(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073630
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】新規転写アクチベーター
(51)【国際特許分類】
C07K 14/03 20060101AFI20240522BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240522BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240522BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240522BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C07K14/03
C12N15/09 110
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/31
C12N15/864 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044035
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2021506361の分割
【原出願日】2019-08-06
(31)【優先権主張番号】62/715,432
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519187609
【氏名又は名称】株式会社モダリス
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】山形 哲也
(72)【発明者】
【氏名】シン ユアンバウ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA19
4H045BA21
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】AAVベクターに搭載可能なサイズであり、かつ転写活性化能を十分に発揮できる転写アクチベーターを提供する。
【解決手段】本発明は、200個以下のアミノ酸配列からなり、VP64とRTAの転写活性化部位とを含む、転写アクチベーターを提供する。本発明はまた、二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、転写アクチベーターとの複合体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
200個以下のアミノ酸からなり、VP64とRTAの転写活性化部位とを含む、転写アクチベーター。
【請求項2】
前記VP64が、
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
(2)(1)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/若しくは付加されたアミノ酸配列、又は
(3)(1)のアミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、
を含む、請求項1に記載の転写アクチベーター。
【請求項3】
前記RTAの転写活性化部位が、
(4)配列番号2で示される配列、
(5)配列番号3で示される配列、
(6)(4)若しくは(5)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/若しくは付加されたアミノ酸配列、又は
(7)(4)若しくは(5)のアミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、
を含む、請求項1又は2に記載の転写アクチベーター。
【請求項4】
互いに結合した、二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、請求項1~3のいずれか1項に記載の転写アクチベーターとを含み、該DNA中の標的化された遺伝子の転写を活性化する、複合体。
【請求項5】
前記核酸配列認識モジュールが、二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖を切断する能力を欠いたCRISPRエフェクタータンパク質を含む、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記CRISPRエフェクタータンパク質が、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力を欠いている、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
前記CRISPRエフェクタータンパク質が、スタフィロコッカス・アウレウス又はカンピロバクター・ジェジェニに由来する、請求項5又は6に記載の複合体。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の転写アクチベーターをコードする核酸。
【請求項9】
請求項4~7のいずれか1項に記載の複合体をコードする核酸。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の核酸を含むベクター。
【請求項11】
前記ベクターがアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
細胞における標的化された遺伝子の転写を活性化する方法であって、請求項4~7のいずれか1項に記載の複合体、請求項8若しくは9に記載の核酸、又は請求項10若しくは11に記載のベクターを該細胞へ導入する工程を含む、方法。
【請求項13】
前記細胞が哺乳類動物細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VP64とRトランスアクチベーター(RTA)の転写活性化部位とを含む、新規な転写アクチベーターに関する。さらに、本発明は、二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、前記転写アクチベーターとの複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な種において目的の遺伝子及びゲノム領域を改変する技術として、ゲノム編集が注目されている。例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと非特異的なDNA切断ドメインとが連結された、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いることによって、宿主としての植物細胞又は昆虫細胞におけるDNA中の標的化された遺伝子座において組換えを行う方法(特許文献1)や、植物病原菌キサントモナス属が有するDNA結合モジュールである転写活性化因子様(TAL)エフェクターと、DNAエンドヌクレアーゼとが連結されたTALENを用いることによって、特定のヌクレオチド配列内又はそれに隣接する部位で、標的遺伝子を切断又は改変する方法(特許文献2)が報告されている。さらに、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9ヌクレアーゼは、二本鎖DNA切断(DSB)の修復経路を有する真核生物において、強力なゲノム編集ツールとして広く使用されている(例えば、特許文献3、非特許文献1、2)。
【0003】
ゲノム編集技術を応用することによって、部位特異的な転写調節のための技術も開発されている。例えば、ZF若しくはTALE、又は二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力を欠いたCas9(dCas9)システムに転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメイン(一般的に、活性化にはVP64が用いられ、抑制にはKRABが用いられる)を融合させたタンパク質や複合体を、目的の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー配列に結合させることを含む、標的化された遺伝子を活性化又は抑制する方法が報告されている(例えば、非特許文献3)。
【0004】
しかしながら、VP64を用いることによる転写活性化は、単に1つのVP64分子を用いることによっては十分な転写活性化能が達成されず、1つの遺伝子に対して複数のTALE-VP64及びdCas9-VP64/sgRNA複合体を結合させる必要があるとの問題を有する(例えば、非特許文献3)。この点を克服するために、例えば、VP64に他の転写活性化因子(p65及びRTA)を結合させた転写アクチベーターを用いる方法(例えば、非特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO03/087341A2
【特許文献2】WO2011/072246A2
【特許文献3】WO2013/176772A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mali P, et al., Science 339: 823-827 (2013)
【非特許文献2】Cong L, et al., Science 339: 819-823 (2013)
【非特許文献3】Hu J, et al., Nucleic Acids Res, 42: 4375-4390 (2014)
【非特許文献4】Chavez A, et al., Nat Methods, 12: 326-328 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、VP64にp65及びRTAを結合させた場合には、その総分子量が大きくなる。それゆえ、CRISPR/Cas9システムと、転写アクチベーターとの複合体をコードする核酸は、サイズに関する制約があり、一体型の(all-in-one)核酸としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに搭載できないとの問題が生じる。従って、AAV媒介送達に関する課題の1つは、AAVベクターに搭載可能なサイズであり、かつ転写活性化能を十分に発揮できる転写アクチベーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、転写活性化能を有することが知られている複数のタンパク質に着目し、そのようなタンパク質を適宜組み合わせることによって、上記課題を解決できるアクチベーターを作製し得るとの発明的着想を得た。この着想に基づき鋭意研究を重ね、VP64とRTAとを組み合わせることによって、タンパク質サイズを低下させることと、十分な転写活性化能を保持することの両方を達成できることを見出した。この知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
それゆえ、本発明は以下を提供する。
[1]200個以下のアミノ酸からなり、VP64とRTAの転写活性化部位とを含む、転写アクチベーター。
[2]前記VP64が、
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
(2)(1)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/若しくは付加されたアミノ酸配列、又は
(3)(1)のアミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、
を含む、[1]に記載の転写アクチベーター。
[3]前記RTAの転写活性化部位が、
(4)配列番号2で示される配列、
(5)配列番号3で示される配列、
(6)(4)又は(5)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/若しくは付加されたアミノ酸配列、又は
(7)(4)又は(5)のアミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、
を含む、[1]又は[2]に記載の転写アクチベーター。
[4]互いに結合した、二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、[1]~[3]のいずれかに記載の転写アクチベーターとを含み、該DNA中の標的化された遺伝子の転写を活性化する、複合体。
[5]前記核酸配列認識モジュールが、二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖を切断する能力を欠いたCRISPRエフェクタータンパク質を含む、[4]に記載の複合体。
[6]前記CRISPRエフェクタータンパク質が、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力を欠いている、[5]に記載の複合体。
[7]前記CRISPRエフェクタータンパク質が、スタフィロコッカス・アウレウス又はカンピロバクター・ジェジュニに由来する、[5]又は[6]に記載の複合体。
[8][1]~[3]のいずれかに記載の転写アクチベーターをコードする核酸。
[9][4]~[7]のいずれかに記載の複合体をコードする核酸。
[10][8]又は[9]に記載の核酸を含むベクター。
[11]前記ベクターがアデノ随伴ウイルスベクターである、[10]に記載のベクター。
[12]細胞における標的化された遺伝子の転写を活性化する方法であって、[4]~[7]のいずれかに記載の複合体、[8]若しくは[9]に記載の核酸、又は[10]若しくは[11]に記載のベクターを該細胞へ導入する工程を含む、方法。
[13]前記細胞が哺乳類動物細胞である、[12]に記載の方法。
[14]前記哺乳動物がヒトである、[13]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、AAVベクターに搭載可能なサイズを有し、かつ転写活性化能を十分に発揮できる新規な転写アクチベーターが提供される。さらに、二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、前記転写アクチベーターとの複合体、並びに該複合体を用いることによる、標的化された遺伝子の転写を活性化する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、dSaCas9をCRISPRエフェクタータンパク質として使用する場合の、AAVベクターの構造及び10個の活性化部分を示す。図中の塩基数は、ストップコドンを含めた長さによって示されている。
【
図2】
図2は、9個の活性化部分によるMYD88遺伝子活性化を示す。それぞれのgRNAにおいて、各棒グラフは、左からこの順に、sgRNAのみ、VP64、VP160、VM(VP64-MyoD)、VH(VP64-HSF1)、V32p65(VP32-p65)、VR(VP64-miniRTA)、V64P65(VP64-p65)、VPH及びVPRの結果を示す。
【表1】
【
図3】
図3は、9個の活性化部分によるFGF21遺伝子活性化を示す。それぞれのgRNAにおいて、各棒グラフは、左からこの順に、sgRNAのみ、VP64、VP160、VM(VP64-MyoD)、VH(VP64-HSF1)、V32p65(VP32-p65)、VR(VP64-miniRTA)、V64P65(VP64-p65)、VPH及びVPRの結果を示す。
【表2】
【
図4】
図4は、9個の活性化部分によるGCG遺伝子活性化を示す。それぞれのgRNAにおいて、各棒グラフは、左からこの順に、sgRNAのみ、VP64、VP160、VM(VP64-MyoD)、VH(VP64-HSF1)、V32p65(VP32-p65)、VR(VP64-miniRTA)、V64P65(VP64-p65)、VPH及びVPRの結果を示す。
【表3】
【
図5】
図5は、VP64-miniRTA及びVP64-microRTAによるMyD88遺伝子活性化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、「のみ」、「単一」及び/又は「1つ」などの単語を用いて語が別段明示的に示されない限り、単数形及び複数形の両方を含むことが意図される。本明細書において使用する場合、用語「
含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含
む(including)」は、記述される特徴、工程、操作、要素、着想、及び/又は成分の存
在を特定するが、それ自体が、1つ以上の他の特徴、工程、操作、要素、成分、着想、及び/又はその群の存在又は付加を除外しないことがさらに理解される。
【0013】
本発明は、VP64と、エプスタイン・バーウイルスのRトランスアクチベーター(RTA)の転写活性化部位とを含む、新規な転写アクチベーター(以下「本発明のアクチベーター」と称することがある)を提供する。本発明の転写アクチベーターにより、標的化された遺伝子の転写が活性化され得る。
【0014】
本発明において、VP64は、グリシン及びセリン(GS)からなるペプチドリンカーを伴なう、単純ヘルペスウイルスに由来するVP16の437~447番目のアミノ酸残基からなるドメイン(DALDDFDLDML;配列番号21)の、タンデムな4回の繰り返しからなるペプチド([DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML];配列番号1)(Beerli RR, et al., Proc Natl Acad Sci USA. 95(25):14628-33 (1998))又は
転写活性能を有するその改変体を意味する。かかる改変体としては、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、2個、3個、4個、5個又はそれ以上)のアミノ酸が欠失、置換及び/若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。具体的な例としては、リンカー部分が、他のリンカー(例えば、G、S、GG、SG、GGG、GSG、GSGS(配列番号22)、GSSG(配列番号23)、GGGGS(配列番号24)、GGGAR(配列番号25)、GSGSGS(配列番号26)又はSGQGGGGSG(配列番号27)からなるペプチドリンカー等)によって置換された改変体が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、前記改変体として、配列番号1で示されるアミノ酸配列と90%以上(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一なアミノ酸配列からなるペプチドを挙げることができる。さらに、上記ドメイン(DALDDFDLDML;配列番号21)の、タンデムな10回の繰り返しからなるペプチド([DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML]-GS-[DALDDFDLDML];配列番号44)をVP160と称する。
【0015】
RTAは、605個のアミノ酸残基からなり、転写活性化能を有するタンパク質であり(GenBankアクセッション番号:CEQ33017)(配列番号4)、そのC末端のドメインが転写活性化に重要であることが知られている(Hardwick JM, J Virol, 66(9):5500-8, 1992)。前記ドメインとして、具体的には、RTAの493番目~605番目のアミノ酸配列からなる領域(配列番号2)を挙げることができる。中でも、520番目~605番目のアミノ酸配列からなる領域(配列番号3)が重要であることが知られている。従って、本発明のアクチベーターに含まれるRTAは、配列番号2又は配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む転写活性化部位、又は転写活性化能を有するその改変体であることが好ましい。かかる改変体としては、例えば、配列番号2又は3で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、2個、3個、4個、5個又はそれ以上)のアミノ酸が欠失、置換及び/若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。具体的には、RTAにおける564番目のロイシン残基、566番目のロイシン残基、570番目のロイシン残基、578番目のロイシン残基、581番目のフェニルアラニン残基及び582番目のロイシン残基が転写活性化能に重要であることが知られているので、これらのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基が欠失、置換等した改変体などを挙げることができるが、これらの改変に限定するものではない。あるいは、前記改変体として、配列番号2又は3で
示されるアミノ酸配列と90%以上(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一なアミノ酸配列からなるペプチドを挙げることができる。本明細書中、配列番号2で示される配列からなるペプチドを「miniRTA」と、配列番号3で示される配列からなるものを「microRTA」と称することがある。
【0016】
本発明のアクチベーターは、VP64とRTAの転写活性化部位とを含む。VP64とRTAとは、リンカー(例えば、前述したペプチドリンカー)を介して結合されてもよく、又はリンカーを介さずに直接結合されてもよい。VP64とRTAの転写活性化部位とは、N末端からC末端にこの順に配置されてもよく、又は反対の順番で配置されてもよい。本発明のアクチベーターの具体的な例としては、配列番号6若しくは8で示されるアミノ酸配列、又は配列番号6若しくは8で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、2個、3個、4個、5個又はそれ以上)のアミノ酸が欠失、置換及び/若しくは付加されたアミノ酸配列、及び配列番号6若しくは8で示されるアミノ酸配列と90%以上(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一なアミノ酸配列を含むアクチベーターが挙げられる。
【0017】
アミノ酸配列の同一性は、以下の条件下(expectancy=10;gap allowed;matrix=BLOSUM62;filtering=OFF)で、相同性計算アルゴリズムのNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて計算することができる。同一性を決定す
るために、その全長にわたる本発明の配列が、別の配列と比較されることが理解される。言い換えれば、本発明における同一性は、本発明の配列の短いフラグメント(例えば1~3アミノ酸)を別の配列と比較すること、又はその逆を除外する。
【0018】
本発明のアクチベーターは、それが標的化された遺伝子の転写を活性化できる限り特に制限されない。小型化のために、200個以下(例えば、200個、190個、180個、170個、169個、168個、167個又はそれ以下)のアミノ酸配列からなることが好ましく、110個以上(例えば、110個、120個、130個、135個、136個、137個、138個、139個、140個又はそれ以上)のアミノ酸配列からなることが好ましい。好ましい実施態様において、約140個又は約167個のアミノ酸からなるアクチベーターが用いられる。
【0019】
別の実施態様において、核酸配列認識モジュールと、本発明のアクチベーターとが結合した複合体(以下「本発明の複合体」と称することがある)が提供される。
【0020】
本発明において、「核酸配列認識モジュール」は、DNA鎖上の特定のヌクレオチド配列(即ち、標的ヌクレオチド配列)を特異的に認識し、それに結合する能力を有する分子又は分子複合体を意味する。核酸配列認識モジュールが標的ヌクレオチド配列に結合することにより、該モジュールに連結された本発明のアクチベーターが二本鎖DNAの標的化された部位に特異的に作用することが可能になる。
【0021】
本発明の複合体には、複数の分子で構成されるものだけでなく、融合タンパク質のように、核酸配列認識モジュールと本発明のアクチベーターとを単一の分子中に有するものも包含される。
【0022】
本発明の複合体中の核酸配列認識モジュールによって認識される、二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列は、該モジュールが特異的に結合する限り特に制限されず、二本鎖DNA中の任意の配列であってよい。標的ヌクレオチド配列の長さは、核酸配列認識モジュールの特異的結合のために十分である必要があるのみである。例えば、哺乳動物のゲノム
DNAを標的とする場合、配列は、ゲノムサイズに応じて、12ヌクレオチド以上(例えば、12ヌクレオチド、15ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド又はそれ以上)であることが好ましく、25ヌクレオチド以下(例えば、25ヌクレオチド、24ヌクレオチド、23ヌクレオチド、22ヌクレオチド又はそれ以下)であることが好ましい。
【0023】
本発明の複合体の核酸配列認識モジュールとしては、例えば、CRISPRエフェクタータンパク質が、二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖(好ましくは両方の鎖)を切断する能力を欠いているCRISPR-GNDMシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター、PPRモチーフ等、並びに、制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のようなDNAと特異的に結合し得るタンパク質のDNA結合ドメインを含むフラグメント等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいのは、CRISPR-GNDMシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター、PPRモチーフ等であり、中でも、CRISPRエフェクタータンパク質が、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力を欠いているCRISPR-GNDMシステムが特に好ましい。
【0024】
ジンクフィンガーモチーフは、3~6個の異なるCys2His2型ジンクフィンガーユニット(1フィンガーが約3塩基を認識する)の連結によって構成され、9~18塩基の標的ヌクレオチド配列を認識することができる。ジンクフィンガーモチーフは、モジュラーアセンブリー法(Nat Biotechnol (2002) 20: 135-141)、OPEN法(Mol Cell (2008) 31: 294-301)、CoDA法(Nat Methods (2011) 8: 67-69)、大腸菌ワン-ハイ
ブリッド法(Nat Biotechnol (2008) 26:695-701)等の公知の手法によって作製することができる。ジンクフィンガーモチーフの作製の詳細については、上記の特許文献1を参照することができる。
【0025】
TALエフェクターは、約34個のアミノ酸を単位としたモジュール繰り返し構造を有しており、1つのモジュールの12番目及び13番目のアミノ酸残基(RVDと称する)によって、結合安定性及び塩基特異性が決定される。各モジュールは独立性が高いので、単にモジュールを連結することによって、標的ヌクレオチド配列に特異的なTALエフェクターを作製することが可能である。TALエフェクターについて、オープンリソースを利用した作製方法(REAL法(Curr Protoc Mol Biol (2012) Chapter 12: Unit 12.15)、FLASH法(Nat Biotechnol (2012) 30: 460-465)、及びGolden Gat
e法(Nucleic Acids Res (2011) 39: e82)等)が確立されており、標的ヌクレオチド
配列に対するTALエフェクターを比較的簡便に設計することができる。TALエフェクターの作製の詳細については、上記の特許文献2を参照することができる。
【0026】
PPRモチーフは、各々が35個のアミノ酸からなり、1つの核酸塩基を認識するPPRモチーフの連続によって、特定のヌクレオチド配列が認識されるように構成されており、各モチーフの1、4及びii(-2)番目のアミノ酸のみによって標的塩基を認識する。モチーフ構成に依存性はなく、両側のモチーフの干渉はない。それゆえ、TALエフェクターと同様に、単にPPRモチーフを連結することによって、標的ヌクレオチド配列に特異的なPPRタンパク質を作製することが可能である。PPRモチーフの作製の詳細については、WO2011/111829A1を参照することができる。
【0027】
制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のフラグメントを用いる場合、これらのタンパク質のDNA結合ドメインは周知であるので、該ドメインを含み、かつDNA二重鎖切断能を有しないフラグメントを容易に設計し、構築することができる。
【0028】
ジンクフィンガーモチーフについては、標的ヌクレオチド配列に特異的に結合するジンクフィンガーの作製効率が高くなく、高い結合特異性を有するジンクフィンガーの選別が
煩雑なため、多くの実際に機能可能なジンクフィンガーモチーフを作製することは容易でない。TALエフェクター及びPPRモチーフは、ジンクフィンガーモチーフに比較して高い標的核酸配列認識の自由度を有するが、標的ヌクレオチド配列に応じて大きなタンパク質をその都度設計及び構築する必要があるので、効率における問題が残る。これに対し、CRISPR-GNDMシステムは、標的ヌクレオチド配列に対して相補的なガイドヌクレオチドによって目的の二本鎖DNAの配列を認識するので、単に標的ヌクレオチド配列と特異的にハイブリッド形成し得るオリゴヌクレオチドを合成することによって、任意の配列を標的化することができる。従って、本発明のより好ましい実施態様においては、核酸配列認識モジュールとして、CRISPR-GNDMシステムが用いられる。
【0029】
本発明のCRISPR-GNDMシステムを用いる場合、二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖(好ましくは両方の鎖)を切断する能力を欠いた変異型CRISPRエフェクタータンパク質(以下では、単に「CRISPRエフェクタータンパク質」ともいう)をリクルートさせることによって、標的化された遺伝子の転写を十分に活性化し得る。標的化された遺伝子の転写調節領域は、CRISPRエフェクタータンパク質及びそれに結合した本発明のアクチベーターをリクルートさせることによって、該遺伝子の転写が活性化され得る限り、該遺伝子の任意の領域であってよい。かかる領域としては、例えば、標的化された遺伝子のプロモーター領域及びエンハンサー領域、イントロン、エクソンなどが挙げられる。
【0030】
本明細書において、「CRISPR-GNDMシステム」は、(a)クラス2 CRISPRエフェクタータンパク質(例えば、dCas9若しくはdCpf1)、又は該CRISPRエフェクタータンパク質と本発明の転写アクチベーターとの複合体、及び(b)CRISPRエフェクタータンパク質及それに結合した転写レギュレーターを標的遺伝子の転写調節領域にリクルートさせることを可能とする、標的遺伝子の転写調節領域の配列に相補的なガイドヌクレオチド(gN)を含むシステムを意味する。前記システムを用いて、CRISPRエフェクタータンパク質に結合した本発明のアクチベーターを介して、該遺伝子の転写活性化が可能となる。
【0031】
本発明において用いられる「CRISPRエフェクタータンパク質」は、gNと複合体を形成し、目的遺伝子中の標的ヌクレオチド配列及びそれに隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer adjacent motif)(PAM)を認識し、それに結合する限り特に制限はない。好ましくはCas9若しくはCpf1又はそれらの改変体である。Cas9としては、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(SpCas9;PAM配列NGG(NはA、G、T又はC。以下同じ))、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9(StCas9;PAM配列NNAGAAW)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)由来のCas9(NmCas9;PAM配列NNNNGATT)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のCas9(SaCas9;
PAM配列:NNGRRT)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCas9(CjCas9;PAM配列:NNNVRYM(VはA、G又はC;RはA又はG;YはT又はC;MはA又はC))が挙げられるが、これらに限定されない。サイズの観点からは、好ましくは、Cas9はSaCas9若しくはCjCas9又はそれらの改変体である。Cpf1としては、例えば、フランシセラ・ノヴィシダ(Francisella novicida)由来のCpf1(FnCpf1;PAM配列NTT)、アシダミノコッカス
sp.(Acidaminococcus sp.)由来のCpf1(AsCpf1;PAM配列NTTT)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)由来のCpf1(LbCpf1
;PAM配列NTTT)等が挙げられるが、それらに限定されない。本発明において用いられるCRISPRエフェクタータンパク質として、二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖(好ましくは両方の鎖)を切断するCRISPRエフェクタータンパク質の能力が失活さ
れたタンパク質が用いられる。例えば、SpCas9の場合、10番目のAsp残基をAla残基に変換し、そして/又は、840番目のHis残基をAla残基に変換した改変体(二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力を欠いた改変体を「dSpCas9」と称することがある)を用いることができる。あるいは、SaCas9の場合、10番目のAsp残基をAla残基に変換し、そして/又は556番目のAsp残基、557番目のHis残基及び/又は580番目のAsn残基をAla残基に変換した改変体(二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力を欠いた改変体を「dSaCas9」と称することがある)を用いることができる。CjCas9の場合、8番目のAsp残基をAla残基に変換し、そして/又は、559番目のHis残基をAla残基に変換した改変体(二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力を欠いた改変体を「dCjCas9」と称することがある)を用いることができる。FnCpf1の場合、917番目のAsp残基をAla残基に変換し、そして/又は、1006番目のGlu残基をAla残基に変換した改変体を用いることができる。さらに、標的ヌクレオチド配列への結合能を維持し得る限り、これらのタンパク質のアミノ酸の一部を改変させた改変体を用いてもよい。改変体としては、例えば、アミノ酸配列の一部を欠失させた短縮型の改変体が挙げられる。かかる改変体の例としては、具体的には、721番目~745番目のアミノ酸を欠失したdSaCas9(該欠失部分は、上述したペプチドリンカー等で置換されていてもよい)などが挙げられる。
【0032】
本発明のCRISPR-GNDMシステムの第2の要素は、標的化された遺伝子の転写調節領域における、標的鎖(targeted strand)のPAMに隣接するヌクレオチド配列に
相補的なヌクレオチド配列(以下「ターゲッティング配列(targeting sequence)」ともいう)を含むガイドヌクレオチド(gN)である。CRISPRエフェクタータンパク質がdCas9の場合、gNはトランケートされたcrRNAとtracrRNAとのキメラヌクレオチド(即ち、単一のガイドRNA(sgRNA))として、又は別個のcrRNAとtracrRNAとの組み合わせとして提供される。gNは、RNA、DNA又はDNA/RNAキメラの形態で提供されてもよい。従って、技術的に可能な限り、以下では、「sgRNA」、「crRNA」及び「tracrRNA」という用語は、本発明の文脈において、対応するDNA及びDNA/RNAキメラも含むものとしても用いられる。
【0033】
ここで「標的鎖」は、標的ヌクレオチド配列のcrRNAとハイブリッド形成する方の鎖を意味し、標的鎖とcrRNAとのハイブリダイゼーションによって一本鎖状になるその反対鎖を、「非標的鎖(non-targeted strand)」と称する。標的ヌクレオチド配列が
鎖の一方によって表現される場合(例えば、PAM配列を表記する場合、標的ヌクレオチド配列とPAMとの位置関係を示す場合等)、非標的鎖の配列によって代表される。
【0034】
ターゲッティング配列は、標的化された遺伝子の転写調節領域において標的鎖と特異的にハイブリダイズし、CRISPRエフェクタータンパク質及びそれに結合した本発明のアクチベーターを転写調節領域にリクルートし得る限り限定されない。例えば、dSaCas9をCRISPRエフェクタータンパク質として用いる場合、表1に列挙されるターゲッティング配列が例示される。表1において、21個のヌクレオチドからなるターゲッティング配列が記載されているが、該ターゲッティング配列の長さは、12ヌクレオチド以上(例えば、12ヌクレオチド、15ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド又はそれ以上)であることが好ましく、25ヌクレオチド以下(例えば、25ヌクレオチド、24ヌクレオチド、23ヌクレオチド、22ヌクレオチド又はそれ以下)であることが好ましい。好ましい実施態様においては、21ヌクレオチドである。
【0035】
CRISPRエフェクタータンパク質としてCas9を用いる場合、ターゲッティング配列は、例えば、公開されているガイドヌクレオチド設計ウェブサイト(CRISPR Design
Tool、CRISPRdirect等)を用いて、目的遺伝子のCDS配列から3’側に隣接するPAM(例えば、SaCas9の場合、NNGRRT)を有する21merの配列をリストアップすることによって設計ことができる。宿主ゲノム中のオフターゲットサイト数が少ない候補配列をターゲッティング配列として用いることができる。使用するガイドヌクレオチド設計ソフトウェアに宿主ゲノムのオフターゲットサイトを検索する機能がない場合、例えば、候補配列の3’側の8~12ヌクレオチド(標的ヌクレオチド配列の識別能の高いseed配列)について、宿主ゲノムに対してBlast検索をかけることによって、オフターゲットサイトを検索することができる。異なるPAMを認識するCRISPRエフェクタータンパク質を用いる場合であっても、ターゲッティング配列は、同様の方法で設計及び作製することができる。特に断らない限り、本明細書において、ターゲッティング配列をDNA配列として示す。RNAをgNとして用いる場合には、各配列における「T」は「U」に読み替えるものとする。
【0036】
【0037】
上記いずれかの核酸配列認識モジュールは、上記本発明のアクチベーターとの融合タンパク質として提供することができ、又は、SH3ドメイン、PDZドメイン、GKドメイン、GBドメイン等のようなタンパク質結合ドメインとそれらの結合パートナーとを、核酸配列認識モジュールと、本発明のアクチベーターとにそれぞれ融合させ、該ドメインとその結合パートナーとの相互作用を介してタンパク質複合体として提供してもよい。あるいは、核酸配列認識モジュールと、本発明のアクチベーターとにそれぞれインテイン(intein)を融合させ、タンパク質合成後のライゲーションにより、両者を連結することができる。
【0038】
核酸配列認識モジュールと本発明のアクチベーターとが結合した複合体(融合タンパク質を含む)を含む本発明の複合体を、無細胞系における酵素反応として、二本鎖DNAと接触させてもよい。本発明の主たる目的に沿えば、前記複合体をコードする核酸を、目的の二本鎖DNA(例えば、ゲノムDNA)を有する細胞に導入することが望ましい。従って、核酸配列認識モジュールと、本発明のアクチベーターとは、それらの融合タンパク質をコードする核酸として、又は、結合ドメイン、インテイン等を利用することによってタンパク質に翻訳した後、宿主細胞中で複合体形成し得るような形態で、それらをそれぞれコードする核酸として調製することが好ましい。ここで核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。DNAの場合は、好ましくは二本鎖DNAであり、宿主細胞中で機能的なプロモーターの制御下に配置した発現ベクターの形態で提供される。RNAの場合は、好ましくは一本鎖RNAである。
【0039】
核酸配列認識モジュールと本発明のアクチベーターとが結合した本発明の複合体は、二本鎖DNA切断(DSB)を伴わないため、本発明の複合体を用いた方法は広範な生物材料に適用することができる。従って、核酸配列認識モジュール及び/又は本発明のアクチベーターをコードする核酸が導入される細胞は、原核生物である大腸菌などの細菌や下等真核生物である酵母などの微生物の細胞から、ヒト等の哺乳動物を含む脊椎動物の細胞、昆虫、植物など高等真核生物の細胞まで、任意の種の細胞を包含し得る。
【0040】
ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター、PPRモチーフ、CRISPR-GNDMシステム等の核酸配列認識モジュールをコードするDNAは、各モジュールについて上記したいずれかの方法により取得することができる。制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等の配列認識モジュールをコードするDNAは、例えば、それらのcDNA配列情報に基づいて、当該タンパク質の所望の部分(DNA結合ドメインを含む部分)をコードする領域をカバーするオリゴDNAプライマーを合成し、当該タンパク質を産生する細胞より調製した全RNAもしくはmRNA画分を鋳型として用い、RT-PCR法によって増幅することにより、クローニングすることができる。
【0041】
変異型CRISPRエフェクタータンパク質は、クローン化されたCRISPRエフェクタータンパク質をコードするDNAに、DNA切断活性に重要な部位のアミノ酸残基(例えば、SpCas9の場合、10番目のAsp残基や840番目のHis残基、SaCas9の場合、10番目のAsp残基、556番目のAsp残基、557番目のHis残基、580番目のAsn残基、CjCas9の場合、8番目のASP残基、559番目のHis残基、FnCpf1の場合、917番目のAsp残基や1006番目のGlu残基等が挙げられるが、これらに限定されない)を他のアミノ酸に変換する変異を導入することにより、取得することができる。
【0042】
クローン化されたDNAは、直接、又は所望により制限酵素で消化した後、又は適当なリンカー(例えば、上述したペプチドリンカー等)、タグ(例えば、HAタグ、mycタグ、MBPタグ、FLAGタグ等)及び/又は核移行シグナル(目的の二本鎖DNAがミトコンドリアや葉緑体DNAの場合は、各オルガネラ移行シグナル)を付加した後に、核酸配列認識モジュールをコードするDNAとライゲーションして、融合タンパク質をコードするDNAを調製することができる。あるいは、核酸配列認識モジュールをコードするDNAと、本発明のアクチベーターをコードするDNAに、それぞれ結合ドメインもしくはその結合パートナーをコードするDNAを融合させるか、又は両DNAに分離インテインをコードするDNAを融合させることにより、核酸配列認識モジュールと本発明のアクチベーターとが宿主細胞内で翻訳されて、複合体を形成できるようにしてもよい。これらの場合、所望により一方もしくは両方のDNAの適当な位置に、リンカー及び/又は核移行シグナルを連結することができる。また、本発明の複合体を融合タンパク質として発現させる場合には、本発明のアクチベーターは、核酸配列認識モジュール又はその構成成分(例えば、CRISPRエフェクタータンパク質)のN末端及びC末端のいずれに融合させてもよい。
【0043】
核酸配列認識モジュール及び/又は本発明のアクチベーターをコードするDNAは、化学的にDNA鎖を合成するか、もしくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法やGibson Assembly法を利用して接続することにより、その全長をコードするDNAを構築することによって得ることができる。化学合成又はPCR法もしくはGibson Assembly法との組み合わせで全長DNAを構築することの利点は、該DNAを導入する宿主に合わせて使用コドンをCDS全長にわたり設計できる点にある。異種DNAの発現に際し、そのDNA配列を宿主生物において使用頻度の高いコドンに変換することで、タンパク質発現量の増大が期待できる。使用する宿主におけるコドン使用頻度のデータは、例えば(公益財団法人)かずさDNA研究所のホーム
ページに公開されている遺伝暗号使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/index.html)を用いることができ、又は各宿主におけるコドン使用頻度を示した文献を参照してもよい。入手したデータと導入しようとするDNA配列を参照し、該DNA配列に用いられているコドンの中で宿主において使用頻度の低いものを、同一のアミノ酸をコードし使用頻度の高いコドンに変換すればよい。
【0044】
核酸配列認識モジュール及び/又は本発明のアクチベーターをコードするRNAは、例えば、該モジュール及び/又は該アクチベーターをコードするDNAを含むベクターを作製し、これを鋳型として、自体公知のインビトロ転写系にてmRNAに転写することにより調製することができる。あるいは、化学的にRNAを合成することもできる。
【0045】
本発明のアクチベーター又は本発明の複合体をコードするDNAを含む発現ベクターは、例えば、該DNAを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより作製することができる。
【0046】
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5、pC194);酵母由来プラスミド(例えば、pSH19、pSH15);昆虫細胞発現プラスミド(例えば、pFast-Bac);動物細胞発現プラスミド(例えば、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクター(例えば、BmNPV、AcNPV);レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)などの動物ウイルスベクターなどが用いられる。遺伝子治療における利用を考慮すれば、導入遺伝子を長期にわたり発現させられる点や非病原性ウイルス由来で安全性の点からは、AAVベクターが好適に用いられる。
【0047】
AAVベクターは、力価や感染効率が十分に担保される限り特に制限はないが、約5kb以下(例えば、約5kb、約4.95kb、約4.90kb、約4.85kb、約4.80kb、約4.75kb、約4.70kb又はそれ以下)であることが好ましい。本発明のアクチベーターのアミノ酸長は、好ましくは200アミノ酸以下である。従って、本発明の複合体をコードする核酸とガイドヌクレオチドをコードする核酸の合計塩基長を、このサイズリミットを下回るように設計することが容易である。従って、本発明のアクチベーターは、本発明の複合体をコードする核酸と、ガイドヌクレオチドをコードする核酸とを、別々のAAVベクターに搭載する必要がないとの利点を有する。
【0048】
ウイルスベクターを発現ベクターとして用いる場合には、目的とする組織や臓器への感染に適した血清型に由来するベクターを用いることが好ましい。AAVベクターの例を挙げれば、中枢神経系や網膜を標的とする場合には、AAV1、2、3、4、5、7、8、9又は10をベースとしたベクター、心臓を標的とする場合には、AAV1、3、4、6又は9をベースとしたベクター、肺を標的とする場合には、AAV1、5、6、9又は10をベースとしたベクター、肝臓を標的とする場合には、AAV2、3、6、7、8、又は9をベースとしたベクター、骨格筋を標的とする場合には、AAV1、2、6、7、8、9をベースとしたベクターを用いることが好ましい。がん治療のためには、AAV2を用いることが好ましい。AAVの血清型に関しては、例えば、WO2005/033321A2などを参照することができる。
【0049】
核酸配列認識モジュール及び/又は本発明のアクチベーターをコードするRNAの宿主細胞への導入は、マイクロインジェクション法、リポフェクション法等により行うことができる。RNA導入は1回もしくは適当な間隔をおいて複数回(例えば、2~5回)繰り返して行うことができる。
【0050】
また、全く異なる位置の複数のDNA領域を標的としてもよい。従って、本発明の一実施態様において、異なる標的ヌクレオチド配列(1つの目的遺伝子内であってもよいし、異なる2以上の目的遺伝子内にあってもよく、これらの目的遺伝子は同一染色体上にあってもよいし、別個の染色体上に位置していてもよい)と特異的に結合する、2種以上の核酸配列認識モジュールを用いることができる。この場合、これらの核酸配列認識モジュールの各々1つと、本発明のアクチベーターとが、複合体を形成する。ここで、本発明のアクチベーターは共通のものを使用することができる。例えば、核酸配列認識モジュールとしてCRISPR-GNDMシステムを用いる場合、CRISPRエフェクタータンパク質と本発明のアクチベーターとの複合体(融合タンパク質を含む)は共通のものを用い、gNとして、異なる標的ヌクレオチド配列とそれぞれ相補鎖を形成する、2以上のcrRNA又は2以上のcrRNAの各々とtracrRNAとのキメラRNAを2種以上作製して用いることができる。一方、核酸配列認識モジュールとしてジンクフィンガーモチーフやTALエフェクターなどを用いる場合には、例えば、異なる標的ヌクレオチドと特異的に結合する核酸配列認識モジュールに、本発明のアクチベーターを融合させることができる。
【0051】
gNをコードするDNAは、その配列情報に基づいて、DNA/RNA合成機を用いて化学的に合成することができる。例えば、SaCas9用のgRNAをコードするDNAは、標的化された遺伝子の転写調節領域に相補的なターゲッティング配列、及び生来のSacrRNAの少なくとも一部の「リピート」領域(例えば、GUUUUAGUACUCUG;配列番号31)を含むcrRNAをコードするデオキシリボヌクレオチド配列、並びに、必要に応じてテトラループ(例えば、GAAA)を介して結合される、該crRNAのリピート領域に相補的な少なくとも一部の「アンチリピート」領域(例えば、CAGAAUCUACUAAAAC;配列番号32)、及び、それに続く生来のSatracrRNAのステムループ1領域、リンカー領域、及びステムループ2領域(AAGGCAAAAUGCCGUGUUUAUCACGUCAACUUGUUGGCGAGAUUUUUUU;配列番号33)を有するtracrRNAをコードするデオキシリボヌクレオチド配列を有する。一方、dCpf1用のgRNAをコードするDNAは、標的化された遺伝子の転写調節領域に相補的なターゲッティング配列と、それに先行する5’ハンドル(例えば、AAUUUCUACUCUUGUAGAU;配列版後34)とを含むcrRNAのみをコードするデオキシリボヌクレオチド配列を有する。CRISPRエフェクタータンパク質として、SaCas9及びCpf1以外のタンパク質を用いる場合には、公知の配列等に基づいて、使用するタンパク質用のtracrRNAを適宜設計することができる。本発明のアクチベーターをコードするDNAが連結されたCRISPRエフェクタータンパク質をコードするDNAは、該DNAが目的の宿主細胞中で機能するプロモーターの制御下に位置するように発現ベクターにサブクローニングすることができる。
【0052】
gN(例えば、crRNA又はcrRNA-tracrRNAキメラ)をコードするDNAは、宿主に応じて、上記と同様の方法により宿主細胞に導入することができる。
【0053】
あるいは、CRISPRエフェクター分子を送達するために、DNAの代わりにRNAを使用してもよい。一実施態様において、(a)本発明の複合体、及び(b)ターゲッティング配列を含むgN、を含む本発明のCRISPR-GNDMシステムは、上記の(a)及び(b)をコードするRNAの形態で、目的の細胞や生物に導入することができる。
【0054】
上記のエフェクター分子をコードするRNAは、例えば、インビトロ転写を介して作製することができ、作製されたmRNAは、インビボ送達のために精製されてもよい。簡潔に説明すれば、エフェクター分子のCDS領域を含むDNAフラグメントを、インビトロ転写を駆動するバクテリオファージに由来する人工プロモーター(例えば、T7、T3又
はSP6プロモーター)の下流にクローニングすることができる。RNAは、T7ポリメラーゼ、NTP及びIVT緩衝液などのインビトロでの転写に必要な成分を添加することにより、プロモーターから転写され得る。必要に応じて、免疫刺激を減少させ、翻訳及びヌクレアーゼ安定性を増強させるため、RNAを修飾してもよい(例えば、5mCAP(m7G(5’)ppp(5’)Gキャッピング、ARCA;アンチリバースキャップアナログ(3’O-Me-M7G(5’)ppp(5’)G)、5-メチルシチジン及びシュードウリジン修飾、3’ポリAテイル)。
【0055】
あるいは、エフェクタータンパク質と、gNとの複合体(以下「核タンパク質(NP)」という)(例えば、デオキシリボ核タンパク質(DNP)、リボ核タンパク質(RNP))を用いて、CRISPRエフェクター分子とgNを送達することができる。簡潔に説明すれば、インビトロで作製されたCRISPRエフェクタータンパク質及びインビトロで転写された、又は化学的に合成されたgNを適切な比率で混合し、次いで脂質ナノ粒子(LNP)にカプセル化する。カプセル化されたLNPを罹患動物又は患者に送達し、NP複合体を標的細胞や器官に直接送達することができる。
【0056】
CRISPRエフェクタータンパク質を、細菌において発現させ、そしてアフィニティカラムを介して精製することができる。CRISPRエフェクタータンパク質の細菌コドン最適化cDNA配列を、LifeSensorsからのpE-SUMOベクターのような細菌発現
プラスミド中にクローニングすることができる。cDNAフラグメントに、N末端又はC末端のいずれかで、HA、6xHis、Myc、又はFLAGペプチドのような低分子ペプチド配列でタグ付加することができる。プラスミドをE.coli B834(DE3)のようなタンパク質発現細菌株中に導入することができる。導入後、タンパク質を、Ni-NTAカラム又は抗FLAGアフィニティカラムのような、低分子ペプチドタグ配列に結合するアフィニティカラムを使用して精製することができる。結合したタグペプチドを、TEVプロテアーゼ処理によって除去することができる。タンパク質を、HiLoad Superdex 200 16/60カラム(GE Health-care)上でのクロマトグラフィーによってさらに精製することができる。
【0057】
あるいは、CRISPRエフェクタータンパク質を、CHO、COS、HEK293、及びHela細胞のような哺乳動物細胞株において発現させることができる。例えば、CRISPRタンパク質のヒトコドン最適化cDNA配列を哺乳動物発現プラスミド(例えば、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo、pSRa);レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のような動物ウイルス由来ベクターなどを使用してクローニングすることができる。cDNAフラグメントに、N末端又はC末端のいずれかで、HA、6xHis、Myc、又はFLAGペプチドのような低分子ペプチド配列でタグ付加することができる。プラスミドを、タンパク質発現哺乳動物細胞株中に導入することができる。トランスフェクションの2~3日後に、トランスフェクトされた細胞を収集し、そして発現されたCRISPRタンパク質を、上記の低分子ペプチドタグ配列へのアフィニティカラム結合を使用して精製することができる。
【0058】
本発明のアクチベーターも、上記の方法と同様の方法により得ることができる。
【実施例0059】
本発明は、本発明の例示的な非限定的な実施態様を提供する以下の実施例を参照することにより、より十分に理解される。
【0060】
本発明者らは、既存の活性化部分に匹敵するか又は既存の活性化部分より良好な転写活性化能さえ持ちながら、dSaCas9との融合及び5kbのAAVベクターサイズ限界
への適合に十分に小さな、新たな活性化部分を設計及び構築した。(
図1)。既存の活性化部分は、VP64(50a.a.)、VP160(130a.a.)、VPR(520a.a.)、及びP300(617a.a.)を含む(PMID:27214048/ 25730490に記載
されている)。これらの活性化部分のうち、VP64及びVP160のみが、dSaCas9と融合させた場合にAAVベクターのサイズ限界を満たす。
【0061】
それゆえ、本発明者らは、dSaCas9と融合させた以下の7個の新たな活性化部分を構築及び試験し、そしてそのトランス活性化能を既存の3個の部分(VP64、VP160及びVPR)と比較した。
【0062】
生成した活性化部分のアミノ酸及びヌクレオチド配列
1.VP64-miniMYOD(154a.a.)は、G-S-G-Sリンカー(下線)によって連結されたVP64(斜字)及びヒトMYOD1由来の1~100a.a.(太字、PMID: 9710631)からなる;
【0063】
【0064】
2.VP64-miniHSF1(154a.a.)は、G-S-S-Gリンカー(下線)によって連結されたVP64(斜字)及びヒトHSF1由来の430~529a.a.(太字、PMID:7760831)からなる;
【0065】
【0066】
3.VP32-miniP65(160a.a.)は、G-S-G-Sリンカー(下線)によって連結されたVP32(斜字)及びヒトP65由来の415~546a.a.(太字、PMID:1732726)からなる;
【0067】
【0068】
4.VP64-miniRTA(167a.a.)は、G-S-G-Sリンカー(下線)によって連結されたVP64(斜字)及びエプスタイン・バーウイルス複製及び転写アクチベーター由来の493~605a.a.(太字、RTA;PMID:1323708)からなる;
【0069】
【0070】
5.VP64-miniP65(186a.a.)は、G-S-G-Sリンカー(下線)によって連結されたVP64(斜字)及びヒトP65由来の415~546a.a.(太字、PMID:1732726)からなる;
【0071】
【0072】
【0073】
6.VPH(376a.a.)は、NLS(PKKKRKV)(配列番号45)及び/又はS-G-Q-G-G-G-G-S-Gリンカー(下線)によって連結されたVP64(斜字)、マウスP65由来の369~549a.a.(太字)及びヒトHSF1由来の407~529a.a.(下線、太字)、PMID:25494202)からなる;
【0074】
【0075】
7.VPR(510a.a.)は、NLS(PKKKRKV)及び/又はG-S-G-S-G-Sリンカー(下線)によって連結されたVP64(斜字)、ヒトP65由来の284~543a.a.(太字、PMID:5970)及びエプスタイン・バーウイルス複製及び転
写アクチベーター由来の416~605a.a.(下線、太字、RTA;PMID:1323708)からなる
【0076】
【0077】
【0078】
8.VP64-microRTA(140a.a.)は、G-S-G-Sリンカー(下線)によって連結されたVP64(斜字)及びエプスタイン・バーウイルス複製及び転写アクチベーター由来の520~605a.a.(太字、RTA;PMID:1323708)からなる;
【0079】
【0080】
プラスミドクローニング
新たな活性化部分(AM)をIDTによって合成し、そしてNUC9-dSaCas9ベクター中にクローニングした。融合タンパク質はEFSプロモーターから発現された。
使用したsgRNA配列:
【0081】
【0082】
細胞トランスフェクション
HEK293FT細胞を、ウェル当たり75,000細胞で、24ウェルプレートにプレーティングした。Lipofectamine 2000を製造業者の説明書に従って使用して、250ngの融合タンパク質発現プラスミドNUC9-dsaCas9-AMを、sgRNA発現プラスミドLvSG03と同時トランスフェクトした。24時間後、トランスフェクトした細胞をピューロマイシン選択に供し、そして翌日に収集した。
【0083】
dSaCas9ヌクレオチド配列;
【0084】
【0085】
【0086】
tracrRNA配列;
【0087】
【0088】
RNA単離及び遺伝子発現分析
遺伝子発現分析のために、トランスフェクトした細胞を、トランスフェクション後48~72時間で収集し、RNeasyキット(Qiagen)を使用して、RLTバッファー中で溶解して、全RNAを抽出した。
Taqman分析のために、1μgの全RNAを使用して、10μlの体積中でTaqMan(商標)High-Capacity RNA-to-cDNA Kit(Applied Biosystems)を使用してcDNAを生成した。生成されたcDNAを10倍希釈し、そしてTaqman反応(反応当たり10μlの総体積)当たり3.33μlを使用した。Taqman反応を、Roche LightCycler 96又はLightCycler 480中でTaqman gene expression master mix(ThermoFisher)を使用して実行し、そしてLightCycler 96分析ソフトウェアを使用して分析した。
Taqmanプローブ産物ID:
MYD88;Hs01573837_g1(FAM)
FGF21:Hs00173927_m1
GCG:Hs01031536_m1
HPRT:Hs99999909_m1(VIC PL)
Taqman QPCR条件:
工程1;95℃ 10分
工程2;95℃ 15秒
工程3;60℃ 30秒
工程2及び3の繰り返し;40回
【0089】
結果
図1.AAVベクターの構造及び10個の活性化部分
本発明者らのAAVベクターは、下記のダイアグラムに示す活性化部分と融合されたdSaCas9を含む。融合タンパク質はEFSプロモーターによって発現され、そしてsgRNAはU6プロモーターから発現される。7個の新たな活性化部分を作製した;VP64-MyoD、VP64-HSF1、VP32-p65、VP64-miniRTA、VP64-microRTA、VP64-p65及びVPH。また、報告された活性化部分(VP64、VP160及びVPR)を比較のために試験した。AAVベクターのサイズ限界は5kbであり、そしてコンポーネントの合計は4.45kbである。これは、融合される活性化部分のために約550bpの余地を残す。従って、以下の7個の活性化部分が、ベクターサイズ限界内に適合する;VP64、Vp160、VP64-MyoD、VP64-HSF1、VP32-p65、VP64-miniRTA及びVP64-microRTA。
【0090】
図2.9個の活性化部分によるMYD88遺伝子活性化
6個の新たな活性化部分の活性化機能を、ヒトMYD88プロモーター領域を標的化する3個の異なるsgRNA(MYD88-1、-2及び-3)を用いて試験した。また、3個の活性化部分、VP64、VP160及びVPRを比較のために試験した。試験した3個のsgRNAの全てにおいて、VP64-RTAは、AAVベクターサイズ限界内に適合する6個の部分の最良の遺伝子活性化を示した。
【0091】
図3.9個の活性化部分によるFGF21遺伝子活性化
6個の新たな活性化部分の活性化機能を、ヒトFGF21プロモーター領域を標的化する3個の異なるsgRNA(FGF-1、-2及び-3)を用いて試験した。また、3個の活性化部分、VP64、VP160及びVPRを比較のために試験した。試験した3個のsgRNAの全てにおいて、VP64-RTAは、AAVベクターサイズ限界内に適合する6個の部分の最良の遺伝子活性化を示した。
【0092】
図4.9個の活性化部分によるGCG遺伝子活性化
6個の新たな活性化部分の活性化機能を、ヒトGCGプロモーター領域を標的化する3個の異なるsgRNA(GCG-1、-2及び-3)を用いて試験した。また、3個の活性化部分、VP64、VP160及びVPRを比較のために試験した。試験した3個のsgRNAの全てにおいて、VP64-RTAは、AAVベクターサイズ限界内に適合する6個の部分の最良の遺伝子活性化を示した。
【0093】
図5.VP64-miniRTA及びVP64-microRTAによるMyD88遺伝子活性化
VP64-miniRTA(164a.a.)及びVP64-microRTA(140a.a.)の活性化機能を、ヒトMYD88プロモーターにおいて比較した。VP64-microRTAは、VP64-miniRTAと同様のレベルの活性化を示した。gMYD88_2を使用した。
【0094】
結論
本発明者らのVP64-miniRTA(miniVR;167a.a.、501bp)およびVP64-microRTA(microVR;140a.a.、420bp)は、Cas9、sgRNA及びプロモーターのような他の要素の存在下で、AAVベクターのサイズ限界(5kb)内に適合するために十分に小さい。
従って、VP64-miniRTA及びVP64-microRTAは、CRISPR技術およびAAV送達システムでの使用のための強力な部分である。
【0095】
本出願は、米国仮特許出願第62/715,432号(出願日:2018年8月7日)(その内容の全体は参照により本明細書に組み込まれる)に基づく。