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特開2024-73452病原体、微生物及び寄生虫を不活化させる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073452
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】病原体、微生物及び寄生虫を不活化させる方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/44 20060101AFI20240522BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A01N43/44
A01P3/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024022832
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2021527022の分割
【原出願日】2019-07-26
(31)【優先権主張番号】62/711,241
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511313802
【氏名又は名称】ニューヨーク ブラッド センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アール.タバタヅェ
(72)【発明者】
【氏名】アイバン ビー.ヤナチコフ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ブイ.ザビジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブルース エス.サーチェイズ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA04
4H011BB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】試料、培地、組成物、実用品、装置、表面または生物において病原体、微生物または寄生虫を不活化または減少させる方法を提供する。
【解決手段】下式(I)のアルキル化剤化合物による処理に続いて、残存する構造Iを有する化合物の排除または低減を、構造Iを有するアルキル化剤化合物の毒性または他の望ましくない特性の排除または低減をするものである中和剤による処理を行うことで、病原体、微生物または寄生虫を不活化または減少させる方法である。

(R1~Rは、H、CH、CHCH等;nは3~5;mは1~10)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させる方法であって、
(i)構造Iを有する化合物:
【化1】
〔式中、
各R1は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキルもしくは置換フェニル基、または構造IIの部分:
【化2】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
各nは出現毎に独立して、3、4または5であり、
各mは出現毎に独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である〕、
またはその化学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物による前記試料の処理、
(ii)前記試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させるのに十分な時間にわたるインキュベーション、
(iii)
(a)前記構造Iを有する化合物の毒性もしくは他の望ましくない特性を排除もしくは低減する1つ以上の中和剤による、または
(b)前記構造Iを有する化合物の吸収かそれとの共有結合かさもなければその隔離をする1つ以上の固相剤による、
前記試料の処理
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記構造Iの化合物が、構造IA:
【化3】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニル基、または構造IIAの部分:
【化4】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
各bは出現毎に独立して、0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造Iの化合物が、構造IB:
【化5】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
bは0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の中和剤が、前記構造Iの化合物のアジリジン環と反応してそれを開環させることによって前記構造Iの化合物のアルキル化特性を排除する求核性化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の中和剤が、
チオスルフェート、好ましくはチオ硫酸ナトリウム、チオホスフェート、好ましくはチオリン酸ナトリウム、チオ尿素もしくは置換型チオ尿素、チオカルボン酸及びその塩、ジチオカルボン酸及びその塩、チオ炭酸塩、ジチオ炭酸塩、チオ炭酸O-エステルの塩、ジチオ炭酸O-エステルの塩、メルカプタンすなわちチオールもしくはそれらの塩、または置換メルカプタンすなわち置換チオール、またはポリメルカプタンすなわちポリチオール及びそれらの塩、またはそれらの任意の組合せ、または
共有結合によって結合しているメルカプトすなわちチオール基、チオスルフェート、チオホスフェート、チオ尿素、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオ炭酸O-エステル、ジチオ炭酸O-エステルもしくはそれらの組合せを含有しており水性媒体に可溶である有機ポリマー
である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の中和剤が、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、2-(メチルアミノ)エタンチオール、2-アミノエタンチオール、2-(ジメチルアミノ)エタンチオール、2-メルカプト-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム及びその塩、チオカルボン酸及びその塩、チオ酢酸及びその塩、チオプロピオン酸及びその塩、チオシュウ酸及びその塩、チオマロン酸及びその塩、チオコハク酸及びその塩、チオグリコール酸及びその塩、チオ乳酸及びその塩、ジチオカルボン酸及びその塩、ジチオ酢酸及びその塩、2-メルカプト酢酸及びその塩、2-メルカプトプロピオン酸及びその塩、2-メルカプト酢酸エチル、2-メルカプトコハク酸ならびにその塩及びエステル、2-(メチルスルホニル)メタンチオール、(エチルスルホニル)メタンチオール、スルホニルジメタンチオール、2,2,2-トリフルオロエタンチオール、1H-イミダゾール-5-チオール、イミダゾリジン-2-チオン、1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-チオン、ピリジン-2-チオール、4-チオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-2(1H)-オン、2-チオキソジヒドロピリミジン-4,6(1H,5H)-ジオン、2-メルカプト安息香酸及びその塩、4-メルカプト安息香酸及びその塩、チオフェノール、2-、3-もしくは4-メルカプトアニソール、2-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、2,3-ジメルカプトプロパノール、または1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、ならびにそれらの組合せである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中和剤が固相担体に共有結合している、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記固相担体が、多孔性、微多孔性またはゲル状の有機ポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機ポリマーが、親水性有機ポリマー、または水性媒体中での湿潤もしくは膨張もしくは膨潤が可能なポリマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機ポリマーが、好ましくは架橋されており、
ポリスチレンポリマー、あるいはポリアクリレートポリマー、あるいはポリメタクリレートポリマー、あるいはポリウレタン系ポリマー、あるいはポリアミド系ポリマー、あるいはデキストラン系ポリマー、例えば、限定されないが、セファデックス(登録商標)、あるいはアガロース系ポリマー、例えば、限定されないが、セファロース(登録商標)、あるいはセルロース系ポリマー、あるいは変性セルロース系ポリマー、例えば、限定されないが、カルボキシメチルセルロースまたはジエチルアミノエチルセルロースまたはメチルセルロース、あるいは他の多糖系ポリマー、あるいは他の任意の直鎖型、分岐型または架橋型の、ホモもしくはヘテロポリマーまたはイソ型もしくはアタクチック型配置もしくは他の立体規則性を有するブロックコポリマーである、あるいは、
前記被処理媒体に不溶な他の任意の適切な巨大分子であってもよい、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記中和剤の前記求核性基が、
前記ポリマーの主鎖に直接結合しているか、あるいは
二価基、例えば、酸素原子、硫黄原子、-NH-基、メチレン基、一置換もしくは二置換メチレン基、エチレンもしくは置換エチレン基、プロピレンもしくは置換プロピレン基、オキシメチレンもしくはオキシエチレン基、または二価、三価もしくは多価リンカー、例えば、限定されないが、オリゴもしくはポリオキシエチレン、オリゴもしくはポリエステル、もしくはポリアミド型リンカーによって結合したものであり得、
前記リンカーが直鎖型または分岐型またはデンドリマー型であってもよく、それに結合している1つ、または1つより多い、または多くの求核性基を含有していてもよい、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
残存する前記構造Iの化合物を前記中和剤と接触させた後、前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の生成物、及び/または余剰の前記中和剤が、
前記被処理媒体に不溶な固相剤であって前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の生成物及び/または前記中和剤との化学反応及び共有結合かその吸収かさもなければ隔離をする前記固相剤による前記被処理試料の処理、ならびに
それに続く前記固相剤からの前記被処理試料の除去
によって前記被処理試料から低減または除去される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記固相剤が、前記構造Iの化合物の前記中和もしくは分解の生成物、及び/または余剰の前記中和剤を吸収する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固相剤が、活性炭、または逆相樹脂、または多孔性もしくは微多孔性疎水性有機ポリマー、例えば、ポリスチレン樹脂、またはジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂、またはC4-C18アルキル基などの疎水性有機基で修飾されたポリアクリレートもしくはポリメタクリレート樹脂である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
残存量の前記構造Iの化合物を含有する前記試料に前記1つ以上の中和剤が1分~48時間、好ましくは20分~24時間、よりいっそう好ましくは60分~8時間の期間にわたって、0~100℃、好ましくは10~60℃、よりいっそう好ましくは20~40℃の温度で、1~14、好ましくは4~9、よりいっそう好ましくは6~8のpHで、1 M以下、好ましくは0.1 M以下の濃度、よりいっそう好ましくは10 mM以下の濃度で接触する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
残存する前記構造Iを有する化合物の濃度が、前記中和剤による処理の後に少なくとも2対数、好ましくは少なくとも3対数、より好ましくは少なくとも4対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも5対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも6対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも7対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも8対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも9対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも10対数だけ低下する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記病原体または望ましくない生物が、
エンベロープウイルス及びノンエンベロープウイルス、DNAもしくはRNAウイルスならびにバクテリオファージを含めたウイルス、
プリオン、原核生物、グラム陽性もしくはグラム陰性菌を含めた細菌、芽胞形成菌もしくは細菌芽胞、マイコプラズマ、古細菌、及び細菌膜;
真菌、原生動物、単もしくは多細胞寄生虫、寄生蠕虫、住血吸虫もしくは線虫、もしくはそれらの卵、単もしくは多細胞藻類、及び甲殻類を含むがこれらに限定されない、真核生物、単もしくは多細胞真核生物、または
バイオフィルムもしくは生物汚損系、または
それらの任意の組合せ
などの感染症原因生物のうちの1つ以上である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、組成物、実用品、表面、装置または生物である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、血液または血液製品、体液、真核生物由来または原核生物由来の培地、ワクチン配合組成物、生物製剤または生物学的製剤、臨床試料、生検材料、研究試料、化粧品、医薬組成物、消耗品、機器、水中用流体導管、パイプ、ホース、熱交換器または水上船、及びそれらの表面である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が血液または血液製品である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業界及び研究で医薬、生物製剤、医療装置及び化粧品における病原体、微生物または寄生虫の不活化または低減に使用するための組成物及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、アルキル化剤化合物による処理に続いて、残存するアルキル化剤化合物及び/またはその副生成物を排除または低減することによって、試料、培地、組成物、実用品、装置、表面または生物において病原体、微生物または寄生虫(例えば汚染物質)を不活化及び/または減少させるための組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
総じて、既存の病原体及び感染性疾患生物、ならびに新たに出現したもの及び他の望ましくない生物(例えば汚染物質)は、バイオフィルムまたは生物汚損物などの構造体を含めて、医薬、製造業、医薬品生産、生物製剤、化粧品、食品、医療装置、研究を含む様々な分野、及び他の産業において重大な問題を生じさせる。それゆえ、多種多様な試料、例えば、生物、あるいは製品及び組成物、例えば、食品、薬物、植物、血液または血液製品、体液、真核生物由来または原核生物由来の培地、ワクチンまたはワクチン配合組成物、化粧品、生物製剤及び医薬組成物、あるいは家庭用、産業用もしくは医療用の器具、装置もしくは実用品、例えば、流体導管、熱交換器もしくは水上船、またはそれらの表面において、病原体または望ましくない生物を不活化させることが重要である。
【0003】
現在、試料及び組成物及び実用品において生物を不活化させるための、普遍的な病原体、望ましくない微生物、または寄生虫を低減する広く適用可能な技術はない。いくつかの両親媒性第四級アンモニウム塩は、とりわけ高い濃度において、非常に汎用性のある消毒剤であるが、それらはノンエンベロープウイルスに対して不活性である。小さな反応性分子、例えば、塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、エチレンオキシド、臭化メチル、ホルムアルデヒドまたはオゾンは広義の抗菌剤であり、あらゆる生命体に対して毒性であるが、それらの反応性、とりわけタンパク質に対する反応性が高いため、それらを生物製剤、輸液製品及び生体内に広範に使用することができない。しかも、それらの化学反応性はしばしばそれらを多くの用途に適さないものにする。
【0004】
病原体の核酸の標的化及び不活化は、病原体の複製及び感染性を防ぐための普遍的手法であり、あらゆる部類の病原体-ウイルス、細菌、真菌、プリオン、原生動物及び他の寄生虫または望ましくない生物に対して適用され得る。いくつかの既存の方法は、インターカレーター、例えば、メチレンブルー、ソラレン誘導体(米国特許第6,455,286号及び第6,133,460号)及びリボフラビン(米国特許第7,985,588号)を使用することでこの手法を利用しているが、これらのインターカレーターは、核酸に選択的に結合し、光活性化された時にそれに損傷を与え、これによって広範な抗病原体活性を与えるものである。例えば、Estcourt et al.,Jory et al.,Magron et al.及びYonemura et al.は、光増感性化合物を使用することによる血漿及び血小板などの半透明血液成分における病原体不活化について記載している(Estcourt LJ,Malouf R,Hopewell S,Trivella M,Doree C,Stanworth SJ,Murphy MF),Pathogen-reduced platelets for the prevention of bleeding.Cochrane Database Syst Rev.2017;7:CD009072,doi:10.1002/14651858.CD009072.pub3,PubMed PMID:28756627、Jori G,Brown SB.Photosensitized inactivation of microorganisms.Photochem.Photobiol.Sci.2004;3(5):403-5,doi:10.1039/b311904c.PubMed PMID:15122355、Magron A,Laugier J,Provost P,Boilard E.Pathogen reduction technologies:The pros and cons for platelet transfusion.Platelets.2018;29(1):2-8,doi:10.1080/09537104.2017.1306046,PubMed PMID:28523956、Yonemura S,Doane S, Keil S,Goodrich R,Pidcoke H,Cardoso M.Improving the safety of whole blood-derived transfusion products with a riboflavin-based pathogen reduction technology.Blood Transfus.2017;15(4):357-64,doi:10.2450/2017.0320-16,PubMed PMID:28665269)。これらの方法の顕著な欠点は光活性化の必要性であり、このためにそれらの用途は半透明成分のみに制限され、全血製剤または赤血球製剤などの重要な生物製剤にそれらを用いることができない。
【0005】
核酸のアルキル化によって病原体または他の汚染物質を不活化させるアルキル化剤化合物は、光活性化を必要とせずに病原体を不活化させるために使用することができる。この手法の難題は、病原体の細胞壁、膜及びエンベロープを効果的に透過する、ならびに生物製剤タンパク質の修飾を回避するための十分な選択性を有している、化合物を開発することである。病原体をアルキル化する不活化剤の最も選択的なものの代表、例えばPEN110(N-(2-アミノエチル)アジリジン)及びアルキル化インターカレーターS303でさえ、核酸に対する不十分な特異性を示し、他の生物学的化合物(例えばタンパク質)に対する残存反応性を有する。これは、そのようなアルキル化剤を輸液用血液製品の処理に使用した場合に新生抗原の形成を招きかねない(Sobral PM et al.,Viral inactivation in hemotherapy:systematic review on inactivators with action on nucleic acids.Rev Bras Hematol.Hemoter.2012;34(3):231-235,doi:10.5581/1516-8484.20120056,PubMed PMID:23049426、Conlan MG et al.,Antibody formation to S-303-treated RBCS in the setting of chronic RBC transfusion.Blood 2004;104(11):382)。殺菌剤としての他のモノアジリジン-ポリアミン複合体が米国特許第6,617,157号に開示され、病原体の核酸への選択的指向のためのアルキル化剤部分で修飾されたインターカレート剤が米国特許第6,410,219号及び第5,691,132号に開示された。開示された構造及び方法の欠点は、それらが所要の核酸選択性を獲得せず、タンパク質修飾を回避しないということである。
【0006】
米国特許第10,173,976号は、これをもって参照によりその開示が援用されるが、ポリアミン構築物を介して相互に連結された2つ以上のアジリジニル基を有する組成物及び化合物について記載しており、これは、核酸に対する高く選択的な親和性を有し、タンパク質を修飾する低い傾向を有し、試料中の病原体、原核生物もしくは真核生物の核酸(例えばDNA及び/またはRNA)、またはプリオン関連核酸を高い選択性で不活化させることができる。
【0007】
病原体不活化剤として使用するために核酸を標的とするこれと他の一般的なアルキル化剤の短所は、(例えば、生物、組成物、試料、装置、器具または実用品の中か上に)残存するアルキル化剤化合物が有毒であり得、病原体不活化直後に、あるいは後の使用中に害を及ぼし得るということである。この短所は、病原体不活化後の抗病原体剤の除去、またはその不活性化(失活)、すなわちより害の少ないもしくは無害な物質への変換によって対処され得る。
【0008】
米国特許第7,293,985号は、これをもって参照によりその開示が援用されるが、マスタード基が系中で反応して求電子基を形成できるものであるマスタード型アルキル化剤が連結されている核酸インターカレーターを含んでいる病原体不活化剤化合物を、試験管内で失活させるための、チオール、好ましくはグルタチオン、システイン残基を含有するジペプチドの使用について記載している。この方法の欠点は、それがこの種の核酸指向性アルキル化剤の十分な不活性化をもたらさず、この方法で処理された血液をヒトに輸注した場合に新生抗原及び自己免疫性副作用が発生するということである(Conlan MG et al.,Antibody formation to S-303-treated RBCS in the setting of chronic RBC transfusion.Blood 2004;104(11):382)。
【0009】
米国特許出願第20040137419号は、これをもって参照によりその開示が援用されるが、処理された組成物から正に帯電した制菌性化合物、特に、PEN110、N-(2-アミノエチル)アジリジンをカチオン交換樹脂の使用によって除去する方法について記載している。
【0010】
米国特許第6,544,727号は、これをもって参照によりその開示が援用されるが、血液製品からソラレン及び光照射後に形成されたソラレン光産物を除去するための方法及び装置について記載している。方法は、ソラレン及び照射によって処理された血液製品と、ソラレン及びソラレン光産物を吸着できる樹脂とを接触させることを含む。
【0011】
当技術分野では、広範な分野及び用途に適用され得る改良された病原体不活化の方法、詳しくは、処理試料中のタンパク質及び他の物質を温存する病原体不活化の方法、ならびに処理試料中に毒性化合物がほとんどまたは全く残らない方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
一態様において、本発明は、アルキル化剤化合物による処理に続いて、残存するアルキル化剤化合物及び/またはその副生成物を排除または低減することによって、(生体試料、培地、組成物、実用品、装置、表面、生物などを含めた)試料において病原体、微生物、感染性物質、例えばプリオン、または寄生虫(例えば汚染物質)を不活化及び/または減少させるための組成物及び方法を提供する。残存するアルキル化剤化合物の排除または低減は、アルキル化剤化合物との反応かさもなければその隔離をする固相剤で処理することによって、あるいはアルキル化剤の毒性または他の望ましくない特性の排除または低減を、好ましくはそのアルキル化特性の排除によってするものである中和剤化合物の溶液で処理し、場合によってはそれに続けて、アルキル化剤化合物の中和の生成物及び/または余剰の中和剤化合物の隔離をする固相剤でもってそれらを除去することによって、実施され得る。
【0013】
一実施形態では、本発明は、試料中の病原体、微生物、感染性物質または寄生虫(例えば汚染物質)を不活化または減少させる方法であって、(i)構造Iを有する化合物または複数の化合物:
【0014】
【化1】
【0015】
〔式中、
各R1は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
各R2は出現毎に独立して、H、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、アルケニル、シクロアルキルもしくはフェニル基、または構造IIの部分:
【0016】
【化2】
【0017】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
nは出現毎に独立して、3、4または5であり、
mは出現毎に独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である〕、
またはその化学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物による試料の処理、ならびに
(ii)化合物との反応かさもなければその隔離をする固相剤で処理することによる、あるいは構造Iを有する化合物の毒性または他の望ましくない特性の排除または低減を、好ましくはそのアルキル化特性の排除によってするものである中和剤化合物の溶液で処理し、ある場合にはそれに続けて、構造Iを有する化合物の中和の生成物及び/または余剰の中和剤化合物を隔離する固相剤でもってそれらを除去することによる、残存する構造Iを有する化合物(複数可)の排除または低減
を含む、当該方法を提供する。
【0018】
構造Iの化合物は、高い親和性で核酸に結合してそれをアルキル化によって高い効率で不活化させるポリアミン構築物によって連結された、少なくとも2つのアジリジン基を含有する。加えて、化合物は、高い効率でウイルスエンベロープ及び/またはカプシドを透過し、細菌及び真核生物ポリアミントランスポーターによって積極的に取り込まれ、タンパク質に対する結合及び修飾の低い傾向を示す。構造Iの化合物は、真核細胞に対して細胞毒性であるため、無毒化、または被処理試料、組成物、実用品もしくは生物からの除去がなされる必要がある。
【0019】
一実施形態では、本発明の方法は、残存する構造Iの化合物を中和剤化合物との反応によってより毒性が少ないまたは無毒な化合物に変換することを表しているが、これによって構造Iの化合物のアルキル化特性が例えばアジリジン環の開環によって排除される。中和剤化合物は、求核性化合物、例えば、チオスルフェート、チオホスフェート、チオ尿素、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオ炭酸O-エステル、ジチオ炭酸O-エステル、またはメルカプタンすなわちチオール(好ましくは、6~8のpKaを有するかまたはメルカプトすなわちチオール基がsp2または部分的sp2混成の炭素原子に結合しているメルカプタンすなわちチオール)である。
【0020】
ある場合には、構造Iの化合物の中和(失活ともいう)の生成物、または残存する中和(失活)剤化合物はそれら自体、被処理試料またはその将来的使用に対して望ましくない影響を及ぼす可能性がある。別の実施形態では、方法は、被処理媒体に不溶であり中和の生成物及び/または余剰の中和剤化合物(複数可)との化学反応及び共有結合かその吸収かさもなければ隔離をする固相剤の使用、ならびにそれに続く固相剤の除去によって、中和の生成物及び/または中和剤化合物(複数可)を除去または低減することを含む。固相剤は、メルカプタン型すなわちチオール型の中和剤化合物との反応及びその隔離をするチオスルフェート基(-S-SO3 -Na+)もしくはエポキシ基で官能化されていてもよいし、またはイオン交換によって中和のカチオン型生成物もしくはアニオン型の中和剤化合物を隔離する陽イオン交換樹脂もしくは陰イオン交換樹脂である固相剤、または高い親和性でポリアミンもしくは硫黄含有有機部分を吸収する活性炭などの吸収固相剤であってもよい。
【0021】
方法の別の実施形態では、構造Iの化合物による病原体含有試料の処理の後、残存する化合物を、構造Iの化合物(複数可)との反応及び共有結合をする反応性基を含有する固相剤による処理、ならびにそれに続く濾過または他の手段による固相剤の除去によって、除去する。そのような反応性基の例は、チオスルフェート、-OS(O)(O-)S-;チオスルホナート-S(O)(O-)S-;メルカプトすなわちチオール基、置換型のメルカプトすなわちチオール基、チオ尿素、チオカルボン酸もしくはジチオカルボン酸、チオ炭酸もしくはジチオ炭酸O-エステル、チオホスホナート、またはチオホスフェートである。チオール基のpKaは9未満、より好ましくは8未満であり得る。別の実施形態では、固相剤は、反応性基のみならず、構造Iの化合物と反応せずにその反応性の増強をそのプロトン化、またはその局所濃度を増加させるそれとの非共有結合、または反応性基の反応性の増強によって行う他の基も、含有する。さらに別の実施形態では、固相剤は、水性媒体中でのその濡れ性を向上させ被処理媒体の成分に対するその望ましくない作用を低減するポリエチレングリコールなどの非反応性の親水性基を含有する。
【0022】
別の実施形態は、残存する構造Iの化合物との複数のイオン対を形成してそれによって高効率にそれを保持する陽イオン交換樹脂として、固相剤を特徴付ける。
【0023】
いくつかの実施形態は、動物またはヒトにおいて生体内で病原体を不活化させる方法を提供し、この場合、構造Iの化合物は、好ましくは製剤化されて、動物またはヒトに適用され、構造Iの化合物の中和または除去は生体外で血漿または血液などの体液に対して行われ、次いでこれらが元の動物またはヒトに戻される(輸液される)。別の実施形態では、構造Iの化合物による処理と、その除去、またはその中和ならびに行われ得る中和生成物及び中和剤化合物の除去とが両方とも、アフェレーシスで採取されたものであることが好ましい動物またはヒトの体液、例えば血液または血漿に対して生体外で行われ、後にそれは動物またはヒトへ戻される。
【0024】
さらには、輸液を意図した全血、赤血球または他の血液製品の病原体不活化のための方法に従って用いられる閉鎖型システムも本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】リンカーLを介して結合した求核性チオール基を有し付属のアニオン性スルホ基がポリマーPマトリックスに直接結合している固相剤との構造Iの化合物の相互作用を示す。
図2】採血バッグ内に抗凝固剤溶液と一緒に製剤化された構造Iの化合物によって病原体不活化が成し遂げられる全血採取のための、及び被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによる残存する構造Iの化合物の除去のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図3】採血バッグ内に予備充填された構造Iの化合物の固体製剤によって病原体不活化が成し遂げられる全血採取のための、及び被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによる残存する構造Iの化合物の除去のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図4】構造Iの化合物の液体製剤によって病原体不活化が成し遂げられる全血採取のための、及び不活性化剤の液体製剤による残存する化合物の中和のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図5】構造Iの化合物の液体製剤によって病原体不活化が成し遂げられる全血採取のための、及び被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによる残存する構造Iの化合物の除去のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図6】構造Iの化合物の液体製剤によって病原体不活化が成し遂げられる全血採取、不活性化剤の液体製剤による残存する化合物の中和、及び固相剤による構造Iの化合物の中和の生成物の除去のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図7】構造Iの化合物の液体製剤によって病原体不活化が成し遂げられる全血採取、固相剤による残存する構造Iの化合物の除去、白血球濾過、ならびに白血球除去済み血液からの赤血球濃厚液(RBCC)及び血漿の分離のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図8】全血採取、ならびに構造Iの化合物の液体製剤によって病原体不活化が成し遂げられる白血球濾過、固相剤による残存する構造Iの化合物の除去、ならびに被処理血液からの赤血球濃厚液(RBCC)及び血漿の分離のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図9】全血採取、構造Iの化合物の液体製剤による病原体不活化、遊離ビーズとしてのまたは半透性材料の中に予備充填された固相剤による残存する構造Iの化合物の2段階除去、白血球濾過、ならびに白血球除去済み血液からの赤血球濃厚液(RBCC)及び血漿の分離のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図10】全血採取、構造Iの化合物の固体製剤による病原体不活化、及び不活性化剤の液体製剤による残存する化合物の中和のための、全血一体的処理閉鎖型システムを示す。
図11】製剤を溶解させるための溶媒の容器には破壊可能な封止材によって連結されており、処理される試料を有する容器には別の破壊可能な封止材によって連結されている、構造Iの化合物の固体製剤が入った容器を示す。
図12】カートリッジに充填された固相剤の無菌予湿のための閉鎖型システムを示す。
図13】固相剤のすすぎ洗いをその使用の前に行うための閉鎖型システムを示す。システムは、無菌条件下での方法による試料の処理のための閉鎖型システムに組み込まれている。
図14】37℃で0時間(上)及び6時間(下)にわたってPBS(pH6.7)中で200μMの化合物Xと共にインキュベートされた10μMの21merのオリゴデオキシリボヌクレオチド(5’ ATA CCT CAT GGT AAT CCT GTT 3’)のHPLC分析を示す。
図15】化合物X(100μM)の添加の前(上のスペクトル)及び6分後(下のスペクトル)の、PBS中100μMの23merのオリゴヌクレオチドの質量分析を示す。観測されたイオン(m/z1845.22及び1933.54)は、マイナス4の荷電状態を有し、質量7384.9Da(オリゴヌクレオチド、質量計算値7384.0Da)及び7738.2Da(化合物Xとのオリゴヌクレオチドの共有結合性一付加物、質量計算値7737.3Da)の中性分子に対応する。
図16】化合物X(上、1mM;中央、100μM;下、化合物Xなし、対照)と共に40℃で30時間インキュベートした後の8μMのシトクロムCのESI+質量分析を示す。MSピークは右から左に、シトクロムCの7x、8x、9x、10xの正に帯電した分子イオンに対応する
図17】化合物VI及びXに結合している抗Fタンパク質mAbが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を不活化したことを示す。A:未処理(Ctr)及び100μMの化合物VIまたは化合物Xで不活化されたRSVに対する、mAbの結合性(どれも40℃で4時間インキュベートした)。B:未処理(Ctr)及び100または500μMの化合物VIで不活化されたRSVに対する、mAb D25の結合性(どれも室温で6時間インキュベートした)。
図18】室温におけるPBS中での2-メルカプト酢酸エチルによる化合物Xの中和の速度論を示す。化合物Xの濃度は0.022min-1の一次速度定数で減少し、中間体Q1 XXIの濃度は0.026min-1の一次速度定数で減少する。
図19】1mMのチオ硫酸ナトリウムと共にインキュベートする間の化合物VIの濃度の対数プロットを示す。
図20】化合物Xの中和の速度のプロットを示す。Aは、化合物Xの中和の速度、ならびに化合物XXIV及びXXVの形成の速度を示す。Bは、化合物X濃度の対数プロットを示すが、これは線形依存性を明らかにしており、化合物XのT1/2=16.6分の半減期に対応して一次速度定数をK=-0.0416min-1とする一次反応速度論を示している。
図21】100秒間インキュベートした後の、チオフェノールによる化合物Xの中和のLCMS分析のマスクロマトグラムを示す(左パネル)。化合物Xならびにその中和生成物XXVI及びXXVIIに対応するピークのマススペクトルを右パネルに示す。分析は、100秒後に化合物Xがかなりの程度で中和されていることを明らかにしている。
図22A】擬似処理及び化合物VIによる処理がなされた血清が48ウェルプレートにおける4つの異なる細胞株の成長に及ぼす影響を6~7日の期間を通して測定したものを示す。A、ブタPT細胞;B、ヒトA172細胞;C、ヒトMCF-7細胞;D、FBSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞;E、HSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞。T0の柱は、播種時の細胞数を表す。(1~7日目の)3つ並んでいるうちの1つ目の柱は、対照である未処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいるうちの2つ目の柱は、擬似処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいる柱のうちの3つ目の柱は、化合物VI処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数である。各時間点は3つのウェルの平均を表す。エラーバーは標準偏差を表す。
図22B】擬似処理及び化合物VIによる処理がなされた血清が48ウェルプレートにおける4つの異なる細胞株の成長に及ぼす影響を6~7日の期間を通して測定したものを示す。A、ブタPT細胞;B、ヒトA172細胞;C、ヒトMCF-7細胞;D、FBSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞;E、HSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞。T0の柱は、播種時の細胞数を表す。(1~7日目の)3つ並んでいるうちの1つ目の柱は、対照である未処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいるうちの2つ目の柱は、擬似処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいる柱のうちの3つ目の柱は、化合物VI処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数である。各時間点は3つのウェルの平均を表す。エラーバーは標準偏差を表す。
図22C】擬似処理及び化合物VIによる処理がなされた血清が48ウェルプレートにおける4つの異なる細胞株の成長に及ぼす影響を6~7日の期間を通して測定したものを示す。A、ブタPT細胞;B、ヒトA172細胞;C、ヒトMCF-7細胞;D、FBSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞;E、HSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞。T0の柱は、播種時の細胞数を表す。(1~7日目の)3つ並んでいるうちの1つ目の柱は、対照である未処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいるうちの2つ目の柱は、擬似処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいる柱のうちの3つ目の柱は、化合物VI処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数である。各時間点は3つのウェルの平均を表す。エラーバーは標準偏差を表す。
図22D】擬似処理及び化合物VIによる処理がなされた血清が48ウェルプレートにおける4つの異なる細胞株の成長に及ぼす影響を6~7日の期間を通して測定したものを示す。A、ブタPT細胞;B、ヒトA172細胞;C、ヒトMCF-7細胞;D、FBSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞;E、HSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞。T0の柱は、播種時の細胞数を表す。(1~7日目の)3つ並んでいるうちの1つ目の柱は、対照である未処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいるうちの2つ目の柱は、擬似処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいる柱のうちの3つ目の柱は、化合物VI処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数である。各時間点は3つのウェルの平均を表す。エラーバーは標準偏差を表す。
図22E】擬似処理及び化合物VIによる処理がなされた血清が48ウェルプレートにおける4つの異なる細胞株の成長に及ぼす影響を6~7日の期間を通して測定したものを示す。A、ブタPT細胞;B、ヒトA172細胞;C、ヒトMCF-7細胞;D、FBSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞;E、HSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞。T0の柱は、播種時の細胞数を表す。(1~7日目の)3つ並んでいるうちの1つ目の柱は、対照である未処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいるうちの2つ目の柱は、擬似処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数であり、(1~7日目の)3つ並んでいる柱のうちの3つ目の柱は、化合物VI処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数である。各時間点は3つのウェルの平均を表す。エラーバーは標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書中で使用する「試料」という用語は、原核生物、単または多細胞真核生物、植物、動物、血液または血液製品、体液、真核生物由来または原核生物由来の培地、ワクチン配合組成物、生物製剤または生物学的製剤、臨床試料、生検材料、研究試料、化粧品、医薬組成物、消耗品、機器、水中用流体導管、パイプ、ホース、熱交換器または水上船、及びそれらの表面であり得る、培地、組成物、製品、装置、実用品または生物を指す。
【0027】
中和剤(neutralizer)、中和剤化合物または中和剤(neutralizer agent)という用語は、構造Iの化合物(複数可)の文脈で使用する場合、概して試料中の構造Iの化合物のアジリジニル基と反応してそれを開環させることができる分子を表す。
【0028】
本明細書に記載の方法の文脈で使用される「固相剤」という用語は、試料の媒体に不溶であり構造Iの化合物、または構造Iの化合物の不活性化の生成物、または構造Iの化合物の化学変換もしくは分解の生成物、または中和剤を試料から除去するために使用される固体として定義される。
【0029】
本明細書中で使用される「汚染物質」という用語は、ウイルス、細菌もしくは他の任意の微生物、プリオン、または、真菌、原生動物、単もしくは多細胞寄生虫、例えば、寄生蠕虫、住血吸虫もしくは線虫もしくはそれらの卵を含むがこれらに限定されない真核生物、単もしくは多細胞真核生物、単もしくは多細胞藻類、及び甲殻類、または他の任意の望ましくない生物もしくは感染性物質を含めた病原体を指す。本明細書中で使用される「汚染物質」という用語も、限定されないが細菌バイオフィルムまたは他の微生物バイオフィルム、地衣類、付着物または生物汚損堆積物を含めた望ましくない生物学的構造体を指し得る。
【0030】
本発明は、構造Iの化合物による処理、及びそれに続く残存する構造Iの化合物:
【0031】
【化3】
【0032】
〔式中、
各R1は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキルもしくは置換フェニル基、または構造IIの部分:
【0033】
【化4】
【0034】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
各nは出現毎に独立して、3、4または5であり、
各mは出現毎に独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である〕、
またはその化学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の除去または中和(失活)によって試料中の汚染物質を不活化/減少させる方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、構造Iの化合物は、構造IA:
【0036】
【化5】
【0037】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニル基、または構造IIAの部分:
【0038】
【化6】
【0039】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
各bは出現毎に独立して、0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、構造Iの化合物は、構造IB:
【0041】
【化7】
【0042】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
bは0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有し得る。
【0043】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基を含めた飽和脂肪族基のラジカルを指す。好ましい実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルはその主鎖に6個未満の炭素原子を有する(例えば、直鎖型ではC1-C6、分岐型ではC3-C6)。好ましいアルキル基としては、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、またはCH(CH32が挙げられる。
【0044】
「置換アルキル」という用語は、独立してF、Cl、OH、OCH3、OCH2CH3、OCH(CH32、OC(CH33、OC65、OCOCH3からなる群から選択される1~3個の置換基で置換された、上に示されるアルキル基を指す。
【0045】
「シクロアルキル」という用語は、環に3~6個の炭素を有する飽和炭素環基を指す。好ましいシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0046】
「アルケニル基」という用語は、1~3個の二重結合を有する、直鎖アルケニル基及び分岐アルケニル基を含めた不飽和脂肪族基のラジカルを指す。好ましい実施形態では、直鎖または分岐アルケニルはその主鎖に6個未満の炭素原子を有する(例えば、直鎖型ではC2-C6、分岐型ではC3-C6)。
【0047】
「置換アルケニル」という用語は、独立してF、Cl、OH、OCH3、OCH2CH3、OCH(CH32、OC(CH33、OC65、OCOCH3からなる群から選択される1~3個の置換基で置換された、上に示されるアルケニル基を指す。
【0048】
「置換フェニル」という用語は、独立してF、Cl、OH、OCH3、OCH2CH3、OCH(CH32、OC(CH33、OC65、OCOCH3からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されたフェニル基を指す。
【0049】
「アルキルオキシ基」という用語は、酸素原子によって結合している、上に定義されるアルキル基を指す。代表的なアルキルオキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。
【0050】
「アシルオキシ基」という用語は、構造-O-(C=O)-Rを有する基を指し、式中、Rは、上に示されるアルキル基または置換アルキル基である。
【0051】
本明細書中で使用する場合、各表現、例えば、アルキル、m、n、R1、R2、R3などの定義は、それが任意の構造中に1回よりも多く現れる場合、同じ構造中の他のどこかでのその定義とは独立したものであることを意図する。
【0052】
「置換されている」または「で置換された」は、そのような置換が置換された原子及び置換基の許容される価数に従っており、置換によって安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない化合物がもたらされるという暗黙の条件を含んでいることが理解されよう。
【0053】
上に述べたとおり、特定の実施形態では、構造Iの化合物は塩として存在する。好ましい塩は、構造Iの化合物の比較的無毒な無機及び有機酸付加塩である。これらの塩は、投与ビヒクルにおいて系中で調製されてもよいし、または別個に、遊離塩基の形態の精製された構造Iの化合物と好適な有機もしくは無機酸と反応させ、このようにして形成された塩を後の精製の間に単離することによって調製されてもよい。代表的な塩としては、臭化水素、塩化水素、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプシル酸塩(napthylate)、メタンスルホン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩及びラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照されたい)。スルフェート、パークロレート、メタンスルホナートまたはテトラフルオロボレートのように、アニオンの求核性が低いことが好ましい。
【0054】
構造Iの化合物は、2つ以上のアジリジニル基をその末端に有してポリアミンの性質を有する。これらの化合物は、試験管内または生体内で各々が正に帯電し得る複数の脂肪族窒素原子を有する。そのポリカチオン的性質及び正電荷間の適切な間隔ゆえに、化合物はポリアニオン性の核酸と選択的に結合してそれを好ましくはグアニンN7位置でアルキル化する。これは架橋をもたらし、病原体のゲノムを効果的に不活化させ、病原体の感染性を排除するかまたは生物を殺滅する。
【0055】
構造Iを有する化合物は、本明細書に開示される方法によって合成され得る。以下のスキーム、例えば、組成物及び化合物の合成は例示目的で示されており、決して本発明の範囲を限定する意図はない。当業者であれば、構造Iの化合物の異なる化学的手法及び合成スキームを容易に認識し得る。
【0056】
構造Iの化合物の合成方法を以下のスキームに示す。
【0057】
スキーム1は化合物IVの調製方法を示す:
【0058】
【化8】
【0059】
スキーム2は化合物VIの調製方法を示す:
【0060】
【化9】
【0061】
スキーム3は化合物Xの調製方法を示す:
【0062】
【化10】
【0063】
スキーム4は化合物VIの調製方法を示す:
【0064】
【化11】
【0065】
スキーム5は化合物VIの調製方法を示す:
【0066】
【化12】
【0067】
総じて構造Iの化合物は粘性油であり、水、水性緩衝液及び有機溶媒によく溶ける。それは、酸で処理された場合に塩形態に変換され得る。それをエーテルなどの非極性非プロトン性溶媒の中に含む溶液を化学量論量の酸無水物で好ましくは低温で処理した場合、その塩は沈澱し得、濾過によって単離され得る。本発明のいくつかの実施形態では、長期保存のために塩形態を油状形態の遊離塩基の代わりに使用する。
【0068】
構造Iの化合物の遊離塩基の溶液はアルカリ性であり、大気中の二酸化炭素を吸収し得、これによって溶液の安定性が低下し得、その加水分解または他の分解が加速され得る。構造Iの化合物の遊離塩基は、少量の塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウムの添加によって安定化され得る。例えば、化合物Xのグリセロール溶液は0.1%の水酸化ナトリウムの添加によって長期保存に向けて顕著に安定化される。
【0069】
構造Iの化合物は、それを室温で固体である化合物の中に含む溶液を冷却することによる急速固化によって固溶体に変換され得る。例えば、融解したポリエチレングリコールに化合物VIを3%以下の量で添加し、得られた溶液を好ましくは薄膜にして急冷した場合、化合物VIの固溶体が形成される。この溶液は、そのままの化合物VIよりも顕著に高い保存安定性を有する。固溶体の安定性は、微量の強塩基、例えば水酸化ナトリウムなどの添加によってさらに強化され得る。構造Iの化合物の固溶体を調製するための好ましい固体は、40℃より高く120℃より低い融点を有し、水性媒体によく溶け、化学的性質が中性であり、プロセスで処理される試料に対するまたはその意図した用途に対する有害作用がない。
【0070】
本発明の実施例に示される本発明者らの実験及びデータは、構造Iの代表的化合物がRNA及びDNAオリゴヌクレオチドとの共有結合性付加物を急速に形成し、成長培地、全血、赤血球濃厚液、血漿及び血清などの様々な種類の媒体において高力価の様々な病原体(エンベロープ及びノンエンベロープ、DNA及びRNAウイルス、G+及びG-細菌、マイコプラズマ、真菌及び原生動物)を低濃度(100~500μM)及び様々な温度(20~40℃)で不活化させることを示している。
【0071】
本発明の方法によれば、試料中の汚染物質を、そのままの構造Iの化合物で、または構造Iの1つ以上の化合物を含有する組成物で処理するが、この場合、組成物は、液体、溶液、ゲル、固体、粉末、粒子として製剤化されたものであってもよいし、またはカプセル封入、溶解、分散、粉砕、微粉化もしくはナノ粒子への変換がなされたものであってもよいし、または他の製剤化形態であってもよいし、またはそれらの組合せであってもよい。構造Iの化合物の組成物のための溶媒は、水、水性緩衝液または塩水溶液、有機溶媒、例えば、限定されないが、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、エタノール、イソプロパノール、アセトン、様々な分子量のポリエチレングリコール(複数可)、グリセロール、プロピレングリコール、ベンジルアルコールもしくはそれらの混合物、液化ガス、またはそれらの混合物であり得る。溶媒は、様々な有機もしくは無機添加剤、安定化剤、活性化剤または補助剤を含有していてよい。
【0072】
本発明の実施形態では、汚染物質を含有する試料を構造Iの化合物(複数可)で30秒~72時間、好ましくは20分~24時間、よりいっそう好ましくは60分~8時間の期間にわたって0~100℃、好ましくは10~60℃、よりいっそう好ましくは20~40℃の温度で、及び1~14、好ましくは4~9、よりいっそう好ましくは6~8のpHで、及び10nM~10mM、好ましくは1μM~1mM、よりいっそう好ましくは100μM~500μMの濃度で処理する。
【0073】
構造Iの化合物(複数可)の汚染物質不活化効果は、それらの濃度、用量または量、処理時間及び温度が増すにつれて増大する。その一方で、被処理試料に対してあり得る望ましくない影響も、化合物濃度、用量または量、処理の時間及び温度とともに増大する可能性がある。方法の利用者は、構造Iの化合物(複数可)の最適な濃度、用量または量、処理の時間及び温度を、被処理媒体の種類及び特性、ならびにその中に存在する病原体または望ましくない生物の性質及び種類、ならびにそれらの不活化の望ましいレベルに基づいて決定することができる。例えば、温度に対して安定な実用品、例えば、生物汚損性の熱交換器は、高い温度、例えば60℃以上で、長い期間、例えば24時間以上にわたって処理され得る。その一方で、繊細な試料、例えば血小板濃厚液などに最適な処理温度は、室温であり得、処理時間は1~2時間またはそれ未満に制限され得る一方、耐熱性試料、例えば熱処理動物血清の場合、1~6時間の処理時間で最適温度は40℃以上であり得る。利用者は、本明細書に開示される手法及び当業者に知られている類似した手法を用いて実験によって、構造Iの化合物(複数可)の最適な濃度、用量または量、処理の時間及び温度を決定し得る。
【0074】
最適な処理パラメータ(濃度、時間、温度)は、被処理試料の特性、及びその中に存在する病原体または他の望ましくない生物の性質にだけでなく、被処理試料の意図した用途によって決まり得るそれらの不活化/低減の所望の程度にも依存し得る。例えば、被処理試料が、細胞成長培地への補給剤としての用途を意図した動物血清である場合、細胞に感染し得るウイルスの所要のレベルは、使用される用量1回分あたり1個未満の感染性粒子であり得るが、これには9対数を上回る低減/不活化レベルが要求され得、他方、被処理実用品が、バイオフィルム形成または生物汚損の防除を目的とした産業用配管である場合、1または2対数の微生物低減で十分であり得る。
【0075】
本発明の方法は、構造Iの化合物(複数可)及び処理パラメータ(濃度/用量/量、時間、温度、pH、配合組成)を選択することによって、病原体(複数可)または望ましくない生物、場合によっては試料中に存在する全ての病原体または望ましくない生物を不活化させる50%から100%以下までの被処理試料の滅菌の手段を提供する。
【0076】
他方、構造、作用機序、及び本発明者らの実験からは、構造Iの化合物が細胞毒性であり、被処理試料の安全な使用のためまたは被処理生物の安全性のためには除去またはその細胞毒性の排除がなされねばならないことが示唆される。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、構造Iの化合物のアルキル化特性、したがってそのアルキル化特性が生むその細胞毒性は、残存する構造Iの化合物が存在している試料を求核性小分子またはイオン、例えば、限定されないが、チオスルフェート、好ましくはチオ硫酸ナトリウム、チオホスフェート、好ましくはチオリン酸ナトリウム、チオ尿素もしくは置換型チオ尿素、例えば、モノメチル-、N,N-もしくはN,N’-ジメチル-、トリメチル-もしくはテトラメチルチオ尿素、チオカルボン酸、例えば、チオ酢酸(CH3C(O)SH)、チオプロピオン酸、チオシュウ酸、チオマロン酸、チオコハク酸、ジチオカルボン酸、例えばジチオ酢酸(CH3C(S)SH)、チオ炭酸O-エステル、例えばチオ炭酸エチル、ジチオ炭酸O-エステル、例えばジチオ炭酸エチル、またはメルカプタン、すなわちチオール、例えば、限定されないが、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール(1-チオグリセロール)、2-チオグリセロール、1,2-もしくは1,3-ジチオグリセロール、2-アミノエタンチオール、2-(メチルアミノ)エタンチオール、2-(ジメチルアミノ)エタンチオール、2-メルカプト-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム塩、(メチルスルホニル)メタンチオール、(エチルスルホニル)メタンチオール、スルホニルジメタンチオール、チオグリコール酸(HSCH2CO2H)、2-メルカプトコハク酸、芳香族または複素環式チオール、例えば、チオフェノール、フラン-2-チオール、2-チオピリジン、1H-イミダゾール-2-チオール、1H-イミダゾール-5-チオール、チオバルビツール酸、チオサリチル酸、または4-メルカプト安息香酸で処理することによって低減または除去され得る。好ましいチオール化合物のいくつかの例を以下に示す:
【0078】
【化13】
【0079】
実施例に示されているが、求核性小分子は、構造Iを有する化合物との反応を、そのアジリジン環の開環、したがって核酸をアルキル化するその能力の排除によって行う。この反応の速度は、温度、pH及び濃度、ならびに求核性小分子の求核性に依存する。
【0080】
チオールの求核性は、チオールの脱プロトン化とともに顕著に増し、したがってその求核性は主に、チオールの脱プロトン化されたアニオン形態に起因する(Danehy,J.P.;Noel,C.J.The Relative Nucleophilic Character of Several Mercaptans toward Ethylene Oxide.Journal of the American Chemical Society 1960,82,2511-2515)。一般に、同じ類のアニオン性求核剤の求核性、特にチオール求核剤の求核性はその塩基性度とともに増し、つまり、より高いpKaを有する求核剤は、より低いpKaを有する求核剤(より酸性の求核剤)に比べてより高い求核性のアニオン形態を有するであろう。それに加えて、求核剤の脱プロトン化(アニオン)形態の濃度は、求核剤のpKaと培地のpHとの差が大きくなるにつれて低下する、つまり、求核剤のpKaが媒体のpHよりも高くなるにつれて低下する。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、構造Iの化合物の好ましいチオール型の中和剤は、不活化が起こる媒体のpHに近いpKaを有し、つまり、中和がpH7またはpH7付近で起こる場合、好ましいチオール型中和剤は7に近いpKaを有し、これによって、中和剤のアニオン形態の求核性がその塩基性度の上昇に伴って上昇することと、アニオン形態の濃度が、媒体のpHを上回るそのpKaの上昇に伴って低下することとの間の最良の妥協点がもたらされる。この教示は、式Xを有するある代表的な構造Iの化合物の半減期が10mMのチオフェノール(pKa=6.52)の存在下で1分未満であると測定されたのに対して同じ条件下で同じ化合物の半減期がグルタチオン(SH基のpKa=8.75)の存在下で450分であった本発明者らの実験によって指示されている。
【0082】
本発明の別の実施形態では、構造Iの化合物の好ましいチオール型の中和剤は、二重結合もしくは芳香環系の一部であるかまたは完全もしくは部分的なsp2型の混成を有している炭素原子に直接結合したチオール基を有する。
【0083】
さらに別の実施形態では、構造Iの化合物の好ましいチオール型の中和剤は少なくとも1つの電子受容基、例えば、スルホン基(-S(O2)-R)またはスルホキシド基(-S(O)-R)またはエステル基(-C(O)OR)またはアミド基(-C(O)NH2、-C(O)NHR、-C(O)NR2)を有し、式中、Rは任意のアルキルまたは置換アルキル基であり、当該電子受容基は、SH基が結合している炭素原子に結合している。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態では、被処理試料、組成物、表面、装置または生物に残存している構造Iの化合物(複数可)を、所望の中和または中和度がもたらされるのに必要な時間、好ましくは72時間未満、より好ましくは24時間未満、よりいっそう好ましくは8時間未満、さらにいっそう好ましくは4時間未満にわたって、0~100℃、好ましくは10~60℃、よりいっそう好ましくは20~40℃の温度で、1~14、好ましくは4~9、よりいっそう好ましくは6~8のpHで、中和剤化合物(複数可)に、または適切な溶媒(複数可)、例えば、限定されないが、水、水性緩衝液もしくは塩水溶液、有機溶媒、例えば、限定されないが、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、エタノール、イソプロパノール、アセトン、様々な分子量のポリエチレングリコール(複数可)、グリセロール、プロピレングリコール、ベンジルアルコールもしくはそれらの混合物の中に中和剤化合物(複数可)を含んだ溶液に接触させることによって中和する。被処理試料中の中和剤化合物の濃度は1M以下、好ましくは0.1M以下、よりいっそう好ましくは10mM以下であり得る。
【0085】
被処理媒体中に残存する構造Iの化合物の最速かつ最も効率的な中和のための最適条件が様々であり、媒体の種類及び中和剤化合物の種類によって決まること、ならびにそれらの合理的な選択及び実験による最適化が当業者によって、本明細書をもって開示されるまたは類似する実験方法を用いることでなされ得ることは、理解される。
【0086】
望ましい中和、または残存する構造Iの化合物(複数可)の量の低減の度合いは、50%未満、好ましくは2倍超、よりいっそう好ましくは10倍超すなわち1対数超、よりいっそう好ましくは2対数超、さらにいっそう好ましくは少なくとも3対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも4対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも5対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも6対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも7対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも8対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも9対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも10対数またはそれ以上である。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、構造Iを有する化合物(複数可)の中和の生成物(複数可)、すなわちそれらと中和剤化合物(複数可)との反応の生成物、または構造Iを有する化合物と被処理試料の成分との反応の生成物は、意図した用途にとって望ましくない特性を有し得る。他の場合には、中和剤化合物は望ましくない特性を有し得る。それら全ての場合において、中和の生成物もしくは反応の生成物、または中和剤化合物は、被処理媒体に不溶な固相剤であって構造Iの化合物(複数可)の中和もしくは反応の生成物及び/または中和剤化合物(複数可)との化学反応及び共有結合かその吸収かさもなければ隔離をする当該固相剤による試料の処理によって、被処理試料から除去され得るかまたはそれらの量が低減され得る。処理後、固相剤は、濾過、遠心分離、沈降または他の適切な物理的手段によって被処理媒体から除去され得る。あるいは、被処理試料の成分と共に構造Iの化合物(複数可)の中和の生成物もしくは反応の生成物が、または中和剤化合物(複数可)が透過可能であり固相剤が透過可能でない膜、袋または他の適切な物理的障壁を介して、固相剤を被処理媒体と接触させてもよい。
【0088】
固相剤は、微多孔性もしくはマクロ多孔性もしくはゲル状の多孔性有機ポリマーであってもよく、またはそれは有機もしくは無機タイプの任意の高多孔度固体、例えば、限定されないが、アモルファスカーボン、活性炭、木炭、シリカゲル、チタニア、ジルコニアであり得、またはそれは、分散性が高い、つまり高い表面対体積比率を示す小粒径を有する非多孔性固体であってもよい。固相剤はまた、混合タイプのもの、例えば、多孔性材料の層で覆われた固体非多孔性粒子であってもよい。
【0089】
有機ポリマーは、好ましくは架橋されており、ポリスチレンポリマー、あるいはポリアクリレートポリマー、あるいはポリメタクリレートポリマー、あるいはポリウレタンポリマー、あるいはポリアミドポリマー、あるいはデキストランポリマー、例えば、限定されないが、セファデックス(登録商標)、あるいはアガロースポリマー、例えば、限定されないが、セファロース(登録商標)、あるいはセルロース系ポリマー、あるいは変性セルロース系ポリマー、例えば、限定されないが、カルボキシメチルセルロースまたはジエチルアミノエチルセルロースまたはメチルセルロース、あるいは他の多糖、あるいは他の任意の直鎖型、分岐型または架橋型の、ホモもしくはヘテロポリマーまたはイソ型もしくはアタクチック型配置もしくは他の立体規則性を有するブロックコポリマーであり得、あるいは、被処理媒体に不溶な他の任意の適切な巨大分子であってもよい。
【0090】
水性媒体の処理の場合、親水性有機ポリマー、または水性媒体中での湿潤もしくは膨張もしくは膨潤が可能なポリマーが大いに好ましい。
【0091】
いくつかの実施形態では、固相剤は、構造Iの化合物(複数可)の中和もしくは反応の生成物、及び/または中和剤化合物(複数可)と化学反応または共有結合する。例えば、エポキシ修飾樹脂、例えば、エポキシ修飾ポリアクリレート樹脂、例えばLifetech(商標)ECR8215M、またはエポキシ修飾アガロース樹脂、例えばPraesto(登録商標)Epoxy300は、どちらの樹脂もPurolite Ltd,Bala Cynwyd,PA,USAによって製造されているが、求核性化合物、特に、本開示の中で構造Iの化合物の中和剤として使用される求核性化合物、例えば、Axen et al.がPreparation of modified agarose gels containing thiol groups,Acta Chem.Scand.B 1975,29,471の中で開示しているチオ硫酸ナトリウムと簡単に反応する。この反応において求核性中和剤はエポキシ環を開環させ、ポリマー分子に共有結合する。別の例では、求電子性硫黄原子を含有する官能基で官能化されたポリマー、例えばS-メタンスルホナート(P-S-S(O2)CH3、式中のPはポリマー分子を表す)またはS-チオ硫酸エステル(P-S-S(O2)O-+、式中のPはポリマー分子を表しMは金属カチオンを表す)は、反応:
(P-S-S(O2)O-+ + RSH →P-S-SR + M+SO3 2-
に従ってチオール、例えばチオール型の構造Iの化合物の中和剤と簡単に反応してジスルフィド結合によるチオール型中和剤とポリマーとの結合が生じる。それらの類のポリマー、それらの調製及び反応は、Roth and TheatoによってRSC Polymer Chemistry,Ser.6(2013):Thiol-X in Polymer and Material Science,Chapter 4:Thiol-Thiosulfonate Chemistry in Polymer Science,pages 76-94及びその中で引用されている参考文献の中で開示されており、参照によりこれらの全てを本明細書に援用する。被処理試料が、固相剤の求電子性官能基と反応することができるタンパク質または他の巨大分子を含有する場合、小分子が透過可能であり巨大分子が透過不可能である半透膜、例えば、1000~10000Daのカットオフを有する透析膜を介して固相剤をマトリックスと接触させる。
【0092】
別の実施形態では、固相剤は、構造Iの化合物(複数可)及び/または中和剤化合物(複数可)の、中和の生成物または分解の生成物またはマトリックス成分との反応の生成物を吸収する。そのような類の固相剤の例は、ポリアミン型の化合物を高い親和性で吸収し(Cohen,S.S.,A Guide to the Polyamines,Oxford Univ.Press,1988)、硫黄含有有機化合物、例えば、チオール型の中和剤、例えば、限定されないが、チオフェノール、チオアニソール、フラン-2-チオール、チオサリチル酸、4-チオ安息香酸、ジチオ酢酸またはチオグリコール酸も高い親和性で吸収するものである活性炭または木炭である。
【0093】
別の実施形態では、固相剤は構造Iの化合物(複数可)の中和または反応の生成物を、それらとの多重イオン対を形成することによって吸収する。構造Iの化合物、その中和の生成物、及びその分解またはマトリックス成分との反応の生成物は複数の(3つより多い)脂肪族窒素原子を有するが、これらの原子は中性または酸性pHでプロトン化される。その結果として化合物はポリカチオン性となり、つまりそれらは中性、中性付近または酸性pHにおいて3以上の正電荷を有する。
【0094】
複数の負に帯電した基を含有する固相剤は、ポリカチオン性化合物との多重イオン対を形成してそれを静電相互作用によって吸収することができる。そのような固相剤は、カチオン交換樹脂、例えば強カチオン交換樹脂、好ましくはスルホ基または硫酸基含有カチオン交換樹脂、または弱カチオン交換樹脂、好ましくはカルボキシ基含有カチオン交換樹脂であり得る。そのようなカチオン交換樹脂の例は、Dowex(登録商標)50X2-200、Dow ChemicalsのAmberlite(登録商標)IR-120、またはPuroliteのNRW160である。
【0095】
カチオン交換樹脂に結合している交換性カチオンは、試料またはその用途に対して適合性を有するまたは悪影響を及ぼさないように選択され、生物学的材料に対してはナトリウムが好ましい。樹脂のイオン交換容量は少なくとも0.01meq/ml、好ましくは少なくとも0.1meq/ml、よりいっそう好ましくは少なくとも1meq/mlであるべきである。
【0096】
種々のポリマー種、架橋度、官能化度及び多孔度、ならびに純度及び滲出性物質遊離の度合いに基づいて幾多の種類のカチオン交換樹脂が存在する。当業者であれば、被処理媒体に対して適合性を有し有害作用を呈さず、しかも官能化度及び中和された化合物の保持度が高いイオン交換樹脂を選択することができる。
【0097】
本発明の別の実施形態では、構造Iの化合物のアニオン型中和剤、例えば、チオスルフェート、チオホスフェート、チオカルボン酸、チオアセテート、チオグリコラート、チオールアセテート、ジチオカルボン酸塩、2-メルカプトアセテート、2-メルカプトスクシナート、2-メルカプトプロピオナート、チオサリチル酸、4-メルカプト安息香酸の余剰分は、複数のカチオン性基と共有結合している固相剤、例えばアニオン交換樹脂の使用によって被処理試料または媒体から除去される。アニオン交換体は、弱いものであってもよいが好ましくは強アニオン交換体であり、これには、被処理試料及びその特性に対して適合性を有する及び悪影響を及ぼさない適切なアニオン性基、例えば、限定されないが、クロライド、スルフェート、スクシナート、ラクテートまたは他のカチオン性基とイオン対を形成している第一級、第二級または第三級アミン基または第四級アンモニウム基が結合している。
【0098】
本発明の一実施形態では、構造Iの化合物による処理によって汚染物質を不活化させた後、残存する構造Iの化合物(複数可)を、構造Iの化合物(複数可)と反応及び共有結合する固相剤による処理によって試料から除去する。固相剤は、構造Iの化合物(複数可)のアジリジン環と反応してそれを開環させる反応性基を含有し得る。固相剤は一般構造XVII:
【0099】
【化14】
【0100】
を有し、式中、
Qは、構造Iの化合物(複数可)との化学反応及び共有結合をする反応性基であり、
Pは固相剤マトリックスであるが、これは、微多孔性もしくはマクロ多孔性もしくはゲル状の多孔性有機ポリマーであり得、またはそれは有機もしくは無機タイプの任意の高多孔度固体、例えば、限定されないが、アモルファスカーボン、活性炭、木炭、シリカゲル、チタニア、ジルコニアであり得、またはそれは、分散性が高い、つまり高い表面対体積比率を示す小粒径を有する非多孔性固体であってもよく、またはそれは混合タイプのもの、例えば、多孔性材料の層で覆われた固体非多孔性粒子であってもよい。
【0101】
有機ポリマーは、好ましくは架橋されており、ポリスチレンポリマー、あるいはポリアクリレートポリマー、あるいはポリメタクリレートポリマー、あるいはポリウレタンポリマー、あるいはポリアミドポリマー、あるいはデキストランポリマー、例えば、限定されないが、セファデックス(登録商標)、あるいはアガロースポリマー、例えば、限定されないが、セファロース(登録商標)、あるいはセルロース系ポリマー、あるいは変性セルロース系ポリマー、例えば、限定されないが、カルボキシメチルセルロースまたはジエチルアミノエチルセルロースまたはメチルセルロース、あるいは他の多糖、あるいは他の任意の直鎖型、分岐型または架橋型の、ホモもしくはヘテロポリマーまたはイソ型もしくはアタクチック型配置もしくは他の立体規則性を有するブロックコポリマーであり得、あるいは、被処理媒体に不溶な他の任意の適切な巨大分子であってもよい。
【0102】
水性媒体の処理の場合、親水性有機ポリマー、または水性媒体中での湿潤もしくは膨張もしくは膨潤が可能なポリマーが大いに好ましい。
【0103】
反応性基Qは、好ましくは求核性基、例えば、限定されないが、チオスルフェート -OS(O)(O-)S-、またはチオスルホナート -S(O)(O-)S-、またはメルカプトすなわちチオール基 -SH、-CH2SH、-CH2CH2SH、-CF2CH2SH、-OCH2CH2SH、-NH2CH2CH2SH、-NH(Me)CH2CH2SH、-N(Me2)CH2CH2SH、-COCH2SH、-S(O2)CH2SH、チオ尿素 -NHC(S)NH2、もしくは置換型チオ尿素基、チオカルボン酸 -C(O)S-、ジチオカルボン酸 -C(S)S-、チオ炭酸O-エステル -OC(O)S-、ジチオ炭酸O-エステルもしくはキサンテート -OC(S)S-、チオホスホナート -PO(OH)SH、及びチオホスフェート -OPO(OH)SH、o-、m-もしくはp-チオフェニル基 -C64SH、チオサリチラート基、m-もしくはp-チオベンゾエート基 -O2CC64SH、またはそれらの塩形態である。
【0104】
好ましい実施形態では、Qは、二重結合に、または芳香環構造に、または完全もしくは部分的sp2混成炭素原子に直接連結されている-SH基である。
【0105】
別の好ましい実施形態では、-SH基は、-S-及びH+への解離のpKaが10未満、好ましくは9未満、最も好ましくは8未満である。
【0106】
別の実施形態では、固相剤は一般構造XVIII:
【0107】
【化15】
【0108】
を有し、式中、
P及びQはXVIIにおいて示したとおりであり,Lは、基Qと固相剤マトリックスPとを連結しているリンカーまたは分岐型リンカーであり、Lは、直鎖型または分岐型またはデンドリマー型であり得、それに結合した1つまたは1つより多いQ基を含有していてもよい。Lの例は、二価原子、または同じであっても異なっていてもよくマトリックスP及びより多くの基Qの1つに結合しており他の原子もしくは原子群に連結されていてもいなくてもよい直鎖状に連結された原子群である。Lの詳しい例は、酸素もしくは硫黄原子、イミノ(NH)基、メチレン、エチレン、プロピレン、エトキシエチレン基、オリゴもしくはポリオキシエチレン、オリゴもしくはポリエステル、またはポリアミド型リンカーであり得る。特に好ましいのは、モノマー単位2~10000個、好ましくはモノマー単位8~200個の長さを有するポリエチレンオキシド型のリンカーである。
【0109】
別の実施形態では、固相剤は、求核性基Qを含有するだけでなく、付属基Kも含有し、それは一般構造XIX及びXXで示される。基Kは構造Iの化合物(複数可)との反応及び共有結合をしない。その代わりに、それらは基Qと構造Iの化合物(複数可)との反応を支援する。
【0110】
【化16】
【0111】
基Kの機能は、限定されないが、基Qの求核性の増強を、いわゆる隣接効果もしくは隣接電子対効果によって、または求核性基Qの脱プロトン化を増強し、結果としてより大きな求核性を有するアニオン性基Q-の数を増加させることによって、または求核性基Qに水素結合することによって、または構造Iの化合物(複数可)と求核性基Qとの間で形成される遷移状態と相互作用し、そのエネルギーを下げることによって、または構造Iの化合物(複数可)との非共有結合もしくはイオン対形成をし、結果としてそれらの局所濃度を高めることによって、または構造Iの化合物(複数可)のアジリジン窒素のプロトン化もしくはそれとの錯形成をし、結果としてそれらの反応性を増大させることによって行うことであり得る。
【0112】
構造Iの化合物の一例と構造XVIIIの固相剤の一例との反応を以下に示す:
【0113】
【化17】
【0114】
図1は、構造Iの代表的化合物と、リンカーLによって結合している求核性チオール基及びポリマーPマトリックスに直接結合している付属アニオン性スルホ基を有する固相剤との相互作用を示す。構造Iを有する化合物は、スルホ基との複数の静電相互作用によって束縛されて求核性SH基の近傍へ引き寄せられるが、この求核性SH基は、プロトン化されてそれによって活性化されたアジリジン環の炭素原子を攻撃し、それを開環させ、構造Iの化合物の中和の生成物を固相剤と結合させる。
【0115】
別の実施形態では、構造XIX及びXXの付属基Kは、水性環境におけるポリマーPのマトリックスの濡れ性または膨潤性を増強する機能を有する親水性基である。多くの場合、病原体を含有する試料は高い水分含有量を有し得る。そのような例は、血液、血液製品または成分、他の体液、間質液、細胞成長培養物もしくは培地、ワクチン製品もしくは中間物、または他の生物製剤である。多くのポリマーは疎水性であり、それゆえ、適切な修飾がなされていないと水性流体をそれらの内孔空間から排除する可能性があり、つまりそのような環境においてそれらは湿潤または膨潤することができず、このため反応性基Qと構造Iの化合物とが反応するのを妨げる。十分な数の親水性付属基Kを導入することで、多孔性固相剤の内部の濡れ性を増強することができ、これにより、構造Iの化合物を含有する水溶液への反応性基Qの接近が可能になる。そのような親水性基の例は、限定されないが、図1中に描かれているスルホもしくはスルホニル基、またはイオン対形成によって構造Iのポリカチオン性化合物に結合することができるという追加の利点を有するカルボン酸基であり得る。他のそのような親水性基は、ヒドロキシ基、またはポリオール基、例えば、2-ヒドロキシエチルオキシ(HOCH2CH2O)、2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ(HOCH2CH(OH)CH2O-)、または様々なモノマー単位数を有するオリゴ及びポリエチレングリコール部分であり得る。
【0116】
構造XVII~XXを有する固相剤のポリマーマトリックスPは、いくつかの試料のいくつかの成分に対して望ましくない影響を及ぼすことがある。例えば、多くのポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリメタクリレート及びポリアミドの表面は、生物製剤及び生体液からのタンパク質と結合することがあり、またはその配座、構造及び/または活性を乱すこと、凝固カスケード因子及び血小板を活性化させること、もしくは免疫応答を誘導することがある。そのようなポリマーを十分な長さ及び密度のエチレングリコールオリゴマーまたはポリマーの結合によって修飾することで、それらの問題を改善または排除することができる。この手法は、時として当業者によって「ペグ化」と称されるが、多くの生体ポリマー、最も多くは治療タンパク質、ならびにHarris M.J.(Ed.)によってPoly(Ethylene Glycol)Chemistry.Biotechnical and Biomedical Applications,Plenum Press,New York and London,1992及びその中で引用されている参考文献の中で記載されているような生体内または試験管内で生体液と接触するポリマーに対して、適用されている。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、固相剤は、上記求核性反応基Qと、分子量を150~100,000Da、好ましくは2,000~40,000Da、よりいっそう好ましくは4,000~20,000Daとし密度をどのモノマー単位でも1個以下の基としたエチレングリコールオリゴマーまたはポリエチレングリコールである極性基とによって修飾された、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンである。
【0118】
別の実施形態では、ポリマーは、求核性反応基Qと、ポリオール、例えば、限定されないが、2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-またはオリゴ-またはポリエチレングリコールである極性基とを含有するアクリレートまたはメタクリレートポリマーであり、当該極性基は、所望の親水性または他の有益な特性を獲得するのに十分な密度でアクリレートまたはメタクリレートポリマーのC-1すなわちカルボニル基に結合しており、当該他の有益な特性は、限定されないが、免疫原性がないこと、あるいは血栓形成性がないこと、あるいはタンパク質もしくは受容体に対する、または被処理試料もしくは組成物もしくは体液の他の成分に対する結合性または親和性がないことであり得る。
【0119】
別の実施形態では、複数のアニオン性基と結合しており、構造Iの化合物(複数可)の正に帯電した窒素原子との複数のイオン対相互作用の形成によって構造Iの化合物と静電的に結合する固相剤で、試料を処理することによって、残存する構造Iの化合物(複数可)が除去される。そのような固相剤及びそのような手法は、構造Iの化合物の中和時の生成物の除去に関して本明細書中に開示されている。中性付近、中性または酸性pHにおいて構造Iの化合物はポリカチオン性であるため、同じ手法及び固相剤を被処理試料、培地、組成物、実用品または生物からの残存する構造Iの化合物の除去のために用いることができる。
【0120】
本発明の別の実施形態では、残存する構造Iの化合物は、構造Iの化合物を吸収する固相剤との接触によって被処理試料から除去される。そのような固相剤としては、活性炭、木炭、アモルファスカーボン、アモルファスシリカ、シリカゲル、アモルファスアルミナ、チタニアもしくはジルコニア、または構造Iの化合物を吸収する親和性及び能力を有する他の固相剤が挙げられるが、これらに限定されない。構造Iの化合物を吸収させるために使用する固相剤は、高い表面積対質量比率を有することが好ましく、これは、多孔性、微多孔性もしくはナノ多孔性固体または高分散性非多孔性固体のいずれかを使用することによって達成され得る。多孔性吸収固相剤は、粉末、塊状固体、またはミクロン~10mm径の様々な径及び形状の粒子として成形され得る。好ましい粒径は50μm~5mmであり、よりいっそう好ましくは0.1~0.5mmであり、この粒径範囲によって、吸収される化合物の十分に短い時間でのバルクまたは粒子への拡散、ならびに粒子を除去するためのその濾過及び沈降の十分に高い速度が可能になる。
【0121】
別の実施形態では、吸収固相剤と被処理媒体との接触は、直接行われるのではなく、吸収させるようとする化合物の通過を可能にし、固相剤との相互作用が望ましくない媒体成分、例えばタンパク質または他の巨大分子を通過させない半透性障壁を介して行われ得る。そのような半透性障壁の例は、構造Iの化合物(複数可)の拡散を可能にし、より大きな分子量の分子、例えば生体ポリマーの拡散を防止する分子量カットオフを有する、変性セルロース膜または他の透析膜である。
【0122】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、方法を、エンベロープ、ノンエンベロープ、DNAもしくはRNAウイルス、レトロウイルス、バクテリオファージまたは他の任意のウイルスであり得るウイルスの不活化のために用いる。そのようなウイルスの例としては、限定されないが、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV、1型及び2型)、マラリア、梅毒、ブルセラ症、レプトスピラ症、アルボウイルス感染症(例えばコロラドダニ熱)、回帰熱、シャガス病(Trypanosoma cruzi)、西ナイルウイルス(WNV)、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型、及びウイルス性出血熱(例えばエボラウイルス及びマールブルグウイルス)が挙げられる。
【0123】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、原核生物、例えば、古細菌、またはグラム陽性及びグラム陰性菌を含めた細菌、芽胞形成菌及び細菌芽胞、またはマイコプラズマの不活化のために方法を用いる。本明細書に提供される方法によって処理することができる病原性細菌及び抗菌剤耐性菌の例としては、限定されないが、Clostridium difficile(C.difficile)、腸内細菌科(CRE)細菌、Neisseria gonorrhoeae、カンピロバクター、アシネトバクター、フルコナゾール耐性カンジダ菌、拡張型腸内細菌科(ESBL)、結核(TB)、薬剤耐性サルモネラ血清型Typhi、バンコマイシン耐性エンテロコッカス属(VRE)、多剤耐性Pseudomonas Aeruginosa、薬剤耐性非チフス性サルモネラ、薬剤耐性Streptococcus Pneumoniae、薬剤耐性シゲラ属、メシチリン耐性Staphylococcus Aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性Staphylococcus Aureus、エリスロマイシン耐性A群連鎖球菌、クリンダマイシン耐性B群連鎖球菌などが挙げられる。
【0124】
別の実施形態では、真菌、原生動物、寄生蠕虫、住血吸虫または線虫を含めた単または多細胞寄生虫、またはそれらの卵、単または多細胞藻類、及び甲殻類を含むがこれらに限定されない、真核生物、単または多細胞真核生物を不活化させるために方法を用いる。
【0125】
本明細書に提供される方法を、細菌性バイオフィルムまたは他の微生物性バイオフィルム、地衣類、付着物または生物汚損堆積物を含むがこれらに限定されない望ましくない生物学的構造体の処理のために用いてもよい。
【0126】
本発明の方法は、病原性微生物を不活化させるためだけでなく、被処理試料中の非病原性細胞、例えば白血球を、それらの存在が望ましくない、例えば輸液用血液または血液製品の場合に不活化させるためにも用いられ得る。
【0127】
本明細書に提供される方法は、ウイルス、原核生物及び真核生物の不活化のためだけでなく他のプリオンなどの感染原因物質の不活化を、それらの病原活性または感染性がBotsios,S. and Manuelidis,L.によって“CJD and Scrapie Require Agent-Associated Nucleic Acids for Infection”,J.Cell Biochem.,2016,117,1947-58の中で、及びSupattapone,S.によって“Synthesis of high titer infectious prions with cofactor molecules”,J.Biol.Chem.,2014,289,19850-4の中で開示されているように核酸、特にリボ核酸の存在または活性に依拠している場合に行うためにも、用いられ得る。
【0128】
本明細書において提供される方法は、試料、組成物、培地、実用品または生物の処理のために用いられ得る。試料は、ヒトもしくは動物の血液、白血球除去済み血液、全血、血液製品、例えば、血漿、血清、赤血球もしくは赤血球濃厚液、血小板もしくは血小板濃厚液、血清もしくは血漿成分、因子もしくは酵素、輸液を意図した輸液用血液及び血液成分、アフェレーシス血液成分、体液、動物血清、例えば細胞培養添加剤として使用される血清、真核生物由来もしくは原核生物由来の培地、ワクチン、ワクチン配合組成物、全病原体殺滅ワクチンの調製のための微生物の浮遊液、化粧品及び医薬組成物、飲料、食品;または実用品、器具、装置もしくはそれらの表面;または生物、例えば、動物、哺乳動物もしくはヒト生物及びそれらの一部、例えば、生体試料及び生検材料であり得る。方法は、抗体、免疫グロブリン、ホルモン、酵素、成長因子、凝固因子、アルブミンまたは補体系成分を含むがこれらに限定されない生物製剤の処理ために用いられ得る。実用品は、医療用または獣医学用装置、例えば、使い捨て装置、及び機器であり得るが、これらに限定されない。実用品には、産業用または家庭用の設備、電化製品、機器、機構、機械もしくは材料、または病原体もしくは他の生物の存在が望ましくないかもしくは防除される必要がある可能性のある他の任意の物品が含まれるが、これらに限定されない。実用品にはまた、病原体、微生物もしくは他の生物の存在が望ましくないかもしくは防除される必要がある場合の、例えば生物汚損の場合の、パイプ、ダクト、ホース、パイプライン、通気口、熱交換器、下水管、流路または他の任意の流体用もしくはガス用導管、または水性流体と接触している任意の表面、例えば、海上船、スクリーンもしくはフィルターも含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
病原体を不活化させる方法は輸液用血液または血液製品において実施されてもよいが、この場合、構造Iの化合物(複数可)による処理、及び後のそれらの除去、不活性化、ならびに生成物もしくは不活性化及び/または不活性化剤の除去は無菌の部分的または完全な閉鎖系において行われる。
【0130】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように、構造Iの化合物は抗血液凝固剤溶液と一緒に採血バッグの中に充填されている。
【0131】
他の実施形態では、図3に示されるように、液体または固体製剤として製剤化された構造Iの化合物は別個の血液バッグの中に充填されている。
【0132】
他の実施形態では、図4~9に示されるように、液体または固体製剤として製剤化された構造Iの化合物は、採血または血液処理バッグに取り付けられており破壊可能な封止材によってそこから分離されている小さな容器の中に、予備充填されている。
【0133】
他の実施形態では、図10に示されるように、溶液の入った容器には破壊可能な封止材によって連結されており血液処理バッグには別の破壊可能な封止材によって連結されているカプセルの中に、構造Iの化合物が充填されている。
【0134】
いくつかの実施形態では、図4及び図6に示されるように、中和剤の溶液または液体製剤は、破壊可能な封止材によって血液処理バッグに取り付けられた容器の中に入っているか、または直接、中和処理血液バッグの中に入っていてもよい。残存する構造Iの化合物またはその中和の生成物または中和剤を除去するための固相剤は、カートリッジであって図2、3、5、6、7及び8に示されるように破壊可能な封止材によって処理及び収容バッグに連結されている当該カートリッジの中に入っていてもよいし、または図9に示されるように遊離ビーズの形態もしくは半透性容器(袋)の中に入った状態で血液バッグの中に入っていてもよい。
【0135】
図2に示される全血一体的閉鎖型処理システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤及び構造Iの化合物が入った回収バッグの中に採血すること;ステップ2-病原体不活化のためにインキュベートすること;ステップ3-被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによって、残存する構造Iの化合物を除去すること、及び精製された血液を精製血液バッグに回収することである。
【0136】
図3に示される全血一体的閉鎖型処理システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入った回収バッグに採血すること;ステップ2-抗凝固処理された全血を、構造Iの化合物の固体製剤が入った処理バッグに移し、混合し、病原体不活化のためにインキュベートすること;ステップ3-被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによって、残存する構造Iの化合物を除去し、精製された血液を精製血液バッグに回収することである。
【0137】
図4に示される全血一体的処理閉鎖型システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入ったバッグに採血すること;ステップ2-構造Iの化合物の液体製剤が入ったカプセルの封を切り、製剤を血液に添加すること;ステップ3-血液を構造Iの化合物と共にインキュベートすること;ステップ4-カプセルを壊して不活性化剤の液体製剤を添加し、混合し、構造Iの化合物の中和のためにインキュベートすることである。
【0138】
図5に示される全血一体的閉鎖型処理システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入った回収バッグに採血すること;ステップ2-構造Iの化合物の液体製剤が入ったカプセルの封を切り、製剤を血液に添加すること;ステップ3-血液を構造Iの化合物と混合及びインキュベートすること;ステップ4-被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによって、残存する構造Iの化合物を除去し、精製された血液を精製血液バッグに回収することである。
【0139】
図6に示される全血一体的処理閉鎖型システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入ったバッグに採血すること;ステップ2-構造Iの化合物の液体製剤が入ったカプセルの封を切り、製剤を血液に添加すること;ステップ3-血液を構造Iの化合物とインキュベートすること;ステップ4-カプセルを壊し、不活性化剤の液体製剤を添加し、混合し、構造Iの化合物の中和のためにインキュベートすること;ステップ5-被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによって構造Iの化合物の中和の生成物を除去することである。
【0140】
図7に示される全血一体的処理閉鎖型システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入ったバッグに採血すること;ステップ2-構造Iの化合物の液体製剤が入ったカプセルの封を切り、製剤を血液に添加すること;ステップ3-血液を構造Iの化合物とインキュベートすること;ステップ4-残存する構造Iの化合物を除去し、被処理血液を固相剤が入ったカートリッジ及び白血球フィルターに通すことによって白血球濾過をすること;ステップ5-精製され白血球除去された血液が入ったRBCCバッグを遠心分離に掛けること;ステップ6-分離した血漿を血漿バッグに移すこと;ステップ7-保存剤溶液を赤血球細胞へ移し、混合して血球濃厚液を調製することである。
【0141】
図8に示される全血一体的処理閉鎖型システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入ったバッグに採血すること;ステップ2-白血球フィルターで濾過してLF血液バッグに入れることによって全血を白血球除去すること;ステップ3-構造Iの化合物の液体製剤が入ったカプセルの封を切り、製剤をLF血液バッグ内の白血球濾過済み血液に添加すること;ステップ4-血液を構造Iの化合物と共に混合及びインキュベートすること;ステップ5-被処理血液を固相剤が入ったカートリッジに通すことによって、残存する構造Iの化合物を除去すること;ステップ6-精製され白血球除去された血液が入ったRBCCバッグを遠心分離に掛けること;ステップ7-分離した血漿を血漿バッグに移すこと;ステップ8-保存剤溶液を赤血球細胞へ移し、混合して血球濃厚液を調製することである。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態では、残存する構造Iの化合物の所望のレベルへの低減は、1回の固相剤による処理では成し遂げられない可能性がある。そのような場合には、図9に示されるように、後の固相剤による処理が2回以上必要とされ得る。
【0143】
図9に示される全血一体的処理閉鎖型システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入ったバッグに採血すること;ステップ2-構造Iの化合物の液体製剤が入ったカプセルの封を切り、製剤を血液に添加すること;ステップ3-血液を構造Iの化合物と混合及びインキュベートすること;ステップ4-(流動性ビーズとしての、あるいは半透性袋内に充填された)固相剤を有する第1バッグに被処理血液を移し、インキュベートすることによって、残存する構造Iの化合物を除去すること;ステップ5-1回目の除去ステップの後に、(流動性ビーズとしての、あるいは半透性袋内に充填された)固相剤を有する第2バッグに血液を移し、インキュベートすることによって、残存する構造Iの化合物の2回目の除去を行うこと;ステップ6-被処理血液を白血球フィルターに通してRBCCバッグへ送ることによって白血球濾過をすること;ステップ7-精製され白血球除去された血液が入ったRBCCバッグを遠心分離に掛けること;ステップ8-分離した血漿を血漿バッグに移すこと;ステップ9-保存剤溶液を赤血球細胞へ移し、混合して血球濃厚液を調製することである。
【0144】
図10に示される全血一体的処理システムを使用する方法は:ステップ1-瀉血針で、抗凝固剤が入ったバッグに採血すること;ステップ2-構造Iの化合物の製剤が入ったカプセルの封を切り、溶媒バッグからの溶媒に構造Iの化合物を溶解させること;ステップ3-採取された血液に構造Iの化合物の溶液を添加し、混合及びインキュベートすること;ステップ4-中和剤溶液を添加し、インキュベートして、残存する構造Iの化合物を中和することである。
【0145】
製剤の溶解のための溶媒の容器には破壊可能な封止材によって連結されており、処理される試料を有する容器には別の破壊可能な封止材によって連結されている、構造Iの化合物の固体製剤を使用する容器の別の例を図11に示す。
【0146】
別の実施形態では、固相剤は、カートリッジに充填され、上記カートリッジの中で乾燥状態で保存され、使用前に、被処理試料及びその使用方法に適合した液体組成物による予湿及び/またはすすぎ洗いが行われる。一例として、図12には、乾燥した固相剤が充填されたカートリッジを2つの濾材の間に収容して含む閉鎖型システムが示されている。カートリッジは、湿潤媒体が入った容器には破壊可能な封止材によって連結され、精製された試料のための容器には別の破壊可能な封止材によって連結されている。湿潤媒体容器は、破壊可能な封止材によって、構造Iの化合物(複数可)による試料の処理のための容器に連結されている。カートリッジと、湿潤媒体を有する容器との間の封止材を破壊すること、及び媒体をカートリッジの中に移すことで、固相剤の濡れがもたらされる。残りの封止材を破壊することで、被処理試料が湿潤固相剤の中を通ることが可能になる。
【0147】
別の実施形態では、固相剤は使用前に無菌条件下ですすぎ洗いが行われる。そのようなすすぎ洗いは、保存期間中に固相剤中に蓄積し得る滲出性物質を最小限に抑えるまたは排除する上で重要であり得る。洗浄は、固相剤、被処理試料及びその意図した用途との適合性を有する組成物で行われることが好ましい。図13は、カートリッジに充填された固相剤のすすぎ洗いが、破壊可能な封止材によって固相剤カートリッジに連結された容器に入った溶媒によって行われる、閉鎖型システムを示す。その後、洗浄媒体は、カートリッジと容器との間の封止材が破壊された後に別の一体化容器の中に回収される。その後、2つの破壊可能な封止材は適切なクリップまたは再封止装置、例えばT-Seal(Terumoチューブ封止装置)によって再封止される。残存する封止材を破壊することによって、被処理試料が洗浄済み固相剤の中を通ることが可能になる。
【0148】
いくつかの実施形態では、固相剤は、カートリッジ/カラムの両端または一端が透過性障壁で挟まれたカートリッジ/カラムの中に入っている。障壁は、被処理試料がカートリッジの中を通るのを許容するが、固相剤の通過を許容しない。そのような障壁の例は、限定されないが、フィルター/スクリーン、焼結材料で作られた円盤、メッシュ、篩網もしくは布帛、または他の任意の多孔性材料、または径が固相剤粒子の径よりも小さい開口部または流路を有する材料である。そのような障壁は図12及び図13中に破線で示されている。
【0149】
別の実施形態では、方法にって病原体を不活化させるための本開示の閉鎖型システムは、UVもしくはガンマ線照射、熱処理、高もしくは低pH溶媒処理、または他の化学的処理、例えば、エチレンオキシド、オゾン、漂白剤、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、過酸化水素、過酢酸もしくは銀化合物による処理によって、あるいは当業者に知られている他の方法によって滅菌される。構造Iの化合物の液体製剤、及びその中和剤は、濾過、UVもしくはガンマ線照射、熱処理、または当業者に知られている他の方法によって滅菌され得る。固相剤は、カートリッジまたは他の容器もしくは半透性袋への充填の前か後、及び閉鎖型システムへの組込みの前か後に、UVもしくはガンマ線照射、熱処理、高もしくは低pH溶媒処理、化学的処理によって滅菌され得る。
【0150】
図2~13の病原体低減閉鎖型システムの例は、例示目的のために提供されたものであり、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0151】
いくつかの実施形態では、病原体(複数可)は、生物の中に存在するものであり、当該生物は、動物、哺乳動物、例えば、霊長類、齧歯動物、海洋哺乳動物、または任意の野生もしくは飼育動物、またはヒトであり得る。これらの実施形態では、構造Iの化合物による処理が生体内で行われる。この生体内での処理は、静脈内、経口、局所、直腸、皮下、筋肉内投与、吸入またはそれらの組合せによって行われ、処理は、単回投与、多回投与または連続投与によって、所望の病原体低減を成し遂げるのに十分な用量(複数可)で行われ得る。そのような生体内での処理には、構造Iの化合物の不活性化剤、例えば、限定されないがチオ硫酸ナトリウムによる生体内での処理が後続し得るかまたは組み合わされ得る。
【0152】
他の実施形態では、構造Iの化合物による生物の処理は生体内で行われ、構造Iの化合物(複数可)の中和及び/または除去、またはそれらの中和もしくは分解の生成物の除去は、生体外で生物の体液、例えば血液または血漿を処理してその後にそれらを元の生物に戻す(輸液する)ことによって行われる。そのような生体外での処理は、数回に分けて定期的な体液の一部の除去、処理及び輸液によって、または連続的な抜取り、処理及び輸液によって行われ得る。この後者の場合、アフェレーシスプロセスを用いること、及びアフェレーシス血漿の連続的処理が好ましい。構造Iの化合物の中和または除去は、化合物(複数可)を隔離する固相剤が入ったカートリッジに通すこと、または中和剤の溶液と混合してその後にインキュベートし、場合によってはこの後に中和の生成物及び/または中和剤の隔離のための固相剤を有するカートリッジに通すことによって行われ得る。
【0153】
他の実施形態では、病原体含有生物の処理は、上記生物の体液の生体外での処理によって行われる。この処理は、体液の一部の定期的除去、処理及び輸液を毎回行うことによって;または連続的な抜取り、処理及び輸液によって行われ得る。この後者の場合、アフェレーシスプロセスを用いること、及びアフェレーシス血漿の連続的処理が好ましい。生体外での処理は、体液への適切な量の構造Iの化合物(複数可)の製剤の添加、及びインキュベーション、及び好ましくはそれに続けて行われ得る、残存する構造Iの化合物(複数可)の除去または中和のための処理、及び/または任意選択的な、構造Iの化合物の不活性化もしくは分解の生成物の除去のための処理、及びそれに続けて精製体液を元の生物に輸液することによって行われる。構造Iの化合物(複数可)の除去もしくは中和及び/またはそれらの中和の生成物の除去のための処理は、構造Iの化合物(複数可)による生体内での処理について上に記載しているとおりに行われる。
【0154】
生物を生体内または生体外で構造Iの化合物(複数可)によって処理する方法の好ましい実施形態では、生物の中に存在しており処理による不活化の標的である病原体の少なくとも1つは、1つ以上の抗病原体処理に対して耐性である。
【実施例0155】
実施例1
【0156】
化合物VI、N1,N4-ビス(3-(アジリジン-1-イル)プロピル)-N1,N4-ジメチルブタン-1,4-ジアミンの合成。
【0157】
A。アジリジンの合成:2-クロロエチルアミン塩酸塩58.4g(0.503mol)を100mlの水に溶解させた。溶液を、撹拌しながら、20mLの水の中に56.5gの水酸化ナトリウムを含む溶液に滴加した。さらに2.5時間、50℃で撹拌した後、アジリジンを部分真空下で蒸留によって精製した。固体NaOHを数回に分けて蒸留液に激しい撹拌の下で添加し、0~8℃の温度で冷却した。混合物をこの温度で30分間撹拌した。液体をデカントすることで固体NaOHを除き、上層を分離して22.5gの湿潤アジリジンを得た。この材料を、粉末KOHの少量ずつの添加、及びKOHが乾燥した外観を保持するまで毎回の少量添加の後に行うデカンテーションによって、乾燥させた。得られた乾燥アジリジンをKOHパレット下で-20℃で保存した。収率16.02g、74%の透明液体。
【0158】
B。2-(1-アジリジニル)プロパナール一メチルアセタール、IVの合成:アクロレイン6.65g、7.93ml、0.120molを100mlのMeOHに添加した。溶液にArを流し、Ar下、ドライアイス浴で冷却した。アジリジン4.99g、6.00ml、0.124molを撹拌しながら滴加した。ドライアイス浴を取り除け、反応混合物を室温で放置した。このようにして得られた2-(1-アジリジニル)プロパナール一メチルアセタール、IVの溶液をAr下で-20℃で封止保存した。1H NMR(300MHz,CD3OD)δ:4.66(t,J=5.54Hz,1H),3.36(s,3H),2.30-2.44(m,2H),1.79-1.93(m,2H),1.76-1.79(m,2H),1.30-1.33(m,2H)。13C NMR(75MHz,CD3OD)δ:97.9,57.5,36.5,26.6。
【0159】
C。N1,N4-ビス(3-(アジリジン-1-イル)プロピル)-N1,N4-ジメチルブタン-1,4-ジアミン、VIの合成:ステップBからの化合物IVのメタノール溶液を氷浴中で冷却した。N,N’-ジメチルブタン-1,4-ジアミン5.85g、50.4mmolを撹拌しながら滴加した。浴を取り除け、30分後、-4~+4℃で冷却しながら水素化ホウ素ナトリウム10gを数回に分けて撹拌しながら添加した。室温で4時間経過させ、水で後処理し、エーテルで抽出した後、生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。生成物を含有する画分を蒸発濃縮し、残渣を真空蒸留に供して3.84gの化合物VIを淡黄色の油として得た。1H NMR(300MHz,C66)δ:2.43(t,J=7.2Hz,4H),2.30(m,4H),2.13(t+s,J=6.7Hz,10H),1.75(m,4H),1.55(m,4H),1.51(m,4H),0.79(m,4H)。13C NMR(75MHz,C66)δ:60.74,58.55,56.49,42.52,28.77,27.50,26.11。MS(エレクトロスプレー、正モード)m/z:283.1、計算値[M+H]+283.2。
【0160】
実施例2
【0161】
化合物XVI、3-(アジリジン-1-イル)-N-(3-(アジリジン-1-イル)プロピル)-N-メチルプロパン-1-アミンの合成。
【0162】
N,N’-ジメチルプトレシンの代わりにメチルアミン3.91gの40%水溶液4.35mlを使用して化合物XVIを実施例1のように合成した。真空分留後、2.48gの化合物XVIを淡色油として得た。1H NMR(500MHz,C66)δ:2.43(t,J=7.0Hz,4H),2.12(s,3H),2.11(t,J=7.0Hz,4H),1.74(m,4H),1.54(m,4H),1.51(m,4H),0.77(m,4H)。13C NMR(75MHz,C66)δ:60.00,55.72,41.78,28.01,27.50,26.79。MS(エレクトロスプレー、正モード)m/z:198.1、計算値[M+H]+189.2。
【0163】
実施例3
【0164】
化合物X、N1-(3-(アジリジン-l-イル)プロピル)-N4-(3-((3-(アジリジン-1-イル)プロピル)(メチル)アミノ)-プロピル)-N1,N4-ジメチルブタン-1,4-ジアミンの合成。
【0165】
A。N1,N5,N10-トリメチルスペルミジンの合成:スペルミジン、5.70g、6.16ml、39.3mmolをギ酸エチル61.1g、66.6ml、0.824molと混合し、混合物を30時間還流し、次いで真空下で蒸発濃縮してN1,N5,N10-トリホルミルスペルミジン9.32gを油として得た。水素化アルミニウムリチウム9.00gを乾燥テトラヒドロフラン300mlに添加した。NI,N5,NIO-トリホルミルスペルミジン9.00gをAr下で撹拌しながら滴加した。反応混合物を4時間還流し、その後、室温に冷却した。冷却及び効率的な機械的撹拌(泡立て)をしながら水22mlを滴加し、続いて90mlの50%水酸化カリウム水溶液を滴加した。1時間にわたって激しく撹拌した後、テトラヒドロフラン150mlを添加し、層分離させた。下層を150mlのテトラヒドロフランで抽出し、抽出物を上層と合わせた。合わせた有機層を真空下で蒸発濃縮し、残渣をジエチルエーテル75mlに溶解させ、固体水酸化カリウムで一晩乾燥させた。乾燥エーテル溶液を蒸発濃縮し、残渣を真空分留に供して5.30gのN1,N5,N10-トリメチルスペルミジンを得た。H NMR(300MHz,C66)δ:2.53(t,J=6.7Hz,2H),2.45(t,J=6.6,2H),2.22-2.35(m,4H),2.30(s,3H),2.28(s,3H),2.12(s,3H),1.58(m,2H),1.46(m,4H)。13C NMR(75MHz,C66)δ:58.28,56.52,52.44,51.03,42.21,36.83,28.21,28.19,25.67。MS(エレクトロスプレー、正モード)m/z:188.1、計算値[M+H]+188.2。
【0166】
B。化合物Xの合成:実施例1に従って、3.71g、4.43ml、67mmolのアクロレインと、56mlのメタノールと、2.79g、3.35ml、69mmolのアジリジンと、N,N’-ジメチルプトレシンの代わりの5.30g、28.1mmolのN1,N5,N10-トリメチルスペルミジンと、5.58gの水素化ホウ素ナトリウムとを使用して化合物Xを合成した。後処理及び真空分留の後、2.99gの化合物Xを灰白色油として得た。1H NMR(300MHz,C66)δ:2.39-2.45(m,4H),2.32-2.38(m,4H),2.27-2.31(m,4H),2.14(s,6H),2.13(s,3H),2.10-2.15(m,4H),1.73(quintet,J=7.0Hz,4H),1.58-1.68(m,2H),1.54-1.56(m,4H),1.47-1.53(m,4H),0.80-0.82(m,4H)。13C NMR(75MHz,C66)δ:60.74,58.59,58.55,56.60,56.56,56.51,56.48,42.65,42.54,28.76,27.50,26.43,26.14,26.10。MS(エレクトロスプレー、正モード))m/z:354.1、計算値[M+H]+354.3。
【0167】
実施例4
【0168】
化合物XIV、N1,N4-ジ(3-((3-(アジリジン-1-イル)プロピル)-(メチル)アミノ)プロピル)-N1,N4-ジメチルブタン-1,4-ジアミンの合成
【0169】
A。N1,N5,N10,N14-テトラメチルスペルミンの合成:N1,N5,N10,N14-テトラメチルスペルミンは、スペルミン1.60g、7.86mmolから実施例3に従い、続いて乾燥テトラヒドロフラン50ml中2.00gの水素化アルミニウムリチウムで還元し、水で後処理し、真空分留して1.59gの灰白色油として調製された。H NMR(300MHz,C66)δ:2.53(t,J=6.7Hz,4H),2.34(t,J=6.9,4H),3.30(s,6H),2.28(m,4H),2.13(s,6H),1.59(quintet,J=6.8Hz,4H),1.50(m,4H),0.87(bs,2H)。13C NMR(75MHz,C66)δ:57.92,56.25,50.75,41.94,36.53,27.88,25.37。MS(エレクトロスプレー、正モード)m/z:258.1、計算値[M+H]+258.3。
【0170】
B。化合物XIVの合成:実施例1に従い、メタノール9ml中10mmolの3-(アジリジン-l-イル)プロパナールと、N,N’-ジメチルプトレシンの代わりの0.80g、3.1mmolのN1,N5,N10,N14-テトラメチルスペルミンと、0.77gの水素化ホウ素ナトリウムとを使用して化合物XIVを合成した。水で後処理し、真空分留し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製した後、0.398gの化合物XIVを灰白色油として得た。1H NMR(300MHz,C66)δ:2.44(t,J=7.0Hz,4H),2.34-2.40(m,8H),2.31(m,4H),2.15(s,6H),2.14(s,6H),2.11-2.16(m,4H),1.75(quintet,J=7.0Hz,4H),1.65(quintet,J=7.4Hz,4H),1.53(m,4H),1.47-1.53(m,4H),0.79-0.81(m,4H)。13C NMR(75MHz,C66)δ:60.77,58.64,56.64,56.60,56.54,42.65,28.78,27.51,26.46,26.18。MS(エレクトロスプレー、正モード))m/z:425.2、計算値[M+H]+425.4。
【0171】
実施例5
【0172】
核酸に対する反応性
【0173】
4つ全ての核酸塩基を配列中に含んでいる10μMの21merの合成オリゴデオキシリボヌクレオチド-5’ ATA CCT CAT GGT AAT CCT GTT-3’と200μMの化合物XとをPBS(pH6.7)中、37℃で反応させることによって核酸に対する反応性を追跡した。図14は、37℃で0時間(上のクロマトグラム)及び6時間(下のクロマトグラム)のインキュベーションの後のインキュベーション混合物のHPLC分析を示す。オリゴヌクレオチドに対応するピークは減少し、より高い保持時間を有する化合物が出現し、明らかに化合物Xとオリゴヌクレオチドとの共有結合性付加物の出現を実証している。
【0174】
100μMの23-merの合成オリゴヌクレオチド(UGG ACU CCG AUA ACG GAG UAU GU)と100μMの化合物XとのPBS中、pH7での室温での反応を質量分析によって試験した。結果を図15に示すが、上パネルは処理前のオリゴヌクレオチドのマススペクトルであり、下パネルにあるのは化合物Xを添加してから6分後の反応物のマススペクトルである。上パネルにおいて1845.22m/zのピークは、マイナス4の荷電状態を有するオリゴヌクレオチドイオン(M-4H)/4によるものであり、質量7384.9Da(オリゴヌクレオチド質量計算値7384.0Da)の中性分子に対応する。下のスペクトルにおいて、化合物Xとのインキュベーションの6分後に追加のピークが出現し、m/zが1933.54であり質量7738.2Daの中性分子に対応する。化合物Xとオリゴヌクレオチドとの共有結合性一付加物の分子量は7737.3Daである。
【0175】
実施例6
【0176】
構造Iの化合物のシトクロムCとの反応性のなさ
【0177】
アルキル化剤分子を使用して血液製品中の病原体を不活化させることは、潜在的に有害な副作用を有する-それとタンパク質との反応は新生抗原を作り出し得、つまりそれはハプテンであり得る。構造Iの化合物のハプテンの可能性を評価するために、シトクロムCに対するその修飾能力を試験した。シトクロムC(MW12384Da)をモデルタンパク質として選択した、というのも、それは、構造Iの化合物によるアルキル化の潜在的な標的となる多くの求核性側鎖含有アミノ酸:19個のLys、2個のCys、3個のAsp、9個のGlu、3個のHis、及び4個のTyrを含有するからである。0.1mg/mL(8μM)のシトクロムCのリン酸緩衝水溶液を0(対照)、0.1、1及び10mMの化合物VIまたはXと共にpH7.0で30時間、40℃でインキュベートした。1、4及び30時間目にインキュベーション混合物のアリコートをエレクトロスプレー質量分析において正のイオン化モードでLCQ Advantage質量分析(Thermo-Finnigan,San Jose,CA)への直接注入によってタンパク質と試験化合物との共有結合性付加物の形成について分析した。結果は、どの濃度及び時間点においても両試験化合物VI及びXとシトクロムCとの共有結合性付加物明白な非存在を示す(代表的なマススペクトルについては図16を参照されたい)。
【0178】
実施例7
【0179】
構造Iの化合物のウイルス表面タンパク質との反応性のなさ
【0180】
構造Iの化合物が病原体のタンパク質を修飾する可能性を、モデル病原体として呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を使用して評価し、RSVの融合(F)を修飾に関する検査のために選択した。Fタンパク質は、ウイルスエンベロープに会合している大型(574アミノ酸)の表面糖タンパク質であるが、これは宿主認識及びウイルス挿入において重要な役割を果たしている。このタンパク質を選択したのは、その高い感受性及び不安定性、及び種々の抗原性エピトープに特異的なモノクローナル抗体の使用可能性、及びFタンパク質配座変化に対する感受性のためである。スクロース勾配精製されたRSVを化合物VI及び化合物Xでどちらも100μMの濃度で4時間、40℃で処理した。残存する化合物VI及びXを実施例16に記載のとおりに中和した。対照は、40℃で4時間インキュベートした擬似処理RSV及び4℃に保たれた未処理ウイルスを含んでいた。Schmidt et al,J Virol.2014;88(l7):10165-76.doi:10.1128/JVI.01250-14.PubMed PMID:24965456で記載されている手順に従ってELISAアッセイを実施した。PBSによる8つの1:2段階希釈液を3反復で96ウェルプレートに播種し(50μl/ウェル)、4℃で一晩インキュベートした。ウェルをPBSで洗浄し、PBS/1%BSAでブロッキングした。抗タンパク質F抗体を添加し、混合物を2時間インキュベートし、続いて洗浄し、抗マウスIgG HRP複合体を添加した。もう1回洗浄した後、TMB基質及び硫酸を添加し、ELISAリーダーSPECTRAmax PLETS(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して読取りを行った。図17に、化合物VI及びXで処理されたRSVに対する抗F抗体の結合性をELISAで判定した結果を示す。これらの実験から、ウイルスを完全に不活化させる条件の下での化合物VI及びXによる処理が、高度に特異的で配座に敏感なモノクローナル抗体によるFタンパク質の認識の度合いを変化させなかったことが明らかとなり、処理によるFタンパク質の修飾が起こらないことが示された。
【0181】
実施例8
【0182】
細菌成長培地における化合物VI、化合物X及び化合物XIVによる細菌不活化
【0183】
化合物VI、化合物X及び化合物XIVを使用してG+及びG-細菌のパネルをそれらの各々の製糖培地において不活化させた。細胞は全て、対応する培地中で対数増殖期中期まで成長させ、遠心分離によって回収し、リンゲル液(RS)中に再浮遊させ、室温で100μMの化合物VI、化合物X及び化合物XIVで処理され、なお、これらの化合物はRS中100倍の濃縮液として浮遊液に添加された。対照にはRSのみを与えた。インキュベーションの最後に、室温で30分間インキュベートする間に10mMのチオリン酸ナトリウムで未反応の化合物VI、化合物X及び化合物XIVを中和した。段階希釈液を使用して生細胞を標準的な寒天プレート計数によって計数した。表1は、化合物VI、化合物X及び化合物XIVによるE.coli、P.fluorescens、Y.enterocolitica、B.cereus、S.aureus、及びS.epidermidisの1時間の処理の典型的な結果をまとめたものである。明らかに、1時間の処理の後でさえ生細胞の低減が3つ全ての化合物において認められた。化合物X及び化合物XIVは化合物VIよりも著しく高い力価を示した。これら2つの化合物では2つの種が検出限界未満に不活化された(1.00Log10CFU/mL)。
【0184】
【表1】
【0185】
実施例9
【0186】
化合物VI及び化合物Xによるウイルス不活化
【0187】
化合物VI及び化合物Xを使用することによって豚パルボウイルス(PPV)を不活化させた。RS(pH6.9)中、室温で化合物VI及び化合物Xを100μMで使用し、ウイルス混入を10%として、処理を行った。残存する化合物を、10mMのNa223と共に室温で2時間インキュベートすることによって失活させた。PPVブタ精巣細胞を許容する標準的な限界希釈アッセイを用いて、Log10TCID50/mLで表したウイルス力価を決定した。指標細胞を6日間インキュベートした後、感染ウェルを顕微鏡下で目視検査によって計数した。結果を裏付けるために、最初のプレートウェルからの調整培地を試料として使用した二次感染を行った。
【0188】
化合物VIまたは化合物Xを使用することによってヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を不活化させた。その目的のために、スクロース勾配精製されたウイルスを室温で100μMの化合物VI及び化合物Xで処理した。インキュベーションの1、4及び6時間目にアリコートを採取し、室温で30分間、10mMのチオリン酸ナトリウムで失活させた。改変プラークアッセイにおいて標準的な10xの段階希釈液を使用してウイルス力価を決定した。擬似処理ウイルスでは室温で6時間インキュベートした後であってもRSV感染性の顕著な変化はみられなかった(異なる実験では力価の低減は0.11~0.36Log10PFU/mLの範囲内であった)。
【0189】
化合物VI及び化合物Xを使用することによって牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)を不活化させた。指標細胞をウシ鼻甲介細胞としたことを除けば、PPV不活化に用いたプロトコールをBVDV不活化に採用した。
【0190】
実験の結果を表2に示す。5~7対数ものウイルス力価低減が認められ、化合物VIと共に6時間インキュベートした後では全てのウイルスが検出限界未満に殺滅された。
【0191】
【表2】
【0192】
実施例10
【0193】
WB)の全血、白血球除去済み血液(LB)、及び赤血球濃厚液(RBCC)における化合物VI及び化合物Xによる細菌不活化
【0194】
2つのどちらも好冷細菌であるG-種、Y.enterocolitica及びP.fluorescens、ならびに2つのG+細菌、S.epidermidis及びB.cereusは、どれも既知の血液汚染物質であり、この試験に使用された。全ての血液試料に、RSで調製されたおよそ0.1%の細菌浮遊原液を混入させ、平衡化のために室温で30分間放置した。新しく一晩成長した細菌培養物を各混入のために使用した。混入がなされた血液に化合物VI及び化合物Xを100、250及び500μMの終濃度で添加した。対照試料(Ctr)には溶媒のみを与えた。インキュベーションを室温で6時間実施し、その後、不活性化剤である100xのチオ硫酸Naを添加し、さらに室温で2時間インキュベートした。インキュベーション及び失活の後、段階希釈及び平板滴下計数のためのアリコートを採取し、細菌成長促進溶液(トリプトン、ペプトン、酵母抽出物及びカザミノ酸を含有する)を残りの容積に加えた。成長/無成長の結果を寒天平板画線によって確認した。
【0195】
表3は、WB、LB及びRBCCにおける典型的な不活化実験の結果をそれぞれ表したものである。
【0196】
【表3】
【0197】
実施例11
【0198】
全血(WB)、白血球除去済み血液(LB)及び赤血球濃厚液(RBCC)における化合物VI及び化合物Xによるウイルス不活化
【0199】
全ての血液試料に、RSで調製したおよそ20%のウイルス原液を混入させ、平衡化のために室温で30分間放置した。BVDVまたはPPVを使用するウイルス不活化試験を、実施例10の細菌不活化プロトコールと同様にして実施した。T0及びインキュベーションから6時間後に、(Log10TCID50/mLで表した)ウイルス力価を実施例9に記載されているように決定した。BVDV及びPPV不活化の結果を表4に示す。
【0200】
【表4】
【0201】
実施例12
【0202】
化合物XVIによるRSVの不活化
【0203】
異なる濃度の化合物XVIによる室温及び40℃でのRSVの不活化を実施例9に記載されるように実施した。結果を表5に示す。
【0204】
【表5】
【0205】
実施例13
【0206】
熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)における化合物VIによるBVDV及びPPVの不活化
【0207】
FBSのアリコートに5%(体積/体積)のBVDV及びPPV原液を混入させ、室温で60分間平衡化させた。混入がなされたFBSにリン酸緩衝液(pH6.9)中10mMの化合物VIを100μMの終濃度で添加し、全てのアリコートを表6に記載のとおりに処理した。
【0208】
【表6】
【0209】
ウイルス混入血清試料を40±1℃で60分間、100μMの化合物VIで処理した。全ての試料(対照1~4及び処理試料)からのアリコートを、無血清のDMEMで段階希釈(1:5または1:10)し、各希釈液からの25μLを3反復で96ウェルプレート内のそれらの各指標細胞に播種した。プレートを5%CO2のインキュベータ内で60分間、37℃でインキュベートしてウイルスを吸着させた。検出限界を上げるために無希釈試料を追加で使用して24ウェルプレート内または10cmペトリ皿内の宿主細胞に感染させた。吸着後、全てのウェルに、25μLの希釈液の吸引を伴わずにDMEM/5%FBSを充填し、プレートをさらに37℃で6~7日間、CO2インキュベータ内でインキュベートした。各ウェルにおけるウイルスによる細胞変性効果の発達を目視検査によって検出し、Log10TCID50/mLとして表される各々のウイルス力価を算出するために用いた。検出限界は1mLあたり0.2感染性粒子であった。ある場合には、アッセイの結果を裏付けるために、接種されたウェルからの上清を6~7日後に回収し、24ウェルプレート内で新鮮な細胞に感染させるために使用した。
【0210】
表7に示す実験結果は、化合物VIによる処理がBVDV及びPPVをどちらもアッセイの検出限界未満に効果的に不活化させたことを実証している。
【0211】
【表7】
【0212】
実施例14
【0213】
原生動物及び真菌の不活化剤としての構造Iの化合物
【0214】
新鮮なヒト赤血球において24時間にわたって生理温度で血液感染性寄生虫Plasmodium falciparum 3D7、及びBabesia divergens Rouenの不活化を行った。濃度250μMの化合物XIVは強い抗寄生虫活性を発揮して、生きたプラスモジウム属生物の数を正の約7対数だけ低減し、バベシアを8対数だけ低減した。病原性真菌の代表であるCandida albicansの6対数を上回る不活化、及び繊毛を有する原生動物のモデル生物であるTetrahymena thermophilaの3対数の不活化がそれらの各成長培地において250μMの化合物XIVによって成し遂げられた。
【0215】
実施例15
【0216】
2-メルカプト酢酸エチルによる化合物Xの中和
【0217】
100μMの化合物Xのリン酸緩衝生理食塩水溶液を室温で10mMの2-メルカプト酢酸エチルと共にインキュベートし、化合物X濃度の変化、ならびに中和の中間体化合物(XXI)及び中和の最終化合物XXIIの形成を混合物のLCMS分析によって判定した。中和の反応スキームを以下に示す。化合物X、中間体中和生成物Q1(化合物XXI)及び最終中和生成物Q2(化合物XXII)のピーク面積を以下の表8及び図18に示す。
【0218】
【化18】
【0219】
【表8】
【0220】
実施例16
【0221】
チオ硫酸ナトリウムによる残存する化合物VIの中和
【0222】
チオ硫酸ナトリウムと構造Iの化合物との反応の試験は、Na223が化合物のアジリジン基と速やかに反応して開環させ、それを迅速な腎排泄を受けると予測される生物学的に十分に忍容されるチオ硫酸エステルに変換することを示した。PBS中での100μMの化合物VIと1mMのNa223との反応の速度を反応混合物のLCMS分析によって決定した(図19)。反応は一次速度論に従い、速度定数は、6℃で0.00614min-1、25℃で0.0379min-1である。この反応速度では、10mMのNa223の存在下で25℃での化合物VIの半減期は1.83分であることになり、2時間後に残存する化合物VIの濃度は5.5×10-19Mであることになる。反応生成物のLCMS分析は、それがビスチオ硫酸エステル(化合物VIと2分子のNa223との反応によって形成された化合物XXIIIであることを裏付けた。
【0223】
【化19】
【0224】
実施例17
【0225】
チオサリチル酸メチルによる化合物Xの中和
【0226】
178μLのリン酸緩衝生理食塩水に、10mMの化合物Xのメタノール溶液2μLと、100mMのチオサリチル酸メチルのメタノール溶液20μLとを添加し、これによって終濃度は不活化剤が100μM、サリチル酸メチルが10mMとなった。この溶液を、化合物Xの濃度の変化、及び本明細書中で模式的に示される化合物Xとチオサリチル酸メチルとの共有結合性付加物(化合物XXIV及びXXV)の形成について液体クロマトグラフィー質量分析によって分析した。
【0227】
【化20】
【0228】
図20Aにグラフで示される結果は、化合物XXVへとさらに変換されるものである中間体化合物XXIVの形成のために化合物Xの濃度が低下することを示している。化合物VIの中和の速度は、ピーク面積によって決定される化合物Xの濃度の対数をインキュベーション時間に対してプロットすることによって決定され得る。このプロットは、図20Bに示されるが、線形依存性を明らかにしており、化合物XのT1/2=16.6分の半減期に対応して一次速度定数をK=-0.0416min-1とする一次反応速度論を示している。
【0229】
実施例18
【0230】
チオフェノールによる構造Iの化合物の中和
【0231】
178μLのリン酸緩衝生理食塩水に、10mMの化合物Xのメタノール溶液2μLと、100mMのチオフェノールのメタノール溶液20μLとを添加し、これによって終濃度は不活化剤が100μM、チオフェノールが10mMとなった。この溶液を、化合物Xの濃度の変化、ならびに本明細書中で模式的に示される化合物Xとチオフェノールとの共有結合性付加物である化合物XXVI及び化合物XXVIIの形成について液体クロマトグラフィー質量分析によって分析した。
【0232】
【化21】
【0233】
図21に様々な時間点における化合物XとチオフェノールのLCMS分析の結果を示す。図21の左パネルに、ピークが化合物X、XXVI及びXXVIIに対応しているLCMS分析の全イオン電流マスクロマトグラムを示す。右パネルに、対応するピークのマススペクトルを示す。分析は、1分40秒(100秒)後に化合物Xがかなりの程度で中和され、化合物X、XXVI及びXXVIIのピーク面積の比がそれぞれ21:52:27であることを明らかにしている。10分後のそれらのピークの比は3:29:68であり、20分後には0.5:16:83.5であり、化合物Xから共有結合性の一付加物及び二付加物、XXVI及びXXVIIへの急速な変換を示唆している。
【0234】
実施例19
【0235】
チオスルホナート官能基を有する固相剤XXVIIIの調製、及び化合物VIの中和のためのその使用
【0236】
塩化スルホニル官能化ジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂(Sigma-Aldrichカタログ番号498211-5g)をアルゴン下で2Mの硫化水素ナトリウム溶液5ml(硫化ナトリウム九水和物の水溶液に硫化水素を飽和させることによって調製した)と混合した。混合物に超音波処理をおよそ3分間行い、次いで55℃で4時間撹拌した。その後、樹脂を濾別し、脱気水で3回、脱気メタノールで3回、及び脱気エーテルで2回洗浄した。樹脂をアルゴン気流下、次いで真空下で乾燥させた。チオスルホナート官能化ポリスチレン/ジビニルベンゼン樹脂である乾燥樹脂(化合物XXVIII)1.039gが得られた。化合物XXVIIIのアリコートを100μMの化合物VIのPBS溶液に添加した。LCMS分析から、混合物中の化合物VIの濃度の時間依存的低減が実証された。
【0237】
【化22】
【0238】
固相剤XXVIIIの調製の反応スキーム、ならびに化合物XXIX(例えば、化合物VIと固相剤XXIXとの共有結合性付加物)の形成を伴う固相剤XXVIIIによる化合物VIの中和及び共有結合的隔離の反応は本明細書中に示されている。
【0239】
実施例20
【0240】
メルカプトフェニル基官能化メタクリレート樹脂ベースの固相剤XXXの調製、ならびに化合物VIの中和及び共有結合的隔離のためのその使用
【0241】
4-メルカプトフェニル酢酸(Sigma-Aldrichカタログ番号653152-5G)400mgを2mlのジメチルスルホキシドで溶解させ、溶液を室温で一晩放置した。形成されたジメチルスルフィドを10torrの真空下で除去し、余剰のジメチルスルホキシドを45℃で一晩、0.05torrの真空下で除去した。これによって4-メルカプトフェニル酢酸の定量的収率のジスルフィドが蝋状の黄色味がかった固体として得られた。
【0242】
アミノエチル基官能化メタクリレート樹脂(Purolite Ltd,Llantrisant,Wales,UK、製品番号D6195、商標Chromalite MAM2、湿潤樹脂1mlあたり0.5mmolのアミノ基、水分68%)300mgを真空下、35℃で2mlの乾燥N,N-ジメチルホルムアミドからの3回の蒸発によって乾燥させた。乾燥樹脂を1mlの乾燥N,N-ジメチルホルムアミドの中に懸濁させ、この懸濁液に乾燥テトラヒドロフラン1ml中4-メルカプトフェニル酢酸のジスルフィド370mgの溶液を添加した。この懸濁液に、撹拌下でベンゾトリアゾール-l-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート172mgを添加し、続いて172μLのN,N-ジイソプロピルエチルアミンを滴加し、反応混合物をアルゴン下で密封した。24時間後、脱イオン及び脱気水1ml中330mgのジチオスレイトールの溶液を撹拌しながら添加し、10分後に樹脂を真空濾過によって回収し、脱気されたアセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、0.2mMのジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)で繰り返し洗浄し、アルゴンでパージして314mgの湿ったメルカプトフェニル基官能化メタクリレート樹脂を得た。生成物である化合物XXXにおけるメルカプト基の導入量は、イールマンの手順(Riener,C.K.;Kada,G.;Gruber,H.J.,Anal.Bioanal.Chem.,2002,373,266-76)を用いて決定され、湿潤樹脂1グラムあたり0.21mmolであった。水分含量は71%であった。化合物XXXのアリコートを100μMの化合物VIのPBS溶液に添加した。この混合物のLCMS分析によって、混合物中の化合物VIの時間依存的減少が実証された。
【0243】
【化23】
【0244】
上記反応スキームは、固相剤XXXの合成、及びそれと化合物VIとの、化合物XXXI(例えば、化合物VIと固相剤XXXとの共有結合性付加物XXXI)の形成を伴う反応を示す。
【0245】
実施例21
【0246】
チオフェノール基官能化ポリエチレングリコールグラフト化ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂XXXIIの調製、及び化合物VIの中和のためのその使用
【0247】
4-メルカプトフェニル酢酸900mgを無水ジクロロメタン50ml中1.60gのトリフェニルメチルクロリドの溶液に添加した。混合物をアルゴン下で3時間、室温で撹拌した。水30mlを添加し、混合物を5分間撹拌した。ジクロロメタン層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で蒸発濃縮して2.3gの粗生成物を白色固体として得た。この材料をシリカゲルクロマトグラフィーによってクロロホルムからクロロホルム/メタノール10:1までの勾配で精製して1.62g、74%の2-(4-(トリフェニルメチルチオ)フェニル)酢酸を得た。
【0248】
Tentagel S NH2樹脂200mg(Rapp Polymere GmbH,Tuebingen,Germany、製品番号S30132、アミノ基末端を有するポリエチレングリコールでグラフト化されたジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂)を数時間にわたって5mlの乾燥N,N-ジメチルホルムアミドの中で膨潤させ、その後、余分な溶媒をピペットで取り除いた。ベンゾトリアゾール-l-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート151mg、2-(4-(トリフェニルメチルチオ)フェニル)酢酸119mg、及び無水1-ヒドロキシベンゾトリアゾール44mgを1.2mLの乾燥N,N-ジメチルホルムアミドに溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン75mg、101μLを撹拌しながら添加し、1分後、得られた溶液を膨潤樹脂に添加した。室温で2時間振盪した後、樹脂を濾別し、3×2mLのN,N-ジメチルホルムアミドで洗浄し、次いでアルゴン気流下で乾燥させた。樹脂を、トリイソプロピルシラン2.5%及び水2.5%のテトラヒドロフラン溶液2mLの中に懸濁させた。2分後、樹脂をアルゴン下で濾別し、脱保護を繰り返した。その後、樹脂をアルゴン下で濾別し、3mlの脱気アセトニトリルで3回洗浄し、アルゴン気流下で乾燥させて、メルカプトフェニル基を保有するTentaGel S樹脂(例えば化合物XXXII)203mgを得た。メルカプト基導入量は、イールマンの手順を用いて決定され、乾燥樹脂1グラムあたり0.12mmolであった。化合物XXXIIのアリコートを100μMの化合物VIのPBS溶液に添加した。LCMS分析によって、混合物中の化合物VIの時間依存的減少が実証された。
【0249】
【化24】
【0250】
上記反応スキームは、固相剤XXXIIの合成、及びそれと化合物VIとの、化合物XXXIII(例えば、化合物VIと固相剤XXXIIとの共有結合性付加物XXXIII)の形成を伴う反応を示す。
【0251】
実施例22
【0252】
構造Iの化合物(複数可)に結合する固相剤の調製及び使用、ならびにイオン対形成によるそれらの中和または分解生成物。
【0253】
+形態のスルホン酸基で官能化されたPurolite NRW160ポリスチレンジビニルベンゼン架橋樹脂500gを、以下のステップに従ってNa+形態に移した:ビーズを真空フィルター上及び無菌フード下で3体積の飽和NaCl溶液で洗浄し、続いて2体積の1MのNaOHで洗浄した。NaOHによる滅菌の後、ビーズを無菌脱イオン水で洗浄液のpHが中性になるまで洗浄した。ビーズを2体積のメタノールで15分間インキュベートし、メタノールを除去した後、再び3体積の無菌脱イオン水ですすぎ洗いをした。最後にメタノール(2体積)でインキュベートした後、アルコールを濾過によって除去し、ビーズを真空下で乾燥させた。
【0254】
乾燥ビーズ50mgを100μMの化合物Xのリン酸緩衝生理食塩水溶液1mLに添加した。この混合物のLCMS分析は、上清中の化合物Xの濃度が30nM未満に低減されたことを示した。
【0255】
実施例23
【0256】
固相剤カートリッジの作製
【0257】
底部ポリプロピレン製フィルターを装着した5×50mm、20×120mm 20×200mm(直径×長さ、mm、カタログ番号PF-DLE-F0004、PF-DLE-F0025、及びPF-DLE-F0040、Interchim,Montlucon Cedex,France)の空のポリプロピレン製カートリッジに、固相剤を充填した。乾燥固相剤の場合、湿潤時のビーズの膨潤に備えるために、カートリッジへの充填はその容量の2/3とした。カートリッジの上部に別のポリプロピレン製フィルター円盤を装着し、カートリッジを密封し、室温(乾燥固相剤)または冷蔵(湿潤固相剤)で保存した。カートリッジは、図2、3、5~8に示されるように処理閉鎖型システム内に組み込まれ得る。
【0258】
実施例24
【0259】
化合物VIで処理された動物血清の細胞培養支援特性の維持
【0260】
熱不活化ウシ胎仔血清(FBS、カタログ番号89510-188、VWR)及び熱不活化ウマ血清(HS、カタログ番号H1138、Sigma)を100μMの化合物VIと共に40±1℃で60分間、50mL容無菌円錐管内でインキュベートした。処理対照血清は化合物VI希釈剤のみと共に40±1℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、実施例22及び実施例23に記載のとおりに作製された固相剤が充填されたカートリッジを使用して化合物VIを被処理血清から除去した。カートリッジ濾過後、0.2μのシリンジフィルターを使用して血清を濾過滅菌した。対照血清には40℃でのインキュベーションまたは固相剤への曝露を行わなかったが、濾過滅菌を行った。
【0261】
これらの血清を細胞増殖培地への栄養補給のために3つの異なる濃度、5%、10%及び20%で使用した。ウシ鼻甲介細胞(BTT、線維芽細胞形態)、豚精巣細胞(PT、上皮)、及び2つのヒト細胞株A172(膠芽腫、アストロサイト様細胞)、及びMCF7(上皮乳癌細胞)の成長に対するこれらの培地の支援能力を評価した。
【0262】
細胞成長曲線:コンフルエンシーの早い段階にあるBTT、PT、A172及びMCF7細胞をトリプシン処理し、48ウェルプレートに、上記の被処理または対照血清が補充されたDMEMに入れて播種した。培地を毎日取り替えた。24時間毎に生細胞を標準的な血球測定器でトリパンブルー色素排除法を用いて計数した。結果をウェル1つあたりの平均細胞数として示す。各希釈液に対して少なくとも3つのウェルを用いた。
【0263】
クローン成長:コンフルエンシーの早い段階にあるBTT、PT、A172及びMCF7細胞をトリプシン処理し、段階希釈(1:2)し、6反復で96ウェルプレートに、上記の被処理または対照血清が補充されたDMEMに入れて播種した。16日間にわたって培地を2日毎に取り替えた。クローン成長の存在を各ウェルの目視検査によって判定した。最後4つの希釈液について結果を示すが、細胞成長は、希釈液1つにつき合計6回の反復からの成長を有するウェルの数として観察された。
【0264】
長期培養:BTT、PT、A172及びMCF7細胞株を、対照または処理済みFBSまたはHS(BTT細胞のみ)が補充された培地の中で、3~4日間隔の10継代にわたって上記と同様に増殖させた。位相差顕微鏡法を用いて細胞及び単層の形態を毎日追跡評価した。
【0265】
細胞成長結果:典型的な成長曲線を図22に示す。全ての成長曲線は類似したパターンを呈した:まず典型的な遅滞期が全ての細胞株及び全ての培地に認められ、その後徐々に対数増殖期が起こった。予想通り、最も高い成長速度は、20%の血清を含む培地の中で培養された全ての細胞株においてみられた。10%の血清が補充された培地における成長は中間的な値を有していた一方、5%の血清を含んだ培地は細胞増殖が大幅に低減された。どの細胞株においても、どの血清濃度でも、対照血清、擬似処理血清または化合物VI処理血清の存在下で細胞成長の成長速度に統計的有意差はみられなかった。
【0266】
図22は、6~7日の期間にわたって測定された、48ウェルプレートにおける4つの異なる細胞株の成長に対する擬似処理血清または化合物VI処理血清の影響を示す。A、ブタPT細胞;B、ヒトA172細胞;C、ヒトMCF-7細胞;D、FBSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞;E、HSを含んだ培地の中で成長させたウシBTT細胞。T0の柱は、播種時の細胞数を表す;(1~7日目の)3つ並んでいるうちの1つ目の柱-対照である未処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数;(1~7日目の)3つ並んでいるうちの2つ目の柱-擬似処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数;(1~7日目の)3つ並んでいる柱のうちの3つ目の柱-化合物VI処理血清を補充した培地が入ったウェルの中の細胞の数。各時間点は3つのウェルの平均を表す。エラーバーは標準偏差を表す。
【0267】
クローン成長結果:非情に低い播種密度(クローン成長)での細胞成長支持能力は血清のもう1つの重要な特性である。表9は、4つの最終希釈液における段階希釈細胞の成長の存在を示す。これらの結果は、4つ全ての細胞株のクローン成長が血清処理によって影響を受けなかったことを示している。
【0268】
【表9】
【0269】
長期培養結果:化合物VI処理血清を含んだ培地の中で維持した細胞と、対照培地の中の細胞とでは、10連続継代にわたって、中程度のまたはコンフルエントな単層の細胞成長/外観または形態に視覚的差異が認められなかった。
【0270】
実施例25
【0271】
化合物VI処理ウシ胎仔血清がウイルス発達及び感染性を支援するその能力を維持する能力についての検査
【0272】
段階希釈した豚パルボウイルス(PPV、ATCC#VR-742)及び牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV、ATCC#VR-534)原液をそれぞれブタ精巣細胞(PT、PT;ATCC#CRL-1746)及びウシ鼻甲介細胞(BTT、ATCC;#CRL-1390)に添加し、吸着後、実施例24に記載のとおりに調製された対照または化合物VI処理FBSが補充された培地を添加した。ウイルスを混入させた全ての試料(処理血清、擬似処理血清または未処理血清)からのアリコートを無血清のDMEMで段階希釈(1:5または1:10)し、各希釈液からの25μLを3反復で96ウェルプレート内のそれらの各指標細胞に播種した。プレートを5%CO2のインキュベータ内で60分間、37℃でインキュベートしてウイルスを吸着させた。検出限界を上げるために無希釈試料を追加で使用して24ウェルプレート内または10cmペトリ皿内の宿主細胞に感染させた。吸着後、全てのウェルに、25μLの希釈液の吸引を伴わずにDMEM/5%FBSを充填し、プレートをさらに37℃で6~7日間、CO2インキュベータ内でインキュベートした。各ウェルにおけるウイルスによる細胞変性効果の発達を目視検査によって検出し、Log10TCID50/mLとして表される各々のウイルス力価を算出するために用いた。検出限界は1mLあたり0.2感染性粒子であった。ある場合には、アッセイの結果を裏付けるために、接種されたウェルからの上清を6~7日後に回収し、24ウェルプレート内で新鮮な細胞に感染させるために使用した。
【0273】
表10に示されるウイルス力価測定の結果は、未処理FBSが補充された対照培地、及び化合物VI処理血清が補充された培地が試験細胞において本質的に同じウイルス感染支援特性を有することを示している。
【0274】
【表10】
【0275】
実施例26
【0276】
構造Iの化合物で処理された全血及び赤血球(RBC)の質
【0277】
10mLの全血試料または赤血球濃厚液(RBCC、25mL)を500μMの化合物VIで6時間、室温で処理した。残存する化合物VIを同じ体積の10mMのチオ硫酸ナトリウムで2時間、室温で中和した。対照については、同一の全血またはRBCCの試料を、化合物VI抜きで生理食塩水及びチオ硫酸ナトリウムで、または化合物VI及び/またはチオスルフェート抜きで生理食塩水のみで処理した。IDEXX Procyte Dx血液分析機、及びIDEXX Catalyst Dx化学分析機を製造業者の推奨に従って用いて各試料からの全血及びRBCCのアリコートを全血球算定及び生化学分析に供した。試料を処理の直後に分析し、1週間後に全血について、及び4~6℃で保存する5週間にわたって毎週RBCCについて、再分析した。以下のパラメータを測定した:RBC数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、赤血球分布、網状赤血球数、血小板、平均血小板容積、白血球、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、塩素、カリウム、ナトリウム、グルコース及びラクテート濃度。毎週の検査の後、分析機の精度及び正確さの範囲内では、全ての測定パラメータ(RBC数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、赤血球分布、網状赤血球数、血小板、平均血小板容積、白血球、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、塩素、カリウム、ナトリウム、グルコース及びラクテート濃度)において処理試料と対照との間に細胞特性または生化学的特性の差がみられなかった。
【0278】
本発明の態様
本発明は、以下の非限定的な態様を提供する:
【0279】
態様1。試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させる方法であって、
(i)構造Iを有する化合物:
【0280】
【化25】
【0281】
〔式中、
各R1は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキルもしくは置換フェニル基、または構造IIの部分:
【0282】
【化26】
【0283】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
各nは出現毎に独立して、3、4または5であり、
各mは出現毎に独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である〕、
またはその化学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物による前記試料の処理、
(ii)前記試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させるのに十分な時間にわたるインキュベーション、
(iii)前記構造Iの化合物の毒性または他の望ましくない特性を排除または低減する1つ以上の中和剤による、前記試料の処理
を含む、前記方法。
【0284】
態様2。前記構造Iの化合物が、構造IA:
【0285】
【化27】
【0286】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニル基、または構造IIAの部分:
【0287】
【化28】
【0288】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
各bは出現毎に独立して、0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、態様1に記載の方法。
【0289】
態様3。前記構造Iの化合物が、構造IB:
【0290】
【化29】
【0291】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
bは0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、態様1に記載の方法。
【0292】
態様4。前記1つ以上の中和剤が、前記構造I、IAまたはIBの化合物のアジリジン環と反応してそれを開環させることによって前記構造I、IAまたはIBの化合物のアルキル化特性を排除する求核性化合物である、態様1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0293】
態様5。前記1つ以上の中和剤が、チオスルフェート、好ましくはチオ硫酸ナトリウム、チオホスフェート、好ましくはチオリン酸ナトリウム、チオ尿素もしくは置換型チオ尿素、チオカルボン酸及びその塩、ジチオカルボン酸及びその塩、チオ炭酸塩、ジチオ炭酸塩、チオ炭酸O-エステルの塩、ジチオ炭酸O-エステルの塩、メルカプタンすなわちチオールもしくはそれらの塩、または置換メルカプタンすなわち置換チオール、またはポリメルカプタンすなわちポリチオール及びそれらの塩、またはそれらの任意の組合せ、または共有結合によって結合しているメルカプトすなわちチオール基、チオスルフェート、チオホスフェート、チオ尿素、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオ炭酸O-エステル、ジチオ炭酸O-エステル基もしくはそれらの組合せを含有しており水性媒体に可溶である有機ポリマーである、態様4に記載の方法。
【0294】
態様6。前記1つ以上の中和剤が、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、2-(メチルアミノ)エタンチオール、2-アミノエタンチオール、2-(ジメチルアミノ)エタンチオール、2-メルカプト-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム及びその塩、チオカルボン酸及びその塩、チオ酢酸及びその塩、チオプロピオン酸及びその塩、チオシュウ酸及びその塩、チオマロン酸及びその塩、チオコハク酸及びその塩、チオグリコール酸及びその塩、チオ乳酸及びその塩、ジチオカルボン酸及びその塩、ジチオ酢酸及びその塩、2-メルカプト酢酸及びその塩、2-メルカプトプロピオン酸及びその塩、2-メルカプト酢酸エチル、2-メルカプトコハク酸ならびにその塩及びエステル、2-(メチルスルホニル)メタンチオール、(エチルスルホニル)メタンチオール、スルホニルジメタンチオール、2,2,2-トリフルオロエタンチオール、1H-イミダゾール-5-チオール、イミダゾリジン-2-チオン、1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-チオン、ピリジン-2-チオール、4-チオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-2(1H)-オン、2-チオキソジヒドロピリミジン-4,6(1H,5H)-ジオン、2-メルカプト安息香酸及びその塩、4-メルカプト安息香酸及びその塩、チオフェノール、2-、3-もしくは4-メルカプトアニソール、2-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、2,3-ジメルカプトプロパノール、または1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、ならびにそれらの組合せである、態様5に記載の方法。
【0295】
態様7。前記中和剤の前記メルカプタンすなわちチオールの-SH基の解離のpKaが4~10、好ましくは5~9、よりいっそう好ましくは6~8、または前記被処理媒体のpH付近である、態様5に記載の方法。
【0296】
態様8。前記中和剤の前記メルカプタンすなわち前記チオールが、二重結合に、または芳香環構造に、または完全もしくは部分的sp2混成炭素原子に直接結合している-SH基を有する、態様5に記載の方法。
【0297】
態様9。前記中和剤が少なくとも1つの電子受容基、例えば、スルホン基(-S(O2)-R)またはスルホキシド基(-S(O)-R)またはエステル基(-C(O)OR)またはアミド基(-C(O)NH2、-C(O)NHR、-C(O)NR2)を含み、式中、Rが任意のアルキルまたは置換アルキル基であり、前記電子受容基が、SH基が結合している炭素原子に結合している、態様5に記載の方法。
【0298】
態様10。前記中和剤が、任意選択的に連結基を介して、固体担体に共有結合している、態様1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0299】
態様11。残存量の前記構造Iの化合物を含有する前記試料に前記1つ以上の中和剤が1分~48時間、好ましくは20分~24時間、よりいっそう好ましくは60分~8時間の期間にわたって、0~100℃、好ましくは10~60℃、よりいっそう好ましくは20~40℃の温度で、1~14、好ましくは4~9、よりいっそう好ましくは6~8のpHで、1M以下、好ましくは0.1M以下の濃度、よりいっそう好ましくは10mM以下の濃度で接触する、態様1~10のいずれか1項に記載の方法。
【0300】
態様12。残存する前記構造Iを有する化合物の濃度が、前記中和剤による処理の後に少なくとも2対数、好ましくは少なくとも3対数、より好ましくは少なくとも4対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも5対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも6対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも7対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも8対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも9対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも10対数だけ低下する、態様1~11のいずれか1項に記載の方法。
【0301】
態様13。残存する前記構造Iの化合物を前記中和剤と接触させた後、前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の生成物、及び/または余剰の前記中和剤が、前記被処理媒体に不溶な固相剤であって、多孔性、微多孔性 マクロ多孔性もしくはゲル状であり得るかまたは非多孔性の高分散性の高表面積固体であり得、1μm~1cmの様々な径のビーズまたは粒子の形状を有し得、前記構造Iの化合物(複数可)の中和もしくは分解の生成物及び/または前記中和剤との化学反応及び共有結合かその吸収かさもなければ隔離をする前記固相剤による、前記被処理試料の処理、ならびにそれに続く前記固相剤の好ましくは濾過または沈降または遠心分離による除去によって前記被処理試料から部分的または完全に除去されるか、あるいは、前記処理が、前記固相剤が入ったカートリッジによる前記媒体もしくは組成物の濾過によって、または透過性もしくは半透性膜を介した前記固相剤との前記媒体もしくは組成物の接触によって行われ、前記処理が、1回、2回もしくは複数回、または前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の化合物の所望の低減が成し遂げられるまで行われ得、前記処理が、単一の固相剤によって、または逐次使用するか混合物として使用するかのどちらかである2つ以上の異なる固相剤によって行われ得る、態様1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0302】
態様14。前記固相剤が、前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の生成物、及び/または余剰の前記中和剤を吸収する、態様13に記載の方法。
【0303】
態様15。前記固相剤が、活性炭、または逆相樹脂、または多孔性もしくは微多孔性疎水性有機ポリマー、例えば、ポリスチレン樹脂、またはジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂、またはC4-C18アルキル基などの疎水性有機基で修飾されたポリアクリレートもしくはポリメタクリレート樹脂である、態様14に記載の方法。
【0304】
態様16。前記固相剤が、陽イオン交換樹脂または陰イオン交換樹脂であり、処理のpHの下で前記中和剤がアニオン性またはカチオン性である場合に前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の生成物、及び/または余剰の前記中和剤とイオン対を形成する、態様15に記載の方法。
【0305】
態様17。前記陽イオン交換樹脂が有機ポリマーであり、好ましくは、架橋されており、カチオン、例えば、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムもしくは置換アンモニウムカチオンまたは水素カチオンとのイオン対形成形態であるアニオン性基、例えばスルホまたはスルホンまたはカルボキシル基を保有している、態様16に記載の方法。
【0306】
態様18。前記陰イオン交換樹脂が有機ポリマーであり、好ましくは、架橋されており、カチオン性基、例えば、プロトン化アミノまたはアルキル置換アミノ基、例えば、モノ-、ジ-もしくはトリメチルアミン基、または第四級アンモニウム基、例えばテトラメチルアンモニウム基を保有し、前記基が、アニオン、例えば、クロライド、スルフェート、シトレートまたはヒドロキシルアニオンとのイオン対形成形態である、態様16に記載の方法。
【0307】
態様19。前記固相剤が、ポリマーであり、好ましくは架橋されており、許容されるナトリウムなどのカチオンとイオン対を形成したチオスルフェート基と結合しており、式P-R-S-SO3 -Na+を有し、式中、Pがポリマーであり、Rが共有結合または任意の二価リンカーであり、前記基が、交換反応によって余剰の式R1SHまたはR1-Cat+のメルカプトすなわちチオール型の中和剤と反応し、式中、Cat+がナトリウムなどの許容されるカチオンであり、その結果、次式P-R-S-S-R1で表されるジスルフィド結合による前記不活性化剤と前記ポリマーとの共有結合、及びチオスルフェートアニオンS23 2-の遊離がもたらされ;または、前記ポリマーが直接もしくはリンカーを介してエポキシもしくは置換エポキシと結合しており、前記エポキシ基が、余剰の式R1SHまたはR1-Cat+のメルカプトすなわちチオール型の中和剤と反応して前記エポキシ基を開環させ前記中和剤を前記ポリマーに共有結合させるものであり、式中、Cat+がナトリウムなどの許容されるカチオンである、態様13に記載の方法。
【0308】
態様20。前記試料が、組成物、実用品、表面、装置または生物である、態様1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0309】
態様21。前記試料が、血液または血液製品、体液、真核生物由来または原核生物由来の培地、ワクチン配合組成物、生物製剤または生物学的製剤、臨床試料、生検材料、研究試料、化粧品、医薬組成物、消耗品、機器、水中用流体導管、パイプ、ホース、熱交換器または水上船、及びそれらの表面である、態様1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0310】
態様22。前記試料が血液または血液製品である、態様1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0311】
態様23。試料からの病原体または望ましくない生物を不活化させる、減少させる、または除去する方法であって、
構造Iを有する化合物:
【0312】
【化30】
【0313】
〔式中、
各R1は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、アルケニル、シクロアルキルもしくはフェニル基、または構造IIの部分:
【0314】
【化31】
【0315】
から選択され、
nは出現毎に独立して、3、4または5であり、
mは出現毎に独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である〕、
またはその化学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物による前記試料の処理、及び
それに続く前記病原体または望ましくない生物の出現に対する化合物または前記構造Iを有する化合物の所望の効果を可能にするのに十分な時間にわたるインキュベーション;
(ii)前記被処理媒体に不溶な固相剤であって、多孔性、微多孔性 マクロ多孔性もしくはゲル状であり得るかまたは非多孔性の高分散性の高表面積固体であり得、1μm~1cmなどの様々な径のビーズまたは粒子の形状を有し得、残存する前記構造Iの化合物またはその分解の生成物(複数可)の化学反応及び共有結合かその吸収かさもなければ隔離をする前記固相剤による前記試料の処理;
(iii)前記固相剤の好ましくは濾過、沈降または遠心分離による除去
を含む;あるいは、前記処理が、前記固相剤が入ったカートリッジによる前記試料の濾過によって、または透過性もしくは半透性膜を介した前記固相剤との前記試料の接触によって行われ;前記処理が、1回もしくは2回もしくは複数回、または前記構造Iの化合物もしくはその分解の生成物の所望の低減が成し遂げられるまで行われ得、前記処理が、単一の固相剤によって、または逐次使用するか混合物として使用するかのどちらかである2つ以上の異なる固相剤によって行われ得る、前記方法。
【0316】
態様24。前記構造Iの化合物が構造IA:
【0317】
【化32】
【0318】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニル基、または構造IIAの部分:
【0319】
【化33】
【0320】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
各bは出現毎に独立して、0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、態様23に記載の方法。
【0321】
態様25。前記構造Iの化合物が構造IB:
【0322】
【化34】
【0323】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
bは0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、態様23に記載の方法。
【0324】
態様26。前記固相剤が、前記構造Iの化合物との化学反応及び共有結合をする反応性基を含有する、態様23~25のいずれか1項に記載の方法。
【0325】
態様27。前記反応性基が、前記構造Iの化合物のアジリジン環と反応してそれを開環させることができるものであり、求核性基、例えば、チオスルフェート -OS(O)(O-)S-、またはチオスルホナート -S(O)(O-)S-、またはメルカプトすなわちチオール基 -SH、-CH2SH、-CH2CH2SH、-CF2CH2SH、-OCH2CH2SH、-NH2CH2CH2SH、-NH(Me)CH2CH2SH、-N(Me2)CH2CH2SH、-COCH2SH、-S(O2)CH2SH、-チオ尿素 -NHC(S)NH2、もしくは置換型チオ尿素基、チオカルボン酸 -C(O)S-、ジチオカルボン酸 -C(S)S-、チオ炭酸O-エステル -OC(O)S-、ジチオ炭酸O-エステルもしくはキサンテート -OC(S)S-、チオホスホナート -PO(OH)SH、及びチオホスフェート -OPO(OH)SH、o-、m-もしくはp-チオフェニル基 -C64SH、チオサリチラート基、m-もしくはp-チオベンゾエート基 -O2CC64SH、またはそれらの塩形態である、態様26に記載の方法。
【0326】
態様28。前記メルカプトすなわちチオールすなわち-SH基が、二重結合に、または芳香環構造に、または完全もしくは部分的sp2混成炭素原子に直接連結されている、態様27に記載の方法。
【0327】
態様29。前記-SH基の-S-及びH+への解離のpKaが10未満、好ましくは9未満、最も好ましくは8未満である、態様27または態様28に記載の方法。
【0328】
態様30。前記固相剤が、多孔性、微多孔性またはゲル状の有機ポリマーである、態様23~29のいずれか1項に記載の方法。
【0329】
態様31。前記有機ポリマーが、親水性有機ポリマー、または水性媒体中での湿潤もしくは膨張もしくは膨潤が可能なポリマーである、態様30に記載の方法。
【0330】
態様32。前記有機ポリマーが、好ましくは架橋されており、ポリスチレンポリマー、あるいはポリアクリレートポリマー、あるいはポリメタクリレートポリマー、あるいはポリウレタン系ポリマー、あるいはポリアミド系ポリマー、あるいはデキストラン系ポリマー、例えば、限定されないが、セファデックス(登録商標)、あるいはアガロース系ポリマー、例えば、限定されないが、セファロース(登録商標)、あるいはセルロース系ポリマー、あるいは変性セルロース系ポリマー、例えば、限定されないが、カルボキシメチルセルロースまたはジエチルアミノエチルセルロースまたはメチルセルロース、あるいは他の多糖系ポリマー、あるいは他の任意の直鎖型、分岐型または架橋型の、ホモもしくはヘテロポリマーまたはイソ型もしくはアタクチック型配置もしくは他の立体規則性を有するブロックコポリマーである、あるいは、前記被処理媒体に不溶な他の任意の適切な巨大分子であってもよい、態様30または態様31に記載の方法。
【0331】
態様33。前記求核性基が、様々な種類のもののうちの1つであり得、前記ポリマーの主鎖に直接結合したものであり得、あるいは二価基、例えば、限定されないが、酸素原子、硫黄原子、-NH-基、メチレン基、一置換もしくは二置換メチレン基、エチレンもしくは置換エチレン基、プロピレンもしくは置換プロピレン基、オキシメチレンもしくはオキシエチレン基、または二価、三価もしくは多価リンカー、例えば、限定されないが、オリゴもしくはポリオキシエチレン、オリゴもしくはポリエステル、もしくはポリアミド型リンカーによって結合したものであり得、前記リンカーが直鎖型または分岐型またはデンドリマー型であってもよく、それに結合している1つ、または1つより多い、または多くの求核性基を含有していてもよい、態様27~32のいずれか1項に記載の方法。
【0332】
態様34。前記ポリマーが、前記求核性基だけでなく、限定されないがいわゆる隣接効果もしくは隣接電子対効果によって、または前記求核性基の脱プロトン化を増強することによって、または前記求核性基に水素結合することによって、または前記構造Iの化合物と前記求核性基との間で形成される遷移状態と相互作用し、そのエネルギーを下げることによって、または前記構造Iの化合物との非共有結合もしくはイオン対形成をし、結果としてその局所濃度を高めることによって、または前記構造Iの化合物(複数可)のアジリジン窒素をプロトン化し、結果としてそれらの反応性を増大させることによって前記求核性基の求核性を増強することで前記構造Iの化合物との反応を伴わずにそれと前記求核性基との反応を支援する基も含有する、態様30~33のいずれか1項に記載の方法。
【0333】
態様35。ポリマー親水性もしくは濡れ性を増大させるのに、またはポリマー特性、例えば、限定されないが、前記試料もしくは前記組成物もしくは生物もしくは生体液の成分に対する不活性さを改善するのに十分な数の親水性基が前記有機ポリマーに結合している、態様30~34のいずれか1項に記載の方法。
【0334】
態様36。前記有機ポリマーがジビニルベンゼン架橋ポリスチレンであり前記極性基が、分子量を150~100,000Da、好ましくは2,000~40,000Da、よりいっそう好ましくは4,000~20,000Daとし密度をどのモノマー単位でも1個以下の基としたエチレングリコールオリゴマーもしくはポリエチレングリコール、またはスルホ基(スルホン酸基、-SO3 -)である、あるいは前記ポリマーがアクリレートまたはメタクリレートポリマーであり前記極性基が、ポリオール、例えば、限定されないが、2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-またはオリゴ-またはポリエチレングリコールであり、前記極性基が、所望の親水性または他の有益な特性を獲得するのに十分な密度で前記アクリレートまたはメタクリレートポリマーのC1すなわちカルボニル基に結合しており、前記他の有益な特性は、限定されないが、免疫原性がないこと、あるいは血栓形成性がないこと、あるいはタンパク質もしくは受容体に対する、または前記被処理試料もしくは組成物もしくは体液の他の成分に対する結合性または親和性がないことであり得る、態様35に記載の方法。
【0335】
態様37。前記固相剤が、残存する構造Iの化合物の正に帯電した窒素原子との多重イオン対を形成する、態様23~36のいずれか1項に記載の方法。
【0336】
態様38。固相剤が有機ポリマー、微多孔性またはマクロ多孔性またはゲル状の有機ポリマーであり、好ましくは、架橋しており、カチオン、例えば、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムもしくは置換アンモニウムカチオンまたは水素カチオンとのイオン対形成形態であるアニオン性基、例えばスルホまたはスルホンまたはカルボキシル基を保有している、態様37に記載の方法。
【0337】
態様39。前記ポリマーが、ナトリウム型のスルホン基をポリマー1グラムあたり1.5ミリ当量以下の密度で含有するジビニル架橋ポリスチレンポリマーである、態様38に記載の方法。
【0338】
態様40。前記ポリマーがジアクリレート架橋ポリアクリレートまたはメタクリレートであり、前記アニオン性基がポリマー1グラムあたり4ミリ当量以下の密度のナトリウム型のスルホンまたはカルボキシル基である、態様38に記載の方法。
【0339】
態様41。前記病原体または望ましくない生物が、感染症原因生物、例えば、限定されないが、エンベロープウイルス及びノンエンベロープウイルス、DNAもしくはRNAウイルスならびにバクテリオファージを含めたウイルス、プリオン、原核生物、グラム陽性もしくはグラム陰性菌を含めた細菌、芽胞形成菌もしくは細菌芽胞、マイコプラズマ、古細菌、及び細菌膜;真菌、原生動物、単もしくは多細胞寄生虫、寄生蠕虫、住血吸虫もしくは線虫、もしくはそれらの卵、単もしくは多細胞藻類、及び甲殻類を含むがこれらに限定されない、真核生物、単もしくは多細胞真核生物、または滲出物質、バイオフィルムもしくは生物汚損系を含めたそれらの任意の組合せである、態様1~40のいずれか1項に記載の方法。
【0340】
態様42。前記被処理試料が、ヒトまたは動物の血液、白血球除去済み血液、及び血液製品、例えば、血漿、赤血球、血小板、血清または血漿成分、因子または酵素、輸液を意図した輸液用血液及び血液成分、アフェレーシス血液成分、体液、動物血清、例えば細胞培養添加剤として使用される血清、真核生物由来または原核生物由来の培地、ワクチン配合組成物、化粧品及び医薬組成物から選択され;前記実用品が、任意の産業用もしくは家庭用の設備、電化製品、機器、機構、機械もしくは材料であり得るか、または病原体、微生物もしくは他の生物の存在が望ましくないかもしくは防除される必要がある可能性のある他の任意の物品であり得;表面が、電化製品、装置または器具、例えば、生物汚損を含めて病原体、微生物もしくは他の生物の存在が望ましくないかもしくは防除される必要がある場合のパイプ、ダクト、ホース、パイプライン、通気口、熱交換器、下水管、流路または他の任意の流体用もしくはガス用導管の表面、または流体と接触している任意の物体表面、例えば、海上船、スクリーンもしくはフィルターであり得;前記生物が、動物、哺乳動物またはヒト、またはそれらの部分、例えば、生体試料、生物学的調製物及び生検材料であり得る、態様1~41のいずれか1項に記載の方法。
【0341】
態様43。前記病原体(複数可)または微生物(複数可)が、1つ以上の前記構造Iの化合物を含有する組成物で処理され、前記組成物が、液体、溶液、ゲル、固体、粉末、粒子として製剤化されたものであってもよいし、またはカプセル封入、溶解、分散、粉砕、微粉化もしくはナノ粒子への変換がなされたものであってもよいし、または他の製剤化形態であってもよいし、またはそれらの組合せであってもよい、態様1~42のいずれか1項に記載の方法。
【0342】
態様44。前記試料または組成物が前記構造Iの化合物で1分~48時間、好ましくは20分~24時間、よりいっそう好ましくは60分~8時間の期間にわたって、0~100℃、好ましくは10~60℃、よりいっそう好ましくは20~40℃の温度で、1~14、好ましくは4~9、よりいっそう好ましくは6~8のpHで、10nM~10mM、好ましくは1μM~1mM、さらにいっそう好ましくは100~500μMの濃度で処理される、態様1~43のいずれか1項に記載の方法。
【0343】
態様45。前記被処理試料中に存在する前記病原体または望ましくない生物の少なくとも1つの力価が、少なくとも50%、好ましくは少なくとも1対数、より好ましくは少なくとも2対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも3対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも4対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも5対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも6対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも7対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも8対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも9対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも10対数またはそれ以上低減される、態様1~44のいずれか1項に記載の方法。
【0344】
態様46。前記病原体(複数可)または微生物(複数可)が生物の中に存在し、前記生物が哺乳動物またはヒトであり得、前記構造Iの化合物、または前記構造Iの化合物の製剤による処理が生体内で、静脈内、経口、局所、直腸、皮下、筋肉内投与、吸入またはそれらの組合せによって行われ、前記処理が、単回投与、多回投与または連続投与によって、所望の病原体低減を成し遂げるのに十分な用量(複数可)で行われ得る、態様1~45のいずれか1項に記載の方法。
【0345】
態様47。前記構造Iの化合物の前記除去または中和または不活性化、ならびに前記構造Iの化合物の中和の生成物及び/または余剰の前記中和剤の任意選択での除去が前記生物の体液の生体外処理によって行われ、前記体液が元の前記生物に戻される、または輸液される、態様46に記載の方法。
【0346】
態様48。前記病原体(複数可)または微生物(複数可)が動物またはヒトの中に存在し、前記構造Iの化合物による処理、ならびに前記構造Iの化合物及び任意選択でのそれらの中和もしくは分解の生成物及び/または余剰の前記中和剤の前記除去または中和が生体外で、前記動物またはヒトの体液、例えばアフェレーシスによって採取されたものであってもよい血液または血漿の処理によって行われ、前記処理の後に前記液が元の動物またはヒトに戻される、または輸液される、態様1~47のいずれか1項に記載の方法。
【0347】
態様49。前記病原体または望ましくない生物の少なくとも1つが、1つ以上の抗病原体処理に対して耐性である、または前記構造Iの化合物による処理以外のいかなる処理に対しても感受性を有さない可能性がある、態様1及び態様48のいずれか1項に記載の方法。
【0348】
態様50。前記構造Iの化合物が、有機もしくは無機アニオンとの、好ましくは求核性の低いアニオンとの、例えば、スルフェート、パークロレート、メタンスルホナートもしくはテトラフルオロボレートとの塩形態である、または良好な水溶性ならびに40℃未満、40℃超及び120℃未満の融点を有する固体との、例えば、限定されないが、様々な分子量のポリエチレングリコールとの固溶体の形態である、態様1~49のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0348
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0348】
態様50。前記構造Iの化合物が、有機もしくは無機アニオンとの、好ましくは求核性の低いアニオンとの、例えば、スルフェート、パークロレート、メタンスルホナートもしくはテトラフルオロボレートとの塩形態である、または良好な水溶性ならびに40℃未満、40℃超及び120℃未満の融点を有する固体との、例えば、限定されないが、様々な分子量のポリエチレングリコールとの固溶体の形態である、態様1~49のいずれか1項に記載の方法。
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させる方法であって、
(i)構造Iを有する化合物:
【化35】
〔式中、
各R1は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキルもしくは置換フェニル基、または構造IIの部分:
【化36】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
各nは出現毎に独立して、3、4または5であり、
各mは出現毎に独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である〕、
またはその化学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物による前記試料の処理、
(ii)前記試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させるのに十分な時間にわたるインキュベーション、
(iii)
(a)前記構造Iを有する化合物の毒性もしくは他の望ましくない特性を排除もしくは低減する1つ以上の中和剤による、または
(b)前記構造Iを有する化合物の吸収かそれとの共有結合かさもなければその隔離をする1つ以上の固相剤による、
前記試料の処理
を含む、前記方法。
2.前記構造Iの化合物が、構造IA:
【化37】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニル基、または構造IIAの部分:
【化38】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、Cl、F、アルキル基、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
各bは出現毎に独立して、0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、項目1に記載の方法。
3.前記構造Iの化合物が、構造IB:
【化39】
〔式中、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、またはCH(CH32から選択され、
各aは出現毎に独立して、1、2または3から選択され、
bは0、1、2、3、4、5または6から選択される〕
を有する、項目1に記載の方法。
4.前記1つ以上の中和剤が、前記構造Iの化合物のアジリジン環と反応してそれを開環させることによって前記構造Iの化合物のアルキル化特性を排除する求核性化合物である、項目1~3のいずれかに記載の方法。
5.前記1つ以上の中和剤が、
チオスルフェート、好ましくはチオ硫酸ナトリウム、チオホスフェート、好ましくはチオリン酸ナトリウム、チオ尿素もしくは置換型チオ尿素、チオカルボン酸及びその塩、ジチオカルボン酸及びその塩、チオ炭酸塩、ジチオ炭酸塩、チオ炭酸O-エステルの塩、ジチオ炭酸O-エステルの塩、メルカプタンすなわちチオールもしくはそれらの塩、または置換メルカプタンすなわち置換チオール、またはポリメルカプタンすなわちポリチオール及びそれらの塩、またはそれらの任意の組合せ、または
共有結合によって結合しているメルカプトすなわちチオール基、チオスルフェート、チオホスフェート、チオ尿素、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオ炭酸O-エステル、ジチオ炭酸O-エステルもしくはそれらの組合せを含有しており水性媒体に可溶である有機ポリマー
である、項目4に記載の方法。
6.前記1つ以上の中和剤が、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、2-(メチルアミノ)エタンチオール、2-アミノエタンチオール、2-(ジメチルアミノ)エタンチオール、2-メルカプト-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム及びその塩、チオカルボン酸及びその塩、チオ酢酸及びその塩、チオプロピオン酸及びその塩、チオシュウ酸及びその塩、チオマロン酸及びその塩、チオコハク酸及びその塩、チオグリコール酸及びその塩、チオ乳酸及びその塩、ジチオカルボン酸及びその塩、ジチオ酢酸及びその塩、2-メルカプト酢酸及びその塩、2-メルカプトプロピオン酸及びその塩、2-メルカプト酢酸エチル、2-メルカプトコハク酸ならびにその塩及びエステル、2-(メチルスルホニル)メタンチオール、(エチルスルホニル)メタンチオール、スルホニルジメタンチオール、2,2,2-トリフルオロエタンチオール、1H-イミダゾール-5-チオール、イミダゾリジン-2-チオン、1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-チオン、ピリジン-2-チオール、4-チオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-2(1H)-オン、2-チオキソジヒドロピリミジン-4,6(1H,5H)-ジオン、2-メルカプト安息香酸及びその塩、4-メルカプト安息香酸及びその塩、チオフェノール、2-、3-もしくは4-メルカプトアニソール、2-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、2,3-ジメルカプトプロパノール、または1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、ならびにそれらの組合せである、項目5に記載の方法。
7.前記中和剤が固相担体に共有結合している、項目1~5のいずれかに記載の方法。
8.前記固相担体が、多孔性、微多孔性またはゲル状の有機ポリマーである、項目7に記載の方法。
9.前記有機ポリマーが、親水性有機ポリマー、または水性媒体中での湿潤もしくは膨張もしくは膨潤が可能なポリマーである、項目8に記載の方法。
10.前記有機ポリマーが、好ましくは架橋されており、
ポリスチレンポリマー、あるいはポリアクリレートポリマー、あるいはポリメタクリレートポリマー、あるいはポリウレタン系ポリマー、あるいはポリアミド系ポリマー、あるいはデキストラン系ポリマー、例えば、限定されないが、セファデックス(登録商標)、あるいはアガロース系ポリマー、例えば、限定されないが、セファロース(登録商標)、あるいはセルロース系ポリマー、あるいは変性セルロース系ポリマー、例えば、限定されないが、カルボキシメチルセルロースまたはジエチルアミノエチルセルロースまたはメチルセルロース、あるいは他の多糖系ポリマー、あるいは他の任意の直鎖型、分岐型または架橋型の、ホモもしくはヘテロポリマーまたはイソ型もしくはアタクチック型配置もしくは他の立体規則性を有するブロックコポリマーである、あるいは、
前記被処理媒体に不溶な他の任意の適切な巨大分子であってもよい、項目8または項目9に記載の方法。
11.前記中和剤の前記求核性基が、
前記ポリマーの主鎖に直接結合しているか、あるいは
二価基、例えば、酸素原子、硫黄原子、-NH-基、メチレン基、一置換もしくは二置換メチレン基、エチレンもしくは置換エチレン基、プロピレンもしくは置換プロピレン基、オキシメチレンもしくはオキシエチレン基、または二価、三価もしくは多価リンカー、例えば、限定されないが、オリゴもしくはポリオキシエチレン、オリゴもしくはポリエステル、もしくはポリアミド型リンカーによって結合したものであり得、
前記リンカーが直鎖型または分岐型またはデンドリマー型であってもよく、それに結合している1つ、または1つより多い、または多くの求核性基を含有していてもよい、項目1~10のいずれかに記載の方法。
12.残存する前記構造Iの化合物を前記中和剤と接触させた後、前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の生成物、及び/または余剰の前記中和剤が、
前記被処理媒体に不溶な固相剤であって前記構造Iの化合物の中和もしくは分解の生成物及び/または前記中和剤との化学反応及び共有結合かその吸収かさもなければ隔離をする前記固相剤による前記被処理試料の処理、ならびに
それに続く前記固相剤からの前記被処理試料の除去
によって前記被処理試料から低減または除去される、項目1~6のいずれかに記載の方法。
13.前記固相剤が、前記構造Iの化合物の前記中和もしくは分解の生成物、及び/または余剰の前記中和剤を吸収する、項目12に記載の方法。
14.前記固相剤が、活性炭、または逆相樹脂、または多孔性もしくは微多孔性疎水性有機ポリマー、例えば、ポリスチレン樹脂、またはジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂、またはC4-C18アルキル基などの疎水性有機基で修飾されたポリアクリレートもしくはポリメタクリレート樹脂である、項目13に記載の方法。
15.残存量の前記構造Iの化合物を含有する前記試料に前記1つ以上の中和剤が1分~48時間、好ましくは20分~24時間、よりいっそう好ましくは60分~8時間の期間にわたって、0~100℃、好ましくは10~60℃、よりいっそう好ましくは20~40℃の温度で、1~14、好ましくは4~9、よりいっそう好ましくは6~8のpHで、1 M以下、好ましくは0.1 M以下の濃度、よりいっそう好ましくは10 mM以下の濃度で接触する、項目1~14のいずれかに記載の方法。
16.残存する前記構造Iを有する化合物の濃度が、前記中和剤による処理の後に少なくとも2対数、好ましくは少なくとも3対数、より好ましくは少なくとも4対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも5対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも6対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも7対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも8対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも9対数、さらにいっそう好ましくは少なくとも10対数だけ低下する、項目1~15のいずれかに記載の方法。
17.前記病原体または望ましくない生物が、
エンベロープウイルス及びノンエンベロープウイルス、DNAもしくはRNAウイルスならびにバクテリオファージを含めたウイルス、
プリオン、原核生物、グラム陽性もしくはグラム陰性菌を含めた細菌、芽胞形成菌もしくは細菌芽胞、マイコプラズマ、古細菌、及び細菌膜;
真菌、原生動物、単もしくは多細胞寄生虫、寄生蠕虫、住血吸虫もしくは線虫、もしくはそれらの卵、単もしくは多細胞藻類、及び甲殻類を含むがこれらに限定されない、真核生物、単もしくは多細胞真核生物、または
バイオフィルムもしくは生物汚損系、または
それらの任意の組合せ
などの感染症原因生物のうちの1つ以上である、項目1~16のいずれかに記載の方法。
18.前記試料が、組成物、実用品、表面、装置または生物である、項目1~17のいずれかに記載の方法。
19.前記試料が、血液または血液製品、体液、真核生物由来または原核生物由来の培地、ワクチン配合組成物、生物製剤または生物学的製剤、臨床試料、生検材料、研究試料、化粧品、医薬組成物、消耗品、機器、水中用流体導管、パイプ、ホース、熱交換器または水上船、及びそれらの表面である、項目1~17のいずれかに記載の方法。
20.前記試料が血液または血液製品である、項目1~17のいずれかに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させる方法であって、
(i)構造Iを有する化合物:
【化1】
〔式中、
各R1は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または置換アルキル基から選択され、
各R2は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、または置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキルもしくは置換フェニル基、または構造IIの部分:
【化2】
から選択され、
各R3は出現毎に独立して、H、CH3、CH2CH3、CH(CH32、Cl、F、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基または他の置換アルキル基から選択され、
各nは出現毎に独立して、3、4または5であり、
各mは出現毎に独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である〕、
またはその化学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物による前記試料の処理、
(ii)前記試料からの病原体または望ましくない生物を不活化または減少させるのに十分な時間にわたるインキュベーション、
(iii)
(a)前記構造Iを有する化合物の毒性もしくは他の望ましくない特性を排除もしくは低減する1つ以上の中和剤による、または
(b)前記構造Iを有する化合物の吸収かそれとの共有結合かさもなければその隔離をする1つ以上の固相剤による、
前記試料の処理
を含む、前記方法。
【外国語明細書】