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特開2024-73636PD-1-CD28融合タンパク質および医療におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073636
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】PD-1-CD28融合タンパク質および医療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240522BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240522BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240522BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240522BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240522BHJP
   C07K 14/46 20060101ALI20240522BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240522BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240522BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240522BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240522BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240522BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/13
C07K16/18
C07K14/46
C12N5/10
C12N15/85 Z
C12P21/02 C
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044396
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2022044885の分割
【原出願日】2016-06-20
(31)【優先権主張番号】15172913.4
(32)【優先日】2015-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517442133
【氏名又は名称】コボルド セバスチャン
(71)【出願人】
【識別番号】517442144
【氏名又は名称】エンドレス ステファン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】コボルド セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】エンドレス ステファン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】養子T細胞療法の安全性および効能を改善するためのPD-1-CD28融合タンパク質を提供する。
【解決手段】C末端を介してCD28ポリペプチドの細胞内ドメインのN末端に機能的に連結しているPD-1ポリペプチドを含む融合タンパク質であって、該PD-1ポリペプチドがPD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、融合タンパク質を提供する。前記PD-1-CD28融合タンパク質、核酸分子、ベクター、前記核酸分子もしくはベクターを持つかまたは前記融合タンパク質を発現する形質導入細胞、前記核酸分子、ベクターおよび/または融合タンパク質を含む方法およびキットも提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C末端を介してCD28ポリペプチドの細胞内ドメインのN末端に機能的に連結しているPD-1ポリペプチドを含む融合タンパク質であって、該PD-1ポリペプチドがPD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、融合タンパク質。
【請求項2】
PD-1ポリペプチドが、SEQ ID NO: 16の配列、またはSEQ ID NO: 16との比較において1
~10個の置換、欠失もしくは挿入を有しかつPD-L1および/もしくはPD-L2結合活性を有することを特徴とする配列を含む、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
PD-1の膜貫通ドメインがSEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を有する、請求項1または2記載
の融合タンパク質。
【請求項4】
CD28ポリペプチドが、配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28ポリペプチドの細胞内ドメインに由来する配列を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項5】
CD28ポリペプチドがSEQ ID NO: 22のアミノ酸配列を有する、請求項1~4のいずれか一
項記載の融合タンパク質。
【請求項6】
SEQ ID NO: 24からなる、請求項1~5のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項7】
(a)SEQ ID NO: 18との比較において1~10個の置換、欠失または挿入を有しかつPD-L1および/またはPD-L2結合活性を有することを特徴とする配列を含むPD-1ポリペプチド;
(b)SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を有するPD-1の膜貫通ドメイン;ならびに
(c)配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28
ポリペプチドの細胞内ドメインに由来する配列を含むCD28ポリペプチド
を有する、請求項6記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項記載の融合タンパク質をコードする、核酸分子。
【請求項9】
第二のポリペプチドをさらにコードする、請求項8記載の核酸分子。
【請求項10】
請求項8記載の核酸分子である第一の核酸分子と、第二のポリペプチドをコードする第
二の核酸分子とを含む、組成物。
【請求項11】
第二のポリペプチドが、キメラ抗原受容体、アルファ/ベータT細胞受容体、天然T細胞受容体、抗CD3 T細胞エンゲージャーまたはT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)である、請求項9記載の核酸分子または請求項10記載の組成物。
【請求項12】
請求項8~9および11のいずれか一項記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項13】
第一の核酸分子および第二の核酸分子が第一のベクターおよび第二のベクターに含まれる、請求項10または11記載の組成物。
【請求項14】
第一および第二のベクターが同じまたは異なるベクターである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
請求項8、9および11のいずれか一項記載の核酸分子;請求項10、11、13および14のいずれか一項記載の組成物;または請求項12記載のベクターを含む、形質導入細胞。
【請求項16】
請求項8記載の核酸分子によってコードされた融合タンパク質を発現する、形質導入細
胞。
【請求項17】
請求項9または11記載の核酸分子;請求項10、11、13および14のいずれか一項記載の組
成物;または請求項12記載のベクターを含む、融合タンパク質および第二のポリペプチドを発現する形質導入細胞。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか一項に規定された融合タンパク質を発現する形質導入細胞を産生するための方法であって、
(a)請求項12記載のベクターまたは請求項13もしくは14記載の組成物を細胞に形質導
入する工程;
(b)該形質導入細胞の中または上での該融合タンパク質の発現が可能な条件下で、該
形質導入細胞を培養する工程;および
(c)該形質導入細胞を培養物から回収する工程
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法によって得ることのできる、請求項8記載の核酸分子によってコー
ドされた融合タンパク質を発現する形質導入細胞。
【請求項20】
請求項8、9および11のいずれか一項記載の核酸分子によってコードされた融合タンパク質を発現する形質導入細胞、請求項15~17および19のいずれか一項記載の形質導入細胞、または請求項18記載の方法によって産生された形質導入細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
肺がん、卵巣がん、黒色腫、結腸がん、胃がん、腎細胞がん、食道がん、神経膠腫、尿路上皮がん、網膜芽細胞腫、乳がん、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、ホジキンリンパ腫、骨髄腫、肝細胞がん、白血病、子宮頸がん、胆管がん、口腔がん、頭頸部がんまたは中皮腫を処置する方法に使用するための、請求項8、9および11のいずれか一項記載の核酸分子によってコードされた融合タンパク質を発現する形質導入細胞、請求項15~17および19のいずれか一項記載の形質導入細胞、または請求項18記載の方法によって産生された形質導入細胞。
【請求項22】
請求項8~10のいずれか一項記載の核酸分子、請求項11記載のベクターおよび/または
請求項1~7のいずれか一項記載の融合タンパク質を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-1-CD28融合タンパク質、核酸分子、ベクター、本発明の核酸分子もしく
はベクターを持つかまたは本発明の融合タンパク質を発現する形質導入細胞、本発明の核酸分子、ベクターおよび/または融合タンパク質を含む方法およびキットに関する。本発明はまた、特定の疾患の処置法における前記形質導入細胞の使用、ならびに疾患を処置する方法に使用するための、特にPD-L1および/またはPD-L2発現を特徴とする疾患の医学的介入に使用するための、本発明の融合タンパク質を発現する前記形質導入細胞を含む薬学的組成物/医薬を提供する。
【背景技術】
【0002】
養子T細胞療法(ACT)は、転移性がんの進行段階でさえも治療するための強力な手法である(Rosenberg, Nat Rev Clin Oncol 8(10) (2011), 577-585)。ACTの場合、抗原特異的T細胞を単離または操作し、インビトロで増殖させたのち患者に再注入する(Gattinoni
et al., Nat Rev Immunol 6(5) (2006), 383-393)。治験において、ACTと全身放射線照射との併用により、一部のがん患者において無比の応答率が達成されている。しかし、患者の大部分はこの治療に応答しない(Dudley et al., J Clin Oncol 26(32) (2008), 5233-5239;Rosenberg et al., Clin Cancer Res 17(13) (2011), 4550-4557)。全身放射線照射によって相殺されない腫瘍誘発免疫抑制が、治療に対するこの抵抗への関与を示唆されている(Leen et al., Annu Rev Immunol 25 (2007), 243-265)。最近、活性化T細胞
上で上方制御された阻害性受容体および腫瘍環境内で発現するそれらそれぞれのリガンドがT細胞療法の失敗に寄与することが示された(Abate-Daga et al., Blood 122(8) (2013), 1399-410)。最近の研究が、腫瘍中の腫瘍抗原特異的T細胞上に発現したPD-1を同定したことを考慮すると、阻害性受容体の中でも、プログラム細胞死受容体-1(PD-1)が中心的役割を果たしている(Gros et al., J Clin Invest (2014), 10.1172/JCI73639)。PD-1とそのリガンドPD-L1との相互作用は、TCRシグナル伝達およびT細胞活性化を抑制し、ひいては、標的認識時の有効な活性化を妨げる(Gros et al., J Clin Invest (2014), 10.1172/JCI73639;Yokosuka et al., J Exp Med 209(6) (2012), 1201-1217;Ding et al.,
Cancer Res (2014), 10.1158/0008-5472.CAN-13-3596;Karyampudi et al., Cancer Res
(2014), 10.1158/0008-5472.CAN-13-2564)。これらの機構の臨床的重要性は、抗腫瘍活性の顕著な改善をもたらす、ACTまたは遺伝子改変T細胞を抗体ベースのPD-1阻止と組み合わせる治療研究によって強調されている(John et al., Clin Cancer Res 19(20) (2013), 5636-5646;Goding et al., J Immunol 190(9) (2013), 4899-4909)。PD-1またはPD-L1阻止抗体の全身適用は、いかなる反応性T細胞も潜在的に標的とし、ひいては全身性の副作用を誘発するという欠点をかかえている(Topalian et al., N Engl J Med 366(26) (2012), 2443-2454;Brahmer et al., N Engl J Med 366(26) (2012), 2455-2465)。その
うえ、最近、フェーズI試験で見られたように、ACTそのものが相当な毒性のリスクを有する(Linette et al., Blood 122(6) (2013), 863-871;Morgan et al., J Immunother 36(2) (2013), 133-151)。無差別PD-1阻止との併用は、いずれかの治療単独の副作用を増強するリスクを伴う。非選択的T細胞活性化を伴わずにPD-1-PD-L1阻止を追求する潜在的戦
略は、腫瘍反応性T細胞へのその効果を制限することである。CD28細胞外ドメインとPD-1
細胞内ドメインとの間のシグナル伝達の主要な適合性が実証されている(Riley and June, Blood (2005), 105(1), 13-21;Chemnitz et al., J Immunol 173(2) (2004), 945-954)。さらに、CTLA-4、PD-1およびCD28の適合性を利用して、T細胞応答を増強し、刺激性CTLA-4-CD28融合受容体を使用し、PD-1およびCTLA-4のシグナル伝達ドメインを有する阻害性受容体を使用してオフターゲットT細胞反応性を阻害している(Morales-Kastresana et
al., Clin Cancer Res 19(20) (2013), 5546-5548, Yin et al., J Leukoc Biol 73(1) (2003), 178-182)。さらに、PD-1のトランケート型細胞外ドメインと、CD28の膜貫通お
よび細胞内ドメインとを含むPD-1-CD28融合構築物が記載されている(Ankri et al., J. Immunol 191(8) (2013), 4121-4129)。そのうえ、PD-1のトランケート型細胞外ドメインおよび細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン+CD28細胞外ドメインの一部を含むPD-1-CD28融
合タンパク質が記載されている(Prosser et al., Mol. Immunol. 51(3-4) (2012), 263-272)。
【0003】
しかし、PD-L1媒介T細胞阻害を考慮すると、なおも、ACTの安全性および効能を改善し
、上記欠点を解消する能力を有する改善された手段を提供する必要性がある。
【0004】
この必要性は、本発明により、特許請求の範囲に規定される態様を提供することによって対処される。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、PD-1ポリペプチドと、CD28ポリペプチドの細胞内ドメインとを含み、PD-1ポリペプチドがPD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、融合タンパク質に関する。
【0006】
本明細書に記載されるPD-1-CD28融合タンパク質は、PD-1の細胞外ドメインおよび膜貫
通ドメインを含むPD-1ポリペプチドが、そのC末端を介してCD28ポリペプチドの細胞内ド
メインのN末端に機能的に連結していることを特徴とする。
【0007】
Prosser et al., Mol. Immunol. 51(3-4) (2012), 263-272およびAnkri et al., J. Immunol 191(8) (2013), 4121-4129に記載されているPD-1-CD28融合タンパク質とは対照的
に、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質は、PD-1ポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。
添付の実施例に示すように、以前に記載されているPD-1-CD28融合タンパク質のアーキテ
クチャは、一次T細胞に形質導入されたとき、控えめなサイトカイン誘発(2~3倍)だけ
を示し、溶解活性における差をほとんどまたは全く示さなかった。これは、IL-2およびIFN-γ分泌の300倍までの増加、強いT細胞増殖ならびに腫瘍細胞溶解活性の増強をインビトロおよびインビボで達成した(図2、3、5および9を参照)本発明の融合タンパク質とは顕著に対照的である。したがって、SEQ ID NO: 14(ネズミ/マウス)またはSEQ ID NO: 24(ヒト)に示されるアミノ酸配列を有するPD-1-CD28融合タンパク質を指す、PD-1膜貫通
ドメイン(PTM)を有する本発明のPD-1-CD28融合タンパク質は、驚くことに、Prosser et
al., Mol. Immunol. 51(3-4) (2012), 263-272(本明細書の中で「CEX」と命名された融合タンパク質としてアーキテクチャを有するPD-1-CD28融合タンパク質を指す)およびAnkri et al., J. Immunol 191(8) (2013), 4121-4129(本明細書の中で「CTM」と命名され
た融合タンパク質としてアーキテクチャを有するPD-1-CD28融合タンパク質を指す;図2を参照)に記載されている、以前に記載されているPD-1-CD28融合構築物よりも優れている
ということがわかった。より正確には、添付の実施例の中で、CD28の細胞内ドメインへの細胞外ドメイン+膜貫通ドメインの融合が、形質導入細胞をPD-1-L1誘発T細胞阻害から保護し、阻害シグナルを、最適なT細胞機能のための共刺激シグナルに変えるということが
示されている。図6Eに示すように(作用機序の概念の証明として)、驚くことに、PD-1細胞外および膜貫通ドメインとCD28の細胞内ドメインとの融合タンパク質が、抗原特異的T
細胞をPD-1-PD-L1媒介アネルギーから保護し、阻害シグナルを共刺激に変えるということがわかった。換言するならば、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質を形質導入されたT細胞などの細胞は、PD-1-PD-L1媒介アネルギーに対して耐性である。さらには、ヒトPD-1およびCD28配列に基づくPD-1-CD28融合構築物の機能性が図8に示されている。
【0008】
したがって、本発明は、C末端を介してCD28ポリペプチドの細胞内ドメインのN末端に機能的に連結しているPD-1ポリペプチドを含み、そのポリペプチドがPD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、融合タンパク質に関する。
【0009】
本発明に関連して、用語「融合タンパク質」とは、異なる出所からのポリペプチド部分でできているタンパク質をいう。したがって、「キメラタンパク質」とも理解され得る。通常、融合タンパク質は、元々は別々のタンパク質をコードした2つ以上の遺伝子(また
は好ましくはcDNA)の接合によって創製されるタンパク質である。この融合遺伝子(または融合cDNA)の翻訳が、元のタンパク質それぞれに由来する機能性を好ましくは備えた単一のポリペプチドを生じさせる。組換え融合タンパク質は、生物学的研究または療法における使用のために組換えDNA技術によって人工的に創製される。本発明の融合タンパク質
の製造に関するさらなる詳細は、本明細書中、以下に記載される。
【0010】
本発明に関連して、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体を指すために互換可能に使用される。これらの用語はまた、1つまた
は複数のアミノ酸残基が人工的な化学的模倣物質または対応する天然に存在するアミノ酸であるアミノ酸重合体および天然に存在するアミノ酸重合体にも当てはまる。したがって、本発明に関連して、用語「ポリペプチド」とは、ペプチド(アミド)結合によって連結されたアミノ酸単量体の鎖を含む、またはそれからなる分子をいう。ペプチド結合は、1
つのアミノ酸のカルボキシル基が別のアミノ酸のアミノ基と反応したとき形成される化学的共有結合である。本明細書中、「ポリペプチド」は、所定の長さの分子に限定されない。したがって、本明細書中、用語「ポリペプチド」は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結されている、アミノ酸鎖を包含するペプチド、オリゴペプチド、タンパク質またはポリペプチドをいう。しかし、本明細書中、用語「ポリペプチド」はまた、アミノ酸および/またはペプチド結合が機能性類似物によって置換されている、そのようなタンパク質/ポリペプチドのペプチド模倣物質をも包含する。用語「ポリペプチド」はまた、ポリペプチドの修飾、たとえばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などを指し、それらを除外しない。そのような修飾は当技術分野において十分に記載されている。
【0011】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似物およびアミノ酸模倣物質をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたアミノ酸およびのちに修飾されるアミノ酸、たとえばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメートおよびO-ホスホ
セリンである。アミノ酸類似物とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合したα炭素を有する化合物、たと
えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。そのような類似物質は、修飾されたR基(たとえばノルロイシン)または修飾
されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物質とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物をいう。アミノ酸は、本明細書中、一般的に知られる3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字記号によって参照され得る。
【0012】
本発明に関連して、融合タンパク質は、完全長PD-1ポリペプチドのフラグメント/ポリペプチド部分および完全長CD28ポリペプチドのフラグメント/ポリペプチド部分を含み得る。したがって、本明細書に提供される融合タンパク質に含まれる「PD-1ポリペプチド」は、完全長PD-1ポリペプチドのフラグメント/ポリペプチド部分である。ネズミ/マウスおよびヒト完全長PD-1のアミノ酸配列が、本明細書中、それぞれ、SEQ ID NO: 2(SEQ ID
NO: 1に示されたcDNA配列によってコードされるネズミ/マウス)およびSEQ ID NO: 4(SEQ ID NO: 3に示されたcDNA配列によってコードされるヒト)として示されている(ヒト完全長PD-1のUni Prot Entry番号はQ15116であり(エントリバージョン番号138および配
列のバージョン3のアクセッション番号)であり;ネズミ/マウス完全長PD-1のUni Prot Entry番号はQ02242である(エントリバージョン番号125および配列のバージョン1のアク
セッション番号)。同様に、本明細書に提供される融合タンパク質に含まれる「CD28ポリペプチド」は、完全長CD28ポリペプチドのフラグメント/ポリペプチド部分である。ヒトおよびネズミ/マウス完全長CD28のアミノ酸配列が、本明細書中、それぞれ、SEQ ID NO:
26(SEQ ID NO: 25に示されたコピーDNA(cDNA)配列によってコードされるネズミ/マ
ウス)およびSEQ ID NO: 28(SEQ ID NO: 27に示されたcDNA配列によってコードされるヒト)として示されている。上述したように、本明細書に提供される融合タンパク質は、C
末端を介してCD28ポリペプチドの細胞内ドメインのN末端に機能的に連結しているPD-1ポ
リペプチドを含み、PD-1ポリペプチドはPD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む。
【0013】
本明細書に提供される融合タンパク質は、SEQ ID NO: 2に示されるPD-1(SEQ ID NO: 1に示されたcDNA配列によってコードされるネズミ/マウス完全長PD-1)のアミノ酸配列のアミノ酸1~200、好ましくはアミノ酸1~190を含み得る。さらに、本発明に関連して、本明細書に提供されるPD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 2に示されるPD-1(SEQ ID NO: 1に示されたcDNA配列によってコードされる)のアミノ酸配列のアミノ酸1~180、1~181、1~182、1~183、1~184、1~185、1~186、1~187、1~188、1~189、1~190、1~191、1~192、1~193、1~194、1~195、1~196、1~197、1~198、1~199または1~200
を含み得る。たとえば、本発明の融合タンパク質に含まれるPD-1ポリペプチドは、SEQ ID
NO: 8に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO: 7に示されたcDNA配列によってコードされる)(ネズミ/マウス)を含み得る、またはそれからなり得る。しかし、より好ましくは、本発明の融合タンパク質は、ヒト起源に由来するポリペプチドを含む。したがって、より好ましくは、本明細書に提供される融合タンパク質は、SEQ ID NO: 4に示されるPD-1(SEQ ID NO: 3に示されたcDNAによってコードされるヒト完全長PD-1)のアミノ酸配列のアミノ酸1~200、なおさらに好ましくはアミノ酸1~191を含む。したがって、本発明に関連して、本明細書に提供される融合タンパク質は、好ましくは、SEQ ID NO: 4に示されるPD-1(SEQ ID NO: 3に示されたcDNAによってコードされるヒト完全長PD-1)のアミノ酸配列のアミノ酸1~180、1~181、1~182、1~183、1~184、1~186、1~187、1~188、1~189、1~190、1~191、1~192、1~193、1~194、1~195、1~196、1~197、1~198、1~199または1~200を含む。たとえば、本発明の融合タンパク質に含まれるPD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO: 15に示されたcDNAによってコードされる)を含み得る、またはそれからなり得る。したがって、本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 16に示される配列、またはSEQ ID NO: 16との比較にお
いて1、2、3、4、5、6、7、8、9または10までの置換、欠失もしくは挿入を有しかつPD-L1またはPD-L2結合活性を有することを特徴とする配列を含む。
【0014】
上述の置換、欠失、挿入/追加は保存的変異であり得る。「保存的変異」とは、タンパク質の生物学的活性を変化させることなく変更を頻繁に加えることができるような、類似の特性(たとえば電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖コンフォメーション、硬さなど)を有する他のアミノ酸による、タンパク質中のアミノ酸の置換をいう。当業者は、概して、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する(たとえば、Watson Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p. 224 (4th Ed.) (1987)を参照)。加えて、構造的または
機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を妨害する可能性が低い。本発明の結合化合物の様々な態様は、本明細書に開示される特定のアミノ酸配列、たとえばSEQ ID NO: 6、8、10、16、18または20と比較したとき、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10
までの保存的アミノ酸置換を含む配列を有するポリペプチド鎖を含む。
【0015】
したがって、本発明に関連して、PD-1(ヒト完全長PD-1(SEQ ID NO: 4(SEQ ID NO: 3に示されたcDNA配列によってコードされる))の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含むPD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を有する配列を含み得
、アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列との比較において1、2、3、4
、5、6、7、8、9または10まで、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、なおさらに好ま
しくは1~5、なおさらに好ましくは1または2、またはなおさらに好ましくは1つの置換、
欠失または挿入を有する。本明細書に提供される融合タンパク質においてPD-1ポリペプチドがSEQ ID NO: 16のアミノ酸配列との比較において、それぞれ、1つまたは複数の置換、欠失または挿入を含むならば、前記融合タンパク質は、PD-L1および/またはPD-L2結合活性を有することを特徴とする。この結合活性は、天然の完全長PD-1タンパク質(たとえば、SEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)と比較して同じ、高められた、または低下した親和性のいずれかでPD-L1および/またはPD-L2リガンドに結合する能力と定義される。天然の完全長PD-1タンパク質は、770nM以下の平衡解離定数(KD)でPD-L1リガンドに結合し(Butte et al., Molecular Immunology 45 (2008), 3567-3572)、
天然の完全長PD-1タンパク質は、140nM以下の平衡解離定数(KD)でPD-L2リガンドに結合する(Butte et al., Molecular Immunology 45 (2008), 3567-3572)。したがって、本
発明に関連して、PD-1(たとえば、SEQ ID NO: 16に示された、またはSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列との比較において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10までの置換、
欠失または挿入を有するその変異体)の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含むPD-1ポリペプチドは、天然の完全長PD-1タンパク質と同じ結合力でPD-L1および/またはPD-L2リガンドに結合し得る。または、本発明に関連して、PD-1(たとえば、SEQ ID NO: 16に
示された、またはSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列との比較において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10までの置換、欠失または挿入を有するその変異体)の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含むPD-1ポリペプチドは、天然の完全長PD-1タンパク質と比較して少なくとも1000、100、50、40、30、20、10、5倍の高さ(すなわち、高められた)または低さ(すなわち低下した)の結合親和性でPD-L1および/またはPD-L2リガンドに結合し得る。本明細書の中で使用される語「KD」とは、解離定数を指すためのものであり、モル濃度(M)として表される。たとえば本明細書中、上記のPD-1ポリペプチドとPD-L1および/またはPD-L2との間のタンパク質-タンパク質相互作用の場合のKD値は、当技術分野
において十分に確立された方法を使用して測定することができる。PD-L1および/またはPD-L2リガンドに対する結合親和性を測定する方法は当技術分野において公知であり、本明細書中、以下さらに詳細に説明され、たとえば、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオコ
ア計測、フローサイトメトリーまたはELISAを含む。
【0016】
本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 2に示されるマウス完全
長PD-1タンパク質(SEQ ID NO: 1に示されたcDNAによってコードされる)のアミノ酸1~169に位置するPD-1の細胞外ドメインを含む。または、本発明に関連して、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 4に示されるヒト完全長PD-1タンパク質(SEQ ID NO: 3に示されたcDNAによってコードされる)のアミノ酸1~170に位置するPD-1の細胞外ドメインを含む。本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 8に示されるPD-1(SEQ ID NO: 7
に示されたcDNA配列によってコードされる)またはより好ましくはSEQ ID NO: 18に示さ
れるPD-1(SEQ ID NO: 17に示されたcDNA配列によってコードされる)の細胞外ドメイン
を含む、またはそれからなる。PD-1タンパク質(これは本明細書に提供される融合タンパク質に含まれる)の細胞外ドメインは、天然のPD-1タンパク質と比較して同じ(すなわち等しい)、高められた、または低下した(すなわち減少した)親和性でPD-1の天然のリガンド(すなわち(ヒト)PD-L1(Uni Prot Entry: Q9NZQ7(エントリバージョン:130および配列のバージョン1のアクセッション番号)または(ヒト)PD-L2(Unit Prot Entry: Q9BQ51(エントリバージョン:115および配列のバージョン2のアクセッション番号)に結
合する能力を特徴とする。PD-L1および/またはPD-L2への融合タンパク質の親和性は、本明細書中、以下に記載されるように検定することができる。ヒト完全長PD-L1およびヒト
完全長PD-L2のアミノ酸配列は、本明細書中、SEQ ID NO: 34(SEQ ID NO: 33に示されたcDNA配列によってコードされるPD-L1)またはSEQ ID NO: 36(SEQ ID NO: 35に示されたcDNA配列によってコードされるPD-L2)として示されている。PD-L1またはPD-L2への低下し
た(すなわち減少した)、同じ(すなわち等しい)または好ましくは高められた親和性は、本明細書に提供される融合タンパク質の細胞外ドメイン中の点変異によって達成されることができる。たとえば、SEQ ID NO: 18のアミノ酸位置132に対応する位置のアラニンをロイシンに変えることが、PD-L1およびPD-L2へのPD-1親和性(すなわち結合)を高める。PD-L1およびPD-L2へのPD-1ポリペプチド(これは本明細書に提供される融合タンパク質に含まれる)の親和性を高めることにより、本明細書に提供される融合タンパク質の細胞中の活性が、サイトカイン分泌、増殖および溶解の点で高められる。
【0017】
PD-L1またはPD-L2への本明細書に提供される融合タンパク質の結合親和性は、非限定的に、フローサイトメトリー、ELISA、免疫沈降、ウェスタンブロット、共焦点または従来
の顕微鏡検査法を含む当業者には周知の方法によって評価することができる(Terawaki et al., International Immunology, 19(7) (2007), 881-890;Cheng et al., J Biol Chem. 288(17) (2013), 11771-11785;Ghiotto et al., Int Immunol. 22(8) (2010), 651-660)。特に、PD-L1またはPD-L2への前記融合タンパク質の結合は、腫瘍または別の免疫細胞であることもできる標的細胞の周囲でのT細胞のクラスタ化および融合タンパク質によ
るそのような細胞の活性化を生じさせる。融合タンパク質そのものは、標的細胞との接点までクラスタ化する。これは、たとえば共焦点または従来の顕微鏡検査法によって計測および/または視覚化することができる。PD-L1またはPD-L2いずれかへの融合タンパク質(すなわち、融合タンパク質に含まれるPD-1ポリペプチド)の結合が、融合タンパク質のCD28シグナル伝達モチーフを介する任意のその後のシグナル伝達およびそれから得られる効果にとって中心的である。リガンドPD-L1および/またはPD-L2に対する高められた親和性を生じさせる融合タンパク質における変異が融合タンパク質の機能性を高めることができる。あるタンパク質の別のタンパク質への親和性を計測する方法は当業者に周知であり、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオコア計測、フローサイトメトリーまたはELISAを含む。
【0018】
上記のように、本明細書に提供されるPD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 2に示
されるマウス完全長PD-1タンパク質(SEQ ID NO: 1に示されたcDNAによってコードされる)のアミノ酸170~191に位置するPD-1の膜貫通ドメインを含む。PD-1の膜貫通ドメインは、ヒト完全長PD-1タンパク質(SEQ ID NO: 4に示される(SEQ ID NO: 3に示されたcDNAによってコードされている))のアミノ酸171~191に位置する。PD-1の膜貫通ドメインは、本発明の融合タンパク質の重要な成分であり、PD-1受容体(すなわち、融合タンパク質のPD-1ポリペプチド)の係合時、CD28の細胞内ドメインへのシグナル伝達を可能にする。本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質に含まれる膜貫通ドメインは、SEQ ID NO: 10(SEQ ID NO: 9に示されたcDNA配列によってコードされるネズミ/マウス)またはSEQ ID
NO: 20(SEQ ID NO: 19に示されたcDNA配列によってコードされるヒト)に示されるアミノ酸配列を含み得る、またはそれからなり得る。しかし、本発明の融合タンパク質(SEQ ID NO: 10またはSEQ ID NO: 20)に含まれる膜貫通ドメインは、SEQ ID NO: 10(ネズミ
/マウス)または20(ヒト)に示されるアミノ酸配列との比較において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10まで、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4
、なおさらに好ましくは1~2またはなおさらに好ましくは1つの置換、欠失または挿入を
含むアミノ酸配列を含み得る、またはそれからなり得る。本明細書に提供される融合タンパク質において、膜貫通ドメインが、SEQ ID NO: 10(ネズミ/マウス)または20(ヒト
)に示されるアミノ酸配列との比較において0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の置換、欠失または挿入を含むならば、前記融合タンパク質は、同じまたは好ましくは高められたシグナル伝達活性を示すことを特徴とする。そのようなシグナル伝達活性は、V-akt murine thymoma oncogene homologue 1(AKT)のようなリン酸化タンパク質を検出するフローサイトメトリー、ウェスタンブロットまたはELISAベースのアッセイによって計測す
ることができる。シグナル伝達活性はまた、下流機能効果、たとえばT細胞などの細胞の
サイトカイン放出、増殖または溶解活性によって検出することもできる(たとえば、本明
細書中の実施例およびKrutzik et al., Methods Mol Biol. 699 (2011), 179-202;Ekkens et al., Infect Immun. 75(5) (2007), 2291-2296;Ge et al., Proc Natl Acad Sci USA. 99(5) (2002), 2983-2988;Duwell et al., Cell Death Differ. 21(12) (2014), 1825-1837, Erratum in: Cell Death Differ. 21(12) (2014), 161に記載されているように)。したがって、PD-1の膜貫通ドメインは、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質の重要な
成分であり、PD-1受容体ドメイン(すなわち、融合タンパク質のPD-1ポリペプチド)との係合時、CD28の細胞内ドメインへのシグナル伝達を提供し、そのシグナル伝達を、たとえば、T細胞などの細胞のサイトカイン産生、増殖または溶解活性によって計測することが
できる。したがって、本発明に関連して、PD-1の膜貫通は、SEQ ID NO: 20に示されたア
ミノ酸配列(SEQ ID NO: 19に示されたcDNAによってコードされる)を有する。
【0019】
本発明のPD-1-CD28融合タンパク質の細胞内ドメインは、(ヒト)CD28遺伝子(Uni Prot Entry No: P10747(エントリバージョン番号164および配列のバージョン1のアクセッション番号)に由来し、形質導入T細胞のような本明細書に記載される形質導入細胞のサイ
トカイン産生、増殖および溶解活性として定義されるCD28活性を提供する。CD28活性は、インターフェロンガンマ(IFN-γ)またはインターロイキン2(IL-2)のようなサイトカ
インのELISAまたはフローサイトメトリーによるサイトカインの放出(本明細書中、添付
の実施例の中で説明する)、たとえばki67計測によって計測されるT細胞の増殖、フロー
サイトメトリーによる細胞定量化(添付の実施例の中で説明する)または標的細胞のリアルタイムインピーダンス計測によって評価される溶解活性(たとえば、以下、添付の実施例のセクション3.1およびたとえばThakur et al., Biosens Bioelectron. 35(1) (2012),
503-506;Krutzik et al., Methods Mol Biol. 699 (2011), 179-202;Ekkens et al., Infect Immun. 75(5) (2007), 2291-2296;Ge et al., Proc Natl Acad Sci USA. 99(5) (2002), 2983-2988;Duwell et al., Cell Death Differ. 21(12) (2014), 1825-1837, Erratum in: Cell Death Differ. 21(12) (2014), 161に記載されているように、ICELLligence計器を使用することによる)によって計測することができる。シグナル伝達ドメインPYAP(SEQ ID NO: 28のAA208~211(SEQ ID NO: 27に示されたcDNA配列によってコードされる))およびYMNM(SEQ ID NO: 28のアミノ酸191~194)は、CD28ポリペプチドの機能
および上記機能効果にとって有益である。YMNMドメインのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 29
に示され;PYAPドメインのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 30に示されている。したがって、
本発明の融合タンパク質において、CD28ポリペプチドは、好ましくは、配列YMNM(SEQ ID
NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28ポリペプチドの細胞内ドメインに由来する配列を含む。本発明に関連して、本明細書に記載される形質導入細胞、たとえば形質導入T細胞のサイトカイン産生、増殖および溶解活性として定義されるCD28活
性を特徴とする配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28ポリペプチドの細胞内ドメイン。したがって、本発明に関連して、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質の細胞内ドメインは、SEQ ID NO: 22(ヒト)(SEQ ID NO: 21に示さ
れたcDNA配列によってコードされる)またはSEQ ID NO: 12(マウス/ネズミ)(SEQ ID NO: 11に示されたcDNA配列によってコードされる)のアミノ酸配列を有する。しかし、本発明の融合タンパク質において、これらのドメインの1つまたは両方がFMNM(SEQ ID NO: 31)および/またはAYAA(SEQ ID NO: 32)にそれぞれ変異していてもよい。これらの変
異のいずれも、その増殖能力に影響することなく、融合タンパク質がサイトカインを放出する能力を低下させ、かつ形質導入細胞の生存力、ひいては治療ポテンシャルを延ばすために好都合に使用することができる。または、換言するならば、そのような非機能的変異は、好ましくは、本明細書に提供される融合タンパク質を形質導入されている細胞のインビボでの残存率を高める。しかし、これらのシグナル伝達モチーフは、本明細書に提供される融合タンパク質の細胞内ドメイン内のいかなる部位にも存在し得る。
【0020】
したがって、本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 26に示されるCD28(SEQ ID NO: 25に示されたcDNA配列によってコードされるマウス完全長CD28)の
アミノ酸配列のアミノ酸170~218、好ましくはアミノ酸178~218を含み得る。本発明に関連して、細胞内CD28ポリペプチドは、本発明の融合タンパク質の細胞内ドメインが配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を含むという条件で、任意の長さであり得る。したがって、本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質のCD28の細
胞内ドメインは、配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28ポリペプチドの細胞内ドメインに由来する配列を含み得る。たとえば、本発明の融合タンパク質に含まれるCD28ポリペプチドは、SEQ ID NO: 12に示されるアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 11に示されたcDNA配列によってコードされる)を含み得る、またはそれか
らなり得る。上述したように、融合タンパク質は好ましくはヒト起源のポリペプチドを含む。したがって、より好ましくは、本明細書に提供される融合タンパク質は、SEQ ID NO:
28に示されるCD28(SEQ ID NO: 27に示されたcDNA配列によってコードされるヒト完全長CD28)のアミノ酸配列のアミノ酸170~220、なおさらに好ましくはアミノ酸180~220を含む。たとえば、本発明の融合タンパク質に含まれるCD28ポリペプチドは、SEQ ID NO: 22
に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO: 21に示されたcDNA配列によってコードされる)を
含み得る、またはそれからなり得る。本発明に関連して、細胞内CD28ポリペプチドは、本発明の融合タンパク質の細胞内ドメインが配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を含むという条件で、任意の長さであり得る。したがって、本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質のCD28の細胞内ドメインは、配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28ポリペプチドの細胞内ドメイン
に由来する配列を含み得る。たとえば、本発明の融合タンパク質に含まれるCD28ポリペプチドは、SEQ ID NO: 12(ネズミ/マウス)または22(ヒト)に示されるアミノ酸配列を
含み得る、またはそれからなり得る。本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質のCD28ポリペプチドはSEQ ID NO: 22のアミノ酸配列を有する。本発明に関連して、融合タンパク質は、配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28ポリペプチドの細胞内ドメインを含む。したがって、本発明に関連して、CD28ポリペプチドはSEQ ID NO: 22(ヒト)のアミノ酸配列を有する。
【0021】
さらに、本明細書に提供されるPD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 14に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO: 13に示されたcDNA配列によってコードされるネズミ/マウスPTM(mPTM)融合タンパク質)を含み得る、またはそれからなり得る。もっとも好ましくは、本明細書に提供される融合タンパク質は、SEQ ID NO: 24に示されるアミノ酸配列(SEQ
ID NO: 23に示されたcDNA配列によってコードされるヒトPTM(hPTM)融合タンパク質)
を含む、またはそれからなる。したがって、本発明は、SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を
有するPD-1-CD28融合タンパク質に関する。
【0022】
さらに、本発明は、SEQ ID NO: 24からなるタンパク質の融合物であって、前記融合タ
ンパク質が、
(a)SEQ ID NO: 18に示されるようなアミノ酸配列との比較において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10まで、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、なおさらに好ましくは1~5、なおさらに好ましくは1または2、またはなおさらに好ましくは1つの置換、欠失または挿入を有し、PD-L1またはPD-L2結合活性を有することを特徴とする配列を含むPD-1ポリペプチド;
(b)SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を有するPD-1の膜貫通ドメイン;および
(c)配列YMNM(SEQ ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28
ポリペプチドの細胞内ドメインに由来する配列を含むCD28ポリペプチド
を有する、タンパク質の融合物に関する。
【0023】
上記のように、結合性PD-L1および/またはPD-L2結合活性とは、天然の完全長PD-1タンパク質(たとえば、SEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO: 3に示されたcDNA配列によってコードされている)を有するタンパク質)と比較して同じ、高められた、ま
たは低下した親和性のいずれかでPD-L1および/またはPD-L2リガンドに結合する能力と定義される。したがって、本発明に関連して、PD-1の細胞外ドメインを含むPD-1ポリペプチドは、天然の完全長PD-1タンパク質と同じ結合力でPD-L1および/またはPD-L2リガンドに結合し得る。または、本発明に関連して、細胞外ドメインを含むPD-1ポリペプチドは、天然の完全長PD-1タンパク質と比較して少なくとも1000、100、50、40、30、20、10、5倍の高さ(すなわち高められた)または低さ(すなわち低下した)の結合親和性でPD-L1およ
び/またはPD-L2リガンドに結合し得る。さらに、PD-L1および/またはPD-L2結合活性を
測定する方法は当業者に周知であり、本明細書中、先に記載されている。
【0024】
本発明に関連して、用語「PD-1」とは、PD-1およびCD279(分化抗原群279)とも知られる、プログラム細胞死タンパク質1をいう。PD-1は、ヒトにおいてPDCD1遺伝子によってコードされるタンパク質である。そのうえ、PD-1は、T細胞およびプロB細胞上で発現する、免疫グロブリン超分子群に属する細胞表面受容体である。PD-1は、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合することが知られている。PD-1およびそのリガンドは、T細胞の活性化を防ぐことにより(それが他方で自己免疫を低下させ、自己寛容を促進する)、免疫系の下方制御において重要な役割を果たす。PD-1の阻害効果は、リンパ節中の抗原特異的T細
胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を促進すると同時に制御性T細胞(サプレッサT細胞)のアポトーシスを減らす二重の機構を介して達成される。ヒトおよびマウスPD-1のタンパク質配列は、本明細書中、SEQ ID NO: 4(SEQ ID NO: 3に示されたcDNA 配列によっ
てコードされる)またはSEQ ID NO: 2(SEQ ID NO: 1に示されたcDNA配列によってコードされる)に示されている。ヒトおよびマウスPD-1の核酸配列は、SEQ ID NO: 3(ヒト)およびSEQ ID NO: 1(ネズミ/マウス)にそれぞれ示されている。
【0025】
本発明に関連して、用語「CD28」とは、受容体「分化抗原群28」をいう。CD28は、T細
胞活性化および生存に必要な共刺激シグナルを提供する、T細胞上で発現するタンパク質
の1つである。CD28を介するT細胞刺激は、T細胞受容体(TCR)に加えて、様々なインターロイキン(たとえばIL-6)の産生のための強いシグナルを提供することができる。CD28は、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)タンパク質の受容体である。ヒトおよびマウスCD28タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書中、SEQ ID NO: 28(SEQ ID NO: 27に示されたcDNA配列によってコードされる)またはSEQ ID NO: 26(SEQ ID NO: 25に示されたcDNA配列によってコードされる)として示されている。ヒトおよびマウスCD28の核酸配列は、SEQ ID
NO: 27(ヒト)およびSEQ ID NO: 25(ネズミ/マウス)にそれぞれ示されている。
【0026】
本発明に関連して、用語「機能的に連結」とは、少なくとも2つのタンパク質配列の間
の、すなわち、PD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む本明細書に記載されるPD-1ポリペプチドと、CD28の細胞内ドメインとの間の機能的連結をいう。本発明に関連して、本発明の融合タンパク質に含まれるPD-1ポリペプチドおよびCD28ポリペプチドは共有結合的に連結し得る。PD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含むPD-1ポリペプチドと、CD28ポリペプチドの細胞内ドメインとの共有結合的連結が、前記PD-1ポリペプチドがそのC末端を介してCD28ポリペプチドのN末端に接続している融合タンパク質を生じさせる。共有結合とは、とりわけ、本明細書に例示される、化合物を介する交差結合によって得られるような、原子間での電子対の共有を特徴とする化学結合である。しかし、本明細書に開示される構築物、すなわちPD-1の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインと、共有結合したCD28ポリペプチドの細胞内ドメインとを含むPD-1ポリペプチドの組換え的製造もまた、想定される。本発明に関連して、「機能的に連結」とは、少なくとも2つのポリペプ
チドの間の、両ポリペプチドがそれらの機能性を保持することを意味する、機能的連結をいう。
【0027】
そのうえ、本明細書に提供される融合タンパク質はリンカー(または「スペーサ」)を含み得る。リンカーとは、通常、アミノ酸20個までの長さを有するペプチドである。した
がって、本発明に関連して、リンカーは、アミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の長さを有し得る。たとえば、本明細書に提供される融合タンパク質は、PD-1ポリペプチドとCD28ポリペプチドとの間にリンカーを含み得る。そのようなリンカーは、融合タンパク質の異なるポリペプチド(すなわちPD-1ポリペプチドおよびCD28ポリペプチド)が独立してフォールディングし、予想どおりに振る舞いやすくすることができるという利点を有する。したがって、本発明に関連して、PD-1ポリペプチドおよびCD28ポリペプチドは一本鎖多機能ポリペプチドに含まれ得る。一本鎖PD-1-CD28融合構築物は、たとえば、(a)PD-1由来のドメインおよび(a)CD28ポリペ
プチドの細胞内ドメインを含む(a)ポリペプチドからなり得る。前記ドメインはポリペ
プチドリンカーによって接続され、前記リンカーは、前記PD-1由来のドメインと前記細胞内CD28ポリペプチドドメインとの間に配置されている。
【0028】
本発明に関連して、用語「N末端」は、ポリペプチドのアミノ末端、NH2末端、N末端ま
たはアミン末端と互換可能に使用され得る。この用語は、タンパク質またはポリペプチドの自然開始を意味する。
【0029】
本発明に関連して、用語「C末端」は、ポリペプチドのカルボキシ末端、カルボキシル
末端、カルボキシ末端、C末端テール、C終末端またはCOOH末端と互換可能に使用され得る。この用語は、タンパク質またはポリペプチドの自然終了を意味する。
【0030】
本明細書中の用語「細胞外ドメイン」は、特にPD-1の細胞外ドメインに関して、膜から細胞の外に突き出る受容体(すなわちPD-1)の部分をいう。細胞外ドメインの活動は、特定のリガンド(たとえばPD-L1またはPD-L2)に結合することである。本発明に関連して、PD-1-CD28融合タンパク質の細胞外ドメインは、本明細書中、先に記載したように、SEQ ID NO: 18のアミノ酸/ポリペプチド配列、またはSEQ ID NO: 18との比較において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10までの置換、欠失または挿入を有しかつPD-L1またはPD-L2結合活性を有することを特徴とするポリペプチド配列を有する。本明細書中の用語「膜貫通ドメイン」は、特にPD-1の膜貫通ドメインに関して、細胞(たとえばT細胞)の膜内に自
然に位置する受容体(すなわちPD-1)の部分をいう。本発明に関連して、PD-1の膜貫通ドメインは、本明細書中、先に記載したように、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列またはSEQ ID NO: 20との比較において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10までの置換、欠失または
挿入を有し、同じ、または好ましくは高められシグナル伝達活性を有することを特徴とするアミノ酸配列を有する。本明細書中の用語「細胞内ドメイン」は、特にCD28の細胞内ドメインに関して、受容体(すなわちCD28)の細胞質内ドメインをいう。本発明に関連して、細胞内ドメインとは、SEQ ID NO: 22に示されたアミノ酸配列のような、配列YMNM(SEQ
ID NO: 29)および/またはPYAP(SEQ ID NO: 30)を有するCD28ポリペプチドの細胞内
ドメインに由来するアミノ酸配列をいう。細胞内ドメインは細胞の内部と相互作用する。
【0031】
本発明の融合タンパク質の製造は当技術分野において一般に公知である。たとえば、本明細書に記載される融合タンパク質は、融合遺伝子の遺伝子操作によって創製され得る。これは一般に、第一のポリペプチド(すなわちPD-1ポリペプチド)をコードするcDNA配列から停止コドンを除去し、次いで、ライゲーションまたはオーバーラップエクステンションPCRによって第二のポリペプチド(すなわちCD28ポリペプチド)のcDNA配列をフレーム
単位で付加する工程を含む。次いで、そのDNA配列を細胞によって単一のタンパク質とし
て発現させることができる。たとえば、本発明の融合タンパク質は、例示的な添付の実施例に記載されるように、オーバーラップPCRまたはレトロウイルスベクター(たとえばpMP71ベクター)への組換え発現クローニングによって産生することができる。
【0032】
同じく本発明によって包含されるものは、(a)本発明の融合タンパク質をコードする
核酸分子である。
【0033】
用語「核酸分子」とは、ポリヌクレオチドに含まれるプリンおよびピリミジン塩基を含み、前記塩基が核酸分子の一次構造を表す塩基の配列をいう。本明細書中の用語「核酸分子」は、DNA、cDNA、ゲノムDNA、RNA、DNAの合成形態およびこれらの分子の2つ以上を含
む混合重合体を含む。加えて、用語「核酸分子」は、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む。そのうえ、本明細書に記載される「核酸分子」は、当業者によって容易に理解されるように、非天然または誘導体化ヌクレオチド塩基を含有し得る。本発明のヒトおよびマウス融合タンパク質をコードする例示的な核酸分子がSEQ ID NO: 23(ヒト)またはSEQ ID NO: 13(マウス)に示されている。
【0034】
本発明の核酸分子は制御配列の制御下にあり得る。たとえば、本発明の融合タンパク質の誘発発現を可能にするプロモータ、転写エンハンサおよび/または配列を用い得る。本発明に関連して、核酸分子は、構成的または誘発性プロモータの制御下で発現する。適当なプロモータは、たとえば、CMVプロモータ(Qin et al., PLoS One 5(5) (2010), e10611)、UBCプロモータ(Qin et al., PLoS One 5(5) (2010), e10611)、PGK(Qin et al., PLoS One 5(5) (2010), e10611)、EF1Aプロモータ(Qin et al., PLoS One 5(5) (2010), e10611)、CAGGプロモータ(Qin et al., PLoS One 5(5) (2010), e10611)、SV40プロモータ(Qin et al., PLoS One 5(5) (2010), e10611)、COPIAプロモータ(Qin et al.,
PLoS One 5(5) (2010), e10611)、ACT5Cプロモータ(Qin et al., PLoS One 5(5) (2010), e10611)、TREプロモータ(Qin et al., PLoS One. 5(5) (2010), e10611)、Oct3/4プロモータ(Chang et al., Molecular Therapy 9 (2004), S367-S367(doi: 10.1016/j.ymthe.2004.06.904))またはNanogプロモータ(Wu et al., Cell Res. 15(5) (2005), 317-24)である。
【0035】
用語「制御配列」とは、それらがライゲートされるコード配列の発現を起こさせるために必要であるDNA配列をいう。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存して異なる
。原核生物において、制御配列は概して、プロモータ、リボソーム結合部位およびターミネータを含む。真核生物において、概して、制御配列は、プロモータ、ターミネータ、場合によってはエンハンサ、トランス活性化因子または転写因子を含む。用語「制御配列」は、少なくとも、発現のためにその存在が必要であるすべての成分を含むことを意図したものであり、さらなる好都合な成分をも含み得る。
【0036】
さらに、さらなる目的のために、核酸分子が、たとえば、チオエステル結合および/またはヌクレオチド類似物質を含んでもよいことが想定される。前記修飾は、細胞中のエンドおよび/またはエキソヌクレアーゼに対する核酸分子の安定化に有用であり得る。前記核酸分子は、細胞中で前記核酸分子の転写を可能にするキメラ遺伝子を含有する適切なベクターによって転写され得る。また、この点において、このようなポリヌクレオチドは「遺伝子ターゲッティング」または「遺伝子治療」手法に使用されることができることが理解されよう。別の態様において、前記核酸分子は標識される。核酸検出方法は、たとえば、サザンおよびノーザンブロッティング、PCRまたはプライマー伸長など、当技術分野に
おいて周知である。この態様は、遺伝子治療法中に上記核酸分子の導入成功を確認するためのスクリーニング法として有用であり得る。前記核酸分子は、前述の核酸分子のいずれかを単独でまたは組み合わせのいずれかで含む、組換え的に産生されたキメラ核酸分子であってもよい。本発明に関連して、核酸分子はベクターの一部である。
【0037】
したがって、本発明はまた、本発明に記載された核酸分子を含むベクターに関する。本明細書中の語「ベクター」とは、それが導入された宿主細胞(すなわち形質導入細胞)中で自律的に複製することができる円形または直線形の核酸分子をいう。本明細書の中で使用される「ベクター」は、特に、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージおよび遺伝子工学において一般に使用される他のベクターをいう。好ましい態様において
、本発明のベクターは、細胞、好ましくはT細胞の形質転換に適している。したがって、
本発明の1つの局面において、本明細書に提供されるベクターは発現ベクターである。発
現ベクターは文献に広く記載されている。特に、本明細書に提供されるベクターは、好ましくは、組換えポリヌクレオチド(すなわち、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子)および発現するヌクレオチド配列に機能的に連結した発現制御配列を含む。本明細書に提供されるベクターは、好ましくは、プロモータをさらに含む。本明細書に記載されるベクターはまた、選択マーカー遺伝子および宿主(すなわち形質導入細胞)中での複製を保証する複製起点を含み得る。そのうえ、本明細書に提供されるベクターはまた、転写のための終結シグナルを含んでもよい。プロモータと終結シグナルとの間には、好ましくは、発現させることを望む核酸分子(たとえば、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子)の挿入を可能にする少なくとも1つの制限部位またはポリリンカーがある。当業
者は、このような挿入を実行に移す方法を知っている。本発明のベクターを形成するために本発明の核酸分子を含むのに適したベクターの例は当技術分野において公知である。たとえば、本発明に関連して、適当なベクターは、本発明の核酸分子(すなわち、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子)を組み込むコスミド、プラスミド(たとえば、裸の、またはリポソームに含まれた)およびウイルス(たとえばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含む。好ましくは、本発明のベクターはウイルスベクターである。より好ましくは、本発明のベクターはレンチウイルスベクターであり、なおさらに好ましくは、本発明のベクターはレトロウイルスベクター(たとえばpMP71ベクター)である。したがって、本発明に関連して、ベクターはレンチウイ
ルスベクターまたはレトロウイルスベクターである。本発明のベクターは、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質をコードする核酸分子の構成的または条件的発現を可能にする。こ
れに関連して、本発明の融合タンパク質の発現に適したレトロウイルスベクターは、SAMEN CMV/SRa(Clay et al., J. Immunol. 163 (1999), 507-513)、LZRS-id3-IHRES(Heemskerk et al., J. Exp. Med. 186 (1997), 1597-1602)、FeLV(Neil et al., Nature 308
(1984), 814-820)、SAX(Kantoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 (1986), 6563-6567)、pDOL(Desiderio, J. Exp. Med. 167 (1988), 372-388)、N2(Kasid et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990), 473-477)、LNL6(Tiberghien et al., Blood 84 (1994), 1333-1341)、pZipNEO(Chen et al., J. Immunol. 153 (1994), 3630-3638)、LASN(Mullen et al., Hum. Gene Ther. 7 (1996), 1123-1129)、pG1XsNa(Taylor et al., J. Exp. Med. 184 (1996), 2031-2036)、LCNX(Sun et al., Hum. Gene Ther. 8 (1997), 1041-1048)、SFG(Gallardo et al., Blood 90 (1997)、LXSN(Sun et al., Hum. Gene Ther. 8 (1997), 1041-1048)、SFG(Gallardo et al., Blood 90 (1997),
952-957)、HMB-Hb-Hu(Vieillard et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997), 11595-11600)、pMV7(Cochlovius et al., Cancer Immunol. Immunother. 46 (1998), 61-66)、pSTITCH(Weitjens et al., Gene Ther 5 (1998), 1195-1203)、pLZR(Yang et al., Hum. Gene Ther. 10 (1999), 123-132)、pBAG(Wu et al., Hum. Gene Ther. 10 (1999), 977-982)、rKat.43.267bn(Gilham et al., J. Immunother. 25 (2002), 139-151)、pLGSN(Engels et al., Hum. Gene Ther. 14 (2003), 1155-1168)、pMP71(Engels
et al., Hum. Gene Ther. 14 (2003), 1155-1168)、pGCSAM(Morgan et al., J. Immunol. 171 (2003), 3287-3295)、pMSGV(Zhao et al., J. Immunol. 174 (2005), 4415-4423)またはpMX(de Witte et al., J. Immunol. 181 (2008), 5128-5136)のように、当
技術分野において公知である。さらに、本発明に関連して、本発明の融合タンパク質の発現に適したレンチウイルスベクターは、たとえば、PL-SINレンチウイルスベクター(Hotta et al., Nat Methods. 6(5) (2009), 370-376)、p156RRL-sinPPT-CMV-GFP-PRE/NheI(Campeau et al., PLoS One 4(8) (2009), e6529)、pCMVR8.74(Addgeneカタログ番号22036)、FUGW(Lois et al., Science 295(5556)(2002), 868-872)、pLVX-EF1(Addgene
カタログ番号64368)、pLVE(Brunger et al., Proc Natl Acad Sci USA 111(9) (2014),
E798-806)、pCDH1-MCS1-EF1(Hu et al., Mol Cancer Res. 7(11) (2009), 1756-1770
)、pSLIK(Wang et al., Nat Cell Biol. 16(4) (2014), 345-356)、pLJM1(Solomon e
t al., Nat Genet. 45(12) (2013), 1428-30)、pLX302(Kang et al., Sci Signal. 6(287) (2013), rs13)、pHR-IG(Xie et al., J Cereb Blood Flow Metab. 33(12) (2013),
1875-85)、pRRLSIN(Addgeneカタログ番号62053)、pLS (Miyoshi et al., J Virol. 72(10)(1998), 8150-8157)、pLL3.7(Lazebnik et al., J Biol Chem. 283(7)(2008), 11078-82)、FRIG(Raissi et al., Mol Cell Neurosci. 57(2013), 23-32)、pWPT (Ritz-Laser et al., Diabetologia. 46(6)(2003), 810-821)、pBOB (Marr et al., J Mol
Neurosci. 22(1-2) (2004), 5-11)またはpLEX(Addgeneカタログ番号27976)である。
【0038】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子によってコードされた融合タンパク質を発現する形質導入細胞に関する。したがって、本発明に関連して、形質導入細胞は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子または本発明の融合タンパク質を発現する本発明のベクターを含み得る。
【0039】
本発明に関連して、用語「形質導入細胞」とは、遺伝子的に改変された細胞(すなわち、核酸分子が意図的に導入されている細胞)をいう。本明細書に提供される形質導入細胞は本発明のベクターを含み得る。好ましくは、本明細書に提供される形質導入細胞は、本発明の核酸分子(融合タンパク質をコードする)および/または本発明のベクターを含む。本発明の形質導入細胞は、異物性DNA(すなわち、細胞に導入された核酸分子)を一過
的または安定的に発現する細胞であり得る。特に、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子は、レトロウイルスまたはレンチウイルス形質導入を使用することによって細胞のゲノムに安定的に組み込むことができる。mRNA形質移入を使用することにより、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を一過的に発現させ得る。好ましくは、本明細書に提供される形質導入細胞は、ウイルスベクター(たとえばレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター)を介して核酸分子を細胞に導入することによって遺伝子的に改変されている。発現は、使用される系に依存して、構成的または構造的であることができる。PD-1-CD28融合タンパク質は、本明細書に提供される形質導入細胞の表面上に発現
する。融合タンパク質のPD-1ポリペプチドの細胞外の割合は細胞表面上で検出することができるが、一方で、細胞内(PD-1ポリペプチドの膜貫通およびたとえば細胞内ドメインの一部)は膜に結合しており、細胞表面上で検出することができない。PD-1ポリペプチドの細胞外ドメインの検出は、PD-1ポリペプチドのこの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を使用することによって実施することができる。このような抗体の例は当技術分野において周知であり、クローンEH12.2H7(BioLegendから市販、カタログ番号329911)、クロ
ーンJ116(eBioscienceから市販、カタログ番号16-9989-80)、J105(eBioscienceから市販、カタログ番号8012-2799)またはMiH4(eBioscienceから市販、カタログ番号14-9969
)を含む。細胞外ドメインは、これらの抗体を使用して、フローサイトメトリーまたは顕微鏡検査法によって検出することができる。本発明の形質導入細胞は、たとえば、CD4+-T細胞、CD8+-T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー(NK)T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞、骨髄細胞または間葉系幹細胞であり得る。好まし
くは、本明細書に提供される形質導入細胞はT細胞(たとえば自己由来T細胞)であり、より好ましくは、形質導入細胞はCD8+T細胞である。したがって、本発明に関連して、形質
導入細胞はCD8+T細胞である。さらに、本発明に関連して、形質導入細胞は自己由来T細胞である。したがって、本発明に関連して、形質導入細胞は、好ましくは、自己由来CD8+T
細胞である。対象から単離された自己由来細胞(たとえばT細胞)の使用に加えて、本発
明はまた、同種異系細胞の使用を包含する。したがって、本発明に関連して、形質導入細胞はまた、同種異系CD8+T細胞のような同種異系細胞であってもよい。代替的または追加
的に、本発明は、自己由来CD4+T細胞または同種異系CD4+T細胞であり得る形質導入CD4+T
細胞を提供する。代替的または追加的に、本発明は、形質導入CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞の集団(形質導入CD4+T細胞を含む集団、形質導入CD8+T細胞を含む集団ならびに形質導入CD4+T細胞および形質導入CD8+T細胞の両方を含む集団を含むが、これらに限定されない)であって、形質導入細胞が自己由来および/または同種異系であり得る集団(た
とえば、集団は、自己由来細胞のみを含んでもよいし、同種異系細胞のみを含んでもよいし、または自己由来細胞と同種異系細胞との組み合わせを含んでもよい)を提供する。本明細書に記載される本発明のT細胞の集団は、形質導入T細胞および非形質導入T細胞の両
方を含み得る。
【0040】
同種異系細胞の使用は、異物性抗原提示細胞(APC)がMHC分子クラスIまたはクラスII
(特定の応答細胞集団、すなわちT細胞集団がそれに制限される)を発現するという条件
で、細胞、好ましくはT細胞が、APCによって提示された特異抗原エピトープを、T細胞に
よって認識される抗原エピトープとともに、認識することができるという事実に基づく。したがって、用語「同種異系」とは、たとえば、形質導入細胞を発現する本明細書に記載されるPD-1-CD28融合タンパク質によって処置される個体/対象に適合性のヒト白血球抗
原(HLA)である無関係なドナー個体/対象に由来する細胞をいう。自己由来細胞とは、
本明細書に記載される形質導入細胞で処置される対象から、本明細書中、先に記載したように単離/取得される細胞をいう。
【0041】
上記のように、本発明の形質導入細胞は、本明細書に提供される融合タンパク質を発現する核酸分子を形質導入されている。腫瘍浸潤リンパ球細胞(TIL、Dudley et al., J Clin Oncol. 31(17) (2013), 2152-2159(doi: 10.1200/JCO.2012.46.6441))または腫瘍
特異性に関して患者の末梢血からフローサイトメトリーによって選別された抗原特異細胞(Hunsucker et al., Cancer Immunol Res. 3(3) (2015), 228-235(doi: 10.1158/2326-6066.CIR-14-0001))のような、自然な抗腫瘍特異性を有する細胞の場合、本明細書に記載された細胞は、本発明の融合タンパク質のみを形質導入されるであろう。しかし、本発明の形質導入細胞は、さらなる核酸分子、たとえばT細胞受容体またはキメラ抗原受容体
をコードする核酸分子を同時に形質導入されてもよい。
【0042】
本発明にしたがって、用語「T細胞受容体」は当技術分野において一般に公知である。
特に、本明細書中の用語「T細胞受容体」は、以下の3つの基準が満たされる限り、任意のT細胞受容体をいう:(i)腫瘍特異性、(ii)(大部分の)腫瘍細胞の認識、すなわち(大部分の)腫瘍細胞中で抗原またはターゲットが発現するべきであること、および(iii
)TCRが、処置を受ける対象のHLAタイプに合致すること。これに関連して、上述の3つの
基準を満たす適当なT細胞受容体は、WT1(ウィルムス(Wilms)腫瘍特異抗原1;配列情報に関しては、たとえばSugiyama, Japanese Journal of Clinical Oncology 40 (2010), 377-87を参照)、MAGE(配列に関しては、たとえばWO-A1 2007/032255およびPCT/US2011/57272を参照)、SSX(米国特許仮出願第61/388,983号)、NY-ESO-1(配列情報に関しては
、たとえばPCT/GB2005/001924を参照)および/またはHER2neu(配列情報に関しては、WO-A1 2011/0280894を参照)を認識する受容体のように、当技術分野において公知である。
【0043】
用語「キメラ抗原受容体」または「キメラ受容体」は当技術分野において公知であり、スペーサ配列によってCD3zおよびCD28のシグナルドメインに融合された一本鎖抗体ドメインの細胞外部分で構成された受容体をいう。ここでもまた、このキメラ抗原受容体は、腫瘍特異性を提供し、大部分の腫瘍細胞の認識を可能にするはずである。適当なキメラ受容体は、抗EGFRv3-CAR(配列に関しては、WO-A1 2012/138475を参照)、抗CD22-CAR(WO-A1
2013/059593を参照)、抗BCMA-CAR(WO-A1 2013/154760を参照)、抗CD19-CAR(WO-A1 2012/079000またはUS-A1 2014/0271635を参照)、抗CD123-CAR(US-A1 2014/0271582を参
照)、抗CD30-CAR(WO-A1 2015/028444を参照)または抗メソテリン-CAR(WO-A1 2013/142034を参照)を含む。
【0044】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質を発現する形質導入細胞を産生する方法であって、本発明のベクターを細胞に形質導入する工程、形質導入細胞を、前記形質導入細胞の中または上での融合タンパク質の発現が可能な条件下、培養する工程、および前記形質導
入細胞を回収する工程を含む方法に関する。
【0045】
本発明に関連して、本発明の形質導入細胞は、好ましくは、以下のプロセスによって製造される:対象(好ましくはヒト患者)から細胞(たとえばT細胞)を単離/取得する。
患者またはドナーから細胞(たとえばT細胞)を単離/取得する方法は当技術分野におい
て周知であり、本発明に関連して、患者またはドナーからの細胞(たとえばT細胞)は、
血液抜き取りまたは骨髄の取り出しによって単離し得る。患者の試料として細胞を単離/取得したのち、細胞(たとえばT細胞)を試料の他の成分から分離する。試料から細胞(
たとえばT細胞)を分離するためのいくつかの方法が公知であり、非限定的に、たとえば
、患者からまたはドナーからの末梢血試料から細胞を得るための白血球搬出法、FACSort
装置を使用することによって細胞を単離/取得する方法、生細胞を宿す新鮮な生検標本から手またはマイクロマニピュレータによって死細胞の生存を選び出す方法(たとえば、Dudley, Immunother. 26 (2003), 332-342;Robbins, Clin. Oncol. 29(2011), 917-924またはLeisegang, J. Mol. Med. 86 (2008), 573-58を参照)がある。この段落に開示され
、そうでなければ本明細書に開示される方法およびプロセスは、好ましくは、CD8+T細胞
に関して実施されるが、CD4+T細胞のような他のT細胞タイプにも適用可能である。
【0046】
本明細書中の用語「新鮮な患者生検材料」とは、外科的または任意の他の公知の手段によって対象から取り出された組織(好ましくは腫瘍組織)ならびに腫瘍組織/腫瘍細胞からの腫瘍細胞株または(単離)細胞をいう。単離/取得された細胞T細胞(たとえばCD8+T細胞)は、その後、たとえば、抗CD3抗体を使用することにより、抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体を使用することにより、および/または抗CD3抗体、抗CD28抗体およびイ
ンターロイキン-2(IL-2)を使用することにより、培養し、増殖させる(たとえば、Dudley, Immunother. 26 (2003), 332-342またはDudley, Clin. Oncol. 26 (2008), 5233-5239を参照)。
【0047】
その後の工程において、細胞(たとえばT細胞)を、当技術分野において公知の方法に
よって人工的/遺伝子的に改変/形質導入する(たとえば、Lemoine, J Gene Med 6 (2004), 374-386を参照)。細胞(たとえばT細胞)を形質導入する方法は当技術分野において公知であり、非限定的に、核酸または組換え核酸を形質導入する場合、たとえばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、カチオン性脂質法またはリポソーム法がある。形質導入される核酸は、市販の形質移入試薬、たとえばリポフェクタミン(Invitrogen製、カタログ番号11668027)を使用することにより、従来的かつ効率的に形質導入することができる。ベクターを使用する場合、ベクターは、それがプラスミドベクター(すなわち、ウイルスベクターではないベクター)である限り、上述の核酸と同様にして形質導入することができる。本発明に関連して、細胞(たとえばT細胞)に形質導入する方法は、レ
トロウイルスまたはレンチウイルスT細胞形質導入およびmRNA形質移入を含む。「mRNA形
質移入」とは、形質導入される細胞中で関心対象のタンパク質、たとえば本発明の場合、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質を一過的に発現させるための、当業者に周知の方法を
いう。簡潔にいうと、エレクトロポレーションシステム(たとえばGene Pulser、Bio-Rad)を使用することにより、本発明の融合タンパク質をコードするmRNAを使用して細胞を電気穿孔し、その後、上記のような標準的な細胞(たとえばT細胞)培養プロトコルによっ
て培養し得る(Zhao et al., Mol Ther. 13(1) (2006), 151-159を参照)。好ましくは、本発明の形質導入細胞は、T細胞(もっとも好ましくはCD8+T細胞)であり、レンチウイルスまたはもっとも好ましくはレトロウイルスT細胞形質導入によって産生される。
【0048】
これに関連して、細胞(たとえばT細胞)を形質導入するのに適したレトロウイルスベ
クターは、SAMEN CMV/SRa(Clay et al., J. Immunol. 163 (1999), 507-513)、LZRS-id3-IHRES(Heemskerk et al., J. Exp. Med. 186 (1997), 1597-1602)、FeLV(Neil et al., Nature 308 (1984), 814-820)、SAX(Kantoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. US
A 83 (1986), 6563-6567)、pDOL(Desiderio, J. Exp. Med. 167 (1988), 372-388)、N2(Kasid et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990), 473-477)、LNL6(Tiberghien et al., Blood 84 (1994), 1333-1341)、pZipNEO(Chen et al., J. Immunol. 153 (1994), 3630-3638)、LASN(Mullen et al., Hum. Gene Ther. 7 (1996), 1123-1129)、pG1XsNa(Taylor et al., J. Exp. Med. 184 (1996), 2031-2036)、LCNX(Sun et al., Hum. Gene Ther. 8 (1997), 1041-1048)、SFG(Gallardo et al., Blood 90 (1997)、LXSN(Sun et al., Hum. Gene Ther. 8 (1997), 1041-1048)、SFG(Gallardo et al., Blood 90 (1997), 952-957)、HMB-Hb-Hu(Vieillard et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997), 11595-11600)、pMV7(Cochlovius et al., Cancer Immunol. Immunother.
46 (1998), 61-66)、pSTITCH(Weitjens et al., Gene Ther 5 (1998), 1195-1203)、pLZR(Yang et al., Hum. Gene Ther. 10 (1999), 123-132)、pBAG(Wu et al., Hum. Gene Ther. 10 (1999), 977-982)、rKat.43.267bn(Gilham et al., J. Immunother. 25 (2002), 139-151)、pLGSN(Engels et al., Hum. Gene Ther. 14 (2003), 1155-1168)
、pMP71(Engels et al., Hum. Gene Ther. 14 (2003), 1155-1168)、pGCSAM(Morgan et al., J. Immunol. 171 (2003), 3287-3295)、pMSGV(Zhao et al., J. Immunol. 174 (2005), 4415-4423)またはpMX(de Witte et al., J. Immunol. 181 (2008), 5128-5136)のように、当技術分野において公知である。本発明に関連して、細胞(たとえばT細胞
)を形質導入するのに適したレンチウイルスベクターは、たとえば、PL-SINレンチウイルスベクター(Hotta et al., Nat Methods. 6(5) (2009), 370-376)、p156RRL-sinPPT-CMV-GFP-PRE/NheI(Campeau et al., PLoS One 4(8) (2009), e6529)、pCMVR8.74(Addgeneカタログ番号22036)、FUGW(Lois et al., Science 295(5556)(2002), 868-872)、pLVX-EF1(Addgeneカタログ番号64368)、pLVE(Brunger et al., Proc Natl Acad Sci USA
111(9) (2014), E798-806)、pCDH1-MCS1-EF1(Hu et al., Mol Cancer Res. 7(11) (2009), 1756-1770)、pSLIK(Wang et al., Nat Cell Biol. 16(4) (2014), 345-356)、pLJM1(Solomon et al., Nat Genet. 45(12) (2013), 1428-30)、pLX302(Kang et al., Sci Signal. 6(287) (2013), rs13)、pHR-IG(Xie et al., J Cereb Blood Flow Metab. 33(12) (2013), 1875-85)、pRRLSIN(Addgeneカタログ番号62053)、pLS (Miyoshi et al., J Virol. 72(10)(1998), 8150-8157)、pLL3.7(Lazebnik et al., J Biol Chem. 283(7)(2008), 11078-82)、FRIG(Raissi et al., Mol Cell Neurosci. 57(2013), 23-32)、pWPT(Ritz-Laser et al., Diabetologia. 46(6)(2003), 810-821)、pBOB (Marr
et al., J Mol Neurosci. 22(1-2) (2004), 5-11)またはpLEX(Addgeneカタログ番号27976)である。
【0049】
本発明の形質導入細胞(1つ/複数)は、好ましくは、その自然環境の外で、制御され
た条件下で増殖させる。特に、用語「培養」とは、多細胞真核生物(好ましくはヒト患者)に由来する細胞(たとえば本発明の形質導入細胞)をインビトロで増殖させることをいう。細胞培養は、本来の組織源から分離された細胞を生きたまま維持するための実験技術である。本明細書中、本発明の形質導入細胞は、前記形質導入細胞の中または上での本発明の融合タンパク質の発現が可能な条件の下で培養される。導入遺伝子の(すなわち本発明の融合タンパク質の)発現を可能にする条件は当技術分野において一般的に公知であり、たとえば、アゴニスト抗CD3および抗CD28抗体ならびにサイトカイン、たとえばインタ
ーロイキン2(IL-2)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン12(IL-12)およ
び/またはインターロイキン15(IL-15)の添加を含む。培養された形質導入細胞中の本
発明の融合タンパク質の発現ののち、培養物(すなわち培地)から形質導入細胞を回収(すなわち再抽出)する。
【0050】
同じく本発明に包含されるものは、本発明の方法によって得られる本発明の核酸分子によってコードされた融合タンパクを発現する形質導入細胞である。
【0051】
さらに、本発明は、本発明の融合タンパクを発現する形質導入細胞または上記に開示さ
れた方法によって得られる/製造される形質導入細胞を含む薬学的組成物/医薬を提供する。本発明に関連して、前記組成物は、任意で、担体、安定剤および/または賦形剤の適当な配合をさらに含む薬学的組成物である。
【0052】
本発明にしたがって、用語「医薬」は、用語「薬学的組成物」と互換可能に使用され、患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物をいう。本発明に関連して、医薬/薬学的組成物は、形質導入細胞が単離/取得された元の患者に投与されるべきである。本発明に関連して、患者はヒト患者を指す。さらに、本発明に関連して、患者は、PD-1のリガンド(すなわちPD-L1および/またはPD-L2)を発現することを特徴とする疾患を有する。本発明に関連して、PD-1のリガンド(すなわちPD-L1および/またはPD-L2)を発現することを特徴とする疾患は、当技術分野において公知であり、たとえば、肺がん(Dong et al., Nat Med. 8(8) (2002), 793-800)、卵巣がん(Dong et al., Nat Med. 8(8) (2002),
793-800)、黒色腫(Dong et al., Nat Med. 8(8) (2002), 793-800)、結腸がん(Dong
et al., Nat Med. 8(8) (2002), 793-800)、胃がん(Chen et al., World J Gastroenterol. 9(6) (2003), 1370-1373)、腎細胞がん(Thompson et al., 104(10) (2005), 2084-91)、食道がん(Ohigashi et al., 11(8) (2005), 2947-2953)、神経膠腫(Wintterle et al., Cancer Res. 63(21) (2003), 7462-7467)、尿路上皮がん(Nakanishi et al., Cancer Immunol Immunother. 56(8) (2007), 1173-1182)、網膜芽細胞種(Usui et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 47(10) (2006), 4607-4613)、乳がん(Ghebeh et al.,
Neoplasia 8(3) (2006), 190-198)、非ホジキンリンパ腫(Xerri et al., Hum Pathol.
39(7) (2008), 1050-1058)、膵臓がん(Geng et al., J Cancer Res Clin Oncol. 134(9) (2008), 1021-1027)、ホジキンリンパ腫(Yamamoto et al., Blood 111(6) (2008), 3220-3224)、骨髄腫(Liu et al., Blood 110(1) (2007), 296-304)、肝細胞がん(Gao
et al., Clin Cancer Res. 15(3) (2009), 971-979)、白血病(Kozako et al., Leukemia 23(2) (2009), 375-382)、子宮頸がん(Karim et al., Clin Cancer Res. 15(20) (2009), 6341-6347)、胆管がん(Ye et al., J Surg Oncol. 100(6) (2009), 500-504)、口腔がん(Malaspina et al., Cancer Immunol Immunother. 60(7) (2011), 965-974)、頭頸部がん(Badoual et al., Cancer Res. 73(1) (2013), 128-138)または中皮腫(Mansfield et al., J Thorac Oncol. 9(7) (2014), 1036-1040)を含む。
【0053】
本発明に関連して、本発明の形質導入細胞または本発明の方法によって産生された形質導入細胞を含む薬学的組成物は併用介入処置プロトコルで投与されるべきである。そのような介入処置プロトコルの例は、鎮痛薬の投与、化学療法剤の投与、疾患またはその症候の外科的処置を含むが、これらに限定されない。したがって、本明細書に開示される処置レジメンは、本明細書に記載される融合タンパク質を発現する形質導入細胞の投与を、本明細書に記載される、または当技術分野において公知である、疾患またはその症候の処置または予防に適した0、1つまたは1つより多い処置プロトコルとともに包含する。
【0054】
したがって、本発明に関連して、本発明の融合タンパク質を発現する形質導入細胞は、増殖性疾患、好ましくはがんの処置に使用することができる。より好ましくは、本発明の融合タンパク質を発現する、本明細書に提供される形質導入細胞は、腫瘍細胞がPD-1のリガンド(すなわちPD-L1および/またはPD-L2)を発現する疾患(好ましくはがん)の処置に使用される。本発明の融合タンパク質を発現する、本明細書に提供される形質導入細胞によって好ましくは処置されるがんのタイプは、本明細書中、先に記載されている。したがって、本明細書に記載される核酸分子によってコードされる本発明の融合タンパク質を発現する形質導入細胞は、腫瘍細胞がPD-1のリガンド(すなわちPD-L1および/またはPD-L2)を発現する任意の疾患を処置する方法において使用することができる。処置法は、好ましくは、血液抜き取りまたは骨髄の取り出しによる細胞の単離/捕集のような上記方法による細胞捕集を含む。その後、単離された細胞を、ウイルスによって、または融合受容体を用いるmRNAエレクトロポレーションによって改変する(そして、任意で、さらなる核
酸分子、たとえばT細胞受容体またはキメラ受容体をコードする核酸分子を同時形質導入
する)。細胞増殖後、先に概説したように、細胞を経静脈的に患者に戻す。そのうえ、本発明は、対象から細胞(たとえばT細胞、好ましくはCD8+T細胞)を単離する工程、前記単離された細胞に、本明細書中、先に記載したような、PD-1-CD28融合タンパク質をコード
する核酸を形質導入する工程、前記単離された細胞に、上記のようなさらなる核酸分子、たとえばT細胞受容体またはキメラ受容体をコードする核酸分子を同時形質導入する工程
、形質導入細胞を増殖させる工程、および形質導入細胞を前記対象に戻す工程を含む、疾患処置法を提供する。本明細書に記載されるこの処置法は、たとえば週に一度または二度、繰り返されてもよい。
【0055】
用語「処置」、「処置する」などは、本明細書中、概して、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために使用される。効果は、疾患またはその症候を完全もしくは部分的に予防するという点で予防的であってもよいし、および/または疾患および/または疾患に起因する有害作用を部分的または完全に治癒するという点で治療的であってもよい。本明細書の中で使用される用語「処置」は、対象における疾患の任意の処置を包含し、(a)増殖性疾患(好ましくはがん)が、その疾患にかかりやすい対象
において発生することを予防および/または改善すること;(b)がん進行の抑制のよう
な、疾患を抑制する、すなわちその発症を阻止すること;または(c)がんの退縮のよう
な、疾患を軽減すること、すなわち疾患の退行を生じさせることを含む。好ましくは、本明細書の中で使用される用語「処置」は、診断されたがんの治療のような、すでに発現している疾患への医学的介入をいう。
【0056】
本発明に関して、「対象」(または「患者」)は脊椎動物であり得る。本発明に関連して、用語「対象」は、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳動物および他の生物を含む。したがって、本明細書に提供される方法は、ヒトの治療および獣医学的用途の両方に適用可能である。したがって、前記対象は、マウス、ラット、ハムスタ、ウサギ、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、ニワトリ、ヒツジ、ウシ種、ウマ、ラクダまたは霊長類のような動物であってもよい。好ましくは、対象は哺乳動物である。もっとも好ましくは、対象はヒトである。
【0057】
上記のように、本発明は、本発明の融合タンパク質(本発明の核酸分子によってコードされる)を発現する、本明細書に提供される形質導入細胞を含む「薬学的組成物」に関する。前記薬学的組成物はさらに、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含み得る。適当な薬学的担体の例は、当技術分野において周知であり、リン酸緩衝食塩水、水、エマルション、たとえば油/水型エマルション、様々なタイプの湿潤剤、無菌溶液などを含む。担体は、レシピエントの血液と等張である溶液であってもよい。そのような担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化することができる。投薬レジメンは主治医および臨床因子によって決定される。医療技術分野において周知であるように、任意の患者のための投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、一般的健康状態ならびに同時並行に投与される他の薬物をはじめとする多くの要因に依存する。たとえば、本発明の薬学的組成物は、体重1kgあたり
細胞104~1010個、好ましくは体重1kgあたり細胞105~106個の用量で対象に投与され得る。本発明に関連して、薬学的組成物は、投与される細胞のアップスケーリングが、体重1kgあたり細胞約105~106個の対象用量から出発し、次いで体重1kgあたり細胞1010個の用量まで増えるようなやり方で投与され得る。本発明の薬学的組成物は、静脈内投与(たとえば静脈内注射による)され得るが、腹腔内、胸腔内、髄腔内、皮下または結節内投与されてもよい。静脈内担体は流体および栄養補充剤、電解質補充剤(たとえばリンゲルデキストロースに基づくもの)などを含み、また、防腐剤および他の添加物、たとえば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどが本発明の薬学的組成物に含まれてもよい。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、たとえば、免疫エフェクター細胞、細胞増殖または細胞刺激のための活性化シグナルを提供することができる分子とともに併用療法で使用されてもよい。前記分子は、たとえば、T細胞のためのさらなる一次活性化シグナル(たとえば、さ
らなる共刺激分子:B7ファミリーの分子、Ox40L、4.1 BBL、CD40L、抗CTLA-4、抗PD-1)
であってもよいし、またはさらなるサイトカインインターロイキン(たとえばIL-2)であってもよい。
【0059】
本発明に関連して、治療的投与のために使用される薬学的組成物の成分は好ましくは無菌である。無菌性は、たとえば、無菌ろ過膜(たとえば0.2ミクロン膜)に通すろ過によ
って容易に達成され得る。本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の成分を液体担体と均一に接触させることによって調製され得る。本発明の薬学的組成物は、製造後、無菌アクセスポートを有する容器、たとえば皮下注射針で穿孔可能な栓を有する静脈内輸液バッグまたはバイアルに封入され得る。
【0060】
本発明はまた、PD-1のリガンド(すなわちPD-L1および/またはPD-L2)を発現することを特徴とする疾患、たとえば肺がん、卵巣がん、黒色腫、結腸がん、胃がん、腎細胞がん、食道がん、神経膠腫、尿路上皮がん、網膜芽細胞腫、乳がん、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、ホジキンリンパ腫、骨髄腫、肝細胞がん、白血病、子宮頸がん、胆管がん、口腔がん、頭頸部がんまたは中皮腫の処置法であって、本明細書に記載される形質導入細胞の対象への投与を含む方法に関する。本発明に関連して、前記対象はヒトである(上記で説明したように)。本発明に関連して、対象体から細胞(たとえばT細胞、好ましくはCD8+T細胞)を単離する工程、前記単離された細胞に、本明細書中、先に記載したようなPD-1-CD28融合タンパク質をコードする核酸を形質導入する工程、および形質導細胞を前記対象
に投与する工程を含む、疾患処置法が記載される。本発明に関して、前記形質導入細胞は静脈内注入によって前記対象に投与される。そのうえ、本発明は、対象から細胞(たとえばT細胞、好ましくはCD8+T細胞)を単離する工程、前記単離された細胞に、本明細書中、先に記載したようなPD-1-CD28融合タンパク質をコードする核酸を形質導入する工程、前
記単離された細胞に、上記のようなさらなる核酸分子、たとえばT細胞受容体またはキメ
ラ受容体をコードする核酸分子を同時形質導入する工程、形質導入細胞を増殖させる工程、および形質導細胞を前記対象に戻す工程を含む、疾患処置法を提供する。
【0061】
上述の形質導入細胞の増殖工程は、インターロイキン-2(IL-2)および/またはインターロイキン-15(IL-15)のような(刺激性)サイトカインの存在下で実施され得る。本発明に関連して、増殖工程はまた、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-7(IL-7)および/またはインターロイキン-21(IL-21)の存在下で実施されてもよい。本発明にしたがって、形質導入細胞の増殖工程はまた、抗CD3および/または抗CD28抗体の存
在下で実施されてもよい。
【0062】
本発明のPD-1-CD28融合タンパク質はまた、本明細書中に開示される、または当技術分
野において公知の他の改変ポリペプチドと組み合わされてもよい。そのような組み合わせは、同じ細胞集団中および/または同じ細胞内での本発明のPD-1-CD28融合タンパク質お
よび改変ポリペプチドの同時発現を含む。したがって、PD1-CD28融合タンパク質と別の改変ポリペプチドに関連する組み合わせとは、本発明の1つまたは複数のPD1-CD28融合タン
パク質および1つまたは複数の改変ポリペプチドの両方を全体として発現する細胞集団で
あって、その集団内の個々の細胞が、(a)本発明のPD1-CD28融合タンパク質の1つまたは複数もしくは1つまたは複数の改変ポリペプチド;または(b)本発明のPD1-CD28融合タンパク質の1つまたは複数および1つまたは複数の改変ポリペプチドを発現するように、当技術分野において公知である、または本明細書に記載される標準的な方法にしたがって改変されている、細胞集団を指し得る。
【0063】
細胞が本発明の1つまたは複数のPD1-CD28融合タンパク質および1つまたは複数の改変ポリペプチドの両方を同時並行的に発現するよう、および/または本発明の1つまたは複数
のPD1-CD28融合タンパク質および1つまたは複数の改変ポリペプチドの両方の発現を同じ
細胞内で検出することができるよう、本発明の1つまたは複数のPD1-CD28融合タンパク質
と1つまたは複数の改変ポリペプチドとの組み合わせが同じ細胞内で同時発現することが
好ましい。
【0064】
本発明の1つまたは複数のPD1-CD28融合タンパク質とともに同時発現することができる
改変ポリペプチドは、
・Milone et al., Mol. Ther. 17(2009), 1453-1464;Carpenito et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106(2009), 3360-3365;Wang et al., Hum. Gene Ther. 18(2007), 712-725;Pule et al., Mol. Ther. 12(2005), 933-941およびWang et al., Cancer Immunol. Res. 3(2015), 815-826に記載されているようなキメラ抗原受容体;
・Rapoport et al., Nature Medicine, 21(2015), 914-921に提供されているようなアル
ファ/ベータTCR改変T細胞;
・Rosenberg et al., Clin. Cancer Res. 17(2011), 4550-4557に提供されているようなTIL上で発現した天然TCR;
・可溶性ポリペプチドとして発現する、または細胞表面上に膜貫通タンパク質として提示される抗CD3 T細胞エンゲージャー;および
・TCRサブユニットおよびヒトまたはヒト化抗体ドメインを含むT細胞受容体(TCR)融合
タンパク質(TFP)
を含む。たとえば、当技術分野において公知であるように、TCRサブユニットは、TCR細胞外ドメイン、TCR膜貫通ドメインおよび/またはTCR細胞内ドメインを含み得る(上記段落で引用されるすべての参考文献は参照により全体として本明細書に組み入れられる)。
【0065】
PD1-CD28融合タンパク質および改変ポリペプチドが同じ細胞中で同時発現する場合、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質および第二のポリペプチドは、いずれも同じ細胞に導入
される異なる核酸によってコードされることができる。したがって、本発明は、本明細書に記載されるPD1-CD28融合タンパク質(たとえば、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24)の1つまたは複数をコードする核酸および本明細書に含まれる1つまたは複数の改変された第二のポリペプチドをコードする核酸を含む組成物を提供す
る。本発明はまた、第一および第二のベクターを含む組成物であって、第一のベクターが、本明細書に記載されるPD1-CD28融合タンパク質(たとえば、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24)の1つまたは複数をコードする核酸を含み、第二のベクターが、本明細書に含まれる1つまたは複数の改変された第二のポリペプチドをコー
ドする核酸を含む、組成物を提供する。第一および第二のベクターは、同じであることもできるし、または異なることもできる。たとえば、当技術分野において公知であるように、第一および第二のベクター(本発明の1つまたは複数のPD1-CD28融合タンパク質(たと
えば、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24)および1つまたは複数の改変された(第二の)ポリペプチドをそれぞれコードする核酸を含む)は、PD1-CD28融合タンパク質または改変された(第二の)ポリペプチドをコードするインサートを除いては、同じベクター(たとえば同じ発現ベクター)であることができる。または、第一および第二のベクターは、たとえば異なる発現プロモータを含む異なるベクターであってもよい。したがって、第一および第二のベクターからのコードされたポリペプチドの発現は、同じまたは異なるプロモータによって駆動されることができる。したがって、本発明は、(a)本発明のPD1-CD28融合タンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結された
第一のプロモータを含む第一の核酸および/または第一の核酸を含む第一のベクター;(b)改変された(第二の)ポリペプチドをコードする第二の核酸配列に機能的に連結され
た第二のプロモータを含む第二の核酸を含む組成物であって、第一および第二のベクターおよび/または第一および第二のプロモータが同じである、または異なる、組成物を提供
する。
【0066】
または、PD1-CD28融合タンパク質および改変ポリペプチドが同じ細胞中で同時発現する場合、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質および第二のポリペプチドは、同じ核酸、すな
わち、本発明の融合タンパク質をコードする配列および第二のポリペプチドをコードする配列を含む単一の核酸によってコードされることができる。したがって、本発明は、本発明のPD1-CD28融合タンパク質および/または上記のような改変ポリペプチドを含む単一の核酸を提供する。本発明のPD1-CD28融合タンパク質をコードする遺伝子および同時発現するポリペプチドをコードする遺伝子の両方を含む単一の核酸は、当技術分野において公知である、または本明細書に記載される標準的な方法にしたがって、核酸および/またはその成分の複製(たとえば、PD1-CD28および/または改変ポリペプチドをコードする核酸配列の複製)のために使用されてもよいし、核酸および/またはその成分を改変するために使用されてもよいし、あるいはコードされたタンパク質を別々または同時並行に発現させるために使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質
(たとえば、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24)をコード
する遺伝子および改変ポリペプチド(たとえば、上記のような、キメラ抗原受容体、アルファ/ベータT細胞受容体、天然T細胞受容体、可溶性ポリペプチドとして発現する、または細胞表面上に膜貫通タンパク質として提示される抗CD3 T細胞エンゲージャーおよび/
またはT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)(たとえばTCRサブユニットおよびヒトまたはヒト化抗体ドメインを含む))をコードする遺伝子を含む核酸を提供する。本発明はまた、本発明のPD-1-CD28融合タンパク質(たとえば、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO:
24、好ましくはSEQ ID NO: 24)をコードする遺伝子、改変ポリペプチド(たとえば、上記のような、キメラ抗原受容体、アルファ/ベータT細胞受容体、天然T細胞受容体、可溶性ポリペプチドとして発現する、または細胞表面上に膜貫通タンパク質として提示される抗CD3 T細胞エンゲージャーおよび/またはT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)(たとえばTCRサブユニットおよびヒトまたはヒト化抗体ドメインを含む))をコードする
遺伝子および/または本発明のPD-1-CD28融合タンパク質をコードする遺伝子と、本明細
書に記載される改変された(第二の)ポリペプチドをコードする遺伝子との両方を含む核酸を含むベクターを提供する。本発明はまた、この段落に記載されるような1つまたは複
数の核酸および/またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0067】
本発明の1つまたは複数のPD1-CD28融合タンパク質(たとえば、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24)および1つまたは複数の改変された(第二の)
ポリペプチドが同じ細胞中で単一の核酸から同時発現する場合、PD-1-CD28融合タンパク
質および第二のポリペプチドの発現は、同一または異なるプロモータによって独立して駆動されることができる。プロモータは、2つ以上の導入遺伝子の制御を協調させる多様な
構成で双方向に配置されることができる(当技術分野において公知であるような双方向プロモータベクター)。プロモータはまた、当技術分野において公知のように、2つ以上の
導入遺伝子の制御を独立的に協調させる一方向配向に配置されることもできる(デュアルプロモータベクター)。したがって、本発明は、本発明のPD1-CD28融合タンパク質をコードする配列に機能的に連結された第一のプロモータと、第二のポリペプチドに機能的に連結された第二のプロモータとを含む、第一および第二のプロモータが同じである、または異なる、核酸を提供する。または、同時発現するPD-1-CD28融合タンパク質および第二の
ポリペプチドは、単一の(すなわち同じ)プロモータの制御下にあることができる。異なるタンパク質は、当技術分野において公知である、または本明細書に開示される任意の方法を使用して、同じプロモータの制御下で発現すように改変され得る。たとえば、当技術分野において周知であるように、第一のタンパク質(たとえば、本発明のPD1-CD28融合タンパク質(たとえばSEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24))
をコードする遺伝子は、2Aペプチドまたは2A様配列をコードする配列(たとえば、Szymczak et al., Nature Biotechnol. 22(2004), 589-594;Provost et al, Genesis 45(2007)
, 625-629;Diao and White, Genetics 190(2012), 1139-1144。それぞれ参照により全体として本明細書に組み入れられる)にライゲートされたのち、第二のポリペプチドにライゲートされ得る。または、本発明の融合タンパク質および第二のポリペプチドをコードする配列は、IRES(配列内リボソーム進入部位)によって連結されることができる。
【0068】
本明細書に提供される核酸(そのような核酸を含むベクターを含む)は、当技術分野において公知の任意の方法によって標的細胞に導入することができる。そのような方法は、カチオン性脂質法もしくはリポソーム法、エレクトロポレーションまたはリン酸カルシウム法を含むが、これらに限定されない。本明細書中で使用される、核酸および/またはベクターを導入される細胞はまた「形質導入細胞」とも呼ばれる。
【0069】
PD1-CD28融合タンパク質と第二のポリペプチドとの同時発現は、使用される系に依存して、独立して構成的または構造的であることができる。PD-1-CD28融合タンパク質および
第二のポリペプチドは、本明細書に提供される形質導入細胞の表面上に発現することもできるし、またはそうでなければ、当技術分野において公知の標準的な方法にしたがって細胞の内または上で検出可能であることもできる。本発明のPD1-CD28と第二のポリペプチドとの同時発現のための形質導入細胞は、たとえば、CD4+-T細胞、CD8+-T細胞、γδT細胞
、ナチュラルキラー(NK)T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞、骨髄細胞または間葉系幹細胞であり得る。好ましくは、同時発現のための本明細書に提供される形質導入細胞はT細胞(たとえば自己由来T細胞)であり、より好ましくは、形質導入細胞はCD8+TまたはCD4+T細胞である。したがって、形質導入細胞は、本発明のPD1-CD28融合タンパク質(たとえばSEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24)と、第二のポリペプチド(たとえば、上記のような、キメラ抗原受容体、ア
ルファ/ベータT細胞受容体、天然T細胞受容体、可溶性ポリペプチドとして発現する、または細胞表面上に膜貫通タンパク質として提示される抗CD3 T細胞エンゲージャーおよび
/またはT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)(たとえばTCRサブユニットおよびヒトまたはヒト化抗体ドメインを含む))との両方を同時発現するCD8+T細胞であることが
できる。さらに、同時発現のための形質導入細胞は、本明細書に記載される自己由来T細
胞または同種異系T細胞であることができる。代替的または追加的に、形質導入細胞は、
本発明のPD1-CD28融合タンパク質(たとえばSEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 24、好ましくはSEQ ID NO: 24)と、第二のポリペプチド(たとえば、上記のような、キメラ抗原受
容体、アルファ/ベータT細胞受容体、天然T細胞受容体、可溶性ポリペプチドとして発現する、または細胞表面上に膜貫通タンパク質として提示される抗CD3 T細胞エンゲージャ
ーおよび/またはT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)(たとえばTCRサブユニットおよびヒトまたはヒト化抗体ドメインを含む))との両方を同時発現するCD4+T細胞であ
ることができる。形質導入CD4+T細胞は、自己由来CD4+T細胞または同種異系CD4+T細胞で
あることができる。代替的または追加的に、本発明は、形質導入CD4+T細胞および/また
はCD8+T細胞の集団(形質導入CD4+T細胞を含む集団、形質導入CD8+T細胞を含む集団なら
びに形質導入CD4+T細胞および形質導入CD8+T細胞の両方を含む集団を含むが、これらに限定されない)であって、形質導入細胞それぞれが、本発明のPD1-CD28融合タンパク質、上記のような改変された(第二の)ポリペプチドまたは本発明のPD1-CD28融合タンパク質および上記のような改変された(第二の)ポリペプチドの両方を発現する、集団を提供する。同時発現する形質導入CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞の集団は、自己由来および/または同種異系であり得る(たとえば、集団は、自己由来細胞のみを含んでもよいし、同種異系細胞のみを含んでもよいし、または自己由来細胞と同種異系細胞との組み合わせを含んでもよい)。本明細書に記載される本発明のT細胞の同時発現集団は、集団の全体ま
たは集団の代表的サンプルが、本発明のPD1-CD28融合タンパク質および上記のような改変された(第二の)ポリペプチドの両方を発現するよう、形質導入T細胞および非形質導入T細胞の両方を含み得る。
【0070】
本明細書に記載されるように、本発明は、本発明の核酸分子、本発明のベクターおよび/または本発明の融合タンパク質を含むキットに関する。したがって、本明細書に提供される処置法は、このキットを使用して実現され得る。好都合に、本発明のキットはさらに、任意で、(a)反応バッファ、貯蔵溶液(すなわち保存剤)、洗浄溶液および/または
本明細書に記載されるアッセイの実施のために必要な残りの試薬もしくは物質を含む。さらに、本発明のキットの一部は、バイアルまたはボトルの中に個別にパッケージングされることもできるし、あるいは容器またはマルチ容器ユニットとして組み合わされることもできる。加えて、キットは、使用のための指示を含み得る。本発明のキットの製造は、好ましくは、当業者に公知である標準的な手順に従う。上述したように、本明細書に提供されるキットは、PD-1のリガンド(すなわちPD-L1および/またはPD-L2)を発現することを特徴とする疾患、たとえば肺がん、卵巣がん、黒色腫、結腸がん、胃がん、腎細胞がん、食道がん、神経膠腫、尿路上皮がん、網膜芽細胞種、乳がん、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、ホジキンリンパ腫、骨髄腫、肝細胞がん、白血病、子宮頸がん、胆管がん、口腔がん、頭頸部がんまたは中皮腫を有する対象(好ましくはヒト患者)を処置するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】PD-1-CD28融合タンパク質(PD-1膜貫通ドメイン、PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA))および14(タンパク質))のインビトロ特性決定。(A)PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))-形質導入または非形質導入一次ネズミ/マウスT細胞を、抗CD3抗体、抗CD3抗体+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸(cDNA));38(タンパク質))のいずれかで刺激し、得られたIFN-γ放出をELISAによって計測した。(B)PTM融合タンパク質形質導入または非形質導入一次ネズミT細胞を、刺激しないまま放置するか、または抗CD3抗体もしくは抗CD3抗体+組換えPD-L1で刺激し、AKTのリン酸化をフローサイトメトリーによって計測した。(C)PTM融合タンパク質形質導入または非形質導入一次ネズミT細胞を、抗CD3抗体、抗CD3抗体+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸);38(タンパク質))のいずれかで刺激し、細胞数を標準化カウントビーズに対して正規化した。(D)PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))または非形質導入一次ネズミT細胞を、抗CD3抗体、抗CD3抗体+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO:(SEQ ID NO37(核酸(cDNA));38(タンパク質))のいずれかで24時間刺激し、有糸分裂マーカーki67のために細胞内染色した。(E)PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸);14(タンパク質))または非形質導入OT-1 T細胞を、抗PD-1抗体または抗マウスH2kb SIINFEKL抗体の存在または非存在下、Panc02-OVA-PD-L1とともに共培養し、得られたIFN-γ産生をELISAによって計測した。(F)PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))または非形質導入OT-1 T細胞を抗CD3抗体でおよび組換えPD-D1で予備刺激した。その間、Panc02-OVA-PD-L1細胞を播種し、増殖させたのち、予備刺激したT細胞を加えた(矢印)。条件は以下のとおりである。Panc02-OVA-PD-L1のみ(1)、Panc02-OVA-PD-L1+予備刺激された非形質導入T細胞(2)、Panc02-OVA-PD-L1+予備刺激されたPTM融合タンパク質形質導入T細胞(3)、PTM融合タンパク質(4)および非形質導入T細胞(5)および培地(6)。インピーダンスベースの計測によってPanc02-OVA細胞生存率を計測した。実験A~Eは、それぞれ三重反復で実施された少なくとも3つの独立実験を表す。実験Fは、技術的理由のために二重反復で実施された3つの独立実験を表す。バーはSDを表し、スチューデントt検定からのp値が示されている。すべての検定は両側検定である。
図2】様々なPD-1-CD28融合タンパク質の機能比較。(A)様々なPD-1-CD28融合タンパク質の構造の概観:PTM(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質)):CD28細胞内ドメイン(CD28-intra;SEQ ID NO: 11(核酸(cDNA));12(タンパク質))に融合したPD-1細胞外ドメイン(PD-1-ex)および膜貫通ドメイン(PD-1-trans)(SEQ ID NO: 5(核酸);6(タンパク質)に示される))。CTM(SEQ ID NO: 43(核酸(cDNA));44(タンパク質)):CD28膜貫通(CD28-trans)および細胞内ドメイン(SEQ ID NO: 41(核酸);42(タンパク質))に融合したPD-1細胞外ドメイン(SEQ ID NO: 39(核酸(cDNA));40(タンパク質));およびCEX(SEQ ID NO: 49(核酸(cDNA));50(タンパク質)):CD28細胞外セグメント(CD28-ex)およびCD28膜貫通および細胞内ドメイン(SEQ ID NO: 47(核酸(cDNA));48(タンパク質))に融合したPD-1細胞外ドメイン(SEQ ID NO: 45(核酸(cDNA));46(タンパク質))。(B)PTM(SEQ ID NO: 49、50)、CTM(SEQ ID NO: 43、44)、CEX(SEQ ID NO: 49、50)または非形質導入一次ネズミT細胞を抗CD3抗体、抗CD3+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸);38(タンパク質))で刺激し、IFN-γ産生をELISAによって計測した。(C)PTM-、CTM-、CEX融合タンパク質形質導入または非形質導入一次ネズミT細胞を抗CD3抗体、抗CD3+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1 37(核酸);38(タンパク質))で刺激し、得られた細胞数をカウントビーズに対してを正規化した。(D)PTM-、CTM-、CEX融合タンパク質形質導入または非形質導入T細胞を組換えPD-L1 37(核酸);38(タンパク質))とともにインキュベートし、PD-L1結合をフローサイトメトリーによって計測した。(E)PTM-、CTM-、CEX-または非形質導入T細胞のCD8およびPD-1発現の代表的な共染色。すべての実験は、それぞれ三重反復で実施された少なくとも3つの独立実験を表す。バーはSDを表し、スチューデントt検定からのp値が示されている。すべての検定は両側検定である。
図3】様々な変異PTM融合タンパク質の、それらの推定シグナル伝達ドメインにおける機能比較。(A)様々なPTM融合タンパク質変異体の概観:PTM(YMNM-PYAP、野生型(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))、PTM-FMNM(チロシン変異、Y~F(SEQ ID NO: 51(核酸(cDNA));52(タンパク質))、PTM-AYAA((プロリン変異、P~A(SEQ ID NO: 53(核酸(cDNA));54(タンパク質))およびPTM-FMNM-AYAA(プロリンおよびチロシン変異(SEQ ID NO: 55(核酸(cDNA));56(タンパク質))。(B)PTM(SEQ ID NO: 13、14)、PTMチロシン変異(PTM-FMNM;SEQ ID NO: 51、52))、PTMプロリン変異(PTM-AYAA;SEQ ID NO: 53、54))およびPTM-チロシンおよびプロリン変異(PTM-FMNM-AYAA;SEQ ID NO: 55、56)または非形質導入T細胞を抗CD3抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸(cDNA));38(タンパク質))で刺激し、IFN-γ産生をELISAによって計測した。(C)非形質導入、PTM-、PTM-FMNM-、PTM-AYAA-またはPTM-FMNM-AYAA形質導入T細胞を抗CD3抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1で刺激し、カウントビーズに対する正規化によって生細胞の量を定量化した。(D)非形質導入、PTM(SEQ ID NO: 13(核酸);14(タンパク質))、PTM-FMNM(SEQ ID NO: 51(核酸(cDNA));52(タンパク質))、PTM-AYAA(SEQ ID NO: 53(核酸(cDNA));54(タンパク質))-またはPTM-FMNM-AYAA(SEQ ID NO: 55(核酸(cDNA));56(タンパク質))-形質導入T細胞を抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸(cDNA));38(タンパク質))で刺激し、ネズミサイトカインアレイを使用してサイトカイン放出を半定量的に分析した。アレイは、40のサイトカインの広範なパネルで発現をスクリーニングする。図3D中、0.05未満のP値は*で印されている。実験BおよびCは、三重反復で実施された少なくとも3つの独立実験を表す。実験Cは、技術的理由のために、二重反復で三回実施した。バーはSDを表し、スチューデントt検定からのp値が示されている。すべての検定は両側検定である。
図4】インビボにおけるPTM融合タンパク質形質導入OT-1細胞の治療効能および免疫記憶の誘発。(A)マウス18匹にPanc02-OVA細胞を皮下注射した。ひとたび腫瘍が樹立したならば、6匹のマウスそれぞれを、処置なし、非形質導入OT-1 T細胞の養子移入またはPTMタンパク質形質導入OT-1 T細胞の養子移入に無作為化した。1日おきに腫瘍サイズを盲検的に計測した。実験は、1群あたり6匹のマウスを用いた3つの独立実験を表す。(B)2つの独立実験から生存したマウス(n=12)を、腫瘍ナイーブな野生型マウス(n=7)と同時に、Panc02-OVA細胞で再びチャレンジした。(C)最初の再チャレンジ後に生存したマウス(n=11、パネルBに示す実験から)および腫瘍ナイーブな野生型マウス(n=6)を亜致死量のPanc02細胞で再チャレンジした。(D)Panc02再チャレンジ(パネルCに示す実験)から生存したマウスからのリンパ節を、インビトロでの器官培養中、対照ペプチドTRP2、P15EペプチドまたはSIINFEKL(ニワトリ卵白アルブミンのアミノ酸(AA)258~265を指すSEQ ID NO: 65(Uni Prot Entry: P01012(エントリのバージョン147および配列のバージョン2)))ペプチドのいずれかで刺激した。マウスごとに、IFN-γ産生CD8+-T細胞の数をフローサイトメトリーによって分析し、TRP2刺激後のIFN-γ産生CD8+-T細胞の数に対して正規化した。(E)PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の移入後にPanc02-OVA腫瘍を除去したマウスからのまたは野生型マウスからの脾細胞を野生型マウスに養子移入した。これらのマウスをPanc02-OVA細胞でチャレンジした。腫瘍のないマウスからの脾細胞の移入は、マウス9匹中3匹において腫瘍成長を妨げた。ログランク検定を使用して生存分析を実施した。個々のマウスの実験条件の比較のために、マン・ホイットニーの検定を使用した。すべての検定は両側検定である。
図5】PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞のインビボ作用機序。(A)マウス18匹にPanc02-OVA細胞を皮下注射した。ひとたび腫瘍が樹立したならば、マウスを、非形質導入OT-1 T細胞または欠失PD-1受容体(SEQ ID NO: 57(核酸(cDNA));58(タンパク質))もしくは非改変PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))を形質導入されたT細胞いずれかの養子移入に無作為化した。1日おきに腫瘍サイズを盲検的に計測した。実験は、1群あたり6匹のマウスを用いた3つの独立実験を表す。(B)CD45.1-OT-1マウスからのT細胞にPTM融合タンパク質を形質導入し、CD90.1-OT-1マウスからのT細胞には形質導入しないままにした。T細胞を、野生型マウス(n=2)またはPanc02-OVA腫瘍担持マウス(n=6)に等しい量で同時注入した。4日後、T細胞を異なるコンパートメント中で分析し、PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸);14(タンパク質))形質導入OT-1-T細胞と非形質導入OT-1-T細胞との比を比較した。実験は、腫瘍担持群あたり6匹のマウスを用いた3つの独立実験を表す。(C)非形質導入CD90.1 OT-1-T細胞およびPTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸);14(タンパク質))形質導入されたCD45.1-OT-1 T細胞を、実験(B)で得られた腫瘍、脾臓およびリンパ節から単離し、IFN-γ発現に関してフローサイトメトリーによって分析した。実験は、腫瘍担持群あたり6匹のマウスを用いた3つの独立実験を表す。(D)CD45.1 OT-1 T細胞にPTM融合タンパク質を形質導入し、CD90.1 OT-1-T細胞に、変異体融合タンパク質PTM-FMNM(SEQ ID NO: 52(タンパク質)、51(cDNA))、PTM-AYAA(SEQ ID NO: 54(タンパク質)、53(cDNA))またはPTM-FMNM-AYAA(SEQ ID NO: 56(タンパク質)、55(cDNA))を形質導入し、PTM形質導入CD45.1 OT-1 T細胞と等しい量で混合したのち、Panc02-OVA腫瘍担持マウス(1群あたりn=3)に移入した。移入から4日後、PTM受容体形質導入T細胞と変異体融合タンパク質形質導入T細胞との比をフローサイトメトリーによって分析した。実験は、腫瘍担持群あたり3匹のマウスを用いた3つの独立実験を表す。(E)PTM融合タンパク質形質導入または非形質導入OT-1 T細胞をPanc02-OVA腫瘍担持マウス(それぞれn=17)に養子移入した。一週間後、腫瘍浸潤MDSC(CD45+、CD11b+、Ly6+、Gr-1中間体+)の数を分析した。データは、3つの独立実験からプールされたマウスの結果を表す。バーはSDを表す。ログランク検定を使用して生存分析を実施した。個々のマウスの実験条件の比較のために、マン・ホイットニーの検定を使用した。すべての検定は両側検定である。
図6】PD1-CD28融合タンパク質(PTM;SEQ ID NO: 13(cDNA)、14(タンパク質))の使用の理論的根拠:腫瘍内T細胞によるPD-1上方制御および腫瘍細胞上のPD-L1発現。(A)GFP形質導入OT-1 T細胞をPanc02-OVA腫瘍担持マウスに養子移入した。一週間後、GFP+OT-1 T細胞および浸潤T細胞のPD-1発現による腫瘍および脾臓の浸潤をフローサイトメトリーによって分析した。ほぼすべての腫瘍浸潤OT-1 T細胞は、脾臓中のOT-1 T細胞とは対照的に、PD-1陽性であった。(B)腫瘍浸潤OT-1-T細胞(濃灰色)および脾臓浸潤OT-1-T細胞(淡灰色)におけるPD-1発現の例示的なヒストグラム。(C)Panc02-OVA細胞をIFN-γ(2、20および100ng/ml)でインビトロで刺激し、48時間後、PD-L1の発現をフローサイトメトリーによって分析した。IFN-γがPD-L1発現を用量依存的に上方制御した。(D)100ng/mlのIFN-γによる刺激後(濃灰色)および刺激なし(薄灰色)後のPanc02-OVA腫瘍細胞におけるPD-L1発現の例示的なヒストグラム。(E)作用機序の概観:PD-1細胞外および膜貫通ドメインとCD28細胞内ドメインとの融合タンパク質が、PD-1-PD-L1媒介アネルギーから抗原特異的T細胞を保護し、抑制シグナルを共刺激に変える。(F)PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸)(cDNA));14(タンパク質))-形質導入T細胞を、抗CD3抗体、組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(cDNA)、38(タンパク質))または両方のいずれかで刺激した。48時間後、IL-2誘発をELISAによって分析した。両化合物による組み合わせ刺激が強いIL-2誘発をもたらす。
図7】PD-L1を過剰発現するPanc02-OVAモデルにおけるPD1-CD28融合タンパク質(PTM;SEQ ID NO: 13(cDNA)、14(タンパク質))形質導入T細胞の治療効能およびIFN-γへの処置効果の依存性。(A)PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸);14(タンパク質))-形質導入T細胞を、抗CD3抗体、抗CD28抗体、組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸);38(タンパク質))、抗CD3抗体および組換えPD-L1または3つのすべての刺激のいずれかで刺激した。48時間後、IFN-γ誘発をELISAによって分析した。すべての化合物による組み合わせ刺激が強いIFN-γ誘発をもたらす。(B)PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(cDNA)、14(タンパク質))-形質導入OT-1 T細胞を、抗CD3抗体(1μg/ml)の存在下または非存在下、Panc02-PD-L1とともに48時間共培養し、上清中でIFN-γを定量化した。(C)マウス24匹にPanc02-OVA-PD-L1細胞を皮下注射した。ひとたび腫瘍が樹立したならば、マウス(1群あたりn=8)を、処置なしのままにするか、または非形質導入OT-1 T細胞もしくはPTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(cDNA)、14(タンパク質))-形質導入OT-1 T細胞で二回処置するかのいずれかに無作為化した。1日おきに腫瘍サイズを盲検的に計測した。PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞は、2つの対照群と比較して、腫瘍のないマウスの数を有意に増加させた。(D)マウス10匹にPanc02-OVA細胞を皮下注射した。ひとたび腫瘍が樹立したならば、マウス(1群あたりn=5)を、PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞とIFN-γ中和抗体またはアイソタイプ対照200μgとで処置されるように無作為化した。無作為化の時点から3日ごとに四回、抗体を腹腔内投与した。1日おきに腫瘍サイズを盲検的に計測した。IFN-γ中和抗体は、PTM形質導入OT-1 T細胞の治療的影響を無効化した。(E)PTM融合タンパク質形質導入または非形質導入OT-1 T細胞をPanc02-OVA腫瘍担持マウス(それぞれn=17)に養子移入した。一週間後、腫瘍中の腫瘍浸潤制御性T細胞の数およびPD-1-CD8 T細胞の数を定量化した。PTM融合タンパク質形質導入T細胞で処置されたマウスは、非形質導入T細胞で処置されたマウスよりも高いPD-1-CD8 T細胞対Treg比を有していた。バーはSEMを表す。
図8】ヒトPD-1-CD28融合タンパク質(hPTM;SEQ ID NO: 23(核酸)、24(タンパク質))の機能分析。hPTM(SEQ ID NO: 23(核酸);24(タンパク質))または非形質導入一次ヒトT細胞を、抗CD3抗体、抗CD3+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(R&Dから購入、カタログ番号156-B7-100)で刺激し、IFN-γ産生をELISAによって計測した。刺激群間の差を対応のないスチューデントt検定によって評価した。矢印がSEMを表示し、正確なp値が図示されている。
図9】PD-1-CD28融合タンパク質(PD-1膜貫通ドメイン、PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA))および14(タンパク質))形質導入CD4+T細胞のインビトロ特性決定。PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸)(cDNA));14(タンパク質)に示される)-形質導入または非形質導入の一次ネズミ/マウスCD4+T細胞を、抗CD3抗体、抗CD3+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸(cDNA));38(タンパク質))のいずれかで刺激した。(A)ELISAによってIFN-γ放出を計測した。(B)生細胞/ビーズによって増殖を測定した。細胞数を標準化カウントビーズに対して正規化した。(C)フローサイトメトリーによる生存率、Fixable Viability Dye(AmCyan、BioLegend)。(D)有糸分裂マーカーki67の細胞内染色。(E)転写/活性化マーカーEOMESの細胞内染色。実験A~Eは、それぞれ三重反復で実施された少なくとも2つの独立実験を表す。バーはSDを表す。すべての検定は両側検定である。
図10】PD-1-CD28融合タンパク質(PD-1膜貫通ドメイン、PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA))および14(タンパク質))形質導入CD4+T細胞のインビトロ表現型特性決定。PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質)に示される)-形質導入または非形質導入一次ネズミ/マウスCD4+T細胞を、抗CD3抗体、抗CD3+抗CD28抗体または抗CD3抗体+組換えPD-L1(SEQ ID NO: 37(核酸)(cDNA));38(タンパク質))のいずれかで刺激した。(A)IL-17発現を、抗IL17染色(FITC、クローンTC11-18H10.1、BioLegend)によって評価し、フローサイトメトリーによって計測した。(B)FoxP3発現を、抗FoxP3染色(PE、クローン150D、BioLegend)によって評価し、フローサイトメトリーによって計測した。実験AおよびBは、それぞれ三重反復で実施された少なくとも2つの独立実験を表す。バーはSDを表す。すべての検定は両側検定である。
図11】PD-1-CD28融合タンパク質(PD-1膜貫通ドメイン、PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA))および14(タンパク質))形質導入T細胞のインビトロ表現型特性決定。抗原(OVA)特異的な予備刺激したPTM(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質)に示される)-形質導入または非形質導入一次ネズミT細胞をPancOVA腫瘍細胞とともに共培養した。時点1は、アゴニスト抗CD3e抗体および組換えネズミPD-L1による36時間の刺激の後である。時点2は、その後の、PancOVA細胞との12時間の共培養の後である。(A)生存可能なCD8+CD62L-CCR7-細胞の割合。(B)生存可能なCD8+CD62L+CCR7+細胞の割合。(C)生存可能なCD4+CD62L-CCR7-細胞の割合。(D)生存可能なCD4+CD62L+CCR7+細胞の割合。(E)生存可能なCD8+CD69+細胞の割合。(F)生存可能なCD4+CD69+細胞の割合。(G)生存可能なCD8+PD1+細胞の割合。実験A~Gにおいて、すべての値はフローサイトメトリーによって測定され、それぞれ三重反復で実施された少なくとも2つの独立実験を表す。バーはSDを表す。すべての検定は両側検定である。
図12】インビボEG7-PD-L1腫瘍モデルにおけるPTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の治療効能。マウス14匹にEG7-PD-L1細胞を皮下注射した。ひとたび腫瘍が樹立したならば、6、3および5匹のマウスを、処置なし(PBS)、非形質導入OT-1 T細胞の養子移入およびPTMタンパク質形質導入OT-1 T細胞の養子移入のいずれかにそれぞれ無作為化した。図は、1群あたり3~6匹のマウスを用いた3つの独立実験を表す。2~3日おきに腫瘍サイズを盲検的に計測した(A)。図12Aの実験からの生存曲線(B)。生存したマウス(n=2)を、腫瘍ナイーブな野生型マウス(n=2)と同時に、EG7-PD-L1細胞で再びチャレンジした(C)。ログランク検定を使用して生存分析を実施した。比較のために、腫瘍成長二元配置ANOVAを多重検定補正とともに使用した。すべての検定は両側検定である。
【実施例0072】
以下の実施例は本発明を例示する
例示的に、以下の実施例1~3および5においては、PD-1ポリペプチドおよびCD28ポリペ
プチドのネズミ配列を用いて融合タンパク質を構築した。実施例4は、C末端を介してヒトCD28ポリペプチド(SEQ ID NO: 21(核酸(cDNA));22(タンパク質))の細胞内ドメ
インのN末端に機能的に連結/融合しているPD-1ポリペプチドを含み、PD-1ポリペプチド
がPD-1の細胞外ドメイン(SEQ ID NO: 17(cDNA)、18(タンパク質))およびPD-1の膜
貫通ドメイン(SEQ ID NO: 15(核酸)および16(タンパク質)に示される、SEQ ID NO: 19(cDNA)、20(タンパク質)を含む、ヒトPD-1-CD28融合タンパク質(SEQ ID NO: 23(核酸(cDNA));24(タンパク質))の機能分析に関する。実施例4で調製したPD-1-CD28融合タンパク質は、SEQ ID NO: 24(SEQ ID NO: 23に示されたcDNAによってコードされる)に示すアミノ酸配列を有する。
【0073】
実施例1:PD-1-CD28融合タンパク質の産生
実施例1.1 ネズミPD-1-CD28融合タンパク質PTM(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA))および14(タンパク質))、CTM(SEQ ID NO: 43(核酸(cDNA))および44(タンパク質))、CEX(SEQ ID NO: 49(核酸(cDNA))および50(タンパク質))、PTM-FMNM(SEQ ID NO:
51(核酸(cDNA))および52(タンパク質))、PTM-AYAA(SEQ ID NO: 53(核酸(cDNA));54(タンパク質))およびPTM-FMNM-AYAA(SEQ ID NO: 55(核酸(cDNA));56(タンパク質))
オーバーラップエクステンションPCRおよびレトロウイルスpMP71ベクターへの組換え発現によるクローニング(Schambach et al., Mol Ther 2(5) (2000), 435-45;EP-B10955374)によってPD-1-CD28融合タンパク質を産生した。増幅を三工程で実施した:第一に、PD-1細胞外および膜貫通ドメインを、CD28細胞内ドメイン
のための部分的オーバーラップで増幅した。同時に、CD28細胞内を、PD-1膜貫通ドメイン
のための部分的オーバーラップで増幅した。第三の反応工程において、両方の産物を、5'-PD-1プライマー
および3'-CD28プライマー
を使用する増幅鋳型として使用した。増幅後、EcoRIおよびNotI制限酵素切断およびDNAライゲーションを使用して、インサートをpMP71ベクター中にライゲートした。
【0074】
得られたネズミPD-1膜貫通融合タンパク質(PTM;SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA))および14(タンパク質))は、ネズミPD-1(mPD-1)(Uniprot Entry Q02242(バージョン番
号125および配列のバージョン1のアクセッション番号)アミノ酸(AA)1~190;SEQ ID NO: 5(核酸(cDNA))および6(タンパク質))およびネズミCD28(mCD28)(Uniprot Entry番号P31041(バージョン番号127および配列のバージョン2のアクセッション番号)AA178~218;SEQ ID NO: 11(核酸(cDNA))および12(タンパク質))からなる。
【0075】
得られたネズミCD28膜貫通融合タンパク質(CTM(SEQ ID NO: 43(核酸(cDNA))および44(タンパク質))は、ネズミPD-1(AA1~169;SEQ ID NO: 39(核酸(cDNA))およ
びSEQ ID NO: 40(タンパク質))およびネズミCD28)(AA151~218(SEQ ID NO: 41(核酸(cDNA))および42(タンパク質))からなる。
【0076】
得られたネズミCD28膜外および膜貫通融合タンパク質(CEX(SEQ ID NO: 49(核酸(cDNA))およびSEQ ID NO: 50(タンパク質))は、ネズミPD-1(AA1~169(SEQ ID NO: 45(核酸(cDNA))およびSEQ ID NO: 46(タンパク質))およびネズミCD28(AA115~218
(SEQ ID NO: 47(核酸(cDNA))およびSEQ ID NO: 48(タンパク質))からなる。
【0077】
ネズミPTM変異体は、PTM融合受容体(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク
質))から、以下のような点変異によって生成した:YMNM(AA189~192;SEQ ID NO: 29
)をFMNM(SEQ ID NO: 31)に変異させて、構築物PTM-FMNM(SEQ ID NO: 51(核酸(cDNA));52(タンパク質))を生じさせ;PYAP(AA206~209;SEQ ID NO: 30))をAYAA(SEQ ID NO: 32)に変異させて、構築物PTM-AYAA(SEQ ID NO: 53(核酸(cDNA));54(
タンパク質))を生じさせ;二重変異体PTM-FMNM-AYAA(SEQ ID NO: 55(核酸(cDNA));56(タンパク質))。ネズミPTM融合タンパク質の変異体は、野生型構築物を使用して
、Gene Art部位特異的変異誘発キット(Life Technologies)を使用して、1つの塩基対を交換する(YMNM(SEQ ID NO: 29)をFMNM(SEQ ID NO: 31)に)または2つの塩基対を交
換する(PYAP(SEQ ID NO: 30)をAYAA(SEQ ID NO: 32)に)部位特異的変異誘発によって生成した。
【0078】
実施例1.2 PD-1欠失変異体(SEQ ID NO: 57(核酸(cDNA))および58(タンパク質))
PD-1欠失変異体は、以前にOkazaki T et al., Proc Natl Acad Sci USA 98(24) (2001)
, 13866-13871によって記載されている。PD-1欠失変異体は、SEQ ID NO: 57(核酸(cDNA))および58(タンパク質)に示される配列を含む。
【0079】
実施例2:T細胞の形質導入および細胞毒性死傷アッセイ
2.1 細胞株
ネズミ膵臓がん細胞株Panc02およびその卵白アルブミン形質移入相対物Panc02-OVAは以前に記載されている(Jacobs et al., Int J Cancer 128(4) (2011), 897-907)。野生型C57Bl/6マウスの膵臓に発がん物質Methycholantren Aを注入して発がんを誘発することにより、Panc02細胞株を作製した。完全長ネズミPD-L1(SEQ ID NO: 29(核酸(cDNA))および30(タンパク質))を含むpMXs-puro(Kitamura et al., Exp. Hematol. 31 (2003),
1007-1014)の形質導入および最終濃度10μg/mlのピューロマイシンによる選択によってPanc02-OVA-PD-L1およびPanc02-PD-L1を作製した。パッケージング細胞株Plat-Eは以前にMorita et al., Gene Ther 7 (2000), 1063-6によって記載されている。すべての細胞を
、10%ウシ胎仔血清(FBS、Life Technologies、USA)、1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(PS)および1%L-グルタミン(すべてPAA、Germanyから)を含むDMEM中で培養
した。10μg/mlピューロマイシンおよび1μg/mlブラストサイジン(Sigma、Germany)をPlat-E(Platinum-E)培地に添加した。一次ネズミT細胞(培養に関しては以下のセクション2.5を参照)を、10%FBS、1%PSおよび1%L-グルタミンを含むRPMI1640中で培養し、1
%ピルビン酸ナトリウム、1mM HEPESおよび50μM β-メルカプトエタノールをT細胞培地
に添加した。
【0080】
2.2 動物
卵白アルブミンに特異的なT細胞受容体(OT-1)のためのトランスジェニックマウスをJackson Laboratory、USA(ストック番号003831)から取得し、本発明者らの動物施設中、特定病原体除去(SPF)条件下で飼育した。OT-1マウスをCD45.1コンジェニックマーカー
マウス(Jackson Laboratoryから取得、ストック番号002014)およびCD90.1コンジェニックマーカーマウス(ストック番号000406)と交配させて、CD45.1-OT-1およびCD90.1-OT-1マウスをそれぞれ作製した。野生型C57B1/6マウスをJanvier、Franceから購入した。2×106個の腫瘍細胞の皮下注射によって腫瘍を誘発させ、マウスを、示されるようにT細胞の
静脈内注射によって処置した。再チャレンジ実験のために、マウスの、以前に拒絶された腫瘍の部位とは反対側の脇腹に0.5×106個の細胞を皮下注射した。すべての実験は無作為化され、盲検化されたものであった。中和実験のために、抗IFN-γ抗体R4-6A2(BioXcell、USA)またはアイソタイプ対照(BioXcell、USA)を3日ごとに一匹あたり200μgの用量
で四回腹腔内投与した。1日おきに腫瘍の成長およびマウスの状態をモニタした。
【0081】
2.4 T細胞形質導入
レトロウイルスベクターpMP71(Schambach et al., Mol Ther 2(5) (2000), 435-45;EP-B10955374)をエコトロピックパッケージング細胞株Plat-E(Platinum-E)の形質移入
に使用した。Leisegang et al., J Mol Med 86 (2008), 573-83;Mueller et al., J Virol. 86 (2012), 10866-10869;Kobold et al., J Natl Cancer Inst (2014)(近刊)によって記載された方法にしたがって形質導入を実施した。手短にいうと、パッケージング細胞株Plat E(Morita et al., Gene Ther 7 (2000) 1063-6によって記載されている)を6
ウェルプレートに播種し、一晩かけて70~80%コンフルエンスまで増殖させた。1日目に
、DNA 16μgを100mM CaCl2(Merck、Germany)および126.7μMクロロキン(Sigma、USA)と混合した。Plat-E細胞を低血清培地(3%)中で30分間飢餓状態にし、次いで沈殿したDNAととも6時間インキュベートした。次いで培地を除去し、培養液と交換した。2日目に、一次脾細胞をC57B1/6マウス(Harlan Laboratories、The Netherlands)から採取した。
脾細胞の単一細胞懸濁液を、T細胞培地中、抗CD3(クローン145-2c11 BD Pharmingen、USA)、抗CD28(クローン37.51、BD Pharmingen、USA)および組換えネズミIL-2(Peprotech、Germany)で一晩かけて刺激した。3日目に、24ウェルプレートを12.5μg/mlの組換え
レトロネクチン(Takara Biotech、Japan)によって室温で2時間コートし、2%ウシ血清
アルブミン(Roth、Germany)によって37℃で30分間ブロックし、PBSで洗浄した。Plat Eの上清を採取し、フィルタ(40μm、Milipore、USA)に通した。次いで、新鮮なT細胞培
地をPlat E細胞に添加した。ろ過された上清1mlを各ウェルに分配し、4℃で2時間スピノ
キュレーションした。次いで上清を24ウェルプレートから取り出した。106個のT細胞を、1ウェルあたり10UのIL-2および400000個の抗CD3および抗CD28ビーズ(Invitrogen、Germany)で補足されたT細胞培地1mlに播種し、32℃、800gで30分間スピノキュレーションした。4日目に、Plat E上清を再び採取し、ろ過した。1mlを24ウェルプレートの各ウェルに添加し、32℃、800gで90分間スピノキュレーションした。その後、細胞を37℃でさらに6時
間インキュベートした。1mlの上清をIL-2とのT細胞培地で置き換えた。5日目に、細胞を
採取し、計数し、1mlあたり10ngのIL-15(Peprotech、Germany)で補足されたT細胞培地
中、106個/mlの密度で再び播種した。T細胞を、細胞分析または機能アッセイを実施する10日目まで、この密度で維持した。
【0082】
2.5 T細胞と腫瘍細胞との共培養
T細胞および腫瘍細胞を、抗PD-1ブロッキング抗体(10μg/ml、クローンRPM1-14、Biolegend)または抗マウスH2kb SIINFEKL抗体(20μg/ml、クローン25.D1-16、Miltenyi Biotech、Germany)の存在下または非存在下、10:1の比で48時間共培養した。IFN-γに関して上清をELISA(BD)によって分析した。
【0083】
実施例3:サイトカイン放出、T細胞増殖および死傷アッセイ
3.1 機能的T細胞アッセイ
T細胞を、抗CD3e抗体(100ng/ml、クローン145-2C11、eBioscience)、抗CD28抗体(2
μg/ml、クローン37.51、eBioscience)または組換えPD-L1 Fcキメラ(5μg/ml、R&D Systems)もしくはこれらの組み合わせのいずれかで48時間刺激した。サイトカインを、上清中、ELISA(IL-2およびIFN-γ、いずれもBD;カタログ番号それぞれDY402およびDY485)
によって定量化または免疫ブロッティング(R&D製のネズミサイトカインアレイ;カタロ
グ番号ARY006)によって定性的に検出した。増殖アッセイのために、細胞を上記のように24時間刺激したのち、上記のように染色した。カウントビーズ(Life Technologies、Germany;カタログ番号C36950)の添加およびその後のフローサイトメトリーによる分析によって細胞を計数した。死傷アッセイのために、融合タンパク質で形質転換された300,000
個のT細胞を、上記のように、抗CD3e抗体および組換えPD-L1(R&D、カタログ番号1019-B7-100)で40時間刺激した。その間、Panc-OVA腫瘍細胞を、8ウェルプレートの1ウェルあたり15,000個の密度で播種し、一晩かけて増殖させた。16時間後、刺激されたT細胞を、腫
瘍細胞を含むウェルに添加し、細胞数を、ICELLigence計器(ACEA Bioscience、USA)を
使用するインピーダンス計測によって連続的にモニタした。
【0084】
3.2 ヒトT細胞の刺激
ヒトCD3+PBMCにヒトPTM(hPTM)融合タンパク質(SEQ ID NO: 23(核酸(cDNA))および24(タンパク質))をレトロウイルス的に形質導入し、IL-2(Peprotech)およびIL-15(Peprotech)を使用して4日間増殖させた。刺激アッセイを実施してT細胞刺激を測定し
た。したがって、平底96ウェルプレートを、0.1μg/ml抗ヒトCD3抗体(クローン:HIT3a
;eBioscience)または0.1μg/ml抗ヒトCD3抗体および5μg/ml組換えヒトFc B7-H1キメラ(R&D)または0.1μg/ml抗ヒトCD3抗体および2μg/mlの抗ヒトCD28抗体(クローン:cd28.2;eBioscience)のいずれかを含有するPBSで、4℃で一晩かけてコートした。1ウェルあたり3.0×105個の形質導入細胞を、コートした96ウェルプレートに入れた。37℃で48時間インキュベートしたのち、5%CO2細胞上清を捕集した。ヒトIFN-γ-ELISA(BD Bioscience)を製造者のガイドラインにしたがって使用して、ヒトIFN-γ放出を定量化した。
【0085】
3.3 脾細胞の再刺激
フローサイトメトリーによる分析の前に、腫瘍拒絶後のマウスまたは対照マウスからの脾細胞を4時間インキュベートした(ICS)、ペプチドSIINFEKL(SEQ ID NO: 65)、TRP2
またはP15E(いずれもJPT Peptides、Germanyから)1μg/ml。活性対対照ペプチドTRP2の刺激の比を式:標的条件からの%CD8+IFNγ+細胞/TRP2条件の%CD8+IFNγ+で計算することにより、バックグラウンド正規化を実施した。
【0086】
3.4 フローサイトメトリー
BD FACS Canto II(BD bioscience、Germany)でのマルチカラーフローサイトメトリーは以下の抗体パネルを使用した:養子移入OT-1 T細胞の分析の場合、抗PD-1(PE-Cy7、クローン29F.1A12)および抗CD8(APC、クローン53.6-7、いずれもBiolegend、USA);p-Akt分析の場合、抗マウスCD8a(Pacific Blue、クローン53-6.7)および抗マウスPD-1(PeCy7、クローン29F.1A12、いずれもBiolegend、USA)、Foxp3/転写因子染色緩衝液セット
(eBioscience、USA)を使用するその後の固定化および透過処理ならびに抗Akt(pS473)(AlexaFluor 647、クローンM89-61、eBioscience)による染色。ki67および増殖分析の
ために、細胞を、Fixable Viability Dye(eFluorTM 780、eBioscience)、抗マウスCD8aおよび抗マウスPD-1(APCクローン29F.1A12、Biolegend)で染色し、続いて固定し、透過処理した。抗Ki67(PE、クローン16A8、Biolegend)で細胞内染色したのち、細胞を洗浄
し、Count Bright Absolute Counting Beads(Life Technologies)を含有するPBS中に再懸濁させた。追跡実験のために、細胞を、抗マウスCD8a(APC-Cy7、クローン53-6.7、Biolegend)、抗マウスCD45.1(APC、クローンA20、eBioscience)または抗マウスCD90.1(PeCy7またはPacific BlueTM、BiolegendクローンOX7)で染色した。同時追跡実験のために、CD45.1細胞とCD90.1細胞との比を計算した。細胞を固定/透過処理し、抗マウスIFN-γ抗体(FITC、クローンXMG1.2、Biolegend)で細胞内染色した。インビトロ再刺激のため
に、細胞を、抗CD3e-APC(クローン145-2C11、Biolegend)、抗CD8-PerCP(クローン53-6.7、Biolegend)および抗IFN-γ-FITC(クローンXMG1.2、Biolegend)抗体で染色した。PD-L1結合能力のために、細胞を5μg/mlの組換えPD-L1-Fc(R&D)とともにインキュベートし、抗ヒトIgG-APC抗体(クローンHP6017、Biolegend)で染色した。PD-L1発現分析のた
めに、腫瘍細胞を、示されたように、組換えIFN-γ(Peprotech、Germany)で48時間刺激した。細胞を抗PD-L1-APC抗体(クローン10F.9G2、Biolegend)で染色した。抗CD45(PacBlue、クローン30F11、Biolegend)、抗CD11b(Percp-Cy5.5、クローンM1/70、Biolegend)、抗Ly6(APC-Cy7、HK1.4、Biolegend)および抗Gr1(FITC、クローンRB6-8C5、Biolegend)抗体を使用して、骨髄由来サプレッサ細胞の染色を実施した。抗CD4(APC-Cy7、ク
ローンGK1.5、Biolegend)、抗CD8(Percp、53-6.7、Biolegend)抗体およびFoxp3のための細胞内染色(eFluor450、クローンFJK-16s、eBioscience)により、制御性T細胞を検出した。
【0087】
3.5 統計分析
統計分析には、GraphPad Prismソフトウェアバージョン5.0bを使用した。報告されるすべての変数は連続変数である。対応のない両側スチューデントt検定を使用して、実験条
件間の差を分析した。個々のマウスの実験条件の比較のために、マン・ホイットニー検定を使用した。p値<0.05を有意と見なした。インビボ実験のために、二元配置ANOVAをボンフェローニ法による多重検定補正とともに使用してグループ間の差を分析した。
【0088】
全生存率をログランク検定によって分析した。生存とは、腫瘍誘発から自然死までの、または以下の既定の基準の1つ:腫瘍サイズ>225mm2、体重減少>15%または重度の苦痛
に達したためにマウスを安楽死させるまでの日数で定義される。データは、示されるように、最小三回の生物学的反復実験または独立実験の平均値±SEMとして示す。
【0089】
3.6 結果
3.6.1 新規なPD-1-CD28融合受容体の理論的根拠および設計
樹立したOVA発現Panc02(Panc02-OVA)腫瘍を有するマウスにおいて、OVA特異的CD8+T
細胞の養子移入の効能を評価した。移入T細胞は、大部分のマウスにおいて腫瘍を拒絶し
なかった。これは、腫瘍に浸潤する移入T細胞上のPD-1の上方制御と平行に起こった(図5Aおよび5B)。Panc02-OVA細胞が、IFN-γによって上方制御されるPD-1のリガンド(PD-L1)を発現すると仮定すると(図5Cおよび5D)、これは、腫瘍における抗原特異的T細胞応
答を抑制する際の、PD-1-PD-L1軸の関連する役割を指し示す。理論によって拘束されることなく、PD-1媒介抑制からの移入T細胞の保護が養子T細胞療法の効能を増強し得ると仮定した。PD-1はCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであるため、受容体シグナル伝達が適合
性であり、融合PD-1-CD28受容体構築物がPD-L1によるPD-1の係合をCD28共刺激活性に変えることができると思われた(図5Eのスキーム)。したがって、一次ネズミT細胞中に形質
導入するための、PD-1の膜外および膜貫通部分とCD28の細胞内ドメインからなる融合受容体が設計された。
【0090】
3.6.2 形質導入T細胞のインビトロ機能分析
ネズミPD-1膜貫通PD-1-CD28融合タンパク質(PTM、SEQ ID NO: 13(cDNA)および14(
タンパク質))の機能性を試験するために、一次ネズミT細胞を形質導入し、アゴニストCD3抗体および組換えPD-L1(SEQ ID NO: 29および30)で刺激した。PTM形質導入T細胞は、非形質導入T細胞(図6F)と比較して、顕著に増加したIFN-γ(170+/-26対0.5+/-0.5ng/ml、p=0.003、図1A)およびIL-2誘発を示した。抗CD28抗体によるさらなる刺激がサイト
カイン産生をさらに促進した(図7A)。サイトカイン誘発は、PD-L1係合時のAKTの下流リン酸化と平行に起こり(図1B)、形質導入T細胞におけるCD28シグナル伝達を実証した。PTM受容体の活性化は、非形質導入T細胞(1ビーズあたり42+/-4対6+/-1細胞、p=0.001、
図1C)と比較して、生細胞の数を統計的に有意に高めた。この細胞数の増加は、形質導入T細胞による強いki67上方制御と関連し(図1D)、強い有糸分裂活性を示した。PTM形質導入OT-1 T細胞をPanc02-OVAまたはPanc02細胞とともに共培養すると、非形質導入T細胞と
比較したときの形質導入T細胞中のIFN-γ放出によって証明されるように、強い共刺激活
性が認められた(545+/-37対191+/-0.5ng/ml、p<0.001、図1E)。ネズミPTM融合タンパ
ク質の共刺激活性は、MHC-Iブロッキング(図1E)およびOVA陰性Panc02-PD-L1細胞との共培養(図7B)によって証明されるように、PD-L1の存在、腫瘍細胞によるOVA発現およびTCR係合に依存するものであった。抗CD3抗体およびPD-L1予備刺激PTM受容体形質導入T細胞
は、腫瘍細胞の即時および完全な溶解を媒介したが、一方で、非形質導入T細胞は無効で
あった(22時間からp<0.001、図1F)。合わさって、これらの所見は、ネズミPTM融合タ
ンパク質を形質導入されたT細胞がPD-1-PD-L1媒介アネルギーに対して耐性になったこと
を示す。これらの結果は、ネズミPD-1-CD28融合タンパク質(PTM、SEQ ID NO: 13(核酸
)(cDNA));14(タンパク質))受容体の機能性および治療ポテンシャルをインビトロで実証する。
【0091】
3.6.3 様々なPD-1-CD28融合構築物の機能比較
2つのPD-1-CD28融合タンパク質が、2倍までのサイトカイン誘発、わずかしかない増殖
活性およびいくらかの細胞溶解ポテンシャルを有するものとして記載されている(Ankri et al., J. Immunol 191(8) (2013), 4121-4129およびProsser et al., Mol. Immunol. 51(3-4) (2012), 263-272)。ネズミPTM融合タンパク質で認められた強い効果を考慮して
、本発明者らの結果との差がPD-1-CD28融合タンパク質(PTM)の構造に関連するかどうかを分析した。したがって、(ネズミ)CD28膜貫通ドメイン(CTM、SEQ ID NO: 43(核酸(cDNA));44(タンパク質))またはCD28膜貫通ドメイン+CD28細胞外ドメイン(CEX、SEQ ID NO: 49(核酸(cDNA));50(タンパク質))の一部を含む、PD-1-CD28融合受容
体構築物のためのさらなる融合タンパク質を産生した;図2Aを参照すること。抗CD3抗体
および組換えPD-L1で刺激した場合、すべての受容体は、IFN-γ放出(79+/-0.9対4+/-1対7+/-2ng/ml、p<0.001、図2B)および増殖の誘発(1ビーズあたり540+/-45対278+/-37対279+/-46個、それぞれp=0.01および0.02、図2C)によって評価すると、機能的であった。
しかし、PTM融合タンパク質は、IFN-γ分泌および増殖の両方に関してCTMおよびCEX受容
体よりもはるかに優れていた。機構的に、増強された活性は、CTMおよびCEX融合タンパク質とは反対に、PTM融合タンパク質へのPD-L1の結合の増強と平行に起こるものであった(MFI9315+/-165対2311+/-144対2997+/-167、p<0.001、図2D)。フローサイトメトリーに
よるCD8-T細胞上の発現は、すべての融合タンパク質の場合で大きく優れているわけでは
なかったため(図2E)、PTM融合タンパク質の増強された結合は、この構築物の表面発現
の増加によっては部分的にしか説明することができない。PTM融合タンパク質の増強され
た結合は、他の融合タンパク質CEXおよびCTMと比較して、その顕著に優れた機能活性の原因であり得る。
【0092】
3.6.4 PTM融合タンパク質機能に必要な機能ドメイン
PTMの活性の根底にある機構をさらに解明するために、本発明者らは、CD28のシグナル
伝達ドメインを非機能的にした変異体PD-1-CD28 PTM融合タンパク質を産生した。細胞内CD28ドメインのYMNMモチーフは、CD28活性化時、最適なサイトカイン分泌のために必要で
あり、PYAPモチーフはサイトカイン産生および細胞増殖活性の両方に不可欠である(Boomer and Green, Cold Spring Harb Perspect Biol 8 (2010), a002436)。本発明者らは、一次ネズミT細胞中での発現のためのPTM-FMNM変異体構築物(SEQ ID NO: 51(核酸(cDNA));52(タンパク質))、PTM-AYAA変異体構築物(SEQ ID NO: 53(核酸(cDNA));54(タンパク質))およびPTM-FMNM-AYAA二重変異体構築物(SEQ ID NO: 55(核酸(cDNA
));56(タンパク質))を生成した(図3A)。PTM構築物を発現するT細胞または3つの
変異体構築物の1つを抗CD3抗体および組換えPD-L1で刺激した。PTM融合構築物形質導入T
細胞は、PTM-FMNM、PTM-AYAAまたはPTM-FMNM-AYAAよりも統計的に有意に多いIFN-γを産
生した(22+/-2対8+/-1対1+/-0.07対0.1+/-0.05ng/ml、p<0.001、図3B)。PTM融合構築
物の係合はPYAP依存的に増殖を誘発したが、一方で、YMNMは増殖効果にとって重要ではなかった(図3C)。対照的に、PTM融合構築物係合による種々のサイトカインおよびケモカ
インの産生は、変異体構築物が天然のPTM融合タンパク質と比較して弱い誘発因子であっ
たため、両方のモチーフに依存すると思われる(図3D)。
【0093】
3.6.5 ネズミ膵臓がんモデルにおけるPD-1-CD28融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の治療効能
ネズミPD-1-CD28(PTM;SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))融合タ
ンパク質形質導入抗原特異的T細胞の効力をさらに評価するために、本発明者らは、皮下Panc02-OVA腫瘍を有するマウスを、非形質導入OT-1 T細胞またはPTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞で処置した。PTM受容体形質導入T細胞は、非形質導入T細胞を受けたマウス
と比較して、優れた抗腫瘍免疫を誘発した(図4A)。興味深いことに、PTM融合タンパク
質形質導入OT-1 T細胞は、PD-L1を強く過剰発現するPanc02-OVA-PD-L1モデルにおいては
、それらの治療ポテンシャルを保持したが、一方で、非形質導入OT-1細胞の効果はほぼ完全に無効化された(図7C)。Panc02-OVA細胞で再チャレンジした場合、PTM融合タンパク
質を形質導入したOT-1 T細胞で処置されたマウス12匹のうち11匹が、対照マウスの0%と
比較して、腫瘍がないままであった(p<0.001、図4B)。そのうえ、野生型Panc02細胞で再チャレンジした場合、PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞で事前に処置されたマウ
ス11匹のうち9匹が、腫瘍がないままであった(p<0.001、図4C)。これらの結果は、p15Eのような他のPanc02特異的腫瘍関連抗原に対する免疫をもたらす、治癒したマウスにお
けるエピトープの広がりを示唆する(Bauer et al., Gut 56(9) (2007), 1275-1282)。
したがって、腫瘍を有しないマウスのリンパ節を、SIINFEKL(OVA;SEQ ID NO: 65))およびp15E(gp70)特異的CD8+T細胞の存在に関して分析した。形質導入T細胞移入後のマウスにおいて、対照ペプチドに特異的なCTLと比較して、SIINFEKL特異的CTL細胞の数の統計的に有意な増加が見いだされた(13+/-3対1+/-0、p=0.008、図4D)。本発明者はまた、p15E特異的CTLの、小さな、しかし統計的に有意な増加を検出した(3+/-1対1+/-0、p=0.008、図4D)。得られた免疫は、ナイーブな脾細胞を移入されたマウス3匹の皆無と比較し
て、治癒したマウスからの脾細胞を養子移入したマウス9匹のうち3匹における腫瘍保護および腫瘍成長の遅延によって示されるように、移入可能であった(図4E)。
【0094】
3.6.6 腫瘍を有するマウス中の養子移入T細胞の分布
非形質導入OT-1 T細胞に対するPTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の治療効能が、PTM融合タンパク質中のCD28ドメインの存在によるものか、または単にT細胞表面上の非シ
グナル伝達PD-1の発現によるものかを区別するために、本発明者らは、PD-1の細胞内部分を欠くPD-1欠失変異体(PD-1del、SEQ ID NO: 57(核酸(cDNA));58(タンパク質))を発現させた。PD-1del形質導入OT-1 T細胞の注入は、PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の注入とは対照的に、Panc02-OVAモデルにおいて、非形質導入OT-1 T細胞と比較して、治療効能を改善しなかった(図5A)。これらの結果は、PTM融合タンパク質の細胞内CD28ドメインに対する依存性を示した。本発明者らは次に、腫瘍を有するマウスにおいて、PTM融合タンパク質(SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))-形質導入OT-1
T細胞と非形質導入OT-1 T細胞との運命を調べた。PTM融合タンパク質形質導入T細胞は、非形質導入T細胞と比較して、Panc02-OVA腫瘍中で富化を示した(59+/-2対49+/-1%、p=0.002)。この効果は、リンパ節または非腫瘍保有マウスの器官中では認められなかった
図5B)。加えて、PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞は、他の器官または非腫瘍保
有マウスと比較して、腫瘍中で非形質導入OT-1 T細胞よりも統計的に有意に多くのIFN-γを産生した(1.5+/-0.2対0.6+/-0.02対0.9+/-0.03、PTM IFN-γ+と非形質導入IFN-γ+T細胞との比、p=0.002、図5C)。インビボでのIFN-γの中和は、PTM形質導入OT-1 T細胞の
治療的影響をほぼ完全に無効化して、受容体の機能にとってのこのサイトカインの重要性を示した(図7D)。腫瘍中のPTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の蓄積の原因である
シグナル伝達モチーフをさらに解明するために、本発明者らは、上記のPTM-FMNM(SEQ ID
NO: 51(核酸(cDNA));52(タンパク質))、PTM-AYAA(SEQ ID NO: 53(核酸(cDNA));54(タンパク質))およびPTM-FMNM-AYAA(SEQ ID NO: 55(核酸(cDNA));56(タンパク質))変異体構築物形質導入T細胞を使用して、それらの運命を、腫瘍を有する
動物中のPTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の運命と比較した。腫瘍部位におけるPTM融合タンパク質形質導入T細胞のT細胞浸潤および残存性は、YMNM(SEQ ID NO: 29)およ
びPYAP(SEQ ID NO: 30)モチーフの両方に依存すると思われる。理由は、変異体を有す
るT細胞が、野生型受容体を有するT細胞と比較して、より少ない量で見いだされたからである(図5D)。浸潤PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞の増加は、浸潤性CD8+T細胞と骨髄由来サプレッサ細胞(MDSC)との比を、PTM融合タンパク質形質導入OT-1 T細胞に有
利なほうにシフトした(0.7+/-0.1対0.1+/-0.03、p<0.001、PTM-CD8+T細胞とMDSCとの比、図5E)。制御性T細胞に対するCD8+T細胞の比に関しても同様の効果が認められた(図7E)。合わさって、これらの知見は、PTM融合タンパク質形質導入T細胞の養子移入がバランスを免疫抑制から生産的免疫へと傾けたことを示す。
【0095】
実施例4:ヒト配列(SEQ ID NO: 23(核酸(cDNA)および24(タンパク質))を有するPD-1-CD28受容体の生成
上記実施例1.1に記載された方法に沿って、ヒト相同体PD-1-CD28融合タンパク質を産生し、NotIおよびEcoRI消化およびライゲーションののち、pMP71ベクターにクローニングした。得られたヒトPD-1膜貫通融合タンパク質(hPTM(SEQ ID NO: 23)(核酸(cDNA))
および24(タンパク質))は、PD-1細胞外(Uniprot Entry No: Q15116(エントリバージョン番号138および配列のバージョン3のアクセッション番号)、AA1~170;SEQ ID NO: 17(核酸(cDNA))および18(タンパク質))、ヒトPD-1膜貫通配列(Uniprot Entry No:
Q15116(エントリバージョン番号138および配列のバージョン3のアクセッション番号)
、AA171~191;SEQ ID NO: 19(核酸)および20(タンパク質))およびヒトCD28細胞内
領域(Uniprot Entry No: P10747(エントリバージョン164および配列のバージョン1のアクセッション番号)、AA180~220;SEQ ID NO: 21(核酸(cDNA))および22(タンパク
質))からなる。
【0096】
4.1 ヒトT細胞におけるヒトPD-1-CD28融合タンパク質(SEQ ID NO: 23(核酸(cDNA))および24(タンパク質))の機能性
一次ヒトT細胞にヒトPD-1-CD28融合タンパク質(hPTM、SEQ ID NO: 23(cDNA)および24(タンパク質))を形質導入し、抗CD3抗体単独で、または抗CD28抗体もしくは組換えPD-L1(R&D、カタログ番号156-B7-100)と組み合わせて刺激した。抗CD3抗体およびPD-L1によるT細胞の同時刺激は、抗CD3抗体刺激細胞と比較して、形質導入T細胞においてはIFN-
γの有意に増加した誘発を生じさせたが、非形質導入T細胞においてはそうではなかった
。これは、ヒトPD-1-CD28融合タンパク質を形質導入されたT細胞の機能性および刺激利点を実証する。
【0097】
実施例5:T細胞の形質導入および細胞毒性死傷アッセイ
選別したCD4+T細胞集団および/または腫瘍細胞株EG7-PD-L1を使用して、実施例3の選
択実験を繰り返した。これらの実験の材料および方法は、以下に示す例外を除いて、実施例2および3に概説されたものと同一であった。
【0098】
5.1 細胞株
ネズミ膵臓がん細胞株Panc02およびその卵白アルブミン形質移入相対物Panc02-OVAは、上記セクション2.1に記載されたとおりであった。
【0099】
腫瘍細胞株EG7-PD-L1は細胞株EL4に基づくものであった。腫瘍細胞株EL4は、9,10-ジメチル-1,2-ベンズアントラセンによってC57BLマウス中のリンパ腫誘発を介して作製した。ニワトリ卵白アルブミン(OVA)mRNAおよびネオマイシン(G418)耐性遺伝子のコピーを
保有するpAc-neo-OVAプラスミドによるエレクトロポレーションベースの形質移入が、EL4誘導体E.G7-OVAの樹立をもたらした(Moore MW et al., Cell 54; 777-785, 1988)。次
いで、完全長ネズミPD-L1 SEQ ID NO: 29(核酸(cDNA))および30(タンパク質)を含むpMX-s(Kitamura et al., Exp. Hematol. 31 (2003), 1007-1014)のレトロウイルス形質導入およびその後の、PD-L1陽性細胞のためのFACSベースの細胞選別(抗PD-L1、APC、
クローン10F.9G2、BioLegend)によってEG7-OVA-PDL1を作製した。EG7-PD-L1腫瘍細胞を
、10%FBS、1%PSおよび1%L-グルタミンを含むRPMI1640中で培養し、1%ピルビン酸ナトリウム、1mM HEPESおよび50μM β-メルカプトエタノールをT細胞培地に添加した。
【0100】
5.2 動物
卵白アルブミンに特異的なCD8+T細胞受容体(OT-1)および卵白アルブミンに特異的なCD4+T細胞受容体(OT2)のためのトランスジェニックマウスをJackson Laboratory、USAから取得し、本発明者らの動物施設中、特定病原体除去(SPF)条件下で飼育した。野生型C57B1/6マウスをJanvier、Franceから購入した。
【0101】
5.3 CD4+T細胞選別および形質導入
レトロウイルスベクターpMP71(Schambach et al., Mol Ther 2(5) (2000), 435-45;EP-B10955374)をエコトロピックパッケージング細胞株Plat-E(Platinum-E)の形質移入
に使用した。Leisegang et al., J Mol Med 86 (2008), 573-83;Mueller et al., J Virol. 86 (2012), 10866-10869;Kobold et al., J Natl Cancer Inst (2014)(近刊)によって記載された方法にしたがって形質導入を実施した。手短にいうと、パッケージング細胞株Plat E(Morita et al., Gene Ther 7 (2000) 1063-6によって記載されている)を6
ウェルプレートに播種し、一晩かけて70~80%コンフルエンスまで増殖させた。1日目に
、DNA 18μgを100mM CaCl2(Merck、Germany)と混合した。Plat-E細胞を沈殿したDNAと
とも6時間インキュベートした。培地を除去し、培養液と交換した。2日目に、一次脾細胞をC57B1/6マウス(Harlan Laboratories、The Netherlands)から採取し、MACS CD4+(L3T4)T細胞選別キット(Miltenyi Biotec、Germany)によってCD4+T細胞に関して選別した
。CD4+T細胞を、T細胞培地中、抗CD3(クローン145-2c11、BD Pharmingen、USA)、抗CD28(クローン37.51、BD Pharmingen、USA)、組換えネズミIL-2(Peprotech、Germany)および50μM β-メルカプトエタノールで一晩かけて刺激した。3日目に、24ウェルプレートを12.5μg/mlの組換えレトロネクチン(Takara Biotech、Japan)によって室温で2時間コートし、2%ウシ血清アルブミン(Roth、Germany)によって37℃で30分間ブロックし、PBSで洗浄した。Plat E培養物からウイルス含有上清を採取し、フィルタ(45μm、Milipore、USA)に通した。次いで、新鮮なT細胞培地をPlat E細胞に添加した。ろ過された上清1mlを24ウェルプレートの各ウェルに分配し、4℃で2時間スピノキュレーションした。次い
で上清を24ウェルプレートから取り出した。1×106個のT細胞を、1ウェルあたり100UのIL-2および400,000個の抗CD3および抗CD28ビーズ(Invitrogen、Germany)で補足されたT細胞培地1mlに播種し、32℃、800×gで30分間スピノキュレーションした。4日目に、Platinum-E上清を再び採取し、ろ過した。ろ過上清1mlを24ウェルプレートの各ウェルに添加し
、32℃、800×gで90分間スピノキュレーションした。その後、細胞を37℃で6時間インキ
ュベートした。その後、細胞を採取し、計数し、1mlあたり10ngのIL-15(Peprotech、Germany)および50μM β-メルカプトエタノールで補足されたT細胞培地中、1×106個/mlの密度で再び播種した。T細胞を、細胞分析または機能アッセイを実施する10日目まで、こ
の密度で維持した。
【0102】
5.4 機能的T細胞アッセイ
抗体ベースの刺激アッセイのために、96ウェルプレートを、ネズミ抗CD3抗体(100ng/ml、クローン145-2C11、eBioscience)を単独で、または抗CD28抗体(2μg/ml、クローン37.51、eBioscience)もしくは組換えPD-L1 Fcキメラ(5μg/ml、R&D Systems)のいずれ
かと組み合わせて含有するPBS(ビヒクル溶液)で4℃で12時間コートすることによって調製した。また、PBSのみを含むウェルを対照として調製した。その後、1ウェルあたり300,000個のT細胞を加え、36時間インキュベートした。カウントビーズ(Life Technologies
、Germany;カタログ番号C36950)の添加によって細胞を計数し、その後の増殖、生存率
および表現型分析をフローサイトメトリーによって実施した(以下に記載されるように)。ELISA(IL-2およびIFN-γの場合、いずれも製造業者の指示にしたがってBD)により、
上清中のサイトカインを定量化した。
【0103】
腫瘍細胞共培養実験におけるT細胞増殖および表現型分析のために、形質導入または非
形質導入CD8+および/またはCD4+T細胞を、上記のようにネズミ抗CD3e抗体および組換え
ネズミPD-L1で事前にコートした96ウェルプレート中、1ウェルあたり0.3×106個の細胞(単離されたCD4+細胞の場合、1ウェルあたり0.15×106個の細胞)で36時間刺激した(刺激の終了が時点1であった)。刺激の終了の4時間前に、1ウェルあたり0.030×106個のPancOVA腫瘍細胞(単離されたCD4+細胞の実験においては、1ウェルあたり0.04×106個のPancOVA細胞)を新たな96ウェルプレートに播種した。36時間の刺激の終わりに、予備刺激され
たT細胞を含むウェルの量の2/3を、標的腫瘍細胞を含むウェルに加え、さらに12時間、共培養した(時点2)。カウントビーズ(Life Technologies、Germany)の添加によって細
胞を計数した。時点1および2で、T細胞表現型(CD62L、CCR7)および活性化マーカー(CD69、PD-1)をフローサイトメトリーによって測定した(以下に記載されるとおり)。
【0104】
インビトロ死傷アッセイのために、1ウェルあたり形質導入または非形質導入CD8+およ
び/またはCD4+T細胞を、上記のように、抗CD3e抗体および組換えPD-L1 Fcキメラで36時
間刺激した。刺激の終了の4時間前に、腫瘍細胞を上記のように96ウェルプレートに播種
した。腫瘍細胞の正確な数は、適用した腫瘍細胞に依存した:0.03~0.040×106個のPancOVAおよび0.02×106個のEG7-PD-L1。刺激後、予備刺激されたT細胞を含むウェルの量の2/3を、標的腫瘍細胞を含むウェルに添加した。適用された腫瘍細胞に依存して、共培養を8~18時間、実施した(PancOVA腫瘍細胞の場合は8時間、EG7-PDL1の場合は18時間)。次いで、上清を回収し、LDHベースの細胞毒性アッセイ(Promega、US)またはネズミGranzyme
B ELISA(R&D Systems、US)を使用してT細胞死傷能力を分析した。ELISA(IFN-γ、BD
)によって上清中のIFN-γレベルを定量化した。
【0105】
インビボ実験のために、マウス1匹あたり200,000個のEG7-PD-L1細胞を皮下注射した。
腫瘍が触診可能になると、マウス1匹あたり10×106個のPTM形質導入T細胞または非形質導入OT-1を尾静脈経由で注射した。2~3日ごとに腫瘍サイズを計測し、腫瘍が225mm2の最大サイズに達したときマウスを殺処分した。腫瘍拒絶の30日後に、治癒したマウスおよび対照マウスを30,000個の腫瘍細胞(マウス1匹あたり、同じく皮下注射)で再チャレンジし
た。
【0106】
5.5 フローサイトメトリー
マルチカラーフローサイトメトリーは、BD FACS Canto II(BD bioscience、Germany)を使用して実施され、以下の抗体パネルを使用した。
【0107】
抗体ベースの刺激アッセイの場合、細胞を、Fixable Viability Dye(AmCyan、BioLegend)、抗マウスCD4(PacBlue、クローンGK1.5、BioLegend)および抗マウスPD-1(APCク
ローン29F.1A12、Biolegend)で染色した。続いて細胞を固定し、透過処理した。抗Ki67
(PE、クローン16A8、Biolegend)および抗EOMES(PeCy7、クローンDan11mag、eBioscience)で細胞内染色したのち、細胞を洗浄し、Count Bright Absolute Counting Beads(Life Technologies、US)を含有するPBS中に再懸濁させた。または、特異的T細胞サブセッ
トの分化のために、抗IL17(FITC、クローンTC11-18H10.1、BioLegend)および抗FoxP3(PE、クローン150D、BioLegend)を細胞内染色プロセスに含めた。
【0108】
表現型実験の場合、細胞を、Fixable Viability Dye(AmCyan、BioLegend)、抗マウスCD8a(APCCy7、クローン53-6.7、BioLegend)、抗マウスCD4(PE、クローンGK1.5、BioLegend)、抗マウスCD62L(PacBlue、クローンMEL-14、BioLegend)、抗マウスCCR7(PerCP/Cy5.5、クローン4B12、BioLegend)、抗マウスCD69(PeCy7、クローンH1.2F3、BioLegend)および抗マウスPD-1(APCクローン、29F.1A12、Biolegend)で染色した。
【0109】
5.6 結果
5.6.1 形質導入CD4+T細胞のインビトロ機能および表現型分析
ネズミPD-1膜貫通PD-1-CD28融合タンパク質(PTM、SEQ ID NO: 13(cDNA)および14(
タンパク質))の機能性を試験するために、一次ネズミCD4+T細胞にアゴニスト抗CD3抗体または組換えPD-L1(SEQ ID NO: 29および30)もしくは抗CD28抗体のいずれかと組み合わせたアゴニスト抗CD3抗体を形質導入し、刺激した。PTM形質導入CD4+T細胞は、非形質導
入CD4+T細胞と比較して顕著に増加したIFN-γを示した(19998対291pg/ml、p<0.001、図9A)。PTM受容体の活性化は、対照と比較して増殖および生存率の統計学的に有意な改善
を生じさせた(増殖の場合:1ビーズあたり151対68細胞(それぞれ、抗CD3抗体および組
換えPD-L1対CD3抗体)、p<0.001、図9B;生存率の場合:60%対40%(それぞれ、抗CD3
抗体および組換えPD-L1対CD3抗体)、p<0.001、図9C)。この細胞数の増加は、強いki67およびeosmesdermin/Tbr2(EOMES)上方制御と関連し、強い有糸分裂活性および増強された転写/顕著な活性化状態を示した(それぞれ図9Dおよび9E)。
【0110】
PTM受容体の活性化もまた、IL-17またはFoxP3産生の任意の増加と関連していなかった
。PTM形質導入CD4+T細胞中のIL-17およびFoxP3の発現は、対照細胞における発現と同様であり(それぞれ図10Aおよび10B)、PTM受容体の活性化がTヘルパー細胞集団内でTh17またはTreg細胞サブタイプのいずれへの表現型シフトをも生じさせないことを示した。
【0111】
予備刺激されたPTM形質導入T細胞とPancOVA細胞との共培養は、CD8+(図11Aおよび11B
)およびCD4+集団(図11Cおよび11D)の両方の場合で、エフェクターの割合の減少および
中央記憶T細胞の割合の増加をもたらした。中央記憶T細胞は、エフェクター記憶T細胞に
比べて改善された抗腫瘍エフェクター活性を有するものと記載されているため、これらの結果はまた、インビボでのPTM形質導入T細胞の好ましい活性を部分的に説明し得る。PTM
形質導入または非形質導入CD4+およびCD8+T細胞の共培養の間、早期活性化マーカーCD69
の発現は減少したが(図11Eおよび11F)、一方で、後期活性化マーカーPD1の発現は増加
した(図11G)。
【0112】
5.6.2 ネズミ膵臓がんモデルにおけるPD-1-CD28融合タンパク質形質導入T細胞の治療効

PD-1-CD28(PTM;SEQ ID NO: 13(核酸(cDNA));14(タンパク質))タンパク質形
質導入抗原特異的T細胞(実施例2および3に記載されたOT-1 T細胞)を使用して、皮下EG7-PD-L1腫瘍を有するマウスを処置した。PBSまたは非形質導入OT-1 T細胞で処置された同
様な腫瘍保有マウスを対照として使用した。PTM受容体形質導入T細胞もまた、対照マウスと比較して、このモデルにおいて優れた抗腫瘍免疫を誘発し(図12A)、生存率を有意に
改善した(p=0.03;図12B)。EG7-PD-L1細胞で再チャレンジした場合、PTM形質導入で事前に処置されていたマウスは効果的に治癒し、対照のナイーブなマウスと比較して腫瘍のないままであった(図12C)。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12A
図12B
【配列表】
2024073636000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質をコードする第一の配列、および改変ポリペプチドをコードする第二の配列を含む核酸であって、
前記融合タンパク質は、
i)PD-1細胞外ドメインとPD-1膜貫通ドメインからなるヒトPD-1ポリペプチドであって、ここで前記PD-1細胞外ドメインはPD-L1結合活性を有し、および
ii)CD28の細胞内ドメインからなるCD28ポリペプチド、
を含み、
ここで、ヒトPD-1ポリペプチドのC末端はCD28ポリペプチドのN末端に結合しており、そして
前記改変ポリペプチドが、キメラ抗原受容体、α/βT細胞受容体、天然T細胞受容体、抗CD3 T細胞エンゲージャー、およびT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)からなる群から選択される、
前記核酸。
【請求項2】
前記PD-1の膜貫通ドメインがSEQ ID NO:20の配列からなる、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記PD-1ポリペプチドがSEQ ID NO:16の配列からなる、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
前記CD28ポリペプチドが配列YMNM(SEQ ID NO:29)および/またはPYAP(SEQ ID NO:30)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項5】
前記CD28ポリペプチドがSEQ ID NO:22のアミノ酸配列の配列からなる、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記融合タンパク質をコードする第一の配列および前記改変ポリペプチドをコードする第二の配列の間に、2Aペプチドまたは2A様配列をコードする配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項7】
前記融合タンパク質をコードする第一の配列および前記改変ポリペプチドをコードする第二の配列の間に、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
SEQ ID NO:23の配列を含む、1~5のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項10】
前記ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸、または請求項9または10に記載のベクターを含む細胞。
【外国語明細書】