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特開2024-73530自動運転装置、自動運転方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073530
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】自動運転装置、自動運転方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240522BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240522BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240522BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20240522BHJP
   B60W 50/02 20120101ALI20240522BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20240522BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240522BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240522BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/16 A
B60W30/10
B60W30/095
B60W50/02
B60W50/04
B60W40/06
B60W60/00
B60W40/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038066
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2022210347の分割
【原出願日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】P 2019138146
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】前田 優
(72)【発明者】
【氏名】馬場 厚志
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BA15
3D241BA32
3D241BA33
3D241BB77
3D241CA00
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241CE09
3D241DA44B
3D241DB01Z
3D241DB12B
3D241DB46Z
3D241DC26Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC37Z
3D241DC42Z
3D241DC45Z
3D241DC46Z
3D241DC47Z
3D241DC50Z
3D241DC51Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動を予測した場合、逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動を予測する。
【解決手段】自動運転が可能な車両で用いられ、自車と自車の周辺車両との間の距離が、安全距離未満となる場合に、自車と周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動で行わせる自動運転機能部26と、自車又は周辺車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動の発生を予測する予測部252と、予測部252で逸脱挙動の発生を予測した場合に、予測部252で逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて安全距離を増加させる調整部253とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させる1以上の候補経路を算出する走行計画部(24)を備える前記車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両と前記車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測する行動予測部(727、827)と、
前記行動予測部が予測した行動をもとに、前記車両が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する責任を判断する責任判断部(729、829)と、を備え、
前記行動予測部は、前記車両又は前記車両の周辺に存在する周辺車両の少なくとも一方について、走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動を予測した場合、前記逸脱挙動があった場合の前記予測対象移動体の行動を予測する、車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記行動予測部は、前記走行計画部が算出した前記候補経路を取得し、前記車両に備えられている走行制御装置が、前記候補経路を走行させる制御を行った場合の前記予測対象移動体の行動を予測する、車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記行動予測部は、前記候補経路を取得せずに前記予測対象移動体の行動を予測し、
前記責任判断部は、前記走行計画部から前記候補経路を取得するとともに、前記行動予測部が予測した前記予測対象移動体の行動を取得し、取得した前記候補経路と前記予測対象移動体の行動とをもとに、前記責任を判断する、車両制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記走行計画部が前記候補経路を1つ出力するものである場合、前記責任判断部は、前記走行計画部が算出した1つの前記候補経路を前記車両が走行した場合に前記車両に生じる責任の有無を判断し、責任が無いと判断した場合には、前記候補経路を車両制御において採用する経路に決定する一方、責任があると判断した場合には、前記走行計画部に前記候補経路の再計算を指示する、車両制御装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記走行計画部が複数の前記候補経路を出力するものである場合、前記責任判断部は、前記走行計画部が算出した複数の前記候補経路を前記車両が走行した場合に前記車両に生じる責任の有無を前記候補経路別に判断し、責任が無いと判断した前記候補経路が複数ある場合、事前に設定した基準に基づいて定まる1つの候補経路を車両制御において採用する経路に決定する、車両制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記行動予測部は、前記車両の挙動に関する機構の故障を検出することで、前記車両の前記逸脱挙動の発生を予測する、車両制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両制御装置であって、
無線通信を介して情報を前記周辺車両へ送信させる送信指示部(211)を備え、
前記送信指示部は、前記行動予測部において前記車両の挙動に関する機構の故障を検出する場合に、前記車両の挙動に関する機構の故障を示す情報を、無線通信を介して前記周辺車両へ送信させる、車両制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記周辺車両から無線通信を介して送信されてくる情報を取得する受信情報取得部(212)を備え、
前記行動予測部は、前記受信情報取得部で前記周辺車両の挙動に関する機構の故障を示す情報を取得した場合に、その周辺車両の前記逸脱挙動の発生を予測する、車両制御装置。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記周辺車両から無線通信を介して送信されてくる情報を取得する受信情報取得部(212)を備え、
前記受信情報取得部は、前記周辺車両での走行制御についての情報を取得するものであり、
前記車両に設けられる周辺監視センサでの検出結果を用いて前記周辺車両の挙動を認識する挙動認識部(7221)を備え、
前記行動予測部は、前記受信情報取得部で取得する前記周辺車両での走行制御についての情報が示すその走行制御に沿った挙動と前記挙動認識部で認識した挙動との乖離が規定値以上の前記周辺車両が存在する場合に、その周辺車両の前記逸脱挙動の発生を予測する、車両制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両制御装置であって、
無線通信を介して情報を前記周辺車両へ送信させる送信指示部(211)を備え、
前記送信指示部は、前記行動予測部で前記周辺車両の前記逸脱挙動の発生を予測する場合に、その周辺車両の前記逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を、無線通信を介して前記車両の周辺車両へ送信させる、車両制御装置。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記周辺車両から無線通信を介して送信されてくる情報を取得する受信情報取得部(212)を備え、
前記行動予測部は、前記受信情報取得部で取得した情報を送信した前記周辺車両以外の前記周辺車両である他車の前記逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を前記受信情報取得部で取得した場合に、その他車の前記逸脱挙動の発生を予測する、車両制御装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記車両が走行している道路の路面状態を逐次決定する路面状態決定部(7274)と、
前記路面状態決定部が決定した前記路面状態に基づいて、前記車両を停止させる能力であるブレーキ能力を逐次推定するブレーキ能力推定部(7272)と、を備え、
前記行動予測部は、前記ブレーキ能力推定部が推定した前記ブレーキ能力に基づいて、前記予測対象移動体の行動を予測する、車両制御装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記車両に搭載され、前記車両を停止させる能力であるブレーキ能力に影響を与える因子であるブレーキ影響因子のうち時間変化がある因子の特性を逐次更新する特性更新部(7277)と、
前記ブレーキ影響因子の特性に基づいて、前記車両を停止させる能力であるブレーキ能力を逐次推定するブレーキ能力推定部(7272)とを備え、
前記行動予測部は、前記ブレーキ能力推定部が推定した前記ブレーキ能力に基づいて、前記予測対象移動体の行動を予測する、車両制御装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記車両の周辺の障害物以外についての前記車両のおかれた環境に関する情報である環境情報を取得する環境情報取得部(724)と、
前記環境情報取得部が取得した前記環境情報に基づく潜在的な前記車両と前記障害物との近接が発生する可能性を推定する近接推定部(7273)とを備え、
前記行動予測部は、前記近接推定部が推定した可能性に基づいて前記予測対象移動体の行動を予測する、車両制御装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記走行計画部は、事前に設定された運転ポリシに対応するニューラルネットワークを含む経路算出アルゴリズムに基づいて前記候補経路を算出する、車両制御装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記車両は、前記車両を自動で速度制御及び操舵制御して、前記車両を経路に沿って走行させる自動運転機能部(26)を備えており、
前記責任判断部は、責任が生じないと判断した前記候補経路を、前記車両が走行する経路として前記自動運転機能部に指示する、車両制御装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記行動予測部が予測した前記予測対象移動体の行動を記憶する記憶媒体(730)を備える、車両制御装置。
【請求項18】
請求項17に記載の車両制御装置であって、
前記記憶媒体は、前記行動予測部が予測した前記予測対象移動体の行動とともに、前記走行計画部が算出した前記候補経路を記憶する、車両制御装置。
【請求項19】
車両と前記車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測し、
前記車両又は前記車両の周辺に存在する周辺車両が走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動を予測した場合、前記逸脱挙動があった場合の前記予測対象移動体の行動を予測し、
予測した行動をもとに、前記車両を走行させる経路の候補となる候補経路を前記車両が走行した場合に想定される潜在的な事故に対する責任を判断する、車両制御方法。
【請求項20】
自動運転が可能な車両で用いられ、
前記車両と前記車両の周辺車両との間の対象間距離が、設定される安全距離未満となる場合に、前記車両と前記周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動運転で行わせる自動運転機能部(26)と、
前記車両又は前記周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測する予測部(252)と、
前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測した場合に、前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて前記安全距離を増加させる調整部(253)とを備える自動運転装置。
【請求項21】
自動運転が可能な車両で用いられ、
前記車両又は前記車両の周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測する予測部(252)と、
自動運転によって前記車両を走行させる1以上の経路を算出する走行計画部(24)と、
前記走行計画部で算出した前記経路を自動運転に用いるか否かを、前記車両と前記周辺車両との間の対象間距離が、設定される安全距離以上であるか否かによって評価する確認部(25)と、
前記確認部で自動運転に用いると評価された前記経路に沿った自動運転を行わせる自動運転機能部(26)と、
前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測した場合に、前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて前記安全距離を増加させる調整部(253)とを備える自動運転装置。
【請求項22】
前記調整部は、前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測した場合に、前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて増加させる前記安全距離の増加量を、前記周辺車両の数、前記周辺車両との間の前記対象間距離、及び前記車両の周辺の構造物との距離の少なくともいずれかの要因に応じて変化させる請求項20又は21に記載の自動運転装置。
【請求項23】
前記要因は複数種類であって、
前記調整部が前記要因に応じて変化させる前記安全距離の増加量の上限幅は、前記要因の種類に応じて異なる請求項22に記載の自動運転装置。
【請求項24】
前記予測部は、前記車両の挙動に関する機構の故障を検出することで、前記対象車の前記逸脱挙動として、前記車両の前記逸脱挙動の発生を予測する請求項20~23のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項25】
無線通信を介して情報を前記周辺車両へ送信させる送信指示部(211)を備え、
前記送信指示部は、前記予測部において前記車両の挙動に関する機構の故障を検出することで前記車両の前記逸脱挙動の発生を予測する場合に、前記車両の挙動に関する機構の故障を示す情報を、無線通信を介して前記周辺車両へ送信させる請求項24に記載の自動運転装置。
【請求項26】
前記周辺車両から無線通信を介して送信されてくる情報を取得する受信情報取得部(212)を備え、
前記予測部は、前記受信情報取得部で前記周辺車両の挙動に関する機構の故障を示す情報を取得した場合に、前記対象車の前記逸脱挙動として、その周辺車両の前記逸脱挙動の発生を予測する請求項20~25のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項27】
前記周辺車両から無線通信を介して送信されてくる情報を取得する受信情報取得部(212)を備えるものであって、
前記受信情報取得部は、前記周辺車両での走行制御についての情報を取得するものであり、
前記車両に設けられる周辺監視センサでの検出結果を用いて前記周辺車両の挙動を認識する挙動認識部(221)を備え、
前記予測部は、前記受信情報取得部で取得する前記周辺車両での走行制御についての情報が示すその走行制御に沿った挙動と前記挙動認識部で認識した挙動との乖離が規定値以上の前記周辺車両が存在する場合に、前記対象車の前記逸脱挙動として、その周辺車両の前記逸脱挙動の発生を予測する請求項20~26のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項28】
無線通信を介して情報を前記周辺車両へ送信させる送信指示部(211)を備えるものであって、
前記送信指示部は、前記予測部で前記周辺車両の前記逸脱挙動の発生を予測する場合に、その周辺車両の前記逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を、無線通信を介して前記車両の周辺車両へ送信させる請求項27に記載の自動運転装置。
【請求項29】
前記周辺車両から無線通信を介して送信されてくる情報を取得する受信情報取得部(212)を備えるものであって、
前記予測部は、前記受信情報取得部で取得した情報を送信した前記周辺車両以外の前記周辺車両である他車の前記逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を前記受信情報取得部で取得した場合に、前記対象車の前記逸脱挙動として、その他車の前記逸脱挙動の発生を予測する請求項20~28のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項30】
前記車両の走行環境を認識する走行環境認識部(22)を備え、
前記自動運転機能部は、前記対象間距離が前記安全距離未満になる場合に、前記走行環境認識部で認識する前記走行環境において、前記車両の左右方向における前記対象間距離を前記安全距離以上とする余地がある場合は、前記車両の左右方向における前記対象間距離を前記安全距離以上に広げるように前記自動運転を行わせる一方、前記走行環境認識部で認識する前記走行環境において、前記車両の左右方向における前記対象間距離を前記安全距離以上とする余地がない場合は、その対象間距離の対象である前記周辺車両との前記車両の前後方向における位置をずらすように前記自動運転を行わせる請求項20~29のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項31】
前記車両の走行環境を認識する走行環境認識部(22)を備えるものであって、
前記自動運転機能部は、前記対象間距離が前記安全距離未満になる場合に、前記走行環境認識部で認識する前記走行環境において、前記車両の前後方向における前記対象間距離を前記安全距離以上とする余地がある場合は、前記車両の前後方向における前記対象間距離を前記安全距離以上に広げるように前記自動運転を行わせる一方、前記走行環境認識部で認識する前記走行環境において、前記車両の前後方向における前記対象間距離を前記安全距離以上とする余地がない場合は、その対象間距離の対象である前記周辺車両との前記車両の左右方向における位置をずらすように前記自動運転を行わせる請求項20~30のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項32】
前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測していない場合の前記安全距離は、予め設定された数学的公式モデルによって算出される、前記車両と前記周辺車両との間の安全性を評価するための基準となる距離であって、
前記調整部は、前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測した場合には、この基準となる距離にマージンをもたせたることで、前記予測部で前記逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて前記安全距離を増加させる請求項20~31のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項33】
自動運転が可能な車両で用いられ、
前記車両又は前記車両の周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測し、
前記逸脱挙動の発生を予測した場合に、前記逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて、前記車両と前記周辺車両との間の対象間距離が設定される安全距離未満となる場合に前記車両と前記周辺車両との近接を避けるための回避行動を前記自動運転で行わせるのに用いるその安全距離を増加させる自動運転方法。
【請求項34】
自動運転が可能な車両で用いられ、
前記車両又は前記車両の周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測し、
自動運転によって前記車両を走行させる1以上の経路を算出し、
算出した前記経路を自動運転に用いるか否かを、前記車両と前記周辺車両との間の対象間距離が、設定される安全距離以上であるか否かによって評価し、
自動運転に用いると評価された前記経路に沿った自動運転を行わせ、
前記逸脱挙動の発生を予測した場合に、前記逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて前記安全距離を増加させる自動運転方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年7月26日に日本に出願された特許出願第2019-138146号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車両制御装置、車両制御方法、自動運転装置及び自動運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
車両の運転操作を自動化する自動運転が知られている。また、安全運転の概念を数式化した数学的公式モデルを自動運転に利用することも考えられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、自動運転において、RSS(Responsibility Sensitive Safety)モデルと呼ばれる数学的公式モデルによって算出される、車両間の安全性を評価するための基準となる距離を他車との間で保つことが記載されている。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/115963号
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動を車両が示す場合を想定していない。従って、車両の制御に沿った挙動を逸脱する挙動を自車若しくは自車の周辺車両が示す場合に、自車と周辺車両とが近接し過ぎる恐れがあるなど、車両の走行中に生じる可能性がある危険を低減する観点において改善が望まれる。
【0007】
この開示のひとつの目的は、車両制御において、車両の走行中に生じる可能性がある危険を低減できる車両制御装置、車両制御方法、自動運転装置及び自動運転方法を提供することにある。
【0008】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の車両制御装置は、車両を走行させる1以上の候補経路を算出する走行計画部を備える車両に搭載される車両制御装置であって、
車両と車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測する行動予測部と、
行動予測部が予測した行動をもとに、車両が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する責任を判断する責任判断部と、を備え、
行動予測部は、車両又は車両の周辺に存在する周辺車両の少なくとも一方について、走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動を予測した場合、逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動を予測する。
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の車両制御方法は、車両と車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測し、
車両又は車両の周辺に存在する周辺車両が走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動を予測した場合、逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動を予測し、
予測した行動をもとに、車両を走行させる経路の候補となる候補経路を車両が走行した場合に想定される潜在的な事故に対する責任を判断する。
【0011】
この車両制御装置及び車両制御方法は、車両が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する責任を判断するので、車両が候補経路を走行して事故が生じてしまった場合に、その事故の責任が車両に生じるかどうかを事前に判断できる。
【0012】
加えて、この車両制御装置及び車両制御方法は、車両又は周辺車両が走行制御に沿った挙動を逸脱する予測をした場合には、逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動を予測する。逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動も予測するので、予測の信頼性が向上する。従って、車両の走行中に生じる可能性がある種々の危険を低減しやすくなる。
【0013】
本開示の第1の自動運転装置は、自動運転が可能な車両で用いられ、車両と車両の周辺車両との間の対象間距離が、設定される安全距離未満となる場合に、車両と周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動で行わせる自動運転機能部と、車両又は周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測する予測部と、予測部で逸脱挙動の発生を予測した場合に、予測部で逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて安全距離を増加させる調整部とを備える。
【0014】
上記目的を達成するために、本開示の第1の自動運転方法は、自動運転が可能な車両で用いられ、車両又は車両の周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測し、逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて、車両と周辺車両との間の対象間距離が設定される安全距離未満となる場合に車両と周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動で行わせるのに用いる安全距離を増加させる。
【0015】
これらによれば、自車と周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動で行わせる条件として用いる安全距離を、自車又は周辺車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて増加させる。よって、逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合よりも安全距離を多めにすることで、自車又は自車の周辺車両が走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動を示す場合であっても、回避行動をより余裕をもって行うことが可能になる。その結果、車両の自動運転時において、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になるので、車両の走行中に生じる可能性がある危険を低減できる。
【0016】
上記目的を達成するために、本開示の第2の自動運転装置は、自動運転が可能な車両で用いられ、車両又は車両の周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測する予測部と、自動運転によって車両を走行させる1以上の経路を算出する走行計画部と、走行計画部で算出した経路を自動運転に用いるか否かを、車両と周辺車両との間の対象間距離が、設定される安全距離以上であるか否かによって評価する確認部と、確認部で自動運転に用いると評価された経路に沿った自動運転を行わせる自動運転機能部と、予測部で逸脱挙動の発生を予測した場合に、予測部で逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて安全距離を増加させる調整部とを備える。
【0017】
上記目的を達成するために、本開示の第2の自動運転方法は、自動運転が可能な車両で用いられ、車両又は車両の周辺車両の少なくとも一方である対象車の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動である逸脱挙動の発生を予測し、自動運転によって車両を走行させる1以上の経路を算出し、算出した経路を自動運転に用いるか否かを、車両と周辺車両との間の対象間距離が、設定される安全距離以上であるか否かによって評価し、自動運転に用いると評価された経路に沿った自動運転を行わせ、逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて安全距離を増加させる。
【0018】
これらによれば、自動運転によって車両を走行させる経路を自動運転に用いるか否かの評価に用いる安全距離を、自車又は周辺車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて増加させる。よって、逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合よりも安全距離を多めにすることで、自車又は自車の周辺車両が走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動を示す場合であっても、回避行動をより余裕をもって行うことが可能になる。その結果、車両の自動運転時において、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両用システム1の用いられ方の一例について説明する図。
図2】車両用システム1及び自動運転装置2の概略的な構成の一例を示す図。
図3】回避行動の一例を説明する図。
図4】回避行動の一例を説明する図。
図5】回避行動の一例を説明する図。
図6】回避行動の一例を説明する図。
図7】自動運転関連処理を示すフローチャート。
図8】実施形態7の車両用システム701の構成図。
図9図8の行動予測部727のサブ機能ブロックを示す図。
図10図9のブレーキ能力推定部7272のサブ機能ブロックを示す図。
図11】路面状態決定部7274の処理の一例を示す図。
図12】ブレーキ能力を推定するまでの処理順序を示す図。
図13】実施形態7におけるブレーキ能力推定処理を示す図。
図14】要因別に要因と歩行者の飛び出し可能性との関係を示す図。
図15】実施形態7の車両用システム801の構成図。
図16】実施形態9のブレーキ能力推定部7272の構成図。
図17】実施形態9で自車ブレーキ能力推定部7275が実行する処理を示す図。
図18】実施形態9で他車ブレーキ能力推定部7276が実行する処理を示す図。
図19】実施形態10のブレーキ能力推定部7272の構成図。
図20】実施形態10におけるブレーキ能力推定処理を示す図。
図21図20のS71の処理を詳しく示す図。
図22】実施形態11でブレーキ能力推定部7272が実行する処理を示す図。
図23】実施形態12で路面状態決定部7274が実行する処理を示す図。
図24】実施形態13で路面状態決定部7274が実行する処理を示す図。
図25】実施形態14で特性更新部7277が実行する処理を示す図。
図26】実施形態14で摩擦係数μを算出する処理を示す図。
図27】実施形態15で特性更新部7277が実行する処理を示す図。
図28】実施形態16でブレーキ能力を推定する処理を示す図。
図29】実施形態17におけるブレーキ能力推定処理を示す図。
図30】実施形態18で自車ブレーキ能力推定部7275が実行する処理を示す図。
図31】実施形態19で他車ブレーキ能力推定部7276が実行する処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。
【0021】
(実施形態1)
<車両用システム1の概略構成>
以下、本開示の実施形態1について図面を用いて説明する。図1に示す車両用システム1は、自動運転が可能な車両(以下、自動運転車両)で用いられる。実施形態1では、複数の自動運転車両で車両用システム1が用いられる場合を例に挙げて説明を行う。図1では、A~Dの4台の自動運転車両のそれぞれで車両用システム1が用いられる場合を例に挙げて説明を行うが、車両用システム1を用いる車両は4台以外であってもよい。
【0022】
続いて、図2を用いて、車両用システム1の概略的な構成の一例について説明を行う。車両用システム1は、図2に示すように、自動運転装置2、ロケータ3、地図データベース(以下、地図DB)4、周辺監視センサ5、車両制御ECU6、及び通信モジュール7を含んでいる。車両用システム1を用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。
【0023】
実施形態1での自動運転車両は、前述したように自動運転が可能な車両であればよい。自動運転の度合い(以下、自動化レベル)としては、例えばSAEが定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えばSAEの定義では、以下のようにレベルLv0~5に区分される。
【0024】
レベルLv0は、システムが介入せずに運転者が全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクは、例えば操舵及び加減速とする。レベルLv0は、いわゆる手動運転に相当する。レベルLv1は、システムが操舵と加減速とのいずれかを支援するレベルである。レベルLv2は、システムが操舵と加減速とのいずれをも支援するレベルである。レベルLv1~2は、いわゆる運転支援に相当する。
【0025】
レベルLv3は、高速道路等の特定の場所ではシステムが全ての運転タスクを実施可能であり、緊急時に運転者が運転操作を行うレベルである。レベルLv3では、システムから運転交代の要求があった場合に、運転手が迅速に対応可能であることが求められる。レベルLv3は、いわゆる条件付き自動運転に相当する。レベルLv4は、対応不可能な道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベルLv4は、いわゆる高度自動運転に相当する。レベルLv5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベルLv5は、いわゆる完全自動運転に相当する。レベルLv3~5は、いわゆる自動運転に相当する。
【0026】
実施形態1での自動運転車両は、例えば自動化レベルがレベルLv3の自動運転車両であってもよいし、自動化レベルがレベルLv4以上の自動運転車両であってもよい。また、自動化レベルは切り替え可能であってもよい。一例として、自動化レベルがレベルLv3以上の自動運転と、レベルLv0の手動運転とに切り替え可能であってもよい。以降では、自動運転車両が少なくとも自動化レベルがレベルLv3以上の自動運転を行う場合を例に挙げて説明を行う。
【0027】
ロケータ3は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサを備えている。GNSS受信機は、複数の測位衛星からの測位信号を受信する。慣性センサは、例えばジャイロセンサ及び加速度センサを備える。ロケータ3は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、ロケータ3を搭載した自車の車両位置を逐次測位する。車両位置は、例えば緯度経度の座標で表されるものとする。なお、車両位置の測位には、車両に搭載された車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離を用いる構成としてもよい。
【0028】
図DB4は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ、道路形状、構造物等の地図データを格納している。地図データは、道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる3次元地図であってもよい。地図データとして、道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる3次元地図を用いる場合、ロケータ3は、GNSS受信機を用いずに、この3次元地図と、道路形状及び構造物の特徴点の点群を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)若しくは周辺監視カメラ等の周辺監視センサ5での検出結果とを用いて、自車位置を特定する構成としてもよい。なお、3次元地図は、REM(Road Experience Management)によって撮像画像をもとに生成されたものであってもよい。
【0029】
周辺監視センサ5は、自車の周辺環境を監視する自律センサである。一例として、周辺監視センサ5は、歩行者、人間以外の動物、自車以外の車両等の移動する移動物体、及びガードレール、縁石、樹木等の静止している静止物体といった自車周辺の物体の認識に用いられる。他にも、自車周辺の走行区画線等の路面標示の認識にも用いられる。周辺監視センサ5としては、例えば、自車周囲の所定範囲を撮像する周辺監視カメラ、自車周囲の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等の測距センサがある。
【0030】
車両制御ECU6は、自車の走行制御を行う電子制御装置(すなわち走行制御装置)である。走行制御としては、加減速制御及び/又は操舵制御が挙げられる。車両制御ECU6としては、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU及びブレーキECU等がある。車両制御ECU6は、自車に搭載された電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力することで走行制御を行う。また、車両制御ECU6は、走行制御に用いるこれらの機器の故障を検出した場合に、故障コードであるダイアグノーシスコード(以下、ダイアグコード)を出力する。
【0031】
通信モジュール7は、自車の周辺車両に搭載された車両用システム1の通信モジュール7との間で、無線通信を介して情報の送受信(以下、車車間通信)を行う。通信モジュール7は、路側に設置された路側機との間で、無線通信を介して情報の送受信(以下、路車間通信)を行ってもよい。通信モジュール7は、自車の外部のセンタとの間で、無線通信を介して情報の送受信(以下、広域通信)を行ってもよい。広域通信によってセンタを介して車両同士が情報を送受信する場合には、車両位置を含んだ情報を送受信することで、センタにおいてこの車両位置をもとに、一定範囲内の車両同士で車両の情報が送受信されるように調整すればよい。また、通信モジュール7は、地図データを配信する外部サーバから配信される地図データを受信し、地図DB4に格納してもよい。
【0032】
自動運転装置2は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。なお、自動運転装置2の詳細については、以下で述べる。
【0033】
<自動運転装置2の概略構成>
続いて、図2を用いて、自動運転装置2の概略構成を説明する。図2に示すように、自動運転装置2は、通信関連部21、走行環境認識部22、及び自動運転部23を機能ブロックとして備えている。なお、自動運転装置2が実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2が備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。
【0034】
通信関連部21は、送信指示部211及び受信情報取得部212をサブ機能ブロックとして備えている。受信情報取得部212は、通信モジュール7で受信した情報を取得する。送信指示部211は、通信モジュール7から情報を送信させる指示を行う。例えば、送信指示部211は、後述する自動運転機能部26で行わせる自車の将来の走行制御についての情報を通信モジュール7から送信させる。また、受信情報取得部212は、周辺車両から送信されてくる、周辺車両の将来の走行制御についての情報を、通信モジュール7を介して取得する。車両の走行制御についての情報を送受信する場合には、その車両を特定可能とするため、その車両の車両位置の情報、その車両を識別するための車両ID等の識別情報も含ませて送受信することが好ましい。この周辺車両の走行制御についての情報は、例えば周辺車両の自動運転機能部26で行わせる周辺車両の走行制御についての情報とすればよい。
【0035】
走行環境認識部22は、ロケータ3から取得する自車位置、地図DB4から取得する地図データ、周辺監視センサ5から取得するセンシング情報等から、自車の走行環境を認識する。一例として、走行環境認識部22は、これらの情報を用いて、自車の周囲の物体の位置、形状、及び移動状態を認識し、実際の走行環境を再現した仮想空間を生成する。走行環境認識部22では、周辺監視センサ5から取得したセンシング情報から、自車の周辺車両との距離、自車に対する周辺車両の相対速度等も走行環境として認識するものとすればよい。また、通信モジュール7を介して周辺車両等の位置情報、速度情報を取得できる場合には、これらの情報も用いて走行環境を認識する構成としてもよい。
【0036】
走行環境認識部22は、挙動認識部221をサブ機能ブロックとして備えている。挙動認識部221は、自車に設けられる周辺監視センサ5での検出結果を用いて周辺車両の移動状態(つまり、挙動)を認識する。挙動認識部221は、走行環境認識部22で逐次認識する走行環境中の周辺車両の変化から周辺車両の挙動を認識すればよい。例えば、周辺車両の単位時間あたりの前後方向の位置の変化率から、周辺車両の前後方向の加減速及びその加減速度を認識すればよい。また、例えば走行車線の中心線等の基準に対する周辺車両の単位時間あたりの向きの変化率から、周辺車両の旋回及びそのヨーレートを認識すればよい。
【0037】
自動運転部23は、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部23は、図2に示すように、走行計画部24、確認部25、及び自動運転機能部26をサブ機能ブロックとして備えている。
【0038】
走行計画部24は、走行環境認識部22で認識する走行環境を用いて、自動運転によって自車を走行させるための走行計画を生成する。例えば、中長期の走行計画として、経路探索処理を行って、自車位置から目的地へ向かわせるための推奨経路を生成する。また、中長期の走行計画に沿った走行を行うための短期の走行計画として、車線変更の走行計画、レーン中心を走行する走行計画、先行車に追従する走行計画、及び障害物回避の走行計画等が生成される。走行計画部24での走行計画の生成は、例えば、認識した走行区画線から一定距離又は中央となる経路を算出したり、認識した先行車の挙動又は走行軌跡に沿うように経路を算出したりして生成すればよい。
【0039】
また、走行計画部24での走行計画の生成は、機械学習等によって最適と判断される経路を算出することで行う構成としてもよい。機械学習によって最適と判断される経路を算出する場合、経路を算出する経路算出アルゴリズムはニューラルネットワークを含む。ニューラルネットワークへ入力する値の一例は、自車と周辺車両との距離、自車に対する周辺車両の相対速度である。他にも、走行環境認識部22が認識した種々の走行環境をニューラルネットワークへ入力してもよい。ニューラルネットワークの出力は経路である。
【0040】
このニューラルネットワークは強化学習などの機械学習により学習される。また、経路算出アルゴリズムは、複数種類用意することができる。複数の経路算出アルゴリズムの相互の相違は、運転ポリシの違いである。運転ポリシは、車両を自動運転する際の加減速、操舵制御の程度や頻度を示すものである。運転ポリシは、たとえば、加減速が急であるか、ゆっくりであるか、という違いに現れる。複数の運転ポリシにそれぞれ対応する複数の経路算出アルゴリズムのうち、どの経路算出アルゴリズムを用いるかは車両の乗員が選択できる。ある1つの選択された経路算出アルゴリズムに従って経路が算出される場合、その経路算出アルゴリズムに対応する運転ポリシに基づいて経路が算出されると言える。
【0041】
走行計画部24は、短期の走行計画として、1以上の経路を算出する。例えば、走行計画部24は、短期の走行計画として、算出した経路における速度調整のための加減速の情報も含む構成とすればよい。
【0042】
確認部25は、走行計画部24で生成する走行計画の安全性を評価する。一例として、確認部25は、走行計画の安全性の評価をより容易にするために、安全運転の概念を数式化した数学的公式モデルを用いて、走行計画の安全性を評価すればよい。数学的公式モデルとしては、例えばRSS(Responsibility Sensitive Safety)モデルを用いることができる。確認部25は、自車と周辺車両との間の距離(以下、周辺車両距離)が、予め設定された数学的公式モデルによって算出される、車両間の安全性を評価するための基準となる距離(以下、安全距離)以上か否かで安全性を評価すればよい。周辺車両距離は、一例として、自車の前後方向及び/又は左右方向の距離とすればよい。周辺車両距離が対象間距離に相当する。
【0043】
なお、数学的公式モデルは、事故が完全に生じないことを担保するものではなく、安全距離未満となった場合に衝突回避のための適切な行動を取りさえすれば事故の責任を負う側にならないことを担保するためのものである。
【0044】
また、確認部25は、基準設定部251、予測部252、及び調整部253をサブ機能ブロックとして備え、状況に応じて安全距離にマージンをもたせる。より詳しくは、自車又は周辺車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動(以下、逸脱挙動)の発生が予測される場合に、数学的公式モデルを用いて算出される安全距離にマージンをもたせる。自車又は周辺車両の逸脱挙動の発生が予測されない場合には、数学的公式モデルを用いて算出される安全距離にマージンをもたせない。
【0045】
基準設定部251は、前述した数学的公式モデルを用いて安全距離を算出する。数学的公式モデルとしては、例えばRSSモデルを用いればよい。基準設定部251で算出した安全距離をデフォルトの安全距離とする。
【0046】
予測部252は、自車又は周辺車両の逸脱挙動の発生を予測する。予測部252は、例えば自車の挙動に関する機構の故障を検出することで、自車の逸脱挙動の発生を予測すればよい。一例として、予測部252は、車両制御ECU6が出力するダイアグコードから、自車の挙動に関する機構の故障を検出することで、自車の逸脱挙動の発生を予測すればよい。例えば、自動運転装置2は、車内LANを介してこのダイアグコードを取得すればよい。ダイアグコードは、例えばブレーキの故障を示すダイアグコード等とすればよい。
【0047】
予測部252において自車の挙動に関する機構の故障を検出することで自車の逸脱挙動の発生を予測した場合には、送信指示部211が、自車の挙動に関する機構の故障を示す情報を、通信モジュール7から周辺車両へ送信させることが好ましい。通信モジュール7から周辺車両へ情報を送信させる場合には、車車間通信によって直接的に送信する構成としてもよいし、路車間通信、広域通信によって間接的に送信する構成としてもよい。
【0048】
予測部252は、例えば周辺車両での走行制御に沿った挙動と自車の自律センサを用いて認識した周辺車両の実際の挙動との乖離をもとに、逸脱挙動の発生を予測する。一例として、予測部252は、受信情報取得部212で取得する周辺車両での走行制御についての情報が示すその走行制御に沿った挙動と挙動認識部221で認識した挙動との乖離が規定値以上の周辺車両が存在する場合に、その周辺車両の逸脱挙動の発生を予測すればよい。この乖離が規定値未満の周辺車両については、逸脱挙動の発生を予測しなければよい。ここで言うところの規定値とは、走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動か否かを区別するための値であって、任意に設定可能な値である。逸脱挙動を一旦示した車両は、逸脱挙動を再度示す可能性が高いため、以上の構成によって周辺車両の逸脱挙動の発生を予測することが可能になる。なお、走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動が発生する状況としては、車両のスリップ、故障等が挙げられる。
【0049】
例えば、予測部252は、走行制御のうちの加減速制御に沿った加減速度と、挙動認識部221で認識した実際の加減速度とを比較対象として、逸脱挙動の発生を予測すればよい。他にも、予測部252は、走行制御のうちの操舵制御に沿ったヨーレートと、挙動認識部221で認識した実際のヨーレートとを比較対象として、逸脱挙動の発生を予測してもよい。なお、受信情報取得部212で走行制御についての情報を取得した周辺車両と、挙動認識部221で挙動を認識した周辺車両との紐付けは、例えば周辺車両の車両位置をもとに行えばよい。
【0050】
予測部252において周辺車両の逸脱挙動の発生を予測した場合には、送信指示部211が、その周辺車両の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を、通信モジュール7から周辺車両へ送信させることが好ましい。通信モジュール7から周辺車両へ情報を送信させる場合には、車車間通信によって直接的に送信する構成としてもよいし、路車間通信、広域通信によって間接的に送信する構成としてもよい。通信モジュール7は、例えば車両ID等の、逸脱挙動の発生が予測される車両を特定可能な情報を含ませて、その車両の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を周辺車両へ送信させることが好ましい。これによれば、車両の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を受信した周辺車両において、この情報が自車の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報か他車の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報かを区別することが可能になる。
【0051】
例えば、予測部252は、周辺車両で用いられる車両用システム1の通信モジュール7から送信されてくる、その周辺車両の挙動に関する機構の故障を示す情報を、自車の通信モジュールを介して受信情報取得部212で取得した場合に、その周辺車両の逸脱挙動の発生を予測してもよい。この場合、送信指示部211が、その周辺車両の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を、通信モジュール7から周辺車両へ送信させてもよい。なお、その周辺車両の挙動に関する機構の故障については、その周辺車両で用いられる車両用システム1の予測部252において検出されるものとすればよい。
【0052】
例えば、予測部252は、周辺車両で用いられる車両用システム1の通信モジュール7から送信されてくる、その周辺車両以外の周辺車両である他車の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を受信情報取得部212で取得した場合に、その他車の逸脱挙動の発生を予測してもよい。この場合、送信指示部211が、その他車の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を、通信モジュール7から周辺車両へ送信させてもよい。
【0053】
例えば、予測部252は、周辺車両で用いられる車両用システム1の通信モジュール7から送信されてくる、自車の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を受信情報取得部212で取得した場合に、自車の逸脱挙動の発生を予測してもよい。この場合、送信指示部211が、自車の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を、通信モジュール7から周辺車両へ送信させてもよい。なお、この周辺車両では、自車の逸脱挙動の発生を、周辺車両で用いられる予測部252において、通信で得られた情報と自律センサで得られた情報との乖離をもと予測して、自車の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を送信すればよい。
【0054】
調整部253は、予測部252で自車又は周辺車両である対象車の逸脱挙動の発生を予測した場合に、予測部252でその対象車の逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて安全距離を増加させる。一例として、調整部253は、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測した場合には、基準設定部251で設定したデフォルトの安全距離にマージンを足した距離を安全距離として設定する。予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測していない場合には、基準設定部251で設定したデフォルトの安全距離が安全距離の設定として維持される。つまり、調整部253は、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測した場合には、デフォルトの安全距離にマージンをもたせたることで、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて安全距離を増加させる。
【0055】
調整部253は、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測した場合にデフォルトの安全距離に足すマージンの量を、自車のおかれた状況についての種々の要因に応じて変化させることが好ましい。要因の一例としては、自車の周辺車両の数(以下、周辺車両台数)、周辺車両距離、自車と自車の周辺の構造物との距離(以下、構造物距離)等が挙げられる。周辺車両台数として数える周辺車両は、例えば自車の車両位置からの距離が一定範囲内のものとすればよい。構造物距離は、例えば自車の左右方向における距離とすればよい。
【0056】
自車のおかれた状況によって、周辺車両、構造物を避けて走行できる余地は変化し、周辺車両との近接を回避可能な余地も変化する。また、周辺車両との近接を回避可能な余地に応じて乗員の心理的な圧迫感も変化する。これに対して、以上の構成によれば、自車のおかれた状況についての種々の要因に応じてデフォルトの安全距離に足すマージンの量を変化させるので、周辺車両との近接を回避するための回避行動がとりやすくなるようにデフォルトの安全距離に足すマージンの量を変化させることが可能になる。例えば、周辺車両、構造物を避けて走行できる余地が少ないほど、デフォルトの安全距離に足すマージンの量を増やす構成とすればよい。これによれば、周辺車両、構造物を避けて走行できる余地が少ないほど、早めに周辺車両との近接を避けるための回避行動をとるので、周辺車両との近接を回避することが難しくなる前に余裕をもって回避行動をとることが可能になる。また、周辺車両、構造物を避けて走行できる余地が少ないほど、早めに周辺車両との近接を避けるための回避行動をとることで、乗員の心理的な圧迫感を生じにくくすることも可能になる。
【0057】
周辺車両台数が多くなるほど、自車が周辺車両、構造物を避けて走行できる余地は少なくなるとともに、乗員の心理的な圧迫感も増す。よって、調整部253は、例えば周辺車両台数が多くなるのに応じて、デフォルトの安全距離に足すマージンの量を増加させることが好ましい。
【0058】
周辺車両距離が短くなるほど、自車が周辺車両、構造物を避けて走行できる余地は少なくなるとともに、乗員の心理的な圧迫感も増す。よって、調整部253は、例えば周辺車両距離が短くなるのに応じて、デフォルトの安全距離に足すマージンの量を増加させることが好ましい。周辺車両が複数存在する場合には、例えば最も距離が短い周辺車両距離を対象として、周辺車両距離が短くなるのに応じて、デフォルトの安全距離に足すマージンの量を増加させる構成とすればよい。なお、調整部253は、周辺車両距離に応じてマージンの量を変化させる場合は、マージンを含む安全距離のふらつきを抑えるためにマージンの量の変化後の一定時間はマージンの量の変化を行わないことが好ましい。
【0059】
構造物距離が短くなるほど、自車が周辺車両、構造物を避けて走行できる余地は少なくなるとともに、乗員の心理的な圧迫感も増す。よって、調整部253は、例えば構造物距離が短くなるのに応じて、デフォルトの安全距離に足すマージンの量を増加させることが好ましい。自車の周辺の構造物が複数存在する場合には、例えば最も距離が短い構造物を対象として、構造物距離が短くなるのに応じて、デフォルトの安全距離に足すマージンの量を増加させる構成とすればよい。
【0060】
調整部253は、複数種類の要因に応じてマージンの量を変化させる場合には、例えば個々の要因ごとに定まる変化量を足し合わせたマージンをデフォルトの安全距離に足す構成とすればよい。
【0061】
上述の要因の種類によって、乗員の心理的な圧迫感に与える影響が異なると考えられる。よって、調整部253は、マージンの上限幅を、上述の要因の種類に応じて異ならせてもよい。以上の構成によれば、要因の種類に応じてデフォルトの安全距離に足すマージンの上限幅を異ならせるので、より乗員に心理的な圧迫感を与えやすい要因ほどマージンを多めにとることで乗員に心理的な圧迫感を与えにくくすることが可能になる。
【0062】
例えば、周辺車両台数が多くなるが周辺車両距離が長い状況よりも、周辺車両台数は少ないが周辺車両距離が短い状況の方が、乗員の心理的な圧迫感は大きいと考えられる。また、構造物と異なって周辺車両は移動するため、構造物距離が短い状況よりも、周辺車両距離が短い状況の方が、乗員の心理的な圧迫感は大きいと考えられる。よって、調整部253は、デフォルトの安全距離にマージンをもたせる場合に、周辺車両台数、周辺車両距離、及び構造物距離のうちの周辺車両距離に応じたマージンの上限幅を、他の要因に応じたマージンの上限幅よりも大きくすることが好ましい。これによれば、他の要因よりも乗員に心理的な圧迫感を与えやすいと考えられる要因である周辺車両距離に応じたマージンを、他の要因よりも多めにとることで、乗員に心理的な圧迫感をより与えにくくすることが可能になる。
【0063】
確認部25は、周辺車両距離が、調整部253で設定された安全距離以上の場合に、走行計画部24で生成する走行計画の安全性有りと評価すればよい。一方、確認部25は、周辺車両距離が、この安全距離未満の場合に、走行計画部24で生成する走行計画の安全性無しと評価すればよい。確認部25は、安全性有りと評価した走行計画を自動運転機能部26に出力すればよい。一方、確認部25は、安全性無しと評価した走行計画については、例えば安全性有りと評価される走行計画に修正して自動運転機能部26に出力すればよい。つまり、走行計画部24で算出する経路を自動運転に用いるか否かを、周辺車両距離が安全距離以上であるか否かによって評価する。
【0064】
自動運転機能部26は、確認部25から出力される走行計画に従い、自車の加減速及び/又は操舵を車両制御ECU6に自動で行わせることで、運転者による運転操作の代行(つまり、自動運転)を行わせればよい。自動運転機能部26は、確認部25で自動運転に用いると評価された経路に沿った自動運転を行わせる。自動運転機能部26は、確認部25から出力される走行計画に従い自動運転を行わせることで、自車と周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動運転で行わせる。
【0065】
ここで、周辺車両距離が、調整部253で設定された安全距離未満となった場合の回避行動の一例について説明を行う。まず、図3及び図4を用いて、自車の左右方向における周辺車両距離が安全距離未満となった場合の回避行動の一例について説明を行う。図3は、自車の左右方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のある状況下の例である。図4は、自車の左右方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のない状況下の例である。図3及び図4のAが自車、Cが並走車としての周辺車両、Sdが安全距離、破線が走行軌跡を示す。図4のStが構造物を示す。図4の例では、例えばガードレールといった構造物Stの存在によって、自車Aの左右方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地がないものとする。図3及び図4の例での周辺車両距離の対象となる周辺車両は並走車Cである。
【0066】
図3に示すように、自車Aの左右方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のある状況下では、確認部25が、自車Aの左右方向における周辺車両距離を安全距離以上に広げるように走行計画を修正する。この場合、自動運転機能部26は、図3に示すように、自車Aの左右方向における周辺車両距離を安全距離以上に広げるように自動運転を行わせる。一例として、自動運転機能部26は、操舵制御によって、自車Aの左右方向における位置を移動させることで、この自動運転を行わせればよい。これによれば、周辺車両距離を安全距離以上に広げる回避行動をとることになり、自車Aと並走車Cとの衝突の可能性を低くすることが可能になる。
【0067】
一方、図4に示すように、自車Aの左右方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のない状況下では、確認部25が、並走車Cとの自車Aの前後方向における位置をずらすように走行計画を修正する。これにより、自車Aと並走車Cとの自車Aの前後方向における位置がずれる。その結果、並走車Cが安全距離の比較対象から外れ、並走車Cとの関係においては走行計画の安全性無しと評価されなくなる。この場合、自動運転機能部26は、図4に示すように、自車Aと並走車Cとの自車Aの前後方向における位置がずれるように自動運転を行わせる。一例として、自動運転機能部26は、加減速制御によって、自車Aの前後方向における位置を移動させることで、この自動運転を行わせればよい。図4の例では、加速制御によって、自車Aの前後方向における位置を移動させることで、この自動運転を行わせている。これによれば、周辺車両距離を安全距離以上に広げることができない場合であっても、自車Aと並走車Cとの前後方向における位置をずらす回避行動をとることになり、衝突の可能性を低くすることが可能になる。
【0068】
続いて、図5及び図6を用いて、自車の前後方向における周辺車両距離が安全距離未満となった場合の回避行動の一例について説明を行う。図5は、自車の前後方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のある状況下の例である。図6は、自車の前後方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のない状況下の例である。図5及び図6のAが自車、Bが自車の先行車としての周辺車両、Dが自車の後続車としての周辺車両、Sdが安全距離、破線が走行軌跡を示す。図6の例では、後続車Dの存在によって、自車Aの前後方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地がないものとする。図5及び図6の例での周辺車両距離の対象となる周辺車両は先行車Bである。
【0069】
図5に示すように、自車Aの前後方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のある状況下では、確認部25が、自車Aの前後方向における周辺車両距離を安全距離以上に広げるように走行計画を修正する。この場合、自動運転機能部26は、図5に示すように、自車Aの前後方向における周辺車両距離を安全距離以上に広げるように自動運転を行わせる。一例として、自動運転機能部26は、加減速制御によって、自車Aの前後方向における位置を移動させることで、この自動運転を行わせればよい。図5の例では、減速制御によって、自車Aの前後方向における位置を移動させることで、この自動運転を行わせている。これによれば、周辺車両距離を安全距離以上に広げる回避行動をとることになり、自車Aと先行車Bとの衝突の可能性を低くすることが可能になる。
【0070】
一方、図6に示すように、自車Aの前後方向における周辺車両距離を安全距離以上とする余地のない状況下では、確認部25が、自車Aと先行車Bとの自車Aの左右方向における位置をずらすように走行計画を修正する。これにより、自車Aと先行車Bとの自車Aの左右方向における位置がずれる。その結果、先行車Bが安全距離の比較対象から外れ、先行車Bとの関係においては走行計画の安全性無しと評価されなくなる。この場合、自動運転機能部26は、図6に示すように、自車Aと先行車Bとの自車Aの左右方向における位置がずれるように自動運転を行わせる。一例として、自動運転機能部26は、操舵制御によって、自車Aの左右方向における位置を移動させることで、この自動運転を行わせればよい。これによれば、周辺車両距離を安全距離以上に広げることができない場合であっても、自車Aと先行車Bとの左右方向における位置をずらす回避行動をとることになり、衝突の可能性を低くすることが可能になる。
【0071】
<自動運転装置2での自動運転関連処理>
ここで、図7のフローチャートを用いて、自動運転装置2での自動運転に関連する処理(以下、自動運転関連処理)の流れの一例について説明を行う。コンピュータによって自動運転関連処理に含まれるステップが実行されることが、自動運転方法が実行されることに相当する。図7のフローチャートは、自車の内燃機関又はモータジェネレータを始動させるためのスイッチ(以下、パワースイッチ)がオンになって自動運転が開始される場合に開始する構成とすればよい。他にも、自車の手動運転と自動運転とを切り替えることができる構成の場合には、自動運転を行う設定となっている状態でパワースイッチがオンされる場合に開始する構成とすればよい。他にも、手動運転中に自動運転を行う設定がオンに切り替えられて自動運転に切り替わる場合に開始する構成としてもよい。
【0072】
まず、ステップ(以下、ステップを省略)S1では、走行環境認識部22が、自車の走行環境を認識する。S2では、走行計画部24が、S1で認識する走行環境を用いて、自動運転によって自車を走行させるための走行計画を生成する。ここでは、少なくとも短期の走行計画を生成するものとする。S3では、基準設定部251が、前述した数学的公式モデルを用いて自車と周辺車両との間の安全距離を算出し、デフォルトの安全距離として設定する。
【0073】
S4では、予測部252が、自車又は周辺車両の逸脱挙動の発生を予測した場合(S4でYES)には、S5に移る。一方、予測部252が、自車及び周辺車両のいずれの逸脱挙動の発生も予測していない場合(S4でNO)には、S3で設定したデフォルトの安全距離が安全距離の設定として維持され、S6に移る。S5では、調整部253が、S3で設定したデフォルトの安全距離にマージンを足した距離を安全距離として設定する。このマージンについては、自車のおかれた状況についての種々の要因に応じて変化させればよい。
【0074】
S6では、周辺車両距離が安全距離未満の場合(S6でYES)には、S8に移る。一方、周辺車両距離が安全距離以上の場合(S6でNO)には、S7に移る。S7では、自動運転機能部26が、確認部25から出力される走行計画に従った自動運転を行わせることで、周辺車両距離を安全距離以上に保って自動運転を行わせ、S11に移る。
【0075】
S8では、S1で認識した走行環境において、周辺車両距離を安全距離以上とする余地のある場合(S8でYES)には、S9に移る。一方、S1で認識した走行環境において、周辺車両距離を安全距離以上とする余地のない場合(S8でNO)には、S10に移る。
【0076】
S9では、自動運転機能部26が、周辺車両距離を安全距離以上に広げるように自動運転を行わせ、S11に移る。S10では、自動運転機能部26が、対象である周辺車両と自車との位置をずらすように自動運転を行わせ、S11に移る。ここで言うところの対象である周辺車両とは、S6で周辺車両距離が安全距離未満であった周辺車両である。
【0077】
S11では、自動運転関連処理の終了タイミングであった場合(S11でYES)には、自動運転関連処理を終了する。一方、自動運転関連処理の終了タイミングでなかった場合(S11でNO)には、S1に戻って処理を繰り返す。自動運転関連処理の終了タイミングの一例としては、自車のパワースイッチがオフになった場合、手動運転に切り替わった場合等がある。
【0078】
なお、S8及びS10の処理を省略し、S6でYESの場合にS9の処理に移る構成としてもよい。この構成においては、周辺車両距離を安全距離以上に広げる余地のない場合には、周辺車両距離を可能な限り安全距離に近づけるように広げる自動運転を行ったりすればよい。
【0079】
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、自車と周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動で行わせる条件及び経路の安全性の評価に用いる安全距離を、自車又は周辺車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて増加させる。よって、逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合よりも安全距離を多めにすることで、自車又は自車の周辺車両が走行制御に沿った挙動を逸脱する挙動を示す場合であっても、回避行動をより余裕をもって行うことが可能になる。その結果、車両の自動運転時において、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【0080】
また、実施形態1の構成によれば、自車の挙動に関する機構の故障を検出することで、自車の逸脱挙動の発生を予測するので、自車の挙動に関する機構の故障によって自車の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動が発生した場合でも、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【0081】
さらに、実施形態1の構成によれば、自車の挙動に関する機構の故障を示す情報を、周辺車両へ送信させるので、周辺車両において、この自車の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動を予測して安全距離を多めにとることが可能になる。よって、周辺車両においても、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【0082】
また、実施形態1の構成によれば、周辺車両での走行制御に沿った挙動と自車の自律センサを用いて認識した周辺車両の実際の挙動との乖離をもとに、逸脱挙動の発生を予測するので、周辺車両のスリップ等で周辺車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動が発生した場合でも、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【0083】
さらに、実施形態1の構成によれば、周辺車両の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を、この周辺車両以外の周辺車両へ送信することも可能になる。よって、逸脱挙動の発生が予測される要注意車両を自律センサで認識することが難しい位置関係にある車両であっても、この情報から、この要注意車両の走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動を予測して安全距離を多めにとることが可能になる。よって、周辺車両同士においても、距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【0084】
(実施形態2)
実施形態1では、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測していない場合には、安全距離にマージンを持たせない構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測していない場合であっても、基準設定部251で設定したデフォルトの安全距離にマージンをもたせる構成(以下、実施形態2)としてもよい。実施形態2の構成を採用する場合であっても、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測した場合には、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測していない場合に比べて、デフォルトの安全距離にマージンをもたせたる量を多くすることで安全距離を増加させるものとする。
【0085】
実施形態2の構成によっても、逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合よりも安全距離を多めにするので、実施形態1と同様に、車両の自動運転時において、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【0086】
(実施形態3)
実施形態1では、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測した場合にデフォルトの安全距離に足すマージンの量を、自車のおかれた状況についての種々の要因に応じて変化させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、予測部252で対象車の逸脱挙動の発生を予測した場合にデフォルトの安全距離に足すマージンの量を、自車のおかれた状況についての種々の要因にかかわらず一律に固定された値としてもよい。
【0087】
(実施形態4)
実施形態1では、デフォルトの安全距離を数学的公式モデルによって算出する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、デフォルトの安全距離を数学的公式モデル以外で算出する構成としてもよい。例えばTTC(Time To Collision)等の他の指標によって安全距離を算出する構成としてもよい。
【0088】
(実施形態5)
実施形態1では、自動運転装置2と車両制御ECU6とが別体である構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自動運転装置2が車両制御ECU6の機能も担う構成としてもよい。また、自動運転装置2がロケータ3の機能も担う構成としてもよい。
【0089】
(実施形態6)
実施形態1では、自車の周辺車両も車両用システム1を用いる自動運転車両である場合を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らない。例えば、自車の周辺車両は、車両用システム1を用いない自動運転車両であってもよいし、手動運転によって走行する車両であってもよい。
【0090】
例えば、無線通信を介して周辺車両から、その周辺車両での走行制御についての情報を受信情報取得部212で取得できる場合、その情報を用いて実施形態1と同様に予測部252で周辺車両の逸脱挙動の発生を予測すればよい。周辺車両が自動運転車両でない場合は、将来の走行制御についての情報の代わりに現在の走行制御についての情報を受信情報取得部212で取得することで、その情報を用いて実施形態1と同様に予測部252で周辺車両の逸脱挙動の発生を予測すればよい。また、無線通信を介して周辺車両から情報を取得することができない場合は、予測部252において自車の挙動に関する機構の故障を検出することで自車の逸脱挙動の発生を予測すればよい。
【0091】
以上の構成によっても、自車又は周辺車両の少なくとも一方の逸脱挙動の発生を予測することが可能である。よって、逸脱挙動の発生を予測した場合に、逸脱挙動の発生を予測していない場合よりも安全距離を多めにすることが可能になる。その結果、実施形態1と同様に、車両の自動運転時において、自車と周辺車両との間の距離が近接し過ぎるのをより防ぎやすくすることが可能になる。
【0092】
(実施形態7)
次に実施形態7を説明する。図8に実施形態7の車両用システム701の構成図を示す。実施形態7の車両用システム701は、実施形態1の車両用システム1と異なる構成として、自動運転装置702、挙動検出センサ705、ルールDB記憶部706を備える。
【0093】
挙動検出センサ705は、複数のセンサを備えたセンサ群であり、実施形態1で説明した周辺監視センサ5を含み、さらに、自車の挙動を検出するセンサを含んでいる。周辺監視センサ5により、自車の周辺に存在する移動体の挙動、及び、自車の周辺に存在する移動しない障害物を検出することができる。自車の挙動を検出するセンサは、自車の速度、加速度を検出するセンサと、自車の移動方向を検出するセンサとを含んでいる。なお、実施形態1においても、自動運転装置2は自車の挙動を検出するセンサから検出値を取得するようにしてもよい。
【0094】
自車の周辺とする領域は、たとえば、自車を中心とし、自車の前後方向及び左右方向に平行な辺を持つ矩形領域とすることができる。矩形の大きさは、自車の前方向を、自車の停止距離程度とすることができる。自車の後方は前方向と同じとしてもよいし、それよりも短くしてもよい。自車の左右方向における矩形の大きさは、1又は数車線分の長さとすることができる。なお、周辺領域大きさは、種々に設定可能である。また、周辺領域の形状も種々に設定可能である。たとえば、周辺領域の形状は、真円形あるいは楕円形であってもよい。
【0095】
ルールDB記憶部706は、ルールデータベース(以下、ルールDB)が記憶された記憶部である。ルールDBは、後述する潜在的な事故に対する責任を判断するための基準となるルール(以下、事故責任ルール)が格納されたデータベースである。このルールDBには、場所別の事故責任ルールが格納されている。場所別の事故責任ルールには、一方通行などの通行方向、制限速度、優先非優先の区別などが含まれる。もちろん、事故責任ルールには、場所によらないルールも含まれている。場所によらない事故責任ルールには、信号灯色と走行停止の対応、車両よりも歩行者を優先して通行させるなどのルールがある。
【0096】
自動運転装置702は、車両を自動運転させる装置であり、車両制御装置の一例である。自動運転装置702は、自動運転装置2と同様、自車を自動運転させる自動運転方法を実行する。自動運転方法は車両制御方法の一例である。
【0097】
自動運転装置702は、実施形態1の車両用システム1が備える自動運転装置2とは構成が一部相違する。自動運転装置702は、自動運転装置2と同様、通信関連部21を備える。なお、図示の都合上、図8では通信関連部21が備えるサブ機能ブロックは省略している。また、自動運転装置702は、走行環境認識部722と、自動運転部723と、環境情報取得部724、記憶媒体730とを備える。
【0098】
走行環境認識部722は、挙動認識部221に代えて挙動認識部7221をサブ機能ブロックとして備えている点が、実施形態1の走行環境認識部22と相違する。実施形態1の挙動認識部221は周辺車両の挙動を認識する。これに対して、挙動認識部7221は、周辺車両の挙動に加えて、現在の自車の挙動も認識する。自車の挙動は、挙動検出センサ705に含まれている自車の挙動を検出するセンサの検出値に基づいて決定する。自車の挙動は、たとえば、自車の現在の速度と、加速度と、ヨーレートとを含む所定の指標により表現できる。
【0099】
環境情報取得部724は、自車周辺の障害物以外についての自車のおかれた環境に関する情報(以下、環境情報)を取得する。環境情報には、自車周辺の障害物以外についての情報であって、移動体が道路に現れる頻度に関する情報が含まれる。また、環境情報から除外している自車周辺の障害物についての情報は、自車周辺の障害物を自車が備えるセンサにより検出して得られる情報を意味している。環境情報取得部724は、地図情報取得部7241及びインフラ情報取得部7242をサブ機能ブロックとして備えている。
【0100】
地図情報取得部7241は、地図DB4に格納されている地図データを取得する。地図情報取得部7241が取得する地図データには、例えば、学校、駅等の人が集まる施設の座標、道路の縦断勾配、及びカーブの曲率等も含まれるものとすればよい。地図情報取得部7241が取得する地図データが、前述の環境情報に相当する。地図情報取得部7241は、自車の位置に応じて、自車周辺の地図データを取得してもよい。地図情報取得部7241は、挙動検出センサ705の検出範囲よりも広い範囲についての地図データを取得することが好ましい。
【0101】
インフラ情報取得部7242は、通信モジュール7でセンタから受信したインフラ情報を取得する。インフラ情報としては、気象情報、イベント情報、施設の利用情報等が挙げられる。インフラ情報取得部7242で取得するインフラ情報が、前述の環境情報に相当する。
【0102】
気象情報は、所定の区画単位ごとの天候、気温等の情報である。区画単位は、地図のメッシュ単位であってもよいし、行政区画単位であってもよいし、他の区画単位であってもよい。イベント情報は、コンサート等の人が集まるイベントの開催についての情報である。イベント情報には、イベント会場の位置、イベントの開催日、イベントの時間帯等を含む構成とすればよい。施設の利用情報は、学校、駅等の人が集まる施設の利用についての情報である。施設の利用情報には、利用される曜日、利用される時間帯等を含む構成とすればよい。施設が学校の場合には、登校時刻から下校時刻までを利用される時間帯とすればよい。施設が駅の場合には、時間帯別の平均利用者数を施設の利用情報に含ませてもよい。
【0103】
環境情報は、その内容自体は、移動体が道路に現れる頻度、換言すれば、移動体の位置が時間経過により道路でないところから道路に変化する可能性に関する情報を含んでいる。一方、環境情報の取得タイミングの違いによる内容の変化は、上記具体例から分かるように、移動体の位置の時間変化に比較してはるかに少ない。環境情報は、移動体の位置の時間変化と比較すると、静的な情報であると言える。
【0104】
自動運転部723は、実施形態1で説明した走行計画部24、確認部25、自動運転機能部26に加え、行動予測部727、シーン判定部728、責任判断部729を備える。
【0105】
行動予測部727は、予測対象移動体の行動を予測する。予測対象移動体は、車両用システム701が搭載されている車両(すなわち自車)と、自車の周辺に存在する少なくとも1つの移動体を含んでいる概念である。以下、自車の周辺に存在する移動体を周辺移動体とする。周辺移動体の一例は、前述した周辺車両、歩行者である。行動予測部727は、予測対象移動体の行動を、事前に設定した一定時間分、予測する。一定時間は、たとえば、候補経路を走行するのに要する時間と同等又は、それよりも少し長い時間である。予測対象移動体の行動は、現時点からの経過時間とそのときの位置を含んで表現される。予測対象移動体の行動を表現する経過時間は、単位経過時間を1単位とする離散的な値をとる。単位経過時間は、装置の処理能力にもよるが、数ミリ秒から数十ミリ秒である。
【0106】
行動予測部727は、予測対象移動体の行動を予測するために、走行環境認識部722の認識結果を取得する。走行環境認識部722の認識結果には、周辺車両の挙動、周辺車両以外に自車の周辺に存在する移動体の挙動、自車の周辺の移動しない障害物が含まれる。
【0107】
さらに、本実施形態では、行動予測部727は、走行計画部24が短期の走行計画として算出した経路も取得する。なお、以下の実施形態では、走行計画部24が短期の走行計画として算出した経路を候補経路とする。「候補」経路とする理由は、短期の走行計画として算出した経路は、自動運転に用いる経路の候補であって、責任判断部729における判断結果によっては自動運転に用いない可能性もあるからである。候補経路は、自車が走行する位置に加えて、経路上の各位置を通過する時刻も含んで表現される。同じ位置であっても、時刻が異なれば周辺移動体との距離が異なるので、同じ位置であっても、時刻が異なると、事故の可能性が異なるからである。
【0108】
行動予測部727が予測する予測対象移動体の行動の一例として、自車について予測する行動を説明する。まず、現時点の自車の挙動に基づき、単位経過時間が経過したときの自車の位置を予測する。その後、走行計画部24から取得した候補経路を走行するように車両制御ECU6が自車の挙動を制御するとして、自車の行動を予測する。ただし、周辺移動体を回避する経路に変更する必要があるなど、走行環境により、自車が候補経路を走行できない状況になるか否かも予測して、自車の行動を予測する。
【0109】
周辺車両の行動は、受信情報取得部212から、周辺車両が走行する予定の経路が取得できる場合には、自車と同様、その経路を走行するように周辺車両が制御されることを基本として周辺車両の行動を予測する。ただし、周辺車両の周囲に存在する障害物により、周辺車両が走行予定の経路を走行できるかどうかも判断して、周辺車両の行動を予測する。
【0110】
走行予定の経路が取得できない周辺車両、歩行者など、移動予定経路が取得できない予測対象移動体の場合には、現時点での予測対象移動体の移動速度と移動方向に基づいて、その予測対象移動体の行動を予測する。
【0111】
また、行動予測部727は、サブ機能ブロックとして、図9に示す逸脱予測部7271、ブレーキ能力推定部7272、近接推定部7273も備える。行動予測部727は、これらサブ機能ブロックの実行結果も用いて、予測対象移動体の行動を予測する。図9については後述し、先に、シーン判定部728、責任判断部729、記憶媒体730を説明する。
【0112】
シーン判定部728は、現在の自車位置及び候補経路上の各位置における事故責任ルールを取得する。換言すれば、シーン判定部728は、現在の自車位置及び候補経路上の各位置において、どういった事故責任ルールを採用すべきかを判定する。
【0113】
事故責任ルールには、場所により異なる事故責任ルールと、場所によらない事故責任ルールとが含まれる。場所により異なる事故責任ルールの一例として、交差道路における優先関係を例示できる。この優先関係は、道路形状あるいは道路標識から定まる。また、場所により異なる事故責任ルールの他の例としては、場所ごとに定められている交通ルールがある。場所ごとに定められている交通ルールには、たとえば、制限速度がある。場所によらないルールには、たとえば、速度に応じて定まる必要車間距離がある。
【0114】
候補経路が示す種々の地点での場所により異なる事故責任ルールを取得するために、シーン判定部728は候補経路を取得する。ただし、候補経路の長さを考慮して、場所により異なる事故責任ルールを取得するようにすれば、シーン判定部728は、候補経路を取得する必要はない。
【0115】
責任判断部729は、行動予測部727が予測した行動をもとに、自車が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する自車の責任を判断する。責任判断部729は、この判断をするために、行動予測部727が予測した予測対象移動体の行動を取得するとともに、シーン判定部728が取得した事故責任ルールを、シーン判定部728から取得する。そして、行動予測部727が予測した予測対象移動体の行動を、シーン判定部728が取得した事故責任ルールに当てはめることで、自車が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する自車の責任を判断する。
【0116】
この責任は、自車と障害物との間に、実施形態1で説明した安全距離が確保できているかどうかを1つの指標として判断する。したがって、責任判断部729は、実施形態1で説明した確認部25を含んだ構成である。
【0117】
潜在的な事故に対する責任は、値(以下、潜在事故責任値)として表すことができる。自車の潜在事故責任値をα%とすれば、自車との間で潜在的な事故を想定する周辺移動体の責任の程度も、100-α(%)などの数値で表すことができる。
【0118】
上記潜在事故責任値は、たとえば、特許文献1に開示されている数学的公式モデルなど、事前に設定した計算式から算出することができる。また、行動予測部727が予測した自車及び周辺移動体の行動と、事故責任ルールとから潜在事故責任値が定まるマップを用いて潜在事故責任値を決定することができる。また、潜在的な事故に対する責任を数値で表さずに、責任の有無のみを決定してもよいし、潜在事故責任値を閾値と比較して、結果として責任の有無を決定する構成でもよい。
【0119】
責任判断部729は、自車が候補経路を走行しても、潜在的な事故の責任が自車に生じないと判断した場合に、自動運転機能部26にその候補経路を自車が走行する経路として指示する。走行計画部24が1つのみ候補経路を出力する場合であって、責任判断部729は、その候補経路を自車が走行すると、潜在的な事故に対する責任を自車が有すると判断する場合には、走行計画部24に候補経路の再計算を指示する。
【0120】
また、走行計画部24が、同じ時間帯に走行する候補経路として複数の候補経路を出力する場合には、責任判断部729は、それら複数の候補経路について、それぞれ、潜在的な事故に対する自車の責任を判断する。複数の候補経路のすべてについて、潜在的な事故に対する責任を自車が有すると判断する場合には、走行計画部24に候補経路の再計算を指示する。複数の候補経路のうち2つ以上の候補経路に対して、潜在的な事故に対する責任が自車に無いと判断する場合、事前に決定した基準に基づき1つの候補経路を選択する。そして、選択した候補経路を自動運転機能部26に出力する。事前に設定した基準は、たとえば、中長期の走行計画と最も整合するという基準、速度変化が最も少ないという基準など、種々の基準を設定しておくことができる。この基準は、複数の候補経路の優先順位を判断する基準と考えることもできる。
【0121】
なお、責任判断部729は、潜在的な事故に対する責任を自車が有すると判断する場合に、走行計画部24に候補経路の再計算を指示することに代えて、単に判断対象の候補経路に沿った走行を禁止するだけでもよい。判断対象の候補経路に沿った走行が禁止された場合に、走行計画部24は、候補経路の禁止に対応して、候補経路の再計算を実施するか、再計算を実施せずにより低いレベルの手動運転に切り替えるかを選択してもよい。
【0122】
記憶媒体730は、書き込み可能かつ不揮発性であって、自動運転装置702に接続される外部装置に記憶内容を出力できる。また、記憶媒体730自体が自動運転装置702から取り外し可能になっており、外部装置に装着できるようになっていてもよい。記憶媒体730は、たとえば、フラッシュメモリである。
【0123】
記憶媒体730は、行動予測部727が予測した予測対象移動体の行動を記憶する。記憶媒体730に行動予測部727が予測した予測対象移動体の行動を記憶しておくことにより、後で、行動予測部727が予測対象移動体の行動を正しく予測できていたかどうかを検証することができる。
【0124】
記憶媒体730には、行動予測部727が予測した予測対象移動体の行動とともに、走行計画部24が算出した候補経路も記憶することが好ましい。このようにすれば、候補経路を考慮して、行動予測部727が予測した予測対象移動体の行動の妥当性を検証できる。
【0125】
さらに、記憶媒体730には、次のうちの1つ以上が記憶されていることが好ましい。1つは、行動予測部727が予測した予測対象移動体の行動又は候補経路に対応付けられた時刻である。他の1つは、責任判断部729の判断結果である。他にも、挙動認識部7221が認識した挙動、挙動検出センサ705の検出値、シーン判定部728が取得した事故責任ルールのうちの1つ以上が記憶媒体730に記憶されていてもよい。
【0126】
<行動予測部727のサブ機能>
次に、行動予測部727が備えるサブ機能を説明する。図9に示すように、行動予測部727は、逸脱予測部7271、ブレーキ能力推定部7272、近接推定部7273を備える。
【0127】
逸脱予測部7271は、自車又は周辺車両の逸脱挙動の発生を予測する。予測部252でも自車又は周辺車両の逸脱挙動の発生を予測している。逸脱予測部7271が実行する処理は予測部252と同じとすることができる。したがって、逸脱予測部7271は、自車の挙動に関する機構の故障を検出することで、自車の逸脱挙動の発生を予測する。
【0128】
なお、送信指示部211は、逸脱予測部7271が自車の挙動に関する機構の故障をもとに逸脱挙動の発生を予測した場合、予測部252において自車の挙動に関する機構の故障を検出することで車両の逸脱挙動の発生を予測した場合と同様に扱う。すなわち、送信指示部211は、逸脱予測部7271が逸脱挙動の発生を予測した場合にも、自車の挙動に関する機構の故障を示す情報を、無線通信を介して周辺車両へ送信させる。
【0129】
したがって、周辺車両がこの車両用システム701を備えている場合、自車の車両用システム701が備える受信情報取得部212は、周辺車両から送信されてくる、その周辺車両の挙動に関する機構の故障を示す情報を受信する可能性がある。行動予測部727は、受信情報取得部212が周辺車両の挙動に関する機構の故障を示す情報を受信した場合、その周辺車両の逸脱挙動が発生することを予測する。
【0130】
また、逸脱予測部7271は、予測部252と同様、受信情報取得部212で取得する情報が示す周辺車両の走行制御に沿った挙動と挙動認識部7221で認識した挙動との乖離が規定値以上の周辺車両が存在する場合に、その周辺車両の逸脱挙動の発生を予測する。
【0131】
送信指示部211は、行動予測部727で周辺車両の逸脱挙動の発生を予測した場合にも、その周辺車両の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を周辺車両へ送信させる。さらに、周辺車両がこの車両用システム701を備えている場合、自車の車両用システム701が備える受信情報取得部212は、周辺車両から送信されてくる、その周辺車両にとっての周辺車両の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を取得する可能性がある。
【0132】
行動予測部727は、受信情報取得部212が、周辺車両から、その周辺車両にとっての周辺車両(以下、他車)の逸脱挙動の発生が予測されることを示す情報を取得した場合、その他車に逸脱挙動が発生すると予測する。
【0133】
ブレーキ能力推定部7272は、自車及び他車のブレーキ能力を推定する。ブレーキ能力は、車両を減速させる能力である。図10に、ブレーキ能力推定部7272のサブ機能ブロックを示す。ブレーキ能力推定部7272は、路面状態決定部7274、自車ブレーキ能力推定部7275、他車ブレーキ能力推定部7276を備える。
【0134】
路面状態決定部7274は、自車が走行する道路の路面状態を逐次決定する。路面状態には、路面形状、路面傾斜、路面濡れ度が含まれる。図11に、路面状態決定部7274の処理の一例を示す。図11に示す例では、路面状態を決定するセンサとして、カメラとLidarを利用する。これらは挙動検出センサ705に含まれているものとする。路面状態決定部7274は、図11に示す処理を、自車が走行している間、周期的に繰り返し実行する。
【0135】
S21では、カメラ画像を取得する。このカメラ画像は、自車が走行している道路の画像を含んでいる画像である。S22では、Lidarによる計測値を取得する。S23では、S21及びS22で取得したデータをもとに、路面形状、路面傾斜、及び、路面濡れ度を算出する。路面形状には、路面の上下方向の形状、換言すれば、路面粗さが含まれる。路面粗さは、路面の材質を区別できる程度の精度で検出することが好ましい。路面の材質は、たとえば、アスファルト、石畳、砂などである。Lidarの計測値は、これらの路面の材質を区別できる精度で、路面粗さを検出できる場合がある。また、代替的に、カメラ画像を解析して路面の材質を決定し、路面の材質から路面粗さを推定してもよい。
【0136】
路面傾斜は、カメラ画像、Lidarの計測値のいずれからでも決定することができる。また、挙動検出センサ705に傾斜センサが含まれていれば、その傾斜センサの検出値をもとに、路面傾斜を決定してもよい。
【0137】
路面濡れ度は、カメラ画像を解析して決定することができる。また、Lidarの計測値から路面の濡れ度を算出することもできる。また、カメラ画像、Lidarの計測値、及び、他のセンサ値を組み合わせ、つまり、センサフュージョンにより、路面濡れ度を算出してもよい。路面形状、路面傾斜も、複数種類のセンサ値を組み合わせて決定してもよい。
【0138】
説明を図10に戻す。自車ブレーキ能力推定部7275は、自車のブレーキ能力を逐次推定する。前述したように、ブレーキ能力は、車両を減速させる能力である。自車のブレーキ能力は、自車が備えるブレーキ装置の能力に基づいて定まる。しかし、自車のブレーキ能力は、自車が備えるブレーキ装置の能力だけでは正確には定まらない。
【0139】
ブレーキ装置の能力が全く同じであっても、路面状態が異なれば、同じ車速から減速したときの制動距離は変化する。また、自車のブレーキ装置の能力が全く同じであっても、タイヤの性能が異なれば同じ車速から減速したときの制動距離は変化する。また、ブレーキ装置の能力が全く同じであっても、車重が変化すれば同じ車速から減速したときの制動距離は変化する。つまり、ブレーキ装置の能力が全く同じであっても、自車のブレーキ能力は変化する。なお、本明細書では、ブレーキパッドなどを備えたブレーキ装置と、車両内において、そのブレーキ装置と機械的に連結されてブレーキ装置の制動力により回転速度が減少する部材を合わせてブレーキ系装置とする。ブレーキ装置はフットブレーキが踏まれたときに作動する装置である。ただし、ブレーキ装置は、自動で作動させることもできる。ブレーキ系装置には、ブレーキ装置とタイヤとが含まれる。
【0140】
さらには、ブレーキパッドの摩耗等があるのでブレーキ装置それ自体の能力も変化する。そこで、自車ブレーキ能力推定部7275により、自車のブレーキ能力を逐次推定するのである。
【0141】
本実施形態では、路面状態決定部7274が決定した路面状態をもとに、自車のブレーキ能力を推定する。たとえば、路面状態からブレーキ能力が定まるブレーキ能力推定マップを予め記憶しておき、路面状態決定部7274が決定した路面状態とそのブレーキ能力推定マップとを用いて、自車のブレーキ能力を推定する。また、基準となるブレーキ能力を、路面状態で補正するブレーキ能力推定関数を予め記憶しておき、路面状態決定部7274が決定した路面状態とそのブレーキ能力推定関数とを用いて、自車のブレーキ能力を推定してもよい。
【0142】
予め記憶するブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数は、実際に実験をしたり、シミュレーションをしたりして決定する。実験やシミュレーションを経て決定されるブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数は、ブレーキ系装置の特性が反映されたものとなる。したがって、これらブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数を用いることで、自車が備えるブレーキ系装置の特性に基づいて、自車のブレーキ能力を推定していることになる。
【0143】
なお、本実施形態では、ブレーキ能力の推定において、車重の変化及びブレーキ系装置の能力の変化は考慮しない。これらを考慮して自車のブレーキ能力を推定する例は、実施形態9以降で説明する。また、本実施形態では、ブレーキ能力の推定において、車重の変化及びブレーキ系装置の能力の変化は考慮しないので、車重の変化及びブレーキ系装置の能力の変化を考慮する場合に比較して、ブレーキ能力の精度は劣る。
【0144】
そこで、ブレーキ能力を、正規分布などの分布を持ったものとして表してもよい。たとえば、分布の横軸はブレーキ能力であり、縦軸は確率である。また、横軸を、ある車速のときの制動距離、縦軸をその制動距離で停止できる確率とする分布により、ブレーキ能力を表してもよい。後者の場合、そのときの自車の車速に応じて横軸である制動距離を補正する。こうすることで、ブレーキ能力をもとに、ある制動距離で停止できる確率の分布を得ることができる。
【0145】
また、ブレーキ能力は、上記とは異なり、分布を持たない1つの値としてもよい。この場合には、車重やブレーキ系装置の能力などは、標準的な値であるとして、ブレーキ能力を推定する。あるいは、車重やブレーキ系装置の能力などを、ブレーキ制御において一般的に考慮すべき最悪値に設定しておいてもよい。
【0146】
他車ブレーキ能力推定部7276は、自車の前方車両のブレーキ能力を逐次推定する。自車の前方車両のブレーキ能力も路面状態などにより変化するので、他車ブレーキ能力推定部7276が、自車の前方車両のブレーキ能力を逐次推定する。自車の前方車両には、自車と同じ車線を走行する直近の前方車両が含まれる。その他に、自車が走行する車線に隣接する車線を走行する前方車両を含ませてもよい。
【0147】
他車ブレーキ能力推定部7276が、前方車両のブレーキ能力を推定する方法は、自車ブレーキ能力推定部7275と同じでよい。すなわち、ブレーキ能力推定マップやブレーキ能力推定関数を用いて、前方車両のブレーキ能力を逐次推定する。なお、他車ブレーキ能力推定部7276が用いるブレーキ能力推定マップやブレーキ能力推定関数は、自車両用のマップや関数と同じあってもよいが、前方車両用の専用のものでもよい。また、前方車両用のブレーキ能力推定マップやブレーキ能力推定関数は、1種類ではなく、車種別に設けられていてもよい。
【0148】
さらには、自車のブレーキ能力と同様、前方車両のブレーキ能力も、正規分布などの分布を持ったものとして表してもよい。また、これとは異なり、前方車両のブレーキ能力も、分布を持たない1つの値としてもよい。
【0149】
[ブレーキ能力を推定するまでの処理順序]
次に、ブレーキ能力を推定するまでの処理順序を、図12を用いて説明する。ブレーキ能力は、自車が走行中、逐次、推定する。S31では、挙動認識部7221が、前方車両との間の車間距離と、前方車両の速度を決定する。前方車両との車間距離は、たとえば、Lidarあるいはカメラの検出値から検出することができる。前方車両の速度は、前方車両の位置の時間変化から決定する。また、上記車間距離の変化から、自車に対する前方車両の相対速度を決定し、この相対速度と、次に説明する自車の速度とから、前方車両の速度を決定してもよい。
【0150】
S32では、挙動認識部7221が、自車の速度を決定する。S33では、自車ブレーキ能力推定部7275が自車のブレーキ能力を推定する。S34では、他車ブレーキ能力推定部7276が、前方車両のブレーキ能力を推定する。ブレーキ能力の推定は、図13に示す処理S40により行う。
【0151】
S41では、路面形状を取得する。S42では、路面傾斜を取得する。S43では、路面濡れ度を取得する。これら路面形状、路面傾斜、路面濡れ度は、図11を用いて説明したように路面状態決定部7274が算出している。
【0152】
S44では、S41~S43で取得した路面形状、路面傾斜、路面濡れ度と、前述した、ブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数とから、ブレーキ能力を推定する。ブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数として、自車用のものを用いれば自車のブレーキ能力が推定できる。ブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数として、前方車両用のものを用いれば前方車両のブレーキ能力が推定できる。
【0153】
説明を図9に戻す。近接推定部7273は、環境情報取得部724で取得する環境情報を用いて、自車と障害物との近接が発生する潜在的な可能性を推定する。この可能性は、一例として確率(以下、潜在発生確率)により表すことができる。以下の説明は、上記可能性の具体例である潜在発生確率を使い説明を進める。ただし、上記可能性は、高中低といったレベルにより表現するなど、確率以外の表現手法により表してもよい。
【0154】
潜在発生確率は、潜在的な自車と歩行者との近接の発生確率に限定する構成としてもよい。近接推定部7273は、環境情報と潜在発生確率との相関関係に基づき、環境情報を用いて潜在発生確率を算出する。例えば、潜在発生確率は、歩行者の飛び出しの可能性Pが高くなるほど高くなると考えられる。図14のAに示すように、歩行者の飛び出しの可能性Pは、人がより多く集まる場所との距離が近くなるのに応じて高くなると考えられる。よって、近接推定部7273は、自車の車両位置が、学校、駅、イベント会場等の人の集まる施設の位置に近くなるのに応じて、潜在発生確率を高く算出すればよい。学校、駅の位置は、地図情報取得部7241で取得する地図データから特定すればよい。イベント会場の位置は、インフラ情報取得部7242で取得するイベント情報から特定すればよい。自車の車両位置は、ロケータ3から取得すればよい。
【0155】
このように、潜在発生確率を高くする要因(以下、対象要因)が場所である場合には、対象要因と自車との距離が長くなるのに応じて、潜在発生確率を低く算出すればよい。言い換えると、近接推定部7273は、潜在発生確率を算出するのに用いる環境情報に、潜在発生確率を高くする要因となる場所の情報を含む場合には、その場所と自車との距離が長くなるのに応じて、潜在発生確率を低く算出すればよい。
【0156】
また、潜在発生確率は、図14のB、Cに示すように、時間帯によっても変化すると考えられる。例えば、対象要因が学校である場合には、登校時刻と下校時刻との時間帯に、歩行者の飛び出しの可能性Pが図14のBに示すように2度のピークに達すると考えられる。対象要因がイベント会場である場合には、イベントの時間帯前後に、歩行者の飛び出しの可能性Pが図14のCに示すように2度のピークに達すると考えられる。対象要因が駅である場合には、時間帯別の平均利用者数に応じて、歩行者の飛び出しの可能性Pが変化すると考えられる。よって、近接推定部7273は、対象要因別に、時間帯に応じて潜在発生確率を算出すればよい。学校の登下校時刻、駅の時間帯別の平均利用者数は、インフラ情報取得部7242で取得する施設の利用情報から特定すればよい。イベント終了時刻は、インフラ情報取得部7242で取得するイベント情報のうちのイベントの時間帯から特定すればよい。なお、対象要因が駅の場合には、歩行者以外の移動体の飛び出しの可能性Pも、平均利用者数の多い時間帯ほど多くなると考えられる。
【0157】
潜在発生確率は、天候によっても変化すると考えられる。例えば、天候が雪の場合には、移動体が停止しきれずに飛び出してきたり、自車の制動距離が延びたりする可能性が高くなると考えられる。よって、近接推定部7273は、天候が雪の場合に、天候が雪でない場合よりも高い潜在発生確率を算出すればよい。また、天候が雨の場合には、送り迎えのために駅等の施設において歩行者以外の移動体の飛び出しの可能性も高くなったり、自車の制動距離が延びたりすると考えられる。よって、近接推定部7273は、天候が雨の場合に、駅等の対象要因について、天候が雨でない場合よりも高い潜在発生確率を算出すればよい。
【0158】
潜在発生確率は、気温によっても変化すると考えられる。例えば、路面が凍結するほど気温が低い場合には、移動体が停止しきれずに飛び出してきたり、自車の制動距離が延びたりする可能性が高くなると考えられる。よって、近接推定部7273は、気温が、路面が凍結すると推定される閾値温度以下の場合に、この閾値温度よりも気温が高い場合よりも高い潜在発生確率を算出すればよい。
【0159】
潜在発生確率は、走行する場所によっても変化すると考えられる。例えば、人の多い地域であるほど、歩行者、自転車が飛び出してくる可能性が高くなると考えられる。よって、近接推定部7273は、自車の走行する地域が、人の多い地域であるほど、高い潜在発生確率を算出すればよい。一例として、地域の種別は、人の多い地域順に、繁華街>郊外路>高速道路とすればよい。また、カーブ曲率の大きい道路ほど、対向車線の自動二輪車、自動車が自車線にはみ出してくる可能性が高くなると考えられる。よって、近接推定部7273は、自車の走行する道路が、カーブ曲率の大きい道路であるほど、高い潜在発生確率を算出すればよい。他にも、下りの縦断勾配が大きくなるほど、自車の制動距離が延びると考えられる。よって、近接推定部7273は、自車の走行する車線の下りの縦断勾配が大きくなるのに応じて、高い潜在発生確率を算出すればよい。
【0160】
潜在発生確率は、片側複数車線道路における車線ごとでも異なると考えられる。例えば、歩道に近い車線であるほど、歩行者、自転車が飛び出してくる可能性が高くなると考えられる。よって、近接推定部7273は、自車の走行する道路が片側複数車線道路である場合に、自車の走行する車線が歩道に近い車線であるほど、高い潜在発生確率を算出すればよい。
【0161】
また、近接推定部7273は、挙動検出センサ705が検出するセンシング情報も補強的に用いて、潜在発生確率を算出する構成としてもよい。歩行者の飛び出しの可能性Pは、図14のD、Eに示すように、歩行者の密度、平均身長によっても変化すると考えられる。歩行者の密度とは、所定の範囲あたりの歩行者の数である。例えば、近接推定部7273は、挙動検出センサ705で検出する周辺物体のうち、走行環境認識部722で歩行者と認識している移動体のセンシング情報から、センシング範囲あたりの歩行者の数(つまり、密度)及び/又は平均身長を算出すればよい。
【0162】
また、例えば、図14のDに示すように、歩行者の密度が高くなるのに応じて、歩行者の飛び出しの可能性Pも高くなると考えられる。また、歩行者が子供であるほど飛び出しの可能性も高くなると考えられる。よって、図14のEに示すように、歩行者の平均身長が低くなるのに応じて、歩行者の飛び出しの可能性Pも高くなると考えられる。従って、近接推定部7273は、歩行者の密度が高くなるのに応じて、高い潜在発生確率を算出すればよい。また、近接推定部7273は、歩行者の平均身長が短くなるのに応じて、高い潜在発生確率を算出すればよい。
【0163】
また、近接推定部7273は、複数の要因を総合して潜在発生確率を算出してもよい。例えば、図14を例に挙げると、対象要因が学校の場合に、図14のA、B、D、Eの飛び出し可能性をそれぞれ尤度LA、LB、LD、LEとして統合して潜在発生確率を算出してもよい。例えば、尤度LA、LBを統合した尤度X1を、X1=LA×LB/{LA×LB+(1-LA)×(1-LB)}の式によって算出する。続いて、尤度X1、LDを統合した尤度X2を、X2=X1×LD/{X1×LD+(1-X1)×(1-LD)}の式によって算出する。最後に、尤度X2、LEを統合した尤度X3を、X3=X2×LE/{X2×LE+(1-X2)×(1-LE)}の式によって算出する。そして、得られた尤度X3を、A、B、D、Eの尤度を統合した潜在発生確率とする。なお、総合する要因の組み合わせは、前述した例に限らない。
【0164】
説明を図9に戻す。サブ機能として逸脱予測部7271、ブレーキ能力推定部7272、近接推定部7273を備えている行動予測部727は、サブ機能の処理結果も考慮して予測対象移動体の行動を予測する。
【0165】
逸脱予測部7271が、自車又は周辺車両の少なくとも一方について逸脱挙動を予測した場合、逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動を予測する。前述したように、予測対象移動体は、自車と周辺移動体とを含んでいる。
【0166】
自車が予測対象移動体であり、自車の逸脱挙動を予測した場合には、逸脱挙動により自車がどのような挙動になるかを予測する。自車が予測対象移動体であり、周辺車両の逸脱を予測した場合には、周辺車両が逸脱挙動をすると、その周辺車両との近接を回避するために、自車がどのような挙動が必要になるかを予測する。
【0167】
次に、予測対象移動体が周辺移動体である場合を説明する。周辺車両の逸脱挙動を予測した場合、その逸脱挙動を予測した周辺車両を予測対象移動体として、逸脱挙動をした場合のその周辺車両の行動を予測する。また、逸脱挙動を予測した周辺車両の周囲に存在する移動体(車両、人など)が、逸脱挙動をする周辺車両の影響でどのように行動するかを予測する。
【0168】
また、行動予測部727は、サブ機能としてブレーキ能力推定部7272を備えているので、逸脱挙動を予測するかどうかによらず、ブレーキ能力推定部7272が推定したブレーキ能力に基づいて、ブレーキ能力を推定した車両の行動を予測する。ブレーキ能力を推定した車両は、具体的には自車と前方車両である。たとえば、自車については、周辺移動体との距離が近くなり、減速が必要になることが予測される場合、推定したブレーキ能力に従って減速すると予測する。また、推定したブレーキ能力に応じて、減速を開始する際の車間距離、速度も変更して、自車の行動を予測する。前方車両についても、前方車両の周囲に存在する障害物との距離が近くなるなどの理由により減速が必要になる場合には、推定したブレーキ能力に従って、減速を開始する際の車間距離、速度、減速開始後の速度変化を予測する。さらに、推定したブレーキ能力で予測した自車と前方車両の行動を考慮して、それら自車と前方車両の周囲に存在する移動体の行動を予測する。
【0169】
また、行動予測部727は、サブ機能として近接推定部7273を備えている。近接推定部7273は、自車と障害物との近接が発生する潜在的な可能性を推定している。行動予測部727は、近接推定部7273が推定する上記可能性を考慮して、予測対象移動体の行動を予測する。たとえば、予測対象移動体である自車については、上記可能性が高いほど、速度を制限する行動をすると予測する。また、自車は、潜在発生確率が高いほど車間距離を長くすると予測してもよい。
【0170】
また、行動予測部727は、予測対象移動体の行動を、確率分布を伴って予測することもできる。確率分布の一例は、予測対象移動体の行動を予測する各時刻における、その予測対象移動体が存在する位置の確率分布である。そして、上記可能性が高いほど確率分布を広くした予測対象移動体の行動予測をしてもよい。予測対象移動体が周辺車両である場合についても、自車と同様、上記可能性が高いほど、速度を制限する、車間距離を長くする、確率分布を広くする、といった予測をしてもよい。
【0171】
<実施形態7のまとめ>
実施形態7の車両用システム701は、自車が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する責任を判断する責任判断部729を備えている。したがって、自車が候補経路を走行して事故が生じてしまった場合に、その事故の責任が自車に生じるかどうかを事前に判断できる。なお、自動運転装置702が事故の責任を追うことが定められているレベルの自動運転制御により候補経路を自車に走行させるのであれば、自動運転装置702に事故の責任が生じるかどうかを事前に判断できることになる。
【0172】
加えて、この自動運転装置702が備える行動予測部727は、逸脱予測部7271を備えている。逸脱予測部7271は、自車又は周辺車両の逸脱挙動の発生を予測する。そして、行動予測部727は、逸脱予測部7271が自車又は周辺車両が走行制御に沿った挙動を逸脱する予測をした場合には、予測対象移動体の行動として、上記逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動を予測する。逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動も予測するので、予測の信頼性が向上する。したがって、自車の走行中に生じる可能性がある種々の危険を低減しやすくなる。
【0173】
また、行動予測部727は、サブ機能としてブレーキ能力推定部7272を備える。この構成により、行動予測部727は、自車又は周辺車両の逸脱挙動を考慮するだけでなく、自車及び前方車両のブレーキ能力も逐次推定して、推定したブレーキ能力に基づいて自車及び前方車両の行動を予測している。これによっても、自車及び前方車両の周辺に存在する移動体の行動予測の信頼性が向上する。
【0174】
さらに、行動予測部727は、サブ機能として近接推定部7273を備える。この構成により、行動予測部727は、環境情報から判断できる潜在的な自車と障害物との近接可能性を考慮して、自車などの予測対象移動体の行動を予測することができる。これによっても、予測対象移動体の行動予測の信頼性が向上する。
【0175】
また、実施形態7では、行動予測において逸脱挙動があった場合の予測対象移動体の行動が予測されることにより、逸脱挙動を考慮しない場合には見つけることが困難だった潜在的な事故が、責任判断の対象として抽出可能となる。ここで、逸脱挙動を考慮しない場合には見つけることが困難だった潜在的な事故には、自車に並走する周辺車両の側面に自車が突然切り込んで突っ込む事故のような、正常挙動時には発生し得ない事故ないしは正常挙動時には発生確率が極めて小さな事故が一例として挙げられる。こうして抽出された潜在的な事故に対して、責任判断部729が責任を判断し、潜在的な事故に対する責任を自車が有すると判断される場合に潜在的事故を誘発し得る候補経路の採用を中止することにより、自車に責任が生じる事故の発生を抑制することができる。
【0176】
(実施形態8)
次に実施形態8を説明する。図15に実施形態8の車両用システム801の構成図を示す。実施形態8の車両用システム801は、自動運転装置802の構成のうち自動運転部823の構成が、実施形態7の自動運転部723と相違する。
【0177】
自動運転部823は、実施形態7の自動運転部723と同様、走行計画部24を備える。また、自動運転部823は、行動予測部827、シーン判定部828、責任判断部829を備える。
【0178】
走行計画部24は、実施形態7の走行計画部24と同様、候補経路を算出する。ただし、実施形態7では、候補経路は行動予測部727とシーン判定部728に入力されていたのに対し、実施形態8では、候補経路は、行動予測部827、シーン判定部828には入力されず、責任判断部829に入力される。
【0179】
行動予測部827は、走行環境認識部722が認識した走行環境を取得するが、候補経路は取得せずに予測対象移動体の行動を予測する。したがって、自車、周辺車両、その他の移動体の現時点での挙動から、予測対象移動体の行動を予測することになる。たとえば、自車及び周辺車両については、現時点での速度と加速度に基づいて今後の速度を予測し、現時点での操舵角を維持するとして今後の進行方向を予測する。これらに加えて、走行環境認識部722で認識する種々の走行環境も考慮して予測対象移動体の高度を予測する。環境情報を考慮して予測する行動を例示すると、たとえば、信号の灯色により停止あるいは減速することが予測されるとか、前方車両の存在により自車は減速すると予測されるとか、道路が曲がっているので道路に沿って進行方向が変化するなどである。なお、行動予測部827が予測対象移動体の行動を予測する時間は、実施形態7の行動予測部727と同じ時間である。
【0180】
シーン判定部828も走行環境認識部722が認識した走行環境を取得するが、候補経路は取得しない。シーン判定部828は、現在の自車位置及び現在の自車位置周辺の事故責任ルールを取得する。自車位置周辺は、行動予測部827が予測した予測対象移動体の行動により、その予測対象移動体が行動できる範囲を含む広さである。
【0181】
責任判断部829は、走行計画部24が算出した候補経路、行動予測部827が予測した予測対象移動体の行動、シーン判定部828が取得した事故責任ルールを取得する。そして、責任判断部829は、行動予測部827が予測した予測対象移動体の行動を参照して、自車が候補経路を走行したときの、自車を含む予想対象移動体の行動を決定する。さらに、その決定した行動を、シーン判定部828から取得した事故責任ルールに当てはめることで、自車が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する自車の責任を判断する。
【0182】
<実施形態8のまとめ>
この実施形態8では、責任判断部829は候補経路を取得する一方、行動予測部827は候補経路を取得せずに予測対象移動体の行動を予測する。このようにしても、実施形態7の責任判断部729と同様、自車が候補経路を走行した場合に想定される潜在的な事故に対する自車の責任を判断できる。
【0183】
加えて、実施形態8の構成とすると、仮に事故が生じた後、その事故を検証する必要が生じた場合に、候補経路に問題があったのか、行動予測部827が予測した行動が不正確であったのかを検証しやすくなる。
【0184】
(実施形態9)
次に、実施形態9を説明する。実施形態9では、図16に示すように、ブレーキ能力推定部7272は、特性更新部7277、自車ブレーキ能力推定部7275、他車ブレーキ能力推定部7276を備える。
【0185】
特性更新部7277は、自車におけるブレーキ影響因子の特性を逐次更新する。具体的には、タイヤの状態、車重、ブレーキパッドの摩耗状態を逐次更新する。本実施形態でのタイヤの状態は、具体的には、タイヤの摩耗状態である。挙動検出センサ705として、ドライバーにとって死角となりやすい車両周縁部を撮影するために、ミラー下部などにカメラが設置されることがある。車両周縁部を撮影するカメラには、タイヤが撮影範囲に入っていることがある。その場合、カメラの画像を解析することで、タイヤの摩耗状態を推定することができる。また、ブレーキ踏み込み量、ブレーキ油圧など、自車を減速させる作動と減速度の関係の変化から、タイヤの摩耗状態を推定してもよい。
【0186】
車重は、サスペンションに荷重センサを取り付けることにより、基準となる重量からの変化を測定することができる。基準となる重量は、車両の型式により定まる重量である。ブレーキパッドの摩耗状態は、ブレーキパッドの交換時からの走行距離により推定することができる。また、ブレーキパッドの摩耗状態を検出するセンサを設け、そのセンサの検出値から、ブレーキパッドの摩耗状態を推定してもよい。また、自車を減速させる作動と、減速度の関係の変化は、タイヤの摩耗状態だけでなく、ブレーキパッドの摩耗状態も影響する。そこで、自車を減速させる作動と減速度の関係の変化から、タイヤの摩耗状態とブレーキパッドの摩耗状態を合わせて推定してもよい。
【0187】
なお、特性更新部7277がこれらの特性、すなわち、タイヤの摩耗状態、ブレーキパッドの摩耗状態、車重を更新する頻度は、たとえば、1走行毎とすることができる。1走行は、イグニッションオンからイグニッションオフまでの走行である。特性更新部7277が推定したこれらの特性は、所定の記憶部に記憶済みの特性に代えて上書き保存する。
【0188】
図17に、実施形態9において自車ブレーキ能力推定部7275が実行する処理を示す。S51では、特性更新部7277から自車のタイヤの摩耗状態を取得する。S52では、自車の車重を取得する。S53では、エンジンブレーキ可否を取得する。自車の駆動力源がモータのみであり、自車にエンジンが搭載されていない場合には、エンジンブレーキを作動させることはできない。ブレーキ時には、アクセルはオフになるので、自車に駆動力源としてエンジンが搭載されていれば、エンジンブレーキは作動する。しかし、S53では、それよりも強い制動力をエンジンブレーキにより発生させることができるかを判断するための情報を取得する。アクセルオフ時に、変速比を大きくできれば、変速比を変えない場合よりもエンジンブレーキによる制動力を大きくすることができる。そこで、S53では、駆動力源としてエンジンが搭載されており、かつ、変速比が制御装置により変更可能であるかどうかを示す情報を取得する。
【0189】
ブレーキ時に、変速比を大きくしてエンジンブレーキを作動させることができれば、ブレーキ能力が高くなる。以下では、ブレーキ時に、変速比を大きくしてエンジンブレーキを作動させることを、単に、エンジンブレーキが可能であると記載する。エンジンブレーキが可能であれば、ブレーキ能力が高くなる。したがって、エンジンブレーキが可能であるかどうかは、ブレーキ能力に影響を与えるブレーキ影響因子の特性である。
【0190】
S54では、ブレーキパッドの摩耗状態を取得する。タイヤの摩耗状態、車重、ブレーキパッドの状態も、ブレーキ能力に影響を与える。よって、これらタイヤの摩耗状態、車重、ブレーキパッドの状態も、ブレーキ影響因子の特性である。
【0191】
S55では、S51~S54で取得した情報をもとに、自車のブレーキ能力を推定する。自車のブレーキ能力を推定するために、実施形態7と同様、S51~S54で取得する情報からブレーキ能力を推定することができるブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数を予め記憶しておく。これら、ブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数と、S51~S54で取得した情報とをもとに、自車のブレーキ能力を推定する。なお、実施形態9でも、自車のブレーキ能力を、正規分布などの分布をもったものとしてもよい。
【0192】
上記ブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数は、エンジンブレーキが可能である場合には、エンジンブレーキが使用できない場合よりも、ブレーキ能力が高いと推定する。エンジンブレーキの可否により、どの程度、ブレーキ能力を変化させるかの一例を以下に示す。たとえば、ブレーキ能力を分布をもったものとする場合、エンジンブレーキが可能である場合、エンジンブレーキが使用できない場合よりも、分布の中心値を事前に設定した一定値だけ、ブレーキ能力が高い側へ変更する。
【0193】
図18に、実施形態9において他車ブレーキ能力推定部7276が実行する処理を示す。S61では前方車両のタイヤの摩耗状態を推定する。たとえば、前方車両が停止しているときに、前方車両のタイヤを自車が備える前方カメラで撮影できれば、前方車両のタイヤの摩耗状態を推定することができる。
【0194】
S62では、前方車両の車重を推定する。前方車両の車重は、カメラで前方車両を撮影できる場合、前方車両の車種あるいは型式をもとに、その車種あるいは型式の標準的な車重を取得することができる。また、カメラで撮影した前方車両の画像から、前方車両の乗員数を推定する。この乗員数に一人当たりの標準的な体重を乗じて、乗員の総重量を推定する。そして、標準的な車重と乗員の総重量を足した値を、車重として推定する。前方車両のタイヤの摩耗状態及び車重も、1走行毎、かつ、前方車両が別の車両に変更になる毎に推定すればよい。
【0195】
S63では、S61及びS62で取得した値をもとに、前方車両のブレーキ能力を推定する。前方車両のブレーキ能力を推定するために、実施形態7と同様、S61、S62で取得する情報からブレーキ能力を推定することができるブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数を予め記憶しておく。なお、前方車両については、ブレーキパッドの状態は取得せず、かつ、ブレーキ能力推定マップあるいはブレーキ能力推定関数も、前方車両のブレーキパッドの摩耗状態を必要とせずに、前方車両のブレーキ能力を推定できるマップあるいは関数としている。前方車両のブレーキパッドの摩耗状態を推定することは困難だからである。
【0196】
実施形態9においても、前方車両のブレーキ能力を、正規分布などの分布をもったものとしてもよい。また、自車とは異なり、ブレーキパッドの摩耗状態を考慮しないので、前方車両のブレーキ能力を、分布をもったものとする場合、その分布を、自車のブレーキ能力の分布よりも広い分布としてもよい。
【0197】
<実施形態9のまとめ>
自車のブレーキ能力は、自車のブレーキ影響因子の特性により変化する。また、自車のブレーキ影響因子には、タイヤの摩耗状態、車重、ブレーキパッドの摩耗状態など、時間変化があるものがある。そこで、実施形態9では、特性更新部7277が、自車のタイヤの摩耗状態、車重、ブレーキパッドの摩耗状態を逐次更新する。そして、自車ブレーキ能力推定部7275は、自車のタイヤの摩耗状態、車重、ブレーキパッドの摩耗状態をもとに、自車のブレーキ能力を逐次推定する。よって、精度よく、自車のブレーキ能力を推定することができる。
【0198】
また、自車のブレーキ能力は、エンジンブレーキの有無によっても変化する。そこで、実施形態9の自車ブレーキ能力推定部7275は、自車のエンジンブレーキの可否も取得する。そして、エンジンブレーキが可能である場合には、エンジンブレーキが使用できない場合よりも、ブレーキ能力が高いと推定する。このように、実施形態9では、エンジンブレーキの可否も考慮してブレーキ能力を推定するので、精度よく、自車のブレーキ能力を推定することができる。
【0199】
また、本実施形態では、ブレーキ影響因子の特性の一例である、前方車両のタイヤの摩耗状態と前方車両の重量とを逐次推定しており、前方車両のブレーキ能力も、前方車両のタイヤの摩耗状態と前方車両の重量とを考慮して推定している。そして、自車及び前方車両のブレーキ影響因子の特性を考慮して逐次推定した自車のブレーキ能力と前方車両のブレーキ能力とから、前方車両と自車との間の安全距離を逐次決定している。したがって、安全距離の信頼性も向上する。
【0200】
(実施形態10)
次に、実施形態10を説明する。実施形態10では、図19に示すように、ブレーキ能力推定部7272は、これまでに説明した路面状態決定部7274、特性更新部7277を備える。実施形態10では自車ブレーキ能力推定部7275、他車ブレーキ能力推定部7276は、路面状態決定部7274、特性更新部7277の演算結果を使ってブレーキ能力を推定する。
【0201】
そして、実施形態10では、図13に代えて図20に示す処理S70を実行する。S71では、自車が走行している道路の路面と自車のタイヤとの摩擦係数μ、及び、その路面と前方車両との摩擦係数μを算出する。S71の処理は図21に詳しく示している。S711では路面形状を取得する。S712では路面傾斜を取得する。S713では路面濡れ度を取得する。これらは、路面状態決定部7274が逐次更新している。
【0202】
S714では、タイヤの摩耗状態を取得する。これは、特性更新部7277が更新している。図13と同様、図20は、自車及び前方車両のブレーキ能力を算出する。したがって、S714では、自車のタイヤの摩耗状態及び前方車両のタイヤの摩耗状態を取得する。
【0203】
S715では、自車について路面との摩擦係数μを算出するとともに、前方車両についても路面との摩擦係数μを算出する。自車についての路面との摩擦係数μ、及び、前方車両についての路面との摩擦係数μは、ともに、S711からS714で取得した値と、それらをもとに摩擦係数μを決定する予め記憶してあるマップあるいは関数とを用いて算出する。
【0204】
説明を図20に戻す。S72では、自車の車重を取得し、また、前方車両の車重を推定する。自車の車重は、特性更新部7277が更新した値を取得する。前方車両の車重は、実施形態9のS62と同様にして推定する。
【0205】
S73では、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力をそれぞれ推定する。S73を実行する時点で、自車及び前方車両に対して摩擦係数μと車重と路面傾斜を取得している。これら摩擦係数μ、車重、路面傾斜から、摩擦力を算出することができる。この摩擦力をもとに、摩擦力とブレーキ能力との間の予め設定した関係から、自車及び前方車両のブレーキ能力を推定する。また、摩擦力を算出せず、摩擦係数μ、車重、路面傾斜から、直接的に自車及び前方車両のブレーキ能力を決定できるマップあるいは関数を予め用意しておき、そのマップあるいは関数を用いて、自車及び前方車両のブレーキ能力を推定してもよい。
【0206】
<実施形態10のまとめ>
実施形態10では、自車のタイヤと路面との間の摩擦係数μを決定する。なお、摩擦係数μは路面状態の一例である。この摩擦係数μをもとに自車のブレーキ能力を推定している。自車のブレーキ能力は、自車のタイヤと路面との間の摩擦係数μにより変化する。したがって、自車のタイヤと路面との摩擦係数μを考慮しない場合に比較して、精度よく自車のブレーキ能力を推定することができる。
【0207】
また、本実施形態では、前方車両のブレーキ能力も、摩擦係数μを考慮して推定している。そして、摩擦係数μを考慮してそれぞれ逐次推定した自車のブレーキ能力と前方車両のブレーキ能力とから、前方車両と自車との間の安全距離を逐次決定している。したがって、安全距離の信頼性も向上する。
【0208】
(実施形態11)
図22に、実施形態11においてブレーキ能力推定部7272が実行する処理を示す。S81~S83は路面状態決定部7274が実行する処理である。S84、S85は、自車ブレーキ能力推定部7275及び他車ブレーキ能力推定部7276が実行する。
【0209】
S81はS21と同じであり、カメラ画像を取得する。S82はS22と同じであり、Lidarによる計測値を取得する。S83では、S81、S82で取得したカメラ画像とLidarによる計測値とから、傾斜角と、路面摩擦係数μeを算出する。傾斜角は、たとえば、Lidarによる道路傾斜の計測結果から得ることができる。路面摩擦係数μは、路面の摩擦係数を表した値である。摩擦係数は1つの物質のみでは決まらず、互いに接触する物質の組み合わせが異なれば、摩擦係数は変化する。ここでの路面摩擦係数μは、路面に接触する他方の物質が、予め設定した標準的なタイヤであるとして決定する値である。
【0210】
路面摩擦係数μは、正規分布をもつものとして表す。すなわち、式1により、路面摩擦係数μを表す。式1においてμe0は正規分布の中央値であり、σ は正規分布の分散である。
(式1) μ=N(μe0、σ
【0211】
路面摩擦係数μは、カメラ画像及びLidarによる計測から定まる路面の凹凸形状に基づいて決定する。路面の凹凸形状と摩擦係数との間には相関関係がある。そこで、路面の凹凸形状と路面摩擦係数μとの関係を予め決定しておく。この関係と、カメラ画像及びLidarによる計測から定めた路面の凹凸形状とに基づいて、路面摩擦係数μを決定する。
【0212】
S84では、自車の車重を取得し、かつ、前方車両の車重を推定する。自車の車重は特性更新部7277が逐次更新している。前方車両の車重はS62と同様にして推定する。
【0213】
S85では、ブレーキ能力を推定する。ここでのブレーキ能力の推定方法は実施形態10におけるS73とほぼ同じである。S73において用いていた摩擦係数μに代えて路面摩擦係数μを用いる点でS73と相違する。また、摩擦係数μに代えて路面摩擦係数μを用いるので、ブレーキ能力を決定するマップあるいは関数が、S73とは相違する。その他はS73と同じである。
【0214】
実施形態10では、路面状態決定部7274が決定した路面形状、路面傾斜等に基づいて、自車ブレーキ能力推定部7275、他車ブレーキ能力推定部7276が、摩擦係数μを算出していた。これに対して実施形態11では、路面状態決定部7274が傾斜角、及び、路面摩擦係数μを算出する。この違いがあるが、実施形態11でも路面状態の一例である路面摩擦係数μをもとに自車のブレーキ能力を推定する。よって、精度よく自車のブレーキ能力を推定することができる。
【0215】
また、前方車両のブレーキ能力も路面摩擦係数μeをもとに推定しているので、自車のブレーキ能力と前方車両のブレーキ能力とをもとに決定する前方車両と自車との間の安全距離の信頼性も向上する。
【0216】
(実施形態12)
実施形態12では、路面状態決定部7274は、図23に示す処理により路面形状を算出する。S91では、サスペンションの振動信号を取得する。サスペンションの振動信号は、サスペンションに取りつけた振動センサにより検出することができる。S92では、S91で取得した信号に対して独立成分解析などの手法を適用して、路面の凹凸に由来する信号を抽出する。そして、路面の凹凸に由来する信号から、路面の凹凸形状を決定する。
【0217】
路面形状の算出以外は、これまでの実施形態で説明した手法を適用できる。この実施形態12のように、自車に取り付けたセンサにより、自車に伝わる路面の振動を検出することで、間接的に路面形状を算出してもよい。
【0218】
(実施形態13)
実施形態13では、路面状態決定部7274は、図24に示す処理により路面摩擦係数μeを算出する。S101では、サスペンションの振動信号を取得する。この処理は、S91と同じである。S102では、S101で取得した信号に対して独立成分解析などの手法を適用して、路面の凹凸に由来する信号を抽出する。さらに、その路面の凹凸に由来する信号から、路面の凹凸形状を決定する。この路面の凹凸形状をもとに、S83と同様にして、路面摩擦係数μを算出する。
【0219】
路面摩擦係数μを算出した後の処理は、実施形態11と同じである。この実施形態13のように、自車に取り付けたセンサが検出した信号に基づいて、路面摩擦係数μを算出してもよい。
【0220】
(実施形態14)
実施形態14では、特性更新部7277は、図25に示す処理を逐次実行してタイヤ状態を逐次更新する。タイヤ状態は、タイヤに関する状態であって、ブレーキ能力に影響するものである。したがってタイヤ状態はブレーキ影響因子の一例である。タイヤ状態として具体的には、実施形態14ではタイヤ摩擦係数μを算出する。
【0221】
図25においてS111では、路面情報を取得する。路面情報は、具体的には、図22で説明した路面摩擦係数μである。S112では、操作情報を取得する。操作情報は、自車の運転者がブレーキペダルを踏み込んだ量あるいはそれに伴い変化するブレーキ油圧の変化量を含む。また、運転者のブレーキペダル操作により自車が減速を開始したときの自車の速度も操作情報に含まれる。
【0222】
S113では、S112において自車の運転者がブレーキペダルを操作したことで自車が停止した場合、ブレーキペダルを操作してから自車が停止するまでの制動距離を取得する。
【0223】
S114では、S111、S112、S113で取得した路面情報、操作情報、制動距離に基づいてタイヤ摩擦係数μを算出する。路面情報、操作情報、制動距離とタイヤ摩擦係数μとの関係は、予め実験等に基づいて決定しておく。この予め決定しておいた関係と、S111、S112、S113で取得した路面情報、操作情報、制動距離に基づいて、タイヤ摩擦係数μを算出する。
【0224】
摩擦係数は、種々の要因により定まり、路面情報、操作情報、制動距離だけで一意に決定できるものではない。したがって、実施形態11で説明した路面摩擦係数μeと同様、タイヤ摩擦係数μも分布を持つ。具体的には正規分布を持つものとして式2により表す。式2においてμW0は正規分布の中央値であり、σW2は正規分布の分散である。
(式2) μ=N(μW0、σ
【0225】
実施形態14では、自車ブレーキ能力推定部7275及び他車ブレーキ能力推定部7276は、図26を実行して算出される摩擦係数μをもとに、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定する。図26に示す処理は、図21に代えて実行する処理である。
【0226】
S121では、路面情報である路面摩擦係数μを路面状態決定部7274から取得する。路面状態決定部7274は、図22で説明した処理により路面摩擦係数μを計算している。S122では、S114で算出したタイヤ摩擦係数μを取得する。S123では、S121で取得した路面摩擦係数μとS122で取得したタイヤ摩擦係数μをもとに、式3により摩擦係数μを算出する。
(式3) μ=μ(μ+μ
【0227】
摩擦係数μを算出した後は、図20のS72に進む。このように、実施形態10で説明したμの算出方法に代えて、路面摩擦係数μとタイヤ摩擦係数μとを算出し、これら2つの摩擦係数から路面とタイヤとの摩擦係数μを算出することもできる。
【0228】
(実施形態15)
図27に、実施形態15において、図25に代えて特性更新部7277が実行する処理を示す。S131では、自車のタイヤ温度を取得する。タイヤ温度は、たとえば、タイヤを撮影できる位置に設置したサーモカメラにより検出する。S132では、タイヤ温度に基づいて、タイヤ状態の一例であるタイヤ摩擦係数μを算出する。タイヤ温度が変化すれば、タイヤ摩擦係数μが変化する。そこで、タイヤ温度とタイヤ摩擦係数μとの関係を予め定めておき、その関係とS131で取得したタイヤ温度とに基づいて、タイヤ摩擦係数μを算出する。S132で決定するタイヤ摩擦係数μも分布をもったものである。なお、タイヤ摩擦係数μを算出する際に用いたタイヤ温度もタイヤ状態の一例である。
【0229】
(実施形態16)
図28に、実施形態16において路面状態決定部7274、自車ブレーキ能力推定部7275、他車ブレーキ能力推定部7276が実行する処理を示す。S141は、路面状態決定部7274が実行する処理である。S141では、周辺車両から車車間通信により、傾斜角、路面摩擦係数μを取得する。なお、実施形態16では、自車は、周辺車両と無線通信する無線機を備える。
【0230】
周辺車両が実施形態11で説明したブレーキ能力推定部7272と無線機とを備えており、その周辺車両が測定した傾斜角と路面摩擦係数μを逐次送信している場合、自車は、周辺車両から、傾斜角と、路面摩擦係数μを取得することができる。
【0231】
S142では、S141で取得した傾斜角及び路面摩擦係数μに基づいて、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定する。なお、図20と同様、自車の重量及び前方車両の重量を取得あるいは推定し、それら自車の重量及び前方車両の重量も考慮して、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定してもよい。ただし、自車及び前方車両の車重は用いずに、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定してもよい。
【0232】
(実施形態17)
図29に実施形態17において図13に代えて実行する処理を示す。実施形態17はこれまでに説明した実施形態を組み合わせたものである。S151では、路面状態を取得する。路面状態は、これまでの実施形態で説明してきた種々の具体的状態を採用することができる。路面状態は具体的には、路面傾斜、路面形状、路面濡れ度、路面摩擦係数μなどである。S151で取得する路面状態は、これまでに説明した具体的な路面状態のうちの1つ以上である。
【0233】
S152では、自車のブレーキ影響因子及び前方車両のブレーキ影響因子を取得する。S152で取得する自車のブレーキ影響因子及び前方車両のブレーキ影響因子も、これまでの実施形態で説明した種々の具体的なブレーキ影響因子を1つ以上、採用することができる。
【0234】
S153では、S151及びS152で取得した路面状態及びブレーキ影響因子をともに考慮して、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定する。S153でも、ブレーキ能力を推定するために、路面状態及びブレーキ影響因子をもとにブレーキ能力を推定することができる関係を予め求めておく。そして、その関係と、S151及びS152で取得した情報とをもとに、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定する。
【0235】
この実施形態17では、路面状態と車両のブレーキ影響因子をともに考慮して、自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定する。したがって、より精度よく自車のブレーキ能力及び前方車両のブレーキ能力を推定することができる。
【0236】
(実施形態18)
図30に実施形態18で自車ブレーキ能力推定部7275が実行する処理を示す。S161では路面状態を取得する。路面状態は、フルブレーキで減速したときに自車がスリップするかどうかを推定するための情報である。たとえば、路面状態は、前述した路面形状、路面傾斜及び路面濡れ度である。また、路面状態は路面摩擦係数μでもよい。
【0237】
S162では、タイヤ状態及び自車の車重を取得する。タイヤ状態は、前述したように、タイヤに関する状態であって、ブレーキ能力に影響するものである。具体的には、タイヤ状態は、たとえば、タイヤ摩擦係数μ、タイヤ温度などである。
【0238】
S163では、フットブレーキのみでよいかどうかを判断する。フットブレーキのみでよいかどうかは、フットブレーキのみでフルブレーキをしたときにスリップしてしまうかどうかを判断するものである。なお、ここでのフットブレーキのみとは、積極的にはエンジンブレーキを利用できないことを意味する。フットブレーキ時には、アクセルオフになり、駆動力源としてエンジンを備えていれば、アクセルオフ時にはエンジンブレーキが自動的に作用する。積極的にエンジンブレーキを利用するとは、このような自動的に作用するエンジンブレーキではなく、フットブレーキ時に変速比を高く変更して自動的に作用するエンジンブレーキよりも大きな制動力を発生させることを言う。フットブレーキのみでフルブレーキをしてもスリップしない場合にはS163の判断結果をYESとする。
【0239】
フットブレーキのみでスリップしてしまうかどうかを判断するために、フルブレーキをすることにより発生するタイヤと路面との間の摩擦力と、減速時に自車に生じる慣性力とを比較する。摩擦力の方が大きければ自車はスリップしない。摩擦力は、路面とタイヤとの間の摩擦係数μと車重とから算出する。路面とタイヤとの間の摩擦係数μは、たとえば図21あるいは図26に示した処理により算出する。減速時に自車に生じる慣性力は、フルブレーキ時の減速度として予め設定した減速度と車重を乗じることで算出できる。
【0240】
S163の判断結果がYESの場合にはS164に進む。S164では、フットブレーキのみでのブレーキ能力を推定する。フットブレーキのみでのブレーキ能力は、図17に示した処理において、S53でエンジンブレーキが利用できないと判断した場合にS55で推定するブレーキ能力である。
【0241】
S163の判断結果がNOの場合にはS165に進む。S165ではエンジン状態を取得する。エンジン状態は、自車がエンジンを搭載しており、かつ、変速比を大きくすることができる状態であるか否かを示す情報である。
【0242】
S166では、S165で取得した情報に基づいてエンジンブレーキが利用できるか否かを判断する。S166の判断結果がNOであればS167に進む。S167の処理はS164と同じである。すなわち、S167では、フットブレーキのみでのブレーキ能力を推定する。
【0243】
S166の判断結果がYESであればS168に進む。S168では、エンジンブレーキ利用時のブレーキ能力を推定する。エンジンブレーキ利用時のブレーキ能力は、S55において説明したように、たとえば、ブレーキ能力の分布をもったものである。エンジンブレーキ利用時のブレーキ能力は、エンジンブレーキが使用できない場合よりも、ブレーキ能力の分布の中心値を事前に設定した一定値だけブレーキ能力が高い側へ変更する。S169では、エンジンブレーキを利用することを、変速機を制御するECUへ通知する。
【0244】
実施形態18では、フットブレーキに加えてエンジンブレーキを利用した場合のブレーキ能力を推定している。エンジンブレーキが利用できる場合に、エンジンブレーキを利用することで、自車の制動距離を短くすることができる。
【0245】
(実施形態19)
図31に、実施形態19において他車ブレーキ能力推定部7276が実行する処理を示す。S171では、前方車両と車車間通信可能かどうかを判断する。この判断は、前方車両から送信された信号を受信できたかどうかにより行う。S171の判断結果がYESであればS172に進む。
【0246】
S172では、前方車両との間で車車間通信をして、前方車両のブレーキ能力と前方車両の速度とを受信する。前方車両に、自車と同じく車両制御装置が搭載されていれば、前方車両から、前方車両の速度だけでなく前方車両のブレーキ能力を受信することができる。
【0247】
S171の判断結果がNOであればS173に進む。S173では、前方車両の速度を決定する。この処理は、S31で説明したものと同じである。S174では、前方車両のブレーキ能力を推定する。この処理はS34と同じである。なお、前方車両と車車間通信が可能であったが、前方車両からブレーキ能力を受信できなかった場合にも、S173、S174を実行すればよい。
【0248】
車車間通信により受信した、前方車両が推定した前方車両のブレーキ能力は、自車が推定する前方車両のブレーキ能力よりも精度がよいと期待できる。したがって、前方車両が推定した前方車両のブレーキ能力を用いることで、前方車両の行動の予測精度が向上する。
【0249】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0250】
(変形例1)
路面摩擦係数μは、タイヤ状態を考慮せずに決定できる値である。そこで、予め地図情報として路面摩擦係数μを格納しておき、自車の現在位置をもとに、地図情報から、自車が走行中の道路の路面摩擦係数μを取得してもよい。
【0251】
(変形例2)
実施形態16では、傾斜角、路面摩擦係数μを周辺車両から車車間通信により受信していた。しかし、傾斜角、路面摩擦係数μを、路側機から受信してもよい。また、自車と周辺車両との通信が、基地局を介した通信であってもよい。
【0252】
(変形例3)
実施形態19では、自車は、前方車両のブレーキ能力を車車間通信により受信していた。しかし、自車は、前方車両のブレーキ能力を、基地局を介した通信により受信してもよい。
【0253】
(変形例4)
実施形態7では、路面状態として、路面形状、路面傾斜、路面濡れ度をもとにブレーキ能力を推定していた。しかし、路面形状、路面傾斜、路面濡れ度のうちのいずれか2つ、あるいは、いずれか1つのみを用いてブレーキ能力を推定してもよい。
【0254】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
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図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転が可能な車両で用いられ、プロセッサと、記憶媒体(730)と、を備える自動運転装置であって、
前記プロセッサは、
潜在的な事故に対する判断をするための基準となるルールを格納するルールデータベースから前記ルールを取得することと、
前記車両と前記車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測することと、
前記予測対象移動体の行動を、前記ルールに当てはめることで、前記潜在的な事故に対する判を実行することと、
予測された前記予測対象移動体の行動を前記記憶媒体に記憶することと、を実行するように構成されている自動運転装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記潜在的な事故に対する判断を実行することにおいて、短期の走行計画として算出された候補経路を前記車両に走行させる場合に想定される前記潜在的な事故に対する判断を実行し、
前記記憶することにおいて、前記候補経路を、予測された前記予測対象移動体の行動とともに前記記憶媒体に記憶する、請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記ルールを取得することにおいて、現在の前記車両の位置と及び前記候補経路上の各位置において、どういった前記ルールを採用すべきか判断する、請求項2に記載の自動運転装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記記憶することにおいて、採用すべきと判断された前記ルールのうちの1つ以上を前記記憶媒体に記憶する、請求項3に記載の自動運転装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記予測対象移動体の行動は、現時点からの経過時間と、そのときの位置とを含んで表現される、請求項1~4のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記予測することにおいて、走行制御に沿った挙動を逸脱する逸脱挙動を予測し、
前記記憶することにおいて、前記逸脱挙動を予測した場合、予測された前記逸脱挙動があった場合の前記予測対象移動体の行動を前記記憶媒体に記憶する、請求項1~5のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記潜在的な事故に対する判断結果をさらに記憶する、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動運転装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記車両と前記車両の周辺車両との間の対象間距離が、設定される安全距離未満となる場合に、前記車両と前記周辺車両との近接を避けるための回避行動を自動運転で行わせることをさらに実行し、
前記潜在的な事故に対する判断結果は、前記安全距離が確保できているかどうかを1つの指標として含む、請求項7に記載の自動運転装置。
【請求項9】
自動運転が可能な車両で用いられ、コンピュータにおいて構成されたプロセッサにより実行される自動運転方法であって、
潜在的な事故に対する判断をするための基準となるルールを格納するルールデータベースから前記ルールを取得することと、
前記車両と前記車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測することと、
前記予測対象移動体の行動を、前記ルールに当てはめることで、前記潜在的な事故に対する判を実行することと、
予測された前記予測対象移動体の行動を記憶媒体(730)に記憶することと、含む自動運転方法。
【請求項10】
自動運転が可能な車両で用いられ、コンピュータによって読み取り可能なプログラムであって、
前記コンピュータにおいて構成されたプロセッサに、
潜在的な事故に対する判断をするための基準となるルールを格納するルールデータベースから前記ルールを取得することと、
前記車両と前記車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測することと、
前記予測対象移動体の行動を、前記ルールに当てはめることで、前記潜在的な事故に対する判を実行することと、
予測された前記予測対象移動体の行動を記憶媒体(730)に記憶することと、を実行させるように構成された、プログラム
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
本開示は、動運転装置自動運転方法及びプログラムに関するものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
この開示のひとつの目的は、車両制御において、車両の走行中に生じる可能性がある危険を低減できる自動運転装置自動運転方法及びプログラムを提供することにある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の自動運転装置は、自動運転が可能な車両で用いられ、プロセッサと、記憶媒体と、を備える自動運転装置であって、
プロセッサは、
潜在的な事故に対する判断をするための基準となるルールを格納するルールデータベースからルールを取得することと、
車両と車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測することと、
予測対象移動体の行動を、ルールに当てはめることで、潜在的な事故に対する判を実行することと、
予測された予測対象移動体の行動を記憶媒体に記憶することと、を実行するように構成されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の自動運転方法は、自動運転が可能な車両で用いられ、コンピュータにおいて構成されたプロセッサにより実行される自動運転方法であって、
潜在的な事故に対する判断をするための基準となるルールを格納するルールデータベースからルールを取得することと、
車両と車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測することと、
予測対象移動体の行動を、ルールに当てはめることで、潜在的な事故に対する判を実行することと、
予測された予測対象移動体の行動を記憶媒体(730)に記憶することと、含む
上記目的を達成するために、本開示のプログラムは、自動運転が可能な車両で用いられ、コンピュータによって読み取り可能なプログラムであって、
コンピュータにおいて構成されたプロセッサに、
潜在的な事故に対する判断をするための基準となるルールを格納するルールデータベースからルールを取得することと、
車両と車両の周辺に存在する少なくとも1つの移動体とを含んでいる予測対象移動体の行動を予測することと、
予測対象移動体の行動を、ルールに当てはめることで、潜在的な事故に対する判断を実行することと、
予測された予測対象移動体の行動を記憶媒体(730)に記憶することと、を実行させるように構成されている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】