(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073463
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】中間留分を製造する第二段階水素化分解のための改善された貴金属ゼオライト触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/80 20060101AFI20240522BHJP
B01J 35/31 20240101ALI20240522BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240522BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240522BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240522BHJP
B01J 35/61 20240101ALI20240522BHJP
B01J 35/63 20240101ALI20240522BHJP
C10G 47/18 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B01J29/80 M
B01J35/31
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/00 D
B01J35/61
B01J35/63
C10G47/18
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024025491
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2021138796の分割
【原出願日】2016-08-09
(31)【優先権主張番号】14/823,839
(32)【優先日】2015-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チア、チーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ライニス、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】メーセン、テオドラス ルドヴィクス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コーサー、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーファ
(72)【発明者】
【氏名】リア、トーマス マイケル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA03A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA43A
4G169BB05A
4G169BC16A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC05
4G169DA06
4G169EB18X
4G169EC03X
4G169EC04Y
4G169EC07X
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB65
4G169FC08
4G169ZA05A
4G169ZA05B
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZC04
4G169ZC07
4G169ZC08
4G169ZD06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
4G169ZF07B
4G169ZF09B
4H129CA05
4H129CA07
4H129DA21
4H129KA12
4H129KB03
4H129KC13X
4H129KC15X
4H129KD26X
4H129NA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された第二段階水素化分解触媒、ならびにそれらを使用するためのプロセスおよびそれらを製造するためのプロセスを提供する。
【解決手段】a)20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、b)0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、c)触媒担体と、d)0.1~10重量%の貴金属とを含み、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを水素化分解するために使用されるとき、最大37重量%の合成変換の範囲にわたって、350SCFB未満の水素消費量を与える第二段階水素化分解触媒が提供される。第二段階水素化分解触媒を使用する第二段階水素化分解プロセスが提供される。第二段階水素化分解触媒を製造するための方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、
b.0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、
c.触媒担体と、
d.0.1~10重量%の貴金属と
を含み、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを水素化分解するために使用されるとき、最大37重量%の合成変換の範囲にわたって、350SCFB未満の水素消費量を与える、第二段階水素化分解触媒。
【請求項2】
前記ゼオライトベータの重量%が、前記ゼオライトUSYの重量%よりも高い、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項3】
前記OD酸性度が30~100μmol/gである、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項4】
前記平均ドメインサイズが900~1250nm2である、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトUSYが、H/D交換後にFTIRによって求められる0.080~0.200mmol/gの全ブレンステッド酸点を有する、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項6】
前記第二段階水素化分解触媒が、625°F(329℃)未満で23~37重量%の合成変換の範囲にわたって、250~350SCFBの間の水素消費量を有する、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項7】
前記第二段階水素化分解触媒が、420~620g/lの充填かさ密度を有する、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項8】
前記第二段階水素化分解触媒が、12重量%未満のLOI(1000°F[538℃])を有する、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項9】
前記貴金属が、白金、パラジウムまたはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の第二段階水素化分解触媒。
【請求項10】
第二段階水素化分解プロセスであって、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを第二段階水素化分解反応器内で第二段階水素化分解触媒を使用して水素化分解するステップであって、前記第二段階水素化分解反応器からの70重量%よりも高い排出物が、380°F(193℃)よりも高い水素化分解沸点を有し、前記第二段階水素化分解触媒が、最大37重量%の合成変換の範囲にわたって、350SCFB未満の水素消費量を与え、前記第二段階水素化分解触媒が、
a.20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、
b.0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、
c.触媒担体と、
d.0.1~10重量%の貴金属と
を含むものである、上記ステップを含む、第二段階水素化分解プロセス。
【請求項11】
前記ゼオライトベータの重量%が、前記第二段階水素化分解触媒中の前記ゼオライトUSYの重量%よりも高い、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ゼオライトベータが、30~100μmol/gの前記OD酸性度を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ゼオライトベータが、900~1250nm2の前記平均ドメインサイズを有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ゼオライトUSYが、H/D交換後にFTIRによって求められる0.080~0.200mmol/gの全ブレンステッド酸点を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第二段階水素化分解触媒が、625°F(329℃)未満で23~37重量%の合成変換の範囲にわたって、250~350SCFBの間の水素消費量を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第二段階水素化分解触媒が、420~620g/lの充填かさ密度を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第二段階水素化分解触媒が、12重量%未満のLOI(1000°F[538℃])を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項18】
前記貴金属が、白金、白金またはこれらの混合物を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項19】
第二段階水素化分解触媒を製造するための方法であって、
a.20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、触媒担体と、十分な液体とを混ぜ合わせて、押出可能なペーストを生成するステップと、
b.前記押出可能なペーストを押し出して、押出ベースを生成するステップと、
c.少なくとも1つの貴金属を含む金属含浸溶液を前記押出ベースに含浸させて、金属担持押出物を調製するステップと、
d.前記金属負荷押出物を乾燥および焼成させることによって前記金属担持押出物を後処理するステップと、を含み、前記第二段階水素化分解触媒が、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを水素化分解するために使用されるとき、最大37重量%の合成変換の範囲にわたって、350SCFB未満の水素消費量を与える、
方法。
【請求項20】
前記ゼオライトベータの重量%が、前記第二段階水素化分解触媒中の前記ゼオライトUSYの重量%よりも高い、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる「低OD酸性度および大きいドメインサイズを有するゼオライトベータを含む中間留分水素化分解触媒」および「ゼオライトUSY、ならびに低酸性度および大きいドメインサイズを有するゼオライトベータを含む中間留分水素化分解触媒」と題する2つの同時に提出した出願に関連する。
【0002】
本出願は、第二段階水素化分解触媒、炭化水素系フィード(供給原料)の第二段階水素化分解のためのプロセス、および第二段階水素化分解触媒を製造するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
改善された第二段階水素化分解触媒、ならびにそれらを使用するためのプロセスおよびそれらを製造するためのプロセスが必要である。以前の第二段階水素化分解触媒は、高品質の中間留分を製造するための所望の改善されたレベルの活性を備えていなかった。以前の第二段階水素化分解触媒は、中間留分および重質ナフサの良好な収率を与えたが、活性は最適なものよりも低かった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願は、20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、b.0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、c.触媒担体と、d.0.1~10重量%の貴金属とを含み、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを水素化分解するために使用されるとき、最大37重量%の合成変換(synthetic conversion)の範囲にわたって、350SCFB未満の水素消費量を与える、第二段階水素化分解触媒を提供する。
【0005】
本出願はまた、第二段階水素化分解プロセスであって、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを第二段階水素化分解反応器内で第二段階水素化分解触媒を使用して水素化分解するステップであって、第二段階水素化分解反応器からの70重量%よりも高い排出物は、380°F(193℃)よりも高い水素化分解沸点を有し、第二段階水素化分解触媒は、最大37重量%の合成変換の範囲にわたって、350SCFB未満の水素消費量を与え、第二段階水素化分解触媒は、
a.20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、
b.0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、
c.触媒担体と、
d.0.1~10重量%の貴金属と
を含む、ステップを含む、第二段階水素化分解プロセスも提供する。
【0006】
本出願はまた、第二段階水素化分解触媒を製造するための方法であって、
a.20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、触媒担体と、十分な液体とを混ぜ合わせて、押出可能なペーストを生成するステップと、
b.押出可能なペーストを押し出して、押出ベースを生成するステップと、
c.少なくとも1つの貴金属を含む金属含浸溶液を押出ベースに含浸させて、金属担持(loaded)押出物を調製するステップと、
d.金属担持押出物を乾燥および焼成させることによって金属担持押出物を後処理するステップと、を含み、第二段階水素化分解触媒は、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを水素化分解するために使用されるとき、最大37重量%の合成変換の範囲にわたって、350SCFB未満の水素消費量を与える、方法も提供する。
【0007】
本明細書に記載の通り、本発明は適切に、特許請求の範囲の要素を含んでも、それらからなっても、または実質的にそれらからなってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ゼオライトベータの2つのサンプルに対して行ったドメイン測定のグラフである。
【
図2】ゼオライトベータの2つのサンプルの平均ドメインサイズのグラフである。
【
図3】2つの異なる第二段階水素化分解触媒における規格化した水素化分解温度対オンストリーム時間を示すグラフである。
【
図4】2つの異なる第二段階水素化分解触媒における625°F(329℃)未満での水素消費量対合成変換を示すグラフである。
【
図5】中間留分の収率を最適化するために設計された第二段階水素化分解反応器を有する二段階水素化処理ユニットの実施形態の図である。
【
図6】本開示における第二段階水素化分解触媒の評価のために使用されるパイロットプラントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語集
「水素化分解」は、水素化および脱水素化が、例えば、より重質な炭化水素をより軽質な炭化水素に変換する、あるいは芳香族化合物および/またはシクロパラフィン(ナフテン)を非環状の分岐パラフィンに変換する炭化水素の分解/切断を伴うプロセスを指す。
【0010】
「第二段階水素化分解」は、第一段階水素化処理反応器内で生成される炭化水素系フィードを水素化分解するためのプロセスを指す。第二段階水素化分解は、第一段階水素化処理反応器に流体的に接続された第二段階水素化分解反応器内で行われる。
【0011】
「TBP」は、ASTM D2887-13によって求められる炭化水素系フィードまたは生成物の沸点を指す。
【0012】
「カットポイント」は、所定の分離度に達する真沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0013】
「炭化水素系」は、水素原子および炭素原子を含み、酸素、硫黄または窒素などのヘテロ原子を含むことができる化合物または物質を意味する。
【0014】
「水素化分解沸点」は、水素化分解反応器内で生成される炭化水素系生成物の沸点を指す。
【0015】
「中間留分」は、380°F~625°Fのカットポイントを有する生成物を含む。中間留分は、ジェット燃料(380~566°F)およびディーゼル油(566~625°F)を含むことができる。
【0016】
「完成触媒」は、その成分をすべて含み、かつそれを製造するために用いられるすべての処理ステップおよび任意の後処理ステップの後の第二段階水素化分解触媒組成物を指す。
【0017】
「LHSV」は、時間あたりの液空間速度を意味する。
【0018】
「WHSV」は、時間あたりの重量空間速度を意味する。
【0019】
「SCFB」は、炭化水素系フィード1バレルあたりのガス(例えば、窒素、水素、空気など)の標準立方フィートの単位を指す。
【0020】
「SiO2/Al2O3モル比(SAR)は、誘導結合プラズマ(ICP)元素分析によって決定される。無限大のSARは、ゼオライト中にアルミニウムが存在しないこと、すなわち、アルミナに対するシリカのモル比が無限大であることを意味する。その場合には、ゼオライトは、実質的にすべてシリカからなる。
【0021】
「ゼオライトベータ」は、真っ直ぐな12員環チャンネルと、交差した12員環チャンネルとを持つ三次元結晶構造を有し、約15.3T/1000Å3の骨格密度を有するゼオライトを指す。ゼオライトベータは、Ch.BaerlocherおよびL.B.McCusker著、Database of Zeolite Structures:http://www.iza-structure.org/databases/に記載のBEA骨格を有する。
【0022】
「ゼオライトUSY」は、超安定化Yゼオライトを指す。Yゼオライトは、3以上のSARを有する合成フォージャサイト(FAU)ゼオライトである。Yゼオライトは、水熱安定化、脱アルミニウムおよび同形置換のうちの1つまたは複数によって超安定化することができる。ゼオライトUSYは、出発(合成されたままの)Na-Yゼオライト前駆体よりも骨格ケイ素含有量が高い任意のFAU型ゼオライトにすることができる。
【0023】
「触媒担体」は、触媒が固定される材料、通常は高表面積を持つ固体を指す。
【0024】
「周期表」は、2007年6月22日付けのIUPAC元素周期表の版を指し、周期表の族の番号付け体系は、Chemical And Engineering News、63(5)、27(1985)に記載の通りである。
【0025】
「OD酸性度」は、フーリエ変換赤外分光(FTIR)による、重水素化ベンゼンで80℃で交換される架橋ヒドロキシル基の量を指す。OD酸性度は、触媒におけるブレンステッド酸点密度の尺度である。1Hマジック角回転核磁気共鳴(MAS NMR)分光法により校正した標準的なゼオライトベータサンプルに基づいて分析することによって、ODシグナルの吸光係数を求めた。ODおよびOHの吸光係数の相関関係が次の通り得られた:
ε(-OD)=0.62*ε(-OH)。
【0026】
「ドメインサイズ」は、ゼオライトベータ触媒において観察および測定される構造単位の計算した面積(nm2)である。ドメインは、2004年12月22日にウェブ上で公開されたPaul A.Wrightら著、“Direct Observation of Growth Defects in Zeolite Beta”、JACS Communicationsによって記述されている。ゼオライトベータのドメインサイズを測定するために用いられる方法は、本明細書にさらに記述される。
【0027】
「酸点分布指数(ASDI)」は、ゼオライトの超高活性サイト濃度の指標である。ASDIは次式により求められる:ASDI=(HF’+LF’)/(HF+LF)。いくつかの実施形態において、ASDIが小さいほど、より重質な中間留分生成物の生成に対して、より高い選択性をゼオライトが有する可能性が高くなる。
【0028】
「非晶質アルミン酸シリカ(ASA)」は、核磁気共鳴画像法によって示される四面体配位中に存在するアルミナをいくらか有する合成材料を指す。ASAは、触媒または触媒担体として用いることができる。非晶質シリカアルミナは、ブレンステッド酸(またはプロトン性)点と呼ばれるサイトを、イオン性水素原子と共に含み、ルイス酸(非プロトン性)、電子受容サイトおよびこれらの様々なタイプの酸性点は、例えば、ピリジンの結合の仕方によって区別することができる。
【0029】
「擬ベーマイトアルミナは、化学組成AlO(OH)を持つアルミニウム化合物を指す。擬ベーマイトアルミナは、ベーマイトよりも水分が高い微結晶ベーマイトからなる。
【0030】
「API比重」は、ASTM D4052-11によって求められる、水に対する石油供給原料または生成物の比重を指す。
【0031】
「多環指数(PCI)」は、いくつかの芳香環を有する化合物の含有量の尺度を指す。PCIは、水素化処理のための供給原料の評価において有用である。PCIは紫外分光法を用いて測定され、次の通り計算される:
PCI={[吸光度@385nm-(0.378×吸光度@435nm)]/115×c}×1000(式中、cは、溶媒中のサンプルの元の濃度(g/cm3)である)。
【0032】
「貴金属」は、(大部分の卑金属とは異なり)湿潤空気中で耐食性および耐酸化性のある金属を指す。貴金属の例は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金および金である。
【0033】
「粒子密度」は、その細孔容積(g/l)を含む触媒の密度を指し、水銀ポロシメトリーにより測定することができる。粒子密度の測定は、水銀が大部分の材料の表面を濡らさず、したがって、加圧下で強制的に入れない限り固体触媒の細孔に入らないことに基づいている。粒子密度は、触媒サンプルを水銀中に完全に浸漬することにより、容積法または重量法のいずれかで測定することができる。重量法では、粒子密度(D)の式は次の通り:D=(C×ρ)/(A+B-C)(式中、Cは、触媒サンプルの重量、Aは、水銀で満たした試験セルの重量、Bは、触媒サンプルおよび水銀の両方を入れた試験セルの重量、ρは、水銀の密度である)。容積法では、粒子密度(D)の式は次の通り:D=C/ΔV(式中、ΔVは、触媒サンプルありとなしの試験セルにおける容積測定値の差である)。
【0034】
本開示の文脈における「触媒活性化温度(C.A.T.)」は、625°F(329℃)未満で30重量%の変換目標に達するのに必要な温度を指す。
【0035】
ゼオライトの酸点の分布によって、一般に、特定の精製品に対する触媒活性および選択性が決まる。ASDIは、ゼオライトの超酸点濃度の高さを与える。水素化分解ユニットの商業運転中、酸点の濃度が高くなり、炭化水素系供給原料の水素化分解が増える可能性がある。水素化分解が増えると、軽質ナフサおよびC1-C4ガスなどの価値がより低い生成物が多く製造される原因になり得る。
【0036】
理論によって制限されることなく、定義された酸点分布指数(ASDI)を持つゼオライトUSYと組み合わせ、触媒担体上に担持され、1つまたは複数の貴金属を含浸させた、ゼオライトベータと、定義されたOD酸性度および定義された平均ドメインサイズとの独特の組み合わせは、はるかに改善された第二段階水素化分解触媒をもたらすと考えられる。第二段階水素化分解触媒におけるこれらの成分の独特の組み合わせは、380~625°FのTBPを有する水素化分解排出物を生成するための優れた選択性を備えながら、625°F(329℃)未満で23~37重量%の合成変換の範囲にわたって、一般に350SCFB未満の改善された水素消費量を与える。第二段階水素化分解触媒はまた、本明細書に開示されている成分の独特の組み合わせを持たない他の第二段階水素化分解触媒と比べて、30%の変換で1~30°Fなど、改善された活性ももたらすことができる。
【0037】
第二段階水素化分解触媒組成物-ゼオライトベータ:
ゼオライトベータは、20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有する。1つの実施形態では、OD酸性度は30~100μmol/gである。
【0038】
1つの実施形態では、ゼオライトベータは、有機テンプレートを使用して合成的に製造される。3つの異なるゼオライトベータの例を表1に示す。
【0039】
【0040】
酸性ヒドロキシル基をH/D交換して、FTIR分光法により全OD酸性度を求めた。全OD酸性度を求める方法は、Emiel J.M.Hensenらによる刊行物、J.Phys.Chem.、C2010、114、8363-8374に記載の方法から適応させた。FTIR測定の前に、サンプルを1×10-5Torr未満の真空下、400~450℃で1時間加熱した。次いで、サンプルにC6D6を投入し、80℃で平衡させた。C6D6の投入前後に、OHおよびOD伸縮領域のスペクトルを収集した。ゼオライトベータの2660cm-1のピークの積分面積を用いてブレンステッド酸点密度(OD酸性度)を求めた。
【0041】
以下の通り透過型電子(TEM)とデジタル画像解析を組み合わせることにより、平均ドメインサイズを測定した:
【0042】
I.ゼオライトベータサンプル調製:
少量のゼオライトベータをエポキシに包埋し、ミクロトームで切片にしてゼオライトベータサンプルを調製した。適した手順の説明は、多くの標準的な顕微鏡の教科書に記載されている。
【0043】
ステップ1.ゼオライトベータ粉末の代表的なごく一部をエポキシに包埋した。エポキシを硬化させた。
【0044】
ステップ2.ゼオライトベータ粉末の代表的な部分を含むエポキシをミクロトームで80~90nm厚に切り出した。顕微鏡の供給業者から入手できる400メッシュの3mm銅網上にミクロトーム切片を集めた。
【0045】
ステップ3.導電性カーボンの十分な層をミクロトーム切片上に真空蒸着させて、TEMにおいて電子ビーム下でゼオライトベータサンプルが帯電しないようにした。
【0046】
II.TEM画像化:
ステップ1.上述の調製したゼオライトベータサンプルを低倍率、例えば、250,000~1,000,000倍で調査して、ゼオライトベータのチャンネルが見える結晶を選定した。
【0047】
ステップ2.選択したゼオライトベータの結晶を、それらの晶帯軸上に対して傾け、シェルツァーの焦点外れ近くに焦点を合わせて2,000,000倍以上で画像を記録した。
【0048】
III.平均ドメインサイズ(nm2)を求めるための画像解析:
ステップ1.市販の画像解析ソフトウェアパッケージを用いて、先述の記録したTEMデジタル画像を解析した。
【0049】
ステップ2.個々のドメインを切り離して、ドメインサイズをnm2の単位で測定した。投影が明らかにチャンネルビューの下でないドメインは測定値に含めなかった。
【0050】
ステップ3.統計的に適切な数のドメインを測定した。生データをコンピュータのスプレッドシートプログラムに保存した。
【0051】
ステップ4.記述統計量および度数を求めた-算術平均(dav)、すなわち平均ドメインサイズ、および標準偏差(s)を次式を用いて計算した:
平均ドメインサイズ、dav=(anidi)/(ani)
標準偏差、s=(a(di-dav)2/(ani))1/2
【0052】
1つの実施形態では、平均ドメインサイズは、1000~1150nm2など、900~1250nm2である。
【0053】
第二段階水素化分解触媒組成物-ゼオライトUSY:
ゼオライトUSYは、0.05~0.12の間の酸点分布指数(ASDI)を有する。1つの実施形態では、ゼオライトUSYは、重質な中間留分の製造に有利なASDIを有する。
【0054】
ASDIは、先述の通り、酸性ヒドロキシル基をH/D交換して、FTIR分光法により求められる。第1の高振動数OD(HF)として2676cm-1の、第2の高振動数OD(HF’)として2653cm-1の、第1の低振動数OD(LF)として2632cm-1および2620cm-1の、第2の低振動数OD(LF’)として2600cm-1のピークの積分面積を用いてブレンステッド酸点密度を求めた。酸点分布指数ファクターを次式により求めた:ASDI=(HF’+LF’)/(HF+LF)(これは、ゼオライトサンプル中の超高活性酸点含有量を反映する)。1つの実施形態では、ゼオライトUSYは、H/D交換後にFTIRによって求められる0.080~0.200mmol/gの全ブレンステッド酸点を有する。
【0055】
1つの実施形態では、ゼオライトベータの重量%は、水素化分解触媒中のゼオライトUSYの重量%よりも高い。例えば、ゼオライトベータの重量%は、ゼオライトUSYの重量%よりも0.45~9.95重量%高くすることができる。1つの実施形態では、ゼオライトベータの重量%は、ゼオライトUSYの重量%よりも1~5重量%高い。1つの実施形態では、水素化分解触媒は、0.01~0.80または0.02~0.48など、0.90未満である、ゼオライトベータに対するゼオライトUSYの重量比を有する。
【0056】
第二段階水素化分解触媒組成物-触媒担体:
水素化分解触媒は触媒担体を含む。触媒担体は不活性にすることができて、または、水素化分解触媒によって実施される触媒反応に関与することができる。典型的な触媒担体には、様々な種類の炭素、アルミナおよびシリカが含まれる。1つの実施形態では、触媒担体は非晶質アルミン酸シリカを含む。1つの実施形態では、触媒担体は、非晶質アルミン酸シリカおよび第2の担体材料を含む。
【0057】
1つの実施形態では、非晶質アルミン酸シリカ(ASA)は、高純度アルミナよりも高い熱安定性を有する。適した非晶質アルミン酸シリカの例は、以下で説明するSIRAL(登録商標)ASAである:
【0058】
【0059】
SIRAL(登録商標)は、SASOLの登録商標である。
【0060】
使用されるとき、第2の担体材料の例には、珪藻土、アルミナ、シリカおよびシリカアルミナを含むことができる。第2の担体材料の他の例には、アルミナ-ボリア、シリカアルミナ-マグネシア、シリカアルミナ-チタニア、およびゼオライトと他の複合酸化物をそれに加えて得られる材料が含まれる。1つの実施形態では、第2の担体材料は多孔質であり、天然粘土または合成酸化物を含む。第2の担体材料は、水素化分解触媒が使用される反応条件で十分な機械的強度および化学的安定性を備えるよう選択することができる。
【0061】
1つの実施形態では、第2の担体材料は擬ベーマイトアルミナを含む。擬ベーマイトアルミナの例は、CATAPAL(登録商標)高純度アルミナである。CATAPAL(登録商標)は、SASOLの登録商標である。CATAPAL高純度アルミナの典型的な特性を以下にまとめる:
【0062】
表3
【表3】
*表面積および細孔容積は、550℃で3時間活性化した後に測定した。
【0063】
1つの実施形態では、第2のアルミナは、第二段階水素化分解触媒が450~650m2/gのBET表面積を有するように十分高い第2のアルミナBET表面積を有する。例えば、第2のアルミナは、155~350m2/g、200~300m2/gまたは220~280m2/gなど、150m2/gよりも大きい第2のアルミナBET表面積を有することができる。
【0064】
1つの実施形態では、第2のアルミナは、800~1100g/lなど、700g/lよりも高いアルミナ充填かさ密度を有する。
【0065】
第二段階水素化分解触媒組成物-貴金属:
第二段階水素化分解触媒はさらに、少なくとも1つの貴金属を含む。第二段階水素化分解触媒中の貴金属の総量は、完成した水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて、0.1重量%~10重量%である。1つの実施形態では、貴金属は、白金、パラジウムおよびこれらの混合物の群から選択される。
【0066】
異なる実施形態では、第二段階水素化分解触媒は、以下の物理特性のうちの1つまたは複数を有することができる:
a.420~620g/lの充填かさ密度、
b.12重量%未満、または0.5~10重量%未満のLOI(1000°F[538℃])、
c.70重量%~98重量%の全PtPd H2吸着量、および
d.800~1200g/lの粒子密度。
【0067】
1つの実施形態では、第二段階水素化分解触媒は、1.0~5.0mmなど、10mm以下の押出ペレット直径を有する押出ペレット(押出物)の形態である。1つの実施形態では、押出ペレットは、10~1の直径に対する長さの比を有する。第二段階水素化分解触媒に使用される他のタイプおよびサイズのペレットの例は、直径1~10mmの球、4~1の直径に対する長さの比を持つ直径1~10mmの円柱、1~10mmの非対称形(四葉を含む。)、および最大直径10mmの中空円柱または環である。
【0068】
所与の触媒の°Fまたは℃高活性は商業的に大きな価値があるが、その理由は、水素化分解プロセスの全体の速度論は時間と共に触媒が失活するものであり、炭化水素原料の一定の変換を保つために、時間に応じてプロセスの運転温度を絶えず徐々に上昇させる必要があるからである。プロセスが指定の温度に達すると、プロセスをシャットダウン、すなわち停止して、触媒を取り替えなければならないような温度の制約が必然的にプロセス装置にはある。これらのシャットダウンは非常に費用がかかるため、(°Fまたは℃高活性で示される)より低温での所望の変換を実現する触媒は、シャットダウン温度に達するのに、より長い時間を必要とするため、水素化分解プロセスにおいて、より長い寿命を有する。例えば、商業的な水素化分解プロセスの典型的な温度増分は、運転日あたり0.05~0.1°F程度になり得、10°F高い活性を有する触媒は、触媒を入れ替えるまで、プラントの運転日を100~200日延長することができる。
【0069】
水素消費量は、水素化処理反応プロセスにおいて消費される水素の量である。水素消費量は精製装置の価値を高める重要な要素である。水素消費量の削減は、精製装置の価値を大いに高める。
【0070】
水素消費量はH NMRにより測定され、次の通り計算される:
水素消費量=生成物ガス流中の水素+生成物中の水素の合計-フィード中の水素。
【0071】
第二段階水素化分解プロセス
上述の第二段階水素化分解触媒を使用して、380°F(193℃)より高い初留点を有する炭化水素系フィードを水素化分解することができる。
【0072】
1つの実施形態では、炭化水素系フィードは、第一段階水素化分解反応器排出物を含む。 別の実施形態では、炭化水素系フィードは、第一段階水素化分解装置からの排出物と、ディーゼル油などの原料フィードとのブレンドである。1つの実施形態では、第一段階水素化分解装置からの排出物とブレンドされる原料フィードは、第一段階水素化分解装置への供給原料である。これらのタイプの原料フィードの例には、ビスブロークン軽油、重質コーカー軽油、水素化分解残渣もしくは脱硫残渣由来の軽油、他の熱分解油、脱アスファルト油、フィッシャー-トロプシュ由来の供給原料、流動接触分解(FCC)ユニットからのサイクル油、石炭由来の重質留分、石炭ガス化副生タール、頁岩由来の重質油、パルプもしくは製紙工場または廃バイオマス熱分解ユニットからのものなどの有機廃油が含まれる。
【0073】
1つの実施形態では、炭化水素系フィードは、ゼロから1000未満など、5000未満のPCIを有する。
【0074】
表4に、使用することができる炭化水素系フィードの典型的なバルク特性をいくつか挙げた。
【0075】
【0076】
表5に、用いることができる典型的な水素化分解プロセス条件をいくつか挙げた。
【0077】
【0078】
供給原料、目標生成物の候補および利用可能な水素の量に応じて、本明細書に記載の第二段階水素化分解触媒は、単独で、または他の従来の水素化分解触媒と組み合わせて使用することができる。
【0079】
1つの実施形態では、第二段階水素化分解触媒は、再循環あり、または再循環なし(単流)の第二段階水素化分解ユニット内の1つまたは複数の固定床内に配置される。任意選択で、第二段階水素化分解ユニットは、並行して運転される複数の第二段階ユニットを使用してもよい。
【0080】
1つの実施形態では、第二段階水素化分解触媒は、中間段階分離ありとなし、再循環あり、または再循環なしの二段階水素化分解ユニット内の1つもしくは複数の床またはユニット内に配置される。二段階水素化分解ユニットは、完全な変換構成を用いて運転することができる(水素化処理および水素化分解のすべてが、再循環を経て水素化分解ループ内で実現されることを意味する)。この実施形態では、第二段階水素化分解ステップの前、あるいは蒸留残油を再循環して第一および/または第二段階に戻す前に生成物を除去する目的で、水素化分解ループ内の1つまたは複数の蒸留ユニットを使用してもよい。
【0081】
二段階水素化分解ユニットはまた、部分的な変換構成で運転することもできる(さらに水素化処理するために通過する1つまたは複数の流れをストリッピングする目的で、1つまたは複数の蒸留ユニットが水素化分解ループ内に配置されることを意味する)。第二段階水素化分解ユニットまたは反応器のこのような運転は、(水素化分解触媒を失活させ得る)多核芳香族化合物、窒素化学種および硫黄化学種などの望ましくないフィード成分を、これらの成分の処理により適している装置、例えば、FCCユニットによる処理のために水素化分解ループから出すことによって、非常に不利な供給原料の精製装置による水素化処理を可能にする。
【0082】
1つの実施形態では、以下による、少なくとも1つの中間留分および重質減圧ガス流動接触分解供給原料(HVGO FCC)の製造に適切な二段階水素化分解構成である部分的な変換の第二段階において第二段階水素化分解触媒が使用される:
(a)第一段階水素化分解排出物を生成するための炭化水素系供給原料の水素化分解、
(b)少なくとも1つの中間蒸留留分と、常圧残油留分とを生成するための水素化分解された供給原料の常圧蒸留による蒸留、
(c)サイドカット減圧軽油留分と、重質減圧軽油FCC供給原料とを生成するための常圧残油留分の真空蒸留によるさらなる蒸留、
(d)第二段階水素化分解排出物を生成するためのサイドカット減圧軽油留分の第二段階水素化分解、および
(e)第二段階水素化分解排出物と第一段階水素化分解排出物との組み合わせ。
【0083】
上で例示した精製装置構成は、従来の二段階水素化分解スキームと比べて、いくつかの利点を有する。第1に、この構成において、第一段階の触媒および運転条件は、確立された商業規格を満たすFCC生成物を生成するのに必要な最低限のフィード品質のみを有するHVGO FCC流を得るために選択されている。これは、留分収率を最大にするのに必要な厳しさで第一段階水素化分解ユニットが運転され、(より多くの水素を必要とし、触媒の寿命を縮める)さらに厳しい条件でユニットを運転する必要がある従来の二段階水素化分解スキームとは対照的である。
【0084】
第2に、この任意選択の構成において、第二段階水素化分解装置ユニットに送られるサイドカット減圧軽油(VGO)は、従来の第二段階水素化分解装置フィードよりも清浄で、水素化分解がより容易である。したがって、より高品質の中間留分生成物は、より小さい体積の第二段階水素化分解触媒を使用して得ることができて、これは、より小さい水素化分解装置反応器の構成、および、より少ない水素の消費を可能にする。第二段階水素化分解ユニット構成は、建設コストを削減し、触媒充填コストおよび運転コストを低減する。
【0085】
第二段階水素化分解触媒の調製
第二段階水素化分解触媒は、以下により調製することができる:
a.20~400μmol/gのOD酸性度および800~1500nm2の平均ドメインサイズを有するゼオライトベータと、0.05~0.12の間のASDIを有するゼオライトUSYと、触媒担体と、十分な液体とを混ぜ合わせて、押出可能なペーストを生成するステップと、
b.押出可能なペーストを押し出して、押出ベースを生成するステップと、
c.少なくとも1つの貴金属を含む金属含浸溶液を押出ベースに含浸させて、金属担持押出物を調製するステップと、
d.金属担持押出物を乾燥および焼成させることによって金属担持押出物を後処理するステップ。
【0086】
ステップa)において使用される液体は、水または穏やかな酸にすることができる。1つの実施形態では、ステップa)において使用される液体は、0.5~5重量%HNO3の希薄なHNO3酸水溶液である。
【0087】
含浸前に、押出ベースを、90℃(194°F)~150℃(302°F)の間の温度で30分間~3時間乾燥することができる。次いで、乾燥した押出ベースを、350℃(662°F)~700℃(1292°F)の間の1つまたは複数の温度で焼成することができる。
【0088】
1つの実施形態では、金属含浸溶液は、金属前駆体を溶媒に溶解させることによって調製される。適した溶媒には、水、C1-C3アルコール、エーテルおよびアミンが含まれる。1つの実施形態では、溶媒は脱イオン水である。1つの実施形態では、含浸溶液は、8よりも高い塩基性のpHなど、塩基性のpHに調整される。1つの実施形態では、金属含浸溶液は、9.1~9.5の塩基性のpHを有する。含浸溶液の濃度は、担体の細孔容積および選択された金属添加量によって決めることができる。1つの実施形態では、押出ベースは、含浸溶液に0.1~24時間さらされる。第二段階水素化分解触媒が2つ以上の金属を含む場合、これらの金属は、順次または同時に含浸させることができる。
【0089】
1つの実施形態では、38℃(100°F)~177℃(350°F)の範囲内の1つまたは複数の温度で金属担持押出物を0.1~10時間乾燥させる。乾燥した金属担持押出物は、316℃(600°F)~649℃(1200°F)の1つまたは複数の温度で、過剰の乾燥空気をパージしながら0.1~10時間、さらに焼成することができる。
【0090】
第二段階水素化分解によって生成される生成物
第二段階水素化分解触媒は、380°F(193℃)を超える沸点を有する最適化された収率の生成物を生成することができる。1つの実施形態では、第二段階水素化分解触媒を使用する第二段階水素化分解プロセスは、380°F(193℃)よりも高い水素化分解沸点を有する、第二段階水素化分解反応器からの70重量%よりも高い排出物を生成する。1つの実施形態では、第二段階水素化分解触媒は、ナフサ、ジェット燃料およびディーゼル油に対する所望の選択性を備える。1つの実施形態では、本明細書に記載の第二段階水素化分解触媒およびプロセスを使用する第二段階水素化分解プロセスは、380°F未満の沸点を有する10重量%未満を含む排出物を生成することができる。1つの実施形態では、本明細書に記載の第二段階水素化分解プロセスは、380°F(193℃)~700°F(371℃)のTBP沸点を有する85~97重量%または90~95重量%の生成物を含む第二段階水素化分解反応器からの排出物を生成する。
【実施例0091】
[実施例1]
2つの異なるベータゼオライトのドメインサイズ分析
市販のゼオライトベータの2つのサンプルに対してドメインサイズ測定を実施した。一方のサンプルはH-BEA-150ゼオライトベータ(ZE0090)であった。他方のサンプルは、H-BEA-150よりも高いSARを有するZeolyst International製の比較ゼオライトベータ(CP811C-300、ZE0106)であった。ドメインサイズ分析の生データおよびデータの統計解析を以下の表6にまとめた。
【0092】
【0093】
また、これらのドメインサイズ分析のデータをグラフにして
図1および
図2に示した。
図1は、2つのゼオライトベータ間のドメインサイズの度数の差を示す。
図2は、H-BEA-150のドメインサイズが、比較ゼオライトベータに見られるものよりも大きく、より広く分布していたことを示す。H-BEA-150のドメインサイズの標準偏差は700nm
2よりも大きく、比較ゼオライトベータのドメインサイズの標準偏差は500nm
2未満であった。また、H-BEA-150ゼオライトベータは、200~600nm
2のドメインサイズを有していた小さいドメインよりも多くの、1200~2000nm
2のドメインサイズを有していた大きいドメインを有していた。これは、比較ゼオライトベータにおけるドメインサイズの分布とは著しく異なる。H-BEA-150は、1500~3200nm
2のドメインサイズを有する特大のドメイン対200~600nm
2のドメインサイズを有する小さいドメインの同様の分布(9対8)を有していた。この文脈において、同様の分布は、2つの異なるドメインサイズの範囲におけるドメインの数の比が0.8:1~1.2:1であることを意味する。
【0094】
[実施例1]
例示的な触媒サンプルの調製
乾量基準で、894.0gのSIRAL 40、258.0gのCATAPAL Bアルミナ、13.2gのゼオライトUSY(A)および34.8ゼオライトベータ(H-BEA-150)を合わせ、これらをよく混合して、例示的な触媒サンプルを調製した。
【0095】
ZEOLITE USY(A)の特性を表7にまとめた。
【0096】
【0097】
ZEOLITE USY(A)は、0.086の酸点分布指数(ASDI)を有していた。ZEOLITE USY(A)の別の特性を表8にまとめた。
【0098】
【0099】
上述のこの混合物に、希薄なHNO3酸水溶液(3重量%)を加えて、58重量%の揮発性物質を含む押出可能なペーストを生成した。押出可能なペーストを非対称の四葉形に押し出して、266°F(130℃)で1時間乾燥した。過剰の乾燥空気をパージしながら、乾燥した押出物を1100°F(593℃)で1時間焼成し、300°F(149℃)まで冷却した。
【0100】
9.2~9.4のpHを有するPtPd金属溶液に乾燥した押出触媒ベースを浸漬することによって、PtおよびPdを上述の乾燥した押出触媒ベースに細孔容積含浸させた。PtPd金属溶液は、6.552gのPt(NH3)4(NO3)2、3.593gのPd(NH3)4(NO3)2、アンモニア水および脱イオン水を混合して調製した。100g(乾量基準)の乾燥した押出触媒ベースをPtPd金属溶液に室温で12時間浸漬した。金属含浸押出触媒を302°F(150℃)で1時間乾燥した。次いで、乾燥した触媒を、過剰の乾燥空気をパージしながら815°F(435℃)で1時間焼成し、300°F(149℃)まで冷却した。この完成触媒サンプルの組成および物理特性を表9に示した。
【0101】
[実施例2]
比較例の触媒サンプル
実施例1に記載の例示的な触媒サンプルの調製に用いたステップと同様、触媒ベースを調製し、このベースにPtおよびPdを含浸させて比較例の触媒サンプルを作製した。
【0102】
実施例1の触媒サンプルおよびここに記載の比較例の触媒サンプルの触媒組成および物理特性を表9に示した。
【0103】
【0104】
表面積(BET)は、ASTM D3663-03(2008年再承認)により測定した。
【0105】
N2ミクロ孔容積は、ASTM D4365-13により測定した。
【0106】
充填かさ密度は、ASTM D4512-03(2013)ε1により測定した。
【0107】
粒子密度は、水銀ポロシメトリーにより測定した。
【0108】
強熱減量[LOI(1000°F)]は、ASTM D7348-13により測定した。
【0109】
PtPd H2吸着量は、ASTM D3908-03(2008年再承認)により測定した。
【0110】
[実施例3]
水素化分解第二段階フィード
上述の例の触媒を使用して、第一段階ISOCRACKING(登録商標)水素化分解ユニット内で生成される水素化分解第二段階フィードを処理した。この水素化分解第二段階フィードの特性を表10に示す。
【0111】
【0112】
ISOCRACKING(登録商標)は、Chevron Intellectual Property LLCの登録商標である。ISOCRACKINGプロセスは、A.G.BridgeおよびU.K.Mukherjee著、“Isocracking-Hydrocracking for Superior Fuels and Lube Production”、Handbook of Petroleum Refining Processes、第3版、R.A.Meyers編、第7.1章、McGraw-Hill、2003年に記述されている。
【0113】
[実施例4]
第二段階水素化分解の比較
図6に示したパイロットプラントにおいて、実施例3に記載のフィードを使用して水素化分解試験を実施した。試験時の水素化分解プロセス条件には、1900psigの全圧、1.92のLHSVおよび6,000SCFBのガス率が含まれていた。水素化分解の目標を、625°F(329℃)未満で30重量%の合成変換に設定した。実施例1に記載の例示的な触媒サンプルおよび実施例2に記載の比較例の触媒サンプルを用いて行った2つの水素化分解試験について、オンストリーム時間に対する規格化した水素化分解温度を示すグラフを
図3に示した。625°F(329℃)未満で30.0重量%の合成変換のときの生成物収率および水素消費量を以下の表11にまとめた。
【0114】
【0115】
図3は、全オンストリーム時間にわたって、例示的な触媒サンプルが、比較例の触媒サンプルよりも20°F高活性であることを示す。
【0116】
625°F(329℃)未満で30.0重量%の合成変換で試験した条件では、例示的な触媒サンプルは、0.2重量%少ないC4~、2.2重量%少ないC5~380°Fナフサ、0.8重量%多い380~566°Fジェット燃料および1.7重量%多い566~625°Fディーゼル油を生成した。
【0117】
ジェット燃料、ディーゼル油および未変換の油(UCO)の特性の大部分は、2つの異なる触媒サンプルを使用する試験において同様であった。しかし、例示的な触媒サンプルを使用したとき、曇り点は低下した。曇り点は、ASTM D2500-11またはASTM D5771-15により測定することができる。例示的な触媒サンプルを使用して生成されたジェット燃料の曇り点は-47℃であったが、比較例の触媒サンプルを使用して生成されたジェット燃料の曇り点は-41℃であった。例示的な触媒サンプルを使用して生成されたディーゼル油の曇り点は-16℃であったが、比較例の触媒サンプルを使用して生成されたディーゼル油の曇り点はわずか-7℃であった。
【0118】
[実施例5]
水素化分解時の水素消費量に対する変換の影響
図4に示したパイロットプラントにおいて、実施例3に記載のフィードを使用して別の水素化分解試験を実施した。625°F(329℃)未満で約23~37重量%の範囲の合成変換を実現するために、試験時の反応器温度を調整して水素化分解プロセス条件を調整した。先の試験のように、水素化分解条件には、1900psigの全圧、1.92のLHSVおよび6,000SCFBのガス率が含まれていた。実施例1の例示的な触媒サンプルおよび実施例2の比較例の触媒サンプルを用いて行ったこれらの水素化分解試験について、625°F(329℃)未満での水素消費量対合成変換を示すグラフを
図4に示した。例示的な触媒サンプルを使用した試験の水素消費量は、試験した合成変換の範囲にわたってより低く、合成変換量が多いほど、2つの異なる水素化分解触媒間の水素消費量の差は大きくなった。
【0119】
[実施例6]
ストリップ塔底生成物のUV吸収性
比較例の触媒サンプルおよび例示的な触媒サンプルを使用して生成された、実施例4に記載の水素化分解試験による炭化水素生成物サンプルを、試験中に定期的に採取した。炭化水素生成物サンプルを、
図6に示す通り高温の窒素でストリッピングし、ASTM D2008-91から適応させた方法により、UV吸光度についてストリップ塔底油を分析した。UV吸光度は、HP Chem-stationに接続したHP 8453分光光度計を使用して測定した。プロセス条件の詳細、オンストリーム時間、およびストリップ塔底油のUV吸光度を表12に示した。
【0120】
表12
ストリップ塔底生成物のUV吸収性
【表12】
【0121】
例示的な触媒サンプルを使用して生成されたストリップ塔底油はUV吸収がより小さく、これは、例示的な触媒サンプルが、比較例の触媒サンプルよりも芳香族化合物の飽和化に優れていることを示した。芳香族化合物の飽和度の上昇は、C.A.T.が著しく低下したように、例示的な触媒サンプルのより良い分解活性によると理論づけられる。より低い水素化分解温度は、芳香族化合物の飽和度に有利であった。
【0122】
移行語「を含む(comprising)」は、「を含む(including)」、「を含む(containing)」または「を特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであって、記載されていない別の要素または方法ステップを排除しない。移行句「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に規定されていない任意の要素、ステップまたは原料を排除する。移行句「実質的に~からなる(consisting essentially of)」は、特定の材料またはステップ、および特許請求の範囲に記載の発明の「(1つまたは複数の)基本かつ新規の特性に実質的に影響を与えない材料またはステップ」に特許請求の範囲を限定する。
【0123】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、特に記載のない限り、量、パーセントまたは割合を表わすすべての数字、ならびに本明細書および特許請求の範囲において使用される他の数値は、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。さらに、本明細書に開示されているすべての範囲は、その端点を含み、独立して結合可能である。下限および上限を有する数値範囲が開示されている場合は常に、その範囲内に入る任意の数も具体的に開示されている。別段の指定がない限り、パーセントはすべて重量パーセントである。
【0124】
定義されない任意の用語、略語または略記は、本出願が提出された時点の当業者によって使用される通常の意味を有すると理解される。単数形「a」、「an」および「the」は、明確かつ明白に1つの例に限定されない限り、複数の指示対象を含む。
【0125】
本出願で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許出願または特許の開示の全体が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示される場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
本明細書は、実施例を用いて最良の形態を含む本発明を開示し、当業者が本発明を製造および使用することも可能にする。上に開示されている本発明の例示的な実施形態の多くの修正を当業者なら容易に思いつくであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての構造および方法を含むものと解釈されるべきである。別段の指定がない限り、個々の成分または成分の混合物をそこから選択することができる元素、材料または他の成分の属の記載は、列挙された成分およびそれらの混合物の可能な亜属の組み合わせすべてを含むことを意図している。
【0127】
本明細書に適切に例示的に開示されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素がない状態で実施されてもよい。