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  • 特開-立体造形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000737
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】立体造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/379 20170101AFI20231226BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231226BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20231226BHJP
【FI】
B29C64/379
B33Y10/00
B33Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099603
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博史
(72)【発明者】
【氏名】津田 雄一郎
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL55
4F213WW06
(57)【要約】
【課題】硬化したコア材内に気泡が内包されることを防ぎ、立体造形物に対して所望の機械的物性を得ることができる立体造形方法を提供する。
【解決手段】立体造形物の外殻層であるシェル125に囲われた部分であるコア部126に熱硬化性のコア材116を充填するコア材充填工程と、コア部126内のコア材116の温度がコア材充填工程におけるコア材116の温度よりも高く、コア材116の熱硬化開始温度よりも低い温度となるよう、少なくともコア部126内のコア材116を加熱し、所定時間維持させる硬化前温度維持工程と、コア材116の温度が熱硬化開始温度よりも高くなるよう、シェル125およびコア材116を加熱する熱硬化工程と、を有し、コア材116を含む立体造形物を形成させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体造形物の外殻層であるシェルに囲われた部分であるコア部に熱硬化性のコア材を充填するコア材充填工程と、
前記コア部内の前記コア材の温度が前記コア材充填工程における前記コア材の温度よりも高く、前記コア材の熱硬化開始温度よりも低い温度となるよう、少なくとも前記コア部内の前記コア材を加熱し、所定時間維持させる硬化前温度維持工程と、
前記コア材の温度が前記熱硬化開始温度よりも高くなるよう、前記シェルおよび前記コア材を加熱する熱硬化工程と、
を有し、前記コア材を含む立体造形物を形成させることを特徴とする、立体造形方法。
【請求項2】
前記硬化前温度維持工程と前記熱硬化工程は、同一の加熱手段によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項3】
前記硬化前温度維持工程は、減圧環境下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項4】
前記コア材は、熱硬化性の樹脂材料に強化材が分散した形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の立体造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンティングなどの付加製造技術を用いて立体造形物を形成させる立体造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティング技術を用いた製造装置の名称として、広く3Dプリンタという言葉が使われている。3Dプリンタは、3次元のCADデータをもとにコンピュータで造形物の断面形状を計算し、該造形物を薄い輪切り状の断面構成要素に分割して、その断面構成要素を種々の方法で形成し、それを積層させて目的とする造形物を形成する立体造形装置である。3Dプリンティング技術は、国際的にはAdditive Manufacturing Technologyと同義語として使われる場合が多く、日本語訳として、付加製造技術が用いられている。
【0003】
近年は、3Dプリンタで形成した造形物に対しても、実製品の量産前の評価目的で外観だけでなく剛性や強度が要求されるようになり、金属3Dプリンタや複合材3Dプリンタが注目されている。特に、下記特許文献1に開示されている立体造形方法では、造形槽内で複数回のシェル層の造形とコア材の充填が繰り返された後、活性エネルギー線の照射または熱エネルギーの付与によりコア材を一括して硬化させることにより、コア材により形成される造形物には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い造形物を造形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-136923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の立体造形方法では、完成した立体造形物は想定通りの機械的物性が得られないおそれがあった。具体的には、シェル層内にコア材を充填した後、コア材を硬化する過程においてコア材内に気泡が生じる可能性がある。硬化したコア材内にその気泡が内包されたままになるとそれがボイドと呼ばれる欠陥となり、ボイドが無い場合と比較して立体造形物の機械的物性が低下するというおそれがあった。
【0006】
本願発明は、上記問題点を鑑み、硬化したコア材内に気泡が内包されることを防ぎ、立体造形物に対して所望の機械的物性を得ることができる立体造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の立体造形方法は、立体造形物の外殻層であるシェルに囲われた部分であるコア部に熱硬化性のコア材を充填するコア材充填工程と、前記コア部内の前記コア材の温度が前記コア材充填工程における前記コア材の温度よりも高く、前記コア材の熱硬化開始温度よりも低い温度となるよう、少なくとも前記コア部内の前記コア材を加熱し、所定時間維持させる硬化前温度維持工程と、前記コア材の温度が前記熱硬化開始温度よりも高くなるよう、前記シェルおよび前記コア材を加熱する熱硬化工程と、を有し、前記コア材を含む立体造形物を形成させることを特徴としている。
【0008】
この立体造形方法により、硬化前温度維持工程においてコア材が硬化する前にしっかりと気泡を発生させて気泡をコア材から押し出すことにより、その後に硬化したコア材に気泡が内包されることを防ぐことができる。
【0009】
また、前記硬化前温度維持工程と前記熱硬化工程は、同一の加熱手段によって行われると良い。
【0010】
こうすることにより、簡単な工程で立体造形物を形成させることができる。
【0011】
また、前記硬化前温度維持工程は、減圧環境下で行われると良い。
【0012】
こうすることにより、硬化前温度維持工程における気泡の発生が活発化し、硬化したコア材への気泡の内包をさらに防ぐことができる。
【0013】
また、前記コア材は、熱硬化性の樹脂材料に強化材が分散した形態を有すると良い。
【0014】
このようなコア材に対しても、本発明の立体造形方法を適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の立体造形方法により、硬化したコア材内に気泡が内包されることを防ぎ、立体造形物に対して所望の機械的物性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の立体造形方法を実施するための立体造形装置を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態における立体造形方法を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態における立体造形方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の立体造形方法のうち、シェルにコア材を充填するための立体造形装置について、図1を参照して説明する。
【0018】
複合材3Dプリンタである立体造形装置100は、紫外線硬化樹脂であるシェル材121が貯留されている造形槽111、レーザ光学系112、コア材供給系113を主たる構成要素とする。
【0019】
造形槽111中には液相材料であるシェル材121が貯留されており、図示しないシェル材調整系により、その液面位置を所定位置に維持、調整可能となっている。シェル材121としてはエポキシ系、アクリル系など公知のものが使用可能である。造形槽111中には造形台128が設けられている。造形台128は立体造形物101を支持するためのもので、図示しない駆動機構により図中Z軸方向の任意の位置に移動かつ設置可能となっている。
【0020】
レーザ光学系112は紫外線レーザ光源114、走査光学系115とからなり、紫外線レーザ光源114から出射される紫外線レーザ光130は走査光学系115によりシェル材121の液面上(すなわちXY平面)の所定範囲を走査することが可能となっている。
【0021】
シェル材121は紫外線レーザ光130の照射により、図1にて硬化済み紫外線硬化樹脂123で示すように液面から所定の深さだけ硬化する。この硬化深さは0.1mmから0.2mm程度が一般的である。もちろん紫外線レーザ光源114の出力を調整することによりこの硬化深さを調整することが可能である。
【0022】
造形台128上面をシェル材121の液面からこの硬化深さ程度まで沈めた深さに位置させ、シェル材121の液面の任意の位置へ紫外線レーザ光130を照射することにより、造形台128上に任意の面積の硬化済み紫外線硬化樹脂123が形成される。
【0023】
造形台128上に硬化済み紫外線硬化樹脂123が形成された後、硬化深さ分だけ造形台128を下降させ、その後シェル材121の液面の任意の位置へ紫外線レーザ光130を照射することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂123上に硬化済み紫外線硬化樹脂123が積層される。
【0024】
そして、造形台128の下降とシェル材121液面への紫外線レーザ光130の照射とを繰り返し実施することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂123の積層が進行し、三次元形状の硬化済み紫外線硬化樹脂123を得ることができる。本発明では、このようにして造形された造形物をシェル125と呼ぶ。このシェル125は中空形状を有するコア材116を充填するための外殻層であり、シェル125で囲われた部分のうち底面を有する部分をコア部126と呼ぶ。
【0025】
コア材供給系113は液相材料であるコア材116をその内部に貯留するコア材タンク117中から、ポンプ119で配管系118b、118aを順に介してコア材116を送液、供給し、ノズル120の先端から吐出する。ノズル120は図示しない移動機構により、図中XYZ軸各方向に移動かつ固定可能となっている。このため配管系118aはノズル120の移動に追随するようフレキシブルな構成及び材料となっている。
【0026】
コア材116は熱硬化性樹脂中に炭素繊維などの強化材が均一に分散されたもので、シェル材121同様エポキシ系、アクリル系など公知の熱硬化樹脂が使用可能である。また、液相材料であるコア材116およびシェル材121は気体である空気よりも密度が大きく、また、コア材116の比重はシェル材121の比重よりも大きい。本実施形態ではコア材116、シェル材121の比重の比は、およそ1.25:1.1である。
【0027】
シェル125が有するコア部126へコア材116を充填し、コア部126に充填された状態のコア材116へ熱エネルギーを付与することにより、コア材116は熱硬化する。熱硬化したコア材116およびそれを囲うシェル125が本説明における立体造形物であり、所望の形状を有するコア部126に充填してから熱硬化させることにより、所望の形状の立体造形物を得ることができる。また、本方法によるとコア材116により形成される立体造形物には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い立体造形物を造形することができる。
【0028】
次に、本発明の一実施形態における立体造形方法について、図2、3を用いて説明する。
【0029】
本発明の立体造形方法では、最初に、立体造形装置100によってシェル125の造形およびコア材116の充填が行われる。
【0030】
具体的には、まず、ノズル120が紫外線レーザ光130の照射範囲から退避した状態において、造形台128上のシェル材121の液面の任意の位置への紫外線レーザ光130の照射、および硬化深さ分の造形台128の下降が交互に行われることにより、図2(a)に示すように所望の形状のコア部126を有するシェル125が形成される。ここで、本説明では、このようにシェル125を造形する工程をシェル造形工程と呼ぶ。
【0031】
次に、図2(b)に示すようにシェル125内に形成されたコア部126内へノズル120が移動し、ノズル120からコア部126へコア材116が吐出されることにより、コア材116の充填が進行する。ここで、本説明では、シェル125に囲われた部分であるコア部126へコア材116を充填する工程をコア材充填工程と呼ぶ。
【0032】
ここで、本実施形態では、コア材充填工程はシェル125が造形槽111内のシェル材121に浸漬した状態で実施され、コア材116の充填前には図2(a)に示すようにコア部126にはシェル材121が存在する。そして、シェル材121より比重が大きいコア材116が充填されていくにしたがって、シェル材121は押し上げられ、図2(b)に示すように、シェル125の上部に設けられた開口を経てコア部126からシェル125の外部へシェル材121が押し出される。すなわち、シェル材121からコア材116への置換が行われる。
【0033】
なお、上記のシェル造形工程およびコア材充填工程は交互に複数回ずつ実施されても構わない。すなわち、所定の高さまでシェル125を造形し、そのシェル125によって形成されるコア部126にコア材116を充填した後、さらにシェル125を増築し、そして増築されたシェル125によって形成されるコア部126にコア材116を充填する、という工程を繰り返し実施しても良い。このようにすることで、コア部126が複雑な形状を有する場合にも段階的にコア材116を充填することによってコア部126の隅々までコア材116を充填することができる。
【0034】
また、本説明では、コア材充填工程においてコア材116を充填するときのコア材116の温度を第1の温度T1と呼び、この第1の温度T1後述の第2の温度T2よりも低い。本実施形態では、第1の温度T1は室温(20℃~30℃)であり、コア材充填工程の際にコア材116の加熱、冷却を不要とすることによって工程を簡素化しているが、これに限らず、コア材116に加熱もしくは冷却を加えてからコア材充填工程を実施しても良い。
【0035】
コア材充填工程が完了した後、コア材116が充填されたシェル125が立体造形装置100の造形台128から取り外され、図3(a)に示す加熱手段140に投入される。本実施形態では、加熱手段140は加熱対象(本実施形態ではシェル125およびコア材116)を密閉可能なチャンバを有する加熱炉である。
【0036】
次に、加熱手段140内にシェル125およびコア材116を載置した状態において加熱手段140内が加熱されることにより、図3(a)に示す通りコア材116の温度が第1の温度T1より高くコア材116の硬化開始温度よりも低い第2の温度T2となるよう、コア材116およびシェル125が加熱される。そして、コア材116の温度が第2の温度T2である状態が所定時間(本実施形態では、数分~2時間程度)維持される。このように少なくともコア材116の温度を第2の温度T2まで加熱して所定時間維持する工程を、本説明では硬化前温度維持工程と呼ぶ。
【0037】
一般的に液状材料は、ヘンリーの法則に従い、温度が高くなるほど気体の溶解度は低くなる傾向がある。この傾向は、コア材116を形成する樹脂材料であっても同様であり、硬化前温度維持工程では、コア材116の温度を第1の温度T1より高い第2の温度T2とすることによって、上記コア材充填工程時のコア材116よりも空気の溶解度が低くなり、この温度条件でコア材116に溶けきれなくなった空気が気泡141となって現れる。
【0038】
ここで、前述の通りコア材116は空気より密度が大きいため、図3(a)に矢印で示すようにコア材116内に現れた気泡141はコア材116内を上方へ移動する。そして、気泡141がシェル125の上面の開口部におけるコア材116の液面に達した際に、気泡141を形成していた空気はこの液面から加熱手段140内へ放出される。したがって、この硬化前温度維持工程が実施されることにより、コア材116に内包されていた空気を追い出すことができる。
【0039】
また、前述のコア材充填工程においてコア材116をコア部126に充填している際にコア材116が空気を噛み込む可能性もあるため、コア材充填工程の前にあらかじめ空気を除去する工程が行われてからコア材116が充填されてその後硬化前温度維持工程は行われない場合と比べ、このように噛み込んだ空気も追い出すことができる。そして、本発明ではコア部126にコア材116を充填した後、コア材116を移し替える工程は有していないため、硬化前温度維持工程以降コア材116が空気を噛み込むことは無い。
【0040】
特に、本実施形態では造形槽111内でシェル材121からシェル125を造形し、造形槽111内でシェル125のコア部126にコア材116を充填している。このシェル材121が温度上昇により増粘するなど状態が変化する可能性があるものである場合、仮にコア材116が空気の除去を目的にコア部126への充填前に加熱されていたとすると、コア部126への充填時に高温のコア材116が造形槽111内のシェル材121に悪影響を及ぼしかねない。その場合には、本実施形態のように、コア部126へコア材116が充填され、シェル125およびコア材116が造形槽111から取り出された後に硬化前温度維持工程によってコア材116の加熱が行われることがより好ましい。
【0041】
ここで、コア材116の粘度が低いほどコア材116内で生じた気泡141は上方へ移動しやすくなるため、第2の温度T2におけるコア材116の粘度が第1の温度T1におけるコア材116の粘度より低くなっていることが好ましい。また、コア材116の粘度が低くなることにより、仮にコア材116内にシェル材121が閉じ込められていたとしても、そのシェル材121も上方に追い出すことができる。
【0042】
また、本実施形態では加熱手段140は減圧手段も兼ねている。この減圧手段としての動作によって加熱手段140内が減圧され、減圧環境下において硬化前温度維持工程が実施されることにより、減圧しない場合よりさらにコア材116における空気の溶解度を低くすることができるため、気泡141の発生が活発化するのと同時に、第2の温度T2を比較的低く設定することもできる。
【0043】
なお、硬化前温度維持工程の最中に、熱硬化樹脂からなるコア材116の熱硬化が開始するのは好ましくない。そのため、誤ってコア材116の熱硬化が開始することを防ぐために、硬化前温度維持工程における第2の温度T2はコア材116の硬化開始温度よりも20℃以上低いことが好ましい。また、硬化前温度維持工程において温度差による溶解度の差を利用して積極的に気泡141を生じさせるために、第2の温度T2は第1の温度T1より10℃以上高いことが好ましい。
【0044】
上記の通り硬化前温度維持工程が実施された後、次に加熱手段140内がさらに加熱され、図3(b)に示すようにコア材116の硬化開始温度よりも高い第3の温度T3となるよう、コア材116およびシェル125が加熱される。このようにコア材116の温度が硬化開始温度よりも高くなることにより、コア材116の硬化が開始し、所定時間(本実施形態では8時間~10時間程度)経過するとコア材116全体の硬化が完了し、この時点をもって立体造形物の作製が完了する。本説明ではこの硬化したコア材116とそれを囲うシェルとを合わせて立体造形物101と呼び、コア材116を熱硬化させて立体造形物101を作製する工程を、本説明では熱硬化工程と呼ぶ。
【0045】
ここで本発明では、前述の通り、コア材充填工程と熱硬化工程との間に硬化前温度維持工程が実施されるため、硬化前温度維持工程にて気泡141が発生する分、熱硬化工程において気泡が生じる可能性は低くなる。そのため、熱硬化したコア材116内に気泡が内包されることを防ぐことができる。その結果、所望の機械的物性を有する立体造形物を得ることができる。
【0046】
一方、この熱硬化工程において、仮にコア材116が従来の通り室温(第1の温度T1)から硬化開始温度を超える第3の温度T3まで一気に加熱されていた場合、第1の温度T1における空気の溶解度と第3の温度T3における溶解度の差に相当する空気の量による気泡がこの熱硬化工程において一気に発生することになる。この気泡は上方に移動する傾向を見せるが、コア材116の液面に達する前に気泡の周囲のコア材116が硬化してしまうと、その気泡はコア材116に取り残され、ボイドを形成することになり、立体造形物の機械的物性の低下が生じてしまう。本発明は、それを防ぐことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、硬化前温度維持工程と熱硬化工程とが同一の加熱手段140で行われている。そのため、コア材116の温度を下げることなく、また、シェル125およびコア材116を移動させること無く硬化前温度維持工程から熱硬化工程に移行できるため、硬化前温度維持工程と熱硬化工程との間でコア材116への新たな空気の混入を防ぐことができる。また、立体造形物を得るために必要な設備の個数を削減することができるため、立体造形方法を簡素化することができる。
【0048】
以上の立体造形方法により、硬化したコア材内に気泡が内包されることを防ぎ、立体造形物に対して所望の機械的物性を得ることが可能である。
【0049】
ここで、本発明の立体造形方法は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明では、硬化前温度維持工程と熱硬化工程とが同一の加熱手段で実施されているが、それに限らず、別の装置にてそれぞれの工程が実施されていても構わない。具体的には、硬化前温度維持工程は図2(b)に示した造形槽111を加熱する形態であって造形槽111、シェル材121、およびシェル125と一緒にコア材116を加熱するものでも構わない。
【0050】
また、上記の説明では、熱硬化したコア材116とそれを囲うシェル125とを合わせて立体造形物と呼んでいるが、熱硬化したコア材116のみを立体造形物と呼び、コア材116の熱硬化後にシェル125が破壊されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0051】
100 立体造形装置
101 立体造形物
111 造形槽
112 レーザ光学系
113 コア材供給系
114 紫外線レーザ光源
115 走査光学系
116 コア材
117 コア材タンク
118a 配管系
118b 配管系
119 ポンプ
120 ノズル
121 シェル材
123 硬化済み紫外線硬化樹脂
125 シェル
126 コア部
128 造形台
130 紫外線レーザ光
140 加熱手段
141 気泡
図1
図2
図3