニル
ケトン尿症を含む先天性アミノ酸代謝異常、プロピオン酸血症を含む先天性有機酸代謝異
常、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(MCAD)を含む先天性脂肪酸代謝異常
)、がん、色覚異常、錐体杆体ジストロフィー、黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症
)、リポポリペプチドリパーゼ欠損症、家族性高コレステロール血症、脊髄性筋萎縮症、
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、アルツハイマー病、パーキンソン病、肥満、炎症性腸
障害、糖尿病、うっ血性心不全、高コレステロール血症、難聴、冠動脈心疾患、家族性腎
アミロイドーシス、マルファン症候群、致死性家族性不眠症、クロイツフェルト・ヤコブ
病、鎌状赤血球症、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、アッシャー症候群、ラクトース
不耐症、脂質蓄積障害(例えば、ニーマン・ピック病C型)、バッテン病、コロイデレミ
ア、糖原病II型(ポンペ病)、毛細血管拡張性運動失調症(ルイ・バー症候群)、先天
性甲状腺機能低下症、重症複合免疫不全症(SCID)、および/または筋萎縮性側索硬
化症(ALS)の治療に適用することができる。また、例として、遺伝子導入または遺伝
子治療は、網膜ジストロフィーの治療に適用することができる(例えば、両アレル性RP
E65変異関連網膜ジストロフィーが確認された患者の治療を示す1回限りの遺伝子治療
製品である(LUXTURNA(商標))(ボレチジーンネパルボベック-rzyl(vo
retigene neparvovec-rzyl))(Spark Therapeutics Inc.,フ
ィラデルフィア、PA州))。
【0066】
また、治療遺伝子は、例えば、対象(例えば、ヒト、動物(例えば、ペット、家畜、絶
滅危惧動物))の免疫化に有用な免疫原であり得る。例えば、免疫原は、生物(例えば、
病原体)またはその免疫原性の部分もしくは成分(例えば、毒素ポリペプチドまたはこの
副産物)から得ることができる。例として、免疫原性ポリペプチドを得ることが可能な病
原体は、ウイルス(例えば、ピコルナウイルス、エンテロウイルス、オルソミクソウイル
ス、レオウイルス、レトロウイルス)、原核生物(例えば、肺炎球菌(Pneumococci)、
ブドウ球菌(Staphylococci)、リステリア(Listeria)、シュードモナス(Pseudomonas
))、および真核生物(例えば、アメーバ、マラリア、リーシュマニア、線虫)を含む。
本明細書に記載の方法およびこのような方法により生成される組成物が、特定のいかなる
導入遺伝子によっても制限されないことが理解される。
【0067】
通常、生理学的に適合する担体に懸濁したAAVウイルスは、標準技術を使用して、対
象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与することができる。適する担体は、多様
な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウ
ム、ゼラチン、デキストラン、アガー、ペクチン、および水を用いて処方され得る生理食
塩水を含む。AAVウイルスは、適切な細胞に形質導入または感染し、十分なレベルの遺
伝子導入および発現を提供し、過度の有害作用もなく治療的利点をもたらす十分な量で投
与する。通常の薬学的に許容される投与経路は、経口、鼻腔内、気管内、吸入、静脈内、
筋肉内、眼内、皮下、皮内、経粘膜、または他の投与経路による、例えば、肝臓または肺
のような臓器への直接送達を含むが、これらに限定されない。投与経路は、必要に応じて
、組み合わせることができる。
【0068】
対象に投与されるAAVウイルスの用量は、主に、治療する条件、ならびに年齢、体重
、および対象の健康状態のような因子に依存する。例えば、ヒト対象に投与される治療有
効量のAAVウイルスは、一般に、約1×101~1×1012ゲノムコピー(GC)の
濃度のウイルス(例えば、約1×103~1×109GC)を含む溶液約0.1ml~約
10mlの範囲である。導入遺伝子の形質導入および/または発現は、DNA、RNA、
またはタンパク質アッセイによる投与後に種々の時点で監視することができる。一部の例
では、導入遺伝子の発現レベルを監視して、投薬の頻度および/または量を決定すること
ができる。また、治療目的のために記載するものに類似する投薬レジメンは、免疫化に利
用し得る。
【0069】
本発明に従って、通常の分子生物学、微生物学、生化学、および組換えDNA技術を当
技術分野の技術において利用し得る。このような技術は、文献において十分に説明されて
いる。本発明は、特許請求の範囲に記載する本発明の方法および組成物の範囲を制限しな
い以下の実施例においてさらに記載される。
【実施例0070】
[実施例1]
AAV肝臓トグルを同定するための材料および方法
AAV配列の2
11(2048)バリアントAnc80ライブラリー(例えば、米国特
許第9,695,220号を参照)を、Anc80足場配列(配列番号1;
図1)内の1
1個の位置(
図1におけるX
1~X
11)を変更することにより生成した。各バリアント
は、哺乳動物発現プラスミドにクローニングし、pRepおよびpAdヘルパーアクセサ
リープラスミドを用いてHEK293細胞にトランスフェクトして、ウイルスベクターの
形態でライブラリーを生成した。次いで、このライブラリーは、肝臓局在性のin vi
voでのスクリーニングに使用した(例えば、濃縮対脱標的化)。簡潔には、1つの実験
において、3匹のマウスに、Anc80ベクターライブラリーを総gc2.7311(約
1e13gc/kg)で注射した。注射後3日目に、マウスを屠殺し、肝臓を回収して凍
結した。別の実験では、2匹のアカゲザルに、Anc80ベクターライブラリー1.6e
12gc/kgを注射して、注射後28日目に試験を終了し肝臓を回収した。総ゲノムD
NAは、肝臓から抽出し、組織に存在するウイルスバリアントの集団は、次世代シーケン
シングにより定量化した。以下に記載するように、
図1に示すAnc80足場配列におい
て強調したX
3位は、肝臓トグル位置であると決定した。X
3位は、Anc80足場配列
の残基266に対応する。
【0071】
in vivoでのスクリーニング実験の結果は、
図9および
図10に示す。肝臓にお
ける、ウイルスインプット(x軸)に対する2048バリアントAnc80ライブラリー
メンバーの存在量(y軸)を示すプロットを示す。y軸では、ゼロは、インプットの変化
がないことを示し、正および負の値は、相対的濃縮または脱標的化をそれぞれ示す。An
c80足場配列内のトグル位置11個のうちX
3位は、観察された肝臓二峰性と相関した
。
【0072】
劣位であるが、それにもかかわらず肝臓濃縮または脱標的化に関連するのは、X1位の
アミノ酸残基の同一性であり、Anc80足場配列の残基168に対応する。トグル「ヒ
ートマップ」と呼ばれる方法により、すべてのトグル位置の同一性の考察が、ビジュアル
形式で可能となった。また、所望の特性によりバリアントの群を選択することによって、
ヒートマップでは、存在する場合、影響を受ける複数のトグル位置を明らかとすることが
できる。
図9および
図10から同一のデータを使用すると、野生型C57BL/6マウス
(
図25)とアカゲザル(
図26)の両方は、最も肝臓濃縮されたAnc80バリアント
に存在する、X3=1(G)およびX1=1(R)を有する。X1位の適合性を裏付けて
、FRGヒト肝臓異種移植マウスモデルから回収したマウスとヒトの両方の肝細胞につい
て、ならびにin vivoでの肝臓構造を模倣する条件下で培養した初代ヒト肝細胞(
マイクロパターン化共培養物、MPCC)において、類似のパターンが観察された。
【0073】
[実施例2]
AAV肝臓トグルの生成および試験
肝臓トグルを含む、2048バリアントAnc80ライブラリー由来の特定の配列(例
えば、その全体を参照により本明細書において組み込む米国特許第9,719,070号
を参照)を生成した(
図2)。Anc80L65(配列番号2)は、266位にGを含ん
で肝臓濃縮を示し、Anc80L65 G266A(配列番号3)は、266位にAを含
んで肝臓脱標的化を示す。G/A肝臓トグルは、強調し、
図2に示す色分けと一致するよ
うに、
図3において色分けする。
【0074】
個々のバリアントのそれぞれは、部位特異的変異誘発またはPCR生成断片と遺伝子合
成断片とを混合する等温(ギブソン)クローニングのいずれかに由来する。このようなバ
リアントは、標準的rep/cap「trans」プラスミドにクローニングしてベクタ
ーを生成する。次いで、GFPおよびアルファ1-アンチトリプシンを発現するベクター
バリアントは、グラウスベック遺伝子治療センター(Grousbeck Gene Therapy Center)
の遺伝子導入ベクターコア(Gene Transfer Vector Core)により生成する。
【0075】
1バリアントあたり8週齢の雄マウス3匹および親対照に、総ゲノムコピー1e11(
約5e12gc/kg)を注射し、3日目に肝臓組織を回収する。肝臓におけるゲノムコ
ピー数は、qPCRにより判定し、絶対値および親対照に対する比率として表す。
図11
は、266位にGを含むAnc80L65(配列番号2)が、肝臓濃縮を示し、266位
にAを含むAnc80L65 G266A(配列番号3)が、肝臓脱標的化を示すことを
示す。さらに、
図12は、肝臓組織のeGFP染色により観察されるゲノムからの発現が
、266位にGを含むAnc80L65(配列番号2)を利用する場合、266位にAを
含むAnc80L65 G266A(配列番号3)に対して、より明白であることを示す
。
【0076】
[実施例3]
相当する肝臓トグル残基を他の血清型において同定する
図13Aは、AAV2 VP3カプシド単量体の結晶構造を示す。肝臓トグル(「LT
」)の位置は、矢印により示し、LTを包含する領域の構造は、四角で囲む。肝臓トグル
残基は、Anc80の266位に相当する位置のαトグルに対して2~3残基分n末端に
位置し得る。
図13Bは、AAV2、3、6、8および9VP3のLT領域のオーバーレ
イを示し、トグル位置を定義する局所的二次構造を強調する、AAV2 VP3の結晶構
造である。トグル領域は、β上行(βa)およびβ下行(βd)の二次構造間に位置して
、これらの二次構造を含み、αトグル(αt)に対して残基2~3個分N末端にコードさ
れる主要な官能基を有する、残基として定義する。LT残基は、残基3個のアルファヘリ
ックスに対してN末端の、ベータシート結合ループであるVR1内に位置する。
【0077】
図14は、肝臓トグルを包含する、原型であり臨床的に適合する血清型由来の一次VR
Iアミノ酸配列のアラインメントであり、Anc80L65は、15行目に位置する。β
上行(βa)、β下行(βd)、αトグル(αt)、トグル領域、およびトグル自体の位
置を強調する。β上行(βa)は、保存されたチロシンにおいて開始し、β下行(βd)
は、保存されたセリンにおいて終止する。多くの血清型では、Anc80 266に相当
する位置は、近い同一性により容易に推測することができる。他に、注目すべきは、クレ
ードBウイルスAAV2およびAAV3、ならびに関連するウイルスAAV4およびRh
32.33において、相当する位置は、より曖昧であるか、それほど明白でない。それに
もかかわらず、一次配列は、他の血清型において、肝臓トグルを同定するガイドとして作
用し得る。
図5に示すように、トグルは、Anc80L65において残基266、AAV
9において残基267、およびAAV5において残基257を表し、トグルを定義すると
、位置番号が関連していることが強調される。
【0078】
[実施例4]
他の血清型におけるAAV肝臓トグルの生成および試験
同様に、
図15は、Anc80L65、AAV3B、およびAAV9血清型、ならびに
肝臓トグルの仮説を試験するために構築したバリアントのC末端におけるαトグル(ND
N)に方向づけられた、肝臓トグル領域の配列アラインメントである。Anc80L65
、AAV3B、およびAAV9、ならびに他のバリアントを、マウス(M)または霊長類
(P)の肝臓においてin vivoで試験した。このような血清型についてのマウス肝
臓形質導入効率は、最後の2列において「オン」または「オフ」により示す。完了した実
験についての表現型は、太字で示し、なお進行中の実験についての表現型は、イタリック
体で示す。
【0079】
本明細書において同定する単一残基の肝臓トグルの他に、肝臓トグル領域全体は、トグ
ル機能を異種血清型に移入すると同時に、肝臓トグル源血清型の所望の他の特徴を保持し
得る。
図16では、このような残基に隣接する保存されたドメインを利用することによる
肝臓トグル領域の移植性を迅速かつ容易に試験する方法を記載する。この約100~11
0bpの領域の増幅またはde novo合成により、異種血清型への相同性特異的会合
が可能となる。
【0080】
図17では、この試験の一部、および
図16に例示するように会合させた肝臓トグル領
域スワップを列挙する。最後の2列では、この試験により決定したマウスおよび霊長類に
おけるin vivoでの肝臓トグル機能を太字で、または予想された肝臓トグル機能を
イタリック体で記載する。
【0081】
Huh7肝臓癌細胞のin vitroでの形質導入は、すべての肝臓トグルバリアン
トの生存率を試験すること、このようなバリアントのin vivoでの肝臓トグル「オ
ン」または「オフ」表現型を示唆することの両方でin vitroで役立つ。
図18お
よび
図19に説明するように、ベクター送達ルシフェラーゼ発現により判定すると、力価
について正規化した場合、改変バリアントのほとんどは、驚くべきことに、安定とはなら
ないまでも、いくらかの生存率を提示した。さらに、観察されたルシフェラーゼ活性の量
は、Anc80に相当する位置の肝臓オン「G」を有するこのようなバリアントが、肝臓
オフ「A」のこれらの同胞よりも高いRLU値を有したという点において、予想された肝
臓トグル表現型と適合した。
【0082】
重要なことには、トグルは、Anc80の266位に相当する位置においてin vi
voで実証され、これは、AAV9において267位である。AAV9において、G26
7をAに変更すると、
図20および
図21に説明するように、生存中のルシフェラーゼシ
グナル、1細胞あたりのゲノムコピーおよび送達されたマーカー発現が、肝臓において桁
違いに低下する。さらに、他のトグル領域残基の変更の必要性は、トグル単独変異体AA
V9 G267Aに対する二重変異体AAV9 G267A S269Tの優れた能力に
より実証される。二重変異体は、肝臓「オフ」表現型を示すだけでなく、この結果は、心
臓および骨格筋への遺伝子送達の利点を示唆する。
【0083】
NHP、FRGマウスによるヒト肝臓異種移植モデル、およびin vitroでのヒ
ト肝臓モデルによるさらなる研究により、AAVによる肝臓遺伝子送達に影響する第2の
位置が同定され、本明細書において「肝臓トグル2」と呼んだ。このトグルは、Anc8
0足場の残基X1によりコードされ、Anc80L65の168位に対応する。
【0084】
図22は、推定の肝臓トグル「オフ」ウイルスAAV3Bを、A266をGに変更して
Tを2残基C末端に挿入するか(配列番号9)、または268位の残基をSからTに変更
するか、もしくは変更せずにGをA266の前に挿入するか(配列番号11)のいずれか
により、肝臓「オン」とすることができることを生存中のルシフェラーゼ発現により実証
する。肝臓「オフ」の予想は、このような後者2つのバリアントのA「オフ」挿入の適合
により観察される(配列番号10)。さらに、天然AAV3B肝臓トグル「オフ」領域を
、AAV9(配列番号14)およびAnc80L65(配列番号15)由来の肝臓トグル
「オン」領域とスワップすると、マウス肝臓形質導入も向上する。肝臓トグル「オフ」A
nc80L65 G266Aにおいてスワップすると、in vivoでのルシフェラー
ゼ発現が、この「オン」対応物Anc80L65と比較して低下する(配列番号16)。
【0085】
図24では、臨床的に適合する血清型およびAncAAVにおけるX1の位置および局
所的状況を同定する。これは、AAV5を除くすべてのAAVの配列アラインメントによ
り容易に同定可能な、VP2のN末端に近い正荷電モチーフに位置し、このVP2 N末
端は、残基17~20個分短い。それにもかかわらず、すべての血清型は、この保存され
た隣接残基:残基2個分N末端のプロリンおよび残基1個分C末端のリジンに対する関連
性により肝臓トグル2を定義することができる。
【0086】
図25および
図26では、肝臓トグル2の肝臓濃縮に対する適合性を例示する。
図25
では、実験により、野生型C57BL/6マウス、およびヒト肝臓異種移植マウスモデル
FRGのマウス肝細胞成分の両方におけるAnc80バリアントの濃縮を検索した。
図2
6では、実験により、アカゲザル肝臓、FRG実験による相互的ヒト肝細胞、およびマイ
クロパターン共培養(MPCC)と呼ばれる技術を使用してin vitroで培養した
ヒト肝細胞におけるAnc80バリアントの濃縮を検索した。いずれの場合も、肝臓濃縮
されたバリアントが、付随するMAプロットから選択されると、肝臓トグルX3の適合性
が明らかとなった。加えて、X1位の適合性は明らかであり、ランク順に下位から上位ま
で濃縮が上昇するにつれて、バリアントによりトグル0=Kからトグル1=Rに切り替わ
った。このパターンは、X1位の肝臓トグル2は、X3位の肝臓トグルに依存しないが、
X3のトグルは、優位な位置であることを示唆する。
【0087】
AAV3Bは、肝細胞への効率的移入のためにはヒト肝細胞増殖因子受容体(HuHG
FR)に依存するという発見以来(Ling et al., 2010, Hum. Gen. Ther, 21(12): 1741-
1747)、臨床的に適合する血清型として好評を得ている。この発見以前は、この血清型は
、マウスにおけるこの不十分な肝臓送達能力のため、遺伝子治療では却下されていた。そ
れにもかかわらず、ほとんどの前臨床疾患モデルは、マウスにおいてであり、このような
マウスモデルは、例えば、効率、安全性の判定、および遺伝子治療薬の用量の決定におい
て重要な役割を果たす。AAV3Bが、所望の治療特性を保持すると同時に、マウスにお
ける肝臓送達能力が霊長類と同レベルまで向上するようにAAV3Bを改変することは、
産業にとって非常に有用である。AAV3Bは、Anc80と比較して、短縮されたVR
Iおよび肝臓トグル領域を有し、これにより、Anc80の266位に相当する位置とし
て残基を割り当てることが困難となっている(
図14および
図15を参照)。
【0088】
266位のAのGへの変更では、Huh7細胞への遺伝子送達は向上せず、実際、この
変更により、機能喪失表現型がAAV3Bに生成され得る。所望の特性の改変において、
肝臓トグル領域全体を考察する必要性を強化して、AAV3Bにおける相当する位置のT
のAnc80への挿入と同時にA266のGへの変更、またはAnc80における相当す
るであろう位置におけるAもしくはGのいずれかの挿入により、Huh7細胞およびin
vivoにおいて、肝臓「オン」および「オフ」の両表現型を示すバリアントが生成さ
れる(
図19および
図22)。さらに、AAV3Bは、肝臓トグル領域スワップに良好な
耐容性を示すと考えられ、AAV9およびAnc80L65から肝臓「オン」肝臓トグル
領域を移入すると、このようなバリアントのHuh7およびin vivoでのマウス肝
細胞遺伝子送達が、AAV3B単独に対して向上する。肝臓「オフ」Anc80L65
G266A肝臓トグル領域を移入すると、この能力がバックグラウンドレベル付近まで低
下する(
図19および
図22)。重要なことには、GをG265とA266の間へ単一挿
入すると、肝臓におけるルシフェラーゼシグナルにより判定する場合、マウスにおいてA
AV9と同等の能力を有する、3Bをベースとする血清型が生成される(
図22)。
【0089】
他の実施形態
本発明の方法および組成物は、いくつかの異なる態様とともに本明細書において記載さ
れているが、種々の態様についての前述の記載は、例示であり、本発明の方法および組成
物の範囲を制限しないことを意図することが理解されるべきである。他の態様、利点、お
よび修飾形態は、以下の特許請求の範囲内に存在する。
【0090】
使用可能であり、ともに使用可能であり、準備において使用可能である方法および組成
物、または開示する方法および組成物による生成物を開示する。これらおよび他の材料を
本明細書において開示し、これらの方法および組成物の組合せ、サブセット、相互作用、
群等を開示することが理解される。すなわち、種々の各個体ならびにこれらの組成物およ
び方法の集合的組合せおよび順列への特定の参照は、明示的には開示しない場合があるが
、それぞれを詳細に熟慮して、本明細書において記載する。例えば、特定の組成物または
特定の方法を開示して考察し、いくつかの組成物または方法を考察する場合、組成物およ
び方法のありとあらゆる組合せおよび順列は、これらと矛盾するように詳細に指示しない
限り、詳細に熟慮する。また同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せは、詳細に
熟慮して開示する。
前記カプシドタンパク質が、その肝臓トグル領域においてAAV3B-VR1(SQSGASNDN、配列番号58)を含む改変を含むAAV9カプシドタンパク質である、請求項1に記載のアデノ随伴ウイルス(AAV)。
前記カプシドタンパク質が、その肝臓トグル領域においてAAV3B-VR1(SQSGASNDN、配列番号63)を含む改変を含むAAV80L65カプシドタンパク質である、請求項1に記載のアデノ随伴ウイルス(AAV)。
前記カプシドタンパク質が、その肝臓トグル領域においてAAV9-VR1(NSTSGGSSNDN、配列番号62)を含む改変を含むAAV80L65カプシドタンパク質である、請求項1に記載のアデノ随伴ウイルス(AAV)。