(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073702
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】着色分散液
(51)【国際特許分類】
C09B 1/22 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
C09B1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184547
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花里 秋津
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 由昌
(72)【発明者】
【氏名】萩原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 隼人
(57)【要約】
【課題】保存後の濾過性に優れる着色分散液を提供する。
【解決手段】本発明に係る着色分散液は、下記式(1)で表される化合物を含む着色剤と、水とを含有し、上記着色剤を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定波長500nmで分析したときの、下記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が、上記着色剤における全ピーク面積に対して2.6%未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含む着色剤と、水とを含有し、
前記着色剤を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定波長500nmで分析したときの、下記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が、前記着色剤における全ピーク面積に対して2.6%未満である、着色分散液。
【化1】
【請求項2】
さらに、アニオン分散剤を含有する、請求項1に記載の着色分散液。
【請求項3】
前記アニオン分散剤が、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物である、請求項2に記載の着色分散液。
【請求項4】
前記ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物である、請求項3に記載の着色分散液。
【請求項5】
さらに、フィトステロール化合物を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の着色分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットによる無製版印刷を行う記録方法が提案され、布等を含めた繊維の捺染においてもインクジェット印刷による捺染(インクジェット捺染)が行われている。インクジェット印刷による捺染は、従来のスクリーン印刷等の捺染方法と比較して、無製版であること;省資源であること;省エネルギーであること;高精細表現が容易であること;等の様々な利点がある。
【0003】
ここで、ポリエステル繊維を代表とする疎水性繊維は、一般に水不溶性色材により染色される。このため、インクジェット印刷により疎水性繊維を捺染するための水性インクとしては、一般に水不溶性色材を水中に分散させた、分散安定性等の性能が良好な分散インクを用いる必要がある。
【0004】
疎水性繊維へのインクジェット捺染方式は、ダイレクトプリント法と昇華転写法とに大別される。ダイレクトプリント法は、疎水性繊維へ直接インクを付与(プリント)した後、高温スチーミング等の熱処理によりインク中の染料を疎水性繊維に染着させる捺染方法である。一方、昇華転写法は、中間記録媒体(専用の転写紙等)にインクを付与(プリント)した後、中間記録媒体のインク付与面と疎水性繊維とを重ね合わせた後、熱により染料を中間記録媒体から疎水性繊維へと転写させる捺染方法である。
【0005】
昇華転写法は、のぼり旗等の捺染加工に主に用いられており、インク中には熱処理による疎水性繊維への転写適性に優れた易昇華型の染料が用いられる。加工工程には、(1)プリント工程:インクジェットプリンタにより染料インクを中間記録媒体に付与する工程、(2)転写工程:熱処理により染料を中間記録媒体から繊維へと転写及び染着させる工程、の2工程が含まれ、市販の転写紙が広く使用できるため繊維の前処理は必要とせず、洗浄工程も省略されている。
【0006】
昇華転写法用のインクとしては、水不溶性染料を水中に分散させた水性インクが一般的に用いられている。例えば、特許文献1には、分散染料及び油溶性染料から選択される水不溶性染料を分散剤により水中に分散させた着色分散液に対して、保湿剤(乾燥防止剤)としての水溶性有機溶剤、表面張力調整剤としての界面活性剤、及びその他の添加剤(pH調整剤、防腐防黴剤、消泡剤等)を添加し、粒度、粘度、表面張力、pH等の物理特性(物性)を最適化して水性インクを調製することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、水不溶性染料を水中に分散させた従来の着色分散液について本発明者らが検討したところ、水不溶性染料の種類によっては、着色分散液の保存後の濾過性に改善の余地があることを見出した。
【0009】
本発明は、保存後の濾過性に優れる着色分散液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
1)
下記式(1)で表される化合物を含む着色剤と、水とを含有し、
前記着色剤を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定波長500nmで分析したときの、下記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が、前記着色剤における全ピーク面積に対して2.6%未満である、着色分散液。
【化1】
【0011】
2)
さらに、アニオン分散剤を含有する、1)に記載の着色分散液。
【0012】
3)
前記アニオン分散剤が、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物である、2)に記載の着色分散液。
【0013】
4)
前記ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物である、3)に記載の着色分散液。
【0014】
5)
さらに、フィトステロール化合物を含有する、1)~4)のいずれか1項に記載の着色分散液。
【0015】
6)
下記式(2)で表される化合物のピーク面積が、前記着色剤における全ピーク面積に対して1.2%未満であり、下記式(3)で表される化合物のピーク面積が、前記着色剤における全ピーク面積に対して0.9%未満である、1)~5)のいずれか1項に記載の着色分散液。
【化2】
(式中、X
1~X
6はそれぞれ独立に水素原子又は塩素原子を示す。但し、塩素原子の数は0個又は1個である。)
【化3】
【0016】
7)
下記式(1)で表される化合物を含む着色剤と、水とを含有し、
前記着色剤を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定波長500nmで分析したときの、下記式(2)で表される化合物のピーク面積が、前記着色剤における全ピーク面積に対して1.2%未満であり、下記式(3)で表される化合物のピーク面積が、前記着色剤における全ピーク面積に対して0.9%未満である、着色分散液。
【化4】
【化5】
(式中、X
1~X
6はそれぞれ独立に水素原子又は塩素原子を示す。但し、塩素原子の数は0個又は1個である。)
【化6】
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保存後の濾過性に優れる着色分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について詳細に説明する。本明細書において「C.I.」はカラーインデックスの略である。
【0019】
<着色分散液>
本実施形態に係る着色分散液は、特定の式(1)で表される化合物を含む着色剤と、水とを含有する。以下、本実施形態に係る着色分散液に含有される成分について詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、そのうちの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
[着色剤]
(第1の態様の着色剤)
第1の態様の着色剤は、下記式(1)で表される化合物を含み、且つ、該着色剤を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定波長500nmで分析したときの、下記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が、該着色剤における全ピーク面積に対して2.6%未満である。このような着色剤を使用することにより、着色分散液の保存後の濾過性、着色分散液を原料として含むインクの保存安定性及び吐出安定性、並びに得られる染色物の彩度が良好なものとなる傾向にある。
【0021】
【0022】
ここで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析方法とは、「液体の移動相をポンプなどによって加圧してカラムを通過させ、分析種を固定相及び移動相との相互作用(吸着、分配、イオン交換、サイズ排除など)の差を利用して高性能に分離して検出する」(JIS K0124:2011 高速液体クロマトグラフィー通則)分析方法のことである。HPLC分析の条件等は特に制限されないが、測定波長500nmで分析を行うことが好ましい。すなわち、カラムにより分離された化合物に対して波長500nmの光を照射し、その光吸収量を測定することが好ましい。より好ましくは、例えば、以下に記載の測定条件を挙げることができる。
-HPLC測定条件-
装置:SPD-M20A(株式会社島津製作所製)
カラム:Inertsil ODS-2(4.6mm×250mm)(粒子径5μm)
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/5mM 酢酸アンモニウム=70/30
流速:0.8mL/min
注入量:2μL
検出波長:500nm
【0023】
ピーク面積とは、クロマトグラムにおいてベースラインとピークラインとで囲まれた部分の面積のことをいう。具体的に、ピーク面積は、ピークの始まりから終わりに亘ってピークの信号値とベースラインの信号値との差とを積算したものであってもよく、ピーク高さの中点におけるピーク幅(半値幅)にピーク高さを乗じたものであってもよい。
【0024】
上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積は、第1の態様の着色剤における全ピーク面積に対して1.9%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.7%以下であることがさらに好ましく、1.6%以下であることが特に好ましく、1.5%以下であることが極めて好ましく、1.0%以下であることが最も好ましい。
【0025】
また、第1の態様の着色剤は、下記式(2)で表される化合物のピーク面積が、該着色剤における全ピーク面積に対して1.2%未満であり、下記式(3)で表される化合物のピーク面積が、該着色剤における全ピーク面積に対して0.9%未満であることが好ましい。
【0026】
【化8】
(式中、X
1~X
6はそれぞれ独立に水素原子又は塩素原子を示す。但し、塩素原子の数は0個又は1個である。)
【0027】
【0028】
上記式(2)で表される化合物のピーク面積は、第1の態様の着色剤における全ピーク面積に対して1.0%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、0.6%以下であることが特に好ましく、0.3%以下であることが極めて好ましい。上記式(2)で表される化合物のピーク面積を上記範囲とすることにより、得られる染色物の彩度がより良好なものとなる傾向にある。
【0029】
また、上記式(3)で表される化合物のピーク面積は、第1の態様の着色剤における全ピーク面積に対して0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、0.4%以下であることが特に好ましく、0.3%以下であることが極めて好ましい。上記式(3)で表される化合物のピーク面積を上記範囲とすることにより、着色分散液を原料として含むインクの保存安定性がより良好なものとなる傾向にある。
【0030】
第1の態様の着色剤を得る方法は特に制限されず、例えば、上記式(1)で表される化合物と不純物とを含む配合物を公知の精製方法で精製する方法が挙げられる。
【0031】
精製方法としては特に制限されず、例えば、固液抽出、液液抽出、還流抽出、ソックスレー抽出等の抽出;浸漬;撹拌;などの通常の手段を用いることができる。これらの手段は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、例えば、固液抽出と液液抽出とを組み合わせてもよい。2種以上の手段を組み合わせる場合、手段間の順序は、抽出効率など、目的に応じ任意で設定できる。
【0032】
固液抽出を行う場合、抽出溶媒としては、例えば、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒は、親水性有機溶媒であっても疎水性有機溶媒であってもよい。抽出溶媒の例としては、1価、2価、又は多価のアルコール類及びその水溶液;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル等の鎖状エーテル類;ペンタン、ヘキサン等の飽和又は不飽和の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;ナタネ油、大豆油等の食用油類;ジアシルグリセロール(DAG)、中鎖脂肪酸油、スクワラン、スクワレン等の油脂類;などが挙げられる。これらの抽出溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの抽出溶媒の中でも、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールが好ましい。
【0033】
固液抽出の条件は、十分な抽出が行える条件であれば特に限定されない。例えば、抽出溶媒の使用量としては、配合物1gに対して1~100mLであることが好ましい。抽出時間は、通常、溶媒が低温であれば長時間になるが、溶媒がより高温であれば短時間でもよい。また、抽出操作は2回以上行ってもよい。好ましい抽出条件としては、例えば、10~50℃で1~2時間の抽出を2回実施する条件等が挙げられる。
【0034】
固液抽出における固体の分離方法としては特に制限されず、例えば、ブフナー漏斗及び濾紙を用いた濾過により分離回収することができる。その際、ブフナー漏斗内のケーキ上に抽出溶媒を添加することで、精製の効果をより高めることができる。
【0035】
上記の抽出操作後のケーキ中には、通常、抽出溶媒が残存するため、溶媒を除去する操作を追加してもよい。溶媒の除去方法としては、例えば、減圧下で溶媒を除去する操作;ケーキを水で懸濁して濾過する操作;ケーキ上に水を添加して濾過する操作;等が挙げられる。
【0036】
(第2の態様の着色剤)
第2の態様の着色剤は、上記式(1)で表される化合物を含み、且つ、該着色剤を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定波長500nmで分析したときの、上記式(2)で表される化合物のピーク面積が、該着色剤における全ピーク面積に対して1.2%未満であり、上記式(3)で表される化合物のピーク面積が、該着色剤における全ピーク面積に対して0.9%未満である。特に、第2の態様の着色剤は、上記式(1)で表される化合物のピーク面積が、該着色剤における全ピーク面積に対して98.0%以上であることが好ましく、98.2%以上であることがより好ましく、98.3%以上であることがさらに好ましく、98.4%以上であることが特に好ましく、98.5%以上であることが極めてこのましい。このような着色剤を使用することにより、着色分散液の保存後の濾過性、着色分散液を原料として含むインクの保存安定性及び吐出安定性、並びに得られる染色物の彩度が良好なものとなる傾向にある。
【0037】
上記式(2)で表される化合物のピーク面積は、第2の態様の着色剤における全ピーク面積に対して1.0%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、0.6%以下であることが特に好ましく、0.3%以下であることが極めて好ましい。上記式(2)で表される化合物のピーク面積を上記範囲とすることにより、得られる染色物の彩度がより良好なものとなる傾向にある。
【0038】
また、上記式(3)で表される化合物のピーク面積は、第1の態様の着色剤における全ピーク面積に対して0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、0.4%以下であることが特に好ましく、0.3%以下であるであることが極めて好ましい。上記式(3)で表される化合物のピーク面積を上記範囲とすることにより、着色分散液を原料として含むインクの保存安定性がより良好なものとなる傾向にある。
【0039】
上記式(1)で表される化合物の含有率は、着色分散液の調製時における組成の自由度の確保及び着色分散液の安定性の観点から、着色分散液の総量に対して、0.1~30質量%であることが好ましく、0.5~25質量%であることがより好ましく、1~20質量%であることがさらに好ましい。
【0040】
[水]
水としては、イオン交換水、蒸留水、超純水等の不純物が少ないものが好ましい。水の含有率は、用途に応じて適宜選択される。水の含有率は、通常、着色剤100質量部に対して200~8500質量部である。
【0041】
[分散剤]
本実施形態に係る着色分散液は、分散剤をさらに含有することが好ましい。分散剤としては、特に制限されないが、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェート、及びポリオキシエチレンナフチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0042】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体は、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体である。共重合体の具体例としては、(α-メチル)スチレン-アクリル酸共重合体、(α-メチル)スチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、(α-メチル)スチレン-メタクリル酸共重合体、(α-メチル)スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、(α-メチル)スチレン-アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル-スチレンスルホン酸共重合体、(α-メチル)スチレン-メタクリルスルホン酸共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を含む意味として用いる。また、「(α-メチル)スチレン」は、「α-メチルスチレン」及び「スチレン」を含む意味として用いる。
【0043】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体の質量平均分子量は、例えば、1000~20000であることが好ましく、2000~19000であることがより好ましく、5000~17000であることがさらに好ましい。スチレン-(メタ)アクリル共重合体の質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフ)法で測定することができる。
【0044】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体の酸価は、例えば、50~250mgKOH/gであることが好ましく、100~250mgKOH/gであることがより好ましく、150~250mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価を50mgKOH/g以上とすることにより、水に対する溶解性が向上し、また、着色剤に対する分散安定化力が向上する傾向にある。また、酸価を250mgKOH/g以下とすることにより、水性媒体との親和性増大に起因して印字後の画像に滲みが発生することが抑えられる傾向にある。樹脂の酸価は、樹脂1gを中和するのに要するKOHのmg数を表し、JIS-K3054に従って測定することができる。
【0045】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度は、例えば、45~135℃であることが好ましく、55~120℃であることがより好ましく、60~110℃であることがさらに好ましい。
【0046】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体の市販品としては、例えば、Joncryl 67、678、680、682、683、690、52J、57J、60J、63J、70J、JDX-6180、HPD-196、HPD96J、PDX-6137A、6610、JDX-6500、JDX-6639、PDX-6102B、PDX-6124(以上、BASF社製)等が挙げられる。これらの中でも、Joncryl 67(質量平均分子量:12500、酸価:213mgKOH/g)、678(質量平均分子量:8500、酸価:215mgKOH/g)、682(質量平均分子量:1700、酸価:230mgKOH/g)、683(質量平均分子量:4900、酸価:215mgKOH/g)、690(質量平均分子量:16500、酸価:240mgKOH/g)が好ましく、Joncryl 678がより好ましい。
【0047】
芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩としては、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、β-ナフタリンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、クレゾールスルホン酸、2-ナフトール-6-スルホン酸、リグニンスルホン酸等の各ホルマリン縮合物又はそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)が挙げられる。これらの中では、クレオソート油スルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、リグニンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸の各ホルマリン縮合物又はそれらの塩が好ましい。
【0048】
芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物は、市販品として入手することもできる。例えば、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールN(花王株式会社製)等が挙げられる。クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールC(花王株式会社製)、ラベリンWシリーズ(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。特殊芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールSN-B(花王株式会社製)等が挙げられる。メチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物としては、ラベリンANシリーズ(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。これらの中では、デモールN、ラベリンANシリーズ、及びラベリンWシリーズが好ましく、デモールN及びラベリンWシリーズがより好ましく、ラベリンWシリーズがさらに好ましい。リグニンスルホン酸としては、バニレックスN、バニレックスRN、バニレックスG、パールレックスDP(以上、日本製紙株式会社製)等が挙げられる。これらの中では、バニレックスRN、バニレックスN、及びバニレックスGが好ましい。
【0049】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンテトラスチリルフェニルエーテル等のスチリルフェノール化合物;ポリオキシエチレンモノベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等のベンジルフェノール化合物;ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等のクミルフェノール化合物;ポリオキシエチレンナフチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェノキシフェニルエーテル;などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンクミルフェニルエーテルが好ましい。
【0050】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルにおけるポリオキシエチレン基の繰り返し数は、1~30が好ましく、15~30がより好ましい。繰り返し数が1以上であると、水性溶媒等との相溶性に優れる傾向にある。また、繰り返し数が30以下であると、粘度が高くなりすぎない傾向にある。
【0051】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルの市販品としては、例えば、ノイゲンEAシリーズ(第一工業製薬株式会社製);パイオニンD-6112、パイオニンD-6115、パイオニンD-6120、パイオニンD-6131、パイオニンD-6512、タケサーフD-6413、DTD-51、パイオニンD-6112、パイオニンD-6320(以上、竹本油脂株式会社製);TS-1500、TS-2000、TS-2600、SM-174N(以上、東邦化学株式会社製);エマルゲンA60、エマルゲンA90、エマルゲンA500(以上、花王株式会社製);エマルゲンB-66、ニューコール CMP系(以上、日本乳化剤株式会社製);などが挙げられる。
【0052】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェートとしては、例えば、上述したポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルの硫酸塩が挙げられる。
【0053】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェートの市販品としては、例えば、SM-57、SM-130、SM-210(以上、東邦化学株式会社製)等が挙げられる。
【0054】
ポリオキシエチレンナフチルエーテルの市販品としては、例えば、ノイゲンENシリーズ(第一工業製薬株式会社製)、パイオニンD-7240(竹本油脂株式会社製)等が挙げられる。
【0055】
本実施形態に係る着色分散液は、上記以外に、従来公知のノニオン分散剤をさらに含有していてもよい。ノニオン分散剤としては、例えば、フィトステロール類のアルキレンオキサイド付加物、コレスタノール類のアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、及びこれらの置換誘導体等が挙げられる。これらの中では、フィトステロール類のアルキレンオキサイド付加物(フィトステロール化合物ともいう。)及びコレスタノール類のアルキレンオキサイド付加物(コレスタノール化合物ともいう。)が好ましく、フィトステロール化合物がより好ましい。
【0056】
フィトステロール類のアルキレンオキサイド付加物としては、フィトステロール類のC2-C4アルキレンオキサイド付加物が好ましく、エチレンオキサイド付加物がより好ましい。本明細書において「フィトステロール類」は、「フィトステロール」及び「水添フィトステロール」の両者を含む意味として用いる。例えば、フィトステロール類のエチレンオキサイド付加物としては、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物及び水添フィトステロールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0057】
コレスタノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、コレスタノール類のC2-C4アルキレンオキサイド付加物が好ましく、エチレンオキサイド付加物がより好ましい。本明細書において「コレスタノール類」は、「コレスタノール」及び「水添コレスタノール」の両者を含む意味として用いる。例えば、コレスタノール類のエチレンオキサイド付加物としては、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物及び水添コレスタノールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0058】
フィトステロール類又はコレスタノール類1モルあたりのアルキレンオキサイド(好ましくはC2-C4アルキレンオキサイド、より好ましくはエチレンオキサイド)の付加量は10~50モル程度が好ましく、HLBは13~20程度が好ましい。
【0059】
フィトステロール類のアルキレンオキサイド付加物の市販品としては、例えば、NIKKOL BPS-20、NIKKOL BPS-30(いずれも日光ケミカルズ株式会社製、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物)、NIKKOL BPSH-25(同、水添フィトステロールのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられる。コレスタノール類のアルキレンオキサイド付加物の市販品としては、NIKKOL DHC-30(日光ケミカルズ株式会社製、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る着色分散液が分散剤を含有する場合、その含有率は、着色剤100質量部に対して、例えば、1~300質量部であることが好ましく、5~120質量部であることがより好ましい。
【0061】
[添加剤]
本実施形態に係る着色分散液は、上記以外の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、水溶性有機溶剤、防腐剤、界面活性剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、粘度調整剤、色素溶解剤、酸化防止剤、樹脂エマルション等が挙げられる。本実施形態に係る着色分散液は、これらの中でも、水溶性有機溶剤、防腐剤、界面活性剤、及びpH調整剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0062】
水溶性有機溶剤の含有率は、着色分散液の総量に対して、0~90質量%であることが好ましく、0.01~85質量%であることがより好ましい。また、その他の添加剤の合計の含有率は、着色分散液の総量に対して、0~50質量%であることが好ましく、0.01~10質量%であることがより好ましい。
【0063】
水溶性有機溶剤としては、例えば、グリコール系溶剤、多価アルコール類、ピロリドン類等が挙げられる。グリコール系溶剤としては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン(#310、#750、#800)、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ウンデカグリセリン、ドデカグリセリン、トリデカグリセリン、テトラデカグリセリン等が挙げられる。多価アルコール類としては、例えば、アルコール性水酸基を2~3個有するC2-C6多価アルコール;ジ又はトリC2-C3アルキレングリコール;繰り返し単位が4以上で、分子量20000程度以下のポリC2-C3アルキレングリコール、好ましくは液状のポリアルキレングリコール等が挙げられる。それらの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、チオジグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。ピロリドン類としては、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。また、水に溶解して湿潤剤としての役割をする化合物も、便宜上、水溶性有機溶剤に含めるものとする。そのような化合物としては、例えば、尿素、エチレン尿素、糖類等が挙げられる。
【0064】
本実施形態に係る着色分散液の保存安定性を考慮すると、水溶性有機溶剤としては、着色剤の溶解度が小さい溶剤が好ましく、特に、グリセリンとグリセリン以外の溶剤(好ましくはグリセリン以外の多価アルコール)とを併用するのが好ましい。
【0065】
防腐剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N-ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム等が挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ロンザ社製の商品名プロクセルGXL(S)、プロクセルXL-2(S)等が挙げられる。
【0066】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、ノニオン系、シリコーン系、フッ素系等の公知の界面活性剤が挙げられる。
【0067】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型リン酸エステル、アルキル型リン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。市販品としては、例えば、いずれも第一工業製薬株式会社製のハイテノールLA-10、LA-12、LA-16、ネオハイテノールECL-30S、ECL-45等が挙げられる。
【0068】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0069】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0070】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;エアープロダクツジャパン株式会社製のサーフィノール104、105、82、465、オルフィンSTG等;ポリグリコールエーテル系(例えば、SIGMA-ALDRICH社製のTergitol 15-S-7等);などが挙げられる。
【0071】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。市販品としては、例えば、いずれもビックケミー社製の、BYK-347(ポリエーテル変性シロキサン);BYK-345、BYK-348(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)等が挙げられる。
【0072】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、Capstone FS-30、FS-31(以上、DuPont社製);PF-151N、PF-154N(以上、オムノバ社製);等が挙げられる。
【0073】
pH調整剤としては、調製される着色分散液に悪影響を及ぼさずに、着色分散液のpHを5.0~11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;ケイ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の無機塩基;などが挙げられ、トリエタノールアミンが好ましい。
【0074】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0075】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0076】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、スルホン化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
【0077】
水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0078】
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に水溶性高分子化合物が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0079】
色素溶解剤としては、例えば、尿素、ε-カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0080】
酸化防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
【0081】
樹脂エマルションとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニル樹脂(塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ材料(メラニン樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂、メラニンホルムアルデヒド樹脂等)等から形成されたエマルションを挙げることができる。樹脂エマルションは、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。また、2種以上の樹脂がコア/シェル構造を形成していてもよい。樹脂エマルションの中でも、ウレタン樹脂エマルションが好ましい。
【0082】
ウレタン樹脂エマルションは、市販品として入手することができ、その多くは固形分濃度30~60質量%の乳化液である。ウレタン樹脂エマルションの市販品としては、例えば、パーマリンUA-150、200、310、368、3945、ユーコートUX-320(以上、三洋化成株式会社製);ハイドランWLS-201、210、HW-312Bのラテックス(以上、DIC株式会社製);スーパーフレックス150、170、470(以上、第一工業製薬株式会社製);等が挙げられる。これらのうち、ポリカーボネート系ウレタン樹脂としては、例えば、パーマリンUA-310、3945;ユーコートUX-320;等が挙げられる。また、ポリエーテル系ウレタン樹脂としては、例えば、パーマリンUA-150、200;ユーコートUX-340;等が挙げられる。
【0083】
ウレタン樹脂エマルション中のウレタン樹脂は、SP値が8~24(cal/cm3)1/2であることが好ましく、8~17(cal/cm3)1/2であることがより好ましく、8~11(cal/cm3)1/2であることがさらに好ましい。なお、ウレタン樹脂のSP値は、Fedors法によって計算される。ウレタン樹脂が酸性基を有し、この酸性基を中和してエマルションを調製している場合には、中和前のウレタン樹脂のSP値を用いる。
【0084】
ウレタン樹脂エマルション中のウレタン樹脂がカルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の酸性基を有する場合、酸性基がアルカリ塩化されていてもよい。例えば、酸性基を有するウレタン樹脂を水に投入して撹拌して水溶液を調製し、そこへアルカリ性化合物を投入してpHを6.0~12.0に調整することにより、酸性基をアルカリ塩化することができる。アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;などが挙げられる。アルカリ性化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
[着色分散液の調製方法等]
本実施形態に係る着色分散液の調製方法としては、例えば、着色剤、分散剤、及び水を含有する水性分散液を調製し、必要に応じて、水溶性有機溶剤等の添加剤をさらに加える方法が挙げられる。
【0086】
水性分散液を調製する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、高圧乳化機等を用いて、水性分散液を構成する各成分を撹拌混合する等の公知の方法が挙げられる。例えば、サンドミルを用いる場合、まず、各成分及び分散媒体としてのビーズをサンドミルに仕込む。ビーズとしては、粒子径0.01~1mmのガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を用いることができる。ビーズの使用量は、分散対象1質量部に対して2~6質量部が好ましい。次いで、サンドミルを作動させ分散処理を行う。分散処理条件は、概ね1000~2000rpmで1~20時間が好ましい。そして、分散処理後にビーズを濾過等により除去することで、水性分散液が得られる。
【0087】
調製した着色分散液は、メンブレンフィルター等を用いて精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.1~5μmであり、さらに好ましくは0.1~3μmであり、特に好ましくは0.1~1μmであり、極めて好ましくは0.1~0.8μmである。
【0088】
本実施形態に係る着色分散液の25℃における粘度は、E型粘度計にて測定したときに、1~20mPa・s程度であることが好ましい。また、本実施形態に係る着色分散液の25℃における表面張力は、プレート法にて測定したときに、20~55mN/m程度であることが好ましい。実際には、使用するインクジェットプリンタの吐出量、応答速度、インク液滴飛行特性等を考慮して、適正な物性値になるよう調整される。
【0089】
本実施形態に係る着色分散液は、各種分野において使用することができ、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク、捺染等に好適である。本実施形態に係る着色分散液は、インクジェット捺染用インクの原料として用いることが特に好ましい。
【0090】
本実施形態に係る着色分散液によれば、保存中に着色分散液の濾過性が悪化することを効果的に抑制することができる。すなわち、本実施形態に係る着色分散液によれば、着色分散液中の粒子の分散状態を安定して維持することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る着色分散液によれば、着色分散液を原料に含むインクを中間記録媒体(転写紙等)に付着させて記録画像を得た後、その記録画像を疎水性繊維(ポリエステル布等)に転写した際に彩度が悪化することを効果的に抑制することができる。すなわち、本実施形態に係る着色分散液によれば、着色分散液を原料に含むインクを中間記録媒体(転写紙等)に付着させて記録画像を得た後、その記録画像を疎水性繊維(ポリエステル布等)に転写した際に、良好な彩度を得ることができる。
【0092】
さらに、本実施形態に係る着色分散液を原料に含むインクは、インクジェットプリンタヘッドへの初期充填性が良好であり、連続印刷安定性も良好である。また、印刷後の用紙上の画像の滲みが無く、鮮明な画像を得ることが可能である。
【0093】
<記録メディア>
本実施形態に係る記録メディアは、上述した本実施形態に係る着色分散液を原料に含むインクが付着したものである。記録メディアとしては、本実施形態に係る着色分散液を原料に含むインクにより記録可能なものであれば特に制限されず、例えば、繊維、フィルム、紙(普通紙、インクジェット専用紙等)等が挙げられる。特に、本実施形態に係る記録メディアは、本実施形態に係る着色分散液を原料に含むインクが付着した疎水性繊維であることが好ましい。
【0094】
疎水性繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維、及びこれらの繊維を2種以上用いた混紡繊維等が挙げられる。また、これらの疎水性繊維とレーヨン等の再生繊維、木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡繊維も、本明細書においては疎水性繊維に含まれる。これらの繊維の中にはインク受容層(滲み防止層)を有するものも知られており、そのような繊維も疎水性繊維に含まれる。インク受容層の形成方法は公知技術であり、インク受容層を有する繊維も市販品として入手が可能である。インク受容層の材質、構造等は特に制限されず、目的等に応じて適宜使用することができる。
【0095】
<疎水性繊維の捺染方法>
本実施形態に係る疎水性繊維の捺染方法は、上述した本実施形態に係る着色分散液を原料に含むインクを用いて疎水性繊維に捺染する方法である。疎水性繊維の捺染方法は、ダイレクトプリント法と昇華転写法とに大別される。
【0096】
ダイレクトプリント法は、着色分散液を原料に含むインクの液滴を、インクジェットプリンタにより疎水性繊維に付着させることにより、文字、絵柄等の記録画像を得るプリント工程と、プリント工程にて疎水性繊維に付着させたインク中の染料を、熱により疎水性繊維に固着させる固着工程と、疎水性繊維中に残存する未固着の染料を洗浄する洗浄工程と、を含む。
【0097】
固着工程は、一般的には公知のスチーミング又はベーキングによって行われる。スチーミングとしては、例えば、高温スチーマーにより通常170~180℃で10分間程度、あるいは、高圧スチーマーにより通常120~130℃で20分間程度、それぞれ疎水性繊維を処理することにより、染料を疎水性繊維に染着(湿熱固着とも称される)する方法が挙げられる。ベーキング(サーモゾル)としては、例えば、通常190~210℃で6~120秒間程度、疎水性繊維を処理することにより、染料を疎水性繊維に染着(乾熱固着とも称される)する方法が挙げられる。
【0098】
洗浄工程は、得られた繊維を、温水、及び必要に応じて水により洗浄する工程である。洗浄に使用する温水や水は、界面活性剤を含んでいてもよい。洗浄後の疎水性繊維を、通常50~120℃で5~30分間乾燥することも好ましく行われる。
【0099】
一方、昇華転写法は、着色分散液を原料に含むインクの液滴を、インクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させることにより、文字、絵柄等の記録画像を得るプリント工程と、中間記録媒体におけるインクの付着面に疎水性繊維を接触させ、熱処理することにより記録画像を疎水性繊維に転写する転写工程と、を含む。
【0100】
中間記録媒体としては、付着したインク中の染料が、その表面で凝集せず、且つ、疎水性繊維へ記録画像の転写を行うときに、染料の昇華を妨害しないものが好ましい。そのような中間記録媒体の一例としては、転写紙(シリカ等の無機微粒子でインク受容層が表面に形成されている紙)等が挙げられ、インクジェット用の専用紙等を用いることができる。
【0101】
転写工程における熱処理としては、通常190~200℃程度での乾熱処理が挙げられる。
【0102】
本実施形態に係る疎水性繊維の捺染方法は、滲み等を防止する目的で、疎水性繊維の前処理工程をさらに含んでいてもよい。この前処理工程としては、糊材、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤を含有する水溶液(前処理液)を、着色分散液を付着させる前の疎水性繊維に付与する工程が挙げられる。
【0103】
糊剤としては、例えば、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類;澱粉類;アルギン酸ソーダ、ふのり等の海藻類;ペクチン酸等の植物皮類;メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体;カルボキシメチル澱粉等の加工澱粉;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊;などが挙げられ、アルギン酸ソーダが好ましい。
【0104】
アルカリ性物質としては、例えば、無機酸又は有機酸のアルカリ金属塩;アルカリ土類金属の塩;加熱した際にアルカリを遊離する化合物;等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属塩が好ましい。具体例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機化合物のアルカリ金属塩;蟻酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム等の有機化合物のアルカリ金属塩;等が挙げられ、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0105】
還元防止剤としては、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素等の尿素類等が挙げられ、尿素が好ましい。
【0106】
糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤は、いずれも1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0107】
前処理液中における各成分の混合比率は、例えば、糊剤が0.5~5質量%、炭酸水素ナトリウムが0.5~5質量%、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが0~5質量%、尿素が1~20質量%、残部が水である。
【0108】
前処理液を疎水性繊維に付着させる方法としては、例えばパディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40~90%程度が好ましく、より好ましくは60~80%程度である。
【実施例0109】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。実施例において特に断りがない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ意味する。なお、各実施例における水性分散液は、いずれも上記着色分散液に含まれる。
【0110】
<着色剤のHPLC分析>
着色剤のHPLC分析は、次の手順で実施した。まず、着色剤10mgにテトラヒドロフラン20gを加え、超音波を3分間照射した。得られた混合液を孔径0.45μmのシリンジフィルター(ADVANTECH社製)で濾過した後、HPLC装置を用いて分析を行った。HPLC測定条件は次のとおりである。そして、得られたクロマトグラムから上記式(1)で表される化合物のピーク面積を求め、その値を100%から減算した値を不純物のピーク面積とした。また、同様にして、上記式(2)で表される化合物及び上記式(3)で表される化合物で表される化合物のピーク面積を求めた。
-HPLC測定条件-
装置:SPD-M20A(株式会社島津製作所製)
カラム:Inertsil ODS-2(4.6mm×250mm)(粒子径5μm)
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/5mM 酢酸アンモニウム=70/30
流速:0.8mL/min
注入量:2μL
検出波長:500nm
【0111】
<着色剤の調製>
上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が全ピーク面積に対して1.9%である着色剤を着色剤7とし、上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が全ピーク面積に対して2.6%である着色剤を着色剤8とした。さらに、以下の調製例1~6に記載の方法に従って着色剤1~6を調製した。
【0112】
[調製例1]
着色剤7(10部)にメタノール(100部)を加え、2時間撹拌した後、ブフナー漏斗を用いて上記式(1)で表される化合物を濾別した。ブフナー漏斗上の濾物にメタノール(100部)を注いだ後、濾別した。さらに、ブフナー漏斗上の濾物に水(100部)を注いだ後、濾別した。得られた濾物は、70℃の恒温槽にて3時間乾燥した後、乳鉢で粉砕した。得られた粉砕物を着色剤1とする。
【0113】
[調製例2]
着色剤8(10部)にメタノール(100部)を加え、2時間撹拌した後、ブフナー漏斗を用いて上記式(1)で表される化合物を濾別した。ブフナー漏斗上の濾物にメタノール(100部)を注いだ後、濾別した。さらに、ブフナー漏斗上の濾物に水(100部)を注いだ後、濾別した。得られた濾物は、70℃の恒温槽にて3時間乾燥した後、乳鉢で粉砕した。得られた粉砕物を着色剤2とする。
【0114】
[調製例3]
上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が全ピーク面積に対して1.5%となるように、着色剤2と着色剤7とを配合した。得られた配合物を着色剤3とする。
【0115】
[調製例4]
上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が全ピーク面積に対して1.6%となるように、着色剤2と着色剤8とを配合した。得られた配合物を着色剤4とする。
【0116】
[調製例5]
着色剤7(10部)にメタノール(50部)を加え、2時間撹拌した後、ブフナー漏斗を用いて上記式(1)で表される化合物を濾別した。ブフナー漏斗上の濾物にメタノール(25部)を注いだ後、濾別した。さらに、ブフナー漏斗上の濾物に水(100部)を注いだ後、濾別した。得られた濾物は、70℃の恒温槽にて3時間乾燥した後、乳鉢で粉砕した。得られた粉砕物を着色剤5とする。
【0117】
[調製例6]
着色剤8(10部)にメタノール(50部)を加え、2時間撹拌した後、ブフナー漏斗を用いて上記式(1)で表される化合物を濾別した。ブフナー漏斗上の濾物にメタノール(25部)を注いだ後、濾別した。さらに、ブフナー漏斗上の濾物に水(100部)を注いだ後、濾別した。得られた濾物は、70℃の恒温槽にて3時間乾燥した後、乳鉢で粉砕した。得られた粉砕物を着色剤6とする。
【0118】
着色剤1~8における上記式(1)で表される化合物のピーク面積、及び上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積を下記表1に示す。
【0119】
【0120】
<実施例1~7:水性分散液1~7の調製>
下記表2、3に記載の各成分に0.2mm径ガラスビーズを加え、サンドミルにて水冷下、約15時間分散処理を行った。得られた液をガラス繊維濾紙GC-50(ADVANTEC社製)で濾過し、着色剤の含有率がいずれも15%である水性分散液1~7を得た。
【0121】
<比較例1:水性分散液8の調製>
下記表3に記載の各成分に0.2mm径ガラスビーズを加え、サンドミルにて水冷下、約15時間分散処理を行った。得られた液をガラス繊維濾紙GC-50(ADVANTEC社製)で濾過し、着色剤の含有率が15%である水性分散液8を得た。
【0122】
【0123】
【0124】
表2、3中、各成分の数値は添加した部数を示す。また、表2、3中の略号等は以下を表す。
ラベリンW40:ラベリンW40(第一工業製薬株式会社製)
BPS-30:NIKKOL BPS-30(日光ケミカルズ株式会社製)
サーフィノール104PG50:サーフィノール104(エアープロダクツジャパン株式会社製)をプロピレングリコールで50%濃度に希釈したもの
プロクセルGXL(S):プロクセルGXL(S)(ロンザ社製)
【0125】
<評価>
上記のようにして調製した各水性分散液を用いて、以下の評価試験を行った。結果を下記表4に示す。
【0126】
[濾過性の評価]
各水性分散液25mLをアイボーイ50mL瓶(アズワン株式会社製)中に入れ密栓した。70℃の状態で3日間保存した各水性分散液を孔径0.8μmのフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25CS)で濾過し、下記評価基準に従って保存後の濾過性を評価した。
-評価基準-
A:25mLの水性分散液を全通でき、濾過抵抗が殆どない。
B:25mLの水性分散液を全通できるが、濾過抵抗がある。
C:濾過詰まりが生じ、25mLの水性分散液を全通できない。
【0127】
【0128】
表4に示すとおり、上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が全ピーク面積に対して2.6%未満である着色剤を含有する実施例1~7の各水性分散液は、比較例1の水性分散液に比べて、保存後の濾過性に優れていた。
【0129】
<実施例8~14:バイオレットインク1~7の調製>
実施例1~7で得た水性分散液1~7と、下記表5、6に記載の各成分とを混合し、30分間撹拌した後、孔径5.0μmのメンブレンフィルター(ザルトリウス社製)で濾過することにより、バイオレットインク1~7を調製した。
【0130】
<比較例2:バイオレットインク8の調製>
比較例1で得た水性分散液8と、下記表6に記載の各成分とを混合し、30分間撹拌した後、孔径5.0μmのメンブレンフィルター(ザルトリウス社製)で濾過することにより、バイオレットインク8を調製した。
【0131】
【0132】
【0133】
表5、6中、各成分の数値は添加した部数を示す。また、表5、6中の略号等は以下を表す。
BYK-348:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
TEA-80:トリエタノールアミン(オクサリスケミカルズ株式会社製)
プロクセルGXL(S):プロクセルGXL(S)(ロンザ社製)
【0134】
<評価>
上記のようにして調製した各インクを用いて、以下の評価試験を行った。結果を下記表7に示す。
【0135】
[粒径変化試験]
初期及び70℃で3日間保存した各インクのメディアン径(D50、数平均粒子径)を、MICROTRAC NANOTRAC WAVE(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。初期及び保存後の粒径から粒径変化率を算出し、下記評価基準に従って保存安定性を評価した。
-評価基準-
A:変化率の絶対値が10%未満
B:変化率の絶対値が10%以上20%未満
C:変化率の絶対値が20%以上
【0136】
[彩度の評価]
各インクを使用し、インクジェットプリンタEW-452A(セイコーエプソン株式会社製)にて階調柄を中間記録媒体である転写紙へ印刷した。この印刷された転写紙のインク付着面と、同じ大きさのポリエステル布(トロピカル)とを重ね合わせた後、熱プレス機(AF-65TEN、アサヒ繊維機械株式会社)を用いて200℃×60秒の条件にて熱処理し、転写紙からポリエステル布へ昇華転写染色を行った。昇華転写染色されたポリエステル布の色は、測色機Ci62(Xrite社製)を用いて測色し、C*値を測定した。測色は、D65光源、視野角2°にて実施した。そして、下記評価基準に従って彩度を評価した。C*値は、大きい方が彩度が高いことを示し、印刷物の色域を広げられるため、画像品質として優れる。A~Eは評価が良好であり、Fは評価が不良である。
-評価基準-
A:C*≧79.0(彩度が極めて高く、発色性が良好である。)
B:79.0>C*≧78.5(彩度がさらに高く、発色性が良好である。)
C:78.5>C*≧78.0(彩度が高く、発色性が良好である。)
D:78.0>C*≧77.8(彩度が僅かに高く、発色性が良好である。)
E:77.8>C*≧77.5(彩度が低めであり、発色性が僅かに劣る。)
F:77.5>C*(彩度が低く、発色性が劣る。)
【0137】
【0138】
表7に示すとおり、上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が全ピーク面積に対して2.6%未満である着色剤を含有する実施例8~14の各インクは、保存安定性に優れていた。また、上記式(1)で表される化合物以外の不純物のピーク面積が全ピーク面積に対して1.6%以下である着色剤を含有する実施例8~10の各インクを使用した場合には、得られる印刷物の彩度が特に優れていた。