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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073708
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】成形体、回路基板、および改質方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/12 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
C08J7/12 A CEW
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184558
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】村上 吉明
(72)【発明者】
【氏名】浅子 壮美
(72)【発明者】
【氏名】イリエシュ ラウレアン
【テーマコード(参考)】
4F073
【Fターム(参考)】
4F073AA01
4F073BA16
4F073BB01
4F073EA01
4F073EA54
4F073EA59
(57)【要約】
【課題】フッ素樹脂製の成形体において、金属などの他材に対する接着性と、フッ素樹脂が本来有する電気特性と、を両立する。
【解決手段】フッ素樹脂製の成形体であって、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面における元素組成について、炭素と酸素との合計が100原子%以下である限度で、炭素の含有量が60原子%以上75原子%以下であり、かつ、酸素の含有量が25原子%以上35原子%以下であり、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面からの深さが200nmの位置における酸素の含有量が、0原子%以上12原子%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂製の成形体であって、
炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面における元素組成について、炭素と酸素との含有量の合計が100原子%以下である限度で、炭素の含有量が60原子%以上75原子%以下であり、かつ、酸素の含有量が25原子%以上35原子%以下であり、
炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面からの深さが200nmの位置における酸素の含有量が、0原子%以上12原子%以下である成形体。
【請求項2】
炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面からの深さが200nmの位置におけるフッ素の含有量が、40原子%以上67原子%以下である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン単位を95モル%以上含む請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
フッ素樹脂製の成形体を含む回路基板であって、
炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、前記成形体の表面における元素組成が、炭素と酸素との含有量の合計が100原子%以下である限度で、炭素の含有量が60原子%以上75原子%以下であり、かつ、酸素の含有量が25原子%以上35原子%以下であり、
炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、前記成形体の表面からの深さが200nmの位置における酸素の含有量が、0原子%以上12原子%以下である回路基板。
【請求項5】
フッ素樹脂製の成形体の表面を改質する改質方法であって、
前記成形体の表面に電子供与体を接触させる第一工程と、
前記第一工程後の前記成形体の表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させる第二工程と、を含み、
前記電子供与体が、金属ナトリウムが溶媒中に分散している分散体と、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンおよびクラウンエーテルからなる群から選択される少なくとも一つの化合物と、を含む改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂製の成形体、フッ素樹脂製の成形体を含む回路基板、およびフッ素樹脂製の成形体の表面を改質する改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の分野において、回路基板が汎用されている。特に、通信機器に使用される回路基板では、高速かつ低損失の通信を実現するべく、誘電率および誘電正接が小さい絶縁体を使用することが望まれる。
【0003】
誘電率および誘電正接が小さい代表的な材料として、フッ素樹脂が挙げられる。しかしフッ素樹脂は、金属を含む他の材料に対する接着性が乏しいため、フッ素樹脂を絶縁体として用いる回路基板を製造するためには、フッ素樹脂の表面に接着性を付与するなどの処理を加える必要がある。たとえば特開2006-128443号公報(特許文献1)には、フッ素樹脂成形体の表面を金属ナトリウム-ナフタレン錯体溶液で処理して接着性を付与する方法が開示されている。
【0004】
また、たとえば特開2008-12683号公報(特許文献2)に開示されている、ガラスクロスにフッ素樹脂を含浸させて製造される基板材料に代表されるように、フッ素樹脂と無機材料とを組み合わせた基板材料も、当分野において汎用されている。この場合は、無機材料の部分が金属に対する接着性を担う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-128443号公報
【特許文献2】特開2008-12683号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Peng Lei et. al., Org. Lett. 2018, 20, 12, 3439-3442
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、金属ナトリウム-ナフタレン錯体溶液を用いる表面改質技術では、接着性に寄与する表面部分のみならず、当該表面からある程度の深さの部分まで改質されてしまうので、フッ素樹脂が本来有する電気特性が失われる場合があった。また、ガラスクロスにフッ素樹脂を含浸させて製造される基板材料は、フッ素樹脂に比べて電気特性が劣るガラス材料を含むため、電気特性の向上が難しかった。
【0008】
そこで、フッ素樹脂製の成形体において、金属などの他材に対する接着性と、フッ素樹脂が本来有する電気特性と、を両立することが求められる。また、当該成形体を含む回路基板の実現も求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る成形体は、フッ素樹脂製の成形体であって、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面における元素組成について、炭素と酸素との含有量の合計が100原子%以下である限度で、炭素の含有量が60原子%以上75原子%以下であり、かつ、酸素の含有量が25原子%以上35原子%以下であり、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面からの深さが200nmの位置における酸素の含有量が、0原子%以上12原子%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る回路基板は、フッ素樹脂製の成形体を含む回路基板であって、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、前記成形体の表面における元素組成が、炭素と酸素との含有量の合計が100原子%以下である限度で、炭素の含有量が60原子%以上75原子%以下であり、かつ、酸素の含有量が25原子%以上35原子%以下であり、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、前記成形体の表面からの深さが200nmの位置における酸素の含有量が、0原子%以上12原子%以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る改質方法は、フッ素樹脂製の成形体の表面を改質する改質方法であって、前記成形体の表面に電子供与体を接触させる第一工程と、前記第一工程後の前記成形体の表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させる第二工程と、を含み、前記電子供与体が、金属ナトリウムが溶媒中に分散している分散体と、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンおよびクラウンエーテルからなる群から選択される少なくとも一つの化合物と、を含むことを特徴とする。
【0012】
これらの構成によれば、接着性に寄与する最表面部分のみが改質された成形体、およびこれを含む回路基板が提供される。これによって、金属などの他材に対する接着性と、フッ素樹脂が本来有する電気特性と、が両立されうる。
【0013】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0014】
本発明に係る成形体は、一態様として、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面からの深さが200nmの位置におけるフッ素の含有量が、40原子%以上67原子%以下であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、フッ素樹脂が本来有する電気特性がさらに維持されており、一層良好な電気特性を発現しうる。
【0016】
本発明に係る成形体は、一態様として、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン単位を95モル%以上含むことが好ましい。
【0017】
この構成では、フッ素樹脂の中でも特に電気特性が良好なフッ素樹脂を主として成形体が形成されるので、一層良好な電気特性を発現しうる。
【0018】
本発明のさらなる特徴と利点は、以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る成形体、回路基板、および改質方法の実施形態について説明する。以下では、フッ素樹脂製のシートを改質して、表面が改質されたシートを得た例、および、改質後のシートを基材とする回路基板を製造した例、について説明する。なお、シートは成形体の例である。
【0020】
〔改質方法〕
まず、フッ素樹脂製のシートを改質して、表面が改質されたシートを得る改質方法について説明する。なお以下では、区別のため、改質処理に供される前のシートを「未改質シート」と称し、表面が改質されたシートを「改質シート」と称する。また、シートとは、面方向の広がりに比して相当に小さい厚さを有する成形体を指す。シートの厚さは特に限定されないが、たとえば10μm以上2000μm以下でありうる。
【0021】
(未改質シートの構成)
未改質シートは、従来のフッ素樹脂製のシートである。フッ素樹脂は、含フッ素モノマーを重合単位として含む樹脂材料である。本実施形態におけるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはこれらの混合物でありうるが、これらに限定されない。ただし、上記に列挙したフッ素樹脂のうち、特に良好な高周波特性を示すパーフルオロフッ素樹脂(PTFE、FEP、およびPFA)を用いることが好ましい。
【0022】
ただし、フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン単位を95モル%以上含むことが好ましく、97モル%以上含むことがより好ましい。この条件に合致するフッ素樹脂は、典型的にはPTFEおよびPFAであり、PTFEであることがさらに好ましい。なお、PTFEは、重合単位としてテトラフルオロエチレンのみを含むいわゆるホモPTFEであってもよいし、テトラフルオロエチレン以外の重合単位を含むいわゆる変性PTFEであってもよい。なお、フッ素樹脂におけるテトラフルオロエチレン単位の含有量は、核磁気共鳴(溶融19F NMRまたは固体19F NMR)や赤外分光法(IR)などによって定量されうる。
【0023】
また、フッ素樹脂は、融点が300℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがより好ましい。フッ素樹脂の融点は、たとえば示差走査熱量測定(DSC測定)によって決定できる。DSC測定の測定条件は、各フッ素樹脂の工業規格(ASTM D4894、ASTM D2116、ASTM D3307など)に従う。
【0024】
未改質シートは、切削加工、圧縮成形、押出成形などの公知の方法で製造されうる。たとえばPTFE製のシートは、PTFE材料をブロック状に圧縮成形した後に焼成して得られるビレットを切削加工して得られうる。また、たとえば、PFA製のシートは、Tダイを使用する押出成形によって得られうる。
【0025】
(改質方法の手順)
本実施形態に係る改質方法は、未改質シートの表面に電子供与体を接触させる第一工程と、第一工程後のシートの表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させる第二工程と、を含む。第一工程および第二工程を通じて、未改質シートの表面に存在するフッ素原子が、酸素を含有する官能基に置換される。
【0026】
(1)第一工程
第一工程は、未改質シートの表面に、電子供与体を接触させる工程である。ここで、電子供与体は、金属ナトリウムが溶媒中に分散している分散体(以下、「SD」と称する。
なお、SDはSodium Dispersionの略語である。)と、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンおよびクラウンエーテルからなる群から選択される少なくとも一つの化合物と、を含む混合物である。
【0027】
SDは、ナトリウムが分散溶媒中に微粒子(すなわち固体)として分散しているもの、または、ナトリウムが分散溶媒中に微小な液滴(すなわち液体)として分散しているもの、である。ここで、ナトリウムは、純粋な金属ナトリウムであってもよいし、金属ナトリウムを含む合金であってもよい。
【0028】
SD中のナトリウム(微粒子または液滴)の平均粒子径は、好ましくは100μm未満であり、より好ましくは50μm未満であり、さらに好ましくは30μm未満であり、一層好ましくは10μm未満であり、特に好ましくは5μm未満である。なお、平均粒子径は、顕微鏡写真の画像解析によって得られた投影面積と同等の投影面積を有する球の径で表される。
【0029】
SDにおける金属ナトリウムの含有量は、好ましくは10~45質量%であり、より好ましくは15~25質量%である。なお、金属ナトリウムの含有量は、SDの製造に供する金属ナトリウムと分散溶媒との質量比から算出されてもよいし、得られたSDを過剰量の水に添加して水酸化ナトリウム水溶液とした上で、中和滴定により特定される当該水酸化ナトリウム水溶液の濃度に基づいてSD中の金属ナトリウムの量を特定する方法によって特定されてもよい。
【0030】
分散溶媒としては、ナトリウム(微粒子または液滴)が分散することができ、かつ、本実施形態に係る第一工程および第二工程において進行する反応を阻害しない限りにおいて、公知の溶媒を使用することができる。かかる要件を満たす分散溶媒としては、パラフィン系溶媒(ノルマルパラフィン系溶媒、シクロパラフィン系溶媒)、芳香族系溶媒、複素環化合物溶媒など、当分野で公知の溶媒を用いることができる。ノルマルパラフィン系溶媒としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、およびノルマルデカンが例示されるが、これらに限定されない。シクロパラフィン系溶媒としては、シクロペンタンが例示されるが、これに限定されない。エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、および2-メチルテトラヒドロピレンが例示されるが、これらに限定されない。芳香族系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、およびキシレンが例示されるが、これらに限定されない。アミン系溶媒としては、エチレンジアミンが例示されるが、これに限定されない。複素環化合物溶媒としては、テトラヒドロチオフェンが例示されるが、これに限定されない。なお、これらの溶媒を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合した混合溶媒として用いてもよい。
【0031】
SDを生じさせる具体的な方法としては、公知の方法を採用しうる。たとえば特開2007-197787号公報には、融点以上に加熱した金属ナトリウム(液体)とパラフィン系溶媒とを、一次分散装置および二次分散装置で順次混合する方法が開示されている。
【0032】
一次分散装置としては、たとえばパドル翼やディスクタービン翼などを備えた攪拌装置を用いることができ、当該攪拌装置には合成熱媒油を流通させることができるジャケットが設けられている。当該ジャケットに105~140℃の合成熱媒油を流通させた状態で攪拌装置を運転して、パラフィン系溶媒に金属ナトリウムを分散させた一次分散体を得る。一次分散体におけるナトリウムの平均粒子径は、たとえば20μm以下である。
【0033】
二次分散装置としては、たとえばロータおよびステータを有する装置を用いることができる。ロータおよびステータの双方には刃が設けられており、ロータの回転に伴ってロータの刃とステータの刃との間に生じるせん断力が、被処理体に加えられる。二次分散装置に一次分散体を供給して二次分散装置を運転すると、金属ナトリウムの分散粒子径が一次分散体に比べて小さい二次分散体が得られる。当該二次分散体を、SDとして用いる。
【0034】
また、本実施形態に係る電子供与体は、SDの他に、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンおよびクラウンエーテルからなる群から選択される少なくとも一つの化合物(以下、「所定の化合物」と称する。)を含む。
【0035】
1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンは、以下の式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0036】
式(1)において、RおよびRは、同一または互いに異なるアルキル基である。より具体的には、RおよびRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、などでありうる。たとえば、RおよびRがいずれもメチル基である場合は、式(1)の化合物は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)であり、RおよびRがいずれもエチル基である場合は、式(1)の化合物は1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン(DEI)である。
【0037】
式(1)において、RおよびRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびn-ブチル基からなる群から選択されることが好ましい。また、式(1)において、RおよびRの少なくとも一つがメチル基またはエチル基であることがより好ましく、式(1)において、RおよびRの双方がメチル基またはエチル基であることがさらに好ましい。
【0038】
第一工程に供される1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンは、市販されているものであってもよいし、当分野において公知の方法によって製造されたものであってもよい。かかる方法としては、対応するアルキル基を有するN,N’-ジアルキルエチレンジアミンとホスゲンとの反応(式(2))や、エチレン尿素とヨウ化アルキルとの反応(式(3))などによって得られうる。ただし後者では窒素原子上の二つのアルキル基Rが同一のものが得られる。
【化2】
【化3】
【0039】
また、第一工程に供されるクラウンエーテルは、市販されているものであってもよいし、当分野において公知の方法によって製造されたものであってもよい。また、クラウンエーテルは、より具体的には18-クラウン-6、15-クラウン-5、12-クラウン-4などでありうるが、これらに限定されない。
【0040】
本実施形態に係る電子供与体において、SDと所定の化合物との比率は特に限定されないが、たとえばナトリウムと所定の化合物とのモル比が1:1~1:60であってよい。
【0041】
本実施形態に係る電子供与体は、SDと所定の化合物との他に、希釈溶媒を含みうる。
当該希釈溶媒は、SDの分散溶媒と同一の溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。
【0042】
本実施形態に係る電子供与体は、エーテル系溶媒を含むことが好ましい。電子供与体がエーテル系溶媒を含む場合、電子供与体としての活性種がエーテル系溶媒に均一に分散しやすいためである。エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、および2-メチルテトラヒドロピレンが例示され、これらに限定されないが、テトラヒドロフランが特に好適である。エーテル系溶媒を含む電子供与体を提供する方法は、典型的には二通りの例が示される。第一の例は、エーテル系溶媒を分散溶媒とするSDを原料として用いる方法である。第二の例は、SDおよび1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンに加えて希釈溶媒としてのエーテル系溶媒を加える方法である。これらの方法によれば、電子供与体の全体が単一相の液体として得られうるので好ましい。また、エーテル系溶媒および1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンは、十分に脱水されていることが好ましい。具体的には、エーテル系溶媒および1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンは、含水率として好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0043】
また、本実施形態に係る電子供与体は、界面活性剤、酸化防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
本実施形態に係る電子供与体は、SDと所定の化合物とを反応容器中で混合して攪拌することにより得られる。このとき、希釈溶媒などの他の構成成分を反応容器中に加えてもよい。攪拌する方法としては公知の方法を用いることができ、たとえば、マグネティックスターラーを用いる方法や、攪拌翼を有する攪拌装置を用いる方法などが例示される。
【0045】
SDと所定の化合物(たとえばDMI)とを混合して攪拌すると、やがて反応容器内の溶液が青色を呈する。溶液が青色を呈する理由は定かではないが、仮説として、金属ナトリウムNaがカチオンNaとアニオンNaとに分離した化学種が生じていると考えられる。この化学種のうちのアニオンNaは、電子供与体として作用する活性種である。
これらの化学種は不安定であるが、本系では所定の化合物によってカチオンNaが安定化されており、アニオンNaとの再結合が防止されるため、活性種であるアニオンNaが室温で安定に存在できるのだと考えられる。なお、アルカリ金属がカチオンとアニオンとに分離した化学種が生じたときに溶液が青色を呈することは、Peng Lei et. al., Org. Lett. 2018, 20, 12, 3439-3442(非特許文献1)に報告例がある。
【0046】
上記の仮説から、反応容器内の溶液が青色を呈していることは、電子供与体が生じていることを示していると考えられる。したがって、第一工程で使用する電子供与体は、SDと所定の化合物とを反応容器中で混合し、溶液が青色を呈するまで攪拌することによって得られうる。
【0047】
すなわち、所定の化合物は、カチオンNaに対する配位能を有するルイス塩基であればよい。本発明者らは、当該ルイス塩基が、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンおよびクラウンエーテルからなる群から選択される少なくとも一つの化合物(所定の化合物)である場合について、本発明の作用効果が現に発現することを確認し、本発明を完成するに至った。しかし、他のルイス塩基を用いた場合についても、所定の化合物を用いた場合と同種の作用効果を奏することが予想される。
【0048】
上記のように調製した電子供与体を未改質シートの表面に接触させる方法は、公知の方法を採用できる。たとえば、未改質シートの表面に電子供与体の溶液を塗布する、未改質シートの表面に電子供与体の溶液を噴霧する、未改質シートを電子供与体の溶液に浸漬する、などの操作を行えばよい。
【0049】
未改質シートの表面に電子供与体を接触させると、フッ素樹脂の主鎖に含まれるフッ素原子(たとえばテトラフルオロエチレン単位に由来する。)が主鎖から引き抜かれてラジカルまたはアニオンが生じる。所定の化合物がDMIである場合の例を式(4)に示す。このラジカルまたはアニオンが、続く第二工程における反応点として機能する。
【化4】
【0050】
未改質シートの表面に電子供与体を接触させる時間(第一反応時間)は特に限定されないが、たとえば10秒以上20分以下でありうる。第一反応時間が10秒以上であると、式(4)の反応が十分に進行しやすい。また、第一反応時間が20分以下であると、ナトリウムによる不要な反応を避けやすい点で好ましい。第一反応時間は、30秒以上であることがより好ましく、60秒以上であることがさらに好ましい。また、第一反応時間は、10分以下であることがより好ましい。
【0051】
未改質シートの表面に電子供与体を接触させる際の温度(第一反応温度)は特に限定されないが、たとえば-20℃以上40℃以下でありうる。第一反応温度が0℃以上であると、冷却の効率の点で好ましい。また、第一反応温度が40℃以下であると、反応性の点で好ましい。第一反応温度は、0℃以上であることがより好ましく、15℃以上であることがさらに好ましい。また、第一反応温度は、35℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることがさらに好ましい。
【0052】
(2)第二工程
第二工程は、第一工程後のシートの表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させる工程である。
【0053】
第二工程に供されるホルムアルデヒド誘導体としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、およびトリオキサンが例示されるが、これらに限定されない。また、ホルムアルデヒド誘導体は、単一のホルムアルデヒド誘導体であってもよいし、複数種類のホルムアルデヒド誘導体の混合物であってもよい。第二工程に供されるホルムアルデヒド誘導体は、パラホルムアルデヒドを含むことが好ましく、パラホルムアルデヒド単体であることがより好ましい。
【0054】
第二工程においてシート表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させる方法は、公知の方法を採用できる。たとえば、第一工程後のシートをホルムアルデヒド誘導体に浸漬すればよい。
【0055】
第一工程後のシートの表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させると、式(4)の反応により生じたラジカルまたはアニオンが求核剤として働く求核付加反応が生じる。なお、この反応において、いずれのホルムアルデヒド誘導体を用いた場合もホルムアルデヒドを用いた場合と同様の結果を生ずるため、以下ではホルムアルデヒドを用いた場合を例として説明する。
【0056】
上記の求核剤がホルムアルデヒドに求核付加すると、アルコキシドアニオンが生じる。このアルコキシドアニオンは速やかにプロトン化されて、最終的に高分子主鎖にヒドロキシメチル基が付加した化合物が生じる。このように、第一工程後のフッ素樹脂とホルムアルデヒド誘導体とが反応して、ヒドロキシメチル基がフッ素樹脂に導入される(式(5))。
【化5】
【0057】
第一工程後のシートの表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させる時間(第二反応時間)は特に限定されないが、たとえば10秒以上30分以下でありうる。第二反応時間が10秒以上であると、式(5)の反応が十分に進行しやすい。また、第二反応時間が30分以下であると、生産性の点で好ましい。第二反応時間は、30秒以上であることがより好ましく、1分以上であることがさらに好ましい。また、第二反応時間は、20分以下であることがより好ましく、10分以下であることがさらに好ましい。なお、第二工程の反応時間を、第一工程の反応時間よりも長くすると、反応を確実に進める点で好ましい。
【0058】
第一工程後のシートの表面にホルムアルデヒド誘導体を接触させる際の温度(第二反応温度)は特に限定されないが、たとえば-20℃以上30℃以下でありうる。第二反応温度が-25℃以上であると、冷却の効率の点で好ましい。また、第二反応温度が30℃以下であると、生産性の点で好ましい。第二反応温度は、0℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましい。また、第二反応温度は、25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらに好ましい。
【0059】
第一工程および第二工程を経た改質シートの表面は、少なくとも部分的に式(6)の構造を含む。
【化6】
【0060】
式(5)の反応によって生じたヒドロキシメチル基は、金属などの相手材に対して、配位結合、水素結合、またはその双方を形成できるため、これらの相手材に対して高い接着性を発現する素となる。したがって、改質シートの表面が式(6)の構造を含むことで、当該表面が接着性を有する。このように、改質前の状態では接着性を有さないフッ素樹脂に対して、第一工程および第二工程を経て接着性を付与できるのである。
【0061】
〔改質シートの構成〕
次に、上記の改質方法によって得られる改質シート(本発明に係る成形体の一実施形態である。)の構成について説明する。本実施形態に係る改質シートは、フッ素樹脂製のシートであり、その表面を構成するフッ素樹脂にはホルムアルデヒド誘導体に由来する官能基が導入されている。改質シートの厚さは、出発原料として使用する未改質シートの厚さと同一であり、たとえば10μm以上2000μm以下でありうる。
【0062】
本実施形態に係る改質シートは、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面における元素組成について、炭素と酸素との含有量の合計が100原子%以下である限度で、炭素の含有量が60原子%以上75原子%以下であり、かつ、酸素の含有量が25原子%以上35原子%以下である。なお、炭素および酸素以外の残部としては、未改質のフッ素樹脂に由来するフッ素や、SDに由来するナトリウムなどが存在しうる。改質シート表面の酸素の含有量は未改質のフッ素樹脂における通常の酸素の含有量より多い。これは、式(4)および式(5)の反応によって、フッ素原子がヒドロキシメチル基に置換されることに起因する。なお、ここでは炭素および酸素の含有量にのみ言及しているが、これらの含有量は上述の通り炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定されるものであり、炭素および酸素のみを対象とする測定により特定されるものではない。また、以下に述べる各元素の含有量についても、特筆しない限り、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定されるものである。
【0063】
X線光電子分光法による改質シート表面の元素組成の測定は、たとえば、アルバックス・ファイ社製走査型X線光電子分光分析装置PHI5000 VersaProbeIIに、アルゴンガスクラスターイオン銃(Ar、10keV、クラスターサイズ2500原子、ラスター範囲3mm×3mm)を搭載して、AlKα線1486.6eVをX線源として実施されうる。また、測定条件は、一例として、取込立体角が±20°であり、取り出し角が90°である。なお、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とすることは、これらの元素に帰属されるピークが現れる結合エネルギー領域を測定対象とするナロースキャン分析により実現できる。
【0064】
改質シートの表面における酸素の含有量が25原子%以上であることは、改質シート表面において改質が十分になされていることを意味し、このとき、金属などの相手材に対して接着しやすい改質シートが得られる。また、改質シートの表面における酸素の含有量が35原子%以下であることは、改質が適切に行われていることを意味し、このとき未改質のフッ素樹脂が有する電気特性や耐熱性などの性能が発現しやすい改質シートが得られる。改質シートの表面における酸素の含有量は、27原子%以上であることが好ましく、原子30%以上であることがより好ましい。また、改質シートの表面における酸素の含有量は、33原子%以下であることが好ましい。
【0065】
改質シートの表面におけるフッ素の含有量が5原子%以下である場合は、改質シート表面において改質が十分になされているといえる。この場合は、金属などの相手材に対して接着しやすい改質シートが得られるため、好ましい。なお、改質シートの表面におけるフッ素の含有量は特に限定されず、0原子%以上(検出限界以上)であってよい。改質シートの表面におけるフッ素の含有量は、5原子%以下であることがより好ましく、3原子%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
改質シートの表面に検出されるナトリウムは、改質処理において用いるSDに起因する。ナトリウムの含有量の上限は、たとえば10原子%でありうる。なお、ナトリウムが残存していなくても(検出限界以下であっても)よい。
【0067】
本実施形態に係る改質シートは、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、表面からの深さが200nmの位置(以下、「所定の深さ」と称する。)における酸素の含有量が、0原子%以上12原子%以下である。所定の深さにおける酸素の含有量が12原子%以下であることは、過剰な改質がなされていないことを間接的に意味し、未改質のフッ素樹脂が有する電気特性や耐熱性などの性能が発現しやすいシートが得られる。所定の深さにおける酸素の含有量は、12原子%以下であることが好ましく、10原子%以下であることがより好ましい。また、所定の深さにおける酸素の含有量は、2原子%以上であることが好ましく、5原子%以上であることがより好ましい。
【0068】
改質シートの表面から所定の深さの位置における元素組成は、X線光電子分光法による元素組成の測定を実施する際の出力とスパッタタイムとの組合せを調整して実施されうる。たとえば、表面からの深さが200nmの位置における元素組成は、改質シートの表面における元素組成を特定するための上記の測定条件のうち、スパッタタイムを6分間に変更する他は同一とする測定条件により、測定できる。なお、スパッタタイムを6分間にすることで表面からの深さが200nmの位置における元素組成を測定できる、とする根拠は、ポリスチレンの理論スパッタレートが毎分33.75nmであり、これに6分間を乗じて有効数字を一桁とすると200nm(2×10nm)になることにある。
【0069】
本実施形態に係る改質シートは、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、所定の深さにおけるフッ素の含有量が、40原子%以上67原子%以下であることが好ましい。所定の深さにおけるフッ素の含有量が40原子%以上であることは、過剰な改質がなされていないことを直接的に意味し、未改質のフッ素樹脂が有する電気特性や耐熱性などの性能が一層発現しやすい改質シートが得られる。所定の深さにおけるフッ素の含有量は、60原子%以下であることがより好ましく、55原子%以下であることがさらに好ましい。また、所定の深さにおけるフッ素の含有量は、45原子%以上であることがより好ましく、48原子%以上であることがさらに好ましい。
【0070】
本実施形態に係る改質シートは、炭素、酸素、およびフッ素を検出対象とするX線光電子分光法により特定される、所定の深さにおける炭素の含有量が、30原子%以上60原子%以下であることが好ましい。
【0071】
〔回路基板の構成〕
続いて、本実施形態に係る回路基板の構成について説明する。本実施形態に係る回路基板では、上記の改質シートの表面に銅配線を形成してある。
【0072】
本実施形態に係る回路基板は、上記の改質シートを材料として用いるほかは、当分野において公知の方法によって製造されうる。すなわち、改質シートの表面に銅メッキを施したものを素材として、回路基板の製造に係る常法を適用すればよい。
【0073】
上述のように、改質シートの表面にはホルムアルデヒド誘導体に由来する官能基が導入されており、当該官能基が有するヒドロキシメチル基が銅原子と作用することによって、銅に対する良好な接着性を発現する。フッ素樹脂が金属を含む他材に対して接着しにくい材料であることから、フッ素樹脂に対して銅メッキを施すことは従来困難だったが、上記の改質方法を適用して得られた改質シートであれば、実用上十分な強度で銅メッキを施すことができる。
【0074】
そして、上記の改質方法を適用して得られた改質シートでは、接着性に寄与する表面部分のみが最小限に改質されているので、フッ素樹脂が本来有する良好な高周波特性(低誘電率および低誘電正接)が高い水準で維持されている。したがって、当該改質シートを材料として用いて製造された回路基板を高周波デバイスに用いると、高速かつ低損失の通信を実現できる。
【0075】
〔その他の実施形態〕
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0076】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0077】
〔試験1:表面および所定の深さにおける元素組成〕
以下に示す諸条件で作成した改質シートについて、表面および所定の深さ(表面からの深さが200nmの位置)における元素組成を測定した。
【0078】
(試料)
未処理のシートとして、PTFE製、幅210mm、長さ297mm、厚さ1mmのシートを用いた。SDとして、ナトリウムの平均粒子径が10μm以下であり、金属ナトリウムの含有量が25~26質量%であるナトリウム分散体を用いた。ホルムアルデヒド誘導体として、パラホルムアルデヒドをTHF溶媒中に添加したものを用いた。
【0079】
(実施例)
上記の実施形態に示す手順に従い、SDおよびDMIを含む電子供与体(Na:DMI=1:6)を用いて、改質シートを作成した。第一工程および第二工程の双方を室温で実施し、第一反応時間を1分とし、第二反応時間を10分とした。得られた改質シートでは、表面における元素組成を炭素、フッ素、酸素、窒素、およびナトリウムを検出対象として測定した際の測定値が、炭素67.7原子%、フッ素0.8原子%、酸素22.4原子%、窒素5.0原子%、およびナトリウム4.0原子%、だった。一方、表面からの深さが200nmの位置における元素組成の測定値は、炭素41.2原子%、フッ素49.3原子%、酸素5.0原子%、窒素0.7原子%、およびナトリウム3.7原子%であった。これを、炭素、フッ素、および酸素の三元素に限定して計算すると、表面における元素組成は、炭素72.7原子%、フッ素1.1原子%、および酸素26.2原子%となり、表面からの深さが200nmの位置における元素組成は、炭素42.2原子%、フッ素52.8原子%、および酸素5.0原子%となる。なお、特記していない調製条件、および元素組成の測定条件は、上記の実施形態の通りとした。
【0080】
(比較例)
比較例として、市販品の改質シートを使用した。比較例の改質シートは、未改質シートの表面をナトリウムおよびナフタレンを含む溶液に接触させたのちに、当該表面を水で洗浄して得られたものである。比較例の改質シートでは、表面における元素組成を炭素、フッ素、および酸素の三元素に限定して計算すると、炭素72.0原子%、フッ素5.1原子%、および酸素22.9原子%だった。また、表面からの深さが200nmの位置における元素組成は、炭素64.5原子%、フッ素19.0原子%、および酸素16.5原子%だった。
【0081】
〔試験2:密着強度の測定〕
実施例および比較例の各例の改質シートに対して同じ条件で銅めっきを施した後に、試料の幅を5mmとした他はJIS C 6481に従って改質シートと銅との接着強度を測定した。実施例の改質シートの密着強度は0.64N/mmであり、比較例の改質シートの密着強度は0.15N/mmだった。実施例の改質方法によれば、フッ素樹脂に対して、銅に対する接着性を良好に付与できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、たとえば高周波デバイス用の回路基板に利用できる。