(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073707
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】漏液補修用組成物及び漏液補修方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20240523BHJP
C09K 3/12 20060101ALI20240523BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240523BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240523BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240523BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240523BHJP
F16L 55/168 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
C09K3/10 E
C09K3/12
B05D7/14 S
B05D7/14 K
B05D7/24 302P
B05D3/06 Z
C08F290/06
F16L55/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184556
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】修多羅 洋一
(72)【発明者】
【氏名】初田 弘毅
【テーマコード(参考)】
3H025
4D075
4H017
4J127
【Fターム(参考)】
3H025EB13
4D075BB42Z
4D075CA12
4D075DA13
4D075DA27
4D075DA33
4D075DA37
4D075DB04
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4D075DB38
4D075EB08
4D075EB22
4D075EB38
4D075EB52
4H017AB01
4H017AC04
4H017AC17
4H017AD02
4H017AE02
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BA051
4J127BB051
4J127BB09
4J127BB221
4J127BD411
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB151
4J127CC021
4J127DA39
4J127DA43
4J127DA49
4J127DA51
4J127DA63
4J127EA12
4J127FA08
4J127FA15
(57)【要約】
【課題】漏液で濡れた漏液箇所であっても配管への配液を止めずに簡易に漏液補修することができる漏液補修用組成物及び漏液補修方法の提供。
【解決手段】重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有し、かつ相溶性を有する漏液補修用組成物、又は貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きい漏液補修用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有し、かつ相溶性を有することを特徴とする漏液補修用組成物。
【請求項2】
重量平均分子量が600未満である(メタ)アクリル化合物を更に含有し、
前記重量平均分子量が600未満である(メタ)アクリル化合物の含有量が、前記重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物と前記重量平均分子量が600未満である(メタ)アクリル化合物の合計100質量%に対して、40質量%以下である、請求項1に記載の漏液補修用組成物。
【請求項3】
貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きいことを特徴とする漏液補修用組成物。
【請求項4】
重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有する、請求項3に記載の漏液補修用組成物。
【請求項5】
前記重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物における重量平均分子量が、600以上15,000以下である、請求項1及び4のいずれかに記載の漏液補修用組成物。
【請求項6】
貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きい、請求項1から2のいずれかに記載の漏液補修用組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル化合物の官能基数が2以上である、請求項1及び4のいずれかに記載の漏液補修用組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル化合物がウレタン(メタ)アクリレートである、請求項1及び4のいずれかに記載の漏液補修用組成物。
【請求項9】
ゴム及び粘着付与剤の少なくともいずれかを含有する、請求項1から4のいずれかに記載の漏液補修用組成物。
【請求項10】
前記ゴムが、アクリル系ゴム及びウレタン系ゴムの少なくともいずれかである、請求項9に記載の漏液補修用組成物。
【請求項11】
前記粘着付与剤が、酸変性ロジン、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、及びケトン樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の漏液補修用組成物。
【請求項12】
光重合開始剤を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の漏液補修用組成物。
【請求項13】
漏液箇所に、請求項1から4のいずれかに記載の漏液補修用組成物を付与する付与工程と、
前記漏液補修用組成物に光を照射し、前記漏液補修用組成物を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とする漏液補修方法。
【請求項14】
前記漏液箇所の表面が漏液で濡れている、請求項13に記載の漏液補修方法。
【請求項15】
漏液が水である、請求項13に記載の漏液補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏液補修用組成物及び漏液補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水配管は様々なところで使われており、漏水補修のニーズも多い。特に工場内配管の継手から水漏れすることが多く、漏水補修作業のために工場稼働を一時停止すると多大な被害が生じるおそれがある。このことから、工場内配管への配水を止めることなく簡易に漏水補修できることが望まれている。
【0003】
このような漏水補修に用いられる漏液補修材として、例えば、無機フィラー、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、及びラジカル開始剤を含有し、硬化後の吸液率が、10%未満であり、糸引き性を有さず、粘度が、0.1Pa以上100,000Pa以下であるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術は、冷却媒体として水ではなく油(例えば、絶縁油)を主に対象としており、親水性の紫外線硬化型樹脂を使用しているため、漏液補修の際、配管に漏液補修材が混入し液の汚染につながる可能性がある。また、ゴム及び粘着付与剤を含有していないため、硬化前の漏液補修用組成物の貯蔵弾性率が低いので、高圧の液体が流れる配管等を補修する際には配管への配液を止めてから補修作業する必要があった。
【0006】
本発明は、従来にける前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、漏液で濡れた漏液箇所であっても配管への配液を止めずに簡易に漏液補修することができる漏液補修用組成物及び漏液補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有し、かつ相溶性を有することを特徴とする漏液補修用組成物である。
<2> 重量平均分子量が600未満である(メタ)アクリル化合物を更に含有し、
前記重量平均分子量が600未満である(メタ)アクリル化合物の含有量が、前記重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物と前記重量平均分子量が600未満である(メタ)アクリル化合物の合計100質量%に対して、40質量%以下である、前記<1>に記載の漏液補修用組成物である。
<3> 貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きいことを特徴とする漏液補修用組成物である。
<4> 重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有する、前記<3>に記載の漏液補修用組成物である。
<5> 前記重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物における重量平均分子量が、600以上15,000以下である、前記<1>及び<4>のいずれかに記載の漏液補修用組成物である。
<6> 貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きい、前記<1>から<2>のいずれかに記載の漏液補修用組成物である。
<7> 前記(メタ)アクリル化合物の官能基数が2以上である、前記<1>及び<4>のいずれかに記載の漏液補修用組成物である。
<8> 前記(メタ)アクリル化合物がウレタン(メタ)アクリレートである、前記<1>及び<4>のいずれかに記載の漏液補修用組成物である。
<9> ゴム及び粘着付与剤の少なくともいずれかを含有する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の漏液補修用組成物である。
<10> 前記ゴムが、アクリル系ゴム及びウレタン系ゴムの少なくともいずれかである、前記<9>に記載の漏液補修用組成物である。
<11> 前記粘着付与剤が、酸変性ロジン、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、及びケトン樹脂から選択される少なくとも1種である、前記<9>に記載の漏液補修用組成物である。
<12> 光重合開始剤を含有する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の漏液補修用組成物である。
<13> 漏液箇所に、前記<1>から<4>のいずれかに記載の漏液補修用組成物を付与する付与工程と、
前記漏液補修用組成物に光を照射し、前記漏液補修用組成物を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とする漏液補修方法である。
<14> 前記漏液箇所の表面が漏液で濡れている、前記<13>に記載の漏液補修方法である。
<15> 漏液が水である、前記<13>に記載の漏液補修方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、漏液で濡れた漏液箇所であっても配管への配液を止めずに簡易に漏液補修することができる漏液補修用組成物及び漏液補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、配管の継手の水漏れ評価装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、表面が平らで上側の治具と下側の治具を平行に合わせることができる万能引張試験機を用いて引張力を測定する状態を示す図である。
【
図3】
図3は、水中引張試験において引張力を測定する状態の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、未硬化の漏液補修用組成物が治具表面に接着して上下方向に引き伸ばされる状態(凝集破壊、Cohesion Failure(CF))を示す写真である。
【
図5】
図5は、未硬化の漏液補修用組成物が治具界面で剥離する状態(界面剥離、Adhesion Failure(AF))を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(漏液補修用組成物)
本発明の漏液補修用組成物は、相溶性を有し、かつ重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有し、ゴム及び粘着付与剤の少なくともいずれかを含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。なお、前記漏液補修用組成物は(メタ)アクリル化合物を複数種含有することができ、重量平均分子量(分子量)が600未満である(メタ)アクリル化合物を含有する場合には、前記重量平均分子量が600未満である(メタ)アクリル化合物の含有量が(メタ)アクリル化合物全体100質量%に対して40質量%以下であることが好ましく、0質量%(含有しない)であることが最も好ましい。
【0011】
硬化前の前記漏液補修用組成物が「相溶性を有する」とは、硬化前の前記漏液補修用組成物の各成分が層分離せず均一に溶解していることを意味し、調製直後の硬化前の漏液補修用組成物を目視観察及び全光線透過率を測定することにより、評価することができる。
硬化前の前記漏液補修用組成物が「相溶性を有する」ことの評価は、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、型式:ARE-400TWIN、自転及び公転それぞれ1,600rpm)により30分間撹拌した漏液補修用組成物が目視観察にて層分離しておらず、かつ0.5mm厚みにて全光線透過率が80%以上である場合を「相溶性」を有するとする。一方、目視観察にて層分離しているか、もしくは0.5mm厚みにて全光線透過率が80%未満である場合を「不溶」とする。前記「不溶」の場合は均一な漏液補修用組成物にならず、例えば、漏液補修用組成物中において弾性率が異なる箇所が生じたり、光照射において硬化しない箇所が生じることがあるため、漏液補修用組成物として適切なものではない。
前記全光線透過率は、例えば、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V-560)を用いて、漏液補修用組成物を2枚のガラスで0.5mm厚みのスペーサを介して挟み測定することができる。
【0012】
硬化前の前記漏液補修用組成物は流動性を有しており、硬化前の前記漏液補修用組成物の形状が任意に変更可能であり、少なくとも加温すると液体のように流動し、具体的にはパテ状又はグミ状である。硬化前の前記漏液補修用組成物は、粘着シート(基材と粘着層との層構造であり、貼り合わせた後、熱、光、湿気等によりポリマー化するもの)とは形態が明確に相違する。また、粘着シートは隙間が少ない壁配管に適用できず、配管の継手のように段差がある補修箇所には適用できないという欠点がある。
【0013】
本発明の漏液補修用組成物は、貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きいことを特徴とする。
貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きいと、配管表面への粘着性が良くなる。
前記貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、10,000Pa以上500,000Pa以下が好ましく、10,000Pa以上350,000Pa以下がより好ましく、30,000Pa以上300,000Pa以下が更に好ましく、30,000Pa以上200,000Pa以下が特に好ましい。前記貯蔵弾性率G’が10,000Pa未満であると、漏液の圧力により短時間で風船のように膨らみ破裂して液漏れが起こり、漏液補修が不可となる。一方、前記貯蔵弾性率G’が550,000Paを超えると、漏液補修用組成物を漏液箇所に付与することが困難となり、ハンドリング性が劣るという問題がある。
前記損失正接(tanδ)は1よりも大きく、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。前記損失正接(tanδ)は、貯蔵弾性率G’/損失弾性率G”から求められ、前記損失正接(tanδ)が1よりも大きいと、硬化前の漏液補修用組成物が塑性変形し易くなり、漏液箇所に対する粘着性が向上する。前記損失正接(tanδ)が1以下であると、硬化前の漏液補修用組成物が弾性変形しやすくなり、配管表面への粘着性が悪くなり配管と漏液補修用組成物の界面で液漏れが起こり、漏液補修が不可となる。
硬化前の漏液補修用組成物の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、及び損失正接(tanδ)は、例えば、レオメータ(装置名:RSA3、TAインスツルメンツ株式会社製)を用い、25℃、1Hzにて1%歪みの値を測定することにより求めることができる。
【0014】
従来のゴム、粘着付与剤、及び低分子量の疎水性(メタ)アクリルモノマーを含有する漏液補修用組成物は、漏液箇所の表面が漏液で濡れている場合に粘着性が低下するという課題がある。粘着性が小さいと漏液漏れを補修する際には漏液補修用組成物を強い力で補修箇所に押しつけなければ漏液を止めることができない。また、漏液に曝されている時間が長くなり粘着性が全くなくなると漏液補修用組成物が漏液箇所の表面で滑ってしまい、漏液補修用組成物を押さえ付けることさえできなかった。
このため、配管の継手を漏液補修するためには補修作業に時間がかかってしまい漏液に曝されている時間が長くなりがちである。また、配管の継手は表面が平らでないため押圧力が面に対して分散しがちになり、配管の継手での漏液補修が困難である。
また、配管の継手で漏液補修するためには漏液補修用組成物の硬化速度も重要である。硬化できないと漏液圧により未硬化の漏液補修用組成物が風船のように膨らんでしまうので風船が破裂するまでに硬化させなければならない。配管の継手は比較的大面積であるために硬化させるためのLED光源の光が十分に照射できていない状態になりうるので、漏液補修用組成物は速く硬化することが好ましい。
【0015】
したがって、本発明の漏液補修用組成物は、重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有し、ゴム、粘着付与剤、及び光重合開始剤を含有することが好ましく、貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きいことにより、漏液で濡れた漏液箇所の表面であっても配管への配液を止めずに簡易に漏液補修することができる。
【0016】
<(メタ)アクリル化合物>
(メタ)アクリル化合物は、(メタ)アクリル基を有する重合性化合物であり、(メタ)アクリル基とは、アクリル基及びメタクリル基を意味する。なお、前記(メタ)アクリル化合物を複数種含有する場合には、すべての(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量が600以上であることが好ましい。
前記(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量は600以上であり、600以上15,000以下が好ましく、1,000以上10,000以下がより好ましく、1,000以上5,000以下が更に好ましい。前記(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量が600未満であると、(メタ)アクリル化合物が漏液(水)に拡散してしまうので漏液補修用組成物中で可塑剤として機能している液体成分がなくなり固形化して、漏液補修用組成物の粘着性が低下してしまう。よって、重量平均分子量が600未満の(メタ)アクリル化合物を含まないことが好ましい。重量平均分子量が600未満の(メタ)アクリル化合物が増えるにしたがって水中粘着性の低下がおこりやすくなり、短時間で水中粘着性の低下が進行する。
前記(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量が15,000を超えると、ゴムや粘着付与剤との溶解性が悪化し、それぞれ相溶性を有するものが少なくなり、配合によって任意の物性に調整しにくくなるという弊害が生じるおそれがある。
前記(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0017】
前記重量平均分子量(分子量)が600未満の(メタ)アクリル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソボルニルアクリレート(分子量208)、2-エチルヘキシルアクリレート(分子量184)、n-ブチルアクリレート(分子量128)、ステアリルアクリレート(分子量324)、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)、ベンジルアクリレート(分子量160)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(分子量156)、アクリロイルモルフォリン(分子量141)、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の数(N)が4の場合:分子量308,エチレングリコール鎖の数(N)が9の場合:分子量508)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(分子量466)、トリシクロデカンメタノールジアクリレート(分子量304)、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニルフルオレン(分子量546)、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量352)、メチルメタクリレート(分子量100)、2-エチルヘキシルメタクリレート(分子量198)、ステアリルメタクリレート(分子量339)、イソボルニルメタクリレート(分子量222)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(分子量170)、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート(分子量332)、ビスフェノールAジメタクリレート(分子量364)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(分子量338)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記(メタ)アクリル化合物は、官能基数が2以上であることが好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましい。官能基数が2以上であると、漏液補修用組成物の速硬化性の点から好ましい。
前記(メタ)アクリル化合物としては、重量平均分子量が600以上を実現するために、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルポリマー、又はマクロモノマーなどが用いられる。
これらの中でも、金属密着性、疎水性、ゴム及び粘着付与剤への溶解性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。また、速硬化性の観点から多官能のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリルモノマーに比べて(メタ)アクリルオリゴマーは分子量が大きい分、移動が小さく光硬化においてアクリル基同士が出会いにくい。詳しくは、光ラジカル開始剤が光を吸収してラジカルを発生し、それがアクリル基同士に連鎖的に反応し重合する。水への拡散の観点からは分子量は大きい方が好ましいので、硬化反応性と水への拡散は相反する特性となる。そこで、(メタ)アクリル基数が大きい(メタ)アクリルオリゴマーを選択することにより、速硬化性を確保することができる。
【0019】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、KRM8667、KRM8452(いずれも、ダイセルオルネクス株式会社製)などが挙げられる。
【0020】
前記(メタ)アクリル化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、漏液補修用組成物の全量に対して、20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0021】
<ゴム>
ゴムとしては、粘着性を有し、かつ(メタ)アクリル化合物に溶解可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル系ゴム、ポリエーテル系ゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴム、アミド系ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル化合物に対する溶解性の観点から、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴムが好ましい。
前記アクリル系ゴムとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、クラリティ LA4285(アクリル系ブロック共重合体、株式会社クラレ製)などが挙げられる。
前記ウレタン系ゴムとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、E185(熱可塑性エステル型ポリウレタンエラストマー、日本ミラクトラン株式会社製)、E380(熱可塑性エーテル型ポリウレタンエラストマー、日本ミラクトラン株式会社製)などが挙げられる。
前記ゴムの含有量は、漏液補修用組成物の全量に対して、10質量%以上20質量%以下が好ましく、15質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0022】
<粘着付与剤>
粘着付与剤は、表面に粘着性を付与する機能と共に、(メタ)アクリル化合物とゴムの溶解性を取り持つ機能を有する。
前記粘着付与剤としては、ゴムに対する溶解性の点から、酸変性ロジン、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、及びケトン樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記酸変性ロジンとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記酸変性ロジンの市販品としては、例えば、パインクリスタル KR120(酸変性超淡色ロジン、荒川化学工業株式会社製)、KE-604:酸変性超淡色ロジン、荒川化学工業株式会社製などが挙げられる。また、前記ケトン樹脂の市販品としては、例えば、ケトン樹脂、荒川化学工業株式会社製などが挙げられる。
前記粘着付与剤の含有量は、漏液補修用組成物の全量に対して、20質量%以上40質量%以下が好ましく、25質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0023】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、ジアルコキシアセトフェノン類、ヒドロキシアルキルアセトフェノン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキシド類などが挙げられる。
前記光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ジフェニルアシルフェニルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記光重合開始剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、漏液補修用組成物の全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下が特に好ましい。
【0025】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、粘度調整剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。
【0026】
(漏液補修方法)
本発明の漏液補修方法は、漏液箇所に、本発明の漏液補修用組成物を付与する付与工程と、前記漏液補修用組成物に光を照射し、前記漏液補修用組成物を硬化させる硬化工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の漏液補修方法は、本発明の漏液補修用組成物を用いることにより、漏液で濡れた表面であっても配管への配液を止めずに簡易に漏液補修することができる。
本発明の漏液補修方法においては、前記漏液箇所における漏液の圧力が0.2MPa以上の比較的高い液圧であっても補修可能であり、0.3MPa以上、更に0.4MPaの高い液圧であっても補修することが可能である。
【0027】
前記漏液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、油などが挙げられる。
前記水としては、水道水、処理水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水などが挙げられる。なお、水には、水以外の成分が含まれていてもよく、水以外の成分としては、有機溶剤、塩素、各種添加剤などが挙げられる。
前記油としては、例えば、絶縁油(アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニル、アルカン)、合成潤滑油(ポリアルファオレフィン油、シリコーン油、フッ素油)、石油系油(原油、灯油、ガソリン、軽油)、鉱物油、動物油(ラード、動物油等)、植物油(大豆油、オリーブオイル等)などが挙げられる。
【0028】
<付与工程>
付与工程は、漏液箇所に本発明の漏液補修用組成物を付与する工程である。
漏液補修用組成物の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、刷毛塗り、ヘラ塗り、ローラー塗布、スプレー塗布などが挙げられる。
【0029】
漏液補修の対象物としては、材質、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記漏液補修の対象物の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼等の金属、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等の樹脂などが挙げられる。
前記漏液補修の対象物としては、例えば、工場内の冷却装置の配管及び配管の継手、各種洗浄装置の配管及び配管の継手、工作機械、計測機器、大型コンピュータ等の冷却・温度調節に用いられる冷却水循環装置の配管及び配管の継手、飲料水の配管などが挙げられる。
前記漏液補修の対象物の漏液箇所としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配管に生じた穴(例えば、ピンホール、線状の貫通穴)、配管の継手部分(例えば、ねじこみ部、フランジ部)などが挙げられる。
前記漏液補修の対象物の表面には、本発明の機能を損なわない限り、防食塗装等が施されていても構わない。
【0030】
<硬化工程>
硬化工程は、漏液補修用組成物に光を照射し、漏液補修用組成物を硬化させる工程であり、硬化手段により行われる。
前記硬化手段としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(UV-LD)、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。これらの中でも、LEDは、小型、高寿命、高効率、低コストであり、光源として好ましい。
【0031】
前記硬化工程において漏液補修用組成物に照射する光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長420nm以下の光が好ましい。
照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
本発明の漏液補修方法において漏液箇所に付与する漏液補修用組成物の付与量は多い方が好ましい。漏液補修用組成物の付与量が多い方が液漏れとして決壊するまでの時間がかせげる。そのため、漏液補修用組成物を付与して光硬化するにあたり、光照射の方向から深部(奥)まで硬化すること、即ち、深部硬化性が重要である。硬化が不十分であると硬化物の機械的強度が小さくなったり、漏液箇所の表面との接着力が小さくなる。
深部硬化性は光重合開始剤の種類の選択、含有量を最適化することによって得られる。
本発明においては、光源は405nmを中心波長とするLEDライトが好適に用いられる。したがって、405nm付近に吸収を有する光重合開始剤を添加する。しかし、光重合開始剤の含有量が多いと光が吸収されて深部まで光が届かない。その結果、光重合開始剤の405nmの吸光度と含有量により漏液補修用組成物の吸光度は決まり、それが直接に深部硬化性につながる。
【0033】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄工程、乾燥工程などが挙げられる。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(実施例1~13及び比較例1~8)
表1~表5に示す組成及び含有量に基づいて、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、型式:ARE-400TWIN、自転及び公転それぞれ1,600rpm)により30分間撹拌することにより、実施例1~13及び比較例1~7の漏液補修用組成物を調製した。なお、比較例8として市販の漏水補修用粘着シート(商品名:ゴリラテープ、The Gorilla Glue Company製)を用いた。
【0036】
次に、得られた各漏液補修用組成物について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1~表5に示した。
【0037】
<溶解性(相溶性)>
各漏液補修用組成物について、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、型式:ARE-400TWIN、自転及び公転それぞれ1,600rpm)により30分間撹拌した後に目視観察及び全光線透過率を測定することにより、溶解性を評価した。具体的な評価基準は、目視観察にて層分離しておらず、かつ0.5mm厚みにて全光線透過率が80%以上である場合を「相溶性」を有するとし、目視観察にて層分離しているか、もしくは0.5mm厚みにて全光線透過率が80%未満である場合を「不溶」であると評価した。
全光線透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V-560)を用いて、各漏液補修用組成物を2枚のガラスで0.5mm厚みのスペーサを介して挟み込み測定した。
【0038】
<配管の継手の水漏れ補修評価>
図1は、配管の継手の水漏れ補修評価装置10(自作品)の概略図を示す。この
図1の配管の継手の水漏れ補修評価装置10を用い、工場内の配管2のエアーをレギュレータ1(エアー圧調整)により水圧を0.2MPaもしくは0.4MPaに調整した。エアハイドロユニット3において、エアー圧により水を押し出すことにより同じ水圧の水を送り出す。流量計4により流量を50mL/minに調整した。配管(20A 3/4B、ねじ込み式)とソケットの継手5を緩めることにより水漏れを起こした。継手を閉めすぎると流量が小さくなるので、流量が50mL/minとなるよう継手の締め付けを調整した。
次に、漏洩状態での水を止めるために各漏液補修用組成物を配管の継手周りに盛り付け、光硬化させた。約1gずつ漏液補修用組成物を継手周りに盛り付け、剥離性が良好なシリコーンシートにより形を整える。次に、LEDライトによる光(中心波長405nm、500mW/cm
2)を30秒間照射することにより光硬化させた。この作業を継手配管の全周にわたって繰り返した。漏洩状態の水がとまる最終閉塞では各漏液補修用組成物に水圧がかかる。短時間で水風船のように膨らみ破裂して水漏れが起こるため、各漏液補修用組成物を盛り付け後は手早くLEDライトを照射して硬化させた。
[評価基準]
止水後(光硬化後)60秒の間に目視にて水の滴り落ちることがなければ止水可能であると判定した。
未硬化の漏液補修用組成物の貯蔵弾性率G’の値が小さいものであると、水の圧力により短時間で水風船のように膨らみ破裂して水漏れが起こる(止水不可)。また損失正接(tanδ)が1未満であると、未硬化の漏液補修用組成物の配管表面への粘着性が悪いので配管と漏液補修用組成物の界面で水漏れが起こる(止水不可)。具体的な評価基準は、水圧0.4MPaまでの漏水を止水できれば「〇」、水圧0.2MPaまでの漏水は止水できたが、0.2MPaを超える水圧での漏水が止水できなければ「△」、水圧0.2MPaの漏水も止水できなければ「×」とした。
【0039】
<弾性率>
硬化前の各漏液補修用組成物について、レオメータ(装置名:RSA3、TAインスツルメンツ株式会社製)を用い、25℃、1Hzにて1%歪みの値を測定し、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、及び損失正接(tanδ)を求めた。
【0040】
<水中引張試験の評価>
万能引張試験機(オートグラフAGS-50N、株式会社島津製作所製)を用いて機械的な動作を制御した。
図2に示すように、表面が平らで上側の治具と下側の治具を平行に合わせることができる万能引張試験機を用いた。上側の治具に漏液補修用組成物を円柱状(直径10mmφ、高さ10mm)に盛り付けてチャッキングした。一方、下側の治具はチャッキングした後、表面に水を充填した。前記万能引張試験機により30mm/secの速度により下降し、荷重制御で100Nになると下降を停止するようにした。このとき円柱状の未硬化の漏液補修用組成物は水面に対して押し付けられ、上側治具と下側治具の間に挟み込まれた。その後、
図3に示すように上側の治具を100mm/secの速度で引き上げた。その時、
図4に示すように未硬化の漏液補修用組成物が治具表面に接着して上下方向に引き伸ばされる状態(凝集破壊、Cohesion Failure(CF))と、
図5に示すように未硬化の漏液補修用組成物が治具界面で剥離する状態(界面剥離、Adhesion Failure(AF))とがある。
図4の凝集破壊の状態を、水中引張試験が良好であると判定した。
【0041】
【表1】
*モノマーAの比率(質量%)は、モノマーIBXA(*A)の含有量の(メタ)アクリル化合物全体の含有量に対する割合である。
【0042】
【表2】
*モノマーAの比率(質量%)は、モノマーIBXA(*A)の含有量の(メタ)アクリル化合物全体の含有量に対する割合である。
【0043】
【表3】
*モノマーAの比率(質量%)は、モノマーIBXA(*A)の含有量の(メタ)アクリル化合物全体の含有量に対する割合である。
【0044】
【表4】
*モノマーAの比率(質量%)は、IBXA(*A)の含有量の(メタ)アクリル化合物全体の含有量に対する割合である。
【0045】
【表5】
*モノマーAの比率(質量%)は、IBXA(*A)の含有量の(メタ)アクリル化合物全体の含有量に対する割合である。
【0046】
表1~表5中の各成分の詳細な内容については、以下のとおりである。
【0047】
-ゴム-
・クラリティ LA4285:アクリル系ブロック共重合体、株式会社クラレ製
・E185:熱可塑性エステル型ポリウレタンエラストマー、日本ミラクトラン株式会社製
・E380:熱可塑性エーテル型ポリウレタンエラストマー、日本ミラクトラン株式会社製
・TR2250:スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー、JSR株式会社製
【0048】
-(メタ)アクリル化合物-
・KRM8452:官能基数=10、重量平均分子量=1,200、ウレタンアクリレート、ダイセルオルネクス株式会社製
・KRM8667:官能基数=3、重量平均分子量=2,000、ウレタンアクリレート、ダイセルオルネクス株式会社製
・UC-102M:官能基数=2、重量平均分子量=17,000、メタクリロイル基を有するイソプレンゴム、株式会社クラレ製
上記(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したチャートの主成分の値である。
・IBXA:官能基数=1、分子量=208、イソボルニルアクリレート、共栄社化学株式会社製
【0049】
-光重合開始剤-
・Omnirad 1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、IGM Rsins B.V.社製
・Omnirad 819:ビス(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、IGM Rsins B.V.社製
【0050】
-粘着付与剤-
・パインクリスタル KR120:酸変性超淡色ロジン、荒川化学工業株式会社製
・K-90:ケトン樹脂、荒川化学工業株式会社製
・YS RESIN SX100:スチレン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製
・CLEARON K100:水添芳香族テルペン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製
【0051】
表1~表5の結果から、実施例1~9は液状の重量平均分子量が600以上の(メタ)アクリル化合物を含有し、かつ貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下、tanδが1よりも大きいことから、配管の継手の水漏れ補修評価において良好な結果を示し、簡便かつ信頼性が高く、配管への配液を止めずに漏液補修できることがわかった。
実施例1~5は、いずれも同じゴム、粘着付与剤、及び(メタ)アクリル化合物を用いており、これらの配合比率を変えることによって貯蔵弾性率G’及びtanδを任意に変更することが可能である。
実施例6~9は、重量平均分子量が600以上である(メタ)アクリル化合物を含有し、かつ相溶性を有すること、又は貯蔵弾性率G’が10,000Pa以上550,000Pa以下であり、かつ損失正接(tanδ)が1よりも大きいことの条件を満たしており、配管の継手の水漏れ補修評価において良好な結果を示した。
実施例10は、貯蔵弾性率G’が小さく継手の水漏れ補修評価における配管の止水時間が短いため、十分に硬化できないことから水圧0.2MPaの漏水は止水できたが、水圧0.4MPaの漏水を止めることができなかった。
実施例11は、貯蔵弾性率G’が大きすぎて硬いため人力では作業性ができず、水圧0.2MPaの漏水は止水できたが、水圧0.4MPaの漏水を止めることができなかった。
実施例12及び13は、(メタ)アクリル化合物が重量平均分子量1,200と分子量208の2成分からなり、分子量208のIBXAの含有量が(メタ)アクリル化合物全体100質量%に対して、18.9質量%及び25.4質量%である。そのため、水中引張試験において実施例12は良好であったが、実施例13は界面剥離となった。また、継手の水漏れ補修評価については、実施例12及び13はいずれも水圧0.2MPaの漏水は止水できたが、水圧0.4MPaの漏水を止めることができなかった。
【0052】
比較例1及び比較例2は、(メタ)アクリル化合物の分子量が208であり、重量平均分子量が600以上であることを満たしていないため、継手の水漏れ補修評価において漏液補修用組成物が流水に曝されている間に粘着性がなくなり漏液箇所の表面で滑り止水できなかった。比較例1及び比較例2の漏液補修用組成物は、濡れた漏液箇所に対して粘着性がなくなることは、水中引張試験の評価において界面剥離になることで確認できた。
比較例3、4、5においては、ゴム、粘着付与剤、及び(メタ)アクリル化合物の組合せによっては互いに相溶しなかった(不溶)。
比較例6は、主成分の(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量が15,000以上であり、相溶しなかった(不溶)。
比較例3、4、5、6においては、溶解性が不溶(相溶性なし)であるため、均一な漏液補修用組成物にならず、弾性率測定、及び継手の水漏れ評価ができなかった(表4及び表5中「-」:測定不能)。
比較例7は、(メタ)アクリル化合物が重量平均分子量1,200と分子量208の2成分からなり、分子量208のIBXAの含有量が(メタ)アクリル化合物全体100質量%に対して、43.3質量%である。そのため、水中引張試験において界面剥離であり継手配管水漏れ補修評価については水圧0.2MPaの漏水も止水できなかった。
比較例8の市販の粘着シートは、水中引張試験の評価が良好で濡れた表面であっても粘着性を示すが、シート形態であるため、配管継手のような段差がある補修箇所には適用できず、止水できなかった。
本発明の漏液補修用組成物及び漏液補修方法は、漏液で濡れた漏液箇所であっても配液を止めずに簡易に漏液補修することができるので、例えば、工場内の冷却装置の配管及び配管の継手、各種洗浄装置の配管及び配管の継手、工作機械、計測機器、大型コンピュータ等の冷却・温度調節に用いられる冷却水循環装置の配管及び配管の継手、飲料水の配管などに好適に用いられる。