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特開2024-73733水硬性組成物用分散剤組成物及び水硬性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073733
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】水硬性組成物用分散剤組成物及び水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20240523BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240523BHJP
   C08F 16/16 20060101ALI20240523BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
C04B24/26 F
C04B24/26 E
C04B24/26 B
C04B28/02
C08F16/16
C08F20/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184594
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亮司
【テーマコード(参考)】
4G112
4J100
【Fターム(参考)】
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112PB29
4G112PB31
4J100AE18P
4J100AE26P
4J100AJ02Q
4J100AL08P
4J100BA03P
4J100BA08P
4J100BA08Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA08
4J100FA19
4J100FA28
4J100GA02
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】水硬性組成物に対して良好な練り上がり向上性を示す分散剤を提供する。
【解決手段】
相互に異なる特定の共重合体からなる(A)成分及び(B)成分を含む水硬性組成物用分散剤組成物を提供する。また、水硬性粉体、水、並びに該水硬性組成物用分散剤組成物を含む水硬性組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分を含む水硬性組成物用分散剤組成物。
(A)成分:
一般式(a1)
【化1】

[式中、R1aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(A1)、
一般式(a2)
【化2】

[式中、R2aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。naは20以上150以下の平均付加モル数を示す。R3aは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A2)、
及び任意選択的に一般式(a3)
【化3】

[式中、R4aは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R5aは、炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A3)を有する共重合体であって、
構成単位(A1)、(A2)及び(A3)の合計に対する構成単位(A1)の割合が3質量%以上10質量%未満である、共重合体A。
(B)成分:
一般式(b1)
【化4】

[式中、R1bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(B1)、
一般式(b2)
【化5】

[式中、R2bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。nbは30以上150以下の平均付加モル数を示す。R3bは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を示す。]
で表される構成単位(B2)を有する共重合体であって、
構成単位(B1)及び(B2)の合計に対する構成単位(B1)の割合が20質量%以上35質量%未満である、共重合体B。
【請求項2】
一般式(a2)のXが炭素数1以上4以下のアルキレン基である請求項1に記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項3】
一般式(b2)のXがカルボニル基である請求項1に記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項4】
構成単位(B2)のnbが30以上130以下である請求項1~3の何れかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項5】
構成単位(A3)を含まない請求項1~4の何れかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項6】
(A)成分の重量平均分子量が10000以上80000以下である請求項1~5の何れかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項7】
(B)成分の重量平均分子量が10000以上80000以下である請求項1~5の何れかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項8】
セメントを含む水硬性粉体、水、並びに請求項1~7の何れかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物を含む水硬性組成物。
【請求項9】
水硬性粉体に対する水の比率が5質量%以上45質量%以下である請求項8に記載の水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用分散剤組成物及び水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等の水硬性組成物に対して、流動性を付与するためのアクリル酸系のポリエチレングリコールエーテルを含む混和剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、三種類のアクリル酸共重合体とエチレンオキシドがエーテル結合で付加したアクリル酸共重合体を含む粘土含有水硬性組成物用分散剤が開示されている。
また、特許文献2には、(A):ポリカルボン酸系共重合体を含み、(B)固形分濃度30%水溶液における、JIS-R-3257に準拠し測定される接触角度が、80°以下であり、(C)水硬性組成物用混和剤の、ガラス転移温度(Tg)が、35℃以上である、水硬性組成物用混和剤が開示されている。
さらに、特許文献3には、構成単位(1):ポリエチレングリコールイソプレニルエーテルと、構成単位(2):不飽和カルボン酸及び/又はその塩から形成される構成単位であり、不飽和カルボン酸及び/又はその塩の80~100モル%が(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から選ばれる一つ又は二つ以上から形成される構成単位を含み、さらに硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量が100000以上2000000以下である共重合体(A)を含有する水硬性組成物用添加剤が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-18729号公報
【特許文献2】特開2020-183341号公報
【特許文献3】WO2020/100211
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような分散剤を用いた場合の練り上がり向上性に関しては、これまでに改善された開示はない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(A)成分及び(B)成分を含む水硬性組成物用分散剤組成物に関する。
(A)成分:
一般式(a1)
【化1】

[式中、R1aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(A1)、
一般式(a2)
【化2】

[式中、R2aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。naは20以上150以下の平均付加モル数を示す。R3aは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A2)、
及び任意選択的に一般式(a3)
【化3】

[式中、R4aは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R5aは、炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A3)を有する共重合体であって、
構成単位(A1)、(A2)及び(A3)の合計に対する構成単位(A1)の割合が3質量%以上10質量%未満である、共重合体A。
(B)成分:
一般式(b1)
【化4】

[式中、R1bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(B1)、
一般式(b2)
【化5】

[式中、R2bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。nbは30以上150以下の平均付加モル数を示す。R3bは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を示す。]
で表される構成単位(B2)を有する共重合体であって、
構成単位(B1)及び(B2)の合計に対する構成単位(B1)の割合が20質量%以上35質量%未満である、共重合体B。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な練り上がり向上性を実現することができる水硬性組成物用分散剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば該水硬性組成物用分散剤を含む水硬性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、下記(A)成分及び(B)成分を含む。
(A)成分:
一般式(A1)
【化6】

[式中、R1aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(A1)、
一般式(A2)
【化7】

[式中、R2aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。naは20以上150以下の平均付加モル数を示す。R3aは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A2)、
及び任意選択的に一般式(a3)
【化8】

[式中、R4aは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R5aは、炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A3)を有する共重合体であって、
構成単位(A1)、(A2)及び(A3)の合計に対する構成単位(A1)の割合が3質量%以上10質量%未満である、共重合体A。
(B)成分:
一般式(b1)
【化9】

[式中、R1bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(B1)、
一般式(b2)
【化10】

[式中、R2bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、メチレン基、エチレン基またはカルボニル基を示す。nbは30以上150以下の付加モル数を示す。R3bは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を示す。]
で表される構成単位(B2)を有する共重合体Bであって、
構成単位(B1)及び(B2)の合計に対する構成単位(B1)の割合が20質量%以上35質量%未満である、共重合体B。
【0009】
はじめに、(A)成分及び(B)成分について説明する。
(A)成分は、一般式(a1)
【化11】

[式中、R1aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(A1)、一般式(a2)
【化12】

[式中、R2aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。naは20以上150以下の平均付加モル数を示す。R3aは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A2)、及び任意選択的に一般式(a3)
【化13】

[式中、R4aは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R5aは、炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
で表される構成単位(A3)を有する共重合体Aである。
【0010】
一般式(a1)で表される構成単位(A1)は、一般式(a1’)で表される単量体を原料とすることにより、共重合体A中に導入することができる。
【化14】

[式中、R1aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
【0011】
一般式(a1’)のMとしては、水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属が例示できる。分散性が良い点で水素原子又はアルカリ金属が好ましい。
【0012】
一般式(a1’)のR1aとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等を例示できる。共重合体が収率よく得られる点で水素原子、メチル基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0013】
一般式(a2)で表される構成単位(A2)は、一般式(a2’)で表される単量体を原料とすることにより、共重合体A中に導入することができる。
【化15】

[式中、R2aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。naは20以上150以下の平均付加モル数を示す。平均付加モル数を示す。R3aは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
【0014】
一般式(a2’)のR2aとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等を例示できる。共重合体が収率よく得られる点で水素原子、メチル基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0015】
一般式(a2’)のXとしてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基またはカルボニル基を例示できる。モルタルフロー性能が良い点でアルキレン基が好ましく、メチレン基またはエチレン基がさらに好ましい。
【0016】
一般式(a2’)のnaは、モルタルフロー性能が良い点で好ましくは20以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上であり、そして、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは80以下である。また、本願では、2種以上の一般式(a2’)の単量体を用いてもよい。2種以上の単量体を用いた場合の平均付加モル数naは、それらのモル比に応じて算出した平均付加モル数と定義する。
【0017】
一般式(a2’)のR3aとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、シクロオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が例示できる。分散性が良い点で水素原子、メチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0018】
一般式(a3)で表される構成単位(A3)は、一般式(a3’)で表される単量体を原料とすることにより、共重合体A中に導入することができる。
【化16】

[式中、R4aは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R5aは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を示す。]
【0019】
一般式(a3’)のR4aとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等を例示できる。共重合体が収率よく得られる点で水素原子、メチル基が好ましい。
【0020】
一般式(a3’)のR5aとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、シクロオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が例示できる。流動保持性が良い点でメチル基又は2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0021】
構成単位(A3)は、共重合体Aに含まれていなくても、良好なモルタルフロー性能は十分に発現する。
【0022】
構成単位(A1)、(A2)及び(A3)の合計に対する構成単位(A1)の割合は、モルタルフロー性能が良い点で、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%未満、より好ましくは9質量%未満である。
【0023】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、保形性及び加振性が良い点で、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上であり、そして、好ましくは80000以下、より好ましくは70000以下である。また、Mwと数平均分子量(Mn)の比はMw/Mn、が1.0以上2.0以下であることが分散剤としての性能が良い点で好ましい。
【0024】
(A)成分は、汎用のビニル系高分子の共重合の条件で行うことができる。溶媒としては例えば水等を用いることができる。また、反応温度としては50℃以上100℃以下の範囲で行うことができる。反応時間は反応温度にもよるが、0.5時間以上10時間以下で行うことができる。また製造時のpHは3以下が好ましい。
【0025】
なお、(A)成分は、共重合体の様態でそのまま加えてもよいが、適当な溶媒(または分散媒)と共に加えてもよい。溶媒(または分散媒)としては水が好ましく、水と共に加えることが利便性の点で好ましい。水の溶液(または分散液)として加える場合は、本願組成物に必須な水にこれらの量の水を合算する必要があるが、水の溶液(または分散液)の濃度が高い場合や添加量が少ない場合は無視することができる。
【0026】
次に(B)成分について説明する。(B)成分は、一般式(b1)
【化17】

[式中、R1bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
で表される構成単位(B1)、
一般式(b2)
【化18】

[式中、R2bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。nbは30以上150以下の平均付加モル数を示す。R3bは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を示す。]
で表される構成単位(B2)を有する共重合体Bである。
【0027】
一般式(b1)で表される構成単位(B1)は、一般式(b1’)で表される単量体を原料とすることにより、共重合体B中に導入することができる。
【化19】

[式中、R1bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。]
【0028】
一般式(b1’)のMとしては、水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属が例示できる。分散性が良い点で水素原子又はアルカリ金属が好ましい。
【0029】
一般式(b1’)のR1bとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等を例示できる。モルタルフロー性能が良い点で水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0030】
一般式(b2)で表される構成単位(B2)は、一般式(b2’)で表される単量体を原料とすることにより、共重合体B中に導入することができる。
【化20】

[式中、R2bは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Xは、炭素数1以上4以下のアルキレン基またはカルボニル基を示す。nbは30以上150以下の平均付加モル数を示す。R3bは、水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を示す。]
【0031】
一般式(b2’)のR2bとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等を例示できる。共重合体が収率よく得られる点で水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0032】
一般式(b2’)のXとしてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基またはカルボニル基を例示できる。モルタルフロー性能が良い点でカルボニル基が好ましい。
【0033】
一般式(b2’)のnbは、モルタルフロー性能が良い点で好ましくは30以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上であり、そして、好ましくは150以下、より好ましくは130以下である。また、本願では、2種以上の一般式(b2’)の単量体を用いてもよい。2種以上の単量体を用いた場合の平均付加モル数nbは、それらのモル比に応じて算出した平均付加モル数と定義する。
【0034】
一般式(b2’)のR3bとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、シクロオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が例示できる。分散性が良い点で水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0035】
構成単位(B1)及び(B2)の合計に対する構成単位(B1)の割合は、モルタルフロー性能が良い点で、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは22質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%未満、より好ましくは30質量%未満、更に好ましくは25質量%未満である。
【0036】
(B)成分の重量平均分子量(Mw)は、モルタルフロー性能が良い点で好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上であり、そして、好ましくは80000以下、より好ましくは70000以下である。また、Mwと数平均分子量(Mn)の比はMw/Mn、が1.0以上2.0以下であることが分散剤としての性能が良い点で好ましい。
【0037】
(B)成分は、汎用のビニル系高分子の共重合の条件で行うことができる。溶媒としては例えば水等を用いることができる。また、反応温度としては50℃以上100℃以下の範囲で行うことができる。反応時間は反応温度にもよるが、0.5時間以上10時間以下で行うことができる。また製造時のpHは3以下が好ましい。
【0038】
(A)成分の添加量は、水硬性組成物の分散性が良い点で、水硬性組成物中の水硬性粉体に対して好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量部以下である。
【0039】
(B)成分の添加量は、水硬性組成物の分散性が良い点で、水硬性組成物中の水硬性粉体に対して好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
【0040】
なお、(B)成分は、共重合体の様態でそのまま加えてもよいが、適当な溶媒(または分散媒)と共に加えてもよい。溶媒(または分散媒)としては水が好ましく、水と共に加えることが利便性の点で好ましい。水の溶液(または分散液)として加える場合は、本願組成物に必須な水にこれらの量の水を合算する必要があるが、水の溶液(または分散液)の濃度が高い場合や添加量が少ない場合は無視することができる。
【0041】
(A)成分と(B)成分の質量比、[(A)成分/(B)成分]は、好ましくは10以下、より好ましくは3以下であり、更に好ましくは2以下であり、そして、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上である。
【0042】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(A)成分及び(B)成分以外に、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防腐剤、消泡剤を添加剤として含んでいてもよい。これらの添加剤は、(A)成分または(B)成分に対して0.01質量%以上2質量%以下含むことができる。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、ポリアルキレンオキシド系消泡剤、アルキルリン酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びエーテル系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が好ましい。
【0043】
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、及び普通ポルトランドセメントから選ばれるセメントがより好ましい。
【0044】
また、本発明の水硬性組成物に含まれる水は、不純物を含まず適度に精製されている水が好ましく使用されるが、井戸水、工業用水の使用も可能である。水道水、精製水、イオン交換水が好ましい。
【0045】
また、水硬性組成物の水硬性粉体に対する水の比率は、強度発現性及び水硬性組成物の成形性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0046】
本発明の分散剤は、良好なモルタルフロー値やロート流下時間を有するため、水硬性組成物用の分散剤として用いることができる。また、本発明の分散剤を含み、良好なモルタルフロー値やロート流下時間を有する水硬性組成物を提供することができる。
【実施例0047】
<実施例及び比較例>
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0048】
実施例、比較例で使用した各材料を以下に示す。
<(A)成分>
以下の化合物を構成単位(A1)及び(A2)の原料として用い、共重合体Aを製造した。
構成単位(A1)用原料:アクリル酸またはメタクリル酸
構成単位(A2)用原料:下記式(1)に示すポリエチレングリコールの3-メチル-3-ブテニルエーテル(以下、TPEG66と称す)、
【化21】

下記式(2)に示すポリエチレングリコールの2-メチル-2-プロペニルエーテル(以下、HPEGと称す)
【化22】

[式中、pは55(HPEG55と称す)または60(HPEG60と称す)である。]
または、下記式(3)に示すメチルポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(以下、MEPEGと称す)
【化23】

[式中、nbは120(MEPEG120と称す)を示す。]
【0049】
<共重合反応による(A)成分の製造>
比較例1の(A)成分を例に、(A)成分の製造方法を以下に示す。
撹拌機付きガラス製反応容器にTPEG66を220.7部と水141.3部を仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。その後、過酸化水素(35%)を0.7部添加した。アクリル酸21.3部を31.9部に溶解した水溶液と、3-メルカプトプロピオン酸1.2部を水38.0部に溶解した水溶液、の2者をそれぞれ3.0時間かけて、また、L-アスコルビン酸0.3部を水に溶解した水溶液を3.5時間かけて前記容器内に滴下した。その後、1時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム水溶液12.3部で中和し、重量平均分子量56000の共重合体(A)を含む水溶液を得た。と水とを含む反応生成物を得た。
【0050】
<(B)成分>
以下の化合物を構成単位(B1)及び(B2)の原料として用い、共重合体Bを製造した。
構成単位(B1)用原料:メタクリル酸
構成単位(B2)用原料:下記式(3)に示すMEPEG
【化24】

[式中、nbは23(MEPEG23と称す)、60(MEPEG60と称す)または120(MEPEG120と称す)を示す。]
なお、MEPEG60は、MEPEG120(nbが120)とMEPEG23(nbが23)の2種を、モル比3.6/5.9で混合して得た。得られた混合物のnbは、各々のnbの値とモル分率より下記式により算出した。
120×(3.6/9.5)+23×(5.9/9.5)=60
【0051】
<共重合反応による(B)成分の製造>
比較例4の(B)成分を例に、(B)成分の製造方法を以下に示す。
撹拌機付きガラス製反応容器に水432.42部を仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。(i)メタクリル酸及びMEPEG120エステルを含む水溶液(水分量39.15質量%、メタクリル酸量2.97質量%、MEPEG120エステル量51.37質量%)447.95部と、メタクリル酸56.27部と、2-メルカプトエタノール6.98部とを混合溶解した溶液、(ii)過硫酸アンモニウム4.85部を水19.40部に溶解した水溶液、の2者を、それぞれ1.5時間かけて、前記容器内に滴下した。次に過硫酸アンモニウム3.88部を水15.52部に溶解した水溶液を30分かけて滴下し、その後、1時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム水溶液9.86部で中和し、水を含む(B)成分を得た。
【0052】
製造した実施例及び比較例の水硬性組成物用分散剤組成物及び(A)成分と(B)成分のセメントとの質量比を表1に示す。
【表1】
【0053】
<その他材料>
セメント:太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメントと住友大阪
セメント(株)製普通ポルトランドセメントの1:1混合物(密度3.16g/cm
細骨材:山砂、密度2.72g/cm
【0054】
<水硬性組成物の製造>
JISR5201に規定されるモルタルミキサーに、セメント400重量部と細骨材700重量部を加え、空練り(60rpm、10秒)を行い、その後、表1に記載の含有量となるように(A)成分又は(B)成分を含む水を加え、混練(60rpm、120秒)し、表2に記載の水硬性組成物を調製した。
【0055】
表2の各実施例及び比較例の水硬性組成物用分散剤組成物を用い、モルタルフロー、ロート流下時間及び経時粘性の評価を行った。
【0056】
<モルタルフローの評価>
混練直後と混練後20分経過の水硬性組成物を、JIS R 5201に記載のフローコーン(上径70mm×下径100mm×高さ60mm)に充填し、30cm×30cmのプラスチック板上でフローを測定した。
【0057】
<ロート流下時間の評価>
混練直後と混練後20分経過後の水硬性組成物を、開口径100mmの上部投入開口と、開口径20mmの下部排出開口とを有する先細形状を備え、長さ300mmの筒からなる水硬性組成物流下時間測定装置を用い、排出口部をゴム詮にて塞ぎ、先の水硬性組成物サンプルを投入開口の面まで充填し(一定量)、排出口部のゴム詮を外し、水硬性組成物が全て排出されるまでの時間を測定した(特開2001-215185号の実施例1~6等参照)。
【0058】
<経時粘性の評価>
混練20分後のロート流下時間を、混練直後のロート流下時間で除した値(百分率%)を経時粘性とした。
【0059】
結果を表2に示す。
【表2】
【0060】
実施例1~4では、モルタルフローが混練直後で199~210mm、混練20分後で293~320mm、と良好な値を示した。また、ロート流下時間は、混練直後で12.1~12.6秒、混練20分後で10.3~11.3秒であり、経時粘性は85~91%と算出された。
(B)成分を含まず、(A)成分のna値が大きい(120)比較例1では、モルタルフローが実施例に比べて大きな値となった。比較例2でnaを66としても、(B)成分を含まないと混練20分後のロート流下時間が実施例よりも大きくなった。
(A)成分を含まない比較例3では、モルタルフロー値が大きく、また混練20分後にはロートを流下しなくなった。(A)成分中、(A1)の含有量が多い比較例4では、混練20分後のロート流下時間が23.5秒と長くなり、(B)成分のnbが小さい比較例5では、混練20分後のモルタルフローが大きくなった。
【0061】
このように、(A)成分及び(B)成分の組成比やna、nbを最適化することにより、良好なモルタルフロー値やロート流下時間を有する分散剤組成物を得ることができた。