(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073772
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】車両の電力マネジメントシステム、プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240523BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240523BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240523BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240523BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240523BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J7/00 P
H02J7/34 J
H02J3/14 130
H02J3/32
H02J13/00 311T
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184660
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英明
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB21
5G064DA11
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066KA04
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】所有者の自宅等で充電を行う車両は今後とも増加していくことが予想される。そして、電力が逼迫状況となった際にV2H給電を行うことにより、家庭への供給電力を削減することができる。そして、電力が逼迫状況となった際には、多くの車両についてV2H給電を行うことにより、逼迫状況が緩和されると予想される。しかしながら、電力の逼迫状況が改善すると、多くのV2H機器が一斉に車両に充電を開始することとなり、電力供給量が急激に高まって大規模停電が生じてしまう虞がある。
【解決手段】電力の逼迫状況が改善すると、車両とV2H機器が節電要請によるV2H給電状態を解除して、前記車両への充電を抑制する充電抑制状態に移行させ、電力の逼迫状況が充電可能状況となると、前記充電抑制状態を解除して、前記V2H機器から前記車両への充電を開始させることを特徴とする電力マネジメントシステムを用いる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の逼迫状況が改善すると、車両とV2H機器が節電要請によるV2H給電状態を解除して、前記車両への充電を抑制する充電抑制状態に移行させ、
電力の逼迫状況が充電可能状況となると、前記充電抑制状態を解除して、前記V2H機器から前記車両への充電を開始させることを特徴とする電力マネジメントシステム。
【請求項2】
電力予備率が閾値以上となると、前記充電可能状況として前記充電抑制状態を解除することを特徴とする請求項1に記載された電力マネジメントシステム。
【請求項3】
前記車両と通信可能なサーバに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載された電力マネジメントシステム。
【請求項4】
前記車両に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載された電力マネジメントシステム。
【請求項5】
前記V2H機器に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載された電力マネジメントシステム。
【請求項6】
携帯端末に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載された電力マネジメントシステム。
【請求項7】
コンピュータに、
電力の逼迫が改善して節電要請解除となると、車両とV2H機器の節電要請によるV2H給電状態を終了して、前記車両への充電を抑制する充電抑制状態に移行させる給電終了工程と、
電力の逼迫状況が充電可能状況となると、前記充電抑制状態を解除して、前記V2H機器から前記車両への充電を開始させる充電開始工程と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
前記充電開始工程は、
電力予備率が閾値以上となると、前記充電可能状況として前記充電抑制状態を解除することを特徴とする請求項7に記載されたプログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
電力の逼迫が改善して節電要請解除となると、車両とV2H機器の節電要請によるV2H給電状態を終了して、前記車両への充電を抑制する充電抑制状態に移行させる給電終了工程と、
電力の逼迫状況が充電可能状況となると、前記充電抑制状態を解除して、前記V2H機器から前記車両への充電を開始させる充電開始工程と、
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能である非一時的な有形の記録媒体。
【請求項10】
前記充電開始工程は、
電力予備率が閾値以上となると、前記充電可能状況として前記充電抑制状態を解除することを特徴とする請求項9に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能である非一時的な有形の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力により走行する車両への充電を行う、車両の電力マネジメントシステム、プログラム、および記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヨーロッパではEV(電気自動車)が普及し、日本においてもEVが増えつつある。ヨーロッパでは、ガソリンを使用しないバッテリー式電気自動車であるBEVだけでも、自動車販売の10%以上を占めるようになっている。一方で、昨今では、発電所が作動できない等の理由で電力需給量の余裕が小さくなっている。そして、電力の逼迫が生じて電力消費を控える旨の電力会社や政府からの要請が行われることが多くなってきている。
【0003】
EVの車両のうち、BEVやPHEV(プラグインハイブリッド自動車)は所有者の自宅等で充電を行う。これらの充電には1台について数kwを要し、電力が逼迫する時間帯で多数の車両が充電を行うと、使用電力量が多くなり、大規模な停電が発生してしまう可能性がある。
【0004】
特許文献1では、電力の逼迫に対応するため、電力系統の電力が逼迫しなくなるまで外部充電の開始を延期する充電システムが記載されている。この充電システムにより、外部の電力系統の電力が外部充電により更に逼迫することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
所有者の自宅等で充電を行う車両は今後とも増加していくことが予想される。そして、電力が逼迫状況となった際にV2H給電を行うことにより、家庭への供給電力を削減することができる。そして、電力が逼迫状況となった際には、多くの車両についてV2H給電を行うことにより、逼迫状況が緩和されると予想される。しかしながら、電力の逼迫状況が改善すると、多くのV2H機器が一斉に車両に充電を開始することとなり、電力供給量が急激に高まって大規模停電が生じてしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における電力マネジメントシステムは、電力の逼迫状況が改善すると、車両とV2H機器が節電要請によるV2H給電状態を解除して、前記車両への充電を抑制する充電抑制状態に移行させ、電力の逼迫状況が充電可能状況となると、前記充電抑制状態を解除して、前記V2H機器から前記車両への充電を開始させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一実施形態におけるプログラムは、コンピュータに、電力の逼迫が改善して節電要請解除となると、車両とV2H機器の節電要請によるV2H給電状態を終了して、前記車両への充電を抑制する充電抑制状態に移行させる給電終了工程と、電力の逼迫状況が充電可能状況となると、前記充電抑制状態を解除して、前記V2H機器から前記車両への充電を開始させる充電開始工程と、を実行させるためのものであることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の一実施形態におけるコンピュータ読み取り可能である非一時的な有形の記録媒体は、コンピュータに、電力の逼迫が改善して節電要請解除となると、車両とV2H機器の節電要請によるV2H給電状態を終了して、前記車両への充電を抑制する充電抑制状態に移行させる給電終了工程と、電力の逼迫状況が充電可能状況となると、前記充電抑制状態を解除して、前記V2H機器から前記車両への充電を開始させる充電開始工程と、を実行させるためのプログラムを記録したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、電力の逼迫状況が改善された際に、車両への充電開始によって電力供給量が高まって再び電力が逼迫したり、更には大規模停電が生じたりする虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例1における電力逼迫時のV2H給電工程。
【
図5】実施例2における要請解除から車両への充電開始までの工程。
【
図6】実施例2における車両への充電抑制解除フロー。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記す実施例の制御部等における制御は、CPUを含むコンピューターシステムと、記憶装置に記憶されたソフトウェアにより実現される。
【実施例0013】
図1に実施例1の電力マネジメントシステムを含んだ充電システムを示す。発電所から変電所を経て各戸へ給電する構成については、記載を省略する。実施例1の充電システムはV2H給電に対応するものである。
図1の車両1はV2Hに対応しており、家2に設けられたV2H機器3に接続している。V2H機器3はV2Hに対応した充電装置である。サーバ4は、ネットワークNで電力会社システム5と通信可能に接続している。また、サーバ4は、移動体通信システムMを介して、無線により車両1と携帯端末6に通信可能に接続している。携帯端末6は、スマートフォン等である。サーバ4は、制御部41と記録媒体42を備えている。
【0014】
実施例1の電力マネジメントシステムは、サーバ4に設けられている。実施例1のサーバ4は、車両を製造した会社(OEM)が運営するが、電力会社や自動車工業会等の他の組織が運営してもよい。
【0015】
車両1はバッテリー12に充電された電力により走行する電気自動車である。充給電口13から車両充給電部14を介してバッテリー12に充電したり、バッテリー12から家2へV2H給電したりする。また、制御部11が充給電口13からV2H機器3と有線で通信したりする。車両充給電部14は制御部11に制御される。車両1は、V2H機器3と有線で通信するための車両通信部15を備えている。車両通信部15は、無線により移動体通信システムMを介して、サーバ4とも接続する。
【0016】
V2H機器3は、家2に設けられた電力量計21と分電盤22の間に接続しており、車両1と接続することが可能である。
図1では、V2H機器3は車両1と接続している。V2H機器3は、充給電部31、充給電部31に接続した充給電ケーブル32、充給電ケーブル32の先端に設けられた車両用コネクタ33、車両1との間で通信を行う通信部34を備えている。また、電力量計21と分電盤22の間には、V2H切替盤35が接続されている。V2H切替盤35は、分電盤22に供給する電力を、電力量計21からと、充給電部31からとで切り替える。充給電部31には、充給電部31の動作を制御する制御部311が設けられている。
【0017】
車両1の充給電口13には、V2H機器3の車両用コネクタ33が接続され、充給電ケーブル32を介して、充給電部31から車両充給電部14を介してバッテリー12に充電することができる。充給電部31へは、電力量計21からV2H切替盤35を介して電力が供給される。また、車両1のバッテリー12から車両充給電部14、V2H機器3を介して家2の分電盤22へ電力を供給し、V2H給電することができる。充給電ケーブル32には、送電用電力線とともに通信ケーブルが埋め込まれており、車両用コネクタ33と充給電口13を介して、V2H機器3の通信部34と車両1の車両通信部15の間での通信が行われる。
【0018】
電力会社システム5からは、節電要請がネットワークNを介して送信される。サーバ4は、ネットワークNから節電要請を受信して、車両電力マネジメントのための指示等の情報を作成し、移動体通信システムM経由で車両1に送信する。移動体通信システムMは、移動体通信事業者が提供する通信システムである。
【0019】
実施例1において、サーバ4は、車両電力マネジメントシステムである。また、サーバ4は、車両電力マネジメントを行わせるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体42を有し、このプログラムにより制御部41によって車両電力マネジメントが実行される。記録媒体は非一時的な有形のものであり、USBメモリ等のサーバ4から取り外し可能なものであってもよい。
【0020】
次に、実施例1の車両電力マネジメントの流れについて説明する。まず、電力が逼迫した際に車両1から家2にV2H給電を行う工程について説明し、それから、電力の逼迫が改善した際のV2H給電を終了する工程、車両への充電を開始する工程を説明する。各ステップの制御は、記録媒体42に記憶されたプログラムによりCPUである制御部41で処理を行うことにより実行される。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶することができるものである。
【0021】
電力会社システム5とサーバ4の間の送受信は、ネットワークNを介して行われる。また、サーバ4は、移動体通信会社の移動体通信システムMに接続している。実施例1におけるネットワークNはインターネットである。そして、サーバ4は、移動体通信システムMから無線により、車両1との間で通信を行う。車両1は車両通信部15によりこの通信を行う。また、サーバ4は、移動体通信システムMから無線により、携帯端末6との間でも通信する。車両1とV2H機器3の間は、充給電ケーブル32に埋め込まれた通信ケーブルにより、送受信が行われる。
【0022】
<電力逼迫時のV2H給電工程>
電力が逼迫した際に、家2の分電盤22の電源供給元を商用電源からV2H給電に切り換えれば、電力会社が供給する電力に余裕が生まれることが期待される。電力逼迫時のV2H給電工程を
図2に示す。
【0023】
(V2H給電要請工程)
実施例1では、電力が逼迫すると、電力会社が電力逼迫警報や電力逼迫注意報を発する。そして、車両マネジメントシステムによる節電の協力要請を行うか判断する。電力会社は、例えば、電力予備率が3%を下回ると予想した場合には、電力逼迫警報を発し、電力予備率が3~5%と予測した場合には電力逼迫注意報を発する。電力逼迫警報を発した場合と、電力逼迫注意報を発した場合のどちらの場合でも、電力会社は車両マネジメントシステムによる節電の協力要請をするか判断する。そして、協力要請を行うと判断されると、その結果が電力会社システム5に入力される(ステップSf1)。電力会社システム5は、節電要請通知をサーバ4に送信する(ステップSf2)。
【0024】
(V2H給電可否判定工程)
節電要請通知を受けると、サーバ4は、V2H給電を行うために、車両1の充電状況を入手する。そのため、サーバ4は、車両1に向けて充電情報要求を行う(ステップSf3)。サーバ4には、予め対象となる複数の車両1が登録されている。登録されている車両1の数が多いほど、電力会社が供給する電力に余裕が生じさせることができる。
【0025】
充電情報要求を受けた車両1は、充給電ケーブル32が接続中であるか否か、バッテリー12の充電率がSOC以上であるか否かを示す充電情報をサーバ4へ送信する(ステップSf4)。SOCは、充電率がSOC以下の場合にV2H給電を行わないとした放電下限であり、一般的に車両1のユーザが設定する。
【0026】
充電情報を受信したサーバ4では、制御部41において車両充電状況判定を行う(ステップSf5)。充給電ケーブル32が接続していなければ、V2H給電を行うことができない。また、バッテリー12の充電率がSOCよりも大きくない場合は、充電率が減少することは好ましくないため、V2H給電を行わない。充給電ケーブル32が接続中であり、バッテリー12の充電率がSOCよりも大きい場合には、制御部41がV2H給電可能と判定する。充給電ケーブル32が接続中でないか、バッテリー12の充電率がSOC以上でない場合には、処理を終了する。実施例1では、充電率がSOCよりも大きい場合にV2H給電可能と判定したが、SOCよりも所定値以上大きい場合にV2H給電可能としてもよい。
【0027】
(V2H給電承認工程)
V2H給電可能と判定すると、サーバ4は、車両1のユーザにV2H給電の承認を求める。そのため、サーバ4は、ユーザが所有するユーザの携帯端末6に向けてユーザ承認要求を送信する(ステップSf6)。サーバ4では、携帯端末6を車両1に紐付けて記憶している。携帯端末6では、電力が逼迫しているため電力会社からV2H給電の要請がある旨と、V2H給電の承認を求める旨が表示される。携帯端末6でユーザが承認すると(ステップSf7)、承認情報の送信が行われる(ステップSf8)。
【0028】
(V2H給電開始工程)
サーバ4は、承認情報を受信すると、車両1にV2H給電の指示を行う(ステップSf9)。V2H給電の指示を受けた車両1では、V2H給電を開始する(ステップSf10)。この時、サーバ4からのV2H給電の指示には、節電要請であることを示す情報が含まれており、車両1では、節電要請によるV2H給電状態であることを記憶する。そして、V2H機器3に切替指示を送信する(ステップSf11)。切替指示を受信したV2H機器3では、V2H切替盤35における電源切替(ステップSf12)を行う。電源切替では、分電盤22への電力供給元を、電力量計21を介した商用電源から、充給電部31からのV2H給電に切り換える。V2H給電は、車両1のバッテリー12から供給された電力をV2H機器3で交流化するとともに適切な電圧にして、分電盤22に供給することにより行われる。V2H機器3で切替が終了してV2H給電状態となると、V2H機器3は、車両1へ向けて、切り換えた旨を示す切替情報を送信する(ステップSf13)。切替情報を受信した車両1は、サーバ4へ向けて、切替通知を送信する(ステップSf14)。切替通知を受けたサーバ4では、車両IDとV2H給電を開始した時間をV2H給電情報として記憶する(ステップSf15)。
【0029】
(V2H給電の終了について)
V2H給電の最中に車両用コネクタ33を充給電口13から取り外すと、V2H給電は終了し、分電盤22は電力量計21を介した商用電源を電力供給元とする。また、バッテリー12の充電率がSOCまで下がった場合もV2H給電は終了する。V2H給電が終了すると、節電要請によるV2H給電状態であるとの記憶を解除する。また、車両1は、サーバ4にV2H給電終了を通知する。これにより、サーバ4では、節電要請によるV2H給電状況を記憶することができる。
【0030】
<電力逼迫状況の改善によるV2H給電の終了工程>
電力の逼迫状況が改善した際には、電力会社はV2H給電の要請を解除し、車両1とV2H機器3はV2H給電状態を解除する。電力逼迫状況の改善によるV2H給電の給電終了工程を
図3に示す。
【0031】
(V2H給電要請解除工程)
実施例1では、電力会社は、電力予備率が3%を下回ると予想した場合に電力逼迫警報とし、電力予備率が3~5%と予測した場合に電力逼迫注意報とする。電力逼迫警報や電力逼迫注意報の状態から電力の逼迫状況が改善した場合には、電力会社で節電要請を解除するか否かを判断する。要請解除と判断すると要請解除を電力会社システム5に入力する(ステップSs1)。要請解除が入力されると、サーバ4に向けて要請解除送信を行う(ステップSs2)。節電解除送信を受けると、サーバ4は、車両1に向けてV2H給電の終了指示を送信する(ステップSs3)。
【0032】
(V2H給電終了工程)
終了指示を受信すると、車両1では、V2H給電状況判定を行う(ステップSs4)。V2H給電状況判定では、節電要請によるV2H給電状態である場合には、V2H給電を終了して充電抑制状態となる(ステップSs5)。充電抑制状態では、車両1のバッテリー12への充電を行わない。節電要請によらないV2H給電状態である場合には、V2H給電を終了しない。また、ユーザが充給電口13から車両用コネクタ33を取り外したこと等によりV2H給電を既に終了している場合には、節電要請によるV2H給電状態ではなく、V2H給電の終了動作は行わない。
【0033】
V2H給電が終了すると、車両1からV2H機器3への給電が停止する(ステップSs6)。車両1からの給電が停止すると、V2H機器3は、分電盤22の電源供給元を、車両1のバッテリー12から電力量計21を介した商用電源に切り換える(ステップSs7)。そして、車両1に切替情報を送信する(ステップSs8)。なお、ユーザが充給電口13から車両用コネクタ33を取り外したこと等によりV2H給電を終了した後に、再び車両用コネクタ33を接続した場合には、節電要請によるV2H給電状態であるとの記憶は解除されており、節電要請によらないV2H給電となる。
【0034】
切替情報を受信した車両1は、サーバ4へ切替通知を送信する(ステップSs9)。切替通知を受信したサーバ4は、携帯端末6へ、V2H給電の終了通知を送信する(ステップSs10)。終了通知を受けた携帯端末6では、電力会社からの節電要請の解除によりV2H給電が終了された旨を表示して(ステップSs11)、ユーザに報知する。
【0035】
実施例1では、節電要請の解除が行われた際にV2H給電を終了するが、直ちに車両1へ充電を開始しない。節電要請の解除が行われると、車両1およびV2H機器3は、車両1のバッテリー12への充電を行わない充電抑制状態となる。充電抑制状態の解除は、次に記載する車両への充電開始工程で行われる。
【0036】
<車両への充電開始工程>
節電要請が解除された後に、さらに電力状況が改善して充電可能状況となった場合には、車両への充電抑制状態を解除して、V2H機器3から車両1への充電を開始する。車両への充電開始工程を
図4に示す。
【0037】
(車両への充電抑制解除工程)
電力会社では、電力の逼迫状況が改善した場合に、電力予備率が閾値以上であるか否かにより、充電可能状況であるか判断する。この際の閾値は、節電要請解除の際の電力予備率よりも大きい値であり、V2H機器3から車両1への充電が多数箇所で行われても電力の逼迫状況が電力逼迫注意報の電力予備率にならない程度の電力予備率に設定される。そして、充電可能状況であると判断された場合には、電力会社システム5に車両充電抑制解除が入力される(ステップSc1)。車両充電の抑制を解除するという結果である場合、電力会社システム5は、サーバ4に向けて充電抑制解除通知を送信する(ステップSc2)。電力の逼迫状況が充電可能状況となったことを示す充電抑制解除通知を受けたサーバ4は、車両1へ向けて抑制解除指示を送信する(ステップSc3)。
【0038】
(車両充電開始工程)
抑制解除通知を受けた車両1は、V2H給電状況判定を行う(ステップSc4)。V2H給電状況判定では、充電抑制状態である場合には充電抑制状態を解除する。そして、車両用コネクタ33が充給電口13に接続中であり、かつ、車両1に充電が必要であるかを判定する。車両用コネクタ33が充給電口13に接続中であり、かつ、車両1に充電が必要である場合には、V2H機器3に充電開始指示が送信される(ステップSc5)。充電開始指示を受けたV2H機器3は、車両1に電力を供給する(ステップSc6)。電力の供給を受けた車両1では、車両1のバッテリー12への充電が開始する(ステップSc7)。
【0039】
<変形例>
上記実施例において、節電要請、要請解除、充電抑制解除は、電力会社システム5からネットワークN経由でサーバ4に送信される。しかし、電力会社からサーバ4の管理者に電話やファクシミリ、メール等で節電要請等を通知して、管理者がサーバ4に入力することにより、サーバ4から車両1や携帯端末6へのV2H給電指示、終了指示、充電抑制解除指示等の送信を行ってもよい。
【0040】
また、
図2に示したステップSf9のV2H給電指示の前にV2H給電が行われていた場合には、ステップSf4で送られる充電情報により、サーバ4はV2H給電が行われていることを認識してもよい。この場合は、サーバ4はステップSf5でV2H給電が行われているという状況を判定してステップSf6のユーザ承認要求以降の工程を行わないようにする。さらに、
図3に示したステップSs3の終了指示や、
図4に示したステップSc3の充電抑制解除指示も行われない。
電力の逼迫状況が改善した際には、実施例1と同様に電力会社は電力会社システム5から要請解除通知を送信し、車両1とV2H機器3はV2H給電を終了して充電抑制状態となる。実施例2では、電力会社システム5は、電力予備率を所定時間間隔でサーバ7へ送信している。そして、電力予備率に基づいてサーバ7で充電抑制解除の判定を行い、車両1に充電抑制解除通知を送信して、車両1への充電を開始する。このように、実施例2では、充電抑制解除の判定を電力マネジメントシステムであるサーバ7で行う。
電力逼迫警報や電力逼迫注意報の状態から電力の逼迫状況が改善した場合には、電力会社で節電要請を解除するか否かを判断する。要請解除と判断すると要請解除を電力会社システム5に入力する(ステップSd1)。そして、電力会社システム5からサーバ7に向けて、節電要請の解除通知が送られる(ステップSd2)。また、電力会社システム5からは、所定時間間隔で、電力予備率がサーバ7へ送られている。サーバ7は、各時点での電力予備率を大きな遅延なく取得する(ステップSd3)。実施例2においては、電力会社システム5からサーバ7への電力予備率の送信は、ステップSd2の要請解除通知が行われた後に、所定時間間隔で行われる。しかし、V2H給電工程の開始の後に所定時間間隔で行ってもよく、他のタイミングから所定時間間隔で行ってもよい。また、常に所定時間間隔で電力予備率の送信を行ってもよい。
サーバ7は、要請解除通知を受けると、V2H給電の終了工程を行う(ステップSd4)。V2H給電の終了工程(ステップSd4)は、サーバ7、車両1、V2H機器3、携帯端末6の間で行われる、実施例1における、ステップSs3~ステップSs10と同じ工程である。この工程により、V2H給電の終了が行われ、車両1への充電抑制状態となる。
V2H給電の終了工程が終わると、サーバ7は充電抑制解除の判定を行う(ステップSd5)。充電抑制解除の判定では、要請解除状態で、電力予備率が閾値以上であると、充電可能状況として充電抑制状態を解除する。充電抑制状態を解除すると判定した場合には、充電抑制解除通知を車両1へ送信する(ステップSd6)。この際の閾値は、節電要請解除の際の電力予備率よりも大きい値であり、V2H機器3から車両1への充電が多数箇所で行われても電力の逼迫状況が電力逼迫注意報の電力予備率にならない程度の電力予備率に設定される。充電抑制解除の判定では、電力予備率が閾値に達する前は充電抑制解除通知が送信されず、充電抑制状態が維持される。
また、サーバ7は、電力会社システム5に予備率送信停止連絡を送信する(ステップSd7)。これにより、電力会社システム5は、サーバ7への電力予備率の送信を停止する。なお、予備率送信停止連絡を受けていないサーバについては、引き続き電力予備率を送信する。
車両1は、充電抑制解除通知を受けると、V2H給電状況の判定を行う(ステップSd8)。V2H給電状況判定では、充電抑制状態である場合には充電抑制を解除する。そして、充給電ケーブル32が接続中であり、かつ、充電が必要である場合には、V2H機器3に充電開始指示が送信される(ステップSd9)。充電開始指示を受けたV2H機器3は車両1に電力を供給する(ステップSd10)。電力の供給を受けた車両1では、バッテリー12への充電が開始する(ステップSd11)。
実施例1、2および変形例では、サーバ4、7が電力マネジメントシステムの役割を果たしている。しかし、車両1やV2H機器3を電力マネジメントシステムとしてもよい。また、車両1、V2H機器3、サーバ4、7の全体を電力マネジメントシステムと言うこともできる。各工程を実行するプログラムは、車両1、V2H機器3、サーバ4、7のいずれか1つで実行されてもよく、複数で分散されて実行されてもよい。プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体についても同様である。
V2H機器3は、通信部を持たせて、サーバ4、7や電力会社システム5等から直接的に指示や通知を受けてもよい。通信部は、ネットワークNや移動体通信システムMを介して通信してもよい。ネットワークNを介した通信では、家庭用のWIFIを介した通信を行ってもよい。
上記の実施例では、車両から家庭への電力供給が可能なV2Hシステムの例により、車両を充電する車両電力マネジメントシステムについて説明した。しかし、車両から家庭への電力供給を行わず、車両への電力供給のみを行う充電装置を用いた充電システム等であってもよい。このような充電システムでは、節電要請解除では充電抑制状態に移行し、電力予備率を監視して、電力予備率が閾値以上となるような、充電可能状況となると、充電を開始させるか、充電開始可能とする。
その他、具体的な構成は実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施例および変形例は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。