(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073737
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B62D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184601
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】家田 将旭
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】黄 峻
(72)【発明者】
【氏名】井坂 琉那
(72)【発明者】
【氏名】長縄 明敏
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA34
3D030DB06
(57)【要約】
【課題】ステアリングシャフトの水平面に対する角度が小さい車両に搭載される場合であっても、簡易な構成で、運転者が操舵部を把持する際の手首の負担を軽減するとともに、操舵部の操作性が低下することを抑制することができるステアリングホイールを提供する。
【解決手段】ステアリングホイール10は、車両50のステアリングシャフト55に連結されるボス部3と、運転者Mに把持され、ステアリングシャフト55を中心に回転操舵される操舵部1とを備える。操舵部1は、ステアリングシャフト55の回転軸線Rと直交する平面Sに対し、前方側に倒れるように傾斜した操舵面Pを形成する一般部1ax1、1bx1と、一般部1ax1、1bx1の下端部1ax1b、1bx1bから前方に向かって屈曲する屈曲部1ax2、1bxとを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵軸に連結されるボス部と、
運転者に把持され、前記操舵軸を中心に回転操舵される操舵部であって、前記操舵軸の回転軸線と直交する平面に対し、前方側に倒れるように傾斜した操舵面を形成する第1の領域と、前記第1の領域の下端部から前方に向かって屈曲する第2の領域と、を有する操舵部と、
を備えることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記第1の領域の少なくとも一部は、鉛直方向において前記ボス部の中心に対して上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記第2の領域の全域は、鉛直方向において前記ボス部の中心に対して下方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記第2の領域は、前記平面に対して略平行に延びていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記操舵部の左右方向の外側の端面には、内側の端面よりも摩擦係数が高いグリップ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項6】
前記ステアリングホイールは、前記操舵軸の水平面に対する角度が0度以上、20度未満の前記車両に搭載されることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記ステアリングホイールは、前記操舵部の回転角度を検出するセンサを備え、該センサの検出結果に応じてタイヤを転舵させる前記車両に搭載されることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるステアリングホイールは、車両の操舵軸としてのステアリングシャフトに連結されるボス部と、運転者に把持され、ステアリングシャフトを中心に回転操舵される操舵部を備える。操舵部の操舵面は、ステアリングシャフトに対して直交するように配置されることが一般的である。
【0003】
また、ステアリングホイールの下方の空間、即ち運転者の足元の空間は、ステアリングシャフトの水平面に対する角度が小さくなる程、広く設計しやすい。ここで操舵部の操舵面がステアリングシャフトの回転軸線に対して直交して配置される構成において、ステアリングシャフトの水平面に対する角度が小さい場合、操舵部の操舵面が水平面に対して垂直に近い角度に配置されることになる。この場合、運転者が操舵部を把持する際に手首に負担がかかりやすくなる。
【0004】
一方、特許文献1では、ステアリングシャフトの回転軸線と直交する平面に対し、操舵面が前方に倒れるように傾斜して配置されたステアリングホイールが記載されている。このような構成により、操舵面の水平面に対する角度が小さくなるため、運転者が操舵部を把持する際に手首にかかる負担が軽減される。
【0005】
また、上記構成を採用する場合、操舵部の下部が運転者の腹部付近に近づくことになるため、運転者が操舵部を回転させた際に運転者の肘関節と腹部とが干渉しやすくなり、操舵部の操作性が低下するおそれがある。これに対して特許文献1では、操舵部の回転角度の増大に応じて操舵面を水平面に対して垂直に近づけるように変化させる機構を設けることにより、操舵部の下部を運転者の腹部付近から離間させて、操舵部の操作性が低下することを抑制する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の構成では、操舵部の回転角度の増大に応じて操舵面を水平面に対して垂直に近づけるように変化させるための機構として、アクチュエータ、モータ、ギアなどを有する機構が設けられている。このような機構を設ける場合、ステアリングホイールの構成が複雑化し、部品点数の増加や組立性の悪化を招来するおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、ステアリングシャフトの水平面に対する角度が小さい車両に搭載される場合であっても、簡易な構成で、運転者が操舵部を把持する際の手首の負担を軽減するとともに、操舵部の操作性が低下することを抑制することができるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るステアリングホイールの代表的な構成は、車両の操舵軸に連結されるボス部と、運転者に把持され、前記操舵軸を中心に回転操舵される操舵部であって、前記操舵軸の回転軸線と直交する平面に対し、前方側に倒れるように傾斜した操舵面を形成する第1の領域と、前記第1の領域の下端部から前方に向かって屈曲する第2の領域と、を有する操舵部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ステアリングホイールにおいて、ステアリングシャフトの水平面に対する角度が小さい車両に搭載される場合であっても、簡易な構成で、運転者が操舵部を把持する際の手首の負担を軽減するとともに、操舵部の操作性が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールを搭載した車両の運転席の周囲を左側から見た図である。
【
図2】ステアリングホイールの正面図と断面図である。
【
図7】ステアリングホイールを搭載した車両の運転席の周囲を左側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るステアリングホイール10について説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、相対配置は、特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るステアリングホイール10を搭載した車両50の運転席59の周囲を左側から見た図である。
図2は、ステアリングホイール10の正面図及び断面図である。
図3は、ステアリングホイール10の背面図である。
図4は、ステアリングホイール10の平面図である。
図5は、ステアリングホイール10の左側面図である。
図6は、ステアリングホイール10の斜視図である。
【0014】
以下の説明において、ステアリングホイール10に関して記載する各方向は、
図1に示す車両50にステアリングホイール10が搭載された状態の方向を意味する。つまり左右方向は、ステアリングホイール10を搭載した車両50の左方向と右方向、具体的には運転者Mから見た左方向と右方向を意味する。前後方向は、車両50の前方向と後方向、具体的には運転者Mから見た前方向と後方向を意味する。上下方向は、鉛直方向の上方向と下方向を意味する。
【0015】
図1に示す様に、ステアリングホイール10は、操舵軸としてのステアリングシャフト55に連結されることにより車両50に搭載されている。車両50は、ステアリングシャフト55の外周部を部分的に覆ってステアリングシャフト55を支持するコラムチューブ56aと、ステアリングシャフト55におけるインストルメントパネル57から後方に突出した部分を覆うコラムカバー56bから構成されるステアリングコラム56を備える。ステアリングホイール10は、インストルメントパネル57から後方に突出したステアリングシャフト55の先端に取り付けられる。
【0016】
図2~
図6に示す様に、ステアリングホイール10は、ステアリングシャフト55に連結されるボス部3と、ボス部3の周囲に配置され、運転者Mに把持されて回転操舵される操舵部1を有する。ボス部3は、ステアリングホイール10の前面側で、且つ、ステアリングホイール10の略中心に配置された鋼製の部材であり、ステアリングシャフト55が挿通されて嵌合される軸穴3aを有する。ボス部3の軸穴3aにステアリングシャフト55の先端が挿通され嵌合した状態で、ステアリングシャフト55の先端がナット止めされることにより、ボス部3とステアリングシャフト55とが連結される。
【0017】
また、ボス部3は、不図示の支持板金に支持されている。不図示の支持板金によるボス部3の支持は、例えば両者をダイキャスト加工によって一体成形する方法や、支持板金に対してビス等で固定する方法などが採られ得る。この支持板金は、ステアリングホイール10の前側と側面側とを覆うロアカバー5と、ステアリングホイール10の後側を覆うパッド4との間の空間に配置されている。このパッド4とロアカバー5との間の空間には、不図示の支持板金の他に、不図示のエアバッグや不図示のホーンスイッチなどが設けられている。
【0018】
操舵部1は、ボス部3の左右両側に位置し、運転者Mによって把持される部材である。操舵部1は、ボス部3の左側で略上下方向に延びる左操舵部1aと、ボス部3の右側で略上下方向に延びる右操舵部1bから構成されている。左操舵部1aは、芯金1wと、芯金1wの外周部を覆う基材1vと、左操舵部1aの前面の左側から後面の左側に亘って基材1vの外周部を覆うカバー部材1z(グリップ部)を有する。また、右操舵部1bは、ボス部3を基準として左操舵部1aと左右対称の形状であり、形状以外の構成は同一であるため、左操舵部1aと左右対称の形状の芯金1w、基材1v、及びカバー部材1z(グリップ部)を有する。本実施形態において、芯金1wはアルミ合金製であり、基材1vはアクリル樹脂製であり、カバー部材1zはウレタン樹脂製であるものの、他の材料でこれらを形成してもよい。カバー部材1zは、運転者Mが操舵部1を把持する際の触感やグリップ性を良好とするために設けられ、基材1vよりも表面の摩擦係数が高く構成された部材であり、接着剤によって基材1vの外周部に接着固定されている。このカバー部材1zにより、操舵部1の左右方向の外側の端面が内側(ボス部3側)の端面よりも触感が良好且つグリップ性が高く構成されている。なお、左操舵部1a及び右操舵部1bにおけるカバー部材1zが設けられている部分の上下方向の幅K1(
図2)は、運転者Mの手の幅の平均値以上の幅を確保するため、本実施形態では120mmに設定されている。幅K1は、110mm≦K1≦130mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0019】
また、左操舵部1aは、上部から下部にかけて運転者Mに近接するように後方に向かって延びる一般部1ax1(第1の領域)と、一般部1ax1の下端部1ax1bから前方に屈曲する屈曲部1ax2(第2の領域)を有する。同様に、右操舵部1bは、上部から下部にかけて運転者Mに近接するように後方に向かって延びる一般部1bx1(第1の領域)と、一般部1bx1の下端部1bx1bから前方に屈曲する屈曲部1bx2(第2の領域)を有する。一般部1ax1、1bx1は、鉛直方向においてボス部3の中心に対して上方から下方に亘って配置されている。屈曲部1ax2、1bx2は、その全域が鉛直方向においてボス部3の中心に対して下方に配置されている。なお、
図5に示す一点鎖線はボス部3の中心線である。これらの一般部1ax1、1bx1及び屈曲部1ax2、1bx2は、芯金1wの形状等を変化させることにより簡単に形成することができる。
【0020】
また、左操舵部1aの上端部1a1の右端と下端部1a2の左端とを結ぶ仮想線と鉛直方向との成す角度θ5(
図2)は、本実施形態では15度に設定されている。右操舵部1bは、左操舵部1aと左右対称形状であることから、右操舵部1bの上端部1b1の左端と下端部1b2の右端とを結ぶ仮想線と鉛直方向との成す角度も15度に設定されている。このように角度θ5を15度に設定することにより、運転者Mを自然な運転姿勢に誘導することができる。
【0021】
また、ステアリングホイール10は、左操舵部1aの上端部1a1と右操舵部1bの上端部1b1とを連結する上連結部7を有する。上連結部7は、左操舵部1a及び右操舵部1bとビス93によってそれぞれ連結されている。また、上連結部7の左右方向の中央部は、ボス部3を支持する不図示の支持板金と不図示のビスによって連結されている。また、ステアリングホイール10は、左操舵部1aの下端部1a2とボス部3を支持する支持板金とを連結する左連結部8と、右操舵部1bの下端部1b2とボス部3を支持する支持板金とを連結する右連結部9を有する。左操舵部1aと左連結部8は、不図示のビスによって連結されている。右操舵部1bと右連結部9は、不図示のビスによって連結されている。また、左連結部8及び右連結部9は、ボス部3を支持する不図示の支持板金と不図示のビスによって連結されている。このようにして操舵部1は、上連結部7、左連結部8、右連結部9、及びボス部3を支持する支持板金を介してボス部3に連結されている。
【0022】
また、左操舵部1aの左端面と右操舵部1bの右端面との間の距離K2(
図4)は、本実施形態では370mmに設定されている。これを実現するために、上連結部7における左操舵部1aとの連結部7aが延びる方向と左右方向との成す角度θ1a(
図4)、及び上連結部7における右操舵部1bとの連結部7bが延びる方向と左右方向との成す角度θ1b(
図4)は、本実施形態ではそれぞれ30.4度に設定されている。従来の操舵部が円環状のステアリングホイールにおいて、操舵部の外端面を基準とした直径は約370mmである。このため、本実施形態のように距離K2を370mmに設定することにより、操舵部1が円環状である場合と同等の操舵性を実現することができる。
【0023】
運転者Mは、操舵部1の左操舵部1aを左手で把持し、右操舵部1bを右手で把持し、ステアリングシャフト55を中心として操舵部1を回転操舵することによって車両50を右折又は左折させて車両50の進行方向を変更する。本実施形態のステアリングホイール10は、操舵部1の回転角度を検出する不図示のセンサを備え、当該センサの検出結果に応じて車両50がタイヤを転舵させるステア・バイ・ワイヤ・システムを採用している。
【0024】
次に、ステアリングホイール10を構成する各部材の位置関係などについて詳しく説明する。
図7は、ステアリングホイール10を搭載した車両50の運転席59を左側から見た図である。なお、
図7は、
図1に対して、水平面Hやステアリングシャフト55の回転軸線Rや操舵面Pなどを挿入した図に相当する。
【0025】
図7に示す様に、車両50におけるステアリングシャフト55の水平面Hに対する角度θ2は、本実施形態では12度に設定されている。この角度θ2は、通常は20度程度に設定されるのが一般的である。しかしながら、角度θ2が小さくなる程、運転者Mの足元の空間を広く設計できることから、本実施形態では角度θ2を通常より小さく設定している。この角度θ2は、0度≦θ2<20度の範囲で設定されるのが好ましい。
【0026】
また、角度θ2が小さい値に設定されており、且つ、操舵部1の操舵面Pがステアリングシャフト55の回転軸線Rと直交する平面Sと平行に設けられている場合、操舵面Pが水平面Hに対して垂直に近い角度に配置されることになる。ここでいう操舵部1の操舵面Pとは、左操舵部1aの一般部1ax1の後端面1ax1aと右操舵部1bの一般部1bx1の後端面1bx1aとに接する仮想平面である。また、ステアリングシャフト55の回転軸線Rとは、ステアリングシャフト55の回転中心を結ぶ仮想線であり、無限に延びる仮想線である。この場合、運転者Mが操舵部1を把持する際に手首に負担がかかりやすくなる。
【0027】
そこで本実施形態では、操舵面Pがステアリングシャフト55の回転軸線Rと直交する平面Sに対し、前方側に倒れるように傾斜している。換言すれば、操舵部1において、左操舵部1aの一般部1ax1と右操舵部1bの一般部1bx1は、ステアリングシャフト55の回転軸線Rと直交する平面Sに対し、前方側に倒れるように傾斜した操舵面Pを形成するように構成されている。このような構成により、角度θ2が小さい場合であっても、操舵面Pの水平面Hに対する角度を水平に近づけることができるため、運転者Mの足元に広い空間を確保しつつ、運転者Mが操舵部1を把持する際に手首にかかる負担を軽減することができる。
【0028】
また、操舵面Pを平面Sに対して上記のように傾斜させる場合、操舵部1の下部が運転者Mの腹部付近に近づくことになる。このため、運転者Mが操舵部1を回転させた際に運転者Mの肘関節と腹部とが干渉しやすくなり、操舵部1の操作性が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、操舵部1の下部において、一般部1ax1、1bx1の下端部1ax1b、1bx1bから前方に屈曲する屈曲部1ax2、1bx2を設けている。これにより操舵部1の下部を運転者Mの腹部付近から離間させることができるため、操舵部1の操作性が低下することを抑制することができる。なお、ここでいう屈曲部1ax2、1bx2が前方に屈曲するとは、少なくとも一般部1ax1、一般部1bx1が延びる方向に対して前方に向かって屈曲することを意味し、必ずしも屈曲部1ax2、1bx2が前後方向において前方に向かって延びている必要はない。つまり操舵面Pと屈曲部1ax2、1bx2との成す角度θ4が、運転者Mから離間する方向を正とする場合に正の値となるように屈曲部1ax2、1bx2が構成されていればよい。本実施形態では、角度θ4は24.5度に設定されている。
【0029】
また、操舵部1の一般部1ax1、1bx1や屈曲部1ax2、1bx2は、芯金1wの形状などを変化させることによって簡易に形成することができる。このため、本実施形態のステアリングホイール10によれば、ステアリングシャフト55の水平面Hに対する角度が小さい車両50に搭載される場合であっても、簡易な構成で、運転者Mが操舵部1を把持する際の手首の負担を軽減するとともに、操舵部1の操作性が低下することを抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態では、ステアリングシャフト55の回転軸線Rと直交する平面Sと操舵面Pとの成す角度θ3を25度に設定している。これは通常20度に設定される角度θ2を12度に傾けた傾斜分を補正するための8度に対し、操舵部1の操作性を考慮して更に17度傾けて、これらの8度と17度の合計値として角度θ3を25度としている。角度θ3は、少なくとも20度から角度θ2を引いた値とすることにより、運転者Mが操舵部1を把持する際に手首にかかる負担を通常と同程度まで軽減することができる。つまりθ3≧20-θ2(度)に設定することにより、運転者Mが操舵部1を把持する際に手首にかかる負担を通常以上に軽減することができる。角度θ3は0度<θ3≦50度の範囲で設定されるのが好ましい。
【0031】
また、本実施形態では、操舵部1の屈曲部1ax2、1bx2がステアリングシャフト55の回転軸線Rと直交する平面Sと略平行に延びている。ここでいう略平行とは、屈曲部1ax2、1bx2の後端面1ax2a、1bx2aが平面Sに対して平行に延びる構成の他に、平行から±5度の範囲でずれて延びている構成が含まれる。また、本実施形態では、平面Sと屈曲部1ax2、1bx2の後端面1ax2a、1bx2aとの間の距離K3は20.3mmに設定されている。このような構成により、運転者Mの腹部と屈曲部1ax2、1bx2との間の距離が、仮に操舵部1が円環状である場合の距離と同等となる。
【0032】
なお、本実施形態では、ステア・バイ・ワイヤ・システムを採用したステアリングホイール10について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、操舵部1の回転操舵時にステアリングシャフト55を介して車両50のタイヤを機械的に転舵させる構成としてもよい。但し、ステア・バイ・ワイヤ・システムを採用する場合、操舵部1の回転角度が相対的に小さくなり、操舵部1の回転方向において屈曲部1ax2、1bx2が運転者Mの腹部付近に配置されやすくなるため、上述した効果をより得やするため好ましい。
【0033】
また、本実施形態では、操舵部1が上下方向に概ね直線的に延びる操舵部1を備えるステアリングホイール10を例示して本発明を説明したものの、本発明はこれに限られず、他の形状の操舵部1に本発明を適用してもよい。例えば、円環状の操舵部1に本発明を適用しても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…操舵部、1ax1、1bx1…一般部(第1の領域)、1ax2、1bx2…屈曲部(第2の領域)、1z…カバー部材(グリップ部)、3…ボス部、10…ステアリングホイール、50…車両、55…ステアリングシャフト(操舵軸)、H…水平面、M…運転者、P…操舵面、R…回転軸線、S…平面(操舵軸の回転軸線と直交する平面)