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特開2024-73657多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073657
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/84 20060101AFI20240522BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C09K11/84
C09K11/80
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050517
(22)【出願日】2024-03-26
(62)【分割の表示】P 2022579894の分割
【原出願日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】202010958933.7
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521003302
【氏名又は名称】大連民族大学
【氏名又は名称原語表記】DALIAN MINZU UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】DALIAN MINZU UNIVERSITY NO.18 Liaohe West Road, Development Zone Dalian, Liaoning 116600, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】董 斌
(72)【発明者】
【氏名】羅 昔賢
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001XA03
4H001XA04
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA19
4H001XA21
4H001XA31
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA39
4H001XA40
4H001XA48
4H001XA55
4H001XA56
4H001XA57
4H001XA64
4H001XA71
4H001XA83
4H001YA42
4H001YA58
4H001YA59
4H001YA60
4H001YA62
4H001YA63
4H001YA65
4H001YA67
4H001YA68
4H001YA69
4H001YA70
4H001YA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】工業用NaYF:Yb,Er材料よりも高いアップコンバージョンルミネッセンス効率と安全性を有し、応用範囲が広い多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料を提供する。
【解決手段】本発明は、多価硫化物をホストとし、希土類イオンを賦活剤とし、材料の一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dである。本発明にて提供されるアップコンバージョンルミネッセンス材料は、750-1650nmの近赤外光励起で紫外、青、青緑、緑色、赤色及び近赤外光を発光することができる。本発明にて提供されるアップコンバージョンルミネッセンス材料は、フォノンエネルギー及び対称性の低い多価硫化物をホスト材料とし、ルミネッセンス中心として、好ましくは希土類イオンをホスト材料にドープする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起波長範囲が1450-1600nmまたは780-860nmで紫外、青、青緑、緑、赤および近赤外光の発光に用いられる多硫化物アップコンバージョン発光材料であって、
一般組成式がmA S・nBS・kC 2-x :D であり、そのうち、
AはLi、Na、K、Rb、Csのうちの1種または2種以上であり、
BはBe、Mg、Sr、Ba、Zn、Cd、Csのうちの1種または2種以上であり、
CはLa、Gd、Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biのうちの1種または2種以上であり、
DはErであり、
m,n,k,xはモル分率であり,m=0―2,n=0―6,k=0.3―2.5,x=0.05―2であり、ここで、
m=0―0.2、n=0―0.1のとき、kの値は0.9―1.1であり、
n=0―0.1のとき、mの値は0.8-1.2であり、kの値は0.4-0.6であり、
m=0-0.2、nの値が0.8-1.2の場合、kの値は0.8-1.2であり、
m=0-0.2、nの値が4.5-5.5のとき、k値は1. 8-2.2であり、
励起波長範囲は1450―1600nmまたは780―860nmであり、前記励起波長のうちの1つまたは2つ以上を採用する
多硫化物アップコンバージョン発光材料。
【請求項2】
多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料であって、
一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dであり、そのうち、
Aは、Li、Na、K、Rb、Csの1種又は2種以上であり、
Bは、Be、Mg、Sr、Ba、Zn、Cd、Csの1種又は2種以上であり、
Cは、La、Gd、Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biの1種又は2種以上であり、
Dは、Ho、Er、Tm、Prの1種又は2種以上であり、且つDにMo、W、Ce、Sm、Tb、Yb、Eu又はNdが共ドープされ、
m、n、k、xは、モル分率であり、m=0-0.2、n=0-0.1、K=0.91.1、x=0.0001-2であることを特徴とする多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【請求項3】
多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料であって、
一般組成式がmA S・nBS・kC 2-x :D であり、そのうち、
Aは、Li、Na、K、Rb、Csの1種又は2種以上であり、
Bは、Be、Mg、Sr、Ba、Zn、Cd、Csの1種又は2種以上であり、
Cは、La、Gd、Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biの1種又は2種以上であり、
Dは、Ho、Er、Tm、Prの1種又は2種以上であり、且つDにMo、W、Ce、Sm、Tb、Yb、Eu又はNdが共ドープされ、
m、n、k、xは、モル分率であり、m=0.8-1.2、n=0-0.1、K=0.4-0.6、x=0.0001-2であることを特徴とする多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【請求項4】
多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料であって、
一般組成式がmA S・nBS・kC 2-x :D であり、そのうち、
Aは、Li、Na、K、Rb、Csの1種又は2種以上であり、
Bは、Be、Mg、Sr、Ba、Zn、Cd、Csの1種又は2種以上であり、
Cは、La、Gd、Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biの1種又は2種以上であり、
Dは、Ho、Er、Tm、Prの1種又は2種以上であり、且つDにMo、W、Ce、Sm、Tb、Yb、Eu又はNdが共ドープされ、
m、n、k、xは、モル分率であり、m=0-0.2、n=0.8-1.2、K=0.8-1.2、x=0.0001-2であることを特徴とする多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【請求項5】
多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料であって、
一般組成式がmA S・nBS・kC 2-x :D であり、そのうち、
Aは、Li、Na、K、Rb、Csの1種又は2種以上であり、
Bは、Be、Mg、Sr、Ba、Zn、Cd、Csの1種又は2種以上であり、
Cは、La、Gd、Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biの1種又は2種以上であり、
Dは、Ho、Er、Tm、Prの1種又は2種以上であり、且つDにMo、W、Ce、Sm、Tb、Yb、Eu又はNdが共ドープされ、
m、n、k、xは、モル分率であり、m=0-0.2、n=4.5-5.5、K=1.8-2.2、x=0.0001-2であることを特徴とする多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【請求項6】
DがErを含む場合、x値が0.05-2であり、励起波長範囲は1450-1600nm、920-1150nm、780-860nmであり、前記励起波長の1種又は2種以上を使用することを特徴とする請求項に記載の多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【請求項7】
DがHoを含む場合、x値は0.02-2であり、使用している励起波長範囲は1100-1190nmであることを特徴とする請求項に記載の多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【請求項8】
DがTmを含む場合、x値は0.01-2であり、使用している励起波長範囲は1180-1260nm及び760-850nmであり、これら2つの励起波長を単独で又は同時に使用することを特徴とする請求項に記載の多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【請求項9】
750-1650nmの近赤外光励起で紫外、青、青緑、緑色、赤色及び近赤外光を発光することを特徴とする請求項-8の何れか1項に記載の多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光機能性新規材料の分野に属し、特に、多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ルミネッセンスは、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセンス、放射性ルミネッセンス、ケミルミネッセンス、バイオルミネッセンスなどの複数の種類に分類することができ、フォトルミネッセンスは、さらに、従来のフォトルミネッセンス(以下、単に従来のルミネッセンスという)とアップコンバージョンルミネッセンスに分類することができる。従来のルミネッセンスは、入射励起光波長が発射光波長よりも小さく、ルミネッセンス効率が高く、量子効率が100%に達するか、ひいては100%を越えても良いという特徴を有している。アップコンバージョンルミネッセンスは、従来のルミネッセンスと比較して、赤外光を紫外又は可視光に変換でき、その独特のルミネッセンス特性は、バイオメディカル、太陽電池、赤外偽造防止、レーザーディスプレイなどの分野に適用することができるため、注目を集めている。アップコンバージョンルミネッセンスを実現するには、活性化剤又は活性化剤と増感剤との間のエネルギー伝達過程を通過する必要があり、ルミネッセンスイオンの中間準位の長寿命化が要求され、現在、室温でアップコンバージョンルミネッセンスを実現できる元素種は多くなく、その多くはランタノイドである。Ybイオンは、他のランタノイドと比較して、吸収断面積(11.7×10-21cm)が大きく、エネルギー準位構造がシンプルであり、高濃度ドーピングを容易に達成することができ、励起源として980nm赤外光を使用する場合、Ybイオンは、増感剤として、材料のアップコンバージョンルミネッセンスを顕著に補強することができる[(1)F.Auzel,Upconversion and anti-Stokes processes with f and d ions in solids,Chem.Rev.,2004,104,139-174]。アップコンバージョンルミネッセンスは、入射励起光波長が発射光波長よりも大きいため、高いルミネッセンス効率を達成することが困難であり、現在のところ、アップコンバージョンルミネッセンス材料の最大量子効率は10%に達しておらず、1%以下が大半である。
【0003】
アップコンバージョンルミネッセンス材料のルミネッセンス効率をさらに向上させるためには、高効率なルミネッセンス準位を有するルミネッセンスイオン、増感イオン、及び適切な励起経路を選択することに加えて、材料の無輻射遷移確率を低減する必要があり、また、適切なホスト材料を選択することが、アップコンバージョンルミネッセンス効率を向上させる最も直接的な方法である。ホスト格子の選択は、ドーパントイオン間の相対的な空間位置を決定するだけでなく、ドーパントイオンの周囲のアニオン種や配位数にも影響を及ぼす。ホスト格子とドーパントイオンとの相互作用は、材料のアップコンバージョンルミネッセンス特性及びルミネッセンス効率に大きな影響を与える。ホスト材料の選択基準は、大きく分けて、(1)フォノンエネルギーが小さいホスト材料を選択することで、マルチフォノンの無放射緩和を低減し、励起状態の寿命を長くし、さらに、アップコンバージョンルミネッセンス効率を向上させること、(2)結晶構造の対称性が低いホスト材料を選択することで、ランタノイドの電子遷移のユークリジメトリック選択則により、アップコンバージョンルミネッセンスのf-f電気双極子遷移が禁制であるが、結晶の対称性が低いホストにおいては、結晶の電界の奇数項により、4fのセット状態の電気双極子遷移が可能となり、アップコンバージョンルミネッセンスとルミネッセンス効率を向上させることができること、の2つである。
【0004】
上記基準に基づき、アップコンバージョンルミネッセンス効率が高いホスト材料を選別した。
【0005】
(1)希土類ハロゲン化物:フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などは、非常に低いフォノンエネルギーを有し、高効率のアップコンバージョンルミネッセンスが得られる。塩化物、臭化物、ヨウ化物は、化学的に不安定で潮解しやすく、また製造工程が複雑で、実用化が制限されている。フッ化物は、潮解しやすい問題をある程度解決し、フォノンエネルギーが低いという特徴を保持し、現在最も多く使用され、最も広く研究されているホストである。そのうち、β-NaYF:Yb,Er及びβ-NaYF:Yb,Tmは、現在最もルミネッセンス効率が高いアップコンバージョンルミネッセンス材料と考えられている[(2)K.W.Kramer,D.Biner,G.Frei,H.U.Gudel,M.P.Hehlen,S.R.Luthi,Hexagonal Sodium Yttrium Fluoride Based Green and Blue Emitting Upconversion Phosphors,Chem.Mater.,2004,16,1244]。しかし、フッ化物の製造に必要な環境も厳しく、生産過程において設備の腐食や環境汚染の原因となる。
【0006】
(2)希土類オキシ硫化物:オキシ硫化物は、低いフォノンエネルギーを有するだけでなく、化学的及び熱的安定性に優れ(融点が高い:2000~2200°C)、耐酸化性に強く、放射線に対する耐性が高く、毒性が低く、水に溶解しないなどの利点を有する。YSホストにおいて、高効率のアップコンバージョンルミネッセンス、例えば980nm励起YS:Yb,Hoのアップコンバージョンルミネッセンス輝度が得られているが、既知の材料の中で最も高い可能性がある[(3)Luo X X,Cao W H,Upconversion luminescence of holmium and ytterbium co-doped yttrium oxysulfide phosphor,Mater.Lett.,2007,61 (17):3696-3700]。しかし、希土類オキシ硫化物は、共有結合性が高く、製造工程が複雑で生産が困難である。
【0007】
(3)酸化物:酸化物は、フォノンエネルギーが高く、大部分が無毒で化学的安定性が良く、製造工程が簡単であり、生産環境に対する要求が低い。また、酸化物単結晶は活性イオン蛍光スペクトルが狭く、利得が高く、ガラスよりも硬度、機械的強度、熱伝導性に優れているため、アップコンバージョンレーザー材料のホストとして、物理化学的に安定な酸化物単結晶が多く用いられている。Y/Gd、Bi、リン酸塩などの希土類複合酸化物は、良好なアップコンバージョンルミネッセンス特性を示すが、上記3種類の材料の中では、アップコンバージョンルミネッセンス効率が最も低い。
【0008】
【0009】
希土類多価硫化物は、塩化物と同等の低いフォノンエネルギーを有し、優れた化学的安定性を有する。例えばNaYSの最高フォノンエネルギーが279cm-1であり、現在最もアップコンバージョンルミネッセンス効率の高いβ-NaYF(418cm-1)のフォノンエネルギーよりも低く、かつ低対称性結晶系に属し、理想的なアップコンバージョンのホスト材料としての条件を満たしており、これをホストとするアップコンバージョンルミネッセンス材料は、より高いアップコンバージョンルミネッセンス効率を有するべきである。従来、高級顔料には希土類硫化物が用いられており、Ybイオンで増感されることが多いが、硫化物ホストのアップコンバージョンルミネッセンスに関する報告は非常に少ない。
【0010】
Higuchiらは、最初に、800及び980nm励起下でのGa-GeS-LaガラスにおけるEr3+イオンのアップコンバージョンルミネッセンスを報告したが、その緑色アップコンバージョンルミネッセンス量子効率は、フッ化物ガラスの半分未満であることを報告した[(23)H.Higuchi,M.Takahashi,Y.Kawamoto,Optical transitions and frequency upconversion emission of Er3+ ions in Ga-GeS-La glasses,J.Appl.Phys.,1998,83,19]。また、Pascalらの研究により、純硫化物では、S2-→Yb3+のLMCT吸収端は20000cm-1未満であり、Er3+11/23/2及び7/2準位と重なり、980nm励起Yb3+及びEr3+共ドープNaYSアップコンバージョンルミネッセンス材料のルミネッセンス強度を2桁も低下させることが明らかとなった。したがって、純希土類硫化物は、従来のYb3+増感されたアップコンバージョンルミネッセンスのための妥当なホスト材料ではないと一般に考えられている[(24)Pascal Gerner,Hans U.Gudel,Absorption and upconversion light emission properties of Er3+ and Yb3+/Er3+ codoped NaYS,Chem.Phys.Lett.,413 (2005) 105-109.(25)張継森、張立国、任建岳ら、Yb3+及びEr3+ドープNaYS粉末材料の室温でのStocks及びAnti-Stocksルミネッセンス、ルミネッセンス報告、2013,34(7),824-828]。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑み、多波長励起により、赤、緑、青の3原色のアップコンバージョンルミネッセンス及び紫外、近赤外のアップコンバージョンルミネッセンスを実現する、ルミネッセンス効率の高い多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料を提供する。この材料は、アップコンバージョンルミネッセンス輝度が高く、化学的に安定であり、バイオコンパチビリティーが良いなどの利点がある。
【0012】
本発明の技術的解決策は、以下のとおりである。
【0013】
多価硫化物をホストとし、希土類イオンを賦活剤とする多価硫化物アップコンバージョンルミネッセンス材料は、一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dであり、そのうち、Aは、Li、Na、K、Rb、Csの1種又は2種以上であり、Bは、Be、Mg、Sr、Ba、Zn、Cd、Csの1種又は2種以上であり、Cは、La、Gd、Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biの1種又は2種以上であり、Dは、Ho、Er、Tm、Prの1種又は2種以上であり、且つDにMo、W、Ce、Sm、Tb、Yb、Eu又はNdが共ドープされ、m、n、k、xは、モル分率であり、m=0-2、n=0-6、K=0.3-2.5、x=0.0001-2であり、この材料は750-1650nmの近赤外光励起で紫外、青、青緑、緑色、赤色及び近赤外光を発光することができる。
【0014】
(1)一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dのアップコンバージョンルミネッセンス材料で、m=0-0.2、n=0-0.1の場合、kの値が0.9-1.1であることが好ましい。
【0015】
(2)一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dのアップコンバージョンルミネッセンス材料は、n=0-0.1の場合、mの値が0.8-1.2、kの値が0.4-0.6であることが好ましい。
【0016】
(3)一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dのアップコンバージョンルミネッセンス材料は、m=0-0.2の場合、nの値が0.8-1.2、kの値が0.8-1.2であることが好ましい。
【0017】
一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dのアップコンバージョンルミネッセンス材料は、m=0-0.2の場合、n値が4.5-5.5、k値が1.8-2.2であることが好ましい。
【0018】
(4)一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dのアップコンバージョンルミネッセンス材料は、DがErを含む場合、x値が0.05-2であることが好ましく、励起波長範囲は1450-1600nm、920-1150nm、780-860nmであり、これら3つの励起波長を単独で又は同時に使用することができる。
【0019】
(5)一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dのアップコンバージョンルミネッセンス材料は、DがHoを含む場合、最適なx値は0.02-2であり、使用している励起波長範囲は1100-1190nmである。
【0020】
(6)一般組成式がmAS・nBS・kC2-x:Dのアップコンバージョンルミネッセンス材料は、DがTmを含む場合、最適なx値は0.01-2であり、使用している励起波長範囲は1180-1260nm及び760-850nmであり、これら2つの励起波長を単独で又は同時に使用することができる。
【0021】
本発明の有利な効果は、以下のとおりである。
【0022】
本発明の化学式mAS・nBS・kC2-x:Dの多価硫化物は、非常に低いフォノンエネルギーを有し、かつ低対称性結晶系に属し、理想的なアップコンバージョンルミネッセンスのホスト材料である。適切な濃度のイオンドープの場合、ドーパントイオン間の間隔は、従来のルミネッセンス材料をはるかに超えるので、高濃度ドーピング及び無放射緩和の低減が可能であり、そのアップコンバージョンルミネッセンス効率は、従来のNaYF:Yb,Erを超え、多重波長励起を同時に達成することができる。特に1450-1600nmの範囲の赤外光が人間の眼の安全波長であり、この波長域の光源を励起源として用いる場合にも、本発明は、適用の場所の保護レベルを軽減したり、あるいは保護設備を使用せずに適用範囲を広げることができ、しかも輝度が最も高いことから、適用に際して特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例18のNaY0.9:Er0.1試料の1550nm励起での発光スペクトルである。
図2】本発明の実施例18のNaY0.9:Er0.1及びNaYF:Yb,Erのデータ図であり、(a)は、輝度データの比較図であり、(b)は、980nm及び1550nmのレーザー励起パワーに対する輝度の変化のグラフであり、(c)は、NaY0.9:Er0.1の980nm及び1550nmのレーザー励起での発光写真である。
図3】本発明の実施例60のNaY0.9:Er0.1@NaY0.8:Yb0.1、Er0.1試料の980nm励起での発光スペクトルである。
図4】本発明の実施例61のNaY0.9:Er0.1@NaGd0.78:Er0.18,Ho0.05試料の980nm励起での発光スペクトルである。
図5】本発明の実施例62のNaY0.8:Er0.10,Nd0.10@NaY0.89:Yb0.08,Nd0.01,Tm0.02試料の980nm励起での発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の多価硫化物の異なる組成及びそのルミネッセンス性能について、具体的な実施例を用いて説明する。
【0025】
比較実施例1:市販のβ-NaYF:Yb,Er緑色アップコンバージョンルミネッセンス材料。
比較実施例2:市販のβ-NaYF:Yb,Tm青色アップコンバージョンルミネッセンス材料。
比較実施例3:市販のY:Yb,Er赤色アップコンバージョンルミネッセンス材料。
【0026】
本発明の試料は、固相反応法により製造され、構成する元素のモル比に応じて原料を秤量し、原料は、技術的解決策における元素の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩とすることができる。乾式混合法により、粉砕、均一混合し、るつぼに入れ、高温炉に入れ、硫化雰囲気(例えば、HS、CS)中で900-1400℃で1-50時間焼成する。焼成時間は、材料量に応じて調整する。輝度を向上させるために、少量の補助溶媒、例えば、0-20wt%のAF及び/又はBF(NHCl、NHF、MgF、CaF、SrF、BaFなどを含む)を原料に加えて、アップコンバージョンルミネッセンス効率を顕著に向上させることができる。
【0027】
本発明では、試料のルミネッセンス輝度又はルミネッセンス強度を測定して、ルミネッセンス効率を評価する。ルミネッセンス輝度の測定は、具体的には、試料を直径10mm、深さ5mmの黒色円盤に入れ、ガラス片で平らに押しつぶして散乱による影響を取り除いた。励起光源は、半導体レーザーとし、可視光試料に対し、試料をレーザーで照射した後、輝度計で試料の輝度を測定した。試験には、現在アップコンバージョンルミネッセンス効率が最も高い市販のβ-NaYF:Yb,Er(緑色)、β-NaYF:Yb,Tm(青色)、Y:Yb,Er(赤色)を参照試料として用いた。不可視試料について、分光計でルミネッセンス強度を測定する方法と比較すると、1組の実施例では全ての試験条件が一定であった。
【0028】
<実施例1>
出発原料として、Y(99.99%)、Er(99.99%)を用いた。原料を化学量論比Y1.9:Er0.01に従い秤量し、30分間よく研磨し、石英管の中に置き、石英管を抵抗炉に置く。CSバブルにArガスを同伴させるか、又は、Arキャリアガスを含有するHSガスをそのまま用いて、試料を10℃/minの速度で1050℃まで加熱し、2時間保温した後、室温まで冷却し、研磨を施すことで目的物を得た。励起源として1500nmレーザーを用い、比較実施例1と比較して、性能を以下の表に示す。
【0029】
同様の方法により、実施例2-実施例17を得ることができる。
【0030】
実施例1-17に挙げた以外のルミネッセンス色、ルミネッセンス強度、熱特性に影響を及ぼすパラメーターは、実施例1-17と同様の方法で求めることができる。A=Rb又はCsの場合は、A=Kと同様の結果となるが、Rb及びCsは高価である。Aを組み合わせて用いると、A=LiとKの組み合わせのように、特性がより良好となり、生成物粒径をより均一にすることができ、ルミネッセンス強度を維持したまま、反応温度を50-100℃程度下げることも適宜可能である。B=Be、Ba、Cdの場合もB=Caと同様の結果が得られるが、環境保護の観点からこれらの元素を含む製品を適用することは困難な場合がある。B=Znの場合は、キャリアガス雰囲気の流量と還元性を制御する必要がある。C=Al、Ga、Biの場合は、通常30%以下のLa、Gd、Lu、Y、Scを置換するために用いられ、この場合、ルミネッセンス強度を5-13%程度向上させることができる。D=Erの場合、励起波長は1450-1600nm、920-1150nm、780-860nmの範囲で使用され、これら3つの励起波長を単独で又は同時に使用することができ、1500nm励起光源を用いた場合と同様の効果が得られる。励起光源波長は、適用条件や市場で大量に提供可能なレーザー波長に応じて選択される。ルミネッセンス輝度は、1450-1600nmの波長範囲の赤外光>920-1150nmの波長範囲の赤外光>780-860nmの波長範囲の赤外光を用いる。特に1450-1600nmの範囲の赤外光が、人間の眼にとって安全な波長であり、かつ輝度が最も高いことから、適用に応じて特に有利である。また、上記実施例では、少量の補助溶媒、例えば、0-20wt%のNHCl、NHF、MgF、CaF、SrF、BaFなどを原料に加えることで、ルミネッセンス輝度をさらに5-28%向上させることができ、これらを組み合わせて用いることで、さらに性能を向上させることができる。
【0031】
D=Erの場合、他のREイオンと組み合わせて共ドープすることで、ルミネッセンス色、吸熱特性などの材料物性を変えることもできる。(x=0.01-0.3)のMo及びWを少量付加添加すると、ルミネッセンススペクトルにおける赤色ルミネッセンス成分を顕著に低減することができ、緑色ルミネッセンスの色純度を2-10倍向上させることができる。また、Ho、Tm又はPrを添加することで、ルミネッセンススペクトルにおける赤色ルミネッセンス成分を増加させることができ、赤色ルミネッセンスの色純度を2-15倍に向上させることができ、そのルミネッセンス輝度は同一励起条件下で比較実施例3の110-180%であるとともに、その赤色ルミネッセンスの色純度は比較実施例3の200-300%である。また、Yb、Ce、Sm、Tb、Eu又はNdを添加することで、熱特性を顕著に増加させてルミネッセンス色を変化させることができ、同じ出力密度で試料の温度上昇を2倍以上に向上させることができる。
【0032】
RE=Hoの場合、励起波長は、1100-1190nmに変更可能であり、その緑色ルミネッセンスの色純度は、RE=Erよりも150%以上向上しており、RE=Tmの場合、励起波長は、1180-1260nm、760-850nmに変更可能であり、その青色ルミネッセンスの輝度が同じ励起条件での比較実施例2の150-300%であり、応用範囲が広がる。さらに他のREと組み合わせて、フルカラールミネッセンスを得ることや、色純度を調整することができる。
【0033】
また、m、n、k、xの値が実施例1-17の範囲外の場合、m=0.2-2、n=0.1-6、k=0.3-0.9、k=1.1-2.5、x=0.2-2の場合も、試料が同様に良好なルミネッセンス効果を示すが、同一条件の実施例1-17に比べてルミネッセンス強度が5-53%低下した。
【0034】
<実施例18>
NaY0.9:Er0.1
出発原料として、Y(99.99%)、Er(99.99%)、NaCO(99.99%)を用いた。原料を化学量論比NaY0.9:Er0.1に従い秤量し、30分間充分に研磨し、石英管の中に置き、石英管を抵抗炉内に置く。CSバブルにArガスを同伴させ、試料を10℃/minの速度で1050℃まで昇温し、2時間保温した後、室温まで冷却し、研磨を施すことで目的物を得た。
【0035】
図1は、NaY0.9:Er0.1試料の1550nm励起でのアップコンバージョンルミネッセンススペクトルである。試料NaY0.9:Er0.1は、512-578nmの波長域における緑色発光及び640-698nmの赤色発光を示し、それぞれ3/215/211/215/29/215/2の準位でのEr3+の遷移に対応していることがわかる。
【0036】
さらに、NaY0.9:Er0.1のアップコンバージョンルミネッセンス特性を評価するため、比較実施例1に対し、同一電力での980nm励起と1550nm励起でのNaY0.9:Er0.1試料のルミネッセンス輝度データ(図2)を比較した。1550nm励起でNaY0.9:Er0.1は、980nm励起での約60倍、ひいては市販のNaYF:Yb,Erの980nm励起での2倍以上の輝度で、非常に高いアップコンバージョンルミネッセンス効率を有していた。
【0037】
同様の方法により、実施例19-実施例37を得ることができる。
【0038】
実施例19-37に挙げた以外のルミネッセンス色、ルミネッセンス強度、熱特性に影響を及ぼすパラメーターは、実施例1-17と同様の方法で求めることができる。その効果は実施例1-17の以下に挙げる例と同様であるが、ルミネッセンス強度は実施例1-17の以下に挙げる例よりも12-35%向上している。
【0039】
実施例19-37と同様の方法により、実施例38-実施例47を得ることができる。
【0040】
実施例38-47に挙げた以外のルミネッセンス色、ルミネッセンス強度、熱特性に影響を及ぼすパラメーターは、実施例38-47と同様の方法で求めることができる。その効果は実施例1-17の以下に挙げる例と同様であるが、ルミネッセンス強度は実施例1-17の以下に挙げる例よりも7-23%向上している。
【0041】
実施例38-37と同様の方法により、実施例48-実施例59を得ることができる。
【0042】
実施例48-59に挙げた以外のルミネッセンス色、ルミネッセンス強度、熱特性に影響を及ぼすパラメーターは、実施例48-59と同様の方法で求めることができる。その効果は実施例1-17の以下に挙げる例と同様である。
【0043】
<実施例60>
NaY0.9:Er0.1@NaY0.8:Yb0.1,Er0.1
(99.99%)とEr(99.99%)を化学量論比NaY0.9:Er0.1に従い秤量し、適量の水と6mol/Lの塩酸を加えて撹拌し希土類塩化物を形成した。オレイン酸とオクタデセンの適量を取り、硫黄粉末とオレイン酸ナトリウムの一定量を秤量して、上記希土類塩化物と混合し、真空雰囲気下120℃で水やその他の低沸点不純物を除去した。その後、溶液を速やかに300℃まで昇温し、1時間保温した。試料を水及びエタノールで数回洗浄した後、乾燥してNaY0.9:Er0.1の試料を得た。Y(99.99%)、Yb(99.99%)及びEr(99.99%)を秤量して希土類塩化物を製造し、上記ステップを繰り返して製造されたNaY0.9:Er0.1を混合物に添加し、300℃で1時間保温して、コア-シェル構造NaY0.9:Er0.1@NaY0.8:Yb0.1,Er0.1試料を形成した。
【0044】
図3は、1550nm励起下でのNaY0.9:Er0.1@NaY0.8:Yb0.1,Er0.1試料のアップコンバージョンルミネッセンススペクトルである。スペクトルは、可視光部分において、512-578nmの波長域における緑色発光及び640-698nmの波長域における赤色発光の2つのスペクトルバンドからなり、それぞれ、Er3+イオンの3/215/211/215/29/215/2の遷移に対応する。NaY0.9:Er0.1試料と比較すると、NaY0.9:Er0.1@NaY0.8:Yb0.1,Er0.1は、ピークのタイプが類似しているが、赤色及び緑色の波長域の相対的な発光強度が大きく異なり、NaY0.9:Er0.1は、緑色が強く赤色が弱い光を示し、NaY0.9:Er0.1@NaY0.8:Yb0.1,Er0.1は、赤色が強く緑色が弱い光を示す。同一励起条件下では、この試料の発熱量が実施例18の3倍であり、光と熱の両方の効果が同時に必要な場合に適用できる。
【0045】
<実施例61>
NaGd0.9:Er0.1@NaGd0.78:Er0.18,Ho0.05
(99.99%)とEr(99.99%)を化学量論比NaGd0.9:Er0.1に従い一定量秤量し、適量の水と6mol/Lの塩酸を加えて撹拌し希土類塩化物を形成した。オレイン酸とオクタデセンの適量を取り、硫黄粉末とオレイン酸ナトリウムの一定量を秤量して、上記希土類塩化物と混合し、真空雰囲気下120℃で水やその他の低沸点不純物を除去した。その後、溶液を速やかに300℃まで昇温し、1時間保温した。試料を水及びエタノールで数回洗浄した後、乾燥してNaY0.9:Er0.1の試料を得た。Y(99.99%)、Er(99.99%)及びHo(99.99%)を秤量して希土類塩化物を製造し、上記ステップを繰り返して製造されたNaY0.9:Er0.1を混合物に添加し、300℃で1時間保温して、コア-シェル構造NaGd0.9:Er0.1@NaGd0.78:Er0.18,Ho0.05試料を形成した。
【0046】
図4は、NaY0.9:Er0.1@NaGd0.78:Er0.18,Ho0.05試料の980nmレーザー励起での発光スペクトルである。図3の発光スペクトルは、1)646-666nmの波長域にある赤色ルミネッセンスバンド:それぞれ650、654、661nmに3つの発光ピークがあり、Ho3+イオンの遷移に対応する。2)535-565nmの波長域にある緑色ルミネッセンスバンド:それぞれ543及び548nmに2つの発光ピークがあり、Ho3+イオンの及び遷移に対応する、2つのスペクトルバンドからなる。
【0047】
<実施例62>
NaY0.8:Er0.10,Nd0.10@NaY0.89:Yb0.08,Nd0.01,Tm0.02
(99.99%)、Er(99.99%)及びNd(99.99%)を化学量論比NaY0.8:Er0.10,Nd0.10に従い一定量秤量し、適量の水と6mol/Lの塩酸を加えて撹拌し希土類塩化物を形成した。オレイン酸とオクタデセンの適量を取り、硫黄粉末とオレイン酸ナトリウムの一定量を秤量して、上記希土類塩化物と混合し、真空雰囲気下120℃で水やその他の低沸点不純物を除去した。その後、溶液を速やかに300℃まで昇温し、1時間保温した。試料を水及びエタノールで数回洗浄した後、乾燥してNaY0.8:Er0.10,Nd0.10の試料を得た。Y(99.99%)及びTm(99.99%)を秤量して希土類塩化物を製造し、上記ステップを繰り返して製造されたNaY0.8:Er0.10,Nd0.10を混合物に添加し、300℃で1時間保温して、コア-シェル構造NaY0.8:Er0.10,Nd0.10@NaY0.89:Yb0.08,Nd0.01,Tm0.02試料を形成した。
【0048】
図5は、NaY0.8:Er0.10,Nd0.10@NaY0.89:Yb0.08,Nd0.01,Tm0.02試料の980nmレーザー励起での発光スペクトルである。図中の発光スペクトルは、1)460-499nmの波長域にあり、そのピークが476nmにあり、Tm3+遷移に属する青色ルミネッセンスバンド、2)639-654nmの波長域にあり、そのピークが650nmにあり、Tm3+イオンの遷移に属する赤色ルミネッセンスバンド、3)670-726nmの波長域にあり、そのピークが698nmにあり、Tm3+イオンの遷移に属する赤色ルミネッセンスバンドの3つのスペクトルバンドからなる。そのうち、青色発光バンドは、2つの赤色発光バンドよりも明らかに強いため、肉眼観察では、NaY0.8:Er0.10,Nd0.10@NaY0.89:Yb0.08,Nd0.01,Tm0.02試料は、明るい青色ルミネッセンスを示した。
【0049】
<実施例63>
NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Nd0.02
(99.99%)及びEr(99.99%)を化学量論比NaY0.9:Er0.10に従い一定量秤量し、適量の水と6mol/Lの塩酸を加えて撹拌し希土類塩化物を形成した。オレイン酸とオクタデセンの適量を取り、硫黄粉末とオレイン酸ナトリウムの一定量を秤量して、上記希土類塩化物と混合し、真空雰囲気下120℃で水やその他の低沸点不純物を除去した。その後、溶液を速やかに300℃まで昇温し、1時間保温した。試料を水及びエタノールで数回洗浄した後、乾燥してNaY0.9:Er0.10の試料を得た。Y(99.99%)、Y(99.99%)及びNd(99.99%)を秤量して希土類塩化物を製造し、上記ステップを繰り返して製造されたNaY0.9:Er0.10,Nd0.10を混合物に添加し、300℃で1時間保温して、コア-シェル構造NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Nd0.02試料を形成した。
【0050】
NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Nd0.02試料のアップコンバージョンルミネッセンススペクトルは、それぞれEr3+イオンの3/215/211/215/29/215/2の遷移、及びNd3+イオンの7/25/23/29/2遷移に対応する、510-570nm波長域にある緑色発光、640-700nm波長域にある赤色発光、及び710-900nmにある赤外発光の3つのスペクトルバンドからなる。NaY0.9:Er0.1試料と比較して、NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Nd0.02試料の発熱能力が明らかに向上している。
【0051】
<実施例64>
NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Sm0.02
(99.99%)及びEr(99.99%)を化学量論比NaY0.9:Er0.10に従い一定量秤量し、適量の水と6mol/Lの塩酸を加えて撹拌し希土類塩化物を形成した。オレイン酸とオクタデセンの適量を取り、硫黄粉末とオレイン酸ナトリウムの一定量を秤量して、上記希土類塩化物と混合し、真空雰囲気下120℃で水やその他の低沸点不純物を除去した。その後、溶液を速やかに300℃まで昇温し、1時間保温した。試料を水及びエタノールで数回洗浄した後、乾燥してNaY0.9:Er0.10の試料を得た。Y(99.99%)、Yb(99.99%)及びSm(99.99%)を秤量して希土類塩化物を製造し、上記ステップを繰り返して製造されたNaY0.9:Er0.10を混合物に添加し、300℃で1時間保温して、コア-シェル構造NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Sm0.02試料を形成した。
【0052】
NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Sm0.02試料のアップコンバージョンルミネッセンススペクトルは、それぞれSm3+イオンの5/25/25/27/25/29/2遷移に対応する、550-580nm波長域にある緑色発光、580-630nm及び630-675nm波長域にある赤色発光の3つのスペクトルバンドからなる。NaY0.9:Er0.1試料と比較して、NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Sm0.02試料は、大量の熱を発生させることができる。
【0053】
<実施例65>
NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Eu0.02
(99.99%)及びEr(99.99%)を化学量論比NaY0.9:Er0.10に従い一定量秤量し、適量の水と6mol/Lの塩酸を加えて撹拌し希土類塩化物を形成した。オレイン酸とオクタデセンの適量を取り、硫黄粉末とオレイン酸ナトリウムの一定量を秤量して、上記希土類塩化物と混合し、真空雰囲気下120℃で水やその他の低沸点不純物を除去した。その後、溶液を速やかに300℃まで昇温し、1時間保温した。試料を水及びエタノールで数回洗浄した後、乾燥してNaY0.9:Er0.10の試料を得た。Y(99.99%)、Yb(99.99%)及びEu(99.99%)を秤量して希土類塩化物を製造し、上記ステップを繰り返して製造されたNaY0.9:Er0.10を混合物に添加し、300℃で1時間保温して、コア-シェル構造NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Eu0.02試料を形成した。
【0054】
NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Eu0.02試料のアップコンバージョンルミネッセンススペクトルは、510-580nm波長域にある緑色発光、580-630nm及び630-675nm波長域にある赤色発光の3つのスペクトルバンドからなる。NaY0.9:Er0.1試料と比較して、NaY0.9:Er0.10@NaY0.9:Yb0.08,Eu0.02試料の赤色ルミネッセンスが顕著に向上している。
【0055】
同様の方法で、Pr、Tbなどが共ドープされたアップコンバージョンルミネッセンス試料を得ることができる。
【0056】
以上の説明は、本発明の好ましい実施策に過ぎず、本発明の保護範囲は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想に含まれる技術的解決策は、いずれも本発明の保護範囲に属する。なお、本発明の原理を逸脱しない前提で、行われるいくつかの改良と修正は、本発明の保護範囲に見做されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5