(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073647
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】少なくとも1つの不純物をNaCl-MgCl2塩から除去するための方法
(51)【国際特許分類】
C01F 5/30 20060101AFI20240522BHJP
C01D 3/04 20060101ALI20240522BHJP
C01D 3/20 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C01F5/30
C01D3/04 Z
C01D3/20
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045464
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2021510641の分割
【原出願日】2019-09-16
(31)【優先権主張番号】62/731,243
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ケレハー,ブライアン シー.
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA04
4G076AA18
4G076AA24
4G076AB16
4G076BA13
4G076BA17
4G076BB01
4G076BC02
4G076BC08
4G076BE11
4G076BE12
4G076BF09
4G076BH01
4G076CA36
4G076CA40
4G076DA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特定のマグネシウム塩の腐食性を低下させる方法を提供する。
【解決手段】塩化マグネシウムならびに塩化ナトリウムの混合塩を融解し、融液を濾過する。さらに任意で金属マグネシウムによる還元を行い、不純物をガスまたは沈殿物の形態で除去する。上記方法により得られるマグネシウム-ナトリウム混合塩は未処理の塩組成物よりも塩と接触する鋼の腐食が抑制されるため、鋼からなる機器の交換頻度を低減できる冷却材塩となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの不純物をNaCl-MgCl2塩から除去するための方法であって、
塩-Mgの組合せを得るために、前記少なくとも1つの不純物を含む前記NaCl-MgCl2塩を、容器の中で第一温度で固体Mg金属と組合せるステップであって、前記第一温度は、前記固体Mg金属の融点よりも低い、前記ステップと、
少なくとも1つの反応した不純物を含む液体の塩-Mg混合物を得るために、前記容器の中で前記塩-Mgの組合せを、前記NaCl-MgCl2塩の融点および前記固体Mg金属の融点を超える第二温度に加熱するステップであって、前記第二温度は800℃までである、前記ステップと、
a)前記少なくとも1つの反応した不純物及び過剰Mgを含む沈殿物、およびb)液相のMg-還元NaCl-MgCl2塩を得るために、前記容器の中で前記液体の塩-Mg混合物を、前記固体Mg金属の融点よりも低くNaCl-MgCl2塩の融点よりも高い第三温度に冷却するステップと、
前記容器から、前記液相のMg-還元NaCl-MgCl2塩を除去するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記組合せるステップは、固体塩とMgの組成物を得るために、前記第一温度で前記容器の中で、固体Mg金属を固体NaCl-MgCl2塩と混合するステップを含み、前記第一温度は、NaCl-MgCl2塩の前記融点よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組合せるステップは、塩とMgの組成物を得るために、前記第一温度で前記容器の中で、固体Mg金属と液体のNaCl-MgCl2塩とを混合するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組合せるステップは、さらに、前記塩-Mg混合物の温度を、前記NaCl-MgCl2塩の融点よりも高く、且つ前記固体Mg金属の融点よりも低く維持しながら、前記塩-Mgの組合せを撹拌する、ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの不純物は、水、Fe、FeCl3、Cr、CrCl3、Ni、NiCl3、Cu、CuCl3、V、VCl3、Ti、TiCl3、Mn、MnCl2、Mo、MoCl3、Zn、およびZnCl2から選択される1つ以上の不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
NaClおよびMgCl2を得るステップと、
少なくとも1つの不純物を含む前記NaCl-MgCl2塩を得るために、前記NaClおよびMgCl2を混合するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
反応の閾値を決定するステップと、
Mgと前記少なくとも1つの不純物との間の反応を示すパラメータを監視するステップと、
前記監視されたパラメータと前記閾値との比較に基づいて選択された期間中、前記NaCl-MgCl2塩の融点よりも高く、且つ前記Mg金属の融点よりも低い温度で、前記塩-Mg混合物を維持するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータは、前記塩-Mg混合物からのHClの生成である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータは、前記NaCl-MgCl2塩の融点よりも高く、且つ前記Mg金属の融点よりも低い温度で費やされた時間である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記容器から、前記液相のMg-還元NaCl-MgCl2塩を除去するステップは、
前記液相のMg-還元NaCl-MCl2塩を濾過するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記容器から、前記液相のMg-還元NaCl-MgCl2塩を除去するステップは、
前記液相のMg-還元NaCl-MCl2塩から前記沈殿物を分離するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記容器の中で前記塩-Mgの組合せを、前記第二温度に加熱するステップは、
前記第二温度に加熱した後に前記容器中で前記液体の塩-Mg混合物を撹拌するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記撹拌するステップは、
前記容器内に前記液体の塩-Mg混合物を通して不活性ガスを散布するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記NaCl-MgCl2塩が、100mg/kg未満の不純物を有する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記NaCl-MgCl2塩が、50mg/kg未満の不純物を有する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2019年9月16日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、「CORROSION-RESISTANT COOLANT SALT」という名称の米国仮特許出願第62/731,243号(出願日2018年9月14日)への優先権を主張するものであり、当該出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔イントロダクション〕
溶融塩は、特に原子力発電所と、集光型太陽熱発電所と、鋼および他の金属製造とに見られるような高温プロセスに関連して、熱伝達流体または冷却材として工業的にしばしば使用される。しかしながら、溶融塩冷却材はしばしば非常に腐食性が高い。冷却材塩によって引き起こされる腐食を低減するための従来のアプローチは、亜鉛またはマグネシウムなど、容易に酸化され安価である金属の塩における犠牲アノードへの連続暴露、またはマグネシウムカドミウム合金による冷却材塩の精製のいずれかに依存していた。マグネシウムカドミウムによる精製は、処理しなければならない望ましくないカドミウム廃棄流をもたらす。浸漬された犠牲アノードの有効範囲は十分に理解されておらず、特定の状況では、冷却材塩中に水素および沈殿粒子を激しく生成することがある。
【0003】
〔図面の簡単な説明〕
少なくとも1つの例の様々な態様は、添付の図面を参照して以下で説明されるが、添付の図面は、一定の縮尺で描かれることを意図するものではない。図面は、様々な態様および実施例の例示およびさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するが、特定の実施例の限定の定義として意図されるものではない。図面は、本明細書の残りの部分とともに、説明され、特許請求される態様および実施例の原理および動作を説明するのに役立つ。図において、様々な図に示されている各同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図においてラベル付けされているわけではない。
【0004】
図1は、塩の腐食性を低下させるための方法を高レベルで示す。
【0005】
図2は、NaCl-MgCl
2共晶のような、Mgの融点より低い融点を有する塩を処理する、
図1のより詳細な実施形態を示す。
【0006】
図3は、上記の方法により作成された低腐食NaCl-MgCl
2塩組成物の改良された性能を試験するために作成された腐食試験装置300を示す。
【0007】
図4は、試験ループの一部として得られた平面図および断面図の代表的な位置を示す。
【0008】
図5は、主加熱部からの管の内部の表面の平面図画像を示す。
【0009】
図6は、
図5に示されているものと同じ実験からの管の断面図を示す。
【0010】
図7は、上記で提供される方法の実施形態を使用して塩を処理するための、システムの実施形態のブロック図を示す。
【0011】
図8は、同じ実験からの管の断面図を示しており、今回は、Ni、Fe、およびCrの除去を示している。
【0012】
〔耐腐食性冷却材塩及びその製造方法〕
本文書は、特定のマグネシウム塩の腐食性を低下させる方法を記載している。上記方法から得られる塩生成物は、そのように処理されていない塩組成物と比較して、塩と接触する鋼の腐食の低下を示す。これにより、そのような処理塩は、それらがより少ない経時的な機器交換しか必要としないので、より効率的な冷却材塩となる。上記方法は、塩中の望ましくない不純物を還元するために金属マグネシウムを使用し、次いで、還元された不純物は、その時精製された塩からガスまたは沈殿物として除去される。1つの特定の理論に束縛されるものではないが、塩中の不純物のレベルの低下は、鋼に対する腐食性を実質的に低下させる塩をもたらすと考えられる。
【0013】
〔詳細な説明〕
耐食性冷却材塩組成物および製造方法が開示され、説明される前に、本開示は本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されず、当業者によって認識されるように、それらの等価物に拡張されることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、ナトリウム-スズ冷却材組成物の特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図しないことも理解されるべきである。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は文脈が沿わないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「水酸化リチウム」への言及は定量的または供給源限定として解釈されるべきではなく、「ステップ」への言及は複数のステップを含むことができ、反応の「生成する」または「生成物」への言及は反応の生成物のすべてであると解釈されるべきではなく、「反応する」への言及はそのような反応ステップの1つまたは複数への言及を含むことができる。したがって、反応する工程は、同定された反応生成物を生成するために、類似の材料の複数のまたは反復された反応を含み得る。
【0014】
本文書は、塩の腐食性を低下させる方法を記載している。上記方法から得られる塩生成物は、そのように処理されていない塩組成物と比較して、塩と接触する鋼の腐食の低下を示す。これにより、そのような処理塩は、それらがより少ない経時的な機器交換しか必要としないので、より効率的な冷却材塩となる。本実施形態は、高温(すなわち、塩の融点より上、ここでは445℃)熱伝達動作において溶融冷却材塩として使用され得るようなNaCl-MgCl2共晶塩の文脈で説明される。しかしながら、上記方法は、任意のNaCl-MgCl2塩組成物および純粋なMgCl2塩にも同様に適用可能である。
【0015】
この方法が好適であり得る塩としては、以下のLiCl、NaCl、およびKClのうちの少なくとも1つを含む任意のMgCl2塩が挙げられる。例えば、MgCl2-NaCl、MgCl2-LiCl、MgCl2-KCl、MgCl2-NaCl-LiCl、MgCl2-NaCl-KCl、MgCl2-NaCl-LiCl-KCl、およびMgCl2-KCl-LiClといった低腐食塩の実施形態は、この方法を用いて実施することができる。
【0016】
図1は、塩の腐食性を低下させるための方法を高レベルで示す。示された高レベルの実施形態において、方法100によって処理塩は、そのように処理されていない同じ塩組成物と比較して、処理塩と接触する金属成分の腐食の低下を示す。
【0017】
図示の実施形態において、上記方法は、処理されるべき塩、例えばNaCl-MgCl2共晶を、塩(この場合では445℃)およびMg(すなわち650℃)の両方の融点を超える温度で、過剰Mg金属と混合する混合操作102から開始する。それらは、両方とも液体塩-Mg混合物を生成するための温度より高い。
【0018】
処理されるべきNaCl-MgCl2塩は、任意の商業的または私的な供給源から入手する、あるいはゼロから作成することができる。供給源にかかわらず、NaCl-MgCl2塩は、遷移金属の塩化物、他の金属の塩化物、および水分などの微量の不純物を含むと推定される。このような不純物としては、水、Fe、FeCl3、Cr、CrCl3、Ni、NiCl3、Cu、CuCl3、V、VCl3、Ti、TiCl3、Mn、MnCl2、Mo、MoCl3、Zn、およびZnCl2などの混合物が挙げられる。例えば、500ppm未満の不純物を有するNaCl-MgCl2は市販されていない。むしろ、様々な(しばしば特定されない)レベルの不純物(例えば、水と、Na、Mg、ならびにNi、CrおよびFeなどの他のカチオンの酸化物および水酸化物と、NaおよびMg以外のカチオンの塩化物と)を有する様々なグレードのNaCl-MgCl2塩(例えば、「純度99%金属無水物」または「超乾燥(ultra dry)99.99%純度」として広告されている)が市販されている。
【0019】
これらの不純物、すなわち、塩自体ではない混合物(すなわち、NaCl-MgCl2塩中のNaClでもMgCl2でもない)、塩は、塩製造中の金属の腐食の結果、または製造後の取扱い不良または露出のためであり得る。それにもかかわらず、多くの場合、不純物は、いくつかまたは全てが一般的な分析方法の検出限界未満であり得るので、製造業者によって報告されないような微量であり得る。特に、酸素を含む不純物(例えば、Mg(OH)2)は、区別および同定が困難であり、塩の腐食性に大きく寄与すると考えられる。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、液体Mg金属と液体塩との混合によりMg金属は塩中の微量の不純物と反応し、これにより不純物は、塩から容易に除去することができる不溶性の反応副産物になると考えられる。さらに、腐食の原因は塩中の不純物であると考えられ、この不純物の除去は、結果として得られる処理塩に、改善された腐食性能を与えるものである。例えば、Mg金属は任意の微量のMg(OH)2と反応してMgOおよび水素ガスを生成し、ニッケル、鉄、および塩化クロムなどの任意の微量の金属塩化物と反応して、それらをそれらの卑金属に還元すると考えられる。酸化マグネシウム、ニッケル、クロム、および鉄は、塩中で不溶性である。
【0020】
Mgの融点650℃を超える融点を有するNaCl-MgCl2共晶塩および他のNaCl-MgCl2塩の場合、余分な未反応のMg金属も、任意の冷却操作104を実行することによって除去することができる。冷却操作104では塩およびMgの温度がMgの溶融温度以下に低下し、これにより余分なMgが塩の外に沈殿する。いくつかの塩は650℃未満の融点を有し得ず(例えば、約775℃の融点を有する10モル%MgCl2-90%NaCl)、いくつかの場合には(例えば、以下に記載されるように、輸送および使用前のさらなる工程のために設計された塩組成物前駆体において)、塩中に過剰のMgが存在することが問題にならないので、任意のプロセスであることを強調するために、冷却操作104は破線で示される。
【0021】
冷却操作104が実行されるかどうかにかかわらず、混合後、反応した不純物(例えば、ニッケル、鉄、クロムなどの卑金属、ならびにMg(OH)2、ならびに混合操作102中に生成された水素またはHClなどの任意のガス)は、分離操作106で除去される。分離操作106は、濾過、沈降(重力分離)、遠心分離(例えば、ハイドロサイクロンまたは他の遠心分離機を介する)および/または同様のものなどの、公知のまたは今後開発される任意の物理的な液体-液体または液体-固体分離技術を含み得る。一実施形態では、分離操作106は、塩-Mg混合物の単純な濾過であってもよい。代替の実施形態では、分離操作106は、不溶性生成物を塩から除去することを可能にするために、塩-Mg混合物を同じまたは漸進的により低い温度で一連のノックアウトチャンバに通すことを含んでもよい。これは、所望であれば、不純物の分別を可能にする。さらに別の実施形態では、もしあれば、塩よりも密度の低い反応した不純物を除去するために、スキミングを行ってもよい。同様に、水素ガスのような、混合操作102によって生成されたガスは、任意の従来の方法によって除去され得る。例えば、塩-Mg混合物に不活性ガスを散布すること、重力分離、または塩-Mg混合物中の混合ブレードまたは羽根車(impeller)を回転させることによる単純な撹拌は、塩-Mg混合物から反応性ガスを分離するために使用され得る種々の方法である。
【0022】
散布によって除去される別のガスは、HClである。HClは、塩-Mg混合物中の不純物からの水素と塩化物イオンとの反応の副生成物である。散布は、混合操作102または分離操作106の一部であってもよく、あるいはその両方であってもよい。例えば、一実施形態では、混合操作102中に散布することによってガスを除去し、分離操作106の一部として固体を除去する。代替の実施形態では、分離は、最初に、ガスを除去するために混合物がある期間(1分~10日、例えば、30分、1時間、4時間、8時間、16時間、20時間、1日、1.5日、2日、2.5日、3日、5日などであるが、1時間~2日の範囲であり、12時間~36時間の範囲でさえあれば十分であると考えられる)散布され、次いで、濾過、重力分離、遠心分離、または任意の適切な液体-固体分離技術によって混合物から固体が分離される、2ステップ操作であり得る。散布時間は、バッチサイズ、機器サイズまたは構成、あるいは任意の他の考慮事項に基づいて選択することができる。
【0023】
得られた低腐食性NaCl-MgCl2塩は、元の未処理NaCl-MgCl2塩と比較したその腐食特性および残留不純物によって、最初の塩と区別することができる。上述のように、不純物レベルは、最初の塩と処理塩との間の不純物差を比較するために特殊な分析を必要とするほど低くてもよい。それにもかかわらず、本明細書に記載されるMg処理の実施形態は、最初の塩の腐食性能と比較して、その腐食性能によって識別可能に異なる塩組成物を生成する。さらに、処理塩の酸化還元電位を未処理の塩の酸化還元電位と比較することにより、2つの間の区別がさらに可能になる。
【0024】
最後に、絶対的には、上記方法を通じて不純物レベルが500mg/kgまたは百万分率(ppm)、400mg/kg、300mg/kg、250mg/kg、200mg/kg、150mg/kg、100mg/kg、75mg/kg、50mg/kg、25mg/kg、20mg/kg、15mg/kg、10mg/kg、さらには5mg/kg以下である塩、特にNaCl-MgCl2を得ることができる。
【0025】
例えば、言い換えれば、0.01~500mg/kg、0.01~400mg/kg、0.01~300mg/kg、0.01~250mg/kg、0.01~200mg/kg、0.01~150mg/kg、0.01~100mg/kg、0.01~75mg/kg、0.01~50mg/kg、0.01~25mg/kg、0.01~20mg/kg、0.01~10mg/kg、および0.01~5mg/kgの間である塩を得ることができる。
【0026】
図2は、NaCl-MgCl
2共晶のような、Mgの融点より低い融点を有する塩を処理する、
図1のより詳細な実施形態を示す。図示の実施形態において、方法200は、塩製造操作202、または塩が商業的または他の供給源から得られる代替的な取得操作204のいずれかで開始することができる。いずれのケースにおいても、NaCl-MgCl
2塩は、100%純粋ではなく、むしろ、
図1を参照して上述したもののうち少なくともいくつかの不純物を有する。
【0027】
次いで、添加操作206において、Mg金属は塩に添加される。Mg金属は商業的に利用可能な90%以上、例えば99%または99.9%以上の任意の純度レベルであり得る。一実施形態では、Mg金属が固体金属のフレーク、棒、またはパック(puck)として塩に添加される。一実施形態によると、Mg金属の棒は、塩に挿入されるスチール棒に通されてもよい。塩の温度をMg金属の融点を超えるまで上昇させた後、Mg金属がスチール棒から取り除かれたことを確認するために、スチール棒を定期的に取り除いてもよい。
【0028】
一実施形態では、得られる処理塩が未処理塩よりも良好に機能するので、任意の量のMgが添加操作206で添加され得る。しかしながら、上記方法の一実施形態では、不純物の量は典型的には未知であるため、過剰量のMg、すなわち予想される不純物レベルを除去するのに十分な過剰量を添加することが望ましい。一実施形態では、過剰量のMgは、500重量部のNaCl-MgCl2塩に少なくとも1重量部のMg金属を添加することとして定義される。(重量による)塩に対するMgの過剰量の範囲は、1重量部のMg金属対500重量部のNaCl-MgCl2塩、1Mg対450塩、1Mg対400塩、1Mg対350塩、1Mg対300塩、1Mg対250塩、1Mg対200塩、1Mg対175塩、1Mg対150塩、1Mg対100塩、1Mg対75塩、1Mg対50塩、1Mg対25塩、1Mg対10塩、および1Mg対1塩である。これには、1部のMg対50~450部の塩、1Mg対100~300部の塩、1Mg対150~250部の塩、および前文中の比率の任意の他の組合せなど、任意の中間範囲が含まれる。
【0029】
上記添加は、Mg金属およびNaCl-MgCl2塩のいずれかまたは両方が固相または液相であるような温度および圧力で行うことができるが、図示の実施形態では、上記添加は、Mgおよび塩の両方が固体である条件下で行われると仮定される。Mg添加操作206は加熱前に図示されているが、Mg添加操作206は、塩が加熱される前または後のいつでも実行することができることに留意されたい。例えば、Mg添加操作206は、後述する第1の加熱操作210の後あるいは第2の加熱操作212の後であってもよい。
【0030】
一実施形態では、添加操作206は、アルゴンまたは他の不活性ガス雰囲気などの不活性環境中で行われる。添加操作206の間、不活性環境は、停滞していてもよく、または、連続的あるいは半連続的パージ下にあってもよい。
【0031】
図示の実施形態では、添加操作206の後に、加熱操作208が実行される。加熱操作208は、Mg金属およびNaCl-MgCl2塩が液相である液体Mg-塩混合物を得るために、Mg金属およびNaCl-MgCl2塩を、塩およびMg金属の両方の融点より高い目標温度に加熱する。図示の実施形態では、加熱操作208はまた、Mg金属が不純物と反応することを可能にするために、ある期間中、塩-Mg金属混合物を目標温度以上に、かつ撹拌状態に維持する。
【0032】
加熱操作208は、アルゴンなどの不活性ガス流でMgおよび塩をパージしながら、適切な加熱容器内で行うことができる。パージはまた、加熱操作208の間にMgとの反応によって遊離または生成された任意の気体不純物を除去するために使用され得る。このようなガスまたは蒸気は、例えば、Mgと不純物Mg(OH)2および/または上記のような他の水酸化物との反応によって生成される、沸騰した水、水素、およびHClを含み得る。
【0033】
加熱操作208は、成分の固体/液体状態および使用される成分に応じて、安全のためにいくつかの別個の工程で実施されてもよい。これは、塩が多量の水を含みながら固相から液相に遷移するときに起こり得る、Mg金属およびNaCl-MgCl2塩からの水の激しい放出を防止するために行われ得る。図示の実施形態では、上述のように、塩はNaCl-MgCl2共晶(Mg金属の融点未満の融点)であり、Mg金属およびNaCl-MgCl2共晶塩は両方とも最初は固体である。
【0034】
本実施形態では、最初のゆっくりとした加熱操作210が固体Mg-塩の組合せの温度を塩の融点のすぐ下まで上昇させる。これは固体塩から若干の水を蒸発させる。この最初の加熱操作210の間、不活性ガスパージによって容器から除去された水の速度を監視して、塩から追い出される水の速度がいつ十分に低下したかを決定することができる。一実施形態では、この決定は、水除去速度または容器から除去された不活性ガスパージ流中の水分含有量に関連する他の何らかの測定基準を所定の閾値と比較することによって行われる。閾値が満たされたと決定されたとき、塩は次いで、第2の加熱操作216において、その融点を超えて加熱される。
【0035】
図示の代替の実施形態では、塩-Mg混合物からのHClガスの発生が、水の除去の代わりに、またはそれに加えて、最初の加熱操作210中に監視される。この実施形態では、加熱は、HClの生成が認められるまで、10℃/分、5℃/分、1℃/分、0.1℃/分未満、または0.01℃/分未満などの遅い速度で行われる。例えば、一実施形態では、加熱された容器からのガスが水の沸点未満の温度に維持された水めっき浴(a water bath)を通過する。その結果、水ガスがめっき浴中に収集される。HClガスは、水めっき浴の観察を通して、めっき浴を通過する気泡を目に見えるように検出することができる。あるいは、塩からHClがいつ生成されているかを決定するために、HClセンサが提供されてもよい。有意なHCl生成が検出されると、第2の加熱操作216に移行することによって、加熱速度は、機器へのHClガスによって引き起こされる腐食を制限するために増加され得る。
【0036】
第2の加熱操作216では、次いで、Mg-塩の組合せを、Mg金属とNaCl-MgCl2塩の両方が液体である目標温度まで加熱する。これにより、大気圧またはそれに近い圧力で液体Mg-塩混合物を得る。加熱操作216で得られるMg-塩混合物の目標温度は、Mg金属およびNaCl-MgCl2塩の両方が液状となる温度であればよい。例えば、塩がNaCl-MgCl2共晶(沸点445℃)である場合、第2の加熱操作216によって達成される最終温度は、650℃、660℃、670℃、680℃、690℃、700℃、750℃、800℃、またはそれ以上であってもよい。圧力は任意の圧力であってよいが、これは当技術分野で周知のように、適切な目標温度を変化させる構成要素のコストおよび融点に影響を及ぼす。
【0037】
また、最初の加熱操作210、第2の加熱操作216、またはその両方が、Mg-塩の組合せを能動的に撹拌することを含んでもよい。一実施形態では、これは、容器およびその内容物を通して不活性ガスを能動的にパージすることによって達成することができる。代替の実施形態では、これは、塩の中にある回転撹拌パドルまたは羽根車などの撹拌装置を使用して、または容器を振動させることによって行うことができる。
図2に示す実施形態では、パージ流を容器の液体内容物に通すことにより、液体Mg-塩混合物が撹拌される。既知の、または今後開発される、任意の従来の形態の撹拌が意図され、使用されてもよい。
【0038】
次いで、液体Mg-塩混合物は、温度維持操作214において所望される限り、目標温度以上に維持される。一実施形態では、Mg金属が塩中の不純物と完全に反応したと考えられるまで、温度を目標温度以上に維持することが望ましい。一実施形態では、Mgがあらゆる不純物と完全に反応したことを確実にするために、例えば、経験的に、または予想される不純物レベルに基づいて、所定量の時間を選択することができる。例えば、塩-Mg混合物を、少なくとも1分、10分、1時間、4時間、8時間、12時間、24時間、または48時間などの期間、目標温度以上に維持する。より大きなバッチは、より長い維持時間をもたらすことに留意されたい。
【0039】
代替の実施形態では、液体Mg-塩混合物を目標温度以上に維持する期間を選択する代わりに、上述の水除去速度などの1つまたは複数のパラメータを監視し、監視されたパラメータに基づいて、処理が十分に進行したと判定されてもよい。例えば、一実施形態では、液体Mg-塩混合物は、混合物の目に見える変化が観察されるまで、または水除去速度が達するまで、最終温度に維持されてもよい。別の実施形態では、塩の酸化還元電位を監視し、目標レベルが得られたときに加熱操作216を終了してもよい。
【0040】
図示の実施形態において、HClの生成は、Mgと不純物との間の反応の程度のインジケータとして使用される。この実施形態では、HClの生成がピークに達し、いくらかの定量的または定性的なHCl生成閾値を下回った後に、反応が十分に完了したと推定される。
【0041】
図示の実施形態では、HCl監視動作215は、温度維持動作216中に実行される。一実施形態では、水めっき浴を通過することが観察される気泡の量が期間当たりにいくつかの気泡の数未満に低下したという単純な観察を使用して、塩-Mg混合物からのHClガスの生成を監視し得る。代替の実施形態では、塩-Mg混合物を離れるHClを定量的に監視するために、HClセンサを使用してもよい。さらに別の実施形態では、流量計を使用して、Mg-塩混合物を出る全ガスの量を監視してもよい。
【0042】
HClがどのように監視されるかにかかわらず、塩-Mg混合物から生成されたHClが選択された閾値以下に低下したときを判定するために判定操作217が実行される。例えば、定量的閾値は、水めっき浴を通る観察された気泡の流れに基づいて選択されることができ、HClの生成速度は、当該速度が所望の閾値未満になるまで監視されてもよい。いずれにせよ、閾値の選択により、処理塩中の不純物レベルは、より純粋な処理塩を得ると推定される、より低い閾値で制御されることができる。HCl生成が閾値を超えていると判定される場合、温度維持操作214が継続する。しかしながら、閾値に達すると反応は十分に完了したと見なされ、維持操作214は終了し、図示の実施形態では、加熱操作208全体も終了する。
【0043】
加熱操作208の後、液体Mg-塩混合物は、次いで、冷却操作218において、Mgの融点より低いが塩の融点より高い冷却温度まで任意に冷却される。これにより、過剰および未反応のMgが全て凝固する。使用される最終の冷却温度はMgの融点未満であるが塩の公称融点を超える任意の温度であってもよい。この方法は、それらの融点が異なる、多くの異なる塩の実施形態に使用されてもよいことに留意されたい。一実施形態では、選択される最終の冷却温度は、範囲の上端がMgの融点より低くなればよく、例えば範囲の下端において塩の公称融点よりも0.001℃高い温度から範囲の上端において塩の公称融点よりも5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、40℃、50℃、あるいは100℃高い温度までの範囲といった、塩の融点近傍である。塩は、Mgの一部または全部を固化させるのに十分な任意の時間、この冷却温度範囲内に保持され得る。
【0044】
冷却操作218の後、固体Mgおよび任意の固体反応不純物は、分離操作220において塩から分離されて、処理NaCl-MgCl2塩組成物(これは代わりに、マグネシウム-還元塩組成物、処理塩組成物、マグネシウム-処理塩組成物、還元腐食性塩組成物、または低腐食性塩組成物と呼ばれてもよい)を得る。一実施形態では、分離操作220は沈降操作を含む。沈降操作において、固体Mgおよび不純物を塩から沈降させるために、塩は、ある期間にわたって最終の温度に維持される。この実施形態では、上記期間は、範囲の下端において1分、10分、または1時間の期間から範囲の上端において12時間、24時間、または48時間の期間までの範囲内の任意の期間であってもよい。
【0045】
一実施形態では、分離操作220は、液体塩中に混入したあらゆる固体を除去するために、冷却温度範囲内のMg-塩組成物をフィルタに通すことを含む。この実施形態では、フィルタを通過する間に塩が冷却しないことを確実にするために、フィルタはわずかに加熱され得る。フィルタは、塩に追加の不純物を導入しない任意の適切なフィルタであり得る。一実施形態によると、フィルタは、ステンレス鋼40ミクロンフィルタである。しかしながら、任意の適切な材料のフィルタを使用してもよい。さらに、500ミクロン未満の公称フィルタサイズを有するフィルタを使用してもよいが、1ミクロン~100ミクロンのフィルタがより効果的であると予想される。例えば、公称1ミクロン、2ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、または30ミクロンのフィルタを使用してもよい。
【0046】
上記方法は、塩が冷却材として使用されるとき、塩の腐食性を低下させるようにさらに適合させることができる。例えば、過剰のマグネシウムは、これらの塩が冷却材回路中の熱伝達流体として使用されるとき、定期的または連続的に冷却材塩に添加され得る。本出願の一実施形態では、ある量のマグネシウム金属は、冷却材塩流に直接導入され、その腐食性をいわば「現場」で低下させることができる。代替の実施形態では、側流またはバッチが冷却材流から取り除かれ、次いで連続的またはバッチ式に処理され得る。塩の温度および圧力がMgの融点を超える流れでは、Mgは、塩の条件がMg融点を超える場所またはその直前の液体の流れに添加され得る。次いで、Mgは速やかに溶融し、冷却材回路の周りの塩の流れによって十分に混合される。上記のように、任意の反応副産物を収集し、そして除去するために、フィルタまたは沈降タンクが回路中のいくつかのより冷たい点に提供され得る。Mgの反応から形成される任意のガス状副産物を冷却材回路内の腐食生成物とともに収集するために、膨張タンク内のヘッドスペースのようなガス除去システムも提供され得る。
【0047】
代替的に、既存の冷却材回路は、マグネシウム処理システムを含むように修正することができる。一実施形態によると、マグネシウム処理システムは、冷却材塩の主冷却材塩流またはスリップストリームにMg金属を添加し、Mgが塩中に確実に溶融するために混合流を加熱し、次いで、混合流がセパレータを通過するように設計される。このようなマグネシウム処理システムは、別個の構成要素として、または単一のシステムに一体化された、Mg源、ミキサー、加熱要素、およびセパレータを含み得る。様々な構成要素は、特定の滞留時間が塩の腐食性能を改善するために必要とされる適切な接触および適切な反応時間を保証することを可能にするように、冷却材塩の所与の流れに対してサイズ決めすることができる。
【0048】
さらに別の態様では、上記方法の実施を容易にするために、市販グレードの塩は、いくらかの量のMg金属と共に包装され、塩の使用者および製造業者に前駆体生成物として、前駆体生成物から低腐食性塩組成物を生成するために上記方法を実施する方法についての説明書とともに、提供され得る。この実施形態では、塩は後に処理されるので、生成物の塩部分は特に純粋である必要はない。
例えば、90%、95%、または99.0%の純度の金属NaCl-MgCl2塩を、Mg金属と共に包装することができる。一実施形態では、Mg金属が別個に包装され、NaCl-MgCl2塩と共に含まれ得る。
【0049】
同様に、前駆体生成物は、1~500部の90~99.99%NaCl-MgCl2および1部のMgを含んでいてもよく、これらはMg金属の形態であってもよい。この材料は、販売のために包装され得る、または溶融および撹拌の前、間、または後に構成要素を一緒に添加することによってバッチで製造され得る。
【0050】
図7は、上記で提供された方法の実施形態を使用して塩を処理するための、システム700の実施形態のブロック図を示す。図示の実施形態において、加熱された容器702は、塩708およびMg金属710が容器702に挿入され得るアクセスポート706とともに設けられている。容器702の温度は、外部加熱ジャケット704によって制御される。図示の実施形態では、Mg金属710は、上述のようにアクセスポート706を通して挿入される可動スチール棒712に押さえつけられた棒である。このようにして、Mg金属は、任意の時間で容器702内の塩708に挿入され得る。
【0051】
動作中、塩708は、塩708の上方にヘッドスペース716を残して、あるレベル714まで容器を満たす。不活性ガス、この場合アルゴンは、移送ライン734を介して下から塩708を通って散布される。これは、液体塩およびMg金属を撹拌し、ならびに容器702から放出されたガスの流れを補助する。追加の撹拌を提供するために使用することができ、または唯一の撹拌源としての不活性ガスの流れの代わりに使用することができる任意のインペラ740も示されている。ガスは、ヘッドスペース716内のガス出口722を通って容器702を出る。
【0052】
ガス出口722は、配管718によってウォータートラップ720に接続される。ウォータートラップ720は、冷却ジャケット724によって冷却され、あるレベル728まで水726を含有する。容器702からのガスは、ガス入口730を通ってウォータートラップに入り、水726を通って気泡を生成し、ガス出口732を介して出る。アルゴンおよびHClが処理システム(図示せず)を通過する間に、水が冷却水トラップ720に収集される。
【0053】
より詳細に後述するステンレス鋼40ミクロンフィルタのようなフィルタ736は、移送ライン734に設けられている。散布中にアルゴンをフィルタに通すことにより、塩処理が完了するまでフィルタは腐食から保護される。処理が完了した後、処理塩708は、移送ライン734を介してフィルタ736を通って除去される。これは、上述の方法を実施するのに適した塩処理システム700の一例に過ぎない。
【0054】
〔実施例〕
未処理塩組成物に対する腐食試験のための処理NaCl-MgCl2塩組成物を調製するために以下の工程を使用した。このプロセスは、反応容器中でNaCl-MgCl2(58~42mol%)塩を生成するために、純度99.99%の金属、しかし「無水」、塩化マグネシウムおよび純度99.99%の金属塩化ナトリウムを混合することにより、開始した。純度99.99%の金属MgCl2および金属NaClは、市販の供給源(Alfa Aesar)から得た。表1は、製造業者によって報告された市販の構成塩の不純物を列挙する。
【0055】
【表1】
開始NaCl-MgCl
2混合物を得るために、塩を1PSIGでアルゴン散布下のグローブボックスにおいて混合した。次いで、Mg金属をフレーク状のMgまたは物理的に塩混合物の頂部に置かれたMgの試験片(coupons)の形態で塩混合物に添加した。Mgの配置は、その後のMgの融解を目視で確認できるようにするためであった。この実験では、2.5gのMgを430gのNaCl-MgCl
2混合物に添加した。
【0056】
次いで、塩を通してアルゴンをパージしながら、圧力容器中のある量の塩をゆっくりと加熱することによって、この塩混合物から水を除去した。このゆっくりとしたパージは、水を運び去り、同時に腐食性のガス状副生成物(HCl)を除去する。使用したシステムでは、パージ流を、塩フィルタを直列に有する最終的な移送アームに通して送った。ラインを通してアルゴンをパージすることにより、フィルタの完全性(integrity)が保たれる。水の除去には数時間を要し得る。
【0057】
パージガスから水を分離することによって、塩から除去された水の速度を監視し、水除去速度が遅くなった後、塩を塩の融点に移行させた。これは、典型的には水のガス放出の「バープ(burp)」をもたらした。この工程を通してパージを続けた。塩が完全に溶融するとき、混合物は、アルゴンが溶融物を通過するときに気泡を生成していることが観察された。これにより、塩の撹拌が視覚的に確認される。塩の融点を通過した後、反応容器中の温度を700℃まで上昇させた。
【0058】
容器の含有量が650℃の温度を通過すると、マグネシウムが溶融した。マグネシウムが溶融するとき、それが塩の頂部にパドル(paddle)することが観察された。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、Mgはその表面上に付着性のクラストを形成したと考えられる。クラストは酸化マグネシウムである可能性が高い。アルゴンのパージからの撹拌は、このクラストを連続的に乱し、塩全体にMg金属を分散させるのを助けると考えられる。
【0059】
700℃で24時間のアルゴン散布を、この期間がMgと塩との完全な反応のために十分であるという仮定の下で、使用した。この期間の後、液体塩-Mg混合物を許容可能な移送温度、約550℃に冷却し、移送中に塩が移送アームで固化するのを防止するために、移送アーム/フィルタを予熱した。冷却により、未使用のマグネシウムが凝固し、それを容易に濾過することができた。移送アーム内のフィルタは、ステンレス鋼製40ミクロンフィルタであった。
【0060】
移送アームを加熱し、塩を冷却した後、アルゴン散布を中止した。塩を約1時間沈降させた。塩が沈降した後、塩を移送アームおよびフィルタに通すために、容器をアルゴンで加圧した。次いで、フィルタから出てくる処理塩を、凝固のためのモールドに、または長期間の貯蔵のための収容タンクに送った。注ぎ出したとき、塩の品質を視覚的に検査した。成功したプロセスの結果、低腐食塩組成物が得られた。これは、注ぎ出したとき半透明であることが観察され、そして光沢のある白色の固形物に固化し、その中に最小の微粒子を有していた。時折、液体塩の流し込みは黄色の色合いを有することが観察されたが、通常、無色である。この方法で製造される塩はしばしば、ニッケル、クロム、および鉄の組合せが1ppm未満であり得る。
【0061】
以下の表2は、塩の異なるバッチに対する上記の方法から得られた塩の分析の結果を含む。全ての試験は、EPA標準分析SW846 6010Bを用いて実施され、mg/kgで報告する。数字が列挙されていない箇所については、分析は行わなかった。「ND」は、結果が分析の検出限界未満であったことを示す。各実施例に関連して上記で説明したものを超える、または異なる特定事項を以下に提供する。
【0062】
【表2】
実施例1-溶融および濾過のみ、Mg還元なし。適当量のNaClおよびMgCl
2を組み合わせ、溶融し、ニッケル線とステンレススチールフィルターを通して貯蔵モリブデンるつぼに移した。移送は、予測された0.7PSIの静水圧よりもはるかに高い約3-4PSIで起こった。これは、塩が多くの沈殿物を有していたこと、または焼き出しの間にフィルタが腐食されていたことを示した。この実施例の間、Mg金属は使用しなかった。得られた塩は、冷却後、マーブリングで頂部が凹状であった。内部は「ジオード(geode)」のような結晶の配列を示した。色はわずかに白色であった。
【0063】
実施例2-溶融および濾過のみ、Mg還元なし。実施例1と同じ。塩は実施例1のNaCl-MgCl2よりわずかに黄色の結晶の表示で得られたが、頂部にかなりの「浮遊破片(floating debris)」を含んでいた。
【0064】
実施例3-高温溶融、続いて濾過し、Mg金属を添加したが、撹拌はなし。430グラムの98~99%純度(pure grade)の塩をニッケル精製器に載せた。精製器をグローブボックス内に保持し、その雰囲気に開放した。43mgのマグネシウム粉砕物と接触させながら、塩を550℃で約24時間加熱した。塩はガスで撹拌されることはなかった。上記のように、Mg粉砕物を塩の頂部に置き、パドルし溶融することを観察した。上記とは異なって、撹拌はなかった。グローブボックスの露点は11ppmに上昇したが、加熱期間の終わりまでに4ppmに戻り、これはほとんどの水がその時間までに沸騰したことを示す。塩を注いでいる間、それは半透明であったが、否定しがたい紫色を有していた。「曇り(cloudiness)」の証拠はなかった。
【0065】
実施例4-高温溶融およびMg還元、続いて濾過し、Mg金属を添加したが、撹拌はなし。実施例2のNaCl-MgCl2(58~42モル%)と同様の手順。主な違いは、マグネシウム還元剤の融点より50℃高い700℃まで塩を加熱したことである。今回は1/4”外径の棒として、合計1.56gのMg還元剤を添加した。棒は、塩を装入するポートを介して手で塩に導入され、長さ12”のステンレススチール製ネジ棒に通された。マグネシウムは、2回にわたる5秒間の露出後に塩中で溶融することができた。それを棒からきれいに取り除き、棒を取り除いた。この塩はこれまでに作られた最も紫色の塩であった。
【0066】
実施例5-撹拌しながら溶融およびMg還元、続いて濾過。実施例4のNaCl-MgCl2(58~42モル%)と同様の手順。実施例4と同じマグネシウム棒を容器に装填した。混合粉末塩(各実施例1~4の塩と同一)を添加した。加熱および溶融中に、フィルタ/転送ラインを通して塩をアルゴンでパージした。粉末塩が精製容器の頂部から消耗しているのがわずかに見えるまで、フローを調節した。転送ライン上の振動に着目することで溶融塩を通して気泡の生成を確認した。気泡の生成中、塩を700℃に加熱し、24時間保持した。移送を開始し、貯蔵のために塩を分解したとき3つのサンプルを採取した。この塩は、3つのランダムなサンプルを介して、検出不能であるマンガン、クロム、鉄、およびかろうじて検出可能なニッケルを有することが分析実験室によって見出された。塩組成物は、共晶に非常に近いと考えられた。この実施例では、430gの処理塩を製造した。
【0067】
実施例6-実施例5のより大きな試行スケールの繰り返し。この実施例では、3kgの処理塩を、実施例5に記載のアルゴン撹拌を使用して単一バッチで製造した。インコネル600容器は、3kmバッチ用のサイズの
図7に示すようなシステムで使用された。
【0068】
実施例7-実施例5のさらに大きな生産規模の繰り返し。この実施例では、92kgの処理MgCl
2-NaCl塩を、実施例5に記載のアルゴン撹拌を使用して単一バッチで製造した。インコネル600容器は、100kmバッチ用のサイズの
図7に示すようなシステムで再び使用された。
【0069】
図3は、上記の方法により作成された低腐食NaCl-MgCl
2塩組成物の改良された性能を試験するために作成された腐食試験装置300を示す。腐食試験装置300は主に、ループの一部分にある塩を加熱するように設計された鋼管の絶縁ループ302である。ループ302内の不均一な温度によって生じる密度差は、ループ302の周りの塩の循環を引き起こした。ループ302は、管の材料として異なる鋼及び他の金属合金を用いて複数の同一ループを作成することができる標準化された設計である。これにより、異なる管の材料および異なる塩の腐食特性についての標準化された試験が可能になる。ループは、選択された期間(この場合は1000時間)作動するように設計されており、その後、異なる管の材料および塩の間の腐食を決定し比較するために、鋼管に対して破壊試験が行われる。
【0070】
図3に示されるように、ループ302の管は、大まかにダイヤモンド形状の4つの部分にレイアウトされる。底部の主加熱部304は、作動中に塩の流れの方向に上向きに傾斜して設けられる。次いで、流れの方向に続いて、ループ302は、断熱高温部306と呼ばれる管における垂直で断熱された部分306を含む。次いで、図示のように、ループ302は、ループ302を完了し塩を主加熱部304の最初に戻す2つのさらなる断熱部分308、310を含む。熱は、主加熱部304でのみ加えられる。残りの3つの部分は断熱されているが、積極的に加熱または冷却されていない。動作中、主加熱部は、何らかの予め設定された公称温度まで塩を加熱するように制御される。非加熱部の断熱による定常熱損失を通して、実験中の低温を定常温度とすることができる。しかしながら、腐食副産物が蓄積し、塩の循環を妨げるので、この低温は、多くの場合、経時的に低下することが観察された。この効果は、1000時間の実験期間を完了する前に目詰まりのために失敗した実験で最も容易に見られた。
【0071】
ループ内外への塩の移動を容易にし、試験中のループの動作を監視するために、さらなる構成要素が腐食試験装置300に含まれる。例えば、温度センサ(図示せず)は動作中に異なる位置で装置の温度を監視するために、ループ302の周囲の複数の位置に設けられている。
【0072】
ループ内外に塩を移送するために、一次塩タンク312及びフラッシュ(flush)塩タンク314が図示のように設けられている。一次塩タンクは、新鮮な冷却材塩を保持し、一次塩タンク312内の塩に加えられる圧力がループ302に流入して充填されるように設計される。同様に、フラッシュ塩タンク314は、フラッシュ塩を保持し、フラッシュ塩タンク314内のフラッシュ塩に加えられる圧力がループ302に流入して充填されるように設計される。フラッシュ塩を伴うフラッシングは、所望に応じて、実験前および後に行うことができる。フラッシュ塩タンク314及び一次塩タンク312は、本質的に管の一部が冷却されている凝固バルブ320によってループ302に接続されている。
【0073】
サージタンク316はまた、ループ内に形成される閉塞または他の非公称条件のためのサージを可能にするために設けられている。各タンクには、タンクの充填および空にするための塩充填ポート318が設けられている。それらは、同様に、タンクからの、およびタンクへの塩の移動を強制/補助するための加圧ガス(例えば、アルゴン)の適用を可能にする圧力ポートを備えている。
【0074】
試験装置300を使用する腐食試験の間、腐食は主に、ループ302の主加熱部304の管に生じる。塩の化学的性質並びに温度及び流動条件に応じて、管内の材料の成分(例えば、Fe、Cr、Niなどの鋼成分)は、管から可溶化され、流動するバルク塩中に拡散する。次いで、これらの腐食生成物は、ループ302の低温部分に運ばれ、そこで、単純な沈降、核形成、または結晶成長のいずれかを通して、それらを堆積させ得る。これは、ループの冷たい部分が腐食副産物によって次第に詰まる一方で、主加熱部分が腐食されて弱くなるといった、ループ302の動作に二重の影響を及ぼす。
【0075】
実施した試験では、同一の管材料の二重ループを試験し、一方は低腐食塩を用い、他方は未処理または市販の参照塩を用いた。ループを1000時間動作させた後、または(例えば、目詰まりまたは破裂による)破損のどちらかが最初に来るまで、実際の腐食を視覚的に観察し比較するために、ループを分解し画像を撮影した。画像は、主加熱部304からの管の内面の平面図および断面図をとることを含んでいた。平面図および断面図の代表的な位置を
図4の画像に示す。
【0076】
試験中、上記の方法により製造された低腐食NaCl-MgCl2塩(実施例5)は、商業的に得られた「超乾燥99.99%純粋」の未処理NaCl-MgCl2混合物より、多熱、流動、腐食試験において腐食速度(ミクロン/年で測定)で5倍優れていることが分かった。さらに、実施例5のMg還元塩は、腐食試験において実施例1~4の塩よりも著しく優れていた。
【0077】
図5~
図6および
図8は、上記の腐食装置を用いて実施される特定の腐食試験セットの画像結果を示す。実験では、上記のように製造された低腐食NaCl-MgCl
2(58~42mol%)塩および市販の超乾燥99.99%純粋NaCl-MgCl
2(58~42mol%)塩の両方で、合金600の管の腐食についての実験を行った。両方の実験における主加熱部は、循環塩を約620℃に加熱するように制御した。600合金は、高温用に設計されたニッケル-クロム-鉄合金である。両方の実験は、約1000時間で終了するまで行った。
【0078】
図5は、主加熱部からの管の内部の表面の平面図画像を示す図である。
図5から分かるように、左側の対照実験の管表面は、右側に示されている実施例5の低腐食塩についてのものよりも表面腐食を著しく示している。
【0079】
図6は、同じ実験からの管の断面図を示す。この場合、低腐食塩の拡大率は、対照塩の拡大率の4倍である。再び、画像は、左側の対照実験の管表面が右側に示されている低腐食塩についてものよりも表面腐食を著しく示していることを図示している。画像の分析に基づいて、
図5および
図6に列挙されるように、対照実験上の空隙は72マイクロメートルの深さまで貫通し、一方、低腐食塩を受けていた管上の空隙は、約14マイクロメートルの深さまで貫通した。これは5倍の違いであり、言い換えれば、同じ条件下での低腐食塩の使用は、未処理塩で観察された腐食の20%にすぎなかった。
【0080】
図8は同じ実験からの管の断面図を示しており、今回は、Ni、Fe、およびCrの除去を示している。暗色は、Ni、Fe、およびCrが除去された純粋なモリブデンの面積を表す。図示のように、未処理の塩は、処理塩と比較して、管の鋼を著しく腐食する。
【0081】
添付の特許請求の範囲にもかかわらず、開示はまた、以下の条項によって定義される:
条項1.
少なくとも1つの不純物を含有するNaCl-MgCl2塩から、腐食性の低いNaCl-MgCl2塩を製造するための方法であって、
少なくとも1つの反応した不純物を含有する塩-Mg混合物を得るために、前記少なくとも1つの不純物を含有する前記NaCl-MgCl2塩を、前記NaCl-MgCl2塩およびMg金属の融点を超える温度で前記Mg金属と混合するステップと、
腐食性の低いNaCl-MgCl2塩を得るために、少なくとも1つの反応した不純物の少なくとも一部を前記塩-Mg混合物から除去するステップと、を含む方法。
【0082】
条項2.
前記混合するステップは、
固体塩およびMg組成物を得るために、固体Mg金属を固体NaCl-MgCl2塩に添加するステップと、
前記固体塩およびMg組成物を、前記NaCl-MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度まで加熱するステップと、をさらに含む、条項1に記載の方法。
【0083】
条項3.
前記混合するステップは、
塩およびMg組成物を得るために、固体Mg金属を液体NaCl-MgCl2塩に添加するステップと、
前記塩およびMg組成物を、前記NaCl-MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度まで加熱するステップと、をさらに含む、条項1に記載の方法。
【0084】
条項4.
前記混合するステップは、
前記塩およびMg組成物を、前記NaCl-MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度に維持しながら、前記塩およびMg組成物を撹拌するステップをさらに含む、条項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【0085】
条項5.
前記少なくとも1つの不純物は、水、Fe、FeCl3、Cr、CrCl3、Ni、NiCl3、Cu、CuCl3、V、VCl3、Ti、TiCl3、Mn、MnCl2、Mo、MoCl3、Zn、およびZnCl2から選択される1つ以上の不純物を含有する、条項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【0086】
条項6.
混合操作後に塩-Mg混合物から過剰Mg金属を除去するステップをさらに含む、条項1に記載の方法。
【0087】
条項7.
少なくとも1つの反応した不純物を含有する塩-Mg混合物をMg金属の沸点未満に冷却するステップをさらに含む、条項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【0088】
条項8.
NaClおよびMgCl2を得るステップと、
少なくとも1つの不純物を含有する前記NaCl-MgCl2塩を得るために、前記NaClおよびMgCl2を混合するステップをさらに含む、条項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【0089】
条項9.
Mgと前記少なくとも1つの不純物との間の反応を示すパラメータを監視するステップと、
前記監視されたパラメータと閾値との比較に基づいて選択された期間中、前記塩およびMg組成物を前記NaCl-MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度に維持するステップと、をさらに含む、条項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【0090】
条項10.
前記パラメータは、前記塩およびMg組成物からのHClの生成である、条項9に記載の方法。
【0091】
条項11.
前記パラメータは、前記NaCl-MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度で費やされる時間である、条項9に記載の方法。
【0092】
条項12.
前記除去するステップは、
前記塩およびMg組成物を濾過するステップをさらに含む、条項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【0093】
条項13.
前記除去するステップは、
前記塩およびMg組成物から沈殿物を分離するステップをさらに含む、条項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【0094】
条項14.
前記混合するステップは、
容器中のNaCl-MgCl2塩にMg金属を添加するステップと、
前記塩-Mg混合物を得るために、前記MgおよびNaCl-MgCl2塩が前記NaCl-MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度になるまで前記容器を加熱するステップと、をさらに含む、条項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【0095】
条項15.
前記混合するステップは、
前記Mg金属およびNaCl-MgCl2塩が前記NaCl-MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度になるまで前記容器を加熱した後、前記容器中で前記塩-Mg混合物を撹拌するステップをさらに含む、条項14に記載の方法。
【0096】
条項16.
前記撹拌するステップは、
前記容器内に前記塩-Mg混合物を通して不活性ガスを散布するステップをさらに含む、条項15に記載の方法。
【0097】
条項17.
前記撹拌するステップは、
前記容器内の前記塩-Mg混合物中で羽根車を回転させるステップをさらに含む、条項15に記載の方法。
【0098】
条項18.
前記腐食性の低いNaCl-MgCl2塩は、100mg/kg未満の不純物を有する条項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【0099】
条項19.
前記腐食性の低いNaCl-MgCl2塩は、50mg/kg未満の不純物を有する条項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【0100】
条項20.
前記腐食性の低いNaCl-MgCl2塩は、10mg/kg未満の不純物を有する条項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【0101】
条項21.
条項1~17のいずれか1項に記載の方法によって生成される塩。
【0102】
条項22.
水、Fe、FeCl3、Cr、CrCl3、Ni、NiCl3、Cu、CuCl3、V、VCl3、Ti、TiCl3、Mn、MnCl2、Mo、MoCl3、Zn、およびZnCl2から選択される1つ以上の不純物を含有する不純MgCl2-X塩を提供するステップと、
少なくとも1つの反応した不純物を含有する塩-Mg混合物を得るために、前記不純MgCl2-X塩を、前記不純MgCl2-X塩およびMgの融点を超える温度で前記Mgと混合するステップと、
処理MgCl2-X塩を取得するために、少なくとも1つの反応した不純物の少なくとも一部を前記塩-Mg混合物から除去するステップと、を含むMgCl2-X塩の製造方法。
【0103】
条項23.
前記混合するステップは、
固体塩およびMg組成物を得るために、固体Mgを固体不純MgCl2-X塩に添加するステップと、
前記固体塩およびMg組成物を、前記不純MgCl2-X塩および前記Mgの融点を超える前記温度まで加熱するステップと、をさらに含む、条項22に記載の方法。
【0104】
条項24.
前記混合するステップは、
塩およびMg組成物を得るために、固体Mgを液体MgCl2塩に添加するステップと、
前記塩およびMg組成物を、前記塩および前記Mgの融点を超える前記温度まで加熱するステップと、をさらに含む、条項22に記載の方法。
【0105】
条項25.
前記混合するステップは、
前記塩およびMg組成物を、前記MgCl2-X塩および前記Mgの融点を超える前記温度に維持しながら、前記塩およびMg組成物を撹拌するステップをさらに含む、条項22から24のいずれか1項に記載の方法。
【0106】
条項26.
混合操作後に塩-Mg混合物から過剰Mg金属を除去するステップをさらに含む、条項22に記載の方法。
【0107】
条項27.
少なくとも1つの反応した不純物を含有する塩-Mg混合物をMg金属の沸点未満に冷却するステップをさらに含む、条項22から26のいずれか1項に記載の方法。
【0108】
条項28.
MgCl2と、KCl、LiClまたはNaClから選択される第2の塩とを得るステップと、
少なくとも1つの不純物を含有する前記MgCl2塩を得るために、前記MgCl2および前記第2の塩を混合するステップをさらに含む、条項22から27のいずれか1項に記載の方法。
【0109】
条項29.
Mgと前記少なくとも1つの不純物との間の反応を示すパラメータを監視するステップと、
前記監視されたパラメータと閾値との比較に基づいて選択された期間中、前記塩およびMg組成物を前記MgCl2-X塩および前記Mgの融点を超える前記温度に維持するステップと、をさらに含む、条項22から28のいずれか1項に記載の方法。
【0110】
条項30.
前記パラメータは、前記塩およびMg組成物からのHClの生成である、条項29に記載の方法。
【0111】
条項31.
前記パラメータは、前記MgCl2-X塩および前記Mgの融点を超える前記温度で費やされる時間である、条項29に記載の方法。
【0112】
条項32.
前記除去するステップは、
前記塩およびMg組成物を濾過するステップをさらに含む、条項22から31のいずれか1項に記載の方法。
【0113】
条項33.
前記除去するステップは、
前記塩およびMg組成物から沈殿物を分離するステップをさらに含む、条項22から32のいずれか1項に記載の方法。
【0114】
条項34.
前記混合するステップは、
容器中の前記MgCl2-X塩にMg金属を添加するステップと、
前記塩-Mg混合物を得るために、前記Mg金属およびMgCl2-X塩が前記MgCl2塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度になるまで前記容器を加熱するステップと、をさらに含む、条項22から33のいずれか1項に記載の方法。
【0115】
条項35.
前記混合するステップは、
前記Mg金属およびMgCl2-X塩が前記MgCl2-X塩および前記Mg金属の融点を超える前記温度になるまで前記容器を加熱した後、前記容器中で前記塩-Mg混合物を撹拌するステップをさらに含む、条項34に記載の方法。
【0116】
条項36.
前記撹拌するステップは、
前記容器内に前記塩-Mg混合物を通して不活性ガスを散布するステップをさらに含む、条項35に記載の方法。
【0117】
条項37.
前記撹拌するステップは、
前記容器内の前記塩-Mg混合物中で羽根車を回転させるステップをさらに含む、条項35に記載の方法。
【0118】
条項38.
前記腐食性の低いMgCl2塩は、500mg/kg未満の不純物を有する条項22から37のいずれか1項に記載の方法。
【0119】
条項39.
前記腐食性の低いMgCl2塩は、100mg/kg未満の不純物を有する条項22から37のいずれか1項に記載の方法。
【0120】
条項40.
前記腐食性の低いMgCl2塩は、50mg/kg未満の不純物を有する条項22から37のいずれか1項に記載の方法。
【0121】
条項41.
前記MgCl2-X塩は、MgCl2-NaCl、MgCl2-LiCl、MgCl2-KCl、MgCl2-NaCl-LiCl、MgCl2-NaCl-KCl、MgCl2-NaCl-LiCl-KCl、またはMgCl2-KCl-LiClから選択される、条項22から37のいずれか1項に記載の方法。
【0122】
条項42.
前記MgCl2-Xと混合されるMgは、Mg金属の形態である、条項22から41のいずれか1項に記載の方法。
【0123】
条項43.
条項22~42のいずれか1項に記載の方法によって生成される塩。
【0124】
条項44.
少なくとも99.99質量%のNaClおよびMgCl2と、
NaClおよびMgCl2以外の不純物である残部と、を含むNaCl-MgCl2塩。
【0125】
条項45.
少なくとも99.995質量%のNaClおよびMgCl2と、
NaClおよびMgCl2以外の不純物である残部と、をさらに含む、条項44に記載のNaCl-MgCl2塩。
【0126】
条項46.
少なくとも99.999質量%のNaClおよびMgCl2と、
NaClおよびMgCl2以外の不純物である残部と、をさらに含む、条項44に記載のNaCl-MgCl2塩。
【0127】
条項47.
少なくとも99.9995質量%のNaClおよびMgCl2と、
NaClおよびMgCl2以外の不純物である残部と、をさらに含む、条項44に記載のNaCl-MgCl2塩。
【0128】
条項48.
少なくとも99.9999質量%のNaClおよびMgCl2と、
NaClおよびMgCl2以外の不純物である残部と、をさらに含む、条項44に記載のNaCl-MgCl2塩。
【0129】
条項49.
100mg/kg未満の不純物を有する、MgCl2とLiCl、KCl及びNaClのうちの少なくとも1つとの塩。
【0130】
条項50.
50mg/kg未満の不純物を有する、条項49に記載のMgCl2の塩。
【0131】
条項51.
10mg/kg未満の不純物を有する、条項49に記載のMgCl2の塩。
【0132】
条項52.
前記塩は、MgCl2-NaCl、MgCl2-LiCl、MgCl2-KCl、MgCl2-NaCl-LiCl、MgCl2-NaCl-KCl、MgCl2-NaCl-LiCl-KCl、またはMgCl2-KCl-LiClから選択される、条項49に記載のMgCl2の塩。
【0133】
条項53.
1重量部のMgと、
1~500重量部のNaCl-MgCl2と、を含む前駆体生成物。
【0134】
条項54.
100~300重量部のNaCl-MgCl2をさらに含む、条項53に記載の前駆体生成物。
【0135】
特に断らない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される混合材料の量、分子量などの特性、反応条件、などを表すすべての数字は、すべての場合において、「約」という語句によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、取得を望む所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0136】
本技術の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の具体例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0137】
本明細書に記載されるシステムおよび方法は、言及される目的および利点、ならびにその中に固有のものを達成するように十分に適合されることが明らかである。当業者であれば、本明細書内の方法およびシステムは多くの方法で実施することができ、そのような方法は前述の例示的な実施形態および実施例によって限定されるものではないことを認識するであろう。この点に関して、本明細書に記載される異なる実施形態の任意の数の特徴が、1つの単一の実施形態に組み合わされてもよく、本明細書に記載される特徴の全てよりも少ないか、またはそれよりも多い特徴を有する代替の実施形態が可能である。
【0138】
本開示の目的のために様々な実施形態を説明してきたが、本開示によって十分に企図される範囲内にある様々な変更および修正を行うことができる。例えば、上記の実施形態は、MgCl2-X塩を処理するための回分系(batch system)に焦点を当てているが、連続系(continuous systems)も可能であり、同じ方法を実施して同じ塩を連続式に生成するために、上記の記載を使用して連続系を容易に設計することができる。当業者には容易に示唆され、本開示の精神に包含される多数の他の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1】塩の腐食性を低下させるための方法を高レベルで示す。
【
図2】NaCl-MgCl
2共晶のような、Mgの融点より低い融点を有する塩を処理する、
図1のより詳細な実施形態を示す。
【
図3】上記の方法により作成された低腐食NaCl-MgCl
2塩組成物の改良された性能を試験するために作成された腐食試験装置300を示す。
【
図4】試験ループの一部として得られた平面図および断面図の代表的な位置を示す。
【
図5】主加熱部からの管の内部の表面の平面図画像を示す。
【
図6】
図5に示されているものと同じ実験からの管の断面図を示す。
【
図7】上記で提供される方法の実施形態を使用して塩を処理するための、システムの実施形態のブロック図を示す。
【
図8】同じ実験からの管の断面図を示しており、今回は、Ni、Fe、およびCrの除去を示している。