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  • 特開-車両構造 図1
  • 特開-車両構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073724
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/20 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B60R22/20 107
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184584
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 翔太
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018BA14
3D018BA16
3D018CA09
(57)【要約】
【課題】車両の衝突時に下方へ変位したシートベルトがシートベルトの下方の部材に接触することを防止できる車両構造を提供する。
【解決手段】車両の側方に設けられている内装部材と、前記車両の側方に設けられてシートベルトの端部が固定されたベルトアンカと、前記車両の側方かつ前記ベルトアンカの前方に配置された部分を有する特定部材と、を備え、前記内装部材は、前記車両の衝突時に下方へ変位した前記シートベルトを前記特定部材の車内側へ案内させるように車内側に張り出す張出部を有する、車両構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側方に設けられている内装部材と、
前記車両の側方に設けられてシートベルトの端部が固定されたベルトアンカと、
前記車両の側方かつ前記ベルトアンカの前方に配置された部分を有する特定部材と、を備え、
前記内装部材は、前記車両の衝突時に下方へ変位した前記シートベルトを前記特定部材の車内側へ案内させるように車内側に張り出す張出部を有する、
車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時に下方へ変位したシートベルトがシートベルトの下方の部材に接触することを防止できる車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のシートベルト装置のシートベルトは、座席の着座者の車外側に位置する肩から車内側の腰に向かって斜めに架け渡されるショルダベルトと、上記着座者の腹部周辺を車外側から車内側に向かって横切るラップベルトとを有する。ショルダベルトの端部はリトラクタに固定され、ラップベルトの端部はラップアウタアンカーに固定されている。リトラクタとラップアウタアンカーとはピラー部の下部に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-95302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラップベルトは、車両の前面衝突時、乗員の前方への変位に伴って下方へ変位する。シートベルトの下方に部材が配置されていると、下方へ変位したシートベルトがシートベルトの下方に位置する部材と接触するおそれがある。
【0005】
本発明の目的の一つは、車両の衝突時に下方へ変位したシートベルトがシートベルトの下方の部材に接触することを防止できる車両構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両構造は、
車両の側方に設けられている内装部材と、
前記車両の側方に設けられてシートベルトの端部が固定されたベルトアンカと、
前記車両の側方かつ前記ベルトアンカの前方に配置された部分を有する特定部材と、を備え、
前記内装部材は、前記車両の衝突時に下方へ変位した前記シートベルトを前記特定部材の車内側へ案内させるように車内側に張り出す張出部を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記車両構造は、内装部材が張出部を有することで、車両の衝突時に下方へ変位したシートベルトがシートベルトの下方に位置する特定部材に接触することを防止できる。したがって、上記車両構造は、上記接触に伴う特定部材の損傷を抑制できる。上記車両構造は、車両の衝突時に変位したシートベルトが張出部によって特定部材の車内側へ案内されることで、シートベルトが乗員に近づく。そのため、上記車両構造は、シートベルトによる乗員の拘束力が高くなる。したがって、上記車両構造は、乗員を保護する効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の車両構造を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1のII-II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の車両構造の実施形態を図1図2を参照しつつ以下に説明する。図1は、図示が省略された右方のフロントシートを車両の左後方から見た斜視図である。図1図2に二点鎖線で示されたシートベルト50は、車両の衝突前の通常時のシートベルト50aである。通常時とは、シートベルト50aが通常に使用された状態、即ち、シートベルト50aによって図示が省略されたフロントシートに着座する乗員が拘束されている状態をいう。乗員の図示は省略されている。図1図2に実線で示されたシートベルト50は、車両の前面衝突時のシートベルト50bである。車両の前面衝突時のシートベルト50bは、車両の前面衝突によって通常時のシートベルト50aが下方へ変位した後の状態である。図中の同一符号は同一名称物を示す。図中の「UP」は本実施形態の車両構造1が設けられる車両の上方、「LWR」は下方、「FR」は前方、「RR」は後方、「RH」は右方、「LH」は左方を示す。以下の説明の「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、および「左」のそれぞれは、上記車両の「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右方」、および「左方」のそれぞれに対応している。
【0010】
《実施形態》
〔車両構造〕
実施形態の車両構造1は、車両の側方に設けられた内装部材と、シートベルト50の端部が固定されたベルトアンカ30と、車両の側方かつベルトアンカ30の前方に配置された部分を有する特定部材とを備える。実施形態の車両構造1の特徴の一つは、内装部材が特定の張出部21を有する点にある。本実施形態の車両構造1は、詳しくは後述するように、内装部材がBピラートリム20であり、特定部材が排熱ダクト42である場合を例に説明する。
【0011】
本実施形態の車両構造1は、駆動力の発生源であるバッテリ40がフロアパネル61上に配置された車両に備わる場合を例に説明する。その車両は、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、またはBEV(Battery Electric Vehicle)である。図1に示されるバッテリ40は、図示が省略された右方のフロントシートの下方に配置されている。図示は省略されているものの、左方のフロントシートの下方にもバッテリは配置されている。バッテリ40は、図示が省略されたフロアカーペットの下方に配置されている。即ち、バッテリ40は、フロアカーペットで覆われている。
【0012】
バッテリ40は、図示が省略されたバッテリ本体とカバー41と図示が省略されたファンと排熱ダクト42とを備える。バッテリ本体は電力を貯留する。カバー41は、バッテリ本体を外部から保護する。図1に示される例のカバー41は、バッテリ本体の上方を覆うと共にクロスメンバ63に固定されている。この固定によって、バッテリ本体がフロアパネル61上に固定されている。ファンはバッテリ本体を冷却する。排熱ダクト42は、バッテリ本体を通過した風が流通される。排熱ダクト42の第一端部はバッテリ本体の右側面につながっている。排熱ダクト42の第二端部は、フロアパネル61のうちクロスメンバ63の後方に設けられた貫通孔につながっている。即ち、上記風は、排熱ダクト42を通ってフロアパネル61の貫通孔から車外に排出される。排熱ダクト42の途中は、クロスメンバ63の上方を前方から後方に跨いでいる。
【0013】
クロスメンバ63は、フロントシートの下方で車幅方向に延びている。クロスメンバ63の下方はフロアパネル61に固定されている。クロスメンバ63の右端部は、右方のロッカ65のうち、Bピラートリム20によって覆われて隠れているBピラーとロッカ65との接続箇所の付近に固定されている。図示が省略されているもののクロスメンバ63の左端部は、左方のロッカのうち、Bピラーとロッカとの接続箇所の付近に固定されている。Bピラーは、フロントのサイドドアの開口の後縁とリアのサイドドアの開口の前縁とを形成する。フロントシートは、取付ブラケット64に固定されている。具体的には、図2に二点鎖線で示されるように、フロントシートのシートレール62が取付ブラケット64の上面に固定されている。シートレール62と取付ブラケット64とを固定するボルトの図示は省略されている。取付ブラケット64はクロスメンバ63に固定されている。ロッカ65はサイドドアの開口の下縁を形成する。ロッカ65は、車両の前後に沿う長尺状の部材である。ロッカ65は、フロアパネル61の側縁に固定されている。
【0014】
[特定部材]
特定部材は、車両の側方かつ後述するベルトアンカ30の前方に設けられた部分を有する部材である。特定部材は、通常時のシートベルト50a、50の下方に位置している。本実施形態の特定部材は、上述したバッテリ40の排熱ダクト42である。図1では、車両の右方の排熱ダクト42が示されている。図示および説明は省略するものの、車両の左方にも右方に示す特定部材と同様の特定部材が設けられている。
【0015】
[ベルトアンカ]
ベルトアンカ30は、シートベルト50の端部が固定されている。本実施形態のシートベルト50は、公知の連続3点式シートベルトを構成する。シートベルト50は、フロントシートに着座する乗員の腹部周辺を横切るラップベルトである。ベルトアンカ30は、ラップベルトの端部を固定するラップベルトアンカである。本実施形態では、ベルトアンカ30はロッカ65におけるクロスメンバ63よりも後方に固定されている。本実施形態とは異なり、ベルトアンカ30はフロアパネル61におけるクロスメンバ63よりも後方に固定されていてもよい。図示および説明は省略するものの、車両の左方にも右方に示すベルトアンカ30およびシートベルト50と同様のベルトアンカおよびシートベルトが設けられている。
【0016】
[内装部材]
内装部材は、車両の側方に設けられている。本実施形態の内装部材は、Bピラートリム20である。Bピラートリム20は、Bピラーの車内側を覆う部材である。Bピラートリム20は樹脂成形体である。Bピラートリム20は張出部21を有する。張出部21は、詳しくは後述するものの図2に示されるように、下方へ変位した前面衝突時のシートベルト50b、50を排熱ダクト42の車内側へ案内させるように車内側に張り出す。本実施形態の張出部21は、Bピラートリム20の下部にBピラートリム20と一体に設けられている。即ち、張出部21は、Bピラートリム20と一体の樹脂成形体である。
【0017】
Bピラートリム20の下部を側方視した際、即ち下部を車内側から車外側に向かって見た際、張出部21は、排熱ダクト42、通常時のシートベルト50a、50の延伸する経路、および前面衝突時のシートベルト50b、50の延伸する経路の三者に概ね重なる範囲内にわたって設けられていることが好ましい。前面衝突時のシートベルト50b、50のベルトアンカ30に近い箇所ほど排熱ダクト42に接触し易い。そのため、張出部21は、通常時のシートベルト50a、50のベルトアンカ30に近い箇所ほど下方にまで設けられていると、下方へ変位した前面衝突時のシートベルト50b、50と排熱ダクト42との接触を防止できる。
【0018】
本実施形態の張出部21は、クロスメンバ63よりも後方からクロスメンバ63よりも前方にわたって一連に設けられている。張出部21は、排熱ダクト42を排熱ダクト42の上方から車内側の側方にわたって覆っている。張出部21は、前面衝突時のシートベルト50b、50と排熱ダクト42との間に配置されるように設けられている。張出部21の前方と下方には、排熱ダクト42を張出部21内に導入するための開口が設けられている。張出部21の下方の開口のうちクロスメンバ63よりも後方の開口から排熱ダクト42がフロアパネル61に向かって延びている。本実施形態では、張出部21の車内側への突出長さは、前後にわたって一様である。通常時のシートベルト50a、50はベルトアンカ30から前方に向かうほど車内側に近づくように延びているため、張出部21の車内側への突出長さは、本実施形態とは異なり、後方から前方に向かうほど大きくてもよい。
【0019】
本実施形態の張出部21は、図2に示されるように、車外側から車内側に向かって下方へ傾斜する第一領域と、第一領域から下方に直線状に延びる第二領域とを有する。第一領域の後部は、図1に示されるように後方に向かうにしたがって下方へ傾斜している。第二領域の下縁は、図2に示されるように排熱ダクト42の下縁よりも下方に位置している。本実施形態では、第二領域の下縁は、クロスメンバ63の上面にほぼ対応した高さである。本実施形態とは異なり、第二領域の下縁のうちクロスメンバ63よりも後方の部分は、上記側方視した際、排熱ダクト42と通常時のシートベルト50a、50とが重なる領域にまで下方に延ばしてもよい。図示および説明は省略するものの、車両の左方にも右方に示す内装部材と同様の内装部材が設けられている。
【0020】
なお、下方へ変位した前面衝突時のシートベルト50b、50と排熱ダクト42との接触を防止できれば、張出部21は本実施形態に限定されない。本実施形態とは異なり、図示は省略されているものの、上記第二領域の下端は排熱ダクト42の下端よりも下方に位置していなくてもよい。例えば、上記第二領域の下端は、排熱ダクト42の上端と下端のちょうど中間に位置していてもよいし、上記中間と上記下端との間に位置していてもよいし、上記下端と面一でもよい。また、張出部21の前端は、クロスメンバ63よりも前方に突出していなくてもよい。例えば、張出部21の前端は、クロスメンバ63の後端と前端のちょうど中間に位置していてもよいし、上記中間と上記前端との間に位置していてもよいし、上記前端と面一でもよい。
【0021】
[衝突時の挙動]
(張出部を有する本実施形態の場合)
図1図2の二点鎖線で示されるように、通常時のシートベルト50a、50は張出部21の上方に位置している。車両の前面衝突時に乗員が前方へ変位すると、通常時のシートベルト50a、50は、乗員により前方へ引っ張られ、図1図2の実線で示される前面衝突時のシートベルト50b、50のように下方へ変位する。下方へ変位した前面衝突時のシートベルト50b、50は、張出部21に摺接することで張出部21によって張出部21よりも車内側へ案内される。この案内によって、前面衝突時のシートベルト50b、50が排熱ダクト42に接触することが防止されている。したがって、上記接触に伴う排熱ダクト42の損傷が抑制される。
【0022】
(張出部を有しておらず排熱ダクトが内装部材によって覆われていない場合)
車両の前面衝突時、図示は省略されているものの下方へ変位した前面衝突時のシートベルト50b、50は、排熱ダクト42に接触する。そのため、上記接触に伴う排熱ダクト42の損傷を抑制することが難しい。
【0023】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
例えば、張出部は、Bピラートリムとは別体に構成されていてもよい。換言すると、張出部は、Bピラートリムとは独立した部材であってもよい。即ち、内装部材は、Bピラートリムと別体の張出部とを有していてもよい。
【0025】
例えば、バッテリはリアシートの下方のフロアパネル上に配置されていてもよい。この場合、特定部材はバッテリの排熱ダクトである。ベルトアンカは、リアシートのシートベルトのベルトアンカである。内装部材はクォーターピラートリムである。クォーターピラートリムは、クォーターピラーの車内側を覆う部材である。
【0026】
例えば、特定部材はワイヤーハーネスまたはエアコンディショナのダクトでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 車両構造
20 Bピラートリム
21 張出部
30 ベルトアンカ
40 バッテリ
41 カバー
42 排熱ダクト
50 シートベルト
50a 通常時のシートベルト
50b 前面衝突時のシートベルト
61 フロアパネル
62 シートレール
63 クロスメンバ
64 取付ブラケット
65 ロッカ
図1
図2