(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073632
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240522BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240522BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240522BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240522BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652C
H01L29/78 652F
H01L29/78 655G
H01L29/78 652J
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 655A
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/78 655B
H01L29/91 F
H01L29/91 D
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044180
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2022039747の分割
【原出願日】2017-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2016203423
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016244925
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017099415
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トレンチ部の底部近傍へのキャリア集中を抑制する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体基板10と、半導体基板10に形成された第1導電型のドリフト領域18と、半導体基板10の上面とドリフト領域18との間に形成された第2導電型のベース領域14と、半導体基板10の上面から深さ方向に延伸して形成されたダミートレンチ部30及びゲートトレンチ部40と、を備える。ゲートトレンチ部40の下端は、半導体基板10の深さ方向Zにおいて、ダミートレンチ部30の下端よりも深い。ダミートレンチ部30は、上面視においてゲートトレンチ部40よりも半導体装置100の端部まで延伸して設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板において、前記半導体基板の上面と前記ドリフト領域との間に形成された第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板において、前記半導体基板の上面から深さ方向に延伸して形成された第1トレンチ部および第2トレンチ部と
を備える半導体装置であって、
前記第1トレンチ部の下端は、前記半導体基板の深さ方向において、前記第2トレンチ部の下端よりも深く、
前記第1トレンチ部は、上面視において前記第2トレンチ部よりも前記半導体装置の端部まで延伸して設けられる
半導体装置。
【請求項2】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板において、前記半導体基板の上面と前記ドリフト領域との間に形成された第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板において、前記半導体基板の上面から深さ方向に延伸して形成された第1トレンチ部および第2トレンチ部と
を備える半導体装置であって、
前記第1トレンチ部および前記第2トレンチ部は、予め定められた延伸方向に延伸し、前記延伸方向と異なる配列方向に配列され、
前記第1トレンチ部の前記配列方向における幅は、前記第2トレンチ部の前記配列方向における幅よりも広く、
前記第1トレンチ部は、上面視において前記第2トレンチ部よりも前記半導体装置の端部まで延伸して設けられる
半導体装置。
【請求項3】
前記ベース領域の下端と前記第2トレンチ部の下端との深さ方向における第1距離は、前記ベース領域の下端と前記第1トレンチ部の下端との深さ方向における第2距離の半分以下である
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板の上面の上方に設けられた第1上面電極および第2上面電極を備え、
前記第1トレンチ部は、第1絶縁膜および、前記第1上面電極に電気的に接続された第1導電部を有し、
前記第2トレンチ部は、第2絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第2導電部を有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1トレンチ部の側壁における前記第1絶縁膜の膜厚は、前記第1トレンチ部の下端における前記第1絶縁膜の膜厚よりも薄い
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2トレンチ部の側壁における前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第2トレンチ部の下端における前記第2絶縁膜の膜厚よりも薄い
請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1トレンチ部の下端における前記第1絶縁膜の膜厚は、前記第2トレンチ部の下端における前記第2絶縁膜の膜厚よりも薄い
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項8】
当該半導体装置は、IGBTまたはMOSFETであるトランジスタを設けた第1領域と、ダイオードを設けた第2領域と、第1領域と第2領域の間の前記ベース領域にチャネルが形成されない領域である第3領域とを含む半導体チップである
請求項4から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板において、前記半導体基板の上面と前記ドリフト領域との間に形成された第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板において、前記半導体基板の上面から深さ方向に延伸して形成された第1トレンチ部、第2トレンチ部および第3トレンチ部と、
前記半導体基板に形成され、前記第1トレンチ部を有する第1領域と、
前記半導体基板に形成され、第3領域を介して前記第1領域に隣接する第2領域と、
を備え、
前記第3領域は、前記第2トレンチ部と、前記第2トレンチ部とトレンチ深さまたはトレンチ幅の少なくとも一方が異なる前記第3トレンチ部と、に挟まれたメサ部を有する
半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板の上面の上方に設けられた第1上面電極および第2上面電極を備え、
前記第1トレンチ部は、第1絶縁膜および、前記第1上面電極に電気的に接続された第1導電部を有し、
前記第2トレンチ部は、第2絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第2導電部を有し、
前記第3トレンチ部は、第3絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第3導電部を有し、
前記半導体基板の深さ方向における、前記第3トレンチ部の下端の位置は、前記第2トレンチ部の下端の位置よりも深い
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体基板の上面の上方に設けられた第1上面電極および第2上面電極を備え、
前記第1トレンチ部は、第1絶縁膜および、前記第1上面電極に電気的に接続された第1導電部を有し、
前記第2トレンチ部は、第2絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第2導電部を有し、
前記第3トレンチ部は、第3絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第3導電部を有し、
トレンチ配列方向における前記第3トレンチ部の幅は、前記第2トレンチ部の幅よりも広い
請求項9または10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1領域は、IGBTまたはMOSFETであるトランジスタを設けた領域である
請求項9から11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2領域は、ダイオードを設けた領域であり、
前記第3領域は、第1領域と第2領域の間の前記ベース領域にチャネルが形成されない領域である
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板のおもて面に、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の高濃度領域を備え、
前記高濃度領域は、前記第2上面電極と接している
請求項4から8または10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板において、前記ドリフト領域と前記ベース領域との間に形成され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高い第1導電型の蓄積領域を備える
請求項1から14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体基板は、炭化珪素半導体基板である
請求項1から15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等を含む半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。半導体装置には、ダミートレンチを設ける場合がある。
特許文献1 国際公開2005/109521号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トレンチ部の底部近傍へのキャリア集中を抑制することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体基板と、前記半導体基板に形成された第1導電型のドリフト領域と、前記半導体基板において、前記半導体基板の上面と前記ドリフト領域との間に形成された第2導電型のベース領域と、前記半導体基板において、前記半導体基板の上面から深さ方向に延伸して形成された第1トレンチ部および第2トレンチ部とを備える半導体装置を提供する。前記第1トレンチ部の下端は、前記半導体基板の深さ方向において、前記第2トレンチ部の下端よりも深くてよい。前記第1トレンチ部は、上面視において前記第2トレンチ部よりも前記半導体装置の端部まで延伸して設けられてよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、半導体基板と、前記半導体基板に形成された第1導電型のドリフト領域と、前記半導体基板において、前記半導体基板の上面と前記ドリフト領域との間に形成された第2導電型のベース領域と、前記半導体基板において、前記半導体基板の上面から深さ方向に延伸して形成された第1トレンチ部および第2トレンチ部とを備える半導体装置を提供する。前記第1トレンチ部および前記第2トレンチ部は、予め定められた延伸方向に延伸し、前記延伸方向と異なる配列方向に配列されてよい。前記第1トレンチ部の前記配列方向における幅は、前記第2トレンチ部の前記配列方向における幅よりも広くてよい。前記第1トレンチ部は、上面視において前記第2トレンチ部よりも前記半導体装置の端部まで延伸して設けられてよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置において、前記ベース領域の下端と前記第2トレンチ部の下端との深さ方向における第1距離は、前記ベース領域の下端と前記第1トレンチ部の下端との深さ方向における第2距離の半分以下であってよい。
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の上面の上方に設けられた第1上面電極および第2上面電極を備えてよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1トレンチ部は、第1絶縁膜および、前記第1上面電極に電気的に接続された第1導電部を有してよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2トレンチ部は、第2絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第2導電部を有してよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1トレンチ部の側壁における前記第1絶縁膜の膜厚は、前記第1トレンチ部の下端における前記第1絶縁膜の膜厚よりも薄くてよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2トレンチ部の側壁における前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第2トレンチ部の下端における前記第2絶縁膜の膜厚よりも薄くてよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1トレンチ部の下端における前記第1絶縁膜の膜厚は、前記第2トレンチ部の下端における前記第2絶縁膜の膜厚よりも薄くてよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、当該半導体装置は、IGBTまたはMOSFETであるトランジスタを設けた第1領域と、ダイオードを設けた第2領域と、第1領域と第2領域の間の前記ベース領域にチャネルが形成されない領域である第3領域とを含む半導体チップであってよい。
【0014】
本発明の第3の態様においては、半導体基板と、前記半導体基板に形成された第1導電型のドリフト領域と、前記半導体基板において、前記半導体基板の上面と前記ドリフト領域との間に形成された第2導電型のベース領域と、前記半導体基板において、前記半導体基板の上面から深さ方向に延伸して形成された第1トレンチ部、第2トレンチ部および第3トレンチ部と、前記半導体基板に形成され、前記第1トレンチ部を有する第1領域と、前記半導体基板に形成され、第3領域を介して前記第1領域に隣接する第2領域と、を備える半導体装置を提供する。前記第3領域は、前記第2トレンチ部と、前記第2トレンチ部とトレンチ深さまたはトレンチ幅の少なくとも一方が異なる前記第3トレンチ部と、に挟まれたメサ部を有してよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の上面の上方に設けられた第1上面電極および第2上面電極を備えてよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1トレンチ部は、第1絶縁膜および、前記第1上面電極に電気的に接続された第1導電部を有してよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2トレンチ部は、第2絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第2導電部を有してよい。
【0018】
上記いずれかの半導体装置において、前記第3トレンチ部は、第3絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第3導電部を有してよい。
【0019】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の深さ方向における、前記第3トレンチ部の下端の位置は、前記第2トレンチ部の下端の位置よりも深くてよい。
【0020】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の上面の上方に設けられた第1上面電極および第2上面電極を備えてよい。前記第1トレンチ部は、第1絶縁膜および、前記第1上面電極に電気的に接続された第1導電部を有してよい。前記第2トレンチ部は、第2絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第2導電部を有してよい。前記第3トレンチ部は、第3絶縁膜および、前記第2上面電極に電気的に接続された第3導電部を有してよい。
【0021】
上記いずれかの半導体装置において、トレンチ配列方向における前記第3トレンチ部の幅は、前記第2トレンチ部の幅よりも広くてよい。
【0022】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域は、IGBTまたはMOSFETであるトランジスタを設けた領域であってよい。
【0023】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2領域は、ダイオードを設けた領域であってよい。
【0024】
上記いずれかの半導体装置において、前記第3領域は、第1領域と第2領域の間の前記ベース領域にチャネルが形成されない領域であってよい。
【0025】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板のおもて面に、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の高濃度領域を備えてよい。前記高濃度領域は、前記第2上面電極と接してよい。
【0026】
上記いずれかの半導体装置における前記半導体基板において、前記ドリフト領域と前記ベース領域との間に形成され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高い第1導電型の蓄積領域を備えてよい。
【0027】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板は、炭化珪素半導体基板であってよい。
【0028】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。
【
図2】
図1におけるa-a断面の一例を示す図である。
【
図3】ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の近傍を拡大した断面図である。
【
図4】
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。
【
図5】
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。
【
図6】
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。
【
図7】
図6に示した蓄積領域16の深さ方向におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
【
図8】
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。
【
図9】
図8に示したゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の近傍を拡大した断面図である。
【
図10】
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。
【
図11】
図10に示したゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
【
図12】ゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
【
図13】ダミートレンチ部30に挟まれた蓄積領域16の構造例を示す図である。
【
図14】半導体装置100の上面の他の例を部分的に示す図である。
【
図15】
図14に示した半導体装置100のb-b断面の一例を示す図である。
【
図16A】境界部90のメサ部94の一例を示す図である。
【
図16B】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図16C】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図16D】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図17】半導体装置100のb-b断面の他の例を示す図である。
【
図18】半導体装置100のb-b断面の他の例を示す図である。
【
図19A】境界部90のメサ部94の一例を示す図である。
【
図19B】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図19C】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図19D】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図19E】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図19F】境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。
【
図20】半導体装置100のb-b断面の他の例を示す図である。
【
図22】本発明の実施形態に係る半導体装置200の一例を示す上面図である。
【
図23】半導体装置200のc-c断面の一例を示す図である。
【
図24】半導体装置200のc-c断面の他の例を示す図である。
【
図25】本発明の実施形態に係る半導体装置300の一例を示す上面図である。
【
図26】半導体装置300のd-d断面の一例を示す図である。
【
図27】半導体装置300のd-d断面の他の例を示す図である。
【
図28】半導体装置300のe-e断面の一例を示す図である。
【
図29】本発明の実施形態に係る半導体装置400の一例を示す上面図である。
【
図30】半導体装置400のf-f断面の一例を示す図である。
【
図31】半導体装置400のf-f断面の他の例を示す図である。
【
図32】半導体装置400のg-g断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0031】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向に限定されない。本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
【0032】
本明細書においては「エミッタ」、「コレクタ」の用語を用いているが、半導体装置はIGBTに限定されない。MOSFET等のトランジスタにおける「ソース」および「ドレイン」も、本明細書における「エミッタ」および「コレクタ」の用語の範囲に含まれ得る。
【0033】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、IGBT等のトランジスタを含む半導体チップである。
図1においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0035】
また、
図1においては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んで耐圧構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。耐圧構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。耐圧構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0036】
本例の半導体装置100は、半導体基板の内部に形成されたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15、蓄積領域16およびウェル領域11を備える。蓄積領域16は、半導体基板の上面には露出しない。
図1では、半導体基板の上面と平行なXY面内において蓄積領域16が形成される領域を、破線で示している。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート電極46を備える。エミッタ電極52およびゲート電極46は互いに分離して設けられる。
【0037】
エミッタ電極52およびゲート電極46と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、
図1では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54、コンタクトホール55およびコンタクトホール56が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
【0038】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。本例のコンタクトホール54は、それぞれのトレンチ部の間に形成されている。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部57が設けられてよい。接続部57は、半導体基板の上面に形成される。本例においてコンタクトホール56は、X軸方向におけるダミートレンチ部30の先端に配置される。接続部57と半導体基板10との間には、絶縁膜が設けられる。
【0039】
ゲート電極46は、コンタクトホール55を通って、ゲート配線45と接触する。ゲート配線45は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲート配線45は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲート配線45は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲート配線45は、コンタクトホール55の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部43まで形成される。ゲートトレンチ部40の先端部43においてゲート導電部は半導体基板の上面に露出しており、ゲート配線45と接触する。ゲート配線45と半導体基板10との間には、絶縁膜が設けられる。
【0040】
エミッタ電極52およびゲート電極46は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミまたはアルミシリコン合金で形成される。各電極は、アルミ等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0041】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、半導体基板の上面において所定の配列方向に沿って所定の間隔で配列される。
図1における配列方向はY軸方向である。
【0042】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向(本例ではX軸方向)に沿って平行に延伸する2つの延伸部41と、延伸部41の先端において2つの延伸部41を接続する先端部43を有してよい。先端部43の少なくとも一部は、半導体基板の上面において曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部41の先端を接続することで、延伸部41の端部における電界集中を緩和できる。
【0043】
ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部41の間には、1つ以上のダミートレンチ部30が設けられる。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、2つの延伸部の先端を接続する先端部を有してよい。本例では、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部41の間に、2つの延伸部および先端部を有するダミートレンチ部30が形成されている。他の例のダミートレンチ部30は、先端部を有さずに直線形状であってもよい。ダミートレンチ部30は、ゲート配線45とは重ならない位置に設けられる。
【0044】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11は、ゲート電極46が設けられる側の活性領域の端部から、所定の範囲で形成される。本例のウェル領域11はP+型である。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート電極46側の一部の領域はウェル領域11に形成される。ダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われていてよい。
【0045】
半導体基板の内部において各トレンチ部に挟まれたメサ部には、ベース領域14が形成される。ベース領域14は、ウェル領域11よりもドーピング濃度の低いP-型である。
【0046】
メサ部のベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高いP+型のコンタクト領域15が形成される。また、ベース領域14の上面には、半導体基板よりもドーピング濃度が高いN+型のエミッタ領域12が選択的に形成される。
【0047】
コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。コンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(X軸方向)に沿って、交互に半導体基板の上面に露出するように形成される。
【0048】
他の例のメサ部には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12が延伸方向に沿ってストライプ状に形成されていてもよい。例えばトレンチ部に隣接する領域にエミッタ領域12が形成され、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が形成される。
【0049】
コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。コンタクトホール54は、ベース領域14およびウェル領域11に対応する領域には形成されない。
【0050】
図2は、
図1におけるa-a断面の一例を示す図である。本例のa-a断面は、YZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜26、エミッタ電極52およびコレクタ電極58を有する。層間絶縁膜26は、例えばボロンおよびリン等の不純物が添加されたシリケートガラスである。層間絶縁膜26は、半導体基板10の上面において選択的に形成される。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜26の上面に形成される。コレクタ電極58は、半導体基板10の下面に形成される。
【0051】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
【0052】
半導体基板10は、N-型のドリフト領域18が形成される。本例のドリフト領域18は、半導体基板10のうち、エミッタ領域12、ベース領域14、蓄積領域16、バッファ領域20およびコレクタ領域22が形成されずに残存した領域である。
【0053】
半導体基板10の上面と、ドリフト領域18との間には、P-型のベース領域14が形成される。ベース領域14は、半導体基板10の上面からボロン等のP型の不純物を注入することで形成されてよい。
【0054】
ベース領域14の上面には、N+型のエミッタ領域12が形成される。エミッタ領域12は、半導体基板10の上面からリン等のN型の不純物を注入することで形成されてよい。
【0055】
ドリフト領域18とベース領域14との間には、N+型の蓄積領域16が形成される。蓄積領域16は、半導体基板10の上面から、リンまたはプロトン等のN型の不純物を注入することで形成されてよい。
【0056】
本例においてゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面から、エミッタ領域12、ベース領域14および蓄積領域16を貫通して形成される。本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の底部は、ドリフト領域18内に配置される。なお、トレンチ部が不純物領域を貫通するとは、不純物領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間に不純物領域を形成したものも、トレンチ部が不純物領域を貫通しているものに含まれる。
【0057】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下面側に形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。バッファ領域20の下面側には、P+型のコレクタ領域22が形成される。
【0058】
ゲートトレンチ部40は、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42に覆われている。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0059】
ゲート導電部44は、深さ方向において、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜26により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層にチャネルが形成される。
【0060】
本例のダミートレンチ部30は、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチ部30の内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32により覆われている。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜26により覆われる。
【0061】
ダミートレンチ部30を設けることで、キャリアの蓄積効果を高めて伝導度変調を促進し、オン電圧を低下させることができる。また、ゲートトレンチ部40に対するダミートレンチ部30の割合を調整することで、半導体装置100のスイッチング速度を調整することができる。
【0062】
なお、ゲート導電部44に所定のオン電圧が印加されて半導体装置100がターンオンすると、ダミートレンチ部30の底部において、ダミー導電部34とドリフト領域18との間に逆バイアスが印加される。例えば、ターンオン時にドリフト領域18における空乏層の幅が狭まっていき、空乏層の下端がダミートレンチ部30の底部近傍となったときにおいて、ダミー導電部34の電圧は接地電位であり、ダミートレンチ部30の底部近傍における電圧は、所定の正の電圧である。
【0063】
ダミートレンチ部30の底部近傍において逆バイアスが印加されると、正孔がダミートレンチ部30の底部近傍に集まり、P型の反転領域が形成される場合がある。P型の反転領域が形成されると、ドリフト領域18に注入された正孔が反転領域およびベース領域14を介してエミッタ側に抜けてしまい、ターンオン損失が増大してしまう。
【0064】
これに対して半導体装置100においては、蓄積領域16およびダミートレンチ部30の少なくとも一方が、ダミートレンチ部30に隣接するN型の領域(本例ではドリフト領域18および蓄積領域16)に、P型の反転領域が形成されるのを抑制する抑制構造を有する。
図2に示した例では、ダミートレンチ部30が抑制構造を有する。
【0065】
本例のダミートレンチ部30においては、ダミー絶縁膜32の膜厚が、ゲート絶縁膜42の膜厚よりも厚い。ダミー絶縁膜32の膜厚は、ダミー絶縁膜32全体の平均膜厚を用いてよい。ダミー絶縁膜32の膜厚は、Y軸方向において、ダミー導電部34と、ダミートレンチの側壁との間に形成されたダミー絶縁膜32の平均膜厚であってもよい。
【0066】
ゲート絶縁膜42の膜厚は、ゲート絶縁膜42全体の平均膜厚を用いてよい。ゲート絶縁膜42の膜厚は、Y軸方向において、ゲート導電部44と、ゲートトレンチの側壁との間に形成されたゲート絶縁膜42の平均膜厚であってもよい。
【0067】
ダミー絶縁膜32を厚く形成することで、ダミー導電部34とドリフト領域18との間の容量を小さくすることができ、ダミートレンチ部30の底部近傍に集まる正孔を少なくできる。このため、ダミートレンチ部30の底部近傍においてP型の反転領域が形成されるのを抑制できる。
【0068】
図3は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の近傍を拡大した断面図である。ダミー絶縁膜32の膜厚T1は、ゲート絶縁膜42の膜厚T2の2倍以上であってよい。ダミー絶縁膜32の膜厚T1は、ゲート絶縁膜42の膜厚T2の3倍以上であってよく4倍以上であってもよい。
【0069】
また、ダミー絶縁膜32は一様な膜厚を有することが好ましい。一様な膜厚とは、例えば、一つのダミートレンチ部30において、各位置におけるダミー絶縁膜32の膜厚の誤差が±20%の範囲であることを指す。誤差範囲は、±10%の範囲であってもよい。例えば、ダミートレンチ部30の側壁に形成されたダミー絶縁膜32の膜厚T1と、底部に形成されたダミー絶縁膜32の膜厚T2とは一様である。ただし、ダミートレンチ部30の上端近傍は、トレンチの直径が変動しやすく、また、層間絶縁膜26とダミー絶縁膜32との境界も不明瞭なので、エミッタ領域12の下端よりも下の領域において、ダミー絶縁膜32が上述した一様な膜厚を有していればよい。ゲート絶縁膜42も同様に、一様な膜厚を有してよい。
【0070】
ダミー絶縁膜32が一様な膜厚を有することで、ダミー絶縁膜32の厚みが設計通りに形成できているかを検査しやすくなる。つまり、ダミー導電部34と半導体基板10との間に所定の試験電圧を印加して検査する場合において、ダミー絶縁膜32の厚みが一様でないと、薄い領域が先に絶縁破壊されてしまい、厚い領域の膜厚が規定値となっているかを確認することが困難になる。これに対してダミー絶縁膜32の全体を一様に厚くすることで、ダミー絶縁膜32の厚みの検査が容易となり、P型の反転領域の形成を抑制できる程度の厚みのダミー絶縁膜32が形成できているかを容易に確認できる。
【0071】
ダミートレンチ部30は、蓄積領域16の下端17よりも下側に突出して形成されてよい。ダミー導電部34の下端35は、蓄積領域16の下端17よりも下側に配置されてよい。他の例では、ダミー導電部34の下端35は、蓄積領域16の下端よりも上側に配置されていてもよい。
【0072】
図4は、
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。本例における半導体装置100は、ダミートレンチ部30の構造が、
図2に示した例とは異なる。他の構造は、
図2に示した例と同一であってよい。
【0073】
本例のダミートレンチ部30は、トレンチ内が絶縁材料で充填されている。絶縁材料は、トレンチの内壁を酸化または窒化して形成したダミー絶縁膜32であってよく、CVD法等により形成した絶縁膜であってよく、これらの複数種類の絶縁膜を含んでいてもよい。また、ダミートレンチ部30のトレンチ内部には、導電材料が設けられていない。ただし、ダミートレンチ部30のトレンチ内には、絶縁材料で囲まれた空洞が形成されていてもよい。ダミートレンチ部30のトレンチ内を絶縁材料で充填することで、ダミートレンチ部30の底部近傍に正孔が集まることを抑制できる。
【0074】
図5は、
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。本例における半導体装置100は、ダミートレンチ部30の深さ方向(Z軸方向)の長さが、
図4に示した例とは異なる。他の構造は、
図4に示した例と同一であってよい。
【0075】
本例のダミートレンチ部30は、
図4に示した例と同様に、トレンチ内が絶縁材料で充填されている。
図4に示したダミートレンチ部30は、蓄積領域16を貫通して形成されている。つまり
図4に示したダミートレンチ部30の下端は、蓄積領域16の下端よりも下側に配置されている。
【0076】
これに対して本例のダミートレンチ部30は、蓄積領域16を貫通していない。ダミートレンチ部30の下端は、蓄積領域16の下端よりも上側に配置されている。本例では、ダミートレンチ部30の下端は、蓄積領域16内に配置されている。ダミートレンチ部30の下端を、高濃度のN+型の蓄積領域16内に配置することで、ダミートレンチ部30の下端近傍にP型の反転領域が形成されることを更に抑制できる。
【0077】
更なる他の例では、ダミートレンチ部30が蓄積領域16を貫通しつつ、深さ方向におけるダミートレンチ部30の長さが、ゲートトレンチ部40よりも短くてもよい。つまり、ダミートレンチ部30の下端と蓄積領域16との距離が、ゲートトレンチ部40の下端と蓄積領域16との距離よりも短い。このような構造によっても、ダミートレンチ部30の下端近傍にP型の反転領域が形成されることを抑制できる。
【0078】
図6は、
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。本例における半導体装置100は、ダミートレンチ部30の深さ方向における長さが、
図2から
図5に示した例とは異なる。他の構造は、
図2から
図5に示したいずれかの例と同一であってよい。
【0079】
本例のダミートレンチ部30は、エミッタ領域12、ベース領域14および蓄積領域16を貫通して、ゲートトレンチ部40よりも浅い位置まで形成されている。ゲートトレンチ部40は、エミッタ領域12、ベース領域14および蓄積領域16を貫通して、ダミートレンチ部30よりも深い位置まで形成されている。
【0080】
ダミートレンチ部30のトレンチ内の構造は、
図2から
図5のいずれかの例と同一であってよく、他の構造を有していてもよい。
図6に示すダミートレンチ部30は、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有している。ダミー絶縁膜32の膜厚は、ゲート絶縁膜42の膜厚と同一であってよく、
図2に示したように異なっていてもよい。
【0081】
ダミートレンチ部30を浅く形成することで、ダミートレンチ部30の底部を、蓄積領域16に近づけることができる。これにより、ダミートレンチ部30の底部近傍に、P型の反転領域が形成されることを抑制できる。
【0082】
ベース領域14の下端と、ダミートレンチ部30の下端との深さ方向における距離をL1とし、ベース領域14の下端と、ゲートトレンチ部40の下端との深さ方向における距離をL2とする。距離L1は、距離L2の3/4以下であってよく、2/3以下であってよく、半分以下であってよく、1/3以下であってよく、1/4以下であってもよい。
【0083】
本例のダミートレンチ部30は、Y軸方向における幅が、ゲートトレンチ部40よりも小さくてよい。これにより、浅いダミートレンチ部30を容易に形成できる。なお、ダミー導電部34のポリシリコンと、ゲート導電部44のポリシリコンは、同一の工程で形成してよく、別の工程で形成してもよい。別の工程でポリシリコンを形成することで、深さの異なる各トレンチ内に形成したポリシリコンの高さ位置を容易に揃えることができる。ダミー導電部34の上端と、ゲート導電部44の上端とは、ともに半導体基板10の上面と同一の高さ位置に配置されてよい。
【0084】
ダミー導電部34とゲート導電部44とを別工程で形成する場合、一方の導電部を形成してから、他方のトレンチ部のトレンチを形成することが好ましい。これにより、他方のトレンチ内に、一方の導電部を形成するときに用いたレジスト等が残留することを防ぐことができる。
【0085】
図7は、
図6に示した蓄積領域16の深さ方向におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
図7においては、ダミー導電部34の下端35およびダミートレンチ部30の下端33の、深さ方向における位置を合わせて示している。
図7の横軸は、半導体基板10の上面位置を基準とした深さ方向の位置を示しており、縦軸は、ドーピング濃度を対数で示している。
【0086】
蓄積領域16のドーピング濃度分布は、極大値を示すピーク19を有する。本例では、半導体基板10の深さ方向において、ピーク19が、ダミー絶縁膜32の下端33と、ダミー導電部34の下端35との間に配置されている。ピーク19は、ダミー絶縁膜32の下端33と、ダミー導電部34の下端35との間の中央に配置されてよく、当該中央よりも上側に配置されていてもよく、当該中央よりも下側に配置されていてもよい。
【0087】
これにより、N型不純物の濃度がピークとなる位置を、ダミートレンチ部30の底部近傍にできる。このため、ダミートレンチ部30の底部近傍にP型の反転領域が形成されることを抑制できる。
【0088】
なお、半導体基板10の深さ方向において、蓄積領域16の下端(すなわち、ドリフト領域18との境界)が、ダミー導電部34の下端35と、ダミー絶縁膜32の下端33との間に配置されてよい。この場合、ダミートレンチ部30が、蓄積領域16を貫通する。なお、各実施例におけるそれぞれの部材が下側に凸の形状を有する場合、各部材の下端とは、凸形状の先端を指す。
【0089】
図8は、
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。本例における半導体装置100は、ダミートレンチ部30におけるダミー絶縁膜32の膜厚分布が、
図2から
図7に示した例とは異なる。他の構造は、
図2から
図7に示したいずれかの例と同一であってよい。本例では、ダミートレンチ部30の底部におけるダミー絶縁膜32が、ダミートレンチ部30の側壁におけるダミー絶縁膜32よりも厚い。
【0090】
図9は、
図8に示したゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の近傍を拡大した断面図である。本例においてゲート絶縁膜42は、一様な膜厚T3を有する。これに対して、ダミー絶縁膜32は、側壁における膜厚T4よりも、底部における膜厚T5が大きい。膜厚T5は、膜厚T4の2倍以上であってよく、3倍以上であってもよい。膜厚T4は、膜厚T3と同一であってよい。
【0091】
ダミートレンチ部30の底部は、下側に凸の曲面形状を有してよい。この場合、ダミー絶縁膜32の底部における膜厚T5は、凸形状の最下端における膜厚を用いてよい。また、ダミー絶縁膜32の側壁における膜厚T4は、ベース領域14に対向する範囲における平均膜厚を用いてよい。
【0092】
このように、ダミートレンチ部30の底部におけるダミー絶縁膜32の膜厚を大きくすることで、ダミートレンチ部30の底部近傍に正孔が集まることを抑制できる。このため、ダミートレンチ部30の底部近傍にP型の反転領域が形成されることを抑制できる。
【0093】
上述したように、
図9に示したダミー絶縁膜32の膜厚分布と、
図6に示した浅く形成されたダミートレンチ部30とを組み合わせてもよい。これにより、P型の反転領域が形成されるのを更に抑制できる。また、
図7に示したドーピング濃度分布の構造を更に組み合わせてもよい。
図9に示したように、ダミートレンチ部30の底部におけるダミー絶縁膜32の膜厚を大きくすることで、蓄積領域16のドーピング濃度のピーク19を、ダミー導電部34の下端35と、ダミー絶縁膜32の下端33との間に配置することが容易となる。
【0094】
本例のダミートレンチ部30の底部におけるダミー絶縁膜32の下端は、蓄積領域16の下端17よりも下側に配置されている。また、ダミー導電部34の下端35は、蓄積領域16の上端よりも下側に配置されている。ダミー導電部34の下端35は、蓄積領域16の上端および下端の間に配置されてよい。他の例では、ダミー導電部34の下端35は、ベース領域14の上端および下端の間に配置されていてよく、蓄積領域16の下端17よりも下側に配置されていてもよい。
【0095】
図10は、
図1におけるa-a断面の他の例を示す図である。本例における半導体装置100は、蓄積領域16の構造が、
図2から
図9に示した例とは異なる。他の構造は、
図2から
図9に示したいずれかの例と同一であってよい。
【0096】
本例において、蓄積領域16のうち、ダミートレンチ部30に隣接する領域をダミー隣接領域74とし、ゲートトレンチ部40に隣接する領域をゲート隣接領域72とする。Y軸方向における蓄積領域16の幅をWとした場合に、ゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74は、それぞれ対応するトレンチ部と接する位置から、W/4程度の幅を有する領域を指してよい。
【0097】
本例では、ダミー隣接領域74におけるドーピング濃度を半導体基板10の深さ方向に積分した積分濃度は、ゲート隣接領域72においてドーピング濃度を深さ方向に積分した積分濃度よりも高い。ダミー隣接領域74における積分濃度は、ゲート隣接領域72における積分濃度の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。
【0098】
図10に示す例では、ダミー隣接領域74は、ゲート隣接領域72よりも深い位置まで形成されている。つまり、ダミー隣接領域74は、深さ方向における長さが、ゲート隣接領域72よりも長い。ダミー隣接領域74の深さ方向における長さは、ゲート隣接領域72の深さ方向における長さの1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。ダミー隣接領域74の深さ方向における長さは、ダミートレンチ部30に接している部分の長さを用いてよい。ゲート隣接領域72の深さ方向における長さは、ゲートトレンチ部40に接している部分の長さを用いてよい。これにより、ダミー隣接領域74の積分濃度を、ゲート隣接領域72の積分濃度よりも高くすることができる。
【0099】
ダミートレンチ部30に隣接する蓄積領域16における積分濃度を高くすることで、ダミートレンチ部30の底部近傍に正孔が集まることを抑制できる。これにより、P型の反転領域が形成されるのを抑制できる。
【0100】
なお
図10においては、ゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74の下面の深さ位置を模式的にステップ状に示しているが、ゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74の下面は曲面状に変化していてもよい。また、ダミートレンチ部30に挟まれる蓄積領域16は、全体がダミー隣接領域74と同一の深さに形成されてよい。
【0101】
図11は、
図10に示したゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
図11の横軸は、半導体基板10の上面位置を基準とした深さ方向の位置を示しており、縦軸は、ドーピング濃度を対数で示している。なお
図11では、それぞれトレンチ部に接する部分のドーピング濃度分布を示している。
【0102】
本例では、ダミー隣接領域74のほうが、ゲート隣接領域72よりも深い位置まで形成されている。本例のダミー隣接領域74は、ドーピング濃度分布において、ゲート隣接領域72よりも多くのピークを有している。
図11の例では、ゲート隣接領域72は一つのピーク76を有し、ダミー隣接領域74は、第1のピーク77と、第1のピーク77よりも深い位置に配置された第2のピーク78とを有する。
【0103】
それぞれのピークは、プロトン等の不純物を、飛程を変えて複数の深さ位置に注入することで形成できる。ゲート隣接領域72におけるピーク76と、ダミー隣接領域74における第1のピーク77の深さ位置は同一であってよい。ピーク76のドーピング濃度D1と、第1のピーク77のドーピング濃度D2も同一であってよい。
【0104】
第2のピーク78のドーピング濃度D3は、ピーク76のドーピング濃度D1および第1のピーク77のドーピング濃度D2のいずれよりも大きくてよい。ダミートレンチ部30の底部により近い位置に配置した第2のピーク78のドーピング濃度を高くすることで、ダミートレンチ部30の底部近傍にP型の反転領域が形成されるのを効率的に抑制できる。ドーピング濃度D3は、ドーピング濃度D2の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。
【0105】
図12は、ゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例では、ダミー隣接領域74とゲート隣接領域72の深さ方向における長さは同一である。本例のダミー隣接領域74は、ドーピング濃度分布において、ゲート隣接領域72と同一の数のピークを有している。
図12の例では、ゲート隣接領域72およびダミー隣接領域74は、それぞれ一つのピークを有する。
【0106】
ただし、ダミー隣接領域74におけるピークのドーピング濃度は、ゲート隣接領域72におけるピークのドーピング濃度よりも高い。このような構造によっても、ダミー隣接領域74における積分濃度を高めて、ダミートレンチ部30の底部近傍におけるP型反転領域の形成を抑制できる。
【0107】
ダミー隣接領域74におけるピークのドーピング濃度は、ゲート隣接領域72におけるピークのドーピング濃度の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。ダミー隣接領域74におけるピークと、ゲート隣接領域72におけるピークとは、同一の深さ位置に配置されてよい。
【0108】
図13は、ダミートレンチ部30に挟まれた蓄積領域16の構造例を示す図である。蓄積領域16は、それぞれのダミートレンチ部30に隣接する2つのダミー隣接領域74と、2つのダミー隣接領域74に挟まれた中央領域79とを有する。中央領域79は、Y軸方向において、2つのダミートレンチ部30の間の中央に配置される。
【0109】
本例では、中央領域79において深さ方向にドーピング濃度を積分した積分濃度は、ダミー隣接領域74における積分濃度よりも低い。中央領域79における積分濃度は、Y軸方向において2つのダミートレンチ部30の間の中央における積分濃度を用いてよい。ダミー隣接領域74における積分濃度は、ダミートレンチ部30に接する部分の積分濃度を用いてよい。このような構造により、ターンオフ時等において、中央領域79を介して正孔をエミッタ側に引き抜くことができる。
【0110】
中央領域79における積分濃度は、ダミー隣接領域74における積分濃度の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。
図13の例では、中央領域79の深さ方向における長さが、ダミー隣接領域74の深さ方向における長さよりも短い。中央領域79の長さは、ダミー隣接領域74の長さの2/3以下であってよく、半分以下であってもよい。また、中央領域79におけるドーピング濃度のピークが、ダミー隣接領域74におけるドーピング濃度のピークよりも低くてよい。中央領域79は、深さ方向においてゲート隣接領域72と同一のドーピング濃度分布を有してよい。
【0111】
図14は、半導体装置100の上面の他の例を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、半導体基板10に設けられた、IGBT等のトランジスタを含むトランジスタ部70、および、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含むダイオード部80を有する。半導体基板10の上面において、トランジスタ部70およびダイオード部80の間には、境界部90が設けられる。トランジスタ部70の構造は、
図1から
図13において説明したいずれかの半導体装置100と同一であってよい。
【0112】
ダイオード部80および境界部90のそれぞれには、1つ以上のダミートレンチ部30がY軸方向に沿って配列されている。ダイオード部80および境界部90におけるダミートレンチ部30は、トランジスタ部70におけるダミートレンチ部30と同一の形状および構造を有してよい。
【0113】
ダイオード部80および境界部90のメサ部には、ベース領域14が形成されている。境界部90のメサ部には、ベース領域14の一部の領域に、コンタクト領域15が選択的に形成されている。境界部90のコンタクト領域15は、第2導電型の高濃度領域の一例である。境界部90には、ダミートレンチ部30を挟む隣のトランジスタ部70のエミッタ領域12およびコンタクト領域15と対向する領域に、コンタクト領域15が形成されてよい。境界部90におけるコンタクト領域15は、コンタクトホール54を介してエミッタ電極52と電気的に接続する。
【0114】
図14の例におけるダイオード部80のメサ部にはエミッタ領域12およびコンタクト領域15が形成されていないが、当該メサ部にエミッタ領域12およびコンタクト領域15の少なくとも一方が形成されてもよい。ダイオード部80のベース領域14は、コンタクトホール54を介してエミッタ電極52と接続されている。
【0115】
ダイオード部80および境界部90において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびベース領域14の上方に形成される。本例においてトランジスタ部70、ダイオード部80および境界部90のコンタクトホール54は、各トレンチ部の長手方向において同一の長さを有する。
【0116】
なお、ダイオード部80は、半導体基板10の下面に垂直な方向においてカソード領域82と重なる領域とする。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の下面に垂直な方向においてコレクタ領域22と重なる領域のうち、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域とする。また、境界部90は、半導体基板10の下面に垂直な方向においてコレクタ領域22と重なる領域のうち、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置されていない領域とする。
【0117】
図15は、
図14に示した半導体装置100のb-b断面の一例を示す図である。b-b断面は、Y-Z面と平行で、且つ、トランジスタ部70のエミッタ領域12、境界部90のコンタクト領域15およびダイオード部80のベース領域14を通る断面である。トランジスタ部70の構造は、
図1から
図13において説明したいずれかの半導体装置100と同一であってよい。
図15に示したトランジスタ部70は、
図10に示した半導体装置100と同一の構造を有する。
【0118】
それぞれのトレンチ部に挟まれる領域をメサ部94と称する。
図15においては、境界部90のメサ部94のみに符号を付しているが、トランジスタ部70およびダイオード部80においても、トレンチ部に挟まれる領域をメサ部94と称する。
【0119】
本例において、トランジスタ部70とは、半導体基板10の上面側のメサ部94において、エミッタ領域12が設けられ、半導体基板10の下面側にコレクタ領域22が設けられた領域を指す。また、境界部90とは、半導体基板10の上面側のメサ部94においてエミッタ領域12が設けられておらず、半導体基板10の下面側にコレクタ領域22が設けられた領域を指す。本例の境界部90のメサ部94においては、半導体基板10の上面側から順番にコンタクト領域15およびベース領域14が設けられている。
【0120】
ダイオード部80とは、半導体基板10の下面側に、第1導電型のカソード領域82が設けられた領域を指す。本例のカソード領域82はN+型である。
図15に示す例では、ダイオード部80のメサ部94にはベース領域14が形成されており、エミッタ領域12が形成されていない。本例のダイオード部80におけるカソード領域82は、コレクタ領域22と同一の深さ位置に形成されている。カソード領域82の上方には、バッファ領域20が形成されてよい。
【0121】
トランジスタ部70とダイオード部80とはpn接合を含む層構造が異なるため、電界分布がアンバランスになりやすい。このため、トランジスタ部70とダイオード部80との境界近傍にキャリアがたまっていると半導体装置100のアバランシェ耐量が低下してしまう。半導体装置100に境界部90を設けることで、トランジスタ部70およびダイオード部80の間においてキャリア(例えば正孔)をエミッタ電極52に引き抜きやすくなる。このため、半導体装置100のアバランシェ耐量を向上させることができる。また、トランジスタ部70と、カソード領域82との距離を広げることができるので、半導体装置100のオン状態やターンオフ時等においてトランジスタ部70からダイオード部80へのキャリア注入を抑制できる。
【0122】
境界部90のメサ部94の少なくとも一部の領域には、蓄積領域16が形成されていなくてよい。つまり、境界部90のメサ部94におけるベース領域14の下方には、蓄積領域16が選択的に形成されていてよく、蓄積領域16が全く形成されていなくともよい。蓄積領域16が選択的に形成されている場合、メサ部94を挟むダミートレンチ部30のうち、トランジスタ部70に近い側のダミートレンチ部30に隣接して蓄積領域16が形成されることが好ましい。これにより、トランジスタ部70に近いダミートレンチ部30の底部にp型の反転領域が形成されることを抑制でき、トランジスタ部70の動作への影響を低減できる。
【0123】
図16Aは、境界部90のメサ部94の一例を示す図である。本例では、メサ部94を挟むダミートレンチ部30のうち、トランジスタ部70に近いほうをダミートレンチ部30-1とし、ダイオード部80に近いほうをダミートレンチ部30-2とする。本例のメサ部94においては、ダミートレンチ部30-1に隣接する領域に蓄積領域16が形成されており、ダミートレンチ部30-2に隣接する領域には蓄積領域16が形成されていない。
【0124】
このような構造により、ダミートレンチ部30-1の底部に正孔の反転領域が形成されるのを抑制しつつ、メサ部94を介して正孔を容易に引き抜くことができる。また、ダミートレンチ部30-2に隣接する領域には蓄積領域16を設けないので、半導体装置100を微細化してメサ部94の幅が小さくなっても、蓄積領域16が設けられない領域を容易に確保できる。境界部90のメサ部94における蓄積領域16のY軸方向における幅は、メサ部94の幅の半分以下であってよく、1/3以下であってもよい。
【0125】
図16Bは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例のメサ部94における蓄積領域16は、
図13に示した蓄積領域16と同様の形状を有する。本例の境界部90のメサ部94には、ベース領域14の下面全体を覆って蓄積領域16が形成されている。ただし、蓄積領域16は、ダミートレンチ部30-1およびダミートレンチ部30-2のそれぞれに対してダミー隣接領域74を有する。また、Y軸方向においてメサ部94の中央の領域に中央領域79を有する。
【0126】
ダミー隣接領域74および中央領域79は、
図13に示したダミー隣接領域74および中央領域79と同一である。つまり、ダミー隣接領域74における積分濃度は、中央領域79の積分濃度よりも高い。
図16Bの例におけるダミー隣接領域74は、中央領域79よりも下側まで形成されている。蓄積領域16は、2つのダミー隣接領域74を有し、中央領域79を有さなくともよい。この場合、
図16Bにおいて中央領域79が設けられた領域には、ベース領域14およびドリフト領域18の少なくとも一方が形成される。
【0127】
このような構造により、境界部90のダミートレンチ部30においても、反転領域が形成されるのを抑制できる。また、メサ部94の中央近傍における不純物の積分濃度を小さくすることで、境界部90におけるキャリア引き抜きが容易になる。
【0128】
図16Cは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例のメサ部94における蓄積領域16は、ダミートレンチ部30-1に隣接してダミー隣接領域74を有し、ダミートレンチ部30-2に隣接する領域にはダミー隣接領域74を有さない。中央領域79が、ダミートレンチ部30-2に隣接する領域まで延伸している。このような構造により、ダミートレンチ部30-1の底部に反転領域が形成されるのを抑制しつつ、メサ部94を介して正孔を容易に引き抜くことができる。
【0129】
図16Dは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例では、境界部90のメサ部94には蓄積領域16が設けられていない。このような構造により、境界部90において正孔を容易に引き抜くことができる。
【0130】
図17は、半導体装置100のb-b断面の他の例を示す図である。本例の境界部90は、複数のメサ部94を有する。それぞれのメサ部94は、
図16Aから
図16Dにおいて説明したいずれかの構造を有してよい。いずれかのメサ部94は、よりトランジスタ部70に近いメサ部94と比べて、設けられている蓄積領域16のY軸方向の幅が小さくてよい。一例として、ダイオード部80に隣接するメサ部94-3の蓄積領域16の幅(
図17の例ではゼロ)は、トランジスタ部70に隣接するメサ部94-1の蓄積領域16の幅より小さい。
【0131】
このような構造により、トランジスタ部70の近傍におけるメサ部94ではダミートレンチ部30の底部に反転領域が形成されるのを抑制できる。また、トランジスタ部70から離れたメサ部94ではキャリアを効率よく引き抜くことができる。
【0132】
なお、
図15から
図17に示したそれぞれの例において、境界部90における蓄積領域16のドーピング濃度は、トランジスタ部70のY軸方向における中央の蓄積領域16のドーピング濃度よりも高くてよい。蓄積領域16のドーピング濃度とは、ピーク濃度であってよい。これにより、境界部90から離れたトランジスタ部70の領域のキャリア蓄積を減少させて、境界部90を介したキャリア引き抜きが容易になる。
【0133】
図18は、半導体装置100のb-b断面の他の例を示す図である。本例のトランジスタ部70は、
図6に示した半導体装置100と同一の構造を有する。つまり、トランジスタ部70におけるダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40よりも浅く形成されている。
【0134】
本例では、境界部90およびダイオード部80におけるダミートレンチ部30の少なくとも一部も、ゲートトレンチ部40よりも浅く形成される。
図18の例では、境界部90およびダイオード部80における全てのダミートレンチ部30が、ゲートトレンチ部40よりも浅く形成されている。境界部90およびダイオード部80におけるダミートレンチ部30は、トランジスタ部70のダミートレンチ部30と同一の深さまで形成されてよい。
【0135】
図19Aは、境界部90のメサ部94の一例を示す図である。本例のダミートレンチ部30-1およびダミートレンチ部30-2は、ゲートトレンチ部40よりも浅く形成されている。本例のメサ部94は、ベース領域14の下面全体を覆うように、蓄積領域16が形成されている。このような構造により、ダミートレンチ部30-1およびダミートレンチ部30-2の底部における反転領域の形成を抑制できる。
【0136】
図19Bは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例の境界部90は、ダミートレンチ部30-2が、ダミートレンチ部30-1よりも深く形成されている点を除き、
図19Aに示した境界部90と同一である。ダミートレンチ部30-2は、ゲートトレンチ部40と同一の深さまで形成されてよい。なお、それぞれのトレンチ部は、深く形成されているほど、Y軸方向の幅が大きい。このような構造によっても、ダミートレンチ部30-1およびダミートレンチ部30-2の底部における反転領域の形成を抑制できる。
【0137】
図19Cは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例の境界部90は、蓄積領域16が選択的に形成されている点を除き、
図19Aに示した境界部90と同一である。本例の蓄積領域16は、ダミートレンチ部30-1に隣接する領域に形成され、ダミートレンチ部30-2に隣接する領域には形成されない。このような構造により、ダミートレンチ部30-1の底部に反転領域が形成されるのを抑制し、且つ、境界部90においてキャリアを容易に引き抜くことができる。
【0138】
図19Dは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例の境界部90は、ダミートレンチ部30-2に隣接する領域にも蓄積領域16が形成されている点を除き、
図19Cに示した境界部90と同一である。メサ部94のY軸方向の中央近傍の領域には、蓄積領域16が形成されない。このような構造により、それぞれのダミートレンチ部30の底部に反転領域が形成されるのを抑制し、且つ、境界部90においてキャリアを容易に引き抜くことができる。
【0139】
図19Eは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例の境界部90は、ダミートレンチ部30-2が、ダミートレンチ部30-1よりも深く形成されている点を除き、
図19Cに示した境界部90と同一である。このような構造によっても、ダミートレンチ部30-1の底部に反転領域が形成されるのを抑制し、且つ、境界部90においてキャリアを容易に引き抜くことができる。
【0140】
図19Fは、境界部90のメサ部94の他の例を示す図である。本例の境界部90は、ダミートレンチ部30-2が、ダミートレンチ部30-1よりも深く形成されている点を除き、
図19Dに示した境界部90と同一である。このような構造によっても、それぞれのダミートレンチ部30の底部に反転領域が形成されるのを抑制し、且つ、境界部90においてキャリアを容易に引き抜くことができる。なお、境界部90のメサ部94は、
図16Aから
図16Dに示したいずれかの例と同一の構造を有してもよい。また、
図19Aから
図19Fに示した各例は、
図14に示した半導体装置100に適用してもよい。
【0141】
図20は、半導体装置100のb-b断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、ダイオード部80に設けられたダミートレンチ部30が、トランジスタ部70に設けられたダミートレンチ部30に比べて、Y軸方向の幅が大きい。他の構造は、
図14から
図19Fにおいて説明したいずれかの半導体装置100と同一である。なお、それぞれのトレンチ部が配列されているピッチは均一である。
【0142】
このような構造により、ダイオード部80におけるメサ部94の幅が小さくなる。このため、メサ部94へのキャリア注入を抑制できる。ダイオード部80におけるダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の幅を有してよい。なお、ダイオード部80におけるダミートレンチ部30が深く形成されて、底部に正孔の反転領域が形成されやすくなった場合でも、トランジスタ部70からは離れているので、半導体装置100の動作への影響は小さい。
【0143】
図21Aは、トレンチ部の一例を示す図である。本例のダミートレンチ部30は、トレンチ薄膜部37およびトレンチ厚膜部38を備える。ベース領域14の下方に2つの蓄積領域16-1および蓄積領域16-2が形成されている。蓄積領域16-1は、ベース領域14の下方に設けられた第1の蓄積領域の一例であり、蓄積領域16-2は、蓄積領域16-1とドリフト領域18との間に設けられた第2の蓄積領域の一例である。
【0144】
トレンチ薄膜部37は、トレンチ部の内壁において、予め定められた膜厚のダミー絶縁膜32を有する。また、トレンチ薄膜部37は、ダミートレンチ部30において、ダミー絶縁膜32に覆われたダミー導電部34を有する。トレンチ薄膜部37の下端は、ベース領域14の下端よりも深く形成されている。本例のトレンチ薄膜部37の下端は、蓄積領域16-1が形成された領域の少なくとも一部と同一の深さに位置する。トレンチ薄膜部37において、ダミー導電部34は、Y軸方向における均一な幅を有する。即ち、トレンチ薄膜部37の下端は、ダミー導電部34の下端に対応する。
【0145】
トレンチ厚膜部38は、トレンチ部の内壁において、トレンチ薄膜部37よりも厚い膜厚のダミー絶縁膜32を有する。ダミー導電部34は、トレンチ薄膜部37に設けられるが、トレンチ厚膜部38に設けられない。トレンチ厚膜部38は、ベース領域14よりも深い位置に形成される。トレンチ厚膜部38を設けることで、ダミー導電部34とドリフト領域18との間の容量を小さくすることができ、ダミートレンチ部30の底部近傍に集まる正孔を少なくできる。これにより、ダミートレンチ部30の底部近傍においてP型の反転領域が形成されるのを抑制できる。よって、ターンオン損失が低減される。
【0146】
本例では、ダミートレンチ部30の間のメサ部94において複数の蓄積領域16が形成されているので、ターンオン時にダミートレンチ部30の底部におけるP型の反転領域を経由したキャリアの引抜きを抑制できる。また、微細化によるVon電圧の低減を維持しながら、ターンオン損失の増加を低減できる。
【0147】
図21Bは、トレンチ部の他の例を示す図である。本例では、ダミー導電部34がトレンチ薄膜部37およびトレンチ厚膜部38の両方に設けられる点で、
図21Aの場合と相違する。
【0148】
ダミー導電部34は、トレンチ薄膜部37とトレンチ厚膜部38とで、ダミー導電部34のY軸方向の幅が異なる。本例のダミー導電部34は、トレンチ薄膜部37において、トレンチ厚膜部38よりも大きなY軸方向の幅を有する。これにより、トレンチ薄膜部37のダミー絶縁膜32は、トレンチ厚膜部38のダミー絶縁膜32よりも薄くなる。トレンチ厚膜部38は、ベース領域14よりも深い位置に形成される。また、ダミー導電部34の下端は、蓄積領域16-2の下端よりも深く形成される。よって、ダミートレンチ部30の底部近傍においてP型の反転領域の形成を抑制し、ターンオン損失を低減する効果が高い。
【0149】
図21Cは、トレンチ部の他の例を示す図である。本例のダミートレンチ部30は、トレンチ薄膜部37とトレンチ厚膜部38とで、異なるY軸方向の幅を有する。ダミー導電部34は、トレンチ薄膜部37およびトレンチ厚膜部38の両方に設けられる。
【0150】
ダミートレンチ部30は、トレンチ薄膜部37において、トレンチ厚膜部38よりも小さなY軸方向の幅を有する。一方、ダミー導電部34は、トレンチ薄膜部37およびトレンチ厚膜部38で、均一なY軸方向の幅を有する。即ち、トレンチ厚膜部38のダミー絶縁膜32は、トレンチ薄膜部37のダミー絶縁膜32よりも厚くなる。これにより、ダミートレンチ部30の底部近傍においてP型の反転領域の形成が抑制され、ターンオン損失が低減される。なお、トレンチ厚膜部38は、ベース領域14よりも深い位置に形成される。
【0151】
図21Dは、トレンチ部の他の例を示す図である。本例は、ダミートレンチ部30で挟まれたメサ部94が3つの蓄積領域16-1、蓄積領域16-2および蓄積領域16-3を有する点で
図21Cの場合と異なる。蓄積領域16-3は、蓄積領域16-1と蓄積領域16-2との間に設けられた第3の蓄積領域の一例である。
【0152】
なお、
図21A~
図21Dでは、ダミートレンチ部30について説明した。しかしながら、ゲートトレンチ部40も同様に、
図21A~
図21Dで開示されたダミートレンチ部30の構造を備えてよい。
【0153】
また、
図21A~
図21Dでは、隣接するダミートレンチ部30で挟まれたメサ部94について説明した。しかしながら、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40で挟まれたメサ部94も同様に、
図21A~
図21Dで開示されたメサ部94の構造を備えてよい。また、隣接するゲートトレンチ部40で挟まれたメサ部94についても同様である。
【0154】
図22は、本発明の実施形態に係る半導体装置200の一例を示す上面図である。半導体装置200は、半導体装置100と同様に配置されたゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30を備えてよい。
【0155】
半導体装置200においては、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30に挟まれたメサ部94のうちの少なくとも一部のメサ部94に配置されたベース領域14が、エミッタ電極52と直接接続されていない。
図22の例では、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30に挟まれたメサ部94のうちの一部のメサ部94-2におけるベース領域14が、半導体基板10の上面においてエミッタ電極52と接続していない。本例では、メサ部94-2において、エミッタ電極52とベース領域14との間の層間絶縁膜26にはコンタクトホール54が配置されていない。一例としてメサ部94-2は、2つのダミートレンチ部30に挟まれたいずれかのメサ部94-1に対して、Y軸方向の両側に配置されたメサ部94である。
【0156】
メサ部94-2には、エミッタ領域12が形成されていなくてよい。本例のメサ部94-2は、半導体基板10の上面において、ウェル領域11よりも内側の領域全体にベース領域14が設けられている。
【0157】
メサ部94-1およびメサ部94-3には、コンタクトホール54が配置されている。メサ部94-1およびメサ部94-3の半導体基板10の上面における構造は、
図1から
図21Dに示した半導体装置100と同一であってよく、異なっていてもよい。本例では、メサ部94-1およびメサ部94-3は、半導体基板10の上面において、コンタクトホール54と各トレンチ部との間に、エミッタ領域12がX軸方向に延伸して配置されている。コンタクトホール54の下側には、コンタクト領域15がX軸方向に延伸して配置されているが、
図22においては省略している。
【0158】
ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30に挟まれたメサ部94のうち、一部のメサ部94-2に配置されたベース領域14を、エミッタ電極52に直接接触させないことで、メサ部94-2における正孔の引き抜きを抑制して、キャリア蓄積を促進できる。このため、半導体装置200のオン電圧を低減できる。
【0159】
また、2つのゲートトレンチ部40の間には、2つ以下のダミートレンチ部30が配置されていることが好ましい。なお、それぞれのトレンチ部のうち、半導体基板10の上面においてX軸方向に直線状に延伸する各延伸部を1つのトレンチ部とする。
図22の例では、2つのゲートトレンチ部40の間には、2つのダミートレンチ部30が配置されている。
【0160】
本例では、ゲートトレンチ部40は、コンタクトホール55を介して、ゲート電極46と直接接続されている。また、ダミートレンチ部30は、コンタクトホール56を介して、エミッタ電極52と直接接続されている。つまり、本例の半導体装置200は、接続部57およびゲート配線45を備えない。このような構造により、接続部57等による段差が無くなり、半導体装置200の微細化が容易となる。
【0161】
図23は、半導体装置200のc-c断面の一例を示す図である。本例におけるダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40は、
図2に示したゲートトレンチ部40と同様の構造を有する。他の例では、ダミートレンチ部30は、
図1から
図21Dに示したいずれかのダミートレンチ部30と同一の構造を有してよい。また、メサ部94-1およびメサ部94-3における各ドーピング領域は、
図1から
図20に示したメサ部94における各ドーピング領域と同様の構造を有してもよい。
【0162】
本例のメサ部94-1およびメサ部94-3は、コンタクトホール54の下側にコンタクト領域15を有する。コンタクト領域15の両側には、エミッタ領域12が設けられている。
【0163】
コンタクト領域15およびエミッタ領域12は、エミッタ電極52と電気的に接続される。本例のメサ部94-1およびメサ部94-3は、半導体基板10の上面から内部まで設けられた接続部96を有している。接続部96は、コンタクト領域15、エミッタ領域12およびエミッタ電極52のそれぞれと接触している。接続部96は、コンタクト領域15よりも電気抵抗が低い。一例として接続部96は、タングステン等の金属で形成されている。接続部96の側面にエミッタ領域12が接触し、底面にコンタクト領域15が接触する。このような構造により、半導体装置200を微細化しても、エミッタ電極52とコンタクト領域15およびエミッタ領域12との間の電気的な接続が容易となる。
【0164】
また、ダミートレンチ部30のダミー導電部34にも、接続部96が設けられてよい。接続部96は、コンタクトホール56の下側に設けられる。接続部96は、コンタクトホール56を介してエミッタ電極52と接続する。
【0165】
図24は、半導体装置200のc-c断面の他の例を示す図である。本例では、ダミートレンチ部30が、
図2に示したダミートレンチ部30と同一の構造を有する。他の構造は、
図23に示した半導体装置200と同一である。
【0166】
半導体装置200は、
図1から
図21Dに示したようなダミートレンチ部30を有してよい。つまり、
図22から
図24に示した、いずれかのメサ部94においてベース領域14がエミッタ電極52に接続されていない構造は、
図1から
図21Dのそれぞれの半導体装置100に適用してよい。
【0167】
図25は、本発明の実施形態に係る半導体装置300の一例を示す上面図である。本例の半導体装置300は、
図1から
図24に示したそれぞれの半導体装置に対して、半導体基板10の上面におけるダミートレンチ部30の形状および配置が異なる。他の構造は、
図1から
図24に示したいずれかの半導体装置と同様であってよい。
【0168】
半導体装置300においては、それぞれのゲートトレンチ部40の間に、一つ以下のダミートレンチ部30が配置されている。本例のダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面においてX軸方向に直線状に延伸する。本例では、ゲートトレンチ部40において先端部43で接続された2つの延伸部41の間に、一つの直線状のダミートレンチ部30が配置されている。
【0169】
それぞれのダミートレンチ部30を、ゲートトレンチ部40で挟むことにより、ターンオン時においてダミートレンチ部30近傍の空乏層の消滅を促進できる。このため、ターンオン時において効率的に伝導度変調し、ターンオン損失を低減できる。
【0170】
図26は、半導体装置300のd-d断面の一例を示す図である。本例におけるダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40は、
図2に示したゲートトレンチ部40と同様の構造を有する。他の例では、ダミートレンチ部30は、
図1から
図21Dに示したいずれかのダミートレンチ部30と同一の構造を有してよい。また、メサ部94における各ドーピング領域は、
図1から
図20に示したメサ部94における各ドーピング領域と同様の構造を有してもよい。
【0171】
図27は、半導体装置300のd-d断面の他の例を示す図である。本例では、ダミートレンチ部30が、
図2に示したダミートレンチ部30と同一の構造を有する。他の構造は、
図26に示した半導体装置200と同一である。
図25から
図27に示した、各ゲートトレンチ部40の間に一つ以下のダミートレンチ部30が設けられる構造は、
図1から
図24のそれぞれの半導体装置に適用してよい。
【0172】
図28は、半導体装置300のe-e断面の一例を示す図である。e-e断面は、ダミートレンチ部30の近傍を通過するXZ面である。X軸方向においてコンタクトホール54が設けられる範囲には、半導体基板10の上面にコンタクト領域15およびエミッタ領域12が交互に配置されている。コンタクトホール54が設けられていない範囲には、半導体基板10の上面にベース領域14およびウェル領域11が配置されている。
【0173】
ウェル領域11に囲まれるように、ゲートトレンチ部40が配置されている。ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面の上方に配置されたゲート配線45を介して、ゲート電極46と接続されている。ゲート配線45および半導体基板10の上面との間には、絶縁膜が形成される。
【0174】
図29は、本発明の実施形態に係る半導体装置400の一例を示す上面図である。本例の半導体装置400は、
図1から
図24に示したそれぞれの半導体装置に対して、半導体基板10の上面におけるダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の形状および配置が異なる。他の構造は、
図1から
図24に示したそれぞれの半導体装置と同様であってよい。
【0175】
半導体装置400は、第1のゲートトレンチ部40-1、第2のゲートトレンチ部40-2およびダミートレンチ部30を備える。半導体装置400は、第1のゲートトレンチ部40-1、第2のゲートトレンチ部40-2およびダミートレンチ部30を含むトレンチセットを、半導体基板10の上面においてY軸方向に沿って複数備えてよい。
【0176】
第1のゲートトレンチ部40-1および第2のゲートトレンチ部40-2のそれぞれは、延伸部41-1、延伸部41-2および先端部43を有する。延伸部41-1および延伸部41-2は、半導体基板10の上面においてX軸方向に平行に延伸して設けられる。先端部43は、2つの延伸部41の先端を接続する。
【0177】
ダミートレンチ部30は、延伸部31-1、延伸部31-2および先端部36を有する。延伸部31-1および延伸部31-2は、半導体基板10の上面においてX軸方向に平行に延伸して設けられる。先端部36は、2つの延伸部31の先端を接続する。
【0178】
半導体基板10の上面において、ダミートレンチ部30は、第1のゲートトレンチ部40-1の内側に配置される。つまり半導体基板10の上面において、ダミートレンチ部30の2つの延伸部31は、第1のゲートトレンチ部40-1の2つの延伸部41に挟まれた領域に配置されている。
【0179】
半導体基板10の上面において、第2のゲートトレンチ部40-2は、ダミートレンチ部30の内側に配置される。つまり半導体基板10の上面において、第2のゲートトレンチ部40-2の2つの延伸部41は、ダミートレンチ部30の2つの延伸部31に挟まれた領域に配置されている。また、半導体基板10の上面において、ダミートレンチ部30の先端部36は、第1のゲートトレンチ部40-1の先端部43と、第2のゲートトレンチ部40-2の先端部43との間に配置されている。
【0180】
このような構造により、ゲートトレンチ部40の2つの延伸部41に挟まれる、ダミートレンチ部30の延伸部31の本数を一つにしつつ、それぞれの延伸部(31、41)のX軸方向における先端を先端部(36、43)で接続できる。このため、伝導度変調を促進しつつ、それぞれの延伸部(31、41)の先端における電界集中を緩和できる。
【0181】
ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30以外の構造は、
図1から
図28に示したいずれかの態様の半導体装置と同様であってよい。本例の半導体装置400は、
図22に示した半導体装置200と同様に、接続部57およびゲート配線45を有さない。
【0182】
第1のゲートトレンチ部40-1、第2のゲートトレンチ部40-2およびダミートレンチ部30のそれぞれは、半導体基板10の上面において、ゲート電極46と重なる部分を有する。第1のゲートトレンチ部40-1および第2のゲートトレンチ部40-2に対しては、ゲート電極46と重なる部分にコンタクトホール55が設けられる。
【0183】
第1のゲートトレンチ部40-1、第2のゲートトレンチ部40-2およびダミートレンチ部30のそれぞれは、半導体基板10の上面において、エミッタ電極52と重なる部分を有する。ダミートレンチ部30に対しては、エミッタ電極52と重なる部分にコンタクトホール56が設けられる。
【0184】
図30は、半導体装置400のf-f断面の一例を示す図である。本例におけるダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40は、
図2に示したゲートトレンチ部40と同様の構造を有する。他の例では、ダミートレンチ部30は、
図1から
図21Dに示したいずれかのダミートレンチ部30と同一の構造を有してよい。また、メサ部94における各ドーピング領域は、
図1から
図20に示したメサ部94における各ドーピング領域と同様の構造を有してもよい。
【0185】
図31は、半導体装置400のf-f断面の他の例を示す図である。本例では、ダミートレンチ部30が、
図2に示したダミートレンチ部30と同一の構造を有する。他の構造は、
図30に示した半導体装置400と同一である。
図29に示したダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の形状および配置は、
図1から
図24のそれぞれの半導体装置に適用してよい。
【0186】
図32は、半導体装置400のg-g断面の一例を示す図である。半導体装置400は、各トレンチ部が各電極に直接的に接続する。このため半導体装置400は、接続部57およびゲート配線45を備えていない。
【0187】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0188】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・下端、18・・・ドリフト領域、19・・・ピーク、20・・・バッファ領域、22・・・コレクタ領域、26・・・層間絶縁膜、30・・・ダミートレンチ部、31・・・延伸部、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・下端、34・・・ダミー導電部、35・・・下端、36・・・先端部、37・・・トレンチ薄膜部、38・・・トレンチ厚膜部、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・延伸部、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・先端部、44・・・ゲート導電部、45・・・ゲート配線、46・・・ゲート電極、52・・・エミッタ電極、54、55、56・・・コンタクトホール、57・・・接続部、58・・・コレクタ電極、70・・・トランジスタ部、72・・・ゲート隣接領域、74・・・ダミー隣接領域、76・・・ピーク、77・・・第1のピーク、78・・・第2のピーク、79・・・中央領域、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、90・・・境界部、94・・・メサ部、96・・・接続部、100、200、300、400・・・半導体装置