(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073637
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】リポソーム医薬品の連続製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20240522BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240522BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240522BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/63 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/635 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240522BHJP
A61K 38/14 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20240522BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20240522BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240522BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240522BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K47/02
A61K47/24
A61K47/28
A61K31/7036
A61K31/65
A61K31/63
A61K31/635
A61K31/42
A61K31/4375
A61K31/5025
A61K31/496
A61K38/14
A61K31/7048
A61K31/4178
A61K31/4164
A61K31/4174
A61K31/4196
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044407
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2020552823の分割
【原出願日】2019-03-29
(31)【優先権主張番号】62/650,372
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ウォーシャム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076CC31
4C076CC32
4C076DD23Z
4C076DD63
4C076DD70
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF70
4C076GG27
4C084AA02
4C084AA03
4C084DA44
4C084NA20
4C084ZB31
4C084ZB35
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086BC50
4C086BC60
4C086CB22
4C086DA19
4C086DA20
4C086DA29
4C086EA09
4C086EA15
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA05
4C086MA24
4C086NA20
4C086ZB31
4C086ZB35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リポソームAPI製剤の製造方法を提供する。
【解決手段】連続インラインダイアフィルトレーション法によるリポソームAPI製剤の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液が2つの別々の流れからインラインで混合され、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程、
リポソーム封入APIを、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える第1中央ベッセルへ、第1注入口を通して導入する工程であって、第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの前記注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第1排出口が第1中央ベッセルの第2注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口であり;第1中央ベッセルの第2排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2TFFユニットの注入口と流体連通しており、第2TFFユニットの第1排出口が保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口である、工程;
リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIを、第1中央ベッセルから第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程;および
リポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程
を含む、リポソームAPI製剤の製造方法。
【請求項2】
有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液が2つの別々の流れからインラインで混合され、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程、
リポソーム封入APIを、注入口および排出口を備える第1中央ベッセルへ、注入口を通して導入する工程であって、排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2TFFユニットの注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口であり;第2TFFユニットの第1排出口が保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口である、工程;
リポソーム封入APIを、第1TFFユニットへ第1の時間流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIリポソームを、第1TFFの第1排出口から第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程;および
リポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程
を含む、リポソームAPI製剤の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液が2つの別々の流れからインラインで混合され、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程、
リポソーム封入APIを、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える第1中央ベッセルへ、第1注入口を通して導入する工程であって、第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第1排出口が第1中央ベッセルの第2注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第2排出口が廃棄物排出口であり;第1中央ベッセルの第2排出口が第2中央ベッセルの第1注入口と流体連通しており、
第2中央ベッセルが第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備え、第2中央ベッセルの第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通しており、
第2TFFユニットの第1排出口が第2中央ベッセルの第2注入口と流体連通しており、第2TFFユニットの第2排出口が廃棄物排出口であり;第2中央ベッセルの第2排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第3TFFユニットの注入口と流体連通しており、第3TFFユニットの第1排出口が保持液排出口であり、第3TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口である、工程;
リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIを、第1中央ベッセルから第2中央ベッセルへ第2の時間流す工程;
リポソーム封入APIを、第2TFFユニットへ第2中央ベッセルから第3の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第2TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIを、第2中央ベッセルから第3TFFユニットの注入口を通って第4の時間流す工程;および
リポソーム封入API製剤を、第3TFFユニットの第1排出口から回収する工程
を含む、リポソームAPI製剤の製造方法。
【請求項4】
混合が、APIコアセルベートの形成をもたらす、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
APIコアセルベートが、APIコアセルベート周囲の脂質二重層形成を開始する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
リポソーム内部のAPI濃度が、外部のAPI濃度より高い、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
バッファーを、第1中央ベッセルへ第3注入口を通して第1の時間の前または第1の時間の間に導入する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第2TFFユニットが、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である、請求項1、2および4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第3TFFユニットが、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
リポソームAPI製剤を1つ以上の更なるTFFユニットから第2TFFユニットへ流す工程、およびリポソームAPI製剤を第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程の前に、リポソーム封入APIを第1中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程をさらに含む、請求項1、2および4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
リポソームAPI製剤を1つ以上の更なるTFFユニットから第3TFFユニットへ流す工程、およびリポソームAPI製剤を第3TFFユニットの第1排出口から回収する工程の前に、リポソーム封入APIを第2中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程をさらに含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の更なるTFFユニットが、1つ以上のSPTFFユニットを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の更なるTFFユニットが、直列に接続した2つ以上のTFFユニットを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の更なるTFFユニットが、並列に接続した2つ以上のTFFユニットを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の更なるTFFユニットが、直列に接続した4つのTFFユニットを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の更なるTFFユニットが、1つのTFFユニットを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
バッファーが、塩化ナトリウムバッファーである、請求項6~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
脂質が、リン脂質を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)またはホスファチジン酸(PA)を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
リン脂質が、ホスファチジルコリンである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
脂質が、1つ以上の正味中性脂質を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ホスファチジルコリンが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
脂質が、コレステロールを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
脂質が、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水素添加卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素添加卵ホスファチジルグリセロール(HEPG)、水素添加卵ホスファチジルイノシトール(HEPI)、水素添加卵ホスファチジルセリン(HEPS)、水素添加ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水素添加ホスファチジン酸(HEPA)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素添加大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水素添加大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水素添加大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水素添加大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水素添加大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジル-コリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、トコフェロール、トコフェロールヘミコハク酸、トコフェロール硫酸、コレステリルヘミコハク酸、コレステロール誘導体、脂肪酸のアンモニウム塩類、リン脂質のアンモニウム塩類、グリセリドのアンモニウム塩類、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジル酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジル酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、またはその混合物を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
脂質が、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルグリセロール(PSPG)、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、セラニド、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、または1つアシル化されたリン脂質を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
脂質が、1つアシル化されたリン脂質を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1つアシル化されたリン脂質が、モノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
脂質が、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミンおよびステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、またはその組合せを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
脂質が、DPPCおよびコレステロールを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
脂質が、DPPCおよびコレステロールからなる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
脂質が、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
脂質が、2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG)を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
APIが、抗感染症薬である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
抗感染症薬が、アミノグリコシド系またはその医薬的に許容される塩である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
アミノグリコシド系が、アミカシンまたはその医薬的に許容される塩である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
アミカシンが、アミカシン硫酸塩である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗感染症薬が、テトラサイクリン系である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
テトラサイクリン系が、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリンまたはミノサイクリンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗感染症薬が、スルホンアミド系である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
スルホンアミド系が、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフィソキサゾールまたはスルファセタミドである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
抗感染症薬が、キノロン系である、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
キノロン系が、ナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシンまたはノルフロキサシンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
キノロン系が、シプロフロキサシンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
抗感染症薬が、グリコペプチド系である、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
グリコペプチド系が、表2に記載のグリコペプチド系である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
グリコペプチド系が、バンコマイシンまたはその誘導体である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
APIが、抗真菌薬である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
抗真菌薬が、ポリエン系抗真菌薬、フルシトシン、イミダゾール系、トリアゾール系、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール、シクロピロックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフタート、ナフチフィンまたはテルビナフィンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
アミノグリコシド系が、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロデストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、その医薬的に許容される塩、またはその組合せである、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
アミノグリコシド系が、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン、エチマイシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロデストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン、その医薬的に許容される塩、またはその組合せである、請求項34に記載の方法。
【請求項51】
抗真菌薬が、ポリエン系抗真菌薬である、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
ポリエン系抗真菌薬が、アムホテリシンB、ニスタチンまたはナタマイシンである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
抗真菌薬が、イミダゾール系である、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
イミダゾール系が、n-チコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾールまたはケトコナゾールである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
抗真菌薬が、トリアゾール系である、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
トリアゾール系が、イトラコナゾールまたはフルコナゾールである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、3対1以下、2.5対1以下、2対1以下、1.5対1以下、または1対1以下である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、3対1未満、2.5対1未満、2対1未満、1.5対1未満、または1対1未満である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約0.7対1である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約3:1から約0.5:1、約2.5:1から約0.5:1、約2:1から約0.5:1、約1.5:1から約0.5:1、または約1:1から約0.5:1である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約3:1から約0.5:1である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約2.5:1から約0.5:1である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約2:1から約0.5:1である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約1:1から約0.5:1である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年3月30日出願の米国仮出願第62/650,372号に基づく優先権を主張し、この出願の開示は、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0002】
連続製造は、原材料がプロセスへ絶えず流入し、中間体または最終製品が絶えず流出するプロセスである。このような処理は、非製薬産業で用いられており、最近、活性医薬成分(API)の合成および固形経口剤形(錠剤など)の生成などのいくつかのタイプの医薬品プロセスで採用されている(Kleinebudde et al. (Eds.), Continuous Manufacturing of Pharmaceuticals, Wiley-VCH, Hoboken 2017;Subramanian, G. (Ed.), Continuous Process in Pharmaceutical Manufacturing, Wiley-VCH, Weinheim 2015)。
【0003】
最近、連続製造は、生物製剤の製造に用いられている。生物製剤の製造は、周辺単位操作、例えば細胞培養、クロマトグラフィー、ウイルス不活化およびタンジェンシャルフローろ過(TFF)、例えば交互タンジェンシャルろ過(ATF)およびシングルパスタンジェンシャルフローろ過(SPTFF)のための様々な方法を考慮するための要件および側面を開発し続けている(Subramanian, G. (Ed.), Continuous Process in Pharmaceutical Manufacturing, Wiley-VCH, Weinheim 2015))。例えば、ATFは、TFFと比較して低いせん断力でバッファー/培地の交換を実施するための手段である。連続灌流細胞培養は、高濃度の懸濁液との連続培地交換をサポートするために用いられている(Castilho, Continuous Animal Cell Perfusion Processes: The First Step Toward Integrated Continuous Manufacturing, in: Subramanian, G. (Ed.), Continuous Process in Pharmaceutical Manufacturing, Wiley-VCH, Weinheim 2015, pp. 115-153; Whitford, Single-Use Systems Support Continuous Bioprocessing by Perfusion Culture, in: Subramanian, G. (Ed.), Continuous Process in Pharmaceutical Manufacturing, Wiley-VCH, Weinheim 2015, pp. 183-226)。
【0004】
シングルパスタンジェンシャルフローろ過(SPTFF)は、タンパク質の濃縮についても評価されており、このプロセス工程を、従来のTFFで必要とされていたバッチ式に代えて連続的に実行することを可能にする(Brower et al. Monoclonal Antibody Continuous Processing Enabled by Single Use, in: Subramanian, G. (Ed.), Continuous Process in Pharmaceutical Manufacturing, Wiley-VCH, Weinheim 2015, pp. 255-296; Jungbauer, Continuous downstream processing of biopharmaceuticals. Trends in Biotechnolgy. 2013, 8, 479-492; Dizon-Maspat et al., Single pass tangential flow filtration to debottleneck downstream processing for therapeutic antibody production. Biotechnol Bioeng. 2012, 4, 962-70)。
【0005】
プロセス分析技術(PAT)の要件およびシングルユースまたは使い捨て部品の使用など、連続製造を商業的に実装するための他の側面が検討されている。シングルユースまたは使い捨て技術の実装は、バッチプロセスの場合と同じ概念上の利点を提供するが、シングルユース/使い捨てアイテムごとに生成される製品が多くなるため規模が大きくなる。
【0006】
本発明は、リポソーム医薬品などのリポソーム活性医薬成分(リポソームAPI)の連続製造方法の必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様において、リポソームAPI製剤を連続的に製造するための方法を提供する。
【0008】
リポソームAPI製剤を製造する方法の一実施態様は、有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液を2つの別々の流れからインラインで混合し、リポソーム封入API(liposomal encapsulated API)が2つの流れの交差部分で形成される工程を含む。方法は、リポソーム封入APIを、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える中央ベッセルへ、第1注入口を通して導入する工程をさらに含む。中央ベッセルの第1排出口は、第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。第1TFFユニットは、前記の注入口および第1および第2排出口を備える。第1TFFユニットの第1排出口は、中央ベッセルの第2注入口と流体連通し、第1TFFユニットの第2排出口は、廃棄物排出口である。中央ベッセルの第2排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2TFFユニットの注入口と流体連通する。第2TFFユニットの第1排出口は、保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。方法は、リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程をさらに含む。リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る。方法は、リポソームAPI製剤を、中央ベッセルから第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程、およびリポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程をさらに含む。
【0009】
一実施態様において、方法は、リポソームAPI製剤を第2TFFユニットへ流す工程の前に、リポソーム封入APIを中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程を含む。
【0010】
一実施態様において、第2TFFユニットは、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である。
【0011】
第2実施態様において、リポソームAPI製剤を製造する方法は、有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液を2つの別々の流れからインラインで混合し、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程を含む。方法は、リポソーム封入APIを、注入口および排出口を備える中央ベッセルへ、注入口を通して導入する工程をさらに含む。排出口は、第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。第1TFFユニットは、前記の注入口および第1および第2排出口を備える。第1TFFユニットの第1排出口は、第2TFFの注入口と流体連通し、第1TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。第2TFFは、前記の注入口および第1および第2排出口を備える。第2TFFユニットの第1排出口は、保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。方法は、リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程をさらに含む。リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る。方法は、リポソームAPI製剤を、第1TFFの第1排出口から第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程、およびリポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程をさらに含む。
【0012】
更なる実施態様において、方法は、リポソームAPI製剤を第2TFFユニットへ流す工程の前に、リポソーム封入APIを中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程を含む。
【0013】
一実施態様において、第2TFFユニットは、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である。
【0014】
第3実施態様において、リポソームAPI製剤の製造方法は、有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液を2つの別々の流れからインラインで混合し、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程を含む。方法は、リポソーム封入APIを、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える中央ベッセルへ、第1注入口を通して導入する工程をさらに含む。第1排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。第1TFFユニットの第1排出口は、第1中央ベッセルの第2注入口と流体連通し、第1TFFユニットの第2排出口は、廃棄物排出口である。第1中央ベッセルの第2排出口は、第2中央ベッセルの第1注入口と流体連通する。第2中央ベッセルは、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備え、第2中央ベッセルの第1排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。第2TFFユニットの第1排出口は、第2中央ベッセルの第2注入口と流体連通し、第2TFFユニットの第2排出口は、廃棄物排出口である。第2中央ベッセルの第2排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第3TFFユニットの注入口と流体連通し、第3TFFユニットの第1排出口は、保持液排出口であり、第3TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。方法は、リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る工程をさらに含む。方法は、リポソーム封入APIを、第1中央ベッセルから第2中央ベッセルへ第2の時間流す工程、およびリポソーム封入APIを、第2TFFユニットへ第2中央ベッセルから第3の時間連続的に流す工程をさらに含む。リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第2TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る。方法は、リポソーム封入APIを、第2中央ベッセルから第3TFFユニットの注入口を通って第4の時間流す工程;およびリポソーム封入API製剤を、第3TFFユニットの第1排出口から回収する工程をさらに含む。
【0015】
第3実施態様の一態様において、方法は、リポソームAPI製剤を第3TFFユニットへ流す工程の前に、リポソーム封入APIを第2中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程を含む。
【0016】
第3実施態様の別の一態様において、第3TFFユニットは、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である。
【0017】
本明細書で提供される方法の一実施態様において、脂質溶液とAPI水溶液の混合は、APIコアセルベートの形成をもたらす。更なる実施態様において、APIコアセルベートは、APIコアセルベート周囲の脂質二重層形成を開始する。
【0018】
本明細書で提供される方法の一実施態様において、APIは、アミノグリコシド系である。更なる実施態様において、アミノグリコシド系は、アミカシンまたはその医薬的に許容される塩である。また更なる実施態様において、アミカシンは、アミカシン硫酸塩である。
【0019】
本明細書で提供される方法の一実施態様において、バッファーを、第1中央ベッセルへ第3注入口を通して第1の時間の前または第1の時間の間に導入する。
【0020】
本発明の別の一実施態様によれば、上記の連続した方法により製造されるリポソームAPI製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、リポソームAPIの製造プロセスのフロー図である。エタノール/エーテル注入バッチデザイン法:脂質/溶媒溶液を直接中央ベッセルへ供給する。製剤を多工程のバッファー交換ダイアフィルトレーションおよび濃縮工程で精製する。
【0022】
【
図2】
図2は、リポソームAPIの製造プロセスのフロー図である。クロスフロー法:溶媒/貧溶媒を交差部分でインライン混合する。製剤を多工程のバッファー交換ダイアフィルトレーションおよび濃縮工程で精製する。
【0023】
【
図3】
図3リポソームAPIの連続製造のプロセスデザインである。シングルタンクのバッファー交換タンジェンシャルフローろ過(TFF)およびシングルステージの同時濃縮シングルパスタンジェンシャルフローろ過(SPTFF)。
【0024】
【
図4】
図4リポソームAPIの連続製造のプロセスデザインである。連続マルチステージ(マルチベッセル)のバッファー交換TFFおよびシングルステージの同時濃縮SPTFF。
【0025】
【
図5】
図5リポソームAPIの連続製造のプロセスデザインである。シングルタンクのバッファー交換TFFおよびマルチステージの同時濃縮SPTFF。
【0026】
【
図6】
図6リポソームAPIの連続製造のプロセスデザインである。同時濃縮SPTFFを伴うマルチステージのバッファー交換(インラインダイアフィルトレーション(ILDF))。
【0027】
【
図7】
図7は、リポソームAPI製剤についてのバッチ対連続処理工程/時間の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一態様において、本発明は、リポソームAPI製剤の製造のための連続製造プロセスの使用に関する。理論に拘束されることを望むものではないが、洗浄することなく連続製造プロセスを実装する潜在的な利益には、経済的な利点(設備投資の削減、施設の設置面積の縮小、総売上原価(COGS)の低下)、製剤の一貫性および品質の向上が含まれる。
【0029】
別の一態様において、本明細書で提供されるプロセスにより製造されるリポソームAPI製剤が提供される。
【0030】
本明細書で提供されるリポソームAPI製剤を製造する方法の一態様は、最初のリポソームのAPI封入工程を含む。一実施態様において、リポソームのAPI封入は、有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液を2つの別々の流れからインラインで混合し、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程を含む。別の一実施態様において、リポソームのAPI封入は、アルコール注入法により中央ベッセルで行う。
【0031】
第1実施態様において、方法は、リポソーム封入APIを中央ベッセルへ導入する工程またはリポソーム封入APIを中央ベッセル中で形成する工程を含む。中央ベッセルは、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える。一実施態様において、リポソーム封入APIを、中央ベッセルの第1注入口を通して導入する。
【0032】
中央ベッセルの第1排出口は、第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。
【0033】
用語「タンジェンシャルフローろ過ユニット」または「TFFユニット」は、当該技術分野において公知であり、少なくとも1つのハウジング(例えばシリンダーまたはカートリッジ)と、フィルター表面の大部分がユニットを通る流体(例えばリポソーム懸濁液)の流れと平行に配置されるようにハウジング内に配置される少なくとも1つのクロスフロー(タンジェンシャル)フィルターを備えるデバイスを意味する。一実施態様において、TFFユニットは、1つのフィルターを備える。別の一実施態様において、TFFユニットは、2つのフィルターを備える。さらに別の一実施態様において、TFFユニットは、3つのフィルターを備える。TFFユニットは、当該技術分野において周知であり、例えばPall Life Sciencesから市販されている。ハウジングは、例えば、流体が第1注入口/排出口を通過し、少なくとも1つのクロスフローフィルターを横切り、第2注入口/排出口を通過できるように配置される第1注入口/排出口および第2注入口/排出口を備え得る。いくつかの例において、回路システムは、例えば直列および/または並列に接続した複数のTFFユニットを備え得る。本明細書で提供される方法において、TFFユニットを、所望の長さの流体経路を提供するために、直列および/または並列に接続し得る。例えば、4、5、6、7、8、9または10個のTFFユニットを、本明細書で提供される方法において並列および/または直列に接続し得る。一実施態様において、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のTFFユニットを、本明細書で提供される方法において並列および/または直列に接続する。別の一実施態様において、約5~20個または約5~15個のTFFユニットを、本明細書で提供される方法の1つにおいて直列に接続する。
【0034】
一実施態様において、2つ以上のTFFユニットを備える回路システムは、システム内のTFFユニットの隣接する対を流体的に接続する流体導管を備え得る。他の例において、回路システムは、流体導管により流体的に接続された2つ以上のTFFユニットを備え得る。一実施態様において、TFFユニットは、シングルパスTFF(SPTFF)ユニットである。別の一実施態様において、2つ以上のTFFユニットは、TFFユニットおよびSPTFFユニットを備える。
【0035】
第1TFFユニットは、前記の注入口および第1および第2排出口を備える。第1TFFユニットの第1排出口は、保持液排出口であり、中央ベッセルの第2注入口と流体連通し、第1TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。中央ベッセルの第2排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2TFFユニットの注入口と流体連通する。第2TFFユニットの第1排出口は、保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。
【0036】
方法は、リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程をさらに含む。リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る。方法は、リポソームAPI製剤を、中央ベッセルから第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程、およびリポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程をさらに含む。
【0037】
本明細書で用いる「流体連通」は、例えば、接続ポートを介して直接的にまたはTFFユニット、中央ベッセルなどのプロセスユニットを介して間接的に連通する、直接的または間接的な流体連通を意味する。
【0038】
一実施態様において、方法は、リポソームAPI製剤を第2TFFユニットへ流す工程の前に、リポソーム封入APIを中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程を含む。
【0039】
一実施態様において、第2TFFユニットは、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である。
【0040】
第2実施態様において、方法は、リポソーム封入APIを中央ベッセルへ導入する工程またはリポソーム封入APIを中央ベッセル中で形成する工程を含む。中央ベッセルは、注入口および排出口を備える。一実施態様において、リポソーム封入APIを、中央ベッセルの注入口を通して導入する。
【0041】
中央ベッセルの排出口は、第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。第1TFFユニットは、前記の注入口および第1および第2排出口を備える。第1TFFユニットの第1排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2TFFユニットの注入口と流体連通する。第2TFFユニットの第1排出口は、保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。
【0042】
方法は、リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程をさらに含む。リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る。方法は、リポソームAPI製剤を、第1TFFの第1排出口から第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程、およびリポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程をさらに含む。
【0043】
一実施態様において、方法は、リポソームAPI製剤を第2TFFユニットへ流す工程の前に、リポソーム封入APIを中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程を含む。
【0044】
一実施態様において、第2TFFユニットは、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である。
【0045】
リポソームAPI製剤の連続製造方法の第3実施態様において、方法は、リポソーム封入APIを第1中央ベッセルへ導入する工程、またはリポソーム封入APIを第1中央ベッセル中で形成する工程を含む。第1中央ベッセルは、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える。一態様において、リポソーム封入APIを、中央ベッセルへ第1注入口通して導入する。第1中央ベッセルの第1排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。第1TFFユニットの第1排出口は、第1中央ベッセルの第2注入口と流体連通し、第1TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。第1中央ベッセルの第2排出口は、第2中央ベッセルの第1注入口と流体連通する。
【0046】
第2中央ベッセルは、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える。第2中央ベッセルの第1排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通する。第2TFFユニットの第1排出口(保持液排出口)は、第2中央ベッセルの第2注入口と流体連通し、第2TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。第2中央ベッセルの第2排出口は、注入口ならびに第1および第2排出口を備える第3TFFユニットの注入口と流体連通する。第3TFFユニットの第1排出口は、保持液排出口であり、第3TFFユニットの第2排出口は、廃棄物(透過液)排出口である。
【0047】
この実施態様において、方法は、リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る工程をさらに含む。方法は、リポソーム封入APIを、第1中央ベッセルから第2中央ベッセルへ第2の時間流す工程、およびリポソーム封入APIを、第2TFFユニットへ第2中央ベッセルから第3の時間連続的に流す工程をさらに含む。リポソーム封入APIは、TFF注入口を通って第2TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る。方法は、リポソーム封入APIを、第2中央ベッセルから第3TFFユニットの注入口を通って第4の時間流す工程;およびリポソーム封入API製剤を、第3TFFユニットの第1排出口から回収する工程をさらに含む。
【0048】
「第1の時間」、「第2の時間」、「第3の時間」および「第4の時間」は、リポソームAPIの製剤化に用いられる材料の選択および/またはリポソームAPI製剤の所望の濃度に一部依存して、方法の使用者によりそれぞれ選択され得る。一実施態様において、「第1の時間」、「第2の時間」、「第3の時間」および/または「第4の時間」は、それぞれ独立して、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間または108時間である。
【0049】
本明細書で提供される方法の各々において、最初のリポソーム形成工程が用いられる。様々なリポソーム封入方法が当業者に利用可能であり、本明細書で用いられ得る。一実施態様において、リポソーム封入工程は、最初のろ過工程の上流で実施される。一実施態様において、リポソーム封入は、第1中央ベッセル中で行われる。別の一実施態様において、リポソーム封入は、第1中央ベッセルの上流で行われ、第1中央ベッセルへ提供される。
【0050】
リポソームは、1960年代初頭に最初に発見され、それ以来、多くの戦略がその製造のために示されてきた(Mozafari. Liposomes: an overview of manufacturing techniques. Cell Mol Biol Lett. 2005, 10(4), 711-719; Maherani et al., Liposomes: A Review of Manufacturing Techniques and Targeting Strategies. Current Nanoscience. 2011, 7(3), 436-445;これら各々は、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0051】
リポソーム製剤は、しばしば、有害な臨床副作用を軽減するおよび/または全身投与と比較してより標的化された送達を提供することを目的とした公定書収載APIの再配合(reformulation)である(Maurer et al. Expert Opinion on Biological Therapy. 2001, 6, 923-947; Lian and Ho. Expert J Pharm Sci. 2001, 6, 667-680;これら各々は、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0052】
しかしながら、最近まで、医薬開発におけるリポソーム製剤の適用は、商業的スケールアップを可能にするのに十分なスループットを有する信頼できる製造方法の欠如に悩まされてきた。表1は、様々なリポソーム形成方法の概要を提供する。本明細書で提供される実施態様において、リポソームAPIは、超臨界流体法、高密度ガス法、アルコール注入またはクロスフロー法により第1中央ベッセルへまたは第1中央ベッセルにおいて提供され得る。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0053】
一般的に、リポソーム合成の戦略は、成分の溶解性、濃度およびプロセスの熱力学的パラメーター(例えば温度、圧力など)を含むベシクルアセンブリの重要な推進力の1つまたはいくつかに対処し、最適化することに焦点が当てられている(Mozafari (2005). Cell Mol Biol Lett., 10(4), pp. 711-719; Maherani et al. (2011). Current Nanoscience. 7(3), pp. 436-445、これら各々は、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。製造方法は、様々な特性を有するリポソームを微調整するようにデザインされ得て、そうすることで、大規模処理しやすい利点および欠点の両方をもたらし得る。また、製造方法の選択は、しばしば、リポソームサイズおよびサイズ分布、脂質組成およびAPI放出特性を含む臨床的有効性のための最終製品の要件に依存し、まとめて、吸収、分布、代謝および排泄(ADME)の薬物動態学的実証を決定する。
【0054】
リポソーム形成のための最も初期の方法は、様々なサイズ、形状およびラメラの脂質構造の自然形成をもたらす、水性媒体中でのリン脂質薄膜の再水和を含む多工程合成戦略から始まった(Bangham et al. The action of steroids and streptolysin S on the permeability of phospholipid structures to cations. J. Mol. Biol. 1965, 13, 253-259; Bangham et al. Diffusion of univalent ions across the lamellae of swollen phospholipids. J. Mol. Biol. 1965, 13, 238-252; Deamer and Bangham. Large volume liposomes by an ether vaporization method. Biochimica et Biophysica Acta. 1976, 443, 629-634)。均一な製剤生産のために、これらの懸濁液は、形成後の機械的サイズ操作戦略を必要とする(Barnadas-Rodriguez and Sabes. Factors involved in the production of liposomes with a high-pressure homogenizer. Int. J. Pharma. 2001, 213, 175-186; Carugo et al. Liposome production by microfluidics: potential and limiting factors. Scientific Reports. 2016, 6, DOI:10.1038/srep25876)。より最近では、規制された医薬品環境で実装することができる、制御された沈殿およびその後のリン脂質の単一形態構造への自己組織化に到達するために、プログラミング可能なオンラインフローベースの戦略を含む単回工程の拡張可能な技術の可能性を調査することに精力が傾けられている(Wagner et al. Production of Liposomes - A New Industrial Approach. Journal of Liposome Research. 2006, 16:3, 311-319)。
【0055】
一実施態様において、アルコール注入またはクロスフロー技術は、本明細書で提供される製造方法の1つで用いられる。リポソームは、例えばアルコール注入により、第1中央ベッセル中で形成されるか、または上流におけるリポソーム製剤のインライン形成工程後に第1中央ベッセルへ提供される。一実施態様において、国際特許出願公開WO2007/117550(クロスフロー);WO2007/011940(クロスフロー)および/またはWO2004/110346(アルコール注入)(これら各々は、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に示されるリポソーム形成方法の1つは、本明細書において最初のリポソーム形成工程で用いられる。
【0056】
アルコール注入および/またはクロスフロー法のリポソーム形成の実施態様において、溶解させた脂質は、アルコール相と水相の相互拡散によって有機溶媒から水性溶液(貧溶媒)へ沈殿する(
図1~2)(Jaafar-Maalej et al. Ethanol injection method for hydrophilic and lipophilic drug-loaded liposome preparation. Journal of Liposome Research. 2010, 20:3, 228-243; Wagner et al. Liposomes produced in a pilot scale: production, purification and efficiency aspects. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics. 2002, 54, 213-219; Wagner et al. The crossflow injection technique: An improvement of the ethanol injection method. Journal of Liposome Research. 2002, 12:3, 259-270; Wagner and Vorauer-Uhl. Liposome Technology for Industrial Purposes. Journal of Drug Delivery. 2011, 2011, DOI: 10.1155/2011/591325; Wagner et al. Enhanced protein loading into liposomes by the multiple crossflow injection technique. Journal of Liposome Research. 2002, 12:3, 271-283)。このプロセス中の脂質の局所溶解性の変化は、最終的に、少量の水性溶液を封入するリポソームの自然形成をもたらす。APIの化学的性質に依存して、水性コアに封入されるか、またはリポソームの脂質二重層に埋め込まれることができる。この方法によるリポソーム形成のパラメーターは、滞留時間、および有機溶媒和脂質と貧溶媒の混合/交差の幾何学であり、これはプログラムされたフロー条件によって決定される。リポソーム形成後、望ましくない有機溶媒および未封入のAPIを含む混合物は、本明細書に記載のTFFまたは同様の方法を用いて、所望の製剤強度および組成に精製され得る。
【0057】
超臨界流体法および高密度ガス法は脂質溶液の溶媒と同じ名称を用いるが、注入法およびクロスフロー法は有機溶媒を用いることに注意されたい。理論に拘束されることを望むものではないが、超臨界および高密度ガスの供給溶液は、連続デザインに適用するのが困難な高圧を必要とすると考えられている(Meure et al. Conventional and dense gas technology for the production of liposomes: A review. AAPS Pharma. Sci. Tech. 2008, 9(3), 798-809; Santo et al. Liposomes Size Engineering by Combination of Ethanol Injection and Supercritical Processing. J Pharm Sci. 2015, 104(11), 3842-3850; Santo et al. Liposomes preparation using a supercritical fluid assisted continuous process. Chemical Engineering Journal. 2014, 249, 153-159; Campardelli et al. Efficient encapsulation of proteins in submicro liposomes using a supercritical fluid assisted continuous process. The Journal of Supercritical Fluids. 2016, 107, 163-169; Frederiksen et al. Preparation of Liposomes Encapsulating Water-Soluble Compounds Using Supercritical Carbon Dioxide. Journal of Pharmaceutical Sciences. 1997, 86(8), 921-928; Otake et al. Development of a new preparation method of liposomes using supercritical carbon dioxide. Langmuir. 2001, 17(13), 3898-3901; Anton et al. Preparation of a liposome dispersion containing an active agent by compression-decompression. EP616801, 1994)。供給溶液の連続形成により、リポソーム形成工程を無限に進行させ得る。連続工程を加えることにより、リポソームAPI製剤の連続製造を実施し得る。
【0058】
一態様において、本発明は、リポソームに封入されたかまたはリポソームと複合体化した活性医薬成分(API)を含むリポソーム製剤の連続製造方法を提供する。いくつかの実施態様において、APIは、アミノグリコシド系である。更なる実施態様において、アミノグリコシド系は、アミカシンまたはその医薬的に許容される塩である。
【0059】
「医薬的に許容される塩」は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含む。医薬的に許容される付加塩は、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたはその他で望ましくないものではない塩であって、無機酸、例えばこれらに限定されないが、塩酸(HCl)、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、ならびに有機酸、例えばこれらに限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセタミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸(例えばラクテートとして)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酢酸(例えばアセテートとして)、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、ウンデシレン酸などと形成される塩を指す。一実施態様において、医薬的に許容される塩は、HCl、TFA、ラクテートまたはアセテートである。
【0060】
医薬的に許容される塩基付加塩は、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたはその他で望ましくないものではない。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸へ加えることで製造される。無機塩基由来の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などを含むがこれらに限定されない。無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含む。有機塩基由来の塩は、第1級、第2級、および第3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えばアンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩を含むがこれらに限定されない。医薬的に許容される塩を形成するのに用いられ得る有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインを含む。
【0061】
用語「単位操作」は、当該技術分野の用語であり、リポソーム封入APIの製造プロセスで実施され得る機能的工程を意味する。例えば、単位操作は、脂質を混合してリポソーム封入APIを形成する工程、ろ過(例えば、リポソーム封入API含有流体からの夾雑細菌の除去、遊離APIの除去、遊離脂質の除去など)、イオンおよび/またはリポソーム封入API含有流体の濃度を調節する工程、望ましくない塩を除去する工程であり得る。
【0062】
本明細書で提供される連続製造プロセスにおけるリポソーム形成の単位操作下流は、リポソームAPI製剤を所望の規格まで精製するために用いられる。多くの場合、単位操作、例えばTFFは、望ましくない成分、例えば未封入のAPIまたは有機溶媒を除去し、リポソームAPI製剤を最終的な所望の強度まで濃縮するために用いられる。この場合、保持液は、リポソームAPI製剤を含有し、透過液は、廃棄物流として機能する。本明細書で提供される方法で用いられ得るプロセスの例として、例えば
図3~6を参照されたい。
【0063】
本明細書で提供される実施態様において、リポソームAPI製剤の製造におけるバッファー交換および濃縮のためのTFFは、連続操作をサポートするようにバランスがとられている。この操作のバッチ様式デザインは、リポソーム含有保持液を中央ベッセルへ戻し、透過液/廃棄物流を新鮮なバッファーの供給で補填し(定重量ダイアフィルトレーション)、バッファー交換を容易にする、TFF工程を必要とする。バッファー交換が完了すると、生成物を、バッファーの添加を中止することにより所望の強度まで濃縮する(
図1、2)。対照的に、本明細書で提供される特定の実施態様において、連続バッファー交換および/または同時濃縮工程が用いられる。
【0064】
入ってくる供給物の組成および所望の最終製剤の規格に応じて、連続操作の様々な配置が用いられ得る。シングルステージを備えるシングルベッセルバッファー交換TFFシステムは、連続デザインのための一実施態様として機能する(
図3)。定常状態のダイアフィルトレーションまたはシングルパス濃縮が、シングルステージでは必要な速度のバッファー交換または濃縮を達成できない場合、更なるステージが加えられ得る(
図4、5)。また、連続バッファー交換のためのよりコンパクトなデザイン、例えばCadence
TMインラインダイアフィルトレーションモジュール(ILDF)が利用可能になりつつあり、本明細書で提供される連続リポソーム製造方法において用いられ得る(例えば、Gjoka et al. (2017) Platform for Integrated Continuous Bioprocessing. BioPharm International. 30:7, pp. 26-32(あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)参照)。SPTFFで終了するILDFデザインは、理論に拘束されることを望むものではないが、連続バッファー交換をサポートするために、複数のベッセルの必要性を排除すると考えられている(
図6)。さらに、
図6におけるILDFデザインは、例えば、更なるTFFユニットを直列および/または並列に、例えば更なる1、2、3、4、5または6個のTFFユニットを直列および/または並列に備えるように変更され得る。本明細書で提供される方法での使用に適した他のILDFシステムアーキテクチャーは、米国特許出願公開第2017/0225123号(この開示は、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)で見つけられる。
【0065】
リポソーム製剤の製造中に、APIの捕捉効率には許容可能でかつ予測される変動がある。バッチプロセスにおいては、これは、濃縮工程前の活性成分濃度のオフラインでのインプロセス測定により補正される。流速、質量および密度などの測定値は、本明細書で提供される連続操作において実装され得る制御レベルを提供する。別の一実施態様において、インライン高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのリアルタイム濃度測定が用いられる。別の一実施態様において、オフラインでの試験時間を60分から4分へ短縮する高速HPLCを用いて、製造プロセス中のリポソームAPI製剤の濃度を測定する(Kumar, V., Joshi, V., A Rapid HPLC Method for Enabling PAT Application for Processing of GCSF. LCGC North America. 2013, 31:11, 948-953、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。一実施態様において、粒子径などの他のインラインでの測定値が用いられる。一実施態様において、粒子径の測定値を用いて、サイズをリポソームAPI製剤の濃度に相関させる。
【0066】
本明細書で提供される一実施態様において、連続製造プロセスは、予め滅菌された構成要素および/または定置蒸気(SIP)装置を用いて準備され、供給溶液(APIを含有する水性溶液、有機溶媒中の脂質またはバッファー)は、典型的には0.2μm以下の孔径を有する滅菌フィルターを通ってシステムへ入れられなければならない。一実施態様において、滅菌ろ過工程の能力(所与の濃度の生物体を除去するフィルターの能力)および/または時間(生物体のグロースルー(grow-through)がフィルターを損なう前の使用時間)は、本明細書で提供される連続製造において一方または両方を実装する前に検証される。本明細書で提供される方法の一実施態様において、大規模余剰ろ過デザインまたは並列ろ過経路の逐次使用が用いられる。理論に拘束されることを望むものではないが、複数の余剰経路が著しい圧力低下の問題を引き起こし得るため、並列経路の逐次使用は、実行可能な解決策であると考えられている。
【0067】
一実施態様において、本明細書で提供されるリポソームの製造プロセスで封入されるAPIは、抗感染症薬である。抗感染症薬は、感染症、例えば細菌、マイクロバクテリア、真菌、ウイルスまたは原虫の感染症に対して作用する薬物である。本明細書で提供される方法によりリポソームに封入され得る抗感染症薬は、アミノグリコシド系(例えばストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシンなど)、テトラサイクリン系(例えばクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)、スルホンアミド系(例えばスルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール(sulfamethaoxazole)、スルフィソキサゾール、スルファセタミドなど)、パラアミノ安息香酸、ジアミノピリミジン系(例えば、スルファメトキサゾール、ピラジンアミドなどと組み合わせて使用されることが多いトリメトプリム)、キノロン系(例えばナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンなど)、ペニシリン系(例えばペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリンなど)、ペニシリナーゼ耐性ペニシリン(例えばメチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリンなど)、第1世代セファロスポリン系(例えばセファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、セファロチン、セファピリン、セファゾリンなど)、第2世代セファロスポリン系(例えばセファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、セフロキシムアキセチル;セフメタゾール、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォラニドなど)、第3世代セファロスポリン系(例えばセフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテンなど)、他のβラクタム系(例えばイミペネム、メロペネム、アズトレオナム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタムなど)、βラクタマーゼ阻害薬(例えばクラブラン酸)、クロラムフェニコール、マクロライド系(例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシンなど)、リンコマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、ポリミキシン系(例えばポリミキシンA、B、C、D、E1(コリスチンA)、またはE2、コリスチンBまたはCなど)コリスチン、バンコマイシン、バシトラシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、エチオナミド、アミノサリチル酸、シクロセリン、カプレオマイシン、スルホン系(例えばダプソン、スルホキソンナトリウムなど)、クロファジミン、サリドマイド、または脂質に封入され得るあらゆる他の抗菌薬を含むがこれらに限定されない。抗感染症薬は、ポリエン系抗真菌薬(例えばアムホテリシンB、ニスタチン、ナタマイシンなど)、フルシトシン、イミダゾール系(例えばn-チコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾールなど)、トリアゾール系(例えばイトラコナゾール、フルコナゾールなど)、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール、シクロピロックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフタート、ナフチフィン、テルビナフィン、または脂質に封入もしくは複合体化され得るあらゆる他の抗真菌を含む、抗真菌薬を含み得る。議論および例は、主にアミカシンに向けられているが、本願の範囲がこの抗感染症薬に限定されることを意図していない。APIの組合せが用いられ得る。
【0068】
一実施態様において、APIは、アミノグリコシド系、キノロン系、ポリエン系抗真菌薬またはポリミキシン系である。
【0069】
一実施態様において、APIは、アミノグリコシド系である。更なる実施態様において、アミノグリコシド系は、アミノグリコシド系の遊離塩基、またはその塩、溶媒和物、または他の非共有誘導体である。更なる実施態様において、アミノグリコシド系は、アミカシンである。本発明のAPI製剤で用いられる適切なアミノグリコシド系として含まれるのは、APIの医薬的に許容される付加塩および複合体である。化合物が1つ以上の不斉中心を有し得る場合、断らない限り、本発明は、各固有のラセミ化合物および各固有の非ラセミ化合物を含む。活性物質が不飽和の炭素-炭素二重結合を有する場合、シス(Z)およびトランス(E)両方の異性体が本発明の範囲内である。活性物質がケト-エノール互変異性体などの互変異性体の形態で存在する場合、各互変異性体の形態が本発明の範囲内に含まれるものとして企図される。一実施態様において、アミカシンは、アミカシン塩基またはアミカシン塩、例えばアミカシン硫酸塩またはアミカシン二硫酸塩として医薬製剤中に存在する。一実施態様において、上記アミノグリコシド系の1つ以上の組合せが、本明細書に記載の製剤、システムおよび方法において用いられる。更なる実施態様において、組合せは、アミカシンを含む。
【0070】
一実施態様において、APIは、アミカシンまたはその医薬的に許容される塩である。更なる実施態様において、アミカシンは、アミカシン硫酸塩である。
【0071】
さらに別の一実施態様において、APIは、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロデストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、またはその組合せより選択される、アミノグリコシド系である。
【0072】
さらに別の一実施態様において、APIは、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン、エチマイシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロデストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン、またはその組合せより選択される、アミノグリコシド系である。
【0073】
一実施態様において、APIは、グリコペプチド系抗生物質を含む。バンコマイシンおよびテイコプラニンを含むグリコペプチド系抗生物質は、細菌細胞壁のペプチドグリカン合成における後期段階を阻害する、大きくて硬い分子である。グリコペプチド系は、6個のペプチド結合、珍しいトリフェニルエーテル部分、および様々な部位に結合した糖を含む多環ペプチドコアにより特徴づけられる。グリコペプチド系に属すると指定された30個以上の抗生物質が報告されている。グリコペプチド系のうち、バンコマイシンおよびテイコプラニンは広く用いられており、重度の感染症、特に多剤耐性グラム陽性病原体により引き起こされる感染症の処置に推奨されている。グリコペプチド系アボパルシンは、過去に畜産の成長促進剤として導入されており、エンテロコッカスにおけるVanA型のバンコマイシン耐性の主要なリザーバーを代表する。バンコマイシンおよびテイコプラニンの半合成誘導体であるリポグリコペプチド系は、多剤耐性および一部のバンコマイシン耐性菌に対して広範な活性スペクトルを示した(Reynolds (1989). Eur. J. Clin Microbiol Infect Dis 8, pp. 943-950; Nordmann et al. (2007). Curr. Opin. Microbiol. 10, pp. 436-440)。本段落で参照される刊行物の各々は、その全体として本明細書の一部とする。
【0074】
グリコペプチド系抗生物質は、グラム陽性の生物体およびいくつかの嫌気性菌に対して活性である。グリコペプチド系抗生物質の主な適応症は、βラクタマーゼ産生スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(βラクタマーゼ耐性ペニシリン系、セファロスポリン系、およびペニシリン系とβラクタマーゼ阻害剤の組合せがより安全な代替薬であると証明されている)により引き起こされる感染症、およびクロストリジウム・ディフィシル(Colstridium difficile)により引き起こされる大腸炎である。すべてのβラクタム系だけでなく主要な抗生物質クラスにも耐性があるメチシリン耐性S.アウレウス(MRSA)株の出現および急速な広がりは、バンコマイシンへの関心が新たになり、別の天然グリコペプチド系であるテイコプラニンが市場に押し出された。テイコプラニンは、活性の点でバンコマイシンに匹敵するが、薬物動態的な利点を示し、例えば半減期が延長され、1日1回投与が可能になる(van Bambeke F., Curr. Opin. Pharm., 4(5):471-478)。
【0075】
本発明の組成物で用いられ得る代表的ないくつかグリコペプチド系を表2に示す。抗生物質複合体を、アルファベット順に構造タイプおよび産生菌と共に記載する。これらの代謝物は、より一般的なストレプトマイセス(Streptomyces)種から比較的珍しい属のストレプトスポランジウム(Streptosporangium)およびサッカロモノスポラ(Saccharomonospora)までに及ぶアクチノマイセテス(actinomycetes)の多様なグループによって産生される。あまり一般的ではないアクチノプラネス(Actionplanes)およびアミコラトプシス(Amycolatopsis)が産生菌のほぼ半分を占める(Nagarajan, R., Glycopeptide Antibiotics, CRC Press, 1994、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【表2-1】
【表2-2】
【0076】
別の一実施態様によれば、本発明の組成物で用いられるグリコペプチド系抗生物質は、A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB-65、アクタプラニン、アクチノイジン、アルダシン、アボパルシン、アズレオマイシン、クロロオリエンチシン、クロロポリスポリン、デカプラニン、N-脱メチルバンコマイシン、エレモマイシン、ガラカルジン、ヘルベカルジン、イズペプチン、キブデリン、LL-AM374、マンノペプチン、MM45289、MM47761、MM47766、MM55266、MM55270、OA-7653、オリエンチシン、パルボジシン、リストセチン、リストマイシン、シンモニシン、テイコプラニン、UK-68597、UK-69542、UK-72051、バンコマイシン、およびその混合物を含むがこれらに限定されない。
【0077】
一実施態様によれば、APIは、バンコマイシンである。バンコマイシンは、グラム陽性菌のムコペプチド生合成を阻害する水溶性で両性のグリコペプチド殺菌性抗生物質である。それは、アミノデオキシ糖、バンコサミンおよびD-グルコースからなる二糖ユニットに結合する三環系非リボソームヘプタペプチドコア構造からなる。約1450ダルトンのこの天然抗生物質は、ストレプトマイセス・オリエンタリス(Streptomyces orientalis)(ノカルディア・オリエンタリス、またはアミコラトプシス・オリエンタリスとしても知られる)から得られる。バンコマイシンは、pKa 2.18の1個のカルボキシル基、ならびにpKa 7.75の第1級アミンおよびpKa 8.89の第2級アミンの2個のアミノ基を有する。生理的pH以下では、バンコマイシンは正味の正電荷を有する。
【0078】
別の一実施態様において、APIは、オリタバンシン(LY333328)である。オリタバンシンは、天然グリコペプチド系クロロエレモマイシンの4'クロロ-ビフェニルカルボキシアルデヒドでの還元的アルキル化により得られて、4-エピ-バンコサミン糖の添加および4-エピバンコサミンによるバンコサミンの置換によってバンコマイシンと異なる(Cooper, R. et al., J Antibiot (Tokyo) 1996, 49:575-581、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。オリタバンシンは、バンコマイシンに匹敵する一般的な活性スペクトルを示すが、固有の活性の点でかなりの利点を提供し、スタフィロコッカスおよびエンテロコッカスにより生じる耐性メカニズムに非感受性のままである。バンコマイシンとオリタバンシンの遊離D-Ala-D-AlaおよびD-Ala-D-Lacへの結合親和性は同じ大きさのオーダーであるため、それらの活性の差異は、インサイチュでの薬物と両タイプの前駆体間における協調的相互作用に起因している。以前の研究は、効果がおそらく、二量体化するより極めて強力な能力およびクロロビフェニル側鎖の細胞質膜のおけるアンカリングにより引き起こされることを示唆した(Allen, et al., FEMS Microbiol Rev, 2003, 26:511-532、出典明示により本明細書の一部とする)。
【0079】
別の一実施態様において、APIは、テラバンシン(TD-6424)である。テラバンシンは、バンコマイシンの半合成誘導体であり、バンコサミン糖(デシルアミノエチル)上に疎水性側鎖を、環状ペプチドコア上に(ホスホノメチル)アミノメチル置換を有する(van Bambeke, F., Curr. Opin. Pharm., 4(5): 471-478; Judice, J. et al., Bioorg Med Chem Lett 2003, 13: 4165-4168、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。疎水性側鎖の長さは、MRSA(8~10個の炭素)およびVanAエンテロコッカス(12~16個の炭素)に対する最適化活性の間の妥協点に達すように選択された。
薬理試験は、vanA遺伝子クラスターを宿すS.ニューモニエ(S. pneumoniae)、S.アウレウス(程度は少ないが)およびスタフィロコッカスまたはエンテロコッカスに対するテラバンシンの活性の増強は、近い類似体で得られたデータに基づいて、脂質合成のゆらぎとおそらく膜破壊が関連する複雑な作用機序に起因することを示唆している。
【0080】
さらに別の一実施態様において、APIは、ダルババンシン(BI 397)である。ダルババンシンは、テイコプラニンのものと関連する構造を有するグリコペプチド系のA40926の半合成誘導体である。オリタバンシンおよびテラバンシンと同様に、ダルババンシンは、S.ニューモニエに対して従来のグリコペプチド系より活性であり、S.アウレウスに対するその活性もまた、実質的に業況されており、これはバンコマイシンの半合成誘導体では見られなかったものである。しかしながら、試験は、グリコペプチド系に耐性のVanA表現型を宿すエンテロコッカスに対してテイコプラニンより活性でないこと示した。
【0081】
一実施態様において、本明細書に記載の連続製造プロセスで用いられる脂質成分は、正味中性脂質、または正味中性脂質の組合せを含む。一実施態様において、脂質成分は、アニオン脂質を含まない。一実施態様において、脂質は、ホスファチジルコリン、例えばジパルミトイルホスファチジルコリンまたはジオレオイルホスファチジルコリンを含むがこれらに限定されないリン脂質;コレステロールを含むがこれらに限定されないステロール;またはホスファチジルコリンとステロール(例えばコレステロール)の組合せである。
【0082】
本発明の安定化脂質ベースのグリコペプチド系抗生物質組成物を製造するのに用いられ得る脂質成分の例は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水素添加卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素添加卵ホスファチジルグリセロール(HEPG)、水素添加卵ホスファチジルイノシトール(HEPI)、水素添加卵ホスファチジルセリン(HEPS)、水素添加ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水素添加ホスファチジン酸(HEPA)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素添加大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水素添加大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水素添加大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水素添加大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水素添加大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジル-コリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、トコフェロール、トコフェロールヘミコハク酸、トコフェロール硫酸、コレステリルヘミコハク酸、コレステロール誘導体、脂肪酸のアンモニウム塩類、リン脂質のアンモニウム塩類、グリセリドのアンモニウム塩類、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジル酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジル酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、またはその混合物を含むがこれらに限定されない。
【0083】
別の一実施態様において、本発明の連続製造プロセスにおいて用いられる脂質成分は、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルグリセロール(PSPG)、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、セラニド、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、1つアシル化されたリン脂質、例えばモノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、またはその組合せを含む。
【0084】
別の一実施態様において、連続製造プロセスにおいて用いられる脂質成分は、脂肪酸、リン脂質、ステロール、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)またはホスファチジルセリン(PS)のアンモニウム塩を含む。脂肪酸は、炭素原子が12~26個の炭素鎖長であって、飽和または不飽和いずれかである脂肪酸であり得る。いくつかの具体的な例としては、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミンおよびステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)および1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
別の一実施態様によれば、脂質は、ホスファチジルコリンを含む。更なる実施態様において、ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)またはパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)である。また更なる実施態様において、ホスファチジルコリンは、DPPCを含む。
【0086】
別の一実施態様によれば、脂質は、ホスファチジルグリセロールを含む。更なる実施態様において、ホスファチジルグリセロールは、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG)である。
【0087】
別の一実施態様によれば、脂質成分は、コレステロールおよびエルゴステロールを含むがこれらに限定されない、ステロールを含む。一実施態様において、脂質は、リン脂質およびステロールを含む。更なる実施態様において、ステロールは、コレステロールである。
【0088】
一実施態様において、本明細書で提供されるリポソーム封入APIの脂質対API重量比は、3対1以下、2.5対1以下、2対1以下、1.5対1以下、または1対1以下である。別の一実施態様において、本明細書で提供されるリポソーム封入APIの脂質対API比は、3対1未満、2.5対1未満、2対1未満、1.5対1未満、または1対1未満である。更なる実施態様において、脂質対API比は、約0.7対1以下、または約0.7対1である。また更なる実施態様において、APIは、アミノグリコシド系、例えばアミカシンまたはその医薬的に許容される塩である。
【0089】
一実施態様において、本明細書で提供されるリポソーム封入APIの脂質対API重量比(脂質:API)は、約3:1から約0.5:1、約2.5:1から約0.5:1、約2:1から約0.5:1、約1.5:1から約0.5:1、または約1:1から約0.5:1である。更なる実施態様において、APIは、アミノグリコシド系、例えばアミカシンまたはその医薬的に許容される塩である。
【実施例0090】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。しかしながら、実施例は、上記実施態様と同じく、例示的なものであり、いかなる方法でも本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0091】
実施例1 バッチおよび連続リポソーム製造プロセスのケーススタディ
ケーススタディの目的で、次の選択肢を比較する;(1)バッチプロセス工程を維持しながら1時間のリポソーム形成工程から2500個の充填単位を製造するバッチプロセスデザイン、および(2)同時連続単位操作での24時間のリポソーム形成工程を可能にする連続プロセスデザイン。バッチプロセスは、初期の臨床生産に用いられたプロセスに基づく。バッチおよび連続デザインは、同じ処理速度を有する同じスケールの装置を用いることを想定している。単位操作および処理時間の概要を
図7に示す。
【0092】
バッチプロセスは、20時間の合計処理時間(準備(組み立て、CIP/SIPなど)を含む)で、2500個の充填単位を生産することができる。これは、125単位/時間に計算される。連続プロセスは、24時間である。リポソーム形成工程は、34時間の合計処理時間で18,750個の充填単位を生産し、551単位/時間である。これは、同じオーバーヘッドコストで生産量の4.4倍増加、ならびに同じプロセス準備およびシングルユース構成部品(滅菌フィルター、TFFカートリッジ)コストで生産量の7.5倍増加に相当する。これは、前記の連続デザイン(例えば
図3~6に示す)の1つを達成するのに必要とされる更なる資本的費用を無視している。
【0093】
プロセスを比較する別の方法は、所与の生産予測を満たす能力によるものである。1年当たり100万個の単位の予測では、連続デザインは、34時間のプロセスを約1週間に1回実施することを必要とする。バッチデザインでは、20時間のプロセスを、1日に複数回実施しなければならず、予測を満たすために複数のラインをより高速で実施する必要がある。
【0094】
初期の臨床スケール生産ラインを連続操作に変換することにより、コスト削減およびより高いスループットが達成されるだけでなく、プロセスのスケールアップの必要性が軽減され、プロセス開発作業および大規模な資本設備購入をサポートする必要性を省く。
【0095】
実施例2 連続リポソーム製造
この実施例は、DPPCおよびコレステロールからなる脂質成分を有するリポソームアミカシン製剤の連続インラインダイアフィルトレーション(ILDF)/濃縮の概要を示す。この実施例は、連続インラインダイアフィルトレーションモジュールの操作条件/パラメーターの理解に関係する。
【0096】
装置および構成要素
下記表3の装置および構成要素を、この実施例で実施した両方の実験に用いた。ILDLの準備では、2つの標準的なペリスタポンプを操作に用い、1つは供給および保持液を制御し、もう1つはバッファー注入を制御する。ILDFには、6つの流体処理モジュールが含まれた。流体処理モジュールは、ろ過膜、供給チャンネルおよび透過液チャンネル)を備える(すなわち、1つの更なる流体処理モジュールを有する
図6に示すダイアグラム。
【表3】
【0097】
溶液調製
各実験を開始する前に、プロセストレインにおけるすべての製剤の接触表面を、0.1N NaOHを用いて清浄化するか、必要に応じて新しい構成要素と交換した。清浄化後、RODI水でのすすぎを、中性pHを達成するまで完了した。清浄化に続いて、アミカシン溶液および生理食塩水を調製し、続いて脂質溶液を調製した。秤取したすべての原材料を、目標から期待される精度内であった。すべての原材料の重量、ならびに注入、ダイアフィルトレーションおよび濃度に関連する更なる処理情報を、処理中に記録した。溶液調製の原材料を下記表4に示す。
【表4】
【0098】
アミカシン-脂質注入
処理の間、Melfiシステムが、流速、圧力、温度、ベッセル重量および時間を記録する。米国特許第7,718,189号(この開示は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載のとおり、アミカシンおよび脂質注入をインライン法により実施し、2Lのリポソームアミカシン懸濁液を作った。
【0099】
インラインダイアフィルトレーション
2Lの注入した材料を、スキッド下に回収し、ILDFにより処理した。PendoTECHのカスタムデータ収集ソフトウェアを用いて、ダイアフィルトレーションの時間中すべてのプロセスデータを記録し、ログを取った。約200mLの生成物を、1セットの流速(試行1)でダイアフィルトレーションした後、ポンプの設定を変えて、約200mLの生成物を、別の1セットの流速(試行2)で回収した。実験を通して収集したプロセスデータの概要は、表5参照。
【表5】
【0100】
分析結果
表6は、実験の最初の分析結果を示す。
【表6】
【0101】
本明細書で引用するすべての刊行物、手順、特許および特許出願は、あらゆる目的で出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0102】
記載される発明は、その特定の実施態様を参照して記載されているが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得て、均等物と置き換えられ得ると当業者は理解すべきである。また、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスステップを採用するために、本発明の客観的な精神および範囲に多くの改変がなされ得る。このような改変がすべて特許請求の範囲内であることが企図される。
記載される発明は、その特定の実施態様を参照して記載されているが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得て、均等物と置き換えられ得ると当業者は理解すべきである。また、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスステップを採用するために、本発明の客観的な精神および範囲に多くの改変がなされ得る。このような改変がすべて特許請求の範囲内であることが企図される。
本発明は、以下の態様および実施態様を含む。
[1]
有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液が2つの別々の流れからインラインで混合され、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程、
リポソーム封入APIを、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える第1中央ベッセルへ、第1注入口を通して導入する工程であって、第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの前記注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第1排出口が第1中央ベッセルの第2注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口であり;第1中央ベッセルの第2排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2TFFユニットの注入口と流体連通しており、第2TFFユニットの第1排出口が保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口である、工程;
リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIを、第1中央ベッセルから第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程;および
リポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程
を含む、リポソームAPI製剤の製造方法。
[2]
有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液が2つの別々の流れからインラインで混合され、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程、
リポソーム封入APIを、注入口および排出口を備える第1中央ベッセルへ、注入口を通して導入する工程であって、排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2TFFユニットの注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口であり;第2TFFユニットの第1排出口が保持液排出口であり、第2TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口である、工程;
リポソーム封入APIを、第1TFFユニットへ第1の時間流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIリポソームを、第1TFFの第1排出口から第2TFFユニットの注入口を通して第2の時間流す工程;および
リポソームAPI製剤を、第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程
を含む、リポソームAPI製剤の製造方法。
[3]
有機溶媒に溶解させた脂質を含む脂質溶液を、API水溶液と混合する工程であって、脂質溶液とAPI水溶液が2つの別々の流れからインラインで混合され、リポソーム封入APIが2つの流れの交差部分で形成される工程、
リポソーム封入APIを、第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備える第1中央ベッセルへ、第1注入口を通して導入する工程であって、第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第1タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第1排出口が第1中央ベッセルの第2注入口と流体連通しており、第1TFFユニットの第2排出口が廃棄物排出口であり;第1中央ベッセルの第2排出口が第2中央ベッセルの第1注入口と流体連通しており、
第2中央ベッセルが第1注入口、第2注入口、第1排出口および第2排出口を備え、第2中央ベッセルの第1排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第2タンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットの注入口と流体連通しており、
第2TFFユニットの第1排出口が第2中央ベッセルの第2注入口と流体連通しており、第2TFFユニットの第2排出口が廃棄物排出口であり;第2中央ベッセルの第2排出口が注入口ならびに第1および第2排出口を備える第3TFFユニットの注入口と流体連通しており、第3TFFユニットの第1排出口が保持液排出口であり、第3TFFユニットの第2排出口が廃棄物(透過液)排出口である、工程;
リポソーム封入APIを第1TFFユニットへ第1の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第1TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIを、第1中央ベッセルから第2中央ベッセルへ第2の時間流す工程;
リポソーム封入APIを、第2TFFユニットへ第2中央ベッセルから第3の時間連続的に流す工程であって、リポソーム封入APIがTFF注入口を通って第2TFFユニットへ入り、第1排出口を通って出る、工程;
リポソーム封入APIを、第2中央ベッセルから第3TFFユニットの注入口を通って第4の時間流す工程;および
リポソーム封入API製剤を、第3TFFユニットの第1排出口から回収する工程
を含む、リポソームAPI製剤の製造方法。
[4]
混合が、APIコアセルベートの形成をもたらす、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
APIコアセルベートが、APIコアセルベート周囲の脂質二重層形成を開始する、[4]に記載の方法。
[6]
リポソーム内部のAPI濃度が、外部のAPI濃度より高い、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
バッファーを、第1中央ベッセルへ第3注入口を通して第1の時間の前または第1の時間の間に導入する、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
第2TFFユニットが、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である、[1]、[2]および[4]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
第3TFFユニットが、シングルパスTFFユニット(SPTFF)である、[3]~[7]のいずれかに記載の方法。
[10]
リポソームAPI製剤を1つ以上の更なるTFFユニットから第2TFFユニットへ流す工程、およびリポソームAPI製剤を第2TFFユニットの第1排出口から回収する工程の前に、リポソーム封入APIを第1中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程をさらに含む、[1]、[2]および[4]~[8]のいずれかに記載の方法。
[11]
リポソームAPI製剤を1つ以上の更なるTFFユニットから第3TFFユニットへ流す工程、およびリポソームAPI製剤を第3TFFユニットの第1排出口から回収する工程の前に、リポソーム封入APIを第2中央ベッセルから1つ以上の更なるTFFユニットへ流す工程をさらに含む、[3]~[9]のいずれかに記載の方法。
[12]
1つ以上の更なるTFFユニットが、1つ以上のSPTFFユニットを含む、[10]または[11]に記載の方法。
[13]
1つ以上の更なるTFFユニットが、直列に接続した2つ以上のTFFユニットを含む、[10]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
1つ以上の更なるTFFユニットが、並列に接続した2つ以上のTFFユニットを含む、[10]~[12]のいずれかに記載の方法。
[15]
1つ以上の更なるTFFユニットが、直列に接続した4つのTFFユニットを含む、[10]~[13]のいずれかに記載の方法。
[16]
1つ以上の更なるTFFユニットが、1つのTFFユニットを含む、[10]~[12]のいずれかに記載の方法。
[17]
バッファーが、塩化ナトリウムバッファーである、[6]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]
脂質が、リン脂質を含む、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)またはホスファチジン酸(PA)を含む、[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
リン脂質が、ホスファチジルコリンである、[18]に記載の方法。
[21]
脂質が、1つ以上の正味中性脂質を含む、[1]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]
ホスファチジルコリンが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である、[20]に記載の方法。
[23]
脂質が、コレステロールを含む、[1]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24]
脂質が、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水素添加卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素添加卵ホスファチジルグリセロール(HEPG)、水素添加卵ホスファチジルイノシトール(HEPI)、水素添加卵ホスファチジルセリン(HEPS)、水素添加ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水素添加ホスファチジン酸(HEPA)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素添加大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水素添加大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水素添加大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水素添加大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水素添加大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジル-コリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、トコフェロール、トコフェロールヘミコハク酸、トコフェロール硫酸、コレステリルヘミコハク酸、コレステロール誘導体、脂肪酸のアンモニウム塩類、リン脂質のアンモニウム塩類、グリセリドのアンモニウム塩類、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジル酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジル酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、またはその混合物を含む、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[25]
脂質が、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルグリセロール(PSPG)、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、セラニド、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、または1つアシル化されたリン脂質を含む、[1]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26]
脂質が、1つアシル化されたリン脂質を含む、[25]に記載の方法。
[27]
1つアシル化されたリン脂質が、モノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)である、[26]に記載の方法。
[28]
脂質が、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミンおよびステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、またはその組合せを含む、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[29]
脂質が、DPPCおよびコレステロールを含む、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[30]
脂質が、DPPCおよびコレステロールからなる、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[31]
脂質が、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)を含む、[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[32]
脂質が、2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG)を含む、[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[33]
APIが、抗感染症薬である、[1]~[32]のいずれかに記載の方法。
[34]
抗感染症薬が、アミノグリコシド系またはその医薬的に許容される塩である、[33]に記載の方法。
[35]
アミノグリコシド系が、アミカシンまたはその医薬的に許容される塩である、[34]に記載の方法。
[36]
アミカシンが、アミカシン硫酸塩である、[35]に記載の方法。
[37]
抗感染症薬が、テトラサイクリン系である、[33]に記載の方法。
[38]
テトラサイクリン系が、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリンまたはミノサイクリンである、[37]に記載の方法。
[39]
抗感染症薬が、スルホンアミド系である、[33]に記載の方法。
[40]
スルホンアミド系が、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフィソキサゾールまたはスルファセタミドである、[39]に記載の方法。
[41]
抗感染症薬が、キノロン系である、[33]に記載の方法。
[42]
キノロン系が、ナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシンまたはノルフロキサシンである、[41]に記載の方法。
[43]
キノロン系が、シプロフロキサシンである、[42]に記載の方法。
[44]
抗感染症薬が、グリコペプチド系である、[33]に記載の方法。
[45]
グリコペプチド系が、表2に記載のグリコペプチド系である、[44]に記載の方法。
[46]
グリコペプチド系が、バンコマイシンまたはその誘導体である、[45]に記載の方法。
[47]
APIが、抗真菌薬である、[1]~[32]のいずれかに記載の方法。
[48]
抗真菌薬が、ポリエン系抗真菌薬、フルシトシン、イミダゾール系、トリアゾール系、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール、シクロピロックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフタート、ナフチフィンまたはテルビナフィンである、[47]に記載の方法。
[49]
アミノグリコシド系が、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロデストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、その医薬的に許容される塩、またはその組合せである、[34]に記載の方法。
[50]
アミノグリコシド系が、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン、エチマイシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロデストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン、その医薬的に許容される塩、またはその組合せである、[34]に記載の方法。
[51]
抗真菌薬が、ポリエン系抗真菌薬である、[47]に記載の方法。
[52]
ポリエン系抗真菌薬が、アムホテリシンB、ニスタチンまたはナタマイシンである、[51]に記載の方法。
[53]
抗真菌薬が、イミダゾール系である、[47]に記載の方法。
[54]
イミダゾール系が、n-チコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾールまたはケトコナゾールである、[53]に記載の方法。
[55]
抗真菌薬が、トリアゾール系である、[47]に記載の方法。
[56]
トリアゾール系が、イトラコナゾールまたはフルコナゾールである、[55]に記載の方法。
[57]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、3対1以下、2.5対1以下、2対1以下、1.5対1以下、または1対1以下である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[58]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、3対1未満、2.5対1未満、2対1未満、1.5対1未満、または1対1未満である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[59]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約0.7対1である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[60]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約3:1から約0.5:1、約2.5:1から約0.5:1、約2:1から約0.5:1、約1.5:1から約0.5:1、または約1:1から約0.5:1である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[61]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約3:1から約0.5:1である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[62]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約2.5:1から約0.5:1である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[63]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約2:1から約0.5:1である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[64]
回収されたリポソームAPI製剤の脂質対API重量比が、約1:1から約0.5:1である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。