(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007347
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】低不連続で高密度ろう付継手を得るためのろう合金材料をニッケル基部品に溶射する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 4/08 20160101AFI20240110BHJP
C23C 24/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C23C4/08
C23C24/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091386
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】17/856,233
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン、ブライアン レスリー
(72)【発明者】
【氏名】デュリン、ブルース エドワード
【テーマコード(参考)】
4K031
4K044
【Fターム(参考)】
4K031AA02
4K031AB02
4K031CB10
4K031CB21
4K031DA03
4K031DA04
4K044AA06
4K044AB10
4K044BA06
4K044BB01
4K044BC01
4K044BC02
4K044BC11
4K044CA11
(57)【要約】
【課題】低い不連続性を有する高密度ろう付継手を得るためにニッケル基部品上にろう合金材料を溶射するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】方法及びシステム(46)は、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を利用する。溶射施工は、損傷部(14)を含むニッケル基部品(48)の表面(58)に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金を溶射する。溶射された高融点ろう合金材料と低融点ろう合金は、ニッケル基部品(48)の損傷部(14)に凝固堆積物(56)を形成する。凝固堆積物(56)は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜である。均質ろう皮膜は、ニッケル基部品(48)の損傷部(14)に不連続性が低い高密度ろう付継手を与える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を得るステップと、
損傷部を含むニッケル基部品の表面に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射して、損傷部に凝固堆積物を形成するステップであって、凝固堆積物が、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含んでおり、均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%が50重量%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料は50重量%以下である、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
高融点ろう合金材料合金及び低融点ろう合金材料合金を含有する均質ろう皮膜が約2%未満の空隙率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
均質ろう皮膜中の高融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約50体積%~95体積%であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約5体積%~50体積%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ニッケル基部品(48)の損傷部(14)の修復方法であって、
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を得るステップと、
損傷部を含むニッケル基部品の表面に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射して損傷部に凝固堆積物(56)を形成するステップであって、凝固堆積物が、高融点ろう合金材料合金及び低融点ろう合金材料合金を含有する均質ろう皮膜を含んでおり、高融点ろう合金材料合金及び低融点ろう合金材料合金を含有する均質ろう皮膜が約2%未満の空隙率を有する、ステップと、
ニッケル基部品(48)及び均質ろう皮膜を加熱してニッケル基部品及び均質ろう皮膜を溶融させずに金属結合を生じさせるステップであって、金属結合によりニッケル基部品(48)の損傷部(14)にろう付継手を生じさせる、ステップと
を含む方法。
【請求項5】
高融点ろう合金材料が、RENE108、INCONEL262、MARM247及びRENE142からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
低融点ろう合金材料が、D15、DF4B及びB1Pからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
高融点ろう合金材料がRENE108を含んでおり、低融点ろう合金材料合金材がDF4Bを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ろう付継手の硬度が約40HR~約60HRである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ニッケル基部品の損傷部の表面に高融点ろう合金材料合金及び低融点ろう合金材料を溶射するステップが、前記表面にろう合金をコールドスプレーすることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
均質ろう皮膜中の高融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約50体積%~95体積%であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約5体積%~50体積%である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%が50重量%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料が50重量%以下である、請求項4記載の方法。
【請求項12】
ニッケル基部品(48)の損傷部(14)を修復するためのシステム(46)であって、
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料(50)と、
供給原料(50)を受け取って、損傷部(14)を含むニッケル基部品(48)の表面(58)に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射して、損傷部(14)に凝固堆積物(56)を形成するように構成された溶射装置(62)であって、溶射装置(62)が、
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を加圧ガス(64)で加熱するように構成されたガス加熱器(68)、及び
加熱された高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を受け取って、損傷部(14)を含むニッケル基部品(48)の表面(58)に加熱ろう合金材料(60)を、加熱ろう合金材料(60)に高い運動エネルギーを与える超音速で導いて、損傷部(14)に凝固堆積物(56)を形成するように構成されたノズル(72)であって、凝固堆積物(56)が、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含んでおり、均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%が50%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料が50重量%以下である、ノズル(72)
を備える、溶射装置(62)と、
ニッケル基部品(48)及び均質ろう皮膜を加熱するように構成された炉であって、炉内で発生した熱が、ニッケル基部品(48)を溶融させずにニッケル基部品(48)と均質ろう皮膜との間に金属結合を生じさせ、金属結合が、ニッケル基部品(48)の損傷部(14)にろう付継手を生じさせる、炉と
を備えるシステム(46)。
【請求項13】
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料(50)が、ろう合金材料のワイヤを含む、請求項12に記載のシステム(46)。
【請求項14】
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料(50)が、粉末(52)の形態の高融点ろう合金材料及び粉末(52)の形態の低融点ろう合金材料を含む、請求項12に記載のシステム(46)。
【請求項15】
溶射装置(62)がコールドスプレー装置(62)を備える、請求項12に記載のシステム(46)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般にろう付けに関し、より具体的には、不連続性の低い高密度ろう付継手を得るために、ニッケル基部品上にろう合金材料を溶射する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ろう付けが用いれる分野の1つは、ニッケル基超合金から構成されたものなどのニッケル基部品の修復である。タービン部品は、ニッケル基超合金から構成できる部品の例である。ニッケル基超合金は、融点に近い作動温度での負荷に耐える能力、機械的劣化に対する耐性及び環境腐食に対する耐性があるため、タービン部品としての使用に適している。しかし、ニッケル基超合金から作られたこれらのタービン部品は、時間経過とともに、それらの運転環境のために摩耗又は腐食するおそれがある。そのため、これらのニッケル基超合金タービン部品は交換又は修復する必要がある。
【0003】
ニッケル基超合金タービン部品の修復には、通常、ろう付けによる修復が含まれる。ニッケル基超合金タービン部品のろう付け修復は、様々な理由から、溶接などの他の修復方法よりも好ましい。例えば、ろう付けは一般に溶接のような亀裂を促進しない。さらに、ろう付けは通常、酸化を防ぐことができる。また、ろう付けにより、異種材料(金属とセラミックなど)の接合が可能になる。ろう付けに関連する別の利点は、ろう合金のカスタマイズされた組成により、ろう合金の耐食性及び高温クリープ耐性を向上させることができることである。
【0004】
ろう付けはニッケル基超合金タービン部品の修復に好ましいアプローチであるが、不連続性の低い高密度ろう付継手を得るには課題がある。例えば、タービン動翼及び静翼のようなニッケル基超合金タービン部品の修復に使用されるろう付けアプローチの1つは、ろう合金を含むペーストスラリーの使用を含む。通例、タービン動翼及び静翼のろう付け修復では、、例えば亀裂のような欠陥を有する損傷部を除去するためにタービン部品の基材からくり抜いておいた開口部や隙間にペーストスラリーを入れる。
【0005】
ペーストスラリーを隙間に入れた後、動翼又は静翼を炉に入れ、タービン部品を加熱して、部品の母材とろう合金を含むペーストスラリーとの間に強固な接続を生じさせる。特に、炉で供給される熱によって、ペーストスラリーから液体が拡散によって除去される。次に、ろう合金の粒子を加熱して焼結し、ろう合金とタービン部品の母材との間に強固な接続を形成する。このアプローチの問題は、ろう付継手内のろう合金の密度が低いために、ろう付継手がボイド又は空隙で占められていることが多いことである。ろう付継手のボイドは、ボイドのために継手全体の強度が同じではないため、継手の接合強度が低下する。
【0006】
タービン動翼又は静翼を修復するためにペーストスラリーを使用することの別の問題は、タービン部品の形状と位置のために、くり抜かれた隙間にスラリーを挿入すること及びろう付け中に隙間内の所定の位置に保持することが難しくなるおそれがあることである。そのため、ペーストが隙間内の所定の位置に留まらない可能性があるので、隙間にスラリーペーストを過剰に塗工することが多々ある。その結果、スラリーペーストがタービン部品の他の部分に移動し、これらの部品の腐食を招くおそれがある。
【0007】
タービン動翼及び静翼などのニッケル基超合金タービン部品の修復を伴う別のろう付けアプローチでは、高流量ろう合金と低流量ろう合金を使用してろう付け継手を製造する。このアプローチでは、通常、まず低流量ろう合金が隙間に塗工され、次いで高流量ろう合金が低流量ろう合金の上に塗工される。ろう合金の加熱及び焼結中に、高流動ろう合金は低流量ろう合金に拡散する(すなわち、低流動ろう合金の間隙の間)。スラリーペーストに依存するろう付けアプローチと同様に、高流量ろう合金が低流量ろう合金に拡散すると、継手のボイドのために低密度ろう付継手が生じることが多々ある。このため、高流動ろう合金と低流動ろう合金のろう付けによるろう付け継手は、継手全体の接合強度が不均一であるため、強度が低下する。ろう付継手は低密度である可能性はあるものの、タービン動翼及び静翼などのタービン部品では、工程が遅くなるため限界があり、再現性のある修復結果につながるような工業化が複雑な工程である。
【発明の概要】
【0008】
以下、本明細書に記載した様々な実施形態の幾つかの態様についての基本的な理解を図るため、本願で開示する技術的内容について簡単に要約する。この要約は、様々な実施形態を幅広くまとめたものではない。これは、特許請求の範囲に記載された発明の基本的又は本質的特徴を特定するものでも、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を定めるのに資するためのものでもない。その唯一の目的は、以下の詳細な説明の前置きとして、本発明の幾つかの技術的思想を簡潔に紹介することである。
【0009】
本発明の様々な実施形態は、ろう付け修復を実施するためにスラリーペースト及び拡散に依存するニッケル基部品を修復するために使用される前述のろう付けアプローチの問題に対処する解決策を提供することを目的とする。本発明の実施形態は、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を利用し、修復すべきニッケル基部品の一部の表面にろう合金材料を溶射することにより、従来のろう付け手法の問題点を解決する。ろう合金材料の溶射は、修復すべきニッケル基部品の部分に材料の凝固堆積物を形成する。凝固堆積物は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含む。さらに、均質ろう皮膜の凝固堆積物は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の溶射施工に関連する運動エネルギー及び熱エネルギーのために、非常に緻密又は密に充填される。ろう合金の溶射で得られる高融点ろう合金及び低融点ろう合金の均質性と密度の組合せは、凝固堆積物では堆積物中のボイド又は空隙率が除かれるので、前述のろう付けアプローチで使用されるろう合金と比較して構造上の利点を凝固堆積物に提供する。このように、ニッケル基部品と凝固堆積物を炉内で加熱すると、ボイドがないため、不連続性の低い高密度ろう付け継手が形成され、継手全体で均一な接合強度を有する。
【0010】
一実施形態では、方法を提供する。本方法は、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を得るステップと、損傷部を含むニッケル基部品の表面に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射して、損傷部に凝固堆積物を形成するステップとを含んでおり、凝固堆積物は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含んでおり、均質ろう皮膜中の高溶融ろう合金材料の元素重量%は50重量%以上であり、均質ろう皮膜中の低溶融ろう合金材料は50重量%以下である。
【0011】
別の実施形態では、ニッケル基部品の損傷部を修復する方法を提供する。本方法は、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を得るステップと、損傷部を含むニッケル基部品の表面に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射して、損傷部に凝固堆積物を形成するステップであって、凝固堆積物が、高溶融ろう合金材料合金及び低溶融ろう合金材料合金を含有する均質ろう皮膜を含んでおり、高溶融ろう合金材料合金及び低溶融ろう合金材料合金を含有する均質ろう皮膜が約2%未満の空隙率を有する、ステップと、ニッケル基部品及び均質ろう皮膜を加熱してニッケル基部品を溶融させずにニッケル基部品と均質ろう皮膜との間に金属結合を生じさせるステップであって、金属結合によりニッケル基部品の損傷部にろう付継手を生じさせる、ステップとを含む。
【0012】
第3の実施形態では、ニッケル基部品の損傷部を修復するシステムを提供する。本システムは、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料と、供給原料を受け取り、損傷部を含むニッケル基部品の表面に高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料を溶射して、損傷部に凝固堆積物を形成するように構成された溶射装置であって、溶射装置が、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を加圧ガスで加熱するように構成されたガス加熱器、及び加熱された高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料を受け取って、損傷部を含むニッケル基部品の表面に加熱ろう合金材料を、加熱ろう合金材料に高い運動エネルギーを与える超音速で導いて、損傷部に凝固堆積物を形成するように構成されたノズルであって、凝固堆積物が、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含んでおり、均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%が50%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料が50重量%以下である、ノズルを含む溶射装置と、ニッケル基部品及び均質ろう皮膜を加熱するように構成された炉であって、炉内で発生した熱が、ニッケル基部品を溶融させずにニッケル基部品と均質ろう皮膜との間に金属結合を生じさせ、金属結合は、ニッケル基部品の損傷部にろう付継手を生じさせる、炉とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明については、添付の図面と併せて、以下の非限定的な実施形態に関する説明を参照することによって、理解を深めることができるであろう。
【
図1】
図1A及び
図1Bは、本発明の一実施形態に従って不連続性の低い高密度ろう付継手を得るためにろう合金材料の溶射によって修復することができるタービン部品の部分の例を示す図。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に従って高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含むろう合金材料を溶射することにより、タービン部品等のニッケル基部品を修復する方法の作業を説明するフローチャート。
【
図3】
図3は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金で構成され、本発明の実施形態に係るニッケル基部品を溶射するための供給原料として供給されるコアードワイヤの例を示す図。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る高融点ろう合金及び低融点ろう合金でニッケル基部品を溶射するシステムの概略図。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るニッケル基部品に高融点ろう合金及び低融点ろう合金を溶射することができるコールドスプレー装置等の溶射装置の概略図。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に従って溶射した後のニッケル基基板上の高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料の凝固堆積物の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態についてさらに十分に説明するが、すべての実施形態ではなく、その一部を示す。実際、本発明は数多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解すべきではない。これらの実施形態は、本開示が法的要件を満足するように、提示される。同様の符号は同様の構成要素を示すことがある。
【0015】
本開示は、一般に、ろう付けニッケル基合金に関し、より具体的には、不連続性の低い高密度ろう付継手を得るために、ニッケル基部品上にろう合金材料を溶射する方法及びシステムに関する。本発明の様々な実施形態は、ニッケル基合金のようなニッケル基材料から形成されるタービン部品に関して説明される。特に、圧縮機セクション、燃焼器セクション、タービンセクションを有するガスタービンエンジンで使用し得るガスタービンノズル(静翼)を用いて実施形態を説明する。ただし、これらの実施形態に係るニッケル基部品上にろう合金材料を溶射する方法及びシステムは、ガスタービンノズル以外にも適用でき、実施形態は、ノズルでの使用に限定されるものではない。例えば、様々な実施形態は、経時的に摩耗又は腐食する可能性があり、損傷部の修復を必要とするニッケル基材料で形成されたガスタービンの他の部品にろう合金材料を溶射することに関するものであってもよい。翼形部、動翼(バケット)、シュラウド、燃焼器、回転タービン部品、ホイール、シール及び他の高温ガス部品は、ニッケル基超合金のようなニッケル基材料で形成することができるガスタービン部品の非限定的な例であり、したがって、本明細書に記載されるろう合金材料の溶射のための方法及びシステムを適用できる。
【0016】
さらに、ニッケル基ガスタービン部品は、その用途(例えば陸用、船舶用及び航空機用)に関係なく、ターボ機械を利用するすべてのタイプのガスタービンシステム及びガスタービン燃焼システムで動作できる。限定されるものではないが、ヘビーフレーム産業用ガスタービン、航空転用ガスタービン、船舶用ガスタービン、アンモニア燃料ガスタービン、水素燃料ガスタービン、航空ガスタービン及び一般燃焼タービンを始めとするターボ機械を使用するガスタービンシステム及びガスタービン燃焼システムは、ニッケル基材料で作られている部品又は部品を有するシステムの非限定的な例である。これらの部品は溶接が難しいため、時間経過とともに摩耗又は腐食する可能性があり、ろう付けによる修復が必要である。
【0017】
また、ろう合金材をニッケル基材料に溶射する方法及びシステムは、ガスタービンシステムやガスタービン燃焼系を超えた有用性を有し、特に、ニッケル基材料の部品や一部の溶接が困難なあらゆるろう付け用途に用いることができるため、損傷部の修復にろう付けを用いる必要がある。
【0018】
ここで図面を参照すると、
図1A及び
図1Bは、本発明の一実施形態に従って不連続性の低い高密度ろう付継手を得るためにろう合金材料を溶射することによって修復することができるタービン部品10の部分の例を示す。特に、
図1A及び
図1Bは、ガスタービンエンジンで使用することができるノズル12の異なる図を示す。ノズル12は、難溶接性(DTW)合金から形成することができる。本明細書で用いる「DTW」合金という用語は、液化及び溶接及び歪時効割れを示す合金であり、溶接が困難及び実施できなくなる合金である。一実施形態では、ノズル12は、ニッケル基超合金を含むDTW合金で形成することができる。ニッケル基超合金の例としては、限定されるものではないが、GTD111、GTD444、GTD262、ReneN2、ReneN4、ReneN5、ReneN6、Rene65、Rene77(Udimet700)、Rene80、Rene88DT、Rene104、Rene108、Rene125、Rene142、Rene195、ReneN500、ReneN515、CM247、MarM247、CMSX-4、CMSX10、MGA1400、MGA2400、IN100、INCONEL700、INCONEL738、INCONEL792、PWA1480、PWA1483、PWA1484、Mar-M-200、UDIMET500、ASTROLOY及びこれらの組合せが挙げられる。
【0019】
タービン部品10の作動環境によっては、ノズル12が摩耗又は腐食し、破損するおそれがある。
図1Aは、タービン部品10の下部領域16、すなわちプラットフォーム20へと移行するノズル12のフィレット部18の上方に損傷部14を有するノズル12を示す。
図1Aに示すように、損傷部14は、ノズル12を形成する母材からくり抜かれ、材料に隙間22を画成する。一般に、損傷部を含む材料は、欠陥を含むことがあり、これは、ノズル12の基材から材料が除去されるか、又は他の方法で損傷する亀裂、凹み、腐食、又は他の表面凹凸の形態であってもよい。損傷部14は、タービン部品の修復に使用される多数の周知の材料除去技術のいずれかを使用して、タービン部品の下部領域16から除去することができる。これらの材料除去技術としては、限定されるものではないが、機械的研磨(例えばグリットブラスト、機械的研削、切断)、放電加工、化学的エッチング及びこれらの組合せが挙げられる。
【0020】
損傷部14を除去した後、隙間22付近のノズル12程度の残りの部分を洗浄し、ろう付けの準備をすることができる。ろう付けによって修復されるノズル12に関する残余部分の洗浄及び準備は、残余部分の表面の洗浄及び/又は脱脂を含んでいてもよい。例えば、洗浄及び/又は脱脂としては、限定されるものではないが、真空下での影響部の熱洗浄、アセトンワイプ、グリットブラスト、フッ化物イオン洗浄(FIC)、水素洗浄及びこれらの組合せが挙げられる。
【0021】
一実施形態では、
図1Bに示すように、ろう付けを容易にするために、クーポン又はバッキングプレート24をノズル12の内側部分26に貼り付けてもよい。特に、バッキングプレート24は、ろう合金材が損傷部14内の隙間22を埋めながら着地するための台又はプリフォームバッカーとして機能する。
図1Bは、バッキングプレート24をノズルの内側から示しているが、別の側はノズル12の表面に突出する隆起部である中間部を有することができる。このようにしてろう合金材を、バッキングプレート24が位置する損傷部の全てについてろう付けを行うために、中間部を囲む隆起部及び外側部分に施工することができる。
【0022】
図1Bに示すバッキングプレート24の形状は、利用できる1つの可能な形状の例示である。当業者には自明であろうが、バッキングプレート24の形状は、限定されるものではないが、タービン部分の損傷部の厚さ、損傷部での欠陥の程度及び損傷部の位置などを始めとする、多数の考慮事項に依存し得る。
【0023】
ノズル12のろう付けが終了した後、バッキングプレート24は、多数の周知の機械加工技術のいずれかを使用して取り外すことができる。或いは、バッキングプレート24は、隙間22の充填に用いられるろう合金にある程度の追加の安定性をもたらすために使用し得る。また、バッキングプレート24は任意構成要素であり、タービン部品10を修復するための本明細書に記載のろう付けプロセスにおいて必須ではない。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に従って高融点ろう合金と低融点ろう合金の混合物を含有するろう合金材料を溶射することによって、例えば
図1A及び
図1Bに示すようなノズルのようなニッケル基タービン部品を修復する方法の作業を説明するフローチャート28である。なお、
図2には記載されていないが、タービン部品を溶射修復作業に付す前に、何らかの形の欠陥(亀裂、くぼみ、腐食、又はその他の表面凹凸など)で損傷していると特定された部分を洗浄及び/又は脱脂することにより、部品の修復準備をしてもよい。実施形態では、欠陥を含む損傷部は、損傷部が除去されるタービン部品の領域に隙間が残るようにくり抜くことができる。隙間の周りに位置するタービン部品の表面は、
図2の溶射ろう付け修復作業の準備として洗浄及び/又は脱脂することができる。
【0025】
図2の溶射ろう付け修復作業は、30で高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を入手することから開始できる。本明細書において、高溶融ろう合金材料とは、母材と同様の融点及び同程度の特性を有するろう合金材料を意味し、低溶融ろう合金材料合金材とは、母材の融点以下で融解を起こす融点抑制剤を含有するろう合金材料を意味する。
【0026】
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料は、多数の適切な合金材料のいずれかを含んでいてもよい。例えば、高融点ろう合金材料は、限定されるものではないが、RENE108、INCONEL262、MARM247、RENE142、RENE80、INCONEL718、INCONEL738、HastelloyX及びRENEN5を含むことができ、低融点ろう合金材料は、限定されるものではないが、D15、DF4B、B1P、AMS4782、AMS4777、BNi-9、BNi-6及びBNi-7を含むことができる。一実施形態では、高融点ろう合金材料は、RENE108、INCONEL262、MARM247及びRENE142からなる群から選択され、低融点ろう合金材料は、D15、DF4B及びB1Pからなる群から選択されるる。好ましい実施形態では、高融点ろう合金材料はRENE108を含むことができ、低融点ろう合金材料は、DF4Bを含むことができる。
【0027】
図2の溶射ろう付け修復作業は、続いて32で高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射システムに供給する。一実施形態では、高融点ろう合金及び低溶融ろうは、粉末材料の形態を取ることができる。別の実施形態では、高融点ろう合金及び低溶融ろう付けは、ワイヤ電極の形態を取ることができる。例えば、ワイヤ電極は、高融点ろう合金材料の第1のワイヤ電極と、低融点ろう合金材料の第2のワイヤ電極とを含んでいてもよい。あるシナリオでは、高融点ろう合金材料の第1のワイヤ電極及び低融点ろう合金材料の第2のワイヤ電極を同時に溶射システムに供給して、ワイヤ電極の供給速度を操作することによって溶射時に均質化混合物を得ることができる。
【0028】
一実施形態では、
図3に示すように、ワイヤ電極は、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の一方を含む内側部分42と、内側部分を囲む外側部分であって高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料の他方を含む外側部分44を有する単芯ワイヤ電極40を含んでいてもよい。単芯ワイヤ電極は、ろう付け修復プロセスがすでに「ダイヤルイン」されていて、ボイドのない均質及び高密度施工をもたらす高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の最適量が判明しているシナリオで有益である。この知識により、単芯線電極40の内側部分42及び外側部分44の両方の直径を設定して、溶射中のろう合金の均質な混合物を得ることができる。
【0029】
一実施形態では、高融点ろう合金及び低融点ろう合金は、ろう合金材料のシートを含んでいてもよい。例えば、シートは、高融点ろう合金材料の第1のシートと、低融点ろう合金材料の第2のシートとを含んでいてもよい。溶射システムによって使用することができる高融点ろう合金及び低融点ろう合金はまた、スラリー材料、ワイヤ電極、粉末及びロッドを含むことができることが理解される。
【0030】
高溶融ろう合金材料合金及び低溶融ろう合金材料合金は、粉末形態、ワイヤ電極、シート、スラリー材料又はロッドのいずれであろうと、高圧でガス流に加熱導入して、超音速に達する可能性のある高速でタービン部品に向けて放出することができる。ろう合金の溶融による熱エネルギーと合金の運動エネルギーにより、タービン部品との衝撃で粒子が変形して平らになる。平坦化は、タービン部品との金属結合、機械的結合又は金属結合と機械的結合の組合せを促進し、部品に保護皮膜をもたらす。
【0031】
図2の溶射ろう付け修復作業に戻ると、34で、溶射ろう付け修復作業に付されるタービン部品の表面への、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の均質かつ緻密な施工をもたらすように、溶射システムの動力学的及び熱的設定を特定する。特に、溶射施工、それに続く継手への熱サイクル(選択された合金に固有)及び使用される機器又はプロセスに固有の溶射パラメータ(フィーダー機構及びパラメータなど)はすべて、タービン部品の表面に高融点ろう合金及び低融点ろう合金の緻密で均質な層を得る役割を有することができる。
【0032】
動的及び熱設定が特定されると、溶射システムは、36で、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の噴霧を、ニッケル基タービン部品の目標領域(例えば修復すべき領域)に導くことができる。これに関して、溶射システムは、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の凝固堆積物を部品の目標領域に溶射することができる。凝固堆積物は、ボイド又は空隙率のない高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含む。
【0033】
一実施形態では、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含有する均質ろう皮膜は、約2%未満の空隙率を有することができる。
【0034】
一実施形態では、均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%は50%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料は50重量%以下である。
【0035】
一実施形態では、均質ろう皮膜中の高融点ろう合金の量は、均質ろう皮膜の約50体積%~95体積%であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金の量は均質ろう皮膜の約5体積%~50体積%である。
【0036】
高融点ろう合金及び低融点ろう合金によるニッケル基タービン部品の溶射後、
図2の修復作業は、続いて38で部品を熱処理する。一実施形態では、熱処理は、ニッケル基部品を高融点ろう合金及び低融点ろう合金の溶射堆積物と共に炉内に配置することを含んでいてもよい。例えば、炉内のろう付けニッケル基部品の加熱は、約1900°F(1038℃)~約2300°F(1260℃)の範囲内の温度で、約10分~約1時間とすることができる。炉内で発生する熱は、ニッケル基部品を溶融させずに、ニッケル基部品と均質ろう皮膜との間に金属結合を引き起こす。このようにして、金属結合接合は、ニッケル基部品の損傷部にろう付継手をもたらす。一実施形態では、ろう付継手は、ロックウェルスケールで約40HR~約60HRの範囲内の硬度を有することができる。
【0037】
説明の便宜上、
図2に示す作業は一連の行為として記載されえている。
図2に関連した本イノベーションは、記載された行為の順序に限定されるものではなく、幾つかの行為は、本願に記載されたものとは異なる順序及び/又は他の行為と同時に行ってもよい。さらに、開示された2以上の例示的な方法は、本明細書に記載される1以上の特徴又は利点を達成するために、互いに組合せて実施することができる。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態に係る高融点ろう合金と低融点ろう合金との混合物でタービン部品等のニッケル基部品48を溶射するシステム46の概略図である。
図4に示すように、システム46は、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料50を含んでいてもよい。一実施形態では、供給原料50は、粉末52の形態の高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を含んでいてもよい。
図4の概略図は、粉末52を一般的な表現で示しており、供給原料50は、高融点ろう合金材料を含む粉末の別個のバッチと、低融点ろう合金を含む粉末の別のバッチとを有していてもよい。或いは、一実施形態では、供給原料50は、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を含むろう合金混合物を含んでいてもよい。供給原料50は、高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料のワイヤ電極54を含むこともできる。例えば、ワイヤ電極54は、高溶融ろう合金材料のワイヤ電極と、低溶融ブレーズ合金のワイヤ電極とを含んでいてもよい。供給原料50はまた、溶射システムでの使用に適した上述の他の形態の高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金を有するものを含んでいてもよく、限定されるものではないがい、高融点ろう合金材料のシート及び低融点ろう合金材料の第2のシートを含む。
【0039】
なお、
図4のシステム46には記載されていないが、システムは、供給原料50を受け取り、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶融し、損傷部を含むニッケル基部品48の表面にろう合金材料を溶射するように構成された溶射装置を含んでいてもよい。一般に、溶射装置は、熱、電気及び高温ガスの燃焼を使用して、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の凝固堆積物56をニッケル基部品48の表面58に導くことができる。例えば、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料50は、溶射装置によって加熱することができるが、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料58を超音速でニッケル基部品48の表面に導くために、電気及び高温ガスの燃焼を利用して加熱ろう合金材料60に高運動エネルギーを付与することもできる。
【0040】
上述のように、凝固堆積物56は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含むことができる。加えて、均質皮膜を有するために、凝固堆積物56の皮膜は、ボイド及び空隙率のない高融点ろう合金及び低融点ろう合金の密度を有する。一般に、システム46は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の加熱、システムの電気及び高温ガスの燃焼のうちの1以上を変化させて、ろう合金材料の微細組織及び/又は形態の特性を変化させ、並びにニッケル基部品48の表面58への材料の供給を変化させることができる。この程度まで、この変質は、前述の特性(例えば高融点ろう合金及び低融点ろう合金の均質皮膜、ボイド及び空隙のない密度など)を有する凝固堆積物56を生じることができる。
【0041】
図4のシステム46は、多種多様な溶射システムのいずれかによって実施することができる。本明細書に記載されるプロセスを実施するために利用することができる可能な溶射システムの例としては、限定されるものではないが、燃焼(高速酸素燃料(HVOF))、プラズマアーク、電線アーク及びコールドスプレープロセスが挙げられる。使用する溶射システムの選択は、様々な考慮事項のいずれかに依存する可能性がある。これらの考慮事項は、限定されるものではないが、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の材料化学的性質、溶射プロセスを経ることになっている部品の形状、ろう付けを必要とする部分の部品の程度を含み得る。
【0042】
一実施形態では、溶射システムは、ろう付け修復作業の対象であるニッケル基部品の表面に高融点ろう合金及び低融点ろう合金をコールドスプレーするように構成されたコールドスプレーシステムを含んでいてもよい。
図5は本発明の一実施形態に係る高融点ろう合金及び低融点ろう合金でタービン部品等のニッケル基部品を溶射できるコールドスプレー装置62の概略図である。
図5のコールドスプレー装置62では、粉末供給器66及びガス予熱器68に加圧ガス64が導入される。
【0043】
ガス予熱器68に入る加圧ガスは、572°F(300℃)~1472°F(800℃)の温度に加熱される。次いで、加熱された加圧ガスは、所定の圧力(例えば+200PSI)の粉末予熱チャンバ70に導入される。特に、粉末供給器66に入った加圧ガス64は、高溶融ろう合金材料合金及び低溶融ろう合金材料合金の粉末(例えば硬質相粉末と軟質相粉末(ベンドと合金の両方)の混合物)をピックアップして粉末予備加熱室70に輸送し、そこで加熱された加圧ガス64によって加熱される。典型的な金属粉末(アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、コバルト、タンタル、ニオブ又はそれらの合金などの純金属)は、直径が約50μmである。次いで、加熱された粉末は、収束-発散ノズル72を通って輸送され、ニッケル基部品48の表面58の除去された損傷部を含む基材に向かって噴霧として導かれる。このようにして、損傷部は、互いに重なり合う高溶融ろう合金材料と低溶融ろう合金材料の薄層で充填され、皮膜厚の皮膜の形態のろう合金材料の凝固堆積物56を生成する。
【0044】
ノズル72及び高温加圧ガス64を用いて高融点ろう合金及び低融点ろう合金粉末粒子を超音速に加速することにより、粒子に高い運動エネルギーを付与する。高い運動エネルギー及び低い熱エネルギーの結果として、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の粒子は、低溶融相を軟化し、表面58との衝撃で変形して材料のスプラット又は凝固堆積物を生成する。この軟質相材料は、薄層の混合物に設計された硬質相粒子を捕捉する。無花果。
図6に、溶射後のニッケル基部品48等のニッケル基基材上の高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料の凝固堆積物56の模式図を示す。
【0045】
コールドスプレー装置62を用いて、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の加熱の1以上、システムの電気及び高温ガスの燃焼を調節して、ろう合金材料の微細組織及び/又は形態の特性を変化させ、並びにニッケル基部品48の表面58への材料の供給を変化させて、凝固堆積物56を生成することができる。前述の特性(例えば高融点ろう合金及び低融点ろう合金の均質皮膜、ボイド及び空隙率のない密度。
図5のコールドスプレー装置62は、コールドスプレープロセスを実施することができる図示していない多数の他の部品を含むことができることが理解される。例えば、コールドスプレー装置62は、高温ガス64並びに高融点ろう合金及び低融点ろう合金をそれぞれ供給するためのガス送達ネットワーク及び粉末供給ネットワークと、ニッケル基部品48を所定の位置に保持するための工具(例えばブレース、クランプなど)とを含んでいてもよい。他の溶射プロセスと同様に、コールドスプレーには、皮膜の作成に使用されるパラメータに基づいて、X量の熱エネルギーとX量の運動エネルギーがある。これらのパラメータには、密度、多孔性、硬度などの皮膜特性を促進する粉末供給速度も含まれる。本実施形態の溶射処理は、2段階処理と呼ぶことができる。皮膜を生成するための最初のステップ(コールドスプレー、HVOF、プラズマ、ワイヤーアーク)と真空炉の熱処理である2番目のステップ。どちらのステップも、ミクロ及びマクロスケールでの化学反応に寄与し、低温ろう付け粉末を溶融し、高温合金を軟化させる。材料の化学的性質、粒子サイズ、パラメータ、熱処理パラメータをすべて調整して、修復アプリケーションを成功させるために必要な特性を設計できる。
【0046】
図5のコールドスプレー装置62は、コールドスプレープロセスを実施することができる図示していない多数の他の部品を含むことができることが理解される。例えば、コールドスプレー装置62は、高温ガス64並びに高融点ろう合金及び低融点ろう合金をそれぞれ供給するためのガス送達ネットワーク及び粉末供給ネットワークと、ニッケル基部品48を所定の位置に保持するための工具(例えばブレース、クランプなど)とを含んでいてもよい。
【0047】
さらに、
図5のコールドスプレー装置62は、ボイド及び空隙率のない合金材料の均質皮膜があるように、高融点ろう合金及び低融点ろう合金の凝固堆積物を有するニッケル基部品をろう付け修復するために使用できるコールドスプレー装置の一例を表していることが理解される。当業者には自明であろうが、他のコールドスプレーシステムを利用して、凝固堆積物を送達し、不連続性の低い高密度であり、継手全体に均一な強度を有する炉を使用してろう付継手を達成することができる。
【0048】
本明細書に記載された実施形態の説明から、主題開示は、不連続性の低い高密度ろう付継手を得るために、ニッケル基部品上にろう合金材料を溶射するための有効な解決策を提示するはずである。様々な実施形態によって提供されるこの溶液は、ニッケル基部品に高融点ろう合金及び低融点ろう合金を溶射することを伴う。高融点ろう合金及び低融点ろう合金の溶射は、皮膜の密度がボイド及び空隙を伴わないように、ろう合金の均質皮膜を有するニッケル基部品の表面に凝固堆積物をもたらす。この程度まで、不連続性の低い高密度ろう付継手、さらには継手全体の接合強度を達成することができる。この利点は、ろう合金材料と母材の過渡的な液相結合を得るために、ろう合金の混合物中のバインダーと合金の拡散に依存するろう付けアプローチとは対照的である。様々な実施形態により、ボイド及び空隙率が排除され、また、ろう合金と母材との間に金属レベルで実際の結合が得られる。
【0049】
本明細書に開示されるニッケル基部品上にろう合金材料を溶射する方法及びシステムは、ろう合金の混合物におけるバインダーの必要性を排除し、合金の拡散に依存することによる現在のアプローチの使用を通じてろう付け修復において生じ得る欠陥を除去するだけでなく、しかし様々な実施形態はまた、追加の利益を提供することができる。例えば、方法及びシステムは、タービン部品などのニッケル基部品のろう付け修復に典型的に関連する工程内リワークの減少をもたらし得る。さらに、この方法とシステムを使用することで、ろう付け修復の処理時間が短縮され、時間の短縮によるコスト削減につながる。その他の利点には、ろう合金の混合物におけるバインダーの必要性を排除し、合金の拡散に依存することによる現在のアプローチの使用によるろう付け修復で発生する可能性のある欠陥の除去が含まれる。加えて、様々な実施形態の溶射ろう合金修復は、現在使用されているろう付け修復アプローチで生じ得るタービン部品の側壁移動のリスクを低減することもできる。
【0050】
本願で開示した例示的な実施形態についての説明は、要約書に記載したものを含めて、開示した実施形態を開示した正確な形態に限定するものでも、網羅的なものでもなければ、開示した実施形態を開示した形態のままに限定するものでもない。例示のため特定の実施形態及び実施例を記載してきたが、当業者には、様々な修正が可能であって、かかる実施形態及び実施例の範囲内とみなされることが明らかであろう。例えば、様々な実施形態における分量、成分、工程及び態様を組合せて、本明細書及び図面に記載されていない別の実施形態で用いるのに適したものとすることができる。このように、本発明の技術的思想及び技術的範囲から逸脱せずに、上述の発明に変更を加えることができることから、本願明細書及び図面に記載された技術的内容はすべて本発明の思想を例示するための例にすぎず、本発明を限定されるものではない。
【0051】
この観点から、本願で開示する技術的内容について、様々な実施形態及び適用できる場合には対応する図面に関連して説明してきたが、他の同様の実施形態を用いることもできるし、開示した技術的内容から逸脱せずに同一の、類似の、代替的又は置換的機能を果たすために、記載された実施形態に修正及び追加を加えることができる。したがって、本願で開示する技術的内容は、本明細書に記載したいかなる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲及び技術的範囲で解釈すべきである。例えば、本発明の「一実施形態」という場合、記載された特徴を備える追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈すべきではない。
【0052】
特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、「第3」、「上」、「下」、「底部」及び「頂部」のような用語は符号にすぎず、その目的物に数的又は位置的要件を課すものではない。「実質的」、「概略」及び「約」という用語は、部品又はアセンブリの機能目的を達成するのに適した理想的な所望条件に対して、合理的に達成できる製造及び組立て公差内にある条件を示す。さらに、特許請求の範囲の限定は、機能的記載では記載されておらず、特許請求の範囲の限定が構造についての記載を伴わずに機能に関する記載に続いて「手段」という語句を明示的に用いていない限り、そのように解釈すべきではない。
【0053】
さらに、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味する。つまり、別途記載されているか前後関係から明らかでない限り、「XはA又はBを用いる」という記載は、自然な包括的置換のいずれかを意味する。つまり、XがAを用いるか、XがBを用いるか、或いはXがAとBの両方を用いれば、「XはA又はBを用いる」という条件は前述の事例のいずれにおいても満足される。本明細書及び図面で用いられる不定冠詞は、別途記載されているか前後関係から単数形を示していることが明らかでない限り、「1以上」を意味する。
【0054】
以上の記載は、本願で開示する技術的内容の例示的なシステム及び方法の具体例を包含する。いうまでもなく、本願で構成成分又は方法のすべての組合せを説明しつくすことはできない。当業者には明らかであろうが、特許請求の範囲に記載されたされた技術的内容について数多くの追加の組合せ及び置換が可能である。さらに、発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面において「含む」、「有する」、「もつ」などの用語が用いられている場合、これらの用語は、「含む」及び「備える」という用語の解釈と同様に内包的なものである。換言すると、別途明示されていない限り、特定の性質を有する1以上の構成要素を「備える」、「含む」又は「有する」実施形態は、その性質をもたない追加の構成要素を含んでいてもよい。
【0055】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【0056】
本発明のその他の態様を、以下の実施態様に示す。
[実施態様1]
高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を得るステップと、損傷部を含むニッケル基部品の表面に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射して、損傷部に凝固堆積物を形成するステップであって、凝固堆積物が、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含んでおり、均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%が50重量%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料は50重量%以下である、ステップと
を含む方法。
[実施態様2]
高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜が約2%未満の空隙率を有する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
均質ろう皮膜中の高融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約50体積%~95体積%であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約5体積%~50体積%である、実施態様1又は実施態様2に記載の方法。
[実施態様4]
ニッケル基部品の損傷部の修復方法であって、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を得るステップと、損傷部を含むニッケル基部品の表面に高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を溶射して、損傷部に凝固堆積物を形成するステップであって、凝固堆積物が、高溶融ろう合金材料合金及び低溶融ろう合金材料合金を含有する均質ろう皮膜を含んでおり、高溶融ろう合金材料合金及び低溶融ろう合金材料合金を含有する均質ろう皮膜が約2%未満の空隙率を有する、ステップと、ニッケル基部品及び均質ろう皮膜を加熱してニッケル基部品を溶融させずにニッケル基部品と均質ろう皮膜との間に金属結合を生じさせるステップであって、金属結合によりニッケル基部品の損傷部にろう付継手を生じさせる、ステップとを含む方法。
[実施態様5]
高融点ろう合金材料が、RENE108、INCONEL262、MARM247及びRENE142からなる群から選択される、実施態様4に記載の方法。
[実施態様6]
低融点ろう合金材料が、D15、DF4B及びB1Pからなる群から選択される、実施態様4又は実施態様5に記載の方法。
[実施態様7]
高融点ろう合金材料がRENE108を含んでおり、低融点ろう合金材料がDF4Bを含む、実施態様4乃至実施態様6のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様8]
ろう付継手が約40HR~約60HRの硬度を有する、実施態様4乃至実施態様7のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様9]
ニッケル基部品の損傷部の表面に高融点ろう合金及び低溶融ろう合金材料合金を溶射するステップが、ろう合金を表面にコールドスプレーすることを含む、実施態様4乃至実施態様8のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様10]
均質ろう皮膜中の高融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約50体積%~95体積%であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金の量が均質ろう皮膜の約5体積%~50体積%である、実施態様4乃至実施態様9のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様11]
均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%が50%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料の元素重量%が50重量%以下である、実施態様4乃至実施態様10のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様12]
ニッケル基部材の損傷部を修復するためのシステムであって、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料と、供給原料を受け取り、損傷部を含むニッケル基部品の表面に高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料を溶射して、損傷部に凝固堆積物を形成するように構成された溶射装置であって、溶射装置が、高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料を加圧ガスで加熱するように構成されたガス加熱器、及び加熱された高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料を受け取って、損傷部を含むニッケル基部品の表面に加熱ろう合金材料を、加熱ろう合金材料に高い運動エネルギーを与える超音速で導いて、損傷部に凝固堆積物を形成するように構成されたノズルであって、凝固堆積物は、高融点ろう合金及び低融点ろう合金を含む均質ろう皮膜を含んでおり、均質ろう皮膜中の高融点ろう合金材料の元素重量%が50%以上であり、均質ろう皮膜中の低融点ろう合金材料が50重量%以下である、ノズルを含む溶射装置と、ニッケル基部品及び均質ろう皮膜を加熱するように構成された炉であって、炉内で発生した熱が、ニッケル基部品を溶融させずにニッケル基部品と均質ろう皮膜との間に金属結合を生じさせ、金属結合が、ニッケル基部品の損傷部にろう付継手を生じさせる、炉とを備えるシステム。
[実施態様13]
高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料の供給原料が、ろう合金材料材のワイヤを含む、実施態12に記載のシステム。
[実施態様14]
ワイヤが、高融点ろう合金材料の第1のワイヤと、低融点ろう合金材料の第2のワイヤとを含む、実施態様12又は実施態様13に記載のシステム。
[実施態様15]
ワイヤが、高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料の一方を含む内側部分と、内側部分を囲む外側部分であって高溶融ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料の他方を含む外側部分とを有する単芯線を含む、実施態様12乃至実施態様14のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様16]
高融点ろう合金材料及び低溶融ろう合金材料の供給原料が、粉末の形態の高溶融ろう合金材料及び粉末の形態の低溶融ろう合金材料を含む、実施態様12乃至実施態様15のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様17]
溶射装置がコールドスプレー装置を備える、実施態様12乃至実施態様16のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様18]
高融点ろう合金材料が、RENE108、INCONEL262、MARM247及びRENE142からなる群から選択される、実施態様12乃至実施態様17のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様19]
低融点ろう合金材料が、D15、DF4B及びB1Pからなる群から選択される、実施態様12乃至実施態様18のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様20]
高融点ろう合金材料がRENE108を含んでおり、低融点ろう合金材料がDF4Bを含む、実施態様12乃至実施態様19のいずれか1項に記載のシステム。
【符号の説明】
【0057】
10 タービン部品
12 ノズル
14 損傷部
16 タービン部品10の下部領域
18 フィレットセクションノズル12
20 プラットホーム
22 隙間
24 バッキングプレート
26 ノズル12の内側部分
28 フローチャート
30-38フローチャートプロセス操作
40 単芯線電極
42 単芯線電極40の内部
44 単芯線電極40の外側部
46 高融点ろう合金及び低融点ろう合金によるニッケル基部品の溶射システム
48 ニッケル基部品
50 高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の供給原料
52 の粉末表現高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料
54 ワイヤー電極の表現高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料
56 高融点ろう合金材料及び低融点ろう合金材料の凝固堆積物
58 ニッケル基部品48の表面
60 加熱ろう合金材料
62 コールドスプレー装置
64 加圧ガス
66 パウダーフィーダー
68 ガス予熱器
70 粉末予熱室
72 ノズル
【外国語明細書】