(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073557
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】リチウムイオン伝導性固体電解質により被覆された集電体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240522BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240522BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240522BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240522BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240522BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240522BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240522BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/134
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】42
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039570
(22)【出願日】2024-03-14
(62)【分割の表示】P 2020557143の分割
【原出願日】2019-01-09
(31)【優先権主張番号】62/615,118
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】サカモト ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン トラヴィス
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ネイザン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017AS03
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017HH03
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA13
5H050EA23
5H050FA03
5H050FA18
5H050GA18
5H050GA22
5H050GA24
5H050HA04
5H050HA17
5H050HA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気化学デバイスを形成するための物品、および電気化学デバイスを作成する方法を提供する。
【解決手段】本物品は金属製の集電体を備えており、集電体は、当該集電体とイオン伝導性固体電解質材料とが密接するようにイオン伝導性固体電解質材料によって被覆されている。被覆された集電体とイオン伝導固体電解質材料との間に、イオン伝導固体電解質材料と接触するように配置されたカソード材料に含まれるリチウムイオンから、リチウム金属アノードをインシチュで形成することができる。本物品からバイポーラ電気化学セルを構築することができる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスを形成するための物品であって、
複数の層状構造を備えており、各層状構造は
(i)固体電解質材料により被覆された集電体と、
(ii)前記固体電解質材料と接触するカソード活物質と、
を有し、
1つの前記層状構造の集電体は、他の1つの前記層状構造のカソード活物質と接触することを特徴とする物品。
【請求項2】
各層状構造は未形成状態である、
請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記集電体は、金属又は金属合金を含む1つの材料を含む、
請求項1記載の物品。
【請求項4】
前記集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項3記載の物品。
【請求項5】
前記集電体は、前記固体電解質材料と少なくとも部分的に接触する第1の材料と、他の1つの前記層状構造の前記カソード活物質と少なくとも部分的に接触する第2の材料と、を含むバイメタルを含有する、
請求項1記載の物品。
【請求項6】
前記第1の材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項5記載の物品。
【請求項7】
前記第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項5記載の物品。
【請求項8】
前記集電体は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項1記載の物品。
【請求項9】
前記固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項1記載の物品。
【請求項10】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープLLZO、タンタルドープLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択されたものである、
請求項9記載の物品。
【請求項11】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含む、
請求項10記載の物品。
【請求項12】
前記固体電解質材料は、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティング焼結法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、無電解化学堆積法、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つを用いて、前記集電体を被覆している、
請求項1記載の物品。
【請求項13】
前記固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項1記載の物品。
【請求項14】
前記カソード活物質は、層状酸化物、オリビン型リン酸塩、スピネル型酸化物、不規則岩塩型酸化物、コンバージョン正極、硫黄、リチウムチタン硫化物、酸化バナジウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された活物質を含む、
請求項1記載の物品。
【請求項15】
前記活物質は、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LNO)、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸ニッケルリチウム(LNP)、リン酸コバルトリチウム(LCP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム・ニッケル・マンガン酸化物(LMNO)、リチウム・ニッケル・ジルコニウム酸化物、リチウムジルコニウム酸化物、リチウム・マグネシウム・ジルコニウム酸化物、リチウム・ニッケル・タンタル酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウム鉄硫化物、リチウム銅フッ化物、リチウム鉄フッ化物、又はこれらの混合物のうち少なくとも1つを含む、
請求項14記載の物品。
【請求項16】
前記カソード活物質は、イオン伝導物質と合わさって複合カソード層を形成する、
請求項1記載の物品。
【請求項17】
前記イオン伝導物質は、酸化物固体電解質、リン酸塩固体電解質、硫黄系固体電解質、ポリマー系固体電解質、又はゲル系電解質のうち少なくとも1つを含む、
請求項16記載の物品。
【請求項18】
前記カソード活物質の層は、1nm~400μmの厚さを有する、
請求項1記載の物品。
【請求項19】
前記カソード活物質と前記集電体とは平面状の同一形状を有し、各層状構造において互いに直接重ねられている、
請求項1記載の物品。
【請求項20】
電気化学デバイスを作成する方法であって、
(a)カソード活物質の層を準備するステップと、
(b)固体電解質材料により被覆された集電体を準備するステップと、
(c)第1の層状構造を作成するために、前記固体電解質材料に接触させるように前記カソード活物質の層を配置するステップと、
(d)ステップ(a)~(c)を繰り返して第2の層状構造を作成するステップと、
(e)前記第1の層状構造の集電体を前記第2の層状構造のカソード活物質に接触させるように前記第1の層状構造と前記第2の層状構造とを組み合わせるステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
ステップ(e)の手順を用いて組み合わされる複数の層状構造を作成するために、ステップ(d)を複数回繰り返す、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記集電体は、前記固体電解質材料と少なくとも部分的に接触する第1の材料と、隣の前記層状構造のカソード活物質と少なくとも部分的に接触する第2の材料と、を含むバイメタルを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記第1の材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記集電体は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項20記載の方法。
【請求項27】
前記固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項20記載の方法。
【請求項28】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープLLZO、タンタルドープLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料から成る、
請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含む、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記固体電解質材料は、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティ
ング焼結法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、又は無電解化学堆積法のうち少なくとも1つを用いて、前記集電体を被覆する、
請求項20記載の方法。
【請求項31】
前記固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項20記載の方法。
【請求項32】
前記カソード活物質の層は、層状酸化物、オリビン型リン酸塩、スピネル型酸化物、不規則岩塩型酸化物、コンバージョン正極、硫黄、リチウムチタン硫化物、酸化バナジウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された活物質を含む、
請求項20記載の方法。
【請求項33】
前記活物質は、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LNO)、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸ニッケルリチウム(LNP)、リン酸コバルトリチウム(LCP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム・ニッケル・マンガン酸化物(LMNO)、リチウム・ニッケル・ジルコニウム酸化物、リチウムジルコニウム酸化物、リチウム・マグネシウム・ジルコニウム酸化物、リチウム・ニッケル・タンタル酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウム鉄硫化物、リチウム銅フッ化物、リチウム鉄フッ化物、又はこれらの混合物のうち少なくとも1つを含む、
請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記カソード活物質の層は、1nm~400μmの厚さを有する、
請求項20記載の方法。
【請求項35】
前記カソード活物質の層を配置するステップは、前記カソード活物質の層と前記集電体とが互いに合同に重なり合うように前記固体電解質材料に前記カソード活物質の層を配置することを含む、
請求項20記載の方法。
【請求項36】
前記方法はさらに、
(f)前記層状構造を包囲及び保護するように構成された筐体内に前記層状構造を入れるステップ
を有する、
請求項20記載の方法。
【請求項37】
前記方法はさらに、
(g)各固体電解質材料層とその隣の集電体との間にアノード層を生じさせる形成電流を前記層状構造に流すステップ
を有する、
請求項20記載の方法。
【請求項38】
前記アノード層はリチウム金属を含む、
請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記アノード層は実質的にリチウム金属から成る、
請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記アノード層は1nm~100μmの厚さを有する、
請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記アノード層は前記集電体の表面に沿って均一に形成する、
請求項37記載の方法。
【請求項42】
前記形成電流は0.001~150Aである、
請求項37記載の方法。
【請求項43】
前記形成電流は0.01~48時間にわたって供給される、
請求項37記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2018年1月9日に出願された米国特許出願第62/615,118号に係る優先権を主張するものである。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
本発明は、米国エネルギー省により裁定されたDE-AR0000653の政府支援によりなされたものである。政府は本発明において所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、金属製の集電体を備えた物品に関し、当該集電体は、集電体とイオン伝導性固体電解質材料とが密接して、カソード材料中に含まれるリチウムイオンからリチウム金属アノードをインシチュ(その場)で形成できるように、イオン伝導性固体電解質材料によって被覆されている。本発明はまた、本発明の方法を使用して前記物品から構成されたバイポーラ電気化学セルにも関する。
【0004】
関連分野の記述
リチウムイオン(Liイオン)電池技術は過去10年で大きく進歩しており、その市場規模は2019年までに105億ドルになると予測されている。本分野の現在のリチウムイオン電池は、2つの電極(アノード及びカソード)と、両電極が接触することを阻止しつつLi+イオンを通すセパレータ材料と、電解質(リチウム塩を含む有機液体である)と、を備える。充放電の際に両電極間でLi+イオンが交換される。
【0005】
電動自動車、グリッド蓄電装置及び家庭用電気機器類を含む多くの用途において、寿命が延長し、容量が増加し、安全面の問題が軽減された電池が必要とされている。長年にわたり、リチウム(Li)金属は「理想的」なアノード材料と考えられてきた。その理由は、リチウム金属は不活性のホスト材料又は導電性のスキャフォールド(scaffold)を必要とすることなく、軽量のリチウムを金属の形態で貯蔵できる能力を有するからである。リチウムは3860mAh/gの容量と、非常に低い理論的アノード電位とを提供することができ、これにより、リチウム硫黄電池及びリチウム空気電池を含めた次世代の電池システム技術を可能にすることができる。残念なことに、電極-電解質間の相互作用に起因する反応性問題が、リチウム金属電池の充放電サイクルの延長を阻害してしまう。このような相互作用は不規則な樹状突起構造が形成される原因となり、これによりクーロン効率の低下と、場合によっては不具合とが引き起こされる。このような種類の不具合は電池寿命を短縮するだけでなく、ガスの発生(gas evolution)と、可燃性の電解質の点火の可能
性があることとの結果として、安全上の危険性も引き起こし得る。しばしば研究対象となることが多いこの問題の解決手段の1つは、アノードからの樹状突起成長を機械的に阻止する固体電解質電池技術を開発することである。
【0006】
現在、従来技術(SOA)のリチウムイオン電池で用いられている液体電解質は、例えばリチウム金属アノードや高電圧カソード等を用いるコンセプト等の先進の電池コンセプトと両立することができない。さらに、SOAリチウムイオン電池で用いられる液体は可燃性であり、熱暴走が起きると燃焼しやすい。SOAで用いられる液体に代えて固体電解質を用いることにより、先進のセル化学構造を可能にすると同時に燃焼のリスクも無くすことができる。過去10年の間に複数の固体電解質が特定され、重点的に研究されている。これら複数の新規の固体電池は、SOAリチウムイオン電池の3~4倍のエネルギー密度と、電池パックコストの20%削減とを保証することができる。
【0007】
より高性能の電池技術を達成する他の一アプローチは、バイポーラセル構成を用いることである。これも、エネルギー密度を増大し電池パックコストを削減することができる。バイポーラセル構成は、各単セルを層状形態で重ねることができる。この構造では、電池の各セルが、当該セルに隣接する隣のセルのうち1つのセルと集電体を共用する。この層状形態の各端部に集電体が1つずつ設けられており、この集電体は完成後のアノード及びカソードとして働く。セル層のこのような「サンドウィッチ状」のパッキングにより、伝統的なモノポーラ電池における接続と比較して電流路を短くし、表面積を増大することができる。かかるバイポーラ構成によって最終的に、電力損失の低下と、製造コストの削減と、電池の軽量化とを実現できるという結果が得られる。残念ながら、バイポーラ電池技術の商業化は、製造プロセスの開発が遅いことと、電解質漏れを防止するように各セルを封止できないこととにより、大きく阻害されている。
【0008】
よって、上記にて論じた電池構成の欠点を解消する改善された電池構成及び製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本願開示は、例えばバイポーラ電池等の電気化学デバイスを形成するための物品と、電気化学デバイスの作成方法とを提供する。本物品は、複数の積層されたカソード活物質と、固体電解質により被覆された集電体とから構成された複数の層状構造を備えることができる。物品に形成電流を流すと、各集電体と固体電解質との間にアノード層を形成することができ、その新規に形成された電気化学デバイスをバイポーラ電池として動作させることができる。
【0010】
かかる構成と、アノード層のインシチュ生成(その場での生成)とにより、従来のバイポーラ電池構成に対して数多くの利点が奏される。例えば、物品における初期のスタックに必要なのはカソード活物質と被覆された集電体という2つの構成要素のみであるため、製造プロセスは相当簡略化される。その上、固体電解質を用いることは電解質漏れの可能性を低くし、形成された後のアノード層からの樹状突起成長を阻止するのを助ける。また、アノード層のインシチュ形成は、物品の作製後いつでも安全に行うことができ、これにより物品を安全に未形成状態で輸送することができる。さらに、固体電解質により被覆された集電体は幅広い様々な種類のカソード活物質と両立可能なものである。
【0011】
一側面では、本願開示は電気化学デバイスを形成するための物品を提供する。本物品は複数の層状構造を備えており、各層状構造は(i)固体電解質材料により被覆された集電
体と、(ii)固体電解質材料と接触するカソード活物質と、を有する。1つの前記層状構造の集電体は、他の1つの前記層状構造のカソード活物質と接触することができる。物品の各層状構造は未形成状態とすることができる。集電体は、金属又は金属合金を含む1つの材料を含むことができる。
【0012】
集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含むことができる。集電体は、固体電解質材料と少なくとも部分的に接触する第1の材料と、他の1つの前記層状構造のカソード活物質と少なくとも部分的に接触する第2の材料と、を含むバイメタルを含有することができる。第1の材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。集電体は、1nm~100μmの厚さを有することができる。
【0013】
固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含むことができる。固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO、Li7La3Zr2O12)、アルミニウムドープLLZO(例えばLi6.25La2.7Zr2Al0.25O12等)、タンタルドープLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(lithium aluminum titanium phosphate
、LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(lithium aluminum germanium phosphate、LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含むことができる。固体電解質材料は、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティング焼結法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、無電解化学堆積法(electroless chemical deposition)、又はこれらの組み合わせのう
ち少なくとも1つを用いて、集電体を被覆することができる。固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有することができる。
【0014】
カソード活物質は、層状酸化物、オリビン型リン酸塩、スピネル型酸化物、不規則岩塩型酸化物、コンバージョン正極、硫黄、リチウムチタン硫化物、酸化バナジウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された活物質を含むことができる。活物質は、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LNO)、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸ニッケルリチウム(LNP)、リン酸コバルトリチウム(LCP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム・ニッケル・マンガン酸化物(LMNO)、リチウム・ニッケル・ジルコニウム酸化物、リチウムジルコニウム酸化物、リチウム・マグネシウム・ジルコニウム酸化物、リチウム・ニッケル・タンタル酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウム鉄硫化物、リチウム銅フッ化物、リチウム鉄フッ化物、又はこれらの混合物のうち少なくとも1つを含むことができる。カソード活物質は、イオン伝導物質と合わさって複合カソード層を形成することができる。このイオン伝導物質は、酸化物固体電解質、リン酸塩固体電解質、硫黄系固体電解質、ポリマー系固体電解質、又はゲル系電解質のうち少なくとも1つを含むことができる。カソード活物質は、1nm~400μmの厚さを有することができる。カソード活物質と集電体とは平面状の同一形状を有することができ、各層状構造において互いに直接重ねることができる。
【0015】
他の一側面では、本願開示は電気化学デバイスの作成方法を提供し、本方法は(a)カソード活物質の層を準備するステップと、(b)固体電解質材料により被覆された集電体を準備するステップと、(c)第1の層状構造を作成するために、固体電解質材料に接触させるようにカソード活物質の層を配置するステップと、(d)ステップ(a)~(c)を繰り返して第2の層状構造を作成するステップと、(e)第1の層状構造の集電体を第2の層状構造のカソード活物質に接触させるように第1の層状構造と第2の層状構造とを組み合わせるステップと、を有する。ステップ(d)は、ステップ(e)の手順を用いて組み合わされる複数の層状構造を作成するために、複数回繰り返すことができる。
【0016】
本方法では集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含むことができる。本方法では集電体は、固体電解質材料と少なくとも部分的に接触する第1の材料と、その隣の層状構造のカソード
活物質と少なくとも部分的に接触する第2の材料と、を含むバイメタルとすることができる。第1の材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。本方法では、集電体は1nm~100μmの厚さを有することができる。
【0017】
本方法では固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含むことができる。固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープLLZO、タンタルドープLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料から成ることができる。固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含むことができる。
【0018】
本方法では固体電解質材料は、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティング焼結法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、又は無電解化学堆積法のうち少なくとも1つを用いて、集電体を被覆することができる。固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有することができる。
【0019】
本方法ではカソード活物質の層は、層状酸化物、オリビン型リン酸塩、スピネル型酸化物、不規則岩塩型酸化物、コンバージョン正極、硫黄、リチウムチタン硫化物、酸化バナジウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された活物質を含むことができる。本方法では活物質は、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LNO)、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸ニッケルリチウム(LNP)、リン酸コバルトリチウム(LCP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム・ニッケル・マンガン酸化物(LMNO)、リチウム・ニッケル・ジルコニウム酸化物、リチウムジルコニウム酸化物、リチウム・マグネシウム・ジルコニウム酸化物、リチウム・ニッケル・タンタル酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウム鉄硫化物、リチウム銅フッ化物、リチウム鉄フッ化物、又はこれらの混合物のうち少なくとも1つを含むことができる。カソード活物質の層は、1nm~400μmの厚さを有することができる。
【0020】
本方法では、カソード活物質の層を配置するステップは、カソード活物質の層と集電体とが互いに合同に重なり合うように固体電解質材料にカソード活物質の層を配置することを含むことができる。
【0021】
本方法はさらに、層状構造を包囲及び保護するように構成された筐体内に層状構造を入れるステップを有することができる。本方法はさらに、各固体電解質材料層とその隣の集電体との間にアノード層を生じさせる形成電流を層状構造に流すステップを有することができる。
【0022】
本方法では、アノード層はリチウム金属を含むことができる。本方法では、アノード層は実質的にリチウム金属から成ることができる。アノード層は1nm~100μmの厚さ
を有することができる。本方法では、アノード層は集電体の表面に沿って均一に形成することができる。本方法では、形成電流は0.001~150Aとすることができる。本方法では、形成電流は0.01~48時間にわたって供給することができる。
【0023】
リチウム金属電池の性能上の1つの利点は、リチウム金属アノードを使用することにより実現される。リチウム金属電池については複数の構成が可能であるが、それらは全て、リチウム金属アノードから樹状突起(dendrite penetration)を生じることなくリチウム金属電池を繰り返し可能に充放電できる能力に依拠する。本願開示は、集電体とイオン伝導固体電解質材料とが密接して、任意の適切な複合カソードに含まれるリチウムイオンからリチウム金属アノードがインシチュで形成されるように、任意の適切なイオン伝導固体電解質材料を用いて任意の適切な態様で被覆された任意の適切な金属箔集電体を備えた物品を提供するものである。このようにして形成された複数の電気化学セルは、好適にはバイポーラ構成で配置される。
【0024】
本願開示の上記及び他の構成、側面及び利点は、以下の詳細な説明、図面及び添付の請求の範囲を参酌すれば、より良好に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本願開示の一実施形態の電気化学デバイスを形成するための物品の一例の側面図である。本図では、物品には未だ形成電流が流されていない。
【
図1B】本願開示の一実施形態の個別のカソード活性層の一例の図である。
【
図1C】本願開示の一実施形態の固体電解質により被覆された個別の集電体の一例の図である。
【
図2】本願開示の一実施形態の電気化学デバイスの一例の側面図である。本図は、電気化学デバイスに形成電流が流された後の状態を示す。
【
図3】固体電解質により被覆された実験用の集電体の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4】本願開示のシステム及び方法により構築された電気化学セル(Gen4)のサイクル数対エネルギー密度の実験結果を示す図である。本図では参照用セルもプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を詳細に説明する前に、本発明はここで説明する特定の実施形態に限定されないと解すべきである。また、ここで使用されている用語用法は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ限定される。ここで使用されている単数形「1つ(a、an
)」及び「前記1つ(the)」は、文脈から特段の事情が明らかでない限り、複数の実施
形態も含む。
【0027】
当業者であれば、既に記載された態様の他、本発明の多くの他の改良形態も、本発明の思想から逸脱することなく可能であることが明らかである。本願開示の解釈にあたっては、文脈に即した最も広い可能な意味に解釈すべきである。「備える」、「含む」又は「有する」との用語の変形は、要素、部品又はステップについて非排他的に言及していると解釈すべきであるから、言及対象の要素、部品又はステップは、明示的に言及されていない他の要素、部品又はステップと組み合わせることができる。特定の要素を「備える」、「含む」又は「有する」と記載されている実施形態は、文脈から特段の事情が明らかでない限り、当該要素から「実質的に成る」という意味と、当該要素から「成る」という意味とをさらに含む。文脈から特段の事情が明らかでない限り、システムに関して記載されている本願開示の態様は方法にも適用することができ、またその逆も成り立つと解すべきである。
【0028】
ここで開示されている数値範囲は、その両端値を含む。例えば、1~10の数値範囲は、値1及び10を含む。特定の値について複数の連続した数値範囲が開示されている場合、本願開示は、これら複数の各数値範囲の上限及び下限の全ての組み合わせを含む範囲を明示的に想定している。例えば、1~10の数値範囲又は2~9の数値範囲は、1~9の数値範囲と2~10の数値範囲とを含むことを意図している。
【0029】
ここでいう「セル」又は「電気化学セル」とは、電極と電解質とを備えた基本単位の電気化学ユニットである。「電池」又は「電池パック」とは、使用可能な状態の1つ又は複数のセル又はセルアセンブリであり、これはしばしば、適切な筐体と、電気的相互接続部とを備えていることが多く、また場合によっては、セルを制御してセルの不具合を防止するための電子回路を備えていることも多い。「バイポーラ」構成は、直列に積層された複数のセルを備え、1つのセルの負極集電体がその隣のセルの正極集電体として作用するようにしたものである。
【0030】
ここでいう「電気化学セル」とは、文脈から特段の事情が明らかでない限り、「二次電池」とも称される再充電可能なセルを想定している。「アノード」とは、放電時に酸化することにより電子を失う電極として定義される。「カソード」とは、放電時に還元することにより電子を獲得する電極として定義される。これらの電気化学的な役割は、充電過程時には逆になるが、「アノード」及び「カソード」との電極名称は変わらない。
【0031】
ここでいう「形成」とは、電池の初回の充電過程である。この充電は「形成電流」を用いて行うことができる。本発明では形成は、カソード中に当初から存在する金属イオンを用いて、集電体と固体電解質材料との間にアノードを作成できるものである。「未形成」の構造は、未だ形成を行っていないものである。
【0032】
上記にて説明したように、一側面では本願開示は、電気化学デバイスを形成するための物品を提供するものであり、当該物品は複数の層状構造を備えており、各層状構造は(i
)固体電解質材料により被覆された集電体と、(ii)固体電解質材料と接触するカソード活物質と、を有する。1つの前記層状構造の集電体は、他の1つの前記層状構造のカソード活物質と接触することができる。
【0033】
他の一側面では、本願開示は電気化学デバイスの作成方法を提供し、本方法は、カソード活物質の層を準備するステップと、固体電解質材料により被覆された集電体を準備するステップと、第1の層状構造を作成するために、固体電解質材料に接触させるようにカソード活物質の層を配置するステップと、上記の3ステップを繰り返して第2の層状構造を作成するステップと、第1の層状構造の集電体を第2の層状構造のカソード活物質に接触させるように第1の層状構造と第2の層状構造とを組み合わせるステップと、を有する。本願開示の電気化学デバイスの作成方法では、複数の層状構造を作成するために、上記にて示した最初の3つのステップを複数回繰り返すことができる。その後、複数の層状構造は最後のステップに記載されているように組み合わせることができる。
【0034】
上記の物品は、電気化学デバイスの一部又は全部の前駆体として働くことができる。本物品では、各層状構造は未形成状態とすることができる。金属のアノードは、形成電流を流されることにより物品においてインシチュで形成することができる。この形成過程のための金属イオンは、カソードに当初から含まれているものとすることができる。物品に対して形成が行われた後、物品はアノード層を備えることができ、その後、この物品は複数のバイポーラ電気化学セルを備えた電気化学デバイスとみなすことができる。
【0035】
電気化学デバイスを形成するための物品のこのような独特な構成により、既存の電池構
成と比較して複数の重要な利点が奏される。
【0036】
(I)物品は、使用されるカソード活物質に関してフレキシブルであり、従来のLiイ
オンカソードに適用することができる。このことにより、本願開示のシステム及び方法を、各製造者と結びついていることが多い種々のカソード構成と容易に統合することができる。さらに本物品は、コンバージョン正極、硫黄カソード及び空気カソードを含めた固体カソード構成や将来の先進電池コンセプトにも適用可能である。したがって本物品により、Liイオンコンセプトを益々超えて、採用の障壁を大きく取り払うことができる。
【0037】
(II)本物品は当初はアノード層を備えないことが可能であり、その代わりに形成電流を使用してインシチュでアノード層を形成することができる。このことにより、格段な軽量化と省スペースの体積縮小とを実現することができる。なおかつ、完全放電した状態で反応又は出火のリスクを伴わずに物品を輸送できるという他の利点もある。その後、到着次第セルを形成することができる。かかる輸送過程は、現在のLiイオン電池では実用化できない。というのも、このようなLiイオン電池では形成時に可燃性の有毒ガスが発生するおそれがあり、製造の最後のステップの1つとしてこの有毒ガスを除去しなければならないからである。したがって輸送後形成により、物品のリスクの無い低コストの輸送が可能になる。
【0038】
(III)物品は、カソード活性層と被覆された集電体という2つの部分を繰り返すこと
により構成されている。よって、伝統的な電池構成とは異なり、組み合わせなければならない構成要素は、Liイオンアセンブリで必要とされるような3つではなく、2つのみとなる。このことによって、製造に要する時間、複雑性及び資本支出が削減される。
【0039】
(IV)バイポーラ構成により、集電体を用いてセルにおける軽量化と容積削減とを共に実現することができ、これによってエネルギー密度及び比エネルギーの向上を実現することができる。被覆された構成要素は、既成のセルの半分と共に個々の製造者によって受け取ることができ、これにより、選択されたカソードについて必要とされる適用プロセスは1つのみとなる。
【0040】
物品及び電気化学デバイスは、カソード活性層と、固体電解質により被覆された集電体の他に、追加の構成要素を備えることができる。例えば物品は、複数の層状構造を包囲して保護するように構成された筐体、接続端集電体、追加の配線部、絶縁部、安全機構、又は他の通常の電気化学デバイス構成要素を備えることができる。電気化学デバイスの作成方法は、複数の層状構造を筐体内に入れ、又は上記にて挙げた他の追加の構成要素のうちいずれかを追加するステップを有することができる。カソード活物質は、複合カソード層中に存在することができる。インシチュで形成されたいかなるアノード層に起因する体積応力にも対応するよう構成された圧縮性の層を設けることができる。
【0041】
<集電体>
本願開示のセルは、アノードとカソードとが共通の集電体を共用し、セルがバイポーラとみなされるように構築することができる。本願開示の物品及び方法に含まれる集電体は、金属又は金属合金を含む単一種の材料とすることができる。単一種の材料である場合、集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金(例えばインコネル(Inconel(登録商標))等)、コバルト系
超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含むことができる。代替的に集電体は、固体電解質材料と少なくとも部分的に接触する第1の材料と、他の1つの前記層状構造のカソード活物質と少なくとも部分的に接触する第2の材料と、を含むバイメタルとすることができる。バイメタルの場合、第1の材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系
超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。バイメタルの場合、第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。集電体は1nm~100μm、10nm~60μm、又は900nm~25μmの厚さを有することができる。
【0042】
<固体電解質>
本願開示の物品及び方法に含まれる固体電解質材料は、金属イオンを伝導することができる任意の適切な固体電解質とすることができる。例えば、固体電解質はオキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)とすることができる。固体電解質は、例えばリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープLLZO、ニオブドープLLZO、又はタンタルドープLLZO等の酸化物系ガーネットとすることができる。固体電解質は、例えばリチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)等のナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)とすることができる。固体電解質は、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)とすることができる。固体電解質は、チオLiSICONとすることができる。固体電解質は、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)とすることができる。固体電解質は、例えばリチウム・リン硫化物(LPS)等の硫化物ガラスとすることができる。固体電解質は、酸化ポリエチレン(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、又は結晶熱可塑性ポリマー等のポリマーとすることができる。固体電解質は、上掲の電解質のうちいずれかの混合物を含むことができる。固体電解質は1nm~100μm、100nm~50μm、又は1μm~25μmの厚さを有することができる。
【0043】
本願開示の物品及び方法に含まれる固体電解質材料は、任意の接合手法を用いて集電体の表面を被覆することができる。集電体への固体電解質の被覆は例えば、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティング焼結法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、無電解化学堆積法、又はこれらの組み合わせを用いて行うことができる。
【0044】
カソード活物質と集電体とは平面状の同一形状を有することができ、各層状構造において互いに直接重ねることができる。カソード活物質及び集電体は、矩形又は円形の平面状の形状を有することができる。形成された複数の層状構造は、円筒状に巻くことができる。
【0045】
<カソード活物質>
本願開示の主な利点は、使用できるカソード活物質の範囲が広いことである。カソード活物質は、イオン伝導固体電解質材料と集電体との間に金属アノードを形成するために使用できる金属イオンを含むことができる。ここでは主にリチウムイオン含有カソードを示しているが、当業者であれば、他の金属含有カソード活物質と容易に置き換えられることが明らかである。例えば、ナトリウム又はマグネシウム含有カソード活物質を使用することができる。
【0046】
カソード活物質は、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物(例えばNMC111、622若しくは811等のNMC)、リチウムニッケル酸化物(LNO)、又はリチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(NCA)等の層状酸化物を含むことができる。カソード活物質は、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸ニッケルリチウム(LNP)、リン酸コバルトリチウム(LCP)、又はリン酸マンガンリチウム(LMP)等のオリビン型リン酸塩を含むことができる。カソード活物質は、例えばリチウムマンガン酸化物(LMO)又はリチウム・ニッケル・マンガン酸化物(LMNO)等のスピネル型酸化物を含むことができる。カソード活物質は、
リチウム・ニッケル・ジルコニウム酸化物、リチウムジルコニウム酸化物、リチウム・マグネシウム・ジルコニウム酸化物、リチウム・ニッケル・タンタル酸化物、又はリチウムニオブ酸化物等の不規則岩塩型酸化物を含むことができる。カソード活物質は、リチウム鉄硫化物、リチウム銅フッ化物若しくはリチウム鉄フッ化物、又はこれらの混合物等のコンバージョン正極を含むことができる。カソード活物質は、硫黄、リチウムチタン硫化物、又は酸化バナジウムを含むことができる。カソード活物質はこれらの材料のうちいずれかの混合物を含むことができる。カソード活物質は、1nm~400μm、10μm~200μm、又は50μm~150μmの厚さを有することができる。
【0047】
上掲の材料の他にさらに、カソード活物質は追加の二次材料を含む複合カソード層中に存在することができる。二次材料は金属イオンを伝達するものとすることができる。複合カソード層は高温で動作し、イオン伝導性になるように溶融する相を要するものとすることができる。この場合、上述の溶融する相は、塩化リチウムアルミニウム、水酸化リチウム、又はポリマー等の二次材料を含むことができる。溶融する相は、例えば水酸化物、硝酸塩、又は塩化物等の塩を含むリチウムの組み合わせを含むことができる。溶融する相は、例えば水酸化物、硝酸塩、又は塩化物等の塩を含むアルカリ金属の組み合わせを含むことができる。二次材料は、例えばLLZO、アルミニウムドープLLZO、ニオブドープLLZO、及びタンタルドープLLZO等の酸化物系ガーネット、又は、LATP等のナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)等の酸化物及び/又はリン酸塩固体電解質相を含むことができる。二次材料は硫黄系固体電解質を含むことができ、例えば、LAGP等の硫酸リチウム超イオン伝導体又はリチウム・リン硫化物(LPS)等の硫化物ガラス等を含むことができる。二次材料はポリマー系固体電解質とすることができ、例えば、PEO、PAN、酸化ポリフェニレン(PPO)ポリ[ビス(メトキシ-エトキシ-エトキシ)ホスファゼン(MEPP)、結晶熱可塑性樹脂、若しくは、例えばPEO-PMMA、PEO-PS、PEO-PSi、PEO-PPO、PEO-PPG等のブロックコポリマー、又はこれらのうちいずれかの組み合わせとすることができる。ポリマー系である場合、二次材料は可塑剤を含むことができ、又は、例えばLiTFSI,LiBOB,LiPF6,LiI,LiBr,LiCl,LiF,Li2SO4,LiTFSA,LiCF3SO3,LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を含むことができる。二次材料は、液体電解質を閉じ込めた固体ネットワークを有するゲル系電解質とすることができる。その固体ゲルネットワークは、PVDF-HFP、PMMA、PAN、ポリ-(D)-グルコサミン、多糖類、PEG-DMA、PVP、又はこれに類する材料とすることができる。液体電解質は、例えばLiTFSI、LiBOB、LiPF6、LiI、LiBF4、LiBr、LiCl、LiF、Li2SO4、LiTFSA、又はLiCF3SO3等のリチウム塩を含むことができる。液体電解質は、直鎖カーボネート、フッ化直鎖カルボキシレート(fluorinated linear carboxylate)、フッ化エーテル、γ-ブチロラクトン、フッ化γ-ブチロラクトン(fluorinated γ-butyrolactone)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、エチルメチルスルホン、及びアリルメチルスルホンのうちいずれかの混合物等の1つの溶媒又は複数の溶媒のブレンドを含むことができる。
【0048】
代替的に複合カソードは、細孔に液体電解質が充填されたポリマーバインダ、導電性添加物、及びカソード活物質のブレンドから成る伝統的なLiイオンカソードとすることもできる。かかる場合、導電性添加物は、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、金属粉末、又はセラミック導電相を含む導電性の任意の材料とすることができる。バインダは、例えばPVDF、PTFE、SBR、CMC、PMMA又はPAN等の任意のポリマーとすることができる。液体電解質は、リチウム塩と他の添加物とを含む複数の溶媒のブレンド又は1つの溶媒とすることができる。例えば、リチウム塩添加物はLiTFSI、LiBOB、LiPF6、LiI、LiBF4、LiBr、LiCl、LiF、Li2SO4、LiTFSA、又はLiCF3SO3を含むことができる。
液体電解質は、例えばPC、DMSO、DMF、DMAc、フッ化エーテル、フッ化直鎖カルボキシレート、γ-ブチロラクトン、フッ化γ-ブチロラクトン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、エチルメチルスルホン、アリルメチルスルホン等の低蒸気圧の溶媒、又は高酸化安定性の溶媒、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0049】
<形成電流>
本願開示は電気化学デバイスの作成方法を提供する。一実施形態では、本方法はさらに、各固体電解質材料層とその隣の集電体との間にアノード層を生成できる形成電流を層状構造に流すステップを有することができる。アノード層は、集電体の表面に沿って均一に形成することができる。アノード層はリチウム金属を含むことができる。アノード層はリチウム金属から実質的に成ることができる。形成電流は電気化学デバイスにおいて、1~300、5~60、10~30、又は2~12の個数のアノード層と、これらに対応する各電気化学セルとを作成することができる。アノード層は1nm~100μm、10nm~50μm、又は100nm~10μmの厚さを有することができる。アノード層を作成するために供給される形成電流は、0.001~150A、0.1~800A、又は約1Aの電流を含むことができる。形成電流は、0.01時間、0.1時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、18時間、24時間、又は48時間以上にわたって供給することができる。形成電流は、一度に全部供給することができ、又は複数回の充電に分けて供給することができる。
【0050】
図面を詳細に参酌すると、
図1Aは本願開示の一実施形態の電気化学デバイスを形成するための物品100の一例の側面図である。本図では、未だ形成電流は物品に流されていない。物品100のこの部分は、固体電解質層104により被覆された集電体102の層とカソード活物質層106とを繰り返し積層したものを含む。
図1Bは、1つのカソード活性層106を示している。
図1Cは、固体電解質層104により被覆された1つの集電体102を示している。
【0051】
図2は、本願開示の一実施形態の電気化学デバイス200を示している。本図の電気化学デバイスは、追加の要素と共に形成電流を流された後の物品である。電気化学デバイスは、集電体202の層と、アノード層208と、固体電解質層204と、カソード層206と、を繰り返し積層したものを含む。これら4つの物が1つの個別の電気化学セル210を構成し、これらが繰り返されてバイポーラ構成が成される。各電気化学セル210は、その両隣のセルと集電体を共有する。電気化学デバイスは正極接続端集電体203と負極接続端集電体205とを備えている。電気化学セルは、例えば筐体212等の他の追加要素も備えている。本図では、筐体212は1つの黒色の四角によって表されている。
【0052】
<実施例>
下記の実施例は、本発明の特定の実施形態及び側面を示し、詳細を例示するために提示されており、本発明の範囲を限定するものと解すべきものではない。
【0053】
[実施例1]
図3に示されているように、スラリーキャスティング及び焼結された固体電解質層304を備えた集電体302を、エポキシ台316に取り付けた。その後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を撮影した。本実験では、固体電解質としてリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物を用いた。使用される集電体はニッケルとした。固体電解質層は約0.1mS/cmのLiイオン伝導率を示した。これは、バルク技術を用いて処理された類似の材料に匹敵する。
【0054】
[実施例2]
図4に示されているように、実験用の電気化学セルについてサイクル数に対する放電エネルギー密度(Wh/L)をプロットした。この実験用電気化学セルは、
図4ではGen4により示されている。実験用セルは、焼結LLZOガーネットである固体電解質セパレータにより被覆された集電体と、従来のLiイオン複合カソードと液体電解質とから構成されており、複合カソードは、94重量%の111NMC活物質と、3重量%のカーボンブラック導電性添加物と、3重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダとから成るものであり、液体電解質は、エチレンカーボネート対エチルメチルカーボネートの比(EC:EMC)を3:7とし2重量%のビニレンカーボネート(VC)を含むものに1MのLiPF
6を含有するものとした。比較のために参照用セルを組み立てた。これは、裸の集電体を伝統的なポリエチレンポリマーLiイオンセパレータと、同じカソードと共に使用したものである。両セルは、終止電圧を2.5V及び4.2Vとし、定電圧区間を設けずに、1Cの充電レートと1Cの放電レートで定電流で充放電(cycling)された。
(1Cの充電レートとは、充電電流が電池全体を1時間で終止電圧まで充電することをいう。1Cの放電レートとは、放電電流が電池全体を1時間で終止電圧まで放電することをいう。)4回目の充放電サイクル後には参照用セルは短絡し、この短絡は、周知のリチウム樹状突起現象が起きたことを示唆するものである。これとは対照的に、被覆された集電体から構成されたセルは動作し続けた。
【0055】
よって本発明は、例えばバイポーラ電池等の電気化学デバイスを形成するための物品と、電気化学デバイスの作成方法とを提供する。
【0056】
特定の実施形態を参照して本発明をかなり詳細に説明したが、当業者であれば、ここで記載されている実施形態に代わる代替的な実施形態においても本発明を実施できることが明らかであり、ここで記載されている実施形態は例示目的で提示されたものであり、本発明を限定するものではない。よって、添付の請求の範囲は、本願明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスを形成するための物品であって、
複数の層状構造を備えており、各層状構造は
(i)焼結された固体電解質材料により被覆された集電体と、
(ii)前記固体電解質材料と接触するカソード活物質であって、前記固体電解質材料と前記集電体との間にアノード層を形成する金属イオンを含むカソード活物質と、
を有し、
隣り合う前記層状構造における1つの前記層状構造の前記集電体と他の1つの前記層状構造のカソード活物質とが接触し、互いに直接重ねられていることを特徴とする物品。
【請求項2】
各層状構造はアノード層を有しない、
請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記集電体は、金属又は金属合金を含む1つの材料を含む、
請求項1記載の物品。
【請求項4】
前記集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項3記載の物品。
【請求項5】
前記集電体は、前記固体電解質材料と少なくとも部分的に接触する第1の材料と、他の1つの前記層状構造の前記カソード活物質と少なくとも部分的に接触する第2の材料と、を含むバイメタルを含有する、
請求項1記載の物品。
【請求項6】
前記第1の材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項5記載の物品。
【請求項7】
前記第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項5記載の物品。
【請求項8】
前記集電体は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項1記載の物品。
【請求項9】
前記固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項1記載の物品。
【請求項10】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープLLZO、タンタルドープLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択されたものである、
請求項9記載の物品。
【請求項11】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含む、
請求項10記載の物品。
【請求項12】
前記集電体はニッケルを含む、
請求項1記載の物品。
【請求項13】
前記固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項1記載の物品。
【請求項14】
前記カソード活物質は、層状酸化物、オリビン型リン酸塩、スピネル型酸化物、不規則岩塩型酸化物、コンバージョン正極、硫黄、リチウムチタン硫化物、酸化バナジウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された活物質を含む、
請求項1記載の物品。
【請求項15】
前記活物質は、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LNO)、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸ニッケルリチウム(LNP)、リン酸コバルトリチウム(LCP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム・ニッケル・マンガン酸化物(LMNO)、リチウム・ニッケル・ジルコニウム酸化物、リチウムジルコニウム酸化物、リチウム・マグネシウム・ジルコニウム酸化物、リチウム・ニッケル・タンタル酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウム鉄硫化物、リチウム銅フッ化物、リチウム鉄フッ化物、又はこれらの混合物のうち少なくとも1つを含む、
請求項14記載の物品。
【請求項16】
前記カソード活物質は、イオン伝導物質と合わさって複合カソード層を形成する、
請求項1記載の物品。
【請求項17】
前記イオン伝導物質は、酸化物固体電解質、リン酸塩固体電解質、硫黄系固体電解質、ポリマー系固体電解質、又はゲル系電解質のうち少なくとも1つを含む、
請求項16記載の物品。
【請求項18】
前記カソード活物質の層は、1nm~400μmの厚さを有する、
請求項1記載の物品。
【請求項19】
前記カソード活物質と前記集電体とは平面状の同一形状を有する、
請求項1記載の物品。
【請求項20】
電気化学デバイスを作成する方法であって、
(a)固体電解質材料と集電体との間にアノード層を形成する金属イオンを含むカソード活物質の層を準備するステップと、
(b)焼結された前記固体電解質材料により被覆された前記集電体を準備するステップと、
(c)第1の層状構造を作成するために、前記固体電解質材料に接触させるように前記カソード活物質の層を配置するステップと、
(d)ステップ(a)~(c)を繰り返して第2の層状構造を作成するステップと、
(e)前記第1の層状構造の集電体と前記第2の層状構造のカソード活物質とを接触させて互いに直接重ねるように前記第1の層状構造と前記第2の層状構造とを組み合わせるステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
ステップ(e)の手順を用いて組み合わされる複数の層状構造を作成するために、ステップ(d)を複数回繰り返す、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記集電体は、前記固体電解質材料と少なくとも部分的に接触する第1の材料と、隣の前記層状構造のカソード活物質と少なくとも部分的に接触する第2の材料と、を含むバイメタルを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記第1の材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択されている、
請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記集電体は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項20記載の方法。
【請求項27】
前記固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、
請求項20記載の方法。
【請求項28】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープLLZO、タンタルドープLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料から成る、
請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含む、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記固体電解質材料は、スラリーキャスティング焼結法を用いて前記集電体を被覆する、
請求項20記載の方法。
【請求項31】
前記固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有する、
請求項20記載の方法。
【請求項32】
前記カソード活物質の層は、層状酸化物、オリビン型リン酸塩、スピネル型酸化物、不規則岩塩型酸化物、コンバージョン正極、硫黄、リチウムチタン硫化物、酸化バナジウム、又はこれらの混合物から成る群から選択された活物質を含む、
請求項20記載の方法。
【請求項33】
前記活物質は、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LNO)、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸ニッケルリチウム(LNP)、リン酸コバルトリチウム(LCP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム・ニッケル・マンガン酸化物(LMNO)、リチウム・ニッケル・ジルコニウム酸化物、リチウムジルコニウム酸化物、リチウム・マグネシウム・ジルコニウム酸化物、リチウム・ニッケル・タンタル酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウム鉄硫化物、リチウム銅フッ化物、リチウム鉄フッ化物、又はこれらの混合物のうち少なくとも1つを含む、
請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記カソード活物質の層は、1nm~400μmの厚さを有する、
請求項20記載の方法。
【請求項35】
前記カソード活物質の層を配置するステップは、前記カソード活物質の層と前記集電体とが互いに合同に重なり合うように前記固体電解質材料に前記カソード活物質の層を配置することを含む、
請求項20記載の方法。
【請求項36】
前記方法はさらに、
(f)前記層状構造を包囲及び保護するように構成された筐体内に前記層状構造を入れるステップ
を有する、
請求項20記載の方法。
【請求項37】
前記方法はさらに、
(g)各固体電解質材料層とその隣の集電体との間にアノード層を生じさせる形成電流を前記層状構造に流すステップ
を有する、
請求項20記載の方法。
【請求項38】
前記アノード層はリチウム金属を含む、
請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記アノード層は1nm~100μmの厚さを有する、
請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記アノード層は前記集電体の表面に沿って均一に形成する、
請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記形成電流は0.001~150Aである、
請求項37記載の方法。
【請求項42】
前記形成電流は0.01~48時間にわたって供給される、
請求項37記載の方法。