IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シナプティクス インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-73532増幅器フリッカノイズ及びオフセットを緩和するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073532
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】増幅器フリッカノイズ及びオフセットを緩和するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20240522BHJP
   H03F 3/387 20060101ALI20240522BHJP
   H03F 1/26 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H03F3/34 220
H03F3/387
H03F1/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038122
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2020520475の分割
【原出願日】2018-10-18
(31)【優先権主張番号】62/575,344
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】ワーニ、バルカット エー
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA26
5J500AC13
5J500AC23
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK01
5J500AK34
5J500AK41
5J500AK56
5J500AM13
5J500MU04
5J500MV06
5J500MV14
5J500MV18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】増幅器フリッカノイズ及びオフセットを緩和するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】増幅回路とオフセット校正回路とを備えるシステム200であって、増幅回路は、受け取った信号を変調する変調回路と、変調後の信号を増幅する増幅器と、増幅後の信号を変調する変調回路と、を含み、オフセット校正回路は、制御信号を設定して変調後の信号に基づく増幅回路の出力に基づいて制御信号を調節する論理回路と、増幅回路に関連するオフセットを補償するように制御信号に基づいて補償信号を生成し、補償信号を増幅回路に印加して増幅回路の出力を調節する補償信号ジェネレータと、を備える。オフセット校正回路は、応用回路と相まってフリッカ、オフセット及びオフセットドリフトを低減し、また、チョッピングに起因するアップモジュレートリップルを抑制する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受け取り、増幅された出力信号を生成するように動作可能な増幅回路であって、受信した信号を変調して変調後の信号を得るように構成された第1回路と、前記変調後の信号を増幅して、増幅された変調後の信号を得るように構成された第1増幅器と、前記増幅された変調後の信号を復調して復調後の信号を得るように構成され、前記増幅された出力信号が前記復調後の信号に基づいている第2回路とを備える増幅回路と、
前記増幅された出力信号に対応する信号オフセット情報を受け取り、前記信号オフセット情報に基づいて制御信号を調節するようにされた論理回路と、調節された前記制御信号に基づいて1以上の補償信号を生成し、前記1以上の補償信号を前記増幅回路に印加して前記増幅された出力信号におけるオフセットを緩和するように構成された補償信号ジェネレータとを備えるオフセット校正回路と、
を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年10月20日に出願された米国仮出願(出願番号 62/575,344)の利益及び優先権を主張するものであり、その全体が参照することにより本出願に組み込まれる。
【0002】
1以上の実施形態において、本願は、全体としては音声処理に関するものであり、特に、例えば、音声システムにおける増幅器ノイズ、オフセット及びリップルの緩和に特に関するものである。
【背景技術】
【0003】
アナログ信号処理システムは、典型的には、音声信号を増幅する増幅器を含んでいる。送信パスにおいて、増幅された音声信号は、再生のために、例えばヘッドセットやスピーカーのような1以上の出力音声デバイスに供給されることがある。受信パスにおいて、増幅された音声信号は、処理及び/又は記憶のためにデジタル化されることがある。しかしながら、アナログ信号処理システムは、信号が送信及び受信パスにある増幅器のようなアナログ回路を通過するときに、該信号にノイズやオフセットを加えることが知られており、これにより、信号品質を低下させる。よって、本技術分野では、ノイズ及びオフセットを緩和する、改良された信号処理手法の必要性が継続的に存在している。
【発明の概要】
【0004】
ここで更に議論する様々な実施形態によれば、増幅器フリッカノイズ及びオフセットを緩和するための方法及びシステムが提供される。このような方法及びシステムは、信号を、該信号を害するフリッカノイズ及びフリッカから(例えば周波数において)分離する変調及び復調回路と、増幅器オフセットを補償し、これによりアップモジュレートされたオフセットに関連するリップルを抑制する校正回路とを用いることがある。
【0005】
1以上の実施形態において、システムが、増幅回路とオフセット校正回路とを備えている。前記増幅回路は、受信した信号を変調して変調後の信号を得るように構成された第1変調回路を備えている。前記増幅回路は、更に、前記変調後の信号を増幅して増幅された信号を得るように構成された増幅器を備えている。前記増幅回路は、更に、前記増幅された信号を復調して復調後の信号を得るように構成された第2変調回路を備えている。前記オフセット校正回路は、制御信号を設定し、前記復調後の信号に基づいている前記増幅回路の出力に基づいて、前記制御信号を調節するように構成された論理回路を備えている。前記オフセット校正回路は、更に、1以上の補償信号を前記制御信号に基づいて生成して前記増幅回路に関連するオフセットを補償するように構成された補償信号ジェネレータを備えている。前記補償信号ジェネレータは、更に、前記1以上の補償信号を前記増幅回路に印加して前記増幅回路の前記出力を調節するように構成されている。
【0006】
1以上の実施形態において、方法が、増幅回路の第1変調回路によって入力信号を変調して変調後の信号を得ることと、前記増幅回路の第1段によって前記変調後の信号を増幅することで増幅された信号を得ることとを含む。前記方法は、更に、論理回路によって制御信号を設定することと、補償信号ジェネレータによって、前記制御信号に基づいて1以上の補償信号を生成して前記増幅回路に関連するオフセットを補償することとを含む。前記方法は、更に、前記補償信号ジェネレータによって前記1以上の補償信号を前記増幅回路に印加して、前記復調された信号に基づいたものである前記増幅回路の出力を調節することを含む。
【0007】
本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲によって規定されるのであり、特許請求の範囲は参照することによりこの項目に組み込まれる。本開示のより完全な理解は、その追加的な利点の実現と共に、以下の詳細な1以上の実施形態の記載を考慮することで、当業者に与えられる。最初に簡潔に説明する図面の添付用紙に参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の観点及びその利点は、以下の図面及びそれに続く詳細な説明を参照して、よりよく理解可能である。類似の参照番号は、1以上の図面に示されている類似の要素を識別するために用いられるものと理解され、図面における図示は、本開示の実施形態を図示する目的のものであって、実施形態を限定する目的のものではない。図面の構成要素は、必ずしも寸法通りにはなっておらず、その代わりに強調がなされることで本開示の原理を明確に示している。
【0009】
図1図1は、本開示の1以上の実施形態による、フリッカノイズ及びオフセットの緩和を含む音声信号を処理するための音声処理システムを図示している。
【0010】
図2図2は、本開示の1以上の実施形態による、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易にするためのシステムを示している。
【0011】
図3図3は、本開示の1以上の実施形態による、ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易にするためのシステムを示している。
【0012】
図4A図4Aは、増幅回路の様々な点における信号の周波数領域表記の例を示している。
図4B図4Bは、増幅回路の様々な点における信号の周波数領域表記の例を示している。
図4C図4Cは、増幅回路の様々な点における信号の周波数領域表記の例を示している。
図4D図4Dは、増幅回路の様々な点における信号の周波数領域表記の例を示している。
図4E図4Eは、増幅回路の様々な点における信号の周波数領域表記の例を示している。
【0013】
図5図5は、本開示の1以上の実施形態による、ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易にするための例示的プロセスのフロー図である。
【0014】
図6図6は、変調/復調回路の例を示している。
【0015】
図7図7は、本開示の1以上の実施形態による、補償信号ジェネレータと、関連する増幅回路への接続の例を示している。
【0016】
図8A図8Aは、補償信号ジェネレータの電流ジェネレータの例を示している。
図8B図8Bは、補償信号ジェネレータの電流ジェネレータの例を示している。
【0017】
図9図9は、本開示の1以上の実施形態における、増幅回路の差動出力電圧の差分の、時間に対する例示的なグラフを示している。
【0018】
図10A図10Aは、チョッピングされた増幅回路の差動出力電圧の、オフセット緩和がある場合とない場合の時間に対するグラフを示している。
図10B図10Bは、チョッピングされた増幅回路の差動出力電圧の、オフセット緩和がある場合とない場合の時間に対するグラフを示している。
図10C図10Cは、チョッピングされた増幅回路の差動出力電圧の、オフセット緩和がある場合とない場合の時間に対するグラフを示している。
図10D図10Dは、チョッピングされた増幅回路の差動出力電圧の、オフセット緩和がある場合とない場合の時間に対するグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に提示している詳細な説明は、対象技術の様々な構成の記述として意図されており、対象技術が実施可能な構成のみを表すことを意図するものではない。添付図面は、本願に組み込まれており、詳細な説明の一部を構成している。詳細な説明は、対象技術の十分な理解を提供する目的で具体的な詳細を含んでいる。しかしながら、対象技術が、本明細書に提示された具体的な詳細に限定されず、1以上の実施形態を用いて実施され得ることは、当業者には明確で明らかであろう。1以上の例では、対象技術の概念を曖昧にすることを避けるために、構造及び構成要素がブロック図の形態で図示されている。対象の開示の1以上の実施形態は、1以上の図に関連して図示され及び/又は記述され、特許請求の範囲に述べられている。
【0020】
本願には、音声システム及び応用における増幅器ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易にするための様々な技術が提供されている。ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトは、音声システムの性能を劣化させ得る。このような性能の劣化は、音声信号の信号-ノイズ比のような、本質的に客観的で定量的な指標を用いて評価されることがあり、及び/又は音声信号のユーザ(例えば、顧客)によって知覚される音質のような主観的な指標を用いて評価されることがある。ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトは、音声システムの増幅器によって信号(例えば、音声信号)に加えられ(例えば、与えられ、付加され)得る。ノイズは、低い周波数でより優勢な(例えば、1/fノイズと記載される)フリッカノイズと、全体としては、周波数に対して相対的に一定である熱雑音を含み得る。フリッカノイズは、1/fコーナによって特徴づけられることがある。ここで、ノイズは、1/fコーナよりも低い周波数でフリッカノイズが支配的であり、1/fコーナより高い周波数で熱雑音が支配的である。例えば、1/fコーナは、数十キロヘルツの範囲にある。
【0021】
場合によっては、増幅器の実装に用いられるトランジスタが、フリッカノイズ、熱雑音、オフセット及びオフセットドリフトの原因になっていることがある。他の種類のトランジスタも、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトを与えることがあるが、例示的なトランジスタは、相補型金属-酸化物半導体(CMOS)トランジスタであり得る。フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトは、一般に、デバイス寸法(例えば、トランジスタの幅及び長さ)に反比例する関係にある。したがって、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトによる劣化を低減する一般的な手法は、デバイス(例えば、トランジスタ)の寸法を増大させることである。しかしながら、これらの劣化を克服するためにデバイス寸法を増大させると、チップ領域を消費し、これらの増幅器を用いるチップを製造する際のチップコストを追加する。
【0022】
オフセットは、増幅器のトランジスタの間のミスマッチに起因し得る。ある増幅器について、オフセットは、該増幅器に信号が与えられていない場合でさえ、該増幅器の出力に非零の信号(例えば、非零の電流、非零の電圧)を生じさせ得る。一例としては、増幅器にゼロボルトの差動入力を与えたときに、該増幅器の差動出力の差が非零になり得る。オフセットは、一般的には望ましくない。なぜなら、増幅器の出力を入力とするアナログ-デジタルコンバータ(ADC)のような音声システムの構成要素を飽和させ得るからである。該増幅器がスピーカーやヘッドフォンを駆動している場合には、オフセットは、望ましくない、弾けるような可聴音として知覚され得る。
【0023】
チョッピングのような変調/復調技術が、フリッカノイズ及びオフセットによる劣化を克服するために用いられ得る。しかしながら、オフセット及びフリッカノイズに変調をかけることに起因する、当該アップモジュレートされたオフセット及びフリッカノイズが、増幅器の出力においてリップルを生じさせ得る。例えば、変調においてチョッピングを行う場合、リップルは、チョッピングリップル又はチョッピング擬音と呼ばれることがある。音声信号がユーザに再生される場合、音声信号のリップルは、ユーザに知覚可能な音質劣化を生じさせ得る。音声信号を格納すべき場合、リップルを含む音声信号をデジタル化すると、音声信号の解像度が低下し、関連して音質の低下を生じさせ得る。リップル、又は、その影響は、格納された音声信号の再生の間、可聴であり得る。オフセットドリフトは、オフセットの時間変化であり、温度依存性を持ち得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、音声システムが、変調-復調回路対と、この変調-復調回路対の間に設けられた増幅器とを有する増幅回路を備えている。該変調回路は、音声信号を変調してもよく、該増幅器は、変調された音声信号を増幅し、劣化(例えば、ノイズ、オフセット)を加えることがあり、該復調回路は、増幅された変調音声信号を復調する一方で、劣化を変調することがある。様々な実施形態において、変調及び復調回路は、チョッパ回路であってもよい。
【0025】
フリッカノイズを緩和するために、変調及び復調が、劣化から音声信号を分離するために用いられてもよい。変調回路は、音声信号を高い周波数範囲にアップコンバートすることによって音声信号を変調する。増幅器を通過すると、増幅された変調後の音声信号が高い周波数範囲にある一方で、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトは、該増幅器によって低い周波数で付加される。復調回路は、増幅された変調後の音声信号をベースバンド(例えば、変調回路に与えられた音声信号の周波数範囲)にダウンコンバートし、劣化をアップコンバートすることで、増幅器からの出力を変調してもよい。
【0026】
フリッカノイズとオフセットが、ベースバンドにある増幅された音声信号と異なる(より高い)周波数範囲に変調されるので、フリッカノイズとオフセットは、増幅された音声信号から分離され、場合によっては、増幅回路の周波数応答のロールオフによってある程度緩和可能である。しかしながら、アップモジュレートされたフリッカノイズ及びオフセットに起因する残存高周波の効果が残るので、この残存する効果が、増幅器出力におけるリップルとして現れる。変調後のオフセットは、音質における顕著な劣化を生じさせ得るが、変調後のフリッカノイズは、音質を顕著には劣化させない。場合によっては、高周波におけるリップルを低減又は消滅してリップルの効果を更に緩和するために、追加のフィルタリングが行われる場合がある。例えば、このフィルタリングは、増幅器の後の1以上の増幅段によって、及び/又は、増幅器の後の能動フィルタリングによって提供されてもよい。
【0027】
オフセット及びオフセットによる影響を緩和するために、音声システムが、校正回路を備えていてもよい。校正回路は、論理回路と補償信号ジェネレータとを備えていてもよい。論理回路は、増幅回路の出力に基づいて制御信号を生成し、その制御信号を補償信号ジェネレータに供給してもよい。増幅回路の出力は、復調回路の出力であってもよく、又は、少なくとも部分的に復調回路の出力に基づいていてもよい。補償信号ジェネレータは、該制御信号に基づいて1以上の補償信号を生成し、該補償信号を増幅回路に印加してもよい。補償信号の印加によって増幅回路の出力を調節してもよい。補償信号は、増幅器の出力に補償信号ジェネレータによって印加される、例えば電流信号又は電圧信号のような電気信号を含んでいてもよい。場合によっては、オフセットは、数十マイクロボルトにまで低減され、仕様によって更に低減されることがある。
【0028】
一実施形態では、論理回路と補償信号ジェネレータとが、増幅回路に関連するオフセットを有効に補償する(例えば、キャンセルし、ゼロにし、削減し、緩和する)信号に補償信号が収束するように、反復的に動作する。オフセット補償により、アップモジュレートされたオフセットに起因するリップルが、出力において存在しなくなり、又は、無視できるようになる。例えば、一対の補償信号の1つを増幅器の各差動出力に供給して増幅回路の出力におけるオフセットの生成をキャンセルしてもよい。補償信号が電流信号である場合、このような補償信号は、ゼロ化電流と呼ばれることがある。オフセットドリフトは、オフセットの時間変化に応じて補償信号を調節することで緩和されてもよい。場合によっては、オフセットドリフトは、オフセットを数マイクロボルト/℃のオーダーでドリフトさせ得る。
【0029】
一実施形態では、オフセットを緩和するために増幅回路に供給すべき補償信号は、校正フェーズにおいて決定されてもよい。校正フェーズの後では、オフセットを緩和するために用いられる補償信号が固定されたままでもよい。次の校正フェーズは、周期的に行われてもよく、及び/又は、オフセットが増幅器の出力に顕著な(例えば、可聴な)クリッピング又は歪みを生じさせるのに十分な程度にドリフトしたときに行われてもよい。
【0030】
このように、本明細書に開示された様々な実施形態を用いて、音声システムにおける増幅器ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトが緩和され得る。いくつかの観点では、このような劣化の緩和は、シリコン領域の節約とノイズ仕様への適合と共に達成され得る。例えば、この緩和は、デバイス寸法を維持しながら、デバイス寸法がフリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトを低減させるように増大された場合と同等に行われ得る。より小さなデバイス寸法は、寄生の低減と関連しており、小さなトランスコンダクタンスしか用いずに寄生が多い場合と同じ帯域を得ることを可能にする。このようにして、電流の節約も達成され得る。この実施例では、変調及び復調が、連続時間技術であり、サンプリングを行っていない。増幅器ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和に関してサンプリングを用いていないので、熱雑音の畳み込みが回避される。
【0031】
場合によっては、本開示の実施形態による変調-復調回路対と校正回路は、他の技術と共に実施可能である。このような他の技術は、例えば、(例えば、デバイス寸法の調節が劣化を低減するための主たる手段である場合と比較して少ない程度で)デバイス寸法を増大させることにより、ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトを低減すること、フィルタリングを行うこと、及び/又は、素子マッチングを向上させることを含んでいてもよい。例えば、このようなフィルタリングは、それが用いられる場合には、フリッカノイズ、オフセット及び/又はオフセットドリフトを除去するために高次フィルタ(これらは、一般に大きく複雑である)が用いられる場合と比較して、低次のフィルタを用いて行われてもよい。
【0032】
様々な実施形態において、増幅器ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和は、送信パス及び/又は受信パスにある増幅器のために実施可能である。送信パス(例えば再生パスともいう)は、ヘッドセット又はスピーカーのような音声出力デバイスに処理後の音声信号を供給して処理後音声信号の再生を可能にするパスをいうことがある。受信パス(例えば記録パスともいう)は、マイクロフォンのような音声入力デバイスにより音声信号を受信するパスをいうことがある。送信パスでは、音声出力デバイスに供給される音声信号の信号電力を増大させるために増幅が行われてもよい。受信パスでは、音声入力デバイスによって受け取った音声信号の信号電力を増大させるために増幅が行われてもよい。非限定な例としては、増幅器は、電流ステアリング(current-steering)増幅器、ヘッドフォン増幅器、ラインアウト増幅器、マイクロフォン増幅器、ラインイン増幅器、及び/又は他の増幅器を実装するために用いられてもよい。
【0033】
ここで図面を参照して、図1は、本開示の1以上の実施形態による、ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和の実施を含む音声信号を処理するための音声処理システム100を図示している。図示した構成要素の全てが必要であるわけではないが、1以上の実施形態は、図に示されていない追加の構成要素を含むことがある。追加の構成要素、異なる構成要素、より少ない構成要素を備えながら、本願に提示されている特許請求の範囲の技術的範囲から離れずに構成要素の配置及び種類の変更がなされ得る。
【0034】
音声処理システム100は、音声入力処理回路105と、音声出力処理回路130と、デジタル信号処理回路155と、メモリ160と、バス185とを備えている。音声処理システム100は、例えばマイクロフォンのような音声入力デバイス165に接続するための音声入力ポート170(例えば、マイクイン又はラインインポート)と、例えばスピーカーやヘッドセットのような音声出力デバイス175に接続するための音声出力ポート180(例えば、ヘッドフォンアウト又はラインアウトポート)とを備えている。例えば、音声入力ポート170及び/又は音声出力ポート180は、有線接続がなされ得るジャック又はソケットであってもよい。場合によっては、音声入力デバイス165及び/又は音声出力デバイス175は、有線接続の代わりに又は有線接続に加えて、音声処理システム100に無線接続されてもよい。
【0035】
音声入力処理回路105は、入力デバイス165を介して音声入力処理回路105に供給された音声信号を処理する(例えば、増幅する、フィルタリングを行う、変換を行う、デジタル領域とアナログ領域の間で変換する)ために様々な構成要素を備えている。図1では、音声入力処理回路105は、プログラマブルゲイン増幅回路110と、アンチエイリアシングフィルタ115と、ADC 120と、制御回路125とを備えている。制御回路125は、プログラマブルゲイン増幅回路110、アンチエイリアシングフィルタ115及び/又はADC 120を設定する制御信号を供給してもよい。例えば、制御回路125は、フィルタパラメータ及び量子化パラメータを生成し、及び/又は(例えばメモリ160のようなメモリから)取り出し、それらをアンチエイリアシングフィルタ115とADC 120のそれぞれに供給してもよい。
【0036】
同様に、音声出力処理回路130は、音声信号を処理して処理後の音声信号を音声出力デバイス175に供給するために(例えば、音声出力デバイス175がユーザに音声信号を再生するために)、様々な構成要素を備えている。図1では、音声出力処理回路130は、デジタル-アナログコンバータ(DAC)135と、再構成フィルタ140と、プログラマブルゲイン増幅回路145と、制御回路150とを備えている。制御回路150は、DAC135と、再構成フィルタ140と、プログラマブルゲイン増幅回路145とを設定するために制御信号を供給してもよい。
【0037】
デジタル信号処理回路155は、例えば音声入力処理回路105のADC 120から受け取ったデジタル音声信号、及び/又は、音声出力処理回路130のDAC 135及び/又はメモリ160に供給すべきデジタル音声信号のようなデジタル信号を処理(例えば、フィルタリングを行い、編集し、イコライズを行うなど)してもよい。メモリ160は、音声信号と関連するメタデータ(例えば、タイムスタンプや音声ビットレート)、音声信号処理に関連する情報(例えば、フィルタ係数など)及び/又は他の情報を格納してもよい。一実施形態では、メモリ160は、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易にするためのオフセット補償パラメータ及び変調パラメータを示す情報を格納してもよい。バス185は、音声入力処理回路105、音声出力処理回路130、デジタル信号処理回路155及びメモリ160の間のデータの通信を容易化するために用いられてもよい。
【0038】
図1では、受信パスは、音声入力デバイス165(例えば、音声信号を受け取るマイクロフォン)から、処理のために音声入力処理回路105を通り抜けるパスをいうことがある。送信パスは、音声信号の再生を可能にするために、音声出力処理回路130を通り抜けて音声出力デバイス175に到達するパスをいうことがある。
【0039】
受信パスでは、例えばユーザが入力デバイス165(例えばマイクロフォン)に話しかけたときのように、音声信号が入力デバイス165に供給されたとき、該音声信号は、プログラマブルゲイン増幅回路110、アンチエイリアシングフィルタ115及びADC 120によって処理され得る(例えば、増幅され、フィルタリングされ、及び/又は他の処理がなされ得る)。ADC 120は、それによってデジタル化された音声信号が、例えばデジタル信号処理回路155によってデジタル処理され得、及び/又は、例えばメモリ160のような記憶装置に供給されるように(例えば、後に再生されるように)、アンチエイリアシングフィルタ115から出力される音声信号をデジタル化する。
【0040】
送信パスでは、デジタル領域の音声信号が、例えばメモリ160のような記憶装置から取り出され、DAC 135に供給され得る。場合によっては、音声信号は、メモリ160から取り出され、DAC 135によって供給される前にデジタル信号処理回路155によって処理され得る。DAC 135は、デジタル領域の音声信号をアナログ領域に変換する。アナログ領域の音声信号は、再構成フィルタ140及びプログラマブルゲイン増幅回路145によって処理され、その後、再生を可能にするためにプログラマブルゲイン増幅回路145によって音声出力デバイス175に供給されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、増幅器が送信パス及び受信パスの様々な構成要素において使用可能である。この関連で、増幅器は、電流ステアリング増幅器、ヘッドフォン増幅器、ラインアウト増幅器、マイクロフォン増幅器、ラインイン増幅器等として使用され得る。図1を参照して、例えば、増幅器は、プログラマブルゲイン増幅回路110及び/又は145、アンチエイリアシングフィルタ115、ADC 120、DAC 135、及び/又は再構成フィルタ140に設けられ得る。増幅器は、ノイズ、オフセット、オフセットドリフトのような劣化と共に音声信号を増幅し得る。送信パス及び受信パスに設けられた増幅器におけるこのような劣化を緩和することは、音質の向上を可能にする。例えば、増幅器出力におけるオフセットを緩和する(例えば、キャンセルする)ことによって、オフセットに起因する、弾ける音及び歪み(これらは、可聴な音の劣化を生じさせ得る)も緩和され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、様々な構成要素又はその部分(例えば、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155)は、1以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)、フィールドプログラマブルシステムオンチップ(FPSC)や、他の種類のプログラマブルデバイス)、コーデック、及び/又はその他の処理デバイスとして実装されてもよい。いくつかの観点では、このような処理デバイスは、メモリ160に格納された機械読み取り可能指令(例えば、ソフトウェア、ファームウエア及び他の指令)を実行してもよい。この関連で、処理デバイスは、本願に記載された様々な演算、処理及び手法の何れを実行してもよい。他の観点では、このような処理デバイスは、本願に記載された様々な演算、処理及び手法の所望の組み合わせを実行する専用のハードウェア部品と置換され、及び/又は補完されてもよい。
【0043】
メモリ160は、様々な機械読み取り可能な指令及びデータを格納する機械読み取り可能媒体として実装されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、メモリ160は、本願に記載された様々な演算、処理及び手法を実行するために1以上の処理デバイスによって読み出され実行され得る機械読み取り可能指令としてオペレーティングシステム及び1以上のアプリケーションを保存してもよい。メモリ160は、オペレーティングシステム及び/又はアプリケーションによって用いられるデータも保存してもよい。いくつかの実施形態では、メモリ160は、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ、ハードドライブ、固体ドライブ、及び、他の非一時的機械読み取り可能媒体)、揮発性メモリ、または、これらの組み合わせとして実装されてもよい。
【0044】
様々な実施形態において、音声処理システム100は、他の構成要素や構成物を備えていてもよい。例えば、音声処理システム100は、対応する複数の音声入力デバイスから受け取った音声信号を処理するための複数の音声受信パス、及び/又は、対応する複数の音声出力デバイスに送信する音声信号を処理するための複数の音声送信パスを備えていてもよい。また、音声処理システム100は、エコーキャンセル、ノイズキャンセル、音声アクティビティ検出、音源分離、及び他の音声処理要素を備えていてもよい。また、音声処理システム100は、音声処理システム100のユーザに情報を提供するためのディスプレイを備えていてもよい。ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、及び/又は、任意の他の適切なディスプレイとして実装されてもよい。ユーザコントロールが、ユーザ入力を受け取るために設けられてもよい。ユーザコントロールは、1以上の物理的ボタン、キーボード、レバー、ジョイスティック、及び/又は他のコントロールとして実装されてもよい。場合によっては、ユーザコントロールは、例えばタッチスクリーン技術におけるように、ディスプレイと一体化されてもよい。例えば、ディスプレイは、グラフィカルユーザインターフェースに、ユーザが再生する音声を選択する、保存した音声を編集する等、グラフィカルユーザインターフェースを用いたユーザとのやり取りを容易化するために用いられるユーザコントロールを提供してもよい。
【0045】
図2は、本開示の1以上の実施形態による、ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易化するためのシステム200を示している。図示された構成要素の全てが必要ではないかもしれないが、1以上の実施形態は、図示されていない追加の構成を備えていることがある。本願に提示されている特許請求の範囲の技術的範囲から離れずに構成要素の配置及び種類の変更がなされることがある。追加の構成要素、異なる構成要素、及び/又はより少ない構成要素が設けられてもよい。
【0046】
システム200は、信号源205と、増幅回路210と、オフセット校正回路240と、負荷235とを備えている。信号源205は、増幅回路210及び/又はオフセット校正回路240によって処理(例えば、増幅、フィルタリング)すべき信号を供給し、処理された信号は、負荷235に供給され得る。例えば、負荷235は、音声出力デバイス(例えば、音声出力デバイス175)であってもよい。このような場合、増幅回路210は、該音声出力デバイスのドライバと考えてもよい。他の例としては、システム200は、図1のプログラマブルゲイン増幅回路110に実装されてよく、負荷235は、プログラマブルゲイン増幅回路119の下流の構成要素(例えば、アンチエイリアシングフィルタ115、ADC 120)を備えていてもよい。
【0047】
増幅回路210は、変調回路215、225と、増幅器220とを備えている。変調回路215は、信号源205からの信号を変調し、該変調後の信号を増幅器220に供給する。増幅器220は、該変調後の信号にゲインを適用して(例えば、増幅して)増幅された信号を供給する。一実施形態では、増幅器220は、劣化(例えば、ノイズ、オフセット、オフセットドリフト)を加え、その結果、増幅された信号は、該劣化と共に、変調後の信号の増幅されたものを含んでいる。変調回路225は、増幅された変調後の信号を復調する。一実施形態では、変調回路225によって行われる復調は、変調回路215によって行われる変調に対応しており、変調回路215、225が変調-復調対を構成していてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、変調回路215は、変調回路215によって出力される信号が信号源205からの入力信号よりも高い周波数範囲にあるように、信号源205から該変調回路215が受信した入力信号をアップモジュレートする。変調回路225は、変調回路225から出力される信号が、変調回路225が受け取る入力信号よりも低い周波数範囲にあるように、変調回路225が受け取る入力信号をダウンコンバートする。このような実施形態では、アップモジュレーション及びダウンモジュレーションが、それぞれ、アップコンバージョン、ダウンコンバージョンと呼ばれることがある。一実施形態では、変調回路215及び225が、チョッパ回路、ミキサー回路及び/又は増幅された信号に適正な周波数変換を行う他の回路を備えていてもよい。
【0049】
増幅器220によって加えられる低周波のノイズ及び/又はオフセット、例えば、フリッカノイズ及びオフセットを考慮して、変調回路215は、入力信号を高周波範囲に変調して変調後の信号を供給する。増幅器220は、高周波にある変調後の信号にゲインを適用し、低周波にあるフリッカノイズ及び/又はオフセットを加える。変調回路225は、受け取った入力を変調し、その結果、増幅された変調後の信号が低い周波数範囲(例えば、信号源205からの入力信号の周波数範囲)にダウンモジュレートされ、ノイズ及び/又はオフセットが、高い周波数範囲にアップモジュレートされる。このようにして、増幅回路210に関連するフリッカノイズ及びオフセットが、周波数領域において信号源205からの入力信号から分離される。
【0050】
増幅器220及び他の増幅器によって適用されるゲインは、一般に、増幅を行う(例えば、1より高いゲイン)ものと考えられるが、適用されるゲインは、1のゲイン(例えば、適用されるゲインがない)、ゼロのゲイン(例えば、ゼロにされた信号)、負のゲイン(例えば、反転信号)、減衰(例えば、0と1の間の大きさのゲイン)、又は、増幅(例えば、1より高いゲイン)であってもよい。
【0051】
加えて、増幅回路210は、1以上の他の構成要素230を備えていてもよい。非限定的な例として、該他の構成要素230は、追加の増幅段を提供する増幅器、フィルタリングを行うフィルタ、及び/又は、他の処理回路部を備えていてもよい。図2では、他の構成要素230が変調回路225に直列に接続されているものとして図示されているが、該他の構成要素230は、増幅回路210の様々な地点に分散されてもよい。一例では、他の構成要素230は、変調回路215の前段にあり、信号源205からの信号を処理(例えば、フィルタリング)してフィルタリングした信号を変調回路215に供給する処理回路(例えば、フィルタ)を備えていてもよい。他の例としては、他の構成要素230は、変調回路215と増幅器220の間、及び/又は、増幅器220と変調回路225の間にある1以上の処理回路を備えていてもよい。
【0052】
増幅回路210の出力信号は、負荷235及び/又はオフセット校正回路240に供給され得る。例えば、増幅回路210の最終増幅段が、負荷235に出力信号を供給してもよい。この例では、増幅回路210が単一段の増幅器である場合、最終増幅段が、増幅器220によって提供されてもよい。他の場合、最終増幅段は、増幅器220の下流の増幅器(例えば、他の構成要素230の一部)によって提供されてもよい。
【0053】
オフセット校正回路240は、論理回路245と補償信号ジェネレータ250とを備えている。オフセット校正回路240は、増幅回路210に関連するオフセットを特定し、増幅回路210の出力にあるオフセットを補償する(その効果を低減し、消滅させる)ために増幅回路210の出力を用いてもよい。論理回路245は、増幅回路210からの出力信号に基づいた制御を設定し、補償信号ジェネレータ250に該制御信号を供給してもよい。場合によっては、制御信号は、補償信号ジェネレータ250にビットシーケンスとして供給されてもよい。補償信号ジェネレータ250は、論理回路245からの制御信号に基づいて1以上の補償信号を生成し、該補償信号を増幅回路210に印加して増幅回路210の出力を調節する。場合によっては、各補償信号は、増幅回路210に印加される電気信号(例えば、電圧信号、電流信号)であってもよい。例としては、補償信号は、増幅器220の出力に印加される1以上の電流を含んでいてもよい。異なる制御信号が、異なる補償信号(例えば、補償信号に対応する異なる値)に対応していてもよい。
【0054】
いくつかの観点では、オフセット校正回路240は、反復的に動作して増幅回路210に関連するオフセットを特定し、補償してもよい。論理回路245は、制御信号をある値に設定してもよく、補償信号ジェネレータ250は、設定された該制御信号に基づいて補償信号を生成してもよい。論理回路245は、その後、増幅回路210の現在の出力に基づいて制御信号を異なる値に設定してもよく、補償信号ジェネレータ250は、この新しい制御信号に基づいて対応する補償信号を生成してもよい。様々な実施形態において、各反復により、生成された補償信号は、オフセットを緩和する(例えば、その効果を低減し、消滅させる)補償信号に向けて収束する。一実施形態では、オフセット校正回路240は、校正ループ、オフセット低減ループ、リップル低減ループ、又は、その変形(例えば、オフセット校正ループ)ということがある。
【0055】
いくつかの実施形態では、システム200は、校正フェーズと動作フェーズとを実行してもよい。校正フェーズでは、信号源205はターンオフされてもよく、又は、オフセットを特定し、補償することを容易にするような信号(例えば、あらかじめ決められた信号)を提供するために用いられてもよい。ターンオフされる場合、信号源205は、ゼロ入力(例えば、ヌル信号とも呼ばれる)を供給すると考えてもよい。例えば、信号源205がターンオフされる場合、増幅回路210の非零の出力は、増幅回路210に関連するオフセットを示していることがある。論理回路245及び補償信号ジェネレータ250は、それぞれ、オフセットを補償する制御信号及び補償信号を生成してもよい。
【0056】
校正フェーズが完了した(例えば、オフセットが許容できるレベルに補償された)後、システム200は、信号源205によって提供された信号(例えば、音声信号)を処理する動作フェーズに移行することがある。補償フェーズにオフセットを補償するように決定された補償信号は、動作フェーズの間、固定されて用いられてもよい。オフセットに関連する情報は、(例えばメモリ160に)保存されてもよく、オフセットを補償する補償信号を生成するために取り出され/使用されてもよい。このような情報は、補償信号の値、オフセットの値、及び/又は、補償信号の生成に用いられ得る他の情報を示していてもよい。補償信号は、オフセット補償回路によって生成され、印加されてもよい。オフセット補償回路は、補償信号ジェネレータ250であってもよく、及び/又は、他の回路部であってもよい。例えば、図1の制御回路125、150のそれぞれが、オフセットに関連する(例えば、メモリ160に保存された)情報を用いて増幅回路210のためのオフセット補償信号を生成することができるオフセット補償回路を備えていてもよい。
【0057】
場合によっては、校正フェーズは、システム200の起動の間に行われてもよく、周期的に(例えば、前の校正フェーズが行われてから閾値だけの時間が経過した後)行われてもよく、オフセットのドリフトに応じて行われてもよい。例えば、オフセットのドリフトは、音声出力デバイスの出力信号におけるリップルとして検出されることがあり、これは、ユーザに可聴なことがある。この関連で、オフセットに関連するドリフトの緩和を容易にするために、校正が、ドリフトしたオフセットを緩和する補償信号を決定する(それに向けて収束する)ように行われてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、負荷235及び/又はオフセット校正回路240は、増幅回路210にスイッチ可能に接続されてもよい。例えば、校正フェーズでは、オフセット校正回路240が増幅回路210に接続されてもよく、負荷235が増幅回路210から切り離されてもよい。場合によっては、オフセット校正回路240が他の回路(例えば、他の増幅回路)に校正フェーズを実施するために用いられ得るように、オフセット校正回路240が、増幅回路210から切り離されてもよい。他の場合には、オフセット校正回路240が、増幅回路210に取り付けられたままであり、補償信号ジェネレータ250が、増幅回路210のための補償信号を生成するために用いられてもよい。いくつかの実施形態では、動的に補償信号を(例えば、オフセットの時間に対するドリフトに起因して)調節しながらシステム200を信号源205からの信号を処理するように動作させるように、校正フェーズと動作フェーズとが並列して発生してもよい。
【0059】
図3は、本開示の1以上の実施形態による、ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易にするためのシステム300を図示している。図示された構成要素の全てが必要とされないかもしれないが、1以上の実施形態は、図に示されている追加の構成要素を備えていてもよい。構成要素の配置及び種類の変更が、本願に提示された特許請求の範囲の技術的範囲から離れずになされることがある。追加の構成要素、異なる構成要素、及び/又はより少ない構成要素が設けられてもよい。
【0060】
当該システムは、信号源305と、増幅回路315と、負荷355と、オフセット校正回路360とを備えている。一実施形態では、信号源305、増幅回路315、負荷355及びオフセット校正回路360は、それぞれ、図2の信号源205、増幅回路210、負荷235及びオフセット校正回路240であってもよく、備えていてもよく、その一部であってもよい。
【0061】
信号源305は、処理すべき(例えば、増幅、フィルタリングなど)信号を供給する。増幅回路315は、チョッパ回路325、340と、増幅器330、345、350とを備えている。増幅器334、345、350は、それぞれ、第1、第2、第3段増幅器又は増幅段と呼ばれることがあり、また、単に、増幅回路315の第1、第2、第3段とそれぞれ呼ばれることがある。ある観点では、増幅回路315がチョッパ回路を備えているので、増幅回路315は、チョップト増幅回路、又は、単にチョップト増幅器と呼ばれることがある。オフセット校正回路360は、比較回路365と、逐次比較レジスタ(SAR)論理回路370と、校正DACアレイ375とを備えている。一の観点では、チョッパ回路325、340は、それぞれ、図2の変調回路215、225であってもよく、備えていてもよく、その一部であってもよい。図3は、(例えば、増幅器330、345、350を備えた)3段増幅回路を図示しているが、より少ない増幅段(例えば、1又は2つの段)が用いられてもよく、より多い増幅段(例えば、4つ以上の段)が用いられてもよい。
【0062】
増幅回路315は、また、Zfbと表記されているフィードバックインピーダンス回路(例えば、フィードバック抵抗回路)、増幅器345の補償キャパシタC21、C22、及び、増幅器350の補償キャパシタC31、C32を備えていてもよい。フィードバックインピーダンス回路と補償キャパシタは、増幅回路310に安定性を与えるための負帰還を行う。Zinは、増幅回路315の入力インピーダンス(例えば、入力抵抗)であり、フィードバックインピーダンス回路Zfbと共に増幅回路315のゲインを設定するために用いられる。
【0063】
場合によっては、図3に示されているように、オフセット校正回路360は、スイッチ390、395を介して増幅回路315にスイッチ可能に結合されていてもよい。例えば、スイッチ390、395は、オフセットを補償する補償信号を決定するために、システム300の校正フェーズの間にオフセット校正回路360を増幅回路315に結合してもよい。図3では、増幅器330のオフセットは、電圧オフセット335として表されている。
【0064】
いくつかの観点では、校正フェーズは、増幅回路315の起動の間に行われてもよく、周期的に(例えば、前の校正からある時間が経過した後)に行われてもよく、及び/又は増幅回路315の出力信号に基づいて適切に(例えば、増幅回路315の出力信号にリップルが存在する)行われてもよい。オフセット校正回路360を校正した後、オフセット校正回路360は、増幅回路315から切り離され、その後、(図2には図示されない)他の信号増幅回路の校正を行えるように該他の増幅回路に結合されてもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。動作フェーズの間、また校正フェーズの間も、増幅回路315は、負荷355に結合(例えば、接続)されている。この関連で、校正フェーズの間、負荷355を接続しておくことで増幅回路315の校正に負荷355の負荷効果が考慮に入れられる。校正フェーズの間に決定された補償信号は、動作フェーズの間、オフセットを補償するために用いられてもよい。いくつかの実施形態では、(例えばオフセットの時間的なドリフトを緩和するために)動的に補償信号を調節している間に信号源305からの信号を処理するようにシステム300を動作させるように、校正フェーズと動作フェーズとが並行して発生してもよい。
【0065】
オフセット補償がない場合(例えば、オフセット校正回路360がターンオフされている場合)における増幅回路315の様々な地点での信号の周波数領域表現の例を示す図4A図4Eを参照して増幅回路315の動作を説明する。これらの地点のいくつかでは、劣化が存在している。図4Aは、信号源305によって提供される信号の例を図示している。増幅回路315は、信号源305からの信号を受け取る。図4Bは、図3の信号(例えば、差動信号)vgp及びvgnとして表される、チョッパ回路325の出力を図示している。図示されているように、チョッパ回路325は、該信号を、周波数fchop及びfchopの奇数倍周波数にアップモジュレートする。増幅器330は、チョッパ回路325からアップモジュレート後の信号を受け取る。チョッパ回路325の例は、図6を参照しながら後述する。図4Cは、増幅器330の出力を図示している。この点について、増幅器330は、アップモジュレート後の信号を増幅し、ノイズ(例えば、フリッカノイズ及び熱雑音)とオフセット(例えば、オフセットドリフトを含んでいる)とを加える。通常、周波数fchopは、フリッカノイズの1/fコーナよりも高く設定してもよい。例えば、周波数fchopは、数十キロヘルツの範囲であってもよい。しかしながら、1/fコーナは、回路の熱雑音のレベルに依存する。もし、熱雑音電力スペクトル密度がより低ければ、1/fコーナはより高い周波数にあることがあり、これは、チョッピング周波数を、1/fコーナ周波数よりも高くすべきであることを意味している。
【0066】
チョッパ回路340は、増幅されたアップモジュレート後の信号、ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトを受け取る。図4Dは、チョッパ回路340の出力を図示している。図示されているように、チョッパ回路340は、増幅されたアップモジュレート後の信号をベースバンド(例えば、信号源305からの信号の周波数)に復調し、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトをアップモジュレートする。この関連で、チョッパ回路340は、チョッパ回路325によって行われる変調に整合する復調を行う。チョッパ回路340は、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトを、fchop及び(2m+1)fchop(例えば、fchopの奇数倍高調波)に変調する。ここで、mは、整数である。増幅器345は、チョッパ回路340の出力を受け取る。図4Eは、増幅器345の出力を示している。この関連で、増幅回路315の第2段増幅器345及び第3段増幅器350の近辺に設けられているミラー容量C21及びC22によって周波数補償が行われることで、チョッパ回路340の出力にフィルタリング効果を生じさせる周波数応答ロールオフがなされる。増幅器350は、増幅器345の出力を受け取り、該出力を処理して、図3において出力outp、outn(例えば、差動出力)として表されている増幅回路315の出力を提供する。
【0067】
フリッカノイズが、ベースバンドにある増幅された信号と異なる(例えば、高い)周波数に変調されるので、変調又はチョッピング周波数が、増幅器応答の-3dBの帯域幅よりも高ければ(これは、音声増幅器には一般に当てはまる)、フリッカノイズが、増幅された音声信号から分離され、増幅回路315の周波数応答ロールオフによって有効に緩和される。したがって、アップモジュレートされたフリッカノイズ及びオフセットは、ある程度、この増幅器応答によって緩和される。通常、アップモジュレートされたオフセット電圧の大きさは、アップモジュレートされたフリッカノイズよりも大きい。場合によっては、より高周波数のオフセットとフリッカノイズを低減し又は消滅させ、その効果を緩和するために追加のフィルタリングを用いてもよい。例えば、このフィルタリングは、図4Eに図示されているように、増幅器の後の1以上の増幅段によって行われてもよい。変調と対応する復調とは、チョッピング回路及びチョッピング周波数を参照して記述しているが、他の変調手法が用いられてもよい。
【0068】
図4C図4Eに図示されているように、増幅器330によって加えられた劣化は、増幅回路315を伝搬し、増幅回路315の出力outp、outnに存在している。この点について、出力outp、outnは、電圧オフセット335の関数である。オフセット校正回路360は、増幅回路315に関連するオフセット(例えば、電圧オフセット335として表される増幅器330のオフセット)をキャンセルするために用いられる。初期的には、SAR論理回路370は、制御信号として、nビットシーケンス(例えば、所定のnビットシーケンス)を設定し、設定されたnビットシーケンスを用いて校正DACアレイ375の動作を制御してもよい。校正DACアレイ375は、このnビットシーケンスに基づいて1以上の補償信号を生成し、該補償信号を増幅回路315に供給してもよい。場合によっては、異なるnビットシーケンスが異なる補償信号に対応している。校正DACアレイ375の例は、図7図8A図8Bに関して後述する。
【0069】
比較回路365は、増幅器350から出力outp、outnを受け取り、出力outp、outnの差に基づいて比較出力を生成する。一実施形態では、比較出力は、出力outp、outnの何れが大きいかを示していてもよい。出力outp、outnは、電圧オフセット335と補償信号の関数である。SAR論理回路370は、該比較出力を受け取り、補償信号が電圧オフセット335の低減又は除去を容易にするように調節できるように、制御信号をしかるべく設定して校正DACアレイ375を設定する。現在の増幅回路315の出力の組に基づいて比較出力を生成し、該比較出力に基づいて制御信号を設定し、該制御信号に基づいて補償信号を生成する処理を反復して繰り返し、電圧オフセット335を低減又は消滅させる補償信号にオフセット校正回路360を収束させてもよい。この点に関し、出力outp、outnへの電圧オフセット335の効果が補償信号によってキャンセルされるように、補償信号が電圧オフセット335を補償してもよい。
【0070】
ある実施形態では、補償信号は、チョッパ回路340が校正DACアレイ375からの補償信号と共に増幅器330からの出力信号を受け取るように増幅器330の出力に提供されてもよい。非零の補償信号については、補償信号は、一般に、増幅回路315の出力outp、outnに作用を及ぼす。
【0071】
オフセット校正回路360を動作させる一例として、SAR論理回路370は、M6:0として表記される7ビットシーケンス(例えば、7ビットコードともいう)を生成してもよい。ビットシーケンスM6:0は、7つのビットb6b5b4b3b2b1b0として表記されてもよい。ここで、b6は、最上位ビット(MSB)であり、b0は、最下位ビット(LSB)である。初期的に、SAR論理回路370は、制御信号を符号1000000に設定し、この符号を校正DACアレイ375に供給してもよい。校正DACアレイ375は、符号1000000に従って補償信号を生成し、この補償信号を増幅回路315に印加してもよい。増幅回路315の出力では、補償信号が増幅回路315に印加された後、比較回路365が、outpとoutnを比較する。
【0072】
場合によっては、比較回路365は、outpとoutnのどちらが大きいかを判断してもよい。outpが大きい場合、SAR論理回路370は、校正DACアレイ375に供給される次の符号が1100000であるように、MSBを1に維持し、次のビットb5を1に設定してもよい。校正DACアレイ375は、符号1100000に従って補償信号を生成し、その補償信号を増幅回路315に印加してもよい。outnが大きい場合、SAR論理回路370は、校正DACアレイ375に供給される次の符号が0100000であるように、MSBを0に設定し、次のビットb5を1に設定してもよい。校正DACアレイ375は、符号0100000に従って補償信号を生成し、その補償信号を増幅回路315に印加してもよい。この、現在のビットbkを1に維持又は0に反転し、次のビットbk-1を1に設定する処理は、ビットシーケンスの7個のビットのそれぞれについて反復的に実行され得る。各nビットシーケンスは、校正DACアレイ375によって生成されるべき補償信号の対応する組に対応していてもよい。
【0073】
比較回路365がoutpとoutnの比較を行い、SAR論理回路370が比較回路365の出力に基づいて符号を生成し、校正DACアレイ375がSAR論理回路370からの符号に従って増幅器330の出力に電流信号を供給する各繰り返しにより、校正DACアレイ375からの補償信号は、電圧オフセット335を緩和する(例えば、キャンセルし、補償する)信号に収束する。電圧オフセット335が補償されて、そうしなければリップルとして現れるアップモジュレートされたオフセットが、増幅回路315の出力outp、outnにおいて除去され、又は、実質的に低減される(例えば、存在するリップルが小さい)。
【0074】
例えば、校正の終わりにおいて、校正DACアレイ375が符号0100100に従って補償信号を生成し、該補償信号を増幅回路315に印加して電圧オフセット335を補償するように、制御信号に対応する最後のビットシーケンスは、0100100であることがある。場合によっては、最後のビットシーケンスを示す情報が(例えばメモリ160に)保存され、及び/又は、該情報に基づいて補償信号を生成して電圧オフセット335を補償するようにオフセット校正回路を設定するために用いられてもよい。7ビットの校正符号が用いられているが、用途に基づき、必要に応じてより少ない又はより多いビットが使用可能である。例えば、より正確なリップル低減のためには、より高ビットの校正コードが用いられてもよい。
【0075】
SAR論理回路370は、数回の繰り返し(例えば、クロックサイクル)の後でオフセットを補償する(例えば、オフセットをキャンセルする)補償信号を決定するために用いられてもよい。例えば、7ビットの制御信号について、SAR論理回路370は、収束のために7クロックサイクル(例えば、それに代えて7の整数倍のクロックサイクル)を用いてもよい。この例では、各クロックサイクルは、制御信号のビットを0又は1の何れに設定すべきかを判断するために用いられる。一旦、オフセットが決定されると、例えば所定数の繰り返しの後、及び/又は、一旦、オフセットが十分に抑制されると(例えば、音声出力信号にリップルがもはや存在しなくなると)、用いられるべき補償信号が固定されてもよく、及び/又は、補償信号を示す情報が保存されてもよい。
【0076】
補償信号が収束しない場合、オフセット校正回路360は、校正DACアレイ375によって生成可能な補償信号の値の範囲を調節するように再設定されてもよい。この場合、SAR論理回路370によって生成された既存の制御信号が、異なる補償信号の組に再割り当てされてもよく、補償信号の異なる組に対応する異なる制御信号の組が、SAR論理回路370によって用いられてもよい。
【0077】
オフセット校正回路360が、比較回路365とSAR論理回路370と校正DACアレイ375とを備えているが、他の構成要素が、代わりに、及び/又は、加えて使用され得る。例として、フラッシュADC及び/又は他のADCが、SAR論理回路370の代わりに及び/又は加えて用いられもよい。他の例として、オフセット校正回路360は、再帰的に、補償信号を生成し、増幅回路315の出力における変化に基づいて補償信号を調節し、オフセットを補償する補償信号に収束する構成要素の組み合わせを備えていてもよい。更に、いくつかの実施形態では、図3に示すように、オフセットがオフセット校正回路360によって緩和される前にチョッピングがチョッパ回路325によって行われてもよい。他の実施形態では、チョッピングが、オフセットがオフセット校正回路360によって補償された後に行われてもよい。他の実施形態では、チョッピングとオフセットの補償とを、同時に行ってもよい。
【0078】
図3は、差動出力と、関連する差動回路とを図示しているが、シングルエンド出力(例えば、シングルエンドのヘッドホン用)が、回路を適切に調節した上で用いられてもよい。例えば、比較回路365がシングルエンド出力信号を接地と比較し、SAR論理回路370が比較出力に基づいて制御信号を生成し、校正DACアレイ375がこの制御信号に基づいて補償信号を生成してもよい。
【0079】
図5は、本開示の1以上の実施形態による、フリッカノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易にするための例示的なプロセス500のフロー図を示している。例示的なプロセス500は、他のシステムと共に用いられ得るが、ここでは、例示の目的で、例示的なプロセス500を、システム300を参照して記載する。1以上の動作が、要求に即して、組み合わされ、省略され、及び/又は、他の順序で行われてもよいことに留意されたい。
【0080】
ブロック505では、チョッパ回路325が信号を変調する。チョッパ回路325は、該信号をチョッパ周波数fchop及びfchopの奇数倍にアップコンバートしてもよい。ブロック510では、増幅器330が、チョッパ回路325からの変調後の信号を増幅する。このような増幅は、変調後の信号の信号電力を増加させるが、ノイズ(例えば、フリッカノイズ、熱雑音)、オフセット、オフセットドリフトのような劣化を付け加えることがある。ブロック515では、チョッパ回路340は、増幅された変調後の信号を復調する。場合によっては、チョッパ回路340は、増幅された変調後の信号を(例えば、信号源305からの信号の周波数に)ダウンコンバートし、(例えば、fchop及びfchopの奇数倍高調波に)劣化をアップコンバートする。
【0081】
ブロック520では、SAR論理回路370は、制御信号を所定値に設定する。一の観点では、SAR論理回路370は、制御信号をMSBにおいて1に設定し、他のビットについては0に(例えば、1000000)設定する。ブロック525では、校正DACアレイ375が、制御信号に基づいて補償信号を生成する。ブロック530では、校正DACアレイ375は、補償信号を増幅回路315に印加する。例えば、校正DACアレイ375は、補償信号(例えば、電流信号)を増幅器330の出力(例えば、出力ライン)に印加してもよい。
【0082】
ブロック535では、校正が完了したかに関して判断する。一実施形態では、SAR論理回路370を用いる際に、校正は、各繰り返しにおいて、増幅回路315の出力に応じて制御信号のビットのそれぞれが設定された(例えば、ビットシーケンスを1000000に設定することで開始する)ときに校正が完了する。他の観点では、例えばオフセットが十分に補償されたときのように、制御信号のビットのそれぞれが順次に設定される(例えば、対応する補償信号がテストされ)前に校正が完了していてもよい。例えば、nビットシーケンスを用いるSAR論理回路370については、オフセットは、全nビットが個別に設定される前に十分に補償されるように特定されてもよい。
【0083】
校正が完了していないと判断されたら、プロセス500は、校正の次の繰り返しのためにブロック540に進む。ブロック540では、SAR論理回路370は、増幅回路315の出力に基づいて制御信号を調節する。増幅回路315の出力は、ブロック530で設定されて印加された補償信号に少なくとも部分的に基づいている。場合によっては、SAR論理回路370は、増幅回路315の出力(例えば、差動出力)に応じて比較回路365によって生成された比較出力に基づいて制御信号を調節してもよい。校正DACアレイ375は、その後、(ブロック525で)調節された制御信号に基づいて補償信号を生成し、補償信号を(ブロック530で)増幅回路315に印加する。
【0084】
校正が完了したと判断した場合、プロセス500は、ブロック545に進む。ブロック545では、オフセット校正回路360(例えば、SAR論理回路370)は、校正フェーズの最後の繰り返しにおいて校正DACアレイ375によって生成された補償信号を示す情報を供給する。この情報は、補償信号の値、補償信号に対応する制御信号の値、及び/又は、一般に、オフセットを緩和するために印加すべき補償信号を決定する(例えば、導き出す)ために用いられ得る如何なる信号を含んでいてもよい。ブロック550では、オフセット校正回路が、該保存された情報に対応する補償信号を増幅回路315に印加してオフセットを緩和する。オフセット校正回路は、制御回路125及び/又は150、及び/又は、補償信号を供給してオフセットを緩和することができる他の回路に実装されてもよい。オフセット校正回路360が校正後に増幅回路315に接続されたままになる場合には、校正DACアレイ375が補償信号を印加するために用いられてもよい。
【0085】
図6は、一実施形態によるチョッパ回路325の例を図示している。チョッパ回路325は、トランジスタ605、610、615及び620を備えている。一実施形態では、トランジスタ605、610、615及び620は、ハイの信号状態からローの信号状態に、及び、その逆に切り替わる、周波数がfchopの矩形波を用いて制御されてもよい。この点に関し、トランジスタ605、610は、ハイからロー及びその逆に切り替わる、周波数がfchopの第1の矩形波に基づいてオンオフし、トランジスタ615、620は、ハイからロー及びその逆に切り替わる、周波数がfchopの第2の矩形波に基づいてオンオフされる。第1の矩形波と第2の矩形波は、相補の矩形波であり、第2の矩形波がローの信号状態(例えば、論理0)にあるとき、第1の矩形波がハイの信号状態(例えば、論理1)になり、第2の矩形波がハイの信号状態にあるとき、第1の矩形波がローの信号状態になる。トランジスタ605、610がオンされ、トランジスタ615、620がオフされると、チョッパ回路325の入力inn、inpは、それぞれ、出力vgn、vgpに結合される。トランジスタ605、610がオフされ、トランジスタ615、620がオンされると、入力inn、inpは、それぞれ、出力vgp、vgnに結合される。図6は、チョッパ回路325に関して記述しているが、同一又は類似の構成が、チョッパ回路340に用いられ得る。
【0086】
図7は、本開示の1以上の実施形態による、校正DACアレイ375と、関連する増幅回路315への接続の例を示している。校正DACアレイ375は、電流生成器とも呼ばれることがある調整可能電流源705、710を備えている。調整可能電流源705、710は、それぞれ、電流I、Iを生成してもよい。場合によっては、I、Iは、同一の大きさを有しているが逆の極性を有していてもよい。図3を参照して、調整可能電流源705が電流Iを増幅器330の一の出力に供給してもよく、調整可能電流源710が電流Iを増幅器330の他の出力に供給してもよい。この関連で、校正DACアレイ375によって生成される補償信号は、電流信号I、Iを含んでいる。図7において、電流I、Iは、電流を増幅器330の1つの側に加え、他の側に加えず、又は、電流を1つの側に加え、他の側から同じ電流を減じることによって、増幅回路315に関連するオフセット(例えば、電圧オフセット335)を補償する(例えば、キャンセルする)ために用いられてもよい。電流I、Iは、零化電流ということがある。
【0087】
図8Aは、本開示の1以上の実施形態による、調整可能電流源705の例を図示している。調整可能電流源705は、電流源のアレイを備えていてもよい。各電流源は、1以上のトランジスタ(例えば、n型MOSトランジスタ、p型MOSトランジスタ、及び/又は、他のトランジスタ)を用いて実装されてもよい。図8Aでは、調整可能電流源705は、接地に接続されたn型MOSトランジスタであるトランジスタ805、810、815を備えている。トランジスタ805、810、815は、それぞれ、電流In6、In5、及び、In0を接地に排出するのを助ける。トランジスタ810と815の間の楕円は、1以上の追加のトランジスタを表すことがある。校正DACアレイ375は、SAR論理回路370から制御信号を受け取ってもよい。この制御信号に基づき、校正DACアレイ375は、各電流源を活性化し(例えば、オン、ターンオンし)、又は非活性化し(例えば、オフし、ターンオフし)、そうするに当たって、増幅器330の一の側に零化電流を加え、その出力においてオフセットを零化し、これにより、outpとoutnの間のオフセットを補償(例えば、零化)してもよい。
【0088】
図8Aにおいて、調整可能電流源705は、各電流源が対応するスイッチを介して活性化又は非活性化される、電流In0、In1、・・・、In6を供給するn=7個の電流源として表されることがある。図8Aは、各列に1つの電流源を示しているが、図8Aに図示されている各電流源が、1以上の電流源を用いて実装されてもよい。例えば、電流源In5が、電流In5を供給する単一の信号源であってもよく、等価的に電流In5を供給する複数の信号源であってもよい。同様に、図8Aに図示されている各スイッチは、単一のスイッチを表す場合があり、スイッチのスタックであってもよい。場合によっては、例えば、In0=I、In1=2I、…、In6=2Iのように、電流が、2進数の分布をもって発生されてもよい。
【0089】
図8Bは、本開示の1以上の実施形態による、調整可能電流源710の例を図示している。図8Aの記載は、全体として、図8Bにも当てはまる。図8Bにおいて、調整可能電流源710は、接地に接続され、電流Ip6、Ip5、及び、Ip0を接地に排出するのを助けるn型MOSトランジスタであるトランジスタ820、825、830を備えている。トランジスタ825と830の間の楕円は、1以上の追加のトランジスタを表すことがある。調整可能電流源710は、各電流源が対応するスイッチを介して活性化又は非活性化され、電流Ip0、Ip1、…、Ip6を供給するn=7個の電流源として表されることがある。場合によっては、例えば、Ip0=-I、Ip1=-2I、…、Ip6=-2Iのように、電流が、2進数の分布をもって発生されてもよい。
【0090】
一実施形態では、調整可能電流源710の電流源は、調整可能電流源710の対応する電流源と同一の大きさで逆の極性の電流を供給してもよい。例えば、Ip6がIn6と同一の大きさで反対の極性を有していてもよく、Ip5がIn5と同一の大きさで反対の極性を有していてもよい、等である。
【0091】
場合によっては、図7に示されているIは、I=In0+In1+In2+In3+In4+In5+In6で供給されてもよく、図7に示されているIは、I=Ip0+Ip1+Ip2+Ip3+Ip4+Ip5+Ip6で供給されてもよい。一の観点では、SAR論理回路370からの制御信号M6:0=bが、スイッチを制御する個別の制御信号mn6、mn5、・・・、mn0、及び、mp6、mp5、・・・、mp0を生成するために用いられてもよい。ある場合には、SAR論理回路370からのビットシーケンスの各ビットが、対応する電流源を活性化し、非活性化してもよい。図8A図8Bは、SAR論理回路370からの制御信号のビットの数と同一の数の列(例えば、同一の数の電流源及び対応するスイッチ)を図示しているが、列の数は、制御信号のビットの数と同一である必要はない。
【0092】
図9は、本開示の1以上の実施形態による、時間の関数としての増幅回路315の出力電圧outp、outnの差の例示的なグラフ900を図示している。このグラフ900は、遷移領域における熱雑音及びフリッカノイズの効果を含む複合信号シミュレーションの結果である。ノイズ、オフセット及びオフセットドリフトの緩和を容易化するための他のシステムが他の実施形態では使用され得るが、例示の目的として、図9は、システム300を参照して記載している。
【0093】
グラフ900では、校正フェーズと動作フェーズとが特定されている。図示されている実施形態における校正フェーズの間、増幅回路315の出力で測定された信号をオフセットとより容易に関連付けることができるように、増幅回路315には信号が供給されていない(例えば、信号源305がオフされているか、もしくはゼロ信号を供給していると考えられる)。グラフ900に図示されているように、校正DACアレイ375によって増幅回路315に供給される補償信号は、出力電圧outp、outnの差を0Vに向けて収束させ、増幅回路315に関連するオフセット(例えば、電圧オフセット335)をキャンセルする。場合によっては、オフセットは、音声用途では数百マイクロボルトであり得る仕様目標よりも低減され得る。校正フェーズは、(n+1)クロックサイクルを要する。ここで、nは、例示的なSARベースの校正回路のビット解像度である。音声用途では、校正クロックは、音声の帯域よりも高い周波数で動作することがある。図示された例は、25kHzで動作しており、7ビットのSAR解像度では、おおよそ280マイクロ秒を要する。
【0094】
増幅器330に印加されるべき補償信号を示す情報は、校正フェーズの終わりに格納され、補償信号を生成してオフセットを緩和するために動作フェーズの間に用いられてもよい。動作フェーズの間、変調/復調回路325、340がfchopで刻時され、増幅回路315によって増幅し、負荷355に供給すべき信号(例えば音声信号)を供給するために信号源305がターンオンされてもよい。
【0095】
一実施形態では、オフセット校正回路360が、(例えば、他の増幅回路についてオフセット校正回路360を用いることができるように)校正フェーズの後に増幅回路315から切り離されてもよい。オフセット校正回路360は、その後の校正フェーズのために増幅回路315に再接続されることがある。他の観点では、オフセット校正回路360は、動作フェーズの間、増幅回路315に接続されたままであり、動作フェーズの間、オフセット及び関連するドリフトを監視し、及び/又は補償し続けてもよい。
【0096】
図10Aは、オフセット緩和がない場合の増幅回路315の出力電圧outp、outnのグラフ1005を図示している。図10Bは、オフセット緩和を行った場合の出力電圧outp、outnのグラフ1010を図示している。図10C及び図10Dは、それぞれ、グラフ1005、1010の部分1015、1020の拡大した図である。図10Cに図示されているように、チョッピングされたオフセット335によるリップルが、正弦波の音声波形に重畳された矩形波として現れている。図10Dでは、リップルが緩和されている。図10Cは、音声波形に重畳されている矩形波としてリップルを図示しているが、場合によっては、リップルは、音声波形に重畳された三角波として現れることがある。
【0097】
当てはまる場合には、本開示に提供されている様々な実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて実施され得る。また、当てはまる場合には、本願に提示した様々なハードウェアの構成要素及び/又はソフトウェアの構成要素は、本開示の範囲から離れずに、ソフトウェア、ハードウェア及び/又はその両方を備える複合の構成要素に組み合わされることがある。当てはまる場合、本願に提示されている様々なハードウェアの構成要素及び/又はソフトウェアの構成要素は、本開示の範囲から離れずに、ソフトウェア、ハードウェア及び/又はその両方を備えるサブ構成要素に分離されることがある。加えて、当てはまる場合には、ソフトウェアの構成要素は、ハードウェアの構成要素として実施され得るし、また逆も同様であると考えられる。
【0098】
本開示によれば、プロフラムコード及び/又はデータのようなソフトウェアは、1以上のコンピュータ読み取り可能媒体に保存され得る。本願に特定されたソフトウェアは、ネットワーク化された、及び/又は、そうではない、1以上の汎用又は特定用途のコンピュータ及び/又はコンピュータシステムを用いて実行され得ると考えられる。当てはまる場合には、本願に記載されている特徴を提供するように、本願に記載された様々なステップの順序は変更され、複合ステップに組み合わされ、及び/又はサブステップに分離されることがある。
【0099】
前述の開示は、本開示を、開示されている、まさにその形態や特定の使用分野に限定することを意図したものではない。したがって、明示的に記載され、又は、本願に示唆されているものの何れであっても、様々な代替の実施形態及び/又は本開示への変更が、本開示に照らして可能であるであると考えられる。本開示の上記された実施形態をもってすれば、当業者は、本開示の範囲から離れることなく形態及び詳細において変更がなされ得ると認識するであろう。したがって、本開示は、クレームによってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D