(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073717
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】撮像装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20240523BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240523BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
G02B3/14
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184568
(22)【出願日】2022-11-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】517372494
【氏名又は名称】維沃移動通信有限公司
【氏名又は名称原語表記】VIVO MOBILE COMMUNICATION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1, vivo Road, Chang’an, Dongguan,Guangdong 523863, China
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】野田 英希
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087MA06
2H087MA07
2H087PA06
2H087PA17
2H087PB06
2H087QA01
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA31
2H087QA37
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA42
2H087RA44
2H087UA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】撮像装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】撮像装置は、正のパワーを持つ第1のレンズ群、負のパワーを持つ第2のレンズ群及び結像用の撮像素子を光軸方向に物体側から像側へ含み、第1のレンズ群と第2のレンズ群の間、又は、第1のレンズ群の最も物体側に位置する焦点可変レンズを更に含み、第1のレンズ群を光軸方向に移動駆動するための筐体部を有する。焦点可変レンズの外部には、筐体部に接触するプッシャーが設けられており、焦点可変レンズと第1のレンズ群を移動駆動する。また、下記の条件式を満足する。
a<f1/f<b、△p/△z>1、0.5<L/Lp<2
ここで、f1:第1のレンズ群の焦点距離、f:撮像装置の焦点距離、0<a<1かつ1<b<2、△z:第1のレンズ群の光軸方向への移動量、△p:第1のレンズ群の光軸方向への移動量に対するピント移動量、L:第1のレンズ群の移動量、Lp:プッシャーの押し込み量。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
正のパワーを持つ第1のレンズ群、負のパワーを持つ第2のレンズ群及び結像用の撮像素子を光軸方向に物体側から像側へ含み、
前記光軸方向に設けられた焦点可変レンズを更に含み、
前記焦点可変レンズは、前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群の間に位置し、又は、前記第1のレンズ群の最も物体側に位置し、
前記第1のレンズ群は、前記第1のレンズ群を光軸方向に移動駆動するための筐体部を有し、
前記焦点可変レンズの外部には、前記筐体部に接触するプッシャーが設けられ、
前記プッシャーは、前記焦点可変レンズと前記第1のレンズ群を移動駆動し、
前記撮像装置は、
a<f1/f<b
△p/△z>1
0.5<L/Lp<2
(f1:前記第1のレンズ群の焦点距離、
f:前記撮像装置の焦点距離、
0<a<1かつ1<b<2、
△z:前記第1のレンズ群の前記光軸方向への移動量、
△p:前記第1のレンズ群の前記光軸方向への移動量Δzに対する撮像面上のピント移動量、
L:前記第1のレンズ群の移動量、
Lp:前記プッシャーの押し込み量)を満足することを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズが前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群との間に位置する場合、
0.5<f1/f<1.5を満足することを特徴とする。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズの最大有効光線径は、前記第1のレンズ群の最大有効光線径よりも小さいことを特徴とする。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置であって、
0.4<Φ/Φ1<0.95
(Φ:前記焦点可変レンズの最大有効光線径、
Φ1:前記第1のレンズ群の最大有効光線径)を更に満足することを特徴とする。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズが前記第1のレンズ群の最も物体側に位置する場合、
0.6<f1/f<1.2を満足することを特徴とする。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記プッシャーと前記筐体部とは、直接に連結されるか、減速比を有する機構を介して連結されることを特徴とする。
【請求項7】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズには、光学流体が封止されていることを特徴とする。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像装置であって、
前記プッシャーの押し込み量は、前記光学流体又は前記プッシャーの面積によって決められることを特徴とする。
【請求項9】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記第1のレンズ群は、少なくとも1枚のレンズを含み、
前記第2のレンズ群は、少なくとも1枚のレンズを含み、
前記第1のレンズ群のレンズ及び前記第2のレンズ群のレンズは、いずれも非球面レンズであることを特徴とする。
【請求項10】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズは、膜レンズ又は液体レンズであることを特徴とする。
【請求項11】
電子機器であって、
請求項1~9のいずれかの一つに記載の撮像装置を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の技術分野に係り、特に撮像装置及び電子機器に係る。
【背景技術】
【0002】
通常、レンズを合焦させる場合、1つ又は複数のレンズフォーカス群を光軸方向に移動させて無限遠から近距離まで合焦させる。この際、フォーカス群の光軸方向への移動スペースを複数確保する必要があり、最短撮影距離を短くするほど、フォーカス群のストロークが伸びて大型化する。
【0003】
この課題を解決するために、焦点可変レンズを使用して、フォーカス群を光軸方向に移動させることなく無限遠から近距離まで合焦させる方法がある。この方法を用いることで、レンズフォーカスによる大型化の課題は解決される。しかしながら、一般的に焦点可変レンズの光学パワーがレンズフォーカスに比べて劣り、無限遠から近距離まで幅広く合焦させる場合、1つの焦点可変レンズでは、光学パワーが不足することが多い。更に1つのフォーカス群のみの構成の場合、解像性能維持(特に球面収差と像面湾曲及び色収差)が困難となる。
【0004】
仮に焦点可変レンズを複数配置した場合は、物体距離が変化する際に発生する収差が強め合い、高性能維持が困難となる。
【0005】
そこで、レンズフォーカスと焦点可変レンズの組み合わせが考えられる。この場合、光軸方向の移動スペースはレンズフォーカスを複数枚使用する場合よりも抑えられ、更にレンズ同士の干渉の問題は解決されるが、レンズフォーカス用と焦点可変レンズ用の2つのアクチュエータを有することによって大型化してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の少なくとも1つの実施例は、焦点可変レンズとレンズフォーカスとの併用をした際の撮像装置の大型化問題を解決するために、撮像装置及び電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術課題を解決するために、本発明は、下記のように実現される。
【0008】
第1の態様として、本発明の実施例は、正のパワーを持つ第1のレンズ群、負のパワーを持つ第2のレンズ群及び結像用の撮像素子を光軸方向に物体側から像側へ含む撮像装置を提供する。前記撮像装置は、前記光軸方向に設けられた焦点可変レンズを更に含む。前記焦点可変レンズは、前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群の間に位置し、又は、前記第1のレンズ群の最も物体側に位置する。前記第1のレンズ群は、前記第1のレンズ群を光軸方向に移動駆動するための筐体部を有する。前記焦点可変レンズの外部には、前記筐体部に接触するプッシャーが設けられている。前記プッシャーは、前記焦点可変レンズと前記第1のレンズ群を移動駆動する。ここで、前記撮像装置は、下記の条件式を満足する。
a<f1/f<b
△p/△z>1
0.5<L/Lp<2
ここで、
f1:前記第1のレンズ群の焦点距離、
f:前記撮像装置の焦点距離、
0<a<1かつ1<b<2、
△z:前記第1のレンズ群の前記光軸方向への移動量、
△p:前記第1のレンズ群の前記光軸方向への移動量Δzに対する撮像面上のピント移動量、
L:前記第1のレンズ群の移動量、
Lp:前記プッシャーの押し込み量。
【0009】
第2の態様として、本発明の実施例は、上述した撮像装置を含む電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0010】
従来技術と比べ、本発明の実施例による撮像装置は、光軸方向に移動しない焦点可変レンズを撮像装置の内部に設けてレンズフォーカスと併用し、かつ1つのプッシャーで焦点可変レンズとレンズフォーカスの2種類のレンズを駆動させ、撮像装置の構造の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る撮像装置の構成を示す図その1である。
【
図2】本発明の実施例に係る撮像装置の構成を示す図その2である。
【
図3】本発明の実施例に係る撮像装置の構成を示す図その3である。
【
図4】本発明の実施例に係る撮像装置の構成を示す図その4である。
【
図6】本発明の実施例に係る撮像装置の構成を示す図その5である。
【
図7】本発明の実施例に係る撮像装置の構成を示す図その6である。
【
図8】
図4の実施例に対応する撮像装置の物体距離無限遠時の諸収差を示す図である。
【
図9】
図4の実施例に対応する撮像装置の至近距離時の諸収差を示す図である。
【
図10】
図7の実施例に対応する撮像装置の物体距離無限遠時の諸収差を示す図である。
【
図11】
図7の実施例に対応する撮像装置の至近距離時の諸収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施例における添付図面を参照して、本願の実施例における技術手段を明確且つ完全的に記載する。明らかに、記載される実施例は、本願の実施例の一部であり、全てではない。本願における実施例に基づき、当業者が創造性のある作業をしなくても為しえる全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0013】
本願の明細書及び特許請求の範囲における用語「第1」、「第2」などは、類似した対象を区別するためのものであり、必ずしも特定の順序又は優先順位を説明するためのものではない。このように使用されたデータは、本願の実施例がここでの図示又は説明以外の順序でも実施できるように、適宜入れ替えてもよいと理解すべきであり、なおかつ、用語「第1」、「第2」などにより区別される対象は、通常同種なものであり、対象の数を限定しない。例えば、第1の対象は、1つでもよく、複数でもよい。なお、明細書及び特許請求の範囲における「及び/又は」は、接続対象の少なくとも1つを表す。文字「/」は、一般に、前後の関連対象が「又は」の関係となることを示す。
【0014】
本発明の関連する技術手段を分かりやすくするために、以下、本発明に係る関連概念を説明する。
【0015】
本発明の実施例に記載の焦点可変レンズとは、レンズを光軸方向に物理的に移動させることなく、外部から圧力をかけることによりレンズを変形させる液体レンズ又は膜レンズである。
【0016】
図1~
図7に示すように、本発明の実施例は、撮像装置を提供する。当該撮像装置は、光軸方向に物体側から像側へ第1のレンズ群1、第2のレンズ群2及び結像用の撮像素子3を含む。第1のレンズ群1は、正のパワーを持ち、第2のレンズ群は、負のパワーを持つ。
【0017】
ここで、撮像素子3は、画像センサなどの感光素子である。
【0018】
具体的に、第1のレンズ群1は、全体的に正のパワーを持ち、その全体又は一部のレンズが、物体距離が変化する際に光軸方向に移動し、かつ正のパワーを持つ。
【0019】
撮像装置は、光軸方向に設けられた焦点可変レンズ4を更に含む。焦点可変レンズは、
図4のように、第1のレンズ群1と第2のレンズ群2の間に位置し、又は、
図7のように、第1のレンズ群1の最も物体側に位置する。第1のレンズ群1は、第1のレンズ群1を光軸方向に移動駆動するための筐体部5を有する。焦点可変レンズ4の外部には、筐体部5に接触するプッシャー6が設けられている。プッシャー6は、焦点可変レンズ4と第1のレンズ群1を移動駆動する。
【0020】
選択可能に、ボイスコイルモータVCM(Voice Coil Motor)は、筐体部5に内嵌され、第1のレンズ群1を光軸方向に移動駆動する。
図1を参照し、ボイスコイルモータは、主にコイル(coil)7、マグネット(Magnet)8及びスプリング(Spring)9から構成され、コイル7が上下2つのスプリング9によってマグネット8の内部に固定される。コイル7に通電すると、コイル7に磁場が発生する。コイル磁場とマグネット8の相互作用により、コイル7が上へ移動し、コイル7内の第1のレンズ群1が一緒に移動する。電源がオフになると、コイル7は、スプリング9の弾力によって戻る。このように、自動合焦機能を実現する。
【0021】
ここで、撮像装置は、下記の条件式を満足する。
a<f1/f<b
△p/△z>1
0.5<L/Lp<2
ここで、
f1:第1のレンズ群1の焦点距離、
f:撮像装置の焦点距離、
0<a<1かつ1<b<2、
△z:第1のレンズ群1の光軸方向への移動量、
△p:第1のレンズ群1の光軸方向への移動量Δzに対する撮像面上のピント移動量、
L:第1のレンズ群1の移動量、
Lp:プッシャー6の押し込み量。
【0022】
1つの選択可能な実施例において、プッシャー6と筐体部5とは、直接に連結されるか、減速比を有する機構を介して連結される。例えば、減速比を有する機構は、ギヤである。なお、簡易的にプッシャーの押し込み量を調整するためには、プッシャー6と筐体部5とは、直接連動であり、即ち減速比1である。
【0023】
選択可能に、焦点可変レンズ4には、光学流体が封止されている。焦点可変レンズ4に対して外部からプッシャー6を介して圧力をかけ、焦点可変レンズ4を光軸方向に移動させることなく変形させることにより、屈折率を可変できる。
【0024】
更に、プッシャー6の押し込み量は、光学流体又はプッシャー6の面積によって決められる。即ち、プッシャー6の押し込み量は、焦点可変レンズ4の光学流体やプッシャー6の面積などで調整される。
【0025】
プッシャーに与える力を示す図である
図5を参照し、図中の横軸は、プッシャーに与える力を示し、単位がg/mm2であり、縦軸は、偏差/開口面積を示し、単位がm/mm2である。プッシャーの形状、材料の粘性によって調整することが望ましい。選定するアクチュエータの推力以下に抑えるように設計する。
【0026】
選択可能に、焦点可変レンズ4は、膜レンズ又は液体レンズである。
【0027】
本発明の1つの好適な実施例において、
図1~
図4に示すように、焦点可変レンズ4が第1のレンズ群1と第2のレンズ群2との間に位置する場合、0.5<f1/f<1.5を満足する。
【0028】
更に、焦点可変レンズ4の最大有効光線径は、第1のレンズ群1の最大有効光線径よりも小さい。
【0029】
撮像装置は、0.4<Φ/Φ1<0.95(ここで、Φ:焦点可変レンズ4の最大有効光線径、Φ1:第1のレンズ群1の最大有効光線径)を更に満足することが好ましい。
【0030】
図4に示すように、焦点可変レンズ4が第1のレンズ群1と第2のレンズ群2との間に位置する場合、焦点可変レンズ4の物体側のレンズ群、即ち第1のレンズ群1に正のパワーを持たせることで、周辺像高の光線が中心像高の光線に近づき、第1のレンズ群1の有効光線径より焦点可変レンズ4の有効光線径を小さくできる。焦点可変レンズ4の有効光線径を小さくすることで、焦点可変レンズ4のサイズダウンによるコストダウン・高速応答や、駆動素子の小型化を実現する。
【0031】
第1のレンズ群1の付近に配置するよりも焦点可変レンズ4を通る軸上光線に周辺光線が近づくため、焦点可変レンズ4の曲率が変化する際の像面湾曲の発生を抑制することが可能となる。
【0032】
焦点可変レンズ4の像側に第2のレンズ群2を配置しそのパワーを負とすることで、焦点可変レンズのピント感度を高め、ストロークを短くしながら、最短撮影距離を短くすることが可能となる。
【0033】
条件式0.5<f1/f<1.5の上限を超える場合、第1のレンズ群1の正のパワーが弱すぎて撮像装置全体が大型化する。一方、条件式0.5<f1/f<1.5の下限を下回る場合、第1のレンズ群1の正のパワーが強くなりすぎて、物体距離が変化する際の撮像装置の性能劣化が大きくなる。また、レンズ組立時の要求精度も高くなり、製造難易度が上がる。
【0034】
なお、条件式△p/△z>1の下限を満足することで、フォーカスストロークを必要以上に伸ばすことなく、最短撮影距離を短くすることができる。
【0035】
条件式0.4<Φ/Φ1<0.95の上限を超える場合、撮像装置の有効光線径に対して焦点可変レンズ4の小径化が不十分であり、コストアップや、撮像装置全体の大型化を招く。一方、条件式0.4<Φ/Φ1<0.95の下限を下回る場合、第1のレンズ群1のパワーが強すぎるか、第1のレンズ群1の光軸方向の長さが長くなり、撮像装置全体の大型化を招く。
【0036】
0.5<L/Lp<2の上限を超える場合、第1のレンズ群1のストロークを延ばす原因になり、大型化してしまう。また、ギアなどの減速比を有する機構も複雑となる。0.5<L/Lp<2の下限を下回る場合、第1のレンズ群1の移動に対して焦点可変レンズ4が敏感であり、製造上の組立精度が上がり、焦点可変レンズの制御が困難となる。
【0037】
また、第1のレンズ群1を光軸方向に移動駆動する筐体部5と焦点可変レンズ4のプッシャー6を一体化することで、撮像装置のサイズとして全体の約15%程度の削減、消費電力約220mWの省電力効果が期待される。また部品点数が少なくなるため、コストを抑えることができ、製造のプロセスにおいてもプッシャーを組み立てる工程が削減され、歩留まりが改善される。
【0038】
本発明のもう1つの好適な実施例において、
図6及び
図7を参照し、焦点可変レンズ4が第1のレンズ群1の最も物体側に位置する場合、0.6<f1/f<1.2を満足する。
【0039】
ここで、焦点可変レンズ4が第1のレンズ群1の最も物体側に位置する。焦点可変レンズ4を撮像装置の最も物体側に配置することで、製造組立性を容易とし、焦点可変レンズ4の不良発生時の交換も簡易であり、レンズの組立難易度・製造コストを低減するメリットがある。
【0040】
条件式0.6<f1/f<1.2の下限を下回る場合、第1のレンズ群1の正のパワーが強くなりすぎて、収差の補正が困難となり、更にレンズ組立時の要求精度も上がり、高性能化の実現が困難となる。一方、条件式0.6<f1/f<1.2の上限を上回る場合、フォーカスストロークが長くなり、撮像装置全体の小型化が困難となる。
【0041】
なお、本実施例において、焦点可変レンズ4より像側の第1のレンズ群1、第2のレンズ群2全てをフォーカスとして使用する場合、△p/△zの値は1になるが、第1のレンズ群1の像側に位置する第2のレンズ群2が負のパワーを持つ場合、条件式△p/△z>1を満足させることで、フォーカスストロークを短縮でき、結果的に撮像装置の小型化に寄与する。
【0042】
また、焦点可変レンズ4より像側の第1のレンズ群1、第2のレンズ群2全てをフォーカスとして使用する場合、物体距離が変化する際に焦点可変レンズ4で発生する像面湾曲と、レンズフォーカス(第1のレンズ群1、第2のレンズ群2)で発生する像面湾曲の変動方向が同一になるため、特に撮影距離を短くした場合の高性能化が困難であり、小型・高性能・最短撮影距離短縮の両立が困難となる。
【0043】
また、上記の実施例と同様に、
図2のように焦点可変レンズのプッシャー6を押し込む形式となるため、条件式0.5<L/Lp<2の上限を超える場合、第1のレンズ群1のストロークを延ばす原因になり、大型化してしまう。更に、上記の実施例とは異なり、第1のレンズ群1と焦点可変レンズ4の位置が逆になるため、各レンズの干渉を避けるのが困難となる。一方、条件式0.5<L/Lp<2の下限を下回る場合、第1のレンズ群1の移動に対して焦点可変レンズ4が敏感であり、製造上の組立精度が上がり、焦点可変レンズの制御が困難となる。
【0044】
期待される効果としても、プッシャーが一体化することで、サイズとして全体の約10%程度の削減、消費電力約220mWの省電力効果も期待される。
【0045】
本発明の1つの実施例において、第1のレンズ群1は、少なくとも1枚のレンズを含み、第2のレンズ群2は、少なくとも1枚のレンズを含み、第1レンズ群1のレンズ及び第2のレンズ群2のレンズは、いずれも非球面レンズである。
【0046】
なお、本発明の実施例の撮像装置のレンズに用いられる非球面式は、下記のように定義される。
【数1】
ここで、xは、サグ(sag)量であり、yは、光軸からの高さであり、cは、非球面の近軸曲率であって、非球面の曲率半径の逆数であり、kは、非球面の円錐定数であり、Anは、n次の非球面係数である。
【0047】
以下、本発明の実施例の撮像装置のレンズの具体的な実施のパラメータを、4つの実施例を通じて具体的に説明する。
実施例1
【0048】
図4の撮像装置におけるレンズの構造を参照し、レンズの屈折率、アッベ数及び焦点距離は、全て波長555.00nmの光線を参考とする。
【0049】
本実施例1において、f1/fの値は、0.883であり、Δp/Δzの値は、1.439であり、Φ/Φ1の値は、0.657である。
【0050】
ここで、表1は、
図4の撮像装置におけるレンズの構造に対応するレンズデータであり、表2は、
図4の撮像装置におけるレンズに対応する各非球面係数であり、表3は、物体距離無限遠及び至近距離(30mm)時の、
図4に示す撮像装置の光学パラメータを示す。表4は、物体距離無限遠及び30mmにレンズフォーカス(第1のレンズ群)と焦点可変レンズの間隔を示す。
【0051】
【0052】
【0053】
【表3】
ここで、fは、撮像装置の焦点距離を示し、Fnoは、撮像装置の開口値を示し、ωは、画角を示し、Yは、像高を示す。
【0054】
【0055】
ここで、撮像装置における各レンズは、上記の実施例1におけるサイズの範囲を採用する。
図8のうち、
図8Aは、物体距離無限遠時の非点収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、非点収差の大きさを示し、単位がmmであり、縦座標は、画角を示す)。
図8Bは、物体距離無限遠時の球面収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、球面収差を示し、単位がmmであり、縦座標は、開口値を示す)。
図8Cは、物体距離無限遠時の歪収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、歪みの大きさを示し、%で示し、縦座標は、画角を示す)。
【0056】
図9のうち、
図9Aは、物体距離至近時の非点収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、非点収差の大きさを示し、単位がmmであり、縦座標は、画角を示す)。
図9Bは、物体距離至近時の球面収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、球面収差を示し、単位がmmであり、縦座標は、開口値を示す)。
図9Cは、物体距離至近時の歪収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、歪みの大きさを示し、%で示し、縦座標は、画角を示す)。
【0057】
なお、
図8、
図9には、
図4に示す実施例1の物体距離∞と至近距離の諸収差を記載する。焦点可変レンズ4と第1のレンズ群1の発生収差(像面湾曲)をキャンセルすることで、無限遠から至近距離まで高性能を維持できていることが分かる。
実施例2
【0058】
図7の撮像装置におけるレンズの構造を参照し、レンズの屈折率、アッベ数及び焦点距離は、全て波長555.00nmの光線を参考とする。本実施例2において、f1/fの値は、0.922であり、Δp/Δzの値は、1.180である。ここで、表5は、
図7の撮像装置におけるレンズの構造に対応するレンズデータであり、表6は、
図7の撮像装置におけるレンズに対応する各非球面係数であり、表7は、物体距離無限遠及び至近距離(30mm)時の、
図7に示す撮像装置の光学パラメータを示す。表8は、物体距離無限遠及び至近距離(30mm)にレンズフォーカスと焦点可変レンズの間隔、及び、物体距離無限遠及び至近距離(30mm)にレンズフォーカスと第2のレンズ群の間隔を示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
ここで、撮像装置における各レンズは、上記の実施例2におけるサイズの範囲を採用する。
図10のうち、
図10Aは、物体距離無限遠時の非点収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、非点収差の大きさを示し、単位がmmであり、縦座標は、画角を示す)。
図10Bは、物体距離無限遠時の球面収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、球面収差を示し、単位がmmであり、縦座標は、開口値を示す)。
図10Cは、物体距離無限遠時の歪収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、歪みの大きさを示し、%で示し、縦座標は、画角を示す)。
【0064】
図11のうち、
図11Aは、物体距離至近時の非点収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、非点収差の大きさを示し、単位がmmであり、縦座標は、画角を示す)。
図11Bは、物体距離至近時の球面収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、球面収差を示し、単位がmmであり、縦座標は、開口値を示す)。
図11Cは、物体距離至近時の歪収差のカーブを示す(当該図面において、横座標は、歪みの大きさを示し、%で示し、縦座標は、画角を示す)。
【0065】
なお、
図10、
図11には、
図7に示す実施例2の物体距離∞と至近距離の諸収差を記載する。焦点可変レンズ4と第1のレンズ群1の発生収差(像面湾曲)をキャンセルすることで、無限遠から至近距離まで高性能を維持できていることが分かる。
【0066】
本発明において、焦点可変レンズとレンズフォーカスの併用を前提とし、かつレンズフォーカスと焦点可変レンズを駆動するプッシャーを一体化する場合、以上に記載した各レズ群の条件式を満足することによって、最小撮影距離短縮・小型化・高性能化の両立ができる。
【0067】
更に、本発明の実施例は、以上に記載した撮像装置を含む電子機器を更に提供する。
【0068】
上記の撮像レンズは、いわゆるスマートフォーン、いわゆるフィーチャーフォーン(feature phone)又はタブレットデバイスなどの携帯式情報機器用の撮影装置にも用いられる。
【0069】
本発明の実施例における電子機器は、モバイル電子機器であってもよいし、非モバイル電子機器であってもよい。例えば、モバイル電子機器は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコン、パームコンピューター、車載電子機器、ウェアラブルデバイス、ウルトラモバイルパーソナルコンピューターUMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)、ネットブック又はパーソナルデジタルアシスタントPDA(Personal Digital Assistant)などが挙げられ、非モバイル電子機器は、サーバー、ネットワークアタッチドストレージNAS(Network Attached Storage)、パーソナルコンピューターPC(Personal Computer)、テレビTV(TeleVision)、ATM又はセルフサービスマシーンなどが挙げられるが、本発明の実施例において、限定されない。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて記載したが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではない。上記の具体的な実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではない。本発明の示唆を受け、当業者が本発明の趣旨及び特許請求の範囲から逸脱することなくなしえる多くの形態は、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
光軸方向において、物体側から像側へ順に配置された、正のパワーを持つ第1のレンズ群、負のパワーを持つ第2のレンズ群及び結像用の撮像素子からなり、
前記光軸方向に設けられた焦点可変レンズを更に含み、
前記焦点可変レンズは、前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群の間に位置し、又は、前記第1のレンズ群の最も物体側に位置し、
前記第1のレンズ群は、前記第1のレンズ群を光軸方向に移動駆動するための筐体部を有し、
前記焦点可変レンズの外部には、前記筐体部に接触するプッシャーが設けられ、
前記プッシャーは、前記焦点可変レンズと前記第1のレンズ群を移動駆動し、
前記焦点可変レンズには、光学流体が封止されており、前記焦点可変レンズに対して外部から前記プッシャーを介して圧力をかけて前記焦点可変レンズを変形させ、
前記撮像装置は、
a<f1/f<b
△p/△z>1
0.5<L/Lp<2
(f1:前記第1のレンズ群の焦点距離、
f:前記撮像装置の焦点距離、
0<a<1かつ1<b<2、
△z:前記第1のレンズ群の前記光軸方向への移動量、
△p:前記第1のレンズ群の前記光軸方向への移動量Δzに対する撮像面上のピント移動量、
L:前記第1のレンズ群の移動量、
Lp:前記プッシャーの押し込み量)を満足することを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズが前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群との間に位置する場合、
0.5<f1/f<1.5を満足することを特徴とする。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズの最大有効光線径は、前記第1のレンズ群の最大有効光線径よりも小さいことを特徴とする。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置であって、
0.4<Φ/Φ1<0.95
(Φ:前記焦点可変レンズの最大有効光線径、
Φ1:前記第1のレンズ群の最大有効光線径)を更に満足することを特徴とする。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズが前記第1のレンズ群の最も物体側に位置する場合、
0.6<f1/f<1.2を満足することを特徴とする。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記プッシャーと前記筐体部とは、直接に連結されるか、減速比を有する機構を介して連結されることを特徴とする。
【請求項7】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記プッシャーの押し込み量は、前記光学流体又は前記プッシャーの面積によって決められることを特徴とする。
【請求項8】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記第1のレンズ群は、少なくとも1枚のレンズを含み、
前記第2のレンズ群は、少なくとも1枚のレンズを含み、
前記第1のレンズ群のレンズ及び前記第2のレンズ群のレンズは、いずれも非球面レンズであることを特徴とする。
【請求項9】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記焦点可変レンズは、膜レンズ又は液体レンズであることを特徴とする。
【請求項10】
電子機器であって、
請求項1~8のいずれかの一つに記載の撮像装置を含むことを特徴とする。