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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073798
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】カテーテルおよび医療システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240523BHJP
   A61M 25/088 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61M25/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184698
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大
(72)【発明者】
【氏名】福岡 徹也
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA07
4C267AA14
4C267AA28
4C267BB27
4C267BB40
4C267BB53
4C267BB63
4C267CC09
4C267DD01
4C267EE01
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】先端開口および基端開口を有する先端チューブおよび先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有するカテーテルの先端開口および基端開口に治療用デバイスが到達したことを術者に認識可能とするカテーテルおよび医療システムを提供する。
【解決手段】先端開口15から基端開口14まで貫通する先端ルーメン13が形成された先端チューブ11および線状シャフト12を有し、深度マーカー24を備える長尺な治療用シャフト21を有する治療用デバイス20を挿入可能なガイドエクステンションカテーテル10であって、線状シャフト12は、治療用デバイス20の所定の位置が先端開口15に到達したことを深度マーカー24との位置関係により示す視認可能な第1マーカー17と、治療用デバイス20の所定の位置が基端開口14に到達したことを深度マーカー24との位置関係により示す視認可能な第2マーカー18と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端開口から基端開口まで貫通するルーメンが形成された先端チューブおよび前記先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有し、視認可能な参照マーカーを備える長尺な治療用シャフトを有する治療用デバイスを挿入可能なカテーテルであって、
前記線状シャフトは、
前記治療用デバイスの所定の位置が前記先端開口に到達したことを前記参照マーカーとの位置関係により示す視認可能な第1マーカーと、
前記治療用デバイスの所定の位置が前記基端開口に到達したことを前記参照マーカーとの位置関係により示す視認可能な第2マーカーと、を有するカテーテル。
【請求項2】
前記第1マーカーと前記第2マーカーとの間の距離は、前記先端開口から前記基端開口までの距離と一致する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第1マーカーと前記第2マーカーとは、視覚により識別可能な異なる構成で形成される請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
先端開口から基端開口まで貫通するルーメンが形成された先端チューブおよび前記先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有するカテーテルと、
視認可能な参照マーカーを備える長尺な治療用シャフトおよび当該治療用シャフトの先端部に配置されて当該治療用シャフトから径方向外側へ突出する治療部を有する治療用デバイスと、を有する医療システムであって、
前記線状シャフトは、視認可能な第1マーカーと、前記第1マーカーよりも基端側に配置される視認可能な第2マーカーと、を有し、
前記カテーテルの軸心方向において、前記参照マーカーの位置が前記第2マーカーの位置と一致する際に、前記治療用デバイスの先端、前記治療部の先端または前記治療部の基端が、前記基端開口に一致し、
前記カテーテルの軸心方向において、前記参照マーカーの位置が前記第1マーカーの位置と一致する際に、前記治療用デバイスの先端、前記治療部の先端または前記治療部の基端が、前記先端開口に一致する医療システム。
【請求項5】
前記第1マーカーと前記第2マーカーとの間の距離は、前記先端開口から前記基端開口までの距離と一致する請求項4に記載の医療システム。
【請求項6】
前記第1マーカーと前記第2マーカーとは、視覚により識別可能な異なる構成で形成される請求項4または5に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端チューブと、先端チューブに連結されて先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトと、を有するカテーテルおよびカテーテルを含む医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の生体管腔へ挿入して治療や診断等を行うための治療用デバイス(バルーンカテーテルやステント留置用カテーテルなど)を目的部位へ案内するために、ガイディングカテーテルが用いられる。
【0003】
例えば、冠動脈の治療を行うPCIの1つである経皮的冠動脈形成術(PTCA)では、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤを手首や大腿部の皮膚から動脈内へ挿入し、冠動脈の入口へ到達させる。次に、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテルを動脈内に挿入し、続いて、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤを抜去し、冠動脈口に係合させる。ガイディングカテーテルの内腔に治療用デバイス用のより細いガイドワイヤを挿入して、冠動脈内の病変部を通過させる。この後、治療用デバイス用ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを挿入し、ガイディングカテーテルの先端の開口からバルーンカテーテル先端を突出させ、病変部を通過したガイドワイヤに沿って冠動脈内を末梢へ進め、バルーンを病変部に配置し、バルーンを拡張させて治療を行う。
【0004】
ガイディングカテーテルの先端を所定の部位(例えば、冠動脈口)に係合させた後に、治療用デバイスをガイディングカテーテルの先端の開口から病変部まで湾曲あるいは屈曲した冠動脈内をスムーズに進めるため、ガイドエクステンションカテーテルが使用される場合がある。ガイドエクステンションカテーテルは、ガイディングカテーテルの内腔を移動して、ガイディングカテーテルの先端の開口から先端側へ突出可能な先端チューブと、先端チューブに連結されて先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトとを有する、いわゆるラピッドエクスチェンジタイプのサポートカテーテルである(例えば、特許文献1を参照)。ガイドエクステンションカテーテルは、ガイディングカテーテルの先端の開口から突出することで、治療用デバイスをガイドするための通路をガイディングカテーテルから先端側へ延長することができる。ガイドエクステンションカテーテルは、ガイディングカテーテルよりも病変部の近くまで挿入することが可能であり、さらに、治療用デバイスに安定したバックアップ力を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7604612号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガイディングカテーテルの先端の開口からガイドエクステンションカテーテルを突出させた状態で、治療用デバイスをガイディングカテーテルに挿入して先端方向へ移動させると、治療用デバイスの先端や、治療用デバイスの先端部に配置されて治療を行う治療部(例えば、バルーンやステント)が、ガイドエクステンションカテーテルの先端チューブに干渉する可能性がある。このため、治療用デバイスが、ガイドエクステンションカテーテルの先端チューブに到達したことを認識できることが望まれる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、先端開口および基端開口を有する先端チューブおよび先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有するカテーテルの先端開口および基端開口に治療用デバイスが到達したことを術者に認識可能とするカテーテルおよび医療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記(1)に記載の発明により達成される。
【0009】
(1) 本発明に係るカテーテルは、先端開口から基端開口まで貫通するルーメンが形成された先端チューブおよび前記先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有し、参照マーカーを備える長尺な治療用シャフトを有する治療用デバイスを挿入可能なカテーテルであって、前記線状シャフトは、前記治療用デバイスの所定の位置が前記先端開口に到達したことを前記参照マーカーとの位置関係により示す視認可能な第1マーカーと、前記治療用デバイスの所定の位置が前記基端開口に到達したことを前記参照マーカーとの位置関係により示す視認可能な第2マーカーと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)に記載のカテーテルは、カテーテルをガイディングカテーテルの先端の開口部から突出した状態で、ガイディングカテーテルに挿入された治療用デバイスに設けられる参照マーカーを第2マーカーと一致させることで、治療用デバイスの所定の位置が先端チューブの基端開口に到達したことを術者に認識可能とし、かつ参照マーカーを第1マーカーと一致させることで、治療用デバイスの所定の位置が先端チューブの先端開口に到達したことを術者に認識可能とする。このため、カテーテルは、挿入される治療用デバイスが当該カテーテルの先端チューブの基端開口および先端開口に到達したことを術者に認識可能とすることができる。なお、基端開口に到達したことを認識する所定の位置と、先端開口に到達したことを認識する所定の位置とは、同じ位置であっても、異なる位置であってもよい。
【0011】
(2) 上記(1)に記載のカテーテルにおいて、前記第1マーカーと前記第2マーカーとの間の距離は、前記先端開口から前記基端開口までの距離と一致してもよい。これにより、治療用デバイスの所定の位置が基端開口に到達した際に、参照マーカーが第2マーカーと一致し、治療用デバイスの同じ所定の位置が先端開口に到達した際に、参照マーカーが第1マーカーと一致するように設定できる。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)に記載のガイディングカテーテルにおいて、前記第1マーカーと前記第2マーカーとは、視覚により識別可能な異なる構成で形成されてもよい。これにより、術者は、治療用デバイスの参照マーカーを一致させる第1マーカーまたは第2マーカーを正確に判別できるため、先端チューブに対する治療用デバイスの位置を正確に認識できる。
【0013】
(4) 本発明に係る医療システムは、先端開口から基端開口まで貫通するルーメンが形成された先端チューブおよび前記先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有するカテーテルと、視認可能な参照マーカーを備える長尺な治療用シャフトおよび当該治療用シャフトの先端部に配置されて当該治療用シャフトから径方向外側へ突出する治療部を有する治療用デバイスと、を有する医療システムであって、前記線状シャフトは、視認可能な第1マーカーと、前記第1マーカーよりも基端側に配置される視認可能な第2マーカーと、を有し、前記カテーテルの軸心方向において、前記参照マーカーの位置が前記第2マーカーの位置と一致する際に、前記治療用デバイスの先端、前記治療部の先端または前記治療部の基端が前記基端開口に一致し、前記カテーテルの軸心方向において、前記参照マーカーの位置が前記第1マーカーの位置と一致する際に、前記治療用デバイスの先端、前記治療部の先端または前記治療部の基端が前記先端開口に一致する。これにより、カテーテルをガイディングカテーテルの先端の開口部から突出した状態で、ガイディングカテーテルに挿入された治療用デバイスに設けられる参照マーカーを第2マーカーと一致させることで、治療用デバイスが先端チューブの基端開口に到達したことを術者に認識可能とし、かつ参照マーカーを第1マーカーと一致させることで、治療用デバイスが先端チューブの先端開口に到達したことを術者に認識可能とする。このため、本医療システムは、挿入される治療用デバイスがカテーテルの先端チューブの基端開口および先端開口に到達したことを術者に認識可能とすることができる。
【0014】
(5) 上記(4)に記載のカテーテルにおいて、前記第1マーカーと前記第2マーカーとの間の距離は、前記先端開口から前記基端開口までの距離と一致してもよい。これにより、治療用デバイスの所定の位置が基端開口に到達した際に、参照マーカーが第2マーカーと一致し、治療用デバイスの同じ所定の位置が先端開口に到達した際に、参照マーカーが第1マーカーと一致するように設定できる。
【0015】
(6) 上記(4)または(5)に記載のカテーテルにおいて、前記第1マーカーと前記第2マーカーとは、視覚により識別可能な異なる構成で形成されてもよい。これにより、術者は、治療用デバイスの参照マーカーを一致させる第1マーカーまたは第2マーカーを、正確に判別できるため、先端チューブに対する治療用デバイスの位置を正確に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るガイドエクステンションカテーテルを含む医療システムを示す平面図である。
図2】医療システムを使用している状態を示す平面図であり、(A)は深度マーカーが第2マーカーと一致した状態、(B)は深度マーカーが第1マーカーと一致した状態を示す。
図3】第1変形例の医療システムを使用している状態を示す平面図であり、(A)は深度マーカーが第2マーカーと一致した状態、(B)は深度マーカーが第1マーカーと一致した状態を示す。
図4】第2変形例の医療システムを使用している状態を示す平面図であり、(A)は深度マーカーが第2マーカーと一致した状態、(B)は深度マーカーが第1マーカーと一致した状態を示す。
図5】第3変形例のガイドエクステンションカテーテルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。本明細書では、カテーテルの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0018】
図1に示す本実施形態に係るガイドエクステンションカテーテル10(カテーテル)は、ガイディングカテーテル30に挿入されて、ガイディングカテーテル30の先端の開口部31から突出し、治療用デバイス20をガイドするための通路をガイディングカテーテル30から先端側へ延長するために使用される医療用のデバイスである。ガイドエクステンションカテーテル10、治療用デバイス20およびガイディングカテーテル30は、1つの医療システム1を形成する。
【0019】
ガイディングカテーテル30は、治療用デバイス20を血管内の所定の位置までガイドするための長尺な管体を備えたカテーテルであり、先端に開口部31を有している。
【0020】
治療用デバイス20は、本実施形態ではバルーンカテーテルであり、長尺な管状の治療用シャフト21と、治療用シャフト21の基端に固定されたハブ22と、治療用シャフト21の先端部に固定された拡張可能なバルーン23(治療部)とを備えている。治療用シャフト21には、治療用シャフト21の先端から、バルーン23よりも基端側の治療用シャフト21の外周面まで貫通するガイドワイヤルーメン25が形成される。治療用シャフト21の基端側の外表面には、視認できるように例えば色付けされた少なくとも1つの深度マーカー24(参照マーカー)が形成されている。深度マーカー24は、治療用デバイス20の挿入長さを把握するための目安として使用される。なお、治療用デバイス20は、バルーンカテーテルに限定されない。治療用デバイス20は、長尺な治療用シャフト21の先端部に、治療用シャフト21から当該治療用シャフト21の径方向外側へ突出し、治療のために使用される治療部を有することが好ましい。治療部は、例えばステントであってもよい。
【0021】
ガイドエクステンションカテーテル10は、治療用デバイス20を血管内の所定の位置までガイドするための通路をガイディングカテーテル30から延長するために使用される。ガイドエクステンションカテーテル10は、例えば、血管内に配置されたガイディングカテーテル30の開口部31から病変部までの湾曲あるいは屈曲した冠動脈内に挿入されて、治療用デバイス20を病変部まで円滑に到達させるためのルーメンを提供する。すなわち、ガイドエクステンションカテーテル10は、ラピッドエクスチェンジタイプのサポートカテーテルである。
【0022】
ガイドエクステンションカテーテル10は、管状の先端チューブ11と、先端チューブ11に連結されて先端チューブ11から基端側へ延在する線状シャフト12と、線状シャフト12の基端が固定される把持部16とを備えている。
【0023】
先端チューブ11は、可撓性を有する円管であり、先端から基端へ貫通する先端ルーメン13を有する。先端チューブ11の基端面には、先端ルーメン13が開口する基端開口14が形成される。先端チューブ11の先端面には、先端ルーメン13が開口する先端開口15が形成される。先端チューブ11の基端面は、先端チューブ11の軸心Xに対して傾斜して形成され、基端開口14も傾斜して形成される。したがって、先端チューブ11の基端部は、側方(軸心Xと垂直な方向)へ開口するハーフパイプ状に形成される。先端チューブ11は、傾斜する基端面を備えることで、基端側へ突出する突出部19が基端部に形成される。
【0024】
先端チューブ11は、ガイディングカテーテル30のルーメンを移動して、ガイディングカテーテル30の開口部31から先端側へ突出可能である。すなわち、手技において、ガイドエクステンションカテーテル10の先端チューブ11は、ガイディングカテーテル30よりも病変部の近くまで挿入されて、治療用デバイス20に安定したバックアップを与えることができる。先端チューブ11は、樹脂材料により形成される。先端チューブ11の構成材料は、特に限定されないが、例えば樹脂材料や、補強するための金属補強線を含む樹脂材料であることが好ましい。
【0025】
線状シャフト12は、可撓性を有する線材であり、先端チューブ11の基端部に連結されて先端チューブ11から基端側へ延在している。線状シャフト12の先端部は、先端チューブ11の突出部19に連結されている。線状シャフト12の外径は、先端チューブ11の外径よりも小さく、先端チューブ11の径方向の肉厚と同程度またはそれ以下であることが好ましい。線状シャフト12の構成材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、ニッケル・チタン合金等であることが好ましい。
【0026】
線状シャフト12は、外表面に、視認可能な第1マーカー17および第2マーカー18を有する。第1マーカー17および第2マーカー18は、例えば線状シャフト12の外表面に、周方向へリング状に色付けされて形成される。第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2は、先端チューブ11の先端ルーメン13が形成される部位の軸心Xに沿う距離L1と略一致する。第1マーカー17および第2マーカー18は、視覚により違いを識別できることが好ましく、例えば異なる色や、異なる形状で形成される。なお、第1マーカー17および第2マーカー18は、視覚により違いを認識できなくてもよい。距離L1および距離L2は、例えば50mm~1000mm、好ましくは150mm~800mm、より好ましくは200mm~450mmである。第1マーカー17および第2マーカー18の各々の、線状シャフト12の軸心に沿う幅L3は、例えば1mm~30mmである。
【0027】
把持部16は、線状シャフト12の基端部が固定される。把持部16は、術者が把持して操作することを容易とする部位である。
【0028】
次に、本実施形態に係るガイドエクステンションカテーテル10の使用方法を、冠動脈を治療する場合を例に説明する。
【0029】
術者は、大腿動脈や橈骨動脈等へ経皮的にガイディングカテーテル30用のガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテル30を押し進めて、例えば上行大動脈の冠動脈口に、ガイディングカテーテル30の先端を引っ掛けるように係合(エンゲージ)させる。次に、術者は、ガイディングカテーテル30用のガイドワイヤを抜去し、より細いガイドワイヤをガイディングカテーテル30の基端側の開口から挿入して、ガイディングカテーテル30の開口部31から冠動脈へ挿入する。次に、術者は、ガイドワイヤの基端部をガイドエクステンションカテーテル10の先端ルーメン13に挿入する。続いて、術者は、ガイドエクステンションカテーテル10を、ガイディングカテーテル30の基端側の開口へ挿入して押し進め、ガイディングカテーテル30の開口部31から先端方向へ突出させて、冠動脈へ挿入する。次に、術者は、ガイドワイヤを先行させつつガイドエクステンションカテーテル10を押し進め、ガイドエクステンションカテーテル10を、狭窄した病変部の近傍に到達させる。
【0030】
次に、術者は、ガイドワイヤの基端部を、治療用デバイス20のガイドワイヤルーメン25に挿入し、治療用デバイス20を、ガイディングカテーテル30の基端開口14へ挿入して押し進める。図2(A)に示すように、治療用デバイス20のバルーン23が、ガイディングカテーテル30の内部に配置される先端チューブ11の基端開口14に到達し、先端チューブ11の先端ルーメン13に完全に入った状態で、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第2マーカー18に到達する。したがって、術者は、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第2マーカー18に到達することを目視により確認することで、治療用デバイス20のバルーン23が、ガイディングカテーテル30の内部に配置される先端チューブ11の先端ルーメン13に到達したことを認識できる。このため、術者は、治療用デバイス20のバルーン23が先端チューブ11に引っ掛かる等の不具合が発生しないように注意を払いつつ、先端チューブ11の先端ルーメン13内でバルーン23を先端方向へ移動させることができる。
【0031】
治療用デバイス20は、先端チューブ11の先端ルーメン13を通り、先端チューブ11の先端開口15から冠動脈内へ到達する。第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2が、先端チューブ11の距離L1と略一致するため、図2(B)に示すように、治療用デバイス20のバルーン23が先端チューブ11の先端開口15から完全に突出すると、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第1マーカー17に到達する。したがって、術者は、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第1マーカー17に到達することを目視により確認することで、バルーン23が、血管内病変部に到達して拡張可能となったことを認識できる。
【0032】
次に、術者は、バルーン23を先端方向へ移動させて病変部に配置する。続いて、術者は、バルーン23を拡張させて、病変部をバルーン23により押し広げる治療を行うことができる。この後、術者は、バルーン23を収縮させ、治療用デバイス20、ガイドエクステンションカテーテル10およびガイディングカテーテル30を体外へ抜去し、手技を完了する。
【0033】
なお、ガイドエクステンションカテーテル10の第1マーカー17および第2マーカー18の位置は、図2に示す例に限定されない。第1変形例として、図3(A)に示すように、治療用デバイス20のバルーン23の先端(または治療用デバイス20の先端)が、ガイディングカテーテル30の内部に配置される先端チューブ11の基端開口14に到達した状態で、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第2マーカー18に到達してもよい。これにより、術者は、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第2マーカー18に到達することを目視により確認することで、バルーン23の先端(または治療用デバイス20の先端)が、先端チューブ11の基端開口14に到達したことを認識できる。このため、術者は、この後に治療用デバイス20のバルーン23(または治療用デバイス20の先端)が先端チューブ11に引っ掛かる等の不具合が発生しないように注意を払いつつ、治療用デバイス20をさらに押し進めて、治療用デバイス20を基端開口14から先端ルーメン13に挿入させて先端方向へ移動させることができる。
【0034】
そして、第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2が、先端チューブ11の距離L1と略一致するため、図3(B)に示すように、治療用デバイス20のバルーン23の先端(または治療用デバイス20の先端)が先端チューブ11の先端開口15に到達すると、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第1マーカー17に到達する。したがって、術者は、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第1マーカー17に到達することを目視により確認することで、バルーン23(または治療用デバイス20の先端)が、先端チューブ11の先端開口15に到達し、先端開口15からバルーン23が突出していないことを認識できる。バルーン23の外表面に薬剤をコートした薬剤コーテッドバルーン(DCB)が病変部での拡張する前に、長時間血管内に配置されると、薬剤が流出するため、特に好ましい。
【0035】
また、第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2は、先端チューブ11の距離L1と一致しなくてもよい。例えば、図4に示す第3変形例では、第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2は、先端チューブ11の距離L1よりも大きく、先端チューブ11の距離L1と、バルーン23の軸心方向の長さL4との合計値と略一致する。この場合、図4(A)に示すように、治療用デバイス20のバルーン23の先端が、ガイディングカテーテル30の内部に配置される先端チューブ11の基端開口14に到達した状態で、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第2マーカー18に到達してもよい。これにより、術者は、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第2マーカー18に到達することを目視により確認することで、バルーン23の先端が、ガイドエクステンションカテーテル10の先端チューブ11の基端開口14に到達したことを認識できる。このため、術者は、この後に治療用デバイス20のバルーン23が先端チューブ11に引っ掛かる等の不具合が発生しないように注意を払いつつ、治療用デバイス20をさらに押し進めて、治療用デバイス20を基端開口14から先端チューブ11のルーメンに挿入させて先端方向へ移動させることができる。
【0036】
そして、第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2が、先端チューブ11の距離L1と、バルーン23の軸心方向の長さL4との合計値と略一致するため、図4(B)に示すように、治療用デバイス20のバルーン23の基端が先端開口15に到達してバルーン23が先端チューブ11の先端開口15から完全に突出すると、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第1マーカー17に到達する。したがって、術者は、治療用デバイス20の深度マーカー24が、ガイドエクステンションカテーテル10の第1マーカー17に到達することを目視により確認することで、バルーン23が、血管内に到達して拡張可能となったことを認識できる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係るガイドエクステンションカテーテル10(カテーテル)は、先端開口15から基端開口14まで貫通する先端ルーメン13が形成された先端チューブ11および先端チューブ11から基端側へ延在する線状シャフト12を有し、視認可能な深度マーカー24を備える長尺な治療用シャフト21を有する治療用デバイス20を挿入可能なガイドエクステンションカテーテル10であって、線状シャフト12は、治療用デバイス20の所定の位置が先端開口15に到達したことを深度マーカー24との位置関係により示す視認可能な第1マーカー17と、治療用デバイス20の所定の位置が基端開口14に到達したことを深度マーカー24との位置関係により示す視認可能な第2マーカー18と、を有する。これにより、ガイドエクステンションカテーテル10は、ガイドエクステンションカテーテル10をガイディングカテーテル30の先端の開口部31から突出した状態で、ガイディングカテーテル30に挿入された治療用デバイス20に設けられる深度マーカー24を第2マーカー18と一致させることで、治療用デバイス20の所定の位置が先端チューブ11の基端開口14に到達したことを術者に認識可能とし、かつ深度マーカー24を第1マーカー17と一致させることで、治療用デバイス20の所定の位置が先端チューブ11の先端開口15に到達したことを術者に認識可能とする。このため、ガイドエクステンションカテーテル10は、挿入される治療用デバイス20が先端チューブ11の基端開口14および先端開口15に到達したことを術者に認識可能とすることができる。なお、所定の位置は、例えば、治療用デバイスの先端、治療用デバイスの先端部に配置される治療部の先端または基端であり得る。基端開口14に到達したことを認識する治療用デバイス20の所定の位置と、先端開口15に到達したことを認識する治療用デバイス20の所定の位置とは、同じ位置であっても、異なる位置であってもよい。
【0038】
第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2は、先端開口15から基端開口14までの距離L1と一致してもよい。これにより、治療用デバイス20の所定の位置(例えば、治療用デバイス20の先端、治療部の先端または治療部の基端)が基端開口14に到達した際に、深度マーカー24が第2マーカー18と一致し、治療用デバイス20の同じ所定の位置が先端開口15に到達した際に、深度マーカー24が第1マーカー17と一致するように設定できる。なお、第1マーカー17と第2マーカー18との間の距離L2は、例えば第1マーカー17の先端と第2マーカー18の先端との間の距離であるが、第1マーカー17の特定可能な部位と第2マーカー18の特定可能な部位との間の距離であれば特に限定されず、第1マーカー17の先端と第2マーカー18の基端との間の距離であってもよく、または第1マーカー17の基端と第2マーカー18の先端との間の距離であってもよく、または第1マーカー17の軸心方向の中央と第2マーカー18の軸心方向の中央との間の距離であってもよい。
【0039】
第1マーカー17と第2マーカー18とは、視覚により識別可能な異なる構成で形成されてもよい。これにより、術者は、治療用デバイス20の深度マーカー24を一致させる第1マーカー17または第2マーカー18を正確に判別できるため、先端チューブ11に対する治療用デバイス20の位置を正確に認識できる。
【0040】
また、医療システム1は、先端開口15から基端開口14まで貫通するルーメンが形成された先端チューブ11および先端チューブ11から基端側へ延在する線状シャフト12を有するガイドエクステンションカテーテル10と、視認可能な深度マーカー24を備える長尺な治療用シャフト21および当該治療用シャフト21の先端部に配置されて当該治療用シャフト21から径方向外側へ突出する治療部(例えばバルーン23)を有する治療用デバイス20と、を有する医療システム1であって、線状シャフト12は、視認可能な第1マーカー17と、第1マーカー17よりも基端側に配置される視認可能な第2マーカー18と、を有し、ガイドエクステンションカテーテル10の軸心方向において、深度マーカー24の位置が第2マーカー18の位置と一致する際に、治療用デバイス20の先端、治療部の先端または治療部の基端が基端開口14に一致し、ガイドエクステンションカテーテル10の軸心方向において、深度マーカー24の位置が第1マーカー17の位置と一致する際に、治療用デバイス20の先端、治療部の先端または治療部の基端が、先端開口15に一致する。これにより、ガイドエクステンションカテーテル10をガイディングカテーテル30の先端の開口部31から突出した状態で、ガイディングカテーテル30に挿入された治療用デバイス20に設けられる深度マーカー24を第2マーカー18と一致させることで、治療用デバイス20が先端チューブ11の基端開口14に到達したことを術者に認識可能とし、かつ深度マーカー24を第1マーカー17と一致させることで、治療用デバイス20が先端チューブ11の先端開口15に到達したことを術者に認識可能となる。このため、医療システム1は、挿入される治療用デバイス20がガイドエクステンションカテーテル10の先端チューブ11の基端開口14および先端開口15に到達したことを術者に認識可能とすることができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、図5に示す第3変形例のように、ガイドエクステンションカテーテル10の線状シャフト12は、軸心方向に長い1つのマーカー40を有し、このマーカー40の先端が第1マーカー17であり、このマーカーの基端が第2マーカー18であってもよい。
【0042】
また、第1マーカー17および第2マーカー18との位置関係を比較する治療用デバイス20の参照マーカーは、深度マーカー24でなくてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 医療システム
10 ガイドエクステンションカテーテル(カテーテル)
11 先端チューブ
12 線状シャフト
13 先端ルーメン
14 基端開口
15 先端開口
16 把持部
17 第1マーカー
18 第2マーカー
20 治療用デバイス
21 治療用シャフト
23 バルーン(治療部)
24 深度マーカー(参照マーカー)
25 ガイドワイヤルーメン
30 ガイディングカテーテル
31 開口部
X 軸心
図1
図2
図3
図4
図5