(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073698
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20240523BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184538
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西久保 良
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087CD05
(57)【要約】
【課題】座席部に着座している乗員を側面衝突された側から遠ざけることのできる車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートは、座席部と、座席部と車両のフロアとの間に設けられ、座席部を傾斜させる傾斜機構と、を備える。傾斜機構は、座席部の幅方向において、座席部の一端よりも外側に突出する突出部と、座席部の下面の接触位置に接触することが可能に配置された接触部と、突出部と接触部との間を接続し、突出部に付与される幅方向の外側から内側に向かう内向きの力を上向きの力に変換し、接触部を介して上向きの力を接触位置に伝達する変換機構と、を有する。接触位置は、幅方向において、座席部の幅方向における重心位置と突出部との間に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席部と、
前記座席部と車両のフロアとの間に設けられ、前記座席部を傾斜させる傾斜機構と、を備え、
前記傾斜機構は、
前記座席部の幅方向において、前記座席部の一端よりも外側に突出する突出部と、
前記座席部の下面の接触位置に接触することが可能に配置された接触部と、
前記突出部と前記接触部との間を接続し、前記突出部に付与される前記幅方向の外側から内側に向かう内向きの力を上向きの力に変換し、前記接触部を介して前記上向きの力を前記接触位置に伝達する変換機構と、を有し、
前記接触位置は、前記幅方向において、前記座席部の前記幅方向における重心位置と前記突出部との間に位置する、車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記変換機構は、
前記フロアに配置された固定位置に回動可能に固定され、前記固定位置から前記幅方向において前記突出部に向かいつつ上方に延びる第1アームと、
前記突出部を含む連結部を介して前記第1アームに回動可能に連結され、前記連結部と前記接触部との間を接続し、前記連結部から前記幅方向において前記突出部の反対側に向かいつつ上方に延びる第2アームと、を有する、
車両用シート。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記突出部の先端は、前記幅方向に垂直な平面によって構成されている、車両用シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用シートであって、
前記座席部と前記フロアとの間に設けられ、前記座席部を前記フロアに接続する接続部を備え、
前記接続部は、前記座席部に設けられた第1係合部に係合する第2係合部を有する第1接続部材と、前記幅方向において前記第1接続部材との間に前記重心位置を挟んで配置され、前記座席部と前記フロアとを接続する第2接続部材と、を有し、
前記第1接続部材は、前記突出部と前記重心位置との間に配置され、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記傾斜機構によって前記座席部が傾斜する場合に、係合が解除されるように構成されている、車両用シート。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用シートであって、
前記第1接続部材と、前記第2接続部材とは、それぞれ、前記座席部の前後方向に沿って延びるスライドレールとして構成され、
前記接続部は、前記第1接続部材と前記第2接続部材とによって、前記座席部を、前記フロアに対して前記前後方向に沿ってスライド移動可能に前記フロアに接続する、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側壁パネルへの衝撃入力によって、車両の側壁パネルと係合されたインナトリムの下部が車両の内側に屈曲すること、および、屈曲したインナトリムが座部の側部に接触した際に、座部の側部の上方に車両の内側へ傾斜する傾斜部が形成されることが開示されている。このような構成によれば、車両が他の車両に側面衝突された際に、インナトリムの屈曲によって座部を車室内側に傾斜させることでき、座部に着座している乗員を車両の内側に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、衝撃入力によって屈曲するようにインナトリムの外形や中身を設計することや、座部に傾斜部が形成されるように座部を設計することを要する。このように、特許文献1の技術では、座部だけでなく車両の側壁パネルをも、座部を車室内側に傾斜させることができるように構成することが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、車両用シートが提供される。この車両用シートは、座席部と、前記座席部と車両のフロアとの間に設けられ、前記座席部を傾斜させる傾斜機構と、を備える。前記傾斜機構は、前記座席部の幅方向において、前記座席部の一端よりも外側に突出する突出部と、前記座席部の下面の接触位置に接触することが可能に配置された接触部と、前記突出部と前記接触部との間を接続し、前記突出部に付与される前記幅方向の外側から内側に向かう内向きの力を上向きの力に変換し、前記接触部を介して前記上向きの力を前記接触位置に伝達する変換機構と、を有する。前記接触位置は、前記幅方向において、前記座席部の前記幅方向における重心位置と前記突出部との間に位置する。
このような形態であれば、車両が突出部側から側面衝突を受けた際に、座席部とフロアとの間に設けられた傾斜機構によって、突出部に付与される側面衝突による内向きの力を上向きの力に変換し、接触部を介して上向きの力を座席部の接触位置に伝達できる。接触部を介して上向きの力を接触位置に伝達することで、座席部を突出部の反対側に傾けることができ、座席部に着座している乗員を衝突された側から遠ざけることができる。このように、座席部とフロアとの間に設けられた傾斜機構によって、側面衝突時に、乗員を衝突された側から遠ざけることができる。
(2)上記形態において、前記変換機構は、前記フロアに配置された固定位置に回動可能に固定され、前記固定位置から前記幅方向において前記突出部に向かいつつ上方に延びる第1アームと、前記突出部を含む連結部を介して前記第1アームに回動可能に連結され、前記連結部と前記接触部との間を接続し、前記連結部から前記幅方向において前記突出部の反対側に向かいつつ上方に延びる第2アームと、を有していてもよい。このような形態であれば、変換機構を簡易に構成できる。
(3)上記形態において、前記突出部の先端は、前記幅方向に垂直な平面によって構成されていてもよい。このような形態であれば、突出部の先端が平面によって構成されていない場合と比較して、突出部において、側面衝突による内向きの力をより効果的に受けることができる。
(4)上記形態において、前記座席部と前記フロアとの間に設けられ、前記座席部を前記フロアに接続する接続部を備え、前記接続部は、前記座席部に設けられた第1係合部に係合する第2係合部を有する第1接続部材と、前記幅方向において前記第1接続部材との間に前記重心位置を挟んで配置され、前記座席部と前記フロアとを接続する第2接続部材と、を有し、前記第1接続部材は、前記突出部と前記重心位置との間に配置され、前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記傾斜機構によって前記座席部が傾斜する場合に、係合が解除されるように構成されていてもよい。このような形態であれば、接続部によって座席部をフロアに接続することと、側面衝突時に傾斜機構によって座席部を突出部の反対側に傾斜させることとを、簡易に実現できる。
(5)上記形態において、前記第1接続部材と、前記第2接続部材とは、それぞれ、前記座席部の前後方向に沿って延びるスライドレールとして構成され、前記接続部は、前記第1接続部材と前記第2接続部材とによって、前記座席部を、前記フロアに対して前記前後方向に沿ってスライド移動可能に前記フロアに接続してもよい。このような形態であれば、接続部によって座席部を前後方向にスライド移動させることができるので、車両用シートの利便性を高めることができる。
【0007】
本開示は、上述した車両用シートとしての形態以外にも、例えば、車両用シートを備える車両などの種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態における車両用シートの概略構成を示す第1の正面図。
【
図2】第1実施形態における車両用シートの概略構成を示す第2の正面図。
【
図3】第1実施形態における車両用シートを示す側面図。
【
図4】第2実施形態における車両用シートの概略構成を示す第1の正面図。
【
図5】第2実施形態における車両用シートの側面図。
【
図6】第2実施形態における第1係合部と第2係合部とを示す説明図。
【
図7】第2実施形態における車両用シートの概略構成を示す第2の正面図。
【
図8】他の実施形態における第1係合部および第2係合部の例を示す説明図。
【
図9】第3実施形態における第1傾斜機構を説明する図。
【
図10】第4実施形態における第1傾斜機構を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における車両用シート100の概略構成を示す第1の正面図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸は、車両用シート100の左右方向に沿った座標軸であり、X軸を表す矢印の指し示す方向は右方である。Y軸は、車両用シート100の前後方向に沿った座標軸であり、Y軸を表す矢印の指し示す方向は後方である。Z軸は、鉛直線に沿った座標軸であり、Z軸を表す矢印の指し示す方向は上方である。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。以下では、左右方向のことを、「車両用シート100の幅方向」や、単に「幅方向」とも呼ぶ。また、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」とも呼ぶ。
【0010】
図1には、車両Va内に配置された車両用シート100に乗員Crが着座している様子が示されている。本実施形態における車両Vaは、駆動用バッテリによって駆動されるBEV(Battery Electric Vehicle)として構成されている。より詳細には、車両Vaは、バッテリ駆動式の1人乗りの低速電気自動車(LSEV:Low Speed Electric Vehicle)として構成されている。本実施形態では、車両Vaの前後方向と、車両用シート100の前後方向とは、それぞれ同じ方向であり、車両Vaの幅方向と車両用シート100の幅方向とは、それぞれ同じ方向である。
【0011】
本実施形態における乗員Crは、車両Vaを運転する運転者であり、例えば、車両Vaに備えられたハンドル(図示せず)を用いて車両Vaを運転する。つまり、本実施形態における車両用シート100は、運転座席として構成されている。本実施形態では、車両Vaの右側および左側には、それぞれ、乗員Crが車両Vaに乗降するための乗降部としての開口が形成されている。本実施形態では、これらの乗降部には開閉扉が設けられていないが、開閉扉が設けられてもよい。開閉扉のように、車両Vaの側壁部を構成する部材のことを、側壁パネルとも呼ぶ。
【0012】
なお、他の実施形態では、車両Vaの乗員数は、任意であってよい。また、車両Vaは、例えば、LSEVとは異なるBEVであってもよいし、ガソリン車やディーゼル車であってもよいし、HEV(Hybrid Electric Vehicle)や、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)であってもよい。また、車両用シート100は、運転座席として構成されていなくてもよく、例えば、助手席や後部座席として構成されていてもよい。
【0013】
車両用シート100は、座席部20と、第1傾斜機構30と、第2傾斜機構90とを備える。第1傾斜機構30と第2傾斜機構90とは、車両VaのフロアFrと座席部20との間に配置されている。以下では、第1傾斜機構30のことを、単に傾斜機構とも呼ぶ。
【0014】
本実施形態における座席部20は、乗員Crの臀部を支持する座面部21と、乗員Crの背部を支持するシートバック22と、乗員Crの頭部の後方に配置されるヘッドレスト23と、座面部21を下から支持する支持部26とを備える。座面部21とヘッドレスト23とは、シートバック22を介して接続されている。支持部26は、X方向およびY方向に沿った平板形状を有する支持板27と、支持板27と座面部21とを接続する一対の脚部Lgとを有している。以下では、座席部20のX方向における端のことを、それぞれ、一端24および他端25とも呼ぶ。本実施形態では、一端24は、座席部20の右端であり、他端25は、座席部20の左端である。本実施形態における一端24および他端25は、それぞれ、支持板27のX方向における端によって形成されている。
【0015】
第1傾斜機構30と、第2傾斜機構90とは、両者の間に重心位置PGを挟んで配置されている。より詳細には、本実施形態では、第1傾斜機構30と第2傾斜機構90とは、重心位置PGに対して左右対称に配置されている。第2傾斜機構90の構成は、第1傾斜機構30の左右を逆にした構成と略同様である。
【0016】
図1に示すように、第1傾斜機構30は、第1突出部40と、第1接触部50と、第1変換機構60とを有する。第2傾斜機構90は、第2変換機構91と、第2突出部95と、第2接触部94とを有する。
【0017】
第1突出部40は、幅方向において、座席部20の一端24よりも外側に突出している。第2突出部95は、幅方向において、座席部20の他端25よりも外側に突出している。本実施形態では、第1突出部40の外側の端である第1先端41は、第1傾斜機構30の右端を構成している。第2突出部95の外側の端である第2先端96は、第2傾斜機構90の左端を構成している。以下では、第1突出部40のことを、単に突出部とも呼ぶ。
【0018】
第1傾斜機構30は、後述するように、座席部20を第1突出部40の反対側に傾斜させることが可能に構成されている。座席部20が第1突出部40の反対側に傾いた状態のことを、第1傾斜状態とも呼ぶ。つまり、本実施形態における第1傾斜状態では、座席部20の上部が-X方向に傾く。また、第2傾斜機構90は、第1傾斜機構30と略同様に、座席部20を第2突出部95の反対側に傾斜させることが可能に構成されている。座席部20が第2突出部95の反対側に傾いた状態のことを、第2傾斜状態とも呼ぶ。つまり、本実施形態における第2傾斜状態では、座席部20の上部が+X方向に傾く。また、座席部20が第1傾斜機構30や第2傾斜機構90によって傾斜していない状態のことを、通常状態とも呼ぶ。
図1は、座席部20が通常状態にある様子を示している。以下では、車両用シート100の構造や配置の説明は、特に断らない限り、通常状態における構造や配置を意味する。
【0019】
図2は、車両用シート100の概略構成を示す第2の正面図である。
図2は、第1傾斜状態における車両用シート100の様子を示している。第1傾斜機構30は、第1突出部40において、より詳細には、第1先端41において、内向きの力FLを受けた場合に、座席部20を第1傾斜状態とすることが可能に構成されている。この内向きの力FLは、幅方向の外側から内側に向かう力である。力FLは、例えば、車両Vaが他の車両Vbから側面衝突を受けた場合に、第1突出部40に付与される。本実施形態では、力FLの向きは、左向きである。
【0020】
第1接触部50は、座席部20の第1接触位置P1に接触することが可能に配置されている。第1接触位置P1は、座席部20の下面Usのうち、X方向において座席部20の幅方向における重心位置PGと一端24との間の位置である。重心位置PGとは、座席部20の重心のX方向における位置のことを指す。本実施形態では、重心位置PGは、一端24と他端25とを二等分する位置である。本実施形態では、座席部20の下面Usは、上述した支持板27の下面によって構成されている。また、第2接触部94は、座席部20の第2接触位置P2に接触することが可能に配置されている。第2接触位置P2は、下面Usのうち、X方向において座席部20の重心位置PGと他端25との間の位置である。以下では、第1接触部50のことを単に接触部とも呼び、第1接触位置P1のことを単に接触位置とも呼ぶ。
【0021】
第1変換機構60は、第1突出部40と第1接触部50との間を接続する。
図2に示すように、第1変換機構60は、第1突出部40の第1先端41に力FLが付与された場合に、力FLを上向きの力FUに変換して、第1接触部50を介して力FUを第1接触位置P1に伝達する。本実施形態では、後述するように、第1突出部40と第1接触部50とは、それぞれ、第1変換機構60の一部として構成されている。以下では、第1変換機構60のことを、単に変換機構とも呼ぶ。なお、本実施形態では、第2変換機構91の構成は、第1変換機構60の左右を逆にした構成と略同様である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態では、第1変換機構60は、Z方向に沿って伸縮可能なリンク機構として構成されており、第1アーム61と、第2アーム62と、第1連結部63とを有している。より詳細には、本実施形態における第1変換機構60は、パンタグラフ型のリンク機構として構成され、更に、第1リンク部70と、第3アーム71と、第4アーム72と、第2リンク部74とを有している。以下では、第1連結部63のことを、単に連結部とも呼ぶ。
【0023】
第1アーム61は、フロアFrに配置された固定位置101に回動可能に固定されている。より詳細には、本実施形態では、固定位置101は、フロアFrにX方向に沿って固定された第1リンク部70の右端部として構成されている。第1アーム61は、固定位置101からX方向において第1先端41に向かいつつ、上方に延びている。つまり、本実施形態における第1アーム61は、固定位置101から右上に向かって延びている。
【0024】
第1連結部63は、上述した第1突出部40を含み、第1アーム61と第2アーム62とを連結する。本実施形態では、第1連結部63は、ジョイント64と、板状部材65とを有している。ジョイント64は、第1アーム61と第2アーム62とを連結する回転対偶として構成されている。板状部材65は、ジョイント64の右側に配置され、ジョイント64に固定されている。本実施形態では、ジョイント64と板状部材65とが第1突出部40として機能する。なお、他の実施形態では、例えば、ジョイント64が第1突出部40として機能しなくてもよい。つまり、第1連結部63のうち、板状部材65のみが一端24よりも外側に配置され、ジョイント64が一端24よりも内側に配置されてもよい。
【0025】
図3は、車両用シート100を示す側面図である。
図3は、車両用シート100を右側から+X方向に沿って見た様子を簡略的に示している。
図1から
図3に示すように、本実施形態では、板状部材65の右側の板面が第1先端41を構成する。これによって、第1先端41は、幅方向に垂直な平面によって構成されている。つまり、第1突出部40は、幅方向に垂直な平面を外側に有している。より詳細には、
図3に示すように、第1先端41は、Y方向に長尺な、X方向およびY方向に沿った平面状を有している。本実施形態では、第1先端41のY方向における長さは、座席部20のY方向における長さ以上である。他の実施形態では、第1先端41のY方向における長さは、座席部20のY方向における長さより短くてもよい。なお、本実施形態では、第2突出部95の構成は、第1突出部40の左右を逆にした構成と略同様である。そのため、第2先端96は、第1先端41と同様に、幅方向に垂直な平面によって構成されている。
【0026】
図1に示すように、第2アーム62は、第1連結部63を介して第1アーム61に接続されている。第2アーム62は、第1連結部63と第1接触部50との間を接続し、第1連結部63からX方向において第1先端41の反対側に向かいつつ、上方に延びている。つまり、本実施形態では、第2アーム62は、第1連結部63から左上に向かって延びている。
【0027】
第3アーム71は、第1リンク部70を挟んで第1アーム61と反対側に配置されている。第3アーム71の構成は、第1アーム61の左右を逆にした構成と略同様である。より詳細には、第3アーム71は、第1リンク部70の左端部に回動可能に固定され、左上に向かって延びている。第4アーム72は、第1リンク部70を挟んで第2アーム62と反対側に配置されている。第4アーム72の構成は、第2アーム62の左右を逆にした構成と略同様である。より詳細には、第4アーム72は、第3アーム71に回動可能に連結され、右上に向かって延びている。
【0028】
本実施形態では、第2アーム62の上端部と第4アーム72の上端部とは、第2リンク部74によって直線的に接続されている。より詳細には、第2アーム62と第4アーム72とは、それぞれ、第2リンク部74に対して回動可能に連結されている。第2アーム62の下側には、第1リンク部70と第2リンク部74との直接の接触を防止するスペーサ78が固定されている。本実施形態では、第1変換機構60が最も縮んだ状態において、スペーサ78の下側が第1リンク部70の上側に接触し、スペーサ78の上側が第2リンク部74の下側に接触する。
【0029】
本実施形態では、第1接触部50は、第2リンク部74に含まれている。より詳細には、第1接触部50は、第2リンク部74の上端部によって構成されている。本実施形態では、第2リンク部74は、第1接触部50を第1接触位置P1に接触させた状態で、支持板27の下面に固定されている。第2接触部94は、第1接触部50と同様に、第2変換機構91の第3リンク部92の上端部によって構成されている。第3リンク部92の構成は、第2リンク部74の左右を逆にした構成と略同様である。第3リンク部92は、第2接触部94を第2接触位置P2に接触させた状態で、支持板27の下面に固定されている。従って、本実施形態では、座席部20は、第1傾斜機構30と第2傾斜機構90とによって、下から支持されているとも言える。
【0030】
上述したように、第1突出部40は、座席部20の一端24よりも外側に突出しているので、車両Vaが他の車両Vbによって右から側面衝突された場合に、座席部20よりも先に側面衝突による内向きの力FLを受けることができる。
図2に示すように、第1突出部40に力FLが付与されると、第1連結部63が-X方向に押され、第1連結部63を介して互いに回動可能に連結された第1アーム61と第2アーム62とが上下方向に開く。このとき、第1アーム61が固定位置101に固定されているので、第1変換機構60が全体として上方向に伸び、第2アーム62に接続された第1接触部50によって第1接触位置P1が上方向に押される。つまり、第1変換機構60は、第1突出部40に力FLが付与された場合に、第1先端41を力点とし、固定位置101を支点とし、第1接触部50を作用点として、第1接触部50によって第1接触位置P1を上方向に押すことで、力FLを力FUに変換するとともに、第1接触部50を介して第1接触位置P1に力FUを付与する。そして、
図2に示すように、第1接触位置P1に付与された力FUによって、座席部20の重心位置PGより右側の部分が左側の部分よりも上に持ち上げられることで、座席部20が第1突出部40と反対側に傾く。このようにして、座席部20に着座している乗員Crを第1突出部40から遠ざけることができる。
【0031】
なお、図示は省略するが、第2傾斜機構90は、第1傾斜機構30とは逆に、左から側面衝突された場合に、座席部20を第2突出部95の反対側に傾けることができる。より詳細には、車両Vaが左から側面衝突された場合、座席部20の他端25よりも外側に突出した第2突出部95が、座席部20よりも先に側面衝突による右向きの力を受けることができる。第2突出部95が右向きの力を受けることで、第2変換機構91は、第1変換機構60と略同様に全体として上方向に伸び、第2接触部94によって、座席部20の第2接触位置P2を上方向に押す。第2接触位置P2が上方向に押されることによって、第2接触位置P2に上方向の力が付与され、座席部20の重心位置PGより左側の部分が右側の部分よりも上に持ち上げられる。このようにして、第2傾斜機構90は、座席部20を第2突出部95と反対側に傾けることができ、座席部20に着座している乗員Crを第2突出部95側から遠ざけることができる。
【0032】
以上で説明した本実施形態における車両用シート100によれば、座席部20とフロアFrとの間に設けられた第1傾斜機構30を備える。第1傾斜機構30は、第1突出部40に付与される内向きの力FLを、第1変換機構60によって上向きの力FUに変換し、第1接触部50を介して第1接触位置P1に力FUを付与する。このような形態であれば、車両Vaが、他の車両Vbによって第1突出部40側から側面衝突を受けた際に、第1突出部40で側面衝突による内向きの力FLを受け、座席部20を第1突出部40の反対側に傾斜させることができる。そのため、座席部20とフロアFrとの間に設けられた第1傾斜機構30によって、側面衝突時に、座席部20に着座している乗員Crを衝突された側から遠ざけることができる。従って、座席部20を傾斜させるための構成を側壁パネルに設けることを要しないので、例えば、本実施形態のように、車両用シート100の左右に形成された乗降部に開閉扉を設けない構成を採用しつつ、乗員Crの保護性能を高めることができる。なお、本実施形態のように開閉扉を設けない構成とすることで、例えば、車両Vaの軽量化や製造コストの削減を図ることができる。また、例えば、車両用シート100の左右に開閉扉を設ける場合であっても、その設計自由度を高めることができる。また、本実施形態では、第1傾斜機構30を動作させるのに、車両Vaと他の車両との接触を検知するセンサを要しないので、車両Vaや車両用シート100を簡易に構成できる可能性が高まる。そのため、車両Vaや車両用シート100の製造コストを低減できる可能性が高まる。
【0033】
また、本実施形態では、第1変換機構60は、フロアFrに配置された固定位置101に回動可能に固定され、固定位置101から第1先端41に向かいつつ上方に延びる第1アーム61と、第1先端41を含む第1連結部63を介して第1アーム61に回動可能に連結され、第1連結部63と第1接触部50との間を接続し、第1連結部63から第1先端41の反対側に向かいつつ上方に延びる第2アーム62とを有する。このような形態であれば、第1変換機構60を簡易に構成できる。
【0034】
また、本実施形態では、第1先端41は、幅方向に垂直な平面によって構成されている。このような形態であれば、第1先端41が平面として構成されていない場合と比較して、第1突出部40において、側面衝突による内向きの力FLをより効果的に受けることができる。
【0035】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態における車両用シート100bの概略構成を示す第1の正面図である。
図5は、車両用シート100bの側面図である。
図4および
図5は、
図1と同様に、通常状態における車両用シート100bを示している。
図5は、
図3と同様に、車両用シート100bを右側から見た様子を簡略的に示している。本実施形態における車両用シート100bは、第1実施形態とは異なり、接続部80を備える。第2実施形態における車両用シート100bの構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0036】
本実施形態では、座席部20bは、支持部26を有していない。そのため、座席部20bの下面Usは、座面部21の下面によって構成されている。また、本実施形態では、第1接触部50bは、通常状態において、第1接触位置P1から離間して配置されている。同様に、本実施形態では、第2接触部94bは、通常状態において、第2接触位置P2から離間して配置されている。そのため、本実施形態では、座席部20bは、第1傾斜機構30と第2傾斜機構90とによって支持されていない。
【0037】
図4および
図5に示すように、接続部80は、座席部20bとフロアFrとの間に設けられる。接続部80は、自身を介して、座席部20bをフロアFrに接続する。
【0038】
図4に示すように、接続部80は、第1接続部材81と、第2接続部材86とを有している。第2接続部材86は、X方向において、第1接続部材81との間に重心位置PGを挟んで配置されている。つまり、X方向において、座席部20bの重心位置PGは、第1接続部材81と第2接続部材86との間に位置している。また、第1接続部材81は、X方向において第1突出部40と重心位置PGとの間に配置されている。より詳細には、第1接続部材81は、幅方向において第1傾斜機構30よりも内側に配置されている。同様に、第2接続部材86は、X方向において第2突出部95と重心位置PGとの間に配置され、幅方向において第2傾斜機構90よりも内側に配置されている。つまり、接続部80は、X方向において、第1傾斜機構30と第2傾斜機構90との間に配置されている。
【0039】
本実施形態では、第1接続部材81と第2接続部材86とは、それぞれ、前後方向に沿って延びるスライドレールとして構成されている。接続部80は、第1接続部材81と第2接続部材86とによって、座席部20bを、フロアFrに対して前後方向に沿ってスライド移動可能にフロアFrに接続する。本実施形態では、座席部20bは、フロアFrに対して前後方向にスライド移動することによって、フロアFrに固定された第1傾斜機構30および第2傾斜機構90に対しても前後方向にスライド移動する。なお、接続部80は、例えば、座席部20bのスライド移動をロックするロック機構を有していてもよい。この場合、ロック機構は、例えば、乗員Crによって操作可能なレバー等に接続され、レバー操作による座席部20bのロックとロックの解除とが可能なように構成されてもよい。
【0040】
図4および
図5に示すように、第1接続部材81は、第1係合部28に係合する第2係合部82を有している。第1係合部28は、座席部20bに設けられている。より詳細には、第1係合部28は、下面Usのうち、第1接触位置P1と重心位置PGとの間の部分に固定されている。第1接続部材81は、第2係合部82を第1係合部28に係合させることによって、座席部20bとフロアFrとを接続する。本実施形態では、第2係合部82は、スライドレールとしての第1接続部材81の上端部として構成され、第1係合部28を、第2係合部82に係合させたまま前後方向にスライド移動させることが可能に構成されている。第1係合部28と第2係合部82との間には、例えば、第1係合部28を第2係合部82に対して滑らかにスライドさせるためのローラやベアリングが配置されてもよい。なお、本実施形態では、X方向およびY方向に沿った平面として構成された第1先端41のY方向における長さは、第1接続部材81および第2接続部材86のY方向における長さ以上である。
【0041】
図6は、第2実施形態における第1係合部28と第2係合部82とを示す説明図である。
図6に示すように、本実施形態における第1接続部材81は、Y方向に沿って見たときに、上方向に開口する凹状を有している。第1接続部材81の開口OpのX方向における両側に配置された壁の上端部83は、それぞれX方向に沿って延びるように内側に折り返され、開口Opにオーバーハングしたオーバーハング部84を有している。このオーバーハング部84が第2係合部82として機能する。
図4および
図5に示すように、第1係合部28は、座席部20bの下面Usに固定された脚102を介して、座席部20bに固定されている。脚102は、X方向においてオーバーハング部84同士の間の距離dよりも小さい幅w1を有しており、2つのオーバーハング部84の間に配置されている。第1係合部28は、X方向において距離dよりも大きい幅w2を有しており、開口Op内に配置されている。
【0042】
図4に示すように、本実施形態における第2接続部材86は、第3係合部29に係合する第4係合部87を有している。第3係合部29は、下面Usのうち、第2接触位置P2と重心位置PGとの間の部分に固定されている。本実施形態における第2接続部材86は、第4係合部87を第3係合部29に係合させることによって、座席部20bとフロアFrとを接続する。第4係合部87は、スライドレールとしての第2接続部材86の上端部として構成され、第3係合部29を、第4係合部87に係合させたまま前後方向にスライド移動させることが可能に構成されている。本実施形態では、第3係合部29の構成は、第1係合部28と略同様である。また、第4係合部87の構成は、第2係合部82と略同様である。
【0043】
図7は、車両用シート100bの概略構成を示す第2の正面図である。
図7は、
図2と同様に、第1傾斜状態における車両用シート100bの様子を示している。第1係合部28と第2係合部82とは、第1傾斜機構30によって座席部20bが第1突出部40と反対側に傾く場合に、両者の間の係合が解除されるように構成されている。従って、
図7では、第1係合部28と第2係合部82との係合は、解除されている。より詳細には、第1係合部28と第2係合部82との係合は、第1傾斜機構30によって第1接触位置P1に上向きの力FUが付与され、座席部20bの重心位置PGより右側の部分が左側の部分よりも高く押し上げられることで解除される。第1係合部28と第2係合部82とは、例えば、予め定められた基準値以上の大きさの内向きの力FLが第1先端41に付与された場合に係合が解除され、力FLの大きさが基準値未満である場合には係合が解除されないように構成される。この場合、基準値は、例えば、車両Vaが他の車両Vbから側面衝突された場合に第1先端41に付与される力の大きさとして、シミュレーションや実験の結果に基づいて定められる。なお、本実施形態では、第3係合部29および第4係合部87もまた、第1係合部28および第2係合部82と略同様に、第2傾斜機構90によって座席部20bが第2突出部95と反対側に傾く場合に、両者の間の係合が解除されるように構成されている。
【0044】
本実施形態では、第1係合部28と第2係合部82との係合が解除される力FLの大きさ、つまり、第1係合部28と第2係合部82との係合の解除のされやすさを、
図6に示した距離dや、幅w2や、第1係合部28のZ方向における厚みt1や、オーバーハング部84のZ方向における厚みt2を調整することによって調整できる。例えば、距離dと幅w2との差をより小さくすることで、第1係合部28と第2係合部82との係合がより解除されやすくなる。また、厚みt1をより小さくすることによって、座席部20bの重心位置PGより右側の部分が押し上げられる際に、第1係合部28のX方向における両端部が下側に曲がるように変形しやすくなり、第1係合部28と第2係合部82との係合がより解除されやすくなる。また、厚みt2をより小さくすることによって、座席部20bの重心位置PGより右側の部分が押し上げられる際に、オーバーハング部84が上方に開くように変形しやすくなり、第1係合部28と第2係合部82との係合がより解除されやすくなる。また、第1係合部28と第2係合部82とを形成する材料等を適宜調整することで、第1係合部28と第2係合部82との係合の解除のされやすさを調整してもよい。例えば、第1係合部28と第2係合部82とを、より弾性変形しやすい材料によって形成することで、第1係合部28と第2係合部82との係合がより解除されやすくなる。なお、第3係合部29と第4係合部87との係合の解除のされやすさを、上記と同様に調整してもよい。
【0045】
以上で説明した第2実施形態における車両用シート100bによれば、座席部20をフロアFrに接続する接続部80を備える。接続部80は、座席部20bに設けられた第1係合部28に係合する第2係合部82を有する第1接続部材81と、幅方向において第1接続部材81との間に重心位置PGを挟んで配置された第2接続部材86とを有する。第1接続部材81は、第1突出部40と重心位置PGとの間に配置されている。第1係合部28と第2係合部82とは、第1傾斜機構30によって座席部20bが第1突出部40と反対側に傾く場合に、係合が解除されるように構成されている。このような形態であれば、接続部80によって座席部20bをフロアFrに接続することと、側面衝突時に第1傾斜機構30によって座席部20bを第1突出部40と反対側に傾けることとを、簡易に実現できる。
【0046】
また、本実施形態では、第1接続部材81と第2接続部材86とは、それぞれ、前後方向に沿って延びるスライドレールとして構成され、接続部80は、第1接続部材81と第2接続部材86とによって、座席部20bを、フロアFrに対して前後方向に沿ってスライド移動可能に、フロアFrに接続する。このような形態であれば、接続部80によって座席部20bを前後方向にスライド移動させることができるので、車両用シート100bの利便性を高めることができる。
【0047】
なお、本実施形態のように、座席部20bが第1傾斜機構30に対して前後方向にスライド移動可能に構成されている場合、例えば、第1傾斜機構30の形状や個数は、座席部20が前後方向におけるいずれの位置に位置している場合であっても、内向きの力FLが付与された場合に第1傾斜機構30によって座席部20を第1傾斜状態とすることが可能なように設定される。例えば、座席部20bの前後方向における可動範囲が比較的広く設定される場合、2つ以上の第1傾斜機構30をY方向に沿って並べて配置してもよいし、第1先端41のY方向における寸法や第1接触部50のY方向における寸法をより長くしてもよい。また、例えば、2つ以上の第1傾斜機構30をY方向に沿って並べて配置する場合、各第1傾斜機構30の右側に各第1傾斜機構30同士を接続する板状の部材を配置し、この板状の部材を各第1傾斜機構30の第1突出部40として機能させてもよい。なお、座席部20bがスライド移動可能に構成されていない形態であっても、例えば、上記と同様に、2つ以上の第1傾斜機構30をY方向に沿って並べて配置してもよい。また、第2傾斜機構90を上記と同様に構成してもよい。また、他の実施形態では、例えば、第1傾斜機構30や第2傾斜機構90が、座席部20bとともにスライド移動可能に構成されていてもよい。
【0048】
図8は、他の実施形態における第1係合部28bおよび第2係合部82bの例を示す説明図である。
図8に示した第2係合部82bの各オーバーハング部84bの下面は、第2実施形態とは異なり、傾斜面85として構成されている。傾斜面85は、X方向において開口Opの内側に向かうにつれて、そのZ方向における高さが高くなるように傾斜している。これによって、オーバーハング部84bは、X方向において開口Opの内側に向かうにつれて、そのZ方向における厚みが小さくなるように構成されている。このように第2係合部82bを構成することによっても、座席部20bの重心位置PGより右側の部分が押し上げられる際に、オーバーハング部84が上方に開くように変形しやすくなる。そのため、第1係合部28bと第2係合部82bとの係合がより解除されやすくなる。この場合、オーバーハング部84bの厚みを全体として小さくするとともに、開口Opの内側に向かうにつれてより緩やかに厚みが小さくなるようにオーバーハング部84bを構成することで、第1係合部28bと第2係合部82bとの係合が更に解除されやすくなる。また、
図8の例では、第1係合部28bのX方向における両端部の上面は、第2実施形態と異なり、傾斜面85に沿って傾斜した面として構成されている。このように第1係合部28bを構成することで、例えば、第1係合部28bの上面を平面状に構成する場合と比較して、第1係合部28bと第2係合部82bとの間の隙間をより小さくできる。なお、他の実施形態では、例えば、第2係合部82bの下面を傾斜面85として構成し、かつ、第1係合部28bの上面を第2実施形態と同様に平面状に構成してもよい。
【0049】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における第1傾斜機構30bを説明する図である。
図9には、第1傾斜機構30bに加え、第2傾斜機構90bが示されている。より詳細には、
図9は、通常状態における第1傾斜機構30bと第2傾斜機構90bとを示している。また、
図9は、第2実施形態と同様に構成された座席部20bのうち、座面部21のみを示している。本実施形態では、第1傾斜機構30bの第1変換機構60bは、第1実施形態や第2実施形態とは異なり、リンク機構としては構成されておらず、ギアを用いて内向きの力を上向きの力に変換するギア機構として構成されている。第3実施形態における車両用シート100cの構成のうち、特に説明しない部分については、第2実施形態と同様である。
【0050】
第1変換機構60bは、第1シャフト111と、第2シャフト112と、第1ギア113と、第2ギア114と、第1固定部材115とを有している。なお、第2変換機構91bの構成は、第1変換機構60bの左右を逆にした構成と略同様である。
【0051】
第1固定部材115は、第1部分116と第2部分117とを有する。第1部分116は、X方向およびY方向に沿った平板状を有しており、フロアFrに固定されている。第2部分117は、Y方向およびZ方向に沿った平板状を有しており、第1部分116の+X方向側の端部から上方へと立設されている。
【0052】
第1シャフト111は、X方向に沿った軸状を有している。第1シャフト111は、第1固定部材115の第2部分117をX方向に貫通して配置され、第2部分117によって、X方向に沿って摺動可能に支持されている。第1シャフト111の+X方向側の端部には、第1実施形態と同様の板状部材65が固定されている。板状部材65は、第1実施形態と同様に、第1突出部40bとして機能する。
【0053】
第1シャフト111は、ボールネジとして構成され、その軸方向の少なくとも一部に、外周面にネジ溝が形成された部分を有している。第1シャフト111のネジ溝が形成された部分には、ボールネジナットが連結され、ボールネジナットの外周に第1ギア113が装着されている。第1ギア113は、かさ歯車として構成され、ギア歯が形成された面が-X方向を向くように、かつ、ギア歯が形成されていない+X方向側の面が第2部分117の-X方向側の面に接触するように配置されている。第1ギア113と第2部分117との間には、例えば、グリスが塗布されてもよい。
【0054】
第2シャフト112は、Z方向に沿った軸状を有している。第2シャフト112は、第1固定部材115の第2部分117の-X方向に配置されている。第2シャフト112は、第1部分116をZ方向に貫通して配置され、第1部分116によって、Z方向に沿って摺動可能に支持されている。第2シャフト112の上端は、第1接触部50cを形成している。
【0055】
第2シャフト112は、第1シャフト111と同様に、ボールネジとして構成され、その軸方向の少なくとも一部に、外周面にネジ溝が形成された部分を有している。第2シャフト112のネジ溝が形成された部分には、ボールネジナットが連結され、ボールネジナットの外周に第2ギア114が装着されている。第2ギア114は、かさ歯車として構成され、ギア歯が形成された面が+Z方向を向くように、かつ、ギア歯が形成されていない-Z方向側の面が第1部分116の+Z方向側の面に接触するように配置されている。第2ギア114と第1部分116との間には、例えば、グリスが塗布されてもよい。
【0056】
第1ギア113および第2ギア114は、第2ギア114のギア歯と第1ギア113のギア歯とが噛み合うように配置されている。これによって、第1シャフト111のX方向に沿った移動によって第1ギア113が回転し、第1ギア113の回転によって第2ギア114が回転し、第2ギア114の回転によって第2シャフト112がZ方向に沿って移動する。本実施形態では、第1シャフト111が-X方向に移動した場合に第2シャフト112が+Z方向に移動するように、第1シャフト111や第2シャフト112のネジ溝の方向や、第1ギア113と第2ギア114との噛み合いの位置等が設定されている。
【0057】
本実施形態では、第1突出部40bが左向きの力を受けると、第1シャフト111が-X方向に押され、第1ギア113が回転する。第1ギア113の回転によって第2ギア114が回転し、第2ギア114を装着した第2シャフト112が+Z方向に移動する。第2シャフト112が+Z方向に移動することで、第1接触部50cによって第1接触位置P1が上方向に押され、第1接触位置P1に上方向の力が付与される。このように、第1変換機構60bは、第1突出部40bに付与される左向きの力を、第1シャフト111と第2シャフト112と第1ギア113と第2ギア114とによって上向きの力に変換するとともに、第1接触部50cを介して第1接触位置P1に上向きの力を伝達する。また、第2傾斜機構90bは、第1傾斜機構30bと略同様に、第2突出部95bに付与された右向きの力を第2変換機構91bによって上向きの力に変換し、この上向きの力を、第2接触部94cを介して第2接触位置P2に付与する。
【0058】
以上で説明した第3実施形態によっても、第1変換機構60bによって、第1突出部40bに付与される内向きの力を上向きの力に変換して第1接触部50cに伝達できる。そして、第1傾斜機構30bは、この上向きの力を第1接触位置P1に付与することで、座席部20bを第1突出部40bと反対側に傾けることができる。そのため、本実施形態によっても、座席部20bとフロアFrとの間に設けられた第1傾斜機構30bによって、側面衝突時に、座席部20bに着座している乗員Crを衝突された側から遠ざけることができる。
【0059】
なお、他の実施形態では、第1変換機構60bや第2変換機構91bをギア機構として構成する場合に、第1実施形態と同様に、通常状態において、第1傾斜機構30bや第2傾斜機構90bが座席部20bを支持するように構成されていてもよい。また、第1変換機構60bや第2変換機構91bをギア機構として構成する場合に、座席部20bをスライド移動可能に構成しなくてもよい。
【0060】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態における第1傾斜機構30cを説明する図である。より詳細には、
図10には、
図9と同様に、通常状態における第1傾斜機構30cと第2傾斜機構90cとが示されている。また、
図10は、
図9と同様に座席部20bの一部を省略して示している。本実施形態では、第1傾斜機構30cの第1変換機構60cは、第1実施形態や第2実施形態とは異なり、リンク機構としては構成されておらず、レバー122を用いて内向きの力を上向きの力に変換するレバー機構として構成されている。第4実施形態における車両用シート100dの構成のうち、特に説明しない部分については、第2実施形態と同様である。
【0061】
第1変換機構60cは、ロッド121と、上述したレバー122と、第2固定部材130とを有している。なお、第2変換機構91cの構成は、第1変換機構60cの左右を逆にした構成と略同様である。
【0062】
第2固定部材130は、フロアFrに固定されている。第2固定部材130は、フロアFrから上方へと立設するように配置されている。
【0063】
ロッド121は、X方向に沿った軸状を有している。ロッド121の+X方向側の端部には、第1実施形態と同様の板状部材65が固定されている。板状部材65は、第1実施形態と同様に、第1突出部40cとして機能する。
【0064】
レバー122は、Y方向に沿って見たときに、略L字型の形状を有しており、一端部123と他端部124と屈曲部125とを有している。屈曲部125は、一端部123と他端部124とを繋ぐ部分である。レバー122は、屈曲部125をY方向に貫通する固定ピン126によって、固定ピン126を軸中心として、X方向およびZ方向に沿った平面内で回動可能に固定されている。より詳細には、レバー122は、例えば、固定ピン126を介して、フロアFrから上方向に延びるようにフロアFrに固定された固定柱(図示せず)に固定される。本実施形態では、レバー122は、通常状態において、一端部123が屈曲部125から右下に延び、他端部124が屈曲部125から左下に延びるように配置されている。一端部123には、ロッド121の-X方向側の端部が接続されている。
【0065】
本実施形態では、レバー122の他端部124の上側の端面のうちの一部が、第1接触部50dを形成する。より詳細には、本実施形態では、第1突出部40cが左向きの力を受けると、ロッド121が-X方向に押され、ロッド121によって第1部分116が-X方向に押される。第1部分116が-X方向に押されることによって、+Y方向に沿って見たときに、レバー122が固定ピン126を軸中心に半時計回りに回動する。
図8には、このように回動したレバー122が破線によって模式的に示されている。レバー122の回動によって、他端部124が上方へ移動する。こうして他端部124が上方へ移動することで、第1接触部50dによって第1接触位置P1が上方向に押され、第1接触位置P1に上方向の力が付与される。このように、第1変換機構60cは、第1突出部40cに付与される左向きの力を、ロッド121とレバー122とによって上向きの力に変換するとともに、第1接触部50dを介して第1接触位置P1に上向きの力を伝達する。また、第2傾斜機構90cは、第1傾斜機構30cと略同様に、第2突出部95cに付与された右向きの力を第2変換機構91cによって上向きの力に変換し、この上向きの力を、第2接触部94dを介して第2接触位置P2に付与する。
【0066】
以上で説明した第4実施形態によっても、第1変換機構60cによって、第1突出部40cに付与される内向きの力を上向きの力に変換して第1接触部50dに伝達できる。そして、第1傾斜機構30cは、この上向きの力を第1接触位置P1に付与することで、座席部20bを第1突出部40cと反対側に傾けることができる。そのため、本実施形態によっても、座席部20bとフロアFrとの間に設けられた第1傾斜機構30cによって、側面衝突時に、座席部20bに着座している乗員Crを衝突された側から遠ざけることができる。
【0067】
なお、他の実施形態では、例えば、レバー122の他端部124に更に他の部材が接続されてもよい。例えば、他端部124に更に軸状部材が接続されてもよく、この軸状部材が、レバー122の回動によって+Z方向に移動することで、第1接触位置P1に上向きの力を付与するように構成されていてもよい。この場合、例えば、この軸状部材のうち、レバー122の回動によって第1接触位置P1に接触する部分が、第1接触部50dを形成する。
【0068】
また、第1変換機構60cや第2変換機構91cをレバー機構として構成する場合に、第1実施形態と同様に、通常状態において、第1傾斜機構30cや第2傾斜機構90cが座席部20を支持するように構成されていてもよい。また、第1変換機構60cや第2変換機構91cをレバー機構として構成する場合に、座席部20bをスライド移動可能に構成しなくてもよい。
【0069】
E.他の実施形態:
(E1)上記実施形態では、第1突出部40の第1先端41は、X方向に垂直な平面として構成されているが、平面として構成されていなくてもよい。この場合、板状部材65を設けなくてもよく、例えば、第1アーム61の右端や第2アーム62の右端を第1先端41として構成してもよい。
【0070】
(E2)上記実施形態では、第1接続部材81と第2接続部材86とはスライドレールとして構成されているが、スライドレールとして構成されていなくてもよい。
【0071】
(E3)上記実施形態において、第1変換機構60や第2変換機構91は、例えば、ラックアンドピニオン機構によって内向きの力FLを上向きの力FUに変換するように構成されていてもよい。
【0072】
(E4)上記第1実施形態では、リンク機構として構成された第1変換機構60は、第1リンク部70と、第3アーム71と、第4アーム72と、第2リンク部74とを有している。これに対して、第1変換機構60は、第1突出部40に力FLが付与された場合に、第1先端41を力点とし、固定位置101を支点とし、第1接触部50を作用点として、第1接触位置P1に上向きの力FUを付与することが可能に構成されていれば、第1リンク部70や、第3アーム71、第4アーム72、第2リンク部74を有していなくてもよい。また、例えば、第2アーム62に更に異なるアームが接続されていてもよい。なお、第2変換機構91をリンク機構として構成する場合も同様である。
【0073】
(E5)上記実施形態では、第1変換機構60と第2変換機構91とは、それぞれ略同様の機構として構成されているが、このように構成されていなくてもよい。例えば、第1変換機構60が第1実施形態と同様に構成され、第2変換機構91が第2実施形態や第3実施形態と同様に構成されてもよい。また、上記実施形態では、第2傾斜機構90が設けられているが、第2傾斜機構90が設けられていなくてもよい。この場合、例えば、第1実施形態における第2傾斜機構90に代えて、座席部20を下から支持するための支持部材を重心位置PGの左側に配置してもよいし、第2実施形態から第4実施形態における第2傾斜機構90bを単に配置しない構成としてもよい。
【0074】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
20,20b…座席部、21…座面部、22…シートバック、23…ヘッドレスト、24…一端、25…他端、26…支持部、27…支持板、28,28b…第1係合部、29…第3係合部、30,30b,30c…第1傾斜機構、40,40b,40c…突出部、41…第1先端、50,50b,50c,50d…第1接触部、60,60b,60c…第1変換機構、61…第1アーム、62…第2アーム、63…第1連結部、64…ジョイント、65…板状部材、70…第1リンク部、71…第3アーム、72…第4アーム、74…第2リンク部、78…スペーサ、80…接続部、81…第1接続部材、82,82b…第2係合部、83…上端部、84,84b…オーバーハング部、85…傾斜面、86…第2接続部材、87…第4係合部、90,90b,90c…第2傾斜機構、91,91b,91c…第2変換機構、92…第3リンク部、94,94b,94c,94d…第2接触部、95,95b,95c…第2突出部、96…第2先端、100,100b,100c,100d…車両用シート、101…固定位置、102…脚、111…第1シャフト、112…第2シャフト、113…第1ギア、114…第2ギア、115…第1固定部材、116…第1部分、117…第2部分、121…ロッド、122…レバー、123…一端部、124…他端部、125…屈曲部、126…固定ピン、130…第2固定部材